JP3839787B2 - 二重壁中空金属部品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内壁部と外壁部との間に隙間が確保された二重壁によって区画される中空な金属製部品を製造する二重壁中空金属部品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、車輌用ターボチャージャのタービンハウジング(タービンケース)には、インナケースの外側をアウタケース(アウタシェル)が取り囲むことでインナケースとアウタケースとの間に断熱空間としての隙間を確保した二重壁構造のタービンハウジングがある(特許文献1参照)。かかる二重壁構造の採用によりタービンハウジング内部の保温性を高めて排気ガス浄化触媒の暖機性を向上させることができるという利点がある。特許文献1のタービンケースでは、金属板をプレス加工して得た二つのケース分割片を接合しその接合部位に溶接を施してインナケースを構成した後、そのインナケースを鋳包むようにアウタシェルを鋳造して、インナケースとアウタシェルとの間に断熱空間を確保している。
【0003】
特許文献1ではアウタシェルを鋳造により形成したが、一般に鋳物製ケースは厚肉で重量が重く熱効率も低いという欠点がある。このため、図7に示すようにアウタケースについてもインナケースと同じ手法で構成することが考えられる。即ち図7のタービンハウジングでは、金属板をプレス加工して得た二つのインナケース分割片31,32を接合しその接合部位に全周溶接を施してインナケース30をまず構成している。その後、前記インナケース30を内包し得る形状にプレス加工された二つのアウタケース分割片34,35を接合しその接合部位に全周溶接を施してアウタケース33を構成することで、インナケース30とアウタケース33との間に断熱空間たる隙間36を確保している。
【0004】
【特許文献1】
実開昭57−30332号公報(請求の範囲、第2図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、金属板をプレス加工して得た二つのケース分割片を溶接して一つのケースを構成する手法(溶接法)には、次のような欠点がある。まず、溶接時に溶接ワイヤ等から飛散するスパッタ(粒状溶滴)がインナケースの外表面に付着し易く、タービンハウジングの完成後もインナケースとアウタケースとの間の隙間に異物又はゴミとして残り易い。また、比較的薄肉の金属板からプレス成形されたケース分割片に対し溶接を施した場合、肉厚の薄さが災いし溶接時の熱で変形(熱歪み)を生じ易く、タービンハウジングの寸法精度を低下させる一因となる。更に、溶接法による限り、二つのインナケース分割片の接合部位において図7に示すような段差又は継ぎ目ができることは避けがたく、この段差又は継ぎ目が、ガス流路を構成するインナケース内壁面の滑らかさを損なわせて排気ガスの流通抵抗を増大させる原因となる。本発明はかかる事情に鑑みてなされたものである。
【0006】
本発明の目的は、二重壁を構成する内外壁部間の隙間に異物を残すこと無く、寸法精度に優れた二重壁中空金属部品を製造することができる二重壁中空金属部品の製造方法を提供することにある。また、二重壁中空金属部品が流路構成部品である場合に、流路構成壁面が滑らかであることで流体の流通抵抗の増大を回避可能な二重壁中空金属部品の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、内壁部と外壁部との間に隙間が確保された二重壁によって区画される中空な金属製部品を製造する方法であって、相対的に大径な金属製外管の内側に相対的に小径な金属製内管を配置してなる二重金属素管であって、前記金属製外管の内径と前記金属製内管の外径とがほぼ等しく設定され、且つ、前記金属製外管の全長(L1)が前記金属製内管の全長(L2)よりも長く設定され、内管の部分だけが実質的な二重管部となっている二重金属素管を準備する準備工程と、前記二重金属素管をその両端開口部を塞いだ状態で第1成形型にセットし、その二重金属素管のうちの内管の内部に流体圧を作用させて二重金属素管を膨出させることにより、第1成形型の型形状に対応した外形状を前記二重金属素管の内管及び外管の双方に付与する一次成形工程と、前記一次成形工程で得られた一次成形品をその両端開口部を塞いだ状態であって前記一次成形品の両端開口部のうちの一方では内管部分の開口部を塞ぐこと無く外管部分の開口部のみを密封手段で塞いだ状態で第2成形型にセットし、その一次成形品のうちの内管部分の内部及び内管部分と外管部分との間に流体圧を作用させて外管部分を膨出させることにより、第2成形型の型形状に対応した外形状を前記一次成形品の外管部分に付与する二次成形工程とを備えてなることを特徴とする二重壁中空金属部品の製造方法である。
【0008】
この方法では、先ず出発材料として二重金属素管が準備される。この二重金属素管は、相対的に大径な金属製外管の内側に相対的に小径な金属製内管を配置したものであり、金属製内管及び外管はそれぞれ、後記一次又は二次成形品における内壁部及び外壁部の構成素材となる。一次成形工程では、前記二重金属素管がその両端開口部を塞いだ状態で第1成形型にセットされる。そして、その二重金属素管のうちの内管の内部(内側)に流体圧を作用させて二重金属素管の少なくとも一部を膨出させることで、第1成形型の型形状に対応した外形状が二重金属素管の内管及び外管の双方に付与された一次成形品が得られる。続く二次成形工程では、一次成形工程で得られた一次成形品が、その両端開口部を塞いだ状態であって前記一次成形品の両端開口部のうちの一方では内管部分の開口部を塞ぐこと無く外管部分の開口部のみを密封手段で塞いだ状態で第2成形型にセットされる。そして、その一次成形品のうちの内管部分の内部及び内管部分と外管部分との間の領域に流体圧を作用させて外管部分の少なくとも一部を更に膨出させることで、第2成形型の型形状に対応した外形状が前記一次成形品の外管部分に付与される。こうして得られた二次成形品は、第1成形型の型形状に対応した形状部分を持つ金属製内管由来の内壁部と、第2成形型の型形状に対応した形状部分を持つ金属製外管由来の外壁部とからなる二重壁であって、その内壁部と外壁部との間に第1及び第2成形型の型形状差に対応する隙間が確保された二重壁によって区画される中空な金属製部品となる。
【0009】
この方法によれば、中空金属製部品の二重壁を構成する内壁部及び外壁部は、出発材料たる金属製内管及び外管を流体圧成形の手法(ハイドロフォーム)によりそれぞれ段階的に塑性変形させたものである。それ故、従来の溶接法におけるスパッタの如き異物を内外壁部間の隙間に残すこと無く、内壁部及び外壁部を優れた寸法精度で成形することができる。また、二重壁中空金属部品が流路構成部品(例えばタービンハウジング)である場合に、ハイドロフォームによる一体成形で得られた内壁部又は外壁部の流路構成壁面は、段差や継ぎ目の無い比較的滑らかな壁面となるため、流体の流通抵抗の増大を回避できる。
【0010】
この方法によれば、金属製外管の内径と金属製内管の外径とがほぼ等しいことで、外管の内側に内管の外側がほぼ接した状態の二重金属素管となる。それ故、一次成形工程において内管の内部(内側)に流体圧を作用させるだけで、第1成形型の型形状に対応した外形状を二重金属素管の内管及び外管の双方に対し正確に付与することが可能になる。また、金属製外管の全長(L1)を金属製内管の全長(L2)よりも長くすることで、一次成形工程で得られた一次成形品の両端開口部を塞いでその内部を密閉状態(流体で加圧可能な状態)としながらも、その一次成形品の内管部分と外管部分との間に流体が進入する余地を作り出すことができる。それ故、一次成形品のうちの内管部分と外管部分との間に流体圧を作用させて外管部分の少なくとも一部を膨出させることにより、第2成形型の型形状に対応した外形状を一次成形品の外管部分に付与することが可能になる。
【0011】
この方法によれば、一次成形品の両端開口部を塞いだ状態の下、その一次成形品の両端開口部のうちの一方では内管部分の開口部を塞ぐこと無く外管部分の開口部のみを密封手段で塞いだ状態で当該一次成形品を第2成形型にセットすることにより、内管部分の内部領域及び内管部分と外管部分との間の領域に流体を進入させて、それぞれの領域に流体圧を及ぼすことが可能になる。第2成形型にセットされた一次成形品に流体圧を作用させた場合、外管部分の少なくとも一部は流体圧によって外方向に膨出させられ、第2成形型の型形状に対応した外形状が当該外管部分に対して付与される。これに対し、一次成形品の内管部分にあっては、その内側に作用する流体圧と、その外側(つまり内管部分と外管部分との間の領域)に作用する流体圧とが等しいため、内管部分の内外で圧力差が生じず内管部分の更なる変形はもたらされない。従って、内管部分は一次成形工程で付与された形状をそのまま維持する。こうして得られた二次成形品は、一次成形工程でほぼ確定的に付与される内壁部と、一次成形工程で予備付形された後に二次成形工程で最終付形される外壁部との間に隙間を有する一体成形物としての二重壁を持つにいたる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載の二重壁中空金属部品の製造方法において、前記一次成形工程で使用する第1成形型は、第1左成形型及び第1右成形型を備え、前記一次成形工程では、前記二重金属素管のうちの内管の両端開口部を密封手段で塞いだ状態で当該二重金属素管を、第1左成形型と第1右成形型とが離間状態にある第1成形型にセットし、次いで、その内管の内部にのみ流体圧を作用させながら第1左成形型と第1右成形型とを相対接近させ左右成形型を型閉じすることを特徴とする。
【0013】
この方法によれば、二重金属素管のうちの内管の内部(内側)にのみ流体圧を確実に作用させることが可能となる。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の二重壁中空金属部品の製造方法において、前記二次成形工程で使用する第2成形型は、第2左成形型及び第2右成形型を備え、前記二次成形工程では、前記一次成形工程で得られた一次成形品を、その一次成形品の両端開口部のうちの一方では内管部分の開口部を塞ぐこと無く外管部分の開口部のみを密封手段で塞いだ状態、且つ、前記一次成形品の両端開口部のうちの他方では内管部分及び外管部分の双方の開口部を塞いだ状態で、第2左成形型と第2右成形型とが型閉じ状態にある第2成形型にセットし、次いで、その一次成形品のうちの内管部分の内部及び内管部分と外管部分との間に流体圧を作用させることを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の二重壁中空金属部品の製造方法において、前記準備工程では更に、前記二重金属素管の外管及び内管の端部揃えをし、その端部揃えをした方の端部に対して縮径加工を施して当該端部付近を二重金属素管の他部位よりも小径化した小径部とすることを特徴とする。この方法によれば、二重金属素管の縮径加工によって内管や外管に歪みが生じていた場合でも、その後の流体圧成形によって内管や外管に内在する歪みを修正除去して正確な形状を付与できるので、最終製品(例えばタービンハウジング)の寸法精度向上を図ることができる。
【0016】
尚、請求項1において「前記一次成形品の両端開口部のうちの他方では、内管部分及び外管部分の双方の開口部を塞いだ状態にあること」は好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を車輌エンジン用ターボチャージャのタービンハウジング(二重壁構造タイプ)に適用した一実施形態について説明する。ちなみにターボチャージャは、タービンとコンプレッサとが同軸連結された構造を持ち、それぞれに独立したハウジングを有している。一般にタービンハウジングは、そのほぼ中央にタービンを収容するための領域と、そのタービン収容領域を取り囲む渦巻状の排気ガス流路を提供するスクロール部とを備えている。
【0018】
(二重金属素管の準備工程)
先ず出発材料として、図1(A)に示すような二重金属素管を準備する。この二重金属素管は、相対的に大径なストレート円筒状の金属製外管10の内側に、相対的に小径なストレート円筒状の金属製内管20を配置したものである。外管10の内径D1は内管20の外径D2に等しく、外管10の内側に内管20の外側が密接している。また、外管10の全長L1を内管20の全長L2よりも長く設定し、外管10及び内管20のそれぞれの右端部を右端側でほぼ揃えている。このため、両管の全長差(L1−L2)に相当する距離だけ、外管10の左端部が内管20の左端部よりも左方に位置している。つまり、内管20の部分だけが実質的な二重管部となっており、外管10の左端部と内管20の左端部との間は外管20だけの単管部となっている。なお、外管10及び内管20を構成する金属としては、ステンレス鋼等の鉄系金属を例示できる。
【0019】
次に図1(B)に示すように、上記二重金属素管の右端部(即ち外管10及び内管20の端部揃えをした方の端部)に対して縮径加工を施し、当該右端部付近を二重金属素管の他部位よりも小径化した小径部とする。この縮径加工の具体的手法としては、プレス絞りやスピニング加工をあげることができる。
【0020】
(一次成形工程)
一次成形工程では、図2及び図3に示すような第1の付形装置を使用する。この第1付形装置は、第1成形型を構成する第1左成形型31及び第1右成形型32、並びに、これら左右成形型にそれぞれ設けられた密封手段としての左シールプラグ33及び右シールプラグ34を備えている。第1左成形型31と第1右成形型32とは相対接近離間可能となっており、左右両型31,32の型閉じ時(型合せ時)には、第1左成形型の成形用凹部31aと第1右成形型の成形用凹部32aとにより一次成形品の外形状をかたどった成形空間(即ち第1成形型の型形状)が構築される。第1左成形型31及び左シールプラグ33には、調圧ポンプ機構Pから前記成形空間内に圧力流体(本実施形態では水)を供給するための通路35が設けられている。
【0021】
図2に示すように、第1左成形型31と第1右成形型32とが離間状態にある第1成形型に対し、二重金属素管の右端側(小径部側)の開口部を右シールプラグ34で塞ぐと共に、二重金属素管の左端側の開口部を左シールプラグ33で塞いだ状態で、その二重金属素管をセットする。このとき、右シールプラグ34に設けられたOシールリング34aが内管20の右端部内周面に密接すると共に、左シールプラグ33に設けられたOシールリング33aが内管20の左端部内周面に密接する。こうして、第1成形型(31,32)にセットされた二重金属素管のうちの内管20の内部にのみ、前記通路35を介して圧力流体を導入可能とする。
【0022】
第1成形型(31,32)への二重金属素管のセットが完了したら、内管20の内部に水を満たすと共に水圧を所定圧力(例えば50MPa又はそれ以上)にまで上昇させる。そして、内管内部の水圧をほぼ一定に保ちながら、第1左成形型31と第1右成形型32とをゆっくりと相対接近させ、図3に示すように左右成形型31,32を型閉じする。型閉じ完了時には、内管内部の水圧を更に高い所定圧力(例えば150〜200MPa)にまで上昇させる。こうした一連の操作により、二重金属素管を構成する内管20及び外管10の一部が外方向に膨出するように塑性変形させられ、その膨出変形した内管20及び外管10の双方に対して第1成形型の型形状(31a,32a)に対応した外形状が付与される。こうして、図3及び図4に示すような一次成形品が得られる。
【0023】
(二次成形工程)
二次成形工程では、図4及び図5に示すような第2の付形装置を使用する。この第2付形装置は、第2成形型を構成する第2左成形型41及び第2右成形型42、並びに、これら左右成形型にそれぞれ設けられた密封手段としての左シールプラグ43及び右シールプラグ44を備えている。第2左成形型41と第2右成形型42とは相対接近離間可能となっており、左右両型41,42の型閉じ時(型合せ時)には、第2左成形型の成形用凹部41aと第2右成形型の成形用凹部42aとにより二次成形品の外形状をかたどった成形空間(即ち第2成形型の型形状)が構築される。なお、第2成形型の型形状(41a,42a)は、前記第1成形型の型形状(31a,32a)とほぼ相似形であるが、大きさは第1成形型の場合よりも大きくなっている。また、第2左成形型41及び左シールプラグ43には、調圧ポンプ機構Pから前記成形空間内に圧力流体(本実施形態では水)を供給するための通路45が設けられている。
【0024】
図4に示すように、前記一次成形工程で得られた一次成形品の右端側の開口部を右シールプラグ44で塞ぐと共に、一次成形品の左端側の開口部を左シールプラグ43で塞いだ状態で、当該一次成形品を第2成形型(41,42)にセットする。一次成形品の全長は二重金属素管の全長(L1)よりも短くなっているので、左右シールプラグ43,44を装着して第2成形型にセットしたとき、第2左成形型41及び第2右成形型42は直ちに型閉じ状態となる。このとき、右シールプラグ44に設けられたOシールリング44aは一次成形品の内管部分20の右端部内周面に密接する一方、左シールプラグ43に設けられたOシールリング43aは一次成形品の外管部分10の左端部内周面に密接する。つまり、内管部分20の左端部と外管部分10の内周面との境界KよりもOシールリング43aが左方に位置する結果、内管部分20の左端開口部を塞ぐこと無く外管部分10の左端開口部のみが左シールプラグ43によって塞がれる。こうして、第2成形型(41,42)にセットされた一次成形品の内管部分20の内側に前記通路45を介して圧力流体が導入可能となるのみならず、内管部分20の左端部と外管部分10の内周面との境界Kを入口として、一次成形品の内管部分20と外管部分10との間にも圧力流体が進入可能となる。
【0025】
第2成形型への一次成形品のセットが完了したら、内管部分20の内側に水を満たすと共に水圧を所定圧力(例えば150〜200MPa)にまで徐々に上昇させる。水圧の上昇に伴い、内管部分20の左端部と外管部分10の内周面との境界Kから、一次成形品の内管部分20と外管部分10との間に高圧水が次第に進入する。そして、その高圧水によって外管部分10の一部が外方向に膨出するように塑性変形させられ、その膨出変形した外管部分10に対して第2成形型の型形状(41a,42a)に対応した外形状が付与される(図5参照)。これに対し、一次成形品の内管部分20と外管部分10との間に進入した高圧水は内管部分20を内方向に押圧するが、内管部分20の内側には液的につながった同じ高圧水が存在しそれは内管部分20を外方向に押圧する。内管部分20の内側に作用する水圧と、外側に作用する水圧とは全く等しいため、このときの高圧水の作用によって内管部分20が塑性変形することは無く、内管部分20は一次成形工程で付与された形状をそのまま維持する。
【0026】
かかる二次成形工程を経て図6(A)に示すような二次成形品が得られる。この二次成形品の外管部分10の左端部を一点鎖線で示す切断線に沿って切断し、不要部分を除去することにより、図6(B)に示すような二重壁中空金属部品としてのタービンハウジングを得ることができる。尚、図6(B)に示す二重壁構造のタービンハウジングは、第1成形型の型形状(31a,32a)に対応した形状を持つ金属製内管20由来の内壁部としてのインナケース21と、第2成形型の型形状(41a,42a)に対応した形状を持つ金属製外管10由来の外壁部としてのアウタケース11とを具備する。そして、インナケース21により、タービン収容領域22と、そのタービン収容領域22を取り囲む渦巻状の排気ガス流路を提供するスクロール部23とが区画形成される。また、インナケース21とアウタケース11との間には、第1及び第2成形型の型形状差に対応する断熱空間としての隙間24が確保される。
【0027】
(効果)本実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
タービンハウジングの二重壁を構成するインナケース21及びアウタケース11は、出発材料たる二重金属素管の金属製内管20及び外管10を流体圧成形の手法(ハイドロフォーム)によってそれぞれ塑性変形させたものであるため、従来の溶接法におけるスパッタの如き異物をインナ及びアウタケース21,11間の隙間24に残すこと無く、且つ、熱歪みを生じることなくインナ及びアウタケース21,11を優れた寸法精度で成形することができる。
【0028】
また、二重金属素管の縮径加工によって内管20や外管10に歪みが生じていた場合でも、その後の流体圧成形によって内管20や外管10に内在する歪みを修正除去して正確な形状を付与でき、最終製品たるタービンハウジングの寸法精度向上を図ることができる。
【0029】
本実施形態で得られたタービンハウジングは、インナケース21及びアウタケース11の壁厚が比較的薄いため、軽量で且つ熱容量も小さい。それ故、排気ガスから奪い取る熱量も少なく、ターボチャージャの熱効率を向上させることができる。また、インナケース21及びアウタケース11はステンレス鋼でできているので耐熱性に優れている。更に、ハイドロフォームによる一体成形法で得られたインナケース21のガス流路構成壁面は、段差や継ぎ目の無い滑らかな壁面となるため、排気ガスの流通抵抗の増大を回避できる。
【0030】
なお、本発明の適用対象はタービンハウジングに限定されるものではなく、内壁部と外壁部との間に隙間が確保された二重壁によって区画される全ての中空金属製部品の製造に本件方法を適用できる。
【0031】
この明細書において「流体」とは、液体、気体及び液体と同視し得る半流動体を指し、流体圧成形に使用可能な加圧媒体がこれら広範な流体であることを意味するものである。
【0032】
【発明の効果】
本発明の二重壁中空金属部品の製造方法によれば、中空金属製部品の二重壁を構成する内壁部及び外壁部は、出発材料たる二重金属素管を構成する金属製内管及び外管を流体圧成形の手法(ハイドロフォーム)によりそれぞれ段階的に塑性変形させたものであるため、従来の溶接法におけるスパッタの如き異物を内外壁部間の隙間に残すこと無く、内壁部及び外壁部を優れた寸法精度で成形することができる。また、二重壁中空金属部品が流路構成部品(例えばタービンハウジング)である場合に、ハイドロフォームによる一体成形で得られた内壁部又は外壁部の流路構成壁面は、段差や継ぎ目の無い比較的滑らかな壁面となるため、流体の流通抵抗の増大を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は出発材料としての二重金属素管の断面図、(B)は縮径加工後の二重金属素管の断面図。
【図2】二重金属素管のセット時における第1付形装置の断面図。
【図3】一次成形実施時における第1付形装置の断面図。
【図4】一次成形品のセット時における第2付形装置の断面図。
【図5】二次成形実施時における第2付形装置の断面図。
【図6】(A)は二次成形品の断面図、(B)は前記二次成形品から得られる二重壁構造のタービンハウジングの断面図。
【図7】従来の溶接法で作られた二重壁タービンハウジングの断面図。
【符号の説明】
10…金属製外管、11…タービンハウジングのアウタケース(外壁部)、20…金属製内管(10及び20は二重金属素管を構成する)、21…タービンハウジングのインナケース(内壁部)、24…内壁部と外壁部との間の隙間、31…第1左成形型、32…第1右成形型(31及び32は第1成形型を構成する)、31a,32a…成形用凹部(第1成形型の型形状を構成する)、33,34…シールプラグ(密封手段)、41…第2左成形型、42…第2右成形型(41及び42は第2成形型を構成する)、41a,42a…成形用凹部(第2成形型の型形状を構成する)、43,44…シールプラグ(密封手段)、D1,D2…管の内径及び外径、K…境界、L1,L2…管の全長、P…調圧ポンプ機構。
Claims (4)
- 内壁部と外壁部との間に隙間が確保された二重壁によって区画される中空な金属製部品を製造する方法であって、
相対的に大径な金属製外管の内側に相対的に小径な金属製内管を配置してなる二重金属素管であって、前記金属製外管の内径と前記金属製内管の外径とがほぼ等しく設定され、且つ、前記金属製外管の全長(L1)が前記金属製内管の全長(L2)よりも長く設定され、内管の部分だけが実質的な二重管部となっている二重金属素管を準備する準備工程と、
前記二重金属素管をその両端開口部を塞いだ状態で第1成形型にセットし、その二重金属素管のうちの内管の内部に流体圧を作用させて二重金属素管を膨出させることにより、第1成形型の型形状に対応した外形状を前記二重金属素管の内管及び外管の双方に付与する一次成形工程と、
前記一次成形工程で得られた一次成形品をその両端開口部を塞いだ状態であって前記一次成形品の両端開口部のうちの一方では内管部分の開口部を塞ぐこと無く外管部分の開口部のみを密封手段で塞いだ状態で第2成形型にセットし、その一次成形品のうちの内管部分の内部及び内管部分と外管部分との間に流体圧を作用させて外管部分を膨出させることにより、第2成形型の型形状に対応した外形状を前記一次成形品の外管部分に付与する二次成形工程と
を備えてなることを特徴とする二重壁中空金属部品の製造方法。 - 前記一次成形工程で使用する第1成形型は、第1左成形型及び第1右成形型を備え、
前記一次成形工程では、前記二重金属素管のうちの内管の両端開口部を密封手段で塞いだ状態で当該二重金属素管を、第1左成形型と第1右成形型とが離間状態にある第1成形型にセットし、次いで、その内管の内部にのみ流体圧を作用させながら第1左成形型と第1右成形型とを相対接近させ左右成形型を型閉じすることを特徴とする請求項1に記載の二重壁中空金属部品の製造方法。 - 前記二次成形工程で使用する第2成形型は、第2左成形型及び第2右成形型を備え、
前記二次成形工程では、前記一次成形工程で得られた一次成形品を、その一次成形品の両端開口部のうちの一方では内管部分の開口部を塞ぐこと無く外管部分の開口部のみを密封手段で塞いだ状態、且つ、前記一次成形品の両端開口部のうちの他方では内管部分及び外管部分の双方の開口部を塞いだ状態で、第2左成形型と第2右成形型とが型閉じ状態にある第2成形型にセットし、次いで、その一次成形品のうちの内管部分の内部及び内管部分と外管部分との間に流体圧を作用させることを特徴とする請求項1又は2に記載の二重壁中空金属部品の製造方法。 - 前記準備工程では更に、前記二重金属素管の外管及び内管の端部揃えをし、その端部揃えをした方の端部に対して縮径加工を施して当該端部付近を二重金属素管の他部位よりも小径化した小径部とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の二重壁中空金属部品の製造方法。
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