JP2004319186A - 非水電解質電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】大電流放電時の容量低下やサイクル特性の劣化を防止する。
【解決手段】負極合剤層9に添加されたカーボンナノチューブが、負極合剤層9中で隣接する負極活物質粒子の間にできる隙間に入り込み、負極活物質同士を電気的に接続させる導電材となることから、充放電により負極活物質が膨張収縮して隣接する負極活物質同士が離間しても、負極合剤層9の電子伝導性の低下が抑制されて大電流放電時の容量低下や、サイクル特性の劣化を防止できる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、負極、正極がセパレータを介して積層された電池素子と、非水電解質とを備え、電池特性が大幅に改良された非水電解質電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年においては、例えばノート型パーソナルコンピュータ、携帯型電話機、カメラ一体型VTR(video tape recorder)等の電子機器の電源として、軽量で高エネルギー密度な二次電池の開発が進められている。この高いエネルギー密度を有する二次電池としては、例えば鉛電池やニッケルカドミウム電池等よりも大きなエネルギー密度を有し、負極にリチウム金属を用いたリチウム二次電池がある。このリチウム二次電池は、充電時に負極上にリチウムを析出しやすく、デンドライトして析出したリチウムが不活性となるために優れた充放電サイクル特性を得ることが困難である。
【0003】
このような問題を解決する二次電池として、負極に炭素質材料を用いたリチウムイオン二次電池がある。このリチウムイオン二次電池は、負極に用いる炭素質材料、具体的には例えば黒鉛等の黒鉛層間にリチウムイオンをインターカレーションさせる反応を電池反応に用いている。このため、リチウムイオン二次電池では、負極活物質にリチウムのドープ/脱ドープが可能な炭素質材料が用いられる。これにより、リチウムイオン二次電池では、充電時に負極にリチウムが析出することが抑制されて、優れた充放電サイクル特性が得られる。また、このリチウムイオン二次電池においては、負極に用いられる炭素質材料が空気中でも安定なため、電池を生産する際の歩留まりを向上させることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このようなリチウムイオン二次電池では、最近の電子機器の更なる高性能化及び高機能化に伴い、大電流による放電、いわゆる高負荷放電に耐え得るものが要求されている。
【0005】
しかしながら、現状のリチウムイオン二次電池では、大電流で放電した場合、特に負極側の電気抵抗が大きくなって内部インピーダンスが増大し、放電容量が低下してしまうのが現状である。具体的には、大電流で放電すると、リチウムイオンが急速に脱ドープされる炭素質材料が急速に収縮し、隣接する炭素質材料同士が離間して炭素質材料同士の接触が途切れて負極の電子伝導性が低下してしまう。これにより、負極の電気抵抗が大きくなり、内部インピーダンスが増大して放電容量が低下してしまう。同様に充放電を繰り返した場合も、内部インピーダンスが増大するため、サイクル特性が低下してしまう問題があった。
【0006】
したがって、リチウムイオン二次電池を電子機器の電源として用いる上で、高負荷放電特性やサイクル特性を改善することは重要な課題となっている。
【0007】
そこで、本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、高負荷放電されても高い放電容量が得られる非水電解質電池を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述した目的を達成する本発明に係る非水電解質電池は、リチウムのドープ/脱ドープが可能な負極活物質を有する負極と、リチウムのドープ/脱ドープが可能な正極活物質を有する正極とがセパレータを介して積層された電池素子と、電解質塩と非水溶媒とを有する非水電解質とを備え、負極が、負極活物質を含有する負極合剤を有し、この負極合剤に筒状炭素質材料からなるカーボンナノチューブが添加されていることを特徴としている。
【0009】
この非水電解質電池では、負極合剤に添加されるカーボンナノチューブが負極活物質同士の隙間に介在されて、負極活物質同士を電気的に接続させる導電材となって負極合剤の電子伝導性を向上させることから、大電流が流れた際に負極活物質が急速に収縮することで起こる負極の電気抵抗の向上を抑制できる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した非水電解質電池について、図1に示すリチウムイオン二次電池(以下、電池と記す。)1を参照にして説明する。この電池1は、例えば携帯型電話機等の電子機器等に設けられる電池パック等に実装され、電子機器等に対して所定の電圧の電力を安定して供給する電源となるものである。そして、電池1は、発電要素となる電池素子2と、電池内部でリチウムイオンを移動させる際の媒体となる非水電解液3とが、外装容器となる外装缶4内に一括して封入されたものである。
【0011】
発電要素となる電池素子2は、帯状の負極5と、帯状の正極6とが、セパレータ7を介して密着状態で電極の長手方向に巻回された巻回体である。
【0012】
負極5は、負極活物質と結着剤とを含有する負極合剤塗液を負極集電体8の主面に塗布、乾燥、加圧することにより、負極集電体8の主面上に負極合剤層9が圧縮形成されものである。そして、負極合剤層9には、電子伝導性を向上させることが可能なカーボンナノチューブが所定量添加されている。また、負極5には、負極リード端子10が負極集電体8の所定の位置に、負極集電体8の幅方向の一方端部より延出するように接続されている。この負極リード端子10には、例えば銅、ニッケル等の導電性金属からなる短冊状金属片等を用いる。
【0013】
負極5に含有される負極活物質には、リチウム対して2V以下の電位を有し、リチウムをドープ・脱ドープする材料を用いる。具体的には、例えばリチウム、リチウム合金、又はリチウムイオンをドープ・脱ドープできる炭素質材料等が用いられる。
【0014】
リチウムイオンをドープ・脱ドープできる炭素質材料としては、例えば難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維あるいは活性炭等が挙げられる。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークス等がある。有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂等の高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいい、一部には難黒鉛化性炭素又は易黒鉛化性炭素に分類されるものもある。
【0015】
これらの炭素質材料のうち、特に黒鉛類は、電気化学当量が大きく、高いエネルギー密度を得ることができる。このような黒鉛類は、例えば石炭系コークス等の出発原料に2000℃以上の焼成温度で焼成処理を施し、冷却後に粉砕、分級することで得られる。
【0016】
黒鉛類としては、例えば、真密度が2.10g/cm以上のものが充放電サイクル特性等に良好に作用する。なお、このような真密度を得るには(002)面のC軸結晶子厚みが14.0nm以上であることが必要である。また、(002)面の面間隔が0.340nm未満であると共に、その範囲が0.335nm以上、0.337nm以下であればより好ましい。また、黒鉛類においては、真密度及び嵩密度の他に、平均形状パラメータが125以下、BET法により測定した比表面積が9m/g以下の場合、粒子に付着するサブミクロン単位の二次粒子が少なくなることから、充放電サイクル特性等にさらに良好に作用することになる。
【0017】
黒鉛類においては、レーザ回折法による粒度分布の累積10%粒径が3μm以上であり、累積50%粒径が10μm以上であり、累積90%粒径が50μm以上となるように粉砕、分級することによって、内部短絡の防止等の電池安全性及び電池信頼性に良好に作用することとなる。黒鉛類においては、粒子の破壊強度が6kgf/mm以上、且つ嵩密度が0.4g/cm以上にすることにより、負極4の電極合剤層9中に後述する固体電解質6等が含浸される空孔が多くできることから、電池特性を良好にできる。
【0018】
負極活物質としては、以上のような炭素質材料の他に、例えばリチウムをドープ・脱ドープする金属化合物等を用いることも可能である。このような金属化合物としては、例えば酸化鉄、酸化ルテニウム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化チタン、酸化スズ等の比較的に卑な電位でリチウムをドープ・脱ドープする酸化物、これら酸化物の酸素を窒素で置換した窒化物等を使用できる。
【0019】
負極4では、負極活物質を押し固めて負極合剤層9を形成させる結着剤として、非水電解液電池の負極合剤に用いられる例えばポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレン等といった樹脂材料等を用いることができる。負極4では、負極集電体8に例えば銅等の導電性金属等からなる箔状金属や網状金属等を用いる。
【0020】
また、負極合剤層9においては、電子伝導性を向上させるカーボンナノチューブが所定量添加されている。カーボンナノチューブは、大きさがナノ単位の筒状、すなわちチューブ状構造の炭素質材料であり、大きさがミクロン単位である負極活物質の隣接する粒子同士の間にできる隙間に入り込み、負極活物質同士を電気的に接続させる導電材となることから、負極合剤層9の電子伝導性を向上させるように作用する。
【0021】
また、カーボンナノチューブは、炭素質材料であることからリチウムイオンをドープ・脱ドープすることが可能であり、筒状で表面積が大きく、筒状の外周面及び内周面でリチウムイオンのドープ・脱ドープが行えることから電池1の電池容量を大きくできる。
【0022】
さらに、カーボンナノチューブは、筒状であることから、後述する非水電解液3を筒内に貯めることが可能であり、負極合剤層9の保液性を高めて負極合剤層9の電子伝導性を更に向上させる。
【0023】
負極4において、以上のような作用効果を供与するカーボンナノチューブは、例えば一酸化炭素、エチレン、ベンゼン等の炭化水素ガス等を、500℃以上の雰囲気中で、Fe、Fe−Ni、Fe−Mn等を微粒子化させた金属や合金等からなる触媒に接触させて熱分解させることで合成される。また、カーボンナノチューブは、以上のような触媒による熱分解により合成させる他に、例えばアーク放電法やレーザーアブレーション法等によっても合成可能である。さらに、以上のような方法で得られるカーボンナノチューブは、例えば不活性ガス雰囲気中、2000℃以上、好ましくは2500℃以上で所定の時間保持させる黒鉛化処理を施すことも可能である。さらにまた、カーボンナノチューブは、負極4の厚み、使用される負極活物質の粒径等に応じてチューブ長さが所定の長さになるように粉砕することも可能である。
【0024】
このカーボンナノチューブは、そのチューブの直径が50nm以下になるように合成されている。カーボンナノチューブの直径を50nmよりも太くすると、負極合剤層9に添加させた際に、負極合剤層9が嵩高くなって負極活物質を押し固めるのに用いる結着剤の使用量が増えてしまい負極合剤層9に対する負極活物質の充填量が減少し、電池容量が低下させてしまう。
【0025】
したがって、負極4においては、直径が50nm以下のカーボンナノチューブを用いることにより、負極合剤層9が嵩高になることが抑えられることから、負極合剤層9に含有される結着剤が増えることなく電池容量の低下が抑制される。
【0026】
ここで、カーボンナノチューブの直径と、負極合剤層を形成するのに必要な結着剤量との関係を評価した結果を図2に示す。ここでは、負極合剤層に含有される負極活物質として球晶人造黒鉛粉末(以下、球晶黒鉛と記す。)を用い、この球晶黒鉛に対して直径を変えたカーボンナノチューブを3重量%添加させたときの負極合剤層を形成するのに必要な結着剤量を測定した。また、ここでは、負極合剤層を形成するのに必要な結着剤量を次のようにして決めた。カーボンナノチューブを添加しない負極合剤層が負極集電体より剥離するときの剥離強度を測定し、この剥離強度と、カーボンナノチューブを添加した負極合剤層の剥離強度とが略同じになったときの結着剤の使用量を、負極合剤層を形成するのに必要な結着剤量とした。負極合剤層の剥離強度は次のようにして測定した。負極合剤層の表面に貼り付けた粘着テープを負極合剤層の表面に対して略垂直に引っ張りながら剥がしたときに、粘着テープと一緒になって負極合剤層が負極集電体より剥がれるのに必要な張力を、負極合剤層の剥離強度として測定した。なお、図2中丸印は、カーボンナノチューブの直径に対する負極合剤層を形成するのに必要な結着剤量を示し、図2中横軸は、カーボンナノチューブの直径を示し、図2中縦軸は、負極合剤層を形成するのに必要な結着剤量をカーボンナノチューブが添加されていない負極合剤層に使用した結着剤に対する相対比で示している。
【0027】
図2に示す評価結果から、カーボンナノチューブの直径が50nmを越えて太くなると、負極合剤層を形成するのに必要な結着剤量が急激に増えていくことがわかる。すなわち、カーボンナノチューブの直径が50nmを越えると、球晶黒鉛を押し固めるのに必要な結着剤の使用量が増えてしまい負極合剤層に対する負極活物質の充填量が減少することがわかる。
【0028】
したがって、直径が50nm以下のカーボンナノチューブを用いることにより、負極合剤層に含有される結着剤量が抑えられ、電池容量が小さくなることを防止できることがわかる。
【0029】
また、カーボンナノチューブは、負極合剤層9全体に対し、0.2重量%以上、5重量%以下の範囲で添加されている。負極合剤層9全体に対してカーボンナノチューブの添加量が0.2重量%よりも少ないと、負極合剤層9に対してカーボンナノチューブの添加量が少なすぎて、例えば負極合剤層9の電子伝導性を向上させる等の上述したカーボンナノチューブによる作用効果を得ることが困難になる。一方、負極合剤層9全体に対してカーボンナノチューブの添加量が5重量%よりも多いと、負極合剤層9に対してカーボンナノチューブの添加量が多すぎて負極合剤層9に含有される負極活物質の量が少なくなることから、電池容量を低下させてしまう。したがって、負極4においては、カーボンナノチューブが負極合剤層9全体に対して0.2重量%以上、5重量%以下の範囲で添加されることにより、負極合剤層9の電子伝導性を向上し、且つ電池容量の低下を抑制することができる。
【0030】
電池素子2において、正極6は、正極活物質と結着剤とを含有する正極合剤塗液を正極集電体11の主面に塗布、乾燥、加圧することにより、正極集電体11の主面上に正極合剤層12が圧縮形成された構造となっている。正極6には、正極リード端子13が正極集電体11の所定の位置に溶接等で電気的に接続されている。この正極リード端子13には、例えばアルミニウム等の導電性金属からなる帯状金属片等を用いる。
【0031】
正極6において、正極合剤層12に含有される正極活物質には、リチウムイオンをドープ/脱ドープすることが可能な材料を用いる。具体的には、例えば化学式LiMO(Liの価数xは0.5以上、1.1以下の範囲であり、Mは遷移金属のうちの何れか一種又は複数種の化合物である。)等で示されるリチウム遷移金属複合酸化物、TiS、MoS、NbSe、V等のリチウムを含有しない金属硫化物、金属酸化物、或いは特定のポリマー等を用いる。これらのうち、リチウム遷移金属複合酸化物としては、例えばリチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO)、リチウム・ニッケル複合酸化物(LiNiO)、LiNiCo1−y(リチウムの価数x、ニッケルの価数yは電池の充放電状態によって異なり、1−yはコバルトの価数であり、通常0<x<1、0.7<y<1.02である。)や、LiMn等で示されるスピネル型リチウム・マンガン複合酸化物等が挙げられる。そして、正極2では、正極活物質として、上述した金属硫化物、金属酸化物、リチウム複合酸化物等のうちの何れか一種又は複数種を混合して用いることも可能である。
【0032】
正極6では、正極合剤層12の結着剤として、非水電解液電池の正極合剤に用いられる例えばポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等といった樹脂材料等を用いることができる他に、正極合剤層12に導電材として炭素質材料等を添加したり、公知の添加剤等を添加したりすることができる。また、正極6では、正極集電体11として例えばアルミニウム等、導電性金属等からなる箔状金属や網状金属等を用いる。
【0033】
セパレータ7は、負極5と正極6とを離間させるものであり、この種の非水電解液電池の絶縁性微多孔膜として通常用いられている公知の材料を用いることができる。具体的には、例えばポリプロピレン、ポリエチレン等の高分子フィルムが用いられる。また、リチウムイオン伝導度とエネルギー密度との関係から、セパレータ7の厚みはできるだけ薄い方が好ましく、その厚みを30μm以下にして用いる。
【0034】
非水電解液3は、例えば非水溶媒に電解質塩を溶解させた非水溶液である。非水電解液3において、非水溶媒としては、例えば環状の炭酸エステル化合物、水素をハロゲン基やハロゲン化アクリル基で置換した環状炭酸エステル化合物や鎖状炭酸エステル化合物等を用いる。具体的には、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジエチルカーボネート、γ−ブチルラクトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン等が挙げられ、これらのうちの一種以上を用いる。特に、非水溶媒としては、電圧安定性等の点に優れるプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等を使用することが好ましい。
【0035】
また、電解質塩としては、例えばLiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiB(C、LiCHSO、LiCFSO、LiCl、LiBr等が挙げられ、これらのうちの一種以上を用いる。
【0036】
外装缶4は、例えば有底筒状容器であり、底面4aが円状等の形状を有している。外装缶4は、図1において底面4aが円状となっているが、このことに限定されることはなく、例えば矩形状、扁平円状等の底面を有する有底筒状容器も適用可能である。この外装缶4は、容器内に電池素子2が挿入され、電池素子2の他端面より突出する負極リード端子10が底面4aに溶接等で電気的に接続されることで電池1の外部負極端子となる。
【0037】
このような構成の電池1を製造する際は、先ず、負極5を作製する。負極5を作製する際は、負極活物質と、所定量のカーボンナノチューブと、結着剤とを例えばボールミル、サンドミル、二軸混練機等の分散装置で非水溶媒等に均一に分散させた負極合剤塗液を調製する。そして、この負極合剤塗液を負極集電体8の両主面に、例えばスライドコーティング、エクストルージョン型のダイコーティング、リバースロール、グラビア、ナイフコーター、キスコーター、マイクログラビア、ロッドコーター、ブレードコーター等の塗工装置で均一に塗布し、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱乾燥機等を用いて乾燥した後に、圧縮することで負極合剤層9を形成し、帯状に裁断して所定の位置に負極リード端子10を例えば超音波溶接法や抵抗溶接法等で取り付ける。このようにして、負極合剤層9に所定量のカーボンナノチューブが添加された帯状の負極5が作製される。
【0038】
次に、正極6を作製する。正極6を作製する際は、正極活物質と、導電材と、結着剤とを上述した分散装置で非水溶媒等に均一に分散させた正極合剤塗液を調製する。そして、この正極合剤塗液を正極集電体11の両主面に上述した塗工装置で均一に塗布し、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱乾燥機等を用いて乾燥した後に、圧縮することで正極合剤層12を形成し、帯状に裁断して所定の位置に正極リード端子13を例えば超音波溶接法や抵抗溶接法等で取り付ける。このようにして、帯状の正極6が作製される。
【0039】
次に、負極5と正極6とを、帯状のセパレータ7を介して積層し、多数回巻回することにより電池素子2を作製する。このとき、電池素子2の一方端面からは負極リード端子10が負極5より導出され、他方端面からは正極リード端子13が正極6より導出される。
【0040】
次に、電池素子2の巻回両端面に、インシュレータ14をそれぞれ設置し、さらに電池素子2を外装缶4に収納する。そして、負極5の集電をとるために、負極リード端子10の電池素子2より導出された部分を外装缶4の底面4aに例えば抵抗溶接法等で溶接する。これにより、外装缶4は、負極5と導通することになり、電池1の外部負極となる。また、正極6の集電をとるために、正極リード端子13の電池素子2より導出された部分を電池蓋体15に例えば超音波溶接法等で溶接する。これにより、電池蓋体15は、正極6と導通することになり、電池1の外部正極となる。なお、電池蓋体15には、内部に電池内圧に応じて電池1に流れる電流を遮断する電流遮断機構15bを有している。
【0041】
次に、電池素子2が収納されている外装缶4の中に非水電解液3を注入する。この非水電解液3は、電解質塩を、非水溶媒に溶解させて調製される。次に、アスファルト等からなるシール剤を塗布したガスケット16を介して外装缶4の開口部をかしめることにより電池蓋体15が固定され、電池1が作製される。
【0042】
なお、この電池1においては、電池内部の圧力が所定値よりも高くなったときに内部の気体を抜くための安全弁17、電池内部の温度上昇を防止するためのPTC(positive temperature coefficient)素子18等が設けられている。
【0043】
以上のように製造される電池1では、負極合剤層9に添加されたカーボンナノチューブが、負極活物質の隣接する粒子同士の間にできる隙間に入り込み、負極活物質同士を電気的に接続させる導電材となることから、負極合剤層9の電子伝導性を向上させる。
【0044】
これにより、この電池1では、従来のような定格容量に対して1C〜10C程度の大電流で放電したときに、リチウムイオンが急速に脱ドープされて負極活物質が急速に収縮し、隣接する負極活物質同士が離間して起こる負極合剤層の電子伝導性の低下を防止できる。すなわち、電池1では、大電流で放電したときに、負極4における隣接する負極活物質同士が離間しても、カーボンナノチューブが負極合剤層9内で隣り合う負極活物質同士の間で導電材となることから、負極合剤層9の電子伝導性の低下を防止できる。
【0045】
したがって、この電池1では、大電流で放電したときに、負極4の電気抵抗が大きくなることが抑えられ、内部インピーダンスが向上することなく、放電容量の低下を抑制することができる。
【0046】
また、この電池1では、負極合剤層9に添加されたカーボンナノチューブが、極細筒状をなす炭素質材料であり、リチウムイオンをドープ・脱ドープすることが可能であり、且つ表面積が大きく、筒状の外周面及び内周面でリチウムイオンのドープ・脱ドープが行えることから電池容量を大きくできる。
【0047】
さらに、この電池1では、負極合剤層9に添加されたカーボンナノチューブが、筒状をなして筒内に非水電解液3を貯留することができることから、負極合剤層9の保液性を高めて負極合剤層9の電子伝導性を更に向上させ、電池容量を更に大きくできる。
【0048】
以上のような電池1について、負極活物質に対するカーボンナノチューブの添加量を変えたときの10Aで放電した放電容量維持率及び電池作製後初回の放電容量を測定する。
【0049】
ここでは、負極活物質として球晶黒鉛を用い、この球晶黒鉛に対してカーボンナノチューブの添加量を変化させた負極5を使用した電池1について測定を行うものとする。
【0050】
具体的に、10Aで放電した放電容量維持率及び電池作製後初回の放電容量の測定条件について説明する。
【0051】
この測定に用いた電池1は、以下の条件で作製する。先ず、カーボンナノチューブの添加量を変化させた負極5を作製する。この負極5を作製する際は、球晶黒鉛に、所定量の直径20nmの筒状をなすカーボンナノチューブを添加させた負極混合粉末を92重量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを8重量部と、溶媒としてN−メチルピロリドンとを加えて混練して分散を行い、負極合剤塗液を作製する。次に、この負極合剤塗液を負極集電体8となる厚みが10μmの銅箔の両主面に均一に塗布し、乾燥した後に、ローラプレス機で圧縮成形することで負極合剤層9を形成し、帯状に裁断して長手方向の一端に、短手方向と略平行となるように負極リード端子10を取り付け、負極合剤層9にカーボンナノチューブが所定量添加された帯状の負極5を作製する。ここでは、負極5における球晶黒鉛に対するカーボンナノチューブの添加量を0重量%〜6重量%の間で変化させる。
【0052】
なお、ここで用いた球晶黒鉛は、X線回折測定により求められる(002)面の面間隔が0.337nmであり、(002)面のC軸結晶子厚みが50nmであり、ピクノメータ法により求められる真密度が2.23g/cc、嵩密度が0.83g/cmであり、BET法により求められる比表面積が4.4m/gであり、レーザ回折法により求められる粒度分布の平均粒径が31.2μmである。
【0053】
次に、負極5の対極となる正極6を作製する際は、正極活物質となるリチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO)を合成する。このLiCoOを合成する際は、炭酸リチウムと炭酸コバルトとを0.5モル対1モルの比率となるように混合し、空気雰囲気中900℃で5時間焼成してLiCoOを合成する。この合成したLiCoOについては、X線回折測定を行い、得られた回折ピークがJCPDSファイルに登録されているLiCoOの回折ピークと一致していることを確認する。
【0054】
次に、粉砕し、分級して粉末状にしたLiCoOを98重量部と、炭酸リチウムを2重量部とを混合した政局混合粉末を91重量部と、導電材としてグラファイトを6重量部と、結着剤としてPVdFを3重量部とをNMPに均質に分散させて正極合剤塗液を調製する。次に、この正極合剤塗液を正極集電体11となる厚みが20μmのアルミニウム箔の両主面に均一に塗布し、乾燥した後に、ローラプレス機で圧縮成形することで正極合剤層12を形成し、帯状に裁断して長手方向の一端に、短手方向と略平行となるように正極リード端子13を取り付けて帯状の正極6を作製する。
【0055】
次に、以上のようにして得られた負極5と正極6とを、ポリプロピレンの微多孔性フィルムからなる帯状のセパレータ7を介して積層し、電極の長手方向に多数回巻回することにより直径18mmの電池素子2を作製する。このとき、電池素子2においては、一端面からは負極5より導出される負極リード端子10を突出させ、他端面からは正極6より導出される正極リード端子13を突出させる。
【0056】
次に、以上のようにして作製した電池素子2は、巻回端面から導出している正極リード端子13が電池蓋体15に、負極リード端子10が鉄にニッケルメッキを施した外装缶4にそれぞれ溶接されると共に外装缶4に収納される。
【0057】
次に、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとの体積混合比が1対1の混合溶媒に対してLiPFを1モル/リットルとなるように溶解させた非水電解液3を作製する。次に、この非水電解液3を外装缶4に注入し、アスファルトを塗布したガスケット16を介して外装缶4の開口部に電池蓋体15を圧入して外装缶4の開口部をかしめることによりで電池蓋体15を強固に固定する。このようにして、負極5におけるカーボンナノチューブの添加量を変化させた直径18mm、高さ65mmの円筒形の電池1を作製する。
【0058】
そして、以上の条件で作製した電池1においては、23℃雰囲気中、0.5A、上限電圧4.2Vの定電流定電圧充電を4時間行った後に、23℃雰囲気中、0.5Aの電流値で2.75Vまで定電流放電を行い、放電電流を0.5Aにした初回放電容量を測定する。次に、この電池1においては、同条件で充電された後に、23℃雰囲気中、10Aの電流値で2.75Vまで定電流放電を行い、初回放電容量に対する10Aで放電したときの放電容量の比率、すなわち10Aで放電した放電容量維持率を測定する。
【0059】
このようにして測定した球晶黒鉛に対してカーボンナノチューブの添加量を変えたときの10Aで放電した放電容量維持率及び初回放電容量の評価結果を図3に示す。図3中四角印は、カーボンナノチューブの各添加量における10Aで放電した放電容量維持率を示し、図3中三角印は、カーボンナノチューブの各添加量における10Aで放電した初回放電容量を示している。図3中横軸は、球晶黒鉛に対するカーボンナノチューブの添加量を示し、図3中二つの縦軸のうちの一方は、10Aで放電した放電容量維持率を示し、他方は、初回放電容量を示している。
【0060】
図3に示す評価結果から、球晶黒鉛に対するカーボンナノチューブの添加量が0.2重量%より少ないと10Aで放電した放電容量維持は低く、カーボンナノチューブの添加量が0.2重量%以上になって添加量が増えていくと10Aで放電した放電容量維持は急激に高くなっていくことがわかる。
【0061】
また、図3に示す評価結果から、球晶黒鉛に対するカーボンナノチューブの添加量5重量%を越えると急激に初回放電容量が低下していき、カーボンナノチューブの添加量が5重量%以下の方が初回放電容量を大きくできることがわかる。
【0062】
これは、球晶黒鉛に対するカーボンナノチューブの添加量が0.2重量%より少ないと、カーボンナノチューブを負極4に添加した作用効果が得られずに10Aといった大電流で放電したときの放電容量が小さくなり、球晶黒鉛に対するカーボンナノチューブの添加量が5重量%を越えると、負極5の負極活物質の量が少なくなって電池容量が小さくなるからである。
【0063】
また、以上の評価に用いた電池1について、球晶黒鉛に対するカーボンナノチューブの添加量と、200サイクル後の放電容量維持率との関係を図4に示す。200サイクル後の放電容量維持率は、上述した初回充放電と同じ条件で行う充放電を1サイクルとし、これを200サイクル繰り返したときの初回放電容量に対する200サイクル目の放電容量の比率である。なお、図4中丸印は、カーボンナノチューブの各添加量における200サイクル後の放電容量維持率を示し、図3中横軸は、球晶黒鉛に対するカーボンナノチューブの添加量を示し、縦軸は200サイクル後の放電容量維持率を示している。
【0064】
図4に示す評価結果から、球晶黒鉛に対してカーボンナノチューブの添加量を増やす毎に200サイクル後の放電容量維持率が高くなっていることがわかる。
【0065】
これは、充放電の繰り返しに伴うリチウムのドープ/脱ドープで球晶黒鉛が膨張収縮して負極合剤層9内で隣接する球晶黒鉛同士が離間しても、カーボンナノチューブが隣り合う球晶黒鉛同士の間で導電材となることから、負極4の電子伝導性の低下を防ぐからである。
【0066】
すなわち、これらの評価結果より、球晶黒鉛に対してカーボンナノチューブを添加させると充放電を繰り返しても負極4が劣化することなく高い放電容量維持率が得られる、すなわち優れたサイクル特性が得られることがわかる。また、球晶黒鉛に対するカーボンナノチューブの添加量を0.2重量%以上、5重量%以下の範囲にすることで、大電流による放電容量維持率と初回放電容量とを両立できる電池1が得られることがわかる。
【0067】
以上では、非水電解液3を用いた電池1を例に挙げて説明しているが、このことに限定されることはなく、非水電解液3の代わりに例えば高分子固体電解質、ゲル状電解質等の固体電解質を用いた非水電解質電池にも適用可能である。
【0068】
高分子固体電解質は、例えば上述した電解質塩と、電解質塩を含有することでイオン導電性が賦与される高分子化合物とからなる。高分子固体電解質に用いる高分子化合物には、例えばポリ(エチレンオキサイド)やこの架橋体等のエーテル系高分子、ポリ(メタクリレート)等のエステル系高分子、アクリレート系高分子等が挙げられ、これらのうちの何れか一種以上を用いる。ゲル状電解質は、上述した非水電解液3と、この非水電解液3を吸収してゲル化するマトリックス高分子とからなる。ゲル状電解質に用いるマトリックス高分子には、例えばポリ(ビニリデンフルオロライド)やポリ(ビニリデンフルオロライド−co−ヘキサフルオロプロピレン)等のフッ素系高分子、ポリ(エチレンオキサイド)やこれの架橋体等のエーテル系高分子、ポリ(アクリロニトリル)等が挙げられ、これらのうちの何れか一種以上を用いる。特に、マトリックス高分子には、酸化還元安定性が良好なフッ素系高分子を用いることが好ましい。
【0069】
また、以上では、円筒形の電池1を例に挙げて説明しているが、このことに限定されることはなく、負極活物質を含有する負極合剤層を備えていれば、例えば角型、コイン型、ボタン型等、外装材に金属製容器等を用いた電池、薄型等、外装材にラミネートフィルム等を用いた電池等、様々な大きさ、形状の非水電解質電池にも適用可能である。
【0070】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、負極合剤に添加されたカーボンナノチューブが、負極合剤中で隣接する負極活物質粒子の間にできる隙間に入り込み、負極活物質同士を電気的に接続させる導電材となることから、負極合剤の電子伝導性を向上させる。
【0071】
これにより、本発明によれば、充放電により負極活物質が膨張収縮して隣接する負極活物質同士が離間しても、カーボンナノチューブが負極合剤内で隣り合う負極活物質同士の間で導電材として機能することから、負極合剤の電子伝導性の低下を防ぎ、大電流で放電したときの電池容量の低下や、充放電の繰り返しによる電池容量の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るリチウムイオン二次電池の内部構造を示す断面図である。
【図2】カーボンナノチューブの直径と負極合剤層を形成するのに必要な結着剤量との関係を示す特性図である。
【図3】球晶黒鉛に対するカーボンナノチューブの添加量と10Aで放電した放電容量維持率及び初回放電容量との関係を示す特性図である。
【図4】球晶黒鉛に対するカーボンナノチューブの添加量と200サイクル後の放電容量維持率との関係を示す特性図である。
【符号の説明】
1 リチウムイオン二次電池、2 電池素子、3 非水電解液、4 外装缶、5 負極、6 正極、7 セパレータ、8 負極集電体、9 負極合剤層、10負極リード端子、11 正極集電体、12 正極合剤層、13 正極リード端子、14 インシュレータ、15 封口蓋体、16 ガスケット

Claims (3)

  1. リチウムのドープ/脱ドープが可能な負極活物質を有する負極と、リチウムのドープ/脱ドープが可能な正極活物質を有する正極とがセパレータを介して積層された電池素子と、
    電解質塩と非水溶媒とを有する非水電解質とを備え、
    上記負極は、上記負極活物質を含有する負極合剤を有し、この負極合剤に筒状炭素質材料からなるカーボンナノチューブが添加されている非水電解質電池。
  2. 上記カーボンナノチューブは、直径が50nm以下の上記筒状炭素質材料である請求項1記載の非水電解質電池。
  3. 上記カーボンナノチューブは、上記負極合剤全体に対し、0.2重量%以上、5重量%以下の範囲で添加されている請求項1記載の非水電解質電池。
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