しかしながら、前述の第1の従来例に示した低欠陥化技術では、窒化物半導体レーザー装置を作製する場合、幅が5μm程度のマスク上に形成された低結晶欠陥領域に、例えば幅2μmの導波路構造を形成する必要があるために、マスク合わせが困難である。また、マスク上に形成された低結晶欠陥領域を大きくするためには、マスク上に形成されるGaN層の膜厚を大きくする必要があるが、この場合は、熱膨張係数の差によってGaN層にクラックが形成される。従って、例えば半導体レーザー装置では、特性の再現性が悪い、又は歩留まりが低いといった問題がある。さらに、低結晶欠陥化を実現させる目的で、前述のSiO2 膜よりなるマスクを複数回形成することも行なわれるが、フォトリソグラフィ工程を用いたデバイス作製のコストが高くなるという問題がある。
一方、第2の従来例における選択酸化技術によると、GaN層の表面は荒れているので、表面を酸化した後の工程において以下のような問題がある。すなわち、例えばフォトリソグラフィ工程において再現性が良くないという問題、又は荒れた表面の上に配線金属を形成した場合には断線の恐れがあるという問題等がある。また、選択酸化技術を用いて形成した酸化膜を金属酸化膜(Metal Oxide Semiconductor、以下MOSという)半導体電界効果トランジスタに適用した場合には、ゲート酸化膜の膜厚が電極の下でばらつくので、デバイス特性の再現性が悪いという問題がある。
そこで、本発明は、前述の問題を一挙に解決することを可能にするものであり、具体的には、酸素化合物雰囲気下等の所定の条件下で窒化物半導体を酸化することにより、例えばSiO2 膜等よりなるマスクを形成することなく、結晶欠陥が低減された半導体装置及びその製造方法を提供すると共に、表面が平坦化された窒化物半導体を備えた半導体装置及びその製造方法を提供することである。
前記の課題を解決するために、本発明に係る第1の半導体装置は、基板と、基板の上に形成された第1のIII族窒化物半導体層と、第1のIII族窒化物半導体層に存在する欠陥の上部近傍に形成された第1の酸化層と、第1のIII族窒化物半導体層及び第1の酸化層の上に形成された、能動層を含む第2のIII族窒化物半導体層とを備えている。
第1の半導体装置によると、第1のIII族窒化物半導体層の表面にランダムに現れる結晶欠陥上部を覆うように第1の酸化層が形成され、第1の酸化層の上に横方向成長(ELO)による低結晶欠陥領域を形成することができる。すなわち、ランダムに現れる欠陥の上部の領域に第1の酸化層が選択的に形成されるので、横方向成長のための第1の酸化層を、マスクを形成することなく形成することができると共に、ランダムに現れる結晶欠陥上部に形成された第1の酸化層の上における領域は低結晶欠陥領域となるので、従来例のようにマスク合わせをする必要がない。
本発明に係る第1の半導体装置において、第1の酸化層は、酸素化合物雰囲気下で、欠陥の上部近傍に存在している第1のIII族窒化物半導体層が酸化されてなる層であることが好ましい。
このようにすると、第1の酸化層の表面における平坦性が向上するので、後にその上に形成されるデバイス特性が向上する。
本発明に係る第1の半導体装置において、酸素化合物は、水蒸気であることが好ましい。
このようにすると、第1の酸化層の表面における平坦性が一層向上する。
本発明に係る第1の半導体装置において、前記第2のIII族窒化物半導体層の下部には、第1のIII族窒化物半導体層と第1の酸化層とが交互に重なるように形成された、複数の第1のIII族窒化物半導体層と複数の第1の酸化層とを備え、複数の第1のIII族窒化物半導体層の各々に存在する欠陥の密度は、各々に存在する欠陥の位置が基板から離れるにつれて減少していることが好ましい。
このように、第1のIII族窒化物半導体層と第1の酸化層との構造を繰り返して結晶欠陥密度を低減させることにより、その上に形成される第2のIII族窒化物半導体層における結晶欠陥密度をさらに低減することができる。このため、半導体装置の特性をより一層向上させることができる。
本発明に係る第1の半導体装置において、能動層の近傍に、第2のIII族窒化物半導体層が水蒸気雰囲気下で酸化されてなる第2の酸化層をさらに備えていることが好ましい。
このようにすると、結晶欠陥密度が低減された能動層の近傍に、表面の平坦性に優れた第2の酸化層が形成されているので、より優れた特性を有するデバイスを得ることができる。
本発明に係る第1の半導体装置において、第2の酸化層は、能動層の周囲を覆うように形成された、能動層を流れる電流を狭窄する電流ブロック層であることが好ましい。
本発明に係る第1の半導体装置において、第2の酸化層は、能動層の上に形成された、電界効果トランジスタのゲート酸化膜であることが好ましい。
本発明に係る第1の半導体装置において、基板は、サファイア、スピネル、GaAs、Si、SiC又はGaNよりなることが好ましい。
また、前記の課題を解決するために、本発明に係る第2の半導体装置は、基板となる第1のIII族窒化物半導体層と、第1のIII族窒化物半導体層に存在する欠陥の上部近傍に形成された第1の酸化層と、第1のIII族窒化物半導体層及び第1の酸化層の上に形成された、能動層を含む第2のIII族窒化物半導体層とを備えていることを特徴とする。
第2半導体装置によると、基板となる第1のIII族窒化物半導体層の表面にランダムに現れる結晶欠陥上部を覆うように第1の酸化層が形成され、第1の酸化層の上に横方向成長(ELO)による低結晶欠陥領域を形成することができる。すなわち、ランダムに現れる欠陥の上部の領域に第1の酸化層が選択的に形成されるので、マスクを形成することなく横方向成長のための第1の酸化層を形成することができると共に、ランダムに現れる結晶欠陥上部に形成された第1の酸化層の上の領域は低結晶欠陥領域となるので、従来例のようにマスク合わせをする必要がない。さらに、第1のIII族窒化物半導体層よりなる基板は結晶欠陥密度が低いので、第1の酸化層の表面における平坦性は、前記第1の半導体装置における第1の酸化層の表面よりも一層向上する。
本発明に係る第2の半導体装置において、第1の酸化層は、酸素化合物雰囲気下で、欠陥の上部近傍に存在する第1のIII族窒化物半導体層が酸化されてなる層であることが好ましい。
このようにすると、第1の酸化層の表面における平坦性が向上するので、後にその上に形成されるデバイス特性が向上する。
本発明に係る第2の半導体装置において、酸素化合物は、水蒸気であることが好ましい。
このようにすると、第1の酸化層の表面における平坦性が一層向上する。
本発明に係る第2の半導体装置において、能動層は、半導体レーザー装置を構成する活性層又は電界効果トランジスタのチャンネル層であることが好ましい。
本発明に係る第3の半導体装置は、能動層を含むIII族窒化物半導体層と、III族窒化物半導体層に存在する欠陥の上部近傍に形成された酸化層とを備えていることを特徴とする。
第3の半導体装置によると、III族窒化物半導体層に存在する欠陥近傍に酸化層が形成されることにより、表面の凸凹が低減される。このため、その上に形成されるデバイス特性が向上する。
第3の半導体装置において、能動層は、半導体レーザー装置を構成する活性層又は電界効果トランジスタのチャンネル層であることが好ましい。
また、前記の課題を解決するために、本発明に係る半導体装置の製造方法は、第1のIII族窒化物半導体層を形成する工程と、第1のIII族窒化物半導体層に存在する欠陥の上部近傍に第1の酸化層を形成する工程とを備えたことを特徴とする。
半導体装置の製造方法によると、第1のIII族窒化物半導体層の表面にランダムに現れる結晶欠陥の上部に第1の酸化層を形成するので、第1の酸化層の上に横方向成長(ELO)による低結晶欠陥領域を形成することが可能になる。すなわち、ランダムに現れる欠陥の上部の領域に第1の酸化層を選択的に形成するので、マスクを形成することなく横方向成長のための第1の酸化層を形成することができると共に、ランダムに現れる結晶欠陥上部に形成された第1の酸化層の上における領域に低結晶欠陥領域を形成できるので、従来例のようにマスク合わせをする必要がない。
本発明に係る半導体装置の製造方法において、第1の酸化層を形成する工程の後に、第1のIII族窒化物半導体層及び第1の酸化層の上に、能動層を含む第2のIII族窒化物半導体層を形成する工程をさらに備えることが好ましい。
このようにすると、第1の酸化層が選択的成長を促進させるマスクの役割を果たすため、第1の酸化層の下側に存在する結晶欠陥が第1の酸化層の上側に伝播することを抑制するので、第1の酸化層の上における領域には横方向成長(ELO)によって低欠陥領域が形成されるので、半導体装置の特性が向上する。
本発明に係る半導体装置の製造方法において、第1の酸化層を形成する工程は、酸素化合物雰囲気下で、欠陥の上部近傍に存在する第1のIII族窒化物半導体層を酸化する工程を含むことが好ましい。
このようにすると、第1の酸化層の表面における平坦性が向上するので、後にその上に形成されるデバイスの特性が向上する。
本発明に係る半導体装置の製造方法において、酸素化合物は、水蒸気であることが好ましい。
このようにすると、第1の酸化層の表面における平坦性が一層向上するので、後にその上に形成されるデバイスの特性が一層向上する。
本発明に係る半導体装置の製造方法において、第1の酸化層の膜厚は、欠陥が存在する位置に近い位置では厚くなると共に欠陥が存在する位置から離れた位置では薄くなるように形成されていることが好ましい。
このようにすると、第1の酸化層が選択成長を促進させるマスクの役割をより果たすので、第1の酸化層の下側に存在する結晶欠陥が第1の酸化層の上側に伝播することを一層抑制することができる。
本発明に係る半導体装置の製造方法において、第1のIII族窒化物半導体層を形成する工程と第1の酸化層を形成する工程とを交互に繰り返すことが好ましい。
このように、第1のIII族窒化物半導体層と第1の酸化層との構造を繰り返して結晶欠陥密度を減少させることにより、その上に形成される第2のIII族窒化物半導体層における結晶欠陥密度をさらに低減することができる。このため、半導体装置の特性をより一層向上させることができる。
本発明に係る半導体装置の製造方法において、第2のIII族窒化物半導体層を形成する工程の後に、第2のIII族窒化物半導体層における能動層の近傍に、第2のIII族窒化物半導体層を酸化してなる第2の酸化層を形成する工程をさらに備えることが好ましい。
このようにすると、結晶欠陥密度が低減された能動層の近傍に、表面の平坦性に優れた第2の酸化層が形成されているので、より優れた特性を有するデバイスを実現できる。
本発明に係る半導体装置の製造方法において、第2の酸化層は、ストライプ状に形成されていることが好ましい。
本発明に係る半導体装置の製造方法において、第1の酸化層を形成する工程と第2のIII族窒化物半導体層を形成する工程との間に、活性ガスを含んでなる雰囲気下における熱処理により、第1の酸化層の一部を除去して第1のIII族窒化物半導体層の上面を露出させる工程をさらに備えることが好ましい。
このように、第1のIII族窒化物半導体層の上面を露出させることにより、第1の酸化層の上において横方向成長を確実に進行させることができる。
本発明に係る半導体装置の製造方法において、活性ガスは、アンモニアであることが好ましい。
本発明に係る半導体装置の製造方法において、第2のIII族窒化物半導体層を形成する工程の後に、第1のIII族窒化物半導体層を除去する工程をさらに備えることが好ましい。
本発明の半導体装置及びその製造方法によると、第1のIII族窒化物半導体層の表面にランダムに現れる結晶欠陥上部を覆うように第1の酸化層が形成され、第1の酸化層の上に横方向成長(ELO)による低結晶欠陥領域を形成することができる。すなわち、ランダムに現れる欠陥の上部の領域に第1の酸化層が選択的に形成されるので、横方向成長のための第1の酸化層を、マスクを形成することなく形成することができると共に、ランダムに現れる結晶欠陥上部に形成された第1の酸化層の上における領域は低結晶欠陥領域となるので、従来例のようにマスク合わせをする必要がない。
以下、本発明の各実施形態について図面を参照しながら説明する。
(第1の実施形態)
<半導体装置>
本発明の第1の実施形態に係る半導体装置及びその製造方法について、図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の構造を示す断面図であり、具体的には、一例として半導体レーザー装置の断面図を示している。
図1に示すように、サファイア基板101上には、MOCVD法により低温成長したGaNよりなるバッファ層102が形成されている。バッファ層102の上には、後述する第2のGaN層105の下地層となる第1のGaN層103がMOCVD法により形成されている。第1のGaN層103における格子欠陥などの結晶欠陥密度は、1×109 cm-2以上である。
第1のGaN層103の上には、第1の酸化層104が形成されている。具体的には、第1のGaN層103に存在している結晶欠陥の上部近傍に第1の酸化層104が形成されている。また、第1の酸化層104の膜厚は、第1のGaN層103の結晶欠陥の上部に近い位置では厚く、結晶欠陥の上部から離れるに従って薄くなっている。なお、第1の酸化層104が第1のGaN層103に存在している結晶欠陥の上部近傍に形成される理由は後述の半導体装置の製造方法において説明する。
第1の酸化層104の上には、MOCVD法によって第1のGaN層103から再成長した第2のGaN層105が形成されている。ここで、第2のGaN層105の結晶欠陥密度は、3×106 cm-2程度であった。このように、第2のGaN層105の結晶欠陥密度が減少しているのは、第1の酸化層104が選択的成長を促進させるマスクの役割を果たすので、第1の酸化層104の上に形成される第2のGaN層105のうち第1の酸化層104の上に位置する領域は、横方向成長によって低結晶欠陥領域となって、第1のGaN層103から結晶欠陥が伝播することを抑制できる。
なお、図1において、第1のGaN層103、第2のGaN層105、及び後述するn型GaNクラッド層106等の層内に伸びている縦線は、格子欠陥等の結晶欠陥を示している点は前述した通りであるが、煩雑さを避けるため符号は付していない。なお、以降で用いる図面についても同様である。
第2のGaN層105の上には、SiがドープされたGaNよりなるn型クラッド層106が形成されており、該n型クラッド層106の上には、AlGaN、GaN及びInGaNの多層膜よりなる活性層107が形成されている。活性層107の上には、MgがドープされたGaNよりなるp型クラッド層108が形成されており、該p型クラッド層108の上には、幅が1〜2μmであるGaNよりなるp型コンタクト層109が形成されており、該p型コンタクト層109を挟み込むようにして、厚さが300nmであると共に開口を有するSiO2 膜よりなる絶縁膜110が形成されている。絶縁膜110の上及び該絶縁膜110の開口に露出したp型コンタクト層109の上には、オーミック性を有するp型電極111が形成されており、該p型電極111の上にはp型パッド112が形成されている。また、n型クラッド層106の上には、n型電極113が形成されている。このように、半導体レーザー装置は構成されている。
以上のように、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置によると、第1のGaN層103の表面にランダムに現れる結晶欠陥の上部を覆うように第1の酸化層104が形成されており、第2のGaN層105には横方向成長(ELO)による低結晶欠陥領域が形成されている。すなわち、ランダムに現れる結晶欠陥の上部の領域に第1の酸化層104が選択的に形成されるので、横方向成長のための第1の酸化層104を、マスク形成を要することなく形成することができると共に、ランダムに現れる結晶欠陥上部に形成された第1の酸化層104の上の領域は結晶欠陥密度が低減されるので、従来例のようなマスク合わせをする必要がない。
<半導体装置の製造方法>
次に、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図2(a)〜(d)を参照しながら説明する。
図2(a)〜(d)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図であり、具体的には、前述の半導体レーザー装置の製造方法を示す工程断面図を示している。
図2(a)に示すように、サファイア基板101上に、MOCVD法により、厚さが40nmであるGaNよりなるバッファ層102を成長させると共に、この成長をMOCVD法により継続させることにより、厚さが0.2μmである第1のGaN層103を形成する。
次に、図2(b)に示すように、酸素化合物雰囲気、例えば窒素及び水蒸気よりなる雰囲気中において、酸化温度を1000℃まで昇温させて、90分間、この条件を保持することにより、第1のGaN層103が酸化されて、第1のGaN層103に存在している結晶欠陥の上部近傍に第1の酸化層104が形成される。第1の酸化層104の膜厚は、第1のGaN層103に存在する結晶欠陥が表面付近にまで達していない領域においては約45nmであり、第1のGaN層103に存在する結晶欠陥が表面付近にまで達している箇所においては約250nmである。このように、第1の酸化層104は、第1のGaN層103における結晶欠陥の上部近傍においては厚く形成されると共に、結晶欠陥の上部近傍から離れるにつれて薄く形成される。
次に、図示していないが、例えばNH3 又はHCl等の活性ガス中において、例えば900℃で加熱することにより、第1の酸化層104の一部を除去して、第1のGaN層103の表面を露出させる。
次に、図2(c)に示すように、MOCVD法により、膜厚が1μmとなるように、第1のGaN層103を再成長させて第2のGaN層105を形成する。このとき、第1の酸化層104における膜厚が厚い部分(第1のGaN層103の表面付近にまで結晶欠陥が達している領域)では、その下に位置する第1のGaN層103から直接的に成長することはないが、第1の酸化層104の膜厚が薄い部分又は第1のGaN層103が露出された部分(第1のGaN層103の表面付近にまで結晶欠陥が達してない領域)では、これらの部分の下に位置する第1のGaN層103が成長し、第1の酸化層104の上を覆うように横方向に成長する。このため、第1の酸化層104の上の領域においては結晶欠陥が低減される。
次に、図2(d)に示すように、第2のGaN層105の上に、SiがドープされたGaN層よりなるn型クラッド層106を形成した後、該n型クラッド層106の上に、AlGaN、GaN及びInGaNの多層膜よりなる活性層107を形成する。次に、活性層107の上に、MgがドープされたGaNよりなるp型クラッド層108を形成した後、該p型クラッド層108の上に、幅が1〜2μmであるGaNよりなるp型コンタクト層109を形成する。次に、p型クラッド層108の上に、p型コンタクト層109を挟むようにして、厚さが300nmであるSiO2 膜よりなり、開口を有する絶縁膜110を形成する。絶縁膜110の上及び該絶縁膜110の開口に露出したp型コンタクト層109の上に、オーミック性を有するp型電極111及びp型パッド112を順に形成する。また、n型クラッド層106の上に、オーミック性を有するn型電極113を形成する。このようにして、半導体レーザー装置を製造する。
以上のように、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法によると、第1のGaN層103の表面にランダムに現れる結晶欠陥の上部を覆うように第1の酸化層104を形成することにより、第1の酸化層104の上の領域では第2のGaN層105が横方向成長(ELO)によって低結晶欠陥領域となる。すなわち、ランダムに現れる結晶欠陥の上部の領域に第1の酸化層104を選択的に形成するので、横方向成長のための第1の酸化層104を、マスク形成を要することなく形成することができると共に、ランダムに現れる結晶欠陥上部に形成された第1の酸化層104の上の領域は低結晶欠陥領域となるので、従来例のようなマスク合わせをする必要がない。
ここで、第1の酸化層104の酸化方法として、例えば水蒸気酸化を行なう装置の一例について、図3を参照しながら説明する。なお、図3は、水蒸気酸化を行なう装置の断面図を示している。
図3に示すように、フラスコ301の内部には、超純水が入っており、ヒータ302によって加熱されている。窒素ライン303から窒素をバブリングすることにより、窒素と水蒸気との混合気体を酸化炉304に供給することができる。試料を酸化炉304に導入し、1000℃まで加熱処理することにより、前述した図1又は図2(b)等に示す第1の酸化層104を形成できる。
ここで、酸素雰囲気下で酸化を行なう場合と水蒸気雰囲気下で酸化を行なう場合との比較について、図4(a)及び(b)並びに図5を参照しながら説明する。
図4(a)及び(b)は、サファイア基板上にバッファ層を介して形成されたGaN層に対して、酸素雰囲気下で酸化を行なった場合の酸化層(Ga2 O3 )の断面におけるSEM像を示すと共に((a))、水蒸気雰囲気下で酸化を行なった場合の酸化層(Ga2 O3 )の断面におけるSEM像を示している((b))。なお、ここで、SEM像とは走査電子顕微鏡(SEM)により写し出された写真のことである。
図4(a)及び(b)から明らかなように、図4(a)では、酸素による熱酸化後の酸化層の表面は荒れている。一方、図4(b)では、水蒸気による熱酸化後の酸化層については、GaN層において結晶欠陥が表面付近に達している部分には、酸化層が厚く形成されており、GaN層において結晶欠陥が存在していない部分には、均一かつ平坦な酸化層が形成されている。
図5は、酸素又は水蒸気を用いて900℃で酸化を行った場合について、酸化層の膜厚(nm)と表面ラフネス(nm)との関係を示している。
図5から明らかなように、酸素を用いて酸化した場合には、酸化層の表面ラフネスは、酸化層の膜厚の増加と共に増大するが、水蒸気を用いて酸化した場合には、酸化層の表面ラフネスは、酸素を用いて酸化した場合の酸化層に比べて増大は小さい。このように、水蒸気を用いて酸化した場合は、表面ラフネスの均一性に優れた酸化膜を形成することができる。このため、水蒸気を用いて酸化した酸化層を用いた場合には、優れた素子特性の実現が可能になる。
すなわち、水蒸気を用いて酸化された平坦性に優れた酸化層の上にデバイスを形成すれば、デバイス特性が向上する。例えば、水蒸気を用いて酸化した酸化層を、電界効果トランジスタのゲート酸化膜に適用する場合には、再現性良くトランジスタ特性を得ることが可能となる。さらに、水蒸気を用いて酸化した酸化層を、トランジスタの素子分離に適用する場合には、この酸化層の上に配線金属を形成した際に断線がない集積回路を作製することが可能となる。
なお、前記本実施形態においては、第1の酸化層104が第1のGaN層103の上に部分的に形成されていない部分があってもかまわない。この場合、第1のGaN層103と第2のGaN層105とが接する部分が存在することになる。
また、第1のGaN層103に存在している結晶欠陥の上部近傍に形成される膜厚が厚い部分と、隣り合う別の結晶欠陥の上部近傍に形成される膜厚が厚い部分とが互いに接してひとつの酸化層領域を形成するように、結晶欠陥の上部近傍には第1の酸化層104が厚く形成されている。これにより、この上に、第2のGaN層105が再成長させると、第1の酸化層104が選択的成長を促進させるマスクの役割を果たすので、前述のように、第1のGaN層に結晶欠陥が無い領域の上部であって第1の酸化層104の膜厚が薄い領域又は第1の酸化層104が存在していない領域からGaNが成長するので、第1の酸化層104の上の領域では、成長してきたGaNが横方向に成長する。このため、第1のGaN層103の結晶欠陥密度よりも低い結晶欠陥密度を有する第2のGaN層105を得ることができる。
なお、第1のGaN層103を再成長させて第2のGaN層105を形成する前に、第1の酸化層104の薄い部分を、例えばNH3 ガス又はHClガス等の活性ガス中でエッチングにより除去した後に、第1のGaN層103を再成長させて第2のGaN層105を形成してもよい。
なお、本実施形態においては、下地となる窒化物半導体層としてGaN(GaN層103)を用いているが、混晶であるAlGaN又はInGaNを下地となる窒化物半導体として用いてもよい。すなわち、GaN以外に、Alx Ga1-xN(0≦x≦1)又はInxGa1-xN(0≦x≦1)で表されるような混晶を用いてもよいし、AlGaInNの四元混晶を用いてもよい。また、第1の酸化層104の上に成長させる窒化物半導体層についても、Alx Ga1-xN(0≦x≦1)又はInxGa1-xN(0≦x≦1)で表されるような混晶を用いてもよい。これらの点については、以下に示す変形例及び後述する第2の実施形態についても同様である。
また、第1の酸化層104のように酸化されてマスクとなり得る材料であれば、別の材料を用いてもよい。また、再成長により形成される第2のGaN層105のような窒化物半導体についても、AlとGaとの混晶、又はInとGaとの混晶であってもよい。
また、下地となる基板としてサファイア基板101を例に示したが、スピネル基板、GaAs基板、Si基板、又はSiC基板を用いることもできる。GaAs基板、Si基板、又はSiC基板は導電性を有するので、これらの基板を用いれば、これらの基板の裏面に電極を設けることができる。
また、第1のGaN層103上に第1の酸化層104のようなマスクが形成される材料であれば、第1のGaN層103とは異なる材料を用いてもよく、GaNの他に、AlGaN又はInGaNを用いてもよい。
また、第1の酸化層104を部分的に除去する工程において、NH3 ガス又はHClガス等の活性ガス中において熱処理を行なう方法を一例として説明したが、第1の酸化層104を部分的に除去できる方法であれば、例えばBCl3 ガス等を用いたドライエッチング、又はKOHを用いたウエットエッチングを用いて除去してもよい。また、第1の酸化層104を研磨によって部分的に除去することも可能である。
以下に、本発明の第1の実施形態に係る変形例について、図6〜図8を参照しながら説明する。
<第1の変形例>
図6は、第1の実施形態における第1の変形例に係る半導体装置(半導体レーザー装置)の断面図を示している。なお、図1に示した半導体装置の構成要素と同様の部分には同一の符号を付しており、以下ではその説明は繰り返さない。
図6に示す半導体装置が、図1に示した半導体装置と異なる点は、以下の通りである。
すなわち、サファイア基板101上にバッファ層を介さずに第1のGaN層602を直接成長させている点である。さらに、第1のGaN層602の上に形成された第1の酸化層603と第2のGaN層606との間には、GaN層604と酸化層605とが形成されている。なお、酸化層605は、第1の酸化層603と同様に、酸素化合物雰囲気下(ここでは水蒸気雰囲気下)で酸化されて形成された層であり、GaN層604に存在している結晶欠陥の上部近傍に形成されている。このように、結晶欠陥密度が低減されたGaN層604の上にさらに酸化層605を形成するので、酸化層605の上に形成される第2のGaN層606の結晶欠陥密度はさらに低減される。このように、GaN層と酸化層とを交互に複数層繰り返して形成することにより、結晶欠陥密度を、基板から離れた領域になればなるほど減少させることができる。
なお、図6では、GaN層と酸化層との積層構造を2層繰り返した構造にしているが、多層繰り返された構造であってもよい。
<第2の変形例>
図7は、第1の実施形態における第2の変形例に係る半導体装置(半導体レーザー装置)の断面図を示している。なお、図1に示した半導体装置の構成要素と同様の部分には同一の符号を付しており、以下ではその説明は繰り返さない。
図7に示す半導体装置が、図1に示した半導体装置と異なる点は、以下の通りである。
すなわち、GaNよりなるp型コンタクト層109の両側に絶縁膜710(第2の酸化層に対応する)が形成されている点である。具体的には、図7に示す半導体装置は、酸素化合物雰囲気下(ここでは水蒸気雰囲気下)で、窒化物半導体(ここではGaN)を酸化することにより形成された絶縁膜710を備えた点であり、この絶縁膜710は半導体レーザー装置における導波路及び電流狭窄層を構成している。このように、水蒸気酸化によって形成された絶縁膜710の表面は平坦化されているので、その上に形成されるデバイス特性を向上させることができる。
<第3の変形例>
図8は、第1の実施形態における第3の変形例に係る半導体装置(ヘテロ電界効果トランジスタ装置)の断面図を示している。なお、図1に示した半導体装置の構成要素と同様の部分には同一の符号を付しており、以下ではその説明は繰り返さない。
前述の第2の変形例に係る半導体装置は、半導体レーザー装置を例にとって説明したが、図8に示すように、ヘテロ電界効果トランジスタ(Hetero Field Effect Transistor、HFET)装置であっても、活性領域を低結晶欠陥の基板上に形成することにより、低リーク電流及び高電界動作が可能としたものである。
図8に示すように、サファイア基板801上には、MOCVD法により低温成長したGaNよりなるバッファ層802が形成されいる。バッファ層802の上には、後述する第2のGaN層805の下地層となる第1のGaN層803がMOCVD法により形成されている。第1のGaN層803の上には、第1の酸化層804が形成されている。ここまでは、前述の図1を用いた説明と同様である。
第1の酸化層804の上には、MOCVD法によって第1のGaN層から再成長したアンドープのGaNよりなる第2のGaN層805が形成されている。第2のGaN層805の上には、アンドープのGaNよりなる第3のGaN層806、及びGaNよりなるn型チャンネル層807が形成されている。第3のGaN層806及びn型チャンネル層807の側方には、第3のGaN層806及びn型チャンネル層807を熱酸化(ここでは、例えば水蒸気雰囲気下での酸化が好ましい)して得られる絶縁層808が形成されている。さらに、n型チャンネル層807の上には、ソース電極809、ゲート電極810、及びドレイン電極811が形成されている。なお、絶縁層808は、素子分離の役割も果たしている。
このようにすると、前述の第1の半導体装置及びその製造方法に示した効果と同様の効果が得られることに加えて、熱酸化によって表面の平坦性に優れた絶縁膜808が形成されているので、後の工程で絶縁膜808の上に形成されるデバイス特性が向上する。
なお、第3の変形例において、n型チャンネル層807の上に、層間絶縁膜を介してゲート電極810を形成してもよい。この場合、層間絶縁膜として例えばGaN層を酸化させて得られた絶縁膜(すなわちゲート酸化膜)、好ましくはGaN層に対し水蒸気酸化を施して得られた絶縁膜を用いてもよい。
なお、前述の電界効果トランジスタとして、第3のGaN層806及びn型チャンネル層807の代わりに、各々、GaNよりなるn型チャンネル層、AlGaNよりなるn型障壁層を用いた電界効果トランジスタ、すなわちヘテロ電界効果トランジスタ(HFET)装置であっても、前述と同様の効果を得ることができる。
また、前述の電界効果トランジスタの代わりに、窒化物半導体よりなるバイポーラトランジスタ又はヘテロ接合バイポーラトランジスタを用いた場合であっても、前述と同様の効果を得ることができる。
(第2の実施形態)
以下に、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置について、図9を参照しながら説明する。
図9は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の断面図であって、具体的には、窒化物半導体レーザー装置の断面図を一例として示している。
図9に示すように、GaN基板901の上には、第1の酸化層902が形成されている。具体的には、GaN基板901に存在している結晶欠陥の上部近傍に第1の酸化層902が形成されている。また、第1の酸化層902の膜厚は、GaN基板901に存在している結晶欠陥の上部に近い位置では厚く、結晶欠陥の上部から離れるに従って薄くなっている。第1の酸化層902の上には、GaNよりなる第1のGaN層903が形成されている。このように、第1の酸化層902が形成されていることにより、前述の第1の実施形態で述べたように、第1のGaN層903の結晶欠陥密度は、GaN基板901の結晶欠陥密度よりも低減される。
第1のGaN層903の上には、第2の酸化層904が形成されている。具体的には、第1のGaN層903に存在している結晶欠陥の上部近傍に第2の酸化層904が形成されている。また、第2の酸化層904の膜厚は、第1のGaN層903に存在している結晶欠陥の上部に近い位置では厚く、結晶欠陥の上部から離れるに従って薄くなている。第2の酸化層904の上には、GaNよりなる第2のGaN層905が形成されている。このように、結晶欠陥密度が低減された第1のGaN層903の上には、さらに第2の酸化層904が形成されていることにより、前述の第1の実施形態における第1の変形例で述べたように、第2のGaN層905の結晶欠陥密度は、第1のGaN層903の結晶欠陥密度よりも低減される。
このように、GaN層の上に酸化層を形成する構造を繰り返すことにより、GaN基板901から離れるに従って、結晶欠陥密度が低減された半導体装置を実現することができる。なお、図9では、GaN層の上に酸化層が形成される構造が2層繰り返された構造が採用されているが、多層繰り返される構造であってもよいし、1層のみの場合であってもよい。
第2のGaN層905の上には、SiがドープされたGaNよりなるn型クラッド層906が形成されており、該n型クラッド層906の上には、AlGaN、GaN及びInGaNの多層膜よりなる活性層907が形成されている。活性層907の上には、MgがドープされたGaNよりなるp型クラッド層908が形成されており、該p型クラッド層908の上には、幅が1〜2μmであるGaNよりなるp型コンタクト層909が形成されており、該p型コンタクト層909を挟み込むようにして、厚さが300nmであると共に開口を有するSiO2 膜よりなる絶縁膜910が形成されている。絶縁膜910の上及び該絶縁膜910の開口に露出したp型コンタクト層909の上には、オーミック性を有するp型電極911及びp型パッド912が形成されている。また、n型クラッド層906の上には、n型電極913が形成されている。
以上のように、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法によると、GaN基板901の表面にランダムに現れる結晶欠陥の上部を覆うように第1の酸化層902を形成することにより、第1の酸化層902の上に位置する第2のGaN層903は横方向成長(ELO)による低結晶欠陥領域が形成される。すなわち、ランダムに現れる結晶欠陥の上部の領域に第1の酸化層902が選択的に形成されるので、横方向成長のための第1の酸化層902を、マスク形成を要することなく形成することができると共に、ランダムに現れる結晶欠陥上部に形成された第1の酸化層902の上の領域における結晶欠陥は低減されているので、従来例のようなマスク合わせをする必要がない。また、上述のように、GaN層の上に酸化層を形成する構造を2層にしているので、結晶欠陥領域がより低減された半導体装置を実現できる。さらに、第1の実施形態におけるサファイア基板101と比べて、結晶欠陥が少ないGaN基板901を用いることにより、その上に形成されるデバイスの特性をさらに向上させることができる。
ここで、GaN基板の上に形成される酸化層と、サファイア基板の上に形成される酸化層との比較について、図10(a)及び(b)を参照しながら説明する。
図10(a)及び(b)は、GaN層が酸化された後の断面図を示している。
図10(a)に示すように、第1の実施形態と同様に、サファイア基板1001上には、GaNよりなるバッファ層1002を介して、第1のGaN層1003が形成されている。ここで、第1のGaN層1003の結晶欠陥密度は、1×109 cm-2程度である。第1のGaN層1003の表面には、該第1のGaN層1003が酸化されることによって形成されたGa2O3膜よりなる酸化層1004が形成されている。ここで、酸化層1004の結晶欠陥密度は、3×106 cm-2程度である。酸化層1004は、第1のGaN層1003に存在している結晶欠陥が第1のGaN層1003の表面に達している部分では厚く形成されて盛り上がるので、酸化層の表面には結晶欠陥の数と同程度の凹凸が形成される。
一方、図10(b)に示すように、第2の実施形態と同様に、GaN基板1021上には、酸化層1022が形成されている。GaN基板1021における基板表面における結晶欠陥密度は、1×107 cm-2程度である。このように、GaN基板1021における基板表面における結晶欠陥密度は、前記サファイア基板1001の上に形成された第1のGaN層1003の結晶欠陥密度よりも低い。このため、GaN基板1021の上に形成されている酸化層1022の結晶欠陥密度も1×104 cm-2程度と低くなる。したがって、GaN基板1021の上に形成された酸化層1022の厚く盛り上がる部分の面積は、サファイア基板1001の上に形成された酸化層1004の場合に比べて低減することができる。このため、GaN基板を用いれば、サファイア基板を用いる場合に比べて、その上に形成されるデバイスの特性をさらに向上させることができる。
なお、図10(a)及び(b)に示した酸化層(1004、1022)の形成は、酸素雰囲気で行なうこともできるが、水蒸気雰囲気下で酸化することが好ましい。これは、第1の実施形態で説明したように、酸素雰囲気下で酸化するよりも水蒸気雰囲気下で酸化する方が、酸化層の表面が平坦化されるからである。
なお、本実施形態においては、GaN基板を例にして説明したが、GaN基板に限定されるものではなく、表面における結晶欠陥密度が低減され且つ窒化物半導体層がその上で成長可能な基板であれば同様の効果を得ることができる。例えば、基板の一例として、サファイア基板の上に、第1の実施形態に示す方法で形成したGaN層、AlGaN層又はInGaN層が結晶成長した基板であってもよい。
以下に、本発明の第2の実施形態に係る変形例について、図11及び12を参照しながら説明する。
<第1の変形例>
図11は、第2の実施形態における第1の変形例に係る半導体装置(ヘテロ電界効果トランジスタ装置)の断面図を示している。
前述の第2の実施形態に係る半導体装置は、半導体レーザー装置を例にとって説明したが、図11に示すように、ヘテロ電界効果トランジスタ(Hetero Field Effect Transistor、HFET)装置であっても、活性領域を低結晶欠陥の基板上に形成することにより、低リーク電流及び高電界動作が可能となる。
図11に示すように、GaN基板1051の上には、第1の酸化層1052が形成されている。具体的には、GaN基板1051に存在している結晶欠陥の上部近傍に第1の酸化層1052が形成されている。また、第1の酸化層1052の膜厚は、GaN基板1051に存在している結晶欠陥の上部に近い位置では厚く、結晶欠陥の上部から離れるに従って薄くなっている。第1の酸化層1052の上には、GaNよりなる第1のGaN層1053が形成されている。このように、第1の酸化層1052が形成されていることにより、前述の第1の実施形態で述べたように、第1のGaN層1053の結晶欠陥密度は、GaN基板1051の結晶欠陥密度よりも低減される。
第1のGaN層1053の上には、第2の酸化層1054が形成されている。具体的には、第1のGaN層1053に存在している結晶欠陥の上部近傍に第2の酸化層1054が形成されている。また、第2の酸化層1054の膜厚は、第1のGaN層1053に存在している結晶欠陥の上部に近い位置では厚く、結晶欠陥の上部から離れるに従って薄くなっている。第2の酸化層1054の上には、アンドープのGaNよりなる第2のGaN層1055が形成されている。このように、結晶欠陥密度が低減された第1のGaN層1053の上には、さらに第2の酸化層1054が形成されていることにより、図9での説明と同様に、第2のGaN層1055の結晶欠陥密度は、第1のGaN層1053の結晶欠陥密度よりも低減される。このように、GaN層の上に酸化層を形成する構造を繰り返すことにより、GaN基板1051から離れるに従って、結晶欠陥密度が低減された半導体装置を実現することができる。なお、図11においても、図9と同様に、GaN層の上に酸化層が形成された構造が2層繰り返された構造を採用しているが、多層繰り返された構造であってもよいし、1層のみの場合であってもよい。なお、以上の構造は、前記図9に示した構造と同様である。
第2のGaN層1055の上には、アンドープのGaNよりなる第3のGaN層1056、及びGaNよりなるn型チャンネル層1057が形成されている。第3のGaN層1056及びn型チャンネル層1057の側方には、第3のGaN層1056及びn型チャンネル層1057を熱酸化(ここでは、例えば水蒸気雰囲気下での酸化が好ましい)して得られる絶縁層1058が形成されている。さらに、n型チャンネル層1057の上には、ソース電極1059、層間絶縁膜1060を介してゲート電極1061、及びドレイン電極1062が形成されている。なお、絶縁層1058は、素子分離の役割も果たしている。また、層間絶縁膜1060として、例えばGaN層を、酸素雰囲気下、好ましくは水蒸気雰囲気下で酸化させて得られた絶縁膜、すなわちゲート酸化膜を用いることができる。このようにすると、ゲート酸化膜の表面が平坦になるので、トランジスタの特性が向上する。
このようにすると、前述の第2の実施形態に係る半導体装置に示した効果と同様の効果が得られることに加えて、熱酸化によって絶縁膜1058の表面の平坦性が優れているので、後の工程で絶縁膜1058の上に形成されるデバイスの特性が向上する。
なお、前述の電界効果トランジスタとして、第3のGaN層1056及びn型チャンネル層1057の代わりに、各々、GaNよりなるn型チャンネル層、AlGaNよりなるn型障壁層を用いた電界効果トランジスタ、すなわちヘテロ電界効果トランジスタ(HFET)装置であっても、前述と同様の効果を得ることができる。
また、前述の電界効果トランジスタの代わりに、窒化物半導体よりなるバイポーラトランジスタ又はヘテロ接合バイポーラトランジスタを用いた場合であっても、前述と同様の効果を得ることができる。
<第2の変形例>
図12は、第2の実施形態における第2の変形例に係る半導体装置(MOSトランジスタ装置)の断面図を示している。
図12に示すように、GaN基板1101の上には、第1の酸化層1102が形成されている。具体的には、GaN基板1101に存在している結晶欠陥の上部近傍に第1の酸化層1102が形成されている。また、第1の酸化層1102の膜厚は、GaN基板1101に存在している結晶欠陥の上部に近い位置では厚く、結晶欠陥の上部から離れるに従って薄くなっている。第1の酸化層1102の上には、GaN層よりなる第1のGaN層1103が形成されている。このように、第1の酸化層1102が形成されていることにより、前述の第1の実施形態で述べたように、第1のGaN層1103の結晶欠陥密度は、GaN基板1101の結晶欠陥密度よりも低減される。
第1のGaN層1103の上には、第2の酸化層1104が形成されている。具体的には、第1のGaN層1103に存在している結晶欠陥の上部近傍に第2の酸化層1104が形成されている。また、第2の酸化層1104の膜厚は、第1のGaN層1103に存在している結晶欠陥の上部に近い位置では厚く、結晶欠陥の上部から離れるに従って薄くなっている。第2の酸化層1104の上には、アンドープのGaNよりなる第2のGaN層1105が形成されている。このように、結晶欠陥密度が低減された第1のGaN層1103の上には、さらに第2の酸化層1104が形成されていることにより、前記図9での説明と同様に、第2のGaN層1105の結晶欠陥密度は、第1のGaN層1103の結晶欠陥密度よりも低減される。このように、GaN層の上に酸化層を形成する構造を繰り返すことにより、GaN基板1101から離れるに従って、結晶欠陥密度が低減された半導体装置を実現することができる。なお、図12においても、前記図9と同様に、GaN層の上に酸化層が形成された構造が2層繰り返された構造を採用しているが、多層繰り返された構造であってもよいし、1層のみの場合であってもよい。なお、以上の構造は、前記図9に示した構造と同様である。
第2のGaN層1105の上には、無添加GaNよりなる第3のGaN層1106が形成されている。第3のGaN層1106の上には、Siがドープされたn型のGaNよりなる第4のGaN層1107が形成されている。第4のGaN層1107の上には、オーミック性の特性を示す金属よりなるソース電極1108及びドレイン電極1109が形成されている。第4のGaN層1107の上であってソース電極1108とドレイン電極1109との間には、第4のGaN層1107又は第3のGaN層1106が酸化されてなるゲート酸化膜1110が形成されている。
ゲート酸化膜1110の上には、ショットキー特性を示すゲート電極1111が形成されている。このように、金属酸化膜(MOS)トランジスタの周囲には、n型のGaN層又は無添加のGaN層が酸化(好ましくは水蒸気酸化)されて形成されたGa2O3膜よりなる第3の酸化層1112(第2の酸化層に対応する)が素子分離層として形成されている。第3のGaN層1106及び第4のGaN層1107の結晶欠陥密度は、それらの下側に形成された第2のGaN層1105の結晶欠陥密度を反映するので、例えば、1×104cm-2 程度以下となる。このため、第3のGaN層1106及び第4のGaN層1107が酸化されてなる酸化層110を平坦に形成することができる。従って、例えば、酸化層上に形成する微細な電極パターンを断線することなく形成でき、安定性に優れたMOSトランジスタを実現できる。
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る半導体装置について、図13を参照しながら説明する。
図13は、第3の実施形態に係る半導体装置(MOSトランジスタ装置)の断面図を示している。尚、図13において、前述の図12に示した半導体装置の構成要素と同様の部分には同一の符号を付しており、以下ではその説明は繰り返さない。
図13に示す半導体装置が、図12に示した半導体装置と異なる点は、以下の通りである。
すなわち、図12では、欠陥の多い下地となる層(GaN基板1101、第1の酸化層1102、第1のGaN層1103、及び第2の酸化層1104)の上に第2のGaN層1105が形成されているが、図13に示す半導体装置では、図12に示す第2のGaN層1105までを順に形成した後に、欠陥が多い下地となる層(GaN基板1101、第1の酸化層1102、第1のGaN層1103、及び第2の酸化層1104)が、例えば研磨又はダイシングなどによって除去されている点にある。なお、第2のGaN層1105を形成した後には、図12と同様の構造を形成している。すなわち、第2のGaN層1105の上には、無添加GaNよりなる第3のGaN層1106が形成されている。第3のGaN層1106の上には、Siがドープされたn型のGaNよりなる第4のGaN層1107が形成されている。第4のGaN層1107の上には、オーミック性の特性を示す金属よりなるソース電極1108及びドレイン電極1109が形成されている。第4のGaN層1107の上であってソース電極1108とドレイン電極1109との間には、第4のGaN層1107又は第3のGaN層1106が酸化されてなるゲート酸化膜1110が形成されている。
ゲート酸化膜1110の上には、ショットキー特性を示すゲート電極1111が形成されている。このように、金属酸化膜(MOS)トランジスタの周囲には、n型のGaN層又は無添加のGaN層が酸化(好ましくは水蒸気酸化)されて形成されたGa2O3膜よりなる第3の酸化層1112(第2の酸化層に対応する)が素子分離層として形成されている。第3のGaN層1106及び第4のGaN層1107の結晶欠陥密度は、それらの下側に形成された第2のGaN層1105の結晶欠陥密度を反映するので、例えば、1×104cm-2 程度以下となる。このため、第3のGaN層1106及び第4のGaN層1107が酸化されてなる酸化層を平坦に形成することができる。従って、例えば、酸化層上に形成する微細な電極パターンを断線することなく形成でき、安定性に優れたMOSトランジスタを実現できる。
このように、第2のGaN層1105の下地となる層を除去して低結晶欠陥化された第2のGaN層1105を下地層として用いることも当然に実現可能である。
<変形例>
図14は、第3の実施形態における変形例に係る半導体装置(半導体レーザー装置)の断面図を示している。なお、図7に示した半導体装置の構成要素と同様の部分には同一の符号を付しており、以下ではその説明は繰り返さない。
図14に示す半導体装置が、図7に示した半導体装置と異なる点は、以下の通りである。
すなわち、図7では、欠陥の多い下地となる層(サファイア基板101、バッファ層102、第1のGaN層103、及び第1の酸化層104)の上に第2のGaN層105が形成されているが、図14に示す半導体装置では、図7に示す第2のGaN層105までを順に形成した後に、欠陥が多い下地となる層(サファイア基板101、バッファ層102、第1のGaN層103、及び第1の酸化層104)を、例えば研磨又はダイシングなどによって除去している点にある。なお、なお、第2のGaN層105を形成した後には、図7と同様の構造を形成している。
このように、第2のGaN層105の下地となる層を除去して低結晶欠陥化された第2のGaN層105を下地層として用いることも当然に実現可能であり、また、水蒸気酸化によって形成された絶縁膜710の表面は平坦化されているので、その上に形成されるデバイス特性を向上させることができる。