JP2004315752A - 液晶配向膜及びそれを用いた光学素子 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はラビング方向とは異なる方向に液晶分子を配向させる性質が付与されていることを特徴とする液晶配向膜、及びこれを用いた光学素子、具体的には、位相差フィルム、偏光フィルム、ノッチフィルター、ディスプレイ用のカラーフィルター等の光学素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
【0003】
【特許文献1】
特開2002−350859号公報
【特許文献2】
特開2002−62427号公報
【特許文献3】
特開2002−98836号公報
【特許文献4】
特許第2636503号公報
【特許文献5】
特開平2−77015号公報
【0004】
液晶表示装置の光学的な歪等による本来透過してはならない光を補償し、液晶表示装置の視野角、コントラスト、色相等の光学的性能を向上させることを目的として、光学的に補償する位相差フィルム等の光学補償フィルムが液晶表示装置に用いられている。光学補償フィルムは、高分子フィルムを一軸延伸により、高分子化合物の主鎖を一定の方向に配向させて複屈折率性を持たせるように製造したものや、基材フィルム上に液晶分子を配向させたもの等が挙げられる。
【0005】
液晶表示装置の視野角依存性を改善する場合、偏光板の吸収軸に対して位相差フィルムの光学軸がフィルムの流れ方向に対して異なる角度、例えば、90度等のある角度をなすことが求められる。液晶分子を用いて光学補償フィルムを製造する際においては、配向処理としてラビング処理を行い、ラビング方向と液晶配向方向がほぼ同じ方向となるポリビニルアルコールを液晶配向膜として用いることが一般的である。このようにラビング方向と液晶配向方向がほぼ同じ方向となる液晶配向膜を使用した場合、基材フィルム上に液晶を配向させるための液晶配向膜を設け、液晶配向膜を基材フィルムの送り方向に対してブラシや布等で角度をなして連続的にラビングすることにより基材フィルムの長手方向(送り方向)に対して横断的な配向方向を持つ長尺の光学補償フィルムを得ることは困難である。
【0006】
そこで、液晶配向膜のラビング方向と液晶配向方向が異なる液晶配向膜が必要となる。本明細書では「液晶配向方向」とは液晶分子のダイレクタを液晶配向膜面に投影して得られる線の方向を意味する。
【0007】
また、液晶配向膜のラビング方向と液晶配向方向が異なる液晶配向膜は、光学補償フィルム用のみならず、配向分割した液晶表示素子用(特許文献1)にも必要とされる。具体的には、ラビング方向に対して垂直に液晶分子を配向させることができる液晶配向膜としてポリスチレンを使用することが知られている(特許文献5)。しかしながら、ポリスチレンは、ラビング後に加熱すると配向方向が垂直方向からラビング方向へ変化するという問題がある。
【0008】
ビニル基に環状構造(脂肪族環、芳香族環、または複素環)が直結した繰り返し単位、ビニルアルコールからなる繰り返し単位を有する共重合体(特許文献2)、或いはビニル基に環状構造(脂肪族環、芳香族環、または複素環)が直結した繰り返し単位とカルボン酸を有する繰り返し単位を有する共重合体(特許文献3)を用いた液晶配向膜が提案されている。特許文献2のビニルアルコールからなる繰り返し単位、特許文献3のカルボン酸を有する繰り返し単位は、液晶層を作成する際の溶剤に対して、液晶配向膜が溶解しないようにする役割をになっており、ビニルアルコールからなる繰り返し単位、カルボン酸を有する繰り返し単位の含有率を高くする必要がある。そのため、ラビング方向と異なる方向に液晶を配向させるために有効なビニル基に環状構造(脂肪族環、芳香族環、または複素環)が直結した繰り返し単位の含有率が低くなり、結果として棒状液晶分子の配向性は十分ではない。
【0009】
特許文献4に、液晶表示素子用の液晶配向膜としてのマレイミドコポリマーが使用できることが示されている。しかしながら、特許文献4の液晶配向膜は、ラビング方向とは異なる方向に液晶分子を配向させる性質について何も記載がなく、実施例には、イミド環に結合する置換基は、水素、脂肪族のみが示されているにすぎない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の問題点を解決することであり、ラビング方向とは異なる方向に液晶分子を配向させる能力が高く、しかも安定して配向させることができ、耐熱性が高い液晶配向膜を提供し、且つこれを用いた光学素子を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記した課題を解決するために、本発明者は、液晶配向膜の成分としてマレイミド系ポリマーに注目し、イミド環に、脂肪族環基、芳香族基、又は複素環基等の環状構造をスペーサーを介することなく直結させたポリマーを用いることにより、環状構造の結合にゆるみがなく剛直な結合構造のマレイミド系ポリマーとなり、該マレイミド系ポリマーに対してラビングを行って、主鎖をラビング方向に配向させた場合、イミド環に直結している環状構造の側鎖により、液晶分子の配向性が種々の方向に乱れることなく、ラビング方向とは異なる方向に安定して配向させることを見出した。
【0012】
即ち、本発明は、下記の一般式(1)で表される繰返し単位を含むマレイミド系ポリマーを含む液晶配向膜であって、液晶分子のダイレクタを配向膜面に投影して得られる線の方向と配向膜のラビング方向が45度〜90度をなす方向に液晶分子を配向させる性質が付与されていることを特徴とする液晶配向膜である。
【0013】
【化3】
【0014】
[式中、R1 は、脂肪族環基、芳香族基、又は複素環基である。]
また、本発明の別の液晶配向膜は、前記マレイミド系ポリマーが、さらに下記一般式(2)で表される繰返し単位を含むコポリマーであって、液晶分子のダイレクタを配向膜面に投影して得られる線の方向と配向膜のラビング方向が45度〜90度をなす方向に液晶分子を配向させる性質が付与されていることを特徴とする液晶配向膜である。
【0015】
【化4】
【0016】
[式中、R2 、R3 、R4 、R5 は、水素、又は官能基により1置換もしくは多置換されていてもよい脂肪族基及び/又は芳香族基、−COOH、−OH、−Cl、−Br、−NO2 、−CN、−COOR6 、−OR7 、−OSi(CH3 )3 又は−O−CO−NR8 R9 (ここでR6 からR9 は、水素又は炭素原子数1−5のアルキル基)である。]
【0017】
前記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む、または一般式(1)で表される繰り返しと一般式(2)で表される繰り返し単位を含む、本発明の液晶配向膜は、マレイミド系ポリマーであり、しかも該ポリマー中のイミド環に、脂肪族環基、芳香族基、又は複素環基等の環状構造がイミド環に直結して形成、即ち、スペーサーを介することなく直結させたポリマーで形成されているので、該マレイミド系ポリマーは環状構造の結合にゆるみがなく剛直な結合構造となるため、ラビング方向とは異なる方向に液晶分子が配向し、しかも、液晶分子の配向性が乱れることなく安定して発揮され、且つ、耐熱性、耐溶剤性に優れた液晶配向膜となる。
【0018】
前記式(1)のR1 は、脂肪族環基、芳香族基または複素環基である。脂肪族環基は、5員環または6員環であることが好ましく、6員環であることがさらに好ましい。脂肪族環の例としては、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環およびビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン環が挙げられる。脂肪族環に、他の脂肪族環、芳香族環または複素環が縮合していてもよい。
【0019】
R1 における芳香族基の芳香族環の例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、ナフタセン環が挙げられる。芳香族環に、脂肪族環または複素環が縮合していてもよい。
【0020】
R1 における複素環基の複素環は、5員環または6員環であることが好ましい。複素環は、芳香族性を有することが好ましい。複素環の例としては、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、及びピラジン環が挙げられる。複素環に他の複素環、脂肪族環または芳香族環が縮合していてもよい。
【0021】
R1 における脂肪族環基、芳香族基および複素環基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、アルキル基(例、メチル、エチル、t−ブチル)、置換アルキル基(例、クロロメチル、ヒドロキシメチル、塩化トリメチルアンモニオ)、アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ)、ハロゲン原子(F、Cl、Br)、カルボキシル基、アシル基(例、ホルミル)、アミノ基、スルホ基、アリール基(例、フェニル)、アリールオキシ基(例、フェノキシ)およびオキソが含まれる。
【0022】
前記一般式(2)におけるR2 からR5 は、水素、官能基により1置換もしくは多置換されていてもよい脂肪族および/または芳香族基、−COOH、−OH、−Cl、−Br、−NO2 、−CN、−COOR6 、−OR7 、−OSi(CH3 )3 または−O−CO−NR8 R9 (ここでR6 からR9 は、水素または炭素原子数1−5のアルキル基である)である。
【0023】
R2 からR5 における脂肪族基は、炭素原子数1−10のアルキル基が好ましく、ここで1個またはそれ以上の非隣接CH2 基が、−O−、−OOC−、−COO−、−Si(CH3 )2 −または−O−CO−NR10−で置換されていてもよい(ここでR6 からR10は、水素または炭素原子数1−5のアルキル基である)。
【0024】
前記一般式(2)の好ましい繰返し単位は、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のアルキレン類、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸、ビニルおよびアリルエーテル類、ビニルおよびアリルエステル類、ビニルまたはアリルトリメチルシラン、アクリロニトリル、桂皮酸エステル類およびシンナモニトリル、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、スチレン類、およびビニルナフタレン類、ビニルカルバゾール類などのモノマーを、前記一般式(1)の繰返し単位の成分モノマーと共重合して導入できる。
【0025】
前記一般式(1)、(2)において、R1 〜R5 の種々の組合せにより、主鎖の方向性、環構造の側鎖の影響による液晶分子の配向性能が種々異なり、ラビング方向に対して45度〜90度をなす方向に液晶分子を配向させる性質でないものも存在するが、本発明は、これらの組合せの中から、該液晶分子の配向させる性質を有するものを取捨選択して上記液晶を配向させる性質を有するマレイミド系ポリマーを含む液晶配向膜を本発明としたものである。また、R2 〜R5 は、マレイミド系ポリマーの溶剤溶解性に影響するため、液晶配向膜が液晶層形成用溶剤に溶解される場合には、耐溶剤性を高めるために後記に詳述するように、紫外線又は電子線照射による硬化膜を液晶配向膜とすることが望ましい。
【0026】
本発明の液晶配向膜となるポリマーは、次の一般式(3)で表されるマレイミドモノマー、または一般式(3)で表されるマレイミドモノマーと一般式(4)で表されるモノマーを、AIBN、DBPO等のラジカル開始剤を用いて公知のラジカル重合を行うことにより製造することができる。
【0027】
【化5】
【0028】
さらに、一般式(3)で表されるマレイミドの代わりに無水マレイン酸を用い、無水マレイン酸と一般式(4)で表されるモノマーとを重合して得られる共重合体から出発して、本発明の液晶配向膜のイミド成分をその共重合体に導入することもできる。
【0029】
公知の方法によって、反応により生成する水を除去しながら1級アミン(R1 −NH2 )と反応させることにより、このポリマーを本発明の液晶配向膜の成分であるマレイミド系ポリマーに転換することができる(Houben−Weyl,Vol.8,p.657,G.Thieme Verlag,1952)。この場合、無水マレイン酸単位からマレイミド単位へ完全に転換しなくてもよい。しかし、少なくとも30%、好ましくは50%以上の酸無水物がイミドへ転換されることが有利である。
【0030】
また本発明のマレイミド系ポリマーはエチレン性不飽和結合を有していても良い。エチレン性不飽和結合を有するマレイミド系ポリマーを含む液晶配向膜は、光学機能層を重合性液晶化合物から作製した場合に、液晶配向膜と光学機能層との密着性が向上する。
【0031】
エチレン性不飽和結合を有するマレイミド系ポリマーの製造例を以下に記す。式(4)で示されるモノマーとしてカルボキシル基又は/及びヒドロキシル基を含むモノマーを使用し、式(3)で示されるマレイミドモノマーと重合してカルボキシル基又は/及びヒドロキシル基を有する共重合体を得る。そのカルボキシル基又は/及びヒドロキシル基を有する共重合体に、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアネート、(メタ)アクリル酸クロリド等を公知の方法で反応させることによりエチレン性不飽和結合を有するマレイミド系ポリマーを合成することができる。
【0032】
また、無水マレイン酸単位が残存しているマレイミド系ポリマーに、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等を反応させてエチレン性不飽和結合を有するマレイミド系ポリマーを合成することもできる。
【0033】
本発明における液晶配向膜の製造には、(I)配向膜用組成物を支持体上に塗布、乾燥する工程、(II)得られた塗布膜にラビングする工程を有することが必須である。
【0034】
配向膜用組成物によっては、ラビング工程の前に塗膜への紫外線又は電子線照射による硬化を行ってもよい。配向膜用組成物中のマレイミド系ポリマーの種類、エチレン性不飽和結合を有するモノマーあるいはオリゴマーの種類及びその量により、塗膜への紫外線又は電子線照射による硬化の必要性が決まる。
【0035】
液晶性化合物からなる光学機能層から構成される光学素子を作製する場合に使用する液晶配向膜には、光学機能層を形成する際の溶剤に対する耐性が要求される。液晶配向膜の耐溶剤性を向上させる点では、配向膜用組成物がA)前記マレイミド系ポリマー、B)溶剤を含むことに加えて、C)エチレン性不飽和結合を複数有するモノマーあるいはオリゴマー、D)光重合開始剤を含み、ラビング工程の前に塗膜への紫外線または電子線照射による硬化を行うことが有利である。
【0036】
配向膜用組成物
配向膜用組成物は、A)前記マレイミド系ポリマー、B)溶剤を少なくとも含む。また、液晶の配向性に悪影響を及ぼさない範囲で、本発明の液晶配向膜に使用されるマレイミド系ポリマー以外のポリマーを含んでもよい。本発明のマレイミド系/他のポリマーの質量比は100/0〜50/50の範囲であることが好ましい。50/50未満である場合、液晶配向膜の液晶配向性が悪化する。
【0037】
配向膜組成物は、さらにC)エチレン性不飽和結合を有するモノマーあるいはオリゴマー、及び/又はD)光重合開始剤を含んでもよい。
【0038】
B)溶剤
配向膜用組成物に含まれる溶剤としては、本発明の液晶配向膜に使用されるマレイミド系ポリマーを溶解すれば特に限定されるものではなく、複数の種類の溶剤を混合してもよい。具体的には、ケトン(例、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、アミド(例、N、N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、水、アルコール(例、イソプロピルアルコール)等が挙げられる。
【0039】
C)エチレン性不飽和結合を有するモノマーあるいはオリゴマー
エチレン性不飽和結合を有するモノマーあるいはオリゴマーは、A)本発明のマレイミド系ポリマーが溶解する溶剤に可溶であればよく、分子中のエチレン性不飽和結合の数が1個でも複数でも構わないが複数の方が好ましい。
【0040】
エチレン性不飽和結合を有するモノマーあるいはオリゴマーとしては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、等の単官能のアクリレートやメタアクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリンやトリメチロールエタン等の多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後(メタ)アクリレート化したもの、ウレタンアクリレート類、ポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタアクリレートを挙げることが出来る。
【0041】
これらのエチレン性不飽和結合を有するモノマーあるいはオリゴマーは、配向膜の液晶の配向性を損なわない範囲で使用できる。使用量は配向膜組成物の全固形分に対し、50質量%以下であることが好ましい。
【0042】
D)光重合開始剤
光重合開始剤としては、ベンジル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイルー4’−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3、3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメート、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等を挙げることができる。なお、光重合開始剤の他に増感剤を、本発明の目的が損なわれない範囲で添加することもできる。
【0043】
光重合開始剤は配向膜組成物中にC)エチレン性不飽和結合を有するモノマーあるいはオリゴマーを含む場合に添加し、その場合の添加量としては、配向膜組成物の全固形分に対し、0. 01〜20質量%、好ましくは0.1〜10質量%である。
【0044】
配向膜用組成物は上記A)マレイミド系ポリマー、B)溶剤、C)エチレン性不飽和結合を有するモノマーあるいはオリゴマー、D)光重合開始剤以外に界面活性剤を添加してもよい。
【0045】
支持体
支持体の種類は、目的とする光学素子(支持体、配向膜および光学機能層の積層体)の用途に応じて決定するが、透明ポリマーフィルム、透明ガラス基板等が用いられる。光学素子を、位相差板、偏光子、ノッチフィルター等の光学補償シートとして用いる場合、支持体としては透明ポリマーフイルムが通常用いられる。透明ポリマーフイルムは、光学的異方性が小さいことが好ましい。透明であるとは、光透過率が80%以上であることを意味する。
【0046】
透明ポリマーフィルムの例としては、セルロース系ポリマー、商品名アートン(JSR(株)製)および商品名ゼオネックス(日本ゼオン(株)製)などのノルボルネン系ポリマー、商品名ゼオノア(日本ゼオン(株)製)等のシクロオレフィン系ポリマーおよびポリメチルメタクリレートなどが挙げられる。セルロース系ポリマーとしては、セルロースエステルが好ましく、セルロースの低級脂肪酸エステルがさらに好ましい。低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。炭素原子数は、2(セルロースアセテート)、3(セルロースプロピオネート)または4(セルロースブチレート)であることが好ましい。セルロースエステルとしてはセルロースアセテートが好ましく、その例としては、ジアセチルセルロースおよびトリアセチルセルロースなどが挙げられる。セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いても良い。
【0047】
目的とする光学素子に光学的等方性が要求される場合は、支持体としては一般にガラスまたはセルロースエステルが用いられる。光学的異方性が要求される場合は、一般に合成ポリマー(例、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ノルボルネン樹脂)が用いられる。合成ポリマーフイルムを延伸することによって、光学的異方性を得ることができる。
【0048】
支持体をセルロースエステルまたは合成ポリマーのフイルムとする場合には、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。位相差板の支持体の厚さは、20μm乃至500μmであることが好ましく、50μm乃至200μmであることがさらに好ましい。位相差板の支持体とその上に設けられる層(配向膜、光学機能層)との密着性を改善するため、透明支持体に表面処理(例、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火炎処理)を実施してもよく、プライマー層(接着剤層)、保護層を形成してもよい。
【0049】
光学機能層
本発明の光学素子は、支持体上に液晶配向膜、さらにその上に光学機能層が形成された構造を有している。光学機能層としては、ネマチック規則性又はスメクチック規則性を有する液晶であれば特に限定されるものではなく、ポリマー液晶および重合性液晶化合物のどちらでもよい。重合性液晶化合物としては、分子の両末端に重合性官能基があることが耐熱性のよい光学素子を得る上で好ましい。また液晶分子は、液晶分子のダイレクタと透明支持体面との間の傾斜角が5度未満であることが好ましい。光学機能層は二層以上積層されていてもよく、二層目は、ネマチック液晶にカイラル剤を加えたコレステリック規則性を有するカイラルネマチック液晶でもよい。本発明の液晶配向膜はコレステリック液晶やディスコチック液晶をホモジニアス配向させることもできる。
【0050】
光学機能層を形成するには、重合性液晶モノマーを用いてもよく、或いは、重合性液晶オリゴマーや重合性液晶ポリマー等を用いることも可能である。このような重合性液晶オリゴマーや重合性液晶ポリマーとしては、従来提案されているUV硬化型液晶や高分子液晶を適宜選択して用いることが可能である。
【0051】
光学機能層は、高分子液晶の場合、高分子液晶及び他の化合物を溶剤に溶解した溶液を配向膜上に塗布し、乾燥し、次いで液晶相形成温度まで加熱し、その後配向状態を維持して冷却することにより得られる。
【0052】
このような高分子液晶の一例としては、例えば下記の一般式(5)で表される繰返し単位を有するポリマーを挙げることができる。
【0053】
【化6】
【0054】
(式中、R11は、及び水素原子又はメチル基を、X1 は−COO−基又は−OCO−基を、aは1〜6の正の整数を、b及びcはそれぞれ独立に1又は2(ただし、b+c≦3を満足する。)を示す。)
【0055】
重合性液晶化合物の場合、重合性液晶化合物及び他の化合物(更に、例えば重合性モノマー、光重合開始剤)を溶剤に溶解した溶液を配向膜上に塗布し、乾燥し、次いで液晶相形成温度まで加熱したのちUV照射、または電子線照射により重合させ、さらに冷却することにより光学機能層を得る。
このような重合性液晶化合物の一例としては、例えば下記の一般式(6)及び一般式(7)で表わされる化合物(化合物(I)という)や下記に示す化合物を挙げることができる。化合物(I)としては、一般式(6)及び一般式(7)に包含される化合物の2種を混合して使用することも可能である。
【0056】
重合性液晶化合物としては、一般式(6)及び一般式(7)に包含される化合物や下記の化合物の2種以上を混合して使用することもできる。
【0057】
【化7】
【0058】
【化8】
【0059】
【化9】
【0060】
一般式(6)、一般式(7)において、R12、R13、R14及びR15はそれぞれ水素又はメチル基を示すが、液晶相を示す湿度範囲の広さからR12、R13、R14及びR15は共に水素であることが好ましい。X2 及びX3 は水素、塩素、臭素、ヨウ素、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、シアノ基、ニトロ基のいずれであっても差し支えない。また、化合物(I)の分子鎖両端の(メタ)アクリロイルオキシ基と、芳香環とのスペーサーであるアルキレン基の鎖長を示すd、e、f及びgは、それぞれ個別に2〜12の範囲で任意の整数を取り得るが、4〜10の範囲であることが好ましい。
【0061】
重合性液晶化合物に添加される光重合開始剤としては、ベンジル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイルー4’−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3、3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメート、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等を挙げることができる。なお、光重合開始剤の他に増感剤を、本発明の目的が損なわれない範囲で添加することもできる。
【0062】
このような光重合開始剤の添加量としては、一般的には0.01〜20質量%、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは、0.5〜5質量%の範囲で重合性液晶化合物に添加することができる。
【0063】
光学機能層を形成するためのコーティング液には、上記液晶性化合物、カイラル剤、光重合開始剤以外に、界面活性剤、重合性モノマー(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基を有する化合物)、及びポリマーを液晶性化合物の配向を阻害しない限り添加してもよい。これらの界面活性剤、重合性モノマー及びポリマーを選択することにより表面側(空気側)の液晶の傾斜角を調整することができる。
【0064】
また、光学機能層を形成するためのコーティング液に用いられる溶剤としては、上記液晶性化合物、カイラル剤が溶解し、かつ配向性を有する基材上の配向性を阻害しなければ特に限定されるものではない。具体的にはケトン(例、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)等が挙げられる。
【0065】
光学素子
図1に本発明の光学素子の一般的な層構成を示す。図1において1は支持体、2は支持体1上に形成された液晶配向膜、3は液晶配向膜2上に形成された液晶性化合物からなる光学機能層である。このような積層構造の光学素子には、位相差板、偏光子、ノッチフィルター、ディスプレイ用のカラーフィルターが挙げられる。
【0066】
光学素子の製造
本発明の光学素子の製造方法は、次のようにして行うことができる。前記配向膜用組成物を前記支持体上に塗布し、乾燥する。配向膜用塗布液の塗布方法としては、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、スピンコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、エクストルージョンコート法、バーコート法およびE型塗布法等を挙げることができる。次いで、得られた膜をラビングすることにより、配向規制能を有する配向膜を得る。前記配向膜組成物がエチレン性不飽和結合を有するモノマーあるいはオリゴマーを含む場合には、配向膜用塗布液を塗布し乾燥して塗布膜を得た後、ラビングを行う前に塗布膜に紫外線又は電子線を照射して硬化させる工程を加える。
【0067】
形成された液晶配向膜の膜厚は、0.1μm〜10μmの範囲にあることが好ましい。配向膜用組成物を塗布した後、溶剤を乾燥して除去する方法としては、例えば、減圧乾燥もしくは加熱乾燥、さらにはこれらの乾燥を組み合わせる方法等により行う。加熱乾燥する際の温度は、20℃乃至110℃の範囲にあることが好ましい。
【0068】
上記液晶配向膜上に、液晶性ポリマー及び他の化合物を溶剤に溶解した溶液を塗布し、乾燥し、次いで液晶相形成温度まで加熱し、その後配向状態を維持して冷却することにより光学機能層を形成し、光学素子を得る。あるいは、重合性液晶化合物及び他の化合物(さらに、例えば、重合性モノマー、光重合開始剤)を溶剤に溶解した溶液を上記液晶配向膜に塗布し、乾燥し、次いで液晶相形成温度まで加熱した後、UV照射、または電子線照射により重合させ、さらに冷却することにより光学機能層を形成し、光学素子を得る。
【0069】
本発明の光学素子は、光学機能層が一層であっても、二層以上から形成されていてもよい。
【0070】
【実施例】
[実施例1]
(液晶配向膜の形成)
ポリ(N−シクロヘキシルマレイミド)を、N−メチルピロリドン/メチルエチルケトンの混合溶媒(質量比=1/4)に溶解して4質量%溶液を調製した。この溶液を、ワイヤーバーコーターを用いてガラス支持体上に塗布した。塗布層を120℃で5分間加熱乾燥し、膜厚0.8μmの塗膜を得た。その塗膜の表面をラビング処理して、液晶配向膜を作製した。
(ネマチック液晶層の形成)
次の化学式(8)
【0071】
【化10】
【0072】
で表される重合性化合物10質量部をメチルイソブチルケトン40質量部に溶解し、さらに光重合開始剤イルガキュア907(チバスペシャリティーケミカルズ製)0.5質量部を添加し、光学的異方性層形成用塗布液を得た。この塗布液を前記工程で作製した液晶配向膜上にワイヤーバーにて塗工し、乾燥後、85℃で1分間加熱し、その温度で高圧水銀灯を用いて50mJ/cm2 の紫外線を照射することにより配向状態を固定化した。
【0073】
KOBRA(王子計測器(株)製)により、ネマチック液晶分子のダイレクタを測定したところ、ラビング方向に対し80度であった。
【0074】
[実施例2]
(液晶配向膜の形成)
N−シクロヘキシルマレイミド/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(N−シクロヘキシルマレイミド/メチルメタクリレート/メタクリル酸=30/30/40モル比)をジエチレングリコールジメチルエーテルに溶解して4質量%溶液を調製した。この溶液を、ワイヤーバーコーターを用いてガラス支持体上に塗布した。塗布層を加熱乾燥し、膜厚0.8μmの塗膜を得た。その塗膜の表面をラビング処理して、液晶配向膜を作製した。
【0075】
(ネマチック液晶層の形成)
前記実施例1の液晶配向膜を前記工程で作成した液晶配向膜に変更する以外は前記実施例1と同様にしてネマチック液晶層を形成した。ネマチック液晶分子のダイレクタはラビング方向に対し80度であった。
【0076】
[実施例3]
(液晶配向膜の形成)
N−フェニルマレイミド/イソブチレン共重合体(N−フェニルマレイミド/イソブチレン=50/50モル比)をメチルエチルケトンに溶解して4質量%溶液を調製した。この溶液を、ワイヤーバーコーターを用いてガラス支持体上に塗布した。塗布層を加熱乾燥し、膜厚0.8μmの塗膜を得た。その塗膜の表面をラビング処理して、液晶配向膜を作製した。
【0077】
(ネマチック液晶層の形成)
前記実施例1の液晶配向膜を前記液晶配向膜に変更する以外は前記実施例1と同様にしてネマチック液晶層を形成した。ネマチック液晶分子のダイレクタはラビング方向に対し85度であった。
【0078】
[実施例4]
(液晶配向膜の形成)
N−シクロヘキシルマレイミド/メチルメタクリレート共重合体(N−シクロヘキシルマレイミド/メチルメタクリレート=20/80モル比)7質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート2質量部、光重合開始剤イルガキュア907(商品名、チバスペシャリティーケミカルズ製)1質量部をジエチレングリコールジメチルエーテル90質量部に溶解した。この溶液を、ワイヤーバーコーターを用いてガラス支持体上に塗布した。塗布層を加熱乾燥後、高圧水銀灯を用いて500mJ/cm2 の紫外線を照射して塗膜を硬化させた。その塗膜の表面をラビング処理して、液晶配向膜を作製した。
【0079】
(ネマチック液晶層の形成)
前記実施例1の液晶配向膜を本実施例4の液晶配向膜に変更する以外は、実施例1と同様にしてネマチック液晶層を形成した。ネマチック液晶分子のダイレクタは、ラビング方向に対し80度であった。
【0080】
[比較例1]
前記実施例2のN−シクロヘキシルマレイミド/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体をN−ベンジルマレイミド/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(N−ベンジルマレイミド/メチルメタクリレート/メタクリル酸=30/30/40モル比)に変更する以外は前記実施例2と同様にして、液晶配向膜及びネマチック液晶層を形成した。比較例1の液晶配向膜を形成するポリマーは、イミド環に環状構造が直結して結合されておらず、スペーサー(−CH3 −)が介されているため、液晶配向膜上に形成された液晶層のネマチック液晶分子のダイレクタはラビング方向に対し5度と低いものであった。
【0081】
[比較例2]
前記実施例3のN−フェニルマレイミド/イソブチレン共重合体をN−フェニルマレイミド/スチレン共重合体(N−フェニルマレイミド/スチレン=50/50モル比)に変更する以外は前記実施例3と同様にして、液晶配向膜及びネマチック液晶層を形成した。比較例2の液晶配向膜を形成するポリマーは、イミド環に環状構造をスペーサーを介することなく直結させたポリマーであるにもかかわらず、ポリマー中のスチレン成分が影響してネマチック液晶分子のダイレクタはラビング方向に対し20度と低いものであった。
【0082】
[比較例3]
(配向膜の形成)
N−シクロヘキシルマレイミド/メチルメタクリレート共重合体(N−シクロヘキシルマレイミド/メチルメタクリレート=20/80モル比)をジエチレングリコールジメチルエーテルに溶解して4質量%溶液を調製した。該溶液は、前記実施例4の配向膜用組成物において、ペンタエリスリトールトリアクリレートと光重合開始剤を省略したものである。この溶液を、ワイヤーバーコーターを用いてガラス支持体上に塗布した。塗布層を加熱乾燥し、膜厚0.8μmの塗膜を得た。その塗膜の表面をラビング処理して、液晶配向膜を作製した。
【0083】
(ネマチック液晶層の形成)
前記実施例1の配向膜を前記配向膜に変更する以外は、実施例1と同様にして液晶層を塗布、乾燥、紫外線硬化させた。液晶配向膜を形成したポリマーが液晶層作製時に液晶層作製用溶媒に溶解したため、液晶層は配向せず、白濁した塗膜となった。これに対して、前記実施例4の液晶配向膜は、比較例3に比べてペンタエリスリトールトリアクリレートと光重合開始剤を含んでUV硬化膜となっているので、液晶配向性が発揮されることが分かる。
【0084】
[比較例4]
前記実施例3のN−フェニルマレイミド/イソブチレン共重合体をポリスチレンに変更する以外は前記実施例3と同様にして液晶配向膜及びネマチック液晶層の形成を試みた。比較例4のポリスチレンは液晶層作製用溶媒に溶解するため、液晶層は配向せず、白濁した塗膜となった。
【0085】
また、液晶層作製用溶媒による影響をなくすため、前記化学式(8)で表される重合性化合物のみをラビング処理を行ったポリスチレンからなる塗膜上に塗布し、85度で3分間加熱した。液晶の配向方向を偏光顕微鏡で確認したところ、ラビング方向とほぼ同じ方向であった。
【0086】
【発明の効果】
本発明のマレイミド系ポリマーを含む液晶配向膜は、イミド環に、脂肪族環基、芳香族基、又は複素環基等の環状構造をスペーサーを介することなく直結させており、ラビング方向に対して45度〜90度をなす方向に液晶分子を配向させる性質が付与されたものであるので、ラビングによりマレイミド系ポリマーの主鎖をラビング方向に配向させた場合、イミド環に直結している環状構造の側鎖により、液晶分子の配向性が種々の方向に乱れることなく、ラビング方向に対して45度〜90度をなす方向に液晶分子が安定して配向する。
本発明の液晶配向膜は、位相差板・偏光素子等の光学素子に特に有効であるが、その他液晶表示用としても好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光学素子の層構成を示す図である。
1 支持体
2 液晶配向膜
3 光学機能層
【発明の属する技術分野】
本発明はラビング方向とは異なる方向に液晶分子を配向させる性質が付与されていることを特徴とする液晶配向膜、及びこれを用いた光学素子、具体的には、位相差フィルム、偏光フィルム、ノッチフィルター、ディスプレイ用のカラーフィルター等の光学素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
【0003】
【特許文献1】
特開2002−350859号公報
【特許文献2】
特開2002−62427号公報
【特許文献3】
特開2002−98836号公報
【特許文献4】
特許第2636503号公報
【特許文献5】
特開平2−77015号公報
【0004】
液晶表示装置の光学的な歪等による本来透過してはならない光を補償し、液晶表示装置の視野角、コントラスト、色相等の光学的性能を向上させることを目的として、光学的に補償する位相差フィルム等の光学補償フィルムが液晶表示装置に用いられている。光学補償フィルムは、高分子フィルムを一軸延伸により、高分子化合物の主鎖を一定の方向に配向させて複屈折率性を持たせるように製造したものや、基材フィルム上に液晶分子を配向させたもの等が挙げられる。
【0005】
液晶表示装置の視野角依存性を改善する場合、偏光板の吸収軸に対して位相差フィルムの光学軸がフィルムの流れ方向に対して異なる角度、例えば、90度等のある角度をなすことが求められる。液晶分子を用いて光学補償フィルムを製造する際においては、配向処理としてラビング処理を行い、ラビング方向と液晶配向方向がほぼ同じ方向となるポリビニルアルコールを液晶配向膜として用いることが一般的である。このようにラビング方向と液晶配向方向がほぼ同じ方向となる液晶配向膜を使用した場合、基材フィルム上に液晶を配向させるための液晶配向膜を設け、液晶配向膜を基材フィルムの送り方向に対してブラシや布等で角度をなして連続的にラビングすることにより基材フィルムの長手方向(送り方向)に対して横断的な配向方向を持つ長尺の光学補償フィルムを得ることは困難である。
【0006】
そこで、液晶配向膜のラビング方向と液晶配向方向が異なる液晶配向膜が必要となる。本明細書では「液晶配向方向」とは液晶分子のダイレクタを液晶配向膜面に投影して得られる線の方向を意味する。
【0007】
また、液晶配向膜のラビング方向と液晶配向方向が異なる液晶配向膜は、光学補償フィルム用のみならず、配向分割した液晶表示素子用(特許文献1)にも必要とされる。具体的には、ラビング方向に対して垂直に液晶分子を配向させることができる液晶配向膜としてポリスチレンを使用することが知られている(特許文献5)。しかしながら、ポリスチレンは、ラビング後に加熱すると配向方向が垂直方向からラビング方向へ変化するという問題がある。
【0008】
ビニル基に環状構造(脂肪族環、芳香族環、または複素環)が直結した繰り返し単位、ビニルアルコールからなる繰り返し単位を有する共重合体(特許文献2)、或いはビニル基に環状構造(脂肪族環、芳香族環、または複素環)が直結した繰り返し単位とカルボン酸を有する繰り返し単位を有する共重合体(特許文献3)を用いた液晶配向膜が提案されている。特許文献2のビニルアルコールからなる繰り返し単位、特許文献3のカルボン酸を有する繰り返し単位は、液晶層を作成する際の溶剤に対して、液晶配向膜が溶解しないようにする役割をになっており、ビニルアルコールからなる繰り返し単位、カルボン酸を有する繰り返し単位の含有率を高くする必要がある。そのため、ラビング方向と異なる方向に液晶を配向させるために有効なビニル基に環状構造(脂肪族環、芳香族環、または複素環)が直結した繰り返し単位の含有率が低くなり、結果として棒状液晶分子の配向性は十分ではない。
【0009】
特許文献4に、液晶表示素子用の液晶配向膜としてのマレイミドコポリマーが使用できることが示されている。しかしながら、特許文献4の液晶配向膜は、ラビング方向とは異なる方向に液晶分子を配向させる性質について何も記載がなく、実施例には、イミド環に結合する置換基は、水素、脂肪族のみが示されているにすぎない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の問題点を解決することであり、ラビング方向とは異なる方向に液晶分子を配向させる能力が高く、しかも安定して配向させることができ、耐熱性が高い液晶配向膜を提供し、且つこれを用いた光学素子を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記した課題を解決するために、本発明者は、液晶配向膜の成分としてマレイミド系ポリマーに注目し、イミド環に、脂肪族環基、芳香族基、又は複素環基等の環状構造をスペーサーを介することなく直結させたポリマーを用いることにより、環状構造の結合にゆるみがなく剛直な結合構造のマレイミド系ポリマーとなり、該マレイミド系ポリマーに対してラビングを行って、主鎖をラビング方向に配向させた場合、イミド環に直結している環状構造の側鎖により、液晶分子の配向性が種々の方向に乱れることなく、ラビング方向とは異なる方向に安定して配向させることを見出した。
【0012】
即ち、本発明は、下記の一般式(1)で表される繰返し単位を含むマレイミド系ポリマーを含む液晶配向膜であって、液晶分子のダイレクタを配向膜面に投影して得られる線の方向と配向膜のラビング方向が45度〜90度をなす方向に液晶分子を配向させる性質が付与されていることを特徴とする液晶配向膜である。
【0013】
【化3】
【0014】
[式中、R1 は、脂肪族環基、芳香族基、又は複素環基である。]
また、本発明の別の液晶配向膜は、前記マレイミド系ポリマーが、さらに下記一般式(2)で表される繰返し単位を含むコポリマーであって、液晶分子のダイレクタを配向膜面に投影して得られる線の方向と配向膜のラビング方向が45度〜90度をなす方向に液晶分子を配向させる性質が付与されていることを特徴とする液晶配向膜である。
【0015】
【化4】
【0016】
[式中、R2 、R3 、R4 、R5 は、水素、又は官能基により1置換もしくは多置換されていてもよい脂肪族基及び/又は芳香族基、−COOH、−OH、−Cl、−Br、−NO2 、−CN、−COOR6 、−OR7 、−OSi(CH3 )3 又は−O−CO−NR8 R9 (ここでR6 からR9 は、水素又は炭素原子数1−5のアルキル基)である。]
【0017】
前記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む、または一般式(1)で表される繰り返しと一般式(2)で表される繰り返し単位を含む、本発明の液晶配向膜は、マレイミド系ポリマーであり、しかも該ポリマー中のイミド環に、脂肪族環基、芳香族基、又は複素環基等の環状構造がイミド環に直結して形成、即ち、スペーサーを介することなく直結させたポリマーで形成されているので、該マレイミド系ポリマーは環状構造の結合にゆるみがなく剛直な結合構造となるため、ラビング方向とは異なる方向に液晶分子が配向し、しかも、液晶分子の配向性が乱れることなく安定して発揮され、且つ、耐熱性、耐溶剤性に優れた液晶配向膜となる。
【0018】
前記式(1)のR1 は、脂肪族環基、芳香族基または複素環基である。脂肪族環基は、5員環または6員環であることが好ましく、6員環であることがさらに好ましい。脂肪族環の例としては、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環およびビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン環が挙げられる。脂肪族環に、他の脂肪族環、芳香族環または複素環が縮合していてもよい。
【0019】
R1 における芳香族基の芳香族環の例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、ナフタセン環が挙げられる。芳香族環に、脂肪族環または複素環が縮合していてもよい。
【0020】
R1 における複素環基の複素環は、5員環または6員環であることが好ましい。複素環は、芳香族性を有することが好ましい。複素環の例としては、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、及びピラジン環が挙げられる。複素環に他の複素環、脂肪族環または芳香族環が縮合していてもよい。
【0021】
R1 における脂肪族環基、芳香族基および複素環基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、アルキル基(例、メチル、エチル、t−ブチル)、置換アルキル基(例、クロロメチル、ヒドロキシメチル、塩化トリメチルアンモニオ)、アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ)、ハロゲン原子(F、Cl、Br)、カルボキシル基、アシル基(例、ホルミル)、アミノ基、スルホ基、アリール基(例、フェニル)、アリールオキシ基(例、フェノキシ)およびオキソが含まれる。
【0022】
前記一般式(2)におけるR2 からR5 は、水素、官能基により1置換もしくは多置換されていてもよい脂肪族および/または芳香族基、−COOH、−OH、−Cl、−Br、−NO2 、−CN、−COOR6 、−OR7 、−OSi(CH3 )3 または−O−CO−NR8 R9 (ここでR6 からR9 は、水素または炭素原子数1−5のアルキル基である)である。
【0023】
R2 からR5 における脂肪族基は、炭素原子数1−10のアルキル基が好ましく、ここで1個またはそれ以上の非隣接CH2 基が、−O−、−OOC−、−COO−、−Si(CH3 )2 −または−O−CO−NR10−で置換されていてもよい(ここでR6 からR10は、水素または炭素原子数1−5のアルキル基である)。
【0024】
前記一般式(2)の好ましい繰返し単位は、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のアルキレン類、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸、ビニルおよびアリルエーテル類、ビニルおよびアリルエステル類、ビニルまたはアリルトリメチルシラン、アクリロニトリル、桂皮酸エステル類およびシンナモニトリル、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、スチレン類、およびビニルナフタレン類、ビニルカルバゾール類などのモノマーを、前記一般式(1)の繰返し単位の成分モノマーと共重合して導入できる。
【0025】
前記一般式(1)、(2)において、R1 〜R5 の種々の組合せにより、主鎖の方向性、環構造の側鎖の影響による液晶分子の配向性能が種々異なり、ラビング方向に対して45度〜90度をなす方向に液晶分子を配向させる性質でないものも存在するが、本発明は、これらの組合せの中から、該液晶分子の配向させる性質を有するものを取捨選択して上記液晶を配向させる性質を有するマレイミド系ポリマーを含む液晶配向膜を本発明としたものである。また、R2 〜R5 は、マレイミド系ポリマーの溶剤溶解性に影響するため、液晶配向膜が液晶層形成用溶剤に溶解される場合には、耐溶剤性を高めるために後記に詳述するように、紫外線又は電子線照射による硬化膜を液晶配向膜とすることが望ましい。
【0026】
本発明の液晶配向膜となるポリマーは、次の一般式(3)で表されるマレイミドモノマー、または一般式(3)で表されるマレイミドモノマーと一般式(4)で表されるモノマーを、AIBN、DBPO等のラジカル開始剤を用いて公知のラジカル重合を行うことにより製造することができる。
【0027】
【化5】
【0028】
さらに、一般式(3)で表されるマレイミドの代わりに無水マレイン酸を用い、無水マレイン酸と一般式(4)で表されるモノマーとを重合して得られる共重合体から出発して、本発明の液晶配向膜のイミド成分をその共重合体に導入することもできる。
【0029】
公知の方法によって、反応により生成する水を除去しながら1級アミン(R1 −NH2 )と反応させることにより、このポリマーを本発明の液晶配向膜の成分であるマレイミド系ポリマーに転換することができる(Houben−Weyl,Vol.8,p.657,G.Thieme Verlag,1952)。この場合、無水マレイン酸単位からマレイミド単位へ完全に転換しなくてもよい。しかし、少なくとも30%、好ましくは50%以上の酸無水物がイミドへ転換されることが有利である。
【0030】
また本発明のマレイミド系ポリマーはエチレン性不飽和結合を有していても良い。エチレン性不飽和結合を有するマレイミド系ポリマーを含む液晶配向膜は、光学機能層を重合性液晶化合物から作製した場合に、液晶配向膜と光学機能層との密着性が向上する。
【0031】
エチレン性不飽和結合を有するマレイミド系ポリマーの製造例を以下に記す。式(4)で示されるモノマーとしてカルボキシル基又は/及びヒドロキシル基を含むモノマーを使用し、式(3)で示されるマレイミドモノマーと重合してカルボキシル基又は/及びヒドロキシル基を有する共重合体を得る。そのカルボキシル基又は/及びヒドロキシル基を有する共重合体に、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアネート、(メタ)アクリル酸クロリド等を公知の方法で反応させることによりエチレン性不飽和結合を有するマレイミド系ポリマーを合成することができる。
【0032】
また、無水マレイン酸単位が残存しているマレイミド系ポリマーに、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等を反応させてエチレン性不飽和結合を有するマレイミド系ポリマーを合成することもできる。
【0033】
本発明における液晶配向膜の製造には、(I)配向膜用組成物を支持体上に塗布、乾燥する工程、(II)得られた塗布膜にラビングする工程を有することが必須である。
【0034】
配向膜用組成物によっては、ラビング工程の前に塗膜への紫外線又は電子線照射による硬化を行ってもよい。配向膜用組成物中のマレイミド系ポリマーの種類、エチレン性不飽和結合を有するモノマーあるいはオリゴマーの種類及びその量により、塗膜への紫外線又は電子線照射による硬化の必要性が決まる。
【0035】
液晶性化合物からなる光学機能層から構成される光学素子を作製する場合に使用する液晶配向膜には、光学機能層を形成する際の溶剤に対する耐性が要求される。液晶配向膜の耐溶剤性を向上させる点では、配向膜用組成物がA)前記マレイミド系ポリマー、B)溶剤を含むことに加えて、C)エチレン性不飽和結合を複数有するモノマーあるいはオリゴマー、D)光重合開始剤を含み、ラビング工程の前に塗膜への紫外線または電子線照射による硬化を行うことが有利である。
【0036】
配向膜用組成物
配向膜用組成物は、A)前記マレイミド系ポリマー、B)溶剤を少なくとも含む。また、液晶の配向性に悪影響を及ぼさない範囲で、本発明の液晶配向膜に使用されるマレイミド系ポリマー以外のポリマーを含んでもよい。本発明のマレイミド系/他のポリマーの質量比は100/0〜50/50の範囲であることが好ましい。50/50未満である場合、液晶配向膜の液晶配向性が悪化する。
【0037】
配向膜組成物は、さらにC)エチレン性不飽和結合を有するモノマーあるいはオリゴマー、及び/又はD)光重合開始剤を含んでもよい。
【0038】
B)溶剤
配向膜用組成物に含まれる溶剤としては、本発明の液晶配向膜に使用されるマレイミド系ポリマーを溶解すれば特に限定されるものではなく、複数の種類の溶剤を混合してもよい。具体的には、ケトン(例、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、アミド(例、N、N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、水、アルコール(例、イソプロピルアルコール)等が挙げられる。
【0039】
C)エチレン性不飽和結合を有するモノマーあるいはオリゴマー
エチレン性不飽和結合を有するモノマーあるいはオリゴマーは、A)本発明のマレイミド系ポリマーが溶解する溶剤に可溶であればよく、分子中のエチレン性不飽和結合の数が1個でも複数でも構わないが複数の方が好ましい。
【0040】
エチレン性不飽和結合を有するモノマーあるいはオリゴマーとしては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、等の単官能のアクリレートやメタアクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリンやトリメチロールエタン等の多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後(メタ)アクリレート化したもの、ウレタンアクリレート類、ポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタアクリレートを挙げることが出来る。
【0041】
これらのエチレン性不飽和結合を有するモノマーあるいはオリゴマーは、配向膜の液晶の配向性を損なわない範囲で使用できる。使用量は配向膜組成物の全固形分に対し、50質量%以下であることが好ましい。
【0042】
D)光重合開始剤
光重合開始剤としては、ベンジル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイルー4’−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3、3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメート、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等を挙げることができる。なお、光重合開始剤の他に増感剤を、本発明の目的が損なわれない範囲で添加することもできる。
【0043】
光重合開始剤は配向膜組成物中にC)エチレン性不飽和結合を有するモノマーあるいはオリゴマーを含む場合に添加し、その場合の添加量としては、配向膜組成物の全固形分に対し、0. 01〜20質量%、好ましくは0.1〜10質量%である。
【0044】
配向膜用組成物は上記A)マレイミド系ポリマー、B)溶剤、C)エチレン性不飽和結合を有するモノマーあるいはオリゴマー、D)光重合開始剤以外に界面活性剤を添加してもよい。
【0045】
支持体
支持体の種類は、目的とする光学素子(支持体、配向膜および光学機能層の積層体)の用途に応じて決定するが、透明ポリマーフィルム、透明ガラス基板等が用いられる。光学素子を、位相差板、偏光子、ノッチフィルター等の光学補償シートとして用いる場合、支持体としては透明ポリマーフイルムが通常用いられる。透明ポリマーフイルムは、光学的異方性が小さいことが好ましい。透明であるとは、光透過率が80%以上であることを意味する。
【0046】
透明ポリマーフィルムの例としては、セルロース系ポリマー、商品名アートン(JSR(株)製)および商品名ゼオネックス(日本ゼオン(株)製)などのノルボルネン系ポリマー、商品名ゼオノア(日本ゼオン(株)製)等のシクロオレフィン系ポリマーおよびポリメチルメタクリレートなどが挙げられる。セルロース系ポリマーとしては、セルロースエステルが好ましく、セルロースの低級脂肪酸エステルがさらに好ましい。低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。炭素原子数は、2(セルロースアセテート)、3(セルロースプロピオネート)または4(セルロースブチレート)であることが好ましい。セルロースエステルとしてはセルロースアセテートが好ましく、その例としては、ジアセチルセルロースおよびトリアセチルセルロースなどが挙げられる。セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いても良い。
【0047】
目的とする光学素子に光学的等方性が要求される場合は、支持体としては一般にガラスまたはセルロースエステルが用いられる。光学的異方性が要求される場合は、一般に合成ポリマー(例、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ノルボルネン樹脂)が用いられる。合成ポリマーフイルムを延伸することによって、光学的異方性を得ることができる。
【0048】
支持体をセルロースエステルまたは合成ポリマーのフイルムとする場合には、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。位相差板の支持体の厚さは、20μm乃至500μmであることが好ましく、50μm乃至200μmであることがさらに好ましい。位相差板の支持体とその上に設けられる層(配向膜、光学機能層)との密着性を改善するため、透明支持体に表面処理(例、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火炎処理)を実施してもよく、プライマー層(接着剤層)、保護層を形成してもよい。
【0049】
光学機能層
本発明の光学素子は、支持体上に液晶配向膜、さらにその上に光学機能層が形成された構造を有している。光学機能層としては、ネマチック規則性又はスメクチック規則性を有する液晶であれば特に限定されるものではなく、ポリマー液晶および重合性液晶化合物のどちらでもよい。重合性液晶化合物としては、分子の両末端に重合性官能基があることが耐熱性のよい光学素子を得る上で好ましい。また液晶分子は、液晶分子のダイレクタと透明支持体面との間の傾斜角が5度未満であることが好ましい。光学機能層は二層以上積層されていてもよく、二層目は、ネマチック液晶にカイラル剤を加えたコレステリック規則性を有するカイラルネマチック液晶でもよい。本発明の液晶配向膜はコレステリック液晶やディスコチック液晶をホモジニアス配向させることもできる。
【0050】
光学機能層を形成するには、重合性液晶モノマーを用いてもよく、或いは、重合性液晶オリゴマーや重合性液晶ポリマー等を用いることも可能である。このような重合性液晶オリゴマーや重合性液晶ポリマーとしては、従来提案されているUV硬化型液晶や高分子液晶を適宜選択して用いることが可能である。
【0051】
光学機能層は、高分子液晶の場合、高分子液晶及び他の化合物を溶剤に溶解した溶液を配向膜上に塗布し、乾燥し、次いで液晶相形成温度まで加熱し、その後配向状態を維持して冷却することにより得られる。
【0052】
このような高分子液晶の一例としては、例えば下記の一般式(5)で表される繰返し単位を有するポリマーを挙げることができる。
【0053】
【化6】
【0054】
(式中、R11は、及び水素原子又はメチル基を、X1 は−COO−基又は−OCO−基を、aは1〜6の正の整数を、b及びcはそれぞれ独立に1又は2(ただし、b+c≦3を満足する。)を示す。)
【0055】
重合性液晶化合物の場合、重合性液晶化合物及び他の化合物(更に、例えば重合性モノマー、光重合開始剤)を溶剤に溶解した溶液を配向膜上に塗布し、乾燥し、次いで液晶相形成温度まで加熱したのちUV照射、または電子線照射により重合させ、さらに冷却することにより光学機能層を得る。
このような重合性液晶化合物の一例としては、例えば下記の一般式(6)及び一般式(7)で表わされる化合物(化合物(I)という)や下記に示す化合物を挙げることができる。化合物(I)としては、一般式(6)及び一般式(7)に包含される化合物の2種を混合して使用することも可能である。
【0056】
重合性液晶化合物としては、一般式(6)及び一般式(7)に包含される化合物や下記の化合物の2種以上を混合して使用することもできる。
【0057】
【化7】
【0058】
【化8】
【0059】
【化9】
【0060】
一般式(6)、一般式(7)において、R12、R13、R14及びR15はそれぞれ水素又はメチル基を示すが、液晶相を示す湿度範囲の広さからR12、R13、R14及びR15は共に水素であることが好ましい。X2 及びX3 は水素、塩素、臭素、ヨウ素、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、シアノ基、ニトロ基のいずれであっても差し支えない。また、化合物(I)の分子鎖両端の(メタ)アクリロイルオキシ基と、芳香環とのスペーサーであるアルキレン基の鎖長を示すd、e、f及びgは、それぞれ個別に2〜12の範囲で任意の整数を取り得るが、4〜10の範囲であることが好ましい。
【0061】
重合性液晶化合物に添加される光重合開始剤としては、ベンジル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイルー4’−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3、3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメート、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等を挙げることができる。なお、光重合開始剤の他に増感剤を、本発明の目的が損なわれない範囲で添加することもできる。
【0062】
このような光重合開始剤の添加量としては、一般的には0.01〜20質量%、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは、0.5〜5質量%の範囲で重合性液晶化合物に添加することができる。
【0063】
光学機能層を形成するためのコーティング液には、上記液晶性化合物、カイラル剤、光重合開始剤以外に、界面活性剤、重合性モノマー(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基を有する化合物)、及びポリマーを液晶性化合物の配向を阻害しない限り添加してもよい。これらの界面活性剤、重合性モノマー及びポリマーを選択することにより表面側(空気側)の液晶の傾斜角を調整することができる。
【0064】
また、光学機能層を形成するためのコーティング液に用いられる溶剤としては、上記液晶性化合物、カイラル剤が溶解し、かつ配向性を有する基材上の配向性を阻害しなければ特に限定されるものではない。具体的にはケトン(例、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)等が挙げられる。
【0065】
光学素子
図1に本発明の光学素子の一般的な層構成を示す。図1において1は支持体、2は支持体1上に形成された液晶配向膜、3は液晶配向膜2上に形成された液晶性化合物からなる光学機能層である。このような積層構造の光学素子には、位相差板、偏光子、ノッチフィルター、ディスプレイ用のカラーフィルターが挙げられる。
【0066】
光学素子の製造
本発明の光学素子の製造方法は、次のようにして行うことができる。前記配向膜用組成物を前記支持体上に塗布し、乾燥する。配向膜用塗布液の塗布方法としては、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、スピンコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、エクストルージョンコート法、バーコート法およびE型塗布法等を挙げることができる。次いで、得られた膜をラビングすることにより、配向規制能を有する配向膜を得る。前記配向膜組成物がエチレン性不飽和結合を有するモノマーあるいはオリゴマーを含む場合には、配向膜用塗布液を塗布し乾燥して塗布膜を得た後、ラビングを行う前に塗布膜に紫外線又は電子線を照射して硬化させる工程を加える。
【0067】
形成された液晶配向膜の膜厚は、0.1μm〜10μmの範囲にあることが好ましい。配向膜用組成物を塗布した後、溶剤を乾燥して除去する方法としては、例えば、減圧乾燥もしくは加熱乾燥、さらにはこれらの乾燥を組み合わせる方法等により行う。加熱乾燥する際の温度は、20℃乃至110℃の範囲にあることが好ましい。
【0068】
上記液晶配向膜上に、液晶性ポリマー及び他の化合物を溶剤に溶解した溶液を塗布し、乾燥し、次いで液晶相形成温度まで加熱し、その後配向状態を維持して冷却することにより光学機能層を形成し、光学素子を得る。あるいは、重合性液晶化合物及び他の化合物(さらに、例えば、重合性モノマー、光重合開始剤)を溶剤に溶解した溶液を上記液晶配向膜に塗布し、乾燥し、次いで液晶相形成温度まで加熱した後、UV照射、または電子線照射により重合させ、さらに冷却することにより光学機能層を形成し、光学素子を得る。
【0069】
本発明の光学素子は、光学機能層が一層であっても、二層以上から形成されていてもよい。
【0070】
【実施例】
[実施例1]
(液晶配向膜の形成)
ポリ(N−シクロヘキシルマレイミド)を、N−メチルピロリドン/メチルエチルケトンの混合溶媒(質量比=1/4)に溶解して4質量%溶液を調製した。この溶液を、ワイヤーバーコーターを用いてガラス支持体上に塗布した。塗布層を120℃で5分間加熱乾燥し、膜厚0.8μmの塗膜を得た。その塗膜の表面をラビング処理して、液晶配向膜を作製した。
(ネマチック液晶層の形成)
次の化学式(8)
【0071】
【化10】
【0072】
で表される重合性化合物10質量部をメチルイソブチルケトン40質量部に溶解し、さらに光重合開始剤イルガキュア907(チバスペシャリティーケミカルズ製)0.5質量部を添加し、光学的異方性層形成用塗布液を得た。この塗布液を前記工程で作製した液晶配向膜上にワイヤーバーにて塗工し、乾燥後、85℃で1分間加熱し、その温度で高圧水銀灯を用いて50mJ/cm2 の紫外線を照射することにより配向状態を固定化した。
【0073】
KOBRA(王子計測器(株)製)により、ネマチック液晶分子のダイレクタを測定したところ、ラビング方向に対し80度であった。
【0074】
[実施例2]
(液晶配向膜の形成)
N−シクロヘキシルマレイミド/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(N−シクロヘキシルマレイミド/メチルメタクリレート/メタクリル酸=30/30/40モル比)をジエチレングリコールジメチルエーテルに溶解して4質量%溶液を調製した。この溶液を、ワイヤーバーコーターを用いてガラス支持体上に塗布した。塗布層を加熱乾燥し、膜厚0.8μmの塗膜を得た。その塗膜の表面をラビング処理して、液晶配向膜を作製した。
【0075】
(ネマチック液晶層の形成)
前記実施例1の液晶配向膜を前記工程で作成した液晶配向膜に変更する以外は前記実施例1と同様にしてネマチック液晶層を形成した。ネマチック液晶分子のダイレクタはラビング方向に対し80度であった。
【0076】
[実施例3]
(液晶配向膜の形成)
N−フェニルマレイミド/イソブチレン共重合体(N−フェニルマレイミド/イソブチレン=50/50モル比)をメチルエチルケトンに溶解して4質量%溶液を調製した。この溶液を、ワイヤーバーコーターを用いてガラス支持体上に塗布した。塗布層を加熱乾燥し、膜厚0.8μmの塗膜を得た。その塗膜の表面をラビング処理して、液晶配向膜を作製した。
【0077】
(ネマチック液晶層の形成)
前記実施例1の液晶配向膜を前記液晶配向膜に変更する以外は前記実施例1と同様にしてネマチック液晶層を形成した。ネマチック液晶分子のダイレクタはラビング方向に対し85度であった。
【0078】
[実施例4]
(液晶配向膜の形成)
N−シクロヘキシルマレイミド/メチルメタクリレート共重合体(N−シクロヘキシルマレイミド/メチルメタクリレート=20/80モル比)7質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート2質量部、光重合開始剤イルガキュア907(商品名、チバスペシャリティーケミカルズ製)1質量部をジエチレングリコールジメチルエーテル90質量部に溶解した。この溶液を、ワイヤーバーコーターを用いてガラス支持体上に塗布した。塗布層を加熱乾燥後、高圧水銀灯を用いて500mJ/cm2 の紫外線を照射して塗膜を硬化させた。その塗膜の表面をラビング処理して、液晶配向膜を作製した。
【0079】
(ネマチック液晶層の形成)
前記実施例1の液晶配向膜を本実施例4の液晶配向膜に変更する以外は、実施例1と同様にしてネマチック液晶層を形成した。ネマチック液晶分子のダイレクタは、ラビング方向に対し80度であった。
【0080】
[比較例1]
前記実施例2のN−シクロヘキシルマレイミド/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体をN−ベンジルマレイミド/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(N−ベンジルマレイミド/メチルメタクリレート/メタクリル酸=30/30/40モル比)に変更する以外は前記実施例2と同様にして、液晶配向膜及びネマチック液晶層を形成した。比較例1の液晶配向膜を形成するポリマーは、イミド環に環状構造が直結して結合されておらず、スペーサー(−CH3 −)が介されているため、液晶配向膜上に形成された液晶層のネマチック液晶分子のダイレクタはラビング方向に対し5度と低いものであった。
【0081】
[比較例2]
前記実施例3のN−フェニルマレイミド/イソブチレン共重合体をN−フェニルマレイミド/スチレン共重合体(N−フェニルマレイミド/スチレン=50/50モル比)に変更する以外は前記実施例3と同様にして、液晶配向膜及びネマチック液晶層を形成した。比較例2の液晶配向膜を形成するポリマーは、イミド環に環状構造をスペーサーを介することなく直結させたポリマーであるにもかかわらず、ポリマー中のスチレン成分が影響してネマチック液晶分子のダイレクタはラビング方向に対し20度と低いものであった。
【0082】
[比較例3]
(配向膜の形成)
N−シクロヘキシルマレイミド/メチルメタクリレート共重合体(N−シクロヘキシルマレイミド/メチルメタクリレート=20/80モル比)をジエチレングリコールジメチルエーテルに溶解して4質量%溶液を調製した。該溶液は、前記実施例4の配向膜用組成物において、ペンタエリスリトールトリアクリレートと光重合開始剤を省略したものである。この溶液を、ワイヤーバーコーターを用いてガラス支持体上に塗布した。塗布層を加熱乾燥し、膜厚0.8μmの塗膜を得た。その塗膜の表面をラビング処理して、液晶配向膜を作製した。
【0083】
(ネマチック液晶層の形成)
前記実施例1の配向膜を前記配向膜に変更する以外は、実施例1と同様にして液晶層を塗布、乾燥、紫外線硬化させた。液晶配向膜を形成したポリマーが液晶層作製時に液晶層作製用溶媒に溶解したため、液晶層は配向せず、白濁した塗膜となった。これに対して、前記実施例4の液晶配向膜は、比較例3に比べてペンタエリスリトールトリアクリレートと光重合開始剤を含んでUV硬化膜となっているので、液晶配向性が発揮されることが分かる。
【0084】
[比較例4]
前記実施例3のN−フェニルマレイミド/イソブチレン共重合体をポリスチレンに変更する以外は前記実施例3と同様にして液晶配向膜及びネマチック液晶層の形成を試みた。比較例4のポリスチレンは液晶層作製用溶媒に溶解するため、液晶層は配向せず、白濁した塗膜となった。
【0085】
また、液晶層作製用溶媒による影響をなくすため、前記化学式(8)で表される重合性化合物のみをラビング処理を行ったポリスチレンからなる塗膜上に塗布し、85度で3分間加熱した。液晶の配向方向を偏光顕微鏡で確認したところ、ラビング方向とほぼ同じ方向であった。
【0086】
【発明の効果】
本発明のマレイミド系ポリマーを含む液晶配向膜は、イミド環に、脂肪族環基、芳香族基、又は複素環基等の環状構造をスペーサーを介することなく直結させており、ラビング方向に対して45度〜90度をなす方向に液晶分子を配向させる性質が付与されたものであるので、ラビングによりマレイミド系ポリマーの主鎖をラビング方向に配向させた場合、イミド環に直結している環状構造の側鎖により、液晶分子の配向性が種々の方向に乱れることなく、ラビング方向に対して45度〜90度をなす方向に液晶分子が安定して配向する。
本発明の液晶配向膜は、位相差板・偏光素子等の光学素子に特に有効であるが、その他液晶表示用としても好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光学素子の層構成を示す図である。
1 支持体
2 液晶配向膜
3 光学機能層
Claims (5)
- 前記マレイミド系ポリマーが、さらにエチレン性不飽和結合を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶配向膜。
- 支持体、液晶配向膜、及び液晶性化合物からなる光学機能層から構成される光学素子であって、該液晶配向膜は請求項1、2又は3に記載の液晶配向膜が用いられていることを特徴とする光学素子。
- 前記液晶性化合物が、重合性ネマチック液晶を主成分とする請求項4に記載の光学素子。
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