JP2004322602A - ガスバリヤ性複合フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】無機層状化合物の増量により、ガスバリヤ性の向上を図った塗工剤を用いても、ベースフィルムとガスバリヤ層との接着性が良好であり、更に複合ラミネートフィルム及び包装袋とした場合、高いラミネート強度及びヒートシール強度を維持することが可能であるガスバリヤ性複合フィルムを提供する。
【解決手段】ベースフィルム層、接着層及びガスバリヤ層が順次積層されてなるガスバリヤ性複合フィルムであって、該接着層は、カルボジイミド基当量が200〜10000、重量平均分子量が5000〜200000であるカルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂及びイソシアネート系硬化剤を用いてなるものであり、該ガスバリヤ層は、ポリビニルアルコール系共重合体及びエチレン−ビニルアルコール系共重合体からなる群より選択される少なくとも1種のガスバリヤ性樹脂と無機層状化合物とを用いてなるものであることを特徴とするガスバリヤ性複合フィルム。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に食品や医療品の包装用途に利用される、ベースフィルム層、接着層及びガスバリヤ層が積層されてなるガスバリヤ性複合フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
食品、医薬品等の包装用途に使用される包装体では、酸化や吸湿による内容物の変質・劣化の防止を目的として、それらの原因となる酸素や水蒸気などのガスを遮断するために、種々のガスバリヤ層を設ける方法が考えられている。とりわけ、高いガスバリヤ性を有する材料として利用されてきたのは、印刷基材フィルム等に蒸着方式により積層される金属(種々の特性の改良を目的とした特許が多く、例えば、特許文献1参照。)や金属酸化物(例えば、特許文献2参照。)であるが、金属を蒸着したフィルムは、透明性が要求される分野で利用できず、また、金属酸化物を蒸着したフィルムは、僅かな折れ曲がりや伸びで、すぐに蒸着層のクラックやはがれが生じ、取扱いが極めて困難であるという問題を有している。
【0003】
そこで、最近になって、透明で可撓性を有するガスバリヤ性樹脂と、層状に堆積すれば非常に高いガスバリヤ性を発揮する無機層状化合物とを含有させた塗工剤を利用して、塗工方式によりガスバリヤ層を形成する方法が開発されている。
【0004】
例えば、ポリビニルアルコールやエチレン−ビニルアルコール等の高結晶性樹脂と、モンモリロナイト等の無機層状化合物とを含むガスバリヤ性塗工剤(例えば、特許文献3参照。)は、安価で簡易に塗工・積層できるという点から注目されている。そして、このような塗工剤から得られるガスバリヤ層は、更に無機層状化合物の増量により、ガスバリヤ性の向上を図ることができるという特徴を有する。
【0005】
ところで、食品包装用途で利用される包装袋は、上記ガスバリヤ性の他に、印刷による内容物表示や装飾の機能が求められ、更に食品衛生性から、印刷層が食品や人の指などに直接触れる事がないよう、印刷層を覆うシーラント層が積層された複合ラミネートフィルムが利用される場合が多い。現在、このような複合ラミネートフィルムは、ベースフィルムに、まずガスバリヤ層、次いで印刷層、最後にシーラント層の順に積層されているが、ガスバリヤ層として上記ガスバリヤ性塗工剤を適用する場合、ガスバリヤ層内の無機層状化合物の含有量を多くすると、ベースフィルムに対するガスバリヤ層の接着性が低下するようになる。
【0006】
そして、それが原因で、複合ラミネートフィルムにおいては主にベースフィルム層とガスバリヤ層との間が剥離したり、また、シーラント層を溶封シールして得られる包装袋においてはシール部が剥離して破袋する等の問題が発生する。なお、通常、このように複合ラミネートフィルムの各層間の剥離が起こる強度をラミネート強度、溶封シール部の剥離が起こる強度をヒートシール強度という。
【0007】
このように、ガスバリヤ性樹脂と無機層状化合物とを含有するガスバリヤ層を設ける場合、ガスバリヤ性と基材への接着性との間には相反する関係があり、従来、その両立は困難であった。
【0008】
【特許文献1】
特開平11−070608号公報
【特許文献2】
特開平07−041685号公報
【特許文献3】
特開平03−281340号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、無機層状化合物の増量により、ガスバリヤ性の向上を図った塗工剤を用いても、ベースフィルムとガスバリヤ層との接着性が良好であり、更に複合ラミネートフィルム及び包装袋とした場合、高いラミネート強度及びヒートシール強度を維持することが可能であるガスバリヤ性複合フィルムを提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ガスバリヤ性複合フィルムについて、種々検討した結果、ベースフィルム層、接着層、ガスバリヤ層が順次積層されてなるガスバリヤ性複合フィルムにおいて、接着層を、特定のカルボジイミド当量を有するカルボジイミド基含有ウレタン樹脂とイソシアネート系硬化剤とを含有する接着層とし、ガスバリヤ層をポリビニルアルコール系共重合体及びエチレン−ビニルアルコール系共重合体からなる群より選択される少なくとも1種のガスバリヤ性樹脂と無機層状化合物とを含有するガスバリヤ層とすることにより、ガスバリヤ性複合フィルム及びそれを用いた包装袋の接着性、ヒートシール強度、ラミネート強度が良好になり、且つガスバリヤ性にも優れることを見出し、本発明を完成したものである。
【0011】
すなわち、本発明は、(1)ベースフィルム層、接着層及びガスバリヤ層が順次積層されてなるガスバリヤ性複合フィルムであって、該接着層は、カルボジイミド基当量が200〜10000、重量平均分子量が5000〜200000であるカルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂及びイソシアネート系硬化剤を用いてなるものであり、該ガスバリヤ層は、ポリビニルアルコール系共重合体及びエチレン−ビニルアルコール系共重合体からなる群より選択される少なくとも1種のガスバリヤ性樹脂と無機層状化合物とを用いてなるものであるガスバリヤ性複合フィルムに関する。
【0012】
また、本発明は、(2)上記接着層は、更に、シランカップリング剤を含有する上記(1)項記載のガスバリヤ性複合フィルムに関する。
また、本発明は、(3)上記シランカップリング剤は、アミノ基を含有するものである上記(2)記載のガスバリヤ性複合フィルムに関する。
また、本発明は、(4)上記接着層で用いられる上記カルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂は、官能基として、更に水酸基を有する上記(1)〜(3)項のいずれかに記載のガスバリヤ性複合フィルムに関する。
【0013】
また、本発明は、(5)上記接着層で用いられる上記カルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂は、ジオール化合物とジイソシアネート化合物とから得られる両末端イソシアネートウレタンプレポリマーと、主鎖末端にイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物とを、先にカルボジイミド基と反応する官能基を有しないアミン系鎖伸長剤で鎖伸長後、反応停止せずに得られるものであるか、又は、反応停止剤で反応停止して得られるものである上記(1)〜(4)項のいずれかに記載のガスバリヤ性複合フィルムに関する。
【0014】
また、本発明は、(6)上記ガスバリヤ層は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体と無機層状化合物とを、質量比率30/70〜70/30の範囲で用いてなるものである上記(1)〜(5)項のいずれかに記載のガスバリヤ性複合フィルムに関する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のガスバリヤ性複合フィルムについて更に詳細に説明する。
本発明のガスバリヤ性複合フィルムを構成する接着層について説明する。
本発明のガスバリヤ性複合フィルムを構成する接着層は、カルボジイミド基当量が200〜10000、重量平均分子量が5000〜200000であるカルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂(1)とイソシアネート系硬化剤(2)とを含有するものである。上記接着層は、好ましくは、更に、有機金属カップリング剤(3)を含有するものである。
上記接着層は、通常、上記材料を、溶剤(4)中に溶解又は分散させて接着剤組成物とし、塗工方法により積層することができる。上記溶剤(4)としては、水性溶剤、有機溶剤、又は、それらの混合系溶剤を用いることができる。
【0016】
上記接着層を形成する接着剤組成物に含有させる各構成材料について説明する。上記接着層を形成する接着剤組成物に含有させるカルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂(1)について説明する。
上記カルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂としては、分子内にカルボジイミド基を有するカルボジイミド基当量200〜10000、重量平均分子量5000〜200000であるウレタン樹脂が使用できる。このようなカルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂は、例えば、下記の方法を用いて得ることができる。
【0017】
▲1▼カルボジイミド化合物(カルボジイミド基含有ジイソシアネート化合物)とジオール化合物とを反応させて、分子末端に水酸基を有するカルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂を得る方法、
▲2▼ジオール化合物と有機ジイソシアネート化合物とを反応させて得られる分子末端に水酸基を有するウレタンプレポリマー(両末端イソシアネートウレタンプレポリマー)に、カルボジイミド化合物(カルボジイミド含有モノイソシアネート化合物)を反応させてカルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂を得る方法、
▲3▼カルボジイミド化合物(カルボジイミド基含有ジイソシアネート化合物)と高分子ジオール化合物とを反応させて得られる、分子末端にイソシアネート基を有するカルボジイミド基含有ウレタンプレポリマーを、鎖伸長剤で鎖伸長後、必要に応じて反応停止剤を用いて反応させてカルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂を得る方法、
▲4▼カルボジイミド化合物(カルボジイミド基含有ジイソシアネート化合物)と、有機ジイソシアネート化合物と高分子ジオール化合物とを反応させて得られる、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(両末端イソシアネートウレタンプレポリマー)とを、鎖伸長剤で鎖伸長後、必要に応じて反応停止剤を用いて反応させてカルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂を得る方法。
これらの方法の中でも、得られるガスバリヤ性複合フィルム及びそれを用いた包装袋のヒートシール強度やラミネート強度の点から、上記▲1▼、上記▲3▼、上記▲4▼が好ましく、更に、合成の容易性から、上記▲4▼の方法が好ましい。
【0018】
上記方法に用いる各材料としては従来公知のものを用いることができる。上記カルボジイミド化合物としては、主鎖末端にイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物を用いることができ、そのようなものとしては、例えば、有機溶媒中で、カルボジイミド化触媒の存在下、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、ブチルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、フェニルイソシアネート等のモノイソシアネート化合物及び/又はヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物を公知の方法で脱炭酸反応によりカルボジイミド化して得られるカルボジイミド化合物が挙げられる。
【0019】
上記カルボジイミド化合物の市販品としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートを原料としたモノカルボジイミド化合物として、ルプラネートMM−103、XTB−3003(いずれも商品名、BASF社製)、スタバクゾールP(商品名、住友バイエルウレタン社製)等が挙げられ、テトラメチルキシリレンジイソシアネートを原料としたポリカルボジイミドとして、カルボジライトV−03、V−05(いずれも商品名、日清紡社製)等が挙げられる。
【0020】
上記有機ジイソシアネート化合物、ジオール化合物、鎖伸長剤、反応停止剤等としては、従来公知のものを用いることができ、例えば、特開平06−136313号公報、特開平06−248051号公報、特開平07−258357号公報及び特開平07−324179号公報等に記載された各化合物を使用することができる。カルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂の合成方法における温度等の条件についても、上記公報に記載されたことを用いることができる。
【0021】
上記▲3▼及び▲4▼の製造方法で使用する鎖伸長剤としては、とりわけ、合成の容易さの面から、先にカルボジイミド基と反応する官能基を有しないアミン系鎖伸長剤が好適である。本明細書において、上記「先にカルボジイミド基と反応する」とは、カルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂を製造する際に用いる材料が有するカルボジイミド基、イソシアネート基等のうち、カルボジイミド基と選択的に反応することを意味する。
上記▲4▼の製造方法で得られる、ウレタンプレポリマーとカルボジイミド基含有ジイソシアネート化合物とが尿素結合により結合したカルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂を好適に使用できる。
上記▲3▼及び▲4▼の製造方法では、接着層の経時での性能変化を考慮すると、反応停止剤を用いて反応停止することが好ましい。
【0022】
上記材料と製造方法とを用いて得られたカルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂は、カルボジイミド基当量が200〜10000、重量平均分子量が5000〜200000である。カルボジイミド基当量が200より小さいものは合成が困難となり、一方、10000を超えると充分な接着性が得られないという問題がある。また、上記重量平均分子量が5000より小さくなると、接着性が低下することがあり、一方、200000を超えると、接着剤組成物の粘度が高くなり、塗工性が低下することがある。
本明細書において、カルボジイミド当量とは、(カルボジイミド化合物の分子量)/(カルボジイミド化合物分子中のカルボジイミド基の数)で表される数を意味するものである。
【0023】
上記カルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂は、接着性の向上を目的として、後述のイソシアネート系硬化剤と反応することを可能にするために、分子内に、官能基として、更に水酸基を有するものが好ましい。
【0024】
上記接着層を形成する接着剤組成物に含有させるイソシアネート系硬化剤(2)について説明する。
本発明において、イソシアネート系硬化剤としては、包装用複合ラミネートフィルムの製造に用いられている、従来公知の二液接着剤の成分であるポリイソシアネート系硬化剤を使用することができる。上記イソシアネート系硬化剤としては、例えば、トリメチロールプロパン1モルとジイソシアネート3モルとを反応させて得られるアダクト型、ジイソシアネート3モルと水1モルとを反応させて得られるビュレット型、ジイソシアネート3モルを重合して得られるイソシアヌレート型等のポリイソシアネート等が挙げられる。上記ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート,4,4ージフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
上記接着層を形成する接着剤組成物に含有させる有機金属カップリング剤(3)について説明する。
本発明において所望により用いる有機金属カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等が挙げられる。
上記シランカップリング剤としては、2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有系;2−アミノエチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−〔N−(2−アミノエチル)アミノ〕エチルトリメトキシシラン等のアミノ基含有系;2−アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2−メタクリロキシエチルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基含有系;2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有系;2−クロロエチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン等のクロル基含有系;γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン;ビニルアセトキシシラン等が挙げられる。
上記チタネートカップリング剤としては、イソプロピルトリ(N−アミノエチルアミノエチル)チタネート等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記有機金属カップリング剤としては、アミノ基を有する有機金属カップリング剤が好ましく、なかでも、アミノ基を有するシランカップリング剤がより好ましい。
【0026】
上記接着層を形成する接着剤組成物に含有させる溶剤(4)について説明する。
上記溶剤(4)は、上記(1)〜(3)の材料を溶解又は分散させて接着剤組成物とするために使用するものであり、水性溶剤、有機溶剤、及び、それらの混合系溶剤のいずれであってもよい。
上記有機溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル等のエステル系溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコール誘導体等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。水性溶剤と有機溶剤との混合系溶剤としては、水と、上記アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、多価アルコール誘導体のうち水と混和性を有する有機溶剤との混合溶剤を使用することができる。
【0027】
本発明のガスバリヤ性複合フィルムにおける接着層を形成する接着剤組成物において、上記構成材料の含有比率としては、カルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂:イソシアネート系硬化剤(固形分質量比率)=15:1程度が好ましい。上記接着層が有機金属カップリング剤を含む場合、カルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂とイソシアネート系硬化剤との固形分の合計質量100質量%に対して、上記有機金属カップリング剤を、6質量%程度(固形分質量)まで添加することができる。
【0028】
上記材料をそれぞれ上述した好適な範囲内の比率となるように量を調節し、高速攪拌機等を用いて、利用目的に適した溶剤中に溶解や分散させることにより、接着剤組成物を得ることができる。
【0029】
本発明のガスバリヤ性複合フィルムを構成するベースフィルム層について説明する。
本発明のガスバリヤ性複合フィルムにおいて、ガスバリヤ層を設けるベースフィルム層としては、ベースフィルム(I)であってもよいし、シーラント層が設けられる場合は、シーラントフィルム(II)であってもよい。
上記ベースフィルム(I)としては、例えば、従来から軟包装で使用されているポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、ポリスチレン等からなる各種プラスチックフィルム、これらの2種以上からなる複合フィルムを挙げることができ、これらのフィルムは、コロナ放電処理又は表面コート処理されていることが好ましい。また、ガスバリヤ性の面からは、ポリオレフィン系フィルムが好ましい。
なお、上記ベースフィルム(I)としては、上記ベースフィルムに、予め、従来の印刷インキで印刷が施されたものであってもよく、この場合、得られるガスバリヤ性複合フィルムは、ベースフィルム層、印刷層、接着層、ガスバリヤ層の順に積層されていてもよい。
【0030】
上記シーラントフィルム(II)としては、製袋のために使用される熱融着性のシール材料であり、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が挙げられる。上記シーラントフィルム(II)は、また、低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレンポリマー等の熱溶融ポリマーが溶融状態で積層されて、冷却によりフィルム状となるものであってもよく、この場合、ガスバリヤ性複合フィルムの製造において、ベースフィルム層に接着層を先に設けることができないため、ガスバリヤ層側に接着層を設けた後、接着層に溶融状態で上記熱溶融ポリマーを積層する方法が用いられる。
【0031】
本発明のガスバリヤ性複合フィルムを構成するガスバリヤ層について説明する。
本発明のガスバリヤ性複合フィルムを構成するガスバリヤ層は、ポリビニルアルコール系共重合体及びエチレン−ビニルアルコール系共重合体からなる群より選択される少なくとも1種のガスバリヤ性樹脂(5)と無機層状化合物(6)とを用いてなるものであり、通常、これらの材料を溶媒(7)中に含有させてガスバリヤ性コーティング剤組成物とし、各種塗工手段を用いて形成することができる。
【0032】
上記ガスバリヤ層を形成するガスバリヤ性コーティング剤組成物に使用するガスバリヤ性樹脂(5)について説明する。
ガスバリヤ性樹脂は、ポリビニルアルコール系共重合体(PVA)及びエチレン−ビニルアルコール系共重合体(EVOH)からなる群より選択される少なくとも1種のものである。
上記ガスバリヤ性樹脂は、室温において、樹脂膜厚を10μmとしたときの酸素透過度が100(cm/m・day・kPa)以下であるものが好ましい。
なお、上記「室温において、樹脂膜厚を10μmとした時の酸素透過度が100(cm/m・day・kPa)以下である」とは、JIS K7126 B法に準拠して、酸素透過率測定装置(Mocon社製;OX−TRAN100)を用いて23℃、0%RH(相対湿度)の雰囲気下で測定した値が100(cm/m・day・kPa)以下であることを意味する。
なかでも、ガスバリヤ性樹脂としては、高いガスバリヤ性が得られる点、上記接着層との接着性の点等から、エチレン−ビニルアルコール系共重合体樹脂を好適に使用できる。
【0033】
本発明において用いられるポリビニルアルコール系重合体としては、ポリビニルアルコール、その誘導体及び変性物のいずれであってもよく、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記ポリビニルアルコール系重合体としては、重合度は好ましくは100〜5000、より好ましくは500〜3000、また、ケン化度は好ましくは60モル%以上、より好ましくは75モル%以上である。上記ポリビニルアルコールの誘導体としては、水酸基の40モル%程度までがアセタール化されているポリビニルアルコール誘導体等を挙げることができ、上記ポリビニルアルコールの変性物としては、カルボキシル基含有単量体、アミノ基含有単量体等を共重合して得られるポリビニルアルコール変性物等を挙げることができる。
【0034】
なお、ポリビニルアルコール系重合体は、乾燥状態でのガスバリヤ性が非常に高いという利点がある反面、高湿度下でのガスバリヤ性の低下の度合いがエチレン−ビニルアルコール系共重合体より大きいため、高湿度下で利用する場合、ガスバリヤ性コーティング剤組成物において、後述の無機層状化合物の含量をより多くすることが好ましい。
【0035】
本発明において用いられるエチレン−ビニルアルコール系共重合体としては、エチレン−酢酸ビニル系共重合体をケン化して得られるものが使用できる。
上記エチレン−酢酸ビニル系共重合体をケン化して得られるものの具体例としては、エチレン及び酢酸ビニルを共重合して得られるエチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化して得られるもの、並びに、エチレン並びに酢酸ビニルとともに、その他の単量体を共重合して得られるエチレン−酢酸ビニル系共重合体をケン化して得られるものが挙げられる。
ガスバリヤ層を設けるための材料としては、エチレン−酢酸ビニル系共重合体の共重合前の単量体におけるエチレン比率が20〜60モル%であることが好ましい。エチレン比率が20モル%未満であると、高湿度下におけるガスバリヤ性が低下し、一方、エチレン比率が60モル%を超えると、全般に渡ってガスバリヤ性が低下する傾向がある。また、上記エチレン−酢酸ビニル系共重合体は、酢酸ビニル成分のケン化度が95モル%以上のものが好ましく、95モル%未満ではガスバリヤ性や耐油性が不充分になる傾向がある。
【0036】
上記エチレン−酢酸ビニル系共重合体は、過酸化物等により処理して低分子量化したものが、溶剤中での溶解安定性が良好となるという点でより好ましい。
上記エチレン−酢酸ビニル系共重合体のその他の特性値としては、例えば、特開平05−295119号公報の請求の範囲に記載されているそれぞれの数値を有することが好ましく、このような特性値を有するエチレン−酢酸ビニル系共重合体は、後述の水と、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類との混合系溶媒中に溶解させてガスバリヤ性塗工剤を調製することが容易となるという点からも好適なガスバリヤ性樹脂といえるものである。
【0037】
上記ガスバリヤ層を形成するガスバリヤ性コーティング剤組成物に使用する無機層状化合物(6)について説明する。
上記無機層状化合物としては、溶媒に膨潤・へき開する無機層状化合物が好ましく用いられ、フィロケイ酸塩の1:1構造をもつカオリナイト族、ジャモン石群に属するアンチゴライト族、層間カチオンの数によってスメクタイト族、含水ケイ酸塩鉱物であるバーミキュライト族、マイカ族等が挙げられる。
【0038】
上記無機層状化合物としては、具体的には、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト、加水ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、白雲母、マーガライト、タルク、バーミキュライト、金雲母、ザンソフィライト、緑泥石等を用いることが好ましく、これらは、天然物であっても合成物であってもよい。また鱗片状シリカ等も使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、入手が容易でへき開性が高く、ガスバリヤ性コーティング剤組成物に用いた場合のガスバリヤ性能、塗工適性が良好という点から、モンモリロナイトの使用が好ましい。
【0039】
上記ガスバリヤ層を形成するガスバリヤ性コーティング剤組成物に使用する溶媒(7)について説明する。
上記溶媒は、上記ガスバリヤ層を得る為の材料を溶解又は分散させるために用いるものであり、上記ガスバリヤ性樹脂を溶解し得るものであれば、水性溶媒、非水性溶媒、及び、これらの混合系溶媒のいずれでも使用することができる。特に環境対応から、水性溶媒、又は、水と有機溶剤との混合系溶媒が好ましく、上記混合系溶媒としては、水と、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコールとそのアルキルエーテル誘導体;ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;アセトン等のケトン類の水混和性有機溶剤とを混合したものが挙げられる。
上記ガスバリヤ性コーティング組成物には、必要に応じて、レベリング剤、消泡剤、ワックス・シリカ等のブロッキング防止剤、金属せっけん、アマイド等の離型剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤等を1種又は2種以上加えることができる。
【0040】
以上の材料から、ガスバリヤ性コーティング組成物を調製し、塗工方法により積層してガスバリヤ層を形成することができる。
ここで、上記ガスバリヤ性樹脂と上記無機層状化合物との使用量としては、ガスバリヤ性樹脂/無機層状化合物が30/70〜70/30、とりわけ、30/70〜50/50の質量比率の範囲となるように使用することが好ましい。上記ガスバリヤ性コーティング剤組成物は、なかでも、ガスバリヤ性樹脂がエチレン−ビニルアルコール系共重合体であって、上記エチレン−ビニルアルコール系共重合体と無機層状化合物とを質量比率30/70〜70/30用いてなるものがより好ましい。
上記無機層状化合物の質量比率が少なくなると、得られるガスバリヤ層は基材との接着性は高くなるがガスバリヤ性が低下する傾向があり、一方、無機層状化合物の質量比率が多くなると、ガスバリヤ性は高くなるが、基材との接着性や塗膜自体の強度が低下する傾向がある。なお、上記質量比率は、固形分で換算したときの質量比率を示すものである。
【0041】
また、ガスバリヤ性樹脂と無機層状化合物との合計量としては、ガスバリヤ性コーティング剤組成物中に1〜30質量%含有することが好ましい。上記合計量が1質量%より少なくなると、適度な膜厚を有するガスバリヤ層を形成するために複数回の塗工が必要になる等の不利が生じることがあり、一方、30質量%より多くなると、流動性が低下して、塗工が困難になる等の不利が生じることがある。
【0042】
上記の構成材料を使用して上記ガスバリヤ性コーティング剤組成物を製造するには、例えば、(a)ガスバリヤ性樹脂を予め上記溶媒に溶解させた溶液に、無機層状化合物(予め水等の分散媒に膨潤・へき開させておいてもよい)を添加混合し、更に、得られた混合液を攪拌装置や分散装置を用いて無機層状化合物をへき開、分散させる方法、(b)無機層状化合物を、水等の分散媒に膨潤・へき開させた後、攪拌装置や分散装置を利用し、更に、無機層状化合物をへき開、分散した分散液(分散溶液)に、ガスバリヤ性樹脂を上記溶剤に溶解させた溶液を添加混合する方法等が挙げられる。
【0043】
上記攪拌装置や分散装置としては、通常の撹拌装置や分散装置を用いて、分散液中で無機層状化合物を均一に分散することができるが、透明で安定な無機層状化合物分散液が得られる点から、高圧分散機、超音波分散機等を使用することが好ましい。
上記高圧分散機としては、例えば、ナノマイザー(商品名、ナノマイザー社製)、マイクロフルイタイザー(商品名、マイクロフライデックス社製)、アルチマイザー(商品名、スギノマシン社製)、DeBee(商品名、Bee社製)、ニロ・ソアビホモジナイザー(商品名、ニロ・ソアビ社)等が挙げられ、これら高圧分散機の圧力条件として100MPa以下で分散処理を行うことが好ましい。圧力条件が100MPaを超えると、無機層状化合物の粉砕が起こり易くなり、目的であるガスバリヤ性が低下する場合もある。
【0044】
次に、本発明のベースフィルム層、接着層及びガスバリヤ層が順次積層されてなるガスバリヤ性複合フィルムについて説明する。
本発明のガスバリヤ性複合フィルムは、ベースフィルム層、接着層、ガスバリヤ層を順次積層してなるものである。
【0045】
上記ガスバリヤ性複合フィルムの製造方法としては、例えば下記の方法等が挙げられる。
(A)ベースフィルム(ベースフィルムには複合フィルムも含まれる)に、上記接着剤組成物及び上記ガスバリヤ性コーティング剤組成物を順次塗工することによりガスバリヤ性複合フィルムを得る方法、
(B)ベースフィルムに、先にインキ組成物を印刷して印刷層を形成した後、上記接着剤組成物及び上記ガスバリヤ性コーティング剤組成物を順次コーティングすることによりガスバリヤ性複合フィルムを得る方法、
(C)シーラントフィルムに、上記接着剤組成物及び上記ガスバリヤ性コーティング剤組成物を順次塗工することによりガスバリヤ性複合フィルムを得る方法、(D)ベースフィルムに設けたガスバリヤ層に、更に上記接着剤組成物を塗工することにより接着層を設けた後、溶融した熱溶融ポリマーを積層してシーラントフィルムを形成してガスバリヤ性複合フィルムを得る方法。
なお、上記接着剤組成物及び上記ガスバリヤ性コーティング剤組成物の塗工方法については、通常のグラビアシリンダー等を用いたロールコーティング法、ドクターナイフ法やエアーナイフ・ノズルコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、ディップコーティング法及びこれらの方法を組み合わせたコーティング法等を用いることができる。
【0046】
以上の方法から得られるガスバリヤ性複合フィルムにおいて、加熱乾燥後の接着層の膜厚は、好ましくは2〜3μmである。また、加熱乾燥後のガスバリヤ層の膜厚は、好ましくは0.1〜5μmであり、より透明なガスバリヤ層を形成するための好ましい範囲は、0.1〜0.5μmであり、一回の塗工により上記範囲内の膜厚を有する塗膜が得られない場合は、多数回の塗工を行うことも可能である。
接着層の膜厚が上記の範囲より薄くなると、ベースフィルム層とガスバリヤ層の接着性が低下するおそれがあり、一方、上記の範囲より厚くなると、膜厚の増加に見合った接着性の上昇がみられず、また、ガスバリヤ性複合フィルムを包装袋として用いたときに、良好な取扱い性を得ることができないおそれがある。また、ガスバリヤ層が0.1μmより薄くなると、高いガスバリヤ性が得る事が困難であり、一方、5μmを超えても顕著なガスバリヤ性の向上はみられず、透明な塗膜を得る事が困難になる。
【0047】
本発明のガスバリヤ性複合フィルムに、更に必要な機能層を付加して、ベースフィルム層、印刷層、接着層、ガスバリヤ層及びシーラント層を有する、包装袋を製造するためのガスバリヤ性複合フィルムとすることができる。上記ガスバリヤ性複合フィルムの好ましい形態としては、包装用ガスバリヤ性複合フィルムであるものである。
なお、印刷層を付加する場合及びシーラント層を付加する場合は、下記の各層を用いることができる。
【0048】
上記印刷層について説明する。
内容物表示や装飾の機能のための印刷層を形成するには、通常、グラビア印刷方式やフレキソ印刷方式にて、従来公知の有機溶剤型印刷インキ組成物、水性印刷インキ組成物等が使用できる。
上記有機溶剤性印刷インキ組成物としては、例えば、顔料とポリウレタン樹脂とを含む芳香族・非芳香族混合系有機溶剤性印刷インキ組成物の他、特開平01−261476号公報(顔料、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレンを含む芳香族・非芳香族混合系有機溶剤性印刷インキ組成物)、特公平07−113098号公報(顔料、ポリウレタン樹脂を含む非芳香族系有機溶剤性印刷インキ組成物)、特開平07−324179号公報(顔料、ポリウレタン樹脂、非芳香族・非ケトン系有機溶剤、印刷インキ組成物)等で開示された有機溶剤性印刷インキ組成物等が挙げられる。
【0049】
また、上記水性印刷インキ組成物としては、例えば、特開平06−155694号公報(顔料、アクリル系水性バインダー樹脂、ヒドラジン系架橋剤を含む水性印刷インキ組成物)、特開平06−206972号公報(顔料、水、ポリウレタン系バインダー樹脂を含む水性印刷インキ組成物)等で開示された水性印刷インキ組成物等が挙げられる。
なお、最近では、環境対応型インキとして、水性タイプの印刷インキ組成物や、有機溶剤系印刷インキ組成物であっても芳香族系及びケトン系有機溶剤を極力使用しないタイプのものが使用されており、本発明のガスバリヤ性複合フィルムにおいては、これらを好適に用いることもできる。
【0050】
上記シーラント層について説明する。
上述の(A)又は(B)の製造方法により得られるガスバリヤ性複合フィルムには、更にシーラント層を設けることができるが、上記シーラント層としては、ベースフィルム層におけるシーラントフィルム(II)について説明したものと同じものが挙げられる。上記シーラント層を設ける方法としては、例えば、溶融ポリマーを圧着、冷却する押出しラミネート法及び成型されたシーラントフィルムを接着剤にて貼り合せるドライラミネート法を用いることができる。なお、上記(A)の方法で得られたガスバリヤ性複合フィルムでは、先に上記印刷層を設けてからシーラント層を設けることが好ましい。
【0051】
これらの構成からなるガスバリヤ性複合フィルムにおいては、ガスバリヤ層とベースフィルム層との間には、上記カルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂及びイソシアネート系硬化剤を用いてなる接着層を設けて積層する。
【0052】
以上の材料と製造方法から得られたガスバリヤ性複合フィルムは、ヒートシーラー等を用いて、中折りして二辺を溶封するか又は二枚のガスバリヤ性複合フィルムを重ねて三辺を溶封して先に袋状とした後、内容物を詰め、残りの一辺を溶封して、密封された包装袋として利用することができ、このような形態は、本発明の好ましい実施形態の1つである。
そして、得られた包装袋は、食品や医療品の包装袋として利用することができ、上記ガスバリヤ性複合フィルムは、透明で優れたガスバリヤ性を有し、高いラミネート強度及びヒートシール強度とを維持することが可能なものである。
【0053】
【実施例】
以下、実施例によって、本発明を更に詳細に説明するが、その主旨と適用範囲とを逸脱しない限りこれに限定されるものではない。特に、実施例ではガスバリヤ性樹脂としてエチレン−ビニルアルコール共重合体を用いるが、ポリビニルアルコール系重合体を用いても、同様に本発明の効果が得られるものである。
尚、以下の記述において、「%」は「質量%」を示し、また、「部」は「質量部」を示す。
【0054】
<ガスバリヤ性コーティング剤組成物1>
精製水50%、iso−プロピルアルコール(IPA)50%を含む混合系溶媒60部に、EVOH(日本合成化学社製、商品名「ソアノールD−2908」)30部を加え、更に30%の過酸化水素水10部を添加して攪拌下で80℃に加温し、約2時間反応させた。その後冷却して カタラーゼを3000ppmになるように添加し、残存過酸化水素を除去し、これにより固形分30%のほぼ透明な樹脂溶液を得た。
【0055】
また、無機層状化合物であるモンモリロナイト(クニミネ工業社製、商品名「クニピアF」)5部を精製水95部中に攪拌しながら添加し、高速攪拌機にて充分に分散した。その後、40℃にて1日間保温し固形分5%の無機層状化合物分散液を得た。
精製水50%、IPA50%の混合系溶媒60部に、上記樹脂溶液を4部添加し、充分に攪拌混合した。更にこの溶液に、高速攪拌を行いながら無機層状化合物分散液36部を添加し、高圧分散装置にて圧力50MPaの設定で分散処理を行った後、255メッシュのフィルターにて濾過し固形分3%のガスバリヤ性コーティング剤組成物1(EVOH/無機層状化合物=4/6(固形分重量比))を得た。
【0056】
<ガスバリヤ性コーティング剤組成物2>
精製水50%、IPA50%の混合系溶媒65部に、ガスバリヤ性コーティング剤組成物1の調製で得られたものと同じ樹脂溶液を5部添加し、充分に攪拌混合した。更にこの溶液に、高速攪拌を行いながらガスバリヤ性コーティング剤組成物1の調製で得られたものと同じ無機層状化合物溶液30部を添加し、高圧分散装置にて圧力50MPaの設定で分散処理を行った後、255メッシュのフィルターにて濾過し固形分3%のガスバリヤ性コーティング剤組成物2(EVOH/無機層状化合物=5/5(固形分重量比))を得た。
【0057】
<接着剤組成物>
(カルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂A)
攪拌機、塩化カルシウム管及び水銀温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、アジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールとからなるポリエステルジオール(理論分子量2000)を210重量部、イソホロンジイソシアネートを47.3重量部仕込み、触媒としてテトラブチルチタネートを0.016重量部加え、80℃にて2時間攪拌し、末端イソシアネートプレポリマーを合成した。
これを、酢酸エチル490重量部及びイソプロピルアルコール210重量部からなる混合系溶剤で希釈し、テトラメチルキシリレンジイソシアネートの脱炭酸縮合物(日清紡社製、商品名「カルボジライトV−05」)28.3重量部を加えたのち、アミノエチルエタノールアミン11.1重量部を添加して鎖伸長を行い、残存イソシアネート基をモノエタノールアミンと反応させて、固形分30%、カルボジイミド基当量約2755、重量平均分子量45200のカルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂Aを得た。
【0058】
(カルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂B)
攪拌機、塩化カルシウム管および水銀温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、アジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールとからなるポリエステルジオール(理論分子量1750)を178重量部、イソホロンジイソシアネートを45.3重量部仕込み、触媒としてテトラブチルチタネートを0.016重量部加え、80℃にて2時間攪拌し、末端イソシアネートプレポリマーを合成した。これを、酢酸エチル486重量部及びイソプロピルアルコール208重量部からなる混合系溶剤で希釈し、テトラメチルキシリレンジイソシアネートの脱炭酸縮合物(日清紡社製、商品名「カルボジライトV−05」)57.6重量部を加えたのち、アミノエチルエタノールアミン13.3重量部を添加して鎖伸長を行い、残存イソシアネート基をモノエタノールアミンと反応させて、固形分30%、カルボジイミド基当量約1346、重量平均分子量42400のカルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂Bを得た。
【0059】
(ポリウレタン樹脂)
攪拌機、塩化カルシウム管及び水銀温度計を備えた1Lのセパラブルフラスコに、アジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールとからなるポリエステルポリオールからなるポリエステルポリオール(理論分子量2000)を240重量部、イソホロンジイソシアネートを48.6重量部仕込み、触媒としてテトラブチルチタネートを0.016重量部加え、80℃にて2時間攪拌し、末端イソシアネートプレポリマーを合成した。これを、酢酸エチル698重量部で希釈し、アミノエチルエタノールアミン7.1重量部で鎖伸長を行い、残存イソシアネート基をモノエタノールアミンと反応させて固形分30%、重量平均分子量40800のポリウレタン樹脂を得た。
【0060】
(イソシアネート系硬化剤)
イソシアネート系硬化剤として、マイテックNY−218A(商品名、日本ポリウレタン工業社製)を用いた。
(アミノ基含有シランカップリング剤)
アミノ基含有シランカップリング剤として、γ−アミノプロピルトリエトキシシランを酢酸エチルで希釈して固形分10質量%としたものを用いた。
【0061】
(接着剤組成物1)
25.7重量部のカルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂A、イソシアネート系硬化剤(商品名「マイテックNY−218A」)の酢酸エチル10%溶液5.7重量部、酢酸エチル68.6重量部を混合して接着剤組成物1を得た。
【0062】
(接着剤組成物2)
25.7重量部のカルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂B、イソシアネート系硬化剤(商品名「マイテックNY−218A」)の酢酸エチル10%溶液5.7重量部、酢酸エチル68.6重量部を混合して接着剤組成物2を得た。
【0063】
(接着剤組成物3)
25.7重量部のカルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂A、アミノ基含有シランカップリング剤4.1重量部、イソシアネート系硬化剤(商品名「マイテックNY−218A」)の酢酸エチル10%溶液5.7重量部、酢酸エチル64.5重量部を混合して接着剤組成物3を得た。
【0064】
(接着剤組成物4)
25.7重量部のカルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂B、アミノ基含有シランカップリング剤4.1重量部、イソシアネート系硬化剤(商品名「マイテックNY−218A」)の酢酸エチル10%溶液5.7重量部、酢酸エチル64.5重量部を混合して接着剤組成物4を得た。
【0065】
(接着剤組成物5)
30.5重量部のカルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂A、アミノ基含有シランカップリング剤4.6重量部、酢酸エチル64.9重量部を混合して接着剤組成物5を得た。
【0066】
(接着剤組成物6)
30.5重量部のカルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂B、アミノ基含有シランカップリング剤4.6重量部、酢酸エチル64.9重量部を混合して接着剤組成物6を得た。
【0067】
(接着剤組成物7)
25.7重量部のポリウレタン樹脂、イソシアネート系硬化剤(商品名「マイテックNY−218A」)の酢酸エチル10%溶液5.7重量部、酢酸エチル68.6重量部を混合して接着剤組成物7を得た。
【0068】
(接着剤組成物8)
31.4重量部のカルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂A、酢酸エチル68.6重量部を混合して接着剤組成物8を得た。
【0069】
(接着剤組成物9)
31.4重量部のカルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂B、酢酸エチル68.6重量部を混合して接着剤組成物9を得た。
【0070】
実施例1〜8、比較例1〜10
コロナ処理ポリプロピレンフィルム(東洋紡社製、商品名「パイレンP−2161」、厚さ25μ)のコロナ処理面に表1に示す接着剤組成物をそれぞれ塗布し、乾燥後、その上に、得られるガスバリヤ層の厚さが0.3μmとなるように表1に示すガスバリヤ性コーティング剤組成物を塗工し、乾燥した。得られたガスバリヤ層上に、ウレタン系接着剤(主剤:タケラックA−969V、硬化剤:タケネートA−5、三井武田ケミカル社製)を用いてドライラミネート機にて無延伸ポリプロピレンフィルムを積層し、3日間エージングして実施例1〜8、比較例1〜10のガスバリヤ性複合フィルムを得た。
【0071】
<評価>
得られたガスバリヤ性複合フィルムについて、以下の方法により、基材フィルムとの密着性、ラミネート接着性、ヒートシール適性及びタックの有無を評価した。結果を表1に示す。
【0072】
(基材フィルムとの密着性)
実施例1〜8、比較例1〜10の各ガスバリヤ性複合フィルムの表面にカッターナイフで3〜4cm程度の×印の切れ込みを入れ、その上にセロハンテープを貼り付けた。貼り付けたセロハンテープを一気に剥がして、コーティング薄膜の剥離状態を目視で観察し、以下の基準で判定した。
A:全く剥離しない。
B:剥離が認められる。
【0073】
(ラミネート接着性)
実施例1〜8、比較例1〜10の各ガスバリヤ性複合フィルムを15mm幅に切断し、T型剥離強度を剥離試験機(安田精機社製)を用いて、剥離速度300mm/minにて測定した。
【0074】
(ヒートシール適性)
実施例1〜8、比較例1〜10の各ガスバリヤ性複合フィルムを、インパルスシーラー(富士インパルスシーラ社製)を用いて製袋し、ヒートシール強度を剥離試験機(安田精機社製)を用いて剥離速度300mm/minにて測定した。
【0075】
(タックの有無)
実施例1〜8、比較例1〜10の各ガスバリヤ性複合フィルムについて、ラミネート強度を測定した後の剥離面を指触してタックの有無を判断した。
【0076】
【表1】
Figure 2004322602
【0077】
【発明の効果】
本発明のガスバリヤ性複合フィルムは、上述の構成よりなるので、食品や医療品の包装袋として利用でき、透明で優れたガスバリヤ性を有し、高いラミネート強度及びヒートシール強度を維持することが可能なものである。

Claims (6)

  1. ベースフィルム層、接着層及びガスバリヤ層が順次積層されてなるガスバリヤ性複合フィルムであって、
    該接着層は、カルボジイミド基当量が200〜10000、重量平均分子量が5000〜200000であるカルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂及びイソシアネート系硬化剤を用いてなるものであり、
    該ガスバリヤ層は、ポリビニルアルコール系共重合体及びエチレン−ビニルアルコール系共重合体からなる群より選択される少なくとも1種のガスバリヤ性樹脂と無機層状化合物とを用いてなるものであることを特徴とするガスバリヤ性複合フィルム。
  2. 前記接着層は、更に、シランカップリング剤を含有することを特徴とする請求項1記載のガスバリヤ性複合フィルム。
  3. 前記シランカップリング剤は、アミノ基を含有するものであることを特徴とする請求項2記載のガスバリヤ性複合フィルム。
  4. 前記接着層で用いられる前記カルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂は、官能基として、更に水酸基を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリヤ性複合フィルム。
  5. 前記接着層で用いられる前記カルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂は、ジオール化合物とジイソシアネート化合物とから得られる両末端イソシアネートウレタンプレポリマーと、主鎖末端にイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物とを、先にカルボジイミド基と反応する官能基を有しないアミン系鎖伸長剤で鎖伸長後、反応停止せずに得られるものであるか、又は、反応停止剤で反応停止して得られるものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリヤ性複合フィルム。
  6. 前記ガスバリヤ層は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体と
    無機層状化合物とを、質量比率30/70〜70/30の範囲で用いてなるものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のガスバリヤ性複合フィルム。
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