JP2004306610A - 写真類似のインクジェット記録シート - Google Patents

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Abstract

【課題】
許容し得る光沢を呈するが、従来技術の諸問題の全て、又は少なくともほとんどを回避するコーティングをその上に有する印刷媒体を提供する。
【解決手段】
インクジェットプリンタを用いて印刷する際に写真類似画像をもたらすインクジェット記録シート(10)を提供する。当該記録シート(10)は、2層のコーティング(14、16)から成る。下層(14)はアモルファスシリカからなり、上層(16)は球状コロイドシリカからなる。両シリカとも、陽イオン性とされている。当該記録シート(10)は、速い乾燥時間、優れた画像品質及び優れた耐水性、取り扱い性をもたらす。
【選択図】図1

Description

本発明は、概して、インクジェット印刷に関し、より詳細には、インクジェット印刷に使用される印刷媒体に関する。
インクジェット記録シート、即ち、写真品質印刷のための光沢のある表面をもった印刷媒体を製造する方法は色々知られている。その一例は、インク受容層にアルミナを利用する単一層コート紙に関するものである。紙ベース上にアルミナがコーティングされている市販紙は、優れた光沢と吸収力をもたらすことができるが、引っ掻き耐性、空気退色耐性が不十分であり且つ紙が濡れているとしわになるという問題がある。
第二の例は、アルミナからなる基層及びコロイドシリカからなる上層をもつコーティングに関するものである。当該設計は、引っ掻き耐性には寄与したが、耐光性が比較的低く、空気退色耐性が不十分であり、湿り状態でにじみがあるという問題を示した。これらの問題は、全てアルミナ顔料に関わるものである。他の重要な顔料はシリカである。シリカ顔料に基づくコーティングは、より十分な多孔度を有し、吸湿性が低く且つ比較的良好な空気及び光退色耐性を示す。
第三の例は、多孔質(アモルファス)のシリカ顔料からなる単一層を有する製品に関するものである。しかしながら、当該製品は、光沢が低く、典型的に、20度の入射角で(測定時)20光沢単位を下回るものであった。
最後に、陰イオン性のアモルファス多孔性シリカ上にコーティングされている陰イオン性球形シリカを利用するインクジェット受容シートも既に開発されている。当該設計は、優れた画質と光沢をもたらすが、耐水性及び耐湿性性能は、使用されるブラック顔料が負の電荷を帯びているため、カラーインク中では通常陰イオン性である染料分子に対する媒染力が無いため、好まれるほど優れてはいない。
このように、陰イオン性SiOは利用できるが、単一層として十分な光沢と多孔性との両方を同時にもたらすものではない。陰イオン性アモルファスSiO(下層)と陰イオン性球形SiO(上層)との2層の組合せ(インク受容層)は十分な光沢をもたらすが、耐水性、耐湿性、及び染料(陰イオン性)に対する受容層の親和力は十分でない。先に議論したように、2層の組合せには、Al(下層)とSiO(上層)との組合せが包含されるが、これはまた、上述したように、不適当である。
許容し得る光沢を呈するが、従来技術の諸問題の全て、又は少なくともほとんどを回避するコーティングをその上に有する印刷媒体が必要とされている。
本明細書で開示する実施形態によれば、インクジェットプリンタを用いて印刷する際に写真類似画像を達成するインクジェット記録シートが提供される。「写真類似」とは、当該画像が、本質的に、従来のハロゲン銀写真と同等であるということを意味する。記録シートは、2層コーティングからなる。下部層、即ち第一の層は、アモルファスシリカからなり、上部層、即ち第二の層は、球形シリカからなる。両シリカ層は、クロルヒドロキシアルミニウムを使うか又は陽イオン性ポリマーを用いて処理することで陽イオン性となる。当該記録シートは、優れた光沢、速い乾燥時間、優れた画質、及び優秀な耐水性と取扱い性を実現することができる。
インクジェット記録シートを製造する方法は、
(a)基材を設けるステップと、
(b)(1)アモルファスSiOを設け、(2)陽イオン誘導性化合物にそのアモルファスSiOを付加して分散物を形成し、(3)必要ならば、そのpHを約4に調節し、(4)前記分散物を結合剤と混合して混合物を形成させ、そして(5)該混合物を基材上にコーティングすることによって基材上に第一の層を形成するステップと、
(c)(1)球形シリカを設け、(2)その球形シリカを、あったとしても微量の結合剤と混合し、そして(3)前記第一の層の上にその球形シリカをコーティングすることによって前記第一の層上に第二の層を形成するステップと、
を包含する。
2層は、例えば、カスケードコーティング又はカーテンコーティングを用いるような単一パスモードで、又は2つの別個の処理で、の何れかによって基材上に形成することができる。
本明細書に開示するインクジェット受容シートは、優れたインク受容能力と共に、画像光沢、耐水性、及び耐湿性を同時に実現することができる。さらに、当該インクジェット受容シートは、単一被覆層の製品よりも改善された引っ掻き耐性と優れたインク受容多孔度をもたらすものであり、インク受容層にアモルファスシリカ層を利用する点でアルミナ/シリカの2層製品とは異なっている。従って、単一層のアモルファスシリカ層より優れた光及び空気退色耐性をもたらし、且つ優れた光沢を実現するものである。最後に、当該インクジェット受容シートは、比較的優れた耐水性と耐湿性特性をもたらす点で、二種のシリカを用いる対処法より優れている。
インクジェット受容シート10は、基材12上に2層のコーティングを含む。
コーティングの下部、即ち第一の層14は、アモルファスシリカ、好ましくは、ヒュームドシリカ又はシリカゲルからなる。シリカを適当な薬剤で処理して、シリカを陽イオン性にする。陽イオン性シリカは、陽イオン媒染剤に対して良好な相容性を有しており、均一且つ平滑なコーティングを形成する。当該シリカは、凝集体の形態である。凝集体の粒径は、約50〜500nmである。凝集体中の一次粒子は、粒径が5〜30nmの範囲にであり、表面積は100〜350m/gである。適切な量の結合剤を使えば、下層は、約0.8〜1.2cm/gの多孔度を有するインク受容層を形成する。結合剤の比率は、シリカ/結合剤組成物全体の15%−30%の範囲にある。コーティング14の厚みは、印刷に採用される特定のインクジェットプリンタのインクフラックスに応じて、18〜40g/mの範囲で変化させることができる。
コーティングの上部、即ち第二の層16は、球形コロイドシリカからなる。当該シリカの粒径は、30〜150nmの範囲にある。上層における結合剤の比率は、適応される印刷速度に応じて、シリカ/結合剤組成物全体の0〜15%の範囲とする。上層16中の球形シリカはまた、適切な処理によって陽イオン性となる。重ねて、陽イオン化処理は、下部層に対して、並びに上部もしくは下部層に添加される染料媒染剤に対して、顔料をより順応させる。上層16の厚みは0.1〜10ミクロン、即ち0.1〜12g/mのコーティング重量である。
基材12には、受容層を支持するのに通常用いられる任意の材料を用いることができ、例として、ポリエチレン押出し写真ベース(P−E写真ベース)、フィルムベース、及び大判(highly sized)の紙ベースが挙げられる。好ましくは、基材としては、その比較的高い光沢、耐水性、及び(写真のような)「感触」の理由から、P−E写真ベースを採用する。
下側の層14(アモルファスSiO)は、印刷媒体上に印刷されるインクのために比較的高い容量を有しており、この場合、インクロード(インクの載せ量)は、23〜24cm/mのオーダーにある。下側層の厚みは、そのインクロードを十分受容できる厚さであり、又は換言すれば、1gのアモルファスSiOは約0.9〜1gのインクを吸収できる。これによって、下側層14の厚みは約25〜30g/mとなる。
下側層14に用いられるアモルファスSiOは、5〜30nmの範囲の直径を有する粒子からなる。これらの粒子は、凝集することで二次粒子を形成し、これは破断に対して安定である。その結果、二次粒子は比較的大きい細孔容積を生じる。下側層14の細孔径は、約10〜40nmの範囲にあり、好ましくは、約25nmである。細孔径が小さすぎるとインク吸収率が十分には高くなく、一方、細孔径が大きすぎると光沢が低く許容し難い。
アモルファスSiOは、ヒュームドシリカから誘導して、分散させる。即ち、アモルファスヒュームドシリカは、集塊物として使用できる。その集塊物を、例えば、せん断により、分散させて凝集体を形成する。あるいはまた、グランド(ground)シリカゲルを使ってアモルファスSiO層を形成することもできる。ここでは、当該アモルファスシリカゲルを、物理的粉砕によるなどして、より小さい粒子へと砕いている。
上側層16(球形SiO)は、下側層14に比較して、それほど多孔質ではなく、従って、製品に所望の光沢をもたらす。上側層16の厚みは約0.1〜10g/mである。粒径は25〜100nmの範囲内、好ましくは、約50〜75nmである。粒径が大きすぎると、不透明度が高すぎ、染料浸透に起因して明るい色を生成せず、一方、粒径が小さすぎると、孔が小さすぎ、従ってインク吸収率が十分に高くならない。また、粒径が小さすぎると、染料が用紙の上面に残される、所謂ブロンズ現象を引き起こすことになる。
製品を製造する処理ステップは以下の通りである。
(a)(1)粉末状ヒュームドSiOを設け、(2)陽イオン誘導性化合物に前記SiOを添加し、(3)必要ならば、適当な塩基を用いてそのpHを約4に調節して水酸基含有多価金属塩に前記シリカを分散させ、(4)該分散物を結合剤と混合し、そして(5)該混合物を基材12上にコーティングすることによって基材上に下部層を形成し、
(b)(1)陽イオン性球形シリカを設け、(2)該球形シリカを、あったとしても微量の結合剤と混合し、そして(3)下部層の上に前記球形シリカをコーティングすることによって上層16を形成する。
陽イオン誘導性化合物をヒュームドシリカに添加することで、早くも約4のpHを有するシリカを生成することができる。もしそうでなければ、適切な酸を用いて、pHを所望のpHに調節する。
「微量の結合剤」とは、約5%未満の結合剤を意味する。
陽イオン誘導性化合物は、水酸基含有多価金属塩及び陽イオン性樹脂から成る群から選択される。
水酸基含有多価金属塩の一例は、クロルヒドロキシアルミニウム(ACH)、陽イオン変性剤、である。前述の多価金属塩は、G.B.Alexanderらによる、1961年11月7日付けの米国特許第3、007、878号、表題「Aquasols of Positively−Charged Coated Silica Particles and Their Production」に既に記載されており、その内容は参照することで本明細書に取り入れることとする。これらの水酸基含有多価金属塩は、金属酸化物、金属水酸化物及び水和金属酸化物から成る部類のうちの物質であり、各々の場合において金属は3〜4の原子価を有する。典型的な金属原子は、アルミニウム、チタニア、ジルコニア及びトリアである。好ましいACH化合物は、Al(OH)Clであり、ここでx及びyは、x:yの比が1:2から1:2.8の間になるように選択される。その好適例は、Al(OH)Clである。
ACH(又は水酸基含有多価金属塩)を添加する代わりに、陽イオン性試薬又は陽イオン性ポリマー(樹脂)を用いることができる。重ねて、そのpHは、要求されるように4に調節する。陽イオン性試薬及び樹脂の例として、限定はしないが、ポリアルキレンポリアミン(例えば、ポリエチレンポリアミン及びポリプロピレンポリアミン)、第一、第二、もしくは第三アミノ基又は第四アンモニウム基を有するシリカカップリング剤(例えば、アミノ−プロピルトリエトキシシラン)、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、ジエチレントリアミンプロピルトリエトキシシラン、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド、ジメトキシシリルメチルプロピル変性ポリエチレンイミン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、及びアミノアルキルシルセスキオキサンが挙げられる。ここで適切に使用し得る陽イオン性樹脂にはまた、ポリカチオン陽イオン性樹脂(例えば、ポリアミドアミン−エピクロロヒドリン付加生成物)も含まれる。
さらに他の実施形態のように、水酸基含有多価金属塩(例えば、ACH)及び陽イオン性ポリマーの両方を用いて陰イオン性シリカを陽イオン性にすることができる。
分散処理中に、ACH(又は陽イオン性ポリマー)とSiOの組合せは協働して、シリカ粒子表面上にACH(又は陽イオン性ポリマー)が分散することによって、陰イオン性のシリカ表面を陽イオン性表面に変換し、それによってその表面は水中で安定になるのである。この処理の結果、上述のpH=4の条件下において、当該表面上に正のゼータ(ζ)電位が存在するのである。
本明細書に開示する実施形態を実施するために使用される結合剤の一例は、水溶性及び水分散性のポリ(ビニルアルコール)である。水溶性及び水分散性のポリ(ビニルアルコール)は、広義には、2つのタイプのものに分類することができる。第一のタイプは、1.5モルパーセント未満のアセテート基が分子上に残されている、十分に加水分解された水溶性及び水分散性ポリ(ビニルアルコール)である。第二のタイプは、 1.5〜20モルパーセント程度のアセテート基が分子上に残されている、部分的に加水分解された水溶性及び水分散性ポリ(ビニルアルコール)である。
当該実施形態を実施するために採用される結合剤の他の例は、変性(修飾)ポリ(ビニルアルコール)である。基本のポリ(ビニルアルコール)は上述したものと同じものであり、変性(修飾)基には、限定はしないが、アセチルアセタール及びアクリレートが含まれる。変性の程度は、0〜20モルパーセントの範囲とすることができる。
本願実施形態を実施するために使用するのが好ましい結合剤のさらに他の例として、限定はしないが、水溶性及び水分散性ポリ(ビニルピロリドン)、酢酸ビニルとビニルピロリドンとの水溶性及び水分散性コポリマー、水溶性及び水分散性アクリレートポリマー、水溶性及び水分散性ポリ(ウレタン)、及び水溶性及び水分散性ポリエチレンオキシドが挙げられる。
球形シリカは、本来、陰イオン性の電荷を帯びている。コロイド状である、球形シリカ粒子は、本来、負電荷を帯びている。負電荷は、上述のような、水酸基含有多価金属塩(例えば、ACH)又は陽イオン性ポリマーを用いて処理することによって、陽イオン性の電荷に変換される。球形シリカを処理するのに使用される多価金属塩(又は陽イオン性ポリマー)は、上述したような、アモルファスシリカを処理するのに用いられるものと同じか、又は異なったものとすることができる。
当該2層のコーティング処理は、最初に下層14を、次いで上層16をコーティングする1パスで実施することができる。使用し得る1つの処理には、2層コーティングヘッドを利用することが包含される。カスケードコーティング及びカーテンコーティングは、そうしたコーティング処理法の2つの例である。あるいはまた、当該2層のコーティング処理は、2パスで実施することもでき、この場合、下層14を基材12上にコーティングし、次いで、再濡れ(re−wet)溶液(図示せず)を供給し、その後、該再濡れ下層の上に上層16をコーティングする。前者(1−パス)の処理の一例は、Rolf Steigerらに2001年12月12日に発行され、Ilford Imaging Switzerland GmbHに譲渡されたEP 1 162 076B1、表題「Dye−Receiving Material for Ink−Jet Printing」に開示されている(実施例23)。後者(2−パス)の処理の一例は、Douglas E.Knightらによるもので、本出願と同一の譲受人に譲渡された2002年11月5日付け米国特許第6、475、612号、表題「Process for Applying a Topcoat to a Porous Basecoat」に開示されている。前出の参考文献の全内容は、参照することで本明細書に取り入れることとする。
上層16が無い状態では、インクジェット受容シート10の光沢は低い。さらに、下層14が陽イオン性でなければ、下層の上に陽イオン性の上層16を単一パスで設けることは不可能である。
陽イオン性の下層14と陽イオン性の上層16とを組合わせることは、以下の理由から有益である。即ち、コート紙10上に印刷されているインクジェットインク中の染料は、典型的に陰イオン性であるので、陽イオン性表面と陰イオン性染料との相互作用(染料と受容層の強力な親和力を生じる)により、改善された耐水性及びスミア(擦れ汚れ)耐性がもたらされる。
A.球形シリカの処理
ビーカー中の水104.2グラムに、Gulbrandsen社から入手した50%クロルヒドロキシアルミニウム113.8グラムを添加した。球形シリカ(Nissan MP1040)382.0グラムを、IKA分散ツールを用いて、前記溶液に分散させた。分散物中の球形シリカの粒径分布は、受け取り時の球形シリカと同一であった。処理された球形シリカのゼータ電位は+37.2mv(陽イオン)であり、一方、未処理のシリカのゼータ電位は−27mvであった。
B.ヒュームド(アモルファス)シリカの処理
ビーカー中の水388.1グラムに、50%クロルヒドロキシアルミニウム23.8グラムを添加した。強く撹拌しながら、ヒュームドシリカ(カボット社からのCab−O−Sil M−5)88.1グラムを添加した。撹拌を1.5時間継続した。撹拌を停止し、ヒュームドシリカの混合物を24時間静置し、その後にコーティングの調合に用いた。固体含量は20%であった。分散物のpHは3.4であり、そのゼータ電位は+27.5mvと測定された(シリカ顔料が首尾よく陽イオン形態に変換されたことを示している)。
C.コーティングの調合
基本コートとして以下の調合物を製造した。
Figure 2004306610
上記基本コートは、ステップ2において処理したアモルファスシリカ78部を、乳酸2.2部及びホウ酸2部と混合することにより形成させた。ポリビニルアルコール(エアプロダクツ社からのAirvol 165)17.2部を、グリセロール0.6部と混合した。次いで、アモルファスシリカとポリビニルアルコールとを一緒に十分混合した。その混合物をワイヤバーを用いて写真ベースの基材上にコーティングして、25g/mの乾燥コーティングを形成させた。
上側コートは、処理した球形シリカを最初に固形分10%にまで希釈し、1.5%の界面活性剤(アーチケミカル社の10G)を添加して形成した。2層コーティングを得るべく、0.5g/mを基本コート表面上にコートして、光沢のある印刷媒体を形成した。
ビーカー中の水388.1グラムに、10%NHOH 6ml及び50%クロルヒドロキシアルミニウム23.8グラムを添加した。強く撹拌しながら、ヒュームドシリカ(デグッサ社のAerosil 200)88.1グラムを添加した。撹拌を1.5時間継続した。撹拌を停止し、ヒュームドシリカを24時間静置し、その後にコーティングの調合に用いた。固体含量は20%であった。分散物のpHは4.1であり、そのゼータ電位は+27.6mvであった。
ステップ1からの処理済シリカを用いて以下の調合物を製造し、該混合物を基本コートとして使用した。
Figure 2004306610
陽イオン性コロイドシリカ(クラリアント社のCartocoat 303 C)を固形分0.3%にまで希釈し、0.2%グリセロール及び0.2%界面活性剤10G(アーチケミカル社)と混合した。当該調合物を上側コートとして用いた。
1パスにおいて同時にカスケードコーティングを利用して2層コーティングを設けた。下層のコート重量は約28〜30g/mであり、上層は0.2g/mであった。光沢のある印刷媒体が得られた。
実施例3は、アモルファスシリカを、クロルヒドロキシアルミニウムではなくアミノアルキルシルセスキオキサン(ゲレスト社(Gelest,Inc.)のWSA−9911)を用いて処理したこと、及び上側コートが、日産化学工業社のMP 1040ではなくCartacoat C203であったことを除けば、実施例1と同様である。処理剤を先ずpH=4に中和し、また4%のWSA−9911を処理に用いた。光沢のある印刷媒体が得られた。
比較例1
比較例1は、基本コートをアルミナベースのコーティングに代えたことを除けば、実施例2と同様である。基本コート調合物は以下の通りであった。
Figure 2004306610
比較例2
比較例2は、実施例2と同様であるが、下側コート上にCartacoat C303の上側コートを有していないものである。
比較例3
比較例3は、比較例1と同様であるが、上側コートのCartacoatが無いものである。
比較例4
比較例4は、陰イオン性Snowtex MP1040(日産化学工業社)を上部コートとして直接用いたこと、及び上部コートが(単一パスで2層を形成する)カスケードコーティングではなく、第二のパスとして適用されたことを除き、実施例2と同様である。
結果
サンプルは、実験用のインクセットを装着したHP DeskJet 970プリンタを用いて印刷した。当分野で通常採用されている方法によって、サンプルを十分評価した。
光沢は、BKY Gardner micro−TRI−gloss meterを用いて20度の入射角で測定した。
ひび割れは、Beta color proofing viewer(25x増幅)を用いて調べた。
多孔度は、重量測定法を用いて測定した。既知の細孔径を有するコート紙サンプルを計量し、その紙上に水を噴霧してコーティング層にある細孔を満たし、表面の水をペーパタオルで除去し、サンプルの重量を再測定した。その重量差を利用して、吸収力を特定し、サンプルのコーティング重量に基づいたコーティングの多孔度を計算した。
引っ掻き耐性は、指の爪の抵抗を想定した摩剥器具を使って定性的に評価した。痕跡が見えたら、そのサンプルを不良と評価した。対照的に、引っ掻きの痕跡が観察できなければ、そのサンプルを良と評価した。
耐水性と耐湿性は、以下のように測定した。
耐水性は、45度傾斜した表面上に配置されている印刷済みサンプルの上に25マイクロリットルの水を滴下して試験した。画像の耐水性が劣る場合、水は、色又はコーティングすら印刷表面から隣の未印刷領域へ運び去った。光学濃度の増加を耐水性の定量的尺度として利用した。
耐湿性は、印刷済みサンプルを高湿度(80%)及び高温度(通常、30℃)に4日間曝して測定した。線の拡がりと色相シフトの差を耐湿性の尺度として利用した。10ミクロン未満の線の拡がりと、10デルタE単位未満の色相シフトを良と評価した。
空気退色耐性は、空気退色ボックスを用いて評価した。印刷画像サンプルを退色ボックスの棚に置いた。大気汚染物を含んでいる天然空気をサンプルの表面上に500フィート/分の速度で流した。画像サンプルを2週間退色状態に曝した後、その光学濃度損失パーセントを利用して画像化システムの空気退色安定静を特定した。下記結果を得た。
Figure 2004306610
注釈
(1)DeskJet 970プリンタを使用して、デフォルトのインクを用いて印刷したサンプルの空気退色データ
(2)実験用インクを用いて印刷したサンプルの空気退色データ
結果から分かるように、比較例1及び比較例3は、両方ともアルミナベースのコーティングを有するものであるが、空気退色耐性が不十分であった。一方、シリカベースの調合物でコーティングされた他の実施例は、大幅に改善された空気退色耐性を示した。シリカ顔料ベースのコーティングに基づく画像の寿命は、アルミナ顔料ベースのコーティングの2倍の長さであることが測定された。シリカベースのコーティングのこの優れた空気退色耐性の理由は分からない。しかしながら、何らかの特定理論に依らなくても、2つの顔料の細孔径及び水親和性の違いに関連していると考えられる。
空気退色データによって、印刷媒体の効果が両方のインクセットに関して同一であることが示された。
結果から判断すると、コロイド状の球形シリカでコーティングされた媒体は、上側コートの無いものよりはるかに優れた光沢を示すことは明らかである。シリカをベースとしたコーティングに関しては、その光沢を15単位から40単位に容易に高めることができる。
さらに、当該結果により、陰イオン性コロイドシリカだけでは、それが光沢を劇的に改善できるとはいえ、耐水性と耐湿性が不十分であることも分かる。湿り状態ではインク中の染料が下層まで浸透し、従って、色あせた画像を生ずることになる。
画質と耐久性の両方をもたらす最良の媒体は、下層に関しては陽イオン性アモルファスシリカからなり、上層に関しては陽イオン性球形コロイドシリカからなる、2層でコーティングされたものであった。
陽イオン性のコート基材は、インクジェットインクの写真画質印刷において用途を見出すものと期待される。
本明細書に開示するインクジェット記録シートの一実施形態
符号の説明
10 コート紙
12 基材
14 第一の層
16 第二の層

Claims (10)

  1. その上にインクジェットインクを印刷するのに適しており、且つ写真品質印刷を実現するコート紙(10)であって、
    (a)基材(12)と、
    (b)前記基材(12)上に付着しており且つ第一の陽イオン性シリカからなる第一の層(14)と、
    (c)前記第一の層(14)上に付着しており且つ第二の陽イオン性シリカからなる第二の層(16)と、
    からなるコート紙。
  2. 前記基材(12)が、ポリエチレン押出し写真ベース、フィルムベース、及び大判の紙ベースから成る群から選択される請求項1に記載のコート紙(10)。
  3. 前記第一の陽イオン性シリカが、第一の陽イオン誘導性化合物及び結合剤と混合されているアモルファスシリカからなり、前記第二の陽イオン性シリカが、第二の陽イオン誘導性化合物と混合されている球形シリカからなり、前記第一の陽イオン誘導性化合物が、前記第二の陽イオン誘導性化合物と同じものであるか又は異なっている請求項1に記載のコート紙(10)。
  4. 前記第一の陽イオン誘導性化合物及び前記第二の陽イオン誘導性化合物が、3〜4の原子価を有する金属を含む水酸基含有多価金属塩及び陽イオン性樹脂から成る群から独立に選択されており、前記結合剤が、水溶性あるいは水分散性のポリ(ビニルアルコール)、変性ポリ(ビニルアルコール)、水溶性あるいは水分散性のポリ(ビニルピロリドン)、水溶性あるいは水分散性のアクリレートポリマー、酢酸ビニルとビニルピロリドンとの水溶性あるいは水分散性コポリマー、水溶性あるいは水分散性ポリ(ウレタン)、及び水溶性あるいは水分散性ポリエチレンオキシドから成る群から選択される請求項3に記載のコート紙(10)。
  5. 前記アモルファスシリカが、約5〜30nmの一次粒径と約50〜500nmの凝集粒径を有する請求項3に記載のコート紙(10)。
  6. 前記第一の層(14)が、約10〜40nmの範囲の細孔径を有する請求項3に記載のコート紙(10)。
  7. 前記第一の層(14)が、約25〜30g/mの厚みを有する請求項1に記載のコート紙(10)。
  8. 前記第二の層(16)が、約0.1〜10g/mの厚みを有する請求項1に記載のコート紙(10)。
  9. その上にインクジェットインクを印刷するのに適しており、且つ写真品質印刷を実現する請求項1に記載のコート紙(10)を製造する方法であって、
    (a)前記基材(12)を設けるステップと、
    (b)(1)アモルファスSiOを設け、(2)前記SiOを陽イオン誘導性化合物に分散させて分散物を形成し、(3)必要ならば、そのpHを約4に調節し、(4)前記分散物を結合剤と混合して混合物を形成し、そして(5)前記混合物を前記基材(12)上にコーティングすることによって前記基材(12)上に第一の層(14)を形成するステップと、
    (c)(1)球形シリカを設け、(2)前記球形シリカを、あったとしても微量の結合剤と混合し、そして(3)前記第一の層(14)上に前記球形シリカをコーティングすることによって前記第一の層(14)上に第二の層(16)を形成するステップと、
    を包含する方法。
  10. 前記第一の層(14)及び前記第二の層(16)が、単一パスモードで又は2つの分離パスで、の何れかによって前記基材(12)上に形成される請求項9に記載の方法。
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