JP4562603B2 - 環状ポリオレフィンフィルムの製法 - Google Patents

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Description

本発明は、位相差フィルム、偏光板、および偏光板保護フィルムに関する。特にそれらに使用する環状ポリオレフィンフィルムに関する。
偏光板は通常、ヨウ素、もしくは二色性染料をポリビニルアルコールに配向吸着させた偏光膜の両側に、保護フィルムとして、セルローストリアセテートを主成分とするフィルムを貼り合わせることで製造されている。セルローストリアセテートは、強靭性、難燃性、光学的等方性が高い(レターデーション値が低い)などの特徴があり、上述の偏光板用保護フィルムとして広く使用されている。液晶表示装置は、偏光板と液晶セル等から構成されている。現在、液晶表示装置の主流であるTNモードのTFT液晶表示装置においては、特開平8−50206号公報に記載のように、光学補償シート(位相差フィルム)を偏光板と液晶セルの間に挿入することにより、表示品位の高い液晶表示装置が実現されている。しかし、セルローストリアセテートフィルムは水分の吸収や透過が多く、そのため光学補償性能が変化したり、寸法安定性を損なったりあるいは偏光子を劣化しやすいという問題点があった。また含有する可塑剤の昇華あるいは揮発により収縮したり質量減少するという問題もあった。
環状ポリオレフィンフィルムはセルローストリアセテートフィルムの吸湿性や透湿性を改良できるフィルムとして注目され、熱溶融製膜及び溶液製膜による偏光板保護フィルム用及び液晶表示用位相差フィルムの開発が行われている(特許文献1〜4)。しかし熱溶融製膜においては幅方向及び長さ方向の光学特性(レターデーション及び光学軸の方向)の変動が問題になっている。一方、溶液製膜においては光学特性の変動だけでなく、製造工程における静電気による引火や火災の危険性、フィルムがしわになって長尺に巻けないという問題など、製造工程上の様々な問題が障害になっている。
特開2003−212927号公報 特開2004−126026号公報 特開2002−114827号公報 国際公開WO2004/049011号パンフレット
本発明の目的は、製造工程において引火火災の恐れが少なく、平面性に優れ、レターデーションの変動が少なく、製造工程でしわになりにくい環状ポリオレフィンフィルムの製造方法を提供することである。
本発明の別の目的は、動摩擦係数が小さく搬送適性及び巻き取り適性の高い環状ポリオレフィンフィルムを提供することである。
本発明者らは、鋭意検討した結果、環状ポリオレフィンフィルムの溶液製膜において、溶媒として塩素系有機溶剤を用いることによって、製造工程における引火や火災の危険性を軽減させることに成功した。また本発明者らは、さらに鋭意検討した結果、溶媒として塩素系有機溶剤を用いた際に支持体からフィルムを剥離する際の剥離抵抗が非常に大きく、そのためにフィルムに横段状模様が生じたり、しわが生じたり、レターデーションの変動が大きくなるという予期せぬ問題に対し、溶媒中に貧溶媒を一定量加えることで、剥離抵抗が著しく低減され、上記の問題点を解決できることを見出した。さらに、ポリマーの分子量、ドープ溶液の粘度を適切に調節することにより厚さ変動の小さいフィルムを得ることが出来ることを見出した。
すなわち、以下の手段によって本発明の課題が達成された。
<1>
環状ポリオレフィンを10〜35質量%含有し、塩素系有機溶剤を主溶剤として含有し、かつアルコール類を前記環状ポリオレフィンの貧溶媒として前記環状ポリオレフィン100質量部に対して13〜50質量部含有するドープ溶液を出発原料として、順次、無端金属支持体上に流延する工程、残留揮発分が5〜60質量%になるまで乾燥する工程、該金属支持体から0.25N/cm以下の剥離抵抗で剥離する工程、および、乾燥して巻き取る工程を含むことを特徴とする、環状ポリオレフィンフィルムの製造方法。
<2>
前記溶液に含有される溶剤の50質量%以上がジクロロメタンであり、且つ20〜100℃で該環状ポリオレフィンを溶解して、前記溶液とすることを特徴とする、上記<1>に記載の環状ポリオレフィンフィルムの製造方法。
<3>
前記貧溶媒が沸点120℃以下のアルコール類であることを特徴とする、上記<1>又は<2>に記載の環状ポリオレフィンフィルムの製造方法。
<4>
前記環状ポリオレフィンの質量平均分子量が5万から50万であることを特徴とする、上記<1>〜<3>のいずれかに記載の環状ポリオレフィンフィルムの製造方法。
<5>
前記ドープ溶液の25℃における粘度が2Pasから250Pasであることを特徴とする、上記<1>〜<4>のいずれかに記載の環状ポリオレフィンフィルムの製造方法。
<6>
前記環状ポリオレフィンが付加重合体であることを特徴とする、上記<1>〜<5>のいずれかに記載の環状ポリオレフィンフィルムの製造方法。
<7>
前記金属支持体から剥離後、1〜150%延伸することを特徴とする、上記<1>〜<6>のいずれかに記載の環状ポリオレフィンフィルムの製造方法。
本発明は、上記<1>〜<7>に関するものであるが、参考のため、その他の事項(例えば下記(1)〜(13)に記載の事項等)についても記載した。
(1)環状ポリオレフィンを10〜35質量%含有し、かつ塩素系有機溶剤を主溶剤として含有するドープ溶液を出発原料として、順次、無端金属支持体上に流延する工程、残留揮発分が5〜60質量%になるまで乾燥する工程、該金属支持体から0.25N/cm以下の剥離抵抗で剥離する工程、および、乾燥して巻き取る工程を含むことを特徴とする、環状ポリオレフィンフィルムの製造方法。
(2)前記溶液に含有される溶剤の50質量%以上がジクロロメタンであり、且つ20〜100℃で該環状ポリオレフィンを溶解して、前記溶液とすることを特徴とする、(1)に記載の環状ポリオレフィンフィルムの製造方法。
(3)前記溶液中に、環状ポリオレフィンの貧溶媒を該環状ポリオレフィン100質量部に対して4〜100質量部含有することを特徴とする、(1)または(2)に記載の環状ポリオレフィンフィルムの製造方法。
(4)前記貧溶媒が沸点120℃以下のアルコール類であることを特徴とする、(3)に記載の環状ポリオレフィンフィルムの製造方法。
(5)前記環状ポリオレフィンの質量平均分子量が5万から50万であることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の環状ポリオレフィンフィルムの製造方法。
(6)前記ドープ溶液の25℃における粘度が2Pasから250Pasであることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれかに記載の環状ポリオレフィンフィルムの製造方法。
(7)前記環状ポリオレフィンが付加重合体であることを特徴とする、(1)〜(6)のいずれかに記載の環状ポリオレフィンフィルムの製造方法。
(8)前記金属支持体から剥離後、1〜150%延伸することを特徴とする、(1)〜(7)のいずれかに記載の環状ポリオレフィンフィルムの製造方法。
(9)(1)〜(8)のいずれかに記載の製造方法によって製造される環状ポリオレフィンフィルム。
(10)幅方向のいずれの10mmをとっても該10mm間の厚さ変動が0.6μm以下であることを特徴とする、(9)記載の環状ポリオレフィンフィルム。
(11)界面活性剤を0.05〜3質量%含有することを特徴とする(9)または(10)に記載の環状ポリオレフィンフィルム。
(12)一次平均粒子径が1nm〜20μmの微粒子を、0.01〜0.3質量%含有することを特徴とする(9)〜(11)のいずれかに記載の環状ポリオレフィンフィルム。
(13)前記微粒子が、一次平均粒子径2〜1000nmの金属酸化物あるいは無機珪素化合物であることを特徴とする(12)記載の環状ポリオレフィンフィルム。
本発明の実施により、巻きしわが少なく、光学特性変動の少ない環状ポリオレフィンフィルムを、引火火災の恐れが少ない製造方法で製造できるようになった。
以下、本発明を詳細に説明する。
(環状ポリオレフィン)
本発明においては、環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィン構造を有する重合体樹脂を表す。
本発明に用いる環状ポリオレフィン構造を有する重合体樹脂の例には、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィンの重合体、(3)環状共役ジエンの重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及び(1)〜(4)の水素化物などがある。本発明に好ましい重合体は下記一般式(II)で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上含
む付加(共)重合体環状ポリオレフィンおよび必要に応じ、一般式(I)で表される繰り返し単位の少なくとも1種以上を更に含んでなる付加(共)重合体環状ポリオレフィンである。また、一般式(III)で表される環状繰り返し単位を少なくとも1種含む開環(共)重合体も好適に使用することができる。
Figure 0004562603
Figure 0004562603
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式中、mは0〜4の整数を表す。R1〜R6はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、X1〜X3、Y1〜Y3はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜
10の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基、−(CH2)nCOOR11、−(CH2)nOCOR12、−(CH2)nNCO、−(CH2)nNO2、−(CH2)nCN、−(CH2)nCONR1314、−(CH2)nNR1314、−(CH2)nOZ、−(CH2)nW、またはX1とY1あるいはX2とY2あるいはX3とY3から構成された(−CO)2O、(−CO)2NR15を示す。
なお、R11,R12,R13,R14,R15はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表し、Zは炭化水素基またはハロゲンで置換された炭化水素基を表し、WはSiR16 p3−p(R16は炭素数1〜10の炭化水素基、Dはハロゲン原子−OCOR16または−OR16、pは0〜3の整数を示す)を表し、nは0〜10の整数を示す。
1〜X3 、Y1 〜Y3の置換基に分極性の大きい官能基を導入することにより、光学フィルムの厚さ方向レターデーション(Rth)を大きくし、面内レターデーション(Re)の発現性を大きくすることが出来る。Re発現性の大きなフィルムは、製膜過程で延伸することによりRe値を大きくすることができる。
ノルボルネン系付加(共)重合体は、特開平10−7732号、特表2002−504184号、US2004229157A1号あるいはWO2004/070463A1号等に開示されている。ノルボルネン系多環状不飽和化合物同士を付加重合する事によって得られる。また、必要に応じ、ノルボルネン系多環状不飽和化合物と、エチレン、プロピレン、ブテン;ブタジエン、イソプレンのような共役ジエン;エチリデンノルボルネンのような非共役ジエン;アクリロニトリル、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイミド、酢酸ビニル、塩化ビニルなどの線状ジエン化合物とを付加重合することもできる。このノルボルネン系付加(共)重合体は、三井化学(株)よりアペルの商品名で発売されており、ガラス転移温度(Tg)の異なる例えばAPL8008T(Tg70℃)、APL6013T(Tg125℃)あるいはAPL6015T(Tg145℃)などのグレードがある。ポリプラスチック(株)よりTOPAS8007、同6013、同6015などのペレットが発売されている。更に、Ferrania社よりAppear3000が発売されている。本発明では付加(共)重合体の環状ポリオレフィンが好ましく使用でき、その中でも特に、例えばFerrania社より発売されているAppear3000の如き、一般式(II)で表されるノルボルネン系多環状不飽和化合物同士の付加(共)重合体の使用が好ましい。これらの化合物はTgが高く、通常の溶融製膜法によってはフィルム製膜ができない場合があるため、本発明のような溶液流延製膜方法が非常に効果的であり、好ましい。
ノルボルネン系重合体水素化物は、特開平1−240517号、特開平7−196736号、特開昭60−26024号、特開昭62−19801号、特開2003‐1159767号あるいは特開2004‐309979号等に開示されているように、多環状不飽和化合物を付加重合あるいはメタセシス開環重合したのち水素添加することにより作られる。本発明に用いるノルボルネン系重合体において、R5〜R6は水素原子又は−CH3 が好ましく、X3、及びY3 は水素原子、Cl、−COOCH3 が好ましく、その他の基は適宜選択される。このノルボルネン系樹脂は、JSR(株)からアートン(Arton)GあるいはアートンFという商品名で発売されており、また日本ゼオン(株)からゼオノア(Zeonor)ZF14、ZF16、ゼオネックス(Zeonex)250あるいはゼオネックス280という商品名で市販されており、これらを使用することができる。
本発明においては、フィルムの厚み変動を低減するために製膜用溶液(ドープ溶液)の粘度を一定範囲に調整することが好ましい。そのためには、使用する環状ポリオレフィンの分子量分布を調整すること、製膜用溶液を構成する溶媒組成を調整することが有効である。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定することによって、質量平均分子量及び数平均分子量が求められる。本発明において好ましい質量平均分子量Mwの範囲は5万から50万であり、更に好ましくは15万から35万である。本発明において好
ましい数平均分子量Mnの範囲は2万から15万であり、更に好ましくは5万から10万である。分子量が小さすぎるとフィルムが脆くなり割れやすくなる。また製膜用溶液の粘度が低くなりすぎて、幅方向に均一な厚さに押出しにくくなる。一方分子量が大きすぎると製膜用溶液の粘度が高くなりすぎて、ろ過が困難になったり、高速製膜が困難になるなどの問題を生じる。
また分子量分布の大きさを表す指標となるMw/Mn比の好ましい範囲は、1.5から4.0であり、好ましくは2.0から3.0である。Mw/Mn比は1に近いほうが分子量分布が少なくなって好ましいが、現実的には1にすることは難しい。数値が大きくなると低分子量成分が多くなるので好ましくない。
(添加剤)
本発明の環状ポリオレフィン溶液には、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、劣化防止剤、紫外線防止剤、レターデーション(光学異方性)調節剤、微粒子、剥離促進剤、赤外吸収剤、など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点において特に限定されるものではない。しかし、例えば分子量2000以下の有機物の中に多く見られるように、揮発性あるいは昇華性の添加剤はフィルムの寸法収縮や質量減少の原因となるためその使用は好ましくなく、やむを得ず使用する場合は環状ポリオレフィン100質量部に対して3質量部以下の使用に抑制すべきであり、好ましくは2質量部以下の使用に制限すべきである。
赤外吸収染料としては例えば特開平2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期は環状ポリオレフィン溶液(ドープ)作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、環状ポリオレフィンフィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。
(劣化防止剤)
本発明の環状ポリオレフィン溶液には公知の劣化(酸化)防止剤、例えば、2,6−ジ−t−ブチル,4−メチルフェノール、4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどのフェノール系あるいはヒドロキノン系酸化防止剤を添加することができる。さらに、トリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのリン系酸化防止剤をすることが好ましい。酸化防止剤の添加量は、環状ポリオレフィン100質量部に対して、0.05〜2.0質量部を添加する。
(紫外線吸収剤)
本発明の環状ポリオレフィン溶液には、偏光板または液晶等の劣化防止の観点から、紫外線吸収剤が好ましく用いられる。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばヒンダードフェノール系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。ヒンダードフェノール系化合物の例としては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピ
オネート〕、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイトなどが挙げられる。ベンゾトリアゾール系化合物の例としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2(2’−ヒドロキシ−3’,5‘−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、(2(2’−ヒドロキシ−3’,5‘−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕などが挙げられる。これらの紫外線防止剤の添加量は、環状ポリオレフィンに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
(マット剤)
本発明においては、作製された環状ポリオレフィンフイルムがハンドリングされる際に、傷が付いたり搬送性が悪化することを防止するために、微粒子(マット剤)を添加することが好ましい。マット剤の好ましい具体例は、無機化合物としては、ケイ素を含む化合物、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロングチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくはケイ素を含む無機化合物や金属酸化物であるが、フイルムの濁度を低減できるので二酸化ケイ素が特に好ましく用いられる。二酸化ケイ素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名で市販されているものが使用できる。
これらの微粒子の1次平均粒子径としては、ヘイズを低く抑えるという観点から、好ましくは、0. 001〜20μmであり、より好ましくは0.001〜10μmであり更に好ましくは、0. 002〜1μmであり、特に好ましくは、0.005〜0.5μmである。微粒子の1次平均粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡で粒子を平均粒径で求められる。購入した微粒子は凝集していることが多く、使用の前に公知の方法で分散することが好ましい。分散により二次粒子径を0.2〜1.5μmにすることが好ましく、0.3〜1.0μmが更に好ましい。微粒子の添加量は環状ポリオレフィン100質量部に対して0.01〜0.3質量部が好ましく、0.05〜0.2質量部がさらに好ましく、0.08〜0.12質量部が最も好ましい。
微粒子を添加した環状ポリオレフィンフィルムの好ましいヘイズの範囲は2.0%以下であり、1.2%以下が更に好ましく、0.5%以下が特に好ましい。微粒子を添加した環状ポリオレフィンフィルムの好ましい動摩擦係数は0.8以下であり、0.5以下が特に好ましい。
動摩擦係数は、JISやASTMが規定する方法に従い、鋼球を用いて測定できる。ヘイズは日本電色工業(株)製1001DP型ヘイズ計を用いて測定できる。
(剥離促進剤)
環状ポリオレフィンフィルムの剥離抵抗を小さくする添加剤としては界面活性剤に効果の顕著なものが多くみつかっている。好ましい剥離剤としては燐酸エステル系の界面活性剤、カルボン酸塩系の界面活性剤、スルホン酸あるいはスルホン酸塩系の界面活性剤、硫酸エステル系の界面活性剤が効果的である。また上記界面活性剤の炭化水素鎖に結合している水素原子の一部をフッ素原子に置換したフッ素系界面活性剤も有効である。以下に剥離剤を例示する。
RZ−1 C817O−P(=O)−(OH)2
RZ−2 C1225O−P(=O)−(OK)2
RZ−3 C1225OCH2CH2O−P(=O)−(OK)2
RZ−4 C1531(OCH2CH25 O−P(=O)−(OK)2
RZ−5 {C1225O(CH2CH2O)52 −P(=O)−OH
RZ−6 {C1835(OCH2CH28 O}2 −P(=O)−ONH4
RZ−7 (t−C493 −C62 −OCH2CH2O−P(=O)−(OK)2
RZ−8 (iso−C919)−C64 −O−(CH2CH2O)5 −P(=O)−(OK)(OH)
RZ−9 C1225SO3Na
RZ−10 C1225OSO3Na
RZ−11 C1733COOH・N(CH2CH2OH)3
RZ−12 iso−C817−C64 −O−(CH2CH2O)3−(CH22SO3Na
RZ−13 (iso−C9192 −C63−O−(CH2CH2O)3−(CH24SO3Na
RZ−14 トリイソプロピルナフタレンスルフォン酸ナトリウム
RZ−15 トリ−t−ブチルナフタレンスルフォン酸ナトリウム
RZ−16 C1733CON(CH3)CH2CH2SO3Na
RZ−17 C1225−C64SO3 ・NH4
剥離剤の添加量は環状ポリオレフィンに対して0.05〜3質量%が好ましく、0.1〜2質量%が更に好ましく、0.1〜0.5質量%が最も好ましい。
(レターデーション発現剤)
本発明ではレターデーション値を発現するため、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物をレターデーション発現剤として用いることができる。レターデーション発現剤を使用する場合は、ポリマー100質量部に対して、0.05乃至7質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1乃至3質量部の範囲で使用することがより好ましく、0.2乃至2質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。二種類以上のレターデーション発現剤を併用してもよい。
レターデーション発現剤は、250乃至400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
本明細書において、「芳香族環」は、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。
芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、
チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれる。
芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が好ましく、特に1,3,5−トリアジン環が好ましく用いられる。具体的には例えば特開2001−166144号公報に開示の化合物が好ましく用いられる。
レターデーション発現剤が有する芳香族環の数は、2乃至20であることが好ましく、2乃至12であることがより好ましく、2乃至8であることがさらに好ましく、2乃至6であることが最も好ましい。
二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合および(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。結合関係は、(a)〜(c)のいずれでもよい。
(a)の縮合環(二つ以上の芳香族環の縮合環)の例には、インデン環、ナフタレン環、アズレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、アセナフチレン環、ビフェニレン環、ナフタセン環、ピレン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドリジン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、プリン環、インダゾール環、クロメン環、キノリン環、イソキノリン環、キノリジン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フタラジン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェナントリジン環、キサンテン環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環およびチアントレン環が含まれる。ナフタレン環、アズレン環、インドール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環およびキノリン環が好ましい。
(b)の単結合は、二つの芳香族環の炭素原子間の結合であることが好ましい。二以上の単結合で二つの芳香族環を結合して、二つの芳香族環の間に脂肪族環または非芳香族性複素環を形成してもよい。
(c)の連結基も、二つの芳香族環の炭素原子と結合することが好ましい。連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−CO−、−O−、−NH−、−S−またはそれらの組み合わせであることが好ましい。組み合わせからなる連結基の例を以下に示す。なお、以下の連結基の例の左右の関係は、逆になってもよい。
c1:−CO−O−
c2:−CO−NH−
c3:−アルキレン−O−
c4:−NH−CO−NH−
c5:−NH−CO−O−
c6:−O−CO−O−
c7:−O−アルキレン−O−
c8:−CO−アルケニレン−
c9:−CO−アルケニレン−NH−
c10:−CO−アルケニレン−O−
c11:−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−
c12:−O−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−O−
c13:−O−CO−アルキレン−CO−O−
c14:−NH−CO−アルケニレン−
c15:−O−CO−アルケニレン−
芳香族環および連結基は、置換基を有していてもよい。
置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、ニトロ、スルホ、カルバモイル、スルファモイル、ウレイド、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、脂肪族アミド基、脂肪族スルホンアミド基、脂肪族置換アミノ基、脂肪族置換カルバモイル基、脂肪族置換スルファモイル基、脂肪族置換ウレイド基および非芳香族性複素環基が含まれる。
アルキル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。環状アルキル基よりも鎖状アルキル基の方が好ましく、直鎖状アルキル基が特に好ましい。アルキル基は、さらに置換基(例、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ基、アルキル置換アミノ基)を有していてもよい。アルキル基の(置換アルキル基を含む)例には、メチル、エチル、n−ブチル、n−ヘキシル、2−ヒドロキシエチル、4−カルボキシブチル、2−メトキシエチルおよび2−ジエチルアミノエチルが含まれる。
アルケニル基の炭素原子数は、2乃至8であることが好ましい。環状アルケニル基よりも鎖状アルケニル基の方が好ましく、直鎖状アルケニル基が特に好ましい。アルケニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルケニル基の例には、ビニル、アリルおよび1−ヘキセニルが含まれる。
アルキニル基の炭素原子数は、2乃至8であることが好ましい。環状アルキケニル基よりも鎖状アルキニル基の方が好ましく、直鎖状アルキニル基が特に好ましい。アルキニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルキニル基の例には、エチニル、1−ブチニルおよび1−ヘキシニルが含まれる。
脂肪族アシル基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アシル基の例には、アセチル、プロパノイルおよびブタノイルが含まれる。
脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アシルオキシ基の例には、アセトキシが含まれる。
アルコキシ基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。アルコキシ基は、さらに置換基(例、アルコキシ基)を有していてもよい。アルコキシ基の(置換アルコキシ基を含む)例には、メトキシ、エトキシ、ブトキシおよびメトキシエトキシが含まれる。
アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニルおよびエトキシカルボニルが含まれる。
アルコキシカルボニルアミノ基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、メトキシカルボニルアミノおよびエトキシカルボニルアミノが含まれる。
アルキルチオ基の炭素原子数は、1乃至12であることが好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ、エチルチオおよびオクチルチオが含まれる。
アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。アルキルスルホニル基の例には、メタンスルホニルおよびエタンスルホニルが含まれる。
脂肪族アミド基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アミド基の例には、アセトアミドが含まれる。
脂肪族スルホンアミド基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。脂肪族スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミドおよびn−オクタンスルホンアミドが含まれる。
脂肪族置換アミノ基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族置換アミノ基の例には、ジメチルアミノ、ジエチルアミノおよび2−カルボキシエチルアミノが含まれる。
脂肪族置換カルバモイル基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。脂肪族置換カルバモイル基の例には、メチルカルバモイルおよびジエチルカルバモイルが含まれる。
脂肪族置換スルファモイル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。脂肪族置換スルファモイル基の例には、メチルスルファモイルおよびジエチルスルファモイルが含まれる。
脂肪族置換ウレイド基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。脂肪族置換ウレイド基の例には、メチルウレイドが含まれる。
非芳香族性複素環基の例には、ピペリジノおよびモルホリノが含まれる。
レターデーション発現剤の分子量は、300乃至800であることが好ましい。
本発明では1,3,5−トリアジン環を用いた化合物の他に直線的な分子構造を有する棒状化合物も好ましく用いることができる。直線的な分子構造とは、熱力学的に最も安定な構造において棒状化合物の分子構造が直線的であることを意味する。熱力学的に最も安定な構造は、結晶構造解析または分子軌道計算によって求めることができる。例えば、分子軌道計算ソフト(例、WinMOPAC2000、富士通(株)製)を用いて分子軌道計算を行い、化合物の生成熱が最も小さくなるような分子の構造を求めることができる。分子構造が直線的であるとは、上記のように計算して求められる熱力学的に最も安定な構造において、分子構造で主鎖の構成する角度が140度以上であることを意味する。
少なくとも二つの芳香族環を有する棒状化合物としては、下記一般式(VI)で表される化合物が好ましい。
一般式(VI): Ar1−L1−Ar2
上記一般式(VI)において、Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、芳香族基である。
本明細書において、芳香族基は、アリール基(芳香族性炭化水素基)、置換アリール基、芳香族性ヘテロ環基および置換芳香族性ヘテロ環基を含む。
アリール基および置換アリール基の方が、芳香族性ヘテロ環基および置換芳香族性ヘテロ環基よりも好ましい。芳香族性へテロ環基のヘテロ環は、一般には不飽和である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性へテロ環は一般に最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましく、窒素原子または硫黄原子がさらに好ましい。
芳香族基の芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環およびピラジン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
一般式(VI)において、L1は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−O−、−CO−およびそれらの組み合わせからなる基から選ばれる二価の連結基である。
アルキレン基は、環状構造を有していてもよい。環状アルキレン基としては、シクロヘキシレンが好ましく、1,4−シクロへキシレンが特に好ましい。鎖状アルキレン基としては、直鎖状アルキレン基の方が分岐を有するアルキレン基よりも好ましい。
アルキレン基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、より好ましくは1乃至15であり、さらに好ましくは1乃至10であり、さらに好ましくは1乃至8であり、最も好ましくは1乃至6である。
アルケニレン基およびアルキニレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ま
しく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。
アルケニレン基およびアルキニレン基の炭素原子数は、好ましくは2乃至10であり、より好ましくは2乃至8であり、さらに好ましくは2乃至6であり、さらに好ましくは2乃至4であり、最も好ましくは2(ビニレンまたはエチニレン)である。
アリーレン基は、炭素原子数は6乃至20であることが好ましく、より好ましくは6乃至16であり、さらに好ましくは6乃至12である。
一般式(VI)の分子構造において、L1を挟んで、Ar1とAr2とが形成する角度は、140度以上であることが好ましい。
棒状化合物としては、下記式一般式(VII)で表される化合物がさらに好ましい。
一般式(VII):Ar1−L2−X−L3−Ar2
上記一般式(VII)において、Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、芳香族基である。芳香族基の定義および例は、一般式(VI)のAr1およびAr2と同様である。
一般式(VII)において、L2およびL3は、それぞれ独立に、アルキレン基、−O−、−CO−およびそれらの組み合わせからなる基より選ばれる二価の連結基である。
アルキレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。
アルキレン基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましく、より好ましくは1乃至8であり、さらに好ましくは1乃至6であり、さらに好ましくは1乃至4であり、1または2(メチレンまたはエチレン)であることが最も好ましい。
2およびL3は、−O−CO−または−CO−O−であることが特に好ましい。
一般式(VII)において、Xは、1,4−シクロへキシレン、ビニレンまたはエチニレンである。
溶液の紫外線吸収スペクトルにおいて最大吸収波長(λmax)が250nmより短波長である棒状化合物を、二種類以上併用してもよい。
レターデーション発現剤の添加量は、環状ポリオレフィン量の0.1乃至30質量%であることが好ましく、0.5乃至20質量%であることがさらに好ましい。
(有機溶剤)
次に、本発明の環状ポリオレフィンが溶解される有機溶剤について記述する。本発明においては、環状ポリオレフィンが溶解し流延,製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りは、使用できる有機溶剤は特に限定されない。本発明で用いられる有機溶剤は、例えばジクロロメタン、クロロホルムの如き塩素系溶剤、炭素原子数が3〜12の鎖状炭化水素、環状炭化水素、芳香族炭化水素、エステル、ケトン、エーテルから選ばれる溶剤が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。炭素原子数が3〜12の鎖状炭化水素類の例としては、ヘキサン、オクタン、イソオクタン、デカンなどが挙げられる。炭素原子数が3〜12の環状炭化水素類としてはシクロペンタン、シクロヘキサン及びその誘導体が挙げられる。炭素原子数が3〜12の芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが挙げられる。二種類以上の官能基を有する有機溶剤の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが挙げられる。有機溶剤の好ましい沸点は35℃以上且つ110℃以下である。
たとえば特開平8−43812号公報、特開2001−272534号公報、特開2003−306557号公報に開示されているように、環状ポリオレフィンの溶液製膜には従来どちらかというと非塩素系有機溶剤が使用されていた。非塩素系溶剤は乾燥工程において、パスロールとの剥離により帯電し、放電による引火火災を発生しやすい。本発明者らは、環状ポリオレフィンの溶液を作製するに際しては、主溶剤として塩素系有機溶剤が特に好ましいことを見出した。塩素系有機溶剤は溶解力が大きく且つ引火性が無いあるいは少ないために工業的利用において非常に有利である。またそれ以外にも後述するようにフィルムの剥離性を改善しやすいという大きな利点を見出した。本発明においては、環状ポリオレフィンが溶解し流延,製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りはその塩素系有機溶剤の種類は特に限定されない。塩素系有機溶剤のなかでも好ましくはジクロロメタン、クロロホルムである。特にジクロロメタンは沸点が低いため、乾燥時の熱効率に優れているため好ましい。また、塩素系有機溶剤以外の、例えば前記の有機溶剤を混合することも特に問題ない。その場合は、塩素系有機溶剤は、溶剤全体の50〜99.5質量%使用することが好ましい。ジクロロメタンは溶剤全体の少なくとも50質量%使用することが好ましい。本発明で塩素系有機溶剤と併用されるのに好ましい非塩素系有機溶剤について以下に記す。すなわち、好ましい非塩素系有機溶剤としては、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、アルコール、炭化水素などから選ばれる溶剤が好ましい。エステル、ケトン、エーテルおよびアルコールは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も溶剤として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を同時に有していてもよい。二種類以上の官能基を有する溶剤の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテート等が挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノン等が挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等が挙げられる。二種類以上の官能基を有する有機溶剤の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノール等が挙げられる。
本発明者らは塩素系溶剤を主溶剤とし、環状ポリオレフィンに対して溶解性のほとんどない貧溶媒を少量混合した溶剤に環状ポリオレフィンを溶解することにより、剥離性を著しく改善できることを見出した。貧溶媒を使用しないで製膜するときに比べて適切な貧溶媒を併用すると、金属支持体からフィルムを剥離するときの剥離抵抗値が1/5以下から1/20以下まで低下し、高速で製膜することが容易になる。貧溶媒使用による剥離抵抗低下効果は、付加(共)重合環状ポリオレフィンに対して著しい。
好ましい貧溶媒は使用するポリマー種により適宜選択する必要がある。まず使用する主溶剤(良溶剤)よりも沸点が10℃以上高くて、主溶剤よりも揮発性が低い溶剤が好ましい。貧溶媒の沸点が主溶剤よりも高いと、乾燥が進んで支持体からフィルムを剥離する時には、フィルム中の残留溶剤は貧溶媒が多くなることと関係していると思われる。環状ポリオレフィンに対する貧溶媒のなかでも特に1価のアルコール類は、剥離抵抗低減効果が著しく好ましい。選択する良溶剤の沸点によって特に好ましいアルコール類は変化するが、乾燥負荷を考慮すると、沸点が120℃以下のアルコールが好ましく、炭素数が1〜6の1価アルコールが更に好ましく、炭素数1〜4のアルコール類が特に好ましい。
また塩素系有機溶剤と併用されるアルコールとしては、好ましくは直鎖であっても分枝を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素であることが好まし
い。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノールおよびシクロヘキサノールが含まれる。なおアルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。
環状ポリオレフィン溶液を作成する上で特に好ましい混合溶剤は、ジクロロメタンを主溶剤とし、メタノール、エタノール、プロパノールあるいはイソプロパノールから選ばれる1種以上のアルコール類を貧溶媒にする組合わせである。
アルコール類貧溶媒の好ましい使用量は、環状ポリオレフィン100質量部に対して3〜100質量部であり、13〜50質量部であると更に好ましい。アルコール類が多すぎると、フィルムが白化しやすくなるという問題がある。同様に主溶剤と貧溶媒との混合割合の好ましい範囲は、主溶剤100質量部に対して4〜20質量部である。5〜15質量部が更に好ましく、6〜12質量部が特に好ましい。アルコール類の量が環状ポリオレフィン100質量部に対して13〜50質量部、且つ主溶剤100質量部に対して6〜12質量部であるときが最も好ましく、剥離抵抗は小さくフィルム面状も最もきれいなものが得られる。
(ドープ調製)
次に本発明の環状ポリオレフィン溶液(ドープ)の調製については、室温攪拌溶解による方法、室温で攪拌してポリマーを膨潤させた後−20から−100℃まで冷却し再度20から100℃に加熱して溶解する冷却溶解法、密閉容器中で主溶剤の沸点以上の温度にして溶解する高温溶解方法、さらには溶剤の臨界点まで高温高圧にして溶解する方法などがある。溶解性のよいポリマーは室温溶解が好ましいが、溶解性の悪いポリマーは密閉容器中で加熱溶解する。ジクロロメタンを主溶剤に選んだときは、多くの環状ポリオレフィンは20〜100℃の加熱により溶解することが出来る。溶解性があまり悪くないものはできるだけ低い温度を選ぶほうが、工程的には楽になる。
本発明において使用する環状ポリオレフィン溶液の粘度は25℃で2〜250Pa・sの範囲であることが好ましい。さらに好ましくは5〜200Pa・sの範囲である。特に好ましい粘度範囲は10〜100Pa・sであり、この範囲のドープ溶液を使用することにより、フィルムの厚さ変動の制御は著しく容易になる。先行技術においては、例えば特開2002−69196号公報では、0.1mPa・sから1Pa・sの粘度範囲の製膜溶液を用いて製膜しているため、ダイ刃口の流れやすいところから優先して製膜液が押出されるために、幅方向で厚さに変動が生じていたと思われる。逆に溶液の粘度が大きすぎると、流延後溶液の流動によるレベリングが働く前に乾燥固定化されるため、この場合も厚さ変動が大きくなると思われる。粘度の測定は次のようにして行った。試料溶液1mLをレオメーター(CLS 500)に直径 4cm/2°のSteel Cone(共にTA
Instrumennts社製)を用いて測定した。試料溶液は予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始した。
環状ポリオレフィン溶液の粘度調整は、環状ポリオレフィンの数平均分子量及び質量平均分子量を好ましい範囲に合わせる方法が使用できる。また溶液中の環状ポリオレフィン濃度を好ましい範囲に調整する方法が使用できる。環状ポリオレフィンの好ましい濃度は10〜35質量%であり、20〜33質量%が更に好ましく、23〜30質量%が特に好ましい。
環状ポリオレフィン溶液は高濃度のドープが得られるのが特徴であり、濃縮という手段に頼らずとも高濃度でしかも安定性の優れた環状ポリオレフィン溶液が得られる。更に溶解し易くするために低い濃度で溶解してから、濃縮手段を用いて濃縮してもよい。濃縮の
方法としては、特に限定するものはないが、例えば、低濃度溶液を筒体とその内部の周方向に回転する回転羽根外周の回転軌跡との間に導くとともに、溶液との間に温度差を与えて溶剤を蒸発させながら高濃度溶液を得る方法(例えば、特開平4−259511号公報等)、加熱した低濃度溶液をノズルから容器内に吹き込み、溶液をノズルから容器内壁に当たるまでの間で溶剤をフラッシュ蒸発させるとともに、溶剤蒸気を容器から抜き出し、高濃度溶液を容器底から抜き出す方法(例えば、米国特許第2,541,012号、米国特許第2,858,229号、米国特許第4,414,341号、米国特許第4,504,355号各明細書等などに記載の方法)等で実施できる。
溶液は流延に先だって金網やネルなどの適当な濾材を用いて、未溶解物やゴミ、不純物などの異物を濾過除去しておくのが好ましい。環状ポリオレフィン溶液の濾過には絶対濾過精度が0.1〜100μmのフィルタが用いられ、さらには絶対濾過精度が0.5〜25μmであるフィルタを用いることが好ましく用いられる。フィルタの厚さは、0.1〜10mmが好ましく、更には0.2〜2mmが好ましい。その場合、ろ過圧力は1.6MPa以下、より好ましくは1.3MPa以下、更には1.0MPa以下、特に好ましくは0.6MPa以下で濾過することが好ましい。濾材としては、ガラス繊維、セルロース繊維、濾紙、四フッ化エチレン樹脂などのフッ素樹脂等の従来公知である材料を好ましく用いることができ、またセラミックス、金属等も好ましく用いられる。
(製膜)
環状ポリオレフィン溶液を用いたフィルムの製造方法について述べる。本発明の環状ポリオレフィンフィルムを製造する方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供するのと同様の溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(環状ポリオレフィン溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、テンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。以下に各製造工程について簡単に述べるが、これらに限定されるものではない。
まず、調製した環状ポリオレフィン溶液(ドープ)は、ソルベントキャスト法により環状ポリオレフィンフィルムを作製される際に、ドープは無端金属支持体上、例えば金属ドラムまたは金属支持体(バンドあるいはベルト)上に流延し、溶剤を蒸発させてフィルムを形成することが好ましい。流延前のドープは、環状ポリオレフィン量が10〜35質量%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ドープは、表面温度が30℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましく用いられ、特には−10〜20℃の金属支持体温度であることが好ましい。
さらに特開2000−301555号、特開2000−301558号、特開平7−032391号、特開平3−193316号、特開平5−086212号、特開昭62−037113号、特開平2−276607号、特開昭55−014201号、特開平2−111511号、および特開平2−208650号の各公報に記載のセルロースアシレート製膜技術を本発明では応用できる。
(重層流延)
環状ポリオレフィン溶液を、金属支持体としての平滑なバンド上或いはドラム上に単層液として流延してもよいし、2層以上の複数の環状ポリオレフィン液を流延してもよい。
複数の環状ポリオレフィン溶液を流延する場合、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口から環状ポリオレフィンを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、および特開平11−198285号の各公報などに記載の方法が適応できる。
また、2つの流延口から環状ポリオレフィン溶液を流延することによってもフィルム化することでもよく、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、および特開平6−134933号の各公報に記載の方法で実施できる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度環状ポリオレフィン溶液の流れを低粘度の環状ポリオレフィン溶液で包み込み、その高,低粘度の環状ポリオレフィン溶液を同時に押出す環状ポリオレフィンフィルム流延方法でもよい。更にまた、特開昭61−94724号および特開昭61−94725号の各公報に記載の外側の溶液が内側の溶液よりも貧溶媒であるアルコール成分を多く含有させることも好ましい態様である。或いはまた2個の流延口を用いて、第一の流延口により金属支持体に成型したフィルムを剥離し、金属支持体面に接していた側に第二の流延を行なうことにより、フィルムを作製することでもよく、例えば特公昭44−20235号公報に記載されている方法である。流延する環状ポリオレフィン溶液は同一の溶液でもよいし、異なる環状ポリオレフィン溶液でもよく特に限定されない。複数の環状ポリオレフィン層に機能を持たせるために、その機能に応じた環状ポリオレフィン溶液を、それぞれの流延口から押出せばよい。さらに環状ポリオレフィン溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延することも実施しうる。
単層液では必要なフィルム厚さにするためには高濃度で高粘度の環状ポリオレフィン溶液を押出すことが必要であり、その場合環状ポリオレフィン溶液の安定性が悪くて固形物が発生し、ブツ故障となったり、平面性が不良であったりして問題となりやすい。この解決として、複数の環状ポリオレフィン溶液を流延口から流延することにより、高粘度の溶液を同時に金属支持体上に押出すことができ、平面性も良化し優れた面状のフィルムが作製できるばかりでなく、濃厚な環状ポリオレフィン溶液を用いることで乾燥負荷の低減化が達成でき、フィルムの生産スピードを高めることができる。
共流延の場合、内側と外側の厚さは特に限定されないが、好ましくは外側が全膜厚の1〜50%であることが好ましく、より好ましくは2〜30%の厚さである。ここで、3層以上の共流延の場合は金属支持体に接した層と空気側に接した層のトータル膜厚を外側の厚さと定義する。共流延の場合、前述の劣化防止剤、紫外線吸収剤、マット剤等の添加物濃度が異なる環状ポリオレフィン溶液を共流延して、積層構造の環状ポリオレフィンフィルムを作製することもできる。例えば、スキン層/コア層/スキン層といった構成の環状ポリオレフィンフィルムを作ることができる。例えば、マット剤は、スキン層に多く、またはスキン層のみに入れることができる。劣化防止剤、紫外線吸収剤はスキン層よりもコア層に多くいれることができ、コア層のみにいれてもよい。また、コア層とスキン層で劣化防止剤、紫外線吸収剤の種類を変更することもでき、例えばスキン層に低揮発性の劣化防止剤及び/または紫外線吸収剤を含ませ、コア層に可塑性に優れた可塑剤、或いは紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を添加することもできる。また、剥離促進剤を金属支持体側のスキン層のみ含有させることも好ましい態様である。また、冷却ドラム法で金属支持体を冷却して溶液をゲル化させるために、スキン層に貧溶媒であるアルコールをコア層より多く添加することも好ましい。スキン層とコア層のTgが異なっていても良く、スキン層のTgよりコア層のTgが低いことが好ましい。また、流延時の環状ポリオレフィンを含む溶液の粘度もスキン層とコア層で異なっていても良く、スキン層の粘度がコア層の粘度よりも小さいことが好ましいが、コア層の粘度がスキン層の粘度より小さくてもよい。
(流延)
溶液の流延方法としては、調製されたドープを加圧ダイから金属支持体上に均一に押し出す方法、一旦金属支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、或いは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があるがいずれも好ましく用いることができる。また、ここで挙げた方法以外にも従来知られているセルローストリアセテート溶液を流延製膜する種々の方法で実施でき、用いる溶剤の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することによりそれぞれの公報に記載の内容と同様の効果が得られる。本発明の環状ポリオレフィンフィルムを製造するのに使用されるエンドレスに走行する金属支持体としては、表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされたドラムや表面研磨によって鏡面仕上げされたステンレスベルト(バンドといってもよい)が用いられる。本発明の環状ポリオレフィンフィルムの製造に用いられる加圧ダイは、金属支持体の上方に1基或いは2基以上の設置でもよい。好ましくは1基または2基である。2基以上設置する場合には流延するドープ量をそれぞれのダイに種々な割合にわけてもよく、複数の精密定量ギヤアポンプからそれぞれの割合でダイにドープを送液してもよい。流延に用いられる環状ポリオレフィン溶液の温度は、−10〜55℃が好ましくより好ましくは25〜50℃である。その場合、工程のすべてが同一でもよく、あるいは工程の各所で異なっていてもよい。異なる場合は、流延直前で所望の温度であればよい。
(乾燥)
環状ポリオレフィンフィルムの製造に係わる金属支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には金属支持体(例えばドラム或いはバンド)の表面側、つまり金属支持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラム或いはバンドの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をバンドやドラムのドープ流延面の反対側である裏面から接触させて、伝熱によりドラム或いはバンドを加熱し表面温度をコントロールする液体伝熱方法などがあるが、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の金属支持体の表面温度はドープに用いられている溶剤の沸点以下であれば何度でもよい。しかし乾燥を促進するためには、また金属支持体上での流動性を失わせるためには、使用される溶剤の内の最も沸点の低い溶剤の沸点より1〜10度低い温度に設定することが好ましい。尚、流延ドープを冷却して乾燥することなく剥ぎ取る場合はこの限りではない。
(剥離)
生乾きのフイルムを金属支持体から剥離するとき、剥離抵抗(剥離荷重)が大きいと、製膜方向にフイルムが不規則に伸ばされて光学的な異方性むらを生じる。特に剥離荷重が大きいときは、製膜方向に段状に伸ばされたところと伸ばされていないところが交互に生じて、レターデーションに分布を生じる。液晶表示装置に装填すると線状あるいは帯状にむらが見えるようになる。このような問題を発生させないためには、フイルムの剥離荷重をフイルム剥離幅1cmあたり0.25N以下にすることが好ましい。剥離荷重はより好ましくは0.2N/cm以下、さらに好ましくは0.15N以下、特に好ましくは0.10N以下である。剥離荷重0.2N/cm以下のときはむらが現れやすい液晶表示装置においても剥離起因のむらは全く認められず、特に好ましい。剥離荷重を小さくする方法としては、前述のように剥離剤を添加する方法と、使用する溶剤組成の選択による方法がある。
剥離荷重の測定は次のようにして行う。製膜装置の金属支持体と同じ材質・表面粗さの金属板上にドープを滴下し、ドクターブレードを用いて均等な厚さに展延し乾燥する。カッターナイフでフィルムに均等幅の切れ込みを入れ、フィルムの先端を手で剥がしてストレンゲージにつながったクリップで挟み、ストレンゲージを斜め45度方向に引き上げながら、荷重変化を測定する。剥離されたフィルム中の揮発分も測定する。乾燥時間を変え
て何回か同じ測定を行い、実際の製膜工程における剥離時残留揮発分と同じ時の剥離荷重を定める。剥離速度が速くなると剥離荷重は大きくなる傾向があり、実際に近い剥離速度で測定することが好ましい。
剥離時の好ましい残留揮発分濃度は5〜60質量%である。しかし使用する環状ポリオレフィンにもよるが、残留揮発分濃度30質量%以上ではフィルム強度が乏しく剥離力に負けて切断したり伸びてしまう。また剥離後の自己保持力が乏しく、変形、しわ、クニックを生じやすくなる。またレターデーションに分布を生じる原因になる。一方高揮発分で剥離すると乾燥速度が稼げて、生産性が向上して好ましいという利点もある。従って更に好ましい剥離時の残留揮発分濃度は10〜27質量%である。剥離剤使用量を少なくしても比較的に剥離抵抗が小さくなる17〜24%が特に好ましい。
(延伸処理)
本発明の環状ポリオレフィンフィルムを延伸処理する場合は、剥離のすぐ後の未だフィルム中に溶剤が十分に残留している状態で行うのが好ましい。延伸の目的は、(1)しわや変形のない平面性に優れたフィルムを得るため及び、(2)フィルムの面内レターデーションを大きくするために行う。(1)の目的で延伸を行うときは、比較的高い温度で延伸を行い、延伸倍率も1%からせいぜい10%までの低倍率の延伸を行う。2から5%の延伸が特に好ましい。(1)と(2)の両方の目的、あるいは(2)だけの目的で延伸する場合は、比較的低い温度で、延伸倍率も5から150%で延伸する。
延伸温度の選択について述べる。残留溶剤を含んだフィルムを密閉パンに入れて示差走査熱量計で昇温しながらフィルムの比熱を測定し、温度対比熱カーブが変曲し、比熱が低下し始める温度をTcとする。比較的高い延伸温度とはTcよりも10℃以上高い温度、好ましくは15から30℃高い温度である。このような温度で延伸しても環状ポリオレフィンフィルムのレターデーションはほとんど発現しない。
一方比較的低い温度とは、Tcの前後10℃の範囲をさす。この温度域で延伸すると面内レターデーションが発現しやすく、所望の光学特性に調整しやすい。
フィルム中に残留溶媒が残っているときに延伸すると乾燥フィルムに比べて低い温度で延伸できる。環状ポリオレフィンは高いガラス転移点(Tg)を有するポリマーが多いが、ポリマー固有のTgよりも低い温度で延伸することができる。
フィルムの延伸は、縦あるいは横だけの一軸延伸でもよく同時あるいは逐次2軸延伸でもよい。VA液晶セルやOCB液晶セル用位相差フィルムの複屈折は、幅方向の屈折率が長さ方向の屈折率よりも大きくなることが好ましい。従って幅方向により多く延伸することが好ましい。
(後乾燥)
環状ポリオレフィンフィルムは延伸後更に乾燥し、残留揮発分を2%以下にして巻き取る。巻き取る前にフィルムの両端にナーリングを施すことが好ましい。ナーリングの幅は3mm〜50mm、より好ましくは5mm〜30mm、高さは1〜50μmであり、好ましくは2〜20μm、より好ましくは3〜10μmである。これは片押しであっても両押しであっても良い。
本発明の出来上がり(乾燥後)の環状ポリオレフィンフィルムの厚さは、使用目的によって異なるが、通常5から500μmの範囲であり、30〜150μmの範囲が好ましく、特に液晶表示装置用には40〜110μmであることが好ましい。
フィルム厚さの調製は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。以上のようにして得られた環状ポリオレフィンフィルムの幅は0.5〜3mが好ましく、より好ましくは0.6〜2.5m、さらに好ましくは0.8〜2.2mである。長さは1ロールあたり100〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500〜
7000mであり、さらに好ましくは1000〜6000mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、幅は3mm〜50mm、より好ましくは5m〜30mm、高さは0.5〜500μmであり、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであっても良い。全幅のRe値のばらつきが±5nmであることが好ましく、±3nmであることが更に好ましい。また、Rth値のバラツキは±10nmが好ましく、±5nmであることが更に好ましい。また、長さ方向のRe値、及びRth値のバラツキも幅方向のバラツキの範囲内であることが好ましい。透明感を保つためヘイズは0.01〜2%が好ましい。ヘイズを小さくするためには、添加する微粒子マット剤の分散を十分に行い凝集粒子の数を少なくしたり、添加量を少なくするためにスキン層だけにマット剤を使用したりする。
ナーリング部を除いた幅方向膜厚差は5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがなお好ましい。幅方向の膜厚差が大きいと4000mを越える長尺のフィルムを巻き取ったとき、黒帯と呼ばれる膜厚違いによる変形を生じやすくなる。狭い幅での急激な膜厚変動は縦筋状の外観異常として見えるだけでなく、液晶表示装置に装着したとき輝度むらを生じるため特に問題である。幅方向に連続で膜厚を測定したとき、いずれの測定個所でも10mm間で0.6μmを越える膜厚差がないことが好ましい。10mm間の膜厚差は0.5μm以下であることが更に好ましい。
(環状ポリオレフィンフィルムの光学特性)
本発明の環状ポリオレフィンフィルムの好ましい光学特性は、フィルムの用途により異なる。偏光板保護フィルム用途の場合は、面内レターデーション(Re)は5nm以下が好ましく、3nm以下が更に好ましい。厚さ方向レターデーション(Rth)も50nm以下が好ましく、35nm以下が更に好ましく、10nm以下が特に好ましい。このような用途には、分極率の大きい置換基を含まないかあるいは少ない環状ポリオレフィンの使用が好ましい。なかでもノルボルネンモノマーを開環重合した環状ポリオレフィンや炭素数4以下のαオレフィンとノルボルネンモノマーとの付加重合体が特に適している。
環状ポリオレフィンフィルムを位相差フィルムとして使用する場合は、位相差フィルムの種類によってReやRthの範囲は異なり、多様なニーズがある。分子内に適度な割合で分極率の大きな置換基を含有していることが望ましい。なかでもノルボルネンモノマーだけの付加(共)重合体は、Reの発現性が大きく且つRthが大きくなりやすいので好ましい。ポリマー種類や、延伸倍率、剥離時残留溶剤量などの工程条件、フィルム膜厚等を適宜調節することで所望の光学特性を実現することが出来る。環状ポリオレフィンフィルムを位相差フィルムとして使用する場合は、位相差フィルムの種類によってReやRthの範囲は異なり、多様なニーズがあるが、0nm≦Re≦100nm、40nm≦Rth≦400nmであることが好ましい。TNモードなら0nm≦Re≦20nm、40nm≦Rth≦80nm、VAモードなら20nm≦Re≦80nm、80nm≦Rth≦400nmがより好ましく、特にVAモードで好ましい範囲は、30nm≦Re≦75nm、120nm≦Rth≦250nmであり、一枚の位相差膜で補償する場合は、50nm≦Re≦75nm、180nm≦Rth≦250nm、2枚の位相差膜で補償する場合は、30nm≦Re≦50nm、80nm≦Rth≦140nmであることがVAモードの補償膜の場合、黒表示時のカラーシフト、コントラストの視野角依存性の点でよりし好ましい態様である。
ReはKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において特定波長λの光をフィルム法線方向に入射させて測定することができる。また、Rthは前記Re、面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、および面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値を基に、アッベ屈折計で測定した平均屈折率の仮定値および膜厚を入力し算出することができる。ここでは測定波長λは590nmを使用した。
環状ポリオレフィンフィルムは従来偏光板に使用されているセルロースアシレートフィルムに比べて、透湿度や平衡含水率が小さいことが大きな利点である。好ましい透湿度は60℃、95%RH24時間で1平方メートル当たり100g以上1000g以下である。さらに好ましくは200g以上400g以下である。好ましい平衡含水率は25℃、80%RHにおける測定値が2.0%以下である。さらに好ましくは1.0%以下である。紫外線吸収剤やレターデーション発現剤などの添加剤に揮発性や分解性があってフィルムの質量変化や寸法変化が発生すると光学特性変化が起こる。従って80℃90%RHで48時間経時した後のフィルムの質量変化量は2%以下であることが好ましい。同様に60℃95%RHで24時間経時後の寸法変化量は2%以下であることが好ましい。また寸法変化や質量変化が少々あっても、フィルムの光弾性係数が小さいと光学特性の変化量は少なくなる。従ってフィルムの光弾性係数が30×10−13cm2/dyne以下であることが好ましく、15×10−13cm2/dyne以下であることがさらに好ましい。
(偏光板)
偏光板は、通常、偏光子およびその両側に配置された二枚の透明保護膜を有する。両方または一方の保護膜として、本発明の環状ポリオレフィンフィルムを用いることができる。他方の保護膜は、通常のセルロースアセテートフィルム等を用いてもよい。偏光子には、ヨウ素系偏光子、二色性染料を用いる染料系偏光子やポリエン系偏光子がある。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。本発明の環状ポリオレフィンフィルムを偏光板保護膜として用いる場合、フィルムは後述の如き表面処理を行い、しかる後にフィルム処理面と偏光子を接着剤を用いて貼り合わせる。使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス、ゼラチン等が挙げられる。偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護膜で構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。また、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
本発明の環状ポリオレフィンフィルムの偏光子への貼り合せ方は、偏光子の透過軸と本発明の環状ポリオレフィンフィルムの遅相軸を一致させるように貼り合せることが好ましい。なお、偏光板クロスニコル下で作製した偏光板の評価を行なったところ、本発明の環状ポリオレフィンフィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸(透過軸と直交する軸)との直交精度が1°より大きいと、偏光板クロスニコル下での偏光度性能が低下して光抜けが生じることがわかった。この場合、液晶セルと組み合わせた場合に、十分な黒レベルやコントラストが得られないことになる。したがって、本発明の環状ポリオレフィンフィルムの主屈折率nxの方向と偏光板の透過軸の方向とは、そのずれが1°以内、好ましくは0.5°以内であることが好ましい。
偏光板の単板透過率TT、平行透過率PT、直交透過率CTの測定にはUV3100PC(島津製作所社製)を用いることができる。測定では、380nm〜780nmの範囲で測定し、単板、平行、直交透過率ともに、10回測定の平均値を用いることができる。
偏光板耐久性試験は(1)偏光板のみと(2)偏光板をガラスに粘着剤を介して貼り付けた、2種類の形態で次のように行うことができる。偏光板のみの測定は、2つの偏光子の間に光学補償膜が挟まれるように組み合わせて直交、同じものを2つ用意し測定する。ガラス貼り付け状態のものはガラスの上に偏光板を光学補償膜がガラス側にくるように貼り付けたサンプル(約5cm×5cm)を2つ作成する。単板透過率測定ではこのサンプルのフィルムの側を光源に向けてセットして測定する。2つのサンプルをそれぞれ測定し
、その平均値を単板の透過率とする。偏光性能の好ましい範囲としては単板透過率TT、平行透過率PT、直交透過率CTの順でそれぞれ、40.5≦TT≦45、32≦PT≦39.5、CT≦1.5であり、より好ましい範囲としては41.0≦TT≦44.5、34≦PT≦39.0、CT≦1.3である。また偏光板耐久性試験ではその変化量はより小さいほうが好ましい。
(環状ポリオレフィンフィルムの表面処理)
本発明では、偏光子と保護フイルムとの接着性を改良するため、環状ポリオレフィン保護フイルムの表面を表面処理することが好ましい。表面処理については、接着性を改善できる限りいかなる方法を利用してもよいが、好ましい表面処理としては、例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理及び火炎処理が挙げられる。ここでいうグロー放電処理とは、低圧ガス下でおこる、いわゆる低温プラズマのことである。本発明では大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。その他、グロー放電処理の詳細については、米国特許第3462335号、米国特許第3761299号、米国特許第4072769号及び英国特許第891469号明細書に記載されている。放電雰囲気ガス組成を放電開始後にポリエステル支持体自身が放電処理を受けることにより容器内に発生する気体種のみにした特表昭59−556430号公報に記載された方法も用いられる。また真空グロー放電処理する際に、フイルムの表面温度を80℃以上180℃以下にして放電処理を行う特公昭60−16614号公報に記載された方法も適用できる。
グロー放電処理時の真空度は0.5〜3000Paが好ましく、より好ましくは2〜300Paである。また、電圧は500〜5000Vの間が好ましく、より好ましくは500〜3000Vである。使用する放電周波数は、直流から数千MHz、より好ましくは50Hz〜20MHz、さらに好ましくは1KHz〜1MHzである。放電処理強度は、0.01KV・A・分/m2〜5KV・A・分/m2好ましく、より好ましくは0.15KV・A・分/m2〜1KV・A・分/m2である。
本発明では、表面処理として紫外線照射法を行うことも好ましい。例えば、特公昭43−2603号、特公昭43−2604号、特公昭45−3828号の各公報に記載の処理方法によって行うことができる。水銀灯は石英管からなる高圧水銀灯で、紫外線の波長が180〜380nmの間であるものが好ましい。紫外線照射の方法については、光源は保護フイルムの表面温度が150℃前後にまで上昇することが支持体の性能上問題なければ、主波長が365nmの高圧水銀灯ランプを使用することができる。低温処理が必要とされる場合には主波長が254nmの低圧水銀灯が好ましい。またオゾンレスタイプの高圧水銀ランプ、及び低圧水銀ランプを使用する事も可能である。処理光量に関しては処理光量が多いほど熱可塑性飽和脂環式構造含有重合体樹脂フイルムと偏光子との接着力は向上するが、光量の増加に伴い該フイルムが着色し、また脆くなるという問題が発生する。従って、365nmを主波長とする高圧水銀ランプで、照射光量20〜10000(mJ/cm2)がよく、より好ましくは50〜2000(mJ/cm2)である。254nmを主波長とする低圧水銀ランプの場合には、照射光量100〜10000(mJ/cm2)がよく、より好ましくは300〜1500(mJ/cm2)である。
さらに、本発明では表面処理としてコロナ放電処理を行うことも好ましい。例えば、特公昭39−12838号、特開昭47−19824号、特開昭48−28067号、特開昭52−42114号の各公報に記載等の処理方法によって行うことができる。コロナ放電処理装置は、Pillar社製ソリッドステートコロナ処理機、LEPEL型表面処理機、VETAPHON型処理機等を用いることができる。処理は空気中での常圧にて行うことができる。処理時の放電周波数は、5〜40KV、より好ましくは10〜30KVであり、波形は交流正弦波が好ましい。電極と誘電体ロールのギャップ透明ランスは0.1〜10mm、より好ましくは1.0〜2.0mmである。放電は、放電帯域に設けられた
誘電サポートローラーの上方で処理し、処理量は、0.3〜0.4KV・A・分/m2、より好ましくは0.34〜0.38KV・A・分/m2である。
本発明では、表面処理として火炎処理を行うことも好ましい。用いるガスは天然ガス、液化プロパンガス、都市ガスのいずれでもかまわないが、空気との混合比が重要である。
なぜなら、火炎処理による表面処理の効果は活性な酸素を含むプラズマによってもたらされると考えられるからであり、火炎の重要な性質であるプラズマの活性(温度)と酸素がどれだけ多くあるかがポイントである。このポイントの支配因子はガス/酸素比であり、過不足なく反応する場合にエネルギー密度が最も高くなりプラズマの活性が高くなる。具体的には、天然ガス/空気の好ましい混合比は容積比で1/6〜1/10、好ましくは1/7〜1/9である。また、液化プロパンガス/空気の場合は1/14〜1/22、好ましくは1/16〜1/19、都市ガス/空気の場合は1/2〜1/8、好ましくは1/3〜1/7である。また、火炎処理量は1〜50Kcal/m2、より好ましくは3〜20Kcal/m2の範囲で行うとよい。またバーナーの内炎の先端とフイルムの距離は3〜7cm、より好ましくは4〜6cmにするとよい。バーナーのノズル形状は、フリンバーナー社(米国)のリボン式、ワイズ社(米国)の多穴式、エアロジェン(英国)のリボン式、春日電機(日本)の千鳥型多穴式、小池酸素(日本)の千鳥型多穴式が好ましい。火炎処理にフイルムを支えるバックアップロールは中空型ロールであり、冷却水を通して水冷し、常に20〜50℃の一定温度で処理するのがよい。
表面処理の程度については、表面処理の種類、環状ポリオレフィンの種類によって好ましい範囲も異なるが、表面処理の結果、表面処理を施された保護フイルムの表面の純水との接触角が、50°未満となるのが好ましい。前記接触角は、25°以上45°未満であるのがより好ましい。保護フイルム表面の純水との接触角が上記範囲にあると、保護フイルムと偏光膜との接着強度が良好となる。
(3)接着剤
ポリビニルアルコールからなる偏光子と、表面処理された環状ポリオレフィンらなる保護フイルムとを貼合する際には、水溶性ポリマーを含有する接着剤を用いることが好ましい。
前記接着剤に好ましく使用される水溶性ポリマーとしては、N−ビニルピロリドン、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、ビニルアルコール、メチルビニルエーテル、酢酸ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド,ジアセトンアクリルアミド、ビニルイミダゾールなどエチレン性不飽和モノマーを構成要素として有する単独重合体もしくは共重合体、またポリオキシエチレン、ボリオキシプロピレン、ポリ−2−メチルオキサゾリン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースゼラチン、などが挙げられる。本発明では、この中でもPVA及びゼラチンが好ましい。
接着剤にPVAを用いる場合の好ましいPVA特性は、前述の偏光子に用いるPVAの好ましい特性と同様である。本発明では、さらに架橋剤を併用することが好ましい。PVAを接着剤に使用する場合に好ましく併用される架橋剤は、ホウ酸、多価アルデヒド、多官能イソシナネート化合物、多官能エポキシ化合物等が挙げられるが、本発明ではホウ酸が特に好ましい。
接着剤にゼラチンを用いる場合、いわゆる石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、酵素処理ゼラチン、ゼラチン誘導体及び変性ゼラチン等を用いることができる。これらのゼラチンのうち、好ましく用いられるのは石灰処理ゼラチン、酸処理ラチンである。接着剤にゼラチンを用いる場合に、好ましく併用される架橋剤としては、活性ハロゲン化合物(2,4−ジクロル−6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジン及びそのナトリウム塩など)及び活性ビニル化合物(1,3−ビスビニルスルホニル−2−プロパノール、1,2−ビス
ビニルスルホニルアセトアミド)エタン、ビス(ビニルスルホニルメチル)エーテルあるいはビニルスルホニル基を側鎖に有するビニル系ポリマーなど)、N−カルバモイルピリジニウム塩類((1−モルホリノカルボニル−3−ピリジニオ)メタンスルホナートなど)やハロアミジニウム塩類(1−(1−クロロ−1−ピリジノメチレン)ピロリジニウム2−ナフタレンスルホナートなど)等が挙げられる。本発明では、活性ハロゲン化合物及び活性ビニル化合物が特に好ましく使用される。
上述の架橋剤を併用する場合の架橋剤の好ましい添加量は、接着剤中の水溶性ポリマーに対し、0.1質量%以上、40質量%未満であり、さらに好ましくは、0.5質量%以上、30質量%未満である。保護フイルムもしくは偏光子の少なくとも一方の表面に接着剤を塗布して、接着剤層を形成して、貼合するのが好ましく、保護フイルムの表面処理面に接着剤を塗布して、接着剤層を形成し、偏光子の表面に貼合するのが好ましい。接着剤層厚みは、乾燥後に0.01〜5μmが好ましく、0.05〜3μmが特に好ましい。
(反射防止層)
偏光板の、液晶セルと反対側に配置される透明保護膜には反射防止層などの機能性膜を設けることが好ましい。特に、本発明では透明保護膜上に少なくとも光散乱層と低屈折率層がこの順で積層した反射防止層または透明保護膜上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層した反射防止層が好適に用いられる。以下にそれらの好ましい例を記載する。
透明保護膜上に光散乱層と低屈折率層を設けた反射防止層の好ましい例について述べる。
光散乱層にはマット粒子が分散しているのが好ましく、光散乱層のマット粒子以外の部分の素材の屈折率は1.50〜2.00の範囲にあることが好ましく、低屈折率層の屈折率は1.35〜1.49の範囲にあることが好ましい。光散乱層は、防眩性とハードコート性を兼ね備えていてもよく、1層でもよいし、複数層、例えば2層〜4層で構成されていてもよい。
反射防止層は、その表面凹凸形状として、中心線平均粗さRaが0.08〜0.40μm、10点平均粗さRzがRaの10倍以下、平均山谷距離Smが1〜100μm、凹凸最深部からの凸部高さの標準偏差が0.5μm以下、中心線を基準とした平均山谷距離Smの標準偏差が20μm以下、傾斜角0〜5度の面が10%以上となるように設計することで、十分な防眩性と目視での均一なマット感が達成され、好ましい。
また、C光源下での反射光の色味がa*値−2〜2、b*値−3〜3、380nm〜780nmの範囲内での反射率の最小値と最大値の比0.5〜0.99であることで、反射光の色味がニュートラルとなり、好ましい。またC光源下での透過光のb*値が0〜3とすることで、表示装置に適用した際の白表示の黄色味が低減され、好ましい。
また、面光源上と本発明の反射防止フィルムの間に120μm×40μmの格子を挿入してフィルム上で輝度分布を測定した際の輝度分布の標準偏差が20以下であると、高精細パネルに本発明のフィルムを適用したときのギラツキが低減され、好ましい。
反射防止層は、その光学特性として、鏡面反射率2.5%以下、透過率90%以上、60度光沢度70%以下とすることで、外光の反射を抑制でき、視認性が向上するため好ましい。特に鏡面反射率は1%以下がより好ましく、0.5%以下であることが最も好ましい。ヘイズ20%〜50%、内部ヘイズ/全ヘイズ値(比)が0.3〜1、光散乱層までのヘイズ値から低屈折率層を形成後のヘイズ値の低下が15%以内、くし幅0.5mmにおける透過像鮮明度20%〜50%、垂直透過光/垂直から2度傾斜方向の透過率比が1.5〜5.0とすることで、高精細LCDパネル上でのギラツキ防止、文字等のボケの低減が達成され、好ましい。
(低屈折率層)
反射防止フィルムの低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.49が好ましく、より好ましくは1.30〜1.44の範囲にある。さらに、低屈折率層は下記数式(IX)を満たすことが低反射率化の点で好ましい。
数式(IX):(m/4)×0.7<n1d1<(m/4)×1.3
式中、mは正の奇数であり、n1は低屈折率層の屈折率であり、そして、d1は低屈折率層の膜厚(nm)である。また、λは波長であり、500〜550nmの範囲の値である。
低屈折率層を形成する素材について以下に説明する。
低屈折率層には、低屈折率バインダーとして、含フッ素ポリマーを含むことが好ましい。フッ素ポリマーとしては動摩擦係数0.03〜0.20、水に対する接触角90〜120°、純水の滑落角が70°以下の熱または電離放射線により架橋する含フッ素ポリマーが好ましい。本発明の反射防止フィルムを画像表示装置に装着した時、市販の接着テープとの剥離力が低いほどシールやメモを貼り付けた後に剥がれ易くなり好ましく、500gf以下が好ましく、300gf以下がより好ましく、100gf以下が最も好ましい。また、微小硬度計で測定した表面硬度が高いほど、傷がつき難く、0.3GPa以上が好ましく、0.5GPa以上がより好ましい。
低屈折率層に用いられる含フッ素ポリマーとしてはパーフルオロアルキル基含有シラン化合物(例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン)の加水分解、脱水縮合物の他、含フッ素モノマー単位と架橋反応性付与のための構成単位を構成成分とする含フッ素共重合体が挙げられる。
含フッ素モノマーの具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、好ましくはパーフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。
架橋反応性付与のための構成単位としてはグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテルのように分子内にあらかじめ自己架橋性官能基を有するモノマーの重合によって得られる構成単位、カルボキシル基やヒドロキシ基、アミノ基、スルホ基等を有するモノマー(例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、マレイン酸、クロトン酸等)の重合によって得られる構成単位、これらの構成単位に高分子反応によって(メタ)アクリルロイル基等の架橋反応性基を導入した構成単位(例えばヒドロキシ基に対してアクリル酸クロリドを作用させる等の手法で導入できる)が挙げられる。
また上記含フッ素モノマー単位、架橋反応性付与のための構成単位以外に溶剤への溶解性、皮膜の透明性等の観点から適宜フッ素原子を含有しないモノマーを共重合することもできる。併用可能なモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−tert−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロ二トリル誘導体等を挙げることができる。
上記のポリマーに対しては特開平10−25388号および特開平10−147739号各公報に記載のごとく適宜硬化剤を併用しても良い。
(光散乱層)
光散乱層は、表面散乱および/または内部散乱による光拡散性と、フィルムの耐擦傷性を向上するためのハードコート性をフィルムに寄与する目的で形成される。従って、ハードコート性を付与するためのバインダー、光拡散性を付与するためのマット粒子、および必要に応じて高屈折率化、架橋収縮防止、高強度化のための無機フィラーを含んで形成される。
光散乱層の膜厚は、ハードコート性を付与する観点並びにカールの発生及び脆性の悪化の抑制の観点から、1〜10μmが好ましく、1.2〜6μmがより好ましい。
散乱層のバインダーとしては、飽和炭化水素鎖またはポリエーテル鎖を主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するポリマーであることがさらに好ましい。また、バインダーポリマーは架橋構造を有することが好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーとしては、エチレン性不飽和モノマーの重合体が好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、かつ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。バインダーポリマーを高屈折率にするには、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含むものを選択することもできる。
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、上記のエチレンオキサイド変性体、ビニルベンゼンおよびその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミドが挙げられる。上記モノマーは2種以上併用してもよい。
高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4'−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上併用してもよい。
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤、マット粒子および無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線または熱による重合反応により硬化して反射防止膜を形成することができる。これらの光ラジカル開始剤等は公知のものを使用することができる。
ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポシキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポシキ化合物の開環重合は、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、多官能エポシキシ化合物、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤、マット粒子および無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線または熱による重合反応により硬化して反射防止膜を形成することができる。
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりにまたはそれに加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
光散乱層には、防眩性付与の目的で、フィラー粒子より大きく、平均粒径が1〜10μm、好ましくは1.5〜7.0μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子または樹脂粒子が含有されることが好ましい。
上記マット粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、TiO2粒子等の無機化合物の粒子;アクリル粒子、架橋アクリル粒子、ポリスチレン粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋アクリル粒子、架橋アクリルスチレン粒子、シリカ粒子が好ましい。マット粒子の形状は、球状あるいは不定形のいずれも使用できる。
また、粒子径の異なる2種以上のマット粒子を併用して用いてもよい。より大きな粒子径のマット粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径のマット粒子で別の光学特性を付与することが可能である。
さらに、上記マット粒子の粒子径分布としては単分散であることが最も好ましく、各粒子の粒子径は、それぞれ同一に近ければ近いほど良い。例えば平均粒子径よりも20%以上粒子径が大きな粒子を粗大粒子と規定した場合には、この粗大粒子の割合は全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは
0.01%以下である。このような粒子径分布を持つマット粒子は通常の合成反応後に、分級によって得られ、分級の回数を上げることやその程度を強くすることにより、より好ましい分布のマット剤を得ることができる。
上記マット粒子は、形成された光散乱層のマット粒子量が好ましくは10〜1000m
g/m2、より好ましくは100〜700mg/m2となるように光散乱層に含有される。
マット粒子の粒度分布はコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算する。
光散乱層には、層の屈折率を高めるために、上記のマット粒子に加えて、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、平均粒径が0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下である無機フィラーが含有されることが好ましい。
また逆に、マット粒子との屈折率差を大きくするために、高屈折率マット粒子を用いた光散乱層では層の屈折率を低目に保つためにケイ素の酸化物を用いることも好ましい。好ましい粒径は前述の無機フィラーと同じである。
光散乱層に用いられる無機フィラーの具体例としては、TiO2、ZrO2、Al23、In23、ZnO、SnO2、Sb23、ITOとSiO2等が挙げられる。TiO2およびZrO2が高屈折率化の点で特に好ましい。該無機フィラーは表面をシランカップリング処理またはチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
これらの無機フィラーの添加量は、光散乱層の全質量の10〜90%であることが好ましく、より好ましくは20〜80%であり、特に好ましくは30〜75%である。
なお、このようなフィラーは、粒径が光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は光学的に均一な物質として振舞う。
光散乱層のバインダーおよび無機フィラーの混合物のバルクの屈折率は、1.48〜2.00であることが好ましく、より好ましくは1.50〜1.80である。屈折率を上記範囲とするには、バインダー及び無機フィラーの種類及び量割合を適宜選択すればよい。どのように選択するかは、予め実験的に容易に知ることができる。
光散乱層は、特に塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状均一性を確保するために、フッ素系、シリコーン系の何れかの界面活性剤、あるいはその両者を防眩層形成用の塗布組成物中に含有することが好ましい。特にフッ素系の界面活性剤は、より少ない添加量において、本発明の反射防止フィルムの塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状故障を改良する効果が現れるため、好ましく用いられる。面状均一性を高めつつ、高速塗布適性を持たせることにより生産性を高めることが目的である。
次に透明保護膜上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層した反射防止層について述べる。
基体上に少なくとも中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層(最外層)の順序の層構成から成る反射防止膜は、以下の関係を満足する屈折率を有する様に設計されることが好ましい。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率
また、透明支持体と中屈折率層の間に、ハードコート層を設けてもよい。更には、中屈折率ハードコート層、高屈折率層及び低屈折率層からなってもよい(例えば、特開平8−122504号公報、同8−110401号公報、同10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等参照)。また、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層としたもの(例、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報等)等が挙げられる。
反射防止膜のヘイズは、5%以下あることが好ましく、3%以下がさらに好ましい。また膜の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
(高屈折率層および中屈折率層)
反射防止膜の高い屈折率を有する層は、平均粒径100nm以下の高屈折率の無機化合物超微粒子及びマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化性膜から成ることが好ましい。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物等が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
このような超微粒子とするには、粒子表面が表面処理剤で処理されること(例えば、シランカップリング剤等:特開平11−295503号公報、同11−153703号公報、特開2000−9908、アニオン性化合物或は有機金属カップリング剤:特開2001−310432号公報等)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とすること(例、特開2001−1661042001−310432号公報等)、特定の分散剤併用(例、特開平11−153703号公報、米国特許第6210858号明細書、特開2002−2776069号公報等)等挙げられる。
マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。
更に、ラジカル重合性及び/またはカチオン重合性の重合性基を少なくとも2個有する多官能性化合物含有組成物と、加水分解性基を有する有機金属化合物及びその部分縮合体を含有する組成物とから選ばれる少なくとも1種の組成物が好ましい。例えば、特開2000−47004号公報、同2001−315242号公報、同2001−31871号公報、同2001−296401号公報等に記載の組成物が挙げられる。
また、金属アルコキドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載されている。
高屈折率層の屈折率は、−般に1.70〜2.20である。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。また、厚さは5nm〜10mμであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
(低屈折率層)
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層して成る。低屈折率層の屈折率は1.20〜1.55であることが好ましく、より好ましくは1.30〜1.50である。
耐擦傷性、防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効で、従来公知のシリコーンの導入、フッ素の導入等から成る薄膜層の手段を適用できる。
含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましい。より好ましくは1.36〜1.47である。また、含フッ素化合物はフッ素原子を35〜80質量%の範囲で含む架橋性若しくは重合性の官能基を含む化合物が好ましい。
例えば、特開平9−222503号公報明細書段落番号[0018]〜[0026]、同11−38202号公報明細書段落番号[0019]〜[0030]、特開2001−40284号公報明細書段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報等に記載の化合物が挙げられる。
シリコーン化合物としてはポリシロキサン構造を有する化合物であり、高分子鎖中に硬化性官能基あるいは重合性官能基を含有して、膜中で橋かけ構造を有するものが好ましい。例えば、反応性シリコーン(例、サイラプレーン(チッソ(株)製等)、両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11−258403号公報等)等が挙げられる。
架橋または重合性基を有する含フッ素及び/またはシロキサンのポリマーの架橋または重合反応は、重合開始剤、増感剤等を含有する最外層を形成するための塗布組成物を塗布と同時または塗布後に光照射や加熱することにより実施することが好ましい。
また、シランカップリング剤等の有機金属化合物と特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応で硬化するゾルゲル硬化膜も好ましい。
例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物またはその部分加水分解縮合物(特開昭58−142958号公報、同58−147483号公報、同58−147484号公報、特開平9−157582号公報、同11−106704号公報記載等記載の化合物)、フッ素含有長鎖基であるポリ「パーフルオロアルキルエーテル」基を含有するシリル化合物(特開2000−117902号公報、同2001−48590号公報、同2002−53804号公報記載の化合物等)等が挙げられる。
低屈折率層は、上記以外の添加剤として充填剤(例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化バリウム)等の一次粒子平均径が1〜150nmの低屈折率無機化合物、特開平11−3820号公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の有機微粒子等)、シランカップリング剤、滑り剤、界面活性剤等を含有することができる。
低屈折率層が最外層の下層に位置する場合、低屈折率層は気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されても良い。
安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。
低屈折率層の膜厚は、30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることがさらに好ましく、60〜120nmであることが最も好ましい。
(反射防止層の他の層)
さらに、ハードコート層、前方散乱層、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
(ハードコート層)
ハードコート層は、反射防止層を設けた透明保護膜に物理強度を付与するために、透明支持体の表面に設ける。特に、透明支持体と前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。ハードコート層は、光及び/または熱の硬化性化合物の架橋反応、または、重合反応により形成されることが好ましい。硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、また加水分解性官能基含有の有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物が好ましい。
これらの化合物の具体例としては、高屈折率層で例示したと同様のものが挙げられる。ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、国際公開第00/46617号パンフレット等記載のものが挙げられる。
高屈折率層はハードコート層を兼ねることができる。このような場合、高屈折率層で記載した手法を用いて微粒子を微細に分散してハードコート層に含有させて形成することが好ましい。
ハードコート層は、平均粒径0.2〜10μmの粒子を含有させて防眩機能(アンチグレア機能)を付与した防眩層(後述)を兼ねることもできる。
ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μmである。
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。また、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
(帯電防止層)
帯電防止層を設ける場合には体積抵抗率が10−8(Ωcm−3)以下の導電性を付与することが好ましい。吸湿性物質や水溶性無機塩、ある種の界面活性剤、カチオンポリマー、アニオンポリマー、コロイダルシリカ等の使用により10−8(Ωcm−3)の体積抵抗率の付与は可能であるが、温湿度依存性が大きく、低湿では十分な導電性を確保できない問題がある。そのため、導電性層素材としては金属酸化物が好ましい。金属酸化物には着色しているものがあるが、これらの金属酸化物を導電性層素材として用いるとフィルム全体が着色してしまい好ましくない。着色のない金属酸化物を形成する金属としてZn、Ti、Al、In、Si、Mg、Ba、Mo、W、またはVをあげることができ、これを主成分とした金属酸化物を用いることが好ましい。具体的な例としては、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、SiO2、MgO、BaO、MoO3、V25等、あるいはこれらの複合酸化物がよく、特にZnO、TiO2、及びSnO2が好ましい。異種原子を含む例としては、例えばZnOに対してはAl、In等の添加物、SnO2に対してはSb、Nb、ハロゲン元素等の添加、またTiO2に対してはNb、TA等の添加が効果的である。更にまた、特公昭59−6235号公報に記載の如く、他の結晶性金属粒子あるいは繊維状物(例えば酸化チタン)に上記の金属酸化物を付着させた素材を使用しても良い。尚、体積抵抗値と表面抵抗値は別の物性値であり単純に比較することはできないが、体積抵抗値で10−8(Ωcm−3)以下の導電性を確保するためには、該導電層が概ね10−10(Ω/□)以下の表面抵抗値を有していればよく更に好ましくは10−8(Ω/□)である。導電層の表面抵抗値は帯電防止層を最表層としたときの値として測定されることが必要であり、本特許に記載の積層フィルムを形成する途中の段階で測定することができる。
(液晶表示装置)
本発明の環状ポリオレフィンフィルム、該フィルムからなる位相差フィルム、該フィルムを用いた偏光板は、様々な表示モードの液晶セル、液晶表示装置に用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。このうち、OCBモードまたはVAモードに好ましく用いることができる。
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置である。OCBモードの液晶セルは、米国特許第4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチド
メイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
VAモードの液晶表示装置は、液晶セルおよびその両側に配置された二枚の偏光板からなる。液晶セルは、二枚の電極基板の間に液晶を担持している。本発明の透過型液晶表示装置の一つの態様では、本発明の位相差フィルムは、液晶セルと一方の偏光板との間に、一枚配置するか、あるいは液晶セルと双方の偏光板との間に二枚配置する。
本発明の透過型液晶表示装置の別の態様では、液晶セルと偏光子との間に配置される偏光板の透明保護膜として、本発明の環状ポリオレフィンフィルムからなる位相差フィルムが用いられる。一方の偏光板の(液晶セルと偏光子との間の)透明保護膜のみに上記の位相差フィルムを用いてもよいし、あるいは双方の偏光板の(液晶セルと偏光子との間の)二枚の透明保護膜に、上記の位相差フィルムを用いてもよい。一方の偏光板のみに上記位相差フィルムを使用する場合は、液晶セルのバックライト側偏光板の液晶セル側保護膜として使用するのが特に好ましい。液晶セルへの張り合わせは、本発明の環状ポリオレフィンフィルムはVAセル側にすることが好ましい。保護膜は通常のセルレートアシレートフィルムでも良い。たとえば、40〜80μmが好ましく、市販のKC4UX2M(コニカオプト(株)製40μm)、KC5UX(コニカオプト(株)製60μm)、TD80(富士写真フイルム製80μm)等が挙げられるが、これらに限定されない。
OCBモードの液晶表示装置やTN液晶表示装置では、視野角拡大のために光学補償フィルムが使用される。OCBセル用光学補償フィルムは光学一軸あるいは二軸性フィルムの上にディスコティック液晶をハイブリッド配向させて固定した光学異方性層を設けたものが用いられる。TNセル用光学補償フィルムは光学等方性あるいは厚さ方向に光学軸を有するフィルムの上にディスコティック液晶をハイブリッド配向させて固定した光学異方性層を設けたものが用いられる。本発明の環状ポリオレフィンフィルムは上記OCBセル用光学補償フィルムやTNセル用光学補償フィルム作成に有用である。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されない。
[剥離抵抗の測定]
以下の実施例で調製した製膜用ドープを用いて、前記の方法で剥離荷重を測定し、フィルム幅1cm当たりの剥離抵抗値を算出し、表1に示した。剥離フィルムの残留溶剤濃度が20から28質量%のときの最大剥離荷重値を採用した。
[面状]
フィルムを透過光あるいは反射光のもと目視観察し、模様、異物、傷等の有無を見た。
尚、剥離抵抗の大きいフィルムは、特に幅方向に不規則な線状の模様が見える。無色
透明で何も見えないものは○とし、若干の模様、異物、傷等が見られるものを△、模様、異物、傷等の目立つものを×とした。
[最大膜厚変動値]
安立電機製連続膜厚測定器で幅方向の膜厚を測定しチャートに記録する。ナーリング部を除いた全幅における、10mm間の最大膜厚変動値を測定し記録する。なお、表1において、段ムラ等が認められ明らかに膜厚変動が大きいフィルムについての評価は×とした。
<環状ポリオレフィン重合体P−1の合成>
精製トルエン100質量部とノルボルネンカルボン酸メチルエステル100質量部を反応釜に投入した。次いでトルエン中に溶解したエチルヘキサノエート−Ni25mmol%(対モノマー質量)、トリ(ペンタフルオロフェニル)ボロン0.225mol%(対
モノマー質量)及びトルエンに溶解したトリエチルアルミニウム0.25mol%(対モノマー質量)を反応釜に投入した。室温で攪拌しながら18時間反応させた。反応終了後過剰のエタノール中に反応混合物を投入し、共重合物沈殿を生成させた。沈殿を精製し得られた共重合体(P−1)を真空乾燥で65℃24時間乾燥した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて分子量を測定した。その結果質量平均分子量Mwが14万、数平均分子量Mnが5万であった。
〔実施例1〕
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
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環状ポリオレフィン溶液 D−1
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環状ポリオレフィンP−1 150質量部
ジクロロメタン 380質量部
メタノール 70質量部
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次に上記方法で作成した環状ポリオレフィン溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤分散液 M−1
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平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製) 2質量部
ジクロロメタン 73質量部
メタノール 10質量部
環状ポリオレフィン溶液 D−1 10質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
上記環状ポリオレフィン溶液を100質量部、マット剤分散液を1.35質量を混合し、製膜用ドープを調製した。ドープの粘度は21Pa・sであった。
上述のドープをバンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が約25質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、テンターを用いて2%の延伸率で幅方向に延伸して、フィルムに皺が入らないように保持しながら、熱風(温度は表1に記載する)を当てて乾燥した。
その後テンター搬送からロール搬送に移行し、更に120℃から140℃で乾燥し巻き取った。できたフィルム(F−1)の厚さ、動摩擦係数、ヘイズ、Reレターデーション及びRthレターデーションを測定し、表1に記す。幅方向最大膜厚変動値は0.5μmであった。
〔実施例2〕
環状ポリオレフィン溶液D−1を100質量部、マット剤分散液M−1を1.35質量部を混合し、製膜用ドープを調製した。
上述のドープをバンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が約25質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、テンターを用いて熱風を当てながら幅方向に延伸した。その後テンター搬送からロール搬送に移行し、更に120℃から140℃で乾燥し巻き取った。
延伸温度と延伸率を表1に記載する。できたフィルム(F−2)の厚さ、動摩擦係数、ヘイズ、Reレターデーション及びRthレターデーションを測定し、表1に記す。幅方
向最大膜厚変動値は0.4μmであった。
〔実施例3〕
下記組成物を耐圧密閉タンクに投入し攪拌後、温水で80℃に加熱して各成分を溶解した。冷却後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いてAppear3000の分子量を測定した。その結果質量平均分子量Mwが22万、数平均分子量Mnが6.8万であった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
環状ポリオレフィン溶液 D−2
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Appear3000 150質量部
ジクロロメタン 420質量部
メタノール 30質量部
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次に上記方法で作成した環状ポリオレフィン溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
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マット剤分散液 M−2
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平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製) 2 質量部
ジクロロメタン 75 質量部
メタノール 5 質量部
環状ポリオレフィン溶液 D−2 10 質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
上記環状ポリオレフィン溶液を100質量部、マット剤分散液を1.1質量を混合し、製膜用ドープを調製した。ドープの粘度は40Pa・sであった。
上述のドープをバンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が約25質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、テンターを用いて2%の延伸率で幅方向に延伸して、フィルムに皺が入らないように保持しながら、熱風(温度は表1に記載する)を当てて乾燥した。
その後テンター搬送からロール搬送に移行し、更に120℃から140℃で乾燥し巻き取った。できたフィルム(F−3)の厚さ、動摩擦係数、ヘイズ、Reレターデーション及びRthレターデーションを測定し、表1に記す。幅方向最大膜厚変動値は0.5μmであった。
〔実施例4〕
環状ポリオレフィン溶液D−2を100質量部、マット剤分散液M−2を1.1質量部を混合し、製膜用ドープを調製した。
上述のドープをバンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が約25質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、テンターを用いて熱風を当てながら幅方向に延伸した。その後テンター搬送からロール搬送に移行し、更に120℃から140℃で乾燥し巻き取った。
延伸温度と延伸率を表1に記載する。できたフィルム(F−4及びF−5)の厚さ、動摩擦係数、ヘイズ、Reレターデーション及びRthレターデーションを測定し、表1に
記す。幅方向最大膜厚変動値はいずれも0.4μmであった。
〔実施例5〕
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いてアートンGの分子量を測定した。その結果質量平均分子量Mwが12万、数平均分子量Mnが4.2万であった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
環状ポリオレフィン溶液 D−3
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アートンG(JSR(株)製) 150質量部
ジクロロメタン 345質量部
エタノール 25質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
次に上記方法で作成した環状ポリオレフィン溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤分散液 M−3
――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製) 2質量部
ジクロロメタン 75質量部
エタノール 5質量部
環状ポリオレフィン溶液 D−3 10質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
上記環状ポリオレフィン溶液を100質量部、マット剤分散液を1.1質量を混合し、製膜用ドープを調製した。ドープ粘度は55Pa・sであった。
上述のドープをバンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が約22質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、テンターを用いて2%の延伸率で幅方向に延伸して、フィルムに皺が入らないように保持しながら、熱風(温度は表1に記載する)を当てて乾燥した。
その後テンター搬送からロール搬送に移行し、更に120℃から140℃で乾燥し巻き取った。できたフィルム(F−6)の厚さ、動摩擦係数、ヘイズ、Reレターデーション及びRthレターデーションを測定し、表1に記す。幅方向最大膜厚変動値は0.5μmであった。
〔実施例6〕
環状ポリオレフィン溶液D−3を100質量部、マット剤分散液M−3を1.1質量部を混合し、製膜用ドープを調製した。
上述のドープをバンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が約22質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、テンターを用いて熱風を当てながら幅方向に延伸した。その後テンター搬送からロール搬送に移行し、更に120℃から140℃で乾燥し巻き取った。
延伸温度と延伸率をは表1に記載する。できたフィルム(F−7)の厚さ、動摩擦係数、ヘイズ、Reレターデーション及びRthレターデーションを測定し、表1に記す。幅方向最大膜厚変動値は0.5μmであった。
〔実施例7〕
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
環状ポリオレフィン溶液 D−4
―――――――――――――――――――――――――――――――――
Appear3000 150 質量部
界面活性剤 RZ−12 0.7質量部
ジクロロメタン 400 質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
次に上記方法で作成した環状ポリオレフィン溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤分散液 M−4
――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製) 2質量部
ジクロロメタン 80質量部
環状ポリオレフィン溶液 D−4 10質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
上記環状ポリオレフィン溶液を100質量部、マット剤分散液を1.1質量を混合し、製膜用ドープを調製した。ドープ粘度は82Pa・sであった。
上述のドープをバンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が約25質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、テンターを用いて2%の延伸率で幅方向に延伸して、フィルムに皺が入らないように保持しながら、熱風(温度は表1に記載する)を当てて乾燥した。
その後テンター搬送からロール搬送に移行し、更に120℃から140℃で乾燥し巻き取った。できたフィルム(F−11)の厚さ、動摩擦係数、ヘイズ、Reレターデーション及びRthレターデーションを測定し、表1に記す。幅方向最大膜厚変動値は0.6μmであった。
〔実施例8〕
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
環状ポリオレフィン溶液 D−5
―――――――――――――――――――――――――――――――――
Appear3000 150 質量部
界面活性剤 RZ−12 0.7質量部
ジクロロメタン 350 質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
次に上記方法で作成した環状ポリオレフィン溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤分散液 M−5
――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製) 2質量部
ジクロロメタン 80質量部
環状ポリオレフィン溶液 D−5 10質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
上記環状ポリオレフィン溶液を100質量部、マット剤分散液を1.1質量を混合し、製膜用ドープを調製した。ドープ粘度は130Pa・sであった。
上述のドープをバンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が約20質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、テンターを用いて2%の延伸率で幅方向に延伸して、フィルムに皺が入らないように保持しながら、熱風(温度は表1に記載する)を当てて乾燥した。
その後テンター搬送からロール搬送に移行し、更に120℃から140℃で乾燥し巻き取った。できたフィルム(F−12)の厚さ、動摩擦係数、ヘイズ、Reレターデーション及びRthレターデーションを測定し、表1に記す。幅方向最大膜厚変動値は0.8μmであった。
〔実施例9〕
下記組成物を耐圧密閉タンクに投入し攪拌後、温水で80℃に加熱して各成分を溶解した。冷却後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いてAppear3000の分子量を測定した。その結果質量平均分子量Mwが22万、数平均分子量Mnが6.8万であった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
環状ポリオレフィン溶液 D−6
―――――――――――――――――――――――――――――――――
Appear3000 75質量部
トリフェニルフォスフェイト 5質量部
ジクロロメタン 420質量部
メタノール 25質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
次に上記方法で作成した環状ポリオレフィン溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤分散液 M−6
――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製) 2 質量部
ジクロロメタン 75 質量部
メタノール 5 質量部
環状ポリオレフィン溶液 D−6 10 質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
上記環状ポリオレフィン溶液を100質量部、マット剤分散液を1.1質量を混合し、製膜用ドープを調製した。ドープの粘度は5Pa・sであった。
上述のドープをバンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が約30質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、テンターを用いて2%の延伸率で幅方向に延伸して、フィルム
に皺が入らないように保持しながら、熱風(温度は表1に記載する)を当てて乾燥した。
その後テンター搬送からロール搬送に移行し、更に120℃から140℃で乾燥し巻き取った。できたフィルム(F−13)はヘイズが4.5%と大きかった。トリフェニルフォスフェイトの泣出しが原因と思われる。フィルムの厚さ、動摩擦係数、Reレターデーション及びRthレターデーションを測定し、表1に記す。幅方向最大膜厚変動値は0.9μmであった。
〔比較例1〕
<フィルムF−21の作成>
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
環状ポリオレフィン溶液 D−11
―――――――――――――――――――――――――――――――――
環状ポリオレフィンP−1 150質量部
ジクロロメタン 450質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
次に上記方法で作成した環状ポリオレフィン溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤分散液 M−11
――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製) 2質量部
ジクロロメタン 83質量部
環状ポリオレフィン溶液 D−11 10質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
上記環状ポリオレフィン溶液を100質量部、マット剤分散液を1.35質量を混合し、製膜用ドープを調製した。
上述のドープをバンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が約25質量%でバンドから剥ぎ取った。剥離が重いため、フィルムにたるみや皺が発生した。フィルムを、テンターを用いて2%の延伸率で幅方向に延伸して、フィルムのたるみをのばしながら、熱風(温度は表1に記載する)を当てて乾燥した。その後テンター搬送からロール搬送に移行し、更に120℃から140℃で乾燥し巻き取った。できたフィルム(F−21)の厚さ、動摩擦係数、ヘイズ、Reレターデーション及びRthレターデーションを測定し、表1に記す。
〔比較例2〕
下記組成物を耐圧密閉タンクに投入し攪拌後、温水で80℃に加熱して各成分を溶解した。冷却後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
環状ポリオレフィン溶液 D−12
―――――――――――――――――――――――――――――――――
Appear3000 150質量部
ジクロロメタン 450質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
環状ポリオレフィン溶液D−12を100質量部、マット剤分散液M−2を1.1質量部混合し、製膜用ドープを調製した。
上述のドープをバンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が約25質量%でバンドから剥ぎ取った。剥離が重いため、フィルムにたるみや皺が発生した。フィルムを、テンターを用いて2%の延伸率で幅方向に延伸して、フィルムのたるみをのばしながら、熱風(温度は表1に記載する)を当てて乾燥した。その後テンター搬送からロール搬送に移行し、更に120℃から140℃で乾燥し巻き取った。できたフィルム(F−22)の厚さ、動摩擦係数、ヘイズ、Reレターデーション及びRthレターデーションを測定し、表1に記す。
〔比較例3〕
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
環状ポリオレフィン溶液 D−13
―――――――――――――――――――――――――――――――――
アートンG(JSR(株)製) 150質量部
ジクロロメタン 370質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
環状ポリオレフィン溶液D−13を100質量部、マット剤分散液M−3を1.1質量部混合し、製膜用ドープを調製した。
上述のドープをバンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が約25質量%でバンドから剥ぎ取った。剥離が重いため、フィルムにたるみや皺が発生した。フィルムを、テンターを用いて2%の延伸率で幅方向に延伸して、フィルムのたるみをのばしながら、熱風(温度は表1に記載する)を当てて乾燥した。その後テンター搬送からロール搬送に移行し、更に120℃から140℃で乾燥し巻き取った。できたフィルム(F−23)の厚さ、動摩擦係数、ヘイズ、Reレターデーション及びRthレターデーションを測定し、表1に記す。
〔比較例4〕
環状ポリオレフィン溶液D−11だけのドープをバンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が約25質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、テンターを用いて熱風を当てながら幅方向に延伸した。その後テンター搬送からロール搬送に移行し、更に120℃から140℃で乾燥し巻き取った。フィルムがきしんで皺になるため長く巻くことはできなかった。延伸温度と延伸率を表1に記載する。できたフィルム(F−31)の厚さ、動摩擦係数、ヘイズ、Reレターデーション及びRthレターデーションを測定し、表1に記す。
〔比較例5〕
環状ポリオレフィン溶液D−12だけのドープをバンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が約25質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、テンターを用いて熱風を当てながら幅方向に延伸した。その後テンター搬送からロール搬送に移行し、更に120℃から140℃で乾燥し巻き取った。フィルムがきしんで皺になるため長く巻くことはできなかった。延伸温度と延伸率を表1に記載する。できたフィルム(F−32)の厚さ、動摩擦係数、ヘイズ、Reレターデーション及びRthレターデーションを測定し、表1に記
す。
〔比較例6〕
環状ポリオレフィン溶液D−13だけのドープをバンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が約25質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、テンターを用いて熱風を当てながら幅方向に延伸した。その後テンター搬送からロール搬送に移行し、更に120℃から140℃で乾燥し巻き取った。フィルムがきしんで皺になるため長く巻くことはできなかった。延伸温度と延伸率を表1に記載する。できたフィルム(F−33)の厚さ、動摩擦係数、ヘイズ、Reレターデーション及びRthレターデーションを測定し、表1に記す。
Figure 0004562603

〔実施例8〕
(偏光板の作製)
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製した。
実施例1及び2で作製した環状ポリオレフィンフィルム(それぞれF−1、F−2)にグロー放電処理(周波数3000Hz、4200Vの高周波数電圧を上下電極間に引加、20秒処理)を行い、その後ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の表裏に貼り付け、70℃で10分以上乾燥した。
作成した偏光板Aは、偏光子の片側に環状ポリオレフィンフィルムF−1を、反対面には環状ポリオレフィンフィルムF−2を貼り付けた。また偏光子の透過軸と環状ポリオレフィンフィルムF−2の遅相軸とは平行になるように配置した。偏光子の透過軸と環状ポリオレフィンフィルムF−1の遅相軸とは、直交するように配置した。
作成した偏光板Bは、偏光子の両側に環状ポリオレフィンフィルムF−1を貼り付けた。また偏光子の透過軸と環状ポリオレフィンフィルムF−1の遅相軸とは、直交するように配置した。
<VA液晶セルの作製>
液晶セルは、基板間のセルギャップを3.6μmとし、負の誘電率異方性を有する液晶材料(「MLC6608」、メルク社製)を基板間に滴下注入して封入し、基板間に液晶層を形成して作製した。液晶層のリターデーション(即ち、記液晶層の厚さd(μm)と屈折率異方性Δnとの積Δn・d)を300nmとした。なお、液晶材料は垂直配向するように配向させた。この垂直配向型液晶セルの上側(観察者側)には作成した偏光板Bを粘着剤を介して貼り付けた。液晶セルの下側(バックライト側)には作製した偏光板Aを粘着剤を介して貼り付けた。上側偏光板の透過軸が上下方向に、そして下側偏光板の透過軸が左右方向になるように、クロスニコル配置とした。
作製した液晶表示装置を観察した結果、正面方向および視野角方向もニュートラルな黒表示が実現できていた。また、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)から白表示(L8)までの8段階で視野角(コントラスト比が10以上で黒側の階調反転のない範囲)を測定した結果、左右共に80度以上の良好な視野角であった。

Claims (7)

  1. 環状ポリオレフィンを10〜35質量%含有し、塩素系有機溶剤を主溶剤として含有し、かつアルコール類を前記環状ポリオレフィンの貧溶媒として前記環状ポリオレフィン100質量部に対して13〜50質量部含有するドープ溶液を出発原料として、順次、無端金属支持体上に流延する工程、残留揮発分が5〜60質量%になるまで乾燥する工程、該金属支持体から0.25N/cm以下の剥離抵抗で剥離する工程、および、乾燥して巻き取る工程を含むことを特徴とする、環状ポリオレフィンフィルムの製造方法。
  2. 前記溶液に含有される溶剤の50質量%以上がジクロロメタンであり、且つ20〜100℃で該環状ポリオレフィンを溶解して、前記溶液とすることを特徴とする、請求項1に記載の環状ポリオレフィンフィルムの製造方法。
  3. 前記貧溶媒が沸点120℃以下のアルコール類であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の環状ポリオレフィンフィルムの製造方法。
  4. 前記環状ポリオレフィンの質量平均分子量が5万から50万であることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の環状ポリオレフィンフィルムの製造方法。
  5. 前記ドープ溶液の25℃における粘度が2Pasから250Pasであることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の環状ポリオレフィンフィルムの製造方法。
  6. 前記環状ポリオレフィンが付加重合体であることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の環状ポリオレフィンフィルムの製造方法。
  7. 前記金属支持体から剥離後、1〜150%延伸することを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の環状ポリオレフィンフィルムの製造方法
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