JP2004330711A - 自動車内装材用基材および自動車内装材 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐熱性樹脂を基材樹脂とした非常に軽量でかつガラスフリーにて、適度な難燃性を保持する事などによる安全性、要求される諸特性、環境適合性などを満足させる自動車内装材用基材および自動車内装材を提供する。
【解決手段】耐熱性樹脂を炭化水素系発泡剤で、押出し発泡成形して得られた発泡シートの片面に、少なくとも合成繊維および再生繊維を含む不織布からなる表皮材が接着剤層を介して積層され、該表皮材が積層された面の反対面に、異音防止層として異音防止フィルムまたは不織布が積層されてなる自動車内装材用基材に関する。さらに本発明は、自動車内装材用基材からなる自動車内装材に関する。
【選択図】 なし
【解決手段】耐熱性樹脂を炭化水素系発泡剤で、押出し発泡成形して得られた発泡シートの片面に、少なくとも合成繊維および再生繊維を含む不織布からなる表皮材が接着剤層を介して積層され、該表皮材が積層された面の反対面に、異音防止層として異音防止フィルムまたは不織布が積層されてなる自動車内装材用基材に関する。さらに本発明は、自動車内装材用基材からなる自動車内装材に関する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車内装材用基材および自動車内装材に関する。さらに詳しくは、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂(以下「変性PPE系樹脂」と記す。)を基材とする発泡シートを用いたガラスフリーで軽量、かつ成形性に優れ、安定した品質と環境適合性、耐燃焼性などの安全性を兼ね備えた自動車内装材用基材および自動車内装材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車内装材として、ウレタンフォームにガラス繊維を積層したシートあるいはポリプロピレン樹脂にガラス繊維を混合または積層した積層シートが広く用いられ、成形加工性・耐熱特性に優れているという特徴がある。これらの自動車内装材は、ガラス繊維を構成材料とするため、環境適合性(すなわちリサイクル性、とくにサーマルリサイクル性)や、軽量化が図れず燃費が上昇することによるCO2量の増加という面においても環境適合性に劣るものであった。近年、自動車のさらなる燃費向上に対し、より一段の自動車内装材の軽量化が求められている。
【0003】
また、自動車の内装材に対しては、火災発生時に車内に取り残された人身の安全確保のため難燃規制が課せられているので、ガラスフリーであって難燃性に劣る発泡積層シートでは、規制に合致する難燃性を得るための種々の工夫を行う必要がある。より環境に優しく、安価であって有効な自動車の内装材を得るために、積層シートに難燃剤を添加する方法が検討されたが、製造が煩雑であり材料コストや製造コストの上昇を引き起こす。また、難燃性を得るために天然繊維および難燃性の熱可塑性樹脂被膜を用いる方法も開示されているが(たとえば、特許文献1参照)、現在、求められている難燃性を得るために、難燃性の熱可塑性樹脂被膜を用いることは、最近の環境適合性を求める要請に反する結果となるとともに、材料コストや製造コストの上昇にも繋がる。
【0004】
また、発泡積層シートを使用して成形された自動車内装材は、表皮材を積層する際、安価で耐熱性が適度にある接着剤として、ポリオレフィン系ホットメルト接着剤が多用されている。このポリオレフィン系ホットメルト接着剤はベース樹脂であるポリオレフィン樹脂が種々の表皮材との接着を維持している。一方、自動車内装用基材に対してはアミド系またはエステル系の添加剤により比較的高温での表皮材との接着性を維持させている。しかし、100℃程度の高温に耐えうる表皮材との接着性が得られていない。
【0005】
さらに、最近では自動車のエンジン音の低下や車内の防音効果の向上に伴い、車内の静けさがクローズアップされてきている。たとえば、クーラーなどで車内を急冷した際や、凹凸のある路面での走行時や、急カーブでの走行時などにおいて異音の発生があげられる。これらの異音を防止するために、ウレタン系発泡シートを予め天井用内装材に積層したり、自動車内装材の成形加工時にクラフトテープを貼付して対応している。しかし、いずれの方法も作業が繁雑であったり、材料コストや製造コストの上昇を引き起こすという問題があった。
【0006】
これらの問題のうち、自動車内装材の軽量化、表皮材の接着性、難燃性を解決するために、軽量で耐熱性のある変性PPE系樹脂発泡層の両面に、変性PPE系樹脂非発泡層を積層した発泡積層シートを用いた自動車天井材用発泡積層シート(例えば、特許文献2参照)、さらには、異音を防止するために、該発泡積層の片面に表皮材が接着剤層を介して積層され、該表皮材が積層された面の反対面に、異音防止層が積層された自動車内装材用基材が提案されている(例えば、特許文献3参照)。変性PPE系樹脂非発泡層を用いたこれらの技術では、かなりの効果を発揮してきているが、自動車内装材用基材の難燃性を維持しつつ、さらなる軽量化を達成することが望まれる。
【0007】
【特許文献1】
特公平4−81505号公報
【特許文献2】
実開平4−11162号公報
【特許文献3】
特開2002−361803号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、変性PPE系樹脂を基材とする発泡シートを用いたガラスフリーで非常に軽量、かつ成形性に優れ、安定した品質と環境適合性、耐燃焼性などの安全性を兼ね備えた自動車内装用基材および自動車内装材を提供する。
【0009】
【課題を解決するための手段】
耐熱性樹脂、とくに、PPE系樹脂とポリスチレン系樹脂(以下、「PS系樹脂」と記す)との混合樹脂である変性PPE系樹脂にイソブタンを含有する発泡剤を用い、溶融混合して得られた発泡層の片面に、特定の表皮材、および表皮材積層面の反対面に異音防止層を形成することで、ガラスフリーで軽量、かつ成形性に優れ、安定した品質と環境適合性を備えた自動車内装材用基材および自動車内装材が得られた。
【0010】
すなわち、本発明は、耐熱性樹脂を炭化水素系発泡剤で、押出し発泡成形して得られた発泡シートの片面に、少なくとも合成繊維および再生繊維を含む不織布からなる表皮材が接着剤層を介して積層され、該表皮材が積層された面の反対面に、異音防止層として異音防止フィルムまたは不織布が積層されてなる自動車内装材用基材に関する。
【0011】
耐熱性樹脂がPPE系樹脂25〜70重量%およびポリスチレン系樹脂75〜30重量%からなる変性PPE系樹脂であることが好ましい。
【0012】
炭化水素系発泡剤がイソブタンであることが好ましい。
【0013】
炭化水素系発泡剤の含有量が耐熱性樹脂100重量部に対し、2〜5重量部であることが好ましい。
【0014】
発泡シートの厚さが1〜5mm、発泡倍率が3〜20倍、発泡シートの目付が100〜300g/m2であることが好ましい。
【0015】
表皮材が、ポリエステル系繊維85〜98重量%、レーヨン系繊維15〜2重量%からなり、目付が100〜350g/m2である不織布からなることが好ましい。
【0016】
接着剤層が、融点が100℃〜160℃、かつ結晶化エネルギーが35〜100J/gである結晶性ポリオレフィン系樹脂を基材とするホットメルト接着剤、または、結晶性ポリオレフィン系フィルムとポリスチレン系フィルムとの積層フィルムからなることが好ましい。
【0017】
異音防止層としての異音防止フィルムまたは不織布の目付が、10〜100g/m2であることが好ましい。
【0018】
自動車内装材が、自動車内装材用基材からなることが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明は、耐熱性樹脂を炭化水素系発泡剤で、押出し発泡成形して得られた発泡シートの片面に、少なくとも合成繊維および再生繊維を含む不織布からなる表皮材が接着剤層を介して積層され、該表皮材が積層された面の反対面に、異音防止層として異音防止フィルムまたは不織布が積層されてなる自動車内装材用基材に関する。
【0020】
また、本発明は、自動車内装材用基材からなる自動車内装材に関する。
【0021】
本発明の自動車内装材用基材および自動車内装材を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係わる自動車内装材用基材および自動車内装材の断面の構成を示している。耐熱性樹脂を基材樹脂とする発泡シートである発泡層10の片面に、異音防止層用接着剤層12を介して異音防止層14が積層され、その反対側の表面に表皮接着剤層16を介して表皮材20が積層されてなる。
【0023】
図2は、本発明の一実施形態に係わる自動車内装材用基材および自動車内装材の断面の構成を示している。耐熱性樹脂を基材樹脂とする発泡シートである発泡層10の片面に、異音防止層14が積層され、その反対側の表面に表皮接着剤層16を介して表皮材20が積層されてなる。
【0024】
発泡シートである発泡層10の基材樹脂として使用される耐熱性樹脂として、例示すれば、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−イタコン酸共重合体等の耐熱性ポリスチレン系樹脂;ポリスチレンあるいは耐熱性ポリスチレンとポリフェニレンエーテル(PPE)とのブレンド体、PPEへのスチレングラフト重合体等のスチレン・フェニレンエーテル共重合体等の変性PPE系樹脂、ポリカーボネート樹脂;ポリブチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレートで例示されるポリエステル系樹脂などがあげられる。これらの樹脂は2種以上を用いることもできる。なかでも、耐熱性、剛性等の品質に優れ、加工性および製造が容易である点で、変性PPE系樹脂が好ましい。
【0025】
変性PPE系樹脂は、PPE系樹脂とPS系樹脂との混合樹脂であることが好ましい。
【0026】
変性PPE系樹脂中のPPE系樹脂の具体例としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチルフェニレン−4−エーテル)、ポリ(2,6−ジエチルフェニレンー1,4−エーテル)、ポリ(2,6−ジエチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−n−プロピルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−n−ブチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−ブロムフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−エチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)などがあげられ、これらは単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0027】
また、PPE系樹脂に重合、好ましくはグラフト重合させるスチレン系単量体の具体例としては、たとえばスチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレンなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせてもよい。これらのなかでも、汎用性、コストの点で、スチレンが好ましい。
【0028】
変性PPE系樹脂中、PPE系樹脂と混合樹脂を形成するPS系樹脂は、スチレンまたはその誘導体、例えばα−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレンなどを主成分とする樹脂があげられる。したがって、PS系樹脂はスチレンまたはスチレン誘導体だけからなる単独重合体に限らず他の単量体と共重合することによって作られた共重合体であってもよい。
【0029】
発泡シートである発泡層10に使用される基材樹脂として、変性PPE系樹脂を使用する場合は、PPE系樹脂が、通常25〜70重量%、PS系樹脂が75〜30重量%が好ましく、さらに好ましくは、PPE系樹脂が35〜60重量%、PS系樹脂が65〜40重量%、特に好ましくは、PPE系樹脂38〜58重量%、PS系樹脂が62〜42重量%である。変性PPE系樹脂中のPPE系樹脂が25重量%より少ないと、耐熱性が劣る傾向にあり、PPE系樹脂が70重量%をこえると、加熱流動時の粘度が上昇し発泡成形が困難になる傾向がある。
【0030】
発泡シートである発泡層10を得る際に使用される炭化水素系発泡剤としては、揮発性発泡剤が好ましく、具体的にはエタン、プロパン、ブタン、ペンタンなどがあげられる。なかでも、発泡剤の溶解度を示すカウリブタノール値(KB値)が20以上、50以下である炭化水素系発泡剤が好ましい。また、この範囲よりもKB値の高いものと低いものとを2種以上適宜混合して前記範囲としたものも使用することができる。前記発泡剤の具体例のなかでも、発泡剤の適度な溶解性および発泡剤の逸散性が小さく、発泡層の経時変化に伴う発泡性の変化が小さい点で、イソブタン、または、イソブタンとノルマルブタンの混合体であって、イソブタンの比率が高いものが好ましい。発泡剤がイソブタンとノルマルブタンの混合体である場合は、混合体中のイソブタンの含有量は、50重量%以上が好ましい。50重量%より少ないと発泡剤の逸散性が大きく、発泡層の経時変化に伴う発泡性の変化が大きくなる傾向がある。
【0031】
炭化水素系発泡剤の含有量が耐熱性樹脂100重量部に対し、2〜5重量部であることが好ましい。2重量部より少ないと成形時の二次発泡倍率が低くなりすぎることも有り得、良好な成形性を得るのに影響を与える傾向があり、5重量部を超えると押出し発泡が不安定になったり、発泡シートの表面荒れが発生する傾向がある。
【0032】
耐熱性樹脂を基材樹脂とする発泡シートである発泡層10(1次発泡層)の厚さとしては、1〜5mmが好ましく、さらには1.5〜3.5mmが好ましい。発泡シートである発泡層10(1次発泡層)の厚さが1mmより小さいと、強度および断熱性に劣り、発泡シートに異音防止層を積層した自動車内装材用発泡積層シートとして適当でない傾向がある。一方、5mmを超えると、成形加熱時に熱がかかる際、発泡(2次発泡)するが、発泡層10の厚み方向の中心部まで伝わり難く、そのため充分な加熱が行えず、成形性が低下する傾向がある。また、充分な加熱を行うべく加熱時間を長くすると、発泡層表面のセルに破泡などが生じ、製品として許容できるものが得られ難くなる傾向がある。
【0033】
発泡シートである発泡層10の発泡倍率は3〜20倍が好ましく、さらには5〜15倍が好ましい。発泡層10(1次発泡層)の発泡倍率が3倍より低いと、柔軟性に劣り、曲げなどによる破損が生じ易く、また軽量化の効果が少なくなる傾向がある。発泡層10(1次発泡層)の発泡倍率が20倍をこえると、強度が低下し、中心部まで加熱しにくいことにより成形性が低下する傾向がある。
【0034】
発泡シートである発泡層10のセル径は0.05〜0.9mmが好ましく、さらには0.1〜0.7mmが好ましい。セル径が0.05mmより小さいと、充分な強度が得られ難くい傾向があり、0.9mmをこえると、断熱性に劣る傾向がある。
【0035】
発泡シートである発泡層10の独立気泡率は70%以上が好ましく、さらには80%以上が好ましい。独立気泡率が70%より低いと、断熱性、剛性に劣るとともに、成形加熱によって目的とする2次発泡倍率を得ることが困難となり、成形性に劣る傾向がある。
【0036】
発泡シートである発泡層10の目付は100〜300g/m2が好ましく、さらには120〜200g/m2が好ましい。目付が100g/m2より低いと、内装用基材としての剛性が不足し、目付が300g/m2をこえると、重量増による軽量性の効果が低下する傾向がある。
【0037】
発泡シートである発泡層10(1次発泡層)中の残存揮発成分の量は発泡層10の全重量に対して1〜5重量%が好ましく、さらには2〜4重量%が好ましい。残存揮発成分が1重量%より少ないと、2次発泡倍率が低くなりすぎることも有り得るため、良好な成形性を得るのに影響を与える傾向がある。また、残存揮発成分が5重量%をこえると、接着剤層との間に空気だまりが発生したり、経時による寸法安定性が低下する傾向がある。なお、残存揮発成分の量は、ガスクロマトグラフィーにより測定しても良いが、通常、発泡層10の試験片を耐熱性樹脂が軟化をはじめる温度以上で分解温度以下の温度範囲で加熱して揮発成分を充分に揮発させ、加熱前後の重量差により測定することができる。
【0038】
発泡シートである発泡層10は、成形時に延伸され扁平となったセルが加熱時に扁平率を解消する方向に形状を変化させることによる加熱収縮を発現させる。その加熱収縮が結果的に耐熱変形を起こす。そこで、耐熱変形等の形状変化を抑制するためには、発泡層10のセル形状としては、発泡層の表裏面表層部のセル密度アップを、押出し発泡シート化時に表裏面とも均一に冷却することでハードスキン層として形成することにより、発泡層の表層部を剛直化することで加熱収縮の量を抑制することができる。さらに、発泡層10のセル内圧の変化を発泡シート化から表皮材20および異音防止層14を積層加工するまでの養生時間を30日以上確保することにより、セル内圧の変化をなるべく小さくすることで加熱収縮量を小さくできる。さらに、加熱収縮による耐熱変形量は、二次加熱成形時の加熱温度を135〜155℃の範囲に制御し、発泡層10のセルに成形時の歪みを与えない条件にて成形加工することにより、非発泡層を積層しない場合でも小さくすることができる。
【0039】
本発明において使用される発泡シートである発泡層10の基材樹脂には、必要に応じて気泡調整剤、耐衝撃性改良剤、滑剤、酸化防止剤、静電防止剤、顔料、安定剤、臭気低減剤、タルクなどを添加してもよい。
【0040】
つぎに、発泡層10と異音防止層14との積層について説明する。
【0041】
本発明に係わる自動車内装材用基材および自動車内装材は、図1に例示するように、発泡シートである発泡層10の表面に異音防止層用接着剤層12を介して、異音防止層14が設けられている。発泡シートは発泡層10のみから構成されている。また、発泡層10の表面に異音防止層用接着剤層12が直接、接触している。このような構成にすることにより、異音防止層用接着剤層12が発泡層10の加熱収縮を抑制する効果の一つとしての働きを有する。
【0042】
この異音防止層14として、基材樹脂がポリオレフィン系樹脂やポリアセタール系樹脂からなるフィルムを用いた場合には、異音防止効果を有するので、以下、異音防止フィルムと表現する。この異音防止フィルムを、自動車に装着した場合、車内をクーラーなどで急冷した際、また、凹凸のある路面での走行中や急カーブでの走行中に発生する異音を防止する効果を発揮する。
【0043】
異音防止フィルムの基材樹脂としては、摺動性に優れる結晶性樹脂であるポリオレフィン系樹脂、ポリアセタール系樹脂が好ましい。なかでも、コスト、汎用性、フィルム加工の容易さの点から、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0044】
異音防止フィルムの基材樹脂として使用されるポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状ポリエチレンなどの単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンとメタアクリレート、アクリレート、ブテンなどのオレフィンと共重合できる単量体との共重合体、またこれらの混合物などからなるポリエチレン系樹脂、プロピレンの単独重合体、プロピレン酢酸ビニル共重合体、プロピレンとメタアクリレート、アクリレート、ブテンなどのオレフィンと共重合できる単量体との共重合体、またはこれらの混合物などからなるポリプロピレン系樹脂が好ましい。なかでも、摺動性が良好で、しかも材料費が安価である点で、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状ポリエチレン、ホモポリプロピレン、あるいはエチレン−プロピレン共重合がさらに好ましい。
【0045】
また、異音防止フィルムをカーボンブラックなどの顔料などの着色剤で着色することにより、耐光性を増すことが可能となるので、サンルーフを有する車などに好ましく使用できる。
【0046】
異音防止フィルムを発泡層10に積層する方法としては、異音防止層用接着剤層12を介して積層する方法(図1)、異音防止層用接着剤層12を介さずに積層する方法(図2)があげられる。
【0047】
異音防止層用接着剤層12を介して積層する際に、使用される接着剤層としては、少なくとも分子間力、水素結合、共有結合などの化学的な結合で発泡層10と異音防止フィルムを接着させる働きを有するものが用いられる。
【0048】
異音防止層用接着剤層12の具体例としては、酢酸ビニル系、セルロース系、アクリル系、ポリアミド系、ポリビニルアセテート系などの熱可塑性接着剤、ウレタン系、メラミン系、フェノール系、エポキシ系、アクリル系などの熱硬化性接着剤、クロロプレンゴム系、ニトリルゴム系、シリコーンゴム系などのゴム系接着剤、でんぷん、たん白質、天然ゴムなどの天然物系接着剤、ホットメルト接着剤があげられる。また、ホットメルト接着剤の具体例としては、ポリオレフィン系、変性ポリオレフィン系、ポリウレタン系、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂系、ポリアミド系、ポリエステル系、熱可塑性ゴム系、スチレン−ブタジエン共重合体系、スチレン−イソプレン共重合体系などの樹脂を成分とするものがあげられる。
【0049】
異音防止フィルムを発泡層10に異音防止層用接着剤層12を介さずに積層するには、次に示すごとき積層フィルムからなる異音防止フィルムを使用することが好ましい。すなわち、ポリオレフィン系樹脂フィルム−ポリスチレン系樹脂フィルムからなる積層フィルムを用い、発泡層10に対して効果的な熱接着が可能なポリスチレン系樹脂を基材樹脂とするフィルムを室内側に配し、室外側に摺動性に優れるポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とするフィルムを配し、この積層フィルムを、発泡層10に熱接着することが好ましい。
【0050】
ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とするフィルムの厚さは10〜100μmが好ましく、さらには20〜50μmが好ましい。ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とするフィルムの厚さが10μmより薄いと、異音防止効果が得られない傾向がある。一方、100μmをこえると、ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とするフィルム層の成形時の歪みによって、内装材に耐熱変形が生じたり、コストが無駄に増加したりする傾向がある。
【0051】
ポリスチレン系樹脂を基材樹脂とするフィルムの厚さは10〜100μmが好ましく、さらには20〜50μmが好ましい。ポリスチレン系樹脂を基材樹脂とするフィルムの厚さが10μmより薄いと、発泡層10との安定した接着性が得られない場合がある。一方、100μmをこえると、大量の熱量を与えれば非発泡層14との安定した接着性を得ることができるが、大幅な生産性の低下を引起こしたり、ポリスチレン系樹脂を基材樹脂とするフィルム層の成形時の歪みによって、内装材に耐熱変形が生じる傾向がある。
【0052】
異音防止層14である異音防止フィルムは、10〜100g/m2の目付を有していることが好ましく、さらには、20〜50g/m2の目付を有していることが好ましい。10g/m2より低いと、有効な異音防止効果が得られなくなる傾向があり、一方、100g/m2をこえると、重量増による軽量性の効果が低下するだけでなく、成形時の歪みによって、内装材に耐熱変形が生じたり、コストが無駄に増加したりすることがある。
【0053】
さらに、異音防止層14は、不織布層として設けることもできる。この異音防止層14である不織布層は、自動車に装着した場合、車内をクーラーなどで急冷した際、また、凹凸のある路面での走行中や急カ−ブでの走行中に発生する異音を防止するのに効果を発揮する。
【0054】
一方で、本発明の自動車内装材は異音防止層14である不織布層を介して自動車に装着されるため、特に発泡層10と異音防止層14である不織布層の界面において、自動車内装材の自重を支え、長期間の使用、過酷な環境下の使用においても脱落のない安定な接着性が求められる。
【0055】
異音防止層14である不織布層は、原料繊維を、接着剤、接着性繊維、あるいは機械的方法により接合させた布状物であればいずれの種類でも用いることができる。原料繊維の種類も特に限定されず、合成繊維、半合成繊維、あるいは天然繊維のいずれも用いることができる。具体的には、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド(ナイロン)、ポリアクリロニトリルなどの合成繊維や、羊毛、木綿、セルロースなどの天然繊維を使用することができるが、なかでもポリエステル繊維が好ましく、特に耐熱性の高いポリエチレンテレフタレート繊維が好ましい。またこれらの繊維を単独で使用することも、2種以上組み合わせて使用することもできる。不織布の種類は、その製造加工方法により、接合バインダー接着布、ニードルパンチ布、スパンボンド布、スプレファイバー布、ウォーターパンチ布、あるいはステッチボンド布があげられ、いずれの不織布も用いることができる。なかでも、フィラメントがけん縮性があり、強度が高く、柔らかな風合いを有し、音を吸収するのに都合がよい点で、長繊維フィラメントからなるスパンボンド布、ウォーターパンチ布が好ましい。
【0056】
異音防止層14である不織布層は、品質およびコストを考慮すると、10〜100g/m2の目付を有していることが好ましく、さらには20〜40g/m2の目付を有していることが好ましい。10g/m2より低いと、不織布層を設けた箇所において、発泡層10の表面が部分的に露出し、有効な異音防止効果などは得られない傾向がある。一方、100g/m2をこえると、不織布層の成形歪みによって、内装材に耐熱変形が生じたり、コストが無駄に増加する傾向がある。
【0057】
異音防止層14である不織布層を発泡層10に積層する方法としては、異音防止フィルムと同様に異音防止層用接着剤層12を介して積層する方法(図1)、異音防止層用接着剤層12を介さずに積層する方法(図2)があげられる。
【0058】
異音防止層用接着剤層12を介して積層する際に、使用される異音防止層用接着剤層12としては、少なくとも分子間力、水素結合、共有結合などの化学的な結合で発泡層10と異音防止層14である不織布層を接着させる働きを有するものが用いられる。具体的には、異音防止フィルムを発泡層10に積層する方法であげた異音防止層用接着剤層12の具体例と同じ接着剤があげられる。
【0059】
異音防止層用接着剤層12を介さず積層する場合には、異音防止用の不織布としては、原料繊維を、接着剤、接着性繊維と混合(本発明では、簡単に混紡と称する場合がある)したものが用いられる。
【0060】
接着性繊維としては、次に述べるごとき芯鞘型およびサイドバイサイド型の複合繊維が用いられる。この接着性繊維である芯鞘型繊維の芯成分には高融点繊維が、また鞘成分には低融点繊維が用いられる。具体的には、芯成分としてポリエチレンテレフタレート等を成分とする高融点繊維と、鞘成分として融点が90〜140℃であるポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂等を成分とするものや、ポリエチレンテレフタレートをイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸等の多価カルボン酸等で共重合させた融点90〜140℃を有する共重合ポリエステル系繊維を成分とする繊維とから構成される芯鞘型の複合繊維等があげられる。
【0061】
これは、異音防止層用接着剤層12を介さず異音防止用の不織布を発泡層に積層する場合、熱ロールなどによる加熱により異音防止用の不織布に含まれる接着剤、接着性繊維を熱溶融させて発泡層10に積層することでその接着安定性を保持させる。
【0062】
つぎに、発泡層10と表皮材20との積層について説明する。
【0063】
本発明の自動車内装材は、例えば、図1に示すように、発泡層10の表面に表皮接着剤層16を介して表皮材20が積層されている。発泡シートは発泡層10のみから構成されている。また、発泡層10の表面に表皮接着剤層16が直接、接触している。このような構成にすることにより、表皮接着剤層16が発泡層10の加熱収縮を抑制する効果の一つとしての働きを有する。
【0064】
表皮材20としては、少なくとも合成繊維および再生繊維を含む不織布であれば、不織布からなるもの、ニットと不織布の構成体からなるもの、ニットとウレタンと不織布の構成体からなるものなど、自動車の内装材用の表皮材20として不織布を構成要素としたものはいずれも用いることができる。
【0065】
表皮材20の主たる構成要素として機能する不織布層は、原料繊維を、接着剤、接着性繊維、あるいは機械的方法により接合または絡合させた布状物、シート状物であればいずれの種類でも用いることができる。
【0066】
表皮材20としての不織布を構成する原料繊維としては、合成繊維と再生繊維とを混紡して得られる不織布を用いることが好ましい。
【0067】
本発明でいう合成繊維とは、合成繊維と半合成繊維とを含めた概念で用いている。具体的には、合成繊維としては、ポリエステル系、ポリプロピレン系、ポリアミド(ナイロン)系、ポリアクリロニトリル系、ポリ塩化ビニル系、ポリ塩化ビニリデン系などがあげられる。半合成繊維としては、セルロース系、蛋白質系などがあげられ、これら繊維の1種または2種以上混合したものを使用できる。再生繊維としては、レーヨン系、特殊レーヨン系、キュプラなどからなる1種または2種以上混合したものを使用することができる。
【0068】
不織布を構成する原料繊維の中でも、強度、耐熱性、耐光性および燃焼性の点から、合成繊維として、ポリエステル系繊維を使用することが好ましく、特に耐熱性の高いポリエチレンテレフタレート繊維が最も好ましい。さらに、該合成繊維に混紡する再生繊維として、レーヨン系繊維が経済性の面で最も好ましい。
【0069】
不織布の種類は、その製造加工方法により、接合バインダー接着布、ニードルパンチ布、スパンボンド布、スプレファイバー布、ウォーターパンチ布、あるいはステッチボンド布があげられ、いずれの不織布も用いることができる。このうち、フィラメントがけん縮性があり、強度が高く、柔らかな風合いを有する点より、ニードルパンチ布、ウォーターパンチ布が好ましい。
【0070】
表皮材20として用いる不織布は、好ましい態様として、ポリエステル系繊維と再生繊維を混合するが、その場合の再生繊維の混合割合は、表皮材20の総重量の2〜15重量%が好ましく、5〜10重量%がより好ましい。とくに、ポリエステル系繊維85〜98重量%、レーヨン系繊維2〜15重量%が好ましい。再生繊維の含有量が2重量%より少ないと、表皮材の難燃性の確保が困難となり易く、15重量%をこえると、難燃性に優れるが、耐光性の悪化につながり易い傾向がある。
【0071】
表皮材20として用いる不織布は、品質およびコストを考慮すると、100〜350g/m2の目付けを有していることが好ましく、さらには125〜200g/m2の目付けを有していることが好ましい。100g/m2より小さいと、内装材としての充分な感触を得ることができない傾向がある。350g/m2をこえると、表皮材の成形歪みが熱変形に影響を与える傾向がある。
【0072】
表皮材20を構成する要素として用いることのあるニットとしては、トリコット、ダブルラッセル、ビロードなど、自動車内装材に使用されるものであればいずれも用いることができる。
【0073】
ニットは、一本の糸を使用し、ループを連続的に平面的につづって編み上げたものであり、このループが集合した構造を有しているため、伸縮性に富み、柔軟性があり、しわや折り目がつき難く、多孔性のため保温性が優れており、比重が少なくボリューム感の割には軽い仕上がりを有することができる。ニットは編み方によりさまざまな風合いをもったものに仕上がり、特にトリコットはループを布の厚さ方向に連続してつづったものであるため、前述した特長のほかに、編み地がより緻密に仕上がり、フィット感に優れるため、自動車内装用に特に好ましく使用される。
【0074】
ニットを構成する原料繊維は、前記不織布と同様な合成繊維および半合成繊維や天然繊維、再生繊維などが使用される。
【0075】
表皮材20として用いる不織布の原料繊維を相互に接合させ、そして、表皮材20の耐磨耗性を確保するために、接着剤としてバインダー樹脂を表皮材20の表面または裏面より塗布、塗工などにより、含浸させる方法が一般に行われている。この場合、一般的には、難燃性を確保するために、当該バインダー樹脂に難燃剤を混合して使用するか、または、ハロゲン含有バインダー樹脂を用いる方法がとられる。しかしながら、こうした方法においては、難燃剤を含むバインダー樹脂または、ハロゲン含有バインダー樹脂を表皮材20の意匠面(表面)より含浸しようとすると、難燃剤または樹脂の影響により表皮材20の調色が非常に困難となる。従って、難燃剤を含むバインダー樹脂、または、ハロゲン含有バインダー樹脂を含浸する場合においては、表皮材20の意匠反対面(裏面)より含浸せざるを得ない。また、表皮材20の耐磨耗性を確保のため、難燃剤を含むバインダー樹脂、または、ハロゲン含有バインダー樹脂の量を増やさざるを得ない。
【0076】
こうした事実に対し、本発明では、変性PPE系樹脂などの耐熱性樹脂を基材樹脂とする発泡積層シートを用い、かつ、表皮材20として合成繊維中に再生繊維を混紡した不織布を用いることにより、難燃性が向上する。このため、不織布の原料繊維を接合させるバインダー樹脂として、難燃剤を含むバインダー樹脂、または、ハロゲン含有バインダー樹脂を用いることなく、難燃剤非含有バインダー樹脂、または、ハロゲン非含有バインダー樹脂を用いることが可能となる。
【0077】
これらバインダー樹脂は透明性が良いことから調色性に優れており、不織布の意匠面(表面)より含浸でき、少量のバインダー樹脂の含浸のみで表皮材20としての不織布の耐磨耗性を確保できるようになる。本発明ではこうした構成により、良好な難燃性が確保できると共に、軽量にして意匠性に優れ、環境適合性に優れた良好な表皮材20が使用できる。
【0078】
ここで、表皮材20の意匠面(表面)というのは、本発明の自動車内装材用発泡積層シートを自動車内装材として使用した場合、自動車の室内側面という意味である。従って、表皮材20の意匠反対面(裏面)というのは、自動車の室外側面という意味である。
【0079】
前記バインダー樹脂としては、水溶性、溶剤可溶性、ビスコース液、エマルジョン、合成樹脂粉末などのタイプがあげられる。なかでも、耐水性、柔軟性、作業性の点から、エマルジョンが好ましい。エマルジョンタイプとして、アクリロ・ニトリル・ブタジエンラテックス、スチレン・ブタジエンラテックス、アクリレート・ラテックス、酢酸ビニル系ラテックスなどが用いられ、これらは1種または2種以上の混合物としても用いることができる。
【0080】
本発明で使用される表皮接着剤層16が結晶性を有するホットメルト系接着剤の場合は、ホットメルト系接着剤の融点(JIS K 7121 プラスチックの転移温度測定方法に準じた測定)は100〜160℃であることが好ましい。さらに、2次発泡積層成形体を得る2次成形時の成形性およびサーマルコストの点から、融点が100〜125℃であることがより好ましい。融点が100℃より低いと、得られた自動車内装材用基材が100℃の高温下で表皮材20の剥離が発生する傾向がある。融点が160℃をこえると、表皮材20との接着を付与するために接着剤層22の溶融する温度、つまり表皮接着剤層16が積層された自動車内装材用基材の加熱温度を高くする必要があり、自動車内装材用基材の発泡層10が破泡し、外観不良および自動車内装材用基材の剛性が低下する傾向がある。
【0081】
また、該結晶性を有するホットメルト系接着剤は、その結晶化エネルギー(JIS K 7121 プラスチックの転移温度測定方法に準じた測定)が35J/g以上であることが好ましい。さらには35〜100J/gが好ましい。結晶エネルギーが35J/gより低いと、自動車内装材用積層発泡シートと表皮材20との接着安定性が悪く、表皮材20が剥離する傾向がある。一方、結晶化エネルギーが100J/gをこえると、自動車内装材用積層発泡シートから2次成形により2次発泡積層成形体を得るとき、表皮接着剤層16が積層された自動車内装材用積層発泡シートは、表皮材20との接着性を付与するために、多大の熱量を必要とする。
【0082】
前記ホットメルト接着剤を用いず、本発明での表皮接着剤層16が結晶性を有する積層フィルムを使用する場合においては、表皮材20側にポリオレフィン系フィルムを、発泡層10側にポリスチレン系フィルムを配したポリオレフィン系フィルム−ポリスチレン系フィルムからなる積層フィルムを用いるのが好ましい。
【0083】
このように、表皮材20との良好な接着性を得るには、結晶性ポリオレフィン系フィルムを用いることが好ましいが、さらに好ましくは線状低密度ポリエチレン系樹脂からなるポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。線状低密度ポリエチレン系樹脂は結晶性を有し、加熱により安定して低粘度状態が維持できるため、表皮材20に、溶融した線状低密度ポリエチレン系樹脂が良好にしみ込むことによるアンカー効果が効果的に発揮され、表皮材20との強固な接着性を示すことが可能となる。
【0084】
ポリオレフィン系フィルムの厚さは15〜100μmが好ましく、さらに20〜50μmが好ましい。ポリオレフィン系フィルムの厚さが15μmより薄いと、加熱により低粘度化したポリオレフィン系フィルムが表皮材20の中に浸透せず、適度なアンカー効果が発揮できず表皮材20との良好な接着性を示さない傾向がある。一方、100μmをこえると、加熱により低粘度化したポリオレフィン系フィルムが大量に表皮材20に浸透し表皮材20の触感を悪化させる。
【0085】
発泡層側の接着においては、効果的に熱接着させるため、同種のポリスチレン系フィルムを用いることが好ましい。なかでも、成形加工時の歪みが抑制できることからハイインパクトポリスチレン系樹脂を用いることが好ましい。
【0086】
ポリスチレン系フィルムの厚さは15〜100μmが好ましい、さらに20〜50μmが好ましい。ポリスチレン系フィルムの厚さが15μmより薄いと、発泡層10との安定した接着性が得られない傾向がある。一方、100μmをこえると、多大の熱量を与えれば発泡層10との安定した接着性を得ることができるが大幅な生産性の低下を引き起こす傾向がある。
【0087】
次に、本発明の自動車内装材の製造法について説明する。本発明において使用される発泡層10(1次発泡層)は、各種の添加剤を加えた基材樹脂として耐熱性樹脂を押出機により150℃〜400℃で溶融・混練し、ついで150〜400℃、3〜50MPaの高温高圧下で耐熱性樹脂100重量部に対して炭化水素系発泡剤2〜5重量部を圧入し発泡最適温度(150〜300℃)に調節して、サーキュラーダイなどを使い低圧帯(通常は大気中)に押出した後、マンドレルなどに接触させて、例えば0.5〜40m/分の速度で引き取りながらシート状に成形し、カット後、巻き取るなどの方法により製造することができる。
【0088】
発泡層10に異音防止層14、異音防止層用接着剤層12を積層する方法としては、予め発泡成形して、供給される発泡層10の上面または下面に、異音防止層14で異音防止層用接着剤層12を挟み込む形で層状に積層し、加熱ローラーで異音防止層14および表皮接着剤層16を加熱軟化させ、冷却ローラーなどによって圧着する方法が好ましい。
【0089】
その理由としては、特に異音防止層14として異音防止用の不織布を使用する場合、発泡層10の基材樹脂との良好な接着性が得られ、自動車に装着した際、長期間の使用、過酷な環境下での使用においても脱落のない安定な接着性が得られること、一工程で発泡層10、異音防止層14および異音防止層用接着剤層12が同時に積層されるため、作業の繁雑さが解消されることにより製造コストの増加を抑制することが可能であること、などがあげられる。
【0090】
なかでも、製造工程を簡略化できる点で、発泡層10の押出発泡シート成形と異音防止層14および表皮接着剤層16をインラインで行って積層する方法が好ましい。
【0091】
表皮材20である不織布層の発泡積層シートとの接着方法としては、あらかじめ表皮接着剤層16を接着した表皮材20を発泡積層シートに熱ロールなどを用いて接着する方法、あらかじめ表皮接着剤層16を接着した発泡シートに表皮材20を仮止めし、加熱成形時に成形と接着を同時に行う方法などがあげられる。
【0092】
得られた1次発泡積層シートから自動車内装材である成形した2次発泡積層成形体を成形する方法としては、上下にヒーターを持つ加熱炉の中央に発泡積層シートをクランプして導き、成形に適した温度、たとえば発泡積層シートの表面温度を120〜170℃になるように加熱して2次発泡させたのち、温度調節した金型にて、異音防止層14の設けられた面を自動車の室外側、表皮材20である不織布層の設けられた面を自動車の室内側に配して取り付けるように成形される。
【0093】
成形方法の例としてはプラグ成形、フリードローイング成形、プラグ・アンド・リッジ成形、リッジ成形、マッチド・モールド成形、ストレート成形、ドレープ成形、リバースドロー成形、エアスリップ成形、プラグアシスト成形、プラグアシストリバースドロー成形などの方法があげられる。
【0094】
前記の1次発泡シートを加熱2次発泡させる際には、1次発泡シート(発泡倍率:3〜20倍、好ましくは5〜15倍、厚さ:1〜5mm、好ましくは、1.5〜3.5mm)に対して、通常1.2〜4倍に2次発泡させるが、さらには1.5〜3倍に2次発泡させるのが好ましい(この結果、2次発泡後のシート倍率は、3.6〜80倍、好ましくは7.5〜45倍、さらに好ましくは10〜40倍、厚さは、1.2〜20.0mm、好ましくは、2.25〜10.5mm、さらに好ましくは3.0〜7.0mmとなる)。
【0095】
2次発泡倍率が1.2倍より低いと柔軟性に劣り、曲げ等による破損が生じ易い。2次発泡倍率が4倍をこえると強度が低下する傾向がある。また、2次発泡後の発泡シートの厚さが1.2mmより小さいと強度、断熱性に劣り、自動車内装材用基材として適当でない場合がある。発泡シートの厚さが20mmをこえると、成形賦形時の形状発現性が劣ったり、必要以上に嵩高くなり車室内が狭くなる傾向がある。
【0096】
このようにして得られる自動車内装材の全体の目付けは、225〜850g/m2が好ましく、さらに270〜500g/m2が好ましい。225g/m2より低いと強度が劣り、曲げ等による破損が生じ易い。850g/m2をこえると重量増に伴う取り扱い性(作業者のハンドリング性)が低下し、本発明の課題である軽量性に反する傾向がある。
【0097】
以上、本発明に係わる自動車内装材用基材および自動車内装材の実施態様を種々説明したが、本発明は前記の態様に限定されるものではない。たとえば、自動車内装材用発泡積層シートは用途として電車、航空機、建築物の室内などの内装材用発泡積層シートにも使用することができ、広義に解釈されるべきものである。その他、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施し得るものである。
【0098】
【実施例】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けるものではない。実施例に用いた樹脂を表1に、その他原材料を表2に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
なお表1および表2に示した各符号に関する記載は次の通りである。
PPE :ポリフェニレンエーテル樹脂
PS :ポリスチレン樹脂
LLDPE :線状低密度ポリエチレン樹脂
HIPS :ハイインパクトポリスチレン樹脂
【0102】
実施例で行った評価方法を以下に示す。
【0103】
(発泡層および成形体の厚さ)
1次発泡シート、成形体の幅方向に20ヵ所の厚さを測定し、その測定値の平均値を算出した。
【0104】
(発泡倍率)
1次発泡シートの密度dfをJIS K 7222に準じて測定し、変性PPE系樹脂の密度dpを JIS K 7112に準じて測定し、次式より求めた。
発泡倍率=dp/df
【0105】
(独立気泡率)
ASTMD−2859に準じて評価して求めた(マルチピクノメーター(ベックマン社製)を使用)。
【0106】
(セル径)
発泡層の断面を光学顕微鏡で観察して20個のセル径を測定し、その測定値の平均値を算出した。
【0107】
(目付)
1次発泡シートの押し出し方向の5ヵ所より、100mm×100mmの大きさの試験片を切り出し、それらの重量を測定したのち、平均値を算出し、m2当たりに換算した。
【0108】
(耐衝撃性試験)
プラグ成形後、トリミング型にてトリミングをした自動車内装材の割れを目視にて観察した。
【0109】
(実車耐熱試験)
図3に示すような自動車内装材(幅930mm×長さ1424mm)30を自動車天井部(カットボディ)に装着し、サンバイザー、ルームミラー、ルームランプ、ガニッシュ、ピラーを介して実車と同様となるように固定した。なお、図3中、34はアシストグリップ取付穴、36はサンバイザー取付穴、38はサンバイザー留め取付孔、32はルームミラー取付穴、40は室内灯取付穴である。次に、自動車内装材30を自動車天井部に組み付け、自動車内装材30のフロント端末Aの巾方向中央部に刻印し、刻印した点から基準点までの高さ(h0)を測定した。なお、図3中、Bは自動車内装材30のリア末端を表す。
【0110】
その後、85±2℃に設定した恒温室に、自動車内装材30を取り付けた自動車天井部を投入した後、24時間保持し、恒温室から取り出して室温に戻した後、自動車内装材のフロント端末A部の巾方向中央部に刻印した点と基準点までの高さ(h1)を測定した。初期の高さと耐熱後(恒温室に24時間保持後)の高さの差(h0−h1)より耐熱変形を求めた。さらに自動車内装材の一般部については変形の有無を目視にて確認し、脱落、発泡層と異音防止層および表皮材の浮きの有無確認も目視にて実施した。
【0111】
判定の基準としては、自動車内装材としての実用性を考慮して、以下の基準を用いた。
【0112】
(走行試験)
自動車内装材を自動車に装着させ、通常の自動車に使用方法で1ヵ月間異音の発生、内装材の脱落、ならびに発泡層と異音防止層および表皮材の浮きの発生の有無を調査した。
【0113】
(燃焼試験)
自動車内装材を自動車用材料に適用される自動車安全基準、自動車内装材料の燃焼基準(FMVSS302)に従い、自動車内装材より切出した巾100mm、長さ350mmのサンプル片をn数10にて燃焼速度試験を行った。得られた燃焼速度の中で最大値を燃焼速度とした。
【0114】
(残存揮発成分の量)
発泡層(一次発泡層)の試験片を加熱温度220℃で1時間加熱し、加熱前後の試験片の重量差により残存揮発成分の量を測定した。
【0115】
実施例1
PPE樹脂成分40重量%,PS樹脂成分60重量%となるようにPPE樹脂(A)57.1重量部とPS樹脂(B)42.9重量部とを混合した混合樹脂100重量部に対してiso−ブタンを主成分とする炭化水素系発泡剤(iso−ブタン/n−ブタン=85/15重量%)3.5重量部およびタルク0.32重量部を押出機により混練し、樹脂温度を196℃まで冷却し、圧力10MPaでサーキュラーダイスにより押出し、引き取りロールを介して巻取りロールにロール状に巻き取り、一次発泡層の厚さ2.2mm、一次発泡倍率13.5倍、独立気泡率90%、セル径0.16mm、目付150g/m2の発泡シートの巻物を得た。残存揮発成分の量は、発泡シート全重量に対し4.0重量%であった。
【0116】
次いで、この発泡シートの巻物より発泡層を繰り出しながら、加熱ロールにて発泡層の両面を110℃に予熱し、発泡シートの片面側に異音防止層として接着性繊維を混紡した目付25g/m2のウォーターパンチ不織布(D)を積層し、同時に、異音防止層を積層した反対面側に、融点104℃、結晶化エネルギーが88.9J/gであるポリエチレン系樹脂からなる厚さ30μmのホットメルト接着剤(E)を積層した自動車内装材用基材の積層発泡シートを得た。
【0117】
一方で、ポリエステル繊維2デニール×51mmを90重量%、レーヨン繊維2デニール×51mmを10重量%に配合した面目付145g/m2のウエブを使用し、ニードルパンチング処理をウエブの上下面より300本/cm2施し、ニードルパンチ不織布マットを得た。当該ニードルパンチ不織布マットにアクリルバインダー樹脂10g/m2を塗布により付着せしめ、乾燥熱処理を施し、レーヨン繊維が含有された面目付155g/m2のポリエステル系不織布表皮材(F)を得た。
【0118】
得られたレーヨン繊維が含有されたポリステル系不織布表皮材(F)をポリエチレン系樹脂からなるホットメルト接着剤(E)を介して発泡積層シートに仮止めした1次発泡積層シートの四方をクランプしてオーブンに入れ、発泡積層シートの表面温度が140℃となるように60秒加熱した。その後、ポリステル系不織布表皮材が室内側になるように金型に配置し、金型クリアランス5.0mmでプラグ成形を行い、トリミング、パンチング加工を施し、割れのない外観の良好な自動車内装材を得た。
【0119】
得られた自動車内装材について、実車耐熱試験を行ったところ、耐熱変形量が自動車内装材の端末部で−1.5mm、かつ内装材の一般部に関しても目視で観察されなかった。さらに内装材の脱落および基材と異音防止層および表皮材層の浮きは発生していなかった。さらに、走行試験を行ったところ、異音の発生もなく、内装材の脱落および基材と異音防止層および表皮材の浮きの発生もなかった。一方で、燃焼性試験を実施したところ、燃焼速度75mm/分と非常に良好な難燃性を示した。なお、自動車内装材用基材の積層発泡シートの目付けは205g/m2、自動車内装材の全体の目付けは360g/m2、2次発泡倍率は2.2倍、2次発泡後の発泡シートの厚さは5.6mmであった。
【0120】
実施例2
PPE樹脂成分40重量%,PS樹脂成分60重量%となるようにPPE樹脂(A)57.1重量部とPS樹脂(B)42.9重量部とを混合した混合樹脂100部に対してiso−ブタンを主成分とする発泡剤(iso−ブタン/n−ブタン=85/15重量%)3.5重量部およびタルク0.32重量部を押出機により混練し、樹脂温度196℃まで冷却し、圧力10MPaでサーキュラーダイスにより押出し、引き取りロールを介して巻取りロールにロール状に巻き取り、一次発泡層の厚さ1.9mm、一次発泡倍率13.5倍、独立気泡率86%、セル径0.15mm、目付け120g/m2の発泡シートの巻物を得た。残存揮発成分の量は、発泡シート全重量に対し4.0重量%であった。
【0121】
この発泡シートの巻物を繰り出し、実施例1と同様な方法で発泡シートの片面側に異音防止層として目付25g/m2のPET系繊維からなるウォーターパンチ不織布(D)にポリスチレンラテックス系接着剤(日本ゼオン(株)製Nipol LATEX LX303A)を10g/m2塗布して積層し、異音防止層の形成された自動車内装材用基材の積層発泡シートを得た。同時に、この異音防止層の形成された自動車内装材用基材の積層発泡シートの反対面側に、接着剤層として表皮材側に厚さ25μmの線状低密度ポリエチレン系樹脂フィルムを、発泡層10に厚み25μmのハイインパクトポリスチレン系樹脂フィルムを配した厚み50μmの線状低密度ポリエチレン系樹脂−ポリスチレン系樹脂積層フィルム(LLDPE/HIPSフィルム)(C)を繰り出し、異音防止層の形成された面の反対側面に積層し、自動車内装材用基材の積層発泡シートを得た。
【0122】
一方で、ポリエステル繊維2デニール×51mmを90重量%、レーヨン繊維2デニール×51mmを10重量%に配合した面目付120g/m2のウエブを使用し、ニードルパンチング処理をウエブの上下面より300本/cm2施し、ニードルパンチ不織布マットを得た。当該ニードルパンチ不織布マットにアクリルバインダー樹脂10g/m2を塗布により付着せしめ、乾燥熱処理を施し、レーヨン繊維が含有された面目付130g/m2のポリエステル系不織布表皮材(G)を得た。
【0123】
得られたレーヨン繊維が含有されたポリステル系不織布表皮材(G)をポリエチレン系樹脂からなる積層フィルム(C)を介して発泡積層シートに仮止めした1次発泡積層シートの四方をクランプしてオーブンに入れ、発泡積層シートの表面温度が140℃となるように60秒加熱した。その後、ポリステル系不織布表皮材が室内側になるように金型に配置し、金型クリアランス4.5mmでプラグ成形を行い、トリミング、パンチング加工を施し、割れのない外観の良好な自動車内装材を得た。
【0124】
得られた自動車内装材について、実車耐熱試験を行ったところ、耐熱変形量が自動車内装材の端末部で−2.5mm、かつ内装材の一般部に関しても目視で観察されなかった。さらに内装材の脱落および基材と異音防止層および表皮材層の浮きは発生していなかった。さらに、走行試験を行ったところ、異音の発生もなく、内装材の脱落および基材と異音防止層および表皮材の浮きの発生もなかった。一方で、燃焼性試験を実施したところ、燃焼速度78mm/分と良好な難燃性を示した。また、自動車内装材用基材の積層発泡シートの目付けは205g/m2、自動車内装材の全体の目付けは335g/m2、2次発泡倍率は2.0倍、2次発泡後の発泡シートの厚さは4.6mmであった。
【0125】
実施例3
実施例1と同様な方法で、目付け200g/m2の発泡シートの巻物を得た。なお、一次発泡層の厚さ2.6mm、一次発泡倍率14.0倍、独立気泡率90%、セル径0.15mmであった。残存揮発成分の量は、発泡シート全重量に対し4.0重量%であった。
【0126】
次いで、この発泡シートを巻物より繰り出しながら、加熱ロールにて発泡シートの両面を110℃に予熱し、発泡シートの片面側に、異音防止層として発泡シート側に厚み25μmのハイインパクトポリスチレン系樹脂フィルムを配した厚さ50μmの線状低密度ポリエチレン系樹脂−ポリスチレン系樹脂積層フィルム(LLDPE/HIPSフィルム)(C)を積層した。同時に、その反対面側に、融点104℃、結晶化エネルギーが88.9J/gであるポリエチレン系樹脂からなる厚さ30μmのホットメルト接着剤(E)を積層し、自動車内装材用基材の積層発泡シートを得た。
【0127】
一方で、実施例1と同様に、面目付155g/m2のレーヨン繊維が含有されたポリエステル系不織布表皮材(F)をポリエチレン系樹脂からなるホットメルト接着剤(E)を介して発泡積層シートに仮止めした1次発泡積層シートの四方をクランプしてオーブンに入れ、発泡積層シートの表面温度が140℃となるように60秒加熱した。その後、ポリステル系不織布表皮材が室内側になるように金型に配置し、金型クリアランス5.0mmでプラグ成形を行い、トリミング、パンチング加工を施し、割れのない外観の良好な自動車内装材を得た。
【0128】
その結果、割れのない外観の良好な自動車内装材を得た。得られた自動車内装材について、実車耐熱試験を行ったところ、耐熱変形量が自動車内装材の端末部で−1.0mm、かつ内装材の一般部に関しても目視で観察されなかった。さらに、内装材の脱落および基材と異音防止層および表皮材層の浮きも発生していなかった。一方で、走行試験を行ったところ、異音の発生もなく、内装材の脱落および基材と異音防止層および表皮材の浮きも発生しなかった。燃焼性試験を実施したところ、燃焼速度65mm/分と非常に良好な難燃性を示した。また、自動車内装材用基材の積層発泡シートの目付けは280g/m2、自動車内装材の全体の目付けは435g/m2、2次発泡倍率は2.0倍、2次発泡後の発泡シートの厚さは5.9mmであった。
【0129】
【発明の効果】
本発明は、耐熱性樹脂を炭化水素系発泡剤で、押出し発泡成形して得られた発泡シートである発泡層のみを用い、発泡層に異音防止層と、表皮接着剤層を積層した構成であり、当該表皮接着剤層を介して意匠面である表皮材層を積層したオールプラスチック素材からなる自動車内装材であって、ガラスフリーで非常に軽量であり、難燃性にも優れ、かつ環境適合性、安全性に優れると共に自動車内装材に要求される諸特性を満たすものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる自動車内装材用基材の要部拡大断面説明図である。
【図2】本発明に係わる自動車内装材用基材の要部拡大断面説明図である。
【図3】本発明に係わる自動車内装材の平面説明図である。
【符号の説明】
10 発泡層
12 異音防止層用接着剤層
14 異音防止層
16 表皮接着剤層
20 表皮材
30 自動車内装材
32 ルームミラー取付穴
34 アシトトグリップ取付穴
36 サンバイザー取付穴
38 サンバイザー留め取付孔
40 室内灯取付穴
A フロント端末
B リア端末
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車内装材用基材および自動車内装材に関する。さらに詳しくは、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂(以下「変性PPE系樹脂」と記す。)を基材とする発泡シートを用いたガラスフリーで軽量、かつ成形性に優れ、安定した品質と環境適合性、耐燃焼性などの安全性を兼ね備えた自動車内装材用基材および自動車内装材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車内装材として、ウレタンフォームにガラス繊維を積層したシートあるいはポリプロピレン樹脂にガラス繊維を混合または積層した積層シートが広く用いられ、成形加工性・耐熱特性に優れているという特徴がある。これらの自動車内装材は、ガラス繊維を構成材料とするため、環境適合性(すなわちリサイクル性、とくにサーマルリサイクル性)や、軽量化が図れず燃費が上昇することによるCO2量の増加という面においても環境適合性に劣るものであった。近年、自動車のさらなる燃費向上に対し、より一段の自動車内装材の軽量化が求められている。
【0003】
また、自動車の内装材に対しては、火災発生時に車内に取り残された人身の安全確保のため難燃規制が課せられているので、ガラスフリーであって難燃性に劣る発泡積層シートでは、規制に合致する難燃性を得るための種々の工夫を行う必要がある。より環境に優しく、安価であって有効な自動車の内装材を得るために、積層シートに難燃剤を添加する方法が検討されたが、製造が煩雑であり材料コストや製造コストの上昇を引き起こす。また、難燃性を得るために天然繊維および難燃性の熱可塑性樹脂被膜を用いる方法も開示されているが(たとえば、特許文献1参照)、現在、求められている難燃性を得るために、難燃性の熱可塑性樹脂被膜を用いることは、最近の環境適合性を求める要請に反する結果となるとともに、材料コストや製造コストの上昇にも繋がる。
【0004】
また、発泡積層シートを使用して成形された自動車内装材は、表皮材を積層する際、安価で耐熱性が適度にある接着剤として、ポリオレフィン系ホットメルト接着剤が多用されている。このポリオレフィン系ホットメルト接着剤はベース樹脂であるポリオレフィン樹脂が種々の表皮材との接着を維持している。一方、自動車内装用基材に対してはアミド系またはエステル系の添加剤により比較的高温での表皮材との接着性を維持させている。しかし、100℃程度の高温に耐えうる表皮材との接着性が得られていない。
【0005】
さらに、最近では自動車のエンジン音の低下や車内の防音効果の向上に伴い、車内の静けさがクローズアップされてきている。たとえば、クーラーなどで車内を急冷した際や、凹凸のある路面での走行時や、急カーブでの走行時などにおいて異音の発生があげられる。これらの異音を防止するために、ウレタン系発泡シートを予め天井用内装材に積層したり、自動車内装材の成形加工時にクラフトテープを貼付して対応している。しかし、いずれの方法も作業が繁雑であったり、材料コストや製造コストの上昇を引き起こすという問題があった。
【0006】
これらの問題のうち、自動車内装材の軽量化、表皮材の接着性、難燃性を解決するために、軽量で耐熱性のある変性PPE系樹脂発泡層の両面に、変性PPE系樹脂非発泡層を積層した発泡積層シートを用いた自動車天井材用発泡積層シート(例えば、特許文献2参照)、さらには、異音を防止するために、該発泡積層の片面に表皮材が接着剤層を介して積層され、該表皮材が積層された面の反対面に、異音防止層が積層された自動車内装材用基材が提案されている(例えば、特許文献3参照)。変性PPE系樹脂非発泡層を用いたこれらの技術では、かなりの効果を発揮してきているが、自動車内装材用基材の難燃性を維持しつつ、さらなる軽量化を達成することが望まれる。
【0007】
【特許文献1】
特公平4−81505号公報
【特許文献2】
実開平4−11162号公報
【特許文献3】
特開2002−361803号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、変性PPE系樹脂を基材とする発泡シートを用いたガラスフリーで非常に軽量、かつ成形性に優れ、安定した品質と環境適合性、耐燃焼性などの安全性を兼ね備えた自動車内装用基材および自動車内装材を提供する。
【0009】
【課題を解決するための手段】
耐熱性樹脂、とくに、PPE系樹脂とポリスチレン系樹脂(以下、「PS系樹脂」と記す)との混合樹脂である変性PPE系樹脂にイソブタンを含有する発泡剤を用い、溶融混合して得られた発泡層の片面に、特定の表皮材、および表皮材積層面の反対面に異音防止層を形成することで、ガラスフリーで軽量、かつ成形性に優れ、安定した品質と環境適合性を備えた自動車内装材用基材および自動車内装材が得られた。
【0010】
すなわち、本発明は、耐熱性樹脂を炭化水素系発泡剤で、押出し発泡成形して得られた発泡シートの片面に、少なくとも合成繊維および再生繊維を含む不織布からなる表皮材が接着剤層を介して積層され、該表皮材が積層された面の反対面に、異音防止層として異音防止フィルムまたは不織布が積層されてなる自動車内装材用基材に関する。
【0011】
耐熱性樹脂がPPE系樹脂25〜70重量%およびポリスチレン系樹脂75〜30重量%からなる変性PPE系樹脂であることが好ましい。
【0012】
炭化水素系発泡剤がイソブタンであることが好ましい。
【0013】
炭化水素系発泡剤の含有量が耐熱性樹脂100重量部に対し、2〜5重量部であることが好ましい。
【0014】
発泡シートの厚さが1〜5mm、発泡倍率が3〜20倍、発泡シートの目付が100〜300g/m2であることが好ましい。
【0015】
表皮材が、ポリエステル系繊維85〜98重量%、レーヨン系繊維15〜2重量%からなり、目付が100〜350g/m2である不織布からなることが好ましい。
【0016】
接着剤層が、融点が100℃〜160℃、かつ結晶化エネルギーが35〜100J/gである結晶性ポリオレフィン系樹脂を基材とするホットメルト接着剤、または、結晶性ポリオレフィン系フィルムとポリスチレン系フィルムとの積層フィルムからなることが好ましい。
【0017】
異音防止層としての異音防止フィルムまたは不織布の目付が、10〜100g/m2であることが好ましい。
【0018】
自動車内装材が、自動車内装材用基材からなることが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明は、耐熱性樹脂を炭化水素系発泡剤で、押出し発泡成形して得られた発泡シートの片面に、少なくとも合成繊維および再生繊維を含む不織布からなる表皮材が接着剤層を介して積層され、該表皮材が積層された面の反対面に、異音防止層として異音防止フィルムまたは不織布が積層されてなる自動車内装材用基材に関する。
【0020】
また、本発明は、自動車内装材用基材からなる自動車内装材に関する。
【0021】
本発明の自動車内装材用基材および自動車内装材を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係わる自動車内装材用基材および自動車内装材の断面の構成を示している。耐熱性樹脂を基材樹脂とする発泡シートである発泡層10の片面に、異音防止層用接着剤層12を介して異音防止層14が積層され、その反対側の表面に表皮接着剤層16を介して表皮材20が積層されてなる。
【0023】
図2は、本発明の一実施形態に係わる自動車内装材用基材および自動車内装材の断面の構成を示している。耐熱性樹脂を基材樹脂とする発泡シートである発泡層10の片面に、異音防止層14が積層され、その反対側の表面に表皮接着剤層16を介して表皮材20が積層されてなる。
【0024】
発泡シートである発泡層10の基材樹脂として使用される耐熱性樹脂として、例示すれば、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−イタコン酸共重合体等の耐熱性ポリスチレン系樹脂;ポリスチレンあるいは耐熱性ポリスチレンとポリフェニレンエーテル(PPE)とのブレンド体、PPEへのスチレングラフト重合体等のスチレン・フェニレンエーテル共重合体等の変性PPE系樹脂、ポリカーボネート樹脂;ポリブチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレートで例示されるポリエステル系樹脂などがあげられる。これらの樹脂は2種以上を用いることもできる。なかでも、耐熱性、剛性等の品質に優れ、加工性および製造が容易である点で、変性PPE系樹脂が好ましい。
【0025】
変性PPE系樹脂は、PPE系樹脂とPS系樹脂との混合樹脂であることが好ましい。
【0026】
変性PPE系樹脂中のPPE系樹脂の具体例としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチルフェニレン−4−エーテル)、ポリ(2,6−ジエチルフェニレンー1,4−エーテル)、ポリ(2,6−ジエチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−n−プロピルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−n−ブチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−ブロムフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−エチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)などがあげられ、これらは単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0027】
また、PPE系樹脂に重合、好ましくはグラフト重合させるスチレン系単量体の具体例としては、たとえばスチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレンなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせてもよい。これらのなかでも、汎用性、コストの点で、スチレンが好ましい。
【0028】
変性PPE系樹脂中、PPE系樹脂と混合樹脂を形成するPS系樹脂は、スチレンまたはその誘導体、例えばα−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレンなどを主成分とする樹脂があげられる。したがって、PS系樹脂はスチレンまたはスチレン誘導体だけからなる単独重合体に限らず他の単量体と共重合することによって作られた共重合体であってもよい。
【0029】
発泡シートである発泡層10に使用される基材樹脂として、変性PPE系樹脂を使用する場合は、PPE系樹脂が、通常25〜70重量%、PS系樹脂が75〜30重量%が好ましく、さらに好ましくは、PPE系樹脂が35〜60重量%、PS系樹脂が65〜40重量%、特に好ましくは、PPE系樹脂38〜58重量%、PS系樹脂が62〜42重量%である。変性PPE系樹脂中のPPE系樹脂が25重量%より少ないと、耐熱性が劣る傾向にあり、PPE系樹脂が70重量%をこえると、加熱流動時の粘度が上昇し発泡成形が困難になる傾向がある。
【0030】
発泡シートである発泡層10を得る際に使用される炭化水素系発泡剤としては、揮発性発泡剤が好ましく、具体的にはエタン、プロパン、ブタン、ペンタンなどがあげられる。なかでも、発泡剤の溶解度を示すカウリブタノール値(KB値)が20以上、50以下である炭化水素系発泡剤が好ましい。また、この範囲よりもKB値の高いものと低いものとを2種以上適宜混合して前記範囲としたものも使用することができる。前記発泡剤の具体例のなかでも、発泡剤の適度な溶解性および発泡剤の逸散性が小さく、発泡層の経時変化に伴う発泡性の変化が小さい点で、イソブタン、または、イソブタンとノルマルブタンの混合体であって、イソブタンの比率が高いものが好ましい。発泡剤がイソブタンとノルマルブタンの混合体である場合は、混合体中のイソブタンの含有量は、50重量%以上が好ましい。50重量%より少ないと発泡剤の逸散性が大きく、発泡層の経時変化に伴う発泡性の変化が大きくなる傾向がある。
【0031】
炭化水素系発泡剤の含有量が耐熱性樹脂100重量部に対し、2〜5重量部であることが好ましい。2重量部より少ないと成形時の二次発泡倍率が低くなりすぎることも有り得、良好な成形性を得るのに影響を与える傾向があり、5重量部を超えると押出し発泡が不安定になったり、発泡シートの表面荒れが発生する傾向がある。
【0032】
耐熱性樹脂を基材樹脂とする発泡シートである発泡層10(1次発泡層)の厚さとしては、1〜5mmが好ましく、さらには1.5〜3.5mmが好ましい。発泡シートである発泡層10(1次発泡層)の厚さが1mmより小さいと、強度および断熱性に劣り、発泡シートに異音防止層を積層した自動車内装材用発泡積層シートとして適当でない傾向がある。一方、5mmを超えると、成形加熱時に熱がかかる際、発泡(2次発泡)するが、発泡層10の厚み方向の中心部まで伝わり難く、そのため充分な加熱が行えず、成形性が低下する傾向がある。また、充分な加熱を行うべく加熱時間を長くすると、発泡層表面のセルに破泡などが生じ、製品として許容できるものが得られ難くなる傾向がある。
【0033】
発泡シートである発泡層10の発泡倍率は3〜20倍が好ましく、さらには5〜15倍が好ましい。発泡層10(1次発泡層)の発泡倍率が3倍より低いと、柔軟性に劣り、曲げなどによる破損が生じ易く、また軽量化の効果が少なくなる傾向がある。発泡層10(1次発泡層)の発泡倍率が20倍をこえると、強度が低下し、中心部まで加熱しにくいことにより成形性が低下する傾向がある。
【0034】
発泡シートである発泡層10のセル径は0.05〜0.9mmが好ましく、さらには0.1〜0.7mmが好ましい。セル径が0.05mmより小さいと、充分な強度が得られ難くい傾向があり、0.9mmをこえると、断熱性に劣る傾向がある。
【0035】
発泡シートである発泡層10の独立気泡率は70%以上が好ましく、さらには80%以上が好ましい。独立気泡率が70%より低いと、断熱性、剛性に劣るとともに、成形加熱によって目的とする2次発泡倍率を得ることが困難となり、成形性に劣る傾向がある。
【0036】
発泡シートである発泡層10の目付は100〜300g/m2が好ましく、さらには120〜200g/m2が好ましい。目付が100g/m2より低いと、内装用基材としての剛性が不足し、目付が300g/m2をこえると、重量増による軽量性の効果が低下する傾向がある。
【0037】
発泡シートである発泡層10(1次発泡層)中の残存揮発成分の量は発泡層10の全重量に対して1〜5重量%が好ましく、さらには2〜4重量%が好ましい。残存揮発成分が1重量%より少ないと、2次発泡倍率が低くなりすぎることも有り得るため、良好な成形性を得るのに影響を与える傾向がある。また、残存揮発成分が5重量%をこえると、接着剤層との間に空気だまりが発生したり、経時による寸法安定性が低下する傾向がある。なお、残存揮発成分の量は、ガスクロマトグラフィーにより測定しても良いが、通常、発泡層10の試験片を耐熱性樹脂が軟化をはじめる温度以上で分解温度以下の温度範囲で加熱して揮発成分を充分に揮発させ、加熱前後の重量差により測定することができる。
【0038】
発泡シートである発泡層10は、成形時に延伸され扁平となったセルが加熱時に扁平率を解消する方向に形状を変化させることによる加熱収縮を発現させる。その加熱収縮が結果的に耐熱変形を起こす。そこで、耐熱変形等の形状変化を抑制するためには、発泡層10のセル形状としては、発泡層の表裏面表層部のセル密度アップを、押出し発泡シート化時に表裏面とも均一に冷却することでハードスキン層として形成することにより、発泡層の表層部を剛直化することで加熱収縮の量を抑制することができる。さらに、発泡層10のセル内圧の変化を発泡シート化から表皮材20および異音防止層14を積層加工するまでの養生時間を30日以上確保することにより、セル内圧の変化をなるべく小さくすることで加熱収縮量を小さくできる。さらに、加熱収縮による耐熱変形量は、二次加熱成形時の加熱温度を135〜155℃の範囲に制御し、発泡層10のセルに成形時の歪みを与えない条件にて成形加工することにより、非発泡層を積層しない場合でも小さくすることができる。
【0039】
本発明において使用される発泡シートである発泡層10の基材樹脂には、必要に応じて気泡調整剤、耐衝撃性改良剤、滑剤、酸化防止剤、静電防止剤、顔料、安定剤、臭気低減剤、タルクなどを添加してもよい。
【0040】
つぎに、発泡層10と異音防止層14との積層について説明する。
【0041】
本発明に係わる自動車内装材用基材および自動車内装材は、図1に例示するように、発泡シートである発泡層10の表面に異音防止層用接着剤層12を介して、異音防止層14が設けられている。発泡シートは発泡層10のみから構成されている。また、発泡層10の表面に異音防止層用接着剤層12が直接、接触している。このような構成にすることにより、異音防止層用接着剤層12が発泡層10の加熱収縮を抑制する効果の一つとしての働きを有する。
【0042】
この異音防止層14として、基材樹脂がポリオレフィン系樹脂やポリアセタール系樹脂からなるフィルムを用いた場合には、異音防止効果を有するので、以下、異音防止フィルムと表現する。この異音防止フィルムを、自動車に装着した場合、車内をクーラーなどで急冷した際、また、凹凸のある路面での走行中や急カーブでの走行中に発生する異音を防止する効果を発揮する。
【0043】
異音防止フィルムの基材樹脂としては、摺動性に優れる結晶性樹脂であるポリオレフィン系樹脂、ポリアセタール系樹脂が好ましい。なかでも、コスト、汎用性、フィルム加工の容易さの点から、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0044】
異音防止フィルムの基材樹脂として使用されるポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状ポリエチレンなどの単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンとメタアクリレート、アクリレート、ブテンなどのオレフィンと共重合できる単量体との共重合体、またこれらの混合物などからなるポリエチレン系樹脂、プロピレンの単独重合体、プロピレン酢酸ビニル共重合体、プロピレンとメタアクリレート、アクリレート、ブテンなどのオレフィンと共重合できる単量体との共重合体、またはこれらの混合物などからなるポリプロピレン系樹脂が好ましい。なかでも、摺動性が良好で、しかも材料費が安価である点で、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状ポリエチレン、ホモポリプロピレン、あるいはエチレン−プロピレン共重合がさらに好ましい。
【0045】
また、異音防止フィルムをカーボンブラックなどの顔料などの着色剤で着色することにより、耐光性を増すことが可能となるので、サンルーフを有する車などに好ましく使用できる。
【0046】
異音防止フィルムを発泡層10に積層する方法としては、異音防止層用接着剤層12を介して積層する方法(図1)、異音防止層用接着剤層12を介さずに積層する方法(図2)があげられる。
【0047】
異音防止層用接着剤層12を介して積層する際に、使用される接着剤層としては、少なくとも分子間力、水素結合、共有結合などの化学的な結合で発泡層10と異音防止フィルムを接着させる働きを有するものが用いられる。
【0048】
異音防止層用接着剤層12の具体例としては、酢酸ビニル系、セルロース系、アクリル系、ポリアミド系、ポリビニルアセテート系などの熱可塑性接着剤、ウレタン系、メラミン系、フェノール系、エポキシ系、アクリル系などの熱硬化性接着剤、クロロプレンゴム系、ニトリルゴム系、シリコーンゴム系などのゴム系接着剤、でんぷん、たん白質、天然ゴムなどの天然物系接着剤、ホットメルト接着剤があげられる。また、ホットメルト接着剤の具体例としては、ポリオレフィン系、変性ポリオレフィン系、ポリウレタン系、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂系、ポリアミド系、ポリエステル系、熱可塑性ゴム系、スチレン−ブタジエン共重合体系、スチレン−イソプレン共重合体系などの樹脂を成分とするものがあげられる。
【0049】
異音防止フィルムを発泡層10に異音防止層用接着剤層12を介さずに積層するには、次に示すごとき積層フィルムからなる異音防止フィルムを使用することが好ましい。すなわち、ポリオレフィン系樹脂フィルム−ポリスチレン系樹脂フィルムからなる積層フィルムを用い、発泡層10に対して効果的な熱接着が可能なポリスチレン系樹脂を基材樹脂とするフィルムを室内側に配し、室外側に摺動性に優れるポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とするフィルムを配し、この積層フィルムを、発泡層10に熱接着することが好ましい。
【0050】
ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とするフィルムの厚さは10〜100μmが好ましく、さらには20〜50μmが好ましい。ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とするフィルムの厚さが10μmより薄いと、異音防止効果が得られない傾向がある。一方、100μmをこえると、ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とするフィルム層の成形時の歪みによって、内装材に耐熱変形が生じたり、コストが無駄に増加したりする傾向がある。
【0051】
ポリスチレン系樹脂を基材樹脂とするフィルムの厚さは10〜100μmが好ましく、さらには20〜50μmが好ましい。ポリスチレン系樹脂を基材樹脂とするフィルムの厚さが10μmより薄いと、発泡層10との安定した接着性が得られない場合がある。一方、100μmをこえると、大量の熱量を与えれば非発泡層14との安定した接着性を得ることができるが、大幅な生産性の低下を引起こしたり、ポリスチレン系樹脂を基材樹脂とするフィルム層の成形時の歪みによって、内装材に耐熱変形が生じる傾向がある。
【0052】
異音防止層14である異音防止フィルムは、10〜100g/m2の目付を有していることが好ましく、さらには、20〜50g/m2の目付を有していることが好ましい。10g/m2より低いと、有効な異音防止効果が得られなくなる傾向があり、一方、100g/m2をこえると、重量増による軽量性の効果が低下するだけでなく、成形時の歪みによって、内装材に耐熱変形が生じたり、コストが無駄に増加したりすることがある。
【0053】
さらに、異音防止層14は、不織布層として設けることもできる。この異音防止層14である不織布層は、自動車に装着した場合、車内をクーラーなどで急冷した際、また、凹凸のある路面での走行中や急カ−ブでの走行中に発生する異音を防止するのに効果を発揮する。
【0054】
一方で、本発明の自動車内装材は異音防止層14である不織布層を介して自動車に装着されるため、特に発泡層10と異音防止層14である不織布層の界面において、自動車内装材の自重を支え、長期間の使用、過酷な環境下の使用においても脱落のない安定な接着性が求められる。
【0055】
異音防止層14である不織布層は、原料繊維を、接着剤、接着性繊維、あるいは機械的方法により接合させた布状物であればいずれの種類でも用いることができる。原料繊維の種類も特に限定されず、合成繊維、半合成繊維、あるいは天然繊維のいずれも用いることができる。具体的には、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド(ナイロン)、ポリアクリロニトリルなどの合成繊維や、羊毛、木綿、セルロースなどの天然繊維を使用することができるが、なかでもポリエステル繊維が好ましく、特に耐熱性の高いポリエチレンテレフタレート繊維が好ましい。またこれらの繊維を単独で使用することも、2種以上組み合わせて使用することもできる。不織布の種類は、その製造加工方法により、接合バインダー接着布、ニードルパンチ布、スパンボンド布、スプレファイバー布、ウォーターパンチ布、あるいはステッチボンド布があげられ、いずれの不織布も用いることができる。なかでも、フィラメントがけん縮性があり、強度が高く、柔らかな風合いを有し、音を吸収するのに都合がよい点で、長繊維フィラメントからなるスパンボンド布、ウォーターパンチ布が好ましい。
【0056】
異音防止層14である不織布層は、品質およびコストを考慮すると、10〜100g/m2の目付を有していることが好ましく、さらには20〜40g/m2の目付を有していることが好ましい。10g/m2より低いと、不織布層を設けた箇所において、発泡層10の表面が部分的に露出し、有効な異音防止効果などは得られない傾向がある。一方、100g/m2をこえると、不織布層の成形歪みによって、内装材に耐熱変形が生じたり、コストが無駄に増加する傾向がある。
【0057】
異音防止層14である不織布層を発泡層10に積層する方法としては、異音防止フィルムと同様に異音防止層用接着剤層12を介して積層する方法(図1)、異音防止層用接着剤層12を介さずに積層する方法(図2)があげられる。
【0058】
異音防止層用接着剤層12を介して積層する際に、使用される異音防止層用接着剤層12としては、少なくとも分子間力、水素結合、共有結合などの化学的な結合で発泡層10と異音防止層14である不織布層を接着させる働きを有するものが用いられる。具体的には、異音防止フィルムを発泡層10に積層する方法であげた異音防止層用接着剤層12の具体例と同じ接着剤があげられる。
【0059】
異音防止層用接着剤層12を介さず積層する場合には、異音防止用の不織布としては、原料繊維を、接着剤、接着性繊維と混合(本発明では、簡単に混紡と称する場合がある)したものが用いられる。
【0060】
接着性繊維としては、次に述べるごとき芯鞘型およびサイドバイサイド型の複合繊維が用いられる。この接着性繊維である芯鞘型繊維の芯成分には高融点繊維が、また鞘成分には低融点繊維が用いられる。具体的には、芯成分としてポリエチレンテレフタレート等を成分とする高融点繊維と、鞘成分として融点が90〜140℃であるポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂等を成分とするものや、ポリエチレンテレフタレートをイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸等の多価カルボン酸等で共重合させた融点90〜140℃を有する共重合ポリエステル系繊維を成分とする繊維とから構成される芯鞘型の複合繊維等があげられる。
【0061】
これは、異音防止層用接着剤層12を介さず異音防止用の不織布を発泡層に積層する場合、熱ロールなどによる加熱により異音防止用の不織布に含まれる接着剤、接着性繊維を熱溶融させて発泡層10に積層することでその接着安定性を保持させる。
【0062】
つぎに、発泡層10と表皮材20との積層について説明する。
【0063】
本発明の自動車内装材は、例えば、図1に示すように、発泡層10の表面に表皮接着剤層16を介して表皮材20が積層されている。発泡シートは発泡層10のみから構成されている。また、発泡層10の表面に表皮接着剤層16が直接、接触している。このような構成にすることにより、表皮接着剤層16が発泡層10の加熱収縮を抑制する効果の一つとしての働きを有する。
【0064】
表皮材20としては、少なくとも合成繊維および再生繊維を含む不織布であれば、不織布からなるもの、ニットと不織布の構成体からなるもの、ニットとウレタンと不織布の構成体からなるものなど、自動車の内装材用の表皮材20として不織布を構成要素としたものはいずれも用いることができる。
【0065】
表皮材20の主たる構成要素として機能する不織布層は、原料繊維を、接着剤、接着性繊維、あるいは機械的方法により接合または絡合させた布状物、シート状物であればいずれの種類でも用いることができる。
【0066】
表皮材20としての不織布を構成する原料繊維としては、合成繊維と再生繊維とを混紡して得られる不織布を用いることが好ましい。
【0067】
本発明でいう合成繊維とは、合成繊維と半合成繊維とを含めた概念で用いている。具体的には、合成繊維としては、ポリエステル系、ポリプロピレン系、ポリアミド(ナイロン)系、ポリアクリロニトリル系、ポリ塩化ビニル系、ポリ塩化ビニリデン系などがあげられる。半合成繊維としては、セルロース系、蛋白質系などがあげられ、これら繊維の1種または2種以上混合したものを使用できる。再生繊維としては、レーヨン系、特殊レーヨン系、キュプラなどからなる1種または2種以上混合したものを使用することができる。
【0068】
不織布を構成する原料繊維の中でも、強度、耐熱性、耐光性および燃焼性の点から、合成繊維として、ポリエステル系繊維を使用することが好ましく、特に耐熱性の高いポリエチレンテレフタレート繊維が最も好ましい。さらに、該合成繊維に混紡する再生繊維として、レーヨン系繊維が経済性の面で最も好ましい。
【0069】
不織布の種類は、その製造加工方法により、接合バインダー接着布、ニードルパンチ布、スパンボンド布、スプレファイバー布、ウォーターパンチ布、あるいはステッチボンド布があげられ、いずれの不織布も用いることができる。このうち、フィラメントがけん縮性があり、強度が高く、柔らかな風合いを有する点より、ニードルパンチ布、ウォーターパンチ布が好ましい。
【0070】
表皮材20として用いる不織布は、好ましい態様として、ポリエステル系繊維と再生繊維を混合するが、その場合の再生繊維の混合割合は、表皮材20の総重量の2〜15重量%が好ましく、5〜10重量%がより好ましい。とくに、ポリエステル系繊維85〜98重量%、レーヨン系繊維2〜15重量%が好ましい。再生繊維の含有量が2重量%より少ないと、表皮材の難燃性の確保が困難となり易く、15重量%をこえると、難燃性に優れるが、耐光性の悪化につながり易い傾向がある。
【0071】
表皮材20として用いる不織布は、品質およびコストを考慮すると、100〜350g/m2の目付けを有していることが好ましく、さらには125〜200g/m2の目付けを有していることが好ましい。100g/m2より小さいと、内装材としての充分な感触を得ることができない傾向がある。350g/m2をこえると、表皮材の成形歪みが熱変形に影響を与える傾向がある。
【0072】
表皮材20を構成する要素として用いることのあるニットとしては、トリコット、ダブルラッセル、ビロードなど、自動車内装材に使用されるものであればいずれも用いることができる。
【0073】
ニットは、一本の糸を使用し、ループを連続的に平面的につづって編み上げたものであり、このループが集合した構造を有しているため、伸縮性に富み、柔軟性があり、しわや折り目がつき難く、多孔性のため保温性が優れており、比重が少なくボリューム感の割には軽い仕上がりを有することができる。ニットは編み方によりさまざまな風合いをもったものに仕上がり、特にトリコットはループを布の厚さ方向に連続してつづったものであるため、前述した特長のほかに、編み地がより緻密に仕上がり、フィット感に優れるため、自動車内装用に特に好ましく使用される。
【0074】
ニットを構成する原料繊維は、前記不織布と同様な合成繊維および半合成繊維や天然繊維、再生繊維などが使用される。
【0075】
表皮材20として用いる不織布の原料繊維を相互に接合させ、そして、表皮材20の耐磨耗性を確保するために、接着剤としてバインダー樹脂を表皮材20の表面または裏面より塗布、塗工などにより、含浸させる方法が一般に行われている。この場合、一般的には、難燃性を確保するために、当該バインダー樹脂に難燃剤を混合して使用するか、または、ハロゲン含有バインダー樹脂を用いる方法がとられる。しかしながら、こうした方法においては、難燃剤を含むバインダー樹脂または、ハロゲン含有バインダー樹脂を表皮材20の意匠面(表面)より含浸しようとすると、難燃剤または樹脂の影響により表皮材20の調色が非常に困難となる。従って、難燃剤を含むバインダー樹脂、または、ハロゲン含有バインダー樹脂を含浸する場合においては、表皮材20の意匠反対面(裏面)より含浸せざるを得ない。また、表皮材20の耐磨耗性を確保のため、難燃剤を含むバインダー樹脂、または、ハロゲン含有バインダー樹脂の量を増やさざるを得ない。
【0076】
こうした事実に対し、本発明では、変性PPE系樹脂などの耐熱性樹脂を基材樹脂とする発泡積層シートを用い、かつ、表皮材20として合成繊維中に再生繊維を混紡した不織布を用いることにより、難燃性が向上する。このため、不織布の原料繊維を接合させるバインダー樹脂として、難燃剤を含むバインダー樹脂、または、ハロゲン含有バインダー樹脂を用いることなく、難燃剤非含有バインダー樹脂、または、ハロゲン非含有バインダー樹脂を用いることが可能となる。
【0077】
これらバインダー樹脂は透明性が良いことから調色性に優れており、不織布の意匠面(表面)より含浸でき、少量のバインダー樹脂の含浸のみで表皮材20としての不織布の耐磨耗性を確保できるようになる。本発明ではこうした構成により、良好な難燃性が確保できると共に、軽量にして意匠性に優れ、環境適合性に優れた良好な表皮材20が使用できる。
【0078】
ここで、表皮材20の意匠面(表面)というのは、本発明の自動車内装材用発泡積層シートを自動車内装材として使用した場合、自動車の室内側面という意味である。従って、表皮材20の意匠反対面(裏面)というのは、自動車の室外側面という意味である。
【0079】
前記バインダー樹脂としては、水溶性、溶剤可溶性、ビスコース液、エマルジョン、合成樹脂粉末などのタイプがあげられる。なかでも、耐水性、柔軟性、作業性の点から、エマルジョンが好ましい。エマルジョンタイプとして、アクリロ・ニトリル・ブタジエンラテックス、スチレン・ブタジエンラテックス、アクリレート・ラテックス、酢酸ビニル系ラテックスなどが用いられ、これらは1種または2種以上の混合物としても用いることができる。
【0080】
本発明で使用される表皮接着剤層16が結晶性を有するホットメルト系接着剤の場合は、ホットメルト系接着剤の融点(JIS K 7121 プラスチックの転移温度測定方法に準じた測定)は100〜160℃であることが好ましい。さらに、2次発泡積層成形体を得る2次成形時の成形性およびサーマルコストの点から、融点が100〜125℃であることがより好ましい。融点が100℃より低いと、得られた自動車内装材用基材が100℃の高温下で表皮材20の剥離が発生する傾向がある。融点が160℃をこえると、表皮材20との接着を付与するために接着剤層22の溶融する温度、つまり表皮接着剤層16が積層された自動車内装材用基材の加熱温度を高くする必要があり、自動車内装材用基材の発泡層10が破泡し、外観不良および自動車内装材用基材の剛性が低下する傾向がある。
【0081】
また、該結晶性を有するホットメルト系接着剤は、その結晶化エネルギー(JIS K 7121 プラスチックの転移温度測定方法に準じた測定)が35J/g以上であることが好ましい。さらには35〜100J/gが好ましい。結晶エネルギーが35J/gより低いと、自動車内装材用積層発泡シートと表皮材20との接着安定性が悪く、表皮材20が剥離する傾向がある。一方、結晶化エネルギーが100J/gをこえると、自動車内装材用積層発泡シートから2次成形により2次発泡積層成形体を得るとき、表皮接着剤層16が積層された自動車内装材用積層発泡シートは、表皮材20との接着性を付与するために、多大の熱量を必要とする。
【0082】
前記ホットメルト接着剤を用いず、本発明での表皮接着剤層16が結晶性を有する積層フィルムを使用する場合においては、表皮材20側にポリオレフィン系フィルムを、発泡層10側にポリスチレン系フィルムを配したポリオレフィン系フィルム−ポリスチレン系フィルムからなる積層フィルムを用いるのが好ましい。
【0083】
このように、表皮材20との良好な接着性を得るには、結晶性ポリオレフィン系フィルムを用いることが好ましいが、さらに好ましくは線状低密度ポリエチレン系樹脂からなるポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。線状低密度ポリエチレン系樹脂は結晶性を有し、加熱により安定して低粘度状態が維持できるため、表皮材20に、溶融した線状低密度ポリエチレン系樹脂が良好にしみ込むことによるアンカー効果が効果的に発揮され、表皮材20との強固な接着性を示すことが可能となる。
【0084】
ポリオレフィン系フィルムの厚さは15〜100μmが好ましく、さらに20〜50μmが好ましい。ポリオレフィン系フィルムの厚さが15μmより薄いと、加熱により低粘度化したポリオレフィン系フィルムが表皮材20の中に浸透せず、適度なアンカー効果が発揮できず表皮材20との良好な接着性を示さない傾向がある。一方、100μmをこえると、加熱により低粘度化したポリオレフィン系フィルムが大量に表皮材20に浸透し表皮材20の触感を悪化させる。
【0085】
発泡層側の接着においては、効果的に熱接着させるため、同種のポリスチレン系フィルムを用いることが好ましい。なかでも、成形加工時の歪みが抑制できることからハイインパクトポリスチレン系樹脂を用いることが好ましい。
【0086】
ポリスチレン系フィルムの厚さは15〜100μmが好ましい、さらに20〜50μmが好ましい。ポリスチレン系フィルムの厚さが15μmより薄いと、発泡層10との安定した接着性が得られない傾向がある。一方、100μmをこえると、多大の熱量を与えれば発泡層10との安定した接着性を得ることができるが大幅な生産性の低下を引き起こす傾向がある。
【0087】
次に、本発明の自動車内装材の製造法について説明する。本発明において使用される発泡層10(1次発泡層)は、各種の添加剤を加えた基材樹脂として耐熱性樹脂を押出機により150℃〜400℃で溶融・混練し、ついで150〜400℃、3〜50MPaの高温高圧下で耐熱性樹脂100重量部に対して炭化水素系発泡剤2〜5重量部を圧入し発泡最適温度(150〜300℃)に調節して、サーキュラーダイなどを使い低圧帯(通常は大気中)に押出した後、マンドレルなどに接触させて、例えば0.5〜40m/分の速度で引き取りながらシート状に成形し、カット後、巻き取るなどの方法により製造することができる。
【0088】
発泡層10に異音防止層14、異音防止層用接着剤層12を積層する方法としては、予め発泡成形して、供給される発泡層10の上面または下面に、異音防止層14で異音防止層用接着剤層12を挟み込む形で層状に積層し、加熱ローラーで異音防止層14および表皮接着剤層16を加熱軟化させ、冷却ローラーなどによって圧着する方法が好ましい。
【0089】
その理由としては、特に異音防止層14として異音防止用の不織布を使用する場合、発泡層10の基材樹脂との良好な接着性が得られ、自動車に装着した際、長期間の使用、過酷な環境下での使用においても脱落のない安定な接着性が得られること、一工程で発泡層10、異音防止層14および異音防止層用接着剤層12が同時に積層されるため、作業の繁雑さが解消されることにより製造コストの増加を抑制することが可能であること、などがあげられる。
【0090】
なかでも、製造工程を簡略化できる点で、発泡層10の押出発泡シート成形と異音防止層14および表皮接着剤層16をインラインで行って積層する方法が好ましい。
【0091】
表皮材20である不織布層の発泡積層シートとの接着方法としては、あらかじめ表皮接着剤層16を接着した表皮材20を発泡積層シートに熱ロールなどを用いて接着する方法、あらかじめ表皮接着剤層16を接着した発泡シートに表皮材20を仮止めし、加熱成形時に成形と接着を同時に行う方法などがあげられる。
【0092】
得られた1次発泡積層シートから自動車内装材である成形した2次発泡積層成形体を成形する方法としては、上下にヒーターを持つ加熱炉の中央に発泡積層シートをクランプして導き、成形に適した温度、たとえば発泡積層シートの表面温度を120〜170℃になるように加熱して2次発泡させたのち、温度調節した金型にて、異音防止層14の設けられた面を自動車の室外側、表皮材20である不織布層の設けられた面を自動車の室内側に配して取り付けるように成形される。
【0093】
成形方法の例としてはプラグ成形、フリードローイング成形、プラグ・アンド・リッジ成形、リッジ成形、マッチド・モールド成形、ストレート成形、ドレープ成形、リバースドロー成形、エアスリップ成形、プラグアシスト成形、プラグアシストリバースドロー成形などの方法があげられる。
【0094】
前記の1次発泡シートを加熱2次発泡させる際には、1次発泡シート(発泡倍率:3〜20倍、好ましくは5〜15倍、厚さ:1〜5mm、好ましくは、1.5〜3.5mm)に対して、通常1.2〜4倍に2次発泡させるが、さらには1.5〜3倍に2次発泡させるのが好ましい(この結果、2次発泡後のシート倍率は、3.6〜80倍、好ましくは7.5〜45倍、さらに好ましくは10〜40倍、厚さは、1.2〜20.0mm、好ましくは、2.25〜10.5mm、さらに好ましくは3.0〜7.0mmとなる)。
【0095】
2次発泡倍率が1.2倍より低いと柔軟性に劣り、曲げ等による破損が生じ易い。2次発泡倍率が4倍をこえると強度が低下する傾向がある。また、2次発泡後の発泡シートの厚さが1.2mmより小さいと強度、断熱性に劣り、自動車内装材用基材として適当でない場合がある。発泡シートの厚さが20mmをこえると、成形賦形時の形状発現性が劣ったり、必要以上に嵩高くなり車室内が狭くなる傾向がある。
【0096】
このようにして得られる自動車内装材の全体の目付けは、225〜850g/m2が好ましく、さらに270〜500g/m2が好ましい。225g/m2より低いと強度が劣り、曲げ等による破損が生じ易い。850g/m2をこえると重量増に伴う取り扱い性(作業者のハンドリング性)が低下し、本発明の課題である軽量性に反する傾向がある。
【0097】
以上、本発明に係わる自動車内装材用基材および自動車内装材の実施態様を種々説明したが、本発明は前記の態様に限定されるものではない。たとえば、自動車内装材用発泡積層シートは用途として電車、航空機、建築物の室内などの内装材用発泡積層シートにも使用することができ、広義に解釈されるべきものである。その他、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施し得るものである。
【0098】
【実施例】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けるものではない。実施例に用いた樹脂を表1に、その他原材料を表2に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
なお表1および表2に示した各符号に関する記載は次の通りである。
PPE :ポリフェニレンエーテル樹脂
PS :ポリスチレン樹脂
LLDPE :線状低密度ポリエチレン樹脂
HIPS :ハイインパクトポリスチレン樹脂
【0102】
実施例で行った評価方法を以下に示す。
【0103】
(発泡層および成形体の厚さ)
1次発泡シート、成形体の幅方向に20ヵ所の厚さを測定し、その測定値の平均値を算出した。
【0104】
(発泡倍率)
1次発泡シートの密度dfをJIS K 7222に準じて測定し、変性PPE系樹脂の密度dpを JIS K 7112に準じて測定し、次式より求めた。
発泡倍率=dp/df
【0105】
(独立気泡率)
ASTMD−2859に準じて評価して求めた(マルチピクノメーター(ベックマン社製)を使用)。
【0106】
(セル径)
発泡層の断面を光学顕微鏡で観察して20個のセル径を測定し、その測定値の平均値を算出した。
【0107】
(目付)
1次発泡シートの押し出し方向の5ヵ所より、100mm×100mmの大きさの試験片を切り出し、それらの重量を測定したのち、平均値を算出し、m2当たりに換算した。
【0108】
(耐衝撃性試験)
プラグ成形後、トリミング型にてトリミングをした自動車内装材の割れを目視にて観察した。
【0109】
(実車耐熱試験)
図3に示すような自動車内装材(幅930mm×長さ1424mm)30を自動車天井部(カットボディ)に装着し、サンバイザー、ルームミラー、ルームランプ、ガニッシュ、ピラーを介して実車と同様となるように固定した。なお、図3中、34はアシストグリップ取付穴、36はサンバイザー取付穴、38はサンバイザー留め取付孔、32はルームミラー取付穴、40は室内灯取付穴である。次に、自動車内装材30を自動車天井部に組み付け、自動車内装材30のフロント端末Aの巾方向中央部に刻印し、刻印した点から基準点までの高さ(h0)を測定した。なお、図3中、Bは自動車内装材30のリア末端を表す。
【0110】
その後、85±2℃に設定した恒温室に、自動車内装材30を取り付けた自動車天井部を投入した後、24時間保持し、恒温室から取り出して室温に戻した後、自動車内装材のフロント端末A部の巾方向中央部に刻印した点と基準点までの高さ(h1)を測定した。初期の高さと耐熱後(恒温室に24時間保持後)の高さの差(h0−h1)より耐熱変形を求めた。さらに自動車内装材の一般部については変形の有無を目視にて確認し、脱落、発泡層と異音防止層および表皮材の浮きの有無確認も目視にて実施した。
【0111】
判定の基準としては、自動車内装材としての実用性を考慮して、以下の基準を用いた。
【0112】
(走行試験)
自動車内装材を自動車に装着させ、通常の自動車に使用方法で1ヵ月間異音の発生、内装材の脱落、ならびに発泡層と異音防止層および表皮材の浮きの発生の有無を調査した。
【0113】
(燃焼試験)
自動車内装材を自動車用材料に適用される自動車安全基準、自動車内装材料の燃焼基準(FMVSS302)に従い、自動車内装材より切出した巾100mm、長さ350mmのサンプル片をn数10にて燃焼速度試験を行った。得られた燃焼速度の中で最大値を燃焼速度とした。
【0114】
(残存揮発成分の量)
発泡層(一次発泡層)の試験片を加熱温度220℃で1時間加熱し、加熱前後の試験片の重量差により残存揮発成分の量を測定した。
【0115】
実施例1
PPE樹脂成分40重量%,PS樹脂成分60重量%となるようにPPE樹脂(A)57.1重量部とPS樹脂(B)42.9重量部とを混合した混合樹脂100重量部に対してiso−ブタンを主成分とする炭化水素系発泡剤(iso−ブタン/n−ブタン=85/15重量%)3.5重量部およびタルク0.32重量部を押出機により混練し、樹脂温度を196℃まで冷却し、圧力10MPaでサーキュラーダイスにより押出し、引き取りロールを介して巻取りロールにロール状に巻き取り、一次発泡層の厚さ2.2mm、一次発泡倍率13.5倍、独立気泡率90%、セル径0.16mm、目付150g/m2の発泡シートの巻物を得た。残存揮発成分の量は、発泡シート全重量に対し4.0重量%であった。
【0116】
次いで、この発泡シートの巻物より発泡層を繰り出しながら、加熱ロールにて発泡層の両面を110℃に予熱し、発泡シートの片面側に異音防止層として接着性繊維を混紡した目付25g/m2のウォーターパンチ不織布(D)を積層し、同時に、異音防止層を積層した反対面側に、融点104℃、結晶化エネルギーが88.9J/gであるポリエチレン系樹脂からなる厚さ30μmのホットメルト接着剤(E)を積層した自動車内装材用基材の積層発泡シートを得た。
【0117】
一方で、ポリエステル繊維2デニール×51mmを90重量%、レーヨン繊維2デニール×51mmを10重量%に配合した面目付145g/m2のウエブを使用し、ニードルパンチング処理をウエブの上下面より300本/cm2施し、ニードルパンチ不織布マットを得た。当該ニードルパンチ不織布マットにアクリルバインダー樹脂10g/m2を塗布により付着せしめ、乾燥熱処理を施し、レーヨン繊維が含有された面目付155g/m2のポリエステル系不織布表皮材(F)を得た。
【0118】
得られたレーヨン繊維が含有されたポリステル系不織布表皮材(F)をポリエチレン系樹脂からなるホットメルト接着剤(E)を介して発泡積層シートに仮止めした1次発泡積層シートの四方をクランプしてオーブンに入れ、発泡積層シートの表面温度が140℃となるように60秒加熱した。その後、ポリステル系不織布表皮材が室内側になるように金型に配置し、金型クリアランス5.0mmでプラグ成形を行い、トリミング、パンチング加工を施し、割れのない外観の良好な自動車内装材を得た。
【0119】
得られた自動車内装材について、実車耐熱試験を行ったところ、耐熱変形量が自動車内装材の端末部で−1.5mm、かつ内装材の一般部に関しても目視で観察されなかった。さらに内装材の脱落および基材と異音防止層および表皮材層の浮きは発生していなかった。さらに、走行試験を行ったところ、異音の発生もなく、内装材の脱落および基材と異音防止層および表皮材の浮きの発生もなかった。一方で、燃焼性試験を実施したところ、燃焼速度75mm/分と非常に良好な難燃性を示した。なお、自動車内装材用基材の積層発泡シートの目付けは205g/m2、自動車内装材の全体の目付けは360g/m2、2次発泡倍率は2.2倍、2次発泡後の発泡シートの厚さは5.6mmであった。
【0120】
実施例2
PPE樹脂成分40重量%,PS樹脂成分60重量%となるようにPPE樹脂(A)57.1重量部とPS樹脂(B)42.9重量部とを混合した混合樹脂100部に対してiso−ブタンを主成分とする発泡剤(iso−ブタン/n−ブタン=85/15重量%)3.5重量部およびタルク0.32重量部を押出機により混練し、樹脂温度196℃まで冷却し、圧力10MPaでサーキュラーダイスにより押出し、引き取りロールを介して巻取りロールにロール状に巻き取り、一次発泡層の厚さ1.9mm、一次発泡倍率13.5倍、独立気泡率86%、セル径0.15mm、目付け120g/m2の発泡シートの巻物を得た。残存揮発成分の量は、発泡シート全重量に対し4.0重量%であった。
【0121】
この発泡シートの巻物を繰り出し、実施例1と同様な方法で発泡シートの片面側に異音防止層として目付25g/m2のPET系繊維からなるウォーターパンチ不織布(D)にポリスチレンラテックス系接着剤(日本ゼオン(株)製Nipol LATEX LX303A)を10g/m2塗布して積層し、異音防止層の形成された自動車内装材用基材の積層発泡シートを得た。同時に、この異音防止層の形成された自動車内装材用基材の積層発泡シートの反対面側に、接着剤層として表皮材側に厚さ25μmの線状低密度ポリエチレン系樹脂フィルムを、発泡層10に厚み25μmのハイインパクトポリスチレン系樹脂フィルムを配した厚み50μmの線状低密度ポリエチレン系樹脂−ポリスチレン系樹脂積層フィルム(LLDPE/HIPSフィルム)(C)を繰り出し、異音防止層の形成された面の反対側面に積層し、自動車内装材用基材の積層発泡シートを得た。
【0122】
一方で、ポリエステル繊維2デニール×51mmを90重量%、レーヨン繊維2デニール×51mmを10重量%に配合した面目付120g/m2のウエブを使用し、ニードルパンチング処理をウエブの上下面より300本/cm2施し、ニードルパンチ不織布マットを得た。当該ニードルパンチ不織布マットにアクリルバインダー樹脂10g/m2を塗布により付着せしめ、乾燥熱処理を施し、レーヨン繊維が含有された面目付130g/m2のポリエステル系不織布表皮材(G)を得た。
【0123】
得られたレーヨン繊維が含有されたポリステル系不織布表皮材(G)をポリエチレン系樹脂からなる積層フィルム(C)を介して発泡積層シートに仮止めした1次発泡積層シートの四方をクランプしてオーブンに入れ、発泡積層シートの表面温度が140℃となるように60秒加熱した。その後、ポリステル系不織布表皮材が室内側になるように金型に配置し、金型クリアランス4.5mmでプラグ成形を行い、トリミング、パンチング加工を施し、割れのない外観の良好な自動車内装材を得た。
【0124】
得られた自動車内装材について、実車耐熱試験を行ったところ、耐熱変形量が自動車内装材の端末部で−2.5mm、かつ内装材の一般部に関しても目視で観察されなかった。さらに内装材の脱落および基材と異音防止層および表皮材層の浮きは発生していなかった。さらに、走行試験を行ったところ、異音の発生もなく、内装材の脱落および基材と異音防止層および表皮材の浮きの発生もなかった。一方で、燃焼性試験を実施したところ、燃焼速度78mm/分と良好な難燃性を示した。また、自動車内装材用基材の積層発泡シートの目付けは205g/m2、自動車内装材の全体の目付けは335g/m2、2次発泡倍率は2.0倍、2次発泡後の発泡シートの厚さは4.6mmであった。
【0125】
実施例3
実施例1と同様な方法で、目付け200g/m2の発泡シートの巻物を得た。なお、一次発泡層の厚さ2.6mm、一次発泡倍率14.0倍、独立気泡率90%、セル径0.15mmであった。残存揮発成分の量は、発泡シート全重量に対し4.0重量%であった。
【0126】
次いで、この発泡シートを巻物より繰り出しながら、加熱ロールにて発泡シートの両面を110℃に予熱し、発泡シートの片面側に、異音防止層として発泡シート側に厚み25μmのハイインパクトポリスチレン系樹脂フィルムを配した厚さ50μmの線状低密度ポリエチレン系樹脂−ポリスチレン系樹脂積層フィルム(LLDPE/HIPSフィルム)(C)を積層した。同時に、その反対面側に、融点104℃、結晶化エネルギーが88.9J/gであるポリエチレン系樹脂からなる厚さ30μmのホットメルト接着剤(E)を積層し、自動車内装材用基材の積層発泡シートを得た。
【0127】
一方で、実施例1と同様に、面目付155g/m2のレーヨン繊維が含有されたポリエステル系不織布表皮材(F)をポリエチレン系樹脂からなるホットメルト接着剤(E)を介して発泡積層シートに仮止めした1次発泡積層シートの四方をクランプしてオーブンに入れ、発泡積層シートの表面温度が140℃となるように60秒加熱した。その後、ポリステル系不織布表皮材が室内側になるように金型に配置し、金型クリアランス5.0mmでプラグ成形を行い、トリミング、パンチング加工を施し、割れのない外観の良好な自動車内装材を得た。
【0128】
その結果、割れのない外観の良好な自動車内装材を得た。得られた自動車内装材について、実車耐熱試験を行ったところ、耐熱変形量が自動車内装材の端末部で−1.0mm、かつ内装材の一般部に関しても目視で観察されなかった。さらに、内装材の脱落および基材と異音防止層および表皮材層の浮きも発生していなかった。一方で、走行試験を行ったところ、異音の発生もなく、内装材の脱落および基材と異音防止層および表皮材の浮きも発生しなかった。燃焼性試験を実施したところ、燃焼速度65mm/分と非常に良好な難燃性を示した。また、自動車内装材用基材の積層発泡シートの目付けは280g/m2、自動車内装材の全体の目付けは435g/m2、2次発泡倍率は2.0倍、2次発泡後の発泡シートの厚さは5.9mmであった。
【0129】
【発明の効果】
本発明は、耐熱性樹脂を炭化水素系発泡剤で、押出し発泡成形して得られた発泡シートである発泡層のみを用い、発泡層に異音防止層と、表皮接着剤層を積層した構成であり、当該表皮接着剤層を介して意匠面である表皮材層を積層したオールプラスチック素材からなる自動車内装材であって、ガラスフリーで非常に軽量であり、難燃性にも優れ、かつ環境適合性、安全性に優れると共に自動車内装材に要求される諸特性を満たすものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる自動車内装材用基材の要部拡大断面説明図である。
【図2】本発明に係わる自動車内装材用基材の要部拡大断面説明図である。
【図3】本発明に係わる自動車内装材の平面説明図である。
【符号の説明】
10 発泡層
12 異音防止層用接着剤層
14 異音防止層
16 表皮接着剤層
20 表皮材
30 自動車内装材
32 ルームミラー取付穴
34 アシトトグリップ取付穴
36 サンバイザー取付穴
38 サンバイザー留め取付孔
40 室内灯取付穴
A フロント端末
B リア端末
Claims (9)
- 耐熱性樹脂を炭化水素系発泡剤で、押出し発泡成形して得られた発泡シートの片面に、少なくとも合成繊維および再生繊維を含む不織布からなる表皮材が接着剤層を介して積層され、該表皮材が積層された面の反対面に、異音防止層として異音防止フィルムまたは不織布が積層されてなる自動車内装材用基材。
- 耐熱性樹脂がポリフェニレンエーテル系樹脂25〜70重量%およびポリスチレン系樹脂75〜30重量%からなる変性ポリフェニレンエーテル系樹脂である請求項1記載の自動車内装材用基材。
- 炭化水素系発泡剤がイソブタンである請求項1または2記載の自動車内装材用基材。
- 炭化水素系発泡剤の含有量が耐熱性樹脂100重量部に対し、2〜5重量部である請求項1、2または3記載の自動車内装材用基材。
- 発泡シートの厚さが1〜5mm、発泡倍率が3〜20倍、発泡シートの目付が100〜300g/m2である請求項1、2、3または4記載の自動車内装材用基材。
- 表皮材が、ポリエステル系繊維85〜98重量%、レーヨン系繊維15〜2重量%からなり、目付が100〜350g/m2である不織布からなる請求項1、2、3、4または5記載の自動車内装材用基材。
- 接着剤層が、融点が100〜160℃、かつ結晶化エネルギーが35〜100J/gである結晶性ポリオレフィン系樹脂を基材とするホットメルト接着剤、または、結晶性ポリオレフィン系フィルムとポリスチレン系フィルムとの積層フィルムからなる請求項1、2、3、4、5または6記載の自動車内装材用基材。
- 異音防止層としての異音防止フィルムまたは不織布の目付が、10〜100g/m2である請求項1、2、3、4、5、6または7記載の自動車内装材用基材。
- 請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の自動車内装材用基材からなる自動車内装材。
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