JP2004314320A - インクジェット記録用紙 - Google Patents
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Abstract
【課題】高いインク吸収性と光沢、プリント濃度を有し、更に滲み耐性を併せ持つ高画質インクジェット記録用紙を安価に提供する。
【解決手段】支持体上に少なくとも2層以上のインク吸収層を有するインクジェット記録用紙において、少なくとも支持体に最も近いインク吸収層に、1次粒子の平均粒径が10nm以下であり2次粒子の平均粒径が10〜300nmに粉砕された湿式シリカ微粒子と親水性バインダーを含有し、支持体から最も離れているインク吸収層に、BET法により測定される比表面積が100〜400m2/gのアルミナ又はアルミナ水和物と親水性バインダーを含有し、かつ次式を満足することを特徴とするインクジェット記録用紙。(湿式シリカの質量+アルミナ又はアルミナ水和物の質量)/(親水性バインダーの質量)=5.5〜15
【選択図】 なし
【解決手段】支持体上に少なくとも2層以上のインク吸収層を有するインクジェット記録用紙において、少なくとも支持体に最も近いインク吸収層に、1次粒子の平均粒径が10nm以下であり2次粒子の平均粒径が10〜300nmに粉砕された湿式シリカ微粒子と親水性バインダーを含有し、支持体から最も離れているインク吸収層に、BET法により測定される比表面積が100〜400m2/gのアルミナ又はアルミナ水和物と親水性バインダーを含有し、かつ次式を満足することを特徴とするインクジェット記録用紙。(湿式シリカの質量+アルミナ又はアルミナ水和物の質量)/(親水性バインダーの質量)=5.5〜15
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高いインク吸収性と光沢及びプリント濃度を有し、更に滲み耐性を併せ持つ高画質インクジェット記録用紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット記録は急速に画質が向上してきており、写真画質に迫りつつある。この様な写真画質をインクジェット記録で達成する手段として、使用する記録用紙においても急速に技術改良が試みられており、高平滑性の支持体上に微小な空隙を有する層(以下、空隙層又は多孔質層とも言う)を設けた記録用紙は、インク吸収性及び乾燥性に優れていることから最も写真画質に近いものの一つになりつつある。
【0003】
このような多孔質層は、主に無機微粒子と親水性バインダーで形成されており、一般的には表面がアニオン性である微粒子シリカと少量の親水性バインダーの組合せで得られるインクジェット記録用紙(以下、単に記録用紙とも言う)が知られている。
【0004】
更に、銀塩写真の画質に匹敵するような画質を得る方法として、インク吸収性のみならず、インク定着性、画像の耐水性、カラー記録時の発色性といった性能を維持しつつ、光沢度及び画像濃度を高めるという手段がある。
【0005】
従来の光沢を付与する技術としては、例えば光沢度を高めるために、カレンダー装置を用いて圧力や温度を掛けて表面を平滑化させる方法が知られている。しかしながら、空隙層を有する高吸収性なインクジェット記録用紙に、高圧でカレンダー処理を行うと、光沢は向上するものの空隙が潰れ減少し、吸収性の低下を招くという欠点がある。
【0006】
又、上層にコロイダルシリカを主体とした光沢発現層を設ける手段が知られている(例えば特許文献1、特許文献2参照)が、コロイダルシリカを主体とする層は高空隙率になり難く、インク吸収性が低下するという欠点があった。
【0007】
一方、シリカと並び知られている無機微粒子の一つとして、アルミナ又はアルミナ水和物がある。これらは高光沢なインク吸収層を形成し易く、又、表面がカチオン性なのでインク定着性があり、カチオン定着剤を別途添加する必要がないという利点がある。しかし、アルミナ又はアルミナ水和物は、シリカと比べて空隙を形成する能力が弱いため、十分なインク吸収性を得るためには多量のインク吸収層が必要となり、生産負荷が大きく、更にアルミナ又はアルミナ水和物はシリカと比べてコストが高いという問題があった。
【0008】
【特許文献1】
特開平7−89220号公報
【0009】
【特許文献2】
特開2000−289327号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたもので、その目的は高いインク吸収性と光沢、プリント濃度を有し、更に滲み耐性を併せ持つ高画質インクジェット記録用紙を安価に提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は下記の構成により達成される。
【0012】
1)支持体上に少なくとも2層以上のインク吸収層を有するインクジェット記録用紙において、少なくとも支持体に最も近いインク吸収層に、1次粒子の平均粒径が10nm以下であり2次粒子の平均粒径が10〜300nmに粉砕された湿式シリカ微粒子と親水性バインダーを含有し、支持体から最も離れているインク吸収層に、BET法により測定される比表面積が100〜400m2/gのアルミナ又はアルミナ水和物と親水性バインダーを含有し、かつ下式を満足するインクジェット記録用紙。
【0013】
(湿式シリカの質量+アルミナ又はアルミナ水和物の質量)/(親水性バインダーの質量)=5.5〜15
2)湿式シリカがゲル法により合成されたシリカである1)記載のインクジェット記録用紙。
【0014】
3)アルミナが気相法により製造されたアルミナである1)又は2)記載のインクジェット記録用紙。
【0015】
4)親水性バインダーがポリビニルアルコール又はその誘導体であり、その平均重合度が2000〜5000である1)〜3)の何れか1項記載のインクジェット記録用紙。
【0016】
5)少なくとも支持体に最も近いインク吸収層にカチオン定着剤を含有する1)〜4)の何れか1項記載のインクジェット記録用紙。
【0017】
6)支持体が非吸収性である1)〜5)の何れか1項記載のインクジェット記録用紙。
【0018】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明のインクジェット記録用紙は、支持体上に少なくとも2層以上のインク吸収層を有するが、少なくとも支持体に最も近いインク吸収層には、1次粒子の平均粒径が10nm以下で2次粒子の平均粒径を10〜300nmに粉砕した湿式シリカが含まれ、少なくとも支持体から最も離れているインク吸収層には、BET法により測定される比表面積が100〜400m2/gのアルミナ又はアルミナ水和物が含まれる。
【0019】
支持体に最も近い粉砕した湿式シリカを含むインク吸収層は、十分なインク吸収性と適度な平滑性を持ち、しかも低コストで塗布液の粘性が低く濃縮に適しているといった特徴がある。一方、支持体から最も離れているアルミナ又はアルミナ水和物を含むインク吸収層は、インク吸収性の低下の原因となるカチオン定着剤を含まなくとも十分なインク定着性があり、しかも高い光沢性を有する特徴がある。即ち、本発明は、インク吸収性と定着性、光沢といった、従来、同時に満足することが困難であった諸性能に対して、各特性の機能分離を図り、各機能を有するインク吸収層を併せ持つことにより、各々の特性を全て満足する記録用紙を低コストで実現することができる。
【0020】
本発明の記録材料の少なくとも支持体に最も近いインク吸収層には、合成シリカである湿式シリカが用いられる。合成シリカには、湿式シリカと気相法シリカとが知られており、気相法シリカは気化した四塩化珪素を高温で加水分解して得られる。上層にアルミナ又はアルミナ水和物を使用し、下層に気相法シリカを用いたインクジェット記録材料としては特開2002−225423号に記載のものがあるが、気相法シリカを用いた場合、光沢性は高いものが得られるが、気相法シリカは水に分散した場合に粘性が高く高濃度化が困難で製造時の負荷が大きいことや、停滞安定性が悪いなど取扱い上の問題がある上、湿式シリカよりも高価であるため生産コスト面で不利であり、好ましくない。
【0021】
一方、湿式シリカは沈降法やゲル法により比較的安価に合成され、沈降法シリカは概ね10〜60nm、ゲル法シリカは概ね3〜10nmの1次粒子が2次凝集体を形成した凝集粒子として存在している。例えば特開平7−89216号には、上層に擬ベーマイト、下層に湿式シリカを使用した例が記載されている。しかしながら、ここで使用されている湿式シリカは平均粒径が数μm以上であるためシリカ層の表面の平滑性が悪く、これが最表面の平滑性にも悪影響を及ぼすため十分な光沢を得ることが難しい。
【0022】
これに対し、湿式シリカ粒子を粉砕微粒化することにより平滑な皮膜を形成する方法が知られているが、粉砕微粒化するとインク吸収性が低下する問題がある。このインク吸収性を高めるために、バインダー樹脂に対するシリカ粒子の質量比を高くする方法があるが、バインダー樹脂に対するシリカ粒子の質量比を5より高めると塗膜強度が低下し、塗布・乾燥時に「ひび割れ」が起き易い欠点があり、質量比が5以下では十分な空隙が得られず、インク吸収性が改善されない。更に湿式シリカは1次粒子径が小さいほど粉砕微粒化した場合に微細な空隙ができ易く、染料定着性に有利な反面、比表面積が大きくなる為に充分な塗付皮膜の強度を得る為に必要なバインダー量が増加し、インク吸収性が低下する問題がある。
【0023】
この課題に対し本発明者らが鋭意検討した結果、塗布液pHを3.0〜5.5の範囲になるように調整することで、塗付皮膜の強度に必要なバインダー樹脂量が軽減され、インク吸収性が高まることを見い出した。この効果に対する詳細な解明には至っていないが、塗付皮膜のpHをシリカの等電点に近づけることで水素結合性の向上による接着性が高まり、その結果、「ひび割れ」が起き難くなるので必要なバインダー樹脂量を減らすことが可能となり、インク吸収性が高まるものと推定している。
【0024】
上記検討結果に基づき、少なくとも支持体に最も近いインク吸収層は、1次粒子の平均粒径が10nm以下、より好ましくは8nm以下の湿式シリカを、2次粒子の平均粒径が10〜300nmになるよう粉砕したシリカ微粒子と親水性バインダーを含有し、親水性バインダーに対する湿式シリカの質量比を5.5〜12の範囲とする構成において、高い光沢、インク吸収性を満足するインク吸収層が得られる。湿式シリカの1次粒子径の下限に特に制約はないが、シリカ粒子の製造安定性の観点から3nm以上であることが好ましい。又、特に好ましくはゲル法により合成される湿式シリカであり、より高いプリント濃度が得られる。沈降法に比べ、ゲル法による湿式シリカは粒子表面活性が高く凝集力が強い。従って、より微細な空隙が出来易く高いインク吸収性が得られる上、微細な空隙にインク染料が定着され、高いプリント濃度が得られるものと推定している。
【0025】
尚、シリカの1次粒子及び2次粒子の平均粒径は、空隙層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、1000個の任意の粒子の粒径から求められる。ここで個々の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。
【0026】
記録材料の支持体から最も離れているインク吸収層にはアルミナ又はアルミナ水和物が用いられる。一般に、インクジェット記録用紙に用いられるアルミナとしては、気体状の塩化アルミニウムを水素及び酸素と共に加熱・燃焼させ、高温で加水分解することにより得られる気相法アルミナと、アルミン酸塩を加水分解する等の方法で製造される、いわゆる湿式のアルミナ及びアルミナ水和物が挙げられるが、これら気相法や湿式のアルミナやアルミナ水和物の性質は、その比表面積及び構造と密接な関係がある。尚、微粒子の比表面積はBET法により測定される。
【0027】
アルミナ及びアルミナ水和物は微粒子そのものにインク定着性があり、プリント時の斑やブロンジングの要因となるカチオン定着剤を添加する必要がなく、インク吸収性を高めることができる。この性質は、インクジェットのインクに使用される染料の殆どはアニオン性であるが、アルミナやアルミナ水和物の表面はカチオン性の性質を持ち、微粒子表面に染料が吸着されることにより発現する。それ故、アルミナやアルミナ水和物のインク定着性の強弱は微粒子の比表面積に相関する。
【0028】
又、アルミナ及びアルミナ水和物は、その表面に反応性の水酸基を有しており、水酸基の水素結合によって微粒子間に相互作用が生じて三次元的な空隙を形成し、その空隙にインクの溶媒が吸収されることによりインクの吸収容量が増加し、インク吸収性が高まる。
【0029】
湿式のアルミナ及びアルミナ水和物は200〜400m2/gの比表面積を有するものが多いが、その製造過程から粒子内部に細孔が多数存在しており、内部表面積が大きい。このことは即ち、インクの染料が吸着する表面は多いが、多くの表面が粒子の内側を向いているため、粒子間で水素結合ができる水酸基の数は少なく、空隙を形成し難くなりインク吸収容量が少なくなるものと思われる。
【0030】
一方、気相法アルミナには内部に細孔が殆ど存在せず、その表面の殆どが粒子の外側を向いているため、湿式のアルミナやアルミナ水和物よりも粒子間水素結合をする水酸基の数が多く、空隙を作り易い。
【0031】
本発明で使用されるアルミナ又はアルミナ水和物としては、湿式のアルミナ又はアルミナ水和物、気相法アルミナの何れも使用できるが、インク吸収性の点で擬ベーマイト、又は気相法アルミナが好ましく、より好ましくは気相法アルミナである。又、好ましい比表面積としては、インク定着性を高める点から100〜400m2/gである。
【0032】
更に、本発明者らは、比表面積が120〜250m2/gの気相法アルミナを使用することにより、インクの吸収性、及び定着性、耐水性を同時に付与できることを見い出した。即ち、気相法アルミナ微粒子の比表面積が120m2/g以上ではインクの定着性が強く、耐水性、滲み耐性が満足され、比表面積が250m2/g以下の場合に気相法アルミナ微粒子間の相互作用をコントロールすることができ、粉体としての取り扱いが容易であり、分散液の粘度も低く、又、安定性が高いため塗工の負荷が少ない。従って、最も好ましいアルミナ又はアルミナ水和物としては、比表面積が120〜250m2/gの気相法アルミナである。
【0033】
上記気相法アルミナを使用する場合、分散は分散液のpHが3〜5の範囲で行われることが好ましい。比表面積が120m2/g以上の気相法アルミナで分散液のpHが未調整の場合、粒子間相互作用が強まるため水に対する分散性が劣化して分散液が増粘してしまい、固形分で15質量%以上の濃度での分散が困難となる時がある。希釈して分散液の濃度を低くすれば可能となるが、生産時の塗布・乾燥工程に負荷が大きくなり好ましくない。又、停滞安定性も劣化する場合がある。そこで、分散液のpHを3〜5に調整すると粒子間相互作用がコントロールされて分散性が向上し、固形分濃度30質量%以上でも分散可能となり、停滞安定性にも優れ、しかも高いインク吸収性を維持することができる。
【0034】
本発明で使用されるアルミナ又はアルミナ水和物の分散液は、1次粒子が複数結合して2次粒子を形成している。インク吸収性や分散安定性、透明性、光沢性の点で、アルミナ又はアルミナ水和物の1次粒子の平均粒径は概ね5〜12nmが好ましく、7〜11nmが取り扱いや分散性の点でより好ましい。2次粒子径は30〜200nmが好ましく、50〜150nmがより好ましい。尚、アルミナの1次粒子及び2次粒子の平均粒径は、空隙層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、1000個の任意の粒子の粒径から求められる。ここで個々の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。
【0035】
湿式シリカ及びアルミナ又はアルミナ水和物の分散には、高圧ホモジナイザー、高速攪拌分散機、サンドミル、超音波分散機などを用いることができるが、本発明においてはサンドミルが好ましい。サンドミルに用いるビーズは1.0mm以下のジルコニアビーズが好ましく、更に好ましくは0.5mm以下のジルコニアビーズである。
【0036】
湿式シリカの使用量は、プリント時のインク溢れや斑が起きない程度のインク吸収容量を持たせる為に、記録用紙1m2当たり概ね3〜25g、好ましくは5〜20gであり、アルミナ又はアルミナ水和物の使用量は、プリント時のインク定着性や光沢性を維持するために記録用紙1m2当たり概ね0.5〜20g、好ましくは2〜15gである。又、湿式シリカとアルミナ又はアルミナ水和物の総量の合計は4〜35gが好ましく、5〜25gがより好ましい。
【0037】
次に、本発明に係る親水性バインダーについて説明する。親水性バインダーとしては、従来公知の各種親水性バインダーを用いることが出来る。例えばゼラチン(酸処理ゼラチンが好ましい)、ポリビニルピロリドン(平均分子量約20万以上が好ましい)、プルラン、ポリビニルアルコール(PVA)又はその誘導体、ポリエチレングリコール(平均分子量が10万以上が好ましい)、ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、水溶性ポリビニルブチラール等を挙げることができる。これらの親水性バインダーは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。特に好ましい親水性バインダーはPVA又はカチオン変成PVAである。
【0038】
本発明で好ましく用いられるPVAは平均重合度が300〜5,000の範囲であり、特に平均分子量が2,000〜5,000のものが得られる皮膜の脆弱性が良好であることから好ましく、3,000〜4,500がより好ましい。又、PVAの鹸化度は70〜100%のものが好ましく、80〜100%のものが特に好ましい。
【0039】
又、カチオン変性PVAは、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体を鹸化することにより得られる。カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えばトリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0040】
カチオン変性PVAのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。カチオン変性PVAの重合度は、通常、500〜5,000、好ましくは2,000〜4,000であり、重合度3,000〜4,500がより好ましい。又、カチオン変成PVAの鹸化度は、通常、60〜100モル%、好ましくは70〜99モル%である。
【0041】
上記親水性バインダーは、インク吸収層が空隙層になるようにする為に湿式シリカ及びアルミナ又はアルミナ水和物に対して比較的少量使用され、皮膜が安定に形成され、支持体との接着性が充分保てる範囲で出来るだけ少なく使用するのが好ましい。湿式シリカを含む層では、親水性バインダーに対する湿式シリカの質量比で5.5〜18の範囲であることが好ましく、特に5.5〜12が好ましい。アルミナ又はアルミナ水和物を含む層では、親水性バインダーに対するアルミナ又はアルミナ水和物の質量比で5〜20の範囲であること好ましく、特に7〜15が好ましい。又、親水性バインダーの総質量に対し、湿式シリカの質量とアルミナ又はアルミナ水和物の質量の和の比が5.5〜15の範囲であることが好ましく、5.5〜12がより好ましい。この範囲であれば充分なインク吸収性と塗布・乾燥時の「ひび割れ」耐性を満足することが出来る。
【0042】
湿式シリカの塗布液及びアルミナ又はアルミナ水和物の分散液のpH調整に使用されるpH調整剤は特に制約はなく、如何なるものも使用できるが、好ましくは塩酸、硝酸、酢酸、燐酸、枸櫞酸であり、特に硝酸が好ましい。又、親水性バインダーにPVAを用いる場合には、硼酸を用いることがPVAの架橋剤としての機能を付与できる点で好ましい。尚、湿式シリカの塗布液のpHの調整は湿式シリカの分散液の状態でpHを調整することにより行うのが好ましい。
【0043】
本発明のインクジェット記録用紙は、高光沢性で高い空隙率を皮膜の脆弱性を劣化させずに得るために、前記親水性バインダーが硬膜剤により硬膜されていることが好ましい。
【0044】
硬膜剤は、一般的には親水性バインダーと反応し得る基を有する化合物あるいは親水性バインダーが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、親水性バインダ−の種類に応じて適宜選択して用いられる。硬膜剤の具体例としては、例えばエポキシ系硬膜剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬膜剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、硼酸及びその塩、硼砂、アルミ明礬等が挙げられる。
【0045】
特に好ましい親水性バインダ−としてPVA及び/又はカチオン変成PVAを使用する場合には、硼酸及びその塩、及びエポキシ系硬膜剤から選ばれる硬膜剤の使用が好ましい。最も好ましいのは硼酸及びその塩から選ばれる硬膜剤である。硼酸又はその塩とは、硼素原子を中心原子とする酸素酸及びその塩のことを示し、具体的にはオルト硼酸、二硼酸、メタ硼酸、四硼酸、五硼酸及び八硼酸、並びに、それらの塩が含まれる。
【0046】
硬膜剤の使用量は、親水性バインダ−の種類、硬膜剤の種類、無機微粒子の種類や親水性バインダーに対する比率等により変化するが、概ね、親水性バインダー1g当たり5〜500mg、好ましくは10〜400mgである。
【0047】
上記硬膜剤は、空隙層を構成する塗布液を塗布する際に、空隙層形成の塗布液中及び/又は空隙層に隣接するその他の層を形成する塗布液中に添加してもよく、あるいは予め硬膜剤を含有する塗布液を塗布してある支持体上に、前記空隙層を形成する塗布液を塗布したり、更には空隙層を形成する硬膜剤非含有の塗布液を塗布・乾燥後に硬膜剤溶液をオーバーコートするなどして、空隙層に硬膜剤を供給することができるが、好ましくは、製造上の効率から、空隙層を形成する塗布液又はこれに隣接する層の塗布液中に硬膜剤を添加して、空隙層を形成するのと同時に硬膜剤を供給するのが好ましい。
【0048】
記録用紙のインク吸収層及び必要に応じて設けられるその他の層には、上述した以外の各種添加剤を使用することができる。例えば、印字記録後の耐水性、滲み耐性を向上させるために、カチオン定着剤を添加することもできる。
【0049】
このカチオン定着剤としては、カチオン性ポリマー又は水溶性の多価金属イオン等が挙げられ、カチオン性ポリマーの例としては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ジシアンジアミドポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリアルキレンポリアミンジシアンジアミドアンモニウム塩縮合物、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、エピクロルヒドリン・ジアルキルアミン付加重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・SO2共重合物、ポリビニルイミダゾール、ビニルピロリドン・ビニルイミダゾール共重合物、ポリビニルピリジン、ポリアミジン、キトサン、カチオン化澱粉、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド重合物、(2−メタクロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウムクロライド重合物、ジメチルアミノエチルメタクリレート重合物、などが挙げられる。又、化学工業時報,平成10年8月15,25日に記載のカチオン性ポリマー、三洋化成工業社発行「高分子薬剤入門」に記載の高分子染料固着剤が一例として挙げられる。プリント保存時の滲み耐性を向上する観点から、下記構造式で示されるカチオンポリマーが特に好ましい。
【0050】
【化1】
【0051】
又、水溶性の多価金属イオンとしては、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、ジルコニウム、錫、鉛などの金属塩が挙げられる。中でも、マグネシウム、アルミニウム、ジルコニウム、カルシウム、亜鉛から成る化合物は無色のため好ましい。又、水溶性の多価金属イオンの塩として、ポリ塩化アルミニウムのような水溶性無機ポリマーを使用してもよい。
【0052】
カチオン定着剤は如何なる層に添加しても構わないが、アルミナ又はアルミナ水和物は既にインク定着性があるので、インク定着性が弱い湿式シリカ含有層に添加することが好ましい。カチオン定着剤の使用量は、湿式シリカに対する質量比で10質量%以下、より好ましくは8質量%以下であることがインク吸収性の劣化を抑制する為に好ましい。
【0053】
カチオン定着剤の添加方法としては、塗布液に直接添加して塗布する方法の他、記録用紙の塗布・乾燥後に、カチオン性の樹脂や水溶性の多価金属イオンの水溶液をオーバーコートして乾燥するといった方法でも構わない。
【0054】
その他、使用できる添加剤としては、例えばアニオン、カチオン、非イオン、両性の各界面活性剤;ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、カゼイン、澱粉、寒天、カラギーナン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸、セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール等の水溶性ポリマー;イソシアネート系化合物等の架橋剤;特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号等に記載の紫外線吸収剤;特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載される退色防止剤;特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号等に記載の蛍光増白剤;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤;消泡剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤が挙げられる。
【0055】
本発明の記録用紙のインク吸収層は、湿式シリカを含む支持体に最も近いインク吸収層とアルミナ又はアルミナ水和物を含む支持体から最も離れているインク吸収層の最低限2層から構成されるが、3層以上で構成されてもよく、この場合、中間のインク吸収層の構成は、支持体に最も近いインク吸収層又は支持体から最も離れているインク吸収層と同じでも異なってもよい。
【0056】
記録用紙の支持体としては、吸水性又は非吸水性の何れの支持体も用いることができるが、非吸水性支持体の方がプリント後に皺の発生がなく、画像に平滑性の差が生ぜず高品位のプリントが得られるので好ましい。
【0057】
吸水性支持体としては紙支持体が一般的であるが、布あるいは多孔質のフィルム支持体も含まれる。
【0058】
又、非吸水性支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエステル系樹脂、ジアセテート系樹脂、トリアセテート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セロハン、セルロイド等の材料からなるフィルム等、金属やガラス、更にはポリエチレン樹脂被覆層を有する樹脂被覆紙(所謂RCペーパー)、PETに白色顔料を添加したホワイトペット等が挙げられる。
【0059】
これらの中でも、原紙支持体の両面をポリエチレン(PE)でラミネートした紙支持体を用いることが、記録画像が写真画質に近く、しかも低コストで高品質の画像が得られる為に特に好ましい。
【0060】
以下、特に好ましい支持体である紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆した支持体について説明する。支持体i用いられる紙は、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレン等の合成パルプ又はナイロンやポリエステル等の合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしてはLBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPの何れも用いることができるが短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。ただし、LBSP及び/又はLDPの比率は10〜70質量%が好ましい。上記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、又、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
【0061】
紙中には、例えば高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等の白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤等を適宜添加することができる。
【0062】
抄紙に使用するパルプの濾水度は、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、又、叩解後の繊維長がJIS P 8207に規定される24メッシュ残分と42メッシュ残分の和が30〜70%であることが好ましい。尚、4メッシュ残分は20%以下であることが好ましい。紙の坪量は50〜250gが好ましく、特に70〜200gが好ましい。紙の厚さは50〜210μmが好ましい。
【0063】
紙は、抄紙段階又は抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS P 8118)が一般的である。更に、原紙剛度はJIS P 8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0064】
紙表面には表面サイズ剤を塗布してもよく、表面サイズ剤としては前記原紙中に添加できるのと同様のサイズ剤を使用できる。紙のpHは、JIS P 8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、pH5〜9であることが好ましい。
【0065】
次に、この紙の両面を被覆するポリオレフィン樹脂について説明する。
この目的で用いられるポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンが挙げられるが、プロピレンを主体とする共重合体等のポリオレフィン類が好ましく、ポリエチレンが特に好ましい。
【0066】
以下、特に好ましいポリエチレンについて説明する。紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)及び/又は高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0067】
特に、塗布層側のポリオレフィン層は、ルチル又はアナターゼ型の酸化チタンをポリオレフィン中に添加し、不透明度及び白色度を改良したものが好ましい。
酸化チタン含有量は、ポリオレフィンに対して概ね1〜20%、好ましくは2〜15%である。
【0068】
ポリオレフィン層中には、白地の調整を行うための耐熱性の高い着色顔料や蛍光増白剤を添加することができる。
【0069】
着色顔料としては、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、マンガンブルー、セルリアン、タングステンブルー、モリブデンブルー、アンスラキノンブルー等が挙げられる。蛍光増白剤としては、ジアルキルアミノクマリン、ビスジメチルアミノスチルベン、ビスメチルアミノスチルベン、4−アルコキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸−N−アルキルイミド、ビスベンズオキサゾリルエチレン、ジアルキルスチルベン等が挙げられる。
【0070】
紙の表裏のポリエチレンの使用量は、インク吸収層の膜厚やバック層を設けた後で低湿及び高湿下でのカールを最適化するように選択されるが、一般には、ポリエチレン層の厚さはインク吸収層側で15〜50μm、バック層側で10〜40μmの範囲である。表裏のポリエチレンの比率はインク受容層の種類や厚さ、中紙の厚み等により変化するカールを調整するように設定されるのが好ましく、通常は、表/裏のポリエチレンの比率は、厚みで概ね3/1〜1/3である。
【0071】
上記ポリエチレン被覆紙支持体は、下記(1)〜(7)の特性を有することが好ましい。
【0072】
(1)引張り強さ:JIS P 8113で規定される強度で、縦方向が19.6〜294N、横方向が9.8〜196Nである。
【0073】
(2)引裂き強度:JIS P 8116で規定される強度で、縦方向が0.20〜2.94N、横方向が0.098〜2.45Nである。
【0074】
(3)圧縮弾性率:9.8kN/cm2。
(4)不透明度:JIS P 8138に規定された方法で測定した時に80%以上、特に85〜98%である。
【0075】
(5)白さ:JIS Z 8727で規定されるL*、a*、b*が、L*=80〜96、a*=−3〜+5、b*=−7〜+2である。
【0076】
(6)クラーク剛直度:記録用紙の搬送方向のクラーク剛直度が50〜300cm3/100である。
【0077】
(7)原紙中の水分は、中紙に対して4〜10質量%。
(8)インク受容層を設ける光沢度(75°鏡面光沢度)は10〜90%である。
【0078】
本発明におけるインク吸収層は2層以上の構成となるが、その製造方式としては、インク吸収層を含む各構成層を各々単独に複数回に分けて塗布・乾燥して製造することもでき、あるいは複数層を同時に塗布・乾燥して製造することもできるが、製造上のコストの点から同時重層塗布が好ましい。塗布方式としては公知の方法から適宜選択して塗布することができる。例えばロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許2,681,294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
【0079】
塗工液温度は、通常、25〜60℃であり、35〜50℃が好ましく、36〜48℃の液を使用するのが特に好ましい。冷却は塗布後の膜面温度が20℃以下、好ましくは15℃以下になるようにして一定時間(好ましくは5秒間以上)冷却ゾーンを通過させる。この冷却時点では、余り強い風を吹き付けないことが「液寄り」の発生を抑えるという観点において好ましい。
【0080】
その後の乾燥は、20℃以上の風を吹き付けて行うのが、均一な膜面を得る点から好ましい。特に20℃以上の風を吹き付けてから、徐々に風の温度を上げるのが好ましい。乾燥時間は、湿潤膜厚にもよるが、概ね10分以内、特に5分以内にするのが好ましい。
【0081】
尚、本発明の記録用紙は、特に水溶性染料インクを用いたインクジェット記録において効果が大きく好ましいが、顔料インクを用いたインクジェット記録でも使用することが出来る。
【0082】
インクジェット記録用紙を用いて画像記録する際には、水性インクを用いた記録方法が好ましく用いられる。該水性インクとは、着色剤及び液媒体、その他の添加剤を有する記録液体である。着色剤としては、インクジェットで公知の直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料あるいは食品用色素等の水溶性染料あるいは水分散性顔料が使用できる。
【0083】
水性インクの溶媒としては、水及び水溶性の各種有機溶剤、例えばメチルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール等のアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトンアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリエタノールアミン等の多価アルコール類;エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類等が挙げられる。中でも、ジエチレングリコール、トリエタノールアミンやグリセリン等の多価アルコール類、トリエチレングリコールモノブチルエーテルの多価アルコールの低級アルキルエーテル等は好ましいものである。
【0084】
その他の水性インクの添加剤としては、例えばpH調節剤、金属封鎖剤、防黴剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、湿潤剤、界面活性剤及び防錆剤等が挙げられる。
【0085】
水性インク液は、記録用紙に対する濡れ性を良好にするために、20℃において、通常、0.025〜0.06N/m、好ましくは0.03〜0.05N/mの範囲内の表面張力を有することが好ましい。インクのpHは好ましくは5〜10であり、特に好ましくは6〜9である。
【0086】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されない。尚、特に断りない限り、実施例中の「%」は「質量%」を表す。
【0087】
〈シリカ塗布液A−1の作製〉
高速攪拌分散機を用いて、1%エタノール水溶液820ml中に平均1次粒子径が10nmのゲル法湿式シリカを125g徐々に加えていき、pH調整後、純水を加えて1000mlに仕上げた。次いで、この液をサンドミルで分散してシリカ分散液を得た。尚、pH調整は、5%硼酸水溶液を50ml加えた後、硝酸により調整した。尚、表1に示す分散液中でのシリカの平均2次粒子径は、各分散液を50倍に希釈し、動的光散乱方式粒子径測定装置ゼータサイザー1000HB(マルバーン社製)を用いて測定した値である。
【0088】
こうして得られたシリカ分散液を45℃にて攪拌しながら10%ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製PVA235,平均重合度3500)を表1に示す固形分質量比で加え、シリカ固形分で9%になるように純水を加えてシリカ塗布液A−1を得た。尚、PVAに対するシリカの質量比(シリカ/PVA)をPa/Bとして表1に示す。
【0089】
〈シリカ塗布液A−2〜A−9の作製〉
使用するシリカ、pH、使用するPVA重合度と添加量(Pa/B)を表1に示す条件に変更した以外は、シリカ塗布液A−1と同様にしてシリカ塗布液A−2〜A−9を作製した。
【0090】
【表1】
【0091】
〈アルミナ塗布液B−1の作製〉
塩化アルミニウムを気化させ、酸素、水素の存在下、高温で処理して得た比表面積130m2/g(BET法により測定)の気相法アルミナ200gを得た。このアルミナを、純水800ml中に硝酸でpHを4.6に調整しながら高速攪拌分散機を用いて徐々に加えていき、最後に5%硼酸水溶液を50ml加えた後、硝酸によりpHを4.5に調整し、純水で1000mlに仕上げた。次いで、この液をサンドミルにより分散してアルミナ分散液を得た。尚、表2に示す分散液中でのアルミナの平均2次粒子径は、分散液を50倍に希釈し、動的光散乱方式粒子径測定装置ゼータサイザー1000HB(前出)を用いて測定した値である。
【0092】
このアルミナ分散液を、45℃にて攪拌しながら10%ポリビニルアルコール水溶液(前出PVA235,重合度3500)を表2に示す固形分質量比で加え、アルミナ固形分で9%になるように純水を加えてアルミナ塗布液B−1を得た。尚、PVAに対するアルミナの質量比(アルミナ/PVA)をPb/Bとして表2に示す。
【0093】
〈アルミナ塗布液B−2〜B−7の作製〉
使用するアルミナ、pH、使用するPVA重合度と添加量(Pb/B)を表2に示す条件に変更した以外は、アルミナ塗布液B−1と同様にしてアルミナ塗布液B−2〜B−7を作製した。
【0094】
【表2】
【0095】
〈記録用紙1〜22の作製〉
シリカ塗布液A−1〜A−9及びアルミナ塗布液B−1〜B−7を表3に示す層構成及びシリカ又はアルミナの固形分付量となるよう、坪量180g/m2の原紙両面をポリエチレンで被覆した支持体(厚さ250μm,記録面側のポリエチレン層中に6%のアナターゼ型チタン含有)の記録面側に、スライドホッパー型コーターを用いて2層同時塗布した。塗布直後に4℃に保たれた冷却ゾーンで20秒間冷却した後、20〜65℃に段階的に温度を変化させた風で順次乾燥して記録用紙1〜22を得た。
【0096】
〈記録用紙の評価〉
以上のようにして得られた記録用紙1〜22について、以下の項目について評価した。
【0097】
《インク吸収性》
各記録用紙に、セイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM−800Cでマゼンタのベタ印字を行い、印字直後の印字部分を指で擦って画像の乱れを目視評価した。評価は以下の4段階で行った。
【0098】
◎:指で擦っても全く画像が乱れない
○:指で擦ると僅かに画像が乱れる
△:やや画像が擦れて汚れる
×:画像が擦れて汚れてしまう
《プリント濃度》
各記録用紙に、セイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM−800Cで黒色ベタ印字を行い、反射濃度を測定し4段階評価した。
【0099】
◎:濃度が2.4以上
○:濃度が2.2以上2.4未満
△:濃度が2.0以上2.2未満
×:濃度が2.0未満
《滲み耐性》
各記録用紙に、セイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM−800Cを用いてマゼンタのベタプリントを背景に幅約0.3mmのブラックのラインをプリントし、5分放置後、50℃・85%RH(相対湿度)で5日間保存し、保存前後での細線の滲みを以下の4段階で評価した。
【0100】
◎:滲みの発生がなく、美観を損なわない
○:僅かに滲みは発生しているが、美観を損なうことはない
△:やや滲みが発生しており、美観を損なう
×:滲みが発生しており、美観を損なう
《光沢度》
日本電色工業社製変角光沢度計(VGS−1001DP)を用いて75度光沢を測定し、4段階評価した。
【0101】
◎:光沢度が60%以上
○:光沢度が55%以上60%未満
△:光沢度が50%以上55%未満
×:光沢度が50%未満
結果を纏めて表3に示す。
【0102】
【表3】
【0103】
表3に示す結果の通り、本発明のインクジェット記録用紙は、高いインク吸収性とプリント濃度、滲み耐性、及び光沢性を同時に満足することが判る。一方、比較の記録用紙は、インク吸収性が良好であってもプリント濃度や滲み耐性、光沢性に劣っていたり、あるいは、滲み耐性、光沢性が良好であってもインク吸収性に劣るなど、何れかの性能を欠くものであった。
【0104】
【発明の効果】
本発明により、高光沢で高いインク吸収性とプリント濃度、及び滲み耐性を満足する高画質なインクジェット記録用紙を提供することができた。更に、安価な原材料を使用し、塗工液を濃縮できるので、乾燥時の負荷が小さくなり、製造コストの削減も可能となった。
【発明の属する技術分野】
本発明は、高いインク吸収性と光沢及びプリント濃度を有し、更に滲み耐性を併せ持つ高画質インクジェット記録用紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット記録は急速に画質が向上してきており、写真画質に迫りつつある。この様な写真画質をインクジェット記録で達成する手段として、使用する記録用紙においても急速に技術改良が試みられており、高平滑性の支持体上に微小な空隙を有する層(以下、空隙層又は多孔質層とも言う)を設けた記録用紙は、インク吸収性及び乾燥性に優れていることから最も写真画質に近いものの一つになりつつある。
【0003】
このような多孔質層は、主に無機微粒子と親水性バインダーで形成されており、一般的には表面がアニオン性である微粒子シリカと少量の親水性バインダーの組合せで得られるインクジェット記録用紙(以下、単に記録用紙とも言う)が知られている。
【0004】
更に、銀塩写真の画質に匹敵するような画質を得る方法として、インク吸収性のみならず、インク定着性、画像の耐水性、カラー記録時の発色性といった性能を維持しつつ、光沢度及び画像濃度を高めるという手段がある。
【0005】
従来の光沢を付与する技術としては、例えば光沢度を高めるために、カレンダー装置を用いて圧力や温度を掛けて表面を平滑化させる方法が知られている。しかしながら、空隙層を有する高吸収性なインクジェット記録用紙に、高圧でカレンダー処理を行うと、光沢は向上するものの空隙が潰れ減少し、吸収性の低下を招くという欠点がある。
【0006】
又、上層にコロイダルシリカを主体とした光沢発現層を設ける手段が知られている(例えば特許文献1、特許文献2参照)が、コロイダルシリカを主体とする層は高空隙率になり難く、インク吸収性が低下するという欠点があった。
【0007】
一方、シリカと並び知られている無機微粒子の一つとして、アルミナ又はアルミナ水和物がある。これらは高光沢なインク吸収層を形成し易く、又、表面がカチオン性なのでインク定着性があり、カチオン定着剤を別途添加する必要がないという利点がある。しかし、アルミナ又はアルミナ水和物は、シリカと比べて空隙を形成する能力が弱いため、十分なインク吸収性を得るためには多量のインク吸収層が必要となり、生産負荷が大きく、更にアルミナ又はアルミナ水和物はシリカと比べてコストが高いという問題があった。
【0008】
【特許文献1】
特開平7−89220号公報
【0009】
【特許文献2】
特開2000−289327号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたもので、その目的は高いインク吸収性と光沢、プリント濃度を有し、更に滲み耐性を併せ持つ高画質インクジェット記録用紙を安価に提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は下記の構成により達成される。
【0012】
1)支持体上に少なくとも2層以上のインク吸収層を有するインクジェット記録用紙において、少なくとも支持体に最も近いインク吸収層に、1次粒子の平均粒径が10nm以下であり2次粒子の平均粒径が10〜300nmに粉砕された湿式シリカ微粒子と親水性バインダーを含有し、支持体から最も離れているインク吸収層に、BET法により測定される比表面積が100〜400m2/gのアルミナ又はアルミナ水和物と親水性バインダーを含有し、かつ下式を満足するインクジェット記録用紙。
【0013】
(湿式シリカの質量+アルミナ又はアルミナ水和物の質量)/(親水性バインダーの質量)=5.5〜15
2)湿式シリカがゲル法により合成されたシリカである1)記載のインクジェット記録用紙。
【0014】
3)アルミナが気相法により製造されたアルミナである1)又は2)記載のインクジェット記録用紙。
【0015】
4)親水性バインダーがポリビニルアルコール又はその誘導体であり、その平均重合度が2000〜5000である1)〜3)の何れか1項記載のインクジェット記録用紙。
【0016】
5)少なくとも支持体に最も近いインク吸収層にカチオン定着剤を含有する1)〜4)の何れか1項記載のインクジェット記録用紙。
【0017】
6)支持体が非吸収性である1)〜5)の何れか1項記載のインクジェット記録用紙。
【0018】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明のインクジェット記録用紙は、支持体上に少なくとも2層以上のインク吸収層を有するが、少なくとも支持体に最も近いインク吸収層には、1次粒子の平均粒径が10nm以下で2次粒子の平均粒径を10〜300nmに粉砕した湿式シリカが含まれ、少なくとも支持体から最も離れているインク吸収層には、BET法により測定される比表面積が100〜400m2/gのアルミナ又はアルミナ水和物が含まれる。
【0019】
支持体に最も近い粉砕した湿式シリカを含むインク吸収層は、十分なインク吸収性と適度な平滑性を持ち、しかも低コストで塗布液の粘性が低く濃縮に適しているといった特徴がある。一方、支持体から最も離れているアルミナ又はアルミナ水和物を含むインク吸収層は、インク吸収性の低下の原因となるカチオン定着剤を含まなくとも十分なインク定着性があり、しかも高い光沢性を有する特徴がある。即ち、本発明は、インク吸収性と定着性、光沢といった、従来、同時に満足することが困難であった諸性能に対して、各特性の機能分離を図り、各機能を有するインク吸収層を併せ持つことにより、各々の特性を全て満足する記録用紙を低コストで実現することができる。
【0020】
本発明の記録材料の少なくとも支持体に最も近いインク吸収層には、合成シリカである湿式シリカが用いられる。合成シリカには、湿式シリカと気相法シリカとが知られており、気相法シリカは気化した四塩化珪素を高温で加水分解して得られる。上層にアルミナ又はアルミナ水和物を使用し、下層に気相法シリカを用いたインクジェット記録材料としては特開2002−225423号に記載のものがあるが、気相法シリカを用いた場合、光沢性は高いものが得られるが、気相法シリカは水に分散した場合に粘性が高く高濃度化が困難で製造時の負荷が大きいことや、停滞安定性が悪いなど取扱い上の問題がある上、湿式シリカよりも高価であるため生産コスト面で不利であり、好ましくない。
【0021】
一方、湿式シリカは沈降法やゲル法により比較的安価に合成され、沈降法シリカは概ね10〜60nm、ゲル法シリカは概ね3〜10nmの1次粒子が2次凝集体を形成した凝集粒子として存在している。例えば特開平7−89216号には、上層に擬ベーマイト、下層に湿式シリカを使用した例が記載されている。しかしながら、ここで使用されている湿式シリカは平均粒径が数μm以上であるためシリカ層の表面の平滑性が悪く、これが最表面の平滑性にも悪影響を及ぼすため十分な光沢を得ることが難しい。
【0022】
これに対し、湿式シリカ粒子を粉砕微粒化することにより平滑な皮膜を形成する方法が知られているが、粉砕微粒化するとインク吸収性が低下する問題がある。このインク吸収性を高めるために、バインダー樹脂に対するシリカ粒子の質量比を高くする方法があるが、バインダー樹脂に対するシリカ粒子の質量比を5より高めると塗膜強度が低下し、塗布・乾燥時に「ひび割れ」が起き易い欠点があり、質量比が5以下では十分な空隙が得られず、インク吸収性が改善されない。更に湿式シリカは1次粒子径が小さいほど粉砕微粒化した場合に微細な空隙ができ易く、染料定着性に有利な反面、比表面積が大きくなる為に充分な塗付皮膜の強度を得る為に必要なバインダー量が増加し、インク吸収性が低下する問題がある。
【0023】
この課題に対し本発明者らが鋭意検討した結果、塗布液pHを3.0〜5.5の範囲になるように調整することで、塗付皮膜の強度に必要なバインダー樹脂量が軽減され、インク吸収性が高まることを見い出した。この効果に対する詳細な解明には至っていないが、塗付皮膜のpHをシリカの等電点に近づけることで水素結合性の向上による接着性が高まり、その結果、「ひび割れ」が起き難くなるので必要なバインダー樹脂量を減らすことが可能となり、インク吸収性が高まるものと推定している。
【0024】
上記検討結果に基づき、少なくとも支持体に最も近いインク吸収層は、1次粒子の平均粒径が10nm以下、より好ましくは8nm以下の湿式シリカを、2次粒子の平均粒径が10〜300nmになるよう粉砕したシリカ微粒子と親水性バインダーを含有し、親水性バインダーに対する湿式シリカの質量比を5.5〜12の範囲とする構成において、高い光沢、インク吸収性を満足するインク吸収層が得られる。湿式シリカの1次粒子径の下限に特に制約はないが、シリカ粒子の製造安定性の観点から3nm以上であることが好ましい。又、特に好ましくはゲル法により合成される湿式シリカであり、より高いプリント濃度が得られる。沈降法に比べ、ゲル法による湿式シリカは粒子表面活性が高く凝集力が強い。従って、より微細な空隙が出来易く高いインク吸収性が得られる上、微細な空隙にインク染料が定着され、高いプリント濃度が得られるものと推定している。
【0025】
尚、シリカの1次粒子及び2次粒子の平均粒径は、空隙層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、1000個の任意の粒子の粒径から求められる。ここで個々の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。
【0026】
記録材料の支持体から最も離れているインク吸収層にはアルミナ又はアルミナ水和物が用いられる。一般に、インクジェット記録用紙に用いられるアルミナとしては、気体状の塩化アルミニウムを水素及び酸素と共に加熱・燃焼させ、高温で加水分解することにより得られる気相法アルミナと、アルミン酸塩を加水分解する等の方法で製造される、いわゆる湿式のアルミナ及びアルミナ水和物が挙げられるが、これら気相法や湿式のアルミナやアルミナ水和物の性質は、その比表面積及び構造と密接な関係がある。尚、微粒子の比表面積はBET法により測定される。
【0027】
アルミナ及びアルミナ水和物は微粒子そのものにインク定着性があり、プリント時の斑やブロンジングの要因となるカチオン定着剤を添加する必要がなく、インク吸収性を高めることができる。この性質は、インクジェットのインクに使用される染料の殆どはアニオン性であるが、アルミナやアルミナ水和物の表面はカチオン性の性質を持ち、微粒子表面に染料が吸着されることにより発現する。それ故、アルミナやアルミナ水和物のインク定着性の強弱は微粒子の比表面積に相関する。
【0028】
又、アルミナ及びアルミナ水和物は、その表面に反応性の水酸基を有しており、水酸基の水素結合によって微粒子間に相互作用が生じて三次元的な空隙を形成し、その空隙にインクの溶媒が吸収されることによりインクの吸収容量が増加し、インク吸収性が高まる。
【0029】
湿式のアルミナ及びアルミナ水和物は200〜400m2/gの比表面積を有するものが多いが、その製造過程から粒子内部に細孔が多数存在しており、内部表面積が大きい。このことは即ち、インクの染料が吸着する表面は多いが、多くの表面が粒子の内側を向いているため、粒子間で水素結合ができる水酸基の数は少なく、空隙を形成し難くなりインク吸収容量が少なくなるものと思われる。
【0030】
一方、気相法アルミナには内部に細孔が殆ど存在せず、その表面の殆どが粒子の外側を向いているため、湿式のアルミナやアルミナ水和物よりも粒子間水素結合をする水酸基の数が多く、空隙を作り易い。
【0031】
本発明で使用されるアルミナ又はアルミナ水和物としては、湿式のアルミナ又はアルミナ水和物、気相法アルミナの何れも使用できるが、インク吸収性の点で擬ベーマイト、又は気相法アルミナが好ましく、より好ましくは気相法アルミナである。又、好ましい比表面積としては、インク定着性を高める点から100〜400m2/gである。
【0032】
更に、本発明者らは、比表面積が120〜250m2/gの気相法アルミナを使用することにより、インクの吸収性、及び定着性、耐水性を同時に付与できることを見い出した。即ち、気相法アルミナ微粒子の比表面積が120m2/g以上ではインクの定着性が強く、耐水性、滲み耐性が満足され、比表面積が250m2/g以下の場合に気相法アルミナ微粒子間の相互作用をコントロールすることができ、粉体としての取り扱いが容易であり、分散液の粘度も低く、又、安定性が高いため塗工の負荷が少ない。従って、最も好ましいアルミナ又はアルミナ水和物としては、比表面積が120〜250m2/gの気相法アルミナである。
【0033】
上記気相法アルミナを使用する場合、分散は分散液のpHが3〜5の範囲で行われることが好ましい。比表面積が120m2/g以上の気相法アルミナで分散液のpHが未調整の場合、粒子間相互作用が強まるため水に対する分散性が劣化して分散液が増粘してしまい、固形分で15質量%以上の濃度での分散が困難となる時がある。希釈して分散液の濃度を低くすれば可能となるが、生産時の塗布・乾燥工程に負荷が大きくなり好ましくない。又、停滞安定性も劣化する場合がある。そこで、分散液のpHを3〜5に調整すると粒子間相互作用がコントロールされて分散性が向上し、固形分濃度30質量%以上でも分散可能となり、停滞安定性にも優れ、しかも高いインク吸収性を維持することができる。
【0034】
本発明で使用されるアルミナ又はアルミナ水和物の分散液は、1次粒子が複数結合して2次粒子を形成している。インク吸収性や分散安定性、透明性、光沢性の点で、アルミナ又はアルミナ水和物の1次粒子の平均粒径は概ね5〜12nmが好ましく、7〜11nmが取り扱いや分散性の点でより好ましい。2次粒子径は30〜200nmが好ましく、50〜150nmがより好ましい。尚、アルミナの1次粒子及び2次粒子の平均粒径は、空隙層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、1000個の任意の粒子の粒径から求められる。ここで個々の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。
【0035】
湿式シリカ及びアルミナ又はアルミナ水和物の分散には、高圧ホモジナイザー、高速攪拌分散機、サンドミル、超音波分散機などを用いることができるが、本発明においてはサンドミルが好ましい。サンドミルに用いるビーズは1.0mm以下のジルコニアビーズが好ましく、更に好ましくは0.5mm以下のジルコニアビーズである。
【0036】
湿式シリカの使用量は、プリント時のインク溢れや斑が起きない程度のインク吸収容量を持たせる為に、記録用紙1m2当たり概ね3〜25g、好ましくは5〜20gであり、アルミナ又はアルミナ水和物の使用量は、プリント時のインク定着性や光沢性を維持するために記録用紙1m2当たり概ね0.5〜20g、好ましくは2〜15gである。又、湿式シリカとアルミナ又はアルミナ水和物の総量の合計は4〜35gが好ましく、5〜25gがより好ましい。
【0037】
次に、本発明に係る親水性バインダーについて説明する。親水性バインダーとしては、従来公知の各種親水性バインダーを用いることが出来る。例えばゼラチン(酸処理ゼラチンが好ましい)、ポリビニルピロリドン(平均分子量約20万以上が好ましい)、プルラン、ポリビニルアルコール(PVA)又はその誘導体、ポリエチレングリコール(平均分子量が10万以上が好ましい)、ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、水溶性ポリビニルブチラール等を挙げることができる。これらの親水性バインダーは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。特に好ましい親水性バインダーはPVA又はカチオン変成PVAである。
【0038】
本発明で好ましく用いられるPVAは平均重合度が300〜5,000の範囲であり、特に平均分子量が2,000〜5,000のものが得られる皮膜の脆弱性が良好であることから好ましく、3,000〜4,500がより好ましい。又、PVAの鹸化度は70〜100%のものが好ましく、80〜100%のものが特に好ましい。
【0039】
又、カチオン変性PVAは、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体を鹸化することにより得られる。カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えばトリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0040】
カチオン変性PVAのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。カチオン変性PVAの重合度は、通常、500〜5,000、好ましくは2,000〜4,000であり、重合度3,000〜4,500がより好ましい。又、カチオン変成PVAの鹸化度は、通常、60〜100モル%、好ましくは70〜99モル%である。
【0041】
上記親水性バインダーは、インク吸収層が空隙層になるようにする為に湿式シリカ及びアルミナ又はアルミナ水和物に対して比較的少量使用され、皮膜が安定に形成され、支持体との接着性が充分保てる範囲で出来るだけ少なく使用するのが好ましい。湿式シリカを含む層では、親水性バインダーに対する湿式シリカの質量比で5.5〜18の範囲であることが好ましく、特に5.5〜12が好ましい。アルミナ又はアルミナ水和物を含む層では、親水性バインダーに対するアルミナ又はアルミナ水和物の質量比で5〜20の範囲であること好ましく、特に7〜15が好ましい。又、親水性バインダーの総質量に対し、湿式シリカの質量とアルミナ又はアルミナ水和物の質量の和の比が5.5〜15の範囲であることが好ましく、5.5〜12がより好ましい。この範囲であれば充分なインク吸収性と塗布・乾燥時の「ひび割れ」耐性を満足することが出来る。
【0042】
湿式シリカの塗布液及びアルミナ又はアルミナ水和物の分散液のpH調整に使用されるpH調整剤は特に制約はなく、如何なるものも使用できるが、好ましくは塩酸、硝酸、酢酸、燐酸、枸櫞酸であり、特に硝酸が好ましい。又、親水性バインダーにPVAを用いる場合には、硼酸を用いることがPVAの架橋剤としての機能を付与できる点で好ましい。尚、湿式シリカの塗布液のpHの調整は湿式シリカの分散液の状態でpHを調整することにより行うのが好ましい。
【0043】
本発明のインクジェット記録用紙は、高光沢性で高い空隙率を皮膜の脆弱性を劣化させずに得るために、前記親水性バインダーが硬膜剤により硬膜されていることが好ましい。
【0044】
硬膜剤は、一般的には親水性バインダーと反応し得る基を有する化合物あるいは親水性バインダーが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、親水性バインダ−の種類に応じて適宜選択して用いられる。硬膜剤の具体例としては、例えばエポキシ系硬膜剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬膜剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、硼酸及びその塩、硼砂、アルミ明礬等が挙げられる。
【0045】
特に好ましい親水性バインダ−としてPVA及び/又はカチオン変成PVAを使用する場合には、硼酸及びその塩、及びエポキシ系硬膜剤から選ばれる硬膜剤の使用が好ましい。最も好ましいのは硼酸及びその塩から選ばれる硬膜剤である。硼酸又はその塩とは、硼素原子を中心原子とする酸素酸及びその塩のことを示し、具体的にはオルト硼酸、二硼酸、メタ硼酸、四硼酸、五硼酸及び八硼酸、並びに、それらの塩が含まれる。
【0046】
硬膜剤の使用量は、親水性バインダ−の種類、硬膜剤の種類、無機微粒子の種類や親水性バインダーに対する比率等により変化するが、概ね、親水性バインダー1g当たり5〜500mg、好ましくは10〜400mgである。
【0047】
上記硬膜剤は、空隙層を構成する塗布液を塗布する際に、空隙層形成の塗布液中及び/又は空隙層に隣接するその他の層を形成する塗布液中に添加してもよく、あるいは予め硬膜剤を含有する塗布液を塗布してある支持体上に、前記空隙層を形成する塗布液を塗布したり、更には空隙層を形成する硬膜剤非含有の塗布液を塗布・乾燥後に硬膜剤溶液をオーバーコートするなどして、空隙層に硬膜剤を供給することができるが、好ましくは、製造上の効率から、空隙層を形成する塗布液又はこれに隣接する層の塗布液中に硬膜剤を添加して、空隙層を形成するのと同時に硬膜剤を供給するのが好ましい。
【0048】
記録用紙のインク吸収層及び必要に応じて設けられるその他の層には、上述した以外の各種添加剤を使用することができる。例えば、印字記録後の耐水性、滲み耐性を向上させるために、カチオン定着剤を添加することもできる。
【0049】
このカチオン定着剤としては、カチオン性ポリマー又は水溶性の多価金属イオン等が挙げられ、カチオン性ポリマーの例としては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ジシアンジアミドポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリアルキレンポリアミンジシアンジアミドアンモニウム塩縮合物、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、エピクロルヒドリン・ジアルキルアミン付加重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・SO2共重合物、ポリビニルイミダゾール、ビニルピロリドン・ビニルイミダゾール共重合物、ポリビニルピリジン、ポリアミジン、キトサン、カチオン化澱粉、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド重合物、(2−メタクロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウムクロライド重合物、ジメチルアミノエチルメタクリレート重合物、などが挙げられる。又、化学工業時報,平成10年8月15,25日に記載のカチオン性ポリマー、三洋化成工業社発行「高分子薬剤入門」に記載の高分子染料固着剤が一例として挙げられる。プリント保存時の滲み耐性を向上する観点から、下記構造式で示されるカチオンポリマーが特に好ましい。
【0050】
【化1】
【0051】
又、水溶性の多価金属イオンとしては、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、ジルコニウム、錫、鉛などの金属塩が挙げられる。中でも、マグネシウム、アルミニウム、ジルコニウム、カルシウム、亜鉛から成る化合物は無色のため好ましい。又、水溶性の多価金属イオンの塩として、ポリ塩化アルミニウムのような水溶性無機ポリマーを使用してもよい。
【0052】
カチオン定着剤は如何なる層に添加しても構わないが、アルミナ又はアルミナ水和物は既にインク定着性があるので、インク定着性が弱い湿式シリカ含有層に添加することが好ましい。カチオン定着剤の使用量は、湿式シリカに対する質量比で10質量%以下、より好ましくは8質量%以下であることがインク吸収性の劣化を抑制する為に好ましい。
【0053】
カチオン定着剤の添加方法としては、塗布液に直接添加して塗布する方法の他、記録用紙の塗布・乾燥後に、カチオン性の樹脂や水溶性の多価金属イオンの水溶液をオーバーコートして乾燥するといった方法でも構わない。
【0054】
その他、使用できる添加剤としては、例えばアニオン、カチオン、非イオン、両性の各界面活性剤;ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、カゼイン、澱粉、寒天、カラギーナン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸、セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール等の水溶性ポリマー;イソシアネート系化合物等の架橋剤;特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号等に記載の紫外線吸収剤;特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載される退色防止剤;特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号等に記載の蛍光増白剤;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤;消泡剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤が挙げられる。
【0055】
本発明の記録用紙のインク吸収層は、湿式シリカを含む支持体に最も近いインク吸収層とアルミナ又はアルミナ水和物を含む支持体から最も離れているインク吸収層の最低限2層から構成されるが、3層以上で構成されてもよく、この場合、中間のインク吸収層の構成は、支持体に最も近いインク吸収層又は支持体から最も離れているインク吸収層と同じでも異なってもよい。
【0056】
記録用紙の支持体としては、吸水性又は非吸水性の何れの支持体も用いることができるが、非吸水性支持体の方がプリント後に皺の発生がなく、画像に平滑性の差が生ぜず高品位のプリントが得られるので好ましい。
【0057】
吸水性支持体としては紙支持体が一般的であるが、布あるいは多孔質のフィルム支持体も含まれる。
【0058】
又、非吸水性支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエステル系樹脂、ジアセテート系樹脂、トリアセテート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セロハン、セルロイド等の材料からなるフィルム等、金属やガラス、更にはポリエチレン樹脂被覆層を有する樹脂被覆紙(所謂RCペーパー)、PETに白色顔料を添加したホワイトペット等が挙げられる。
【0059】
これらの中でも、原紙支持体の両面をポリエチレン(PE)でラミネートした紙支持体を用いることが、記録画像が写真画質に近く、しかも低コストで高品質の画像が得られる為に特に好ましい。
【0060】
以下、特に好ましい支持体である紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆した支持体について説明する。支持体i用いられる紙は、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレン等の合成パルプ又はナイロンやポリエステル等の合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしてはLBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPの何れも用いることができるが短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。ただし、LBSP及び/又はLDPの比率は10〜70質量%が好ましい。上記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、又、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
【0061】
紙中には、例えば高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等の白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤等を適宜添加することができる。
【0062】
抄紙に使用するパルプの濾水度は、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、又、叩解後の繊維長がJIS P 8207に規定される24メッシュ残分と42メッシュ残分の和が30〜70%であることが好ましい。尚、4メッシュ残分は20%以下であることが好ましい。紙の坪量は50〜250gが好ましく、特に70〜200gが好ましい。紙の厚さは50〜210μmが好ましい。
【0063】
紙は、抄紙段階又は抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS P 8118)が一般的である。更に、原紙剛度はJIS P 8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0064】
紙表面には表面サイズ剤を塗布してもよく、表面サイズ剤としては前記原紙中に添加できるのと同様のサイズ剤を使用できる。紙のpHは、JIS P 8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、pH5〜9であることが好ましい。
【0065】
次に、この紙の両面を被覆するポリオレフィン樹脂について説明する。
この目的で用いられるポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンが挙げられるが、プロピレンを主体とする共重合体等のポリオレフィン類が好ましく、ポリエチレンが特に好ましい。
【0066】
以下、特に好ましいポリエチレンについて説明する。紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)及び/又は高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0067】
特に、塗布層側のポリオレフィン層は、ルチル又はアナターゼ型の酸化チタンをポリオレフィン中に添加し、不透明度及び白色度を改良したものが好ましい。
酸化チタン含有量は、ポリオレフィンに対して概ね1〜20%、好ましくは2〜15%である。
【0068】
ポリオレフィン層中には、白地の調整を行うための耐熱性の高い着色顔料や蛍光増白剤を添加することができる。
【0069】
着色顔料としては、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、マンガンブルー、セルリアン、タングステンブルー、モリブデンブルー、アンスラキノンブルー等が挙げられる。蛍光増白剤としては、ジアルキルアミノクマリン、ビスジメチルアミノスチルベン、ビスメチルアミノスチルベン、4−アルコキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸−N−アルキルイミド、ビスベンズオキサゾリルエチレン、ジアルキルスチルベン等が挙げられる。
【0070】
紙の表裏のポリエチレンの使用量は、インク吸収層の膜厚やバック層を設けた後で低湿及び高湿下でのカールを最適化するように選択されるが、一般には、ポリエチレン層の厚さはインク吸収層側で15〜50μm、バック層側で10〜40μmの範囲である。表裏のポリエチレンの比率はインク受容層の種類や厚さ、中紙の厚み等により変化するカールを調整するように設定されるのが好ましく、通常は、表/裏のポリエチレンの比率は、厚みで概ね3/1〜1/3である。
【0071】
上記ポリエチレン被覆紙支持体は、下記(1)〜(7)の特性を有することが好ましい。
【0072】
(1)引張り強さ:JIS P 8113で規定される強度で、縦方向が19.6〜294N、横方向が9.8〜196Nである。
【0073】
(2)引裂き強度:JIS P 8116で規定される強度で、縦方向が0.20〜2.94N、横方向が0.098〜2.45Nである。
【0074】
(3)圧縮弾性率:9.8kN/cm2。
(4)不透明度:JIS P 8138に規定された方法で測定した時に80%以上、特に85〜98%である。
【0075】
(5)白さ:JIS Z 8727で規定されるL*、a*、b*が、L*=80〜96、a*=−3〜+5、b*=−7〜+2である。
【0076】
(6)クラーク剛直度:記録用紙の搬送方向のクラーク剛直度が50〜300cm3/100である。
【0077】
(7)原紙中の水分は、中紙に対して4〜10質量%。
(8)インク受容層を設ける光沢度(75°鏡面光沢度)は10〜90%である。
【0078】
本発明におけるインク吸収層は2層以上の構成となるが、その製造方式としては、インク吸収層を含む各構成層を各々単独に複数回に分けて塗布・乾燥して製造することもでき、あるいは複数層を同時に塗布・乾燥して製造することもできるが、製造上のコストの点から同時重層塗布が好ましい。塗布方式としては公知の方法から適宜選択して塗布することができる。例えばロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許2,681,294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
【0079】
塗工液温度は、通常、25〜60℃であり、35〜50℃が好ましく、36〜48℃の液を使用するのが特に好ましい。冷却は塗布後の膜面温度が20℃以下、好ましくは15℃以下になるようにして一定時間(好ましくは5秒間以上)冷却ゾーンを通過させる。この冷却時点では、余り強い風を吹き付けないことが「液寄り」の発生を抑えるという観点において好ましい。
【0080】
その後の乾燥は、20℃以上の風を吹き付けて行うのが、均一な膜面を得る点から好ましい。特に20℃以上の風を吹き付けてから、徐々に風の温度を上げるのが好ましい。乾燥時間は、湿潤膜厚にもよるが、概ね10分以内、特に5分以内にするのが好ましい。
【0081】
尚、本発明の記録用紙は、特に水溶性染料インクを用いたインクジェット記録において効果が大きく好ましいが、顔料インクを用いたインクジェット記録でも使用することが出来る。
【0082】
インクジェット記録用紙を用いて画像記録する際には、水性インクを用いた記録方法が好ましく用いられる。該水性インクとは、着色剤及び液媒体、その他の添加剤を有する記録液体である。着色剤としては、インクジェットで公知の直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料あるいは食品用色素等の水溶性染料あるいは水分散性顔料が使用できる。
【0083】
水性インクの溶媒としては、水及び水溶性の各種有機溶剤、例えばメチルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール等のアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトンアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリエタノールアミン等の多価アルコール類;エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類等が挙げられる。中でも、ジエチレングリコール、トリエタノールアミンやグリセリン等の多価アルコール類、トリエチレングリコールモノブチルエーテルの多価アルコールの低級アルキルエーテル等は好ましいものである。
【0084】
その他の水性インクの添加剤としては、例えばpH調節剤、金属封鎖剤、防黴剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、湿潤剤、界面活性剤及び防錆剤等が挙げられる。
【0085】
水性インク液は、記録用紙に対する濡れ性を良好にするために、20℃において、通常、0.025〜0.06N/m、好ましくは0.03〜0.05N/mの範囲内の表面張力を有することが好ましい。インクのpHは好ましくは5〜10であり、特に好ましくは6〜9である。
【0086】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されない。尚、特に断りない限り、実施例中の「%」は「質量%」を表す。
【0087】
〈シリカ塗布液A−1の作製〉
高速攪拌分散機を用いて、1%エタノール水溶液820ml中に平均1次粒子径が10nmのゲル法湿式シリカを125g徐々に加えていき、pH調整後、純水を加えて1000mlに仕上げた。次いで、この液をサンドミルで分散してシリカ分散液を得た。尚、pH調整は、5%硼酸水溶液を50ml加えた後、硝酸により調整した。尚、表1に示す分散液中でのシリカの平均2次粒子径は、各分散液を50倍に希釈し、動的光散乱方式粒子径測定装置ゼータサイザー1000HB(マルバーン社製)を用いて測定した値である。
【0088】
こうして得られたシリカ分散液を45℃にて攪拌しながら10%ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製PVA235,平均重合度3500)を表1に示す固形分質量比で加え、シリカ固形分で9%になるように純水を加えてシリカ塗布液A−1を得た。尚、PVAに対するシリカの質量比(シリカ/PVA)をPa/Bとして表1に示す。
【0089】
〈シリカ塗布液A−2〜A−9の作製〉
使用するシリカ、pH、使用するPVA重合度と添加量(Pa/B)を表1に示す条件に変更した以外は、シリカ塗布液A−1と同様にしてシリカ塗布液A−2〜A−9を作製した。
【0090】
【表1】
【0091】
〈アルミナ塗布液B−1の作製〉
塩化アルミニウムを気化させ、酸素、水素の存在下、高温で処理して得た比表面積130m2/g(BET法により測定)の気相法アルミナ200gを得た。このアルミナを、純水800ml中に硝酸でpHを4.6に調整しながら高速攪拌分散機を用いて徐々に加えていき、最後に5%硼酸水溶液を50ml加えた後、硝酸によりpHを4.5に調整し、純水で1000mlに仕上げた。次いで、この液をサンドミルにより分散してアルミナ分散液を得た。尚、表2に示す分散液中でのアルミナの平均2次粒子径は、分散液を50倍に希釈し、動的光散乱方式粒子径測定装置ゼータサイザー1000HB(前出)を用いて測定した値である。
【0092】
このアルミナ分散液を、45℃にて攪拌しながら10%ポリビニルアルコール水溶液(前出PVA235,重合度3500)を表2に示す固形分質量比で加え、アルミナ固形分で9%になるように純水を加えてアルミナ塗布液B−1を得た。尚、PVAに対するアルミナの質量比(アルミナ/PVA)をPb/Bとして表2に示す。
【0093】
〈アルミナ塗布液B−2〜B−7の作製〉
使用するアルミナ、pH、使用するPVA重合度と添加量(Pb/B)を表2に示す条件に変更した以外は、アルミナ塗布液B−1と同様にしてアルミナ塗布液B−2〜B−7を作製した。
【0094】
【表2】
【0095】
〈記録用紙1〜22の作製〉
シリカ塗布液A−1〜A−9及びアルミナ塗布液B−1〜B−7を表3に示す層構成及びシリカ又はアルミナの固形分付量となるよう、坪量180g/m2の原紙両面をポリエチレンで被覆した支持体(厚さ250μm,記録面側のポリエチレン層中に6%のアナターゼ型チタン含有)の記録面側に、スライドホッパー型コーターを用いて2層同時塗布した。塗布直後に4℃に保たれた冷却ゾーンで20秒間冷却した後、20〜65℃に段階的に温度を変化させた風で順次乾燥して記録用紙1〜22を得た。
【0096】
〈記録用紙の評価〉
以上のようにして得られた記録用紙1〜22について、以下の項目について評価した。
【0097】
《インク吸収性》
各記録用紙に、セイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM−800Cでマゼンタのベタ印字を行い、印字直後の印字部分を指で擦って画像の乱れを目視評価した。評価は以下の4段階で行った。
【0098】
◎:指で擦っても全く画像が乱れない
○:指で擦ると僅かに画像が乱れる
△:やや画像が擦れて汚れる
×:画像が擦れて汚れてしまう
《プリント濃度》
各記録用紙に、セイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM−800Cで黒色ベタ印字を行い、反射濃度を測定し4段階評価した。
【0099】
◎:濃度が2.4以上
○:濃度が2.2以上2.4未満
△:濃度が2.0以上2.2未満
×:濃度が2.0未満
《滲み耐性》
各記録用紙に、セイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM−800Cを用いてマゼンタのベタプリントを背景に幅約0.3mmのブラックのラインをプリントし、5分放置後、50℃・85%RH(相対湿度)で5日間保存し、保存前後での細線の滲みを以下の4段階で評価した。
【0100】
◎:滲みの発生がなく、美観を損なわない
○:僅かに滲みは発生しているが、美観を損なうことはない
△:やや滲みが発生しており、美観を損なう
×:滲みが発生しており、美観を損なう
《光沢度》
日本電色工業社製変角光沢度計(VGS−1001DP)を用いて75度光沢を測定し、4段階評価した。
【0101】
◎:光沢度が60%以上
○:光沢度が55%以上60%未満
△:光沢度が50%以上55%未満
×:光沢度が50%未満
結果を纏めて表3に示す。
【0102】
【表3】
【0103】
表3に示す結果の通り、本発明のインクジェット記録用紙は、高いインク吸収性とプリント濃度、滲み耐性、及び光沢性を同時に満足することが判る。一方、比較の記録用紙は、インク吸収性が良好であってもプリント濃度や滲み耐性、光沢性に劣っていたり、あるいは、滲み耐性、光沢性が良好であってもインク吸収性に劣るなど、何れかの性能を欠くものであった。
【0104】
【発明の効果】
本発明により、高光沢で高いインク吸収性とプリント濃度、及び滲み耐性を満足する高画質なインクジェット記録用紙を提供することができた。更に、安価な原材料を使用し、塗工液を濃縮できるので、乾燥時の負荷が小さくなり、製造コストの削減も可能となった。
Claims (6)
- 支持体上に少なくとも2層以上のインク吸収層を有するインクジェット記録用紙において、少なくとも支持体に最も近いインク吸収層に、1次粒子の平均粒径が10nm以下であり2次粒子の平均粒径が10〜300nmに粉砕された湿式シリカ微粒子と親水性バインダーを含有し、支持体から最も離れているインク吸収層に、BET法により測定される比表面積が100〜400m2/gのアルミナ又はアルミナ水和物と親水性バインダーを含有し、かつ下式を満足することを特徴とするインクジェット記録用紙。
(湿式シリカの質量+アルミナ又はアルミナ水和物の質量)/(親水性バインダーの質量)=5.5〜15 - 湿式シリカがゲル法により合成されたシリカであることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録用紙。
- アルミナが気相法により製造されたアルミナであることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録用紙。
- 親水性バインダーがポリビニルアルコール又はその誘導体であり、その平均重合度が2000〜5000であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載のインクジェット記録用紙。
- 少なくとも支持体に最も近いインク吸収層にカチオン定着剤を含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載のインクジェット記録用紙。
- 支持体が非吸収性であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項記載のインクジェット記録用紙。
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JP2003107633A JP2004314320A (ja) | 2003-04-11 | 2003-04-11 | インクジェット記録用紙 |
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-
2003
- 2003-04-11 JP JP2003107633A patent/JP2004314320A/ja not_active Withdrawn
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