JP6960816B2 - ガスバリア性塗工剤 - Google Patents

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Description

本発明はガスバリア性塗工剤に関し、より詳細には、薄膜で高い透明度を有する状態でも、酸素や水蒸気等の透過を抑制するためのガスバリア性に優れ、更に、ラミネート複合フィルムに利用されたときに、充分なラミネート強度を有するガスバリア性塗工剤に関する。
ガスバリア性は、各種包装材料のほか、最近では酸素や水蒸気による劣化が起こりやすい機能性材料や各種機材の表面保護など、非常に多岐にわたる分野で要求される性能である。
ここで、最も身近な分野として食品包装容器をみると、包装容器は食品と外部の物との直接の接触を断って衛生面での機能を果たすだけでなく、鮮度や風味を維持するために利用されることが多い。例えば、油で揚げた食品をそのまま放置していると、時間と共に空気中の酸素によって油の酸化が進み、間断なく風味が低下する。また、生鮮食料品や乾物では、水分の蒸発あるいは吸湿により乾燥やしっけが起こり、鮮度、食感といったものが損なわれる。
それに対して、容器の中から外へ、また、外から中へと酸素や水蒸気の移動を完全に遮断(密封状態)できる包装容器の中に上記の様な食品を収納すると、少なくとも容器内の酸素が消費されてしまえば酸化は止まり、また、容器内で水蒸気の量が平衡状態に達すると吸湿や乾燥も起こらなくなる。すなわち、包装容器の密封状態を維持できれば、容器の内外からの酸素や水蒸気の移動に伴う風味や食感の低下を防止することが可能となる。こういった理由から、食品の包装で利用される容器は、密封状態を維持するために、高いガスバリア性が要求されることになる。
これらは一例に過ぎないものであり、容器の中の物(内容物)の変質等による品質低下を抑え、あるいは大気の暴露によって劣化する物の表面を保護するために、酸素、水蒸気、その他の変質や劣化の原因となる気体を遮断する機能は、極めて重要である。それゆえ、多くの場合、有機、無機、あるいはその複合等の種々の材料からなるガスバリア層が設けられている。
一般に、金属やセラミック等の無機材料はガスバリア性に優れている。それでも、これらの材料は総じて包装容器の基材への積層が困難である。また、金属は不透明であり、セラミックは硬くて脆いといった点で、用途の制約につながるような数々の欠点もある。そこで、基材表面にバリア層を低コストでしかも簡単に設けることのできる、有機ポリマーをベースとした塗工液タイプのガスバリア性塗工剤を用いる方法が開発されている。これらの塗工液タイプのガスバリア剤は、有機ポリマーとして高結晶性の樹脂を含むことを特徴としており、主にポリビニルアルコール(PVA)やエチレン−ビニルアルコール(EVOH)等の樹脂が利用されている。
中でも、より結晶性の高いPVAは、乾燥状態においては極めて優れたガスバリア性を有することが知られている。しかし、吸湿性が高く、高湿度下では結晶性がくずれてバリア性が低下するという問題がある。一方、EVOHは、高湿度下でのガスバリア性の低下度合いはPVAより少ないが、全体的にガスバリア性のレベルは不充分である。
これらの問題を解決するために、上記の樹脂と無機層状化合物(例えば、天然に産出するものとしてはモンモリロナイト等)とを併用したガスバリア性コーティング組成物が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。有機−無機複合材料は、塗工によりガスバリア層を設けることができ、更に、充分なガスバリア性を保持するという、両方の材料の長所が生かせることから高い期待が寄せられている。
更に、様々な研究が進む中、PVAの変性物を利用する技術も開発されている。例えば、PVAの分子内に水酸基を多く含有させるために、分子内にラジカル重合性不飽和二重結合を有し、さらに両末端に水酸基やケン化により水酸基を発生させる官能基を二つ有するラジカル重合性モノマーを共重合成分とした変性PVAを利用する技術(例えば、特許文献3参照)、分子内にカルボニル基を含有させた変性PVAと、当該官能基と架橋可能な架橋剤とを利用する技術(例えば、特許文献4参照)等が知られている。しかし、特に長期保存が想定される食品の包装袋等でこれらの技術を適用したとしても、ガスバリア性が不充分というのが現状である。
また、長期保存が想定される食品の包装袋には、外側のインキが印刷されるベースフィルムと、内側の製袋のための熱溶封性を有するシーラントフィルムと、必要により、その間に各種機能を有するフィルムや塗工膜による機能層とを積層したラミネート複合フィルムが多用される。ラミネート複合フィルムでは、袋の端部にあたる部分で、シーラントフィルムが熱により溶封されて製袋される。ここで、ガスバリア層は、機能層の一つとしてベースフィルムとシーラントフィルムとの間で積層されるが、このラミネート複合フィルムから得られる包装容器は、少なくとも運搬や陳列などの際に破袋せず、また、開封の際は熱溶封部(シール部)が二重袋の様な状態にならず難なく開封できるよう、充分なラミネート強度を維持しなくてはならないといった問題もあった。
特開平06−093133号公報 特開2003−276124号公報 特開2006−176589号公報 特開2005−288948号公報
食品の包装容器では、鮮度や風味を長く維持するために、ガスバリア性は欠かせない機能となっていて、例えば、最近、取り沙汰されている食品廃棄の問題の緩和にも役立つ可能性がある。何故なら、食品の鮮度や風味の劣化が大きく影響する賞味期限や消費期限を、ガスバリア機能により延長できれば、それだけ販売できる期間も長くなり、廃棄されるまでに購入される可能性が高くなるからである。また、ずっと長期間の保存が想定される災害時の非常食等でも、賞味期限や消費期限が長いと、安心して備蓄できるようになる。
ところが、その一方で、内容物が食品であるという性質上、包装容器であってもクリーンなイメージが求められる。特に、塗工剤によりガスバリア層を設ける方式では、塗工膜が厚くなるとガスバリア性は高くなるものの、透明性が低下する傾向があるため、クリーンなイメージを損なう方向に作用する。例えば、食品としての品質や価格が全く同じで、包装容器のみ透明なものと透明性に欠けるものが並んで陳列されたとき、多くの客が透明な方を選択するだろうことは想像に難くない。これは、ガスバリア性に加えて、透明性を有するものであれば、付加価値が高まることを意味するものである。
また、食品包装容器としてラミネート複合フィルムを利用する場合、輸送や陳列の際の包装容器の破袋の防止や、開封の容易性等を考慮すると、ガスバリア層に充分な剥離強度やシール強度などのラミネート強度が必要となる。
例えば、シーラントフィルムは軟質のプラスチックであるため、基材フィルムと比較して高い延伸性を有することが多い。そこで、運搬や陳列、開封などの際に加わる力が、基材フィルムとシーラントフィルムの延伸性の相違による応力となって両フィルムの界面に働く際、ガスバリア層の破壊強度が弱く、働く応力に耐えられなければ、ガスバリア層の層内破壊が起こる。その結果として、複合フィルムはガスバリア層を境として、ベースフィルム側とシーラントフィルム側に剥離することになる。
この様に剥離した状態で、シーラントフィルムに破断強度の弱い材質のものを利用していると、運搬や陳列の途中での意図しない開封、すなわち破袋する可能性が高くなる。一方、シーラントフィルムに破断強度の強い材質のものを利用していると、開封しようとする力は剥離やシーラントフィルムの延伸に費やされるようになる。そして、シール部でベースフィルム側は開封されるが、シーラントフィルム側は未開封のまま残る、いわゆる「二重袋の様な状態」になって開封できないという可能性が高くなる。
したがって、ガスバリア層は、破壊強度を高くして、少なくとも運搬や陳列などの際に破袋せず、また、開封の際は二重袋の様な状態にならずに難なく開封できる程度に、ラミネート強度を有するものでなくてはならない。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、薄膜で高い透明度を有する状態でも、酸素や水蒸気等の透過を抑制するためのガスバリア性に優れ、更に、ラミネート複合フィルムに利用されたときに、充分なラミネート強度を有するガスバリア性塗工剤を提供することである。
本発明者らは、研究を重ねた結果、ガスバリア性塗工剤の構成成分として種々の材料がある中で、後述する式(1)で表わされる構造単位を分子内に有するポリビニルアルコール系共重合体樹脂(以下、成分Aともいう)は、特に水蒸気の透過を抑制する材料として有用であるが、高い透明度を維持するために薄膜とした状態では充分でないとの知見を得た。また、分子内にカルボニル基を有するポリビニルアルコール系(共)重合体樹脂(以下、成分Bともいう)とヒドラジン系架橋剤(以下、成分Cともいう)との架橋系は、上記成分Aと比較して、塗膜凝集力が高く破壊強度に優れ、無機層状化合物(以下、成分Dともいう)は、上記材料と併用するとガスバリア性を格段に向上させるが、ガスバリア層の破壊強度を著しく低下させるといった知見も得た。
そこで、本発明者らは、更に研究を重ねた結果、薄膜で高い透明度を有する状態でも、高いガスバリア性を付与するために、上記成分Aと上記成分Dとを利用し、塗膜の凝集力を高めて充分なラミネート強度を付与するために、上記成分Bと上記成分Cとの架橋系を利用し、更に、これらの成分を特定の範囲で含有するガスバリア性塗工剤とすることにより、上記課題を全て解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、下記式(1)で表わされる構造単位を分子内に有するポリビニルアルコール系共重合体樹脂(成分A)、分子内にカルボニル基を有するポリビニルアルコール系(共)重合体樹脂(成分B)、ヒドラジン系架橋剤(成分C)、無機層状化合物(成分D)、及び、溶媒(成分E)を含有し、下記の条件1〜3を満足することを特徴とするガスバリア性塗工剤である。
Figure 0006960816
(式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1〜3の炭化水素基を示す。)
条件1:ガスバリア性塗工剤中に含まれる上記成分Aの質量をWA、上記成分Bの質量をWBとしたとき、WA/WB=80/20〜20/80である。
条件2:ガスバリア性塗工剤中に含まれる上記成分Cの質量をWCとしたとき、WB/WC=95/5〜60/40である。
条件3:ガスバリア性塗工剤中に含まれる上記成分Dの質量をWDとしたとき、(WA+WB)/WD=95/5〜70/30である。
また、本発明のガスバリア性塗工剤は、上記成分Aが、下記式(2)で表わされるラジカル重合性モノマーと、ビニルエステル系モノマーとを含むラジカル重合性モノマーの共重合体のケン化物であることが好ましい。
Figure 0006960816
(式(2)中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1〜3の炭化水素基を示し、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、又は、−CO−R基を示し、上記Rは、ハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基を有していてもよい炭素数1〜8の炭化水素基を示す。)
また、本発明のガスバリア性塗工剤は、上記成分Aが、下記式(3)で表わされるポリビニルアルコール系共重合体樹脂であることが好ましい。
Figure 0006960816
(式(3)中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1〜3の炭化水素基を示し、Xは上記式(2)で表されるラジカル重合性モノマーと、ビニルエステル系モノマーとを含むラジカル重合性モノマーの分子構造に由来し、式(3)中の他の繰り返し構造単位とは異なる構造単位を示す。また、l、m、nはそれぞれ、一分子あたりの構造単位の平均数を表し、l+m+n=300〜4000、l/(l+m+n)=0.001〜0.200、m/(l+m+n)=0.700〜0.999、n/(l+m+n)=0〜0.100の関係を満足する)
また、本発明のガスバリア性塗工剤は、上記成分Bが、下記条件4及び/又は下記条件5を満足するビニルアルコール系(共)重合体樹脂であることが好ましい。
条件4:ビニルエステル系モノマーとカルボニル基含有ラジカル重合性モノマーとを含むラジカル重合性モノマーの共重合体のケン化物である。
条件5:ビニルエステル系モノマーを含むラジカル重合性モノマーの(共)重合体のケン化物のアセトアセチル化物である。
また、本発明のガスバリア性塗工剤は、上記成分Bが、分子内に下記式(4)で表わされる構造単位及び/又は下記式(5)で表わされる構造単位を含むポリビニルアルコール系(共)重合体樹脂であることが好ましい。
Figure 0006960816
Figure 0006960816
(式(4)中、Rは水素又はメチル基を示す。)
また、本発明のガスバリア性塗工剤は、上記成分Bが、下記式(6)で表わされるポリビニルアルコール系(共)重合体樹脂であることが好ましい。
Figure 0006960816
(式(6)中、Rは水素又はメチル基を示す。また、Yは上記ビニルエステル系モノマー及び/又はカルボニル基含有ラジカル重合性モノマーとを含むラジカル重合性モノマーの分子構造に由来し、式(6)中の他の繰り返し構造単位とは異なる構造単位を示す。更に、o、p、q、rはそれぞれ、1分子あたりの構造単位の平均数を表し、o+p+q+r=300〜4000、(o+p)/(o+p+q+r)=0.001〜0.250、q/(o+p+q+r)=0.550〜0.999、r/(o+p+q+r)=0〜0.200の関係を満足する)
以下、本発明のガスバリア性塗工剤について詳細に説明する。
(1.ガスバリア性塗工剤)
本発明のガスバリア性塗工剤は、下記式(1)で表わされる構造単位を分子内に有するポリビニルアルコール系共重合体樹脂(成分A)、分子内にカルボニル基を有するポリビニルアルコール系(共)重合体樹脂(成分B)、ヒドラジン系架橋剤(成分C)、無機層状化合物(成分D)、及び、溶媒(成分E)を含有する。上記成分A〜Dを含有し、後述する条件1〜3を充足することにより、薄膜で高い透明度を有する塗工物とした場合であっても、酸素や水蒸気等の透過を抑制するためのガスバリア性に優れ、更に、ラミネート複合フィルムに利用されたときに、充分なラミネート強度を有するガスバリア性塗工剤を得ることができる。
Figure 0006960816
(式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1〜3の炭化水素基を示す。)
<成分Aについて>
上記成分Aは、上記式(1)を満たすものであれば特に限定されないが、特開2006−176589号公報で開示されている材料、合成方法、ケン化方法等を用いて得られるポリビニルアルコール系共重合体樹脂を好適に利用することができる。
上記成分Aは、下記式(2)で表わされるラジカル重合性モノマーと、ビニルエステル系モノマーとを含むラジカル重合性モノマーの共重合体のケン化物であることが好ましい。このようなラジカル重合性モノマーの共重合体のケン化物であることにより、特に水蒸気の透過を好適に抑制することができる。
Figure 0006960816
(式(2)中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1〜3の炭化水素基を示し、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、又は、−CO−R基を示し、上記Rは、ハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基を有していてもよい炭素数1〜8の炭化水素基を示す。)
上記式(2)で表わされるラジカル重合性モノマーとしては、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、1,4−ジアシロキシ−2−ブテン、1−ヒドロキシ−4−アシロキシ−2−ブテン、1,4−ジアシロキシ−1−メチル−2−ブテン、1,5−ジアシロキシ−2−ペンテン、1,6−ジアシロキシ−2−ヘキセン、1,6−ジアシロキシ−3−ヘキセン等が挙げられ、なかでも、共重合反応性及び工業的な取り扱いにおいて優れるという点で、R及びRがメチレン基で、R及びRが−CO−Rであり、Rがアルキル基である1,4−ジアシロキシ−2−ブテンが好ましく、Rがメチル基である1,4−ジアセトキシ−2−ブテンがより好ましい。
上記のビニルエステル系モノマーとしては、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル等を挙げることができ、その中でも酢酸ビニルが好適である。
上記式(2)で表わされるラジカル重合性モノマーと、上記ビニルエステル系モノマーに加えて、必要に応じて、本発明の効果を妨げない範囲でその他のラジカル重合性モノマーを加えても良い。
上記ポリビニルアルコール系共重合体樹脂を得る方法としては、特に限定されず、通常の溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法等の公知の方法を利用することができる。
また、ケン化方法としても、特に限定されず、通常のケン化で使用される触媒である水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、リチウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物といったアルカリ触媒、硫酸、塩酸、硝酸等の酸触媒を利用することができる。
更に、ケン化度は、特に限定されないが、高いガスバリア性を有するという観点から80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。
また、上記共重合体樹脂の平均重合度(JIS K6726に準拠して測定)は特に限定されないが、300〜4000であることが好ましく、400〜2600であることがより好ましく、500〜2200であることが更に好ましい。
また、上記式(1)で示される構造単位の含有量は、特に限定されないが、0.1〜20モル%が好ましく、0.5〜15モル%がより好ましく、1〜10モル%であることが更に好ましい。
本発明のガスバリア性塗工剤は、上記成分Aが、下記式(3)で表わされるポリビニルアルコール系共重合体樹脂であることが好ましい。このようなポリビニルアルコール系共重合体樹脂であることにより、特に水蒸気の透過を極めて好適に抑制することができる。
なお、下記式(3)は簡略的に三つの構造単位のブロック共重合体の形態を表示しているが、三つの構造単位の配列には特に制限がなく、ランダム共重合体も含むものである。
この様な下記式(3)を充足するポリビニルアルコール系共重合体樹脂の市販品としては、OKS−1109、OKS−8049(日本合成化学(株)社製)等を挙げることができる。
Figure 0006960816
(式(3)中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1〜3の炭化水素基を示し、Xは上記式(2)で表されるラジカル重合性モノマーと、ビニルエステル系モノマーとを含むラジカル重合性モノマーの分子構造に由来し、式(3)中の他の繰り返し構造単位とは異なる構造単位を示す。また、l、m、nはそれぞれ、一分子あたりの構造単位の平均数を表し、l+m+n=300〜4000、l/(l+m+n)=0.001〜0.200、m/(l+m+n)=0.700〜0.999、n/(l+m+n)=0〜0.100の関係を満足する)
上記式(3)中、l+m+n=400〜3600、l/(l+m+n)=0.01〜0.18、m/(l+m+n)=0.77〜0.99、n/(l+m+n)=0〜0.08の関係を満足することが好ましく、l+m+n=500〜3000、l/(l+m+n)=0.05〜0.17、m/(l+m+n)=0.78〜0.95、n/(l+m+n)=0〜0.05の関係を満足することがより好ましい。
<成分Bについて>
本発明のガスバリア性塗工剤は、上記成分Bが、下記条件4及び/又は下記条件5を満足するビニルアルコール系(共)重合体樹脂であることが好ましい。上記成分Bが、下記条件4及び/又は下記条件5を満足するビニルアルコール系(共)重合体樹脂であることにより、当該樹脂の分子内のカルボニル基が、後述する成分Cのヒドラジン残基と反応して架橋構造を形成するため、好適に塗膜の凝集力を高めることができ、充分なラミネート強度を付与することができる。
なお、下記「(共)重合」とは、一種類のラジカル重合性モノマーを利用する単独重合と、二種類以上のラジカル重合性モノマーを利用する共重合の両方を含み、「(共)重合体樹脂」という言葉には、一種類のラジカル重合性モノマーを単独重合して得られる単独重合体樹脂と、二種類以上のラジカル重合性モノマーを共重合して得られる共重合体樹脂の両方を含むものである。
条件4:ビニルエステル系モノマーとカルボニル基含有ラジカル重合性モノマーとを含むラジカル重合性モノマーの共重合体のケン化物である。
条件5:ビニルエステル系モノマーを含むラジカル重合性モノマーの(共)重合体のケン化物のアセトアセチル化物である。
上記成分Bの分子内にカルボニル基を導入する方法としては、特に限定されないが、(1)ビニルエステル系モノマーと、分子内にカルボニル基を有し、ケン化によりポリビニルアルコール系共重合体の分子からカルボニル基が除去されることのないカルボニル基含有モノマーとを共重合する方法、(2)ビニルエステル系モノマーを含む重合成分を重合した後、ケン化により水酸基を生成させ、更に水酸基をアセチル化する方法等を利用することができる。
具体的には、上記(1)におけるビニルエステル系モノマーとしては、上記成分Aのビニルエステル系モノマーとして挙げたものを好適に用いることができる。また、カルボニル基含有ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、ビニルケトン類、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等を挙げることができ、好ましくは、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等を好適に用いることができる。
ここで、本明細書において、(メタ)アクリルアミドとは、アクリルアミド及び/又はメタクリルアミドを意味する。
上記ビニルエステル系モノマーと、上記カルボニル基含有モノマーと、必要に応じて、本発明の効果を妨げない範囲でその他のラジカル重合性モノマーを含有することもできる。
上記ビニルアルコール系(共)重合体樹脂を得る方法としては、特に限定されず、通常の溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法等の公知の方法を利用することができる。
また、ケン化方法としても、特に限定されず、通常のケン化で使用される触媒である水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、リチウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物といったアルカリ触媒、硫酸、塩酸、硝酸等の酸触媒を利用することができる。
更に、ケン化度は、特に限定されないが、高いガスバリア性を有するという観点から80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。
また、本発明のガスバリア性塗工剤は、上記成分Bが、分子内に下記式(4)で表わされる構造単位及び/又は下記式(5)で表わされる構造単位を含むポリビニルアルコール系(共)重合体樹脂であることが好ましい。このようなポリビニルアルコール系(共)重合体樹脂を用いることにより、当該樹脂の分子内のカルボニル基が、後述する成分Cのヒドラジン残基と反応して架橋構造をより好適に形成するため、より好適に塗膜の凝集力を高めることができ、充分なラミネート強度をより好適に付与することができる。
Figure 0006960816
Figure 0006960816
(式(4)中、Rは水素又はメチル基を示す。)
上記式(4)で表わされる構造単位を含むポリビニルアルコール系(共)重合体樹脂は、例えば、ジアセトン(メタ)アクリルアミドを共重合成分として利用することにより、好適に得ることができる。
また、上記式(5)で表される構造単位を含むポリビニルアルコール系(共)重合体樹脂は、例えば、先に、ポリビニルアルコール系(共)重合体樹脂を合成した後、分子内の水酸基に対するアセトアセチル化によりカルボニル基を導入する方法により、好適に得ることができる。
具体的には、合成したポリビニルアルコール系(共)重合体樹脂に対して、ガス状または液状のジケテンを直接反応させる方法、酢酸等の有機酸を予め吸着吸蔵させた後、これに不活性ガス雰囲気下でガス状または液状のジケテンを反応させる方法、あるいは有機酸とジケテンの混合物を噴霧して反応させる方法等により、ジケテンを反応させ(反応生成工程)、その後、炭素数1〜3のアルコールを用いて未反応のジケテンを洗浄除去し(洗浄工程)、ついで所定の条件にて乾燥させる(乾燥工程)ことにより製造することができる。
また、上記ポリビニルアルコール系(共)重合体樹脂の平均重合度(JIS K6726に準拠して測定)は特に限定されないが、300〜4000であることが好ましく、400〜2600であることがより好ましく、500〜2200であることが更に好ましい。
また、式(4)及び/又は式(5)で表わされる構造単位の含有量は、特に限定されないが、両構造単位を併せて、0.1〜25モル%が好ましく、0.5〜20モル%がより好ましく、1〜15モル%であることが更に好ましい。
本発明のガスバリア性塗工剤は、上記成分Bが、下記式(6)で表わされるポリビニルアルコール系(共)重合体樹脂であることが特に好ましい。このようなポリビニルアルコール系(共)重合体樹脂を用いることにより、当該樹脂の分子内のカルボニル基が、後述する成分Cのヒドラジン残基と反応して架橋構造を極めて好適に形成するため、極めて好適に塗膜の凝集力を高めることができ、充分なラミネート強度を極めて好適に付与することができる。
下記式(6)で表されるポリビニルアルコール系(共)重合体樹脂は、上述した共重合成分と製造方法により得ることができる。
Figure 0006960816
(式(6)中、Rは水素又はメチル基を示す。また、Yは上記ビニルエステル系モノマー及び/又はカルボニル基含有ラジカル重合性モノマーとを含むラジカル重合性モノマーの分子構造に由来し、式(6)中の他の繰り返し構造単位とは異なる構造単位を示す。更に、o、p、q、rはそれぞれ、1分子あたりの構造単位の平均数を表し、o+p+q+r=300〜4000、(o+p)/(o+p+q+r)=0.001〜0.250、q/(o+p+q+r)=0.550〜0.999、r/(o+p+q+r)=0〜0.200の関係を満足する)
上記式(6)中、o+p+q+r=400〜3600、(o+p)/(o+p+q+r)=0.01〜0.20、q/(o+p+q+r)=0.65〜0.99、r/(o+p+q+r)=0〜0.15の関係を満足することが好ましく、o+p+q+r=500〜3000、(o+p)/(o+p+q+r)=0.05〜0.15、q/(o+p+q+r)=0.75〜0.95、r/(o+p+q+r)=0〜0.10の関係を満足することがより好ましい。
<成分Cについて>
上記成分Cは、ヒドラジン系架橋剤であり、分子中に2個以上のヒドラジン残基を有する化合物、例えば、アルキレンジヒドラジン、或いは、飽和脂肪族二塩基酸及び/又は不飽和二塩基酸のジヒドラジド化合物等を好適に用いることができる。このような化合物を用いることにより、上記成分Bの分子内のカルボニル基と反応して架橋構造を形成するため、好適に塗膜の凝集力を高めることができ、充分なラミネート強度を付与することができる。
上記成分Cとしては、例えば、アルキレンジヒドラジンとして、メチレンジヒドラジン、エチレンジヒドラジン、プロピレンジヒドラジン、ブチレンジヒドラジン等を好適に用いることができる。
また、飽和脂肪族二塩基酸のジヒドラジド化合物としては、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等を好適に用いることができ、不飽和二塩基酸のジヒドラジド化合物としては、例えば、フタル酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等を好適に用いることができる。
<成分Dについて>
上記成分Dとしては、層間にカチオン性の金属原子や無機の原子団を有し、後述する溶媒により、又は、別途、膨潤・へき開処理する際の溶媒により、当該金属原子や無機の原子団がイオン化して溶媒中に溶出することで、へき開する性質を有する。
上記成分Dとしては、例えば、厚み0.5〜3nm程度、幅100nm〜数μm程度の薄膜状の層が多数積層された構造(無機層状化合物)からなり、その層は、一層でも高いガスバリア能力を有するものを好適に用いることができる。
したがって、ガスバリア性塗工剤中の成分Dの含有量が同じであっても、よりへき開の度合いが進んだ系の方が形成される塗工膜のガスバリア性は高くなる。更に、塗工膜に伸びや剥離の応力がかかったときに、よりへき開の度合いが進んだ系では、無機層状化合物の未へき開の部位の層間剥離に起因する破壊強度の低下を抑制できる。
この様に、上記無機層状化合物は、層間にあるカチオン性の金属原子等を水等でイオン化して溶媒中に溶出させることにより、簡単に一層近くまでへき開できるという点から、本発明の効果を奏する材料として極めて好適に用いることができる。
上記無機層状化合物としては、膨潤性を持つ粘土鉱物が好ましく、具体的には、シリカの四面体層の上部に、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属にした8面体層を有する2層構造よりなるタイプと、シリカの4面体層が、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属にした8面体層を両側から挟んだ3層構造よりなるタイプに分類される。前者としてはカオリナイト族、ジャモン石群に属するアンチゴライト族等を挙げることができ、後者としては層間カチオンの数によってスメクタイト族、バーミキュライト族、マイカ族等を挙げることができる。
上記無機層状化合物としては、具体的には、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト、加水ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、白雲母、マーガライト、タルク、バーミキュライト、金雲母、ザンソフィライト、緑泥石等を挙げることができ、これらは天然物であっても合成物であってもよい。また鱗片状シリカ等も使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、塗工剤として使用した場合のガスバリア性能、塗工適性が優れるという点から、モンモリロナイトが好ましい。
<成分Eについて>
上記成分Eとしては、上記成分A及び上記成分Bを溶解することが可能であれば、水性、非水性のどちらの溶媒でも使用できる。
上記水性溶媒としては、水を主たる成分として、必要に応じて水溶性の有機溶剤を併用することができる。
ここで、併用可能な水溶性の有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコールとその誘導体、酢酸エチル、メチルエチルケトン等が例示できる。この様な有機溶剤を併用すると、上記成分Aや上記成分Bの溶解性の向上や、ガスバリア性塗工剤の乾燥性及び基材フィルムに対する湿潤性の調整等を好適に図ることができる。
また、上記成分Aと上記成分Bを溶解する有機溶剤を用いて非水性溶媒とすることも可能である。この場合、別途、水中で上記成分Dの層間にあるカチオン性の金属原子等をイオン化して溶出させ、膨潤・へき開させる分散処理を行った後、水を他の有機溶剤に置換することにより、ガスバリア性塗工剤として完全な非水性溶媒系を実現することができる。
上記非水性溶媒系とすることにより、水に対する溶解度の低い有機溶剤でも利用できるようになるため、上記のガスバリア性塗工剤の乾燥性や基材フィルムに対する湿潤性の調整がより幅広く行える他、添加剤や適応できる基材フィルムの種類も多くできる等の理由から好ましい。
上記非水性溶媒系では、上記に挙げた有機溶剤の他、酢酸プロピルや酢酸ブチル等のより遅乾性の酢酸エステル系溶剤を好適に用いることができる。
<添加剤>
本発明のガスバリア性塗工剤には、レベリング剤、消泡剤、ワックス・シリカ等のブロッキング防止剤、金属せっけん、アマイド等の離型剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等を必要に応じて加えることができる。
<含有比>
本発明のガスバリア性塗工剤で用いられるこれらの材料の中でも、上記成分Aと上記成分Bとの含有比率については、優れたガスバリア性を有し、高い塗膜凝集力が維持できるという観点から、下記条件1を満たす。
条件1:ガスバリア性塗工剤中に含まれる上記成分Aの質量をWA、上記成分Bの質量をWBとしたとき、WA/WB=80/20〜20/80である。
上記成分Aと上記成分Bとの含有比率は、WA/WB=70/30〜30/70であることが好ましく、WA/WB=60/40〜40/60であることがより好ましい。
ここで、WA/WB=80/20〜20/80の範囲よりWAの含有比率が高くなると、相対的に上記成分Cと架橋する分子内にカルボニル基を有するポリビニルアルコール系(共)重合体樹脂(上記成分B)の含有比率が低くなるため、ガスバリア性塗工剤を塗工して得られる塗膜の凝集力や、基材とするプラスチックフィルムに対する接着性が低下する。また、ラミネート複合フィルムに利用されたときに、充分なラミネート強度が得られなくなる。
一方で、WA/WB=80/20〜20/80の範囲よりWAの含有比率が低くなると、薄膜において良好なガスバリア性、良好な水蒸気バリア性が得られなくなる。
上記成分Cは、下記条件2を満たす。
条件2:ガスバリア性塗工剤中に含まれる上記成分Cの質量をWCとしたとき、WB/WC=95/5〜60/40である。
また、上記成分Cの含有比率は、WB/WC=85/15〜75/25であることが好ましい。
ここで、WB/WC=95/5〜60/40の範囲より、WBの含有比率が高くなると、ガスバリア性塗工剤を塗工して得られる塗膜の凝集力や、基材とするプラスチックフィルムに対する接着性が低下する。また、ラミネート複合フィルムに利用されたときに、充分なラミネート強度が得られなくなる。
一方、WB/WC=95/5〜60/40の範囲より、WBの含有比率が低くなることは、上記成分Cの含有比率が大過剰であることを意味し、薄膜において良好なガスバリア性、特に良好な水蒸気バリア性が得られなくなる。
なお、WB/WC=85/15〜75/25の範囲では、上記成分Cと上記成分Bとの架橋と共に、例えば、基材として用いられるプラスチックフィルム表面にカルボニル基を有するものであれば、上記カルボニル基との架橋成分も多くなり、接着性等を好適に付与することができる可能性がある。
上記成分Dは、下記条件3を満たす。
条件3:ガスバリア性塗工剤中に含まれる上記成分Dの質量をWDとしたとき、(WA+WB)/WD=95/5〜70/30である。
また、上記成分Dの含有比率は、(WA+WB)/WD=90/10〜80/20であることが好ましい。
ここで、(WA+WB)/WD=95/5〜70/30の範囲より(WA+WB)の含有比率が高くなると、薄膜において良好なガスバリア性が得られなくなる。一方、(WA+WB)/WD=95/5〜70/30の範囲より(WA+WB)の含有比率が低くなると、ガスバリア性塗工剤を塗工して得られる塗膜の凝集力が低下し、基材とするプラスチックフィルムに対する接着性が低下し、ラミネート複合フィルムに利用されたときに、充分なラミネート強度が得られなくなる。
また、ガスバリア性塗工剤中に含まれる上記成分A、上記成分B、上記成分C、及び、上記成分Dの合計含有量と、上記成分Eの含有量の比率は、良好な塗工適性を有し、数少ない塗工で所定の塗膜の厚みを得ることができるという観点から、ガスバリア性塗工剤中に含まれる上記成分Aの質量をWA、上記成分Bの質量をWB、上記成分Cの質量をWC、上記成分Dの質量をWD、上記成分Eの質量をWEとしたとき、(WA+WB+WC+WD)/WE=2/98〜20/80であることが好ましく、(WA+WB+WC+WD)/WE=5/95〜15/85であることがより好ましい。
<ガスバリア性塗工剤の材料の混合方法>
上記成分A、上記成分B、上記成分C、上記成分D、及び、上記成分Eを含むガスバリア性塗工剤の混合方法は、特に限定されないが、例えば、上記成分Aと上記成分Bを上記成分Eに溶解させた溶液に、上記成分D(必要により予め上記成分E中に膨潤・へき開させておいてもよい)を添加混合し、上記成分Dを分散させる方法、上記成分E中で上記成分Dを膨潤・へき開させた分散液に、上記成分A、上記成分B(必要により予め成分E中に溶解させておいてもよい)を添加(溶解)する方法等が挙げられる。
これらの混合に際しては、通常の撹拌装置や分散装置を利用して、分散液中で上記成分Dを均一に分散することができるが、特に透明で安定な無機層状化合物分散液を得るために、高圧分散機を使用することができる。
そして、そのために利用する高圧分散機としては、例えば、ゴーリン(APVゴーリン社製)、ナノマイザー(ナノマイザー社製)、マイクロフルイタイザー(マイクロフライデックス社製)、アルチマイザー(スギノマシン社製)、DeBee(Bee社製)等が挙げられ、これら高圧分散機の圧力条件として100MPa以下で分散処理を行うことが好ましい。圧力条件が100MPaを超えると、成分Dの粉砕が起こり易くなり、目的であるガスバリア性が低下する場合もある。
なお、上記の成分Dの膨潤・へき開をより促進する方法として、上記成分Dの過酸化物処理やイオン交換処理等を利用できる。
上記過酸化物処理としては、上記成分E中に、過酸化物/上記成分Dの質量比率が2/1〜1/1000となる量を添加混合することが好ましく、1/1〜5/1000となる量を添加混合することがより好ましく、上記添加混合した後、上記の分散装置を用いて、上記成分Dをへき解させる方法を好適に用いることができる。このような方法は、上記成分Dが天然に産出した材料である場合に好ましい分散処理方法である。
上記イオン交換処理としては、上記成分Dのへき開に伴って溶出するイオンを除去して、系のイオン濃度を下げることにより、更にへき開を促進させ、上記成分E中に上記成分Dを均一に分布させる分散処理方法である。
上記イオンを除去する方法としては、例えば、イオン交換能やイオン吸着能を持つイオン交換樹脂、イオン交換膜、イオン交換セルロース等の他、沸石、酸性白土、泥炭、亜炭等の天然物、合成ゼオライト、パームチット、タングステン酸ジルコニウム等の合成物を利用可能であり、更に水による洗浄する方法等が挙げられるが、とりわけ、イオン交換樹脂、イオン交換膜、イオン交換セルロース等を使用してイオンを除去する方法が好ましい。
(2.包装容器)
次に、本発明のガスバリア性塗工剤をプラスチックフィルムに塗工して得られる包装容器について説明する。
通常、プラスチックフィルムを利用した包装容器としては、基材層となるプラスチックフィルム(基材フィルム)の、容器に加工したときに外側になる面にガスバリア性塗工剤の塗工膜を設け(表刷り印刷方式に相当)、重ね合わせて端部を熱溶封や接着剤の貼付により袋状にした簡単な構成のものが利用される。
また、基本の構成として、基材層となるプラスチックフィルムの、容器に加工したときに内側になる面にガスバリア性塗工剤の塗工膜を設け(裏刷り印刷方式に相当)、さらに塗工面に、熱溶融性のプラスチックフィルムを加熱溶融させて貼り合わせる方式(押出しラミネート方式)、接着剤を用いて貼り合わせる方式(ドライラミネート方式)により積層して複合フィルムとし、熱溶融性のプラスチックフィルムを内側にして重ね合わせ、端部を熱溶封して得られるラミネート容器も利用される。
<基材フィルム>
上記基材フィルムとしては、透明なフィルム形成能を有する熱可塑性樹脂等により形成されてなるものであれば、特に制限はない。
上記基材フィルムとして用いられる樹脂としては、ポリエチレン(低密度、高密度)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、アイオノマー樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ナイロン−6、ナイロン−6,6、メタキシレンジアミン−アジピン酸縮重合体、ポリメチルメタクリルイミド等のアミド系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリル等のスチレン、アクリロニトリル系樹脂;トリ酢酸セルロース、ジ酢酸セルロース等の疎水化セルロース系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、テフロン(登録商標)等のハロゲン含有樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、セルロース誘導体等の水素結合性樹脂;ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリメチレンオキシド樹脂、液晶樹脂等のエンジニアリングプラスチック系樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
更に、これら基材フィルムのガスバリア性塗工剤や印刷インキの塗工・印刷層が設けられる側には、プラズマ処理やコロナ放電処理等の表面処理が施されていることが好ましい。
<その他の包装容器の構成材料>
更に必要に応じて、包装容器を構成するために利用される印刷インキ、アンカーコート剤、ラミネート用接着剤、シーラントフィルム及び他の機能層構成材料について説明する。なお、これらは、本発明の効果を損なわない範囲であれば、既知の技術を利用して得られる材料、市販される材料などが何ら制約されることなく利用できる。
まず、印刷インキは主に内容物の表示や包装容器としての意匠性を高める目的で利用され、表刷り印刷に利用される表刷り用インキと、裏刷り印刷に利用される裏刷りインキとがある。
表刷り用インキとしては、ポリアミド樹脂やポリウレタン樹脂を主バインダー樹脂として利用し、他の樹脂を併用するタイプのインキが好適に利用できる。例えば、特開平09−118855号公報などで開示されているポリアミド樹脂とセルロース誘導体とをバインダー樹脂として用いるタイプのインキ、特開2002−294128号公報などで開示されているポリウレタン樹脂とセルロース誘導体とをバインダー樹脂として用いるタイプのインキ、特開2015−205993号公報などで開示されているポリウレタン樹脂と塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体とをバインダー樹脂として用いるタイプのインキを挙げることができる。さらに、直接、開示されているインキ以外にも、これらで開示されているインキの各種材料を組み合わせて得られるインキも利用できる。
また、裏刷り用インキとしては、ポリウレタン樹脂を主バインダー樹脂として利用し、他の樹脂を併用するタイプのインキやポリウレタン樹脂の分子に特徴を有する、有機溶剤性及び水性のどちらのタイプのインキも好適に利用できる。例えば、特開平01−261476号公報などで開示されているポリウレタン樹脂と塩素化ポリプロピレンとをバインダー樹脂として用いるタイプのインキ、特開2012−001672号公報などで開示されているポリウレタン樹脂と塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体とをバインダー樹脂として用いるタイプのインキ、特開平07−324179号公報などで開示されているヒドラジン残基を有するポリウレタン樹脂をバインダー樹脂として用いるタイプのインキ、特開平06−206972号公報などで開示されているポリウレタン樹脂をバインダー樹脂として用いる水性タイプのインキを挙げることができる。さらに、直接、開示されているインキ以外にも、これらで開示されているインキの各種材料を組み合わせて得られるインキも利用できる。
次に、最終的にラミネート加工された複合フィルムを、製袋時に熱で溶封して包装容器を製造するために、シーラントフィルムが積層されるが、このシーラントフィルムは、従来から製袋時の溶封に用いられる熱可塑性樹脂のフィルムであれば、制限なく使用できる。
例えば、押出しラミネート加工方式で利用されるシーラントフィルムの材質としては、粉末状、ペレット状、チップ状の無延伸ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が好適であり、また、ドライラミネート加工方式で利用されるシーラントフィルムの材質としては、上記の材料の他、ナイロン−ポリプロピレン共押し出しフィルムなども好適である。
次に、押出しラミネート加工方式で必要に応じて利用されるアンカーコート剤としては、イミン系アンカーコート剤、イソシアネート系アンカーコート剤等が好適に利用できる。具体的に、市販されているアンカーコート剤としては、A−3210/A−3070、A−3210/A3072、A−3210/A−3075(いずれも三井化学社製)、セカダイン2710A/セカダイン2810C(T)、セカダイン2730A/セカダイン2730B、セカダイン2710A/セカダイン2710C(いずれも大日精化工業社製)、デックドライLX−500、デックドライLX−901、デックドライLX747A(いずれもDICグラフィック社製、ディックドライは、DICグラフィックスの登録商標)が挙げられる。
一方、ドライラミネート加工方式で、シーラントフィルムを貼り合わせるために利用するラミネート用接着剤としては、従来から包装用複合ラミネートフィルムの製造に用いられているラミネート用接着剤が適宜選択でき、例えば、ウレタン樹脂系、イミノ基含有樹脂系、ブタジエン樹脂系等の接着剤を挙げることができる。
その中でもウレタン樹脂系接着剤が好適であり、ポリオール成分と過剰の脂肪族系ポリイソシアネート成分とからなるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーと、ポリオール成分との組み合わせからなる二液系の接着剤、または、過剰のポリオール成分と脂肪族系ポリイソシアネート成分とからなる水酸基末端ウレタンプレポリマーと、ポリイソシアネート成分との組み合わせからなる二液系の接着剤が利用でき、必要に応じて、エポキシ化合物やシランカップリング剤を含有することもできる。
具体的に、市販されている接着剤として、デックドライLX−401A、75A、719、703VL、500、510等(いずれもDICグラフィック社製、ディックドライは、DICグラフィックスの登録商標)、タケラック/タケネート A−909/A−5、A−977/A−92、A−606/A−50、A−515/A−50、A−626/A−50、A−525/A−52、A−666/A−65等(いずれも三井化学社製)、RU−77、771、3600、3900等(いずれもロックペイント社製)等が挙げられる。
更に、上記複合フィルムは、ガスバリア性の向上や強度補強などを目的として、基材フィルムとシーラントフィルムとの間に、各種機能性層が1層以上設けられていてもよい。この様な機能性層としては、ガスバリア性の向上を目的としたシリカ蒸着層やアルミナ蒸着層、積層フィルムの強度補強の向上を目的とした延伸ナイロンフィルム層、その両方の機能の向上を目的としたナイロン系メタキシレンジアミン樹脂フィルム層等を挙げることができる。
<ガスバリア性塗工剤の塗工方法>
上記基材フィルムへのガスバリア性塗工剤を塗工する方法としては、グラビアシリンダー等を用いたロールコーティング法、ドクターナイフ法やエアーナイフ・ノズルコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、ディップコーティング法及びこれらの方法を組み合わせたコーティング法等、通常の方法を用いることができる。
なお、必要に応じて、基材となるプラスチックフィルムの塗工面に、予め、既知の方法でウレタン系、アクリル系等のアンカーコート剤(AC剤)を塗工しておいてもよい。
なお、表刷り印刷方式で印刷インキを印刷して得られる包装容器においては、ガスバリア性塗工剤が内容物と直接、接触しないという観点から、印刷インキと同様に、容器に加工したときに外側になる面に塗工することが好ましい。また、裏刷り印刷方式で印刷インキを印刷して得られる包装容器においては、ガスバリア性塗工剤の塗工膜の保護という観点から、やはり印刷インキと同様に、容器に加工したときに内側になる面に塗工することが好ましい。
本発明のガスバリア性塗工剤を、上記塗工方法によって塗工する場合の乾燥塗膜の厚みは、上記基材フィルム、及び、目的とするガスバリア性のレベルによって異なるが、0.1〜5μmであることが好ましく、より透明なフィルムを得る観点からは、0.1〜0.5μmであることがより好ましい。乾燥塗膜の厚みが0.1μm未満となった場合、目的とするガスバリア性が得られないことがあり、5μmを超える場合、膜厚を厚くしてもガスバリア性の向上は見られず、しかも、充分な透明性が得られにくくなることがある。
本発明のガスバリア性塗工剤を塗工した複合フィルムは、ガスバリア層の厚みが0.1〜0.5μmと非常に薄膜であっても、充分なガスバリア性を有し、しかも優れた透明性を持ち合わせたガスバリア性複合フィルムである。
<印刷インキの印刷方法>
印刷インキの印刷方法としては、グラビア印刷方式やフレキソ印刷方式などを用いて印刷することにより所望の印刷物を得ることができる。上記のように、表刷り印刷方式では、容器に加工したときに外側になる面に印刷インキの印刷層を設け、裏刷り印刷方式では、容器に加工したときに内側になる面に印刷インキの印刷層を設けることになる。
なお、上記のガスバリア性塗工剤の塗工と印刷インキの印刷との順番については、特に制約されるものではない。しかしながら、ガスバリア性塗工剤の塗工は、常に包装容器のほぼ全面であるのに対して、印刷インキの印刷は部分的なときもあり、プラスチックフィルムの同面に塗工と印刷が行われる場合には、ガスバリア性塗工剤の塗工膜に段差が発生しないという観点から、先にガスバリア性塗工剤の塗工を行うことが好ましい。
<ラミネート加工方法>
押出ラミネート加工方法としては、基材フィルムのガスバリア性塗工剤の塗工膜を有する側の表面に、必要に応じて上記のアンカーコート剤を塗工した後、既知の押出ラミネート機によって溶融状態にした上記のシーラントフィルム形成用の樹脂を押圧して積層させる方法が利用でき、更に溶融樹脂を中間層として、他の材料とサンドイッチ状に積層することもできる。
また、ドライラミネート加工方法としては、基材フィルムのガスバリア性塗工剤の塗工膜を有する側の表面に、上記の接着剤剤を塗工した後、既知のドライラミネート機によって上記のシーラントフィルムを貼り合わせる方法が利用できる。
なお、基材フィルムとシーラントフィルムとの間に、各種機能性層が1層以上設けられていてもよく、例えば、ガスバリア性の向上を目的としたシリカ蒸着層やアルミナ蒸着層の積層は、プラスチックフィルム表面への蒸着法が利用でき、また、フィルム状の材料についてはシーラントフィルムと同様に接着剤によって貼り合わせる方法が利用できる。
<製袋方法>
まず、基本的な構成が、基材フィルムとガスバリア性塗工剤の塗工膜である複合フィルムの製袋方法としては、基材フィルム自体が熱溶封性を有する材料である場合はそのまま、熱溶封性を有しない材料であれば、熱接着性の接着剤を用いて、複合フィルムをガスバリア性塗工剤の塗工膜が容器の外側に向くように中折りして、例えば、ヒートシーラーを用いて、所定の端部をシールすることにより、密封された包装袋(容器)として利用することができる。
また、シーラントフィルムが積層された複合フィルムの製袋方法としては、複合フィルムのシーラントフィルムが容器の内側に向くように中折りするか、あるいは複合フィルムを重ね、上記と同様の方法により、密封された包装袋(容器)として利用することができる。
そして、三方シール、四方シール、封筒貼り、合掌貼り、ガセット貼り等の各種ヒートシールの形態の包装容器に適用可能であり、得られた包装容器は、高いガスバリア性と優れた透明性を有し、食品や医療品の包装分野で好適に利用できる。
本発明のガスバリア性塗工剤は、高い透明度を有するという目的のためにより薄膜となる条件で塗工されても、酸素や水蒸気などの透過を抑制するためのガスバリア性に優れる。更に、本発明のガスバリア性塗工剤の塗膜を含むラミネート複合フィルムは、充分なラミネート強度を有する。したがって、当該ラミネート複合フィルムからなる包装容器は、運搬や陳列などの際に破袋せず、また、開封の際は二重袋の様な状態にならずに難なく開封することができる。
以下に実施例をあげて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
<成分A溶液の調製>
精製水85部に、成分A(商品名:OKS−1009、日本合成化学工業社製)15部を加え、90℃で1時間攪拌し、固形分15%のほぼ透明な成分A溶液を得た。
<成分B溶液の調製>
精製水85部に、成分B(商品名:DF−10、日本酢ビ・ポバール社製)15部を加え、90℃で1時間攪拌し、固形分15%のほぼ透明な成分B溶液を得た。
<成分D分散液の調製>
無機層状化合物であるモンモリロナイト(商品名:クニピアF、クニミネ工業社製)3部を精製水97部中に攪拌しながら添加し、高圧分散装置にて圧力50MPaの設定にて十分に分散した。その後、40℃にて1日間保温し固形分3%の無機層状化合物分散液を得た。更に無機層状化合物分散液100部に対して、3部のイオン交換樹脂を添加しイオン交換樹脂の破砕が起きない程度の攪拌速度で1時間攪拌した後、イオン交換樹脂のみをストレーナで濾別してイオンを除去し、固形分3%の成分D分散液を得た。
<実施例1〜7、比較例1〜8のガスバリア性塗工剤の調製>
(実施例1の調製)
精製水60%、2−プロパノール40%の混合溶剤50.29部中に、充分に攪拌しながら、上記成分A溶液25.44部、上記成分B溶液6.36部、成分Cとして、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)0.24部、及び、上記成分D分散液17.67部を添加、混合して、WA/WB=80/20、WB/WC=80/20、(WA+WB)/WD=90/10である実施例1のガスバリア性塗工剤を得た。
(実施例2〜7、比較例1〜8のガスバリア性塗工剤の調製)
成分A〜成分Eの配合量を表1に記載したようにした以外は、実施例1と同様の方法により、実施例2〜7、比較例1〜8のガスバリア性塗工剤を得た。
<実施例1〜7、比較例1〜8のガスバリア性塗工剤の塗工物と複合フィルムの作成>
グラビア塗工機を用いて、実施例1〜7、比較例1〜6のガスバリア性塗工剤については、固形分が0.6g/mとなる塗工量で、比較例7及び8のガスバリア性塗工剤については、固形分が3.0g/mとなる塗工量で、二軸延伸ポリプロピレンフィルムに塗工して、実施例1〜7、比較例1〜8の酸素バリア性試験及び透明性の評価用塗工物を得た。
また、グラビア塗工機を用いて、実施例1〜7、比較例1〜6のガスバリア性塗工剤については、固形分が0.6g/mとなる塗工量で、比較例7及び8のガスバリア性塗工剤については、固形分が3.0g/mとなる塗工量で、二軸延伸PETフィルムに塗工し、更に塗工面に、固形分で2.0g/mとなる量のウレタン系接着剤を用いて、シーラントフィルムを積層し、40℃/12時間保持して、実施例1〜7、比較例1〜8のラミネート強度(剥離強度試験及びシール強度試験)と水蒸気バリア性試験の評価用複合フィルムを得た。
<比較例9>
比較例9では、二軸延伸ポリプロピレンフィルムに何も塗工せずに、そのまま酸素バリア性試験及び透明性の評価試験を行った。また、二軸延伸PETフィルムに、固形分で2.0g/mとなる量のウレタン系接着剤を用いて、シーラントフィルムを積層し、40℃/12時間保持してラミネート強度評価用複合フィルムを得て、剥離強度試験、シール強度試験、水蒸気バリア性試験を行った。
なお、上記の二軸延伸ポリプロピレンフィルムには、東洋紡(株)製のパイレンP−2161(商品名、厚さ25μm)、二軸延伸PETフィルムには、東洋紡(株)製の東洋紡フィルムE−5102(商品名、厚さ12μm)、ウレタン系接着剤には、三井化学ポリウレタン(株)製のタケラックA−969V/タケネートA−5(商品名)、シーラントフィルムには、出光ユニテック(株)製のLS−711C(商品名)を使用した。
<酸素バリア性試験>
酸素透過度JIS K7126 B法に準じて、酸素透過率測定装置(Mocon社製;OX−TRAN100、商品名)を用いて上記評価試験用の塗工物の酸素透過度(OTR値)を測定した。なお、測定条件は、23℃、0%RH(相対湿度)の雰囲気下で行った。
<透明性の評価>
実施例1〜7、比較例1〜8の塗工物、並びに、比較例9の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを目視にて評価し、その透明性を下記として判断した。
◎:塗膜(フィルム)が無色透明である。
○:塗膜がやや不透明である。
×:塗膜が不透明である。
<水蒸気バリア性試験>
雰囲気温度20℃、相対湿度50%の環境下で、上記の押出しラミネート複合フィルム及びドライラミネート複合フィルムを幅220mm×長さ220mmに裁断し、シーラントフィルム側を内側にして二枚重ね合わせ、三方の端部をインパルスシーラー(富士インパルスシーラ社製、シール幅10mm)を用いて溶封し、中に内容物として市販のポテトチップスを入れてから、四方目の端部をインパルスシーラー(富士インパルスシーラ社製、シール幅10mm)を用いて溶封し、水蒸気バリア性試験用の密封包装容器を作成した。
上記密封包装容器を雰囲気温度23℃、相対湿度90%の環境試験室内で保管した後、開封してポテトチップスを食したときに湿り気を感じる期間から、水蒸気バリア性を判定した。
◎:10日間の保管後でも湿り気が感じられない。
○:5日間の保管後では湿り気が感じられないが、10日間の保管後では湿り気が感じられる。
×:5日間の保管後でも湿り気が感じられる。
<剥離強度試験及びシール強度試験>
上記ドライラミネート複合フィルムを幅15mmに切断し、剥離強度試験用の試験片を作成した。当該試験片を剥離試験機(安田精機社製)に装着し、剥離速度300mm/minにて剥離させたときの強度(剥離強度)を測定した。
また、上記の押出しラミネート複合フィルム及びドライラミネート複合フィルムを幅15mm×長さ100mmに裁断し、シーラントフィルム側を内側にして幅15mm×長さ50mmに折り重ね、インパルスシーラー(富士インパルスシーラ社製、シール幅10mm)を用いて端部から25mmのところが真ん中になるように溶封し、シール強度試験用の試験片を作成した。当該試験片を剥離試験機(安田精機社製)に装着し、剥離速度300mm/minにて破断させたときの強度(シール強度)を測定した。
なお、剥離強度及びシール強度については、ガスバリア性塗工剤の塗工膜の凝集力不足に起因して剥離が起こる場合、剥離面は基材フィルムとシーラントフィルムとの間となり、破袋や袋を開封する際に二重袋の様な状態になり易いとの推察に基づき、以下のように判断した。
(剥離強度)
◎:剥離強度が350g/15mm以上である。
○:剥離強度が200g/15mm以上、350g/15mm未満である。
×:剥離強度が200g/15mm未満である。
(シール強度)
◎:シール強度が4kg/15mm以上である。
○:シール強度が3kg/15mm以上、4kg/15mm未満である。
×:シール強度が3kg/15mm未満である。
Figure 0006960816
実施例1〜7に係るガスバリア性塗工剤は、塗工物としたときに酸素バリア性、及び、透明性に優れ、複合フィルムとしたときに、剥離強度、シール強度、及び、水蒸気バリア性にも優れていた。
一方、比較例1に係るガスバリア性塗工剤では、上記条件1の範囲よりもWAの含有比率が高かったために、ガスバリア性塗工剤を塗工して得られる塗膜の凝集力や、基材とするプラスチックフィルムに対する接着性が低下し、複合フィルムとしたときに、剥離強度、シール強度が不充分となった。また、比較例2に係るガスバリア性塗工剤では、上記条件1の範囲よりもWAの含有比率が低かったため、充分な水蒸気バリア性が得られなかった。また、比較例3に係るガスバリア性塗工剤では、上記条件2の範囲よりもWBの含有比率が高かったために、複合フィルムとしたときに、剥離強度、シール強度が不充分となった。また、比較例4に係るガスバリア性塗工剤では、上記条件2の範囲よりもWBの含有比率が低く、成分Cが多すぎたために、充分な水蒸気バリア性が得られなかった。また、比較例5に係るガスバリア性塗工剤では、上記条件3の範囲よりも(WA+WB)の含有比率が高かったために、ガスバリア性が不充分であった。また、比較例6に係るガスバリア性塗工剤では、上記条件3の範囲よりも(WA+WB)が低かったために、複合フィルムとしたときに、剥離強度、シール強度が不充分となった。
更に、比較例7及び8に係るガスバリア性塗工剤は、条件1又は条件3を満たさないものであったが塗工量が多かったために、充分なガスバリア性は有していた。しかしながら、比較例7及び8に係るガスバリア性塗工剤では、透明性が不充分であった。
また、比較例9では、ガスバリア性塗工剤を塗工しなかったため、ガスバリア性が不充分であった。
本発明のガスバリア性塗工剤は、高い透明度を有するという目的のためにより薄膜となる条件で塗工されても、酸素や水蒸気などの透過を抑制するためのガスバリア性に優れる。更に、本発明のガスバリア性塗工剤の塗膜を含むラミネート複合フィルムは、充分なラミネート強度を有する。したがって、当該ラミネート複合フィルムからなる包装容器は、運搬や陳列などの際に破袋せず、また、開封の際は二重袋の様な状態にならずに難なく開封することができる。

Claims (6)

  1. 下記式(1)で表わされる構造単位を分子内に有するポリビニルアルコール系共重合体樹脂(成分A)、分子内にカルボニル基を有するポリビニルアルコール系(共)重合体樹脂(成分B)、ヒドラジン系架橋剤(成分C)、無機層状化合物(成分D)、及び、溶媒(成分E)を含有し、下記の条件1〜3を満足することを特徴とするガスバリア性塗工剤。
    Figure 0006960816
    (式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1〜3の炭化水素基を示す。)
    条件1:ガスバリア性塗工剤中に含まれる前記成分Aの質量をWA、前記成分Bの質量をWBとしたとき、WA/WB=80/20〜20/80である。
    条件2:ガスバリア性塗工剤中に含まれる前記成分Cの質量をWCとしたとき、WB/WC=95/5〜60/40である。
    条件3:ガスバリア性塗工剤中に含まれる前記成分Dの質量をWDとしたとき、(WA+WB)/WD=95/5〜70/30である。
  2. 前記成分Aが、下記式(2)で表わされるラジカル重合性モノマーと、ビニルエステル系モノマーとを含むラジカル重合性モノマーの共重合体のケン化物である請求項1に記載のガスバリア性塗工剤。
    Figure 0006960816
    (式(2)中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1〜3の炭化水素基を示し、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、又は、−CO−R基を示し、前記Rは、ハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基を有していてもよい炭素数1〜8の炭化水素基を示す。)
  3. 前記成分Aが、下記式(3)で表わされるポリビニルアルコール系共重合体樹脂である請求項2に記載のガスバリア性塗工剤。
    Figure 0006960816
    (式(3)中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1〜3の炭化水素基を示し、Xは前記式(2)で表されるラジカル重合性モノマーと、ビニルエステル系モノマーとを含むラジカル重合性モノマーの分子構造に由来し、式(3)中の他の繰り返し構造単位とは異なる構造単位を示す。また、l、m、nはそれぞれ、一分子あたりの構造単位の平均数を表し、l+m+n=300〜4000、l/(l+m+n)=0.001〜0.200、m/(l+m+n)=0.700〜0.999、n/(l+m+n)=0〜0.100の関係を満足する)
  4. 前記成分Bが、下記条件4及び/又は下記条件5を満足するビニルアルコール系(共)重合体樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア性塗工剤。
    条件4:ビニルエステル系モノマーとカルボニル基含有ラジカル重合性モノマーとを含むラジカル重合性モノマーの共重合体のケン化物である。
    条件5:ビニルエステル系モノマーを含むラジカル重合性モノマーの(共)重合体のケン化物のアセトアセチル化物である。
  5. 前記成分Bが、分子内に下記式(4)で表わされる構造単位及び/又は下記式(5)で表わされる構造単位を含むポリビニルアルコール系(共)重合体樹脂である請求項4に記載のガスバリア性塗工剤。
    Figure 0006960816
    Figure 0006960816
    (式(4)中、Rは水素又はメチル基を示す。)
  6. 前記成分Bが、下記式(6)で表わされるポリビニルアルコール系(共)重合体樹脂である請求項4又は5に記載のガスバリア性塗工剤。
    Figure 0006960816
    (式(6)中、Rは水素又はメチル基を示す。また、Yは前記ビニルエステル系モノマー及び/又はカルボニル基含有ラジカル重合性モノマーとを含むラジカル重合性モノマーの分子構造に由来し、式(6)中の他の繰り返し構造単位とは異なる構造単位を示す。更に、o、p、q、rはそれぞれ、1分子あたりの構造単位の平均数を表し、o+p+q+r=300〜4000、(o+p)/(o+p+q+r)=0.001〜0.250、q/(o+p+q+r)=0.550〜0.999、r/(o+p+q+r)=0〜0.200の関係を満足する)
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