JP6817829B2 - 電子写真用部材および電子写真画像形成装置 - Google Patents
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Description
一方、特許文献2は、帯電防止性樹脂組成物に関する発明を開示しており、合成樹脂等の高分子材料に帯電防止性能を付与するためにイオン液体を使用することを開示している。
また、本発明の他の態様は、高品位な電子写真画像を安定して形成し得る電子写真画像形成装置を提供することに向けたものである。
該樹脂層は、アニオンおよびカチオンを更に含み、
該アニオンは、構造式(1)で示される構造を有し、:
該カチオンは、構造式(2)〜(6)で示されるカチオンから選択される少なくとも1つである電子写真用部材が提供される。
かかる課題の解決に向けて更なる検討の結果、イオン液体に由来する樹脂層のTg低下は、イオン液体が熱可塑性ポリエステルの非晶部へ導入されることで可塑化するためであると推定した。
すなわち、本発明の一態様に係る電子写真用部材は、樹脂層を有する。そして、該樹脂層は、変性ポリアルキレンテレフタレートを含み、
該変性ポリアルキレンテレフタレートは、酸由来の構成単位として、ベンゼン環よりも嵩高い環構造またはビフェニル構造を有する第一の構成単位、および、アルコール由来の構成単位として、環構造を有する第二の構成単位、の少なくとも一方を有し、かつ、結晶融解エンタルピー(ΔHm)が、−40J/g以上、−20J/g以下である。
また、該樹脂層は、アニオンおよびカチオンを更に含み、
該アニオンは、構造式(1)で示される構造を有し、:
該カチオンは、構造式(2)〜(6)で示されるカチオンから選択される少なくとも1つである:
本発明の一態様に係る変性ポリアルキレンテレフタレートは、酸由来の構成単位として、ベンゼン環よりも嵩高い環構造またはビフェニル構造を有する第一の構成単位、および、アルコール由来の構成単位として、環構造を有する第二の構成単位、の少なくとも一方を有する。また、当該変性ポリアルキレンテレフタレートは、結晶融解エンタルピー(ΔHm)が、−40J/g以上、−20J/g以下である。
ポリアルキレンテレフタレート中のアルキレンの炭素数は、結晶性・耐熱性の観点から2以上16以下が好ましい。具体的には、高い強度を電子写真用部材に与え得る、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と記載する場合がある)、ポリブチレンテレフタレート(以下、「PBT」と記載する場合がある)が挙げられる。中でも、PETが特に好適に用いられる。
第一の構成単位中の嵩高い環構造としては、例えば、ナフタレン環およびアントラセン環が挙げられる。また、第二の構成単位中の環構造としては、シクロアルカン構造およびベンゼン環構造が挙げられる。
上記第二の構成単位を与えるアルコールの具体例としては、例えば、脂環族ジオール(例えば、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール)、芳香族ジオール(例えば、キシレンジオール、キシリレングリコール、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシビフェニル、ナフタレンジオール、ビスフェノールA、ジヒドロキシジフェニルエーテル)およびそれらの誘導体が挙げられる。
本態様に係る変性ポリアルキレンテレフタレートは、結晶融解エンタルピー(ΔHm)が、−40J/g以上、−20J/g以下である。この規定は、当該変性ポリアルキレンテレフタレートが、中程度の結晶化度を有することを意味している。
一方、ΔHmが−40J/g未満である変性ポリアルキレンテレフタレートは、結晶化度が高過ぎるため、非晶部の割合が相対的に減少し、イオン液体が、非晶部に集中して存在し易くなり、イオン液体由来の可塑化を生じ易くなる。
また、ΔHmが−20J/g超である変性ポリアルキレンテレフタレートは、結晶化度が低過ぎるため非晶部の割合が多く、分子鎖空間が広がるので、イオン液体が非晶部へ接近し易くなり、やはり、イオン液体由来の可塑化が生じやすくなる。
イオン液体は、幅広い温度範囲で液体として存在する塩であり、イオンのみからなる液体であって、かかる塩を構成するイオン種に比較的大きな有機イオンを用いることにより、一般に100℃以下の融点を有するものを指す。
アニオン種としては、構造式(1)で表わされるスルホニルイミドイオンが好ましい。
なお、本態様に係る電子写真用部材を、中間転写ベルトとして用いる場合には、樹脂層の表面固有抵抗率は、1×106〜1×1014Ω/□(square)、特には、1×1010〜1×1012Ω/□であることが好ましい。前記表面固有抵抗率が、1×106Ω/□以上であれば、転写電界をより一層容易に得ることができる。また、前記表面固有抵抗率が1×1014Ω/□以下であれば、転写電圧を抑制できるため、電源のさらなる小型化やコストのさらなる削減を図ることができる。
樹脂層には、本発明の目的を阻害しない範囲で、その他の成分を添加することができる。具体的には、例えば、酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノール系、リン、硫黄系など)、紫外線吸収剤、有機顔料、無機顔料、pH調整剤、架橋剤、相溶化剤、離型剤、カップリング剤、滑剤、導電性フィラー(例えば、カーボンブラック、カーボンファイバー、導電性酸化チタン、導電性酸化錫、導電性マイカ)、導電性樹脂(例えば、ポリエステルエーテルアミド)、無機または低分子量有機塩、界面活性剤などを例示することができる。これらを単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて用いることも可能である。
本発明にかかる電子写真用部材の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
図3(a)および(b)は、エンドレスベルト形状を有する電子写真用部材(以下、「電子写真用ベルト」ともいう)の斜視図である。
図3(a)に示す電子写真用ベルト6は、樹脂層301のみからなる単層構造を有する。そして、樹脂層301は、マトリックス樹脂としての変性ポリアルキレンテレフタレートと、イオン液体と、を含む。
また、図3(b)に示す電子写真用ベルト6は、基材303と該基材上(外周面上)の樹脂層301とからなる積層構造を有する。
図3(a)及び(b)に示す電子写真用ベルトにおける樹脂層の厚みとしては、特に限定されるものではないが、例えば、10〜700μm、特には、50〜120μmである。
また、図3(b)に示す電子写真用ベルトにおける基材としては、例えば、ニッケル合金やステンレス鋼の如き金属製の基材や、ポリイミド樹脂の如き樹脂製の基材を用い得る。また、基材の厚みとしては、特に限定されるものではないが、例えば、10〜700μm、特には、50〜120μmである。
なお、電子写真用部材の形状は特に制限はなく、エンドレスベルト形状以外に、ローラ形状を有していてもよい。
電子写真用部材の製造方法としては、特に制限はない。例えば、変性ポリアルキレンテレフタレートと、イオン液体と、を含む樹脂組成物をペレット化し、公知の成形方法を用いて成形することで樹脂層とし、この樹脂層を有する電子写真用部材が得られる。成形方法としては、例えば、連続溶融押出成形法、射出成形法、ストレッチブロー成形法、あるいはインフレーション成形法が挙げられる。電子写真用部材には、処理剤の塗布、研磨処理等の表面処理を施してもよい。
また、本発明の一実施形態に係る電子写真用部材の用途は特に制限はないが、例えば、中間転写ベルト、転写搬送ベルト、などに好適に用いられる。特に中間転写ベルトとして好適に使用することができる。
本発明の一実施形態に係る電子写真画像形成装置の一つの例について図1を用いて説明する。図1はエンドレスベルト形状の中間転写部材(以降、「中間転写ベルト」ともいう)を用いた電子写真画像形成装置の説明図である。中間転写ベルトとして、本発明の一実施形態に係る電子写真用部材を具備している。
アルキレンテレフタレート樹脂(ホモ体、商品名:TRN−8550FF;帝人(株)社製、極限粘度=0.77dl/g、ΔHm=−63.6J/g)と、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(商品名:THERMX6761;イーストマンケミカル社製、極限粘度=0.91dl/g、ΔHm=−40.7J/g)とを、モル比で62:38の割合で混合し、300℃で熱溶融混練して、エステル交換反応を生じさせることにより、変性アルキレンテレフタレート樹脂5を得た。変性アルキレンテレフタレート樹脂5の結晶融解エンタルピーΔHmは、−20.5J/gであった。
アルキレンテレフタレート樹脂(ホモ体、商品名:TRN−8550FF;帝人(株)社製、極限粘度=0.77dl/g、ΔHm=−63.6J/g)とポリエチレンナフタレート(商品名:TN8065S,帝人(株)製、極限粘度=0.65dl/g、ΔHm=−56.4J/g)とを、モル比で96:4の割合で混合し、300℃で熱溶融混練して、両樹脂間でエステル交換反応を生じさせて変性アルキレンテレフタレート樹脂6を得た。変性アルキレンテレフタレート樹脂6の結晶融解エンタルピーΔHmは47.9J/gであった。
ガラス転移温度(Tg)とは、アモルファス状態の固体において、熱エネルギーにより局所的な分子運動が開始される温度である。示差走査熱量測定装置(DSC823;メトラー・トレド社製)を用いて昇温速度10℃/分で昇温させながら測定したDSC曲線における、比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と、DSC曲線との交点における温度をTgとした。DSC曲線は、JIS K7121−1987に準拠して得る。具体的には、サンプル(10mg)を精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、温度範囲25℃〜300℃で測定した。なお、変性ポリアルキレンテレフタレートNo.1〜6の結晶融解エンタルピー(ΔHm)は、上記DSC曲線における、融解ピークを含むDSC曲線とベースラインとで囲われた面積とした。
二軸押出し機(商品名:TEX30α、(株)日本製鋼所製)を用いて、表4に記載の配合割合にて変性アルキレンテレフタレートとイオン液体とを熱溶融混練して、樹脂組成物を調製した。熱溶融混練温度は220℃以上、240℃以下の範囲内とした。また、二軸押出し機のスクリュ回転数は、300rpm、吐出量は、100kg/hとし、また、熱溶融混練時間は5分とした。得られた樹脂組成物をペレット化し、温度140℃で6時間乾燥させた。
次に、2次ブローブロー成形装置に得られたブローボトルをセットし、ニッケル製円筒金型を装着した。そして、エアー圧力0.1MPaをブローボトル内に印加し、外部にエアーが漏出しないよう調整してブローボトルを金型内面に転写させ、円筒金型を回転させながら、加熱ヒータにて円筒金型を200℃で計60秒間均一に加熱した。その後、この円筒金型をエアーで常温まで冷却し、ボトル内に印加された圧力を解除し、ブローボトルを得た。このブローボトルの両端をカットすることにより、エンドレスベルト形状の、単層構成の電子写真用ベルトを得た。得られた電子写真用ベルトの厚みは70μm、周長は792.0mmであった。
電子写真用ベルトから採取した10mgのサンプルを用いた以外は、前記DSC測定に記載した方法と同じ方法にてDSC測定を行ってDSCチャートを得た。得られたDSCチャートから、変性アルキレンテレフタレートNo.1とイオン液体1とを含む樹脂層のTgを求めた。
電子写真用ベルトを60℃の環境下で1時間放置した。放置前後の電子写真用ベルトの両端部の周長を測定して、2点の収縮量を計算し、その平均値を部材収縮量とした。
測定装置は、高抵抗計(商品名:ハイレスタUP MCP−HT450型、(株)三菱化学アナリテック製)の主電極の内径が50mm、ガード・リング電極の内径が53.2mm、外径が57.2mmのプローブ(商品名:UR−100、(株)三菱化学アナリテック製)を用いてJIS−K6911に準拠する形で測定した。電子写真用ベルトの外表面に置いた主電極およびガード・リング電極間に電圧250Vを10秒間、印加し、電子写真用ベルトの周方向の任意の4箇所について表面固有抵抗率を測定し、その平均値を電子写真用ベルトの表面固有抵抗率(ρs)として採用した。
樹脂組成物の材料の配合割合を表4に記載したとおりとした以外は、実施例1と同様にして電子写真用ベルトを得た。これらの電子写真用ベルトを、実施例1に係る電子写真用ベルトと同様に評価した。
実施例1〜9に係る電子写真用ベルトの評価結果を表5に示す。なお、表5には、各電子写真用ベルトに含まれる変性ポリアルキレンテレフタレートのみのTgを併せて記載した。
樹脂組成物の材料の配合割合を表6に記載したとおりとした以外は、実施例1と同様にして電子写真用ベルトを作製し、評価した。
1次ブロー時のプリフォーム加熱温度を100℃として樹脂組成物の材料の配合割合を表6に記載したとおりとした以外は、実施例1と同様にして電子写真用ベルトを作製し、評価した。
熱溶融混練温度を260℃以上280℃以下、1次ブロー時のプリフォーム加熱温度を100℃として樹脂組成物の材料の配合を表6に記載したとおりとした以外は、実施例1と同様にして電子写真用ベルトを作製し、評価した。
比較例1〜6に係る電子写真用ベルトの評価結果を表7に示す。
2 帯電装置
3 露光装置
4 現像装置
5 1次転写ローラ
6 電子写真用ベルト(中間転写ベルト)
7 記録材
8 レジストローラ対
9 2次転写ローラ
12 クリーニング装置
20 テンションローラ
21 対向ローラ
22 駆動ローラ
28 転写バイアス印加手段
29 転写高圧検知手段
Claims (12)
- 樹脂層を有する電子写真用部材であって、
該樹脂層は、変性ポリアルキレンテレフタレートを含み、
該変性ポリアルキレンテレフタレートは、
酸由来の構成単位として、ベンゼン環よりも嵩高い環構造またはビフェニル構造を有する第一の構成単位、および、アルコール由来の構成単位として、環構造を有する第二の構成単位、の少なくとも一方を有し、かつ、
結晶融解エンタルピー(ΔHm)が、−40J/g以上、−20J/g以下であり、
該樹脂層は、アニオンおよびカチオンを更に含み、
該アニオンは、構造式(1)で示される構造を有し、:
該カチオンは、構造式(2)〜(6)で示されるカチオンから選択される少なくとも1つであることを特徴とする電子写真用部材:
- 前記第一の構成単位が有する前記嵩高い環構造が、ナフタレン環およびアントラセン環の少なくとも一方である請求項1に記載の電子写真用部材。
- 前記酸が、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸及びアントラセンジカルボン酸から選択される少なくとも一つである請求項1または2に記載の電子写真用部材。
- 前記第二の構成単位中の前記環構造が、シクロアルカン構造およびベンゼン環構造の少なくとも一方である請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子写真用部材。
- 前記アルコールが、脂環族ジオール及び芳香族ジオールから選択される少なくとも一つである請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子写真用部材。
- 前記脂環族ジオールが、シクロヘキサンジオール又はシクロヘキサンジメタノールを含む請求項5に記載の電子写真用部材。
- 前記芳香族ジオールが、キシレンジオール、キシリレングリコール、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシビフェニル、ナフタレンジオール、ビスフェノールA及びジヒドロキシジフェニルエーテルを含む請求項5に記載の電子写真用部材。
- 前記電子写真用部材が、樹脂層のみからなる単層構造を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子写真用部材。
- 前記電子写真用部材が、基材と、該基材上の前記樹脂層とを有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子写真用部材。
- 前記電子写真用部材が、エンドレスベルト形状を有する電子写真用ベルトである請求項1〜9のいずれか一項に記載の電子写真用部材。
- 請求項1〜10のいずれか一項に記載の電子写真用部材を具備する電子写真画像形成装置。
- 前記電子写真用部材を中間転写部材として具備する請求項11に記載の電子写真画像形成装置。
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