JP2004323543A - 光学部材用粘着剤組成物、光学部材用粘着剤層、粘着型光学部材および画像表示装置 - Google Patents
光学部材用粘着剤組成物、光学部材用粘着剤層、粘着型光学部材および画像表示装置 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】応力緩和性に優れる光学部材用粘着剤組成物を提供すること。
【解決手段】アクリル系ポリマーおよび架橋剤を含有する光学部材用粘着剤組成物であって、前記粘着剤組成物を架橋することにより形成された粘着剤層は、23℃において、600%に伸張させて1分間保持した後の緩和応力値が9.5×104 Pa以下であり、かつ接着面積200mm2 でベークライト板に貼り合わせ、80℃において、せん断荷重200gをかけるクリープ試験の1時間後のずれ量が0.15mm以上であることを特徴とする光学部材用粘着剤組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】アクリル系ポリマーおよび架橋剤を含有する光学部材用粘着剤組成物であって、前記粘着剤組成物を架橋することにより形成された粘着剤層は、23℃において、600%に伸張させて1分間保持した後の緩和応力値が9.5×104 Pa以下であり、かつ接着面積200mm2 でベークライト板に貼り合わせ、80℃において、せん断荷重200gをかけるクリープ試験の1時間後のずれ量が0.15mm以上であることを特徴とする光学部材用粘着剤組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学部材用粘着剤組成物に関する。また本発明は当該光学部材用粘着剤組成物により形成される光学部材用粘着剤層に関する。さらには本発明は、当該粘着剤層を有する粘着型光学部材、さらには前記粘着型光学部材を用いた液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置に関する。前記光学部材としては、偏光板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、さらにはこれらが積層されているものなどがあげられる。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置等に用いる光学部材、例えば偏光板や位相差板などは、液晶セルに粘着剤を用いて貼り付けられる。このような光学部材に用いられる材料は、加熱条件下や加湿条件下では伸縮が大きいため、貼り付け後には、それに伴う浮きや剥がれが生じやすい。そのため、光学部材用粘着剤には、加熱条件下や加湿条件下においても対応できる耐久性が要求される。
【0003】
また、光学部材の貼付け時に、貼合せ面に異物が噛み込んだり、貼り合わせ位置を誤って位置ズレを起こした場合には、光学部材を液晶セルから剥がして再利用する。このような光学部材を液晶セルから剥離する際には、液晶セルのギャップを変化させたり、破断させるような接着状態にならないこと、すなわち、光学部材を容易に剥離できる再剥離性が必要とされる。しかし、光学部材用粘着剤の耐久性を重視して、単に接着状態を上げる手法を採用すると、再剥離性に劣ることになる。
【0004】
また、光学部材用粘着剤には、加熱条件下や加湿条件下において、偏光板などの光学部材の寸歩変化に起因する応力を均一に緩和することが求められる。かかる応力緩和性に劣る場合には、偏光板などの光学部材に残留応力が残存してしまい、色ムラや偏光ヌケなどの悪影響が出るような場合がある。
【0005】
このような光学部材に使用される粘着剤としては、各種の材料が提案されている。たとえば、高分子量ポリマーに低分子量ポリマーをブレンドして、粘着剤の応力緩和性を向上させる試みが行われている(特許文献1乃至5参照。)。
【0006】
特許文献1では、官能基比率が高い高分子量ポリマー100重量部に、重量平均分子量3万以下の低分子量ポリマーを20〜200重量部配合して架橋構造を採る粘着剤組成物が提案されている。かかる粘着剤組成物によれば、高分子量成分による3次元構造で高温高湿下での発泡や剥がれを防止し、偏光板の寸法変化に伴う内部応力を低分子量ポリマー成分で吸収できることが開示されている。
【0007】
特許文献2では、高分子量ポリマーに、重量平均分子量50万以下の低分子量ポリマーを配合した粘着剤組成物が提案されている。かかる粘着剤組成物によれば、応力集中を緩和して、液晶セルの白ヌケや色ムラを抑制するとともに、剥離後に液晶セルに糊残りや曇りを生じないことが開示している。
【0008】
特許文献3では、高分子量ポリマー100重量部に、重量平均分子量5000以上50万未満の低分子量ポリマーを1〜50重量部配合し、かつ高分子量ポリマーまたは低分子量ポリマーのいずれかに一方に窒素含有官能基を含む粘着剤組成物が提案されている。かかる粘着剤組成物によれば、窒素含有官能基の被着体との結合性の強さで、耐久性に優れ、かつ偏光板の伸縮に追随して白ヌケを抑制できることが開示されている。
【0009】
特許文献4では、高分子量ポリマー100重量部に、重量平均分子量が1000〜10000のアクリル系オリゴマーを5〜100重量部および2官能架橋剤を配合した粘着剤組成物が提案されている。かかる粘着剤組成物によれば、被着体との密着性に優れるとともに、良好な応力緩和性を有することで耐久性と白ヌケを抑制できることが開示されている。
【0010】
特許文献5では、高分子量ポリマー100重量部に、ガラス転移点が0〜−80℃の重量平均分子量3〜10万の低分子量ポリマーを10〜100重量部および多官能化合物を配合した粘着剤組成物が提案されている。かかる粘着剤組成物は、剥がれや発泡や白ヌケ現象に対応できるとともに、液晶セルから偏光フィルムを剥離し再貼付けの難易性に係わるリワーク性(再剥離性)にも優れることが開示されている。
【0011】
また、光学部材に使用される粘着剤としては、微小変形における応力緩和を考慮したものが提案されている(たとえば、特許文献6乃至9参照。)。これら特許文献では、粘着剤に可塑剤を添加したり、架橋度に工夫がなされている。前記特許文献では応力緩和性の指標として、微小変形での緩和弾性率を用いている。しかし、偏光板の変形は非常に大きく、粘着剤層にかかる力は非常に大きい。そのため、前記特許文献は、応力緩和性を考慮していないような硬い粘着剤には適応可能であるが、応力緩和性を考慮した軟らかい粘着剤に適応しにくいのが実情である。
【0012】
また、従来の光学部材用粘着剤の多くが、炭素数4以下のアルキル基を有するアクリル酸エステル、具体的にはブチルアクリレートを主成分とするものを主ポリマーとして用いている。しかし、アルキル基の炭素数が小さいとガラス転移温度が高く、硬いポリマーとなり、偏光板の寸法変化に追従できないことが多い。そのため、可塑剤や低分子量物を多量に混合したり、架橋度を下げたりして工夫したりしているのが一般的である。
【0013】
また、高分子量ポリマーに低分子量ポリマーをブレンドした上記粘着剤組成物は、いずれも、耐久性に優れ、低分子量成分にて内部応力を吸収させるものではある。しかし、上記いずれの粘着剤組成物も、耐久性、再剥離性、応力緩和性を充分に満足しているとは言えない。特に、光学部材を剥がして液晶セルを再利用する再剥離性が不充分である。特許文献5ではリワーク性(再剥離性)の評価として、粘着型偏光フィルムをガラスに貼り付けた後、オートクレーブ処理し、23℃、65%RHで24時間放置後の180°引き剥がし接着力が1200g/25mm(約12N/25mm)以下の場合をリワーク性が良好としている。かかるリワーク性の基準を、液晶セルが大型化した場合の評価サンプル(サンプル幅250mm)に適用すると、前記引き剥がし接着力が12Kg/250mm以下の場合がリワーク性が良好となる。しかし、かかる基準では、大型化した液晶セルのギャップ破損が起こる場合が多い。また、応力緩和性も、偏光板のより大きな寸法変化に対応できるようなものが望まれている。
【0014】
【特許文献1】
特開平10−279907号公報
【特許文献2】
特開2000−109771号公報
【特許文献3】
特開2000−89731号公報
【特許文献4】
特開2001−335767号公報
【特許文献5】
特開2002−121521号公報
【特許文献6】
特開平9−87593号公報
【特許文献7】
特開2002−30264号公報
【特許文献8】
特開2001−335767号公報
【特許文献9】
特開2001−311062号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、応力緩和性に優れる光学部材用粘着剤組成物を提供することを目的とする。また本発明は、耐久性、再剥離性および応力緩和性を光学部材用粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【0016】
また本発明は当該光学部材用粘着剤組成物により形成される光学部材用粘着剤層を提供することを目的とする。さらには本発明は、当該粘着剤層を有する粘着型光学部材を提供すること、さらには前記粘着型光学部材を用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、下記光学部材用粘着剤組成物等により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち本発明は、アクリル系ポリマーおよび架橋剤を含有する光学部材用粘着剤組成物であって、
前記粘着剤組成物を架橋することにより形成された粘着剤層は、23℃において、600%に伸張させて1分間保持した後の緩和応力値が9.5×104 Pa以下であり、かつ、
接着面積200mm2 でベークライト板に貼り合わせ、80℃において、せん断荷重200gをかけるクリープ試験の1時間後のずれ量が0.15mm以上であることを特徴とする光学部材用粘着剤組成物、に関する。
【0019】
上記光学部材用粘着剤組成物は、モノマー単位として、炭素数5以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルを50重量%以上および不飽和カルボン酸を0.2〜2重量%含有してなり、ガラス転移温度が−50℃以下、重量平均分子量100万〜250万のアクリル系ポリマー(A)100重量部に対し、シランカップリング剤0.01〜1重量部、および架橋剤を含有してなり、かつ、前記粘着剤層は、ゲル分率が35〜70重量%であることが好ましい。
【0020】
上記光学部材用粘着剤組成物において、モノマー単位として、炭素数5以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルを50重量%以上および不飽和カルボン酸を0.2〜2重量%含有してなり、ガラス転移温度が−50℃以下、重量平均分子量100万〜250万のアクリル系ポリマー(A)100重量部に対し、シランカップリング剤0.01〜1重量部、および架橋剤を含有してなることが好ましい。
【0021】
上記光学部材用粘着剤組成物において、アクリル系ポリマー(A)が、モノマー単位として、水酸基を有するモノマーを含有することが好ましい。
【0022】
上記光学部材用粘着剤組成物において、モノマー単位として、炭素数1〜4のアルキル基(メタ)アクリル酸アルキルを70重量%以上および不飽和カルボン酸を1〜7重量%含有してなり、かつ、カルボン酸当量が、アクリル系ポリマー(A)のカルボン酸当量より大きい、重量平均分子量1万〜6万のアクリル系ポリマー(B)を、アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、2重量部以下含有してなることが好ましい。
【0023】
また本発明は、上記光学部材用粘着剤組成物を、架橋することにより形成された光学部材用粘着剤層、に関する。
【0024】
また本発明は、光学部材の片面または両面に、上記粘着剤層が形成されていることを特徴とする粘着型光学部材、に関する。
【0025】
さらには本発明は、上記粘着型光学部材を少なくとも1つ用いた画像表示装置、に関する。
【0026】
(作用・効果)
上記本発明の光学部材用粘着剤組成物は、当該粘着剤組成物により形成された粘着剤層が、上記に示される600%伸長時の緩和応力値が9.5×104 Pa以下であり、かつ、80℃クリープ試験におけるずれ量が0.15mm以上のものを用いる。すなわち、かかる粘着剤組成物が応力緩和性に優れることを見出したものである。なお、緩和応力値、80℃クリープ試験におけるずれ量は、詳しくは実施例に記載の方法により測定される。
【0027】
前記緩和応力値は、粘着剤層を引張った際の応力緩和性を示すものであり、具体的には初期の長さに対する600%伸長時の応力緩和性を示す。なお、粘着剤層を引張る際の倍率が低い場合、例えば、20%伸長時において発生する応力は、偏光板の寸法変化の動きにより発生する応力に達しない。粘着剤層を引張る際の倍率が低い場合には、粘着剤の架橋度の違いやガラス転移温度が違っていても、偏光抜けとの相関性が観られない。そこで本発明では、粘着剤層を600%伸長させ、大きな変形量を与えた場合の緩和応力値を測定している。本発明の粘着剤組成物は、粘着剤層に大きな変形を加えた場合にも、応力の発生が小さく、緩和性に優れている。
【0028】
前記緩和応力値が9.5×104 Paを超える場合には、耐久性が乏しくなる。緩和応力値は9.0×104 Pa以下、さらには8.0×104 Pa以下であるのが好ましい。なお、緩和応力値が小さくなると耐久性、耐熱性が乏しくなることから、通常、2.0×104 Pa以上であるのが好ましい。
【0029】
また80℃クリープ試験におけるずれ量は、荷重を与えたときにも、ずれ量が大きいものが、偏光板の寸法変化に追従できて粘着剤として優れている。
【0030】
前記ずれ量が0.15mm未満では応力緩和性が不十分であり、偏光板に適用した場合には周辺ムラが生じる。前記ずれ量は、0.2mm以上であるのが好ましい。なお、前記ずれ量が大きくなると、耐熱性、耐久性が乏しくなることから、通常、1.0mm以下、さらには0.8mm以下であるのが好ましい。
【0031】
上記本発明の光学部材用粘着剤組成物としては、不飽和カルボン酸のモノマー単位を特定量含有する高分子量のアクリル系ポリマー(A)とシランカップリング剤を少量配合し、かつ架橋剤を含有するものが好適に用いられる。かかる粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、再剥離性が良好である。さらに、不飽和カルボン酸のモノマー単位を高分子ポリマー(A)より多くした低分子量のアクリル系ポリマー(B)を配合した粘着剤組成物が好ましい。低分子量のアクリル系ポリマー(B)の効果で液晶セルに対する接着力の増大が小さくなる。そのため、再剥離性が良好になり、光学部材を液晶セルに貼付け後に各種の工程を経るなどの長時間を経過したり、高温高湿状態に保存された場合にも、液晶セルを損傷したり汚染することなく、光学部材を容易に液晶セルから剥離できる。すなわち、液晶セルへの光学部材の貼付けを誤った場合にも、光学部材を容易に液晶セルから剥離できる。光学部材を大型の液晶セルに貼り付けた場合にも再剥離性が良好であり、液晶セルに損傷等を与えることなく再利用できる。
【0032】
このように、低分子量のアクリル系ポリマー(B)を用いることで、液晶セルへの接着力が増大することを防止する効果がある理由に関して詳細は不明ではあるが、低分子量のアクリル系ポリマー(B)は、高分子量のアクリル系ポリマー(A)の架橋構造内に存在して低分子量であるために動くことができること、さらには高分子量のアクリル系ポリマー(A)よりも親水性が大きいことなどの理由で、液晶セルと粘着剤との界面に移行して接着力の増大を防止していると推定される。さらには低分子量のアクリル系ポリマー(B)の添加量は、高分子量のアクリル系ポリマー(A)100重量部に対して2重量部以下と非常に少なくて効果があることから、表面に汚染などの現象は全く認められていない。当然ながら、シランカップリング剤や架橋剤を含めた全体としての効果も現れている。
【0033】
また本発明の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、架橋剤で所定のゲル分率になるように設定可能であり、光学部材を液晶セルに貼付け後、各種の工程を経るなどの長時間を経過したり、高温高湿状態に保存されても、接着状態では、剥がれ、浮き、発泡などが発生せず耐久性を向上できる。
【0034】
また、高分子量のアクリル系ポリマー(A)は、炭素数5以上のアルキル基を有するアクリル酸エステルを主体とするものであり、偏光板などの光学部材の寸歩変化に起因する応力緩和性を向上でき、偏光板などに残留応力が残存して色ムラや白ヌケなどの発生を抑制できる。
【0035】
【発明の実施の形態】
本発明の光学部材用粘着剤組成物は、アクリル系ポリマーおよび架橋剤を含有するものであって、当該粘着剤組成物により形成された粘着剤層が、前記600%伸長時の緩和応力値および80℃クリープ試験におけるずれ量に係わる要件を満足できるものを特に制限なく使用できる。
【0036】
本発明の光学部材用粘着剤組成物としては、たとえば、前記高分子量のアクリル系ポリマー(A)100重量部に対し、シランカップリング剤0.01〜1重量部、および架橋剤を含有するものを用いることができる。
【0037】
高分子量のアクリル系ポリマー(A)は、モノマー単位として、炭素数5以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルを50重量%以上および不飽和カルボン酸を0.2〜2重量%含有する。なお、本発明において、(メタ)アクリル酸アルキルはアクリル酸アルキルおよび/またはメタクリル酸アルキルをいう。(メタ)は全て同様の意味である。
【0038】
上記(メタ)アクリル酸アルキルのアルキル基は、炭素数5以上のアルキル基を有するものであれば特に制限はないが、前記アルキル基は、ガラス転移点の低さや弾性率の点から炭素数16以下のものが好ましい。前記アルキル基としては、炭素数5〜16、さらには6〜10のものが好ましい。また、前記炭素数5以上のアルキル基は、直鎖または分岐鎖のいずれも使用できるが、ガラス転移点が低いことから分岐鎖のものが好ましい。
【0039】
炭素数5以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルとしては、たとえば、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレートなどが具体例としてあげられる。これらは1種を単独使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
アクリル系ポリマー(A)は、モノマー単位として、炭素数5以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルを50重量%以上含有する。当該(メタ)アクリル酸アルキルの含有量は好ましくは60〜90重量%である。当該(メタ)アクリル酸アルキルの含有量が50重量%未満では応力緩和性に乏しくなり好ましくない。
【0041】
不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などがあげられる。またこれらの無水物を用いることもできる。これらの中でも特にアクリル酸とメタクリル酸が好ましく用いられる。
【0042】
アクリル系ポリマー(A)は、モノマー単位として、不飽和カルボン酸を、0.2〜2重量%、好ましくは0.3〜1.5重量%含有する。不飽和カルボン酸の含有量が、2重量%を超えると液晶セルへの接着力が大きくなりすぎ、一方、0.2重量%未満では耐久性に悪影響があり好ましくない。
【0043】
アクリル系ポリマー(A)は、モノマー単位として、炭素数5以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルおよび不飽和カルボン酸を上記割合で含有していれば、他のモノマーを含有することができる。他のモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の水酸基を有するモノマー;グリシジル(メタ)アクリレート等エポキシ基を含有するモノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アセトニトリル、ビニルピロリドン、N−シクロヘキシルマレイミド、イタコンイミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等のN元素を有するモノマー等があげられる。さらには酢酸ビニル、スチレン等を用いることもできる。これらモノマーは1種または2種以上を組み合わせることができる。
【0044】
前記他のモノマーとしては、架橋剤と反応性を有する官能基を有するものが好ましい。特に水酸基を有するモノマーが好ましい。架橋剤と反応性を有する官能基を有するモノマーの含有量は、0.02〜1重量%が好ましい。さらには0.04〜0.4重量%であるのが好ましい。
【0045】
アクリル系ポリマー(A)のガラス転移温度は−50℃以下、より好ましくは−60℃以下である。ガラス転移温度は−50℃以下であるのが、応力緩和性の点で好ましい。本発明において、ガラス転移温度の測定は、DSC(示差走査熱量)分析装置により昇温速度7℃/minで測定した値である。
【0046】
また、アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量(GPCにより測定,以下同様)は100万〜250万である。好ましくは100万〜200万である。重量平均分子量が100万未満では耐久性に乏しくなる。また、低分子量のアクリル系ポリマー(B)との分子量に差を付けるため、アクリル系ポリマー(A)の10万以下の分子量成分は、全体の20重量%以下が好ましい。なお、GPCにより測定される重量平均分子量はポリスチレン換算にて求められる値である。GPCの測定条件は、GPC装置:東ソー社製HLC−8120GPC、カラム:オリゴマー,東ソー社製GMHHR−H+GMHHR−H+G2000HHR、ポリマー,東ソー社製G7000HXL+GMHXL+GMHXL、溶媒:テトラヒドロフラン、温度40℃、流速0.8ml/min、検出器:示差屈折計である。また、10万以下の分子量成分は、微分分子量分布曲線の面積比により求められる値である。
【0047】
このようなアクリル系ポリマー(A)の製造は、溶液重合、塊状重合、乳化重合などの公知のラジカル重合法を適宜選択できる。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系、過酸化物系の各種公知のものを使用できる。例えば、溶液重合では、アゾビスイソブチロニトリルなどの重合開始剤を、モノマー全量100重量部に対し0.01〜0.2重量部程度使用する。重合溶媒としては、たとえば、酢酸エチル、トルエン等が用いられる。反応は窒素等の不活性ガス気流下で、通常、50〜70℃程度で、8〜15時間程度行われる。
【0048】
シランカップリング剤としては、従来より知られているものを特に制限なく使用できる。たとえば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミンなどのアミノ基含有シランカップリング剤;3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤;3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート基含有シランカップリング剤、などがあげられる。
【0049】
シランカップリング剤の配合はアクリル系ポリマー(A)100重量部に対し0.01〜1重量部、好ましくは0.02〜0.6重量部である。シランカップリング剤の配合が1重量部を超えると液晶セルへの接着力が増大し、0.01重量部未満では耐久性が低下するため好ましくない。
【0050】
架橋剤としては、アクリル系ポリマー(A)のカルボン酸基、さらには他の官能基と反応して架橋構造を形成できる多官能化合物である。官能基として水酸基を導入した場合には、水酸基と架橋構造を形成する。架橋剤としては、たとえば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、これら等ジイソシアネート化合物の各種ポリオールへの付加物などのポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン化合物、金属塩、金属キレート化合物などがあげられる。これらのなかでも、ポリイソシアネート化合物が好ましく用いられる。特に、アクリル系ポリマー(A)の製造時に、2−ヒドロキシエチルアクリレートなどの水酸基含有モノマーを共重合して、アクリル系ポリマー(A)に水酸基を導入した場合には、架橋剤としてポリイソシアネート化合物を使用して、アクリル系ポリマー(A)の架橋構造を形成するのが好適である。
【0051】
架橋剤の配合は、特に制限されないが、架橋された粘着剤層のゲル分率が、35〜70重量%になるように配合するのが好ましい。さらには40〜60重量%になるように、架橋剤の配合量を調整するのが好ましい。ゲル分率が小さくなると耐久性に劣る傾向があり、大きすぎると応力緩和性に劣る傾向がある。このようにゲル分率を調整するには、使用する材料によっても異なるが、通常、架橋剤の配合量をアクリル系ポリマー(A)100重量部に対しは、通常、0.01〜5重量部、さらには0.02〜2重量部とするのが好ましい。
【0052】
また、前記光学部材用粘着剤組成物には、高分子量のアクリル系ポリマー(A)100重量部に対し、低分子量のアクリル系ポリマー(B)を配合したものを用いることができる。低分子量のアクリル系ポリマー(B)を配合により再剥離性を向上することができる。
【0053】
アクリル系ポリマー(B)は、モノマー単位として、炭素数1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルを70重量%以上および不飽和カルボン酸を1〜7重量%含有してなり、かつ、カルボン酸当量が、アクリル系ポリマー(A)のカルボン酸当量より大きいものである。
【0054】
上記(メタ)アクリル酸アルキルのアルキル基の炭素数は、親水性の面と柔軟性の点から炭素数1〜4のものが好ましい。炭素数1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルとしては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどが具体例としてあげられる。これらは1種を単独使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。当該(メタ)アクリル酸アルキルの含有量は好ましくは80〜96重量%である。当該(メタ)アクリル酸アルキルの含有量が70重量%未満では親水性に乏しくなり好ましくない。
【0055】
不飽和カルボン酸としては、アクリル系ポリマー(A)で例示したものと同様のものを例示できる。アクリル系ポリマー(B)は、モノマー単位として、不飽和カルボン酸を1〜7重量%、好ましくは2〜6重量%含有する。不飽和カルボン酸の含有量が、7重量%を超えると応力緩和性を低下させるために好ましくない。一方、1重量%未満では液晶セルへの接着力が大きくなり好ましくない。
【0056】
また、アクリル系ポリマー(B)は、カルボン酸当量が、アクリル系ポリマー(A)のカルボン酸当量より大きくなるように、不飽和カルボン酸の含有量を調整する。アクリル系ポリマー(B)のカルボン酸当量が、アクリル系ポリマー(A)のカルボン酸当量より小さいと液晶セルへの接着力が大きくなり好ましくない。なお、カルボン酸当量は、ポリマー1g当たりのカルボン酸基の量であり、たとえば、カルボン酸がアクリル酸由来の場合には、ポリマー1g中のアクリル酸重量をアクリル酸の分子量で割ることにより算出される値(当量/g)である。
【0057】
アクリル系ポリマー(B)は、モノマー単位として、上記(メタ)アクリル酸アルキルおよび不飽和カルボン酸を上記割合で含有していれば、他のモノマーを含有することができる。他のモノマーとしては、アクリル系ポリマー(A)で例示したものと同様のものを例示できる。
【0058】
アクリル系ポリマー(B)の重量平均分子量は1万〜7万、好ましくは2万〜6万、さらに好ましくは3万〜5万である。重量平均分子量が1万未満では耐久性が低下する。一方、アクリル系ポリマー(B)の重量平均分子量が7万を超えると液晶セルへの接着力が増大するため好ましくない。なお、アクリル系ポリマー(B)のガラス転移温度は特に制限されない。
【0059】
アクリル系ポリマー(B)の製造は、アクリル系ポリマー(B)と同様の方法を採用できる。重量平均分子量の調整は、大量の重合開始剤を使用したり、メルカプタンなどの連鎖移動剤を使用して行うことができる。
【0060】
アクリル系ポリマー(B)の配合は、アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して2重量部以下、好ましくは0.03〜2重量部、さらに好ましくは0.05〜1重量部である。アクリル系ポリマー(B)の配合が、2重量部を超えると耐久性に悪影響がある。一方、再剥離性を向上させ、液晶セルへの接着力の増大を抑えるには0.1重量部以上とするのが好ましくない。
【0061】
本発明の光学部材用粘着剤組成物は、必要に応じて、紫外線吸収剤、老化防止剤、軟化剤、染料、顔料、充填剤などを配合することができる。
【0062】
本発明の粘着型光学部材は、光学部材の片面または両面に、前記光学部材用粘着剤組成物により、粘着剤層を形成することにより得られる。
【0063】
光学部材への粘着剤層の形成方法としては、特に制限されず、粘着剤組成物を、剥離処理した支持体(剥離シート)に塗布、乾燥、架橋処理して粘着剤層を形成し、これを光学部材に転写する方法、光学部材に直接粘着剤組成物を塗布、乾燥、架橋処理して粘着剤層を形成する方法等があげられる。塗布の方法としては、リバースコーターやグラビアコーターなどのロールコーター、カーテンコーターやリップコーター、ダイコーターなど任意の塗布方法を採用できる。通常、乾燥後の粘着剤層の厚さは2〜500μm、好ましくは5〜100μmである。
【0064】
このような表面に粘着層が露出する場合は実用に供されるまで剥離処理したシートで保護される。なお、剥離シートの構成材料としては、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体等があげられる。剥離シートの表面には、粘着剤層からの剥離性を高めるため、必要に応じてシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理な剥離処理が施されていても良い。
【0065】
光学部材としては液晶表示装置等の形成に用いられるものが使用され、その種類は特に制限されない。たとえば、光学部材としては偏光板があげられる。偏光板は偏光子の片面または両面には透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。
【0066】
偏光子は、特に制限されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、たとえば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、5〜80μm程度である。
【0067】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、たとえば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいてもよいヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸してもよいし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
【0068】
前記偏光子の片面または両面に設けられる透明保護フィルムを形成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または前記ポリマーのブレンド物なども前記透明保護フィルムを形成するポリマーの例としてあげられる。透明保護フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型、紫外線硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0069】
また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルム、たとえば、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物があげられる。具体例としてはイソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物のフィルムがあげられる。フィルムは樹脂組成物の混合押出品などからなるフィルムを用いることができる。
【0070】
保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1〜500μm程度である。特に1〜300μmが好ましく、5〜200μmがより好ましい。
【0071】
また、保護フィルムは、できるだけ色付きがないことが好ましい。したがって、Rth=[(nx+ny)/2−nz]・d(ただし、nx、nyはフィルム平面内の主屈折率、nzはフィルム厚方向の屈折率、dはフィルム厚みである)で表されるフィルム厚み方向の位相差値が−90nm〜+75nmである保護フィルムが好ましく用いられる。かかる厚み方向の位相差値(Rth)が−90nm〜+75nmのものを使用することにより、保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)をほぼ解消することができる。厚み方向位相差値(Rth)は、さらに好ましくは−80nm〜+60nm、特に−70nm〜+45nmが好ましい。
【0072】
保護フィルムとしては、偏光特性や耐久性などの点より、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマーが好ましい。特にトリアセチルセルロースフィルムが好適である。なお、偏光子の両側に保護フィルムを設ける場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料等からなる保護フィルムを用いてもよい。前記偏光子と保護フィルムとは通常、水系粘着剤等を介して密着している。水系接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリウレタン、水系ポリエステル等を例示できる。
【0073】
前記透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであってもよい。
【0074】
ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を透明保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層との密着防止を目的に施される。
【0075】
またアンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて透明保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒子径が0.5〜50μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜50重量部程度であり、5〜25重量部が好ましい。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角などを拡大するための拡散層(視角拡大機能など)を兼ねるものであってもよい。
【0076】
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0077】
また本発明の光学部材としては、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2 や1/4等の波長板を含む)、視角補償フィルム、輝度向上フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層となるものがあげられる。これらは単独で本発明の光学部材として用いることができる他、前記偏光板に、実用に際して積層して、1層または2層以上用いることができる。
【0078】
特に、偏光板に更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板、偏光板に更に視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板、あるいは偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。
【0079】
反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。反射型偏光板の形成は、必要に応じ透明保護層等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行うことができる。
【0080】
反射型偏光板の具体例としては、必要に応じマット処理した透明保護フィルムの片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したものなどがあげられる。また前記透明保護フィルムに微粒子を含有させて表面微細凹凸構造とし、その上に微細凹凸構造の反射層を有するものなどもあげられる。前記した微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させて指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制しうる利点などを有する。また微粒子含有の透明保護フィルムは、入射光及びその反射光がそれを透過する際に拡散されて明暗ムラをより抑制しうる利点なども有している。透明保護フィルムの表面微細凹凸構造を反映させた微細凹凸構造の反射層の形成は、例えば真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式などの適宜な方式で金属を透明保護層の表面に直接付設する方法などにより行うことができる。
【0081】
反射板は前記の偏光板の透明保護フィルムに直接付与する方式に代えて、その透明フィルムに準じた適宜なフィルムに反射層を設けてなる反射シートなどとして用いることもできる。なお反射層は、通常、金属からなるので、その反射面が透明保護フィルムや偏光板等で被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設の回避の点などより好ましい。
【0082】
なお、半透過型偏光板は、上記において反射層で光を反射し、かつ透過するハーフミラー等の半透過型の反射層とすることにより得ることができる。半透過型偏光板は、通常液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置などを比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置などを形成できる。すなわち、半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、比較的暗い雰囲気下においても内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置などの形成に有用である。
【0083】
偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板について説明する。直線偏光を楕円偏光または円偏光に変えたり、楕円偏光または円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に、位相差板などが用いられる。特に、直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変える位相差板としては、いわゆる1/4波長板(λ/4板とも言う)が用いられる。1/2波長板(λ/2板とも言う)は、通常、直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。
【0084】
楕円偏光板はスーパーツイストネマチック(STN)型液晶表示装置の液晶層の複屈折により生じた着色(青又は黄)を補償(防止)して、前記着色のない白黒表示する場合などに有効に用いられる。更に、三次元の屈折率を制御したものは、液晶表示装置の画面を斜め方向から見た際に生じる着色も補償(防止)することができて好ましい。円偏光板は、例えば画像がカラー表示になる反射型液晶表示装置の画像の色調を整える場合などに有効に用いられ、また、反射防止の機能も有する。
【0085】
位相差板としては、高分子素材を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。位相差板の厚さも特に制限されないが、20〜150μm程度が一般的である。
【0086】
高分子素材としては、たとえば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルビニルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、セルロース系重合体、ノルボルネン系樹脂、またはこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物などがあげられる。これら高分子素材は延伸等により配向物(延伸フィルム)となる。
【0087】
液晶性ポリマーとしては、たとえば、液晶配向性を付与する共役性の直線状原子団(メソゲン)がポリマーの主鎖や側鎖に導入された主鎖型や側鎖型の各種のものなどがあげられる。主鎖型の液晶性ポリマーの具体例としては、屈曲性を付与するスペーサ部でメソゲン基を結合した構造の、例えばネマチック配向性のポリエステル系液晶性ポリマー、ディスコティックポリマーやコレステリックポリマーなどがあげられる。側鎖型の液晶性ポリマーの具体例としては、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート又はポリマロネートを主鎖骨格とし、側鎖として共役性の原子団からなるスペーサ部を介してネマチック配向付与性のパラ置換環状化合物単位からなるメソゲン部を有するものなどがあげられる。これら液晶性ポリマーは、たとえば、ガラス板上に形成したポリイミドやポリビニルアルコール等の薄膜の表面をラビング処理したもの、酸化珪素を斜方蒸着したものなどの配向処理面上に液晶性ポリマーの溶液を展開して熱処理することにより行われる。
【0088】
位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであってよく、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものなどであってもよい。
【0089】
また上記の楕円偏光板や反射型楕円偏光板は、偏光板又は反射型偏光板と位相差板を適宜な組合せで積層したものである。かかる楕円偏光板等は、(反射型)偏光板と位相差板の組合せとなるようにそれらを液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層することによっても形成しうるが、前記の如く予め楕円偏光板等の光学部材としたものは、品質の安定性や積層作業性等に優れて液晶表示装置などの製造効率を向上させうる利点がある。
【0090】
視角補償フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明にみえるように視野角を広げるためのフィルムである。このような視角補償位相差板としては、例えば位相差板、液晶ポリマー等の配向フィルムや透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を支持したものなどからなる。通常の位相差板は、その面方向に一軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視角補償フィルムとして用いられる位相差板には、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムとか、面方向に一軸に延伸され厚さ方向にも延伸された厚さ方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルムなどが用いられる。傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理又は/及び収縮処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたものなどが挙げられる。位相差板の素材原料ポリマーは、先の位相差板で説明したポリマーと同様のものが用いられ、液晶セルによる位相差に基づく視認角の変化による着色等の防止や良視認の視野角の拡大などを目的とした適宜なものを用いうる。
【0091】
また良視認の広い視野角を達成する点などより、液晶ポリマーの配向層、特にディスコティック液晶ポリマーの傾斜配向層からなる光学的異方性層をトリアセチルセルロースフィルムにて支持した光学補償位相差板が好ましく用いうる。
【0092】
偏光板と輝度向上フィルムを貼り合わせた偏光板は、通常液晶セルの裏側サイドに設けられて使用される。輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライトや裏側からの反射などにより自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光または所定方向の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すもので、輝度向上フィルムを偏光板と積層した偏光板は、バックライト等の光源からの光を入射させて所定偏光状態の透過光を得ると共に、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射される。この輝度向上フィルム面で反射した光を更にその後ろ側に設けられた反射層等を介し反転させて輝度向上フィルムに再入射させ、その一部又は全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上フィルムを透過する光の増量を図ると共に、偏光子に吸収させにくい偏光を供給して液晶表示画像表示等に利用しうる光量の増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。すなわち、輝度向上フィルムを使用せずに、バックライトなどで液晶セルの裏側から偏光子を通して光を入射した場合には、偏光子の偏光軸に一致していない偏光方向を有する光は、ほとんど偏光子に吸収されてしまい、偏光子を透過してこない。すなわち、用いた偏光子の特性によっても異なるが、およそ50%の光が偏光子に吸収されてしまい、その分、液晶画像表示等に利用しうる光量が減少し、画像が暗くなる。輝度向上フィルムは、偏光子に吸収されるような偏光方向を有する光を偏光子に入射させずに輝度向上フィルムで一旦反射させ、更にその後ろ側に設けられた反射層等を介して反転させて輝度向上フィルムに再入射させることを繰り返し、この両者間で反射、反転している光の偏光方向が偏光子を通過し得るような偏光方向になった偏光のみを、輝度向上フィルムは透過させて偏光子に供給するので、バックライトなどの光を効率的に液晶表示装置の画像の表示に使用でき、画面を明るくすることができる。
【0093】
輝度向上フィルムと上記反射層等の間に拡散板を設けることもできる。輝度向上フィルムによって反射した偏光状態の光は上記反射層等に向かうが、設置された拡散板は通過する光を均一に拡散すると同時に偏光状態を解消し、非偏光状態となる。すなわち、拡散板は偏光を元の自然光状態にもどす。この非偏光状態、すなわち自然光状態の光が反射層等に向かい、反射層等を介して反射し、再び拡散板を通過して輝度向上フィルムに再入射することを繰り返す。このように輝度向上フィルムと上記反射層等の間に、偏光を元の自然光状態にもどす拡散板を設けることにより表示画面の明るさを維持しつつ、同時に表示画面の明るさのむらを少なくし、均一で明るい画面を提供することができる。かかる拡散板を設けることにより、初回の入射光は反射の繰り返し回数が程よく増加し、拡散板の拡散機能と相俟って均一の明るい表示画面を提供することができたものと考えられる。
【0094】
前記の輝度向上フィルムとしては、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものの如き、左回り又は右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどの適宜なものを用いうる。
【0095】
従って、前記した所定偏光軸の直線偏光を透過させるタイプの輝度向上フィルムでは、その透過光をそのまま偏光板に偏光軸を揃えて入射させることにより、偏光板による吸収ロスを抑制しつつ効率よく透過させることができる。一方、コレステリック液晶層の如く円偏光を投下するタイプの輝度向上フィルムでは、そのまま偏光子に入射させることもできるが、吸収ロスを抑制する点よりその円偏光を位相差板を介し直線偏光化して偏光板に入射させることが好ましい。なお、その位相差板として1/4波長板を用いることにより、円偏光を直線偏光に変換することができる。
【0096】
可視光域等の広い波長範囲で1/4波長板として機能する位相差板は、例えば波長550nmの淡色光に対して1/4波長板として機能する位相差層と他の位相差特性を示す位相差層、例えば1/2波長板として機能する位相差層とを重畳する方式などにより得ることができる。従って、偏光板と輝度向上フィルムの間に配置する位相差板は、1層又は2層以上の位相差層からなるものであってよい。
【0097】
なお、コレステリック液晶層についても、反射波長が相違するものの組み合わせにして2層又は3層以上重畳した配置構造とすることにより、可視光領域等の広い波長範囲で円偏光を反射するものを得ることができ、それに基づいて広い波長範囲の透過円偏光を得ることができる。
【0098】
また、偏光板は、上記の偏光分離型偏光板の如く、偏光板と2層又は3層以上の光学層とを積層したものからなっていてもよい。従って、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を組み合わせた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板などであってもよい。
【0099】
偏光板に前記光学層を積層した光学部材は、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学部材としたのものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板と他の光学層の接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0100】
なお、本発明の粘着型光学部材の光学部材や粘着剤層などの各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やべンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
【0101】
本発明の粘着型光学部材は液晶表示装置等の各種画像表示装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと粘着型光学部材、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による光学部材を用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0102】
液晶セルの片側又は両側に粘着型光学部材を配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による光学部材は液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に光学部材を設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【0103】
次いで有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置)について説明する。一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の組み合わせをもった構成が知られている。
【0104】
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物資を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
【0105】
有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
【0106】
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
【0107】
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL表示装置において、透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差板を設けることができる。
【0108】
位相差板および偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板を1/4 波長板で構成し、かつ偏光板と位相差板との偏光方向のなす角をπ/4 に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0109】
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相差板により一般に楕円偏光となるが、とくに位相差板が1/4 波長板でしかも偏光板と位相差板との偏光方向のなす角がπ/4 のときには円偏光となる。
【0110】
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相差板に再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0111】
【実施例】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。粘着剤層のゲル分率の測定は以下の通りである。
【0112】
<ゲル分率測定>
架橋処理した粘着剤層を約0.1gをとり、これを秤量して重量(W1 )を測定した。次いで、これを微孔性テトラフルオロエチレン膜に包んで(膜重量W2 )、約50mlの酢酸エチルに2日間浸漬したのち、可溶分を抽出した。これを乾燥し、全体の重量(W3 )を測定した。これらの測定値から、
ゲル分率(重量%)={(W3 −W2 )/W1 }×100
の式にしたがって、粘着剤層のゲル分率(重量%)を求めた。
【0113】
実施例1
(高分子量のアクリル系ポリマー(A)の調製)
窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコに、2−エチルヘキシルアクリレート90部、イソノニルアクリレート10部、アクリル酸0.5部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.1部、および2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.1部と酢酸エチル200部を投入し、1時間窒素置換した後、窒素気流下で撹拌しながら55℃で12時間重合反応を行い、重量平均分子量138万、分子量10万以下の重量分率が17%のアクリル系ポリマー(A1)の溶液を得た。アクリル系ポリマー(A1)のカルボン酸当量は0.69×10−4当量/g、ガラス転移温度は−63℃であった。
【0114】
(光学部材用粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマー(A1)の溶液(固形分)100部に対して、架橋剤としてトリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネ−ト付加物からなるポリイソシアネート系架橋剤0.7部およびシランカップリング剤として3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.05部を均一に混合して光学部材用粘着剤組成物を調製した。
【0115】
(粘着型光学部材の作成)
上記粘着剤組成物を、シリコーン剥離処理した厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに、粘着剤層の乾燥厚さが20μmになるように塗布し、110℃で5分間乾燥・架橋を行い粘着剤層を形成した。当該粘着剤層を、偏光板に転写し、50℃で24時間エージング処理して、粘着型光学部材を得た。粘着剤層のゲル分率は53重量%であった。
【0116】
実施例2
(低分子量のアクリル系ポリマー(B)の調製)
窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート90部、エチルアクリレート10部、アクリル酸4部、ラウリルメルカプタン0.6部、および2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を投入し、1時間窒素置換した後、窒素気流下で撹拌しながら55℃で12時間重合反応を行い、重量平均分子量4.7万のアクリル系ポリマー(B1)の溶液を得た。アクリル系ポリマー(B1)のカルボン酸当量は、5.3×10−4当量/gであった。
【0117】
(光学部材用粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマー(A1)の溶液(固形分)100部に対して、アクリル系ポリマー(B1)の溶液(固形分)0.5部、架橋剤としてトリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネ−ト付加物からなるポリイソシアネート系架橋剤0.7部およびシランカップリング剤として3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.05部を均一に混合して光学部材用粘着剤組成物を調製した。
【0118】
(粘着型光学部材の作成)
前記粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤層を形成し、さらに粘着型光学部材を得た。粘着剤層のゲル分率は47%であった。
【0119】
実施例3
実施例2において、アクリル系ポリマー(B1)の溶液(固形分)の使用量を0.2部に変えたこと以外は、実施例2と同様にして、光学部材用粘着剤組成物を調製した。また、前記粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤層を形成し、さらに粘着型光学部材を得た。粘着剤層のゲル分率は42%であった。
【0120】
実施例4
実施例2において、架橋剤の使用量を1.2部に変えたこと以外は、実施例2と同様にして、光学部材用粘着剤組成物を調製した。また、前記粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤層を形成し、さらに粘着型光学部材を得た。粘着剤層のゲル分率は62%であった。
【0121】
実施例5
(高分子量のアクリル系ポリマー(A)の調製)
窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコに、イソオクチルアクリレート90部、エチルアクリレート10部、アクリル酸1部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.1部、および2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.1部と酢酸エチル200部を投入し、1時間窒素置換した後、窒素気流下で撹拌しながら55℃で12時間重合反応を行い、重量平均分子量138万、分子量10万以下の重量分率が17%のアクリル系ポリマー(A2)の溶液を得た。アクリル系ポリマー(A2)のカルボン酸当量は1.37×10−4当量/g、ガラス転移温度は−70℃であった。
【0122】
(光学部材用粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマー(A2)の溶液(固形分)100部に対して、架橋剤としてトリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネ−ト付加物からなるポリイソシアネート系架橋剤0.7部およびシランカップリング剤として3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン0.05部を均一に混合して光学部材用粘着剤組成物を調製した。
【0123】
(粘着型光学部材の作成)
前記粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤層を形成し、さらに粘着型光学部材を得た。粘着剤層のゲル分率は57%であった。
【0124】
実施例6
(低分子量のアクリル系ポリマー(B)の調製)
窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート90部、2−エチルヘキシルアクリレート10部、アクリル酸4部、ラウリルメルカプタン0.8部、および2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を投入し、1時間窒素置換した後、窒素気流下で撹拌しながら55℃で12時間重合反応を行い、重量平均分子量3.1万のアクリル系ポリマー(B2)の溶液を得た。アクリル系ポリマー(B2)のカルボン酸当量は、5.34×10−4当量/gであった。
【0125】
(光学部材用粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマー(A2)の溶液(固形分)100部に対して、アクリル系ポリマー(B2)の溶液(固形分)0.2部、架橋剤としてトリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネ−ト付加物からなるポリイソシアネート系架橋剤0.7部およびシランカップリング剤として3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン0.05部を均一に混合して光学部材用粘着剤組成物を調製した。
【0126】
(粘着型光学部材の作成)
前記粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤層を形成し、さらに粘着型光学部材を得た。粘着剤層のゲル分率は54%であった。
【0127】
実施例7
実施例6において、架橋剤の使用量を1.2部に変えたこと以外は、実施例6と同様にして、光学部材用粘着剤組成物を調製した。また、前記粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤層を形成し、さらに粘着型光学部材を得た。粘着剤層のゲル分率は65%であった。
【0128】
実施例8
実施例6において、架橋剤をジフェニルメタンジイソシアネートに変えたこと以外は、実施例6と同様にして、光学部材用粘着剤組成物を調製した。また、前記粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤層を形成し、さらに粘着型光学部材を得た。粘着剤層のゲル分率は67%であった。
【0129】
比較例1
(高分子量のアクリル系ポリマーの調製)
窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート90部、アクリル酸3.5部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.1部、および2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.1部と酢酸エチル200部を投入し、1時間窒素置換した後、窒素気流下で撹拌しながら55℃で12時間重合反応を行い、重量平均分子量200万、分子量10万以下の重量分率が7%のアクリル系ポリマー(a1)の溶液を得た。当該アクリル系ポリマー(a1)のカルボン酸当量は5.19×10−4当量/g、ガラス転移温度は−45℃であった。
【0130】
(光学部材用粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマー(a1)の溶液(固形分)100部に対して、実施例1で得られたアクリル系ポリマー(B1)の溶液(固形分)0.5部、架橋剤としてトリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネ−ト付加物からなるポリイソシアネート系架橋剤0.5部およびシランカップリング剤として3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.05部を均一に混合して、光学部材用粘着剤組成物を調製した。
【0131】
(粘着型光学部材の作成)
前記粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤層を形成し、さらに粘着型光学部材を得た。粘着剤層のゲル分率は70%であった。
【0132】
比較例2
(高分子量のアクリル系ポリマーの調製)
窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート100部、アクリル酸6部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.1部、および2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.1部と酢酸エチル200部を投入し、1時間窒素置換した後、窒素気流下で撹拌しながら55℃で12時間重合反応を行い、重量平均分子量200万、分子量10万以下の重量分率が7%のアクリル系ポリマー(a2)の溶液を得た。当該アクリル系ポリマー(a2)のカルボン酸当量は0.69×10−4当量/g、ガラス転移温度は−42℃であった。
【0133】
(低分子量のアクリル系ポリマー(b)の調製)
窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート90部、エチルアクリレート10部、アクリル酸0.5部、ラウリルメルカプタン0.6部、および2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を投入し、1時間窒素置換した後、窒素気流下で撹拌しながら55℃で12時間重合反応を行い、重量平均分子量4.6万のアクリル系ポリマー(b1)の溶液を得た。アクリル系ポリマー(b1)のカルボン酸当量は、0.69×10−4当量/gであった。
【0134】
(光学部材用粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマー(a2)の溶液(固形分)100部に対して、アクリル系ポリマー(b1)の溶液(固形分)0.5部、架橋剤としてトリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネ−ト付加物からなるポリイソシアネート系架橋剤0.7部およびシランカップリング剤として3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.05部を均一に混合して光学部材用粘着剤組成物を調製した。
【0135】
(粘着型光学部材の作成)
前記粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤層を形成し、さらに粘着型光学部材を得た。粘着剤層のゲル分率は69%であった。
【0136】
比較例3
(高分子量のアクリル系ポリマーの調製)
窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート90部、メチルメタクリレート10部、アクリル酸0.5部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.1部、および2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.1部と酢酸エチル200部を投入し、1時間窒素置換した後、窒素気流下で撹拌しながら55℃で12時間重合反応を行い、重量平均分子量170万、分子量10万以下の重量分率が12%のアクリル系ポリマー(a3)の溶液を得た。当該アクリル系ポリマー(a3)のカルボン酸当量は0.69×10−4当量/g、ガラス転移温度は−40℃であった。
【0137】
(光学部材用粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマー(a3)の溶液(固形分)100部に対して、実施例1で得られたアクリル系ポリマー(B1)の溶液(固形分)0.5部、架橋剤としてトリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネ−ト付加物からなるポリイソシアネート系架橋剤0.5部およびシランカップリング剤として3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.05部を均一に混合して光学部材用粘着剤組成物を調製した。
【0138】
(粘着型光学部材の作成)
前記粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤層を形成し、さらに粘着型光学部材を得た。粘着剤層のゲル分率は49%であった。
【0139】
比較例4
(低分子量のアクリル系ポリマーの調製)
窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート90部、2−エチルヘキシルアクリレート10部、アクリル酸4部、ラウリルメルカプタン0.1部、および2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を投入し、1時間窒素置換した後、窒素気流下で撹拌しながら55℃で12時間重合反応を行い、重量平均分子量7.2万のアクリル系ポリマー(b2)の溶液を得た。アクリル系ポリマー(b2)のカルボン酸当量は、5.34×10−4当量/gであった。
【0140】
(光学部材用粘着剤組成物の調製)
実施例1で得られたアクリル系ポリマー(A1)の溶液(固形分)100部に対して、アクリル系ポリマー(b2)の溶液(固形分)0.5部、架橋剤としてトリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネ−ト付加物からなるポリイソシアネート系架橋剤0.7部およびシランカップリング剤として3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.05部を均一に混合して光学部材用粘着剤組成物を調製した。
【0141】
(粘着型光学部材の作成)
前記粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤層を形成し、さらに粘着型光学部材を得た。粘着剤層のゲル分率は54%であった。
【0142】
比較例5
実施例1において、架橋剤の使用量を2.5部に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、光学部材用粘着剤組成物を調製した。また、前記粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤層を形成し、さらに粘着型光学部材を得た。粘着剤層のゲル分率は74%であった。
【0143】
実施例および比較例で得られた粘着型光学部材(偏光板)について、下記評価を行った。結果を表1に示す。
【0144】
<緩和応力値の測定>
粘着剤組成物をセパレータ上に乾燥後の厚みが20μmとなるよう塗布した。乾燥は実施例と同じ条件で行なった。形成された粘着剤層のみを、30mm×30mmの大きさに切り出し、断面積0.6 mm2 (20μm×30mm)となるように丸めて円柱状にした。これをオートグラフAGS−50型(島津製作所製)を用い、チャック間の距離が10mmになるように、上下のチャックにサンプルを挟んだ。
20%伸張時の緩和応力値:300mm/minの引張速度で、20%伸張時点で装置を止め、1分間保持した後の応力を読み取り、それを断面積で除して、緩和応力値を求めた。
6 00%伸張時の緩和応力値:50mm/minの引張速度で、6 00%伸張時点で装置を止め、1分間保持した後の応力を読み取り、それ断面積で除して、緩和応力値を求めた。
【0145】
<80℃クリープ試験>
粘着剤層を厚さ38μmポリエチレンテレフタレートフィルムに貼り合わせた粘着シートを幅10mm、長さ20mmの200mm2 の接着面積でベークライト板(二村化学工業社製のFL−1021)に貼り付け、80℃で200gfの荷重をかけて、1時間放置した後の、ずれ量(mm)を測定した。
【0146】
<偏光抜け評価>
粘着剤層を設けた12インチサイズの偏光板2枚を偏光軸が直行になるように無アルカリガラスを挟み込むように貼り合わせたサンプルを作製した。このサンプルを、50℃、0.5MPaのオートクレーブにて30分間処理し、80℃で24時間保存した。次いで、サンプルを暗室にて、2600cd/m2 のバックライト上に置き、色ムラの発生状況を目視観察し、以下の基準で評価した。
○:色ムラがない。
×:色ムラがある。
【0147】
<接着力>
幅25mmに裁断した粘着型光学部材を、コーニング社製の無アルカリガラス板に2Kgのロール1往復で貼付け、50℃、0.5MPaのオートクレーブにて30分間処理した。次いで、60℃の条件下に17時間放置後、剥離角度90°、剥離速度300mm/分で剥離接着力(N/25mm)を測定した。リワーク性においては接着力が小さいことが望まれる。
【0148】
<耐久性>
12インチサイズに裁断した粘着型光学部材を、厚さ0.7mmのコーニング社製の無アルカリガラスに貼付け、50℃、0.5MPaのオートクレーブにて30分間処理した後、60℃、90%RHの雰囲気に500時間投入した。その後、粘着型光学部材を状態を目視観察し、以下の基準で評価した。
○:光学部材の剥がれや浮きがない。
×:光学部材の剥がれや浮きがある。
【0149】
【表1】
以上のように、本発明の粘着型光学部材は、また、長期の過酷試験に対しても耐久性を有し、光学部材(偏光板)の寸歩変化に起因する応力に対する緩和性に優れており液晶表示状態への悪影響(色ムラ)もない。また再剥離性がよく、糊残りや液晶セルを破壊することなく光学部材を再剥離して液晶セルを再利用することが容易である。それに対して、比較例は耐久性を満足させようとすると、接着力が大きくなったり、偏光抜けを発生したりして、作業性や視覚性に悪影響を与えてる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学部材用粘着剤組成物に関する。また本発明は当該光学部材用粘着剤組成物により形成される光学部材用粘着剤層に関する。さらには本発明は、当該粘着剤層を有する粘着型光学部材、さらには前記粘着型光学部材を用いた液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置に関する。前記光学部材としては、偏光板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、さらにはこれらが積層されているものなどがあげられる。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置等に用いる光学部材、例えば偏光板や位相差板などは、液晶セルに粘着剤を用いて貼り付けられる。このような光学部材に用いられる材料は、加熱条件下や加湿条件下では伸縮が大きいため、貼り付け後には、それに伴う浮きや剥がれが生じやすい。そのため、光学部材用粘着剤には、加熱条件下や加湿条件下においても対応できる耐久性が要求される。
【0003】
また、光学部材の貼付け時に、貼合せ面に異物が噛み込んだり、貼り合わせ位置を誤って位置ズレを起こした場合には、光学部材を液晶セルから剥がして再利用する。このような光学部材を液晶セルから剥離する際には、液晶セルのギャップを変化させたり、破断させるような接着状態にならないこと、すなわち、光学部材を容易に剥離できる再剥離性が必要とされる。しかし、光学部材用粘着剤の耐久性を重視して、単に接着状態を上げる手法を採用すると、再剥離性に劣ることになる。
【0004】
また、光学部材用粘着剤には、加熱条件下や加湿条件下において、偏光板などの光学部材の寸歩変化に起因する応力を均一に緩和することが求められる。かかる応力緩和性に劣る場合には、偏光板などの光学部材に残留応力が残存してしまい、色ムラや偏光ヌケなどの悪影響が出るような場合がある。
【0005】
このような光学部材に使用される粘着剤としては、各種の材料が提案されている。たとえば、高分子量ポリマーに低分子量ポリマーをブレンドして、粘着剤の応力緩和性を向上させる試みが行われている(特許文献1乃至5参照。)。
【0006】
特許文献1では、官能基比率が高い高分子量ポリマー100重量部に、重量平均分子量3万以下の低分子量ポリマーを20〜200重量部配合して架橋構造を採る粘着剤組成物が提案されている。かかる粘着剤組成物によれば、高分子量成分による3次元構造で高温高湿下での発泡や剥がれを防止し、偏光板の寸法変化に伴う内部応力を低分子量ポリマー成分で吸収できることが開示されている。
【0007】
特許文献2では、高分子量ポリマーに、重量平均分子量50万以下の低分子量ポリマーを配合した粘着剤組成物が提案されている。かかる粘着剤組成物によれば、応力集中を緩和して、液晶セルの白ヌケや色ムラを抑制するとともに、剥離後に液晶セルに糊残りや曇りを生じないことが開示している。
【0008】
特許文献3では、高分子量ポリマー100重量部に、重量平均分子量5000以上50万未満の低分子量ポリマーを1〜50重量部配合し、かつ高分子量ポリマーまたは低分子量ポリマーのいずれかに一方に窒素含有官能基を含む粘着剤組成物が提案されている。かかる粘着剤組成物によれば、窒素含有官能基の被着体との結合性の強さで、耐久性に優れ、かつ偏光板の伸縮に追随して白ヌケを抑制できることが開示されている。
【0009】
特許文献4では、高分子量ポリマー100重量部に、重量平均分子量が1000〜10000のアクリル系オリゴマーを5〜100重量部および2官能架橋剤を配合した粘着剤組成物が提案されている。かかる粘着剤組成物によれば、被着体との密着性に優れるとともに、良好な応力緩和性を有することで耐久性と白ヌケを抑制できることが開示されている。
【0010】
特許文献5では、高分子量ポリマー100重量部に、ガラス転移点が0〜−80℃の重量平均分子量3〜10万の低分子量ポリマーを10〜100重量部および多官能化合物を配合した粘着剤組成物が提案されている。かかる粘着剤組成物は、剥がれや発泡や白ヌケ現象に対応できるとともに、液晶セルから偏光フィルムを剥離し再貼付けの難易性に係わるリワーク性(再剥離性)にも優れることが開示されている。
【0011】
また、光学部材に使用される粘着剤としては、微小変形における応力緩和を考慮したものが提案されている(たとえば、特許文献6乃至9参照。)。これら特許文献では、粘着剤に可塑剤を添加したり、架橋度に工夫がなされている。前記特許文献では応力緩和性の指標として、微小変形での緩和弾性率を用いている。しかし、偏光板の変形は非常に大きく、粘着剤層にかかる力は非常に大きい。そのため、前記特許文献は、応力緩和性を考慮していないような硬い粘着剤には適応可能であるが、応力緩和性を考慮した軟らかい粘着剤に適応しにくいのが実情である。
【0012】
また、従来の光学部材用粘着剤の多くが、炭素数4以下のアルキル基を有するアクリル酸エステル、具体的にはブチルアクリレートを主成分とするものを主ポリマーとして用いている。しかし、アルキル基の炭素数が小さいとガラス転移温度が高く、硬いポリマーとなり、偏光板の寸法変化に追従できないことが多い。そのため、可塑剤や低分子量物を多量に混合したり、架橋度を下げたりして工夫したりしているのが一般的である。
【0013】
また、高分子量ポリマーに低分子量ポリマーをブレンドした上記粘着剤組成物は、いずれも、耐久性に優れ、低分子量成分にて内部応力を吸収させるものではある。しかし、上記いずれの粘着剤組成物も、耐久性、再剥離性、応力緩和性を充分に満足しているとは言えない。特に、光学部材を剥がして液晶セルを再利用する再剥離性が不充分である。特許文献5ではリワーク性(再剥離性)の評価として、粘着型偏光フィルムをガラスに貼り付けた後、オートクレーブ処理し、23℃、65%RHで24時間放置後の180°引き剥がし接着力が1200g/25mm(約12N/25mm)以下の場合をリワーク性が良好としている。かかるリワーク性の基準を、液晶セルが大型化した場合の評価サンプル(サンプル幅250mm)に適用すると、前記引き剥がし接着力が12Kg/250mm以下の場合がリワーク性が良好となる。しかし、かかる基準では、大型化した液晶セルのギャップ破損が起こる場合が多い。また、応力緩和性も、偏光板のより大きな寸法変化に対応できるようなものが望まれている。
【0014】
【特許文献1】
特開平10−279907号公報
【特許文献2】
特開2000−109771号公報
【特許文献3】
特開2000−89731号公報
【特許文献4】
特開2001−335767号公報
【特許文献5】
特開2002−121521号公報
【特許文献6】
特開平9−87593号公報
【特許文献7】
特開2002−30264号公報
【特許文献8】
特開2001−335767号公報
【特許文献9】
特開2001−311062号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、応力緩和性に優れる光学部材用粘着剤組成物を提供することを目的とする。また本発明は、耐久性、再剥離性および応力緩和性を光学部材用粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【0016】
また本発明は当該光学部材用粘着剤組成物により形成される光学部材用粘着剤層を提供することを目的とする。さらには本発明は、当該粘着剤層を有する粘着型光学部材を提供すること、さらには前記粘着型光学部材を用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、下記光学部材用粘着剤組成物等により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち本発明は、アクリル系ポリマーおよび架橋剤を含有する光学部材用粘着剤組成物であって、
前記粘着剤組成物を架橋することにより形成された粘着剤層は、23℃において、600%に伸張させて1分間保持した後の緩和応力値が9.5×104 Pa以下であり、かつ、
接着面積200mm2 でベークライト板に貼り合わせ、80℃において、せん断荷重200gをかけるクリープ試験の1時間後のずれ量が0.15mm以上であることを特徴とする光学部材用粘着剤組成物、に関する。
【0019】
上記光学部材用粘着剤組成物は、モノマー単位として、炭素数5以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルを50重量%以上および不飽和カルボン酸を0.2〜2重量%含有してなり、ガラス転移温度が−50℃以下、重量平均分子量100万〜250万のアクリル系ポリマー(A)100重量部に対し、シランカップリング剤0.01〜1重量部、および架橋剤を含有してなり、かつ、前記粘着剤層は、ゲル分率が35〜70重量%であることが好ましい。
【0020】
上記光学部材用粘着剤組成物において、モノマー単位として、炭素数5以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルを50重量%以上および不飽和カルボン酸を0.2〜2重量%含有してなり、ガラス転移温度が−50℃以下、重量平均分子量100万〜250万のアクリル系ポリマー(A)100重量部に対し、シランカップリング剤0.01〜1重量部、および架橋剤を含有してなることが好ましい。
【0021】
上記光学部材用粘着剤組成物において、アクリル系ポリマー(A)が、モノマー単位として、水酸基を有するモノマーを含有することが好ましい。
【0022】
上記光学部材用粘着剤組成物において、モノマー単位として、炭素数1〜4のアルキル基(メタ)アクリル酸アルキルを70重量%以上および不飽和カルボン酸を1〜7重量%含有してなり、かつ、カルボン酸当量が、アクリル系ポリマー(A)のカルボン酸当量より大きい、重量平均分子量1万〜6万のアクリル系ポリマー(B)を、アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、2重量部以下含有してなることが好ましい。
【0023】
また本発明は、上記光学部材用粘着剤組成物を、架橋することにより形成された光学部材用粘着剤層、に関する。
【0024】
また本発明は、光学部材の片面または両面に、上記粘着剤層が形成されていることを特徴とする粘着型光学部材、に関する。
【0025】
さらには本発明は、上記粘着型光学部材を少なくとも1つ用いた画像表示装置、に関する。
【0026】
(作用・効果)
上記本発明の光学部材用粘着剤組成物は、当該粘着剤組成物により形成された粘着剤層が、上記に示される600%伸長時の緩和応力値が9.5×104 Pa以下であり、かつ、80℃クリープ試験におけるずれ量が0.15mm以上のものを用いる。すなわち、かかる粘着剤組成物が応力緩和性に優れることを見出したものである。なお、緩和応力値、80℃クリープ試験におけるずれ量は、詳しくは実施例に記載の方法により測定される。
【0027】
前記緩和応力値は、粘着剤層を引張った際の応力緩和性を示すものであり、具体的には初期の長さに対する600%伸長時の応力緩和性を示す。なお、粘着剤層を引張る際の倍率が低い場合、例えば、20%伸長時において発生する応力は、偏光板の寸法変化の動きにより発生する応力に達しない。粘着剤層を引張る際の倍率が低い場合には、粘着剤の架橋度の違いやガラス転移温度が違っていても、偏光抜けとの相関性が観られない。そこで本発明では、粘着剤層を600%伸長させ、大きな変形量を与えた場合の緩和応力値を測定している。本発明の粘着剤組成物は、粘着剤層に大きな変形を加えた場合にも、応力の発生が小さく、緩和性に優れている。
【0028】
前記緩和応力値が9.5×104 Paを超える場合には、耐久性が乏しくなる。緩和応力値は9.0×104 Pa以下、さらには8.0×104 Pa以下であるのが好ましい。なお、緩和応力値が小さくなると耐久性、耐熱性が乏しくなることから、通常、2.0×104 Pa以上であるのが好ましい。
【0029】
また80℃クリープ試験におけるずれ量は、荷重を与えたときにも、ずれ量が大きいものが、偏光板の寸法変化に追従できて粘着剤として優れている。
【0030】
前記ずれ量が0.15mm未満では応力緩和性が不十分であり、偏光板に適用した場合には周辺ムラが生じる。前記ずれ量は、0.2mm以上であるのが好ましい。なお、前記ずれ量が大きくなると、耐熱性、耐久性が乏しくなることから、通常、1.0mm以下、さらには0.8mm以下であるのが好ましい。
【0031】
上記本発明の光学部材用粘着剤組成物としては、不飽和カルボン酸のモノマー単位を特定量含有する高分子量のアクリル系ポリマー(A)とシランカップリング剤を少量配合し、かつ架橋剤を含有するものが好適に用いられる。かかる粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、再剥離性が良好である。さらに、不飽和カルボン酸のモノマー単位を高分子ポリマー(A)より多くした低分子量のアクリル系ポリマー(B)を配合した粘着剤組成物が好ましい。低分子量のアクリル系ポリマー(B)の効果で液晶セルに対する接着力の増大が小さくなる。そのため、再剥離性が良好になり、光学部材を液晶セルに貼付け後に各種の工程を経るなどの長時間を経過したり、高温高湿状態に保存された場合にも、液晶セルを損傷したり汚染することなく、光学部材を容易に液晶セルから剥離できる。すなわち、液晶セルへの光学部材の貼付けを誤った場合にも、光学部材を容易に液晶セルから剥離できる。光学部材を大型の液晶セルに貼り付けた場合にも再剥離性が良好であり、液晶セルに損傷等を与えることなく再利用できる。
【0032】
このように、低分子量のアクリル系ポリマー(B)を用いることで、液晶セルへの接着力が増大することを防止する効果がある理由に関して詳細は不明ではあるが、低分子量のアクリル系ポリマー(B)は、高分子量のアクリル系ポリマー(A)の架橋構造内に存在して低分子量であるために動くことができること、さらには高分子量のアクリル系ポリマー(A)よりも親水性が大きいことなどの理由で、液晶セルと粘着剤との界面に移行して接着力の増大を防止していると推定される。さらには低分子量のアクリル系ポリマー(B)の添加量は、高分子量のアクリル系ポリマー(A)100重量部に対して2重量部以下と非常に少なくて効果があることから、表面に汚染などの現象は全く認められていない。当然ながら、シランカップリング剤や架橋剤を含めた全体としての効果も現れている。
【0033】
また本発明の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、架橋剤で所定のゲル分率になるように設定可能であり、光学部材を液晶セルに貼付け後、各種の工程を経るなどの長時間を経過したり、高温高湿状態に保存されても、接着状態では、剥がれ、浮き、発泡などが発生せず耐久性を向上できる。
【0034】
また、高分子量のアクリル系ポリマー(A)は、炭素数5以上のアルキル基を有するアクリル酸エステルを主体とするものであり、偏光板などの光学部材の寸歩変化に起因する応力緩和性を向上でき、偏光板などに残留応力が残存して色ムラや白ヌケなどの発生を抑制できる。
【0035】
【発明の実施の形態】
本発明の光学部材用粘着剤組成物は、アクリル系ポリマーおよび架橋剤を含有するものであって、当該粘着剤組成物により形成された粘着剤層が、前記600%伸長時の緩和応力値および80℃クリープ試験におけるずれ量に係わる要件を満足できるものを特に制限なく使用できる。
【0036】
本発明の光学部材用粘着剤組成物としては、たとえば、前記高分子量のアクリル系ポリマー(A)100重量部に対し、シランカップリング剤0.01〜1重量部、および架橋剤を含有するものを用いることができる。
【0037】
高分子量のアクリル系ポリマー(A)は、モノマー単位として、炭素数5以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルを50重量%以上および不飽和カルボン酸を0.2〜2重量%含有する。なお、本発明において、(メタ)アクリル酸アルキルはアクリル酸アルキルおよび/またはメタクリル酸アルキルをいう。(メタ)は全て同様の意味である。
【0038】
上記(メタ)アクリル酸アルキルのアルキル基は、炭素数5以上のアルキル基を有するものであれば特に制限はないが、前記アルキル基は、ガラス転移点の低さや弾性率の点から炭素数16以下のものが好ましい。前記アルキル基としては、炭素数5〜16、さらには6〜10のものが好ましい。また、前記炭素数5以上のアルキル基は、直鎖または分岐鎖のいずれも使用できるが、ガラス転移点が低いことから分岐鎖のものが好ましい。
【0039】
炭素数5以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルとしては、たとえば、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレートなどが具体例としてあげられる。これらは1種を単独使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
アクリル系ポリマー(A)は、モノマー単位として、炭素数5以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルを50重量%以上含有する。当該(メタ)アクリル酸アルキルの含有量は好ましくは60〜90重量%である。当該(メタ)アクリル酸アルキルの含有量が50重量%未満では応力緩和性に乏しくなり好ましくない。
【0041】
不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などがあげられる。またこれらの無水物を用いることもできる。これらの中でも特にアクリル酸とメタクリル酸が好ましく用いられる。
【0042】
アクリル系ポリマー(A)は、モノマー単位として、不飽和カルボン酸を、0.2〜2重量%、好ましくは0.3〜1.5重量%含有する。不飽和カルボン酸の含有量が、2重量%を超えると液晶セルへの接着力が大きくなりすぎ、一方、0.2重量%未満では耐久性に悪影響があり好ましくない。
【0043】
アクリル系ポリマー(A)は、モノマー単位として、炭素数5以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルおよび不飽和カルボン酸を上記割合で含有していれば、他のモノマーを含有することができる。他のモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の水酸基を有するモノマー;グリシジル(メタ)アクリレート等エポキシ基を含有するモノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アセトニトリル、ビニルピロリドン、N−シクロヘキシルマレイミド、イタコンイミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等のN元素を有するモノマー等があげられる。さらには酢酸ビニル、スチレン等を用いることもできる。これらモノマーは1種または2種以上を組み合わせることができる。
【0044】
前記他のモノマーとしては、架橋剤と反応性を有する官能基を有するものが好ましい。特に水酸基を有するモノマーが好ましい。架橋剤と反応性を有する官能基を有するモノマーの含有量は、0.02〜1重量%が好ましい。さらには0.04〜0.4重量%であるのが好ましい。
【0045】
アクリル系ポリマー(A)のガラス転移温度は−50℃以下、より好ましくは−60℃以下である。ガラス転移温度は−50℃以下であるのが、応力緩和性の点で好ましい。本発明において、ガラス転移温度の測定は、DSC(示差走査熱量)分析装置により昇温速度7℃/minで測定した値である。
【0046】
また、アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量(GPCにより測定,以下同様)は100万〜250万である。好ましくは100万〜200万である。重量平均分子量が100万未満では耐久性に乏しくなる。また、低分子量のアクリル系ポリマー(B)との分子量に差を付けるため、アクリル系ポリマー(A)の10万以下の分子量成分は、全体の20重量%以下が好ましい。なお、GPCにより測定される重量平均分子量はポリスチレン換算にて求められる値である。GPCの測定条件は、GPC装置:東ソー社製HLC−8120GPC、カラム:オリゴマー,東ソー社製GMHHR−H+GMHHR−H+G2000HHR、ポリマー,東ソー社製G7000HXL+GMHXL+GMHXL、溶媒:テトラヒドロフラン、温度40℃、流速0.8ml/min、検出器:示差屈折計である。また、10万以下の分子量成分は、微分分子量分布曲線の面積比により求められる値である。
【0047】
このようなアクリル系ポリマー(A)の製造は、溶液重合、塊状重合、乳化重合などの公知のラジカル重合法を適宜選択できる。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系、過酸化物系の各種公知のものを使用できる。例えば、溶液重合では、アゾビスイソブチロニトリルなどの重合開始剤を、モノマー全量100重量部に対し0.01〜0.2重量部程度使用する。重合溶媒としては、たとえば、酢酸エチル、トルエン等が用いられる。反応は窒素等の不活性ガス気流下で、通常、50〜70℃程度で、8〜15時間程度行われる。
【0048】
シランカップリング剤としては、従来より知られているものを特に制限なく使用できる。たとえば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミンなどのアミノ基含有シランカップリング剤;3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤;3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート基含有シランカップリング剤、などがあげられる。
【0049】
シランカップリング剤の配合はアクリル系ポリマー(A)100重量部に対し0.01〜1重量部、好ましくは0.02〜0.6重量部である。シランカップリング剤の配合が1重量部を超えると液晶セルへの接着力が増大し、0.01重量部未満では耐久性が低下するため好ましくない。
【0050】
架橋剤としては、アクリル系ポリマー(A)のカルボン酸基、さらには他の官能基と反応して架橋構造を形成できる多官能化合物である。官能基として水酸基を導入した場合には、水酸基と架橋構造を形成する。架橋剤としては、たとえば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、これら等ジイソシアネート化合物の各種ポリオールへの付加物などのポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン化合物、金属塩、金属キレート化合物などがあげられる。これらのなかでも、ポリイソシアネート化合物が好ましく用いられる。特に、アクリル系ポリマー(A)の製造時に、2−ヒドロキシエチルアクリレートなどの水酸基含有モノマーを共重合して、アクリル系ポリマー(A)に水酸基を導入した場合には、架橋剤としてポリイソシアネート化合物を使用して、アクリル系ポリマー(A)の架橋構造を形成するのが好適である。
【0051】
架橋剤の配合は、特に制限されないが、架橋された粘着剤層のゲル分率が、35〜70重量%になるように配合するのが好ましい。さらには40〜60重量%になるように、架橋剤の配合量を調整するのが好ましい。ゲル分率が小さくなると耐久性に劣る傾向があり、大きすぎると応力緩和性に劣る傾向がある。このようにゲル分率を調整するには、使用する材料によっても異なるが、通常、架橋剤の配合量をアクリル系ポリマー(A)100重量部に対しは、通常、0.01〜5重量部、さらには0.02〜2重量部とするのが好ましい。
【0052】
また、前記光学部材用粘着剤組成物には、高分子量のアクリル系ポリマー(A)100重量部に対し、低分子量のアクリル系ポリマー(B)を配合したものを用いることができる。低分子量のアクリル系ポリマー(B)を配合により再剥離性を向上することができる。
【0053】
アクリル系ポリマー(B)は、モノマー単位として、炭素数1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルを70重量%以上および不飽和カルボン酸を1〜7重量%含有してなり、かつ、カルボン酸当量が、アクリル系ポリマー(A)のカルボン酸当量より大きいものである。
【0054】
上記(メタ)アクリル酸アルキルのアルキル基の炭素数は、親水性の面と柔軟性の点から炭素数1〜4のものが好ましい。炭素数1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルとしては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどが具体例としてあげられる。これらは1種を単独使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。当該(メタ)アクリル酸アルキルの含有量は好ましくは80〜96重量%である。当該(メタ)アクリル酸アルキルの含有量が70重量%未満では親水性に乏しくなり好ましくない。
【0055】
不飽和カルボン酸としては、アクリル系ポリマー(A)で例示したものと同様のものを例示できる。アクリル系ポリマー(B)は、モノマー単位として、不飽和カルボン酸を1〜7重量%、好ましくは2〜6重量%含有する。不飽和カルボン酸の含有量が、7重量%を超えると応力緩和性を低下させるために好ましくない。一方、1重量%未満では液晶セルへの接着力が大きくなり好ましくない。
【0056】
また、アクリル系ポリマー(B)は、カルボン酸当量が、アクリル系ポリマー(A)のカルボン酸当量より大きくなるように、不飽和カルボン酸の含有量を調整する。アクリル系ポリマー(B)のカルボン酸当量が、アクリル系ポリマー(A)のカルボン酸当量より小さいと液晶セルへの接着力が大きくなり好ましくない。なお、カルボン酸当量は、ポリマー1g当たりのカルボン酸基の量であり、たとえば、カルボン酸がアクリル酸由来の場合には、ポリマー1g中のアクリル酸重量をアクリル酸の分子量で割ることにより算出される値(当量/g)である。
【0057】
アクリル系ポリマー(B)は、モノマー単位として、上記(メタ)アクリル酸アルキルおよび不飽和カルボン酸を上記割合で含有していれば、他のモノマーを含有することができる。他のモノマーとしては、アクリル系ポリマー(A)で例示したものと同様のものを例示できる。
【0058】
アクリル系ポリマー(B)の重量平均分子量は1万〜7万、好ましくは2万〜6万、さらに好ましくは3万〜5万である。重量平均分子量が1万未満では耐久性が低下する。一方、アクリル系ポリマー(B)の重量平均分子量が7万を超えると液晶セルへの接着力が増大するため好ましくない。なお、アクリル系ポリマー(B)のガラス転移温度は特に制限されない。
【0059】
アクリル系ポリマー(B)の製造は、アクリル系ポリマー(B)と同様の方法を採用できる。重量平均分子量の調整は、大量の重合開始剤を使用したり、メルカプタンなどの連鎖移動剤を使用して行うことができる。
【0060】
アクリル系ポリマー(B)の配合は、アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して2重量部以下、好ましくは0.03〜2重量部、さらに好ましくは0.05〜1重量部である。アクリル系ポリマー(B)の配合が、2重量部を超えると耐久性に悪影響がある。一方、再剥離性を向上させ、液晶セルへの接着力の増大を抑えるには0.1重量部以上とするのが好ましくない。
【0061】
本発明の光学部材用粘着剤組成物は、必要に応じて、紫外線吸収剤、老化防止剤、軟化剤、染料、顔料、充填剤などを配合することができる。
【0062】
本発明の粘着型光学部材は、光学部材の片面または両面に、前記光学部材用粘着剤組成物により、粘着剤層を形成することにより得られる。
【0063】
光学部材への粘着剤層の形成方法としては、特に制限されず、粘着剤組成物を、剥離処理した支持体(剥離シート)に塗布、乾燥、架橋処理して粘着剤層を形成し、これを光学部材に転写する方法、光学部材に直接粘着剤組成物を塗布、乾燥、架橋処理して粘着剤層を形成する方法等があげられる。塗布の方法としては、リバースコーターやグラビアコーターなどのロールコーター、カーテンコーターやリップコーター、ダイコーターなど任意の塗布方法を採用できる。通常、乾燥後の粘着剤層の厚さは2〜500μm、好ましくは5〜100μmである。
【0064】
このような表面に粘着層が露出する場合は実用に供されるまで剥離処理したシートで保護される。なお、剥離シートの構成材料としては、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体等があげられる。剥離シートの表面には、粘着剤層からの剥離性を高めるため、必要に応じてシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理な剥離処理が施されていても良い。
【0065】
光学部材としては液晶表示装置等の形成に用いられるものが使用され、その種類は特に制限されない。たとえば、光学部材としては偏光板があげられる。偏光板は偏光子の片面または両面には透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。
【0066】
偏光子は、特に制限されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、たとえば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、5〜80μm程度である。
【0067】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、たとえば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいてもよいヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸してもよいし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
【0068】
前記偏光子の片面または両面に設けられる透明保護フィルムを形成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または前記ポリマーのブレンド物なども前記透明保護フィルムを形成するポリマーの例としてあげられる。透明保護フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型、紫外線硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0069】
また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルム、たとえば、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物があげられる。具体例としてはイソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物のフィルムがあげられる。フィルムは樹脂組成物の混合押出品などからなるフィルムを用いることができる。
【0070】
保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1〜500μm程度である。特に1〜300μmが好ましく、5〜200μmがより好ましい。
【0071】
また、保護フィルムは、できるだけ色付きがないことが好ましい。したがって、Rth=[(nx+ny)/2−nz]・d(ただし、nx、nyはフィルム平面内の主屈折率、nzはフィルム厚方向の屈折率、dはフィルム厚みである)で表されるフィルム厚み方向の位相差値が−90nm〜+75nmである保護フィルムが好ましく用いられる。かかる厚み方向の位相差値(Rth)が−90nm〜+75nmのものを使用することにより、保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)をほぼ解消することができる。厚み方向位相差値(Rth)は、さらに好ましくは−80nm〜+60nm、特に−70nm〜+45nmが好ましい。
【0072】
保護フィルムとしては、偏光特性や耐久性などの点より、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマーが好ましい。特にトリアセチルセルロースフィルムが好適である。なお、偏光子の両側に保護フィルムを設ける場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料等からなる保護フィルムを用いてもよい。前記偏光子と保護フィルムとは通常、水系粘着剤等を介して密着している。水系接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリウレタン、水系ポリエステル等を例示できる。
【0073】
前記透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであってもよい。
【0074】
ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を透明保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層との密着防止を目的に施される。
【0075】
またアンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて透明保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒子径が0.5〜50μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜50重量部程度であり、5〜25重量部が好ましい。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角などを拡大するための拡散層(視角拡大機能など)を兼ねるものであってもよい。
【0076】
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0077】
また本発明の光学部材としては、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2 や1/4等の波長板を含む)、視角補償フィルム、輝度向上フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層となるものがあげられる。これらは単独で本発明の光学部材として用いることができる他、前記偏光板に、実用に際して積層して、1層または2層以上用いることができる。
【0078】
特に、偏光板に更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板、偏光板に更に視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板、あるいは偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。
【0079】
反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。反射型偏光板の形成は、必要に応じ透明保護層等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行うことができる。
【0080】
反射型偏光板の具体例としては、必要に応じマット処理した透明保護フィルムの片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したものなどがあげられる。また前記透明保護フィルムに微粒子を含有させて表面微細凹凸構造とし、その上に微細凹凸構造の反射層を有するものなどもあげられる。前記した微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させて指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制しうる利点などを有する。また微粒子含有の透明保護フィルムは、入射光及びその反射光がそれを透過する際に拡散されて明暗ムラをより抑制しうる利点なども有している。透明保護フィルムの表面微細凹凸構造を反映させた微細凹凸構造の反射層の形成は、例えば真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式などの適宜な方式で金属を透明保護層の表面に直接付設する方法などにより行うことができる。
【0081】
反射板は前記の偏光板の透明保護フィルムに直接付与する方式に代えて、その透明フィルムに準じた適宜なフィルムに反射層を設けてなる反射シートなどとして用いることもできる。なお反射層は、通常、金属からなるので、その反射面が透明保護フィルムや偏光板等で被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設の回避の点などより好ましい。
【0082】
なお、半透過型偏光板は、上記において反射層で光を反射し、かつ透過するハーフミラー等の半透過型の反射層とすることにより得ることができる。半透過型偏光板は、通常液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置などを比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置などを形成できる。すなわち、半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、比較的暗い雰囲気下においても内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置などの形成に有用である。
【0083】
偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板について説明する。直線偏光を楕円偏光または円偏光に変えたり、楕円偏光または円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に、位相差板などが用いられる。特に、直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変える位相差板としては、いわゆる1/4波長板(λ/4板とも言う)が用いられる。1/2波長板(λ/2板とも言う)は、通常、直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。
【0084】
楕円偏光板はスーパーツイストネマチック(STN)型液晶表示装置の液晶層の複屈折により生じた着色(青又は黄)を補償(防止)して、前記着色のない白黒表示する場合などに有効に用いられる。更に、三次元の屈折率を制御したものは、液晶表示装置の画面を斜め方向から見た際に生じる着色も補償(防止)することができて好ましい。円偏光板は、例えば画像がカラー表示になる反射型液晶表示装置の画像の色調を整える場合などに有効に用いられ、また、反射防止の機能も有する。
【0085】
位相差板としては、高分子素材を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。位相差板の厚さも特に制限されないが、20〜150μm程度が一般的である。
【0086】
高分子素材としては、たとえば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルビニルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、セルロース系重合体、ノルボルネン系樹脂、またはこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物などがあげられる。これら高分子素材は延伸等により配向物(延伸フィルム)となる。
【0087】
液晶性ポリマーとしては、たとえば、液晶配向性を付与する共役性の直線状原子団(メソゲン)がポリマーの主鎖や側鎖に導入された主鎖型や側鎖型の各種のものなどがあげられる。主鎖型の液晶性ポリマーの具体例としては、屈曲性を付与するスペーサ部でメソゲン基を結合した構造の、例えばネマチック配向性のポリエステル系液晶性ポリマー、ディスコティックポリマーやコレステリックポリマーなどがあげられる。側鎖型の液晶性ポリマーの具体例としては、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート又はポリマロネートを主鎖骨格とし、側鎖として共役性の原子団からなるスペーサ部を介してネマチック配向付与性のパラ置換環状化合物単位からなるメソゲン部を有するものなどがあげられる。これら液晶性ポリマーは、たとえば、ガラス板上に形成したポリイミドやポリビニルアルコール等の薄膜の表面をラビング処理したもの、酸化珪素を斜方蒸着したものなどの配向処理面上に液晶性ポリマーの溶液を展開して熱処理することにより行われる。
【0088】
位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであってよく、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものなどであってもよい。
【0089】
また上記の楕円偏光板や反射型楕円偏光板は、偏光板又は反射型偏光板と位相差板を適宜な組合せで積層したものである。かかる楕円偏光板等は、(反射型)偏光板と位相差板の組合せとなるようにそれらを液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層することによっても形成しうるが、前記の如く予め楕円偏光板等の光学部材としたものは、品質の安定性や積層作業性等に優れて液晶表示装置などの製造効率を向上させうる利点がある。
【0090】
視角補償フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明にみえるように視野角を広げるためのフィルムである。このような視角補償位相差板としては、例えば位相差板、液晶ポリマー等の配向フィルムや透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を支持したものなどからなる。通常の位相差板は、その面方向に一軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視角補償フィルムとして用いられる位相差板には、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムとか、面方向に一軸に延伸され厚さ方向にも延伸された厚さ方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルムなどが用いられる。傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理又は/及び収縮処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたものなどが挙げられる。位相差板の素材原料ポリマーは、先の位相差板で説明したポリマーと同様のものが用いられ、液晶セルによる位相差に基づく視認角の変化による着色等の防止や良視認の視野角の拡大などを目的とした適宜なものを用いうる。
【0091】
また良視認の広い視野角を達成する点などより、液晶ポリマーの配向層、特にディスコティック液晶ポリマーの傾斜配向層からなる光学的異方性層をトリアセチルセルロースフィルムにて支持した光学補償位相差板が好ましく用いうる。
【0092】
偏光板と輝度向上フィルムを貼り合わせた偏光板は、通常液晶セルの裏側サイドに設けられて使用される。輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライトや裏側からの反射などにより自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光または所定方向の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すもので、輝度向上フィルムを偏光板と積層した偏光板は、バックライト等の光源からの光を入射させて所定偏光状態の透過光を得ると共に、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射される。この輝度向上フィルム面で反射した光を更にその後ろ側に設けられた反射層等を介し反転させて輝度向上フィルムに再入射させ、その一部又は全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上フィルムを透過する光の増量を図ると共に、偏光子に吸収させにくい偏光を供給して液晶表示画像表示等に利用しうる光量の増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。すなわち、輝度向上フィルムを使用せずに、バックライトなどで液晶セルの裏側から偏光子を通して光を入射した場合には、偏光子の偏光軸に一致していない偏光方向を有する光は、ほとんど偏光子に吸収されてしまい、偏光子を透過してこない。すなわち、用いた偏光子の特性によっても異なるが、およそ50%の光が偏光子に吸収されてしまい、その分、液晶画像表示等に利用しうる光量が減少し、画像が暗くなる。輝度向上フィルムは、偏光子に吸収されるような偏光方向を有する光を偏光子に入射させずに輝度向上フィルムで一旦反射させ、更にその後ろ側に設けられた反射層等を介して反転させて輝度向上フィルムに再入射させることを繰り返し、この両者間で反射、反転している光の偏光方向が偏光子を通過し得るような偏光方向になった偏光のみを、輝度向上フィルムは透過させて偏光子に供給するので、バックライトなどの光を効率的に液晶表示装置の画像の表示に使用でき、画面を明るくすることができる。
【0093】
輝度向上フィルムと上記反射層等の間に拡散板を設けることもできる。輝度向上フィルムによって反射した偏光状態の光は上記反射層等に向かうが、設置された拡散板は通過する光を均一に拡散すると同時に偏光状態を解消し、非偏光状態となる。すなわち、拡散板は偏光を元の自然光状態にもどす。この非偏光状態、すなわち自然光状態の光が反射層等に向かい、反射層等を介して反射し、再び拡散板を通過して輝度向上フィルムに再入射することを繰り返す。このように輝度向上フィルムと上記反射層等の間に、偏光を元の自然光状態にもどす拡散板を設けることにより表示画面の明るさを維持しつつ、同時に表示画面の明るさのむらを少なくし、均一で明るい画面を提供することができる。かかる拡散板を設けることにより、初回の入射光は反射の繰り返し回数が程よく増加し、拡散板の拡散機能と相俟って均一の明るい表示画面を提供することができたものと考えられる。
【0094】
前記の輝度向上フィルムとしては、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものの如き、左回り又は右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどの適宜なものを用いうる。
【0095】
従って、前記した所定偏光軸の直線偏光を透過させるタイプの輝度向上フィルムでは、その透過光をそのまま偏光板に偏光軸を揃えて入射させることにより、偏光板による吸収ロスを抑制しつつ効率よく透過させることができる。一方、コレステリック液晶層の如く円偏光を投下するタイプの輝度向上フィルムでは、そのまま偏光子に入射させることもできるが、吸収ロスを抑制する点よりその円偏光を位相差板を介し直線偏光化して偏光板に入射させることが好ましい。なお、その位相差板として1/4波長板を用いることにより、円偏光を直線偏光に変換することができる。
【0096】
可視光域等の広い波長範囲で1/4波長板として機能する位相差板は、例えば波長550nmの淡色光に対して1/4波長板として機能する位相差層と他の位相差特性を示す位相差層、例えば1/2波長板として機能する位相差層とを重畳する方式などにより得ることができる。従って、偏光板と輝度向上フィルムの間に配置する位相差板は、1層又は2層以上の位相差層からなるものであってよい。
【0097】
なお、コレステリック液晶層についても、反射波長が相違するものの組み合わせにして2層又は3層以上重畳した配置構造とすることにより、可視光領域等の広い波長範囲で円偏光を反射するものを得ることができ、それに基づいて広い波長範囲の透過円偏光を得ることができる。
【0098】
また、偏光板は、上記の偏光分離型偏光板の如く、偏光板と2層又は3層以上の光学層とを積層したものからなっていてもよい。従って、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を組み合わせた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板などであってもよい。
【0099】
偏光板に前記光学層を積層した光学部材は、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学部材としたのものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板と他の光学層の接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0100】
なお、本発明の粘着型光学部材の光学部材や粘着剤層などの各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やべンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
【0101】
本発明の粘着型光学部材は液晶表示装置等の各種画像表示装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと粘着型光学部材、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による光学部材を用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0102】
液晶セルの片側又は両側に粘着型光学部材を配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による光学部材は液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に光学部材を設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【0103】
次いで有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置)について説明する。一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の組み合わせをもった構成が知られている。
【0104】
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物資を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
【0105】
有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
【0106】
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
【0107】
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL表示装置において、透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差板を設けることができる。
【0108】
位相差板および偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板を1/4 波長板で構成し、かつ偏光板と位相差板との偏光方向のなす角をπ/4 に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0109】
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相差板により一般に楕円偏光となるが、とくに位相差板が1/4 波長板でしかも偏光板と位相差板との偏光方向のなす角がπ/4 のときには円偏光となる。
【0110】
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相差板に再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0111】
【実施例】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。粘着剤層のゲル分率の測定は以下の通りである。
【0112】
<ゲル分率測定>
架橋処理した粘着剤層を約0.1gをとり、これを秤量して重量(W1 )を測定した。次いで、これを微孔性テトラフルオロエチレン膜に包んで(膜重量W2 )、約50mlの酢酸エチルに2日間浸漬したのち、可溶分を抽出した。これを乾燥し、全体の重量(W3 )を測定した。これらの測定値から、
ゲル分率(重量%)={(W3 −W2 )/W1 }×100
の式にしたがって、粘着剤層のゲル分率(重量%)を求めた。
【0113】
実施例1
(高分子量のアクリル系ポリマー(A)の調製)
窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコに、2−エチルヘキシルアクリレート90部、イソノニルアクリレート10部、アクリル酸0.5部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.1部、および2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.1部と酢酸エチル200部を投入し、1時間窒素置換した後、窒素気流下で撹拌しながら55℃で12時間重合反応を行い、重量平均分子量138万、分子量10万以下の重量分率が17%のアクリル系ポリマー(A1)の溶液を得た。アクリル系ポリマー(A1)のカルボン酸当量は0.69×10−4当量/g、ガラス転移温度は−63℃であった。
【0114】
(光学部材用粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマー(A1)の溶液(固形分)100部に対して、架橋剤としてトリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネ−ト付加物からなるポリイソシアネート系架橋剤0.7部およびシランカップリング剤として3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.05部を均一に混合して光学部材用粘着剤組成物を調製した。
【0115】
(粘着型光学部材の作成)
上記粘着剤組成物を、シリコーン剥離処理した厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに、粘着剤層の乾燥厚さが20μmになるように塗布し、110℃で5分間乾燥・架橋を行い粘着剤層を形成した。当該粘着剤層を、偏光板に転写し、50℃で24時間エージング処理して、粘着型光学部材を得た。粘着剤層のゲル分率は53重量%であった。
【0116】
実施例2
(低分子量のアクリル系ポリマー(B)の調製)
窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート90部、エチルアクリレート10部、アクリル酸4部、ラウリルメルカプタン0.6部、および2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を投入し、1時間窒素置換した後、窒素気流下で撹拌しながら55℃で12時間重合反応を行い、重量平均分子量4.7万のアクリル系ポリマー(B1)の溶液を得た。アクリル系ポリマー(B1)のカルボン酸当量は、5.3×10−4当量/gであった。
【0117】
(光学部材用粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマー(A1)の溶液(固形分)100部に対して、アクリル系ポリマー(B1)の溶液(固形分)0.5部、架橋剤としてトリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネ−ト付加物からなるポリイソシアネート系架橋剤0.7部およびシランカップリング剤として3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.05部を均一に混合して光学部材用粘着剤組成物を調製した。
【0118】
(粘着型光学部材の作成)
前記粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤層を形成し、さらに粘着型光学部材を得た。粘着剤層のゲル分率は47%であった。
【0119】
実施例3
実施例2において、アクリル系ポリマー(B1)の溶液(固形分)の使用量を0.2部に変えたこと以外は、実施例2と同様にして、光学部材用粘着剤組成物を調製した。また、前記粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤層を形成し、さらに粘着型光学部材を得た。粘着剤層のゲル分率は42%であった。
【0120】
実施例4
実施例2において、架橋剤の使用量を1.2部に変えたこと以外は、実施例2と同様にして、光学部材用粘着剤組成物を調製した。また、前記粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤層を形成し、さらに粘着型光学部材を得た。粘着剤層のゲル分率は62%であった。
【0121】
実施例5
(高分子量のアクリル系ポリマー(A)の調製)
窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコに、イソオクチルアクリレート90部、エチルアクリレート10部、アクリル酸1部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.1部、および2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.1部と酢酸エチル200部を投入し、1時間窒素置換した後、窒素気流下で撹拌しながら55℃で12時間重合反応を行い、重量平均分子量138万、分子量10万以下の重量分率が17%のアクリル系ポリマー(A2)の溶液を得た。アクリル系ポリマー(A2)のカルボン酸当量は1.37×10−4当量/g、ガラス転移温度は−70℃であった。
【0122】
(光学部材用粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマー(A2)の溶液(固形分)100部に対して、架橋剤としてトリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネ−ト付加物からなるポリイソシアネート系架橋剤0.7部およびシランカップリング剤として3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン0.05部を均一に混合して光学部材用粘着剤組成物を調製した。
【0123】
(粘着型光学部材の作成)
前記粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤層を形成し、さらに粘着型光学部材を得た。粘着剤層のゲル分率は57%であった。
【0124】
実施例6
(低分子量のアクリル系ポリマー(B)の調製)
窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート90部、2−エチルヘキシルアクリレート10部、アクリル酸4部、ラウリルメルカプタン0.8部、および2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を投入し、1時間窒素置換した後、窒素気流下で撹拌しながら55℃で12時間重合反応を行い、重量平均分子量3.1万のアクリル系ポリマー(B2)の溶液を得た。アクリル系ポリマー(B2)のカルボン酸当量は、5.34×10−4当量/gであった。
【0125】
(光学部材用粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマー(A2)の溶液(固形分)100部に対して、アクリル系ポリマー(B2)の溶液(固形分)0.2部、架橋剤としてトリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネ−ト付加物からなるポリイソシアネート系架橋剤0.7部およびシランカップリング剤として3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン0.05部を均一に混合して光学部材用粘着剤組成物を調製した。
【0126】
(粘着型光学部材の作成)
前記粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤層を形成し、さらに粘着型光学部材を得た。粘着剤層のゲル分率は54%であった。
【0127】
実施例7
実施例6において、架橋剤の使用量を1.2部に変えたこと以外は、実施例6と同様にして、光学部材用粘着剤組成物を調製した。また、前記粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤層を形成し、さらに粘着型光学部材を得た。粘着剤層のゲル分率は65%であった。
【0128】
実施例8
実施例6において、架橋剤をジフェニルメタンジイソシアネートに変えたこと以外は、実施例6と同様にして、光学部材用粘着剤組成物を調製した。また、前記粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤層を形成し、さらに粘着型光学部材を得た。粘着剤層のゲル分率は67%であった。
【0129】
比較例1
(高分子量のアクリル系ポリマーの調製)
窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート90部、アクリル酸3.5部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.1部、および2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.1部と酢酸エチル200部を投入し、1時間窒素置換した後、窒素気流下で撹拌しながら55℃で12時間重合反応を行い、重量平均分子量200万、分子量10万以下の重量分率が7%のアクリル系ポリマー(a1)の溶液を得た。当該アクリル系ポリマー(a1)のカルボン酸当量は5.19×10−4当量/g、ガラス転移温度は−45℃であった。
【0130】
(光学部材用粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマー(a1)の溶液(固形分)100部に対して、実施例1で得られたアクリル系ポリマー(B1)の溶液(固形分)0.5部、架橋剤としてトリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネ−ト付加物からなるポリイソシアネート系架橋剤0.5部およびシランカップリング剤として3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.05部を均一に混合して、光学部材用粘着剤組成物を調製した。
【0131】
(粘着型光学部材の作成)
前記粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤層を形成し、さらに粘着型光学部材を得た。粘着剤層のゲル分率は70%であった。
【0132】
比較例2
(高分子量のアクリル系ポリマーの調製)
窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート100部、アクリル酸6部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.1部、および2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.1部と酢酸エチル200部を投入し、1時間窒素置換した後、窒素気流下で撹拌しながら55℃で12時間重合反応を行い、重量平均分子量200万、分子量10万以下の重量分率が7%のアクリル系ポリマー(a2)の溶液を得た。当該アクリル系ポリマー(a2)のカルボン酸当量は0.69×10−4当量/g、ガラス転移温度は−42℃であった。
【0133】
(低分子量のアクリル系ポリマー(b)の調製)
窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート90部、エチルアクリレート10部、アクリル酸0.5部、ラウリルメルカプタン0.6部、および2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を投入し、1時間窒素置換した後、窒素気流下で撹拌しながら55℃で12時間重合反応を行い、重量平均分子量4.6万のアクリル系ポリマー(b1)の溶液を得た。アクリル系ポリマー(b1)のカルボン酸当量は、0.69×10−4当量/gであった。
【0134】
(光学部材用粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマー(a2)の溶液(固形分)100部に対して、アクリル系ポリマー(b1)の溶液(固形分)0.5部、架橋剤としてトリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネ−ト付加物からなるポリイソシアネート系架橋剤0.7部およびシランカップリング剤として3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.05部を均一に混合して光学部材用粘着剤組成物を調製した。
【0135】
(粘着型光学部材の作成)
前記粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤層を形成し、さらに粘着型光学部材を得た。粘着剤層のゲル分率は69%であった。
【0136】
比較例3
(高分子量のアクリル系ポリマーの調製)
窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート90部、メチルメタクリレート10部、アクリル酸0.5部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.1部、および2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.1部と酢酸エチル200部を投入し、1時間窒素置換した後、窒素気流下で撹拌しながら55℃で12時間重合反応を行い、重量平均分子量170万、分子量10万以下の重量分率が12%のアクリル系ポリマー(a3)の溶液を得た。当該アクリル系ポリマー(a3)のカルボン酸当量は0.69×10−4当量/g、ガラス転移温度は−40℃であった。
【0137】
(光学部材用粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマー(a3)の溶液(固形分)100部に対して、実施例1で得られたアクリル系ポリマー(B1)の溶液(固形分)0.5部、架橋剤としてトリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネ−ト付加物からなるポリイソシアネート系架橋剤0.5部およびシランカップリング剤として3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.05部を均一に混合して光学部材用粘着剤組成物を調製した。
【0138】
(粘着型光学部材の作成)
前記粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤層を形成し、さらに粘着型光学部材を得た。粘着剤層のゲル分率は49%であった。
【0139】
比較例4
(低分子量のアクリル系ポリマーの調製)
窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート90部、2−エチルヘキシルアクリレート10部、アクリル酸4部、ラウリルメルカプタン0.1部、および2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を投入し、1時間窒素置換した後、窒素気流下で撹拌しながら55℃で12時間重合反応を行い、重量平均分子量7.2万のアクリル系ポリマー(b2)の溶液を得た。アクリル系ポリマー(b2)のカルボン酸当量は、5.34×10−4当量/gであった。
【0140】
(光学部材用粘着剤組成物の調製)
実施例1で得られたアクリル系ポリマー(A1)の溶液(固形分)100部に対して、アクリル系ポリマー(b2)の溶液(固形分)0.5部、架橋剤としてトリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネ−ト付加物からなるポリイソシアネート系架橋剤0.7部およびシランカップリング剤として3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.05部を均一に混合して光学部材用粘着剤組成物を調製した。
【0141】
(粘着型光学部材の作成)
前記粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤層を形成し、さらに粘着型光学部材を得た。粘着剤層のゲル分率は54%であった。
【0142】
比較例5
実施例1において、架橋剤の使用量を2.5部に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、光学部材用粘着剤組成物を調製した。また、前記粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤層を形成し、さらに粘着型光学部材を得た。粘着剤層のゲル分率は74%であった。
【0143】
実施例および比較例で得られた粘着型光学部材(偏光板)について、下記評価を行った。結果を表1に示す。
【0144】
<緩和応力値の測定>
粘着剤組成物をセパレータ上に乾燥後の厚みが20μmとなるよう塗布した。乾燥は実施例と同じ条件で行なった。形成された粘着剤層のみを、30mm×30mmの大きさに切り出し、断面積0.6 mm2 (20μm×30mm)となるように丸めて円柱状にした。これをオートグラフAGS−50型(島津製作所製)を用い、チャック間の距離が10mmになるように、上下のチャックにサンプルを挟んだ。
20%伸張時の緩和応力値:300mm/minの引張速度で、20%伸張時点で装置を止め、1分間保持した後の応力を読み取り、それを断面積で除して、緩和応力値を求めた。
6 00%伸張時の緩和応力値:50mm/minの引張速度で、6 00%伸張時点で装置を止め、1分間保持した後の応力を読み取り、それ断面積で除して、緩和応力値を求めた。
【0145】
<80℃クリープ試験>
粘着剤層を厚さ38μmポリエチレンテレフタレートフィルムに貼り合わせた粘着シートを幅10mm、長さ20mmの200mm2 の接着面積でベークライト板(二村化学工業社製のFL−1021)に貼り付け、80℃で200gfの荷重をかけて、1時間放置した後の、ずれ量(mm)を測定した。
【0146】
<偏光抜け評価>
粘着剤層を設けた12インチサイズの偏光板2枚を偏光軸が直行になるように無アルカリガラスを挟み込むように貼り合わせたサンプルを作製した。このサンプルを、50℃、0.5MPaのオートクレーブにて30分間処理し、80℃で24時間保存した。次いで、サンプルを暗室にて、2600cd/m2 のバックライト上に置き、色ムラの発生状況を目視観察し、以下の基準で評価した。
○:色ムラがない。
×:色ムラがある。
【0147】
<接着力>
幅25mmに裁断した粘着型光学部材を、コーニング社製の無アルカリガラス板に2Kgのロール1往復で貼付け、50℃、0.5MPaのオートクレーブにて30分間処理した。次いで、60℃の条件下に17時間放置後、剥離角度90°、剥離速度300mm/分で剥離接着力(N/25mm)を測定した。リワーク性においては接着力が小さいことが望まれる。
【0148】
<耐久性>
12インチサイズに裁断した粘着型光学部材を、厚さ0.7mmのコーニング社製の無アルカリガラスに貼付け、50℃、0.5MPaのオートクレーブにて30分間処理した後、60℃、90%RHの雰囲気に500時間投入した。その後、粘着型光学部材を状態を目視観察し、以下の基準で評価した。
○:光学部材の剥がれや浮きがない。
×:光学部材の剥がれや浮きがある。
【0149】
【表1】
以上のように、本発明の粘着型光学部材は、また、長期の過酷試験に対しても耐久性を有し、光学部材(偏光板)の寸歩変化に起因する応力に対する緩和性に優れており液晶表示状態への悪影響(色ムラ)もない。また再剥離性がよく、糊残りや液晶セルを破壊することなく光学部材を再剥離して液晶セルを再利用することが容易である。それに対して、比較例は耐久性を満足させようとすると、接着力が大きくなったり、偏光抜けを発生したりして、作業性や視覚性に悪影響を与えてる。
Claims (7)
- アクリル系ポリマーおよび架橋剤を含有する光学部材用粘着剤組成物であって、
前記粘着剤組成物を架橋することにより形成された粘着剤層は、23℃において、600%に伸張させて1分間保持した後の緩和応力値が9.5×104 Pa以下であり、かつ、
接着面積200mm2 でベークライト板に貼り合わせ、80℃において、せん断荷重200gをかけるクリープ試験の1時間後のずれ量が0.15mm以上であることを特徴とする光学部材用粘着剤組成物。 - 前記粘着剤組成物は、モノマー単位として、炭素数5以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルを50重量%以上および不飽和カルボン酸を0.2〜2重量%含有してなり、ガラス転移温度が−50℃以下、重量平均分子量100万〜250万のアクリル系ポリマー(A)100重量部に対し、シランカップリング剤0.01〜1重量部、および架橋剤を含有してなり、かつ、
前記粘着剤層は、ゲル分率が35〜70重量%であることを特徴とする請求項1記載の光学部材用粘着剤組成物。 - アクリル系ポリマー(A)が、モノマー単位として、水酸基を有するモノマーを含有することを特徴とする請求項2記載の光学部材用粘着剤組成物。
- モノマー単位として、炭素数1〜4のアルキル基(メタ)アクリル酸アルキルを70重量%以上および不飽和カルボン酸を1〜7重量%含有してなり、かつ、カルボン酸当量が、アクリル系ポリマー(A)のカルボン酸当量より大きい、重量平均分子量1万〜6万のアクリル系ポリマー(B)を、アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、2重量部以下含有してなることを特徴とする請求項2または3記載の光学部材用粘着剤組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の光学部材用粘着剤組成物を、架橋することにより形成された光学部材用粘着剤層。
- 光学部材の片面または両面に、請求項5記載の粘着剤層が形成されていることを特徴とする粘着型光学部材。
- 請求項6記載の粘着型光学部材を少なくとも1つ用いた画像表示装置。
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