JP2004307369A - 4−フェニルベンゾフェノン誘導体および4−フェニルベンゾフェノン誘導体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐光性に優れた高分子材料、特に液晶用配向材の原料モノマーとして好適に用いることができる4−フェニルベンゾフェノン誘導体を提供すること、また、前記4−フェニルベンゾフェノン誘導体の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体は、下記式(II)で示される。
【化1】
[式(II)中、R1、R2およびR3は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の直鎖状または分枝状のアルキル基あるいは、前記アルキル基を構成する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換されたフッ化アルキル基を表す。]この4−フェニルベンゾフェノン誘導体は、ベンゾフェノン誘導体と、アリールホウ酸誘導体とを、触媒の存在下において、塩基性溶液中でカップリングさせることにより得ることができる。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体は、下記式(II)で示される。
【化1】
[式(II)中、R1、R2およびR3は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の直鎖状または分枝状のアルキル基あるいは、前記アルキル基を構成する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換されたフッ化アルキル基を表す。]この4−フェニルベンゾフェノン誘導体は、ベンゾフェノン誘導体と、アリールホウ酸誘導体とを、触媒の存在下において、塩基性溶液中でカップリングさせることにより得ることができる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、4−フェニルベンゾフェノン誘導体および4−フェニルベンゾフェノン誘導体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、ポリイミド材料は、一般に、耐熱性が高く、高強度、高弾性で機械的に優れ、高絶縁、低誘電で電気特性に優れる等、種々の特性に優れており、そのため、様々な分野、用途で使用されている。このようなポリイミド材料は、通常、テトラカルボン酸化合物やテトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物とを溶媒中で反応させることにより、ポリアミック酸を経由して製造されている。
【0003】
このようなポリイミド材料は、高耐熱性、高透明性という特徴を有することから、液晶プロジェクタ等の画像表示装置の液晶配向膜等にも利用されている(例えば、特許文献1参照)。一方、近年の画像表示装置(液晶プロジェクタ)の急速な高輝度化、小型化に伴い、耐熱性だけでなく、ポリイミド材料の耐光性が、画像表示装置の製品寿命に大きな影響を与えるようになってきている。しかしながら、従来のポリイミド材料は、十分な耐光性を有しておらず、その結果、従来のポリイミド材料で構成された配向膜は、上記のように高輝度化が進んだ画像表示装置において、長期間にわたって十分な配向膜特性を発揮するのが困難であった。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−136122号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐光性に優れた高分子材料、特に液晶用配向材の原料モノマーとして好適に用いることができる4−フェニルベンゾフェノン誘導体を提供すること、また、前記4−フェニルベンゾフェノン誘導体の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体は、下記式(I)
【化5】
[式(I)中、R1、R2およびR3は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の直鎖状または分枝状のアルキル基あるいは、前記アルキル基を構成する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換されたフッ化アルキル基を表す。]
で示されることを特徴とする。
これにより、耐光性に優れた新規4−フェニルベンゾフェノン誘導体を提供することができる。特に、耐光性に優れた高分子材料の原料として好適に用いることができる、新規4−フェニルベンゾフェノン誘導体を提供することができる。
【0007】
本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体は、下記式(II)
【化6】
[式(II)中、R1、R2およびR3は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の直鎖状または分枝状のアルキル基あるいは、前記アルキル基を構成する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換されたフッ化アルキル基を表す。]
で示されることを特徴とする。
これにより、耐光性に優れた新規4−フェニルベンゾフェノン誘導体を提供することができる。特に、耐光性に優れた高分子材料の原料として好適に用いることができる、新規4−フェニルベンゾフェノン誘導体を提供することができる。
【0008】
上記式(II)で示される本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体は、上記式(I)で示される本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体を用いて製造されたものであるのが好ましい。
これにより、耐光性に優れた新規4−フェニルベンゾフェノン誘導体を収率良く得ることができる。特に、耐光性に優れた高分子材料の原料として好適に用いることができる、新規4−フェニルベンゾフェノン誘導体を収率良く得ることができる。
【0009】
本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体の製造方法は、下記式(III)
【化7】
[式(III)中、R1およびR2は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の直鎖状または分枝状のアルキル基あるいは、前記アルキル基を構成する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換されたフッ化アルキル基を表し、X2は、ハロゲン原子またはCF3SO3−を表す。]
で示されるベンゾフェノン誘導体と、
下記式(IV)
【化8】
[式(IV)中、R3は、水素原子、炭素数1〜5の直鎖状または分枝状のアルキル基あるいは、前記アルキル基を構成する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換されたフッ化アルキル基を表す。]
で示されるアリールホウ酸誘導体とを、触媒の存在下において、塩基性溶液中で反応させるカップリング工程を有することを特徴とする。
【0010】
これにより、耐光性に優れた新規4−フェニルベンゾフェノン誘導体を提供することができる。特に、耐光性に優れた高分子材料の原料として好適に用いることができる、新規4−フェニルベンゾフェノン誘導体を収率良く提供することができる。また、分子内に2個の芳香環を有するベンジジン誘導体を経由することなく、4−フェニルベンゾフェノン誘導体を得ることができ、操作上の安全性が向上する。
【0011】
本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体の製造方法では、前記触媒は、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)であることが好ましい。
これにより、4−フェニルベンゾフェノン誘導体をより収率良く得ることができるとともに、生産コストの低減に寄与することができる。
本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体の製造方法では、前記カップリング工程の後に、ニトロ基を還元する還元工程を有することが好ましい。
これにより、4−フェニルベンゾフェノン誘導体を、高分子材料、特に、液晶用配向材を構成する高分子材料の製造に、より好適に用いることができる。
【0012】
本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体の製造方法では、前記還元工程は、触媒としてパラジウム−活性炭素を用いて行うものであることが好ましい。
これにより、還元反応をより円滑に進行させることができるとともに、ジアミン化合物としての4−フェニルベンゾフェノン誘導体をさらに収率良く得ることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体および4−フェニルベンゾフェノン誘導体の製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
<4−フェニルベンゾフェノン誘導体およびその製造方法(合成方法)>
まず、本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体および4−フェニルベンゾフェノン誘導体の製造方法について詳細に説明する。
本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体は、下記式(I)または下記式(II)で示される構造を有している。
【0014】
【化9】
【0015】
[式(I)中、R1、R2およびR3は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の直鎖状または分枝状のアルキル基あるいは、前記アルキル基を構成する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換されたフッ化アルキル基を表す。]
【0016】
【化10】
【0017】
[式(II)中、R1、R2およびR3は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の直鎖状または分枝状のアルキル基あるいは、前記アルキル基を構成する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換されたフッ化アルキル基を表す。]
なお、式(II)で示される本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体はその少なくとも一部が塩酸塩等の塩を形成していてもよい。
上記式(I)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体は、例えば、下記式(III)で示されるベンゾフェノン誘導体と、下記式(IV)で示されるアリールホウ酸誘導体とを反応させる(カップリングさせる)ことにより得ることができる。
【0018】
【化11】
【0019】
[式(III)中、R1およびR2は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の直鎖状または分枝状のアルキル基あるいは、前記アルキル基を構成する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換されたフッ化アルキル基を表し、X2は、ハロゲン原子またはCF3SO3−を表す。]
【0020】
【化12】
【0021】
[式(IV)中、R3は、水素原子、炭素数1〜5の直鎖状または分枝状のアルキル基あるいは、前記アルキル基を構成する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換されたフッ化アルキル基を表す。]
このようなカップリング反応を用いることにより、ベンジジン誘導体(分子内に芳香環を2個有するビフェニル誘導体)を中間体として経由することなく、4−フェニルベンゾフェノン誘導体を製造(合成)することができる。これにより、操作上(合成上)の安全性が向上するとともに、目的物質の収率も特に優れたものとすることができる。
【0022】
[1]式(III)で示されるベンゾフェノン誘導体の合成
上記式(I)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体の詳細な説明に先立ち、上記式(III)で示されるベンゾフェノン誘導体の合成方法の一例について説明する。
式(III)で示されるベンゾフェノン誘導体は、いかなる方法で調製されたものであってもよりが、例えば、下記式(V)で示されるハロゲン化ベンゾイル誘導体と、下記式(VI)で示されるハロゲン化アリールとを用いたフリーデル−クラフツ(Friedel−Crafts)反応により得ることができる。
【0023】
【化13】
【0024】
[式(V)中、R1は、水素原子、炭素数1〜5の直鎖状または分枝状のアルキル基あるいは、前記アルキル基を構成する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換されたフッ化アルキル基を表し、X1は、ハロゲン原子を表す。]
【0025】
【化14】
【0026】
[式(VI)中、R2は、水素原子、炭素数1〜5の直鎖状または分枝状のアルキル基あるいは、前記アルキル基を構成する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換されたフッ化アルキル基を表し、X2は、ハロゲン原子またはCF3SO3−を表す。]
前記のように、上記式(V)においては、X1は、ハロゲン原子であればよいが、特に、Cl(塩素原子)であるのが好ましい。これにより、副反応の進行を比較的容易に防止しつつ、上記式(V)で示されるハロゲン化ベンゾイル誘導体と、上記式(VI)で示されるハロゲン化アリールとを、適度な反応速度で反応させることができる。その結果、上記式(III)で示されるベンゾフェノン誘導体、延いては、上記式(I)、上記式(II)で示される本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体を、より容易かつ高収率で合成することができる。
【0027】
また、前述したように、上記式(VI)(および上記式(III))においては、X2は、ハロゲン原子またはCF3SO3基であればよいが、特に、Br(臭素原子)、I(ヨウ素原子)であるのが好ましい。これにより、後述するベンゾフェノン誘導体とアリールホウ酸誘導体との反応(カップリング反応)を、より効率良く進行させることができる。
【0028】
また、前記フリーデル−クラフツ反応では、例えば、AlCl3、AlBr3、FeCl3、SnCl4、BCl3、BF3、ZnCl2、SbCl5、TeCl2、TiCl4、BiCl3等のルイス酸(Lewis acid)を触媒として好適に用いることができる。中でも、反応促進性、取り扱いの容易さ、経済性等の点から、AlCl3、FeCl3が好ましい。
【0029】
また、反応溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、石油エーテル、トルエン、ベンゼン、キシレンのような炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタンのようなハロゲン化炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、酢酸エチル、酢酸メチルのようなエステル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリルのようなニトリル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメトキシエタン、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の各種有機溶媒が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記式(VI)で示されるハロゲン化アリールが液体である場合、当該ハロゲン化アリールを反応溶媒として用いることもできる。
【0030】
フリーデル−クラフツ反応の反応温度は、各成分(式(V)で示されるハロゲン化ベンゾイル誘導体、式(VI)で示されるハロゲン化アリール等)の組成等により異なるが、通常、15〜120℃であるのが好ましく、70〜110℃であるのがより好ましい。
また、フリーデル−クラフツ反応の反応時間は、各成分の組成や反応温度等により異なるが、通常、1〜12時間であるのが好ましく、2〜6時間であるのがより好ましい。
【0031】
以上のような工程[1]を経て、式(III)で示されるベンゾフェノン誘導体が合成(製造)される。
なお、前記工程においては、例えば、抽出、洗浄、再結晶、クロマトグラフィ等の後処理操作により、生成物の精製、単離等を行ってもよい。また、前記工程[1]において得られた化合物(合成物)に対する、このような後処理操作は、必要に応じて省略し、例えば、得られた生成物をそのまま次工程に供するようにしてもよい。
【0032】
[2]式(I)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体の合成(カップリング工程)
上記のようにして得られたベンゾフェノン誘導体(III)とアリールホウ酸誘導体(IV)とを反応(カップリング反応)させることにより、式(I)で示される、本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体を得ることができる。
【0033】
【化15】
【0034】
[式(I)中、R1、R2およびR3は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の直鎖状または分枝状のアルキル基あるいは、前記アルキル基を構成する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換されたフッ化アルキル基を表す。]
前述したように、上記式(III)においては、X2は、ハロゲン原子またはCF3SO3基であればよいが、特に、Br(臭素原子)、I(ヨウ素原子)であるのが好ましい。これにより、カップリング反応をより効率良く進行させることができる。
また、式(IV)で示されるアリールホウ酸誘導体は、例えば、対応するアリールリチウムまたはグリニャール試薬と、ホウ酸エステルとを反応させることにより得ることができる。
【0035】
本反応(本工程)においては、反応を行うための溶媒(反応溶媒)として、いかなるものを用いてもよいが、例えば、水と有機溶媒との混合系(2相系)を用いることができる。これにより、有機相中および2相の界面で進行するカップリング反応において、この反応により生ずる水溶性の副生成物を水相中に移動させることができる。その結果、本反応で得られる目的生成物の精製が容易になる。また、本工程中において、反応系内から(有機相から水相内へ)生成物(副生成物)が逐次、除去されることにより、反応をより円滑に進行させることができ、結果として、目的生成物である4−フェニルベンゾフェノン誘導体の収率をさらに高めることができる。この場合、有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等のベンゼン類、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン等のハロゲン系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル等のエステル類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の飽和炭化水素類等を単一または混合して用いることができるが、トルエンおよびキシレンよりなる群から選択される少なくとも1種を含むものであるのが好ましい。
【0036】
カップリング反応は、いかなる条件で行うものであってもよいが、例えば、塩基性溶液中で行うのが好ましい。これにより、カップリング反応を円滑に進行させることができる。塩基性溶液としては、例えば、塩基性物質として、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、リン酸カルシウム、酢酸カリウム等を含む溶液を用いることができる。
【0037】
また、ベンゾフェノン誘導体とアリールホウ酸誘導体との反応は、触媒を用いて行うが好ましい。これにより、カップリング反応をさらに円滑に進行させることができる。ベンゾフェノン誘導体とアリールホウ酸誘導体との反応(カップリング工程)で用いることができる触媒としては、例えば、パラジウム触媒、ニッケル触媒等が挙げられる。このような触媒における配位子としては、例えば、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(dppf)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(dppe)、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(dppp)、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(dppb)、ジフェニルホスフィノベンゼン−3−スルホン酸ナトリウム、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ(2−フリル)ホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(3−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(2−メチルフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン(PPh3)等のホスフィン配位子や、トリフェニルホスフィン(PPh3)等のホスフィン配位子、前記ホスフィン配位子のリン(P)をAsで置き換えたアルシン配位子(例えば、トリフェニルアルシン(As(PPh)3)等)、塩化物イオン、酢酸イオン等が挙げられる。
【0038】
ベンゾフェノン誘導体とアリールホウ酸誘導体との反応(カップリング工程)で好適に用いることができる触媒の具体例としては、例えば、Pd(PPh3)4(テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0))、Pd(dppb)Cl2(1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンパラジウム(II)ジクロライド)、PdCl2(PPh3)2(ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライド)、Pd(OAc)2(酢酸パラジウム(II))、PdCl2(塩化パラジウム(II))、Pd[PPh2(m−C6H4SO3Na)]3、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)ビス(トリ−o−トリルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライド、Pd(PPh3)2(OAc)2(ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)アセテート)、Pd(dppe)Cl2([1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(II)ジクロライド)等のパラジウム触媒、Ni(dppp)Cl2(1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンニッケル(II)ジクロライド)、Ni(PPh3)2Cl2(ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)ジクロライド)等のニッケル触媒等が挙げられるが、中でも、Pd(PPh3)4が好ましい。Pd(PPh3)4は、比較的容易に入手することができるものであるとともに、ベンゾフェノン誘導体とアリールホウ酸誘導体との反応をより効果的に促進することができる。
【0039】
カップリング反応の反応温度は、各成分(ベンゾフェノン誘導体、アリールホウ酸誘導体)の組成等により異なるが、通常、60〜160℃であるのが好ましく、80〜130℃であるのがより好ましい。反応温度が前記下限値未満であると、各成分の組成等によっては、カップリング反応が十分に進行しない場合がある。一方、反応温度が前記上限値を超えると、触媒や反応生成物の分解、副反応の増加等により収率低下が生じたり、反応終了後の精製工程に手間がかかるという場合がある。
【0040】
また、カップリング反応の反応時間は、各成分の組成や反応温度等により異なるが、通常、3〜72時間であるのが好ましく、10〜50時間であるのがより好ましい。反応時間が前記下限値未満であると、各成分の組成等によっては、カップリング反応が十分に進行しない場合がある。一方、反応時間が前記上限値を超えると、反応のさらなる進行を図ることが困難となり、目的生成物の収率のさらなる向上を図るのが困難となるばかりでなく、目的化合物の生産性(単位時間当たりの生産量)の低下を招くことになる。
【0041】
以上のような工程[2]を経て、式(I)で示される本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体が合成(製造)される。
このようにして得られる4−フェニルベンゾフェノン誘導体(I)は、優れた耐光性を有している。また、この4−フェニルベンゾフェノン誘導体(I)は、優れた化学的安定性を有している。これにより、この4−フェニルベンゾフェノン誘導体(I)を中間体として用いて製造される化合物(例えば、式(II)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体や、後述する高分子材料等)も耐光性等の各種特性に優れたものとなる。
【0042】
なお、前記工程[2]においては、例えば、抽出、洗浄、再結晶、クロマトグラフィ等の後処理操作により、生成物の精製、単離を行ってもよい。また、前記工程[2]において得られた化合物(合成物)に対する、このような後処理操作は、必要に応じて省略し、例えば、得られた生成物をそのまま次工程に供するようにしてもよい。
【0043】
[3]式(II)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体の合成(還元工程)
前記工程[2]で得られた、式(I)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体(ニトロ化合物)を還元することにより、式(II)で示される、本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体(ジアミン化合物)を得ることができる。
【0044】
【化16】
【0045】
[式(II)中、R1、R2およびR3は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の直鎖状または分枝状のアルキル基あるいは、前記アルキル基を構成する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換されたフッ化アルキル基を表す。]
式(I)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体(ニトロ化合物)の還元は、各種還元反応を利用することができるが、例えば、触媒(水素化触媒)を用いて、溶媒中で、4−フェニルベンゾフェノン誘導体(I)と、水素ガスとを接触させること(接触水素化法)により好適に行うことができる。
【0046】
本工程では、式(I)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体に接触するように、水素ガスを溶媒中に導入(添加)するのが好ましい。これにより、式(II)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体の収量をさらに増大させることができる。
水素ガスの使用量としては、式(I)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体の種類等により適宜設定されるものであり、特に限定されないが、式(I)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体1モルに対して、通常、5〜100モル程度とするのが好ましく、10〜50モル程度とするのがより好ましい。このような水素ガスの使用量範囲において、式(I)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体から式(II)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体への変換(水素化)を、より効率よく行うことができる。
【0047】
溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール類、シクロヘキサノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチロラクトン等のエステル類アセトン、メチルエチルケトン、メチル−イソブチルケトンまたはシクロヘキサノン等のケトン類、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸類、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド等のアミド類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等の二極性/中性溶媒、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素類やこれらのハロゲン化物(例えば、塩化メチレン等)が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
触媒(水素化触媒)としては、例えば、Fe、Ni(ラネーニッケルを含む)、Zn、Sn、Ru、Rh、Pd、Pt等の単体金属、Mg(Hg)−TiCl4、Al(Hg)等のアマルガム、Al2O3、Fe2O3、PtO2等の金属酸化物、TiCl3、TiCl4、CrCl2、FeCl2、FeCl3(水和物を含む)、CoCl2(水和物を含む)、NiCl2(水和物を含む)、NiCl2(PPh3)2、NiBr2(PPh3)2、NiI2(PPh3)2、CuCl、SnCl2(水和物を含む)、SnBr2、RhCl3(py)3、RuCl2(PPh3)3、PdCl2等の金属ハロゲン化物、硫化コバルト等の金属硫化物、Ni2B等の金属ホウ化物の他、Pd(OAc)2(PAr3)2、Pd(OAc)2、Cu(OAc)2、Cu(acac)2、Pd(acac)2、(PhCH2NEt3)Cl、Al2Te3、FeSO4等の金属化合物や、Se、活性炭素(グラファイト)等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記のような材料を担体に保持させたものを用いてもよい。これにより、還元反応をより円滑に進行させることができる。担体としては、例えば、活性炭素(グラファイト)、ケイ酸、シリカゲル、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化銅、硫酸銅、炭酸銅等が挙げられる。
【0049】
本発明では、上記のような触媒の中でも、パラジウム−活性炭素を用いるのが特に好ましい。これにより、還元反応をさらに円滑に進行させることができる。還元反応(水素化反応)の際の圧力は、特に限定されないが、還元反応(水素化反応)は、大気圧下で行われるものであるのが好ましい。これにより、比較的容易に、還元反応を十分に円滑に進行させ、式(II)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体の収量をさらに増大させることができる。
また、還元反応(水素化反応)の際の温度は、特に限定されないが、例えば、15〜120℃程度とするのが好ましく、20〜60℃程度とするのがより好ましい。これにより、還元反応を十分に円滑に進行させ、式(II)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体の収量をさらに増大させることができる。
【0050】
以上のような工程を経て式(II)で示される本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体が合成(製造)される。
上記のようにして得られる4−フェニルベンゾフェノン誘導体(II)は、優れた耐光性を有している。また、この4−フェニルベンゾフェノン誘導体(II)を中間体として用いて製造される化合物(例えば、後述する高分子材料等)も優れた耐光性を有するものとなる。
【0051】
また、上述した合成経路では、ベンジジン誘導体(分子内に芳香環を2個有するビフェニル誘導体)を中間体として経由することなく、4−フェニルベンゾフェノン誘導体を製造(合成)することができる。これにより、操作上(合成上)の安全性が向上するとともに、目的物質の収率も特に優れたものとすることができる。
【0052】
なお、前記工程[3]においては、例えば、抽出、洗浄、再結晶、クロマトグラフィ等の後処理操作により、生成物の精製、単離を行ってもよい。また、前記工程[3]において得られた化合物(合成物)に対する、このような後処理操作は、必要に応じて省略してもよい。
このようにして得られる4−フェニルベンゾフェノン誘導体(II)は、優れた耐光性を有している。また、この4−フェニルベンゾフェノン誘導体(II)は、優れた化学的安定性を有している。これにより、この4−フェニルベンゾフェノン誘導体(II)を中間体として用いて製造される化合物(例えば、ポリイミドのような高分子材料等)も耐光性等の各種特性に優れたものとなる。特に、本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体は、高分子材料の原料モノマーとして好適に用いることができ、液晶用配向材を構成する高分子材料の原料モノマーとして特に有用である。
【0053】
そして、本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体は、各種用途に用いることができるが、前述した4−フェニルベンゾフェノン誘導体を原料モノマー(中間体)として合成される高分子材料(ポリイミド)は、特に、従来用いられてきた高分子材料に比べ、特に優れた耐光性を有するとともに、優れた耐熱性を有し、高強度、高弾性である等、各種特性に優れたものである。したがって、本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体は、高分子材料の原料モノマー(中間体)として用いられるのが好ましく、液晶用配向材を構成する高分子材料の原料モノマーとして用いられるのがより好ましい。
【0054】
以上、本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体および4−フェニルベンゾフェノン誘導体の製造方法の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本発明では、必要に応じて、任意の工程を追加するようにしてもよい。
また、前記実施形態では、工程[3]において、式(I)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体(ニトロ化合物)のニトロ基を還元する方法として、接触水素化法を用いるものとして説明したが、ニトロ基の還元方法は、これに限定されるものではない。例えば、前記ニトロ化合物を、ジボラン、水素化ホウ素リチウム等の還元剤を用いて還元してもよいし、また、塩化亜鉛存在下、トリクロロシラン、トリプロピルシラン、トリエチルシラン等のヒドロシラン化合物を用いて還元してもよい。
【0055】
また、本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体は、前述したような用途に限定されるものではなく、いかなる用途に用いられるものであってもよい。例えば、各種ポリイミドコーテイング剤、あるいはポリイミド樹脂成形品、フィルム、繊維等に利用することができる。さらには、本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体は、例えば、エポキシ樹脂の硬化剤の材料としても極めて有用な化合物である。
【0056】
また、本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体を用いて合成される高分子材料は前述したようなポリイミドに限定されず、前述した4−フェニルベンゾフェノン誘導体を用いて製造されるものであれば、いかなるものであってもよく、例えば、ポリアミド、アミノ樹脂、ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリウレアや各種ポリマーアロイ、各種熱可塑性エラストマー等であってもよい。
【0057】
また、本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体は、前述したような用途に適用されるものに限定されず、例えば、各種光学素子、光学部品、光電変換素子、有機EL等の構成材料(例えば、有機ELの発光材料、電子輸送材料、正孔輸送材料等)やその原料(例えば、誘導体や高分子材料の構成モノマー等)等にも、好適に適用することができる。また、前述したように、本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体は、化学的安定性に優れるため、このような用途に用いた場合であっても、高耐久性等の優れた特性を発揮することができる。
【0058】
【実施例】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
(実施例1)
以下のようにして4−ニトロ−4’−(3−ニトロフェニル)−ベンゾフェノンを合成した。
【0059】
<1> まず、4−ニトロ−4’−ブロモベンゾフェノンを、次のようにして得た。
予め加熱した反応フラスコ中に、窒素雰囲気下、35.6g(0.26mmol)の塩化アルミニウム(関東化学社製)と、100mlの臭化ベンゼン(東京化成社製)とを加えた。
【0060】
さらに、反応液を氷冷下、19.8g(0.12mol)のp−ニトロベンゾイルクロリド(東京化成社製)の臭化ベンゼン(50ml)溶液を滴下した。
その後、反応液を、80℃まで昇温して、80℃で3時間攪拌した。
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、その後、この反応液を氷水中に投入した。
【0061】
その後、酢酸エチルを用いて、反応液から反応物を抽出した。
抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去して、シリカゲルカラムクロマトグラフィにて精製した。
これにより、下記式(VII)で示される4−ニトロ−4’−ブロモベンゾフェノン15.7g(0.05mol)gを得た。
【0062】
【化17】
【0063】
なお、4−ニトロ−4’−ブロモベンゾフェノンのp−ニトロベンゾイルクロリドからの収率は、69%であった。
【0064】
<2> そして、上記のようにして得られた4−ニトロ−4’−ブロモベンゾフェノンを用いて、以下のようにして4−ニトロ−4’−(3−ニトロフェニル)−ベンゾフェノンを合成した。
まず、予め乾燥した反応フラスコ中に、窒素雰囲気下、8.7g(28.4mmol)の前記4−ニトロ−4’−ブロモベンゾフェノンと、5.0g(30.0mmol)の3−ニトロフェニルホウ酸(アルドリッチ社製)と、0.3g(0.25mmol)のテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(東京化成社製)と、40mlの2M−炭酸ナトリウム溶液と、80mlのトルエンとを加え、100℃で60時間加熱還流した。
【0065】
反応終了後、反応液を室温まで冷却した。
その後、反応液に純水を加え、さらに、酢酸エチルを用いて、反応液から反応物を抽出した。
抽出液(有機層)を純水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、さらに、減圧下で溶媒を留去して、シリカゲルカラムクロマトグラフィにて精製した。
これにより、下記式(VIII)で示される4−ニトロ−4’−(3−ニトロフェニル)−ベンゾフェノン8.0g(23.0mmol)を得た。
【0066】
【化18】
【0067】
なお、生成物の確認は、IR、NMR、MSにより行った。
また、4−ニトロ−4’−(3−ニトロフェニル)−ベンゾフェノンの4−ニトロ−4’−ブロモベンゾフェノンからの収率は、81%であった。
生成物のIRデータ、NMRデータ、MSデータを下記に示す。なお、1H−NMRスペクトルのデータには、上記化学式(VIII)中に符号(a、b、c、d、e、f、g およびj )を付した各水素原子(H)の帰属をあわせて示した。
IRスペクトル( cm−1) ;3072, 1739, 1655, 1529(ニトロ基による特性吸収)、1352(ニトロ基による特性吸収)、1278,1101, 935, 852, 732
1H−NMRスペクトルδ (CDCl3 ) ; 7.70(1H, t, Hf), 7.80(2H, tt, Hc), 7.94−8.00(5H, m, Ha Hb He), 8.30(1H, qq, Hj), 8.39(2H, tt, Hg), 8.53(1H, t, Hd)
MSスペクトル(m/z); 348(M+),226, 170, 150, 104,76
(実施例2)
以下のようにして4−アミノ−4’−(3−アミノフェニル)−ベンゾフェノンを合成した。
<3> まず、窒素雰囲気下、前記実施例1で合成した4−ニトロ−4’−(3−ニトロフェニル)−ベンゾフェノン:5.0g(14.4mmol)と、パラジウム−活性炭素:0.5gと、酢酸エチル:150mlとを反応フラスコに加えた。
【0068】
そして、反応液中に水素ガスを100ml/分の割合で導入しつつ、24時間バブリングしながら攪拌した。
反応終了後、反応フラスコ内を窒素で置換した後、パラジウム−活性炭素をろ過により除去した。
そして、得られたろ液から、減圧下で溶媒を留去して、シリカゲルカラムクロマトグラフィにて精製した。
これにより、下記式(IX)で示される4−アミノ−4’−(3−アミノフェニル)−ベンゾフェノン3.3g(11.5mmol)を得た。
【0069】
【化19】
【0070】
なお、生成物の確認は、IR、NMR、MSにより行った。
また、4−アミノ−4’−(3−アミノフェニル)−ベンゾフェノンの4−ニトロ−4’−(3−ニトロフェニル)−ベンゾフェノンからの収率は、80%であった。
生成物のIRデータ、NMRデータ、MSデータを下記に示す。なお、1H−NMRスペクトルのデータには、上記化学式(IX)中に符号(a、b、c、d、e、f、g およびj )を付した各水素原子(H)の帰属をあわせて示した。
【0071】
IRスペクトル( cm−1) ; 3434,3343,3232,1630, 1599, 1580, 1534,1442,1317,1178,1150, 931, 842, 769,610
1H−NMRスペクトルδ (ACETN) ; 4.78(2H, bs, NH2), 5.56(2H, bs, NH2), 6.71(1H,qq、Hj),6.74(2H,dd,Hg),6.94(1H,qq,Hd),7.03(1H,t,He),7.17(1H,t,Hf),7.63−7.77(6H, m, Ha Hb Hc)
MSスペクトル(m/z); 288(M+),196, 167, 120, 92
【0072】
(実施例3)
前記工程<1>において、p−ニトロベンゾイルクロリド(東京化成社製)に代わり、下記式(X)で示される3−メチル−4−ニトロベンゾイルクロリドを用いた以外は前記実施例1と同様にして、4−フェニルベンゾフェノン誘導体(ニトロ化合物)を合成した。このような一連の反応により得られた4−フェニルベンゾフェノン誘導体(3−メチル−4−ニトロ−4’−(3−ニトロフェニル)−ベンゾフェノン)の構造式を下記式(XI)に示した。
【0073】
【化20】
【0074】
【化21】
【0075】
なお、生成物の確認は、IR、NMR、MSにより行った。
また、3−メチル−4−ニトロ−4’−(3−ニトロフェニル)−ベンゾフェノンの3−メチル−4−ニトロベンゾイルクロリドからの収率は、72%であった。
そして、式(XI)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体を用いて、前記実施例2と同様にして、4−フェニルベンゾフェノン誘導体(ジアミン化合物)を合成した。このような反応(還元反応)により得られた4−フェニルベンゾフェノン誘導体(4−アミノ−3−メチル−4’−(3−アミノフェニル)−ベンゾフェノン)の構造式を下記式(XII)に示した。
【0076】
【化22】
【0077】
なお、生成物の確認は、IR、NMR、MSにより行った。
また、4−アミノ−3−メチル−4’−(3−アミノフェニル)−ベンゾフェノンの3−メチル−4−ニトロ−4’−(3−ニトロフェニル)−ベンゾフェノンからの収率は、80%であった。
【0078】
(実施例4)
前記工程<2>において、3−ニトロフェニルホウ酸に代わり、下記式(XIII)で示される4−ニトロフェニルホウ酸を用いた以外は前記実施例1と同様にして、4−フェニルベンゾフェノン誘導体(ニトロ化合物)を合成した。このような一連の反応により得られた4−フェニルベンゾフェノン誘導体(4−ニトロ−4’−(4−ニトロフェニル)−ベンゾフェノン)の構造式を下記式(XIV)に示した。
【0079】
【化23】
【0080】
【化24】
【0081】
なお、生成物の確認は、IR、NMR、MSにより行った。
また、4−ニトロ−4’−(4−ニトロフェニル)−ベンゾフェノンのp−ニトロベンゾイルクロリドからの収率は、65%であった。
そして、式(XIV)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体を用いて、前記実施例2と同様にして、4−フェニルベンゾフェノン誘導体(ジアミン化合物)を合成した。このような反応(還元反応)により得られた4−フェニルベンゾフェノン誘導体(4−アミノ−4’−(4−アミノフェニル)−ベンゾフェノン)の構造式を下記式(XV)に示した。
【0082】
【化25】
【0083】
なお、生成物の確認は、IR、NMR、MSにより行った。
また、4−アミノ−4’−(4−アミノフェニル)−ベンゾフェノンの4−ニトロ−4’−(4−ニトロフェニル)−ベンゾフェノンからの収率は、75%であった。
【0084】
(実施例5)
前記工程<1>において、p−ニトロベンゾイルクロリドに代わり、下記式(XVI)で示される2−ニトロ−4−トリフルオロメチルベンゾイルクロリドを用いた以外は前記実施例1と同様にして、4−フェニルベンゾフェノン誘導体(ニトロ化合物)を合成した。このような一連の反応により得られた4−フェニルベンゾフェノン誘導体の構造式を下記式(XVII)に示した。
【0085】
【化26】
【0086】
【化27】
【0087】
なお、生成物の確認は、IR、NMR、MSにより行った。
また、2−ニトロ−4−トリフルオロメチル−4’−(3−ニトロフェニル)−ベンゾフェノンの2−ニトロ−4−トリフルオロメチルベンゾイルクロリドからの収率は、66%であった。
そして、式(XVII)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体を用いて、前記実施例2と同様にして、4−フェニルベンゾフェノン誘導体(ジアミン化合物)を合成した。このような反応(還元反応)により得られた4−フェニルベンゾフェノン誘導体(2−アミノ−4−トリフルオロメチル−4’−(3−アミノフェニル)−ベンゾフェノン)の構造式を下記式(XVIII)に示した。
【0088】
【化28】
【0089】
なお、生成物の確認は、IR、NMR、MSにより行った。
また、2−アミノ−4−トリフルオロメチル−4’−(3−アミノフェニル)−ベンゾフェノンの2−ニトロ−4−トリフルオロメチル−4’−(3−ニトロフェニル)−ベンゾフェノンからの収率は、82%であった。
【発明の属する技術分野】
本発明は、4−フェニルベンゾフェノン誘導体および4−フェニルベンゾフェノン誘導体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、ポリイミド材料は、一般に、耐熱性が高く、高強度、高弾性で機械的に優れ、高絶縁、低誘電で電気特性に優れる等、種々の特性に優れており、そのため、様々な分野、用途で使用されている。このようなポリイミド材料は、通常、テトラカルボン酸化合物やテトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物とを溶媒中で反応させることにより、ポリアミック酸を経由して製造されている。
【0003】
このようなポリイミド材料は、高耐熱性、高透明性という特徴を有することから、液晶プロジェクタ等の画像表示装置の液晶配向膜等にも利用されている(例えば、特許文献1参照)。一方、近年の画像表示装置(液晶プロジェクタ)の急速な高輝度化、小型化に伴い、耐熱性だけでなく、ポリイミド材料の耐光性が、画像表示装置の製品寿命に大きな影響を与えるようになってきている。しかしながら、従来のポリイミド材料は、十分な耐光性を有しておらず、その結果、従来のポリイミド材料で構成された配向膜は、上記のように高輝度化が進んだ画像表示装置において、長期間にわたって十分な配向膜特性を発揮するのが困難であった。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−136122号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐光性に優れた高分子材料、特に液晶用配向材の原料モノマーとして好適に用いることができる4−フェニルベンゾフェノン誘導体を提供すること、また、前記4−フェニルベンゾフェノン誘導体の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体は、下記式(I)
【化5】
[式(I)中、R1、R2およびR3は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の直鎖状または分枝状のアルキル基あるいは、前記アルキル基を構成する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換されたフッ化アルキル基を表す。]
で示されることを特徴とする。
これにより、耐光性に優れた新規4−フェニルベンゾフェノン誘導体を提供することができる。特に、耐光性に優れた高分子材料の原料として好適に用いることができる、新規4−フェニルベンゾフェノン誘導体を提供することができる。
【0007】
本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体は、下記式(II)
【化6】
[式(II)中、R1、R2およびR3は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の直鎖状または分枝状のアルキル基あるいは、前記アルキル基を構成する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換されたフッ化アルキル基を表す。]
で示されることを特徴とする。
これにより、耐光性に優れた新規4−フェニルベンゾフェノン誘導体を提供することができる。特に、耐光性に優れた高分子材料の原料として好適に用いることができる、新規4−フェニルベンゾフェノン誘導体を提供することができる。
【0008】
上記式(II)で示される本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体は、上記式(I)で示される本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体を用いて製造されたものであるのが好ましい。
これにより、耐光性に優れた新規4−フェニルベンゾフェノン誘導体を収率良く得ることができる。特に、耐光性に優れた高分子材料の原料として好適に用いることができる、新規4−フェニルベンゾフェノン誘導体を収率良く得ることができる。
【0009】
本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体の製造方法は、下記式(III)
【化7】
[式(III)中、R1およびR2は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の直鎖状または分枝状のアルキル基あるいは、前記アルキル基を構成する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換されたフッ化アルキル基を表し、X2は、ハロゲン原子またはCF3SO3−を表す。]
で示されるベンゾフェノン誘導体と、
下記式(IV)
【化8】
[式(IV)中、R3は、水素原子、炭素数1〜5の直鎖状または分枝状のアルキル基あるいは、前記アルキル基を構成する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換されたフッ化アルキル基を表す。]
で示されるアリールホウ酸誘導体とを、触媒の存在下において、塩基性溶液中で反応させるカップリング工程を有することを特徴とする。
【0010】
これにより、耐光性に優れた新規4−フェニルベンゾフェノン誘導体を提供することができる。特に、耐光性に優れた高分子材料の原料として好適に用いることができる、新規4−フェニルベンゾフェノン誘導体を収率良く提供することができる。また、分子内に2個の芳香環を有するベンジジン誘導体を経由することなく、4−フェニルベンゾフェノン誘導体を得ることができ、操作上の安全性が向上する。
【0011】
本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体の製造方法では、前記触媒は、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)であることが好ましい。
これにより、4−フェニルベンゾフェノン誘導体をより収率良く得ることができるとともに、生産コストの低減に寄与することができる。
本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体の製造方法では、前記カップリング工程の後に、ニトロ基を還元する還元工程を有することが好ましい。
これにより、4−フェニルベンゾフェノン誘導体を、高分子材料、特に、液晶用配向材を構成する高分子材料の製造に、より好適に用いることができる。
【0012】
本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体の製造方法では、前記還元工程は、触媒としてパラジウム−活性炭素を用いて行うものであることが好ましい。
これにより、還元反応をより円滑に進行させることができるとともに、ジアミン化合物としての4−フェニルベンゾフェノン誘導体をさらに収率良く得ることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体および4−フェニルベンゾフェノン誘導体の製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
<4−フェニルベンゾフェノン誘導体およびその製造方法(合成方法)>
まず、本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体および4−フェニルベンゾフェノン誘導体の製造方法について詳細に説明する。
本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体は、下記式(I)または下記式(II)で示される構造を有している。
【0014】
【化9】
【0015】
[式(I)中、R1、R2およびR3は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の直鎖状または分枝状のアルキル基あるいは、前記アルキル基を構成する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換されたフッ化アルキル基を表す。]
【0016】
【化10】
【0017】
[式(II)中、R1、R2およびR3は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の直鎖状または分枝状のアルキル基あるいは、前記アルキル基を構成する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換されたフッ化アルキル基を表す。]
なお、式(II)で示される本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体はその少なくとも一部が塩酸塩等の塩を形成していてもよい。
上記式(I)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体は、例えば、下記式(III)で示されるベンゾフェノン誘導体と、下記式(IV)で示されるアリールホウ酸誘導体とを反応させる(カップリングさせる)ことにより得ることができる。
【0018】
【化11】
【0019】
[式(III)中、R1およびR2は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の直鎖状または分枝状のアルキル基あるいは、前記アルキル基を構成する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換されたフッ化アルキル基を表し、X2は、ハロゲン原子またはCF3SO3−を表す。]
【0020】
【化12】
【0021】
[式(IV)中、R3は、水素原子、炭素数1〜5の直鎖状または分枝状のアルキル基あるいは、前記アルキル基を構成する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換されたフッ化アルキル基を表す。]
このようなカップリング反応を用いることにより、ベンジジン誘導体(分子内に芳香環を2個有するビフェニル誘導体)を中間体として経由することなく、4−フェニルベンゾフェノン誘導体を製造(合成)することができる。これにより、操作上(合成上)の安全性が向上するとともに、目的物質の収率も特に優れたものとすることができる。
【0022】
[1]式(III)で示されるベンゾフェノン誘導体の合成
上記式(I)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体の詳細な説明に先立ち、上記式(III)で示されるベンゾフェノン誘導体の合成方法の一例について説明する。
式(III)で示されるベンゾフェノン誘導体は、いかなる方法で調製されたものであってもよりが、例えば、下記式(V)で示されるハロゲン化ベンゾイル誘導体と、下記式(VI)で示されるハロゲン化アリールとを用いたフリーデル−クラフツ(Friedel−Crafts)反応により得ることができる。
【0023】
【化13】
【0024】
[式(V)中、R1は、水素原子、炭素数1〜5の直鎖状または分枝状のアルキル基あるいは、前記アルキル基を構成する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換されたフッ化アルキル基を表し、X1は、ハロゲン原子を表す。]
【0025】
【化14】
【0026】
[式(VI)中、R2は、水素原子、炭素数1〜5の直鎖状または分枝状のアルキル基あるいは、前記アルキル基を構成する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換されたフッ化アルキル基を表し、X2は、ハロゲン原子またはCF3SO3−を表す。]
前記のように、上記式(V)においては、X1は、ハロゲン原子であればよいが、特に、Cl(塩素原子)であるのが好ましい。これにより、副反応の進行を比較的容易に防止しつつ、上記式(V)で示されるハロゲン化ベンゾイル誘導体と、上記式(VI)で示されるハロゲン化アリールとを、適度な反応速度で反応させることができる。その結果、上記式(III)で示されるベンゾフェノン誘導体、延いては、上記式(I)、上記式(II)で示される本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体を、より容易かつ高収率で合成することができる。
【0027】
また、前述したように、上記式(VI)(および上記式(III))においては、X2は、ハロゲン原子またはCF3SO3基であればよいが、特に、Br(臭素原子)、I(ヨウ素原子)であるのが好ましい。これにより、後述するベンゾフェノン誘導体とアリールホウ酸誘導体との反応(カップリング反応)を、より効率良く進行させることができる。
【0028】
また、前記フリーデル−クラフツ反応では、例えば、AlCl3、AlBr3、FeCl3、SnCl4、BCl3、BF3、ZnCl2、SbCl5、TeCl2、TiCl4、BiCl3等のルイス酸(Lewis acid)を触媒として好適に用いることができる。中でも、反応促進性、取り扱いの容易さ、経済性等の点から、AlCl3、FeCl3が好ましい。
【0029】
また、反応溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、石油エーテル、トルエン、ベンゼン、キシレンのような炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタンのようなハロゲン化炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、酢酸エチル、酢酸メチルのようなエステル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリルのようなニトリル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメトキシエタン、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の各種有機溶媒が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記式(VI)で示されるハロゲン化アリールが液体である場合、当該ハロゲン化アリールを反応溶媒として用いることもできる。
【0030】
フリーデル−クラフツ反応の反応温度は、各成分(式(V)で示されるハロゲン化ベンゾイル誘導体、式(VI)で示されるハロゲン化アリール等)の組成等により異なるが、通常、15〜120℃であるのが好ましく、70〜110℃であるのがより好ましい。
また、フリーデル−クラフツ反応の反応時間は、各成分の組成や反応温度等により異なるが、通常、1〜12時間であるのが好ましく、2〜6時間であるのがより好ましい。
【0031】
以上のような工程[1]を経て、式(III)で示されるベンゾフェノン誘導体が合成(製造)される。
なお、前記工程においては、例えば、抽出、洗浄、再結晶、クロマトグラフィ等の後処理操作により、生成物の精製、単離等を行ってもよい。また、前記工程[1]において得られた化合物(合成物)に対する、このような後処理操作は、必要に応じて省略し、例えば、得られた生成物をそのまま次工程に供するようにしてもよい。
【0032】
[2]式(I)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体の合成(カップリング工程)
上記のようにして得られたベンゾフェノン誘導体(III)とアリールホウ酸誘導体(IV)とを反応(カップリング反応)させることにより、式(I)で示される、本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体を得ることができる。
【0033】
【化15】
【0034】
[式(I)中、R1、R2およびR3は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の直鎖状または分枝状のアルキル基あるいは、前記アルキル基を構成する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換されたフッ化アルキル基を表す。]
前述したように、上記式(III)においては、X2は、ハロゲン原子またはCF3SO3基であればよいが、特に、Br(臭素原子)、I(ヨウ素原子)であるのが好ましい。これにより、カップリング反応をより効率良く進行させることができる。
また、式(IV)で示されるアリールホウ酸誘導体は、例えば、対応するアリールリチウムまたはグリニャール試薬と、ホウ酸エステルとを反応させることにより得ることができる。
【0035】
本反応(本工程)においては、反応を行うための溶媒(反応溶媒)として、いかなるものを用いてもよいが、例えば、水と有機溶媒との混合系(2相系)を用いることができる。これにより、有機相中および2相の界面で進行するカップリング反応において、この反応により生ずる水溶性の副生成物を水相中に移動させることができる。その結果、本反応で得られる目的生成物の精製が容易になる。また、本工程中において、反応系内から(有機相から水相内へ)生成物(副生成物)が逐次、除去されることにより、反応をより円滑に進行させることができ、結果として、目的生成物である4−フェニルベンゾフェノン誘導体の収率をさらに高めることができる。この場合、有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等のベンゼン類、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン等のハロゲン系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル等のエステル類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の飽和炭化水素類等を単一または混合して用いることができるが、トルエンおよびキシレンよりなる群から選択される少なくとも1種を含むものであるのが好ましい。
【0036】
カップリング反応は、いかなる条件で行うものであってもよいが、例えば、塩基性溶液中で行うのが好ましい。これにより、カップリング反応を円滑に進行させることができる。塩基性溶液としては、例えば、塩基性物質として、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、リン酸カルシウム、酢酸カリウム等を含む溶液を用いることができる。
【0037】
また、ベンゾフェノン誘導体とアリールホウ酸誘導体との反応は、触媒を用いて行うが好ましい。これにより、カップリング反応をさらに円滑に進行させることができる。ベンゾフェノン誘導体とアリールホウ酸誘導体との反応(カップリング工程)で用いることができる触媒としては、例えば、パラジウム触媒、ニッケル触媒等が挙げられる。このような触媒における配位子としては、例えば、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(dppf)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(dppe)、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(dppp)、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(dppb)、ジフェニルホスフィノベンゼン−3−スルホン酸ナトリウム、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ(2−フリル)ホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(3−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(2−メチルフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン(PPh3)等のホスフィン配位子や、トリフェニルホスフィン(PPh3)等のホスフィン配位子、前記ホスフィン配位子のリン(P)をAsで置き換えたアルシン配位子(例えば、トリフェニルアルシン(As(PPh)3)等)、塩化物イオン、酢酸イオン等が挙げられる。
【0038】
ベンゾフェノン誘導体とアリールホウ酸誘導体との反応(カップリング工程)で好適に用いることができる触媒の具体例としては、例えば、Pd(PPh3)4(テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0))、Pd(dppb)Cl2(1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンパラジウム(II)ジクロライド)、PdCl2(PPh3)2(ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライド)、Pd(OAc)2(酢酸パラジウム(II))、PdCl2(塩化パラジウム(II))、Pd[PPh2(m−C6H4SO3Na)]3、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)ビス(トリ−o−トリルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライド、Pd(PPh3)2(OAc)2(ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)アセテート)、Pd(dppe)Cl2([1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(II)ジクロライド)等のパラジウム触媒、Ni(dppp)Cl2(1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンニッケル(II)ジクロライド)、Ni(PPh3)2Cl2(ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)ジクロライド)等のニッケル触媒等が挙げられるが、中でも、Pd(PPh3)4が好ましい。Pd(PPh3)4は、比較的容易に入手することができるものであるとともに、ベンゾフェノン誘導体とアリールホウ酸誘導体との反応をより効果的に促進することができる。
【0039】
カップリング反応の反応温度は、各成分(ベンゾフェノン誘導体、アリールホウ酸誘導体)の組成等により異なるが、通常、60〜160℃であるのが好ましく、80〜130℃であるのがより好ましい。反応温度が前記下限値未満であると、各成分の組成等によっては、カップリング反応が十分に進行しない場合がある。一方、反応温度が前記上限値を超えると、触媒や反応生成物の分解、副反応の増加等により収率低下が生じたり、反応終了後の精製工程に手間がかかるという場合がある。
【0040】
また、カップリング反応の反応時間は、各成分の組成や反応温度等により異なるが、通常、3〜72時間であるのが好ましく、10〜50時間であるのがより好ましい。反応時間が前記下限値未満であると、各成分の組成等によっては、カップリング反応が十分に進行しない場合がある。一方、反応時間が前記上限値を超えると、反応のさらなる進行を図ることが困難となり、目的生成物の収率のさらなる向上を図るのが困難となるばかりでなく、目的化合物の生産性(単位時間当たりの生産量)の低下を招くことになる。
【0041】
以上のような工程[2]を経て、式(I)で示される本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体が合成(製造)される。
このようにして得られる4−フェニルベンゾフェノン誘導体(I)は、優れた耐光性を有している。また、この4−フェニルベンゾフェノン誘導体(I)は、優れた化学的安定性を有している。これにより、この4−フェニルベンゾフェノン誘導体(I)を中間体として用いて製造される化合物(例えば、式(II)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体や、後述する高分子材料等)も耐光性等の各種特性に優れたものとなる。
【0042】
なお、前記工程[2]においては、例えば、抽出、洗浄、再結晶、クロマトグラフィ等の後処理操作により、生成物の精製、単離を行ってもよい。また、前記工程[2]において得られた化合物(合成物)に対する、このような後処理操作は、必要に応じて省略し、例えば、得られた生成物をそのまま次工程に供するようにしてもよい。
【0043】
[3]式(II)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体の合成(還元工程)
前記工程[2]で得られた、式(I)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体(ニトロ化合物)を還元することにより、式(II)で示される、本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体(ジアミン化合物)を得ることができる。
【0044】
【化16】
【0045】
[式(II)中、R1、R2およびR3は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の直鎖状または分枝状のアルキル基あるいは、前記アルキル基を構成する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換されたフッ化アルキル基を表す。]
式(I)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体(ニトロ化合物)の還元は、各種還元反応を利用することができるが、例えば、触媒(水素化触媒)を用いて、溶媒中で、4−フェニルベンゾフェノン誘導体(I)と、水素ガスとを接触させること(接触水素化法)により好適に行うことができる。
【0046】
本工程では、式(I)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体に接触するように、水素ガスを溶媒中に導入(添加)するのが好ましい。これにより、式(II)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体の収量をさらに増大させることができる。
水素ガスの使用量としては、式(I)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体の種類等により適宜設定されるものであり、特に限定されないが、式(I)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体1モルに対して、通常、5〜100モル程度とするのが好ましく、10〜50モル程度とするのがより好ましい。このような水素ガスの使用量範囲において、式(I)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体から式(II)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体への変換(水素化)を、より効率よく行うことができる。
【0047】
溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール類、シクロヘキサノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチロラクトン等のエステル類アセトン、メチルエチルケトン、メチル−イソブチルケトンまたはシクロヘキサノン等のケトン類、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸類、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド等のアミド類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等の二極性/中性溶媒、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素類やこれらのハロゲン化物(例えば、塩化メチレン等)が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
触媒(水素化触媒)としては、例えば、Fe、Ni(ラネーニッケルを含む)、Zn、Sn、Ru、Rh、Pd、Pt等の単体金属、Mg(Hg)−TiCl4、Al(Hg)等のアマルガム、Al2O3、Fe2O3、PtO2等の金属酸化物、TiCl3、TiCl4、CrCl2、FeCl2、FeCl3(水和物を含む)、CoCl2(水和物を含む)、NiCl2(水和物を含む)、NiCl2(PPh3)2、NiBr2(PPh3)2、NiI2(PPh3)2、CuCl、SnCl2(水和物を含む)、SnBr2、RhCl3(py)3、RuCl2(PPh3)3、PdCl2等の金属ハロゲン化物、硫化コバルト等の金属硫化物、Ni2B等の金属ホウ化物の他、Pd(OAc)2(PAr3)2、Pd(OAc)2、Cu(OAc)2、Cu(acac)2、Pd(acac)2、(PhCH2NEt3)Cl、Al2Te3、FeSO4等の金属化合物や、Se、活性炭素(グラファイト)等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記のような材料を担体に保持させたものを用いてもよい。これにより、還元反応をより円滑に進行させることができる。担体としては、例えば、活性炭素(グラファイト)、ケイ酸、シリカゲル、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化銅、硫酸銅、炭酸銅等が挙げられる。
【0049】
本発明では、上記のような触媒の中でも、パラジウム−活性炭素を用いるのが特に好ましい。これにより、還元反応をさらに円滑に進行させることができる。還元反応(水素化反応)の際の圧力は、特に限定されないが、還元反応(水素化反応)は、大気圧下で行われるものであるのが好ましい。これにより、比較的容易に、還元反応を十分に円滑に進行させ、式(II)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体の収量をさらに増大させることができる。
また、還元反応(水素化反応)の際の温度は、特に限定されないが、例えば、15〜120℃程度とするのが好ましく、20〜60℃程度とするのがより好ましい。これにより、還元反応を十分に円滑に進行させ、式(II)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体の収量をさらに増大させることができる。
【0050】
以上のような工程を経て式(II)で示される本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体が合成(製造)される。
上記のようにして得られる4−フェニルベンゾフェノン誘導体(II)は、優れた耐光性を有している。また、この4−フェニルベンゾフェノン誘導体(II)を中間体として用いて製造される化合物(例えば、後述する高分子材料等)も優れた耐光性を有するものとなる。
【0051】
また、上述した合成経路では、ベンジジン誘導体(分子内に芳香環を2個有するビフェニル誘導体)を中間体として経由することなく、4−フェニルベンゾフェノン誘導体を製造(合成)することができる。これにより、操作上(合成上)の安全性が向上するとともに、目的物質の収率も特に優れたものとすることができる。
【0052】
なお、前記工程[3]においては、例えば、抽出、洗浄、再結晶、クロマトグラフィ等の後処理操作により、生成物の精製、単離を行ってもよい。また、前記工程[3]において得られた化合物(合成物)に対する、このような後処理操作は、必要に応じて省略してもよい。
このようにして得られる4−フェニルベンゾフェノン誘導体(II)は、優れた耐光性を有している。また、この4−フェニルベンゾフェノン誘導体(II)は、優れた化学的安定性を有している。これにより、この4−フェニルベンゾフェノン誘導体(II)を中間体として用いて製造される化合物(例えば、ポリイミドのような高分子材料等)も耐光性等の各種特性に優れたものとなる。特に、本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体は、高分子材料の原料モノマーとして好適に用いることができ、液晶用配向材を構成する高分子材料の原料モノマーとして特に有用である。
【0053】
そして、本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体は、各種用途に用いることができるが、前述した4−フェニルベンゾフェノン誘導体を原料モノマー(中間体)として合成される高分子材料(ポリイミド)は、特に、従来用いられてきた高分子材料に比べ、特に優れた耐光性を有するとともに、優れた耐熱性を有し、高強度、高弾性である等、各種特性に優れたものである。したがって、本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体は、高分子材料の原料モノマー(中間体)として用いられるのが好ましく、液晶用配向材を構成する高分子材料の原料モノマーとして用いられるのがより好ましい。
【0054】
以上、本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体および4−フェニルベンゾフェノン誘導体の製造方法の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本発明では、必要に応じて、任意の工程を追加するようにしてもよい。
また、前記実施形態では、工程[3]において、式(I)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体(ニトロ化合物)のニトロ基を還元する方法として、接触水素化法を用いるものとして説明したが、ニトロ基の還元方法は、これに限定されるものではない。例えば、前記ニトロ化合物を、ジボラン、水素化ホウ素リチウム等の還元剤を用いて還元してもよいし、また、塩化亜鉛存在下、トリクロロシラン、トリプロピルシラン、トリエチルシラン等のヒドロシラン化合物を用いて還元してもよい。
【0055】
また、本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体は、前述したような用途に限定されるものではなく、いかなる用途に用いられるものであってもよい。例えば、各種ポリイミドコーテイング剤、あるいはポリイミド樹脂成形品、フィルム、繊維等に利用することができる。さらには、本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体は、例えば、エポキシ樹脂の硬化剤の材料としても極めて有用な化合物である。
【0056】
また、本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体を用いて合成される高分子材料は前述したようなポリイミドに限定されず、前述した4−フェニルベンゾフェノン誘導体を用いて製造されるものであれば、いかなるものであってもよく、例えば、ポリアミド、アミノ樹脂、ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリウレアや各種ポリマーアロイ、各種熱可塑性エラストマー等であってもよい。
【0057】
また、本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体は、前述したような用途に適用されるものに限定されず、例えば、各種光学素子、光学部品、光電変換素子、有機EL等の構成材料(例えば、有機ELの発光材料、電子輸送材料、正孔輸送材料等)やその原料(例えば、誘導体や高分子材料の構成モノマー等)等にも、好適に適用することができる。また、前述したように、本発明の4−フェニルベンゾフェノン誘導体は、化学的安定性に優れるため、このような用途に用いた場合であっても、高耐久性等の優れた特性を発揮することができる。
【0058】
【実施例】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
(実施例1)
以下のようにして4−ニトロ−4’−(3−ニトロフェニル)−ベンゾフェノンを合成した。
【0059】
<1> まず、4−ニトロ−4’−ブロモベンゾフェノンを、次のようにして得た。
予め加熱した反応フラスコ中に、窒素雰囲気下、35.6g(0.26mmol)の塩化アルミニウム(関東化学社製)と、100mlの臭化ベンゼン(東京化成社製)とを加えた。
【0060】
さらに、反応液を氷冷下、19.8g(0.12mol)のp−ニトロベンゾイルクロリド(東京化成社製)の臭化ベンゼン(50ml)溶液を滴下した。
その後、反応液を、80℃まで昇温して、80℃で3時間攪拌した。
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、その後、この反応液を氷水中に投入した。
【0061】
その後、酢酸エチルを用いて、反応液から反応物を抽出した。
抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去して、シリカゲルカラムクロマトグラフィにて精製した。
これにより、下記式(VII)で示される4−ニトロ−4’−ブロモベンゾフェノン15.7g(0.05mol)gを得た。
【0062】
【化17】
【0063】
なお、4−ニトロ−4’−ブロモベンゾフェノンのp−ニトロベンゾイルクロリドからの収率は、69%であった。
【0064】
<2> そして、上記のようにして得られた4−ニトロ−4’−ブロモベンゾフェノンを用いて、以下のようにして4−ニトロ−4’−(3−ニトロフェニル)−ベンゾフェノンを合成した。
まず、予め乾燥した反応フラスコ中に、窒素雰囲気下、8.7g(28.4mmol)の前記4−ニトロ−4’−ブロモベンゾフェノンと、5.0g(30.0mmol)の3−ニトロフェニルホウ酸(アルドリッチ社製)と、0.3g(0.25mmol)のテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(東京化成社製)と、40mlの2M−炭酸ナトリウム溶液と、80mlのトルエンとを加え、100℃で60時間加熱還流した。
【0065】
反応終了後、反応液を室温まで冷却した。
その後、反応液に純水を加え、さらに、酢酸エチルを用いて、反応液から反応物を抽出した。
抽出液(有機層)を純水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、さらに、減圧下で溶媒を留去して、シリカゲルカラムクロマトグラフィにて精製した。
これにより、下記式(VIII)で示される4−ニトロ−4’−(3−ニトロフェニル)−ベンゾフェノン8.0g(23.0mmol)を得た。
【0066】
【化18】
【0067】
なお、生成物の確認は、IR、NMR、MSにより行った。
また、4−ニトロ−4’−(3−ニトロフェニル)−ベンゾフェノンの4−ニトロ−4’−ブロモベンゾフェノンからの収率は、81%であった。
生成物のIRデータ、NMRデータ、MSデータを下記に示す。なお、1H−NMRスペクトルのデータには、上記化学式(VIII)中に符号(a、b、c、d、e、f、g およびj )を付した各水素原子(H)の帰属をあわせて示した。
IRスペクトル( cm−1) ;3072, 1739, 1655, 1529(ニトロ基による特性吸収)、1352(ニトロ基による特性吸収)、1278,1101, 935, 852, 732
1H−NMRスペクトルδ (CDCl3 ) ; 7.70(1H, t, Hf), 7.80(2H, tt, Hc), 7.94−8.00(5H, m, Ha Hb He), 8.30(1H, qq, Hj), 8.39(2H, tt, Hg), 8.53(1H, t, Hd)
MSスペクトル(m/z); 348(M+),226, 170, 150, 104,76
(実施例2)
以下のようにして4−アミノ−4’−(3−アミノフェニル)−ベンゾフェノンを合成した。
<3> まず、窒素雰囲気下、前記実施例1で合成した4−ニトロ−4’−(3−ニトロフェニル)−ベンゾフェノン:5.0g(14.4mmol)と、パラジウム−活性炭素:0.5gと、酢酸エチル:150mlとを反応フラスコに加えた。
【0068】
そして、反応液中に水素ガスを100ml/分の割合で導入しつつ、24時間バブリングしながら攪拌した。
反応終了後、反応フラスコ内を窒素で置換した後、パラジウム−活性炭素をろ過により除去した。
そして、得られたろ液から、減圧下で溶媒を留去して、シリカゲルカラムクロマトグラフィにて精製した。
これにより、下記式(IX)で示される4−アミノ−4’−(3−アミノフェニル)−ベンゾフェノン3.3g(11.5mmol)を得た。
【0069】
【化19】
【0070】
なお、生成物の確認は、IR、NMR、MSにより行った。
また、4−アミノ−4’−(3−アミノフェニル)−ベンゾフェノンの4−ニトロ−4’−(3−ニトロフェニル)−ベンゾフェノンからの収率は、80%であった。
生成物のIRデータ、NMRデータ、MSデータを下記に示す。なお、1H−NMRスペクトルのデータには、上記化学式(IX)中に符号(a、b、c、d、e、f、g およびj )を付した各水素原子(H)の帰属をあわせて示した。
【0071】
IRスペクトル( cm−1) ; 3434,3343,3232,1630, 1599, 1580, 1534,1442,1317,1178,1150, 931, 842, 769,610
1H−NMRスペクトルδ (ACETN) ; 4.78(2H, bs, NH2), 5.56(2H, bs, NH2), 6.71(1H,qq、Hj),6.74(2H,dd,Hg),6.94(1H,qq,Hd),7.03(1H,t,He),7.17(1H,t,Hf),7.63−7.77(6H, m, Ha Hb Hc)
MSスペクトル(m/z); 288(M+),196, 167, 120, 92
【0072】
(実施例3)
前記工程<1>において、p−ニトロベンゾイルクロリド(東京化成社製)に代わり、下記式(X)で示される3−メチル−4−ニトロベンゾイルクロリドを用いた以外は前記実施例1と同様にして、4−フェニルベンゾフェノン誘導体(ニトロ化合物)を合成した。このような一連の反応により得られた4−フェニルベンゾフェノン誘導体(3−メチル−4−ニトロ−4’−(3−ニトロフェニル)−ベンゾフェノン)の構造式を下記式(XI)に示した。
【0073】
【化20】
【0074】
【化21】
【0075】
なお、生成物の確認は、IR、NMR、MSにより行った。
また、3−メチル−4−ニトロ−4’−(3−ニトロフェニル)−ベンゾフェノンの3−メチル−4−ニトロベンゾイルクロリドからの収率は、72%であった。
そして、式(XI)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体を用いて、前記実施例2と同様にして、4−フェニルベンゾフェノン誘導体(ジアミン化合物)を合成した。このような反応(還元反応)により得られた4−フェニルベンゾフェノン誘導体(4−アミノ−3−メチル−4’−(3−アミノフェニル)−ベンゾフェノン)の構造式を下記式(XII)に示した。
【0076】
【化22】
【0077】
なお、生成物の確認は、IR、NMR、MSにより行った。
また、4−アミノ−3−メチル−4’−(3−アミノフェニル)−ベンゾフェノンの3−メチル−4−ニトロ−4’−(3−ニトロフェニル)−ベンゾフェノンからの収率は、80%であった。
【0078】
(実施例4)
前記工程<2>において、3−ニトロフェニルホウ酸に代わり、下記式(XIII)で示される4−ニトロフェニルホウ酸を用いた以外は前記実施例1と同様にして、4−フェニルベンゾフェノン誘導体(ニトロ化合物)を合成した。このような一連の反応により得られた4−フェニルベンゾフェノン誘導体(4−ニトロ−4’−(4−ニトロフェニル)−ベンゾフェノン)の構造式を下記式(XIV)に示した。
【0079】
【化23】
【0080】
【化24】
【0081】
なお、生成物の確認は、IR、NMR、MSにより行った。
また、4−ニトロ−4’−(4−ニトロフェニル)−ベンゾフェノンのp−ニトロベンゾイルクロリドからの収率は、65%であった。
そして、式(XIV)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体を用いて、前記実施例2と同様にして、4−フェニルベンゾフェノン誘導体(ジアミン化合物)を合成した。このような反応(還元反応)により得られた4−フェニルベンゾフェノン誘導体(4−アミノ−4’−(4−アミノフェニル)−ベンゾフェノン)の構造式を下記式(XV)に示した。
【0082】
【化25】
【0083】
なお、生成物の確認は、IR、NMR、MSにより行った。
また、4−アミノ−4’−(4−アミノフェニル)−ベンゾフェノンの4−ニトロ−4’−(4−ニトロフェニル)−ベンゾフェノンからの収率は、75%であった。
【0084】
(実施例5)
前記工程<1>において、p−ニトロベンゾイルクロリドに代わり、下記式(XVI)で示される2−ニトロ−4−トリフルオロメチルベンゾイルクロリドを用いた以外は前記実施例1と同様にして、4−フェニルベンゾフェノン誘導体(ニトロ化合物)を合成した。このような一連の反応により得られた4−フェニルベンゾフェノン誘導体の構造式を下記式(XVII)に示した。
【0085】
【化26】
【0086】
【化27】
【0087】
なお、生成物の確認は、IR、NMR、MSにより行った。
また、2−ニトロ−4−トリフルオロメチル−4’−(3−ニトロフェニル)−ベンゾフェノンの2−ニトロ−4−トリフルオロメチルベンゾイルクロリドからの収率は、66%であった。
そして、式(XVII)で示される4−フェニルベンゾフェノン誘導体を用いて、前記実施例2と同様にして、4−フェニルベンゾフェノン誘導体(ジアミン化合物)を合成した。このような反応(還元反応)により得られた4−フェニルベンゾフェノン誘導体(2−アミノ−4−トリフルオロメチル−4’−(3−アミノフェニル)−ベンゾフェノン)の構造式を下記式(XVIII)に示した。
【0088】
【化28】
【0089】
なお、生成物の確認は、IR、NMR、MSにより行った。
また、2−アミノ−4−トリフルオロメチル−4’−(3−アミノフェニル)−ベンゾフェノンの2−ニトロ−4−トリフルオロメチル−4’−(3−ニトロフェニル)−ベンゾフェノンからの収率は、82%であった。
Claims (7)
- 請求項1に記載の4−フェニルベンゾフェノン誘導体を用いて製造された請求項2に記載の4−フェニルベンゾフェノン誘導体。
- 下記式(III)
で示されるベンゾフェノン誘導体と、
下記式(IV)
で示されるアリールホウ酸誘導体とを、触媒の存在下において、塩基性溶液中で反応させるカップリング工程を有することを特徴とする4−フェニルベンゾフェノン誘導体の製造方法。 - 前記触媒は、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)である請求項4に記載の4−フェニルベンゾフェノン誘導体の製造方法。
- 前記カップリング工程の後に、ニトロ基を還元する還元工程を有する請求項4または5に記載の4−フェニルベンゾフェノン誘導体の製造方法。
- 前記還元工程は、触媒としてパラジウム−活性炭素を用いて行うものである請求項6に記載の4−フェニルベンゾフェノン誘導体の製造方法。
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2003
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