JP2004314092A - 被覆金型 - Google Patents

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Abstract

【課題】(AlCr)N系皮膜の欠点である硬度を高めることにより耐摩耗性を著しく改善し、潤滑性にも優れた被覆金型を提供する。
【解決手段】被覆金型において、該被覆はアーク放電式イオンプレーティング法により被覆された硬質皮膜であり、該硬質皮膜は、(AlxCr1−x−ySiy)(N1−α−β−γBαCβOγ)、但し、0.45<x<0.85、0≦y<0.35、0.50≦x+y<1.0、0≦α<0.15、0≦β<0.65、0<γ<0.65、0<α+β+γ≦1.0で示される少なくとも1層以上からなり、X線回折で岩塩構造型の(200)面に回折強度を有し、その半価幅が、0.5度以上2.0度以下、X線光電子分光分析における525eVから535eVの範囲に、少なくともAl、Cr及び/又はSiと酸素との結合エネルギーを有し、該金型の基体は超硬合金又は合金工具鋼からなる被覆金型。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、冷間加工用金型、引き抜き、押し出し加工用金型、冷間鍛造金型、圧縮加工用金型、曲げ、絞り加工用金型、せん断加工用金型に使用される該金型の表面被覆材として有用な硬質皮膜を被覆することにより、優れた耐摩耗性と優れた潤滑性を有することによって、摩耗の進行が抑えられるよになることから、長期の寿命化が可能となった被覆金型に関する。
【0002】
【従来の技術】
AlCr系皮膜は、耐摩耗特性に優れた硬質皮膜材として、下記に示す特許文献1から3が開示されている。
【特許文献1】特許第3027502号公報(第6頁、図1)
【特許文献2】特許第3039381号公報(第4頁、図1)
【特許文献3】特開平2002−160129号公報(第3頁、図1)
【0003】
特許文献1は金属成分としてAlCrとC、N、Oの1種より選択されるAlCr系硬質膜において、高硬度を有する非晶質膜に関する事例が開示されている。しかしこの非晶質膜の硬度は最大でもヌープ硬さ21GPa程度であり、皮膜として、耐摩耗効果は改善されず、密着性に関しても十分ではない。特許文献2及び特許文献3に開示されている硬質皮膜はAlCrの窒化物であり、皮膜の潤滑性の検討は行われていない。また硬度はビッカ−ス硬さ21GPa程度で硬度の改善が不十分であり耐摩耗性に乏しい。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本願発明は、上記の問題点を改善し、(AlCr)N系皮膜の欠点である硬度を高めることにより耐摩耗性を著しく改善し、優れた潤滑性を付与することによって、優れた工具寿命を発揮する被覆金型を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するために手段】
本発明は、被覆金型において、該被覆はアーク放電式イオンプレーティング法により被覆された硬質皮膜であり、該硬質皮膜は、(AlCr1−x−ySi)(N1−α−β−γαβγ)、但し、x、y、α、β、γは夫々原子比率を示し、0.45<x<0.85、0≦y<0.35、0.50≦x+y<1.0、0≦α<0.15、0≦β<0.65、0<γ<0.65、0<α+β+γ≦1.0で示される少なくとも1層以上からなり、θ−2θ法によるX線回折において測定される岩塩構造型の(200)面に回折強度を有し、その回折ピークの2θの半価幅が、0.5度以上、2.0度以下であり、X線光電子分光分析における525eVから535eVの範囲に、少なくともAl、Cr及び/又はSiと酸素との結合エネルギーを有し、該金型の基体は、超硬合金又は合金工具鋼からなることを特徴とする被覆金型である。上記構成を採用することにより、基体と硬質皮膜との密着性に特に優れ、高硬度化することが可能となり、その結果、優れた耐摩耗性と潤滑性を発揮する本発明の被覆金型を完成させた。
【0006】
本発明硬質皮膜は、θ−2θ法によるX線回折で測定される岩塩構造型の(111)面の回折強度をI(111)、(200)面の回折強度をI(200)とした時、0.3<I(200)/I(111)<12である場合、硬質皮膜内に残留する圧縮応力が低減され、基体との密着性に優れるとともに、皮膜硬度並びに潤滑性改善への寄与が大きい。また、ナノインデンテーションによる硬度測定法により接触深さと最大荷重時の最大変位量が求められる(W. C. Oliver and G. M. Pharr: J. Mater. Res., Vol.7, No.6, June、1992、1564−1583)。この数値を用いて、
E=100−{(接触深さ)/(最大荷重時の最大変位量)}
の数式で、弾性回復率Eを定義し、28%≦E≦40%とすることにより、耐摩耗性と密着性のバランスが最適となる。更に、該硬質皮膜の最表面から深さ方向に500nm以内の深さ領域で酸素濃度が最大となる場合、潤滑特性並びに耐摩耗特性改善に極めて有効である。また、本願発明の硬質皮膜は、硬質皮膜表面の凸部を機械的処理により平滑にすると、表面の摩擦係数が低減し、これによって摩耗の進行が抑制される。本発明の被覆金型が超硬合金からなり、重量%でCo及び/又はNiの含有量の和が0<(Co+Ni)<32であり、更にCr、Ta、Ti、Zrから選択される1種以上の金属及び又は炭化物、窒化物、酸化物もしくはその組合せから選択される金属及び/又は化合物を少なくとも1種以上含有し、硬さがHRA75以上、HRA95以下であることが好ましい。また、被覆金型が合金工具鋼からなり、重量%でCrが0.3≦Cr≦15.0%、Cが0.2≦C≦2.3%、Siが0.6%以下、Mnが1.5%以下含有し、硬さがHRC50以上、HRC65以下であることが好ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の硬質皮膜を構成する金属元素の組成は、(AlCr1−x−ySi)において、xが0.45<x<0.85、yが0≦y<0.35、0.50≦x+y<1.0を満足する必要がある。xの値が0.45以下、またx+yの値が0.5未満の場合では、皮膜硬度の改善効果が十分ではなく、xの値が0.85以上またはx+yの値が1の場合、皮膜硬度の著しい低下を招き耐摩耗性に劣る。またyの値が0.35以上では、硬質皮膜内に残留する圧縮応力が過大になり、被覆直後に自己破壊を誘発するなどの基体への密着強度を著しく低下させる場合がある。非金属元素の組成は、(N1−α−β−γBαCβOγ)において、αは0.15以上では皮膜が脆化し、好ましいαの上限値は0.07である。硼素の添加は被加工物との耐溶着性と摩擦係数を低減し、潤滑性を向上させる効果がある。βは0.65以上で皮膜が著しく脆化する。炭素の含有量の上限値は、炭素を含有する層厚に依存する。炭素を含有する層厚が0.5μm未満であれば、βの上限値は0.5である。炭素の添加は硬質皮膜の硬度を高めると同時に、摩擦係数を低減し、潤滑性を向上させる効果がある。γは0を超えて大きく、0.65未満にすることが必要である。γが0の場合、潤滑性並びに皮膜硬度が充分ではなく耐摩耗性に乏しい。0.65以上でも皮膜硬度が低下する。好ましいγの値は、酸素を含有する層厚に依存するが、0.5μm未満であれば、γの上限値は0.3である。酸素の添加は、硬質皮膜内に残留する圧縮応力を低減し、基体と皮膜との密着性を向上させる作用に加え、皮膜が緻密化することによる高硬度化の改善に効果的である。更に、金属元素のAl、Cr、Siに対する非金属元素のN、B、C、Oの比は、化学量論的に(N、B、C、O)/(Al、Cr、Si)>1.0がより好ましい。
【0008】
本発明の硬質皮膜はθ−2θ法によるX線回折において測定される岩塩構造型の(200)面に回折強度を有し、その回折ピークの2θの半価幅が、0.5度以上、2.0度以下とした。その理由は、0.5未満の場合は結晶粒が粗大化し、皮膜硬度が充分ではなく、耐摩耗性に乏しく、2.0を超えると皮膜が脆化し、基体密着強度を著しく劣化させるためである。
【0009】
硬質皮膜はX線光電子分光分析にて、525eVから535eVの範囲に少なくともAl、Cr及び/又はSiと酸素との結合エネルギーを有することが必要である。これは、これら金属元素が酸素との結合を有することにより、皮膜が緻密化し高硬度化される。本発明皮膜の特徴である、Cr、Al及び/又はSiと酸素との結合状態を形成するには、最適な被覆条件と一定以上の酸素を硬質皮膜内に含有させることが必要である。
【0010】
被覆金型の被覆基体は、超硬合金又は合金工具鋼からなる。被覆基体が超硬合金又は合金工具鋼であれば、上記硬質皮膜内に発生する残留圧縮応力に対して、基体内部で緩和することが可能であり密着性に優れ、該硬質皮膜の優れた潤滑性、高硬度による耐摩耗性を充分に発揮することができる。これらの構成により、被覆金型の潤滑性、耐摩耗性を改善し、長寿命化を達成することが可能となる。
【0011】
被覆金型において、該硬質皮膜のθ−2θ法によるX線回折で測定される岩塩構造型の(111)面の回折強度をI(111)、(200)面の回折強度をI(200)とした時、0.3<I(200)/I(111)<12とすることが好ましい。皮膜の密着性は残留圧縮応力に強く依存し、この残留圧縮応力は被覆条件であるイオンエネルギーに強く依存している。即ち、イオンエネルギーが低い条件下では皮膜の残留圧縮応力は低い結果となる。逆に、イオンエネルギーが高い条件下では皮膜の残留圧縮応力は高い結果となる。ここで、イオンエネルギーを決定する要素は、具体的には被覆条件であるバイアス電圧、反応ガス圧力であり、これによって制御することができる。本発明は、残留圧縮応力が高い場合、X線回折において皮膜は(111)面に強く配向する傾向を示し、皮膜の硬度も、この高い残留圧縮応力の影響を受けて高硬度とする事が可能となる。一方、皮膜の密着性に着目すると、硬質皮膜内の残留圧縮応力を高くすると、皮膜の高硬度化を達成できるが、基体と皮膜界面近傍において、せん断応力が増大する方向に作用するため、密着性を損なうこととなり、好ましくない。従って、基体と皮膜との密着性及び皮膜硬度とのバランスを最適に制御することが重要となる。本発明では、0.3<I(200)/I(111)<12とすることにより、両者のバランスを最適に制御することを可能にした。
【0012】
ナノインデンテーション硬度測定法によるEは、28%≦E≦40%であり、皮膜の被覆条件であるバイアス電圧、反応ガス圧やその分圧比、成膜時の基体温度を最適に制御することにより達成でき好ましい。Eが40%を超える場合、硬質皮膜内に残留圧縮応力が高くなり過ぎて靭性に乏しくなり密着性を劣化させる場合がある。28%未満となる場合は強度不足による異常摩耗等により耐摩耗性が十分でない場合が確認された。さらに好ましいEの値は30%〜35%である。
【0013】
更に、該硬質皮膜の最表面から深さ方向に500nm以内の深さ領域で酸素濃度が最大となる場合、特に金型寿命に優れ好ましい。金型加工過程における硬質皮膜の酸化は硬質皮膜最表面からの酸素の拡散が支配的である。従って、硬質皮膜表面を酸素リッチにすることにより、結晶を緻密化し酸素の拡散経路となる基体と垂直方向成分の結晶粒界を減少させることができ、金型寿命が向上する。また、硬質皮膜最表面を酸素リッチにすることにより、潤滑性を改善する効果も確認され、好ましい。
【0014】
本発明に用いる硬質皮膜を被覆した被覆基体表面を、研磨面や研削面に沿った硬質皮膜表面の凸部や、被覆中に発生したマクロ粒子等の付着により凸部が形成される場合があるため、その凸部を機械的処理により平滑にすることにより、摩擦係数が低減し、潤滑性が優れ望ましい。
【0015】
被覆金型の基体が超硬合金である場合、Co及び/又はNiの含有量の和が重量%で0<(Co+Ni)<32、更にCr、Ta、Ti、Zrから選択される1種以上の金属及び又は炭化物、窒化物、酸化物もしくはその組合せから選択される金属及び/又は化合物を少なくとも1種以上含有し、硬さがHRA75以上、HRA95以下であることが好ましい。超硬合金中のCo及び/又はNiの含有量の和が0となる場合は、金型のチッピングが発生し易くなり、工具としての特性を充分に発揮できない。32.0重量%以上の場合、金型の塑性変形が大きくなる傾向にあり、異常摩耗が発生し易くなる。超硬合金の硬さがHRA75未満となる場合、過酷な使用環境下において金型材が塑性変形を伴った摩耗進行も確認され、強度が十分ではなく好ましくない。また、HRA95を超えて大きい場合は、金型材のチッピングや欠けを生じる場合があり、好ましくない。また、被覆金型の基体が合金工具鋼である場合、重量%でCrが0.3≦Cr≦15.0%、Cが0.2≦C≦2.3%、Siが0.6%以下、Mnが1.5%以下含有し、硬さがHRC50以上、HRC65以下であることが好ましい。合金工具鋼中のCrは、合金工具鋼の熱処理性を高め、硬さを充分に高めるため0.3≦Cr≦15.0%であることが好ましい。合金工具鋼中のCは、硬質皮膜が基体表面の炭化物よりエピタキシャルに成長する為、優れた密着性を有するのに効果がある。Cが0.2%未満ではその密着性向上の効果が得られず、またCの量が多きすぎると基体の靭性が低下する。そこで、0.2≦C≦0.6%であることが好ましい。合金工具鋼中のSi及びMnは脱酸剤として添加するが、Si及びMnの量があまりに多いと靭性が低下する。そこで、Siを重量%で1.2%以下、Mnを重量%で0.5%以下であることが好ましい。合金工具鋼の硬さは、HRC50以上、HRC65以下であることが好ましい。基体がHRC50未満となる場合、過酷な使用環境下において金型材が塑性変形を伴った摩耗進行も確認され、強度が十分ではなく好ましくない。また、HRC65を超えて大きくなる場合は、金型材のチッピングや欠けを生じる場合があり、好ましくない。
【0016】
本発明である該硬質皮膜は、アークイオンプレーティング法による被覆により、基体との密着性、潤滑特性に優れ、高硬度を有する極めて長寿命を有する被覆金型が得られる。
【0017】
該硬質皮膜の結晶粒のアスペクト比について、本発明の皮膜破断面の膜厚Tについて、膜厚Tの25%から50%の厚みであるT1に相当する上下膜厚方向の上端位置と下端位置とを求める。この時、上端位置と下端位置は、T/2に相当する基準位置より上下膜厚方向に略均等となる様に割り振る。各上下端位置における水平方向の上端側粒径Kと下端側粒径Lを求める。そこで、アスペクト比をT1/((K+L)/2)とすると、柱状結晶構造からなる該硬質皮膜の結晶粒のアスペクト比が、0.2から12である。アスペクト比が12を超えて大きくなると、結晶粒が膜厚方向に細長くなり、皮膜の靭性が低下し好ましくない。0.2未満では粒状結晶が増加する傾向となり、皮膜硬度が低下し好ましくない。更に、該硬質皮膜の残留圧縮応力が、0.5GPa以上、4.0GPa以下であることが、硬質皮膜に靭性を持たせ、皮膜硬度と基体密着性とのバランスに適した範囲となり、性能の改善に効果的である。
【0018】
更に、本発明の硬質皮膜において金属成分の10原子%未満を周期律表の4a、5a、6a族の金属成分の少なくとも1種以上で置き換えた場合、また本発明に関わる硬質皮膜を1層以上含有する複層構造においても、本発明である被覆金型の特性を補完することが可能となり好ましく、また、基体との密着性を更に改善する目的等で、最下層にTiN系皮膜、(TiAl)N系皮膜等を用いることも本発明の技術的範囲に含まれるものである。以下、実施例に基づき、本発明を具体的に説明する。
【0019】
【実施例】
(実施例1)
成膜には酸素を3200ppm含有した粉末法により作成した合金ターゲットを用いた。硬質皮膜内への炭素、酸素、硼素の添加には、反応ガスであるN2ガス、CH4ガス、C2H2ガス、Arガス、O2ガス、B3N3H6ガスから目的の皮膜が得られるものを1種以上、もしくはその組合せによるガスを選択し、真空装置内へ導入した。各反応ガスを真空装置内に導入後、全圧を12Pa、負バイアス電圧を−160V/正バイアス電圧を+40Vのパルスバイアス電圧を用い、そのときの周波数を20kHz、振幅をマイナス側に80%で行った。被覆温度は450℃、膜厚を約3.5μmとし、(Al0.65Cr0.35)(N0.800.080.100.02)からなる硬質皮膜を被覆し、本発明例1とした。被覆条件は上記被覆条件に限定されるものではない。皮膜組成は、電子プローブX線マイクロアナリシス及びオージェ電子分光法により決定した。硬質皮膜内の酸素との結合状態を解析するためのX線光電子分光分析は、PHI社製1600S型X線光電子分光分析装置を用い、X線源はMgKαを用い400Wとし、分析領域を直径0.4mmの円内部を分析した。十分に脱脂洗浄した後、真空装置内で5分間Arイオンガンを用いて表面をエッチングした後、ワイドスペクトルを測定し、更に30秒間エッチングした後、ナロースペクトルを測定した。ArイオンガンによるエッチングレートはSiO2換算で1.9nm/分であった。本発明例1のX線光電子分光分析結果を図1に示す。図1は結合エネルギーが530eV近傍のナロースペクトル示し、Cr−O及びAl−Oの結合の存在を示す。図2はCr−N及びCr−Oの結合の存在を示す。図3はAl−N及びAl−Oの結合の存在を示す。図4は、本発明例1のθ−2θ法によるX線回折結果を示す。
【0020】
(実施例2)
実施例1と同様に、(AlCr1−x−ySi)(N0.950.05)を成膜し、比較例2、x=0.20、y=0、比較例3、x=0.30、y=0、本発明例4、x=0.50、y=0、本発明例5、x=0.60、y=0、本発明例6、x=0.70、y=0、本発明例7、x=0.80、y=0及び(AlxCr1−x)N系の比較例8、x=90、y=0、従来例9、x=0.20、従来例10、x=0.50、従来例11、x=0.70、を製作し、ナノインデンテーション法による押込硬さを測定した。試験機は微小押込み硬さ試験機を用い、圧子はダイヤモンド製の対稜角115度の三角錐圧子を用い、最大荷重を49mN、荷重負荷ステップ4.9mN/sec、最大荷重時の保持時間は1秒とした。測定試料は、硬質皮膜断面を5度で傾斜させ、鏡面加工したものを用い、膜厚が2〜3μmになる位置において、10点測定しその平均値を求めた。本発明例4〜7のX線光電子分光分析結果から525eVから535eVの範囲に、Al、Cr及び/又はSiと酸素との結合エネルギーが存在することを確認した。図5より、本発明例4〜7、Al添加量、45〜85原子%の範囲で、酸素を含有しない従来例より著しい硬化が確認された。本発明の硬質皮膜は、酸素を含有し、且つ金属元素と酸素の結合を形成する事により、高硬度となり、40GPa以上の硬度を得ることが出来る。これによって密着性並びに耐摩耗性、潤滑性に優れた被覆金型が得られる。
【0021】
(実施例3)
超硬合金を基体に用い、表1に示す皮膜組成の、本発明例12〜20、比較例21〜24及び従来例10を製作した。被覆条件は実施例1に準ずる。表1に皮膜の組成等を示す。
【0022】
【表1】
Figure 2004314092
【0023】
表1の試料を用いて、実施例2同様に微小押込み硬さ、薄板の変形量より算出した残留圧縮応力、弾性回復率を測定した。表1より、押込み硬さは炭素、硼素を含有させることにより、更に高硬度となる。残留圧縮応力は、本発明例12〜20は低く、更に、図6に示す、本発明例12及び従来例10の荷重変位曲線より、本発明例12は、最大荷重時における最大変位量が大きいにもかかわらず、塑性変形量が小さい。すなわち、同一応力が硬質皮膜に作用した際、弾性回復する割合が大きく、被覆基体の塑性変形に追従し易く、また塑性変形し難いことを示すものである。この荷重変位曲線より弾性回復率Eを求めた。Eが大きい程、弾性回復特性に優れる。表1より、本発明例12〜20は弾性回復特性に優れ、硬質皮膜の剥離やクラックの低減が可能となり、密着性に優れた硬質皮膜を得ることができる。これは、皮膜硬度差よりも大きな効果がある。
【0024】
次に、表1の本発明例及び比較例を用いて圧痕試験による皮膜剥離状況を併記する。測定はロックウェル硬度計により1470Nの荷重で圧痕を形成し、光学顕微鏡により圧痕周辺部の剥離状況を観察した。本発明例12〜20は剥離が無く、優れた密着性を示した。これは本発明例が適正なE値の範囲内にあるためである。比較例21〜24、従来例10は被覆基体の塑性変形に追従することができず、圧痕周辺部に膜剥離が発生した。
【0025】
(実施例4)
表1に示す本発明例12から20、比較例21から24及び従来例10の硬質皮膜を超硬合金製パンチ加工金型および合金工具鋼製パンチ加工金型を用い金型表面を脱脂するためにアルカリ洗浄液中で6分間洗浄し、純水で中和洗浄した。各組成からなるターゲットを配置したアークイオンプレーティング装置内に工具をセットし、真空中450℃で1時間の脱ガス加熱工程を実施し、Arイオンによる被覆基体のクリーニング処理を行なった。実施例3と同じ方法でパンチ加工金型表面に表1に示す組成からなる硬質皮膜を2μmの厚さで被覆した。パンチ加工金型の先端形状はリードフレームの打ち抜き加工を想定して幅60μm、長さ10mmとした。表1に示す本発明例12から20、比較例21から24及び従来例10の被覆パンチ加工金型を用いて、下記条件の加工試験を行い超硬合金製パンチ加工金型及び合金工具鋼製パンチ加工金型がそれぞれ規定回数の百万回ショットおよび十万回ショット打ち抜けるかを評価した。本発明例はすべて皮膜の損傷が無く、超硬合金製パンチ加工金型は百万回ショット、合金工具鋼製パンチ加工金型が十万回ショット、それぞれ規定回数の加工が可能であった。
(加工条件)
加工方法:スリット打ち抜き加工
被削材:42Ni板厚150μm
【0026】
表1の結果から、本発明例12から20の超硬合金を基体としたパンチ加工金型は、従来例10と比較して加工不能に至るまでの加工回数が多く、規定回数の加工が可能であり、耐摩耗性に優れている。また本発明例18は本発明皮膜被覆後にダイヤモンド粒子を含有した粒子を工具すくい面に投射することにより、硬質皮膜表面を平滑にした本発明例を示すが、本発明例12と比較しても、より加工回数が延長し、規定回数の打ち抜き加工が可能であった。比較例21から24は何れも酸素結合が確認されず、更に、比較例21は被覆条件をバイアス電圧−25Vで被覆した硬質皮膜のX線回折による(200)面の半価幅が0.4となり、本発明例に比べて規定回数の打ち抜き加工が不可能であった。比較例22はAl含有量が20原子%の場合であり、弾性回復率は30%以下となり、耐摩耗性が十分ではない。比較例23はAl含有量が90原子%の場合であり、耐摩耗性に劣る。比較例24はAl含有量が43原子%の場合であるが耐摩耗性が十分ではなく、何れも規定回数の打ち抜き加工が不可能であった。
【0027】
更に表1に示したように、結晶粒径のアスペクト比について、比較例23、24が5を超えて大きくなっている。これらは、皮膜の(111)面配向が強い為、残留圧縮応力も高くなって皮膜の密着性が低下したことが短寿命となった原因と考えられる。更に比較例23はピーク強度比Q2/Q1の値が、0.1を超えて大きい値を示した。このことは、膜組成におけるAl含有量の多いため、Alの六方晶系化合物の含有割合が増加したためである。これによって、皮膜の硬度が低下し、十分な耐摩耗性が得られなかった。
【0028】
【発明の効果】
本願発明の被覆金型を適用することにより、過酷な金型加工、打ち抜き加工に用いても十分な耐摩耗性を有し、基体表面とその直上の硬質皮膜との密着性改善を図り、更に高硬度で潤滑特性に優れた被覆金型を得ることが出来た。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明例のCr−O及びAl−Oの結合エネルギーを示す。
【図2】図2は、本発明例のCr−N及びCr−Oの結合エネルギーを示す。
【図3】図3は、本発明例のAl−N及びAl−Oの結合エネルギーを示す。
【図4】図4は、本発明例のX線回折結果を示す。
【図5】図5は、本発明例と従来例のAl添加量と皮膜硬度の関係を示す。
【図6】図6は、本発明例12及び従来例10の荷重変位曲線を示す。

Claims (7)

  1. 被覆金型において、該被覆はアーク放電式イオンプレーティング法により被覆された硬質皮膜であり、該硬質皮膜は、(AlCr1−x−ySi)(N1−α−β−γαβγ)、但し、x、y、α、β、γは夫々原子比率を示し、0.45<x<0.85、0≦y<0.35、0.50≦x+y<1.0、0≦α<0.15、0≦β<0.65、0<γ<0.65、0<α+β+γ≦1.0で示される少なくとも1層以上からなり、θ−2θ法によるX線回折において測定される岩塩構造型の(200)面に回折強度を有し、その回折ピークの2θの半価幅が、0.5度以上、2.0度以下であり、X線光電子分光分析における525eVから535eVの範囲に、少なくともAl、Cr及び/又はSiと酸素との結合エネルギーを有し、該金型の基体は、超硬合金又は合金工具鋼からなることを特徴とする被覆金型。
  2. 請求項1記載の被覆金型において、該硬質皮膜のθ−2θ法によるX線回折で測定される岩塩構造型の(111)面の回折強度をI(111)、(200)面の回折強度をI(200)とした時、0.3<I(200)/I(111)<12であることを特徴とする被覆金型。
  3. 請求項1又は2記載の被覆金型において、該硬質皮膜はナノインデンテーションによる硬度測定により求められる弾性回復率Eが、28%≦E≦40%であることを特徴とする被覆金型。
  4. 請求項1乃至3いずれかに記載の被覆金型において、該硬質皮膜の最表面から膜厚深さ方向に500nm以内の深さ領域で酸素濃度が最大となることを特徴とする被覆金型。
  5. 請求項1乃至4いずれかに記載の被覆金型において、該硬質皮膜表面の凸部を機械的処理により平滑にしたことを特徴とする被覆金型。
  6. 請求項1記載の被覆金型において、該被覆基体は超硬合金であり、そのCo及び/又はNiの含有量の和が重量%で、0<(Co+Ni)<32であり、更にCr、Ta、Ti、Zrから選択される1種以上の金属及び/又は炭化物、窒化物、酸化物もしくはその組合せから選択される金属及び/又は化合物を少なくとも1種以上含有し、硬さがHRA75以上、HRA95以下であることを特徴とする被覆金型。
  7. 請求項1記載の被覆金型において、該被覆基体は合金工具鋼であり、重量%でCrが0.3≦Cr≦15.0%、Cが0.2≦C≦2.3%、Siが0.6%以下、Mnが1.5%以下含有し、硬さがHRC50以上、HRC65以下であることを特徴とする被覆金型。
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