JP2004315321A - 紫外線硬化型樹脂被覆線状体の製造方法およびその製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】塗布状態や硬化状態が安定で、高品質な紫外線硬化型樹脂被覆線状体を形成する製造方法及びその製造装置を提供する。
【解決手段】光ファイバテープ心線１１等の線状体に紫外線硬化型樹脂を塗布し、紫外線硬化装置にて前記紫外線硬化型樹脂を硬化させる紫外線硬化型樹脂被覆線状体の製造方法において、前記紫外線硬化装置内に紫外線透過性パイプ１３を設置し、前記紫外線透過性パイプ内に、前記紫外線硬化型樹脂が塗布された線状体および供給管１４より不活性ガスを供給し、前記紫外線透過性パイプ内の雰囲気ガスを吸引管１５より吸引し、酸素濃度検出器１６を用いて紫外線透過性パイプ内の雰囲気ガス中の酸素濃度を検知し、酸素濃度制御器１７により紫外線透過性パイプ内が所定値の酸素濃度になるように制御しながら紫外線照射して、前記紫外線硬化型樹脂を硬化させる
【選択図】 図１
【解決手段】光ファイバテープ心線１１等の線状体に紫外線硬化型樹脂を塗布し、紫外線硬化装置にて前記紫外線硬化型樹脂を硬化させる紫外線硬化型樹脂被覆線状体の製造方法において、前記紫外線硬化装置内に紫外線透過性パイプ１３を設置し、前記紫外線透過性パイプ内に、前記紫外線硬化型樹脂が塗布された線状体および供給管１４より不活性ガスを供給し、前記紫外線透過性パイプ内の雰囲気ガスを吸引管１５より吸引し、酸素濃度検出器１６を用いて紫外線透過性パイプ内の雰囲気ガス中の酸素濃度を検知し、酸素濃度制御器１７により紫外線透過性パイプ内が所定値の酸素濃度になるように制御しながら紫外線照射して、前記紫外線硬化型樹脂を硬化させる
【選択図】 図１
Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、線状体に塗布された紫外線硬化型樹脂を硬化するための製造方法および製造装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来光ファイバ素線や、それらを複数本平行に配置させた光ファイバテープ心線のような線状体の周囲に紫外線硬化型樹脂を塗布し、紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射して硬化させる方法は、線状体の被覆方法として広く用いられている。また、上記紫外線硬化型樹脂の硬化状態を高める装置又は方法として、例えば特開平８−１５２５４６号公報に開示されている。
【０００３】
図５は従来の光ファイバテープ心線の製造装置を示す概略図である。
【０００４】
光ファイバテープ心線を構成する光ファイバ素線５１は、第一のボビン５２により繰り出され、紫外線硬化型樹脂の塗布装置５３に挿入される。塗布装置５３で複数本の光ファイバ素線５１を並べ、光ファイバテープ心線５４にする。その後紫外線硬化装置５５内を通過させ、紫外線を照射して硬化し、第二のボビン５７に光ファイバテープ心線５４を巻き取る。樹脂を硬化させる際、紫外線硬化装置５５内の温度上昇を抑え、また硬化反応を阻害する酸素濃度を低く抑えるために、紫外線硬化装置５５内に紫外線透過性パイプ５６を設け、管内の酸素濃度を酸素センサー５８でモニターしながら、一定濃度以下になるように冷却ガスの流量を調整し配管５９より流していた。
【０００５】
【特許文献】
特開平８−１５２５４６号公報（第３−４頁、図１）
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら図５に示す紫外線硬化型樹脂被覆線状体の製造装置において、酸素濃度を検出する酸素センサーが管内の局所的な位置に設置されているために、硬化装置内全体の酸素濃度が正しく検出されない。また線状体とともに巻き込まれてくる外気の影響で、局所的に高濃度となる。そのため必要以上の冷却ガスを流すように調整され、管内に乱流が発生し、線状体が振動し、塗布状態の異常や硬化状態のばらつきを引き起こす。また不活性ガスなどの冷却ガスが多量に消費され、コストが高くなるという問題がある。
【０００７】
図４に示すような紫外線硬化型樹脂被覆層が二層構造となるテープ心線では、第一の被覆層と第二の被覆層の間で適度な密着力を有している必要がある。
【０００８】
第一の被覆層を形成する際の硬化装置内全体の酸素濃度が低くなりすぎると、被覆層の硬化度が上がり過ぎ、第二の被覆層との密着力が低下し、上記テープ心線の使用時に、樹脂層が剥離するという問題があった。
【０００９】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、塗布状態や硬化状態が安定で、硬化装置内全体の酸素濃度を所定値で制御し、紫外線硬化型樹脂層が二層以上を有する線状体の品質を高め、硬化時の不活性ガスの使用量を抑える紫外線硬化型樹脂被覆線状体の製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【００１０】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本願の請求項１記載の発明は、線状体に紫外線硬化型樹脂を塗布し、紫外線硬化装置にて前記紫外線硬化型樹脂を硬化させる紫外線硬化型樹脂被覆線状体の製造方法において、前記紫外線硬化装置内に紫外線透過性パイプを設置し、前記紫外線透過性パイプ内に、前記紫外線硬化型樹脂が塗布された線状体および不活性ガスを供給し、前記紫外線透過性パイプ内の雰囲気ガスを吸引し、前記紫外線透過性パイプ内の雰囲気ガス中の酸素濃度を検知し、前記紫外線透過性パイプ外部より進入する外気と前記不活性ガスとの混合比を制御しながら紫外線照射して、前記紫外線硬化型樹脂を硬化させることを特徴としており、紫外線硬化装置内の紫外線透過性パイプ内に不活性ガスを供給するとともに、紫外線透過性パイプ内の雰囲気ガスを吸引することで、紫外線透過性パイプ内の雰囲気ガスの流れを安定させ、更に紫外線透過性パイプ外部より進入する外気と不活性ガスとの混合ガスの混合比も安定し、その混合ガスを紫外線透過性パイプ内全体に流動させることができる。その結果連続した紫外線硬化型樹脂被覆線状体全体の塗布状態及び硬化状態を安定させ、より品質の高い製品を得るという作用を有する。
【００１１】
本願の請求項２に記載の発明は、請求項１記載の発明において、前記不活性ガスの供給量を一定にし、前記紫外線透過性パイプ内の雰囲気ガス吸引量を変化させ、前記紫外線透過性パイプ外部より進入する外気の流量を調整することで、外部より進入する外気と前記不活性ガスとの混合比を制御することを特徴としており、供給する不活性ガス流量で制御しないことで、線状体が走行する方向に対して平行な流れの外気が変動するために、紫外線透過性パイプ内に安定なガスの流れを形成するとともに、不活性ガスの流量を抑えることができるという作用を有する。
【００１２】
本願の請求項３に記載の発明は、請求項１記載の発明において、前記紫外線透過性パイプ内より吸引された雰囲気ガス中の酸素濃度を検知することを特徴としており、紫外線透過性パイプ内全体の酸素濃度が適正に把握でき、紫外線硬化型樹脂被覆線状体全体の硬化状態を安定させ、より品質の高い製品を得るという作用を有する。
【００１３】
本願の請求項４に記載の発明は、請求項１記載の発明において、紫外線透過性パイプの出入口端部に開口面積可変のシャッターを設置することを特徴としており、線状体を通した後でもパイプ開口部の面積を自由に変化でき、外気の流入量を調整することで、紫外線透過性パイプ内全体の酸素濃度を適正値に維持でき、紫外線硬化型樹脂被覆線状体全体の硬化状態を安定させ、より品質の高い製品を得るという作用を有する。
【００１４】
本願の請求項５に記載の発明は、線状体を繰り出す装置と、前記線状体に紫外線硬化型樹脂を塗布する装置と、前記紫外線硬化型樹脂を紫外線照射して硬化させる紫外線硬化装置と、硬化された紫外線硬化型樹脂を被覆した線状体を巻き取る装置とを有する紫外線硬化型樹脂被覆線状体製造装置において、前記紫外線硬化装置内に線状体を通す紫外線透過性パイプを配し、前記紫外線透過性パイプ内に不活性ガスを供給する装置と、前記紫外線透過性パイプ内の雰囲気ガスを吸引する装置と、前記雰囲気ガスの酸素濃度を検知する酸素濃度検出器と、前記検出器からの検出信号により前記雰囲気ガスの酸素濃度を制御して前記石英パイプ内のガス流量を調整する装置とを備えたことを特徴としており、紫外線硬化装置内の紫外線透過性パイプ内に不活性ガスを供給するとともに、紫外線透過性パイプ内の雰囲気ガスを吸引することで、紫外線透過性パイプ内の雰囲気ガスの流れを安定させ、更に紫外線透過性パイプ外部より進入する外気と不活性ガスとの混合ガスの混合比も安定し、その混合ガスを紫外線透過性パイプ内全体に流動させることができる。その結果連続した紫外線硬化型樹脂被覆線状体全体の塗布状態及び硬化状態を安定させ、より品質の高い製品を得るという作用を有する。
【００１５】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【００１６】
線状体とは光ファイバ心線、電線、鋼線、紐、綱等や、これらをテープ状に配列した光ファイバテープ心線等のテープ状線状体、又は各種プラスチック、金属等のテープを総称しているが、実施の形態１乃至３では、線状体の一例として光ファイバテープ心線の場合について示している。
【００１７】
（実施の形態１）図１は本発明の実施の形態１による光ファイバテープ心線の製造装置に用いられる紫外線硬化装置を示す。
【００１８】
硬化反応を阻害する酸素の濃度を制御し、光ファイバテープ心線１１の紫外線硬化型樹脂被覆全体の硬化度を安定に維持するために、図５に示した従来の光ファイバテープ心線の製造装置に対して、図１に示す紫外線硬化装置１２では、石英パイプ等の紫外線透過性パイプ１３を設置し、紫外線透過性パイプ１３内に紫外線硬化型樹脂を塗布された光ファイバテープ心線１１を通 す。更に紫外線透過性パイプ１３内に窒素、アルゴン等の不活性ガスを供給管１４より供給するとともに、上記パイプ内の雰囲気ガスを吸引管１５より例えば排気ブロアなどの吸引装置２０を用いて吸引する。同時に酸素センサー等の酸素濃度検出器１６を用いて紫外線透過性パイプ１３内の雰囲気ガス中の酸素濃度を検知し、酸素濃度制御器１７により紫外線透過性パイプ１３内が所定値の酸素濃度になるように制御する。すなわち酸素濃度が所定値より高くなった場合は、紫外線透過性パイプ１３内の雰囲気ガスの吸引量を、調整弁１８を絞って減量して、紫外線透過性パイプ１３外部より進入する外気を低減させ、不活性ガスの混合比を上昇させて酸素濃度を下げる。一方酸素濃度が所定値より低くなった場合は、紫外線透過性パイプ１３内の雰囲気ガスの吸引量を、調整弁１８を開いて増量し て、紫外線透過性パイプ１３外部より進入する外気を増加させ、不活性ガスの混合比を下げて酸素濃度を上げる。
【００１９】
上記の手段により紫外線透過性パイプ１３内の酸素濃度を所定値に制御した状態で、紫外線照射ランプ１９より紫外線を照射させて、紫外線硬化型樹脂を硬化させて、光ファイバテープ心線１１を得る。
【００２０】
図４に示すような紫外線硬化型樹脂被覆層が２層構造となるテープ心線４１を安定して得る場合は、紫外線透過性パイプ１３内の酸素濃度は０．５％〜５％が望ましく、特に１〜３％が好ましく用いられる。
【００２１】
この際酸素濃度検出器１６は、図１に示すように紫外線透過性パイプ１３より直接雰囲気ガスを採取する構造でも、また吸引管１５より雰囲気ガスを採取する構造でもよい。
【００２２】
また紫外線透過性パイプ１３内雰囲気ガスの吸引量の調整する方法として、吸引装置２０に用いる排気ブロアのブロアやファンモーターの回転数を調整する方法でもよい。
【００２３】
このように本実施の形態によれば、光ファイバテープ心線の紫外線硬化型樹脂被覆の塗布状態や硬化状態が安定で品質が向上でき、硬化時の不活性ガス使用量の抑制が図れるものである。
【００２４】
（実施の形態２）図２は本発明の実施の形態２による光ファイバテープ心線の製造装置に用いられる紫外線硬化装置を示すものである。
【００２５】
図２に示す紫外線硬化装置１２では、石英パイプ等の紫外線透過性パイプ１３の両端部にアイリスシャッター等のような、線状体を通した後でも開口面積を可変に調整できるシャッター２１を設ける。
【００２６】
これにより紫外線透過性パイプ１３外部より進入する外気の量、流速の微調整が可能となり、より安定した雰囲気ガスの酸素濃度管理が実現する。
【００２７】
このように本実施の形態によれば、光ファイバテープ心線の紫外線硬化型樹脂被覆の塗布状態や硬化状態が安定で品質が向上でき、硬化時の不活性ガス使用量の抑制が図れるものである。
【００２８】
（実施の形態３）図３は本発明の実施の形態３による光ファイバテープ心線の製造装置に用いられる紫外線硬化装置を示すもので、特に紫外線透過性パイプ１３、不活性ガスを供給する供給管１４および上記パイプ１３内の雰囲気ガスを吸引する吸引管１５の配置例を示すものである。
【００２９】
図３（ａ）では供給管１４と吸引管１５が紫外線透過性パイプ１３のそれぞれの両端に配されている。
【００３０】
図３（ｂ）では複数の供給管１４が配されている。特に紫外線透過性パイプ１３の円周上に均等に配置すると、不活性ガスの流れをより安定化でき、線状体の振動を抑えることが可能となり、塗布状態の向上が図れる。
【００３１】
図３（ｃ）では複数の吸引管１５が配されている。特に紫外線透過性パイプ１３の円周上に均等に配置すると、不活性ガスの流れをより安定化でき、線状体の振動を抑えることが可能となり、塗布状態の向上が図れる。
【００３２】
図３の（ａ）乃至（ｃ）以外にも、複数の供給管１４または吸引管１５が、紫外線透過性パイプ内雰囲気ガスの流れを安定化させるために、紫外線透過性パイプ１３の任意の位置に配されてもよく、また複数の１４と吸引管１５の組み合せたものでもよい。
【００３３】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、線状体に紫外線硬化型樹脂を塗布し、紫外線硬化装置にて前記紫外線硬化型樹脂を硬化させる紫外線硬化型樹脂被覆線状体の製造方法において、上記紫外線硬化装置内に紫外線透過性パイプを設置し、前記紫外線透過性パイプ内に、前記紫外線硬化型樹脂が塗布された線状体および不活性ガスを供給し、前記紫外線透過性パイプ内の雰囲気ガスを吸引し、前記紫外線透過性パイプ内の雰囲気ガス中の酸素濃度を検知し、前記紫外線透過性パイプ外部より進入する外気と前記不活性ガスとの混合比を制御しながら紫外線照射して、前記紫外線硬化型樹脂を硬化させることで、紫外線透過性パイプ内の雰囲気ガスの流れを安定させ、更に紫外線透過性パイプ外部より進入する外気と不活性ガスとの混合ガスの混合比も安定し、その混合ガスを紫外線透過性パイプ内全体に流動させることができる。その結果、塗布状態や硬化状態が安定で、硬化装置内全体の酸素濃度を容易に所定値で制御でき、特に紫外線硬化型樹脂層が２層以上を有する線状体の品質を高めるとともに、硬化時の不活性ガスの使用量を抑えるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の実施の形態１による紫外線硬化装置の概略図
【図２】本発明の実施の形態２による紫外線硬化装置の概略図
【図３】本発明の実施の形態３による紫外線透過性パイプ、供給管および吸引管の配置例を示す概観図
【図４】線状体の例としての光ファイバテープ心線の断面図
【図５】従来の光ファイバテープ心線の製造装置の概略図
【符号の説明】
１１、４１、５４…光ファイバテープ心線
１２、５５…紫外線硬化装置
１３、５６…紫外線透過性パイプ
１４…供給管
１５…吸引管
１６…酸素濃度検出器
１７、６３…酸素濃度制御器
１８…調整弁
１９、６０…紫外線照射ランプ
２０…吸引装置
２１…シャッター
４２ａ、４２ｂ…第一の紫外線硬化型樹脂被覆層
４３…第二の紫外線硬化型樹脂被覆層
４４ａ、４４ｂ、５１…光ファイバ心線
５２…第一のボビン
５３…塗布装置
５７…第二のボビン
５８…酸素センサー
５９…配管
６１…ガス流量調整器
６２…冷却ガス供給部
【発明の属する技術分野】
本発明は、線状体に塗布された紫外線硬化型樹脂を硬化するための製造方法および製造装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来光ファイバ素線や、それらを複数本平行に配置させた光ファイバテープ心線のような線状体の周囲に紫外線硬化型樹脂を塗布し、紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射して硬化させる方法は、線状体の被覆方法として広く用いられている。また、上記紫外線硬化型樹脂の硬化状態を高める装置又は方法として、例えば特開平８−１５２５４６号公報に開示されている。
【０００３】
図５は従来の光ファイバテープ心線の製造装置を示す概略図である。
【０００４】
光ファイバテープ心線を構成する光ファイバ素線５１は、第一のボビン５２により繰り出され、紫外線硬化型樹脂の塗布装置５３に挿入される。塗布装置５３で複数本の光ファイバ素線５１を並べ、光ファイバテープ心線５４にする。その後紫外線硬化装置５５内を通過させ、紫外線を照射して硬化し、第二のボビン５７に光ファイバテープ心線５４を巻き取る。樹脂を硬化させる際、紫外線硬化装置５５内の温度上昇を抑え、また硬化反応を阻害する酸素濃度を低く抑えるために、紫外線硬化装置５５内に紫外線透過性パイプ５６を設け、管内の酸素濃度を酸素センサー５８でモニターしながら、一定濃度以下になるように冷却ガスの流量を調整し配管５９より流していた。
【０００５】
【特許文献】
特開平８−１５２５４６号公報（第３−４頁、図１）
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら図５に示す紫外線硬化型樹脂被覆線状体の製造装置において、酸素濃度を検出する酸素センサーが管内の局所的な位置に設置されているために、硬化装置内全体の酸素濃度が正しく検出されない。また線状体とともに巻き込まれてくる外気の影響で、局所的に高濃度となる。そのため必要以上の冷却ガスを流すように調整され、管内に乱流が発生し、線状体が振動し、塗布状態の異常や硬化状態のばらつきを引き起こす。また不活性ガスなどの冷却ガスが多量に消費され、コストが高くなるという問題がある。
【０００７】
図４に示すような紫外線硬化型樹脂被覆層が二層構造となるテープ心線では、第一の被覆層と第二の被覆層の間で適度な密着力を有している必要がある。
【０００８】
第一の被覆層を形成する際の硬化装置内全体の酸素濃度が低くなりすぎると、被覆層の硬化度が上がり過ぎ、第二の被覆層との密着力が低下し、上記テープ心線の使用時に、樹脂層が剥離するという問題があった。
【０００９】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、塗布状態や硬化状態が安定で、硬化装置内全体の酸素濃度を所定値で制御し、紫外線硬化型樹脂層が二層以上を有する線状体の品質を高め、硬化時の不活性ガスの使用量を抑える紫外線硬化型樹脂被覆線状体の製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【００１０】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本願の請求項１記載の発明は、線状体に紫外線硬化型樹脂を塗布し、紫外線硬化装置にて前記紫外線硬化型樹脂を硬化させる紫外線硬化型樹脂被覆線状体の製造方法において、前記紫外線硬化装置内に紫外線透過性パイプを設置し、前記紫外線透過性パイプ内に、前記紫外線硬化型樹脂が塗布された線状体および不活性ガスを供給し、前記紫外線透過性パイプ内の雰囲気ガスを吸引し、前記紫外線透過性パイプ内の雰囲気ガス中の酸素濃度を検知し、前記紫外線透過性パイプ外部より進入する外気と前記不活性ガスとの混合比を制御しながら紫外線照射して、前記紫外線硬化型樹脂を硬化させることを特徴としており、紫外線硬化装置内の紫外線透過性パイプ内に不活性ガスを供給するとともに、紫外線透過性パイプ内の雰囲気ガスを吸引することで、紫外線透過性パイプ内の雰囲気ガスの流れを安定させ、更に紫外線透過性パイプ外部より進入する外気と不活性ガスとの混合ガスの混合比も安定し、その混合ガスを紫外線透過性パイプ内全体に流動させることができる。その結果連続した紫外線硬化型樹脂被覆線状体全体の塗布状態及び硬化状態を安定させ、より品質の高い製品を得るという作用を有する。
【００１１】
本願の請求項２に記載の発明は、請求項１記載の発明において、前記不活性ガスの供給量を一定にし、前記紫外線透過性パイプ内の雰囲気ガス吸引量を変化させ、前記紫外線透過性パイプ外部より進入する外気の流量を調整することで、外部より進入する外気と前記不活性ガスとの混合比を制御することを特徴としており、供給する不活性ガス流量で制御しないことで、線状体が走行する方向に対して平行な流れの外気が変動するために、紫外線透過性パイプ内に安定なガスの流れを形成するとともに、不活性ガスの流量を抑えることができるという作用を有する。
【００１２】
本願の請求項３に記載の発明は、請求項１記載の発明において、前記紫外線透過性パイプ内より吸引された雰囲気ガス中の酸素濃度を検知することを特徴としており、紫外線透過性パイプ内全体の酸素濃度が適正に把握でき、紫外線硬化型樹脂被覆線状体全体の硬化状態を安定させ、より品質の高い製品を得るという作用を有する。
【００１３】
本願の請求項４に記載の発明は、請求項１記載の発明において、紫外線透過性パイプの出入口端部に開口面積可変のシャッターを設置することを特徴としており、線状体を通した後でもパイプ開口部の面積を自由に変化でき、外気の流入量を調整することで、紫外線透過性パイプ内全体の酸素濃度を適正値に維持でき、紫外線硬化型樹脂被覆線状体全体の硬化状態を安定させ、より品質の高い製品を得るという作用を有する。
【００１４】
本願の請求項５に記載の発明は、線状体を繰り出す装置と、前記線状体に紫外線硬化型樹脂を塗布する装置と、前記紫外線硬化型樹脂を紫外線照射して硬化させる紫外線硬化装置と、硬化された紫外線硬化型樹脂を被覆した線状体を巻き取る装置とを有する紫外線硬化型樹脂被覆線状体製造装置において、前記紫外線硬化装置内に線状体を通す紫外線透過性パイプを配し、前記紫外線透過性パイプ内に不活性ガスを供給する装置と、前記紫外線透過性パイプ内の雰囲気ガスを吸引する装置と、前記雰囲気ガスの酸素濃度を検知する酸素濃度検出器と、前記検出器からの検出信号により前記雰囲気ガスの酸素濃度を制御して前記石英パイプ内のガス流量を調整する装置とを備えたことを特徴としており、紫外線硬化装置内の紫外線透過性パイプ内に不活性ガスを供給するとともに、紫外線透過性パイプ内の雰囲気ガスを吸引することで、紫外線透過性パイプ内の雰囲気ガスの流れを安定させ、更に紫外線透過性パイプ外部より進入する外気と不活性ガスとの混合ガスの混合比も安定し、その混合ガスを紫外線透過性パイプ内全体に流動させることができる。その結果連続した紫外線硬化型樹脂被覆線状体全体の塗布状態及び硬化状態を安定させ、より品質の高い製品を得るという作用を有する。
【００１５】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【００１６】
線状体とは光ファイバ心線、電線、鋼線、紐、綱等や、これらをテープ状に配列した光ファイバテープ心線等のテープ状線状体、又は各種プラスチック、金属等のテープを総称しているが、実施の形態１乃至３では、線状体の一例として光ファイバテープ心線の場合について示している。
【００１７】
（実施の形態１）図１は本発明の実施の形態１による光ファイバテープ心線の製造装置に用いられる紫外線硬化装置を示す。
【００１８】
硬化反応を阻害する酸素の濃度を制御し、光ファイバテープ心線１１の紫外線硬化型樹脂被覆全体の硬化度を安定に維持するために、図５に示した従来の光ファイバテープ心線の製造装置に対して、図１に示す紫外線硬化装置１２では、石英パイプ等の紫外線透過性パイプ１３を設置し、紫外線透過性パイプ１３内に紫外線硬化型樹脂を塗布された光ファイバテープ心線１１を通 す。更に紫外線透過性パイプ１３内に窒素、アルゴン等の不活性ガスを供給管１４より供給するとともに、上記パイプ内の雰囲気ガスを吸引管１５より例えば排気ブロアなどの吸引装置２０を用いて吸引する。同時に酸素センサー等の酸素濃度検出器１６を用いて紫外線透過性パイプ１３内の雰囲気ガス中の酸素濃度を検知し、酸素濃度制御器１７により紫外線透過性パイプ１３内が所定値の酸素濃度になるように制御する。すなわち酸素濃度が所定値より高くなった場合は、紫外線透過性パイプ１３内の雰囲気ガスの吸引量を、調整弁１８を絞って減量して、紫外線透過性パイプ１３外部より進入する外気を低減させ、不活性ガスの混合比を上昇させて酸素濃度を下げる。一方酸素濃度が所定値より低くなった場合は、紫外線透過性パイプ１３内の雰囲気ガスの吸引量を、調整弁１８を開いて増量し て、紫外線透過性パイプ１３外部より進入する外気を増加させ、不活性ガスの混合比を下げて酸素濃度を上げる。
【００１９】
上記の手段により紫外線透過性パイプ１３内の酸素濃度を所定値に制御した状態で、紫外線照射ランプ１９より紫外線を照射させて、紫外線硬化型樹脂を硬化させて、光ファイバテープ心線１１を得る。
【００２０】
図４に示すような紫外線硬化型樹脂被覆層が２層構造となるテープ心線４１を安定して得る場合は、紫外線透過性パイプ１３内の酸素濃度は０．５％〜５％が望ましく、特に１〜３％が好ましく用いられる。
【００２１】
この際酸素濃度検出器１６は、図１に示すように紫外線透過性パイプ１３より直接雰囲気ガスを採取する構造でも、また吸引管１５より雰囲気ガスを採取する構造でもよい。
【００２２】
また紫外線透過性パイプ１３内雰囲気ガスの吸引量の調整する方法として、吸引装置２０に用いる排気ブロアのブロアやファンモーターの回転数を調整する方法でもよい。
【００２３】
このように本実施の形態によれば、光ファイバテープ心線の紫外線硬化型樹脂被覆の塗布状態や硬化状態が安定で品質が向上でき、硬化時の不活性ガス使用量の抑制が図れるものである。
【００２４】
（実施の形態２）図２は本発明の実施の形態２による光ファイバテープ心線の製造装置に用いられる紫外線硬化装置を示すものである。
【００２５】
図２に示す紫外線硬化装置１２では、石英パイプ等の紫外線透過性パイプ１３の両端部にアイリスシャッター等のような、線状体を通した後でも開口面積を可変に調整できるシャッター２１を設ける。
【００２６】
これにより紫外線透過性パイプ１３外部より進入する外気の量、流速の微調整が可能となり、より安定した雰囲気ガスの酸素濃度管理が実現する。
【００２７】
このように本実施の形態によれば、光ファイバテープ心線の紫外線硬化型樹脂被覆の塗布状態や硬化状態が安定で品質が向上でき、硬化時の不活性ガス使用量の抑制が図れるものである。
【００２８】
（実施の形態３）図３は本発明の実施の形態３による光ファイバテープ心線の製造装置に用いられる紫外線硬化装置を示すもので、特に紫外線透過性パイプ１３、不活性ガスを供給する供給管１４および上記パイプ１３内の雰囲気ガスを吸引する吸引管１５の配置例を示すものである。
【００２９】
図３（ａ）では供給管１４と吸引管１５が紫外線透過性パイプ１３のそれぞれの両端に配されている。
【００３０】
図３（ｂ）では複数の供給管１４が配されている。特に紫外線透過性パイプ１３の円周上に均等に配置すると、不活性ガスの流れをより安定化でき、線状体の振動を抑えることが可能となり、塗布状態の向上が図れる。
【００３１】
図３（ｃ）では複数の吸引管１５が配されている。特に紫外線透過性パイプ１３の円周上に均等に配置すると、不活性ガスの流れをより安定化でき、線状体の振動を抑えることが可能となり、塗布状態の向上が図れる。
【００３２】
図３の（ａ）乃至（ｃ）以外にも、複数の供給管１４または吸引管１５が、紫外線透過性パイプ内雰囲気ガスの流れを安定化させるために、紫外線透過性パイプ１３の任意の位置に配されてもよく、また複数の１４と吸引管１５の組み合せたものでもよい。
【００３３】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、線状体に紫外線硬化型樹脂を塗布し、紫外線硬化装置にて前記紫外線硬化型樹脂を硬化させる紫外線硬化型樹脂被覆線状体の製造方法において、上記紫外線硬化装置内に紫外線透過性パイプを設置し、前記紫外線透過性パイプ内に、前記紫外線硬化型樹脂が塗布された線状体および不活性ガスを供給し、前記紫外線透過性パイプ内の雰囲気ガスを吸引し、前記紫外線透過性パイプ内の雰囲気ガス中の酸素濃度を検知し、前記紫外線透過性パイプ外部より進入する外気と前記不活性ガスとの混合比を制御しながら紫外線照射して、前記紫外線硬化型樹脂を硬化させることで、紫外線透過性パイプ内の雰囲気ガスの流れを安定させ、更に紫外線透過性パイプ外部より進入する外気と不活性ガスとの混合ガスの混合比も安定し、その混合ガスを紫外線透過性パイプ内全体に流動させることができる。その結果、塗布状態や硬化状態が安定で、硬化装置内全体の酸素濃度を容易に所定値で制御でき、特に紫外線硬化型樹脂層が２層以上を有する線状体の品質を高めるとともに、硬化時の不活性ガスの使用量を抑えるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の実施の形態１による紫外線硬化装置の概略図
【図２】本発明の実施の形態２による紫外線硬化装置の概略図
【図３】本発明の実施の形態３による紫外線透過性パイプ、供給管および吸引管の配置例を示す概観図
【図４】線状体の例としての光ファイバテープ心線の断面図
【図５】従来の光ファイバテープ心線の製造装置の概略図
【符号の説明】
１１、４１、５４…光ファイバテープ心線
１２、５５…紫外線硬化装置
１３、５６…紫外線透過性パイプ
１４…供給管
１５…吸引管
１６…酸素濃度検出器
１７、６３…酸素濃度制御器
１８…調整弁
１９、６０…紫外線照射ランプ
２０…吸引装置
２１…シャッター
４２ａ、４２ｂ…第一の紫外線硬化型樹脂被覆層
４３…第二の紫外線硬化型樹脂被覆層
４４ａ、４４ｂ、５１…光ファイバ心線
５２…第一のボビン
５３…塗布装置
５７…第二のボビン
５８…酸素センサー
５９…配管
６１…ガス流量調整器
６２…冷却ガス供給部
Claims (5)
- 線状体に紫外線硬化型樹脂を塗布し、紫外線硬化装置にて前記紫外線硬化型樹脂を硬化させる紫外線硬化型樹脂被覆線状体の製造方法において、前記紫外線硬化装置内に紫外線透過性パイプを設置し、前記紫外線透過性パイプ内に、前記紫外線硬化型樹脂が塗布された線状体および不活性ガスを供給し、前記紫外線透過性パイプ内の雰囲気ガスを吸引し、前記紫外線透過性パイプ内の雰囲気ガス中の酸素濃度を検知し、前記紫外線透過性パイプ外部より進入する外気と前記不活性ガスとの混合比を制御しながら紫外線照射して、前記紫外線硬化型樹脂を硬化させることを特徴とする紫外線硬化型樹脂被覆線状体の製造方法。
- 前記不活性ガスの供給量を一定にし、前記紫外線透過性パイプ内の雰囲気ガス吸引量を変化させ、前記紫外線透過性パイプ外部より進入する外気の流量を調整することで、外部より進入する外気と前記不活性ガスとの混合比を制御することを特徴とする請求項１に記載の紫外線硬化型樹脂被覆線状体の製造方法。
- 前記紫外線透過性パイプ内より吸引された雰囲気ガス中の酸素濃度を検知することを特徴とする請求項１乃至２のいずれかに記載の紫外線硬化型樹脂被覆線状体の製造方法。
- 前記紫外線透過性パイプの出入口端部に開口面積可変のシャッターを設置することを特徴とする請求項１乃至３のいずれかに記載の紫外線硬化型樹脂被覆線状体の製造方法。
- 線状体を繰り出す装置と、前記線状体に紫外線硬化型樹脂を塗布する装置と、前記紫外線硬化型樹脂を紫外線照射して硬化させる紫外線硬化装置と、硬化された紫外線硬化型樹脂を被覆した線状体を巻き取る装置とを有する紫外線硬化型樹脂被覆線状体製造装置において、前記紫外線硬化装置内に線状体を通す紫外線透過性パイプを配し、前記紫外線透過性パイプ内に不活性ガスを供給する装置と、前記紫外線透過性パイプ内の雰囲気ガスを吸引する装置と、前記雰囲気ガスの酸素濃度を検知する酸素濃度検出器と、前記検出器からの検出信号により前記雰囲気ガスの酸素濃度を制御して前記紫外線透過性パイプ内のガス流量を調整する装置とを備えたことを特徴とする紫外線硬化型樹脂被覆線状体の製造装置。
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| JP2003113538A JP2004315321A (ja) | 2003-04-18 | 2003-04-18 | 紫外線硬化型樹脂被覆線状体の製造方法およびその製造装置 |
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| JP2019070774A (ja) * | 2017-10-11 | 2019-05-09 | 住友電気工業株式会社 | 光ファイバの製造装置およびその製造方法 |
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2003
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