JP2004327727A - 電磁波吸収材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】電波工学に基づく精密な設計を必要とせず、一体化成型加工が容易で、かつ切断加工時の導電性材料の破損や剥がれ落ち等の加工適性に優れ、剛性が高く取り扱いが容易であり、電磁波を吸収する導電性材料を含有する導電性材料層の厚さを任意に選択できる電磁波吸収材料を提供する。
【解決手段】本発明は、樹脂被覆紙からなる保持層の少なくとも2層間に導電性材料を含有する導電性材料層を設けた、好ましくは、加熱加圧法により該保持層と該導電性材料層を一体化する電磁波吸収材料である。好ましくは、該導電性材料がカーボンブラック、無定形炭素、グラファイト、繊維状炭素、ナノカーボンから選ばれる炭素化合物及び針状結晶ウイスカーの少なくとも一種の導電性材料からなる。好ましくは、該導電性材料を不織布に担持させ、好ましくは、該導電性材料層が高分子樹脂を含有する電磁波吸収材料である。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明は、樹脂被覆紙からなる保持層の少なくとも2層間に導電性材料を含有する導電性材料層を設けた、好ましくは、加熱加圧法により該保持層と該導電性材料層を一体化する電磁波吸収材料である。好ましくは、該導電性材料がカーボンブラック、無定形炭素、グラファイト、繊維状炭素、ナノカーボンから選ばれる炭素化合物及び針状結晶ウイスカーの少なくとも一種の導電性材料からなる。好ましくは、該導電性材料を不織布に担持させ、好ましくは、該導電性材料層が高分子樹脂を含有する電磁波吸収材料である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波帯域、特に、マイクロ波、ミリ波域の電磁波吸収を可能にする電磁波吸収材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、パーソナルコンピュータや携帯電話等の電子機器の普及、更には高度情報社会の実現に向けての通信分野を中心に電磁波の利用が拡大している。また、近年のマイクロエレクトロニクス技術の進歩により多種多様な電子機器が普及している。この様な環境下、不要な電磁波による電磁ノイズが精密機器に及ぼす影響が指摘されている(例えば、非特許文献1)。そのため、機器の誤動作や故障の防止、不要な電磁波の放射抑制、外部からの電磁波に対する充分な耐性を保証する電磁環境両立性が要求されている。更には、室内無線LANにおいて情報の漏洩防止が求められている。
【0003】
かかる問題への対策として種々の電磁波対策材料が提案されている。電磁波対策材料は、外部電磁波の進入防止と発生電磁波の外部への伝播防止を目的とした電磁波遮蔽材と、電磁波そのものを吸収する電波吸収体とに大別される。しかし、電磁波遮蔽材は電磁波を全反射するのみであって、電磁波の透過防止には有効であるが、反射波の対策が必要となる。以上のことから、電磁環境対策として、電波吸収体が注目されている(例えば、非特許文献1、2、3、4参照)。
【0004】
一般に、電波吸収体は、磁性体粉末混合型、導電性粉末混合型、λ/4型電波吸収体の3種類に大別できる(例えば、非特許文献2)。一方、電波吸収体の用途としては、電磁環境に対応して四角錐型あるいは山型形状等の種々の形状の電波暗室用、フェライトを用いたテレビゴースト防止対策用などに利用されている(例えば、非特許文献2、3、4参照)。
【0005】
電波吸収体用材料としては、炭素系、金属炭素併用系、磁性体粉系があり、炭素系の代表的なものには、カーボン、炭素繊維、コイル状炭素繊維等がある(例えば、非特許文献2参照)。
【0006】
高周波帯域のミリ波帯の電波吸収体は、電波工学に基づく材料定数の測定、理論設計を必要とすることから、その作製は容易ではなかった(例えば、非特許文献3参照)。
【0007】
また、電磁波吸収層と電磁波反射層を一体化成型したミリ波帯電波吸収体の作製には、真空加圧成形で177℃で2時間の硬化を必要としているので、一体化成形加工が容易にできるものとはいえなかった(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開平6−232581号公報
【非特許文献1】
「電磁波シールド材料の現状と将来」東レリサーチセンター発行、1997年12月、P.1−13
【非特許文献2】
特許庁編「電磁波遮蔽技術」発明協会発行、2001年6月19日、P.109、122−123、151
【非特許文献3】
橋本修著「機能材料−特集電波吸収体技術」シーエムシー発行、1998年10月号
【非特許文献4】
橋本修著「電波吸収体のはなし」日刊工業新聞社発行、2001年6月29日
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、電波工学に基づく精密な設計を必要とせず、一体化成型加工が容易で、かつ切断加工時の導電性材料の破損や剥がれ落ち等の加工適性に優れ、剛性が高く取り扱いが容易であり、電磁波を吸収する導電性材料を含有する導電性材料層の厚さを任意に選択できる電磁波吸収材料を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、樹脂被覆紙からなる保持層の少なくとも2層間に導電性材料を含有する導電性材料層を設けたことを特徴とする電磁波吸収材料である。
好ましくは、加熱加圧法により該保持層と該導電性材料層を一体化することを特徴とする電磁波吸収材料である。
好ましくは、該導電性材料がカーボンブラック、無定形炭素、グラファイト、繊維状炭素、ナノカーボンから選ばれる炭素化合物及び、針状結晶ウイスカーの少なくとも一種の導電性材料からなることを特徴とする電磁波吸収材料である。好ましくは、該導電性材料を不織布に担持させることを特徴とする電磁波吸収材料である。
好ましくは、該導電性材料層が高分子樹脂を含有することを特徴とする電磁波吸収材料である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明になる電磁波吸収材料は、樹脂被覆紙からなる保持層の少なくとも2層間に導電性材料を含有する導電性材料層を設けたことにより、該導電性材料層が露出することがなく、外界の衝撃に対する堅牢性が確保できる特徴がある。また、該導電性材料層の両面が保持層と一体化されることにより、該導電性材料層の破損や剥がれ落ちなどが少ないという切断時加工性等にも優れ、更に任意の大きさに成型することが容易である等の特徴がある。以上のような特徴は、プラスチックフイルムに導電性材料を塗布しただけの従来公知の電磁波吸収材料と比較して、実用性に優れた電磁波吸収材料を提供するものである。
【0012】
本発明に用いる導電性材料は、カーボンブラック、無定形炭素、グラファイト、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、コイル状炭素繊維等の繊維状炭素、フラーレン、カーボンナノチューブ等のナノカーボン類から選ばれる炭素化合物及び、炭素で表面処理した二酸化チタンの針状結晶等の針状結晶ウイスカーの少なくとも一種の導電性材料からなる。これらは単独又は組み合わせて使用することができる。
【0013】
樹脂被覆紙からなる保持層の少なくとも2層間に導電性材料を含有する導電性材料層の厚さや該導電性材料量は、特に制限はないが、1〜2000g/m2が好ましい。導電性材料の種類或いは組み合わせによって、電磁波吸収量が異なるため、吸収しようとする電磁波の波長や強度或いは加工性や剛性等によって、該導電性材料の含有量を適宜決めることができる。該保持層間に含有する該導電性材料が低含有量の場合は、本発明になる電磁波吸収材料を積層することによって、所望の電磁波吸収量を確保することができる。1g/m2未満の場合、導電性材料層が不均一になり易いため、電磁波吸収性能が不均一になったり、加工性が不均一になったりするため好ましくないが、本発明になる電磁波吸収材料を積層することによって、実使用は可能である。該保持層間に含有する該導電性材料が高含有量の場合は、電磁波吸収量は十分に確保されるが、該導電性材料の破損や剥がれ落ちが生じ、加工性や剛性の点で実使用上の問題が生じやすい。2000g/m2を超える場合、層が厚くなりすぎ、塗布装置の選定が限られることや、破損や剥がれ落ちが生じやすくなるため好ましくない。
【0014】
本発明に用いる樹脂被覆紙は、パルプ成分を主成分とする紙基体と樹脂よりなり、紙基体の片面或いは両面を樹脂で被覆してなる。紙基体に樹脂を被覆する方法としては、抄紙機により抄造したパルプ成分を主成分とした紙基体にフィルム状樹脂を接着剤により貼合せる方法や紙基体に樹脂を熱融着被覆したいわゆるドライラミネートによる方法など、公知の方法が用いられる。
【0015】
紙基体は、天然木材パルプ、非木材繊維、合成パルプ、合成繊維などのパルプや繊維を主成分として構成される。例えば、パルプとしては、針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒し亜硫酸パルプ(NBSP)、広葉樹晒し亜硫酸パルプ(LBSP)、木綿パルプ等が挙げられる。また、これらの紙基体中には各種の高分子化合物、填料、添加剤を必要に応じ含有することができる。例えば、乾燥紙力増強剤としてカチオン化殿粉、カチオン化ポリアクリルアミド、アニオン化ポリアクリルアミド、両性ポリアクリルアミド、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、ゼラチンなど、湿潤紙力増強剤としてメラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ化ポリアミド樹脂など、定着剤として硫酸アルミニウム、塩化アルミニウムなどの多価金属塩、カチオン化殿粉などのカチオン変性ポリマー、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマーなど、サイズ剤として脂肪酸塩、ロジン誘導体、ジアルキルケテンダイマー乳化物、石油樹脂エマルジョンなどの中性サイズ剤や酸性サイズ剤、填料としてクレー、カオリン、焼成カオリン、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、珪酸マグネシウムなど、pH調節剤としてカセイソーダ、炭酸ソーダ、塩酸など、無機電解質として食塩、ボウ硝など、そのほか染料、蛍光増白剤、ラテックス、帯電防止剤等を適宜組み合わせて含有せしめることが出来る。又、抄紙後、表面サイズとして、サイズプレス等にて澱粉や水溶性ポリマー、ラテックスなど等のサイズ剤を付与して製造することもできる。
【0016】
上記原材料により作製した紙基体は、坪量には特に制限がないが、坪量50g/m2〜300g/m2で密度が0.70〜1.15g/cm3の範囲が紙基体として好ましい。坪量が、50g/m2より小さいと、熱による変形が著しく、積層板にゆがみを生じ易くなる。300g/m2より厚いと、積層板全体として、紙基体に対する樹脂層の割合が少なくなる傾向になり、積層板中の樹脂層の存在頻度が減り複合材料のメリットが低下したり、熱の伝導が低下し一体化が不均一になる傾向がある。
【0017】
紙基体の片面或いは両面を被覆する樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテンなどのポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体等があげられる。これらの樹脂中には、酸化チタン、酸化亜鉛などの白色顔料やステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩及び群青、紺青、フタロシアニンブルーなどの顔料や染料、その他の改質剤、離型剤を含でも構わない。
【0018】
上記紙基体を被覆する樹脂量は、特に制限はないが、片面あたり6g/m2〜50g/m2が好ましい。6g/m2より少ないと樹脂層の密着する充分な厚さとはならず、加熱加圧法により導電性材料層を一体化する際に、樹脂の導電性材料に対する圧着が不十分で一体化し難い場合がある。50g/m2より厚くなると、熱の伝導が低下し一体化が不均一になる傾向がある。また本発明で用いられる樹脂被覆紙は、加圧および加熱による貼り合わせに充分な強度が出るものであれば、裏面に目的に応じた裏塗層を設けたものでも良く、また表面に下引層を設けたものでも良い。
【0019】
本発明における保持層と導電性材料層の一体化には、導電性材料と接着剤を混合して塗工又は含浸する方法、ローラーやプレート等でプレスする方法、保持層に導電性材料層を積層した後に加熱加圧して圧着させる方法等を用いることができる。本発明においては、保持層に導電性材料層を積層した後、加熱加圧して圧着させる方法が好ましい。保持層に導電性材料層を積層する際には、導電性材料層は1層でも、2層以上を積層しても構わない。
【0020】
本発明においては、樹脂被覆紙からなる保持層上に導電性材料層を上記方法によって積層し、更に、導電性材料層上に樹脂被覆紙を積層することによって、樹脂被覆紙からなる保持層の少なくとも2層間に導電性材料を含有する導電性材料層を設けた後、樹脂被覆紙に用いた樹脂の軟化点以上の温度で加熱及び加圧して一体化することが好ましい。例えば、該樹脂の軟化点は、低密度ポリエチレンでは70〜105℃、高密度ポリエチレンでは125〜127℃である。従って、低密度ポリエチレンの場合は110℃以上が好ましく、高密度ポリエチレンの場合は130℃以上が好ましいが、該樹脂の軟化点以上の温度であればよい。また、圧力については、5〜40kg/cm2、時間は、1〜30分が好ましいが、更に、更に、40kg/cm2以上の高圧力で、1分以内の短時間であっても、一体化できればよく、特に制限されない。
【0021】
導電性材料層と保持層を更に一体化させやすくするためには、塗工装置により導電性材料を不織布に担持させてから、保持層に積層した後、加熱加圧により圧着させることが好ましい。
【0022】
かかる不織布には、ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン等を主原料として湿式法又は乾式法により作製した不織布を使用することができる。樹脂被覆紙に用いる樹脂と同系統或いは同程度の軟化点の樹脂を主原料として作製した不織布は、更に好ましい。例えば、樹脂被覆紙に用いる樹脂がポリオレフィンならば、不織布もポリオレフィンを用いることが加熱加圧法による一体化の際に、一体化し易いので好ましい。不織布に導電性材料を担持させる方法としては、塗工法、散布法、含浸法等が挙げられる。塗工法としては、ブレード、エアーナイフ、バー、ロール、カーテン塗工法等が利用でき、ロール等での延展法や加圧法も用いることができる。
【0023】
更に、導電性材料層中に含有することができる高分子樹脂としては、水溶性高分子、非水溶性高分子が挙げられ、これらは水、溶剤に溶解又は樹脂粒子として、水分散、溶剤分散又は粒子のまま使用することができる。例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、スチレン/アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸三元共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン三元共重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂、デンプン類、ゼラチン、カゼイン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、アルギン酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸のアルカリ塩、ポリマレイン酸のアルカリ塩、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、セルロース誘導体としてヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が単独あるいは複合して用いられる。特に、加熱加圧法による保持層と導電性材料層の一体化では、高分子樹脂を含有することにより、一体化後の導電性材料層の強度を増すことができる。
【0024】
樹脂被覆紙からなる保持層間に導電性材料層を積層させる際、樹脂被覆紙からなる保持層は、導電性材料層の両側各々に樹脂被覆紙1枚又は2枚以上積層しても構わない。2枚以上の場合は、加熱加圧によって樹脂被覆紙の樹脂層同士が圧着し保持層の厚みを変化させることができる。
【0025】
なお、本発明の電磁波吸収材料は、成型加工後に従来公知の電波吸収体のごとく、アルミ等の金属を用いた反射板やスチレンボード等を組合せて使用することも可能であり、かつ、木質、石膏ボード、タイル、セラミック、プラスチック等の建材、化粧板等と組み合わせて使用することも可能である。利用の形態については、なんら制限を受けない。
【0026】
【実施例】
以下、実施例により、本発明の実施の形態を説明する。
【0027】
[実施例1]
広葉樹晒クラフトパルプと針葉樹晒サルファイトパルプの1:1混合物をカナディアンスタンダードフリーネスで300mlcfsになるまで叩解し、パルプスラリーを作成した。これにサイズ剤としてアルキルケテンダイマー(DHC社製アコーペル12)を対パルプ0.5%、カチオン化でんぷん(王子ナショナル社製ケイトーF)を対パルプ2.0%を添加して水で希釈後1%スラリーとして坪量170g/m2になるように長網抄紙機で抄造して樹脂被覆紙の紙基体とした。更に、密度0.918g/m3の低密度ポリエチレン100%の樹脂に対して、10%のアナターゼ型二酸化チタンを均一に分散したポリエチレン樹脂組成物を320℃で溶融し、紙基体の両面に片面厚さ30ミクロンになるように押し出しコーティングして樹脂被覆紙を作製し、保持層とした。
導電性材料としてグラファイト粉末(日本黒鉛株式会社製高純度黒鉛粉末)100グラムと、高分子樹脂として固形分50%のスチレンアクリル系樹脂エマルジョン100グラムを混合し、水195グラム、10%濃度のアニオン性界面活性剤5グラムを加えて水分散物を調製した。
上記保持層としての樹脂被覆紙をゼラチンで親水化加工をした後、上記導電性材料の水分散物を塗布量が固形分で1500g/m2になるように塗工装置で塗工、乾燥し、乾燥時の厚さ9mmの導電性材料層を設けた保持層−導電性材料層積層体を得た。更にその積層体の導電性材料層の上に樹脂被覆紙を2枚重ねて置き、その積層体の保持層側に密着して上記樹脂被覆紙を1枚重ねて置いた後、圧力10kg/cm2、温度120℃、時間5分間の条件で加熱加圧を行い、導電性材料層に対し両面に樹脂被覆紙の保持層を有する実施例1の電磁波吸収材料を得た。
【0028】
[実施例2]
導電性材料としてグラファイト粉末100グラムの代わりに、カーボンブラック100グラムを使用した他は、実施例1と同様にして、導電性材料層に対し両面に樹脂被覆紙の保持層を有する実施例2の電磁波吸収材料を得た。
【0029】
[実施例3]
導電性材料としてグラファイト粉末100グラムと炭素で導電化した二酸化チタン針状ウィスカー(大塚化学株式会社製デントールBK)10グラム、高分子樹脂として固形分50%のスチレンアクリル系樹脂エマルジョン100グラムを混合し、水185グラム、10%濃度のアニオン性界面活性剤5グラムを加えて水分散物を調製した。この水分散物を使用した他は、実施例1と同様にして、導電性材料層に対し両面に樹脂被覆紙の保持層を有する実施例3の電磁波吸収材料を得た。
【0030】
[実施例4]
導電性材料としてグラファイト粉末100グラムの代わりに、PAN系炭素繊維100グラムを使用した他は、実施例1と同様にして、導電性材料層に対し両面に樹脂被覆紙の保持層を有する実施例4の電磁波吸収材料を得た。
【0031】
[実施例5]
導電性材料としてコイル状炭素繊維5グラム、高分子樹脂としてメチルメタクリレートアクリル共重合体樹脂95グラムと固形分50%のスチレンアクリル系樹脂エマルジョン100グラムを混合し、水195グラム、10%濃度のアニオン性界面活性剤5グラムを加えて水分散物を調製した。この水分散物を使用した他は、実施例1と同様にして、導電性材料層に対し両面に樹脂被覆紙の保持層を有する実施例5の電磁波吸収材料を得た。
【0032】
[実施例6]
実施例3の水分散物を、坪量100g/m2のポリプロピレン不織布に塗工装置で固形分で750g/m2になるように塗布し、導電性材料を担持した不織布シートを作製した。次いで、実施例1と同様にして作製した樹脂被覆紙を2枚重ねて、その上に上記の導電性材料を担持した不織布シート2枚を積層し、更に、樹脂被覆紙2枚を重ねて積層し、圧力10kg/cm2、温度120℃、時間5分間の条件で加熱加圧を行い、導電性材料層に対し両面に樹脂被覆紙の保持層を有する実施例6の電磁波吸収材料を得た。
【0033】
[実施例7]
実施例5の水分散物を用いた他は、実施例6と同様にして、導電性材料層に対し両面に樹脂被覆紙の保持層を有する実施例7の電磁波吸収材料を得た。
【0034】
[比較例1]
実施例1の樹脂被覆紙及び導電性材料の水分散物を用いて、実施例1と同様にして保持層−導電性材料層積層体を作製した後、その積層体の両面に樹脂被覆紙を重ねない他は、実施例1と同様の条件で加熱加圧を行い、導電性材料層に対し片面に樹脂被覆紙の保持層を有する比較例1の電磁波吸収材料を得た。
尚、導電性材料層は、片面の保持層に圧着されているだけで、導電性材料層が露出している。
【0035】
[比較例2]
保持層として樹脂被覆紙の代わりに、ゼラチンで親水化加工した175ミクロン厚のポリエステルフイルムを用いた他は、 実施例1の導電性材料の水分散物を用いて、比較例1と同様にして、導電性材料層に対し片面にポリエステルフィルムの保持層を有する比較例2の電磁波吸収材料を得た。
【0036】
[比較例3]
保持層として樹脂被覆紙の代わりに、ゼラチンで親水化加工した175ミクロン厚のポリエステルフイルムを用いた他は、 実施例1の導電性材料の水分散物を用いて、実施例1と同様にして、導電性材料層に対し両面にポリエステルフィルムの保持層を有する比較例3の電磁波吸収材料を得た。
【0037】
<評価方法>
1.電磁波吸収特性
反射電力法によって行った。試料は15cm×15cmに押し切りカッターで裁断して作成した。その表示単位は、電磁波吸収量をデシベル(dB)で表示した。数値が大きいほど電磁波の吸収量が大きいことを示す。表1に、60GHz帯域における電磁波吸収量の測定値をまとめた。20dB以上の吸収量が好ましい。
2.剛性
一体化した上記試料(電波吸収材料)を水平にしたとき重力による曲がりが全く認められないか、ほとんど認められない場合を○とし、重力による曲がりが大きい場合は×とし、重力による曲がりがやや大きい場合を△とした。△と×は好ましくない。曲がりやすい場合には、導電性材料層が保持層から脱落し易いため好ましくない。
3.加工性
電磁波吸収材料を切断加工したときに、導電性材料層の破損及び剥がれ落ちが起こる程度で評価した。破損及び剥がれ落ちがほとんど起こらない場合を◎、破損及び剥がれ落ちが僅かにあるが実用上問題がない場合を○とし、破損及び剥がれ落ちが大きく実用上問題である場合を×とし、破損及び剥がれ落ちがやや大きく実用上問題である場合を△とした。△と×は加工性に問題があり実用上好ましくない。
【0038】
【表1】
【0039】
<評価結果>
表1から、実施例1〜7は、導電性材料層に対して両面に樹脂被覆紙の保持層を有することにより、また加熱加圧法により保持層と導電性材料層を一体化することにより、電磁波吸収性能を維持しながら、導電性材料層の破損や剥がれ落ちが少なく、切断等の加工適性に優れ、剛性も高く、実用性が極めて高いことを示している。尚、保持層としての樹脂被覆紙は、比較例2、3より剛性、加工性に優れていることを示している。不織布に導電性材料を担持させた場合、更に優れた加工性を示し、切断加工時に導電性材料層の破損や剥がれ落ちが、ほとんど起こらなかった。
【0040】
【発明の効果】
本発明の樹脂被覆紙からなる保持層の少なくとも2層間に導電性材料を含有する導電性材料層を設けたことを特徴とする電磁波吸収材料は、電波工学理論による設計を必要とせず、一体化成型加工が容易で、かつ切断加工時の導電性材料の破損や剥がれ落ち等の加工適性に優れ、剛性が高く取り扱いが容易であり、電磁波を吸収する導電性材料を含有する導電性材料層の厚さを任意に選択できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波帯域、特に、マイクロ波、ミリ波域の電磁波吸収を可能にする電磁波吸収材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、パーソナルコンピュータや携帯電話等の電子機器の普及、更には高度情報社会の実現に向けての通信分野を中心に電磁波の利用が拡大している。また、近年のマイクロエレクトロニクス技術の進歩により多種多様な電子機器が普及している。この様な環境下、不要な電磁波による電磁ノイズが精密機器に及ぼす影響が指摘されている(例えば、非特許文献1)。そのため、機器の誤動作や故障の防止、不要な電磁波の放射抑制、外部からの電磁波に対する充分な耐性を保証する電磁環境両立性が要求されている。更には、室内無線LANにおいて情報の漏洩防止が求められている。
【0003】
かかる問題への対策として種々の電磁波対策材料が提案されている。電磁波対策材料は、外部電磁波の進入防止と発生電磁波の外部への伝播防止を目的とした電磁波遮蔽材と、電磁波そのものを吸収する電波吸収体とに大別される。しかし、電磁波遮蔽材は電磁波を全反射するのみであって、電磁波の透過防止には有効であるが、反射波の対策が必要となる。以上のことから、電磁環境対策として、電波吸収体が注目されている(例えば、非特許文献1、2、3、4参照)。
【0004】
一般に、電波吸収体は、磁性体粉末混合型、導電性粉末混合型、λ/4型電波吸収体の3種類に大別できる(例えば、非特許文献2)。一方、電波吸収体の用途としては、電磁環境に対応して四角錐型あるいは山型形状等の種々の形状の電波暗室用、フェライトを用いたテレビゴースト防止対策用などに利用されている(例えば、非特許文献2、3、4参照)。
【0005】
電波吸収体用材料としては、炭素系、金属炭素併用系、磁性体粉系があり、炭素系の代表的なものには、カーボン、炭素繊維、コイル状炭素繊維等がある(例えば、非特許文献2参照)。
【0006】
高周波帯域のミリ波帯の電波吸収体は、電波工学に基づく材料定数の測定、理論設計を必要とすることから、その作製は容易ではなかった(例えば、非特許文献3参照)。
【0007】
また、電磁波吸収層と電磁波反射層を一体化成型したミリ波帯電波吸収体の作製には、真空加圧成形で177℃で2時間の硬化を必要としているので、一体化成形加工が容易にできるものとはいえなかった(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開平6−232581号公報
【非特許文献1】
「電磁波シールド材料の現状と将来」東レリサーチセンター発行、1997年12月、P.1−13
【非特許文献2】
特許庁編「電磁波遮蔽技術」発明協会発行、2001年6月19日、P.109、122−123、151
【非特許文献3】
橋本修著「機能材料−特集電波吸収体技術」シーエムシー発行、1998年10月号
【非特許文献4】
橋本修著「電波吸収体のはなし」日刊工業新聞社発行、2001年6月29日
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、電波工学に基づく精密な設計を必要とせず、一体化成型加工が容易で、かつ切断加工時の導電性材料の破損や剥がれ落ち等の加工適性に優れ、剛性が高く取り扱いが容易であり、電磁波を吸収する導電性材料を含有する導電性材料層の厚さを任意に選択できる電磁波吸収材料を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、樹脂被覆紙からなる保持層の少なくとも2層間に導電性材料を含有する導電性材料層を設けたことを特徴とする電磁波吸収材料である。
好ましくは、加熱加圧法により該保持層と該導電性材料層を一体化することを特徴とする電磁波吸収材料である。
好ましくは、該導電性材料がカーボンブラック、無定形炭素、グラファイト、繊維状炭素、ナノカーボンから選ばれる炭素化合物及び、針状結晶ウイスカーの少なくとも一種の導電性材料からなることを特徴とする電磁波吸収材料である。好ましくは、該導電性材料を不織布に担持させることを特徴とする電磁波吸収材料である。
好ましくは、該導電性材料層が高分子樹脂を含有することを特徴とする電磁波吸収材料である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明になる電磁波吸収材料は、樹脂被覆紙からなる保持層の少なくとも2層間に導電性材料を含有する導電性材料層を設けたことにより、該導電性材料層が露出することがなく、外界の衝撃に対する堅牢性が確保できる特徴がある。また、該導電性材料層の両面が保持層と一体化されることにより、該導電性材料層の破損や剥がれ落ちなどが少ないという切断時加工性等にも優れ、更に任意の大きさに成型することが容易である等の特徴がある。以上のような特徴は、プラスチックフイルムに導電性材料を塗布しただけの従来公知の電磁波吸収材料と比較して、実用性に優れた電磁波吸収材料を提供するものである。
【0012】
本発明に用いる導電性材料は、カーボンブラック、無定形炭素、グラファイト、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、コイル状炭素繊維等の繊維状炭素、フラーレン、カーボンナノチューブ等のナノカーボン類から選ばれる炭素化合物及び、炭素で表面処理した二酸化チタンの針状結晶等の針状結晶ウイスカーの少なくとも一種の導電性材料からなる。これらは単独又は組み合わせて使用することができる。
【0013】
樹脂被覆紙からなる保持層の少なくとも2層間に導電性材料を含有する導電性材料層の厚さや該導電性材料量は、特に制限はないが、1〜2000g/m2が好ましい。導電性材料の種類或いは組み合わせによって、電磁波吸収量が異なるため、吸収しようとする電磁波の波長や強度或いは加工性や剛性等によって、該導電性材料の含有量を適宜決めることができる。該保持層間に含有する該導電性材料が低含有量の場合は、本発明になる電磁波吸収材料を積層することによって、所望の電磁波吸収量を確保することができる。1g/m2未満の場合、導電性材料層が不均一になり易いため、電磁波吸収性能が不均一になったり、加工性が不均一になったりするため好ましくないが、本発明になる電磁波吸収材料を積層することによって、実使用は可能である。該保持層間に含有する該導電性材料が高含有量の場合は、電磁波吸収量は十分に確保されるが、該導電性材料の破損や剥がれ落ちが生じ、加工性や剛性の点で実使用上の問題が生じやすい。2000g/m2を超える場合、層が厚くなりすぎ、塗布装置の選定が限られることや、破損や剥がれ落ちが生じやすくなるため好ましくない。
【0014】
本発明に用いる樹脂被覆紙は、パルプ成分を主成分とする紙基体と樹脂よりなり、紙基体の片面或いは両面を樹脂で被覆してなる。紙基体に樹脂を被覆する方法としては、抄紙機により抄造したパルプ成分を主成分とした紙基体にフィルム状樹脂を接着剤により貼合せる方法や紙基体に樹脂を熱融着被覆したいわゆるドライラミネートによる方法など、公知の方法が用いられる。
【0015】
紙基体は、天然木材パルプ、非木材繊維、合成パルプ、合成繊維などのパルプや繊維を主成分として構成される。例えば、パルプとしては、針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒し亜硫酸パルプ(NBSP)、広葉樹晒し亜硫酸パルプ(LBSP)、木綿パルプ等が挙げられる。また、これらの紙基体中には各種の高分子化合物、填料、添加剤を必要に応じ含有することができる。例えば、乾燥紙力増強剤としてカチオン化殿粉、カチオン化ポリアクリルアミド、アニオン化ポリアクリルアミド、両性ポリアクリルアミド、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、ゼラチンなど、湿潤紙力増強剤としてメラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ化ポリアミド樹脂など、定着剤として硫酸アルミニウム、塩化アルミニウムなどの多価金属塩、カチオン化殿粉などのカチオン変性ポリマー、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマーなど、サイズ剤として脂肪酸塩、ロジン誘導体、ジアルキルケテンダイマー乳化物、石油樹脂エマルジョンなどの中性サイズ剤や酸性サイズ剤、填料としてクレー、カオリン、焼成カオリン、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、珪酸マグネシウムなど、pH調節剤としてカセイソーダ、炭酸ソーダ、塩酸など、無機電解質として食塩、ボウ硝など、そのほか染料、蛍光増白剤、ラテックス、帯電防止剤等を適宜組み合わせて含有せしめることが出来る。又、抄紙後、表面サイズとして、サイズプレス等にて澱粉や水溶性ポリマー、ラテックスなど等のサイズ剤を付与して製造することもできる。
【0016】
上記原材料により作製した紙基体は、坪量には特に制限がないが、坪量50g/m2〜300g/m2で密度が0.70〜1.15g/cm3の範囲が紙基体として好ましい。坪量が、50g/m2より小さいと、熱による変形が著しく、積層板にゆがみを生じ易くなる。300g/m2より厚いと、積層板全体として、紙基体に対する樹脂層の割合が少なくなる傾向になり、積層板中の樹脂層の存在頻度が減り複合材料のメリットが低下したり、熱の伝導が低下し一体化が不均一になる傾向がある。
【0017】
紙基体の片面或いは両面を被覆する樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテンなどのポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体等があげられる。これらの樹脂中には、酸化チタン、酸化亜鉛などの白色顔料やステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩及び群青、紺青、フタロシアニンブルーなどの顔料や染料、その他の改質剤、離型剤を含でも構わない。
【0018】
上記紙基体を被覆する樹脂量は、特に制限はないが、片面あたり6g/m2〜50g/m2が好ましい。6g/m2より少ないと樹脂層の密着する充分な厚さとはならず、加熱加圧法により導電性材料層を一体化する際に、樹脂の導電性材料に対する圧着が不十分で一体化し難い場合がある。50g/m2より厚くなると、熱の伝導が低下し一体化が不均一になる傾向がある。また本発明で用いられる樹脂被覆紙は、加圧および加熱による貼り合わせに充分な強度が出るものであれば、裏面に目的に応じた裏塗層を設けたものでも良く、また表面に下引層を設けたものでも良い。
【0019】
本発明における保持層と導電性材料層の一体化には、導電性材料と接着剤を混合して塗工又は含浸する方法、ローラーやプレート等でプレスする方法、保持層に導電性材料層を積層した後に加熱加圧して圧着させる方法等を用いることができる。本発明においては、保持層に導電性材料層を積層した後、加熱加圧して圧着させる方法が好ましい。保持層に導電性材料層を積層する際には、導電性材料層は1層でも、2層以上を積層しても構わない。
【0020】
本発明においては、樹脂被覆紙からなる保持層上に導電性材料層を上記方法によって積層し、更に、導電性材料層上に樹脂被覆紙を積層することによって、樹脂被覆紙からなる保持層の少なくとも2層間に導電性材料を含有する導電性材料層を設けた後、樹脂被覆紙に用いた樹脂の軟化点以上の温度で加熱及び加圧して一体化することが好ましい。例えば、該樹脂の軟化点は、低密度ポリエチレンでは70〜105℃、高密度ポリエチレンでは125〜127℃である。従って、低密度ポリエチレンの場合は110℃以上が好ましく、高密度ポリエチレンの場合は130℃以上が好ましいが、該樹脂の軟化点以上の温度であればよい。また、圧力については、5〜40kg/cm2、時間は、1〜30分が好ましいが、更に、更に、40kg/cm2以上の高圧力で、1分以内の短時間であっても、一体化できればよく、特に制限されない。
【0021】
導電性材料層と保持層を更に一体化させやすくするためには、塗工装置により導電性材料を不織布に担持させてから、保持層に積層した後、加熱加圧により圧着させることが好ましい。
【0022】
かかる不織布には、ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン等を主原料として湿式法又は乾式法により作製した不織布を使用することができる。樹脂被覆紙に用いる樹脂と同系統或いは同程度の軟化点の樹脂を主原料として作製した不織布は、更に好ましい。例えば、樹脂被覆紙に用いる樹脂がポリオレフィンならば、不織布もポリオレフィンを用いることが加熱加圧法による一体化の際に、一体化し易いので好ましい。不織布に導電性材料を担持させる方法としては、塗工法、散布法、含浸法等が挙げられる。塗工法としては、ブレード、エアーナイフ、バー、ロール、カーテン塗工法等が利用でき、ロール等での延展法や加圧法も用いることができる。
【0023】
更に、導電性材料層中に含有することができる高分子樹脂としては、水溶性高分子、非水溶性高分子が挙げられ、これらは水、溶剤に溶解又は樹脂粒子として、水分散、溶剤分散又は粒子のまま使用することができる。例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、スチレン/アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸三元共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン三元共重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂、デンプン類、ゼラチン、カゼイン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、アルギン酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸のアルカリ塩、ポリマレイン酸のアルカリ塩、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、セルロース誘導体としてヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が単独あるいは複合して用いられる。特に、加熱加圧法による保持層と導電性材料層の一体化では、高分子樹脂を含有することにより、一体化後の導電性材料層の強度を増すことができる。
【0024】
樹脂被覆紙からなる保持層間に導電性材料層を積層させる際、樹脂被覆紙からなる保持層は、導電性材料層の両側各々に樹脂被覆紙1枚又は2枚以上積層しても構わない。2枚以上の場合は、加熱加圧によって樹脂被覆紙の樹脂層同士が圧着し保持層の厚みを変化させることができる。
【0025】
なお、本発明の電磁波吸収材料は、成型加工後に従来公知の電波吸収体のごとく、アルミ等の金属を用いた反射板やスチレンボード等を組合せて使用することも可能であり、かつ、木質、石膏ボード、タイル、セラミック、プラスチック等の建材、化粧板等と組み合わせて使用することも可能である。利用の形態については、なんら制限を受けない。
【0026】
【実施例】
以下、実施例により、本発明の実施の形態を説明する。
【0027】
[実施例1]
広葉樹晒クラフトパルプと針葉樹晒サルファイトパルプの1:1混合物をカナディアンスタンダードフリーネスで300mlcfsになるまで叩解し、パルプスラリーを作成した。これにサイズ剤としてアルキルケテンダイマー(DHC社製アコーペル12)を対パルプ0.5%、カチオン化でんぷん(王子ナショナル社製ケイトーF)を対パルプ2.0%を添加して水で希釈後1%スラリーとして坪量170g/m2になるように長網抄紙機で抄造して樹脂被覆紙の紙基体とした。更に、密度0.918g/m3の低密度ポリエチレン100%の樹脂に対して、10%のアナターゼ型二酸化チタンを均一に分散したポリエチレン樹脂組成物を320℃で溶融し、紙基体の両面に片面厚さ30ミクロンになるように押し出しコーティングして樹脂被覆紙を作製し、保持層とした。
導電性材料としてグラファイト粉末(日本黒鉛株式会社製高純度黒鉛粉末)100グラムと、高分子樹脂として固形分50%のスチレンアクリル系樹脂エマルジョン100グラムを混合し、水195グラム、10%濃度のアニオン性界面活性剤5グラムを加えて水分散物を調製した。
上記保持層としての樹脂被覆紙をゼラチンで親水化加工をした後、上記導電性材料の水分散物を塗布量が固形分で1500g/m2になるように塗工装置で塗工、乾燥し、乾燥時の厚さ9mmの導電性材料層を設けた保持層−導電性材料層積層体を得た。更にその積層体の導電性材料層の上に樹脂被覆紙を2枚重ねて置き、その積層体の保持層側に密着して上記樹脂被覆紙を1枚重ねて置いた後、圧力10kg/cm2、温度120℃、時間5分間の条件で加熱加圧を行い、導電性材料層に対し両面に樹脂被覆紙の保持層を有する実施例1の電磁波吸収材料を得た。
【0028】
[実施例2]
導電性材料としてグラファイト粉末100グラムの代わりに、カーボンブラック100グラムを使用した他は、実施例1と同様にして、導電性材料層に対し両面に樹脂被覆紙の保持層を有する実施例2の電磁波吸収材料を得た。
【0029】
[実施例3]
導電性材料としてグラファイト粉末100グラムと炭素で導電化した二酸化チタン針状ウィスカー(大塚化学株式会社製デントールBK)10グラム、高分子樹脂として固形分50%のスチレンアクリル系樹脂エマルジョン100グラムを混合し、水185グラム、10%濃度のアニオン性界面活性剤5グラムを加えて水分散物を調製した。この水分散物を使用した他は、実施例1と同様にして、導電性材料層に対し両面に樹脂被覆紙の保持層を有する実施例3の電磁波吸収材料を得た。
【0030】
[実施例4]
導電性材料としてグラファイト粉末100グラムの代わりに、PAN系炭素繊維100グラムを使用した他は、実施例1と同様にして、導電性材料層に対し両面に樹脂被覆紙の保持層を有する実施例4の電磁波吸収材料を得た。
【0031】
[実施例5]
導電性材料としてコイル状炭素繊維5グラム、高分子樹脂としてメチルメタクリレートアクリル共重合体樹脂95グラムと固形分50%のスチレンアクリル系樹脂エマルジョン100グラムを混合し、水195グラム、10%濃度のアニオン性界面活性剤5グラムを加えて水分散物を調製した。この水分散物を使用した他は、実施例1と同様にして、導電性材料層に対し両面に樹脂被覆紙の保持層を有する実施例5の電磁波吸収材料を得た。
【0032】
[実施例6]
実施例3の水分散物を、坪量100g/m2のポリプロピレン不織布に塗工装置で固形分で750g/m2になるように塗布し、導電性材料を担持した不織布シートを作製した。次いで、実施例1と同様にして作製した樹脂被覆紙を2枚重ねて、その上に上記の導電性材料を担持した不織布シート2枚を積層し、更に、樹脂被覆紙2枚を重ねて積層し、圧力10kg/cm2、温度120℃、時間5分間の条件で加熱加圧を行い、導電性材料層に対し両面に樹脂被覆紙の保持層を有する実施例6の電磁波吸収材料を得た。
【0033】
[実施例7]
実施例5の水分散物を用いた他は、実施例6と同様にして、導電性材料層に対し両面に樹脂被覆紙の保持層を有する実施例7の電磁波吸収材料を得た。
【0034】
[比較例1]
実施例1の樹脂被覆紙及び導電性材料の水分散物を用いて、実施例1と同様にして保持層−導電性材料層積層体を作製した後、その積層体の両面に樹脂被覆紙を重ねない他は、実施例1と同様の条件で加熱加圧を行い、導電性材料層に対し片面に樹脂被覆紙の保持層を有する比較例1の電磁波吸収材料を得た。
尚、導電性材料層は、片面の保持層に圧着されているだけで、導電性材料層が露出している。
【0035】
[比較例2]
保持層として樹脂被覆紙の代わりに、ゼラチンで親水化加工した175ミクロン厚のポリエステルフイルムを用いた他は、 実施例1の導電性材料の水分散物を用いて、比較例1と同様にして、導電性材料層に対し片面にポリエステルフィルムの保持層を有する比較例2の電磁波吸収材料を得た。
【0036】
[比較例3]
保持層として樹脂被覆紙の代わりに、ゼラチンで親水化加工した175ミクロン厚のポリエステルフイルムを用いた他は、 実施例1の導電性材料の水分散物を用いて、実施例1と同様にして、導電性材料層に対し両面にポリエステルフィルムの保持層を有する比較例3の電磁波吸収材料を得た。
【0037】
<評価方法>
1.電磁波吸収特性
反射電力法によって行った。試料は15cm×15cmに押し切りカッターで裁断して作成した。その表示単位は、電磁波吸収量をデシベル(dB)で表示した。数値が大きいほど電磁波の吸収量が大きいことを示す。表1に、60GHz帯域における電磁波吸収量の測定値をまとめた。20dB以上の吸収量が好ましい。
2.剛性
一体化した上記試料(電波吸収材料)を水平にしたとき重力による曲がりが全く認められないか、ほとんど認められない場合を○とし、重力による曲がりが大きい場合は×とし、重力による曲がりがやや大きい場合を△とした。△と×は好ましくない。曲がりやすい場合には、導電性材料層が保持層から脱落し易いため好ましくない。
3.加工性
電磁波吸収材料を切断加工したときに、導電性材料層の破損及び剥がれ落ちが起こる程度で評価した。破損及び剥がれ落ちがほとんど起こらない場合を◎、破損及び剥がれ落ちが僅かにあるが実用上問題がない場合を○とし、破損及び剥がれ落ちが大きく実用上問題である場合を×とし、破損及び剥がれ落ちがやや大きく実用上問題である場合を△とした。△と×は加工性に問題があり実用上好ましくない。
【0038】
【表1】
【0039】
<評価結果>
表1から、実施例1〜7は、導電性材料層に対して両面に樹脂被覆紙の保持層を有することにより、また加熱加圧法により保持層と導電性材料層を一体化することにより、電磁波吸収性能を維持しながら、導電性材料層の破損や剥がれ落ちが少なく、切断等の加工適性に優れ、剛性も高く、実用性が極めて高いことを示している。尚、保持層としての樹脂被覆紙は、比較例2、3より剛性、加工性に優れていることを示している。不織布に導電性材料を担持させた場合、更に優れた加工性を示し、切断加工時に導電性材料層の破損や剥がれ落ちが、ほとんど起こらなかった。
【0040】
【発明の効果】
本発明の樹脂被覆紙からなる保持層の少なくとも2層間に導電性材料を含有する導電性材料層を設けたことを特徴とする電磁波吸収材料は、電波工学理論による設計を必要とせず、一体化成型加工が容易で、かつ切断加工時の導電性材料の破損や剥がれ落ち等の加工適性に優れ、剛性が高く取り扱いが容易であり、電磁波を吸収する導電性材料を含有する導電性材料層の厚さを任意に選択できる。
Claims (5)
- 樹脂被覆紙からなる保持層の少なくとも2層間に導電性材料を含有する導電性材料層を設けたことを特徴とする電磁波吸収材料。
- 加熱加圧法により保持層と導電性材料層を一体化することを特徴とする請求項1記載の電磁波吸収材料。
- 導電性材料がカーボンブラック、無定形炭素、グラファイト、繊維状炭素、ナノカーボンから選ばれる炭素化合物及び針状結晶ウイスカーの少なくとも一種の導電性材料からなることを特徴とする請求項1又は2記載の電磁波吸収材料。
- 導電性材料が不織布に担持させてなることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の電磁波吸収材料。
- 導電性材料層が高分子樹脂を含有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の電磁波吸収材料。
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