JP2005326439A - 位相差板材料、重合体、位相差板および画像表示装置 - Google Patents
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【解決手段】少なくとも一種の光官能性基を有する重合体からなる光官能性配向膜と、該光官能性配向膜上に設けられた、単一方向からの直線偏光による光照射によって配向制御され、配向状態に固定された少なくとも一種のディスコティック液晶性化合物を含有する光学異方性層とを有し、かつ、前記ディスコティック液晶性化合物が、前記光官能性配向膜の膜面に対して略垂直に配向していることを特徴とする位相差板材料。
【選択図】 なし
Description
(1)少なくとも一種の光官能性基を有する重合体からなる光官能性配向膜と、該光官能性配向膜上に設けられた、単一方向からの直線偏光による光照射によって配向制御され、配向状態に固定された少なくとも一種のディスコティック液晶性化合物を含有する光学異方性層とを有し、かつ、前記ディスコティック液晶性化合物が、前記光官能性配向膜の膜面に対して略垂直に配向していることを特徴とする位相差板材料。
(4)前記光官能性配向膜が、少なくとも1つのフッ素原子で置換された構成単位を含有する重合体からなる(1)〜(3)のいずれかに記載の位相差板材料。
(6)前記ディスコティック液晶性化合物の分子が、空気界面側において分子の円盤面と空気界面とのなす角を略垂直にして配向固定されている(1)〜(5)のいずれかに記載の位相差板材料。
一般式(I)
(9)液晶セルと、(8)に記載の位相差板とを有する画像表示装置。
(10)前記液晶セルがIPS(In−Plane Switching)モードである(9)に記載の画像表示装置。
なお、本明細書において、「略垂直」および「略直交」は、正確に90°である態様以外にも、90±5°である態様も含む意味である。また、本発明における「重合体」には、1種のみの構成単位からなるものの他、2種類以上の構成単位からなる「共重合体」も含む趣旨である。
1.光官能性配向膜
本発明の光官能性配向膜は、少なくとも1種の光官能性基を含有する重合体からなる。本発明でいう光官能性基とは、単一方向から直線偏光の光照射によって配向機能が付与される置換基であり、例えば、アゾ化合物に代表されるフォトクロミック化合物(例えば、Langmuir, vol. 4, page 1214 (1988); Langmuir, vol.8, page 1007 (1992), Appl. Phys. Lett., vol. 63, No.4, page 449(1993); Liquid Crystals, vol.13, No. 2, page 189(1993); 高分子論文集、第47巻、10号、771項(1990); 特公平7−92567号公報;特公平7−101264号公報等)、および、桂皮酸誘導体に代表される光反応性基(二量化および架橋化等)化合物(例えばChem. Mater., vol. 11, page 656 (1999); Jpn. J. Appl. Phys., vol. 38, page 145 (1999)等)を有する置換基を表す。
本発明に用いられる光官能性配向膜として好ましくは、光二量化反応を起こす桂皮酸誘導体を側鎖に有する重合体であり、該重合体の主鎖骨格としては、炭化水素系重合体(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、重合体レインイミド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリアクリルアニリド等)、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカルボナート、ポリアミド、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリウレタンまたはポリウレイドが好ましく、主鎖骨格は置換もしくは無置換のポリエチレン骨格がより好ましい。
一般式(I)中、Zで表される置換基は水素原子またはメチル基を表す。
また、前記共重合される構成単位には、少なくとも1つのフッ素原子が置換している事が好ましく、2つ以上のフッ素原子が置換している事がより好ましく、3つ以上のフッ素原子が置換している事がさらに好ましい。
また、本発明の光官能性配向膜は、水もしくはアルコール系の溶媒に溶解させるために少なくとも1つの水溶性基(例えば、カルボキシル基等)が置換している事が好ましい。ただし、良好なディスコティック液晶性化合物の垂直配向状態を作製するには表面エネルギーをできる限り小さくすることが必要である。配向膜表面の表面エネルギーは、30〜55mJ/m2である事が好ましく、より好ましくは、40〜50mJ/m2である。
本発明の位相差板は、支持体上に、本発明の位相差板材料を設けることによって得られる。より具体的には、本発明の位相差板は、上記支持体上に形成された光官能性配向膜上に直線偏光照射する事よって配向制御され、且つその配向状態に固定されたディスコティック液晶性化合物を含有する光学異方性層を有する。以下に本発明の位相差板材料および位相差板に用いられるディスコティック液晶性化合物、さらにこれら液晶性化合物の配向固定化された層を形成するための各種添加剤(例えば、光重合開始剤、増感剤および配向制御剤等)の詳細を述べる。
ディスコティック液晶性化合物は、様々な文献(C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,page 111(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,page 1794(1985);J.Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.,vol.116,page 2655(1994))等に記載されている。ディスコティック液晶性化合物の重合については、特開平8−27284公報に記載がある。ディスコティック液晶性化合物を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する方法を採用することが好ましい。従って、重合性基を有するディスコティック液晶性化合物は、下記式(V)で表わされる化合物であることが好ましい。
式(V)中、Dは円盤状コアであり、Mは二価の連結基であり、Pは重合性基であり、nは4〜12の整数である。
重合性基(P)は、不飽和重合性基(例えば、後述するP1、P2、P3、P7、P8、P15、P16およびP17)またはエポキシ基(例えば、後述するP6およびP18)であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基(例えば、後述するP1、P7、P8、P15、P16、P17)であることが最も好ましい。
なお、複数のMとPの組み合わせは、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
さらに、二種類以上のディスコティック液晶性化合物(例えば、二価の連結基に不斉炭素原子を有する分子と有していない分子)を併用してもよい。
M1:−AL−CO−O−AL−
M2:−AL−CO−O−AL−O−
M3:−AL−CO−O−AL−O−AL−
M4:−AL−CO−O−AL−O−CO−
M5:−CO−AR−O−AL−
M6:−CO−AR−O−AL−O−
M7:−CO−AR−O−AL−O−CO−
M8:−CO−NH−AL−
M9:−NH−AL−O−
M10:−NH−AL−O−CO−
M12:−O−AL−O−
M13:−O−AL−O−CO−
M14:−O−AL−O−CO−NH−AL−
M15:−O−AL−S−AL−
M16:−O−CO−AL−AR−O−AL−O−CO−
M17:−O−CO−AR−O−AL−CO−
M18:−O−CO−AR−O−AL−O−CO−
M19:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−CO−
M20:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−AL−O−CO−
M21:−S−AL−
M22:−S−AL−O−
M23:−S−AL−O−CO−
M24:−S−AL−S−AL−
M25:−S−AR−AL−
(2−1) 光重合開始剤、および、増感剤
液晶性化合物は、配向状態を維持して固定することが好ましく、固定化は、液晶性化合物に導入した重合性基(上記式(V)で表すところのP)の重合反応により実施することが好ましい。固定化は所望の光学異方性の発現と安定化が目的であり、その結果、液晶性が失われる事は何ら差し支えない。前記目的達成のためには、前記塗布液中には、重合開始剤を含有させるのが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応、および電子線を用いるEB硬化が含まれる。このうち、光重合反応(光硬化)およびEB硬化が好ましい。光の作用によりラジカルを発生させる重合開始剤の例としては、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、米国特許2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、米国特許2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンジル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ならびに、チオキサントン系化合物等が好ましい。アセトフェノン系化合物としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシメチル−1−フェニルプロパン−1−オン、4’−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、p−ジメチルアミノアセトン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノンおよびp−アジドベンザルアセトフェノン等が挙げられる。ベンジル系化合物としては、例えば、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタールおよび1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。ベンゾインエーテル系化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテルおよびベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ミヒラーズケトン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノンおよび4,4’−ジクロロベンゾフェノン等が挙げられる。チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントンおよび2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられる。このような芳香族ケトン類からなる感光性ラジカル重合開始剤の中でも、アセトフェノン系化合物およびベンジル系化合物が、硬化特性、保存安定性および臭気等の面で特に好ましい。これらの芳香族ケトン類からなる感光性ラジカル重合開始剤は、1種または2種以上を所望の性能に応じて配合して使用することができる。また、感度を高める目的で重合開始剤に加えて、増感剤を用いてもよい。増感剤の例には、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、およびチオキサントン等が含まれる。
これら液晶性組成物由来の層を形成する方法としては、液晶性化合物、および所望により重合性開始剤や他の添加剤を含む塗布液を塗布し、液晶性化合物を配向、固定化することで形成することができる。液晶性化合物を配向および固定化した後は、支持体を剥離してもよい。
前記光学異方性層を構成する組成物(光学異方性層組成物)中には、上記光重合開始剤以外にも適宜添加剤を添加してもよい。例えば、可塑剤、モノマー、界面活性剤、セルロースエステル、配向制御剤およびカイラル剤等が挙げられる。以下に、配向制御剤について詳細に説明する。本発明における配向制御剤とは、液晶性化合物の塗布液に添加され、塗布後に液晶性化合物の層の表面、つまり、空気界面側に偏在することによって、空気界面側での液晶性化合物の配向を制御するのに寄与する化合物を意味する。この配向制御剤の構造によっては、液晶性化合物を空気界面側で略垂直に配向させたり、逆に略水平に配向させることもできるが、本発明においてはディスコティック液晶性化合物を空気界面側で略垂直に配向させる添加剤が好ましく、特に少なくとも1つのフッ素原子を有する低分子化合物、もしくは、重合体を添加剤として用いるのが好ましい。例えば、ディスコティック液晶性化合物の場合には、特開2000−344734号公報等に記載の下記一般式(VII)で表されるような化合物が挙げられる。
一般式(VII)
(Hb−)mL(−Bu)n
式(VII)中、Hbは、炭素原子数が1〜40のフッ素置換アルキル基、炭素原子数が6〜40のフッ素置換アリール基、炭素原子数が6〜60のアルキル基および炭素原子数が1〜60のアルキル置換オリゴシロキサノキシ基からなる群より選ばれる疎水性基であり、Buは少なくとも2つの環状構造を含む排除体積効果を有する基であり、Lは(m+n)価の連結基であり、mおよびnはそれぞれ独立に、1〜12の整数である。
ポリテトラメチレンオキシド
ポリ−ε−カプロラクトン
ポリ−ε−カプロラクトン ジオール
ポリ−ε−カプロラクトン トリオール
ポリビニルアセテート
ポリメラミン
ポリ(エチレン アジペート)
ポリ(1,4−ブチレン アジペート)
ポリ(1,4−ブチレン グルタレート)
ポリ(1,2−ブチレン グリコール)
ポリ(1,4−ブチレン スクシネート)
ポリ(1,4−ブチレン テレフタレート)
ポリ(エチレンテレフタレート)
ポリ(2−メチル−1,3−プロピレンアジペート)
ポリ(2−メチル−1,3−プロピレン グルタレート)
ポリ(ネオペンチルグリコールアジペート)
ポリ(ネオペンチルグリコール セバケート)
ポリ(1,3−プロピレン アジペート)
ポリ(1,3−プロピレン グルタレート)
ポリビニルブチラール
ポリビニルホルマール
ポリビニルアセタール
ポリビニルプロパナール
ポリビニルヘキサナール
ポリビニルピロリドン
ポリアクリル酸エステル
ポリメタクリル酸エステル
ポリ(3−ヒドロキシブチリックアシッド)
本発明の光学異方性層は、前記(仮)支持体上に形成され、且つ、配向性が付与された光官能性配向膜上に上記光学異方性層組成物を用いて形成する工程を含む。該工程は塗布する液晶性化合物を可溶できる溶媒に溶解して調製した塗布液を、光官能性配向膜上に塗布することによって作製することができる。また、可能であれば蒸着により形成してもよいが、塗布により形成するのが好ましい。塗布方法としてはカーテンコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、印刷コーティング、スプレーコーティング、スロットコーティング、ロールコーティング、スライドコーテティング、ブレードコーティング、グラビアコーティングおよびワイヤーバー法等の公知の塗布方法が挙げられる。次いで、25℃〜130℃において用いた溶媒を乾燥すると同時に、液晶性化合物を配向させ、さらに、所望により紫外線照射等によって固定化することによって、液晶性化合物による光学異方性層が形成される。重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。このようにして形成された液晶性化合物組成物由来の層の厚さは、用途に応じて、言い換えれば、最適なレターデーションの値に応じて、その好ましい範囲も異なる。光官能性配向膜上に形成されるディスコティック液晶性組成物由来の光学異方性層の厚さは一般的には0.1〜10μmであるのが好ましく、0.5〜5μmであるのがさらに好ましい。
本発明の位相差材料は、好ましくは、支持体上に設けて位相差板とする。支持体は、作製時に用いられる支持体と必ずしも同一でなくてもよく、前記光学異方性層を作製した後、作製時に用いた仮支持体から他の支持体に転写して用いてもよい。支持体は、透明のものが好ましく、さらに、光学異方性が小さく、波長分散が小さい重合体フィルムを支持体として用いることがより好ましい。ここで支持体が透明であるとは、光透過率が80%以上であることを意味する。波長分散が小さいとは、具体的には、Re400/Re700の比が1.2未満であることが好ましい。光学異方性が小さいとは、具体的には、面内レターデーション(Re)が20nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。支持体は、ロール状または長方形のシート状の形状を有することが好ましく、ロール状の支持体を用いて、光学異方性層を積層してから、必要な大きさに切断することが好ましい。重合体の例には、セルロースエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートが含まれる。セルロースエステルが好ましく、アセチルセルロースがさらに好ましく、トリアセチルセルロースが最も好ましい。重合体フィルムは、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。支持体の厚さは、20〜500μmであることが好ましく、50〜200μmであることがさらに好ましい。支持体とその上に設けられる層(接着層、光官能性配向膜あるいは光学異方性層)との接着を改善するため、支持体に表面処理(例、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理および火炎処理)を実施してもよい。支持体の上に、接着層(下塗り層)等を設けてもよい。
本発明の位相差板は、支持体上に、少なくとも1種の光官能性配向膜と、その上にディスコティック液晶性化合物を含む光学異方性層組成物由来の学異方性層を有する。光官能性配向膜上に、光学異方性層組成物からなる塗布液を適用すると、ディスコティック液晶性化合物の分子は、光官能性配向膜の表面に施された直線偏光による光照射された方向、および組成物中の他の添加剤の作用等により、その配向が制御され、特定の配向状態となる。本発明の位相差板に好ましく用いられる光官能性配向膜を使用すると、図1に示した様にディスコティック液晶性化合物を、その円盤面を略直交して配向させることができる。こうして配向したディスコティック液晶性化合物の配向は、固定化しても、固定しなくてもよいが、UV照射等により配向を固定化するのが好ましい。また、支持体の面に対する配向角度は、ディスコティック液晶性化合物組成物に含まれる配向制御剤によって異なるが、概ね図1に示した様に、略垂直にするのが好ましい。
本発明の位相差板に、直線偏光膜または透明保護膜を貼り合せ、偏光板とした後に、実際の液晶表示素子(画像表示装置)に用いるのが好ましい。以下に該偏光膜および透明保護膜について説明する。
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜あるいは二色性染料を用いる染料系偏光膜およびポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。偏光膜の透過軸は、フィルムの延伸方向に垂直な方向に相当する。ディスコティック液晶性化合物を光学異方性層に用いた場合には、偏光膜の透過軸は、光官能性配向膜側のディスコティック液晶性化合物の面に対し、実質的に平行になるように配置される。通常は、位相差板の支持体側に張り合わせるのが好ましいが、必要によっては、光学異方性層側と張り合わせてもよい。
位相差板の光学異方性層側に透明保護膜として、透明な重合体フィルムが用いられることが好ましい。保護膜が透明であるとは、光透過率が80%以上であることを意味する。透明保護膜としては、一般にセルロースエステルフィルム、好ましくはトリアセチルセルロースフィルムが用いられる。セルロースエステルフィルムは、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。透明保護膜の厚さは、20〜500μmであることが好ましく、50〜200μmであることがさらに好ましい。
本発明の位相差板は、様々な表示モードの液晶セルを有する液晶表示装置に用いることができる。前述した様に、本発明の位相差板は、液晶セルの光学補償シートとして有用である。液晶性化合物からなる光学異方性層有する光学補償シートは、透過型については、TN(Twisted Nematic)、IPS(In-Plane Switching)、FLC(Ferroelectric LiquidCrystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper TwistedNematic)、VA(Vertically Aligned)およびECB(Electrically ControlledBirefringence)、反射型については、TN、HAN(Hybrid Aligned Nematic)およびGH(Guest-Host)等の液晶セルに対応するものが既に提案されている。本発明によって得られる位相差板および偏光板は、その配向状態によって種々の液晶表示モードに適用できるが、特に透過型のIPSモードに好適に使用できる。
1.位相差板の作製
(1)光官能性配向膜の形成
支持体として厚さ100μmのトリアセチルセルロースフィルムを用いた。本発明の光官能性配向膜(AL−2)をメチルエチルケトンまたはテトラヒドロフランで溶解して1.5質量%の溶液を調整した。この溶液を、スピンコーターを用い、支持体に塗布し80℃の温風で2分間乾燥した。波長313nm付近の輝線スペクトルを有する直線偏光の紫外線をフィルム面に垂直な方向から照射し、光官能性配向膜AL−2の層を設けた。照射光量は500mJ/cm2であり、光照射後の表面エネルギーは45mJ/cm2であった。
前記光官能性配向膜上に、下記の組成の塗布液を、バーコーターを用いて連続的に塗布した。塗布層を125℃で1分間加熱して、ディスコティック液晶性化合物を配向させた。その温度で4秒間、600mJ/cm2の紫外線を照射してディスコティック液晶性化合物を重合させ、配向状態を固定した。このようにして光学的異方性層(厚み1.6μm)を形成し、本発明の位相差板RL−101を作製した。波長550nmにおける面内レターデーション(Re)をエリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用いて測定したところ、Reは110nmであった。
───────────────────────────────────
ディスコティック液晶性化合物組成物層の塗布液組成
───────────────────────────────────
下記のディスコティック液晶性化合物 30.0質量%
下記の増感剤 0.15質量%
下記の光重合開始剤 0.45質量%
下記の配向制御剤 0.10質量%
メチルエチルケトン 69.3質量%
───────────────────────────────────
作製した位相差板を、偏光顕微鏡下で観察し、配向状態および配向欠陥の評価を行った。配向状態は光学顕微鏡を用いて目視評価した結果、光学異方性層において、ディスコティック液晶性化合物が、図1に示す配向状態に固定されていることを確認した。即ち、作製した光学異方性層中において、ディスコティック液晶性化合物が光官能性配向膜平面に対し垂直であり、配向している垂直型の配向状態に固定されていることを確認した。さらに、生じた配向欠陥の数を光学顕微鏡で観察して調べた結果、点欠陥の個数(1.0mm2範囲の平均値)は1.0mm2範囲で、RL−101では8個以下であった。
位相差板作製後、その表面を金具で引っ掻き、光学異方性層の光官能性配向膜からの剥がれやすさを評価した。評価基準としては、A:全く剥がれない、B:少し剥がれる、C:剥がれやすい、の3段階で評価した結果、RL−101はBレベルであった。
厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して偏光膜を得た。偏光膜の一方の面に、ケン化処理したロール状セルローストリアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士写真フィルム(株)製)を、他方の面にケン化処理した、上記作製したロール状位相差板(RL−101)の支持体を、連続して貼り合わせ、偏光板HL−101を作製した。作製した偏光板を透過型IPS用液晶セルに貼り付け、人物画像を表示した状態を目視で観察した結果、斜め45度からの視野角が改善され、且つ、ムラの無い画像が得られた。画像評価基準として5点満点で採点した。5点が一番好ましく、ムラなく良好な画像の場合である。
本発明の光官能性配向膜AL−5を水/メタノール混合溶液に4質量%になるように希釈し、中和剤としてトリエチルアミンを添加し、光官能性配向膜の塗布液を調液した。この塗布液を、支持体の片面に連続塗布し、塗布層を120℃で2分間加熱して、乾燥し、厚さ1μmの膜を形成した。波長313nm付近の輝線スペクトルを有する直線偏光の紫外線をフィルム面に垂直な方向から照射し、光官能性配向膜AL−5を設けた。照射光量は800mJ/cm2であった。光照射後の表面エネルギーは42mJ/cm2であった。
さらに、光官能性配向膜の組成以外、実施例1と同様にして、光官能性配向膜AL−3、AL-4を作製した。また、光官能性配向膜の組成以外、実施例2と同様にして、光官能性配向膜(AL−5〜AL−9)を作製した。
こうして作製した光官能性配向膜についても、実施例1と同様に、位相差板および偏光板それぞれ作製した(RL−101〜108、HL−101〜108)。
作製した上記偏光板について、上記と同様に画像表示性能を評価した。結果を表2に示す。作製した上記位相差板について上記と同様にして求めた配向欠陥の数、および密着性の評価結果を以下の表2に示した。
また、作製した上記位相差板を用い、実施例1と同様の手法で画像表示性能を評価した。
比較例1として実施例1と同様な光官能性配向膜の繰り返し単位構成の重合体を用いて配向膜を作製した。ただし、光照射する際に波長313nm付近の輝線スペクトルを有する非偏光の紫外線をフィルム面に斜め45°から照射し、配向膜AM−1の層を設けた。照射光量は900mJ/cm2であり、光照射後の表面エネルギーは45mJ/cm2であった。この光官能性配向膜を用いて、位相差板RM−101および偏光板HM−101を作製し、前記と同様な評価を行った。その結果も表2に示す。
02 光官能性配向膜
03 光学異方層
04 位相差板
05 ディスコティック液晶性化合物
06 直線偏光の偏光面
Claims (10)
- 少なくとも一種の光官能性基を有する重合体からなる光官能性配向膜と、該光官能性配向膜上に設けられた、単一方向からの直線偏光による光照射によって配向制御され、配向状態に固定された少なくとも一種のディスコティック液晶性化合物を含有する光学異方性層とを有し、かつ、前記ディスコティック液晶性化合物が、前記光官能性配向膜の膜面に対して略垂直に配向していることを特徴とする位相差板材料。
- 前記光官能性配向膜が、少なくとも1種の桂皮酸誘導体を側鎖に有する構成単位を含有する重合体からなる請求項1に記載の位相差板材料。
- 前記光官能性配向膜の表面エネルギーが30mJ/m2〜55mJ/m2である請求項1または2に記載の位相差板材料。
- 前記光官能性配向膜が、少なくとも1つのフッ素原子で置換された構成単位を含有する重合体からなる請求項1〜3のいずれかに記載の位相差板材料。
- 前記光官能性配向膜が、少なくとも1種の桂皮酸誘導体を側鎖に有する構成単位と、少なくとも1つのフッ素原子で置換された構成単位との重合体である請求項1または3に記載の位相差板材料。
- 前記ディスコティック液晶性化合物の分子が、空気界面側において分子の円盤面と空気界面とのなす角を略垂直にして配向固定されている請求項1〜5のいずれかに記載の位相差板材料。
- 支持体と、該支持体上に設けられた、請求項1〜7のいずれかに記載の位相差板材料とを有する位相差板。
- 液晶セルと、請求項8に記載の位相差板とを有する画像表示装置。
- 前記液晶セルがIPS(In−Plane Switching)モードである請求項9に記載の画像表示装置。
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