JP6817829B2 - 電子写真用部材および電子写真画像形成装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真用部材および該電子写真用部材を具備する電子写真画像形成装置に関する。
特許文献1は、金属塩の如きイオン導電剤が用いられた、熱可塑性ポリエステル樹脂と、ポリエーテルエステルアミドおよびポリエーテルアミドから選ばれる少なくとも一方とを含む電子写真用ベルトを開示している。ここで、ポリエーテルエステルアミドおよびポリエーテルアミドは、電子写真用ベルトの電気抵抗を適度に低下させる導電剤として機能することが開示されている(段落0028)。
一方、特許文献2は、帯電防止性樹脂組成物に関する発明を開示しており、合成樹脂等の高分子材料に帯電防止性能を付与するためにイオン液体を使用することを開示している。
特開2011−85896号公報 特開2005−15573号公報
本発明者らは、特許文献1に係る電子写真用ベルトの導電性を高めるべく、ポリエーテルエステルアミドやポリエーテルアミドを、イオン液体に変えることを検討した。その結果、得られた電子写真用ベルトは、例えば、温度60℃の如き高温環境において、形状が不安定化する場合があった。具体的には、電子写真用ベルトを高温環境に置いたときに、電子写真用ベルトの周長が変化することがあった。電子写真用ベルトの周長の変化は、電子写真画像の色ずれを招来する場合がある。
本発明の一態様は、高温環境下においても形状の安定性に優れた電子写真用部材を提供することに向けたものである。
また、本発明の他の態様は、高品位な電子写真画像を安定して形成し得る電子写真画像形成装置を提供することに向けたものである。
本発明の一態様によれば、樹脂層を有する電子写真用部材であって、該樹脂層は、変性ポリアルキレンテレフタレートを含み、該変性ポリアルキレンテレフタレートは、酸由来の構成単位として、ベンゼン環よりも嵩高い環構造またはビフェニル構造を有する第一の構成単位、および、アルコール由来の構成単位として、環構造を有する第二の構成単位、の少なくとも一方を有し、該変性ポリアルキレンテレフタレートは、結晶融解エンタルピー(ΔHm)が、−40J/g以上、−20J/g以下であり、
該樹脂層は、アニオンおよびカチオンを更に含み、
該アニオンは、構造式(1)で示される構造を有し、:
Figure 0006817829
(構造式(1)中、RおよびRは、各々独立に炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基を表す)、
該カチオンは、構造式(2)〜(6)で示されるカチオンから選択される少なくとも1つである電子写真用部材が提供される。
Figure 0006817829
Figure 0006817829
Figure 0006817829
Figure 0006817829
Figure 0006817829
(構造式(2)〜(6)中、R3〜R13は、各々独立に炭素数1以上8以下の炭化水素基を表す)。
また、本発明の他の態様によれば、前記電子写真用部材を具備する電子写真画像形成装置が提供される。
本発明の一態様によれば、高温環境下においても形状の安定性に優れた電子写真用部材を得ることができる。また、本発明の他の態様によれば、高品位な電子写真画像を安定して形成し得る電子写真画像形成装置を得ることができる。
本発明の一実施形態に係るフルカラー電子写真画像形成装置の一例を示す断面概略図である。 変性ポリアルキレンテレフタレートのDSCチャートの例である。 (a)本発明の一態様に係る電子写真用部材の斜視図である。(b)本発明の他の態様に係る電子写真用部材の斜視図である。
本発明者らは、特許文献1に記載の電子写真用ベルトにおいてポリエーテルエステルアミドやポリエーテルアミドといった導電剤をイオン液体に変えて得られた電子写真用ベルトが、高温環境下において形状安定性が低下する理由を検討した。その結果、熱可塑性ポリエステル樹脂である結晶性ポリアルキレンテレフタレートを含む樹脂層中にイオン液体を該結晶性ポリアルキレンテレフタレートと共存させた場合、該樹脂層のガラス転移温度(Tg)が、熱可塑性ポリエステル樹脂の本来のTgよりも大きく低下する場合があることを見出した。そこで、本発明者らは、イオン液体を導電剤として用いるためには、イオン液体に起因する樹脂層のTgの低下という新たな課題を解決することが必要であるとの認識を得た。
かかる課題の解決に向けて更なる検討の結果、イオン液体に由来する樹脂層のTg低下は、イオン液体が熱可塑性ポリエステルの非晶部へ導入されることで可塑化するためであると推定した。
そこで本発明者らは、熱可塑性ポリエステル樹脂の非晶部へのイオン液体の導入量を抑制することで、Tgの低下を抑制できるものと考察した。そこで、熱可塑性ポリエステル樹脂については、イオン液体が非晶部に侵入し難い分子構造とし、また、イオン液体については、疎水性の高い構造を有するものを選択した。その結果、上記の課題を良く解決し得ることを見出し、本発明を為すに至った。
すなわち、本発明の一態様に係る電子写真用部材は、樹脂層を有する。そして、該樹脂層は、変性ポリアルキレンテレフタレートを含み、
該変性ポリアルキレンテレフタレートは、酸由来の構成単位として、ベンゼン環よりも嵩高い環構造またはビフェニル構造を有する第一の構成単位、および、アルコール由来の構成単位として、環構造を有する第二の構成単位、の少なくとも一方を有し、かつ、結晶融解エンタルピー(ΔHm)が、−40J/g以上、−20J/g以下である。
また、該樹脂層は、アニオンおよびカチオンを更に含み、
該アニオンは、構造式(1)で示される構造を有し、:
Figure 0006817829
(構造式(1)中、RおよびRは、各々独立に炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基を表す)、
該カチオンは、構造式(2)〜(6)で示されるカチオンから選択される少なくとも1つである:
Figure 0006817829
Figure 0006817829
Figure 0006817829
Figure 0006817829
Figure 0006817829
(構造式(2)〜(6)中、R3〜R13は、各々独立に炭素数1以上8以下の炭化水素基を表す)。
<変性ポリアルキレンテレフタレート>
本発明の一態様に係る変性ポリアルキレンテレフタレートは、酸由来の構成単位として、ベンゼン環よりも嵩高い環構造またはビフェニル構造を有する第一の構成単位、および、アルコール由来の構成単位として、環構造を有する第二の構成単位、の少なくとも一方を有する。また、当該変性ポリアルキレンテレフタレートは、結晶融解エンタルピー(ΔHm)が、−40J/g以上、−20J/g以下である。
ポリアルキレンテレフタレートを嵩高い構造ブロックで変性し、かつ結晶化度を中程度に調整し、添加するイオン液体を疎水性の高いものにすることで、ポリアルキレンテレフタレートの非晶部へのイオン液体の導入量を抑制し得る。ポリアルキレンテレフタレートの分子中に嵩高い変性ブロックが存在することによって、イオン液体が変性ポリアルキレンテレフタレートの非晶部へ接近し難くなる。そのため、樹脂層のイオン液体由来のTgの低下を抑制することができるものと考えられる。
ポリアルキレンテレフタレートは、アルキレンテレフタレート構成単位を含む樹脂であり、酸成分であるテレフタル酸とアルコール成分であるポリアルキレングリコールとを重縮合することによって得られる。
ポリアルキレンテレフタレート中のアルキレンの炭素数は、結晶性・耐熱性の観点から2以上16以下が好ましい。具体的には、高い強度を電子写真用部材に与え得る、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と記載する場合がある)、ポリブチレンテレフタレート(以下、「PBT」と記載する場合がある)が挙げられる。中でも、PETが特に好適に用いられる。
変性ポリアルキレンテレフタレートの変性成分としては、酸由来の構成単位として、ベンゼン環よりも嵩高い環構造またはビフェニル構造を有する第一の構成単位、および、アルコール由来の構成単位として、環構造を有する第二の構成単位、のいずれか一方または両方を有する。
第一の構成単位中の嵩高い環構造としては、例えば、ナフタレン環およびアントラセン環が挙げられる。また、第二の構成単位中の環構造としては、シクロアルカン構造およびベンゼン環構造が挙げられる。
上記第一の構成単位を与える酸の具体例としては、例えば、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルカルボン酸、ビフェニルカルボン酸、アントラセンジカルボン酸およびそれらの誘導体が挙げられる。
上記第二の構成単位を与えるアルコールの具体例としては、例えば、脂環族ジオール(例えば、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール)、芳香族ジオール(例えば、キシレンジオール、キシリレングリコール、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシビフェニル、ナフタレンジオール、ビスフェノールA、ジヒドロキシジフェニルエーテル)およびそれらの誘導体が挙げられる。
変性ポリアルキレンテレフタレートの結晶化度は、結晶融解エンタルピー(ΔHm)により定量化される。結晶化度が高いと、結晶融解時に吸収されるエンタルピーの絶対値が大きくなり、結晶化度が低いと、結晶融解時に吸収されるエンタルピーの絶対値が小さくなる。
本態様に係る変性ポリアルキレンテレフタレートは、結晶融解エンタルピー(ΔHm)が、−40J/g以上、−20J/g以下である。この規定は、当該変性ポリアルキレンテレフタレートが、中程度の結晶化度を有することを意味している。
ΔHmが−40J/g以上、−20J/g以下であるような、中程度の結晶化度を有する変性ポリアルキレンテレフタレートは、非晶部が一定以上存在するため、イオン液体が限られた非晶部に局所的に存在し難くなる。また、結晶部も一定以上存在するため、分子鎖空間の広がりが抑えられるため、イオン液体が非晶部へ接近し易い状態となることを抑制し得る。
一方、ΔHmが−40J/g未満である変性ポリアルキレンテレフタレートは、結晶化度が高過ぎるため、非晶部の割合が相対的に減少し、イオン液体が、非晶部に集中して存在し易くなり、イオン液体由来の可塑化を生じ易くなる。
また、ΔHmが−20J/g超である変性ポリアルキレンテレフタレートは、結晶化度が低過ぎるため非晶部の割合が多く、分子鎖空間が広がるので、イオン液体が非晶部へ接近し易くなり、やはり、イオン液体由来の可塑化が生じやすくなる。
樹脂層中の変性ポリアルキレンテレフタレートの量は、電子写真用部材の強度の観点から50質量%以上、特には60質量%以上であることが好ましい。
<イオン液体>
イオン液体は、幅広い温度範囲で液体として存在する塩であり、イオンのみからなる液体であって、かかる塩を構成するイオン種に比較的大きな有機イオンを用いることにより、一般に100℃以下の融点を有するものを指す。
そして、本態様においては、イオン液体として疎水性のイオン液体を用いる。疎水性のイオン液体は、親水性である結晶性ポリアルキレンテレフタレートと相溶性が低いため、イオン液体が非晶部に拡散し難いため、イオン液体起因の可塑化効果が生じ難い。そのため、樹脂層のTg低下が生じ難い。
一方、親水性のイオン液体は、親水性である結晶性ポリアルキレンテレフタレートとの相溶性が高いため、非晶部へイオン液体が拡散し易い。その結果、変性ポリアルキレンテレフタレートにイオン液体起因の可塑化が生じやすくなる。
疎水性のイオン液体は、具体的には、後述する式(1)で表されるアニオンと、後述する式(2)〜(6)で表されるカチオンから選ばれる少なくとも一つと、を含む。
アニオン種としては、構造式(1)で表わされるスルホニルイミドイオンが好ましい。
Figure 0006817829
1およびR2は、各々独立に炭素数1以上4以下のパーフルオロアルキル基を表す。
構造式(1)で表されるアニオンの具体例としては、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ビス(パーフルオロエタンスルホニル)イミドイオン、ビス(パーフルオロプロパンスルホニル)イミドイオン、ビス(パーフルオロブタンスルホニル)イミドイオン、トリフルオロメタンスルホニルパーフルオロプロパンスルホニルイミドイオン、トリフルオロメタンスルホニルパーフルオロブタンスルホニルイミドイオンが挙げられる。
カチオン種としては、構造式(1)で表わされるスルホニルイミドイオンと対になり疎水性イオン液体を形成するイオンが用いられる。具体例としては、イミダゾリウム系イオン(構造式(2))、アンモニウム系イオン(構造式(3))、ピリジニウム系イオン(構造式(4))、ピペリジニウム系イオン(構造式(5))、ピロリジニウム系イオン(構造式(6))から選ばれる少なくとも一つが用いられる。
・イミダゾリウム系イオン
Figure 0006817829
構造式(2)中、R3およびR4は、各々独立に炭素数1以上8以下の炭化水素基を表す。
構造式(2)で表されるカチオン(イミダゾリウム系イオン)の例としては、1−エチル−3−メチルイミゾリウムイオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムイオンが挙げられる。疎水性を損なうものでなければ、他の官能基を有していてもよい。
・アンモニウム系イオン
Figure 0006817829
構造式(3)中、R5〜R8は、各々独立に炭素数1以上8以下の炭化水素基を表す。
構造式(3)で表されるカチオン(アンモニウム系イオン)の例としては、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウムイオン(TMPA)、N,N,N−トリブチル−N−メチルアンモニウムイオンが挙げられる。疎水性を損なうものでなければ、他の官能基を有していてもよい。
・ピリジニウム系イオン
Figure 0006817829
構造式(4)中、R9は、炭素数1以上8以下の炭化水素基を表す。
構造式(4)で表されるカチオン(ピリジニウム系イオン)の例としては、1−エチルピリジニウムイオン、1−ブチルピリジニウムイオン、1−ヘキシルピリジニウムイオンが挙げられる。疎水性を損なうものでなければ、他の官能基を有していてもよい。
・ピペリジニウム系イオン
Figure 0006817829
構造式(5)中、R10〜R11は、各々独立に炭素数1以上8以下の炭化水素基を表す。
構造式(5)で表されるカチオン(ピペリジニウム系イオン)の例としては、N−メチル−N−エチルピペリジニウムイオン、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムイオンが挙げられる。疎水性を損なうものでなければ、他の官能基を有していてもよい。
・ピロリジニウム系イオン
Figure 0006817829
構造式(6)中、R12およびR13は、各々独立に炭素数1以上8以下の炭化水素基を表す。
構造式(6)で表されるカチオン(ピロリジニウム系イオン)の例としては、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムイオン、1−メチル−1−ブチルピロリジニウムイオンが挙げられる。疎水性を損なうものでなければ、他の官能基を有していてもよい。
イオン液体の量は、樹脂層の電気抵抗をより均一化させる観点から、変性ポリアルキレンテレフタレートの質量に対して、0.1質量%以上とすることが好ましい。また、15質量%を超える量で加えても、配合量増加による抵抗低下効果がほとんど得られないため、15質量%以下とすることが好ましい。
なお、本態様に係る電子写真用部材を、中間転写ベルトとして用いる場合には、樹脂層の表面固有抵抗率は、1×106〜1×1014Ω/□(square)、特には、1×1010〜1×1012Ω/□であることが好ましい。前記表面固有抵抗率が、1×106Ω/□以上であれば、転写電界をより一層容易に得ることができる。また、前記表面固有抵抗率が1×1014Ω/□以下であれば、転写電圧を抑制できるため、電源のさらなる小型化やコストのさらなる削減を図ることができる。
<添加剤>
樹脂層には、本発明の目的を阻害しない範囲で、その他の成分を添加することができる。具体的には、例えば、酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノール系、リン、硫黄系など)、紫外線吸収剤、有機顔料、無機顔料、pH調整剤、架橋剤、相溶化剤、離型剤、カップリング剤、滑剤、導電性フィラー(例えば、カーボンブラック、カーボンファイバー、導電性酸化チタン、導電性酸化錫、導電性マイカ)、導電性樹脂(例えば、ポリエステルエーテルアミド)、無機または低分子量有機塩、界面活性剤などを例示することができる。これらを単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて用いることも可能である。
[電子写真用部材]
本発明にかかる電子写真用部材の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
図3(a)および(b)は、エンドレスベルト形状を有する電子写真用部材(以下、「電子写真用ベルト」ともいう)の斜視図である。
図3(a)に示す電子写真用ベルト6は、樹脂層301のみからなる単層構造を有する。そして、樹脂層301は、マトリックス樹脂としての変性ポリアルキレンテレフタレートと、イオン液体と、を含む。
また、図3(b)に示す電子写真用ベルト6は、基材303と該基材上(外周面上)の樹脂層301とからなる積層構造を有する。
図3(a)及び(b)に示す電子写真用ベルトにおける樹脂層の厚みとしては、特に限定されるものではないが、例えば、10〜700μm、特には、50〜120μmである。
また、図3(b)に示す電子写真用ベルトにおける基材としては、例えば、ニッケル合金やステンレス鋼の如き金属製の基材や、ポリイミド樹脂の如き樹脂製の基材を用い得る。また、基材の厚みとしては、特に限定されるものではないが、例えば、10〜700μm、特には、50〜120μmである。
なお、電子写真用部材の形状は特に制限はなく、エンドレスベルト形状以外に、ローラ形状を有していてもよい。
<電子写真用部材の製造方法>
電子写真用部材の製造方法としては、特に制限はない。例えば、変性ポリアルキレンテレフタレートと、イオン液体と、を含む樹脂組成物をペレット化し、公知の成形方法を用いて成形することで樹脂層とし、この樹脂層を有する電子写真用部材が得られる。成形方法としては、例えば、連続溶融押出成形法、射出成形法、ストレッチブロー成形法、あるいはインフレーション成形法が挙げられる。電子写真用部材には、処理剤の塗布、研磨処理等の表面処理を施してもよい。
<電子写真用部材の用途>
また、本発明の一実施形態に係る電子写真用部材の用途は特に制限はないが、例えば、中間転写ベルト、転写搬送ベルト、などに好適に用いられる。特に中間転写ベルトとして好適に使用することができる。
[電子写真画像形成装置]
本発明の一実施形態に係る電子写真画像形成装置の一つの例について図1を用いて説明する。図1はエンドレスベルト形状の中間転写部材(以降、「中間転写ベルト」ともいう)を用いた電子写真画像形成装置の説明図である。中間転写ベルトとして、本発明の一実施形態に係る電子写真用部材を具備している。
当該電子写真画像形成装置においては、複数色の電子写真ステーションを中間転写ベルトの回転方向に並べて配置した、所謂タンデム型の構成を有する。なお、以下の説明では、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に関する構成の符号に、それぞれ、Y、M、C、kの添え字を付しているが、同様の構成については添え字を省略する場合もある。
各色の静電潜像がその表面に形成される感光ドラム(感光体、像担持体)1Y、1M、1C、1kの周囲には、帯電装置2Y、2M、2C、2k、露光装置3Y、3M、3C、3k、現像装置4Y、4M、4C、4kが配置されている。各感光ドラム1Y、1M、1C、1kは、矢印Fの方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。帯電装置2は、各感光ドラム1Y、1M、1C、1kの周面を所定の極性、電位に帯電する。露光装置3としてのレーザビームスキャナーは、不図示のイメージスキャナー、コンピュータ等の外部機器から入力される画像情報に対応してオン/オフ変調したレーザ光を出力して、感光ドラム1上の帯電処理面を走査露光する。この走査露光により各感光ドラム1Y、1M、1C、1kの面上に目的の画像情報に応じた静電潜像が形成される。
現像装置4Y,4M,4C,4kは、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(k)の各色成分のトナーを内包する。そして、画像情報に基づいて使用する現像装置4を選択し各感光ドラム1Y、1M、1C、1kの面上に現像剤(トナー)が現像され、静電潜像がトナー像として可視化される。本実施形態では、このように静電潜像の露光部にトナーを付着させて現像する反転現像方式が用いられる。また、このような帯電装置、露光装置、現像装置により電子写真画像形成手段を構成している。
また、中間転写ベルトである電子写真用ベルト6は、無端状のベルトで、各感光ドラム1Y、1M、1C、1kの表面に当接されるよう配設され、それぞれが張架ローラとして機能するテンションローラ20、対向ローラ21、駆動ローラ22に張架されている。そして、矢印Gの方向へ回動するようになっている。本実施の形態では、テンションローラ20は電子写真用ベルト6の張力を一定に制御する。駆動ローラ22は電子写真用ベルト6の駆動ローラである。対向ローラ21は2次転写用の対向ローラである。また、電子写真用ベルト6を挟んで感光ドラム1Y、1M、1C、1kと対向する1次転写位置には、それぞれ、1次転写ローラ5Y、5M、5C、5kが配置されている。
各感光ドラム1Y、1M、1C、1kにそれぞれ形成された各色未定着トナー像は、1次転写ローラ5に定電圧源または定電流源によりトナーの帯電極性と逆極性の正極性の1次転写バイアスを印加することにより、電子写真用ベルト6上に順次静電的に1次転写される。そして、電子写真用ベルト6上に4色の未定着トナー像が重ね合わされたフルカラー画像を得る。電子写真用ベルト6は、このように感光ドラム1から転写されたトナー像を担持しつつ回転する。1次転写後の各感光ドラム1Y、1M、1C、1kの1回転毎に感光ドラム1表面は、クリーニング装置11で転写残トナーをクリーニングし、繰り返し、帯電装置2による帯電工程から始まる作像工程に入る。
また、記録材7の搬送経路に面した電子写真用ベルト6の2次転写位置には、電子写真用ベルト6のトナー像担持面側に2次転写ローラ(転写部)9を圧接配置している。また、2次転写位置の電子写真用ベルト6の裏面側には、2次転写ローラ9の対向電極をなし、バイアスが印加される対向ローラ21が配設されている。電子写真用ベルト6上のトナー像を記録材7に転写する際、対向ローラ21にはトナーと同極性のバイアスが2次転写バイアス印加手段28により印加され、例えば−1000〜−3000Vが印加され−10〜−50μAの電流が流れる。このときの転写電圧は転写高圧検知手段29により検知される。更に、2次転写位置の下流側には、2次転写後の電子写真用ベルト6上に残留したトナーを除去するクリーニング装置(ベルトクリーナ)12が設けられている。
レジストローラ対8から2次転写位置に導入された記録材7は、2次転写位置で挾持搬送され、そのときに、2次転写ローラ9の対向ローラ21に2次転写バイアス印加手段28から所定に制御された定電圧バイアス(転写バイアス)が印加される。対向ローラ21にはトナーと同極性の転写バイアスが印加されることで、転写部位にて、電子写真用ベルト6上に重ね合わされた4色のフルカラー画像(トナー像)が記録材7へ一括転写され、記録材7上にフルカラーの未定着トナー像が形成される。トナー画像の転写を受けた記録材7は2次転写位置から矢印Hの方向に搬送され、不図示の定着器へ導入され加熱定着される。
以下に実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例では電子写真用部材として電子写真用ベルトを作製した。
<変性ポリアルキレンテレフタレートNo.1〜6の用意>
表1に記載の変性ポリアルキレンテレフタレートNo.1〜4を用意した。
Figure 0006817829
<変性アルキレンテレフタレート樹脂5の合成>
アルキレンテレフタレート樹脂(ホモ体、商品名:TRN−8550FF;帝人(株)社製、極限粘度=0.77dl/g、ΔHm=−63.6J/g)と、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(商品名:THERMX6761;イーストマンケミカル社製、極限粘度=0.91dl/g、ΔHm=−40.7J/g)とを、モル比で62:38の割合で混合し、300℃で熱溶融混練して、エステル交換反応を生じさせることにより、変性アルキレンテレフタレート樹脂5を得た。変性アルキレンテレフタレート樹脂5の結晶融解エンタルピーΔHmは、−20.5J/gであった。
<変性アルキレンテレフタレート樹脂6の合成>
アルキレンテレフタレート樹脂(ホモ体、商品名:TRN−8550FF;帝人(株)社製、極限粘度=0.77dl/g、ΔHm=−63.6J/g)とポリエチレンナフタレート(商品名:TN8065S,帝人(株)製、極限粘度=0.65dl/g、ΔHm=−56.4J/g)とを、モル比で96:4の割合で混合し、300℃で熱溶融混練して、両樹脂間でエステル交換反応を生じさせて変性アルキレンテレフタレート樹脂6を得た。変性アルキレンテレフタレート樹脂6の結晶融解エンタルピーΔHmは47.9J/gであった。
変性ポリアルキレンテレフタレートNo.1〜6の構造を表2に示す。
Figure 0006817829
<イオン液体No.1〜7の用意>
表3に記載のイオン液体No.1〜7を用意した。
Figure 0006817829
上記各イオン液体No.1〜7の構造を以下に示す。
Figure 0006817829
Figure 0006817829
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なお、変性ポリアルキレンテレフタレートNo.1〜7の極限粘度は、以下の方法により測定した。すなわち、温度130℃で12時間真空乾燥させたサンプルを80mg精秤して、フェノール/テトラクロロエタン=60/40(体積比)の混合溶媒(温度80℃)18mlに溶解させた後、常温(温度20℃)に冷却して、サンプル溶液を調製した。次いで、フェノール/テトラクロロエタン=60/40(体積比)の混合溶媒を、該サンプル溶液に加えて、全量を20mlに希釈した。得られた希釈溶液を温度30℃に加温して、極限粘度の測定用溶液を得た。得られた測定用溶液(温度30℃)の極限粘度をオストワルド粘度計(商品名:026300−3;柴田科学(株)製)を用いて測定した。
(DSC測定)
ガラス転移温度(Tg)とは、アモルファス状態の固体において、熱エネルギーにより局所的な分子運動が開始される温度である。示差走査熱量測定装置(DSC823;メトラー・トレド社製)を用いて昇温速度10℃/分で昇温させながら測定したDSC曲線における、比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と、DSC曲線との交点における温度をTgとした。DSC曲線は、JIS K7121−1987に準拠して得る。具体的には、サンプル(10mg)を精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、温度範囲25℃〜300℃で測定した。なお、変性ポリアルキレンテレフタレートNo.1〜6の結晶融解エンタルピー(ΔHm)は、上記DSC曲線における、融解ピークを含むDSC曲線とベースラインとで囲われた面積とした。
図2は、変性ポリアルキレンテレフタレートNo.1のDSCチャートである。このDSCチャートから、変性ポリアルキレンテレフタレートNo.1のTgは、82.6℃であった。また、当該DSCチャートにおいては、温度227.8℃にピークトップを有する最大吸熱ピークが生じている。このときの吸熱は、サンプルにおける結晶性の部位の融解に起因していると考えられる。したがって、このときの吸熱から結晶融解エンタルピー(ΔHm)が得られる。
〔実施例1〕
二軸押出し機(商品名:TEX30α、(株)日本製鋼所製)を用いて、表4に記載の配合割合にて変性アルキレンテレフタレートとイオン液体とを熱溶融混練して、樹脂組成物を調製した。熱溶融混練温度は220℃以上、240℃以下の範囲内とした。また、二軸押出し機のスクリュ回転数は、300rpm、吐出量は、100kg/hとし、また、熱溶融混練時間は5分とした。得られた樹脂組成物をペレット化し、温度140℃で6時間乾燥させた。
次いで、シリンダ設定温度を300℃にした射出成形装置(商品名:SE180D、住友重機械工業(株)製)を用いてプリフォームを作製した。このときの射出成形金型温度は30℃とした。温度500℃の加熱装置にプリフォームを入れて軟化させたのち、プリフォームを500℃で加熱した。その後、1次ブロー成形機にプリフォームを投入した。そして、ブロー金型内で延伸棒とエアーの力(ブローエアー注入部分)でプリフォーム温度110℃、エアー圧力0.3MPa、延伸棒速度1000mm/sでブロー成形してブローボトルを得た。
次に、2次ブローブロー成形装置に得られたブローボトルをセットし、ニッケル製円筒金型を装着した。そして、エアー圧力0.1MPaをブローボトル内に印加し、外部にエアーが漏出しないよう調整してブローボトルを金型内面に転写させ、円筒金型を回転させながら、加熱ヒータにて円筒金型を200℃で計60秒間均一に加熱した。その後、この円筒金型をエアーで常温まで冷却し、ボトル内に印加された圧力を解除し、ブローボトルを得た。このブローボトルの両端をカットすることにより、エンドレスベルト形状の、単層構成の電子写真用ベルトを得た。得られた電子写真用ベルトの厚みは70μm、周長は792.0mmであった。
この電子写真用ベルトについて、Tgの測定、部材収縮量の測定および表面固有抵抗の測定を以下の方法に基づき行った。
<Tgの測定>
電子写真用ベルトから採取した10mgのサンプルを用いた以外は、前記DSC測定に記載した方法と同じ方法にてDSC測定を行ってDSCチャートを得た。得られたDSCチャートから、変性アルキレンテレフタレートNo.1とイオン液体1とを含む樹脂層のTgを求めた。
<部材収縮量の測定>
電子写真用ベルトを60℃の環境下で1時間放置した。放置前後の電子写真用ベルトの両端部の周長を測定して、2点の収縮量を計算し、その平均値を部材収縮量とした。
<表面固有抵抗率(ρs)の測定>
測定装置は、高抵抗計(商品名:ハイレスタUP MCP−HT450型、(株)三菱化学アナリテック製)の主電極の内径が50mm、ガード・リング電極の内径が53.2mm、外径が57.2mmのプローブ(商品名:UR−100、(株)三菱化学アナリテック製)を用いてJIS−K6911に準拠する形で測定した。電子写真用ベルトの外表面に置いた主電極およびガード・リング電極間に電圧250Vを10秒間、印加し、電子写真用ベルトの周方向の任意の4箇所について表面固有抵抗率を測定し、その平均値を電子写真用ベルトの表面固有抵抗率(ρs)として採用した。
〔実施例2〜9〕
樹脂組成物の材料の配合割合を表4に記載したとおりとした以外は、実施例1と同様にして電子写真用ベルトを得た。これらの電子写真用ベルトを、実施例1に係る電子写真用ベルトと同様に評価した。
実施例1〜9に係る電子写真用ベルトの評価結果を表5に示す。なお、表5には、各電子写真用ベルトに含まれる変性ポリアルキレンテレフタレートのみのTgを併せて記載した。
Figure 0006817829
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〔比較例1〜3、6〕
樹脂組成物の材料の配合割合を表6に記載したとおりとした以外は、実施例1と同様にして電子写真用ベルトを作製し、評価した。
〔比較例4〕
1次ブロー時のプリフォーム加熱温度を100℃として樹脂組成物の材料の配合割合を表6に記載したとおりとした以外は、実施例1と同様にして電子写真用ベルトを作製し、評価した。
〔比較例5〕
熱溶融混練温度を260℃以上280℃以下、1次ブロー時のプリフォーム加熱温度を100℃として樹脂組成物の材料の配合を表6に記載したとおりとした以外は、実施例1と同様にして電子写真用ベルトを作製し、評価した。
比較例1〜6に係る電子写真用ベルトの評価結果を表7に示す。
Figure 0006817829
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1 感光ドラム(感光体、像担持体)
2 帯電装置
3 露光装置
4 現像装置
5 1次転写ローラ
6 電子写真用ベルト(中間転写ベルト)
7 記録材
8 レジストローラ対
9 2次転写ローラ
12 クリーニング装置
20 テンションローラ
21 対向ローラ
22 駆動ローラ
28 転写バイアス印加手段
29 転写高圧検知手段

Claims (12)

  1. 樹脂層を有する電子写真用部材であって、
    該樹脂層は、変性ポリアルキレンテレフタレートを含み、
    該変性ポリアルキレンテレフタレートは、
    酸由来の構成単位として、ベンゼン環よりも嵩高い環構造またはビフェニル構造を有する第一の構成単位、および、アルコール由来の構成単位として、環構造を有する第二の構成単位、の少なくとも一方を有し、かつ、
    結晶融解エンタルピー(ΔHm)が、−40J/g以上、−20J/g以下であり、
    該樹脂層は、アニオンおよびカチオンを更に含み、
    該アニオンは、構造式(1)で示される構造を有し、:
    Figure 0006817829
    (構造式(1)中、RおよびRは、各々独立に炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基を表す)、
    該カチオンは、構造式(2)〜(6)で示されるカチオンから選択される少なくとも1つであることを特徴とする電子写真用部材:
    Figure 0006817829
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    Figure 0006817829
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    (構造式(2)〜(6)中、R3〜R13は、各々独立に炭素数1以上8以下の炭化水素基を表す)。
  2. 前記第一の構成単位が有する前記嵩高い環構造が、ナフタレン環およびアントラセン環の少なくとも一方である請求項1に記載の電子写真用部材。
  3. 前記酸が、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸及びアントラセンジカルボン酸から選択される少なくとも一つである請求項1または2に記載の電子写真用部材。
  4. 前記第二の構成単位中の前記環構造が、シクロアルカン構造およびベンゼン環構造の少なくとも一方である請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子写真用部材。
  5. 前記アルコールが、脂環族ジオール及び芳香族ジオールから選択される少なくとも一つである請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子写真用部材。
  6. 前記脂環族ジオールが、シクロヘキサンジオール又はシクロヘキサンジメタノールを含む請求項5に記載の電子写真用部材。
  7. 前記芳香族ジオールが、キシレンジオール、キシリレングリコール、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシビフェニル、ナフタレンジオール、ビスフェノールA及びジヒドロキシジフェニルエーテルを含む請求項5に記載の電子写真用部材。
  8. 前記電子写真用部材が、樹脂層のみからなる単層構造を有する請求項1〜のいずれか一項に記載の電子写真用部材。
  9. 前記電子写真用部材が、基材と、該基材上の前記樹脂層とを有する請求項1〜のいずれか一項に記載の電子写真用部材。
  10. 前記電子写真用部材が、エンドレスベルト形状を有する電子写真用ベルトである請求項1〜のいずれか一項に記載の電子写真用部材。
  11. 請求項1〜10のいずれか一項に記載の電子写真用部材を具備する電子写真画像形成装置。
  12. 前記電子写真用部材を中間転写部材として具備する請求項11に記載の電子写真画像形成装置。
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