JP2004325561A - 位相差フィルムとその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】位相差フィルム打ち抜き工程における収率を向上することができる斜め延伸方法により、均一なレタデーション特性及び良好な透明性を有する位相差フィルムとその製造方法を提供する。
【解決手段】ドープを支持体上に流延して作製したウェブの一方端の把持開始点から把持解除点までの把持手段の軌跡L1及びウェブのもう一端の把持開始点から把持解除点までの把持手段の軌跡L2と、二つの把持解除点の距離Wが、下記式(1)を満たし、かつウェブ中の残留溶媒量が5%以上の状態で延伸したのち、収縮させながら残留溶媒量を低下させ、ウェブの延伸方向と平行に配した空気吹き出し部から風を吹き出して、ウェブを加熱する工程を含む位相差フィルムの製造方法。 式(1) 0.9W<|L2−L1|<1.1W
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は位相差フィルムの製造方法とそれにより作製された位相差フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置は、CRTに比べ省スペース化に有効であること、消費電力が低いことなどの特徴があり、モニター用表示装置等として広く使用されている。
【0003】
通常、液晶表示装置は、液晶セルの表面側と裏面側に一対の偏光板が配置されており、さらに着色防止や視野角拡大等の光学補償などを目的に、位相差フィルムが偏光板と液晶セルの間に配置された構成となっている。
【0004】
位相差フィルムは、偏光板の透過軸に対し遅相軸を種々の角度で設定することが求められる。位相差フィルムは、通常、未延伸のポリマーフィルムを長手方向または横方向に一軸延伸することで作製されており、その遅相軸は長手方向または横方向となっている。従って、ロール形態の位相差フィルムから、位相差フィルムを打ち抜く工程では、液晶セルのサイズに合わせて、その遅相軸が液晶セルの辺に対して所定の傾斜角度となるように打ち抜いて裁断することになり、ロールの端部では端材が発生し、収率の低下が避けられなかった。
【0005】
この問題を解決するためには、位相差フィルムの遅相軸方向が長手方向から角度を持った斜め方向に向いていればよいと考えられる。この観点から、例えば特開2002−22944号公報では、ロール状のセルロースエステルフィルムを、長手方向に対して実質的に45度の方向に延伸処理することにより、長手方向と遅相軸との角度が実質的に45度である、ロール状四分の一波長板の製造方法が提案されている。
【0006】
具体的には、両端の把持部の速度が異なるようにしたテンターにより、あらかじめ幅方向の膜厚を変化させておいたポリマーフィルムを延伸することで達成できるとしている。ところがこの方法では、もともとフィルム巾方向に膜厚偏差をもったものを延伸することになり、更に横方向だけでなく長手方向にもアンバランスに延伸されてしまうので、均一な延伸をすることが困難であった。つまり得られる位相差フィルムのレタデーションのばらつきが大きいものであった。
【0007】
また、特開2002−86554号公報では、連続的に供給されるポリマーフィルムの両端部を保持しながら張力を付与して延伸する際に、揮発分率5%以上で、フィルム両端の保持開始点から保持解除点までの軌跡の差の絶対値と、両端の保持解除点間の距離を一定の関係とする方法が開示されている。
【0008】
この方法では、両端の保持具の速度を変化させる必要がないので、延伸前のフィルムに膜厚偏差を付けておく必要がなく、更に長手方向にアンバランス延伸もされないので、上記問題点を克服できると思われた。ところがこの方法で延伸しても、得られる位相差フィルムのレタデーションのバラツキが存在し、性能が実用上不十分なものであり、更に、四分の一波長板を製造する場合などのように延伸倍率が高くなると、延伸時にフィルムが白濁し、透明性が劣化したり、破断が頻発したりするとの問題があった。
【0009】
特開2002−127245号公報では、ポリマーフィルムの両端を保持手段により保持しつつ張力を付与して延伸する際に、延伸される部分の揮発分含有率を、保持手段に接触する部分の揮発分含有率の1.3倍より大きくする延伸方法が提案されている。この方法によれば、斜め延伸の際も延伸時の破断が減少できるとしている。ところがこの方法では、保持手段近傍のフィルムが延伸されず、更に揮発分率が変化すると延伸倍率が変化し均一な延伸が難しく、また、高延伸のフィルムの白濁による透明性の劣化については、改良されないのが実状であった。
【0010】
【特許文献1】
特開2002−86554号公報
【0011】
【特許文献2】
特開2002−127245号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、位相差フィルムの打ち抜き工程における収率を向上させることができる斜め延伸方法により、均一なレタデーション特性及び良好な透明性を有する位相差フィルムとその製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記特開2002−86554号公報に記載の斜め延伸方法で、巾手に均一なレタデーション特性が得られない原因について鋭意検討した結果、次のことが判明した。つまり、通常のテンターでは、フィルムの加熱手段が複数のノズルを横方向に平行に配置した構造となっており、ノズルから熱風をフィルム面に吹き付けることで加熱している。通常の横延伸の場合では、延伸点は進行方向に直交方向(横方向)であり、延伸中のフィルムは巾手に均一に加熱されるのであるが、斜め延伸では延伸点が進行方向に対して直交方向ではなく斜め方向となっているので、ある時点での延伸点でのフィルムの幅方向での熱履歴が均一とならないことが影響していると考えられた。特にポリマーを有機溶媒に溶解したドープを用いて溶液流延し、生乾きの状態で支持体から剥離したポリマーフィルム(ウェブ)を斜め延伸する場合には、熱履歴の違いが乾燥むらとなり、均一な延伸が著しく困難になる。そこでレタデーションの均一性が向上する延伸方法について検討を続け本発明を完成させたものである。
【0014】
本発明は、下記構成により達成される。
〔1〕 ポリマーと有機溶媒とを含むドープを支持体上に流延して作製したウェブを支持体から剥離した後、剥離したウェブの両端部を把持具で把持しつつ、ウェブの進行方向とウェブの遅相軸方向が、20〜70度傾斜するように延伸するに際して、ウェブの一方端の実質的な把持開始点から実質的な把持解除点までの把持手段の軌跡L1及びウェブのもう一端の実質的な把持開始点から実質的な把持解除点までの把持手段の軌跡L2と、二つの実質的な把持解除点の距離Wが、下記式(1)を満たし、かつウェブ中の残留溶媒量が5質量%以上の状態を保持させて延伸した後、収縮させながら残留溶媒量を低下させる位相差フィルムの製造方法において、ウェブの延伸開始点から延伸終了点までの間で、ウェブの延伸方向と実質的に平行に配した複数の空気吹き出し部から加熱風を吹き出して、ウェブを加熱する工程を含むことを特徴とする位相差フィルムの製造方法。
【0015】
式(1) 0.9W<|L2−L1|<1.1W
〔2〕 前記ポリマーとして環状オレフィン系樹脂を用いることを特徴とする〔1〕に記載の位相差フィルムの製造方法。
【0016】
〔3〕 前記ポリマーとしてセルロースエステル樹脂を用いることを特徴とする〔1〕に記載の位相差フィルムの製造方法。
【0017】
〔4〕 前記セルロースエステル樹脂としてセルロースとカルボン酸とのエステルからなるセルロースアシレートであって、カルボン酸が芳香族カルボン酸である樹脂を用いることを特徴とする〔3〕に記載の位相差フィルムの製造方法。
【0018】
〔5〕 前記セルロースエステル樹脂が炭素数2〜4のアシル基置換度が2.6以上2.9以下であることを特徴とする〔3〕に記載の位相差フィルムの製造方法。
【0019】
〔6〕 前記セルロースエステル樹脂に、レタデーション上昇剤を0.1〜10質量%含有させることを特徴とする〔3〕に記載の位相差フィルムの製造方法。
【0020】
〔7〕 〔1〕〜〔6〕のいずれか1項記載の位相差フィルムの製造方法により作製されたことを特徴とする位相差フィルム。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明を詳細に説明する。
【0022】
〔斜め延伸する方法〕
本発明の位相差フィルムの製造方法における斜め延伸する方法について説明する。
【0023】
図1は、本発明で用いられる延伸装置(テンター)の一例を示す概略平面図である。支持体から剥離された生乾きのウェブ11を導入する工程13、両端の把持具を幅方向に拡張するウェブを延伸する工程14、及び延伸されたウェブをやや収縮させながら次工程に送る工程15を含み、各工程にウェブは連続的に導入される。
【0024】
本発明の把持開始点とは、ウェブ両端が初めて把持される点、つまり、把持開始点A1と、A1から導入側のウェブ11の中心線に略垂直に引いた直線が、反対側の把持手段の軌跡と交わる点B1(つまり反対側のウェブ把持開始点)の2点で示される。この点を起点とし、両端の把持手段を実質的に等速度で搬送すると、単位時間ごとにA1はA2,・・・,Anと移動し、B1は同様にB2,B3,・・・,Bnに移動する。両端の把持手段は、ウェブの導入工程(a工程)では略幅保持されており、延伸工程(b工程)で、両端の把持手段が幅方向に拡大され始め、延伸工程の終わりで縮小され、出口の工程(c工程)では略幅保持され、次工程へ搬送される。延伸開始点とは、両端の把持手段間の距離が拡大され始める点である。また、延伸終了点とは、両端の把持手段間の距離の拡大または縮小が終了した点である。
【0025】
延伸方向は、同時点に基準となる把持手段が通過する点AnとBnを結ぶ直線の方向が、その時点での延伸方向となる。
【0026】
このような延伸方法を用いることで、図1に示したようにAnはBnに対し次第に遅れてゆくため、延伸方向は、幅方向から徐々に傾斜していく。本発明の実質的な把持解除点とは、ウェブ両端またはどちらか一方の端が把持具から解放される点、つまり、把持解除点Bxと、Bxから次工程へ送られるウェブの中心線12に略垂直に引いた直線が、反対側の把持手段の軌跡と交わる点Ayの2点で定義される。最終的なフィルムの延伸方向の角度は、把持解除点の距離W(BxとAyの距離)とAxとAy間の距離の比率で決まる。
【0027】
従って、延伸方向が次方向への搬送方向に対しなす傾斜角θは、
tanθ=W/(Ay−Ax)
即ち、
tanθ=W/|L1−L2|
を満たす角度となる。ここで、略垂直とは、90±0.5度であることを意味する。
【0028】
得られる延伸フィルムにおける配向軸の傾斜角度は、c工程の出口幅Wと、左右の二つの把持手段の行程差|L1−L2|の比率で制御、調整することができる。偏光板、位相差フィルムでは、しばしば長手方向に対し45°配向したフィルムが求められる。この場合、45°に近い配向角を得るために、下記式(1)を満たす必要がある。
【0029】
式(1) 0.9W<|L1−L2|<1.1W
さらには、下記式(2)を満たすことが好ましい。
【0030】
式(2) 0.97W<|L1−L2|<1.03W
延伸工程出口でウェブの左右に進行速度差があると、延伸工程出口におけるシワが発生するため、左右のウェブ把持手段の搬送速度差は、実質的に同速度であることが好ましい。速度差は好ましくは1%以下であり、さらに好ましくは0.5%未満であり、最も好ましくは0.05%未満である。ここで述べる速度とは、毎分当たりに左右各々の把持手段が進む軌跡の長さのことである。
【0031】
また、左右の行程差が生じるに従って、ウェブにシワが発生する場合がある。この点から、ウェブ中の残留溶媒量が5質量%以上の状態を保持させて延伸した後、やや収縮させながら残留溶媒量を低下させる。
【0032】
本発明において、延伸時のウェブ中の残留溶媒量が少なすぎると延伸ができずに破断するおそれがあり、逆に多すぎると所望のレタデーションを得るために大きな延伸倍率が必要となり装置が大型化するとの問題がある為、残留溶媒量の好ましい範囲は、ポリマーがセルロースエステルの場合、10〜90質量%が好ましい。
【0033】
残留溶媒量は下記の式で表せる。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの質量、Nはウェブを110℃で3時間乾燥させた後の質量である。
【0034】
本発明において、延伸温度は、特に制限はないが、温度が高すぎると、ウェブ中の可塑剤等が飛散する場合があり、また、低すぎると均一なレタデーションが得られなかったり、フィルムが白濁したりする場合があるので、70〜160℃の範囲が好ましい。
【0035】
本発明において、延伸倍率は、所望のレタデーションが得られるように適宜調整可能であるが、得られる位相差フィルムのレタデーションの均一性の点から、1.05〜2.0倍が好ましい。
【0036】
本発明では、上記延伸工程の把持開始点から把持解除点までの間で、ウェブの延伸方向と実質的に平行に配した複数の空気吹き出し部から加熱風を吹き出して、ウェブを加熱することに特徴がある。図2に本発明の空気吹き出し部21の配置の例とウェブの延伸方向を示した。図5に従来の空気吹き出し部21の配置の例を示した。
【0037】
ウェブの延伸工程では、ウェブを加熱または乾燥するために、複数の空気吹き出し部を有するオーブンが用いられる。ファンにより発生させた風は熱交換器により所定の温度に調整され、ダクトを通じて空気吹き出し部から加熱空気がウェブに吹き付けられる。この空気吹き出し部21の開口部は、図3や図4に示すようなウェブの幅方向に複数の吹き出し孔42またはスリット32を備えている。
【0038】
ウェブの延伸方向とは、前述したように図1で点AnとBnを結ぶ直線の方向である。延伸方向と実質的に平行とは、延伸方向に対して±10度の範囲であり、好ましくは±5度の範囲であり、平行であることが最も好ましい。加熱風の風速は、4〜11m/秒が好ましい。速すぎると風圧によりウェブが膨らんだり、ばたついたりして、延伸中のウェブに不規則な力が掛かるので、得られる位相差フィルムのレタデーションのむらが大きくなる場合がある。また、加熱風の風速が遅すぎると、延伸工程でのウェブ温度や残留溶媒量が不均一になり、やはり得られる位相差フィルムのレタデーションのむらが大きくなってしまう場合がある。
【0039】
吹き出し孔またはスリットの数は、特に限定はなく、延伸工程の中でウェブの加熱や乾燥に必要な数に設定すればよい。
【0040】
各空気吹き出し部の間には、それと並行して空気流入部を設けることが好ましい。空気流入部とは、空気吹き出し部から吹き出された空気を再びダクト内に流入させるためのものであり、空気吹き出し部とウェブ間に過度な風圧がかかることを防止するとともに乱流を防止する効果があり、これにより得られる位相差フィルムのレタデーションの均一性が向上できるのである。
【0041】
本発明では、上記延伸工程の延伸開始点から延伸終了点までの間で、ウェブが通過する雰囲気中の有機溶媒濃度をその雰囲気温度での飽和濃度の50%以上とすることが好ましい。雰囲気中の有機溶媒濃度をこの範囲とするとウェブから溶媒の乾燥速度が緩やかになることにより、延伸時のウェブ中の残留溶媒量のバラツキも実質的に無視し得る範囲に抑えることが可能となるのである。更にこのような雰囲気下で延伸することによりウェブ表面のスキン層形成が抑制できるので、得られる位層差フィルムのレタデーションのばらつきや白濁を抑制することができるのである。
【0042】
雰囲気中の有機溶媒濃度を上記の範囲とする方法は、特に制限はないが、例えば、図6に示したように、延伸工程のオーブン62内の雰囲気を送風ファン66および排気ファン70により循環させるようにしておき、その循環風中に除湿装置69で除湿した新鮮な空気をダンパー75の開閉度を調整することにより、新鮮空気量を調整して取り込むことで雰囲気中の溶媒濃度を調整することができる。この空調系には必要に応じて、温度制御のための加熱ヒーター67、循環風中の揮発成分を取り除く凝縮装置71、溶媒を回収する回収装置(図示されていない)や不活性ガスの供給装置72などを備えることが好ましい。雰囲気中の有機溶媒濃度は、高すぎるとコンデンス等の不具合が生じる場合があるので、飽和蒸気濃度の50%〜90%の範囲が更に好ましい。
【0043】
本発明では、流延用支持体上にドープを流延してウェブとし、該支持体上の剥離位置における温度を10〜40℃、好ましくは15〜30℃とし、且つ該剥離位置におけるウェブの残留溶媒量を30〜120質量%とした時点でウェブを剥離することが好ましい。ウェブの剥離時の残留溶媒量をこの範囲にするには、流延後の流延用支持体の表面温度を制御し、ウェブからの有機溶媒の蒸発を効率的に行えるように上記温度範囲にする方法を好ましく用いることができる。
【0044】
支持体温度を制御するには、伝熱効率のよい伝熱方法を使用するのがよい。例えば、液体による裏面伝熱方法が好ましい。ベルト(支持体)マシンにおいて、移送するベルトが下側に来た所の温度制御には、緩やかな風でベルト温度を調節することが出来る。支持体の温度は、加熱手段を分割することによって、部分的に支持体温度を変えることが出来、流延用支持体の流延位置、乾燥部、剥離位置等異なる温度とすることが出来る。
【0045】
本発明の位相差フィルムの製造方法では、上記の溶液流延製膜の剥離工程〜乾燥工程の間、または、乾燥工程の途中で前述したように延伸を行う点に特徴がある。
【0046】
ウェブ両端部の把持部分は通常、フィルムが変形しており製品として使用できないので切除されて、原料として再利用される。切除される幅は狭いほど収率がよくなるので好ましい。通常、10〜100mmの範囲であり、より好ましくは10〜50mmの範囲である。
【0047】
以上の様にして得られた位相差フィルムは、フィルムの遅相軸方向(フィルム面内での屈折率の最大方向)が、巻き取り方向に対して、20〜70度であることが好ましく、更に40〜50度の範囲にあることが好ましく、45度±0.5度であることが最も好ましい。
【0048】
本発明のポリマーフィルムがVAモード、TNモード等の液晶セルを用いた液晶表示装置に用いる位相差フィルムの場合は、面内レタデーションを20〜70nm、厚み方向レタデーションを70〜400nmの範囲とすることにより、視野角拡大効果が得られるので好ましい。レタデーションのばらつきは±5nm以内であることが好ましく、更に±3nm以内であることが好ましい。
【0049】
本発明の位相差フィルムが四分の一波長板や二分の一波長板として用いる場合は、面内レタデーションを100〜350nmとし、フィルム面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の遅相軸に直交する方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzとしたときの(nx−nz)/(nx−ny)の値を1〜2の範囲とすることが好ましい。
【0050】
〔ウェブ作製方法〕
本発明に係わる溶液流延製膜法について説明する。
【0051】
本発明において、ポリマーを有機溶媒に溶解した溶液のことをドープという。
▲1▼溶解工程:
ポリマーに対する良溶媒を主とする有機溶媒に溶解釜中で攪拌しながらポリマーを溶解し、ドープを形成する工程である。溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、冷却溶解法で行う方法、高圧で行う方法等種々の溶解方法がある。溶解後ドープを濾材で濾過し、脱泡してポンプで次工程に送る。
【0052】
ドープ中には、可塑剤、酸化防止剤、染料等も添加されることがある。これらの化合物は、溶液の調製の際に、ポリマーや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。液晶画面表示装置用には耐熱耐湿性を付与する可塑剤、酸化防止剤や紫外線防止剤などを添加することが好ましい。
【0053】
上記酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、セルロースエステルに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
【0054】
紫外線吸収剤としては、偏光子や液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロースエステルに対する不要な着色が少ないことから好ましい。紫外線吸収剤の含有量は、質量割合で0.01〜5%、特に0.5〜3%が好ましい。
【0055】
また、この他、カオリン、タルク、ケイソウ土、石英、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナ等の無機微粒子、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属の塩などの熱安定剤を加えてもよい。更に帯電防止剤、難燃剤、滑剤、油剤等も加える場合がある。
【0056】
▲2▼流延工程:
ドープを加圧型定量ギヤポンプを通して加圧ダイに送液し、流延位置において、無限に移送する無端の金属ベルトあるいは回転する金属ドラムの流延用支持体(以降、単に支持体ということもある)上に加圧ダイからドープを流延する工程である。流延用支持体の表面は鏡面となっている。その他の流延する方法は流延されたドープ膜をブレードで膜厚を調節するドクターブレード法、あるいは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、口金部分のスリット形状を調製出来、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があるが、何れも好ましく用いられる。製膜速度を上げるために加圧ダイを流延用支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。また、共流延により各層異なる組成の積層構成としてもよい。
【0057】
▲3▼溶媒蒸発工程:
ウェブ(流延用支持体上にドープを流延した以降のドープ膜の呼び方をウェブとする)を流延用支持体上で加熱し支持体からウェブが剥離可能になるまで溶媒を蒸発させる工程である。溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/または支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、幅射熱により表裏から加熱する方法等があるが、裏面液体伝熱の方法が乾燥効率がよく好ましい。またそれらを組み合わせる方法も好ましい。
【0058】
▲4▼剥離工程:
支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。剥離する時点でのウェブ残留溶媒量(下記式)があまり大きすぎると剥離し難かったり、逆に支持体上で充分に乾燥させてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりする。
【0059】
製膜速度を上げる方法(残留溶媒量が出来るだけ多いうちに剥離するため製膜速度を上げることが出来る)として、残留溶媒が多くとも剥離出来るゲル流延法(ゲルキャスティング)がある。それは、ドープ中にポリマーに対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、支持体の温度を低めてゲル化する方法等がある。また、ドープ中に金属塩を加える方法もある。支持体上でゲル化させ膜を強くすることによって、剥離を早め製膜速度を上げることが出来るのである。残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損なったり、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易く、経済速度と品質との兼ね合いで剥離残留溶媒量を決められる。
【0060】
▲5▼乾燥工程:
ウェブを千鳥状に配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置及び/またはクリップでウェブの両端をクリップして搬送するテンター装置を用いてウェブを乾燥する工程である。乾燥の手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウエーブを当てて加熱する手段もある。あまり急激な乾燥は出来上がりのフィルムの平面性を損ね易い。高温による乾燥は残留溶媒が8質量%以下くらいから行うのがよい。全体を通して、通常乾燥温度は40〜250℃で、70〜180℃が好ましい。使用する溶媒によって、乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、組合せに応じて乾燥条件を適宜選べばよい。
【0061】
▲6▼巻き取り工程:
ウェブを残留溶媒量が2質量%以下となってからフィルムとして巻き取る工程である。残留溶媒量を0.4質量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることが出来る。巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
【0062】
位相差フィルムの膜厚は、使用目的によって異なるが、仕上がりフィルムとして、通常20〜200μmの範囲が好ましく、更に30〜120μmの範囲が好ましく、特に35〜100μmの範囲が好ましい。薄すぎるとフィルムの腰が弱くハンドリング性に劣る場合がある。厚すぎると表示装置が厚くなり例えば、携帯性が損なわれる場合がある。膜厚の調節には、所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、ダイの口金のスリット間隙、ダイの押し出し圧力、流延用支持体の速度等をコントロールするのがよい。また、膜厚を均一にする手段として、膜厚検出手段を用いて、プログラムされたフィードバック情報を上記各装置にフィードバックさせて調節するのが好ましい。
【0063】
溶液流延製膜法を通しての流延直後からの乾燥までの工程において、乾燥装置内の雰囲気を、空気とするのもよいが、窒素ガスや炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気で行ってもよい。ただ、乾燥雰囲気中の蒸発溶媒の爆発限界の危険性は常に考慮されなければならないことは勿論のことである。
【0064】
〔本発明で使用するポリマー〕
本発明で使用するポリマーは、溶液流延製膜に使用できるものであれば、特に制限はなく、例えば、セルロースエステル樹脂(以後、「樹脂」は省略することあり、以下も同じ)、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリビニルアルコール等が挙げられる。特に、光弾性係数の小さいポリマーを用いることが、熱歪みによる位相差ムラを抑制できるので好ましく、セルロースエステルやポリオレフィンなどが好ましく用いられる。最も好ましいのはセルロースエステルである。
【0065】
ポリオレフィンとしては、環状オレフィン系高分子が好ましく、特にノルボルネン系分子が耐熱性に優れるので好ましい。
【0066】
ノルボルネン系高分子の例としては下記一般式(1)により示されるものがある。
【0067】
【化1】
Figure 2004325561
【0068】
一般式(1)において、aは0または正の整数、bおよびcはそれぞれ正の整数を示す。R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、フェニル基またはニトリル基等の極性基を示す。
【0069】
セルロースエステルとしては、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、またはセルロースアセテートプロピオネートブチレートなどが例示できる。
【0070】
中でも本発明のセルロースエステルは、炭素数2〜4のアシル基の置換度が2.6以上2.9以下であることが好ましい。炭素数2〜3のアシル基の置換度がこの範囲にあることにより所望のレタデーション特性を得るのが容易となる。置換度が低過ぎると、位相差フィルムとしての耐湿熱性に劣る場合があり、置換度が大きすぎると波長分散特性が負の特性となったり、十分なレタデーションが得られなくなる場合がある。
【0071】
本発明に用いられるセルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ、ケナフなどを挙げることが出来る。またそれらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することが出来る。
【0072】
本発明のセルロースエステルは、セルロース原料をアシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いて反応される。アシル化剤が酸クロライド(CHCOCl、CCOCl、CCOCl)の場合には、触媒としてアミンのような塩基性化合物を用いて反応が行われる。具体的には特開平10−45804号公報に記載の方法で合成することが出来る。セルロースエステルはアシル基がセルロース分子の水酸基に反応する。セルロース分子はグルコースユニットが多数連結したものからなっており、グルコースユニットに3個の水酸基がある。この3個の水酸基にアシル基が誘導された数を置換度という。例えば、セルローストリアセテートはグルコースユニットの3個の水酸基全てがアセチル基が結合している。
【0073】
アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96に準じて測定することが出来る。
【0074】
本発明のセルロースエステルの数平均分子量は、60000〜300000の範囲が、得られるフィルムの機械的強度が強く好ましい。更に70000〜250000が好ましい。
【0075】
本発明では、セルロースエステルがセルロースとカルボン酸とのエステルからなるセルロースアシレートであって、カルボン酸が芳香族カルボン酸であるセルロースエステルも好ましく用いられる。
【0076】
芳香族カルボン酸が有する芳香族環は、芳香族性炭化水素環、芳香族性複素環またはそれらの縮合環である。芳香族性炭化水素環または芳香族性炭化水素環と芳香族性複素環との縮合環が好ましく、芳香族性炭化水素環がさらに好ましい。芳香族性炭化水素環の例には、ベンゼン環、インデン環、ナフタレン環、アズレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、アセナフチレン環、ビフェニレン環、ナフタセン環およびピレン環が含まれる。ベンゼン環、ナフタレン環およびアントラセン環が好ましく、ベンゼン環およびナフタレン環がさらに好ましく、ベンゼン環が最も好ましい。言い換えると、芳香族カルボン酸としては、安息香酸が最も好ましい。芳香族性炭化水素環と芳香族性複素環との縮合環の例には、ベンゾトリアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、クロメン環、フタラジン環およびインドール環が含まれる。芳香族性炭化水素環に脂肪族性炭化水素環が縮合していてもよい。そのような縮合環の例には、インダン環が含まれる。芳香族性炭化水素環に非芳香族性複素環が縮合していてもよい。そのような縮合環の例には、クロマン環およびインドリン環が含まれる。
【0077】
芳香族カルボン酸は、置換基を有することが好ましい。芳香族カルボン酸が安息香酸である場合、置換基の少なくとも一つが、安息香酸のメタ位またはパラ位に結合していることが特に好ましい。また、安息香酸のオルト位は無置換であることが好ましい。置換基の数は、一個乃至五個であることが好ましく、一個乃至四個であることがより好ましく、一個乃至三個であることがさらに好ましく、一個または二個であることが最も好ましい。
【0078】
芳香族カルボン酸の置換基には、ハロゲン原子、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、シリル、シリルオキシ、カルバモイル、カルバモイルオキシ、スルファモイル、スルファモイルアミノ、ホスフィノ、ホスフィニル、ホスホノ、ホスフィニルオキシ、ホスホノオキシ、ホスフィニルアミノ、ホスホノアミノ、脂肪族基、芳香族基、複素環基、−O−R、−S−R、−CO−R、−O−CO−R、−CO−NH−R、−CO−N(−R)、−O−CO−NH−R、−O−CO−N(−R)、−CO−O−R、−O−CO−O−R、−NH−R、−N(−R)、−NH−CO−R、−NH−CO−NH−R、−NH−CO−N(−R)、−NH−CO−O−R、−SO−NH−R、−SO−N(−R)、−NH−SO−NH−R、−NH−SO−N(−R)、−NH−SO−R、−SO−R、−SO−R、−N(−CO−R)、−PH−R、−P(−R)、−PH−O−R、−P(−R)−O−R、−P(−O−R)、−PH(=O)−R、−P(=O)(−R)、−PH(=O)−O−R、−P(=O)(−R)−O−R、−P(=O)(−O−R)、−O−PH(=O)−R、−O−P(=O)(−R)、−O−PH(=O)−O−R、−O−P(=O)(−R)−O−R、−O−P(=O)(−O−R)、−NH−PH(=O)−R、−NH−P(=O)(−R)、−NH−PH(=O)−O−R、−NH−P(=O)(−R)−O−R、−NH−P(=O)(−O−R)、−SiH−R、−SiH(−R)、−Si(−R)、−O−SiH−R、−O−SiH(−R)および−O−Si(−R)が含まれる。
【0079】
上記Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。同一の基に含まれる複数のRは、互いに異なっていてもよい。上記脂肪族基は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基または置換アルキニル基を意味する。アルキル基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。アルキル基の炭素原子数は、1乃至30であることが好ましい。アルキル基の例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル、ビシクロ[1,2,2]へプタン−2−イルおよびビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イルが含まれる。置換アルキル基のアルキル部分は、上記アルキル基と同様である。
【0080】
置換アルキル基の置換基の例には、ハロゲン原子、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、シリル、シリルオキシ、カルバモイル、カルバモイルオキシ、スルファモイル、スルファモイルアミノ、ホスフィノ、ホスフィニル、ホスホノ、ホスフィニルオキシ、ホスホノオキシ、ホスフィニルアミノ、ホスホノアミノ、芳香族基、複素環基、−O−R、−S−R、−CO−R、−O−CO−R、−CO−NH−R、−CO−N(−R)、−O−CO−NH−R、−O−CO−N(−R)、−CO−O−R、−O−CO−O−R、−NH−R、−N(−R)、−NH−CO−R、−NH−CO−NH−R、−NH−CO−N(−R)、−NH−CO−O−R、−SO−NH−R、−SO−N(−R)、−NH−SO−NH−R、−NH−SO−N(−R)、−NH−SO−R、−SO−R、−SO−R、−N(−CO−R)、−PH−R、−P(−R)、−PH−O−R、−P(−R)−O−R、−P(−O−R)、−PH(=O)−R、−P(=O)(−R)、−PH(=O)−O−R、−P(=O)(−R)−O−R、−P(=O)(−O−R)、−O−PH(=O)−R、−O−P(=O)(−R)、−O−PH(=O)−O−R、−O−P(=O)(−R)−O−R、−O−P(=O)(−O−R)、−NH−PH(=O)−R、−NH−P(=O)(−R)、−NH−PH(=O)−O−R、−NH−P(=O)(−R)−O−R、−NH−P(=O)(−O−R)、−SiH−R、−SiH(−R)、−Si(−R)、−O−SiH−R、−O−SiH(−R)および−O−Si(−R)が含まれる。
【0081】
上記Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。同一の基に含まれる複数のRは、互いに異なっていてもよい。置換アルキル基の例には、2−クロロエチルおよび2−シアノエチルが含まれる。アルケニル基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。アルケニル基の炭素原子数は、2乃至30であることが好ましい。アルケニル基の例には、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル、ビシクロ[1,2,2]へプト−2−エン−1−イルおよびビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イルが含まれる。置換アルケニル基のアルケニル部分は、上記アルケニル基と同様である。置換アルケニル基の置換基は、置換アルキル基の置換基と同様である。アルキニル基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。アルキニル基の炭素原子数は、2乃至30であることが好ましい。アルキニル基の例には、エチニルおよびプロパルギルが含まれる。置換アルキニル基のアルキニル部分は、上記アルキニル基と同様である。置換アルキニル基の置換基は、置換アルキル基の置換基と同様である。置換アルキニル基の例には、トリメチルシリルエチニルが含まれる。
【0082】
前記芳香族基は、アリール基または置換アリール基を意味する。アリール基の炭素原子数は、6乃至30であることが好ましい。アリール基の例には、フェニルおよびナフチルが含まれる。置換アリール基のアリール部分は、上記アリール基と同様である。
【0083】
置換アリール基の置換基の例には、ハロゲン原子、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、シリル、シリルオキシ、カルバモイル、カルバモイルオキシ、スルファモイル、スルファモイルアミノ、ホスフィノ、ホスフィニル、ホスホノ、ホスフィニルオキシ、ホスホノオキシ、ホスフィニルアミノ、ホスホノアミノ、脂肪族基、芳香族基、複素環基、−O−R、−S−R、−CO−R、−O−CO−R、−CO−NH−R、−CO−N(−R)、−O−CO−NH−R、−O−CO−N(−R)、−CO−O−R、−O−CO−O−R、−NH−R、−N(−R)、−NH−CO−R、−NH−CO−NH−R、−NH−CO−N(−R)、−NH−CO−O−R、−SO−NH−R、−SO−N(−R)、−NH−SO−NH−R、−NH−SO−N(−R)、−NH−SO−R、−SO−R、−SO−R、−N(−CO−R)、−PH−R、−P(−R)、−PH−O−R、−P(−R)−O−R、−P(−O−R)、−PH(=O)−R、−P(=O)(−R)、−PH(=O)−O−R、−P(=O)(−R)−O−R、−P(=O)(−O−R)、−O−PH(=O)−R、−O−P(=O)(−R)、−O−PH(=O)−O−R、−O−P(=O)(−R)−O−R、−O−P(=O)(−O−R)、−NH−PH(=O)−R、−NH−P(=O)(−R)、−NH−PH(=O)−O−R、−NH−P(=O)(−R)−O−R、−NH−P(=O)(−O−R)、−SiH−R、−SiH(−R)、−Si(−R)、−O−SiH−R、−O−SiH(−R)および−O−Si(−R)が含まれる。
【0084】
上記Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。同一の基に含まれる複数のRは、互いに異なっていてもよい。置換アリール基の例には、p−トリル、m−クロロフェニルおよびo−ヘキサデカノイルアミノフェニルが含まれる。前記複素環基には、無置換複素環基および置換複素環基が含まれる。複素環基は、芳香族性を有していてもよい。複素環基の複素環は、5員環または6員環であることが好ましい。複素環基の炭素原子数は、3乃至30であることが好ましい。置換複素環基の置換基は、置換アリール基の置換基と同様である。複素環基の例には、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニルおよび2−ベンゾチアゾリルが含まれる。
【0085】
芳香族カルボン酸の置換基としては、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、ウレイド基、アラルキル基、ニトロ、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アシルオキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基およびアリールオキシスルホニル基が好ましく、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基およびウレイド基がより好ましく、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基およびカルボンアミド基がさらに好ましく、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基およびアリールオキシ基がさらにまた好ましく、ハロゲン原子、アルキル基およびアルコキシ基が最も好ましい。
【0086】
上記ハロゲン原子には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が含まれる。上記アルキル基は、環状構造あるいは分岐を有していてもよい。アルキル基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至12であることがより好ましく、1乃至6であることがさらに好ましく、1乃至4であることが最も好ましい。アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチルおよび2−エチルヘキシルが含まれる。上記アルコキシ基は、環状構造あるいは分岐を有していてもよい。アルコキシ基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至12であることがより好ましく、1乃至6であることがさらに好ましく、1乃至4であることが最も好ましい。アルコキシ基は、さらに別のアルコキシ基で置換されていてもよい。アルコキシ基の例には、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メトキシ−2−エトキシエトキシ、ブチルオキシ、ヘキシルオキシおよびオクチルオキシが含まれる。
【0087】
上記アリール基の炭素原子数は、6乃至20であることが好ましく、6乃至12であることがさらに好ましい。アリール基の例には、フェニルおよびナフチルが含まれる。上記アリールオキシ基の炭素原子数は、6乃至20であることが好ましく、6乃至12であることがさらに好ましい。アリールオキシ基の例には、フェノキシおよびナフトキシが含まれる。上記アシル基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至12であることがさらに好ましい。アシル基の例には、ホルミル、アセチルおよびベンゾイルが含まれる。上記カルボンアミド基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至12であることがさらに好ましい。カルボンアミド基の例には、アセトアミドおよびベンズアミドが含まれる。上記スルホンアミド基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至12であることがさらに好ましい。スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミドおよびp−トルエンスルホンアミドが含まれる。上記ウレイド基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至12であることがさらに好ましい。ウレイド基の例には、(無置換)ウレイドが含まれる。
【0088】
上記アラルキル基の炭素原子数は、7乃至20であることが好ましく、7乃至12であることがさらに好ましい。アラルキル基の例には、ベンジル、フェネチルおよびナフチルメチルが含まれる。上記アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、2乃至12であることがさらに好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニルが含まれる。上記アリールオキシカルボニル基の炭素原子数は、7乃至20であることが好ましく、7乃至12であることがさらに好ましい。アリールオキシカルボニル基の例には、フェノキシカルボニルが含まれる。上記アラルキルオキシカルボニル基の炭素原子数は、8乃至20であることが好ましく、8乃至12であることがさらに好ましい。アラルキルオキシカルボニル基の例には、ベンジルオキシカルボニルが含まれる。上記カルバモイル基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至12であることがさらに好ましい。カルバモイル基の例には、(無置換)カルバモイルおよびN−メチルカルバモイルが含まれる。上記スルファモイル基の炭素原子数は、20以下であることが好ましく、12以下であるこおがさらに好ましい。スルファモイル基の例には、(無置換)スルファモイルおよびN−メチルスルファモイルが含まれる。上記アシルオキシ基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、2乃至12であることがさらに好ましい。アシルオキシ基の例には、アセトキシおよびベンゾイルオキシが含まれる。
【0089】
上記アルケニル基の炭素原子数は、2乃至20であることが好ましく、2乃至12であることがさらに好ましい。アルケニル基の例には、ビニル、アリルおよびイソプロペニルが含まれる。上記アルキニル基の炭素原子数は、2乃至20であることが好ましく、2乃至12であることがさらに好ましい。アルキニル基の例には、エチニルが含まれる。上記アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至12であることがさらに好ましい。上記アリールスルホニル基の炭素原子数は、6乃至20であることが好ましく、6乃至12であることがさらに好ましい。上記アルキルオキシスルホニル基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至12であることがさらに好ましい。上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は、6乃至20であることが好ましく、6乃至12であることがさらに好ましい。上記アルキルスルホニルオキシ基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至12であることがさらに好ましい。上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は、6乃至20であることが好ましく、6乃至12であることがさらに好ましい。
【0090】
セルロースを構成するグルコース単位が有する三個の水酸基のうち、上記芳香族カルボン酸とエステル結合している水酸基の数の平均(アシル基の置換度)は、1.0以上2.9以下であることが好ましく、2.0以上2.9以下であることがさらに好ましい。二種類以上の芳香族カルボン酸を用いて、セルロースの混合カルボン酸エステルを形成してもよい。芳香族カルボン酸と、脂肪族カルボン酸(例、酢酸、プロピオン酸、酪酸)との混合エステルを形成してもよい。ただし、脂肪族カルボン酸との混合エステルを形成する場合も、芳香族カルボン酸の置換度が、上記の定義のように1.0以上2.9以下であることが好ましく、2.0以上2.9以下であることがさらに好ましい。
【0091】
セルロースアシレートは、セルロースと芳香族カルボン酸クロライドまたは芳香族カルボン酸無水物との反応により製造することができるが、セルロースと芳香族カルボン酸無水物との反応により製造することが好ましい。芳香族カルボン酸無水物は、芳香族カルボン酸とハロゲン化カルボン酸(例、トリフルオロ酢酸)との混合酸無水物であることが特に好ましい。混合酸無水物は、芳香族カルボン酸とハロゲン化カルボン酸無水物との反応により合成することができる。セルロースと芳香族カルボン酸無水物(または混合酸無水物)との反応については、各種文献(例えば、Journal of Applied Polymer Science,Vol.29,3981−3990(1984))に記載がある。セルロースアシレートの原料となるセルロースは、一般に綿花リンターまたは木材パルプである。綿花リンターと木材パルプとを混合して使用してもよい。セルロースアシレートの合成反応では、反応溶媒としてハロゲン化炭化水素(例、ジクロロメタン)が好ましく用いられる。セルロースアシレートの粘度平均重合度は150乃至700であることがが好ましく、250乃至550であることがさらに好ましい。粘度平均重合度は、オストワルド粘度計で測定することができる。
【0092】
合成方法の具体的な方法は、特開2002−241512号公報に詳しく記載されている。
【0093】
〔ドープ作製に用いられる有機溶媒・可塑剤〕
本発明の有機溶媒は、ポリマーの溶解性に優れ、乾燥負荷が少ないなど溶液流延製膜法に適したものであれば制限はなく、例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン(沸点39.8℃)が挙げられる。非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル(沸点56.9℃)、酢酸エチル(沸点77.1℃)、アセトン(沸点56.1℃)、テトラヒドロフラン(沸点66℃)、1,3−ジオキソラン(沸点74℃)、1,4−ジオキサン(沸点101.1℃)、シクロヘキサノン(沸点155.6℃)、ギ酸エチル(沸点53℃)、2,2,2−トリフルオロエタノール(沸点73.6℃)、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール(沸点109℃)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール(沸点60℃)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(沸点58℃)、ニトロエタン(沸点101.2℃)等を挙げることができる。ポリマーがセルロースエステルの場合では、特に塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用し得る。特に酢酸メチルを有機溶媒中に50質量%以上含有させることにより、支持体から剥離したウェブの強度が高くなり延伸時の破断頻度が減少できるので好ましい。
【0094】
本発明のポリマー溶液には、上記有機溶媒の他に、炭素原子数1〜4のアルコールを1〜40質量%含有させることが好ましい。これらはドープを流延用支持体に流延後溶媒が蒸発し始めアルコールの比率が多くなるとウェブ(流延膜)がゲル化し、ウェブを丈夫にできるのでテンターで延伸する場合の破断を防止するのに有効であるばかりでなく、ウェブ中のレタデーション上昇剤等がウェブ中を自由に移動することを防止でき、レタデーションや遅相軸角度のむらを抑制するのに有効である。炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることが出来る。これらのうちドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性も良く、且つ毒性がないこと等からエタノールが最も好ましい。
【0095】
ドープ中のポリマー濃度は15〜35質量%、ドープ粘度は10〜70Pa・sの範囲に調製されることが良好なフィルム面品質を得る上で好ましい。
【0096】
本発明のドープに可塑剤を配合することにより、フィルムの脆弱性が改善されて強靱性が向上されるので、テンターで延伸した際の破断を防止するのに有効であり好ましい。
【0097】
可塑剤としては、従来公知のポリマーとの相溶性がある化合物から適宜選択できる。ポリマーがセルロースエステルの場合は特にリン酸エステルやカルボン酸エステルが好ましく用いられる。リン酸エステルとしては、例えばトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、フェニルジフェニルホスフェート等を挙げることが出来る。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル及びクエン酸エステル等、フタル酸エステルとしては、例えばジメチルフタレート、ジエチルホスフェート、ジオクチルフタレート及びジエチルヘキシルフタレート等、またクエン酸エステルとしてはクエン酸アセチルトリエチル及びクエン酸アセチルトリブチルを挙げることが出来る。またその他、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバチン酸ジブチル、トリアセチン、等も挙げられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートもこの目的で好ましく用いられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートのアルキルは炭素原子数1〜8のアルキル基である。アルキルフタリルアルキルグリコレートとしてはメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、プロピルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等を挙げることが出来、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートが好ましく、特にエチルフタリルエチルグリコレートが好ましく用いられる。またこれらアルキルフタリルアルキルグリコレートを2種以上混合して使用してもよい。
【0098】
これらの化合物の添加量は目的の効果の発現及びフィルムからのブリードアウト抑制などの観点から、ポリマーに対して1〜30質量%が好ましい。
【0099】
〔レタデーション上昇剤〕
本発明の位相差フィルムには、レタデーションを調整するためにレタデーション上昇剤を含有させることが好ましい。
【0100】
レタデーション上昇剤は、ポリマーに対して、0.01〜20質量%含有させることが好ましく、0.1〜10質量%の範囲で使用することがより好ましく、0.2〜5質量%の範囲で使用することがさらに好ましく、0.5〜2質量%の範囲で使用することが最も好ましい。二種類以上のレタデーション上昇剤を併用してもよい。レタデーション上昇剤は、250〜400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましい。レタデーション上昇剤は、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
【0101】
また、レタデーション上昇剤としては、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物を用いることが好ましい。本明細書において、「芳香族環」は、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれる。芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が好ましい。
【0102】
レタデーション上昇剤が有する芳香族環の数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがより好ましく、2〜8であることがさらに好ましく、2〜6であることが最も好ましい。二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合および(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。結合関係は、(a)〜(c)のいずれでもよい。
【0103】
(a)の縮合環(二つ以上の芳香族環の縮合環)の例には、インデン環、ナフタレン環、アズレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、アセナフチレン環、ビフェニレン環、ナフタセン環、ピレン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドリジン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、プリン環、インダゾール環、クロメン環、キノリン環、イソキノリン環、キノリジン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フタラジン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェナントリジン環、キサンテン環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環およびチアントレン環が含まれる。ナフタレン環、アズレン環、インドール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環およびキノリン環が好ましい。
【0104】
(b)の単結合は、二つの芳香族環の炭素原子間の結合であることが好ましい。二以上の単結合で二つの芳香族環を結合して、二つの芳香族環の間に脂肪族環または非芳香族性複素環を形成してもよい。
【0105】
(c)の連結基も、二つの芳香族環の炭素原子と結合することが好ましい。連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−CO−、−O−、−NH−、−S−またはそれらの組み合わせであることが好ましい。組み合わせからなる連結基の例を以下に示す。なお、以下の連結基の例の左右の関係は、逆になってもよい。
【0106】
c1:−CO−O−
c2:−CO−NH−
c3:−アルキレン−O−
c4:−NH−CO−NH−
c5:−NH−CO−O−
c6:−O−CO−O−
c7:−O−アルキレン−O−
c8:−CO−アルケニレン−
c9:−CO−アルケニレン−NH−
c10:−CO−アルケニレン−O−
c11:−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−
c12:−O−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−
O−
c13:−O−CO−アルキレン−CO−O−
c14:−NH−CO−アルケニレン−
c15:−O−CO−アルケニレン−
芳香族環および連結基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、ニトロ、スルホ、カルバモイル、スルファモイル、ウレイド、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、脂肪族アミド基、脂肪族スルホンアミド基、脂肪族置換アミノ基、脂肪族置換カルバモイル基、脂肪族置換スルファモイル基、脂肪族置換ウレイド基および非芳香族性複素環基が含まれる。
【0107】
アルキル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。環状アルキル基よりも鎖状アルキル基の方が好ましく、直鎖状アルキル基が特に好ましい。アルキル基は、さらに置換基(例、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ基、アルキル置換アミノ基)を有していてもよい。アルキル基の(置換アルキル基を含む)例には、メチル、エチル、n−ブチル、n−ヘキシル、2−ヒドロキシエチル、4−カルボキシブチル、2−メトキシエチルおよび2−ジエチルアミノエチルが含まれる。アルケニル基の炭素原子数は、2〜8であることが好ましい。環状アルケニル基よりも鎖状アルケニル基の方が好ましく、直鎖状アルケニル基が特に好ましい。アルケニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルケニル基の例には、ビニル、アリルおよび1−ヘキセニルが含まれる。アルキニル基の炭素原子数は、2〜8であることが好ましい。環状アルキケニル基よりも鎖状アルキニル基の方が好ましく、直鎖状アルキニル基が特に好ましい。アルキニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルキニル基の例には、エチニル、1−ブチニルおよび1−ヘキシニルが含まれる。
【0108】
脂肪族アシル基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アシル基の例には、アセチル、プロパノイルおよびブタノイルが含まれる。脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アシルオキシ基の例には、アセトキシが含まれる。アルコキシ基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。アルコキシ基は、さらに置換基(例、アルコキシ基)を有していてもよい。アルコキシ基の(置換アルコキシ基を含む)例には、メトキシ、エトキシ、ブトキシおよびメトキシエトキシが含まれる。アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニルおよびエトキシカルボニルが含まれる。アルコキシカルボニルアミノ基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、メトキシカルボニルアミノおよびエトキシカルボニルアミノが含まれる。
【0109】
これらの化合物は、溶液の調製の際に、ポリマーや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。
【0110】
〔位相差フィルムの使用法〕
本発明の位相差フィルムは、偏光フィルムの少なくとも片面に貼り合わせることにより偏光板とすることができる。
【0111】
偏光フィルムは従来から公知のものを用いることが出来、例えばポリビニルアルコールフィルムの如きの親水性ポリマーフィルムを、沃素のような二色性染料で処理して延伸したものである。偏光フィルムは、それ単体では、十分耐久性がないので、一般には、その両面に保護フィルムとしてセルローストリアセテートフィルムを接着してある。
【0112】
偏光板をなすには、この保護フィルム付の偏光フィルムと貼り合わせてもよいし、保護フィルムを兼ねて直接偏光フィルムを貼り合わせてもよい。貼り合わせる方法は、特に限定はないが、水溶性ポリマーの水溶液からなる接着剤により行うことが出来る。この水溶性ポリマー接着剤は完全鹸化型のポリビニルアルコール水溶液が好ましく用いられる。
【0113】
本発明の位相差フィルムには、更に液晶性化合物から形成された光学異方性層を設けることができる。光学異方性層には、円盤状または棒状の液晶化合物の溶液を配向膜上に塗設することで得られる。
【0114】
このようにして得られた偏光板は、液晶表示装置に有効に用いられる。
液晶表示装置は、液晶セル及びその両側に配置された二枚の偏光板からなり、液晶セルは、二枚の電極基板の間に液晶を担持している。本発明の偏光板は、液晶セルの一方の面に液晶セル側に本発明の位相差フィルムがくるように配置するか、液晶セルの両面に同様に配置することで視野角拡大効果が得られる。
【0115】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定するものではない。
【0116】
実施例中の各測定及び評価方法は以下の方法で行った。
(フィルムの面内方向のレタデーションRo値、厚み方向のレタデーションRt値、及び遅相軸の角度θ)
フィルムの幅方向に等間隔で10点測定用サンプルを切り出し、下記の方法で面内方向のレタデーションRo値、厚み方向のレタデーションRt値、及び値相軸の角度θを求めた。
【0117】
自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器社製)を用いて23℃、55%RHの雰囲気下で590nmの波長において3次元屈折率測定を行い、遅相軸の縦方向とのなす角度および遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzを求める。また面内方向のレタデーション(Ro値)および厚み方向のレタデーション(Rt値)を下記式から算出した。なお、屈折率の演算に必要な平均屈折率の値は、アッベ屈折率計を用いてフィルムサンプルの縦、横、厚み方向それぞれの屈折率を測定し、その平均値を用いた。式中dはフィルムの厚み(nm)である。
【0118】
Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
Ro=(nx−ny)×d
(フィルムの透明性)
フィルムの透明性はフィルムのヘイズにより評価した。
【0119】
フィルムの幅方向に10点等間隔で測定用サンプルを切り出し、JIS K7105−1981に準じて測定した。
【0120】
〔実施例1〕
セルローストリアセテート 83.4質量部
トリフェニルフォスフェート 6.67質量部
ビフェニルジフェニルフォスフェート 3.33質量部
シリカ 0.01質量部
下記のレタデーション上昇剤 6.59質量部
塩化メチレン 267質量部
エタノール 26質量部
【0121】
【化2】
Figure 2004325561
【0122】
を加圧密閉容器に投入し攪拌しながら溶解しドープを調製した。このドープを支持体上に流延し、ウェブ中の残留溶媒が80質量%となった時点で支持体から剥離した。
【0123】
この、ウェブをロール搬送させながら残留溶媒量35質量%になるまで乾燥し、次いで、図2に示したように空気吹き出し部を配置した図1のテンターに導入し、100℃、溶媒蒸気濃度30%の雰囲気下で1.4倍に延伸した後1.2倍まで収縮させ、以降幅を一定に保ち、120℃、溶媒蒸気濃度2%の雰囲気下で乾燥した後、ウェブを把持具から解放した。左右のテンター把持具の搬送速度差は、0.05%未満であった。ここで|L1−L2|は1.1m、Wは1.1mであり、|L1−L2|=Wの関係にあった。テンター出口におけるシワ等は観察されず、テンター出口におけるウェブ中の残留溶媒量は、10%であった。さらにロール搬送させながら115℃で乾燥させ、両端部の把持部分をスリットし40μmのフィルムを得た。最終的に得られたフィルム中の残留溶媒量は0.2質量%であった。得られたフィルムの面内のレタデーションRo、厚み方向のレタデーションRt、遅相軸のフィルム長手方向となす角度、及びヘーズを測定した。結果を表1及び表2に示した。
【0124】
【表1】
Figure 2004325561
【0125】
【表2】
Figure 2004325561
【0126】
〔比較例1〕
実施例1で、図2に示したように空気吹き出し部を配置した図1のテンターの替わりに、図5に示したように空気吹き出し部を配置した図1のテンターを用いた以外は同様にして40μmのフィルムを得た。最終的に得られたフィルム中の残留溶媒量は0.2質量%であった。得られたフィルムの面内のレタデーションRo、厚み方向のレタデーションRt遅相軸のフィルム長手方向とのなす角度、及びヘーズを測定した。結果を表1及び表2に示した。
【0127】
〔実施例2〕
セルローストリアセテート 83.4質量部
トリフェニルフォスフェート 6.67質量部
ビフェニルジフェニルフォスフェート 3.33質量部
シリカ 0.01質量部
前記のレタデーション上昇剤 6.59質量部
塩化メチレン 267質量部
エタノール 26質量部
を加圧密閉容器に投入し攪拌しながら溶解しドープを調製した。このドープを支持体上に流延し、ウェブ中の残留溶媒が80質量%となった時点で支持体から剥離した。この、ウェブをロール搬送させながら残留溶媒量35質量%になるまで乾燥し、次いで、図2に示したように空気吹き出し部を配置した図1のテンターに導入し、100℃、溶媒蒸気濃度60%の雰囲気下で1.4倍に延伸した後1.2倍まで収縮させ、以降幅を一定に保ち、120℃、溶媒蒸気濃度2%の雰囲気下で乾燥した後、ウェブを把持具から解放した。左右のテンター把持具の搬送速度差は、0.05%未満であった。ここで|L1−L2|は1.1m、Wは1.1mであり、|L1−L2|=Wの関係にあった。テンター出口におけるシワ等は観察されず、テンター出口におけるウェブ中の残留溶媒量は、10%であった。さらにロール搬送させながら115℃で乾燥させ、両端部の把持部分をスリットし40μmのフィルムを得た。最終的に得られたフィルム中の残留溶媒量は0.2質量%であった。得られたフィルムの面内のレタデーションRo、厚み方向のレタデーションRt、遅相軸のフィルム長手方向とのなす角度、及びヘーズを測定した。結果を表1及び表2に示した。
【0128】
〔実施例3〕
ARTON(ジェー・エス・アール社製) 77質量部
塩化メチレン 21質量部
エタノール 2質量部
を加圧密閉容器に投入し攪拌しながら溶解しドープを調製した。このドープを支持体上に流延し、ウェブ中の残留溶媒が30質量%となった時点で支持体から剥離した。この、ウェブをロール搬送させながら残留溶媒量15質量%になるまで乾燥し、次いで、図2に示したように空気吹き出し部を配置した図1のテンターに導入し、150℃、溶媒蒸気濃度40%の雰囲気下で1.4倍に延伸した後1.2倍まで収縮させ、以降幅を一定に保ち、140℃、溶媒蒸気濃度2%の雰囲気下で乾燥した後、ウェブを把持具から解放した。左右のテンター把持具の搬送速度差は、0.05%未満であった。ここで|L1−L2|は1.1m、Wは1.1mであり、|L1−L2|=Wの関係にあった。テンター出口におけるシワ等は観察されず、テンター出口におけるウェブ中の残留溶媒量は、5%であった。さらにロール搬送させながら115℃で乾燥させ、両端部の把持部分をスリットし80μmのフィルムを得た。最終的に得られたフィルム中の残留溶媒量は0.2質量%であった。得られたフィルムの面内のレタデーションRo、厚み方向のレタデーションRt、遅相軸のフィルム長手方向とのなす角度、及びヘーズを測定した。結果を表1及び表2に示した。
【0129】
〔比較例2〕
実施例3で、図2に示したように空気吹き出し部を配置した図1のテンターの替わりに、図5に示したように空気吹き出し部を配置した図1のテンターを用いた以外は同様にして80μmのフィルムを得た。最終的に得られたフィルム中の残留溶媒量は0.2質量%であった。得られたフィルムの面内のレタデーションRo、厚み方向のレタデーションRt、遅相軸のフィルム長手方向とのなす角度、及びヘーズを測定した。結果を表1及び表2に示した。
〔実施例4〕
ビスフェノールAからなるポリカーボネート 77質量部
(ポリスチレン換算での数平均分子量が約70000)
塩化メチレン 23質量部
を加圧密閉容器に投入し攪拌しながら溶解ドープを調製した。このドープを支持体上に流延し、ウェブ中の残留溶媒が30質量%となった時点で支持体から剥離した。この、ウェブをロール搬送させながら残留溶媒量10質量%になるまで乾燥し、次いで、図2に示したように空気吹き出し部を配置した図1のテンターに導入し、120℃、溶媒蒸気濃度40%の雰囲気下で2.5倍に延伸した後2.0倍まで収縮させ、以降幅を一定に保ち、130℃、溶媒蒸気濃度2%の雰囲気下で乾燥した後、ウェブを把持具から解放した。左右のテンター把持具の搬送速度差は、0.05%未満であった。ここで|L1−L2|は1.83m、Wは1.83mであり、|L1−L2|=Wの関係にあった。テンター出口におけるシワ等は観察されず、テンター出口におけるウェブ中の残留溶媒量は、5%であった。さらにロール搬送させながら115℃で乾燥させ、両端部の把持部分をスリットし膜厚40μmのフィルムを得た。最終的に得られたフィルム中の残留溶媒量は0.1質量%であった。得られたフィルムの面内のレタデーションRo、厚み方向のレタデーションRt、遅相軸のフィルム長手方向とのなす角度、及びヘーズを測定した。結果を表1及び表2に示した。
【0130】
〔比較例3〕
実施例4で、図2に示したように空気吹き出し部を配置した図1のテンターの替わりに、図5に示したように空気吹き出し部を配置した図1のテンターを用いた以外は同様にして40μmのフィルムを得た。最終的に得られたフィルム中の残留溶媒量は0.1質量%であった。えられたフィルムの面内のレタデーションRo、厚み方向のレタデーションRt、遅相軸のフィルム長手方向とのなす角度、及びヘーズを測定した。結果を表1及び表2に示した。
【0131】
〔実施例5〕
p−クロロ安息香酸12.5質量部と無水トリフルオロ酢酸16.8質量部とを容器に入れ50℃で30分間攪拌混合した。次いでセルロース4.1質量部、塩化メチレン106質量部を加えて5時間加熱還流させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却した後、更にメタノール500質量部を攪拌しながら徐々に投入し、反応物を沈殿処理した。得られた固形分を濾別し、乾燥し、置換度2.9、粘度平均重合度300のセルロースのクロロ安息香酸エステルを得た。
【0132】
上記セルロースエステル 83.4質量部
トリフェニルフォスフェート 6.67質量部
ビフェニルジフェニルフォスフェート 3.33質量部
シリカ 0.01質量部
前記のレタデーション上昇剤 6.59質量部
塩化メチレン 267質量部
エタノール 26質量部
を加圧密閉容器に投入し攪拌しながら溶解しドープを調製した。このドープを支持体上に流延し、ウェブ中の残留溶媒が60質量%となった時点で支持体から剥離した。この、ウェブをロール搬送させながら残留溶媒量30質量%になるまで乾燥し、次いで、図2に示したように空気吹き出し部を配置した図1のテンターに導入し、100℃、溶媒蒸気濃度40%の雰囲気下で1.4倍に延伸した後1.2倍まで収縮させ、以降幅を一定に保ち、120℃溶媒蒸気濃度2%の雰囲気下で乾燥した後、ウェブを把持具から解放した。左右のテンター把持具の搬送速度差は0.05%未満であった。ここで|L1−L2|は1.1m、Wは1.1mであり、|L1−L2|=Wの関係にあった。テンター出口におけるシワ等は観察されず、テンター出口におけるウェブ中の残留溶媒量は、8%であった。さらにロール搬送させながら115℃で乾燥させ、両端の把持部分をスリットし60μmのフィルムを得た。最終的に得られたフィルム中の残留溶媒量は0.2質量%であった。得られたフィルムの面内のレタデーションRo、厚み方向のレタデーションRt、遅相軸のフィルム長手方向とのなす角度、及びヘーズを測定した。結果を表1及び表2に示した。
【0133】
〔比較例4〕
実施例3で、図2に示したように空気吹き出し部を配置した図1のテンターの替わりに、図5に示したように空気吹き出し部を配置した図1のテンターを用いた以外は同様にして60μmのフィルムを得た。最終的に得られたフィルム中の残留溶媒量は0.2質量%であった。得られたフィルムの面内のレタデーションRo、厚み方向のレタデーションRt、遅相軸のフィルム長手方向とのなす角度、及びヘーズを測定した。結果を表1及び表2に示した。
【0134】
以上の結果から明らかなごとく、本発明内の実施例1〜5はいずれの特性もフィルム巾手方向でのバラツキが小さいが、本発明外の比較例1〜4はバラツキが大きいことがわかる。
【0135】
【発明の効果】
本発明によって、位相差フィルム打ち抜き工程における収率を向上することができる斜め延伸方法により、均一なレタデーション特性及び良好な透明性を有する位相差フィルムとその製造方法を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の延伸装置の一例を示す概略平面図。
【図2】本発明の空気吹き出し部とウェブの延伸方向を示す図。
【図3】空気吹き出し部の開口部の形状を示す図。
【図4】空気吹き出し部の開口部の形状を示す図。
【図5】従来の空気吹き出し部の配置とウェブの延伸方向を示す図。
【図6】本発明で用いる延伸工程の雰囲気中の溶媒濃度を調整する方法の一例を示す説明図。
【符号の説明】
11 ウェブ
12 次工程へ送られるウェブの中心線
13 ウェブを導入する工程
14 ウェブを延伸する工程
15 延伸ウェブを次工程へ送る工程
A1 把持開始点
B1 反対側のウェブ把持開始点
Bx 把持解除点
W 把持解除点の距離
21 空気吹き出し部
32 吹き出しスリット
42 吹き出し孔
62 オーブン
66 送風ファン
67 加熱ヒーター
69 除湿装置
70 排気ファン
71 凝縮装置
72 供給装置
75 ダンパー

Claims (7)

  1. ポリマーと有機溶媒とを含むドープを支持体上に流延して作製したウェブを支持体から剥離した後、剥離したウェブの両端部を把持具で把持しつつ、ウェブの進行方向とウェブの遅相軸方向が、20〜70度傾斜するように延伸するに際して、ウェブの一方端の実質的な把持開始点から実質的な把持解除点までの把持手段の軌跡L1及びウェブのもう一端の実質的な把持開始点から実質的な把持解除点までの把持手段の軌跡L2と、二つの実質的な把持解除点の距離Wが、下記式(1)を満たし、かつウェブ中の残留溶媒量が5質量%以上の状態を保持させて延伸した後、収縮させながら残留溶媒量を低下させる位相差フィルムの製造方法において、ウェブの延伸開始点から延伸終了点までの間で、ウェブの延伸方向と実質的に平行に配した複数の空気吹き出し部から加熱風を吹き出して、ウェブを加熱する工程を含むことを特徴とする位相差フィルムの製造方法。
    式(1) 0.9W<|L2−L1|<1.1W
  2. 前記ポリマーとして環状オレフィン系樹脂を用いることを特徴とする請求項1に記載の位相差フィルムの製造方法。
  3. 前記ポリマーとしてセルロースエステル樹脂を用いることを特徴とする請求項1に記載の位相差フィルムの製造方法。
  4. 前記セルロースエステル樹脂としてセルロースとカルボン酸とのエステルからなるセルロースアシレートであって、カルボン酸が芳香族カルボン酸である樹脂を用いることを特徴とする請求項3に記載の位相差フィルムの製造方法。
  5. 前記セルロースエステル樹脂の炭素数2〜4のアシル基置換度が2.6以上2.9以下であることを特徴とする請求項3に記載の位相差フィルムの製造方法。
  6. 前記セルロースエステル樹脂に、レタデーション上昇剤を0.1〜10質量%含有させることを特徴とする請求項3に記載の位相差フィルムの製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項記載の位相差フィルムの製造方法により作製されたことを特徴とする位相差フィルム。
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