JP2004308020A - 芯鞘複合ポリアミドモノフィラメント - Google Patents
芯鞘複合ポリアミドモノフィラメント Download PDFInfo
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Abstract
【課題】強度、結節強度、適度な剛性、低吸水性、低熱収縮率、湿熱耐久性に優れた芯鞘複合ポリアミドモノフィラメントを製造する方法を提供する。
【解決手段】芯成分と鞘成分とで構成された芯鞘複合モノフィラメントにおいて、芯成分が脂肪族ジアミン単位とテレフタル酸を主とする芳香族ジカルボン酸単位とからなる半芳香族ポリアミドからなり、鞘成分は脂肪族ポリアミド、脂肪族ジアミン単位とテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸が10モル%以上である2種以上の芳香族ジカルボン酸単位とからなる低結晶性半芳香族ポリアミド、または上記脂肪族ポリアミド及び低結晶性半芳香族ポリアミドのブレンド物もしくは共重合物、のいずれか一つを含有していることを特徴とする芯鞘複合ポリアミドモノフィラメント。
【選択図】 なし
【解決手段】芯成分と鞘成分とで構成された芯鞘複合モノフィラメントにおいて、芯成分が脂肪族ジアミン単位とテレフタル酸を主とする芳香族ジカルボン酸単位とからなる半芳香族ポリアミドからなり、鞘成分は脂肪族ポリアミド、脂肪族ジアミン単位とテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸が10モル%以上である2種以上の芳香族ジカルボン酸単位とからなる低結晶性半芳香族ポリアミド、または上記脂肪族ポリアミド及び低結晶性半芳香族ポリアミドのブレンド物もしくは共重合物、のいずれか一つを含有していることを特徴とする芯鞘複合ポリアミドモノフィラメント。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半芳香族ポリアミド樹脂よりなる芯鞘複合モノフィラメントに関するものであり、さらに詳しくは優れた強度、結節強度、適度な剛性、低吸水性、低熱収縮率、湿熱耐久性を有し工業用ブラシやメッシュキャンバス等の各種産業資材用途に好適な芯鞘複合ポリアミドモノフィラメントに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から工業用ブラシや抄紙用メッシュキャンバス用途等には一般にナイロン6やナイロン66等の脂肪族ポリアミドのモノフィラメントが使用されてきた。しかしながらこれらナイロン6、ナイロン66よりなるモノフィラメントは、そのガラス転移温度が低く、さらに水分を含有しやすいために、特に水分を吸収した時に剛性や寸法安定性が低くなるという欠点を有しており、そのためさまざまな問題が生じていた。例えばモノフィラメントが吸水して剛性(弾性率)が低くなった時、工業用ブラシとして使用した場合には「こし」がないブラシとなるためその洗浄能力が低下し、また抄紙用メッシュキャンバスにおいて水分を吸収して寸法安定性を損なうとキャンバス形状が崩れてしまうのが問題であった。また脂肪族ポリアミドよりなるモノフィラメントは湿熱耐久性がそれほど高くなく、高温・高湿下において徐々に強度低下を起こすことが問題であった。
【0003】
これに対してナイロン46を鞘成分とし、ナイロン46以外の脂肪族ポリアミドを芯成分として用いたモノフィラメントが提案されており(特許文献1参照)、ナイロン6やナイロン66よりなるモノフィラメントに対して多少湿熱耐久性が改善されてはいるが、沸水収縮率が4%以上と高く、寸法安定性があまり良くないことが問題であった。また、芯に半芳香族ポリアミドと脂肪族族ポリアミドの共重合体を用い、鞘に脂肪族ポリアミドを用いることにより湿熱耐久性を向上させる技術も提案されているが(特許文献2参照)、その引っ張り強度は3cN/dtex程度であり、モノフィラメントの一般的用途で必要とされる引っ張り強度3.5cN/dtexよりも低いためにその使用用途は狭く限られることが問題であった。
【0004】
このように従来より提案されているモノフィラメントでは、強度、結節強度、吸水することによる剛性(弾性率)変化や寸法変化、湿熱耐久性のいずれかに弱点があり、このため抄紙用メッシュキャンバスや工業用ブラシに使用するのに十分な性能を有しているとは言えなかった。
【0005】
【特許文献1】特開平1−250414号公報
【特許文献2】特開平8−127920号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題を解決するものであり、その目的とするところは優れた強度、結節強度、適度な剛性、低吸水性、低沸水収縮率、湿熱耐久性を全て備えた各種産業資材用途に好適な芯鞘複合ポリアミドモノフィラメントを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、芯成分と鞘成分とで構成された芯鞘複合モノフィラメントにおいて、芯成分が脂肪族ジアミン単位とテレフタル酸を主とするジカルボン酸単位とからなる半芳香族ポリアミドからなり、鞘成分が下記(i)〜(iii)のいずれか1つよりなる、強度3.5cN/dtex以上、結節強度2.5cN/dtex以上の芯鞘複合ポリアミドモノフィラメントである。
(i)脂肪族ポリアミド
(ii)脂肪族ジアミン単位とテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸が10モル%以上である2種以上の芳香族ジカルボン酸単位とからなる低結晶性半芳香族ポリアミド
(iii)脂肪族ポリアミド(i)と低結晶性半芳香族ポリアミド(ii)とのブレンド物もしくは共重合物
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明では芯鞘複合モノフィラメントの芯成分として、低吸水性と耐熱性に優れる半芳香族ポリアミドを使用することが必要であり、具体的には芯成分として脂肪族ジアミン単位とテレフタル酸を主とするジカルボン酸単位からなる半芳香族ポリアミドを使用する。脂肪族ジアミン単位としては炭素数4〜12の直鎖または分岐アルキレンジアミン単位が好ましい。
【0009】
芯成分の半芳香族ポリアミドを構成する脂肪族ジアミン単位としては、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン等の直鎖脂肪族ジアミン;2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の分岐脂肪族ジアミンなどから誘導される単位が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。これらのうちでも、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミンから誘導される単位が好ましく使用でき、1,9−ノナンジアミン単位、または1,9−ノナンジアミン単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位の混合単位が半芳香族ポリアミド繊維の融点、低吸水性、ガラス転移温度などの観点から特に好ましい。
【0010】
芯成分の半芳香族ポリアミドを構成するテレフタル酸を主とする芳香族ジカルボン酸とは、少なくとも80モル%以上がテレフタル酸であるものをいう。
【0011】
芯成分におけるジアミン単位と芳香族ジカルボン酸単位の組み合わせとしては、ジアミン単位が1,9−ノナンジアミン単位、または1,9−ノナンジアミン単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位の混合単位であり、芳香族ジカルボン酸単位がテレフタル酸単位である場合が芯鞘複合モノフィラメントの結晶性、融点、ガラス転移温度、低吸水性などの観点から特に好ましい。
【0012】
ジアミン単位として1,9−ノナンジアミン単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位の混合単位を用いる場合、そのモル比が40:60〜99:1であるのが好ましく、1,9−ノナンジアミン単位の割合が40モル%を下回ると、芯鞘複合モノフィラメントの結晶性、融点などが低下し、耐熱性が低下することことがあるから好ましくない。
【0013】
本発明の芯鞘複合モノフィラメントの鞘成分は、(i)脂肪族ポリアミド、(ii)脂肪族ジアミン単位とテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸が10モル%以上である2種以上の芳香族ジカルボン酸単位とからなる低結晶性半芳香族ポリアミド、(iii)上記の脂肪族ポリアミド(i)と低結晶性半芳香族ポリアミド(ii)のブレンド物もしくは共重合物、のいずれかであればよい。
【0014】
本発明の鞘成分として使用する脂肪族ポリアミド(i)としては、1種または2種以上の脂肪族ポリアミドのブレンドポリマーもしくはそれらの共重合ポリマーであればよく、例としてはナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン4−6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6とナイロン66とのブレンドポリマーもしくはナイロン6とナイロン66との共重合ポリマー(ナイロン6/66)、ナイロン6とナイロン12との共重合ポリマー(ナイロン6/12)などを挙げることができ、芯鞘複合モノフィラメントの結節強度の観点からナイロン6、ナイロン6/66、ナイロン6/12が特に好ましい。
【0015】
また、鞘成分として使用する低結晶性半芳香族ポリアミドは、脂肪族ジアミン単位とテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸が10モル%以上である2種以上の芳香族ジカルボン酸単位とからなる低結晶性半芳香族ポリアミドである。ここで脂肪族ジアミン単位としては、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン等の直鎖脂肪族ジアミン;2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の分岐脂肪族ジアミンなどから誘導される単位が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。これらのうちでも、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミンから誘導される単位が好ましく使用でき、1,9−ノナンジアミン単位、または1,9−ノナンジアミン単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位の混合単位が鞘成分の低吸水性、ガラス転移温度などの観点から特に好ましい。
【0016】
また、低結晶性半芳香族ポリアミドを構成するテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸単位としては、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4‘−ビフェニルジカルボン酸などから誘導される芳香族ジカルボン酸単位を挙げることができ、これらのうちでもイソフタル酸単位、2,6−ナフタレンジカルボン酸単位が鞘成分の低吸水性、耐薬品性などの観点から特に好ましい。
【0017】
また鞘成分としては、上記した脂肪族ポリアミドと低結晶性半芳香族ポリアミドのブレンドポリマーもしくは共重合ポリマーであっても構わず、その配合比は任意の配合比でよい。
【0018】
本発明に用いられる芯ポリマーや鞘ポリマーに、本発明の効果を損なわない範囲内で、ポリエチレンテレフタレート、変性ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエステルエーテルケトン、フッ素樹脂等の熱可塑性ポリマーを添加してもよい。また酸化チタンやカオリン、シリカ、酸化バリウム等の無機物、カーボンブラック、染料や顔料等の着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、各種添加剤を添加しても良い。
【0019】
本発明における芯鞘複合モノフィラメントの芯成分と鞘成分との質量比としては芯:鞘=60:40〜97:3の範囲にあるのがよく、80:20〜95:5の範囲にあるのがより好ましい。芯成分が60質量%未満のときは十分な引っ張り強度が得られず、また芯成分が97質量%以上のときは芯部が表面に露出し易くなる等、複合モノフィラメントの芯鞘形成が困難となるためモノフィラメントの性能がばらつく結果となる。
【0020】
また本発明は単純な円状の芯と鞘とを有する複合モノフィラメントのみに限られるものではなく、上記条件を満たしてさえいれば芯部の断面形状は特に限られない。また該断面形状は単芯芯鞘形状でも多芯芯鞘形状でも構わない。
【0021】
本発明の芯鞘複合モノフィラメントは以下に述べるような複合紡糸技術にて得ることができる。まず上記した芯成分と鞘成分を各々スクリュー型押し出し機を用いて溶融させ、通常の芯鞘複合紡糸口金を用いて複合化して紡出させる。紡出させた溶融ポリマーは直ちに70℃以上の温度の加熱浴中で冷却固化させられ繊維(原糸)となる。
【0022】
また、上記紡糸工程において口金直下に加熱筒を設置して紡出ポリマーを遅延冷却してもよい。
【0023】
上記加熱浴は70℃以上、より好ましくは90℃以上の温度とするのがよい。70℃よりも加熱浴の温度が低い場合にはモノフィラメントの断面形状が不均一となるため好ましくない。また加熱浴に用いる溶媒としては水やポリエチレングリコール、シリコンオイル等の有機溶媒などが用いられるが特に限定はされない。
【0024】
得られた原糸は一旦巻きとってからか、もしくはそのまま連続的に延伸される。延伸は、乾熱炉、溶媒を用いた加熱浴、加熱蒸気吹き付け、ローラーヒーター、接触式プレートヒーター、非接触式プレートヒーター等を使用して、280℃以下で行うのが好ましく、120℃〜270℃で行うのがより好ましい。さらに延伸倍率は2.5倍以上が好ましく、3倍以上がより好ましい。延伸倍率が2.5倍以下の場合には延伸むらによりモノフィラメントの物性がばらつくようになるため好ましくない。また必要に応じて、延伸に引き続いて、さらに120℃〜400℃で定長熱処理、緊張熱処理または弛緩熱処理を行うことができる。
【0025】
本発明の芯鞘複合モノフィラメントの線径に特に制限はないが、30μm〜3000μmの範囲であることが好ましく、50μm〜2000μmであることがモノフィラメンとの製造の容易性、機械的性能の観点からより好ましい。更に、本発明の芯鞘複合モノフィラメントの断面形態にも特に制限はなく、真円断面、あるいは三角断面、四角断面、扁平断面といった異形断面をとることができる。
【0026】
強度、結節強度、適度な剛性、低吸水性、低熱収縮率および湿熱耐久性に優れる本発明の芯鞘複合ポリアミドモノフィラメントは、工業用ブラシ、釣り糸、各種フィルター、抄紙用メッシュキャンバス、搬送ベルトメッシュ、ドライヤーキャンバス、各種補強線材等の広範な用途に使用することができる。
【0027】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお以下の例において極限粘度、強度物性、吸水率、沸水収縮率、湿熱耐久性は下記の方法により測定または評価した。
【0028】
極限粘度[η];
濃硫酸中、30℃にて、0.05、0.1、0.2、0.4g/dlの濃度の試料の固有粘度(ηinh)を測定し、これを濃度0に外挿した値を極限粘度[η]とした。
ηinh=[ln(t1/t0)]/c
〔式中、ηinhは固有粘度(dl/g)、t0は溶媒の流下時間(秒)、t1は試料溶液の流下時間(秒)、cは溶液中の試料の濃度(g/dl)を表す。〕
【0029】
繊維強度、弾性率; JIS L 1013に準じて測定した。
【0030】
吸水率:延伸糸約2gを真空乾燥機にて乾燥(60℃で6時間)した後に、調湿されたデシケーター(95%RH)中に1週間放置した。調湿前後の質量変化を測定し、下式により吸水率を算出した。吸水率(%)=[(w−w1)/w1]×100〔式中、wは調湿後の試料質量(g)、w1は絶乾時の試料質量(g)を表す。〕
【0031】
沸水収縮率(WSR);JIS L 1013に準じて100℃の沸騰水中に30分間浸漬した後のモノフィラメントの収縮率を調べた。
【0032】
湿熱耐久性;モノフィラメントを125℃の飽和水蒸気で満たされたオートクレーブ中にて100時間熱処理し、処理前後の引っ張り強度保持率で表した。
【0033】
実施例1
芯成分としてジアミン単位が1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン(モル比85:15)、ジカルボン酸単位がテレフタル酸である半芳香族ポリアミド([η]=1.2dl/g)を使用し、鞘成分としてナイロン6(宇部興産製、[η]=1.4dl/g)を使用し、それぞれ通常の押し出し機を用いて溶融させ、芯成分である該半芳香族ポリアミドを6.0g/分、鞘成分であるナイロン6を0.7g/分の吐出量にてφ1.6mmの芯鞘複合紡糸口金より口金温度315℃にて吐出した。この紡出糸を90℃の熱水浴中で冷却した後、14.3m/分の速度で引き取り、引き続きこれを240℃の乾熱炉を用いて延伸倍率4.81にて延伸し、さらにこれを240℃とした収縮乾熱炉に導入し、導入速度(入口)と巻取り速度(出口)を前者に対し後者が0.96の速度比となるように調節して4%の収縮処理を行なって芯鞘複合モノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの物性値を表1、表2に示す。
【0034】
実施例2
鞘成分としてジアミン単位が1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン(モル比50:50)、ジカルボン酸単位がテレフタル酸、イソフタル酸(モル比80:20)である低結晶性半芳香族ポリアミド([η]=1.1dl/g)を用いた以外は実施例1と全く同様にしてモノフィラメントを作成した。得られたモノフィラメントの物性値を表1、表2に示す。
【0035】
実施例3
延伸後の収縮乾熱炉での熱処理において、導入速度(入口)と巻取り速度(出口)を前者に対し後者が0.92の速度比となるように調節して収縮倍率を8%とした以外は実施例2と全く同様にして芯鞘複合モノフィラメントを作成した。得られたモノフィラメントの物性値を表1、表2に示す。
【0036】
実施例4
芯成分である半芳香族ポリアミドの吐出量を5.2g/分、鞘成分である低結晶性半芳香族ポリアミドの吐出量を1.3g/分とした以外は実施例2と全く同様にしてモノフィラメントを作成した。得られたモノフィラメントの物性値を表1、表2に示す。
【0037】
実施例5
芯成分としてジアミン単位が1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン(モル比50:50)、ジカルボン酸単位がテレフタル酸である半芳香族ポリアミドB([η]=1.2dl/g)を使用し、鞘成分としてジアミン単位が1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン(モル比50:50)、ジカルボン酸単位がテレフタル酸、イソフタル酸(モル比80:20)である低結晶性半芳香族ポリアミド([η]=1.1dl/g)を使用し、それぞれ通常の押し出し機を用いて溶融させ、芯成分である該半芳香族ポリアミドを5.2g/分、鞘成分である低結晶性半芳香族ポリアミドを1.3g/分の吐出量にてφ1.6mmの芯鞘複合紡糸口金より口金温度300℃にて吐出した。この紡出糸を90℃の熱水浴中で冷却した後、14.3m/分の速度で巻き取り、引き続きこれを210℃の乾熱炉を用いて延伸倍率4.81にて延伸し、さらにこれを220℃の乾熱炉を用いて4%の収縮を行なって芯鞘複合モノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの物性値を表1、表2に示す。
【0038】
実施例6
紡糸によって得られた原糸を延伸する際の延伸倍率を4.33倍とした以外は実施例5と全く同様にしてモノフィラメントを作成した。得られたモノフィラメントの物性値を表1、表2に示す。
【0039】
実施例7
鞘成分としてナイロン6とナイロン66の共重合体(宇部興産製、共重合比80:20、[η]=1.5dl/g)を用いた以外は実施例4と全く同様にしてモノフィラメントを作成した。得られたモノフィラメントの物性値を表1、表2に示す。
【0040】
比較例1
芯成分である半芳香族ポリアミドの吐出量を3.5g/分、鞘成分であるナイロン6の吐出量を3.5g/分とした以外は実施例1と全く同様にしてモノフィラメントを作成した。得られたモノフィラメントの物性値を表1、表2に示す。
【0041】
比較例2
芯成分である半芳香族ポリアミドの吐出量を6.5g/分、鞘成分であるナイロン6の吐出量を0.2g/分とした以外は実施例1と全く同様にしてモノフィラメントを作成した。得られたモノフィラメントの物性値を表1、表2に示す。
【0042】
比較例3
ナイロン6(宇部興産製、[η]=1.4dl/g)を原料として使用し、通常の押し出し機を用いて溶融させ、6.5g/分の吐出量にてφ1.6mmの通常の単口紡糸口金より口金温度300℃にて吐出した。この紡出糸を90℃の熱水浴中で冷却した後、14.3m/分の速度で巻き取り、引き続きこれを200℃の乾熱炉を用いて延伸倍率6.20にて延伸し、さらにこれを210℃の乾熱炉を用いて4%の収縮を行なって芯鞘複合モノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの物性値を表1、表2に示す。
【0043】
比較例4
ナイロン66(旭化成製、[η]=1.2dl/g)を原料として使用し、これを通常の押し出し機を用いて溶融させ、6.5g/分の吐出量にてφ1.6mmの通常の単口紡糸口金より口金温度300℃にて吐出した。この紡出糸を90℃の熱水浴中で冷却した後、14.3m/分の速度で巻き取り、引き続きこれを200℃の乾熱炉を用いて延伸倍率5.75にて延伸し、さらにこれを210℃の乾熱炉を用いて4%の収縮を行なって芯鞘複合モノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの物性値を表1、表2に示す。
【0044】
比較例5
芯成分として[η]0.91dl/gのポリエチレンテレフタレートを使用し、鞘成分としてジジアミン単位が1,9−ノナンジアミン、ジカルボン酸単位がテレフタル酸である半芳香族ポリアミドC([η]=0.8dl/g)を用い、芯成分であるポリエチレンテレフタレートを4.8g/分、鞘成分である半芳香族ポリアミドCを1.9g/分の吐出量にて吐出し、延伸倍率を4.5倍とした以外は実施例1と全く同様にしてモノフィラメントを作成した。得られたモノフィラメントの物性値を表1、表2に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【発明の効果】
表1、表2から明らかなように、本発明により得られた芯鞘複合ポリアミドモノフィラメントは優れた強度、結節強度、適度な剛性、低吸水性、低熱収縮率、湿熱耐久性を有するため、高温・高湿度の過酷な条件下で使用される工業用ブラシや抄紙用メッシュキャンバス等の各種産業資材用途に特に好適である。
【発明の属する技術分野】
本発明は半芳香族ポリアミド樹脂よりなる芯鞘複合モノフィラメントに関するものであり、さらに詳しくは優れた強度、結節強度、適度な剛性、低吸水性、低熱収縮率、湿熱耐久性を有し工業用ブラシやメッシュキャンバス等の各種産業資材用途に好適な芯鞘複合ポリアミドモノフィラメントに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から工業用ブラシや抄紙用メッシュキャンバス用途等には一般にナイロン6やナイロン66等の脂肪族ポリアミドのモノフィラメントが使用されてきた。しかしながらこれらナイロン6、ナイロン66よりなるモノフィラメントは、そのガラス転移温度が低く、さらに水分を含有しやすいために、特に水分を吸収した時に剛性や寸法安定性が低くなるという欠点を有しており、そのためさまざまな問題が生じていた。例えばモノフィラメントが吸水して剛性(弾性率)が低くなった時、工業用ブラシとして使用した場合には「こし」がないブラシとなるためその洗浄能力が低下し、また抄紙用メッシュキャンバスにおいて水分を吸収して寸法安定性を損なうとキャンバス形状が崩れてしまうのが問題であった。また脂肪族ポリアミドよりなるモノフィラメントは湿熱耐久性がそれほど高くなく、高温・高湿下において徐々に強度低下を起こすことが問題であった。
【0003】
これに対してナイロン46を鞘成分とし、ナイロン46以外の脂肪族ポリアミドを芯成分として用いたモノフィラメントが提案されており(特許文献1参照)、ナイロン6やナイロン66よりなるモノフィラメントに対して多少湿熱耐久性が改善されてはいるが、沸水収縮率が4%以上と高く、寸法安定性があまり良くないことが問題であった。また、芯に半芳香族ポリアミドと脂肪族族ポリアミドの共重合体を用い、鞘に脂肪族ポリアミドを用いることにより湿熱耐久性を向上させる技術も提案されているが(特許文献2参照)、その引っ張り強度は3cN/dtex程度であり、モノフィラメントの一般的用途で必要とされる引っ張り強度3.5cN/dtexよりも低いためにその使用用途は狭く限られることが問題であった。
【0004】
このように従来より提案されているモノフィラメントでは、強度、結節強度、吸水することによる剛性(弾性率)変化や寸法変化、湿熱耐久性のいずれかに弱点があり、このため抄紙用メッシュキャンバスや工業用ブラシに使用するのに十分な性能を有しているとは言えなかった。
【0005】
【特許文献1】特開平1−250414号公報
【特許文献2】特開平8−127920号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題を解決するものであり、その目的とするところは優れた強度、結節強度、適度な剛性、低吸水性、低沸水収縮率、湿熱耐久性を全て備えた各種産業資材用途に好適な芯鞘複合ポリアミドモノフィラメントを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、芯成分と鞘成分とで構成された芯鞘複合モノフィラメントにおいて、芯成分が脂肪族ジアミン単位とテレフタル酸を主とするジカルボン酸単位とからなる半芳香族ポリアミドからなり、鞘成分が下記(i)〜(iii)のいずれか1つよりなる、強度3.5cN/dtex以上、結節強度2.5cN/dtex以上の芯鞘複合ポリアミドモノフィラメントである。
(i)脂肪族ポリアミド
(ii)脂肪族ジアミン単位とテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸が10モル%以上である2種以上の芳香族ジカルボン酸単位とからなる低結晶性半芳香族ポリアミド
(iii)脂肪族ポリアミド(i)と低結晶性半芳香族ポリアミド(ii)とのブレンド物もしくは共重合物
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明では芯鞘複合モノフィラメントの芯成分として、低吸水性と耐熱性に優れる半芳香族ポリアミドを使用することが必要であり、具体的には芯成分として脂肪族ジアミン単位とテレフタル酸を主とするジカルボン酸単位からなる半芳香族ポリアミドを使用する。脂肪族ジアミン単位としては炭素数4〜12の直鎖または分岐アルキレンジアミン単位が好ましい。
【0009】
芯成分の半芳香族ポリアミドを構成する脂肪族ジアミン単位としては、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン等の直鎖脂肪族ジアミン;2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の分岐脂肪族ジアミンなどから誘導される単位が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。これらのうちでも、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミンから誘導される単位が好ましく使用でき、1,9−ノナンジアミン単位、または1,9−ノナンジアミン単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位の混合単位が半芳香族ポリアミド繊維の融点、低吸水性、ガラス転移温度などの観点から特に好ましい。
【0010】
芯成分の半芳香族ポリアミドを構成するテレフタル酸を主とする芳香族ジカルボン酸とは、少なくとも80モル%以上がテレフタル酸であるものをいう。
【0011】
芯成分におけるジアミン単位と芳香族ジカルボン酸単位の組み合わせとしては、ジアミン単位が1,9−ノナンジアミン単位、または1,9−ノナンジアミン単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位の混合単位であり、芳香族ジカルボン酸単位がテレフタル酸単位である場合が芯鞘複合モノフィラメントの結晶性、融点、ガラス転移温度、低吸水性などの観点から特に好ましい。
【0012】
ジアミン単位として1,9−ノナンジアミン単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位の混合単位を用いる場合、そのモル比が40:60〜99:1であるのが好ましく、1,9−ノナンジアミン単位の割合が40モル%を下回ると、芯鞘複合モノフィラメントの結晶性、融点などが低下し、耐熱性が低下することことがあるから好ましくない。
【0013】
本発明の芯鞘複合モノフィラメントの鞘成分は、(i)脂肪族ポリアミド、(ii)脂肪族ジアミン単位とテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸が10モル%以上である2種以上の芳香族ジカルボン酸単位とからなる低結晶性半芳香族ポリアミド、(iii)上記の脂肪族ポリアミド(i)と低結晶性半芳香族ポリアミド(ii)のブレンド物もしくは共重合物、のいずれかであればよい。
【0014】
本発明の鞘成分として使用する脂肪族ポリアミド(i)としては、1種または2種以上の脂肪族ポリアミドのブレンドポリマーもしくはそれらの共重合ポリマーであればよく、例としてはナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン4−6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6とナイロン66とのブレンドポリマーもしくはナイロン6とナイロン66との共重合ポリマー(ナイロン6/66)、ナイロン6とナイロン12との共重合ポリマー(ナイロン6/12)などを挙げることができ、芯鞘複合モノフィラメントの結節強度の観点からナイロン6、ナイロン6/66、ナイロン6/12が特に好ましい。
【0015】
また、鞘成分として使用する低結晶性半芳香族ポリアミドは、脂肪族ジアミン単位とテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸が10モル%以上である2種以上の芳香族ジカルボン酸単位とからなる低結晶性半芳香族ポリアミドである。ここで脂肪族ジアミン単位としては、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン等の直鎖脂肪族ジアミン;2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の分岐脂肪族ジアミンなどから誘導される単位が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。これらのうちでも、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミンから誘導される単位が好ましく使用でき、1,9−ノナンジアミン単位、または1,9−ノナンジアミン単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位の混合単位が鞘成分の低吸水性、ガラス転移温度などの観点から特に好ましい。
【0016】
また、低結晶性半芳香族ポリアミドを構成するテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸単位としては、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4‘−ビフェニルジカルボン酸などから誘導される芳香族ジカルボン酸単位を挙げることができ、これらのうちでもイソフタル酸単位、2,6−ナフタレンジカルボン酸単位が鞘成分の低吸水性、耐薬品性などの観点から特に好ましい。
【0017】
また鞘成分としては、上記した脂肪族ポリアミドと低結晶性半芳香族ポリアミドのブレンドポリマーもしくは共重合ポリマーであっても構わず、その配合比は任意の配合比でよい。
【0018】
本発明に用いられる芯ポリマーや鞘ポリマーに、本発明の効果を損なわない範囲内で、ポリエチレンテレフタレート、変性ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエステルエーテルケトン、フッ素樹脂等の熱可塑性ポリマーを添加してもよい。また酸化チタンやカオリン、シリカ、酸化バリウム等の無機物、カーボンブラック、染料や顔料等の着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、各種添加剤を添加しても良い。
【0019】
本発明における芯鞘複合モノフィラメントの芯成分と鞘成分との質量比としては芯:鞘=60:40〜97:3の範囲にあるのがよく、80:20〜95:5の範囲にあるのがより好ましい。芯成分が60質量%未満のときは十分な引っ張り強度が得られず、また芯成分が97質量%以上のときは芯部が表面に露出し易くなる等、複合モノフィラメントの芯鞘形成が困難となるためモノフィラメントの性能がばらつく結果となる。
【0020】
また本発明は単純な円状の芯と鞘とを有する複合モノフィラメントのみに限られるものではなく、上記条件を満たしてさえいれば芯部の断面形状は特に限られない。また該断面形状は単芯芯鞘形状でも多芯芯鞘形状でも構わない。
【0021】
本発明の芯鞘複合モノフィラメントは以下に述べるような複合紡糸技術にて得ることができる。まず上記した芯成分と鞘成分を各々スクリュー型押し出し機を用いて溶融させ、通常の芯鞘複合紡糸口金を用いて複合化して紡出させる。紡出させた溶融ポリマーは直ちに70℃以上の温度の加熱浴中で冷却固化させられ繊維(原糸)となる。
【0022】
また、上記紡糸工程において口金直下に加熱筒を設置して紡出ポリマーを遅延冷却してもよい。
【0023】
上記加熱浴は70℃以上、より好ましくは90℃以上の温度とするのがよい。70℃よりも加熱浴の温度が低い場合にはモノフィラメントの断面形状が不均一となるため好ましくない。また加熱浴に用いる溶媒としては水やポリエチレングリコール、シリコンオイル等の有機溶媒などが用いられるが特に限定はされない。
【0024】
得られた原糸は一旦巻きとってからか、もしくはそのまま連続的に延伸される。延伸は、乾熱炉、溶媒を用いた加熱浴、加熱蒸気吹き付け、ローラーヒーター、接触式プレートヒーター、非接触式プレートヒーター等を使用して、280℃以下で行うのが好ましく、120℃〜270℃で行うのがより好ましい。さらに延伸倍率は2.5倍以上が好ましく、3倍以上がより好ましい。延伸倍率が2.5倍以下の場合には延伸むらによりモノフィラメントの物性がばらつくようになるため好ましくない。また必要に応じて、延伸に引き続いて、さらに120℃〜400℃で定長熱処理、緊張熱処理または弛緩熱処理を行うことができる。
【0025】
本発明の芯鞘複合モノフィラメントの線径に特に制限はないが、30μm〜3000μmの範囲であることが好ましく、50μm〜2000μmであることがモノフィラメンとの製造の容易性、機械的性能の観点からより好ましい。更に、本発明の芯鞘複合モノフィラメントの断面形態にも特に制限はなく、真円断面、あるいは三角断面、四角断面、扁平断面といった異形断面をとることができる。
【0026】
強度、結節強度、適度な剛性、低吸水性、低熱収縮率および湿熱耐久性に優れる本発明の芯鞘複合ポリアミドモノフィラメントは、工業用ブラシ、釣り糸、各種フィルター、抄紙用メッシュキャンバス、搬送ベルトメッシュ、ドライヤーキャンバス、各種補強線材等の広範な用途に使用することができる。
【0027】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお以下の例において極限粘度、強度物性、吸水率、沸水収縮率、湿熱耐久性は下記の方法により測定または評価した。
【0028】
極限粘度[η];
濃硫酸中、30℃にて、0.05、0.1、0.2、0.4g/dlの濃度の試料の固有粘度(ηinh)を測定し、これを濃度0に外挿した値を極限粘度[η]とした。
ηinh=[ln(t1/t0)]/c
〔式中、ηinhは固有粘度(dl/g)、t0は溶媒の流下時間(秒)、t1は試料溶液の流下時間(秒)、cは溶液中の試料の濃度(g/dl)を表す。〕
【0029】
繊維強度、弾性率; JIS L 1013に準じて測定した。
【0030】
吸水率:延伸糸約2gを真空乾燥機にて乾燥(60℃で6時間)した後に、調湿されたデシケーター(95%RH)中に1週間放置した。調湿前後の質量変化を測定し、下式により吸水率を算出した。吸水率(%)=[(w−w1)/w1]×100〔式中、wは調湿後の試料質量(g)、w1は絶乾時の試料質量(g)を表す。〕
【0031】
沸水収縮率(WSR);JIS L 1013に準じて100℃の沸騰水中に30分間浸漬した後のモノフィラメントの収縮率を調べた。
【0032】
湿熱耐久性;モノフィラメントを125℃の飽和水蒸気で満たされたオートクレーブ中にて100時間熱処理し、処理前後の引っ張り強度保持率で表した。
【0033】
実施例1
芯成分としてジアミン単位が1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン(モル比85:15)、ジカルボン酸単位がテレフタル酸である半芳香族ポリアミド([η]=1.2dl/g)を使用し、鞘成分としてナイロン6(宇部興産製、[η]=1.4dl/g)を使用し、それぞれ通常の押し出し機を用いて溶融させ、芯成分である該半芳香族ポリアミドを6.0g/分、鞘成分であるナイロン6を0.7g/分の吐出量にてφ1.6mmの芯鞘複合紡糸口金より口金温度315℃にて吐出した。この紡出糸を90℃の熱水浴中で冷却した後、14.3m/分の速度で引き取り、引き続きこれを240℃の乾熱炉を用いて延伸倍率4.81にて延伸し、さらにこれを240℃とした収縮乾熱炉に導入し、導入速度(入口)と巻取り速度(出口)を前者に対し後者が0.96の速度比となるように調節して4%の収縮処理を行なって芯鞘複合モノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの物性値を表1、表2に示す。
【0034】
実施例2
鞘成分としてジアミン単位が1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン(モル比50:50)、ジカルボン酸単位がテレフタル酸、イソフタル酸(モル比80:20)である低結晶性半芳香族ポリアミド([η]=1.1dl/g)を用いた以外は実施例1と全く同様にしてモノフィラメントを作成した。得られたモノフィラメントの物性値を表1、表2に示す。
【0035】
実施例3
延伸後の収縮乾熱炉での熱処理において、導入速度(入口)と巻取り速度(出口)を前者に対し後者が0.92の速度比となるように調節して収縮倍率を8%とした以外は実施例2と全く同様にして芯鞘複合モノフィラメントを作成した。得られたモノフィラメントの物性値を表1、表2に示す。
【0036】
実施例4
芯成分である半芳香族ポリアミドの吐出量を5.2g/分、鞘成分である低結晶性半芳香族ポリアミドの吐出量を1.3g/分とした以外は実施例2と全く同様にしてモノフィラメントを作成した。得られたモノフィラメントの物性値を表1、表2に示す。
【0037】
実施例5
芯成分としてジアミン単位が1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン(モル比50:50)、ジカルボン酸単位がテレフタル酸である半芳香族ポリアミドB([η]=1.2dl/g)を使用し、鞘成分としてジアミン単位が1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン(モル比50:50)、ジカルボン酸単位がテレフタル酸、イソフタル酸(モル比80:20)である低結晶性半芳香族ポリアミド([η]=1.1dl/g)を使用し、それぞれ通常の押し出し機を用いて溶融させ、芯成分である該半芳香族ポリアミドを5.2g/分、鞘成分である低結晶性半芳香族ポリアミドを1.3g/分の吐出量にてφ1.6mmの芯鞘複合紡糸口金より口金温度300℃にて吐出した。この紡出糸を90℃の熱水浴中で冷却した後、14.3m/分の速度で巻き取り、引き続きこれを210℃の乾熱炉を用いて延伸倍率4.81にて延伸し、さらにこれを220℃の乾熱炉を用いて4%の収縮を行なって芯鞘複合モノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの物性値を表1、表2に示す。
【0038】
実施例6
紡糸によって得られた原糸を延伸する際の延伸倍率を4.33倍とした以外は実施例5と全く同様にしてモノフィラメントを作成した。得られたモノフィラメントの物性値を表1、表2に示す。
【0039】
実施例7
鞘成分としてナイロン6とナイロン66の共重合体(宇部興産製、共重合比80:20、[η]=1.5dl/g)を用いた以外は実施例4と全く同様にしてモノフィラメントを作成した。得られたモノフィラメントの物性値を表1、表2に示す。
【0040】
比較例1
芯成分である半芳香族ポリアミドの吐出量を3.5g/分、鞘成分であるナイロン6の吐出量を3.5g/分とした以外は実施例1と全く同様にしてモノフィラメントを作成した。得られたモノフィラメントの物性値を表1、表2に示す。
【0041】
比較例2
芯成分である半芳香族ポリアミドの吐出量を6.5g/分、鞘成分であるナイロン6の吐出量を0.2g/分とした以外は実施例1と全く同様にしてモノフィラメントを作成した。得られたモノフィラメントの物性値を表1、表2に示す。
【0042】
比較例3
ナイロン6(宇部興産製、[η]=1.4dl/g)を原料として使用し、通常の押し出し機を用いて溶融させ、6.5g/分の吐出量にてφ1.6mmの通常の単口紡糸口金より口金温度300℃にて吐出した。この紡出糸を90℃の熱水浴中で冷却した後、14.3m/分の速度で巻き取り、引き続きこれを200℃の乾熱炉を用いて延伸倍率6.20にて延伸し、さらにこれを210℃の乾熱炉を用いて4%の収縮を行なって芯鞘複合モノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの物性値を表1、表2に示す。
【0043】
比較例4
ナイロン66(旭化成製、[η]=1.2dl/g)を原料として使用し、これを通常の押し出し機を用いて溶融させ、6.5g/分の吐出量にてφ1.6mmの通常の単口紡糸口金より口金温度300℃にて吐出した。この紡出糸を90℃の熱水浴中で冷却した後、14.3m/分の速度で巻き取り、引き続きこれを200℃の乾熱炉を用いて延伸倍率5.75にて延伸し、さらにこれを210℃の乾熱炉を用いて4%の収縮を行なって芯鞘複合モノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの物性値を表1、表2に示す。
【0044】
比較例5
芯成分として[η]0.91dl/gのポリエチレンテレフタレートを使用し、鞘成分としてジジアミン単位が1,9−ノナンジアミン、ジカルボン酸単位がテレフタル酸である半芳香族ポリアミドC([η]=0.8dl/g)を用い、芯成分であるポリエチレンテレフタレートを4.8g/分、鞘成分である半芳香族ポリアミドCを1.9g/分の吐出量にて吐出し、延伸倍率を4.5倍とした以外は実施例1と全く同様にしてモノフィラメントを作成した。得られたモノフィラメントの物性値を表1、表2に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【発明の効果】
表1、表2から明らかなように、本発明により得られた芯鞘複合ポリアミドモノフィラメントは優れた強度、結節強度、適度な剛性、低吸水性、低熱収縮率、湿熱耐久性を有するため、高温・高湿度の過酷な条件下で使用される工業用ブラシや抄紙用メッシュキャンバス等の各種産業資材用途に特に好適である。
Claims (4)
- 芯成分と鞘成分とで構成された芯鞘複合モノフィラメントにおいて、芯成分が脂肪族ジアミン単位とテレフタル酸を主とするジカルボン酸単位とからなる半芳香族ポリアミドからなり、鞘成分が下記(i)〜(iii)のいずれか1つよりなる、強度3.5cN/dtex以上、結節強度2.5cN/dtex以上の芯鞘複合ポリアミドモノフィラメント。
(i)脂肪族ポリアミド、
(ii)脂肪族ジアミン単位とテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸が10モル%以上である2種以上の芳香族ジカルボン酸単位とからなる低結晶性半芳香族ポリアミド、
(iii)脂肪族ポリアミド(i)と低結晶性半芳香族ポリアミド(ii)とのブレンド物もしくは共重合物 - 芯成分として用いられる半芳香族ポリアミドの脂肪族ジアミン単位が炭素数4〜12である直鎖または分岐アルキレンジアミン単位である請求項1に記載の芯鞘複合ポリアミドモノフィラメント。
- 芯成分として用いられる半芳香族ポリアミドの組成が、ジアミン単位の60〜100モル%が1,9−ノナンジアミン単位、またはモル比が40:60〜99:1である1,9−ノナンジアミン単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位の混合単位からなり、ジカルボン酸単位の80〜100モル%がテレフタル酸単位である請求項1乃至2に記載の芯鞘複合ポリアミドモノフィラメント。
- 芯鞘複合モノフィラメントの芯成分と鞘成分の質量比が芯:鞘=60:40〜97:3である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の芯鞘複合ポリアミドモノフィラメント。
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-
2003
- 2003-04-02 JP JP2003098881A patent/JP2004308020A/ja active Pending
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