JP2004322123A - 二重管の製造方法 - Google Patents

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正朗 吉留
Tomoyuki Hirota
智之 廣田
Satoshi Mashima
聡 真嶋
Nobufumi Oe
伸史 大江
Hideto Kanefusa
英人 金房
Tomoaki Watari
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Abstract

【課題】内管と外管が相互に独立した構造の二重管を容易に液圧成形できる方法を提供する。
【解決手段】内管用重ね合わせ板材11を内包し且つそれよりも一回り大きな外管用重ね合わせ板材14を液圧により膨出成形して、内外管用板材12a,15a同士と12b,15b同士が相互に密着した二重管の中間成形体26を成形する。次に、中間成形体26のうち外管用重ね合わせ板材14を液圧により単独で膨出成形して二重管1とする。その際に、外管3にビード部5を一体に成形して、そのビード部5にて内管2を支持するようにする。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、重ね合わせ板材を用いていわゆる液圧成形法(液圧バルジ成形法もしくはシートハイドロ工法とも称される)により二重管を製造する方法に関し、特に内管と外管とを相互に独立した構造体として成形できるようにした二重管の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の二重管の製造方法として例えば特許文献1に記載のものが知られている。同特許文献1に記載の技術では、内管用の二枚の板材と外管用の二枚の板材の合計四枚の板材を重ね合わせた上でそれらの板材の周縁部を相互に溶接接合して重ね合わせ板材とし、最初に内管用の板材同士の間に液圧を導入することで内外管を同時に膨出成形し、その後から内外管同士の間に液圧を導入することで外管を所定形状に膨出成形するようになっている。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−057362号公報 (図1〜図8)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の技術では、相互に重ね合わされることになる内管用および外管用の各板材が同じ形状および大きさであって且つそれら四枚の板材同士が相互に溶接接合されているため、内外管同士の間に形成される空間の大きさ(溶接接合部以外での内管用板材と外管用板材とのなす相互離間距離)が安定化しないばかりでなく、例えば製造された二重管をエンジンのエキゾーストマニホールドに適用した場合に、内管が熱膨張したときにその熱膨張の度合いによっては外管が追従することができず、結果として外管が内管の変形を拘束してしまうために内管が破断限界を超えて破損もしくは破断してしまうおそれがある。これは、内外管同士が相互に溶接接合されていることによって、それぞれの弾性変形自由度が拘束されていることに基づくものである。
【0005】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、特に液圧成形法を基本としながらも内外管が相互に独立した構造の二重管を無理なく製造できるようにした製造方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、二枚の内管用板材を重ね合わせた上でその周縁部を溶接接合して内管用重ね合わせ板材を製作する工程と、上記内管用重ね合わせ板材を内包するように二枚の外管用板材を重ね合わせた上でその周縁部を溶接接合して外管用重ね合わせ板材を製作する工程と、外管用重ね合わせ板材を内管用重ね合わせ板材とともに液圧により膨出させて所定断面形状の内管を成形する工程と、外管用重ね合わせ板材を液圧により単独で膨出させて所定断面形状の外管を成形する工程とを含むことを特徴とする。
【0007】
この場合、請求項2に記載のように、外管用重ね合わせ板材を製作する際に、内管用重ね合わせ板材の溶接接合部と外管用重ね合わせ板材の溶接接合部とが重ならないように、内管用重ね合わせ板材よりも大きな二枚の外管用板材を重ね合わせた上でその周縁部を溶接接合して外管用重ね合わせ板材を製作することが望ましい。
【0008】
さらに、内外管が相互に独立した構造でありながらも内管をいわゆるフランジレス構造とするためには、請求項3に記載のように、膨出成形に先立って、内管用重ね合わせ板材を内包してなる外管用重ね合わせ板材を断面略U字状に折り曲げて予備成形体とする工程を含むことが望ましい。
【0009】
したがって、請求項1,2に記載の発明では、重ね合わせ板材の段階で既に内管用重ね合わせ板材と外管用重ね合わせ板材が相互に独立していることから、内管および外管をそれぞれを膨出成形すればそれら内管と外管とが相互に独立した二重管が製造される。
【0010】
なお、請求項5に記載のように、外管を単独で膨出成形する際に内管側に向かって突出する突起部を同時成形し、この突起部をもって内管を支持するようにすれば、成形された内管と外管との相対位置関係を長期にわたって維持できることになる。
【0011】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、内管および外管が相互に独立した状態で成形されることから、内管および外管のそれぞれの成形精度が向上して内管と外管との間に形成される空間の寸法も安定化するとともに、成形後において内管および外管のそれぞれの弾性変形自由度が拘束されることがなく、例えば製造された二重管をエンジンのエキゾーストマニホールドに適用した場合において内管が熱膨張した場合でもそれに外管が追従できることから、内管の破損もしくは破断を未然に防止できるようになる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1,2は本発明の好ましい実施の形態を示しており、図3に示すようにエンジンのエキゾーストマニホールドとして用いるのに好適な二重管1を製造する場合の例を示している。なお、この二重管1は例えば入口側となる複数の開口部1a,1a…と出口側となる単一の開口部1bを備えていて、なお且つ断面略円形状をなす内管2と外管3とが互いに同芯状に配置されているものである。
【0013】
このような二重管1を製造するには、最初に図1の(A)に示すような内管用重ね合わせ板材11を製作する。この内管用重ね合わせ板材11は、図3に示した内管2を展開した形状の平板状のブランク材たる内管用板材12a,12bを打ち抜き形成した上で、その大きさの等しい二枚の内管用板材12a,12b同士を重ね合わせる。そして、図3に示したように開口部1a,1bとなるべき部分以外の周縁部を例えばへり継手方式にて溶接ビード部13をもって溶接接合して内管用重ね合わせ板材11とする。
【0014】
続いて、同図(B)に示すような外管用重ね合わせ板材14を製作する。この外管用重ね合わせ板材14は、図3に示した外管3を展開した形状の平板状のブランク材たる外管用板材15a,15bを打ち抜き形成した上で、その大きさの等しい二枚の外管用板材15a,15b同士の間に先の内管用重ね合わせ板材11を挟み込むようにそれらの外管用板材15a,15b同士を重ね合わせる。そして、図3に示したように開口部1a,1bとなるべき部分以外の周縁部を例えばへり継手方式にて溶接ビード部16をもって溶接接合し、図1の(A)に示した内管用重ね合わせ板材11を内包する外管用重ね合わせ板材14とする。
【0015】
この場合、二重管1として完成した内外管2,3同士の径差よりして、外管用重ね合わせ板材14を形成することになる外管用板材15a,15bの大きさは内管用板材12a,12bのそれよりも一回り程度大きな形状に予め形成するものとする。これにより、図1の(B)に示したように内管用重ね合わせ板材11を内包する外管用重ね合わせ板材14が製作された段階では、内管用重ね合わせ板材11の溶接接合部である溶接ビード部13と外管用重ね合わせ板材14の溶接接合部である溶接ビード部16とが板材積層方向で互いに重なり合うことがない。言い換えるならば、内管用重ね合わせ板材11は外管用重ね合わせ板材14を形成している外管用板材15a,15b同士の間に挟持されてはいても、それらの内管用重ね合わせ板材11と外管用重ね合わせ板材14とは相互に独立していることになる。また、内管用重ね合わせ板材11を内包している外管用重ね合わせ板材14のうち、内管用重ね合わせ板材11を内包していない周縁部は実質的にフランジ部4として機能する。
【0016】
図1の(C)に示す予備成形工程では、同図(B)に示した重ね合わせ板材すなわち内管用重ね合わせ板材11を内包している外管用重ね合わせ板材14を素材として用いて、その外管用重ね合わせ板材14を内管用重ね合わせ板材11とともに断面略U字状に折り曲げ成形して予備成形体17とする。すなわち、略半円状の凹状部18aを有するダイ18とその凹状部18aにはまり得る大きさのポンチ19およびブランクホルダ20とからなる金型21を用意し、外管用重ね合わせ板材14のフランジ部4をダイ18とブランクホルダ20とで加圧拘束しつつ、内管用重ね合わせ板材11を内包している外管用重ね合わせ板材14をポンチ19にて凹状部18a側に押し込んで、それらの内管用重ね合わせ板材11および外管用重ね合わせ板材14をその凹状部18aおよびポンチ19の形状に合致する形状の予備成形体17を成形する。
【0017】
この場合、ポンチ19の先端面には予め受容凹部19aを形成しておくものとし、予備成形体17の成形末期にその受容凹部19aの形状を予備成形体17の内側に位置することになる一方の内管用板材12aおよび外管用板材15aに転写させることで、それらの板材12a,15aに先行膨出部22を同時成形する。この先行膨出部22はもう一方の内管用板材12bとの間に所定の空間Rを形成するように成形する。
【0018】
上記のように内管用重ね合わせ板材11および外管用重ね合わせ板材14をもって断面略U字状の予備成形体17を成形すると、先行膨出部22を成形しない場合には、予備成形体17のうちその内側となる一方の内管用板材12aおよび外管用板材15aは外側の内管用板材12bおよび外管用板材15bに比べ曲率半径が小さい(周長が板材よりも小さい)ために材料が余り気味となって局部的な増肉を招くおそれがあるが、本実施の形態では予備成形の成形末期に先行膨出部22を成形することで曲率半径の相違に基づく余肉を吸収して局部的な増肉の発生を未然に防止できることになる。
【0019】
こうして予備成形体17が成形されたならば、図2の(A)に示すようにその予備成形体17を上下型23,24からなる金型25で拘束した上で、その内部に液圧を導入して膨出成形する。上下型23,24はそれぞれ半円状の成形面23a,24aを有しているものとし、上下型23,24同士を型締めした際には成形面23a,24aによって真円状もしくは丸穴状の金型面を形成することになる。
【0020】
より詳しくは、同図に示すように、予備成形体17を下型24側の成形面24aに密着するようにセットし、上下型23,24同士を型締めして予備成形体17のフランジ部4を加圧拘束する。この状態で、予備成形体17の内部すなわち内管用板材12a,12b同士の間に液圧を導入すると、一方の外管用板材15bが下型24に対しより一層密着するようになるとともに、上型23に密着していない他方の内管用板材12aおよび外管用板材15aが積極的に膨出して外管用板材15aがやがては上型23側の成形面23aに密着するようになる。
【0021】
この場合、図1の(C)に示したように予備成形体17には予め先行膨出部22が形成されていて、その予備成形体17の内部すなわち内管用板材12a,12b同士の間に予め所定の空間Rが確保されていることから、予備成形体17の内部に液圧を導入するとその先行膨出部22から膨出が進行して内管用板材12aおよび外管用板材15aが上型23の成形面23aになじみやすいことから、成形が常に安定したものとなる。そして、以上をもって図2の(A)に示すように特に外管3の直径が不完全膨出状態でありながらも内外管2,3が相互に密着したままの二重管の中間成形体26が膨出成形される。
【0022】
ここで、上記のように先行膨出部22から膨出が進行することを前提とした上で、同図から明らかなように、内管用重ね合わせ板材11の溶接ビード部13を含む溶接接合部近傍が完全に伸びきらないうちに、言い換えるならば膨出圧力が内管用重ね合わせ板材11の溶接ビード部13を剥離させる方向に加わらないうちに、膨出した一方の内管用板材12aが同じく一方の外管用板材15aを介して上型23側の成形面23aに当接するように設定しておくものとする。すなわち、内管用重ね合わせ板材11の溶接ビード部13を含む溶接接合部近傍での成形が完了する前にそれ以外の内管2の一般部での成形をほぼ完了させ、それより遅れた成形末期に溶接接合部近傍を成形面23a,24aに押し付けるように押し潰して、いわゆるヘミング結合部(はぜ折り部もしくははぜ潰し部)のごとき形態で溶接接合部を含む折り返し重合部27を成形する。
【0023】
こうすることにより、内管2の一般部(溶接ビード部13を含む溶接接合部以外の部分)の直径を最大直径とする円内に内管用板材12a,12b同士の折り返し重合部(正規形状の二重管1が成形された段階で溶接接合部の痕跡として内管2の内部にわずかに突出するものを折り返し重合部という)27がおさまるような形状の二重管の中間成形体26、すなわち内部に折り返し重合部27がわずかに突出しながらも外側にはフランジ部が実質的に付帯しない形状の内管2を有する図2の(A)に示すような断面略円形状の二重管の中間成形体26が成形される。
【0024】
こうして二重管の中間成形体26が成形されたならば、図2の(B)に示すようにその中間成形体26を上下型28,29からなる別の金型30に移し替え、同図(A)とほぼ同様の形態でその中間成形体26を上下型28,29で加圧拘束する。上下型28,29にはその半円状の成形面28a,29aから所定量だけ突出するセクショナルポンチ31が予め設けられており、中間成形体26に付帯しているフランジ部4を上下型28,29にて挟持しつつその中間成形体26を加圧拘束すると、各セクショナルポンチ31が外管3たる外管用板材15a,15bに当接するようになる。これによって、上下型28,29の成形面28a,29aと外管用板材15a,15bとの間には所定の空間Gが確保される。
【0025】
そして、同図(B)の状態で内管2内に液圧を導入しつつ同時に内管2と外管用板材15a,15bとの間にも液圧を導入すると、その外管用板材15a,15bが各成形面28a,29aに密着するまで膨出し、同時に外管3の一部すなわち折り返し重合部27から位相が90度ずれた位置には内管2に当接したままの突起部として長手方向に沿ったビード部5(図3参照)がセクショナルポンチ31により突出成形される。これにより、図3に示すように内外管2,3ともにほぼ断面円形状をなしていて且つ内外管2,3が互いに独立していながらもその内管2がビード部5をもって外管3に支持された構造の二重管1が成形される。
【0026】
このような二重管1をエキゾーストマニホールドとして用いた場合、例えば内管2が熱膨張したとしてもその膨張が外管3により拘束されることはないから、内管2の破断や破損を未然に防止できるようになる。
【0027】
しかも内管2と外管3が相互に独立しているのに加えて、少なくとも内管2にはフランジ部が付帯していないために、その分だけ内管用板材12a,12bのサイズを小さくすることができ、材料歩留まりの向上の上でも有利となる。
【0028】
その上、先に述べたように膨出圧力が内管2の溶接ビード部13を剥離させる方向に加わらないうちに、膨出した内管用板材12aが外管用板材15aを介して上型23側の成形面23aに当接するように考慮してあることから、溶接ビード部13に負担をかけることがなく、本来の溶接品質を維持できることから、内管2の気密性も良好なものとなる。
【0029】
また、外管3に一体に成形したビード部5にて内管2を支えているため、内管2と外管3との間の空間の寸法が安定化するするともに、ビード部5があるがために内管2の剛性が高くなり、必要に応じて内管用板材12a,12bの板厚を小さくすることにより、内管2ひいては二重管1の重量軽減の上でも有利となる利点がある。
【0030】
ここで、ビード部の成形を司る図2のセクショナルポンチ31の形状を極小化して、そのビード部5Aを図4のような形態としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好ましい実施の形態を示す図で、内管用重ね合わせ板材および外管用重ね合わせ板材の製作から予備成形体の成形までの手順を示す工程説明図。
【図2】図1の予備成形体から中間成形体および二重管への成形過程を示す工程説明図。
【図3】一例としてエンジンのエキゾーストマニホールドとして用いられる二重管の構成を示す図で、(A)はその斜視図、(B)は同図(A)の拡大断面説明図。
【図4】図3の示す二重管の変形例を示す断面図。
【符号の説明】
1…二重管
2…内管
3…外管
4…フランジ部
5…ビード部(突起部)
11…内管用重ね合わせ板材
12a,12b…内管用板材
13…溶接ビード部
14…外管用重ね合わせ板材
15a,15b…外管用板材
16…溶接ビード部
17…予備成形体
22…先行膨出部
26…中間成形体

Claims (6)

  1. 二枚の内管用板材を重ね合わせた上でその周縁部を溶接接合して内管用重ね合わせ板材を製作する工程と、
    上記内管用重ね合わせ板材を内包するように二枚の外管用板材を重ね合わせた上でその周縁部を溶接接合して外管用重ね合わせ板材を製作する工程と、
    外管用重ね合わせ板材を内管用重ね合わせ板材とともに液圧により膨出させて所定断面形状の内管を成形する工程と、
    外管用重ね合わせ板材を液圧により単独で膨出させて所定断面形状の外管を成形する工程と、
    を含むことを特徴とする二重管の製造方法。
  2. 上記外管用重ね合わせ板材を製作する際に、内管用重ね合わせ板材の溶接接合部と外管用重ね合わせ板材の溶接接合部とが重ならないように、内管用重ね合わせ板材よりも大きな二枚の外管用板材を重ね合わせた上でその周縁部を溶接接合して外管用重ね合わせ板材を製作することを特徴とする請求項1に記載の二重管の製造方法。
  3. 膨出成形に先立って、内管用重ね合わせ板材を内包してなる外管用重ね合わせ板材を断面略U字状に折り曲げて予備成形体とする工程を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の二重管の製造方法。
  4. 断面略円形状の内管を膨出成形する際に、内管の一般部の直径を最大直径とする円内に内管用板材同士の溶接接合部がおさまるように成形することを特徴とする請求項3に記載の二重管の製造方法。
  5. 外管を単独で膨出成形する際に内管側に向かって突出する突起部を同時成形し、この突起部をもって内管を支持することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の二重管の製造方法。
  6. 予備成形体を成形する際に、内管用板材および外管用板材の一部に先行膨出部を成形することを特徴とする請求項3または4に記載の二重管の製造方法。
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