JP2004330353A - バリ取り機、バリ取り方法及びバリ取り刃物 - Google Patents

バリ取り機、バリ取り方法及びバリ取り刃物 Download PDF

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Abstract

【課題】ガイド部をバリの近傍の歪みが生じている成形面に接触させて倣わせることで、バリ切削時に成形面を深く切削し過ぎたり、バリを取り残したりしないで、均一にバリを切削することができるので、品質を向上でき、バリ切削時の制御が簡単なバリ取り機を提供する。
【解決手段】バリ4を切削して取り除くバリ取り機1において、刃部7とバリ4の近傍の成形面3に接触するガイド部8とを、ガイド部8の先端が刃部7の作用端に対して切削後のバリ残高12分だけ成形面3接近方向へ突出する位置関係に保持し、刃部7及びガイド部8を成形面3の接近方向及び離間方向に変位可能に支持するとともに接近方向へ付勢する支持機構10を設け、ガイド部8を変位可能な範囲で付勢により常に成形面3に接触させて倣わせながら刃部7及びガイド部8をバリ4の長さ方向に駆動可能とする駆動機構11を設け、駆動時に刃部7によりバリ4をバリ残高12まで切削する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成樹脂、ゴム等よりなる高分子成形品に生じたバリを切削して取り除くバリ取り機、バリ取り方法及びバリ取り刃物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のバリ取り機は、図8(a)に示すように、高分子成形品60の成形面62から成形面離間方向に突出したバリ61の設計上の基部位置を数値入力し、バリ取り刃物63をその通り数値制御してバリ61に沿って長さ方向に駆動し、該刃物63によりバリ61を切削するように構成されている。なお、成形面62が設計上平坦な部分については、前記数値入力及び数値制御をポイントで行い、成形面62が設計上湾曲した部分については、前記数値入力及び数値制御を軌跡制御で行う。
【0003】
このバリ取り機に使用されるバリ取り刃物63には、エンドミル等の色々な種類があり、特殊なものとしては、円柱面とその軸線方向に形成された複数の略V字状の凹部との境界に刃部が形成されたものがある(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平08−142066号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来のバリ取り機は、高分子成形品60が設計通りに成形され、バリ61の基部位置も設計通りであれば、バリ61を問題なくきれいに切削することができる。ところが、現実の高分子成形品60においては、図8(a)及び(b)に示すように、成形面62に収縮、そり等による歪みが生じることを避けられない。その歪みが許容範囲を超えて大きい場合に、上記のバリ取り機のように、バリ61をその設計上の基部位置通りにしか駆動されないバリ取り刃物63で切削すると、図8(c)に示すように、成形面62が膨らんでいるところでは成形面62を切削することになり、成形面62が凹んでいるところではバリ61を切削し残すという問題があった。なお、特許文献1の刃物を使用しても、前者の問題は多少緩和されるかもしれないが、後者の問題には対応することはできない。
また、前記の通り、成形面62が設計上湾曲した部分については、湾曲した部分の通り正確に刃物を駆動しなければならないため、前記数値入力及び数値制御を軌跡制御で行なわなければならず、高度な制御が必要であった。この軌跡制御をポイント制御を行う場合は、設定するポイントを増やす必要があり大変に面倒であり、時間及びコストがかかっていた。
【0006】
そこで、本発明の第一の目的は、ガイド部をバリの近傍の歪みが生じている高分子成形品の成形面に接触させて倣わせることで、バリ切削時に成形面を深く切削し過ぎたり、バリを取り残したりしないで、均一にバリを切削することができるので、品質を向上でき、バリ切削時の制御が簡単なバリ取り機及びバリ取り方法を提供することにある。本発明の第二の目的は、刃部の形状が特殊ではなく、バリを均一に切削することができるバリ取り刃物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るバリ取り機では(1)の手段を採り、バリ取り方法では(2)の手段を採った。
(1)高分子成形品の成形面から成形面離間方向に突出したバリを切削して取り除くバリ取り機において、バリを切削する刃部とバリの近傍の成形面に接触するガイド部とを、ガイド部の先端が刃部の作用端に対して切削後のバリ残高分だけ成形面接近方向へ突出し又は切削後の削り込み深さ分だけ成形面離間方向へ後退している相対位置関係に保持し、刃部及びガイド部と高分子成形品とを該刃部及びガイド部と成形面との接近方向及び離間方向に相対的に変位可能に支持するとともに接近方向へ相対的に付勢する支持機構を設け、ガイド部を変位可能な範囲で付勢により常に成形面に接触させて倣わせながら刃部及びガイド部をバリの長さ方向に駆動可能とする駆動機構を設け、駆動時に刃部によりバリをバリ残高又は削り込み深さまで切削するようにしたことを特徴とするバリ取り機。
【0008】
(2)高分子成形品の成形面から成形面離間方向に突出したバリを切削して取り除くバリ取り方法において、バリを切削する刃部とバリの近傍の成形面に接触するガイド部とを、ガイド部の先端が刃部の作用端に対して切削後のバリ残高分だけ成形面接近方向へ突出し又は切削後の削り込み深さ分だけ成形面離間方向へ後退している相対位置関係に保持し、刃部及びガイド部と高分子成形品とを刃部及びガイド部と成形面との接近方向及び離間方向に相対的に変位可能に支持するとともに接近方向へ相対的に付勢し、ガイド部を変位可能な範囲で付勢により常に成形面に接触させて倣わせながら刃部とガイド部とをバリの長さ方向に駆動することにより、刃部によりバリをバリ残高又は削り込み深さまで切削することを特徴とするバリ取り方法。
【0009】
上記手段(1)(2)において、バリが成形面のうち別の第2成形面とつくる角縁又は角縁近傍から突出したものであり、また、ガイド部の先端が刃部の作用端に対して切削後の削り込み深さ分だけ成形面離間方向へ後退しており、刃部によりバリを削り込み深さまで切削する場合に、第2成形面に接触する別の第2ガイド部を刃部及びガイド部と一定位置関係に保持し、刃部、ガイド部及び第2ガイド部と高分子成形品とを該第2ガイド部と第2成形面との接近方向及び離間方向に相対的に第2変位可能に支持するとともに接近方向へ相対的に第2付勢し、駆動時に、第2ガイド部を第2変位可能な範囲で第2付勢により常に第2成形面に接触させて倣わせることにより、刃部により削り込み深さまで切削されてできる削り込み部が一定幅となるようにすることが好ましい。
【0010】
「相対的に変位可能に支持するとともに相対的に付勢する」態様として、以下の▲1▼▲2▼を例示できる。
▲1▼ 刃部及びガイド部を、駆動による変位のみに変位可能に支持し、高分子成形品を、刃部及びガイド部に対して接近方向及び離間方向に変位可能に支持するとともに接近方向に付勢する態様。
▲2▼ 刃部及びガイド部を、駆動による駆動方向と高分子成形品に対して接近方向及び離間方向とに変位可能に支持するとともに接近方向に付勢し、高分子成形品を動かないように支持する態様。
また、「相対的に第2変位可能に支持するとともに相対的に付勢する」態様として、以下の▲1▼▲2▼を例示できる。
▲1▼ 刃部、ガイド部及び第2ガイド部を、駆動による変位のみに第2変位可能に支持し、高分子成形品を、刃部、ガイド部及び第2ガイド部に対して接近方向及び離間方向に第2変位可能に支持するとともに接近方向に付勢する態様。
▲2▼ 刃部、ガイド部及び第2ガイド部を、駆動による駆動方向と高分子成形品に対して接近方向及び離間方向とに第2変位可能に支持するとともに接近方向に付勢し、高分子成形品を動かないように支持する態様。
【0011】
本発明に係るバリ取り機に取り付けられ、高分子成形品の成形面から成形面離間方向に突出したバリを切削して取り除くバリ取り刃物は、特に限定されない。
バリ取り刃物の切削形式としては、特に限定されないが、回転式の刃物を例示でき、回転式のバリ取り刃物としては、特に限定されないが、回転切削のための工具として一般的であり、入手が容易であるエンドミルが好ましい。
バリ取り刃物の刃部は、特に限定されないが、バリ取り刃物の端面、側周面、先端等を例示できる。ガイド部及び第2ガイド部は、特に限定されないが、刃部が設けられているバリ取り刃物の一部分に付加されていることが好ましい。それにより、ガイド部及び第2ガイド部は、刃部が切削するバリの近傍の成形面又は第2成形面に接触することができ、切削されるバリ部分の成形面又は第2成形面の歪みに倣うことができるからである。また、回転式のバリ取り刃物の一部分に付加されているガイド部及び第2ガイド部は、特に限定されないが、刃部の回転駆動と同一周期で回転してもよいが、異なった周期で回転してもよく、さらに、回転しなくてもよい。
【0012】
エンドミルをバリ取り刃物として用いた場合、以下の(3−1)(3−2)(3−3)の態様を例示できる。
(3−1)エンドミルの成形面に向かう端面刃部をバリを切削する刃部とし、エンドミルの端面の中心部から突出した突起をバリの近傍の成形面に接触するガイド部とし、突起の先端が端面刃部の作用端に対して、切削後のバリ残高分だけ成形面接近方向へ突出した相対位置関係である態様。この場合、ガイド部の突起は、特に限定されないが、円柱状の突起、半球状の突起、ボールベアリング等を例示できる。
【0013】
(3−2)エンドミルの成形面に向かう側周面刃部をバリを切削する刃部とし、エンドミルの側周面より同軸状に膨径した円柱面をバリの近傍の成形面に接触するガイド部とし、円柱面の先端が側周面刃部の作用端に対して、切削後のバリ残高分だけ成形面接近方向へ突出した相対位置関係である態様。
【0014】
(3−3)エンドミルの成形面に向かう側周面刃部をバリを切削する刃部とし、エンドミルの側周面より同軸状に縮径した円柱面をバリの近傍の成形面に接触するガイド部とし、円柱面の先端が側周面刃部の作用端に対して、切削後の削り込み深さ分だけ成形面離間方向へ後退した相対位置関係である態様。
【0015】
上記(3−3)において、バリが成形面のうち別の第2成形面とつくる角縁又は角縁近傍から突出したものである場合に、エンドミルの側周面基端部より突出したフランジの先端面をバリの近傍の第2成形面に接触する第2ガイド部とし、フランジの先端面が側周面刃部の作用端の先端より少なくとも切削後の削り込み部の幅分を第2成形面離間方向へ後退した相対位置関係であることが好ましい。
【0016】
上記(3−2)(3−3)において、ガイド部がエンドミルの側周面より同軸状に膨径又は縮径した円柱面である場合、ガイド部が刃部と同軸回転する構造であれば、特に限定されないが、ガイド部は全側周面に渡って膨径又は縮径した円柱面であることが好ましく、ガイド部が刃部と同軸回転しない構造であれば、全周面に渡って膨径又は縮径した円柱面であっても、一部の方向の円柱面のみ膨径又は縮小した形状であってもよい。
【0017】
バリ残高は、特に限定されないが、0mm〜1mmが好ましく、特に好ましくは、0.1mm〜0.2mmであり、ガイド部の成形面接近方向への突出長は、バリ残高に合わせられる。また、削り込み深さは、特に限定されないが、0mm〜1mmが好ましく、特に好ましくは、0.1mm〜0.2mmであり、ガイド部の成形面離間方向へ後退長は、削り込み深さに合わせられる。
【0018】
「付勢する」ために用いる付勢部材としては、特に限定されないが、コイルバネ、板バネ、ゴム部材、エアシリンダ、油圧シリンダ等を例示できる。
【0019】
「高分子成形品」の支持方法は、特に限定されないが、吸着パッド等による吸着、チャック装置による把持、高分子成形品を嵌め込むことができる凹凸型への嵌め込み等を例示することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した三つの実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、説明の都合上、図1、図2(a)、図4(a)、図6(a)において左奥から右手前に向かう方向をX方向、右奥から左手前に向かう方向をY方向、下から上に向かう方向をZ方向とする。また、本実施形態において以下に挙げる数値は例示であり、適宜変更できる。
【0021】
[第一実施形態]
図1〜図3に示すように、バリ取り機1は、高分子成形品2を成形する際に生じる成形面3から成形面3離間方向に突出したバリ4を切削して取り除くためのものである。本実施形態のバリ取り機1は、バリ取り刃物を回転してバリ4を切削する装置であり、刃部7及びガイド部8を備えたバリ取り刃物である3枚刃のエンドミル6と、支持機構10と、駆動機構11とからなる。刃部7及びガイド部8は、支持機構10及び駆動機構11により、駆動方向と高分子成形品2に対して接近方向及び離間方向とに変位可能に支持されるとともに接近方向に付勢されている。また、高分子成形品2は動かないように支持されている。
【0022】
エンドミル6の刃部7は、成形面3に向かうエンドミル6の端面6aに形成された端面刃部であり、バリ4を切削する。ガイド部8は、エンドミル6の端面6aの中心部から成形面3接近方向へ約0.1mm突出した突起であり、バリ4切削時にバリ4の近傍の成形面3に突起が接触する。この刃部7とガイド部8とは同一周期で同軸回転し、図2(b)に示すように、突起の先端が端面刃部の作用端に対して切削後のバリ残高分である約0.1mmだけ成形面3接近方向へ突出した位置関係に保持される。
【0023】
支持機構10は、エンドミル6を把持しているチャック18と、円柱状のモータ19と、第一固定板20と、Z方向に延びた第一アーム21と、3本の付勢シャフト22と、付勢受板23と、付勢部材であるコイルバネ24とからなっている。
モータ19は、その一方端に回転軸25を介してチャック18に把持されてエンドミル6が取り付けられており、モータ19は回転軸25を回転することでエンドミル6を回転駆動している。モータ19の他方端にはモータ19の制御のための配線(図示略)がつなげられており、モータ19の長さ方向の略中央から他方端よりには、第一固定板20がモータ19を締結している。また、モータ19の長さ方向の略中央部は、片面を成形面3に向けた第一アーム21の板状の先端部21aに設けられた摺動穴26aを、成形面3側と逆側に第一固定板20が設置されるように、摺動可能に貫通している。よって、モータ19の長さ方向は、エンドミル6の端面6aが成形面3を向くようにY方向となっている。
【0024】
第一固定板20には、モータ19の周囲を取り囲むように略正三角形の位置関係で、モータ19の一方端方向へ略平行に延びるように、3本の付勢シャフト22が取り付けられ、先端部21aの摺動穴26aの周囲に形成された摺動穴26bを、モータ19と同様に摺動可能に貫通している。それぞれの付勢シャフト22の先端部21aからエンドミル6側には、コイルバネ24が先端部21aに接するように嵌挿され、次に、付勢受板23がモータ19と付勢シャフト22に摺動可能に貫設されている。付勢調節カラー28は、コイルバネ24を先端部21aと付勢受板23との間に挟み、第一固定板20と先端部21aとの間に隙間30が形成されないように、付勢受板23のエンドミル6側で取り付け位置を調節して付勢シャフト22を締結している。この付勢調節カラー28を固定する際には、場合によっては第一固定板20と先端部21aとの間に隙間30が形成されていてもよい。
【0025】
駆動機構11は、Z方向スライドガイド35と、X方向スライドガイド39とを備えている。Z方向スライドガイド35は、Z方向に延びるレール36と、レール36の上部に摺動可能に係合し、Z方向に駆動されるスライダ37とからなる。Z方向に駆動されるスライダ37の上部には、Y方向に延びる第二アーム38が取り付けられている。第二アーム38の円柱となった先端38aには第一アーム21が先端38aを挟んで取り付けられており、第一アーム21をXZ面のどの方向にも延びて固定することができる。Z方向スライドガイド35のレール36は、X方向スライドガイド39のX方向に延びるレール40と、レール40の上部に摺動可能に係合し、X方向に駆動されるスライダ41の上部に取り付けられている。よって、第一アーム21に支持されているエンドミル6の端面6aは、Z方向スライドガイド35とX方向スライドガイド39との2方向の駆動により、XZ面上を自在に動かすことができ、バリ4の長さ方向に沿って駆動を制御できる。
【0026】
高分子成形品2は、エンドミル6接近方向へ高分子成形品2を付勢するための付勢部材が設置されていない吸着パッド43によって吸着されて支持されている。この支持によって、高分子成形品2は、バリ4を高分子成形品2の成形面3から成形面3離間方向であるバリ取り機1方向に突出させている。また、高分子成形品2は、高分子成形品2のぐらつきを押さえるため、高分子成形品2の背面側より安定板44によって安定化されている。
【0027】
以下、バリ取り機1が、成形面3の歪みである凹凸に対応して、エンドミル6をY方向である成形面3接近方向及び離間方向に変位させて、バリ4をバリ残高まで切削する作用を示す。
まず、図3(a)に示すように、バリ4が生じている成形面3の歪みのY方向の幅が、エンドミル6のY方向の変位可能の範囲に含まれるように、高分子成形品2の成形面3とバリ取り機1のエンドミル6との距離を設定する。例えば、ガイド部8をバリ4近傍の成形面3の歪みの幅の中間位置となる成形面3に押圧させると、コイルバネ24が先端部21aと付勢受板23との間でY方向に縮み、モータ19と付勢シャフト22が先端部21aの摺動穴26を摺動して、第一固定板20との先端部21aとの間に隙間30が形成される。この際のエンドミル6の位置を標準位置とする。そして、エンドミル6を回転させながらエンドミル6をバリ4の長さ方向に駆動し、バリ4を連続的に切削し始める。
【0028】
次に、図3(b)のように、成形面3が凹になっている部分に、エンドミル6が差しかかると、コイルバネ24の付勢力によって凹にガイド部8が倣い、エンドミル6が標準位置より成形面3に接近し、バリ4をバリ残高まで切削する。その際、コイルバネ24は延び、第一固定板20と先端部21aとの隙間30はコイルバネ24が延びた長さ分だけ狭くなる。エンドミル6の成形面3接近方向に変位可能な接近限界は、第一固定板20と先端部21aとが接するまでコイルバネ24が延びた際の位置である。
【0029】
次に、図3(c)のように、成形面3が凸になっている部分に、エンドミル6が差しかかると、図3(b)とは逆に、コイルバネ24の付勢力に抗して凸にガイド部8が倣い、エンドミル6が標準位置より成形面3から離間し、バリ4をバリ残高まで切削する。その際、コイルバネ24は縮んで、第一固定板20と先端部21aとの間に隙間30が広がる。エンドミル6の成形面3離間方向に変位可能な離間限界は、コイルバネ24が最大に圧縮した際の位置である。
【0030】
以上のようにバリ取り機1は、エンドミル6のガイド部8をコイルバネ24の付勢力に抗して成形面3に圧接した状態で、ガイド部8を変位可能な範囲で付勢により常に成形面3に接触させ倣わせているので、バリ4が生じている成形面3の歪みの凹凸が前記変位可能な範囲内であれば、駆動時に歪みに対応してエンドミル6の刃部7が同様に変位する。よって、図8(d)に示すように、成形面3を深く切削し過ぎたり、バリ4を取り残したりしないで、バリ4を刃部7によりバリ残高12まで均一に切削することができるので、品質を向上できる。また、エンドミル6の軌跡の制御が複雑であったバリ4が生じている成形面3が曲面である部分のバリ4の切削についても、エンドミル6の変位可能な範囲内であれば、バリ取り機1の軌跡の制御をポイント間の直線で指示することができるので、制御が簡単になる。さらに、エンドミル6の端面を刃部7とするので、刃部7の形状が特殊ではない。
【0031】
[第二実施形態]
以下、図4及び図5に示す本発明の第二実施形態は、バリ取り機46を示している。このバリ取り機46は、第一実施形態とは取り付けられているバリ取り刃物としてのエンドミルの刃部7及びガイド部8の形状が異なるエンドミル47を用いている。さらに、第一実施形態とは、エンドミル47の支持機構48が異なり、エンドミル47の刃部7となっている側周面47bを成形面3に向けて支持されている。また、高分子成形品2の支持は、エンドミル47の刃部7が駆動される上下方向にバリ4が延びるように、第一実施形態と同様に支持されている。
【0032】
エンドミル47の刃部7は、成形面3に向かうエンドミル46の側周面刃部であり、ガイド部8はエンドミル46の側周面46bより同軸状に全側周面が約0.1mm膨径した円柱面である。この刃部7とガイド部8とは同一周期で同軸回転し、エンドミル47の使用時には、図4(b)に示すように、ガイド部8の円柱面の先端が、側周面刃部の作用端に対して切削後のバリ残高分である約0.1mmだけ成形面3接近方向へ突出した位置関係に保持される。
【0033】
支持機構48は、第一実施形態のモータ19の代わりに第一固定板20は、モータ19と同一形状の支持円柱52を締結しており、その支持円柱52の成形面3側の端面には、モータ19の長さ方向の略中央を締結している第二固定板51が、エンドミル47の側周面刃部が成形面3を向くように、モータ19の長さ方向をX方向にして締結している。
これにより、エンドミル47は、エンドミル47の側周面47bを向けて、Y方向である成形面3接近方向及び成形面3離間方向に変位可能に支持されるとともに、コイルバネ24の付勢力によって成形面3接近方向に付勢されている。
【0034】
このバリ取り機46がバリ4を切削する際には、第一実施形態と同様に、図5に示すように、成形面3の歪みを考慮して、エンドミル47のガイド部8を成形面3に圧接してある程度エンドミル47をY方向に押し込んだ位置を標準位置として、標準位置から成形面3接近方向及び成形面3離間方向にそれぞれ変位できる。
【0035】
以上のように構成されたバリ取り機46は、第一実施形態と同様な効果が得られ、さらに、バリ4に対するエンドミルの向きをバリ4周辺の空間に合わせて、第一実施形態のバリ取り機1と本実施形態のバリ取り機46とのどちらかを選択して使用することができるので、多様なバリ4の切削に対応することができる。
【0036】
[第三実施形態]
以下、図6及び図7に示す本発明の第三実施形態は、成形面3のうち別の第2成形面5とつくる角縁又は角縁近傍から突出したバリ4を、刃部7により削り込み深さ13まで切削するバリ取り機54を示している。このバリ取り機54は、第二実施形態とは取り付けられているバリ取り刃物としてのエンドミルの刃部7及びガイド部8の形状が異なり、さらに、使用時に第2成形面に接触する別の第2ガイド部9を備えたエンドミル55を用いている。また、第二実施形態とは支持機構が異なり、このエンドミル55は、Y方向の成形面3接近方向へ付勢されているだけではなく、刃部7、ガイド部8及び第2ガイド部9を第2ガイド部と第2成形面との接近方向及び離間方向に第2変位可能に支持するとともにX方向の第2成形面5接近方向へ第2付勢されていることが異なっている。高分子成形品の支持は、第二実施形態と同様である。
【0037】
エンドミル55の刃部7は、成形面3に向かうエンドミル55の側周面刃部であり、ガイド部8はエンドミル55の側周面55bより同軸状に全側周面が約0.1mm縮径した円柱面であり、第2ガイド部9は、エンドミル55の側周面基端部55cより全側周面が約0.1mm突出したフランジの先端面である。
この刃部7、ガイド部8と第2ガイド部9とは同一周期で同軸回転し、エンドミル55の使用時には、図6(b)に示すように、ガイド部8の円柱面の先端が、側周面刃部の作用端に対して切削後の削り込み深さ分である約0.1mmだけ成形面3離間方向へ後退した位置関係に保持され、第2ガイド部9は、刃部7及びガイド部8と一定位置関係に保持されている。
【0038】
支持機構56は、モータ19とチャック18との間であって回転軸25に圧縮して嵌挿されたコイルバネ57を備えていることだけ、第二実施形態と異なっている。これにより、エンドミル55は、エンドミル55の側周面55bを向けて、Y方向である成形面3接近方向及び成形面3離間方向に変位可能に支持されるとともにコイルバネ24の付勢力によって成形面3接近方向に付勢され、さらに、X方向である第2成形面接近方向及び第2成形面離間方向に第2変位可能に支持されるとともにコイルバネ57の付勢力によって第2成形面5接近方向へ第2付勢されている。
【0039】
このバリ取り機54がバリ4を切削する際には、第一実施形態と同様に、図7に示すように、成形面3の歪みの凹凸の範囲が、エンドミル55の変位可能な範囲となるようにして、エンドミル55のガイド部8を成形面3に圧接してある程度エンドミル47をY方向に押し込み、同様に第2成形面5の歪みの凹凸の範囲が、エンドミル55の第2変位可能な範囲となるようにして、エンドミル55の第2ガイド部9を第2成形面5に圧接してある程度エンドミル55をX方向に押し込んだ位置を標準位置とする。そのため、標準位置から成形面3接近方向及び成形面3離間方向と第2成形面5接近方向及び第2成形面5離間方向とにそれぞれ変位できる。
駆動時に、ガイド部8を変位可能な範囲で付勢により常に成形面3に接触させ倣わせているので、成形面3の歪みの凹凸が前記変位可能な範囲内であれば、歪みに対応してエンドミル6の刃部7が同様に変位する。よって、図8(e)に示すように、成形面3を深く切削し過ぎたり、バリ4を取り残したりしないで、バリ4を刃部7により削り込み深さ13まで均一に切削することができる。さらに、第2ガイド部を第2変位可能な範囲で第2付勢により常に第2成形面に接触させて倣わせているので、第2成形面5の歪みの凹凸が前記第2変位可能な範囲内であれば、歪みに対応してエンドミル6の刃部7が同様に第2変位する。よって、刃部7により削り込み深さ13まで切削されてできる削り込み部14が一定幅で且つ第2成形面5と平行とすることができる。
【0040】
以上のように構成されたバリ取り機54は、第一実施形態と同様な効果が得られ、さらに、バリ4に対するエンドミルの向きをバリ4周辺の空間に合わせたり、バリ4をバリ残高12まで切削するか又は削り込み深さ13まで切削するかによってバリ4の切削後の形状に合わせたりして、第一実施形態のバリ取り機1、第二実施形態のバリ取り機46と本実施形態のバリ取り機54とを選択して使用することができるので、より多様なバリ4の切削に対応することができる。
【0041】
なお、本発明は前記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば次のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で変更して具体化することもできる。
(1)バリ取り機に刃部及びガイド部を高分子成形品接近方向へ付勢する付勢部材を設けずに、高分子成形品を刃部及びガイド部へ接近方向及び離間方向に変位可能に支持するとともに、高分子成形品を保持する吸着パッドに、高分子成形品を刃部及びガイド部接近方向へ付勢する付勢部材であるコイルバネを設けること。
(2)第二実施形態において、第二アーム38を軸にして第一アーム21をZ方向に向くようにして、エンドミル47の先端が上方を向いた状態であること。
(3)バリ取り機の駆動部位によるバリ取り部位の駆動が、X方向、Y方向及びZ方向のすべての方向に可能なように、X方向スライドガイド機構とZ方向スライドガイド機構に加えて、さらに、Y方向スライドガイド機構が設けられていること。
(4)バリ取り機の駆動部位が、3次元に駆動可能な多関節ロボットであること。
【0042】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1〜7の発明に係るバリ取り機及びバリ取り方法によれば、ガイド部をバリの近傍の歪みが生じている高分子成形品の成形面に接触させて倣わせることで、バリ切削時に成形面を深く切削し過ぎたり、バリを取り残したりしないで、均一にバリを切削することができるので、品質を向上でき、バリ切削時の制御が簡単であるという優れた効果を奏する。
【0043】
上記効果に加え、請求項8〜11の発明に係るバリ取り刃物によれば、刃部の形状が特殊ではないので経済的であり、ガイド部を設けることでバリを均一に切削することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施形態に係るバリ取り機と高分子成形品の斜視図である。
【図2】同バリ取り機と高分子成形品を示し、(a)は部分拡大斜視図、(b)はバリ取り刃物と高分子成形品の拡大側面図である。
【図3】同バリ取り機のY方向の変位を示し、(a)は標準位置の平面図、(b)はエンドミルが成形面接近方向に変位した位置の平面図、(c)はエンドミルが成形面離間方向に変位した位置の平面図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係るバリ取り機と高分子成形品を示し、(a)は部分斜視図、(b)はバリ取り刃物と高分子成形品の拡大側面図である。
【図5】同バリ取り機が標準位置の平面図である。
【図6】本発明の第三実施形態に係るバリ取り機と高分子成形品を示し、(a)は部分斜視図、(b)はバリ取り刃物と高分子成形品の拡大側面図である。
【図7】同バリ取り機が標準位置の平面図である。
【図8】高分子成形品を示し、(a)はバリの長さ方向の断面図、(b)はバリの長さ方向の拡大断面図、(c)は従来のバリ取り機でのバリ取り後のバリの長さ方向の拡大断面図、(d)及び(e)は本発明のバリ取り機でのバリ取り後のバリの長さ方向の拡大断面図である。
【符号の説明】
1、46、54 バリ取り機
2 高分子成形品
3 成形面
4 バリ
5 第2成形面
6、47、55 バリ取り刃物としてのエンドミル
7 刃部
8 ガイド部
9 第2ガイド部
10、48、56 支持機構
11 駆動機構
12 バリ残高
13 削り込み深さ
19 モータ
20 第一固定板
21 第一アーム
22 付勢シャフト
24、57 コイルバネ
30 隙間
51 第二固定板

Claims (11)

  1. 高分子成形品の成形面から成形面離間方向に突出したバリを切削して取り除くバリ取り機において、
    バリを切削する刃部とバリの近傍の成形面に接触するガイド部とを、ガイド部の先端が刃部の作用端に対して切削後のバリ残高分だけ成形面接近方向へ突出し又は切削後の削り込み深さ分だけ成形面離間方向へ後退している相対位置関係に保持し、
    刃部及びガイド部と高分子成形品とを該刃部及びガイド部と成形面との接近方向及び離間方向に相対的に変位可能に支持するとともに該接近方向へ相対的に付勢する支持機構を設け、
    ガイド部を前記変位可能な範囲で前記付勢により常に成形面に接触させて倣わせながら刃部及びガイド部をバリの長さ方向に駆動可能とする駆動機構を設け、該駆動時に刃部によりバリを前記バリ残高又は前記削り込み深さまで切削するようにしたことを特徴とするバリ取り機。
  2. 高分子成形品の成形面から成形面離間方向に突出したバリを切削して取り除くバリ取り方法において、
    バリを切削する刃部とバリの近傍の成形面に接触するガイド部とを、ガイド部の先端が刃部の作用端に対して切削後のバリ残高分だけ成形面接近方向へ突出し又は切削後の削り込み深さ分だけ成形面離間方向へ後退している相対位置関係に保持し、
    刃部及びガイド部と高分子成形品とを該刃部及びガイド部と成形面との接近方向及び離間方向に相対的に変位可能に支持するとともに該接近方向へ相対的に付勢し、
    ガイド部を前記変位可能な範囲で前記付勢により常に成形面に接触させて倣わせながら刃部とガイド部とをバリの長さ方向に駆動することにより、刃部によりバリを前記バリ残高又は前記削り込み深さまで切削することを特徴とするバリ取り方法。
  3. バリが成形面のうち別の第2成形面とつくる角縁又は角縁近傍から突出したものであり、また、ガイド部の先端が刃部の作用端に対して切削後の削り込み深さ分だけ成形面離間方向へ後退しており、刃部によりバリを前記削り込み深さまで切削する場合に、
    第2成形面に接触する別の第2ガイド部を刃部及びガイド部と一定位置関係に保持し、
    刃部、ガイド部及び第2ガイド部と高分子成形品とを該第2ガイド部と第2成形面との接近方向及び離間方向に相対的に第2変位可能に支持するとともに該接近方向へ相対的に第2付勢し、
    前記駆動時に、第2ガイド部を前記第2変位可能な範囲で前記第2付勢により常に第2成形面に接触させて倣わせることにより、刃部により前記削り込み深さまで切削されてできる削り込み部が一定幅となるようにした請求項1記載のバリ取り機又は請求項2記載のバリ取り方法。
  4. 刃部は成形面に向かうエンドミルの端面刃部であり、ガイド部はエンドミルの端面の中心部から突出した突起であり、エンドミルの前記駆動時に刃部によりバリを前記バリ残高まで切削する請求項1記載のバリ取り機又は請求項2記載のバリ取り方法。
  5. 刃部は成形面に向かうエンドミルの側周面刃部であり、ガイド部はエンドミルの側周面先端部より同軸状に膨径した円柱面であり、エンドミルの前記駆動時に刃部によりバリを前記バリ残高まで切削する請求項1記載のバリ取り機又は請求項2記載のバリ取り方法。
  6. 刃部は成形面に向かうエンドミルの側周面刃部であり、ガイド部はエンドミルの側周面先端部より同軸状に縮径した円柱面であり、エンドミルの前記駆動時に刃部によりバリを前記削り込み深さまで切削する請求項1記載のバリ取り機又は請求項2記載のバリ取り方法。
  7. 前記刃部は成形面に向かうエンドミルの側周面刃部であり、ガイド部はエンドミルの側周面先端部より同軸状に縮径した円柱面であり、第2ガイド部はエンドミルの側周面基端部より突出したフランジの先端面である請求項3記載のバリ取り機又はバリ取り方法。
  8. バリ取り機に取り付けられ、高分子成形品の成形面から成形面離間方向に突出したバリを切削して取り除くバリ取り刃物において、
    エンドミルの成形面に向かう端面刃部をバリを切削する刃部とし、エンドミルの端面の中心部から突出した突起をバリの近傍の成形面に接触するガイド部とし、突起の先端が端面刃部の作用端に対して、切削後のバリ残高分だけ成形面接近方向へ突出した相対位置関係であることを特徴とするバリ取り刃物。
  9. バリ取り機に取り付けられ、高分子成形品の成形面から成形面離間方向に突出したバリを切削して取り除くバリ取り刃物において、
    エンドミルの成形面に向かう側周面刃部をバリを切削する刃部とし、エンドミルの側周面より同軸状に膨径した円柱面をバリの近傍の成形面に接触するガイド部とし、円柱面の先端が側周面刃部の作用端に対して、切削後のバリ残高分だけ成形面接近方向へ突出した相対位置関係であることを特徴とするバリ取り刃物。
  10. バリ取り機に取り付けられ、高分子成形品の成形面から成形面離間方向に突出したバリを切削して取り除くバリ取り刃物において、
    エンドミルの成形面に向かう側周面刃部をバリを切削する刃部とし、エンドミルの側周面より同軸状に縮径した円柱面をバリの近傍の成形面に接触するガイド部とし、円柱面の先端が側周面刃部の作用端に対して、切削後の削り込み深さ分だけ成形面離間方向へ後退した相対位置関係であることを特徴とするバリ取り刃物。
  11. 前記バリが前記成形面のうち別の第2成形面とつくる角縁又は角縁近傍から突出したものである場合に、前記エンドミルの側周面基端部より突出したフランジの先端面をバリの近傍の第2成形面に接触する第2ガイド部とし、前記フランジの先端面が前記側周面刃部の作用端の先端より少なくとも切削後の前記削り込み部の幅分を第2成形面離間方向へ後退した相対位置関係である請求項10記載のバリ取り刃物。
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