JP2004306404A - 有機薄膜とその製造方法及び有機薄膜を用いた光記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【課題】高度に秩序化されたミクロ相分離構造の任意の分離相にナノメータサイズの金属超微粒子を含有した電子的、電気的、光学的等の高機能性を有する有機薄膜とその製造方法を提供するとともに、該有機薄膜を記録材料とし、光学系ピックアップレンズの回折限界を越えた超高記録密度で記録再生が可能な光記録媒体を提供する。
【解決手段】互いに非相溶である少なくとも2種類のポリマー鎖が結合したブロック共重合体と、分散剤で保護された金属超微粒子とを混合し、塗布薄膜化し、溶媒除去または熱処理により高度に秩序化されたミクロ相分離構造を形成し、該ミクロ相分離構造の一方の分離相のみに分散剤で保護された金属超微粒子を含有させる。分散剤には、金属超微粒子と親和性のある基を有するとともに、一方の分離相とのみ親和性のある基を有する高分子化合物を用いる。
【選択図】 図1
【解決手段】互いに非相溶である少なくとも2種類のポリマー鎖が結合したブロック共重合体と、分散剤で保護された金属超微粒子とを混合し、塗布薄膜化し、溶媒除去または熱処理により高度に秩序化されたミクロ相分離構造を形成し、該ミクロ相分離構造の一方の分離相のみに分散剤で保護された金属超微粒子を含有させる。分散剤には、金属超微粒子と親和性のある基を有するとともに、一方の分離相とのみ親和性のある基を有する高分子化合物を用いる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ディスク、光カード、光テープなどの分野で使用される電子材料あるいは光学材料として応用することのできる機能性の高い有機薄膜と、それを用いた光記録媒体に関し、特に光ビームを照射することにより、記録材料の透過率、反射率等の光学的な変化を生じさせ、情報の記録再生を行なう光記録媒体に有用な有機薄膜と、それを用いた超高密度光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ナノメータサイズの機能性材料をポリマー(高分子)材料内に導入して複合化することにより、電子的性質、導電的性質、光学的性質、磁気的性質等の新たな機能を発揮することが期待されることから、機能性材料を得るための重要な技術として注目されている。
このような機能性材料として、ナノメータサイズの金属超微粒子、すなわち金属ナノクラスターから構成される金属−有機複合材料の研究開発が進められており、例えば、触媒、固定化触媒、メンブレンリアクター、帯電防止プラスチック等に利用することを目的とした金属・有機ポリマー複合構造体(多孔体)が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照。)。
【0003】
具体的には、特許文献1では、互いに非相溶なポリマー鎖が各々末端で結合したブロックコポリマーのミクロ相分離構造における一方のポリマー相内の骨格表面近傍に金属超微粒子が含有されている複合体で、かつ他方のポリマー相が空孔化されている複合体が提案されている。
この複合体は、金属化合物と親和性のあるポリマー鎖と金属化合物と親和性のないポリマー鎖とが末端で結合したブロック共重合と、金属化合物と、該金属化合物の還元剤とを溶解し、これを加熱、還元して金属微粒子表面を被覆保護し、溶媒キャスト(溶媒除去)または温度操作(温度低下)により相分離構造を形成するとともに、空孔については、一方の相を分解またはホモポリマ、オリゴマー、低分子を添加しミクロ相分離後に、溶出処理して形成するものである。
なお、特許文献2には、同様の構成で金属超微粒子が10nm以下である金属・有機ポリマー複合構造体(多孔体)が提案されている。
また、特許文献3では、非相溶なブロック共重合ポリマーのミクロ相分離構造における一方の相内の中央近傍に金属超微粒子が含有されている複合体、すなわち金属・有機ポリマー(Mn1)複合体とマトリックスポリマー(Mn2)の溶液を、溶媒キャスト(溶媒除去)または温度操作(温度低下)により相分離構造を形成し(Mn1>Mn2)、その後金属微粒子が含まれていないポリマー相を除去することが提案されている。
更に、特許文献4では、互いに非相溶なポリマー鎖の各々末端で結合したブロックコポリマーのミクロ相分離構造における一方のポリマー相内に列状に金属超微粒子が含有されている金属・有機ポリマー複合構造体が提案されている。この複合構造体における金属超微粒子は、金属化合物と親和性のあるポリマー鎖と金属化合物と親和性のないポリマー鎖とが末端で結合したブロック共重合と、金属イオンとを還元能のある高沸点溶媒と低沸点溶媒に溶解し、低沸点溶媒を除去し相分離構造を形成し、高沸点溶媒を除去しながら金属イオンを還元して形成している。
【0004】
上記のように金属微粒子を相分離構造中に取り込む研究は既に行われているが、用いる金属微粒子に対して選択すべきブロック共重合ポリマーを構成する各ポリマー鎖が制約されるほか、相分離構造において金属微粒子を含有する分離相が限定されて、所望(任意)の分離相及びポリマー鎖中に自由に選択して含有させられず、更に相分離構造と金属微粒子含有分離相を秩序ある構造に維持して形成することが難しいという難点がある。
このように金属超微粒子、いわゆる金属ナノクラスターを所望(任意)の分離相のポリマー鎖内に秩序構造を維持するように制御して導入する複合材料の研究開発はほとんど進められていないのが現状である。
【0005】
一方、情報記録分野(光メモリ分野)では、現在、基板上に反射層を有する光記録媒体として、CD規格及びDVD規格にそれぞれ対応した、いわゆる記録可能なCD−R、DVD−Rが商品化されているが、記録情報量の増大に伴って、更に高記録容量化と小型化が求められている。このため、このような光記録媒体の記録密度の更なる向上が望まれている。
現行光記録システムにおける記録容量向上のための要素技術としては、記録ピットの微小化技術、MPEG2に代表される画像圧縮技術がある。記録ピットの微小化技術には、記録再生光の短波長化や回折限界の向上を図るために光学系の開口数(NA)の増大化が検討されているが、その回折限界を越える記録再生は困難である。
そのため、超解像技術や近接場光を利用した光記録システムが、回折限界を越える微小記録再生を可能とする有力な手段として注目されている。しかし、このような従来の光学系(光源サイド)に注目した、手法(アプローチ)により高密度記録化を達成するための技術的なハードルは高く、未だ実用化には至っていない。
上記状況から、回折限界を越える微小記録により更に高密度記録を可能とする、より現実的な新技術の開発が求められている。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−60891号公報
【特許文献2】
特開平10−330492号公報
【特許文献3】
特開2000−72951号公報
【特許文献4】
特開2000−72952号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたもので、高度に秩序化されたミクロ相分離構造の任意の分離相にナノメータサイズの金属超微粒子を含有した電子的、電気的、光学的等の高機能性を有する有機薄膜とその製造方法を提供するとともに、該有機薄膜を記録材料とし、光学系ピックアップレンズの回折限界を越えた超高記録密度で記録再生が可能な光記録媒体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、前記分散剤で保護したナノメータサイズの金属超微粒子を用いることにより、互いに非相溶である少なくとも2種類のポリマー鎖が結合したブロック共重合体により形成された高度に秩序化されたミクロ相分離構造の一方(任意)の分離相(ポリマー鎖)中に金属超微粒子を、秩序構造を維持しつつ制御して導入することを可能とし、電子的性質、電気的性質(導電的性質など)、光学的性質等の新たな機能を発揮する機能性複合材料の提供を実現するものであり、このような複合化による有機薄膜とその製造法、及び有機薄膜を利用した光記録媒体を提供するものである。
本発明においては、一方の分離相に含有される金属超微粒子を記録体とすることにより、記録体の面積自体が照射光の回折限界よりも小さなドット列化されているため、従来では達成出来なかった超高密度光記録を実現することができる。すなわち、光学系(レーザーピックアップ)の回折限界を越える記録密度で記録再生が可能な光記録媒体を得ることができる。このような、記録媒体の考え方は、前記従来技術(光学系からのアプローチ)とは全く異なるものである。
以下、本発明について具体的に説明する。
【0009】
請求項1の発明は、互いに非相溶である少なくとも2種類のポリマー鎖が結合したブロック共重合体により形成されたミクロ相分離構造を有し、該ミクロ相分離構造の一方の分離相のみに分散剤で保護された金属超微粒子を含有する有機薄膜であって、
前記分散剤は、前記金属超微粒子と親和性のある基を有するとともに、前記一方の分離相とのみ親和性のある基を有する高分子化合物であることを特徴とする有機薄膜である。
【0010】
請求項1の分散剤で保護したナノメータサイズの金属超微粒子を用いることにより、互いに非相溶であるポリマー鎖が結合したブロック共重合体中に形成された高度に秩序化されたミクロ相分離構造における一方の所望(任意)の分離相(ポリマー鎖)中に金属超微粒子を、秩序構造を維持しつつ制御して導入することが可能となる。
これによって、電子的性質、導電性などの電気的性質、光学的性質等の新たな機能を発揮する機能性複合材料の提供を実現することができる。
【0011】
請求項2の発明は、前記分散剤は、高分子顔料分散剤であることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜である。
【0012】
請求項2の高分子顔料分散剤を用いた構成によれば、高分子顔料分散剤の多様な分子構造、すなわち、主鎖(もしくは側鎖)に金属超微粒子の表面に対し強い吸着力を有する親和性基を有し、一方側鎖(もしくは主鎖)にブロック共重合体に溶解性(含む分散)を持つ親和性基を有する高分子化合物が幅広く選択でき、特に市販品の中から使用できるというメリットもある。
【0013】
請求項3の発明は、前記ミクロ相分離構造における一方の分離相は、球状、柱状、ラメラ状もしくは前記各形状に類似の構造であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機薄膜である。
【0014】
請求項3の構成によれば、各分離相の特徴的な形状、形態及び一方の分離相に含有させる金属超微粒子の性質(電子的性質、導電性などの電気的性質、光学的性質等)に応じた機能性複合材料の提供が可能となる。分離相が球状または柱状で、金属超微粒子が光または熱によって光学的性質が変化する性質の場合には、光記録媒体の記録層、特に高密度記録用として有用な記録材料(有機薄膜)が提供される。
【0015】
請求項4の発明は、前記金属超微粒子は、光または熱により該金属超微粒子の光学特性が変化する性質を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機薄膜である。
【0016】
請求項4の構成によれば、請求項3と同様に光記録媒体の記録層、特に高密度記録用として有用な記録材料が提供される。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法であって、
前記ブロック共重合体と前記分散剤で保護された金属超微粒子とを含有する混合溶液を調製する工程と、
該調製された混合溶液を塗布薄膜化してミクロ相分離構造を形成する工程と、
を含むことを特徴とする有機薄膜の製造方法である。
【0018】
請求項6の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法であって、
前記ブロック共重合体を含有する溶液を調製し、該調製された溶液を塗布薄膜化してミクロ相分離構造を形成する工程と、
該形成されたミクロ相分離構造を有するブロック共重合体と、前記分散剤で保護された金属超微粒子を含有する溶液とを接触させる工程と、
該分散剤で保護された金属超微粒子を、前記ミクロ相分離構造を有するブロック共重合体の一方の分離相に拡散させる工程と、
を含むことを特徴とする有機薄膜の製造方法である。
【0019】
請求項7の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法であって、
前記ブロック共重合体を含有する溶液を調製し、該調製された溶液を塗布薄膜化してミクロ相分離構造を形成する工程と、
該形成されたミクロ相分離構造を有するブロック共重合体上に、前記分散剤で保護された金属超微粒子を含有する溶液を塗布積層する工程と、
該分散剤で保護された金属超微粒子を、前記ミクロ相分離構造を有するブロック共重合体の一方の分離相に加熱拡散させる工程と、
を含むことを特徴とする有機薄膜の製造方法である。
【0020】
請求項8の発明は、前記ミクロ相分離構造は、溶媒除去もしくは熱処理により形成されることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法である。
【0021】
請求項5〜8の製造方法によれば、分散材で保護されたナノメータサイズの金属超微粒子を、ブロック共重合体のミクロ相分離構造における所望とする一方(任意)の分離相内に高度に秩序化された構造に制御して選択的に含有させることが可能となる。
このような三次元的に高度に構造制御して複合化することにより、電子的性質、電気的(導電的等)性質、光学的性質等の新機能を発揮する有機薄膜の製造が達成され、超高密度記録に対応できる本発明の光記録媒体の製造を可能とすることができる。
【0022】
請求項9の発明は、基板上に有機薄膜からなる記録層を設けた光記録媒体であって、
前記有機薄膜は請求項1〜4のいずれかに記載の有機薄膜であることを特徴とする光記録媒体である。
【0023】
請求項9の構成によれば、光記録媒体の記録層中の記録ドット(金属超微粒子から構成される記録用の点)がナノメータサイズ(10〜500nm)で均一に形成される。これによって照射されるレーザ光の発振波長やレンズのNAに依存することなく、ナノメータサイズの微小記録を実現し、超高密度の記録が可能となる。更に、記録ピットの最外周エッジも不明瞭となることなくバラツキの無い高品質の信号特性を得ることが可能となる。
【0024】
請求項10の発明は、前記有機薄膜は、請求項5〜8のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法によって製造されたことを特徴とする請求項9に記載の光記録媒体である。
【0025】
請求項10によれば、分散材で保護されたナノメータサイズの金属超微粒子を、ブロック共重合体のミクロ相分離構造における所望とする一方(任意)の分離相内に高度に秩序化された構造に制御して選択的に含有させることが可能となるので、ナノメータサイズの微小記録を実現し、高密度記録が可能となるばかりでなく、記録ピットの最外周エッジも不明瞭となることなくバラツキの無い高品質の信号特性を得ることが可能となる。
【0026】
請求項11の発明は、前記記録層をなす有機薄膜のミクロ相分離構造における一方の分離相は、球状構造もしくは柱状構造であることを特徴とする請求項9に記載の光記録媒体である。
【0027】
請求項11の構成によれば、本発明の光記録媒体の有機薄膜からなる記録層中の記録層ドット(金属超微粒子から構成される記録用の点)は、有機薄膜のマトリックス部を介して非連続して存在することが必要である。
このことからミクロ相分離構造における一方の分離相は球状構造あるいは柱状構造であることによって、所定の非連続ドット形態が形成され、好適な記録層が提供される。
【0028】
請求項12の発明は、前記記録層をなす有機薄膜のミクロ相分離構造における一方の分離相は球状構造であり、かつ記録層の膜厚は該球状構造の球径よりも薄く形成されていることを特徴とする請求項9に記載の光記録媒体である。
【0029】
請求項12によれば、記録層の膜厚が該球状構造の球径よりも薄く形成され、光記録媒体の記録層として記録媒体面上にサイズの均一な光記録機能を有する記録層ドットがマトリックスを介して非連続して存在する構造とすることができる。これによって、高品質で超高記録密度の光記録媒体が提供される。
【0030】
請求項13の発明は、前記記録層をなす有機薄膜のミクロ相分離構造における一方の分離相は柱状構造であり、該柱状構造は記録層の膜面に対して垂直方向に配列するように制御されていることを特徴とする請求項9に記載の光記録媒体である。
【0031】
請求項13の構成によれば、光記録媒体の記録層として記録媒体面上にサイズの均一な光記録機能を有する記録層ドットがマトリックスを介して非連続して存在する構造とすることができる。これによって、高品質で超高記録密度の光記録媒体が提供される。
【0032】
請求項14の発明は、前記分散剤で保護された金属超微粒子は、記録再生用レーザの波長近傍に最大吸収波長を持つように該分散剤で保護された金属超微粒子の粒径及び形状が制御されていることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の光記録媒体である。
【0033】
請求項15の発明は、前記分散剤で保護された金属超微粒子は、記録再生用レーザの波長近傍に最大屈折率を持つように該分散剤で保護された金属超微粒子の粒径及び形状が制御されていることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の光記録媒体である。
【0034】
請求項14または15の構成によれば、レーザ光の発振波長近傍に最大吸収波長または最大屈折率を持つ金属超微粒子を用いることによって、記録層の光学特性変化を検知することにより光記録媒体の記録再生を行う場合に、最もコントラストが得られる条件に合致するためである。
【0035】
請求項16の発明は、前記金属超微粒子は、金、銀、白金、または前記金属の合金であることを特徴とする請求項9〜15のいずれかに記載の光記録媒体である。
【0036】
請求項16の金、銀、白金及びその合金は保存安定性及び光学特性の点から好適な金属超微粒子である。このような金属超微粒子が示すプラズモン吸収を利用することにより、例えば光記録媒体の光吸収波長を制御することができ、効果的な記録、再生を可能とすることができる。
【0037】
請求項17の発明は、請求項9〜16のいずれかに記載の光記録媒体の記録再生方法であって、
レーザ光の照射により、前記分散剤で保護された金属超微粒子が含有されるミクロ相分離構造における一方の分離相の光学特性を変化させて記録再生することを特徴とする光記録媒体の記録再生方法である。
【0038】
請求項18の発明は、請求項9〜16のいずれかに記載の光記録媒体の記録再生方法であって、
レーザ光の照射により、前記分散剤で保護された金属超微粒子が含有されるミクロ相分離構造における一方の分離相の形状を変化させて記録再生することを特徴とする記録媒体の光記録再生方法である。
【0039】
請求項17または18によれば、本発明の光記録媒体の金属微粒子からなる記録層ドットにレーザ光を照射し、その光学特性(吸収率、反射率、屈折率等)変化により記録し、記録レーザ光よりパワーの小さい再生レーザ光により光学特性変化の強弱を検知して再生することが可能であるとともに、記録層ドットにレーザ光を照射し、その記録層ドットの形状(凹凸、平滑性等)変化により記録し、記録レーザ光よりパワーの小さい再生レーザ光により、その散乱や位相差による光学特性変化の強弱を検知して再生することが可能である。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の有機薄膜は、互いに非相溶である少なくとも2種類のポリマー鎖が結合したブロック共重合体により形成された高度に秩序化されたミクロ相分離構造を有し、そのミクロ相分離構造の一方の相のみに分散剤で保護した金属超微粒子が含有されている構造からなる。
この有機薄膜の特長は、金属超微粒子がナノメータサイズ(いわゆる金属ナノクラスター)で、ミクロ相分離構造における一方の分離層を形成するポリマー鎖(高分子マトリックス)内に高度に秩序化された構造を維持して存在することである。金属超微粒子を含有させる一方の分離層は、ブロック共重合体の互いに非相溶である少なくとも2種類のポリマー鎖のそれぞれによって形成される分離層のいずれでもよく、所望(任意)の分離相とすることができる。
【0041】
このように、高度に秩序化されたミクロ相分離構造において形成される分離層のいずれか所望(任意)の相に金属超微粒子を分散させるには、分散剤で保護された金属超微粒子を用いることにより制御することができる。分散剤としては、金属超微粒子と親和性のある基を有するとともに、ブロック共重合体のいずれかのポリマー鎖から形成される所望とする一方(任意)の分離相とのみ親和性(相溶性や分散性)があり、他の一方の分離相には親和性(相溶性や分散性)のない基を有する高分子化合物(例えば、高分子顔料分散剤)を利用することにより可能となる。
【0042】
上記のように、本発明における高度に秩序化された構造体を形成する主要な原動力(ドライビングフォース)としては、ブロック共重合体のミクロ相分離現象を利用している。このようなミクロ相分離現象に基づいて形成されるミクロ相分離構造としては、図1の模式図に示すような球状構造(球状)、柱状構造(柱状)、ラメラ状構造(ラメラ状)、もしくはこれらの類似構造があり、いずれも利用できる。
このようにナノメータサイズの金属超微粒子を一方の分離相であるポリマー鎖(高分子マトリックス)内に導入し、三次元的に高度に構造制御して複合化することにより、電子的性質、電気的(導電性等)性質、光学的性質等の新たな機能を発揮する有機薄膜が形成できる。
なお、光記録媒体においては、金属超微粒子として、光または熱によりその光学特性を変化させる性質(機能)を有する前記分散剤で保護した金属超微粒子が好ましく用いられる。
【0043】
前記互いに非相溶である少なくとも2種類のポリマー鎖が結合したブロック共重合体は、文字通り互いに非相溶である各ポリマーを組み合わせて合成することができる。
本発明に用いるブロック共重合体は、例えば、各種モノマーを用いて予めリビング的にポリマーを重合させ、得られたブロックポリマーを用いて、当該ブロックポリマー末端から互いに非相溶のポリマー鎖を重合させるリビング重合法(アニオン重合、リビングラジカル重合)、あるいは鎖の中央から合成するリビング重合(アニオン重合)、または、各種モノマーを用いて予め互いに非相溶のそれぞれのブロックポリマーを重合させ、得られたポリマーを用いて、末端官能性ポリマーの末端を結合させる合成法(アニオン重合、リビングラジカル重合)などの重合方法によって合成することができる。
【0044】
このような、本発明のブロック共重合体を合成するために用いるモノマーとしては、例えば、スチレン、イソプレン、α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、2ビニルピリジン、アミノスチレン、4−ビニルピリジン、メタクリレート類、ε−カプロラクトン、ブタジエン、ビニルメチルエーテル、1、3−シクロヘキサンジエン、エチレンオキシド等が挙げられる。なお、これらのモノマーは例であって、これらに限定されるものではない。
【0045】
本発明で用いる分散剤は、前述のように金属超微粒子と親和性のある基を有するとともに、前記ブロック共重合体から形成される一方の分離相とのみ親和性のある基を有する高分子化合物である。
すなわち、分散剤は、金属超微粒子の凝集を防ぎ保護するとともに、ブロック共重合体により形成される一方の分離相に選択的に溶解(含む分散)する性質(親和性基)を有するものである。また、分散剤で保護された金属超微粒子とブロック共重合体との混合溶液を調製してコロイド溶液としたときに、金属微粒子の保護コロイドとなり得るものが使用できる。更に、分散剤には、金属超微粒子に吸着するような窒素や酸素を含有する高分子化合物も用いられる。分散剤として、特に高分子顔料分散剤が好適に用いられる。
【0046】
高分子顔料分散剤としては、例えば、金属超微粒子の表面に対し強い吸着力を有する親和性基(例えば、オルガノゾルに対し:第三級アミノ基、第四級アンモニウム基、塩基性窒素を有する複素環基、ヒドロキシ基、カルボキシル基等、あるいはヒドロゾルに対し:フェニル基、ラウリル基、ステアリル基、ドデシル基、オレイル基等)を有する主鎖(もしくは側鎖)と、ブロック共重合体により形成される一方の分離相に相溶(含む分散)する親和性基を有する側鎖(もしくは主鎖)から構成されている高分子化合物が好適に用いられる。このような高分子顔料分散剤としては、市販のものも使用出来る。
【0047】
市販品としては、ソルスパース2000、2400、2600、2700、2800(ゼネカ社製)、アジパーPB711、PA111、PB811、PW911(味の素社製)、EFKA−46、47、48、49(EFKAケミカル社製)、ディスパービック160、162、163、166、170、180、182、184、190(ビックケミー社)、フローレンDOPA−158、22、17、G−700、TG−720W、730W(共栄化学社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
本発明に用いられる金属超微粒子としては、目的に応じて自由に選択することが可能である。
例えば、光記録媒体には、金、銀、白金(プラチナ)、銅、錫、ロジウム、イリジウム等の前記分散剤で保護された全ての金属超微粒子が利用できるが、中でも保存安定性及び光学特性の点から、金、銀、白金(プラチナ)及びその合金が特に好ましい。これら上記の金属超微粒子は単独で用いてもよいし、2種以上を組合わせて用いてもよい。
更に、金属超微粒子として、プラズモン吸収を示す金属超微粒子を用いることができる。金属超微粒子に光を照射すると金属中の自由電子が光電場により分極され、金属超微粒子表面に電荷が発生して非線形分極が生じる。これによって、電子のプラズマ振動に起因するプラズモン吸収と呼ばれる発色機構に基づく特有の吸収を示す(なお、吸収特性は、金属の種類、粒径、形状などに依存する。)。このような金属超微粒子を用いることによって、例えば光記録媒体の光吸収波長を制御することができ、効果的な記録、再生を可能とすることができる。
【0049】
ナノメータサイズの金属超微粒子(金属ナノクラスター)は、通常、有機溶媒中に金属化合物とその還元剤を溶解し、熱処理(加熱)することで得られる。本発明の金属超微粒子は、前記の分散剤(例えば、高分子顔料分散剤)で保護された金属超微粒子を利用することが特徴であるが、その製造方法としては、例えば金属化合物とその還元剤を有機溶媒中に溶解し、分散剤(例えば、高分子顔料分散剤)を加えた後、熱処理(加熱)することにより得られる。
有機溶媒としては、金属化合物を溶解させるもので、還元を阻害しないものであれば特に制約はなくどのようなものでも使用できる。また、金属化合物の還元剤としては、例えば、アルカリ金属水素化ホウ素塩、ヒドラジン化合物、クエン酸及びその塩、コハク酸及びその塩、アミン類など一般に用いられているものが使用できる。
【0050】
次に、本発明の有機薄膜の製造方法について説明する。
本発明の三次元的に高度に構造制御された有機薄膜におけるミクロ相分離及び分散剤で保護された金属超微粒子の分散は、以下のような方法により実施することができる。
第一の方法は、まず互いに非相溶である少なくとも2種類のポリマー鎖が結合したブロック共重合体と、前記金属超微粒子と親和性のある基を有するとともに、一方の分離相とのみ親和性のある基を有する高分子化合物からなる分散剤で保護された金属超微粒子とを含有する混合溶液を調製する。
次に、その調製された混合溶液を浸漬塗布法やスピンコート法等により塗布薄膜化した後に、溶媒除去あるいは熱処理(温度変化を加える)によりミクロ相分離構造を形成し、ミクロ相分離構造の一方の分離相にのみ金属超微粒子を選択的に含有させた構造の有機薄膜を製造する方法である。
【0051】
第二の方法は、まず互いに非相溶である少なくとも2種類のポリマー鎖が結合したブロック共重合体を含有する溶液を調製し、該調製された溶液を塗布薄膜化して溶媒除去あるいは熱処理(温度変化を加える)によりミクロ相分離構造を形成する。
次に、形成されたミクロ相分離構造を有するブロック共重合体と、金属超微粒子と親和性のある基を有するとともに、一方の分離相とのみ親和性のある基を有する高分子化合物からなる分散剤で保護された、いわゆるミクロ相分離構造の一方の分離相にのみ相溶性(含む分散)のある金属超微粒子とを含有する溶液中に浸漬や塗布等により接触させる。
次いで、分散剤で保護された金属超微粒子を、前記ミクロ相分離構造を有するブロック共重合体の一方の分離相に拡散させて、ミクロ相分離構造の一方の分離相にのみ金属超微粒子を選択的に含有させた構造の有機薄膜を製造する方法である。
【0052】
第三の方法は、まず互いに非相溶である少なくとも2種類のポリマー鎖が結合したブロック共重合体を含有する溶液を調製し、該調製された溶液を塗布薄膜化して溶媒除去あるいは熱処理(温度変化を加える)によりミクロ相分離構造を形成する。
次に、該形成されたミクロ相分離構造を有するブロック共重合体上に、前記金属超微粒子と親和性のある基を有するとともに、前記一方の分離相とのみ親和性のある基を有する高分子化合物からなる分散剤で保護された、いわゆるミクロ構造の一方の分離相にのみ相溶性のある金属超微粒子とを含有する溶液をウエットプロセスやドライプロセス等により塗布積層する。
次いで、塗布積層した薄膜を加熱してミクロ相分離構造を有するブロック共重合体の一方の分離相に金属超微粒子を加熱拡散させ、ミクロ相分離構造の一方の分離相にのみ金属超微粒子を選択的に含有させた構造の有機薄膜を製造する方法である。
なお。上記各製造方法において、ミクロ相分離を促進させるために、上記ブロック共重合体以外に他のポリマーを添加してもよい。
【0053】
本発明の特徴である金属超微粒子を分散剤(例えば、高分子顔料分散剤)で保護することにより、前記任意のミクロ相分離構造部位への金属超微粒子を導入することが可能となるが、このような選択的な相溶化は、形成される保護コロイドの表面部位とミクロ相分離構造体の任意(所望)の相との相溶性/非相溶性を考慮して、分散剤である高分子化合物の化学構造設計/制御を行うことによって達成できる。
【0054】
次に、前記有機薄膜を、光記録材料(記録層)として応用した光記録媒体について説明する。
従来の光記録媒体は、相分離などが無く連続した記録材料から構成された記録層を備えており、この記録層にレーザビームを照射し、レーザビームの形状に相応した何らかの変化(光学的な変化を伴う物理的、化学的等の変化)を記録材料に対して形成して記録するようになっている。従って、最小記録ピットのサイズは、光学系の発振波長とレンズのNAで決定されるレーザビーム径に依存するものである。このように従来の記録再生システムでは、記録媒体の高密度化は基本的にレーザの発振波長やレンズのNAの実用化技術力(技術水準)に左右されてきた。
また、レーザビーム形状がガウス分布形状であり、しかも記録材料として熱または光に対して明瞭な閾値で上記変化(光学的な変化を伴う物理的、化学的等の変化)を示す材料はほとんど存在しないため、レーザビーム照射によって形成されるピットの最外周の大きさや変化量は均一とはならない。このような要因が必ず存在するため、再生信号にバラツキを起生することになり、高品質の信号特性を得るには限界があった。
【0055】
本発明の記録媒体は、上記のような従来の記録媒体における課題を克服した新しい構成、構造の光記録媒体である。
すなわち、本発明の有機薄膜は、前記のように一方の分離相のみに分散剤で保護された金属超微粒子(光または熱によって光学特性が変化する性質を持った金属超微粒子)を含有するブロック共重合体により形成されたミクロ相分離構造を有し、このような有機薄膜を記録層に応用した光記録媒体においては、一方の金属超微粒子を含む分離相が他方の連続した分離相(マトリックス)を介して、非連続して存在する構成(記録層ドットが高度に秩序化されて存在する形態)とすることが可能となる。
このように本発明の光記録媒体の記録層として、有機薄膜中に非連続して存在する一方の分離層内部に選択的に、しかも高度に秩序構造を保つように包含された金属超微粒子から構成される記録用の点、いわゆる記録ドットは、ナノメータサイズ(10〜500nm)で均一に形成することができる。従って、最小記録ピットのサイズは、照射されるレーザ光の発振波長やレンズのNAに依存せず、記録層を構成する有機薄膜中に形成される記録層ドットのサイズによって決まる。
上記理由により、本発明においてはナノメータサイズの微小記録が実現され、レーザの発信波長やレンズのNAなど光学系に制約されることなく超高密度の記録を実現する光記録媒体の設計が可能となる。更に、記録ピットの最外周エッジもこの有機薄膜の記録層ドット全体を変化させるように記録することで、従来のレーザビームのガウス分布などの要因に基づく記録ピットの最外周エッジの不明瞭さなどの問題も回避され、記録ピットのバラツキの無い高品質の信号特性を得ることが可能となる。
【0056】
前記のように、ミクロ相分離構造は、ブロック共重合体の構成材料及び組成によって、球状、柱状、ラメラ状等の形態を呈する。このような形態の中で、本発明の光記録媒体に好適に応用できるミクロ相分離構造における一方の分離相は、球状構造及び柱状構造である。すなわち、本発明の光記録媒体の構成(形態)は前述のように、記録層ドットがマトリックスを介して非連続して存在することが必要であるためである。
【0057】
ミクロ相分離構造が球状構造の場合、光記録媒体の記録層の膜厚は、球状構造の球径よりも薄く形成されていること(球状構造の直径よりも薄い膜厚)とすること、特に金属超微粒子の粒径程度に制御されているが好ましい。このような膜厚とすることにより、金属超微粒子がほぼ単層となるように形成され、光記録媒体の記録層として記録媒体面上にサイズの均一な光記録機能を有する記録層ドットがマトリックスを介して非連続して存在する構造とすることができるためである。なお、記録層の膜厚が金属超微粒子の粒径より厚くとも、記録媒体面上にサイズの均一な光記録機能を有する記録層ドットがマトリックスを介して非連続して存在する構造に制御可能であれば問題はなく、当然使用可能である。
【0058】
一方、ミクロ相分離構造における一方の分離相が柱状構造の場合、その柱状構造は記録層の膜面に対して垂直方向に配列するように制御形成された構造とすることが好ましい。こうすることにより上記同様に、光記録媒体の記録層として記録媒体面上にサイズの均一な光記録機能を有する記録層ドットがマトリックスを介して非連続して存在する構造とすることができる。
【0059】
上記のように、ミクロ相分離構造が球状構造では、その球状構造の直径よりも薄い膜厚とすることが好ましく、ミクロ相分離構造が柱状構造では、記録媒体面に対して垂直に柱状構造が配列する構造が好ましいが、光記録性金属超微粒子(金属ナノクラスター)のドット径は、5〜500nm、好ましくは10〜200nmが適当である。
【0060】
本発明の光記録媒体は、記録レーザ光により記録層ドットを照射し、それにより生じる変化で記録し、記録レーザ光よりパワーの小さい再生レーザ光でその変化を検知して再生する。前記のように、本光記録媒体の記録再生法としては、記録層ドットの光学特性(吸収率、反射率、屈折率等)変化で記録し、その光学特性変化の強弱で再生するもの、及び記録層ドットの形状(凹凸、平滑性等)変化で記録し、その散乱や位相差による光学特性変化の強弱で再生するものが適用される。
【0061】
本発明の光記録媒体の記録層に用いる金属超微粒子としては、使用するレーザ光の発振波長に対し、その発振波長近傍に最大吸収波長または最大屈折率を持つように粒径及び形状制御した粒子を使用することが好ましい。レーザ光の発振波長近傍に最大吸収波長または最大屈折率を持つ金属超微粒子を用いることによって、光記録媒体の記録再生法の一つとして、記録層の光学特性変化を検知することにより行う場合に、最もコントラストが得られる条件に合致するためである。
【0062】
本発明の光記録媒体の構成及びその必要物性について以下に説明する。
〈記録媒体構成〉
本発明の光記録媒体は、基板上に前記有機薄膜からなる記録層を設けるものであるが、その他必要により構成層として、下引き層、反射層(通常金属)、保護層、基板面ハードコート層などを設けることができ、目的や要求特性に応じて構成層の形態が選ばれる。本発明の光記録媒体について図面を参考にして説明する。
本発明の光記録媒体は、例えば図2(a)〜(d)や図3(a)〜(e)の概略断面図に示す例のような構成を有するものである。すなわち、図2(a)〜(d)の場合には、基板上に金属反射層を設けずに構成した例を示す。また、図3(a)〜(e)の場合には、金属反射層を設けて構成した例を示す。本発明の光記録媒体の構成としては、追記型光ディスクの構造(基板上に記録層を設けたものを2枚貼り合わせたいわゆるエアーサンドイッチ構造)としてもよく、CD−R構造(基板上に記録層、反射層、保護層)としてもよく、CD−R構造を貼り合わせたDVD構造でもよい。なお、上記構成は実施の形態を説明するための例であって他の構成でもよい。以下に光記録媒体の各構成層について説明する。
【0063】
〈基板〉
本発明の光記録媒体に用いる基板としては、基板側より記録再生を行なう場合のみ使用レーザーに対して透明でなければならず、記録層側(基板と反対側)から記録、再生を行なう場合には基板は透明である必要はない。
基板材料としては例えば、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミドなどのプラスチック、またはガラス、セラミック、あるいは金属などを用いることができる。なお、基板の表面にトラッキング用の案内溝や、案内ピット、更にアドレス信号などのプリフォーマットなどが形成されていてもよい。
【0064】
〈記録層〉
記録層はレーザ光の照射により何らかの変化(光学特性の変化または形状の変化)を生じさせ、その変化により情報を記録し光学的に再生可能なものであって、その記録層は、互いに非相溶の2種以上のブロック共重合体を主成分とし、そのミクロ相分離構造の一方の相にのみ分散剤(例えば、高分子量顔料)で保護された光記録性金属超微粒子が含有されている構造からなる。記録は、光学特性の変化または形状の変化として記録し、再生は、記録によりもたらされた変化を光学的変化として再生する。
光記録性金属超微粒子の光学特性としては、記録再生用レーザ波長に対し、その吸収特性変化を利用して再生する場合には、レーザ波長近傍に最大吸収波長を持つように粒径/形状を制御することが好ましく、記録再生用レーザ波長に対し、その屈折率変化を利用して再生する場合には、レーザ波長近傍に最大屈折率を持つように粒径/形状を制御することが好ましい。
【0065】
本光記録媒体のような記録ドットサイズにより予め記録ピットの大きさが定められている場合には、従来法に比較して特に大幅な低エネルギーで記録が可能となる。従来法では、レーザ照射に対して反応率が高い記録材を用い、十分な照射パワーを付与しなければ明瞭なピット形状することができなかった。これに対して、有機薄膜からなる記録層に記録ドットが内在し、これに記録してピットを形成する方式の本記録媒体では、僅かな反応率(例えば表面のみの反応)でもその変化が検知できる。
【0066】
本発明の光記録媒体に用いるブロック共重合体は、超高密度記録用の光記録媒体に要求される特性が満たされるものであれば特に制約はなく、前記有機薄膜において記載したような互いに非相溶の2種以上のポリマーを組み合わせて合成することができる。合成に用いる手法やモノマー原料なども前述と同様である。
本発明の光記録媒体には、前述のように分散剤で保護されたナノメータサイズの金属超微粒子(金、銀、プラチナ、銅、錫、ロジウム、イリジウム等)が利用できるが、保存安定性及び光学特性から、金、銀、プラチナ及びその合金からなる分散剤で保護された金属超微粒子が特に好ましい。これらの金属超微粒子は単独でも、2種以上を組合わせても構わない。
金属超微粒子は、高分子顔料分散剤などの高分子化合物で保護された金属超微粒子の形態で用いられるが、前記有機薄膜の説明で記載したような製造法、例えば、金属化合物と、この金属化合物の還元剤を有機溶媒中に溶解し、高分子顔料分散剤を加えた後、加熱することにより得ることができる。高分子顔料分散剤としては、例えば、前述のような市販のものも使用出来る。
【0067】
〈下引き層〉
下引き層は、(1)接着性の向上、(2)水またはガスなどのバリアー、(3)記録層の保存安定性の向上、(4)反射率の向上、(5)溶剤からの基板の保護、(6)案内溝、案内ピット、プレフォーマットの形成などを目的として使用される。
(1)の目的に対しては、高分子材料、例えば、アイオノマー樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル樹脂、天然樹脂、天然高分子、シリコーン、液状ゴムなどの種々の高分子化合物及び、シランカップリング剤などを用いることができる。
(2)あるいは(3)の目的に対しては、上記高分子材料以外に無機化合物、例えば、SiO、MgF、SiO2、TiO、ZnO、TiN、SiNなどがあり、更に金属あるいは半金属、例えば、Zn、Cu、Ni、Cr、Ge、Se、Au、Ag、Al、などを用いることができる。
(4)の目的に対しては、金属、例えば、Al、Au、Ag等や、金属光沢を有する有機薄膜、例えば、メチン染料、キサンテン系染料などを用いることができる。
(5)あるいは(6)の目的に対しては、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、熱可塑性樹脂等を用いることができる。
上記下引き層の膜厚としては0.01〜30μm、好ましくは、0.05〜10μmが適当である。
【0068】
〈反射層〉
反射層(通常、金属反射層)は、要求される反射率に応じて必要により用いることができる。
反射層としては、単体で高反射率が得られる腐食されにくい金属あるいは半金属等が用いられ、このような材料例としては、Au、Ag、Cr、Ni、Al、Fe、Snなどが挙げられる。これら材料の中で、反射率、生産性の点からAu、Ag、Alが最も好ましい。これらの金属、半金属は、単独で使用してもよく、2種の合金としてもよい。
反射層の膜形成法としては、限定するものではないが、蒸着、スッパタリングなどが挙げられる。反射層の膜厚としては、50〜5000Åが好ましく、更には100〜3000Åが好ましい。
【0069】
〈保護層、基板面ハードコート層〉
保護層及び基板面ハードコート層は、(1)記録層(反射吸収層)を傷、ホコリ、汚れ等から保護する、(2)記録層(反射吸収層)の保存安定性の向上、(3)反射率の向上等を目的として使用される。これらの目的に対しては、前記下引き層に示した材料を用いることができる。
また、無機材料として、SiO、SiO2なども用いることができ、有機材料としてポリメチルアクリレート、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂、セルロース、脂肪族炭化水素樹脂、天然ゴム、スチレンブタジエン樹脂、クロロプレンゴム、ワックス、アルキッド樹脂、乾性油、ロジン等の熱軟化性、熱溶融性樹脂も用いることができる。
上記材料のうち最も好ましい例としては、生産性に優れた紫外線硬化樹脂である。保護層または基板面ハードコート層の膜厚は、0.01〜30μm、好ましくは0.05〜10μmが適当である。
本発明において、前記下引き層、保護層及び基板面ハードコート層には、記録層の場合と同様に、安定剤、分散剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、可塑剤等を含有させることができる。
【0070】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明はなんら実施例に限定されるものではない。
有機薄膜に係る実施例:
実施例1
まず、ポリスチレン〔略:PSt〕とポリ−(2−ビニルピリジン)〔略:P2VP〕とからなり、P2VPの体積分率が18 vol%で、数平均分子量が約182,000のブロック共重合体をリビングラジカル法で合成した。
次に、純水40ml中に、10mmolの塩化金酸と3.0gの高分子顔料分散剤(ソルスパース27000:ゼネカ社製)を溶解させた後、1.0mlのジメチルアミノアルコールを加え、加熱して分散剤に保護された金超微粒子を含む溶液を調製した。
次いで、100mlの2−ブタノン中に、上記合成により得たブロック共重合体1.0mmolと、上記調製した分散剤に保護された金超微粒子を含む調整液1.0mlとを混合溶解(含む分散)させた。この混合溶液を石英基板上に塗布してキャスト膜を形成し、140℃で10時間アニール(熱処理)した。この処理によって、キャスト膜中にミクロ相分離構造が形成された。
キャスト膜の相分離構造を透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)により観察した結果、金超微粒子がブロック共重合体のポリ−(2−ビニルピリジン)〔略:P2VP〕中に、均一で選択的に分散された凡そ40nm以下の球状構造(高度に秩序化された構造)が形成されていることを確認した。
【0071】
実施例2
実施例1において用いた金超微粒子を含む調整液に代えて、下記により調製した分散剤に保護された銀超微粒子を含む調整液を用いたほかは実施例1と同様にしてブロック共重合体との混合溶液を調製し、キャスト膜中にミクロ相分離構造を形成した。
分散剤に保護された銀超微粒子の調製:純水40ml中に、40mmolの硝酸酸性の硝酸銀と、2.0gの高分子顔料分散剤(ディスパービック180:ビックケミー社製)を溶解させた後、2.0mlのトリエタノールアミンを加え、加熱して分散剤に保護された銀超微粒子を含む溶液を調製した。
得られた、キャスト膜の相分離構造を透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)により観察した結果、銀超微粒子がブロック共重合体のポリ−(2−ビニルピリジン)〔略:P2VP〕中に、均一で選択的に分散された凡そ40nm以下の球状構造(高度に秩序化された構造)が形成されていることを確認した。
【0072】
実施例3
まず、ポリスチレン(PSt)とポリ−(4−ビニルピリジン)〔略:P4VP〕とからなり、P4VPの体積分率が16vol%で、数平均分子量が約154,000のブロック共重合体をリビングラジカル法で合成した。
次に、純粋40ml中に、40mmolの塩化白金酸六水和物と2.0gの高分子顔料分散剤(ディスパービック180:ビックケミー社製)を溶解させた後、2.0mlのトリエタノールアミンを加え、加熱して分散剤に保護されたパラジウム超微粒子を含む溶液を調製した。
次いで、20mlのベンゼン中に、上記合成により得たブロック共重合体0.01mmolと、上記調製した分散剤に保護されたパラジウム超微粒子を含む調整液2mlとを混合溶解(含む分散)させた。
この混合溶液を石英基板上に塗布してキャスト膜を形成し、140℃で10時間アニール(熱処理)した。この処理によって、キャスト膜中にミクロ相分離構造が形成された。
キャスト膜の相分離構造を透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)により観察した結果、パラジウム超微粒子がブロック共重合体のポリ−(4−ビニルピリジン)〔略:P4VP〕中に、均一で選択的に分散された凡そ30nm以下の球状構造(高度に秩序化された構造)が形成されていることを確認した。
【0073】
実施例4
まず、ポリスチレン〔略:PSt〕とポリ−(2−ビニルピリジン)〔略:P2VP〕とからなり、P2VPの体積分率が21vol%で、数平均分子量が約168,000のブロック共重合体をリビングラジカル法で合成した。
次に、純水40ml中に、10mmolの塩化金酸と3.0gの高分子顔料分散剤(ソルスパース27000:ゼネカ社製)を溶解させた後、1.0mlのジメチルアミノアルコールを加え、加熱して分散剤に保護された金超微粒子を含む溶液を調製した。
次いで、100mlの2−ブタノン中に、上記合成により得たブロック共重合体1.0mmolと、上記調製した分散剤に保護された金超微粒子を含む調整液1.0mlとを混合溶解(含む分散)させた。この混合溶液を石英基板上に塗布してキャスト膜を形成し、140℃で10時間アニール(熱処理)した。この処理によって、キャスト膜中にミクロ相分離構造が形成された。
キャスト膜の相分離構造を透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)により観察した結果、金超微粒子がミクロ相分離構造の海部分であるポリ−(2−ビニルピリジン)〔略:P2VP〕中に均一で選択的に分散された凡そ45nm以下のポリスチレンの球状構造(高度に秩序化された構造)が形成されていることを確認した。
【0074】
実施例5
アセトン/純水(90/10vol%)40ml中に、10mmolの塩化金酸と1.0gの高分子顔料分散剤(ソルスパース24000:ゼネカ社製)を溶解させた後、5.0mlのジメチルアミノアルコールを加え、加熱して分散剤に保護された金超微粒子を含む溶液を調製した。
次に、100mlの2−ブタノン中に、実施例4で得たブロック共重合体1.0mmolと、上記分散剤に保護された金超微粒子調製液1.0mlとを混合溶解(含む分散)させた。この混合溶液を石英基板上に塗布してキャスト膜を形成し、140℃で10時間アニール(熱処理)した。この処理によって、キャスト膜中にミクロ相分離構造が形成された。
キャスト膜の相分離構造を透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)により観察した結果、金超微粒子がミクロ相分離構造の球状部分であるポリスチレン中に均一で選択的に分散された球状構造(高度に秩序化された構造)が形成されていることを確認した。
【0075】
実施例6
まず、実施例1と同じ条件で合成したブロック共重合体を2−ブタノンに溶解した溶液を調製した。この溶液を、実施例1と同様にして石英基板上に塗布してキャスト膜を形成し、140℃で10時間アニール(熱処理)した。この処理によって、キャスト膜中にミクロ相分離構造が形成された。このキャスト膜のミクロ相分離構造は、透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)による観察から凡そ40nm以下の球状構造(ポリ−(2−ビニルピリジン)〔略:P2VP〕)が形成されていることを確認した。
次に、純水20mlの中に、実施例1で得た金超微粒子調製整液20mlと、2−ブタノン20mlを加えた後、この溶液内に上記石英基板上形成したキャスト膜を投入して一日放置した。放置後取り出して、140℃で10時間アニール(熱処理)した。
キャスト膜の相分離構造を透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)により観察した結果、金超微粒子がポリ−(2−ビニルピリジン)〔略:P2VP〕中に均一で選択的に分散された凡そ40nm以下の球状構造(高度に秩序化された構造)が形成されていることを確認した。
【0076】
実施例7
まず、実施例1と同じ条件で合成したブロック共重合体を2−ブタノンに溶解した溶液を調製した。この溶液を、実施例1と同様にして石英基板上に塗布してキャスト膜を形成し、140℃で10時間アニール(熱処理)した。この処理によって、キャスト膜中にミクロ相分離構造が形成された。このキャスト膜のミクロ相分離構造には、凡そ40nm以下の球状構造(ポリ−(2−ビニルピリジン)〔略:P2VP〕)が形成されていることを確認した。
次に、実施例1と同じ条件で得た金超微粒子調製液を濃縮してペースト状としたもの(ペースト)を上記石英基板上に形成したキャスト膜上に塗布、積層し、140℃で20時間アニールした。(熱処理)した。
キャスト膜の相分離構造を透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)により観察した結果、金超微粒子がポリ−(2−ビニルピリジン)〔略:P2VP〕中に均一で選択的に分散された凡そ40nm以下の球状構造(高度に秩序化された構造)が形成されていることを確認した。
【0077】
実施例8
ポリエチレンオキサイド〔略:PEO〕と、下記構造式(1)で示されるアゾベンゼンにより修飾されたポリメチルメタクリレートとからなり、PEOの体積分率が29vol%で、数平均分子量が約168,000のブロック共重合体をリビングラジカル法で合成した。
【0078】
【化1】
【0079】
次に、100mlの2−ブタノン中に、上記で得たブロック共重合体1.0mmolと、実施例1と同じ条件にして得た分散剤に保護された金超微粒子調製液1.0mlとを混合溶解(含む分散)させた。
この混合溶液を石英基板上に塗布してキャスト膜を形成し、110℃で10時間アニールした(熱処理)した。この処理によって、キャスト膜中にミクロ相分離構造が形成された。
キャスト膜の相分離構造を透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)により観察した結果、金超微粒子がリエチレンオキサイド〔略:PEO〕中に均一で選択的に分散された柱状構造が基板面に対し垂直に配列して形成されていることを確認した。
【0080】
以上実施例1〜8の結果から、それぞれのブロク共重合体から高度に秩序化されたミクロ相分離構造体(球状あるいは柱状)が形成され、その一方の分離相(所望とする任意の分離相)のポリマー鎖(有機高分子中)にナノメータサイズの金属超微粒子(金属ナノクラスター)が均一に分散して構築された有機薄膜であることが確認された。従って、ブロク共重合体の設計とそのミクロ相分離構造体の形状(球状、柱状、ラメラ状等)を制御形成し、高分子化合物(高分子顔料分散剤等)からなる分散剤で保護したナノメータサイズの金属超微粒子を所望とする分離相に選択的に分散し、有機薄膜化できることが実証されたことから、新たな電子的性質、電気的性質(導電性等)、光学的性質等の機能を発揮する高機能性材料、例えば光記録媒体などの開発が可能となる。
【0081】
光記録媒体に係る実施例:
実施例9
実施例1と同じ条件でブロック共重合体と、分散剤に保護された金超微粒子を含む混合溶液を調製した。この混合溶液をアクリル系のフォトポリマーで表面硬化させたポリメチルメタクリレート(PMMA)製基板上に、乾燥後の膜厚が約30nmとなるような条件によりスピナー塗布して有機薄膜を形成し、実施例1と同様に140℃で10時間アニール(熱処理)して光記録体とした。この処理によって、有機薄膜中にミクロ相分離構造が形成された。
有機薄膜の相分離構造を透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)により観察した結果、PMMA基板上に金超微粒子がポリ−(2−ビニルピリジン)〔略:P2VP〕中に均一で選択的に分散された球状構造(高度に秩序化された構造)が単層として形成されていることを確認した。
【0082】
実施例10
実施例2と同じ条件でブロック共重合体と、分散剤に保護された銀超微粒子を含む混合溶液を調製した。この混合溶液をアクリル系のフォトポリマーで表面硬化させたポリメチルメタクリレート(PMMA)製基板上に、乾燥後の膜厚が約30nmとなるような条件によりスピナー塗布して有機薄膜を形成し、実施例2と同様に140℃で10時間アニール(熱処理)して光記録体とした。この処理によって、有機薄膜中にミクロ相分離構造が形成された。
有機薄膜の相分離構造を透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)により観察した結果、PMMA基板上に銀超微粒子がポリ−(2−ビニルピリジン)〔略:P2VP〕中に均一で選択的に分散された球状構造(高度に秩序化された構造)が単層として形成されていることを確認した。
【0083】
実施例11
実施例3と同じ条件でブロック共重合体と、分散剤に保護されたパラジウム超微粒子を含む混合溶液を調製した。この混合溶液をアクリル系のフォトポリマーで表面硬化させたポリメチルメタクリレート(PMMA)製基板上に、乾燥後の膜厚が約25nmとなるような条件によりスピナー塗布して有機薄膜を形成し、実施例3と同様に140℃で10時間アニール(熱処理)して光記録体とした。この処理によって、有機薄膜中にミクロ相分離構造が形成された。
有機薄膜の相分離構造を透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)により観察した結果、PMMA基板上に銀超微粒子がポリ−(4−ビニルピリジン)〔略:P4VP〕中に均一で選択的に分散された球状構造(高度に秩序化された構造)が単層として形成されていることを確認した。
【0084】
実施例12
実施例8と同じ条件でブロック共重合体と、分散剤に保護された金超微粒子を含む混合溶液を調製した。前記のようにブロック共重合体は、ポリエチレンオキサイド〔略:PEO〕と、前記構造式(1)で示されるアゾベンゼンにより修飾されたポリメチルメタクリレートとからなる共重合体である。
この混合溶液をアクリル系のフォトポリマーで表面硬化させたポリメチルメタクリレート(PMMA)製基板上に、乾燥後の膜厚が約60nmとなるような条件によりスピナー塗布して有機薄膜を形成し、120℃で10時間アニール(熱処理)して光記録体とした。この処理によって、有機薄膜中にミクロ相分離構造が形成された。
有機薄膜の相分離構造を透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)により観察した結果、PMMA基板上に金超微粒子がポリエチレンオキサイド〔略:PEO〕中に均一で選択的に分散された柱状構造(高度に秩序化された構造)が基板面に対し垂直に配列して形成されていることを確認した。
【0085】
比較例1
実施例1で合成したポリスチレン〔略:PSt〕とポリ−(2−ビニルピリジン)〔略:P2VP〕とからなり、P2VPの体積分率が18 vol%で、数平均分子量が約182,000のブロック共重合体のみをベンゼン中に溶解させた溶液を調製した。この溶液をアクリル系のフォトポリマーで表面硬化させたポリメチルメタクリレート(PMMA)製基板上に、乾燥後の膜厚が約30nmとなるような条件によりスピナー塗布して有機薄膜を形成し、140℃で10時間アニール(熱処理)して光記録体とした。この処理によって、有機薄膜中にミクロ相分離構造が形成された。
有機薄膜の相分離構造を透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)により観察した結果、PMMA基板上に球状構造が単層として形成されていることを確認した。
【0086】
比較例2
実施例8で合成したポリエチレンオキサイド〔略:PEO〕と、前記構造式(1)で示されるアゾベンゼンにより修飾されたポリメチルメタクリレートとからなり、PEOの体積分率が29vol%で、数平均分子量が約168,000のブロック共重合体のみをベンゼン中に溶解させた溶液を調製した。この溶液をアクリル系のフォトポリマーで表面硬化させたポリメチルメタクリレート(PMMA)製基板上に、乾燥後の膜厚が約60nmとなるような条件によりスピナー塗布して有機薄膜を形成し、110℃で10時間アニール(熱処理)して光記録体とした。この処理によって、有機薄膜中にミクロ相分離構造が形成された。
有機薄膜の相分離構造を透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)により観察した結果、PMMA基板上に柱状構造が薄膜面に対し直角に配列して形成されていることを確認した。
【0087】
次に、上記実施例9〜12及び比較例1〜2で作製した各記録体を用いて、それぞれに、発振波長415nm、ビーム径1.0μm の半導体レーザを照射し、水平方向に1.5μm間隔で1.0cm2の条件でスキャンさせて記録を行った。各記録体の半導体レーザ照射部及び未照射部について、透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)による観察と、顕微分光法による反射率及び透過率の測定を行った。結果を表1に示す。
なお、上記記録条件では、有機薄膜中の金属超微粒子により形成される記録に対応する各ドット、すなわち記録ドットが数十nmであり、一方記録ビーム径が1.0μmであるため、一度のレーザスキャンにより数多くの記録ドットが光照射されることになる。また、再生評価もマクロの観察によるものである。従って、記録ドット単位で記録し、記録ドット単位で再生したものではないが、比較例との対比により、記録ドットへの記録及び再生が検証できる。
【0088】
【表1】
【0089】
評価結果
実施例と比較例の結果から、本発明に係る実施例の記録体は、レーザ照射により、有機薄膜の球状または柱状構造内に存在する金属超微粒子から構成される記録ドットに記録が可能なことが確認された。
実施例9〜12において、光学系(光源)のレーザビーム径は、1.0μmであり、記録体の金属超微粒子から構成される記録ドットの径(数十nm)に比較して大きく、このため、多数の記録ドットを一度に記録するようにした。当然、金属超微粒子ドットと同程度のビーム径で記録すれば、金属超微粒子から構成される記録ドットを個別に記録することが可能である。
表1の透過率変化、反射率変化に示すように、本発明に係る光記録体は、記録信号が透過率変化として再生できるため、この現象を利用した再生方式に用いる場合には、記録再生用レーザの発振波長近傍に金属超微粒子の最大吸収波長を制御することが最も好ましいことが確認された。また、記録信号が反射率変化として再生できることから、この現象を利用した再生方式に用いる場合には、記録再生用レーザの発振波長近傍に、金属超微粒子の最大屈折率を制御することが最も好ましいことが確認された。
【0090】
【発明の効果】
本発明の高度に秩序化されたミクロ相分離構造の一方の分離相のみに分散剤で保護された金属超微粒子を選択的に含有させることによって、電子的性質、導電性などの電気的性質、光学的性質等の新たな機能を発揮する有機薄膜が提供される。分散材として、金属超微粒子と親和性のある基を有し、一方の分離相とのみ親和性のある基を有する高分子化合物(例えば、高分子顔料分散剤)を用いることによって、任意の複合構成とすることができる。分離相が球状または柱状で、金属超微粒子が光または熱によって光学的性質が変化する性質の場合には、特に超高密度記録用の光記録媒体として有用な記録材料(有機薄膜)が提供される。
金属微粒子として、金、銀、プラチナ及びその合金を用いることにより、好適な保存安定性及び光学特性が得られる。更に、このような金属超微粒子が示すプラズモン吸収を利用することにより、効果的な記録、再生を可能とすることができる。
ブロック共重合体と、分散剤で保護された金属超微粒子との混合溶液を塗布薄膜化してミクロ相分離構造を形成するか、あるいは予めブロック共重合体を含有する溶液を塗布薄膜化してミクロ相分離構造を形成し、これと分散剤で保護された金属超微粒子を含有する溶液とを接触させるか、または塗布積層させて、一方の分離相に金属超微粒子を選択的に拡散させる製造方法によって、三次元的に高度な構造制御が達成され、新機能を発揮する有機薄膜が提供される。
基板上に本発明の有機薄膜(マトリックス部を介して非連続して存在する球状、柱状等からなる形態の分離相)からなる記録層を設けることによって、ナノメータサイズ(10〜500nm)の記録ドットが均一に形成される。また、記録層の膜厚を球状構造の球径よりも薄く形成すること、あるいは記録層膜面の垂直方向に配列制御した柱状構造とすることにより、サイズが均一でマトリックスを介して非連続な記録層ドットとすることができる。このような構成の光記録媒体とすることによって、照射光の光学系に依存することなくナノメータサイズの超高密度記録が実現し、記録ピットの最外周エッジも明瞭でバラツキの無い高品質の信号特性が得られる。
レーザ光の発振波長近傍に最大吸収波長または最大屈折率を有する金属超微粒子を用いることによって、記録再生において、高いコントラストが得られる。
本発明の光記録媒体は、記録層ドットにレーザ光を照射して、その光学特性変化もしくはその記録層ドットの形状変化により記録し、それぞれ記録レーザ光よりパワーの小さい再生レーザ光により、光学特性変化の強弱を検知して再生することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機薄膜に形成されるミクロ分離構造の形態例:(a)球状構造、(b)柱状構造、(c)ラメラ状構造を示す模式図である。
【図2】本発明の光記録媒体の反射層を備えない場合の層構成例(a)〜(d)を示す概略断面図である。
【図3】本発明の光記録媒体の反射層を備えた場合の層構成例(a)〜(e)を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 記録層
3 下引き層
4 保護層
5 基板面ハードコート層
6 反射層
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ディスク、光カード、光テープなどの分野で使用される電子材料あるいは光学材料として応用することのできる機能性の高い有機薄膜と、それを用いた光記録媒体に関し、特に光ビームを照射することにより、記録材料の透過率、反射率等の光学的な変化を生じさせ、情報の記録再生を行なう光記録媒体に有用な有機薄膜と、それを用いた超高密度光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ナノメータサイズの機能性材料をポリマー(高分子)材料内に導入して複合化することにより、電子的性質、導電的性質、光学的性質、磁気的性質等の新たな機能を発揮することが期待されることから、機能性材料を得るための重要な技術として注目されている。
このような機能性材料として、ナノメータサイズの金属超微粒子、すなわち金属ナノクラスターから構成される金属−有機複合材料の研究開発が進められており、例えば、触媒、固定化触媒、メンブレンリアクター、帯電防止プラスチック等に利用することを目的とした金属・有機ポリマー複合構造体(多孔体)が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照。)。
【0003】
具体的には、特許文献1では、互いに非相溶なポリマー鎖が各々末端で結合したブロックコポリマーのミクロ相分離構造における一方のポリマー相内の骨格表面近傍に金属超微粒子が含有されている複合体で、かつ他方のポリマー相が空孔化されている複合体が提案されている。
この複合体は、金属化合物と親和性のあるポリマー鎖と金属化合物と親和性のないポリマー鎖とが末端で結合したブロック共重合と、金属化合物と、該金属化合物の還元剤とを溶解し、これを加熱、還元して金属微粒子表面を被覆保護し、溶媒キャスト(溶媒除去)または温度操作(温度低下)により相分離構造を形成するとともに、空孔については、一方の相を分解またはホモポリマ、オリゴマー、低分子を添加しミクロ相分離後に、溶出処理して形成するものである。
なお、特許文献2には、同様の構成で金属超微粒子が10nm以下である金属・有機ポリマー複合構造体(多孔体)が提案されている。
また、特許文献3では、非相溶なブロック共重合ポリマーのミクロ相分離構造における一方の相内の中央近傍に金属超微粒子が含有されている複合体、すなわち金属・有機ポリマー(Mn1)複合体とマトリックスポリマー(Mn2)の溶液を、溶媒キャスト(溶媒除去)または温度操作(温度低下)により相分離構造を形成し(Mn1>Mn2)、その後金属微粒子が含まれていないポリマー相を除去することが提案されている。
更に、特許文献4では、互いに非相溶なポリマー鎖の各々末端で結合したブロックコポリマーのミクロ相分離構造における一方のポリマー相内に列状に金属超微粒子が含有されている金属・有機ポリマー複合構造体が提案されている。この複合構造体における金属超微粒子は、金属化合物と親和性のあるポリマー鎖と金属化合物と親和性のないポリマー鎖とが末端で結合したブロック共重合と、金属イオンとを還元能のある高沸点溶媒と低沸点溶媒に溶解し、低沸点溶媒を除去し相分離構造を形成し、高沸点溶媒を除去しながら金属イオンを還元して形成している。
【0004】
上記のように金属微粒子を相分離構造中に取り込む研究は既に行われているが、用いる金属微粒子に対して選択すべきブロック共重合ポリマーを構成する各ポリマー鎖が制約されるほか、相分離構造において金属微粒子を含有する分離相が限定されて、所望(任意)の分離相及びポリマー鎖中に自由に選択して含有させられず、更に相分離構造と金属微粒子含有分離相を秩序ある構造に維持して形成することが難しいという難点がある。
このように金属超微粒子、いわゆる金属ナノクラスターを所望(任意)の分離相のポリマー鎖内に秩序構造を維持するように制御して導入する複合材料の研究開発はほとんど進められていないのが現状である。
【0005】
一方、情報記録分野(光メモリ分野)では、現在、基板上に反射層を有する光記録媒体として、CD規格及びDVD規格にそれぞれ対応した、いわゆる記録可能なCD−R、DVD−Rが商品化されているが、記録情報量の増大に伴って、更に高記録容量化と小型化が求められている。このため、このような光記録媒体の記録密度の更なる向上が望まれている。
現行光記録システムにおける記録容量向上のための要素技術としては、記録ピットの微小化技術、MPEG2に代表される画像圧縮技術がある。記録ピットの微小化技術には、記録再生光の短波長化や回折限界の向上を図るために光学系の開口数(NA)の増大化が検討されているが、その回折限界を越える記録再生は困難である。
そのため、超解像技術や近接場光を利用した光記録システムが、回折限界を越える微小記録再生を可能とする有力な手段として注目されている。しかし、このような従来の光学系(光源サイド)に注目した、手法(アプローチ)により高密度記録化を達成するための技術的なハードルは高く、未だ実用化には至っていない。
上記状況から、回折限界を越える微小記録により更に高密度記録を可能とする、より現実的な新技術の開発が求められている。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−60891号公報
【特許文献2】
特開平10−330492号公報
【特許文献3】
特開2000−72951号公報
【特許文献4】
特開2000−72952号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたもので、高度に秩序化されたミクロ相分離構造の任意の分離相にナノメータサイズの金属超微粒子を含有した電子的、電気的、光学的等の高機能性を有する有機薄膜とその製造方法を提供するとともに、該有機薄膜を記録材料とし、光学系ピックアップレンズの回折限界を越えた超高記録密度で記録再生が可能な光記録媒体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、前記分散剤で保護したナノメータサイズの金属超微粒子を用いることにより、互いに非相溶である少なくとも2種類のポリマー鎖が結合したブロック共重合体により形成された高度に秩序化されたミクロ相分離構造の一方(任意)の分離相(ポリマー鎖)中に金属超微粒子を、秩序構造を維持しつつ制御して導入することを可能とし、電子的性質、電気的性質(導電的性質など)、光学的性質等の新たな機能を発揮する機能性複合材料の提供を実現するものであり、このような複合化による有機薄膜とその製造法、及び有機薄膜を利用した光記録媒体を提供するものである。
本発明においては、一方の分離相に含有される金属超微粒子を記録体とすることにより、記録体の面積自体が照射光の回折限界よりも小さなドット列化されているため、従来では達成出来なかった超高密度光記録を実現することができる。すなわち、光学系(レーザーピックアップ)の回折限界を越える記録密度で記録再生が可能な光記録媒体を得ることができる。このような、記録媒体の考え方は、前記従来技術(光学系からのアプローチ)とは全く異なるものである。
以下、本発明について具体的に説明する。
【0009】
請求項1の発明は、互いに非相溶である少なくとも2種類のポリマー鎖が結合したブロック共重合体により形成されたミクロ相分離構造を有し、該ミクロ相分離構造の一方の分離相のみに分散剤で保護された金属超微粒子を含有する有機薄膜であって、
前記分散剤は、前記金属超微粒子と親和性のある基を有するとともに、前記一方の分離相とのみ親和性のある基を有する高分子化合物であることを特徴とする有機薄膜である。
【0010】
請求項1の分散剤で保護したナノメータサイズの金属超微粒子を用いることにより、互いに非相溶であるポリマー鎖が結合したブロック共重合体中に形成された高度に秩序化されたミクロ相分離構造における一方の所望(任意)の分離相(ポリマー鎖)中に金属超微粒子を、秩序構造を維持しつつ制御して導入することが可能となる。
これによって、電子的性質、導電性などの電気的性質、光学的性質等の新たな機能を発揮する機能性複合材料の提供を実現することができる。
【0011】
請求項2の発明は、前記分散剤は、高分子顔料分散剤であることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜である。
【0012】
請求項2の高分子顔料分散剤を用いた構成によれば、高分子顔料分散剤の多様な分子構造、すなわち、主鎖(もしくは側鎖)に金属超微粒子の表面に対し強い吸着力を有する親和性基を有し、一方側鎖(もしくは主鎖)にブロック共重合体に溶解性(含む分散)を持つ親和性基を有する高分子化合物が幅広く選択でき、特に市販品の中から使用できるというメリットもある。
【0013】
請求項3の発明は、前記ミクロ相分離構造における一方の分離相は、球状、柱状、ラメラ状もしくは前記各形状に類似の構造であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機薄膜である。
【0014】
請求項3の構成によれば、各分離相の特徴的な形状、形態及び一方の分離相に含有させる金属超微粒子の性質(電子的性質、導電性などの電気的性質、光学的性質等)に応じた機能性複合材料の提供が可能となる。分離相が球状または柱状で、金属超微粒子が光または熱によって光学的性質が変化する性質の場合には、光記録媒体の記録層、特に高密度記録用として有用な記録材料(有機薄膜)が提供される。
【0015】
請求項4の発明は、前記金属超微粒子は、光または熱により該金属超微粒子の光学特性が変化する性質を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機薄膜である。
【0016】
請求項4の構成によれば、請求項3と同様に光記録媒体の記録層、特に高密度記録用として有用な記録材料が提供される。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法であって、
前記ブロック共重合体と前記分散剤で保護された金属超微粒子とを含有する混合溶液を調製する工程と、
該調製された混合溶液を塗布薄膜化してミクロ相分離構造を形成する工程と、
を含むことを特徴とする有機薄膜の製造方法である。
【0018】
請求項6の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法であって、
前記ブロック共重合体を含有する溶液を調製し、該調製された溶液を塗布薄膜化してミクロ相分離構造を形成する工程と、
該形成されたミクロ相分離構造を有するブロック共重合体と、前記分散剤で保護された金属超微粒子を含有する溶液とを接触させる工程と、
該分散剤で保護された金属超微粒子を、前記ミクロ相分離構造を有するブロック共重合体の一方の分離相に拡散させる工程と、
を含むことを特徴とする有機薄膜の製造方法である。
【0019】
請求項7の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法であって、
前記ブロック共重合体を含有する溶液を調製し、該調製された溶液を塗布薄膜化してミクロ相分離構造を形成する工程と、
該形成されたミクロ相分離構造を有するブロック共重合体上に、前記分散剤で保護された金属超微粒子を含有する溶液を塗布積層する工程と、
該分散剤で保護された金属超微粒子を、前記ミクロ相分離構造を有するブロック共重合体の一方の分離相に加熱拡散させる工程と、
を含むことを特徴とする有機薄膜の製造方法である。
【0020】
請求項8の発明は、前記ミクロ相分離構造は、溶媒除去もしくは熱処理により形成されることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法である。
【0021】
請求項5〜8の製造方法によれば、分散材で保護されたナノメータサイズの金属超微粒子を、ブロック共重合体のミクロ相分離構造における所望とする一方(任意)の分離相内に高度に秩序化された構造に制御して選択的に含有させることが可能となる。
このような三次元的に高度に構造制御して複合化することにより、電子的性質、電気的(導電的等)性質、光学的性質等の新機能を発揮する有機薄膜の製造が達成され、超高密度記録に対応できる本発明の光記録媒体の製造を可能とすることができる。
【0022】
請求項9の発明は、基板上に有機薄膜からなる記録層を設けた光記録媒体であって、
前記有機薄膜は請求項1〜4のいずれかに記載の有機薄膜であることを特徴とする光記録媒体である。
【0023】
請求項9の構成によれば、光記録媒体の記録層中の記録ドット(金属超微粒子から構成される記録用の点)がナノメータサイズ(10〜500nm)で均一に形成される。これによって照射されるレーザ光の発振波長やレンズのNAに依存することなく、ナノメータサイズの微小記録を実現し、超高密度の記録が可能となる。更に、記録ピットの最外周エッジも不明瞭となることなくバラツキの無い高品質の信号特性を得ることが可能となる。
【0024】
請求項10の発明は、前記有機薄膜は、請求項5〜8のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法によって製造されたことを特徴とする請求項9に記載の光記録媒体である。
【0025】
請求項10によれば、分散材で保護されたナノメータサイズの金属超微粒子を、ブロック共重合体のミクロ相分離構造における所望とする一方(任意)の分離相内に高度に秩序化された構造に制御して選択的に含有させることが可能となるので、ナノメータサイズの微小記録を実現し、高密度記録が可能となるばかりでなく、記録ピットの最外周エッジも不明瞭となることなくバラツキの無い高品質の信号特性を得ることが可能となる。
【0026】
請求項11の発明は、前記記録層をなす有機薄膜のミクロ相分離構造における一方の分離相は、球状構造もしくは柱状構造であることを特徴とする請求項9に記載の光記録媒体である。
【0027】
請求項11の構成によれば、本発明の光記録媒体の有機薄膜からなる記録層中の記録層ドット(金属超微粒子から構成される記録用の点)は、有機薄膜のマトリックス部を介して非連続して存在することが必要である。
このことからミクロ相分離構造における一方の分離相は球状構造あるいは柱状構造であることによって、所定の非連続ドット形態が形成され、好適な記録層が提供される。
【0028】
請求項12の発明は、前記記録層をなす有機薄膜のミクロ相分離構造における一方の分離相は球状構造であり、かつ記録層の膜厚は該球状構造の球径よりも薄く形成されていることを特徴とする請求項9に記載の光記録媒体である。
【0029】
請求項12によれば、記録層の膜厚が該球状構造の球径よりも薄く形成され、光記録媒体の記録層として記録媒体面上にサイズの均一な光記録機能を有する記録層ドットがマトリックスを介して非連続して存在する構造とすることができる。これによって、高品質で超高記録密度の光記録媒体が提供される。
【0030】
請求項13の発明は、前記記録層をなす有機薄膜のミクロ相分離構造における一方の分離相は柱状構造であり、該柱状構造は記録層の膜面に対して垂直方向に配列するように制御されていることを特徴とする請求項9に記載の光記録媒体である。
【0031】
請求項13の構成によれば、光記録媒体の記録層として記録媒体面上にサイズの均一な光記録機能を有する記録層ドットがマトリックスを介して非連続して存在する構造とすることができる。これによって、高品質で超高記録密度の光記録媒体が提供される。
【0032】
請求項14の発明は、前記分散剤で保護された金属超微粒子は、記録再生用レーザの波長近傍に最大吸収波長を持つように該分散剤で保護された金属超微粒子の粒径及び形状が制御されていることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の光記録媒体である。
【0033】
請求項15の発明は、前記分散剤で保護された金属超微粒子は、記録再生用レーザの波長近傍に最大屈折率を持つように該分散剤で保護された金属超微粒子の粒径及び形状が制御されていることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の光記録媒体である。
【0034】
請求項14または15の構成によれば、レーザ光の発振波長近傍に最大吸収波長または最大屈折率を持つ金属超微粒子を用いることによって、記録層の光学特性変化を検知することにより光記録媒体の記録再生を行う場合に、最もコントラストが得られる条件に合致するためである。
【0035】
請求項16の発明は、前記金属超微粒子は、金、銀、白金、または前記金属の合金であることを特徴とする請求項9〜15のいずれかに記載の光記録媒体である。
【0036】
請求項16の金、銀、白金及びその合金は保存安定性及び光学特性の点から好適な金属超微粒子である。このような金属超微粒子が示すプラズモン吸収を利用することにより、例えば光記録媒体の光吸収波長を制御することができ、効果的な記録、再生を可能とすることができる。
【0037】
請求項17の発明は、請求項9〜16のいずれかに記載の光記録媒体の記録再生方法であって、
レーザ光の照射により、前記分散剤で保護された金属超微粒子が含有されるミクロ相分離構造における一方の分離相の光学特性を変化させて記録再生することを特徴とする光記録媒体の記録再生方法である。
【0038】
請求項18の発明は、請求項9〜16のいずれかに記載の光記録媒体の記録再生方法であって、
レーザ光の照射により、前記分散剤で保護された金属超微粒子が含有されるミクロ相分離構造における一方の分離相の形状を変化させて記録再生することを特徴とする記録媒体の光記録再生方法である。
【0039】
請求項17または18によれば、本発明の光記録媒体の金属微粒子からなる記録層ドットにレーザ光を照射し、その光学特性(吸収率、反射率、屈折率等)変化により記録し、記録レーザ光よりパワーの小さい再生レーザ光により光学特性変化の強弱を検知して再生することが可能であるとともに、記録層ドットにレーザ光を照射し、その記録層ドットの形状(凹凸、平滑性等)変化により記録し、記録レーザ光よりパワーの小さい再生レーザ光により、その散乱や位相差による光学特性変化の強弱を検知して再生することが可能である。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の有機薄膜は、互いに非相溶である少なくとも2種類のポリマー鎖が結合したブロック共重合体により形成された高度に秩序化されたミクロ相分離構造を有し、そのミクロ相分離構造の一方の相のみに分散剤で保護した金属超微粒子が含有されている構造からなる。
この有機薄膜の特長は、金属超微粒子がナノメータサイズ(いわゆる金属ナノクラスター)で、ミクロ相分離構造における一方の分離層を形成するポリマー鎖(高分子マトリックス)内に高度に秩序化された構造を維持して存在することである。金属超微粒子を含有させる一方の分離層は、ブロック共重合体の互いに非相溶である少なくとも2種類のポリマー鎖のそれぞれによって形成される分離層のいずれでもよく、所望(任意)の分離相とすることができる。
【0041】
このように、高度に秩序化されたミクロ相分離構造において形成される分離層のいずれか所望(任意)の相に金属超微粒子を分散させるには、分散剤で保護された金属超微粒子を用いることにより制御することができる。分散剤としては、金属超微粒子と親和性のある基を有するとともに、ブロック共重合体のいずれかのポリマー鎖から形成される所望とする一方(任意)の分離相とのみ親和性(相溶性や分散性)があり、他の一方の分離相には親和性(相溶性や分散性)のない基を有する高分子化合物(例えば、高分子顔料分散剤)を利用することにより可能となる。
【0042】
上記のように、本発明における高度に秩序化された構造体を形成する主要な原動力(ドライビングフォース)としては、ブロック共重合体のミクロ相分離現象を利用している。このようなミクロ相分離現象に基づいて形成されるミクロ相分離構造としては、図1の模式図に示すような球状構造(球状)、柱状構造(柱状)、ラメラ状構造(ラメラ状)、もしくはこれらの類似構造があり、いずれも利用できる。
このようにナノメータサイズの金属超微粒子を一方の分離相であるポリマー鎖(高分子マトリックス)内に導入し、三次元的に高度に構造制御して複合化することにより、電子的性質、電気的(導電性等)性質、光学的性質等の新たな機能を発揮する有機薄膜が形成できる。
なお、光記録媒体においては、金属超微粒子として、光または熱によりその光学特性を変化させる性質(機能)を有する前記分散剤で保護した金属超微粒子が好ましく用いられる。
【0043】
前記互いに非相溶である少なくとも2種類のポリマー鎖が結合したブロック共重合体は、文字通り互いに非相溶である各ポリマーを組み合わせて合成することができる。
本発明に用いるブロック共重合体は、例えば、各種モノマーを用いて予めリビング的にポリマーを重合させ、得られたブロックポリマーを用いて、当該ブロックポリマー末端から互いに非相溶のポリマー鎖を重合させるリビング重合法(アニオン重合、リビングラジカル重合)、あるいは鎖の中央から合成するリビング重合(アニオン重合)、または、各種モノマーを用いて予め互いに非相溶のそれぞれのブロックポリマーを重合させ、得られたポリマーを用いて、末端官能性ポリマーの末端を結合させる合成法(アニオン重合、リビングラジカル重合)などの重合方法によって合成することができる。
【0044】
このような、本発明のブロック共重合体を合成するために用いるモノマーとしては、例えば、スチレン、イソプレン、α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、2ビニルピリジン、アミノスチレン、4−ビニルピリジン、メタクリレート類、ε−カプロラクトン、ブタジエン、ビニルメチルエーテル、1、3−シクロヘキサンジエン、エチレンオキシド等が挙げられる。なお、これらのモノマーは例であって、これらに限定されるものではない。
【0045】
本発明で用いる分散剤は、前述のように金属超微粒子と親和性のある基を有するとともに、前記ブロック共重合体から形成される一方の分離相とのみ親和性のある基を有する高分子化合物である。
すなわち、分散剤は、金属超微粒子の凝集を防ぎ保護するとともに、ブロック共重合体により形成される一方の分離相に選択的に溶解(含む分散)する性質(親和性基)を有するものである。また、分散剤で保護された金属超微粒子とブロック共重合体との混合溶液を調製してコロイド溶液としたときに、金属微粒子の保護コロイドとなり得るものが使用できる。更に、分散剤には、金属超微粒子に吸着するような窒素や酸素を含有する高分子化合物も用いられる。分散剤として、特に高分子顔料分散剤が好適に用いられる。
【0046】
高分子顔料分散剤としては、例えば、金属超微粒子の表面に対し強い吸着力を有する親和性基(例えば、オルガノゾルに対し:第三級アミノ基、第四級アンモニウム基、塩基性窒素を有する複素環基、ヒドロキシ基、カルボキシル基等、あるいはヒドロゾルに対し:フェニル基、ラウリル基、ステアリル基、ドデシル基、オレイル基等)を有する主鎖(もしくは側鎖)と、ブロック共重合体により形成される一方の分離相に相溶(含む分散)する親和性基を有する側鎖(もしくは主鎖)から構成されている高分子化合物が好適に用いられる。このような高分子顔料分散剤としては、市販のものも使用出来る。
【0047】
市販品としては、ソルスパース2000、2400、2600、2700、2800(ゼネカ社製)、アジパーPB711、PA111、PB811、PW911(味の素社製)、EFKA−46、47、48、49(EFKAケミカル社製)、ディスパービック160、162、163、166、170、180、182、184、190(ビックケミー社)、フローレンDOPA−158、22、17、G−700、TG−720W、730W(共栄化学社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
本発明に用いられる金属超微粒子としては、目的に応じて自由に選択することが可能である。
例えば、光記録媒体には、金、銀、白金(プラチナ)、銅、錫、ロジウム、イリジウム等の前記分散剤で保護された全ての金属超微粒子が利用できるが、中でも保存安定性及び光学特性の点から、金、銀、白金(プラチナ)及びその合金が特に好ましい。これら上記の金属超微粒子は単独で用いてもよいし、2種以上を組合わせて用いてもよい。
更に、金属超微粒子として、プラズモン吸収を示す金属超微粒子を用いることができる。金属超微粒子に光を照射すると金属中の自由電子が光電場により分極され、金属超微粒子表面に電荷が発生して非線形分極が生じる。これによって、電子のプラズマ振動に起因するプラズモン吸収と呼ばれる発色機構に基づく特有の吸収を示す(なお、吸収特性は、金属の種類、粒径、形状などに依存する。)。このような金属超微粒子を用いることによって、例えば光記録媒体の光吸収波長を制御することができ、効果的な記録、再生を可能とすることができる。
【0049】
ナノメータサイズの金属超微粒子(金属ナノクラスター)は、通常、有機溶媒中に金属化合物とその還元剤を溶解し、熱処理(加熱)することで得られる。本発明の金属超微粒子は、前記の分散剤(例えば、高分子顔料分散剤)で保護された金属超微粒子を利用することが特徴であるが、その製造方法としては、例えば金属化合物とその還元剤を有機溶媒中に溶解し、分散剤(例えば、高分子顔料分散剤)を加えた後、熱処理(加熱)することにより得られる。
有機溶媒としては、金属化合物を溶解させるもので、還元を阻害しないものであれば特に制約はなくどのようなものでも使用できる。また、金属化合物の還元剤としては、例えば、アルカリ金属水素化ホウ素塩、ヒドラジン化合物、クエン酸及びその塩、コハク酸及びその塩、アミン類など一般に用いられているものが使用できる。
【0050】
次に、本発明の有機薄膜の製造方法について説明する。
本発明の三次元的に高度に構造制御された有機薄膜におけるミクロ相分離及び分散剤で保護された金属超微粒子の分散は、以下のような方法により実施することができる。
第一の方法は、まず互いに非相溶である少なくとも2種類のポリマー鎖が結合したブロック共重合体と、前記金属超微粒子と親和性のある基を有するとともに、一方の分離相とのみ親和性のある基を有する高分子化合物からなる分散剤で保護された金属超微粒子とを含有する混合溶液を調製する。
次に、その調製された混合溶液を浸漬塗布法やスピンコート法等により塗布薄膜化した後に、溶媒除去あるいは熱処理(温度変化を加える)によりミクロ相分離構造を形成し、ミクロ相分離構造の一方の分離相にのみ金属超微粒子を選択的に含有させた構造の有機薄膜を製造する方法である。
【0051】
第二の方法は、まず互いに非相溶である少なくとも2種類のポリマー鎖が結合したブロック共重合体を含有する溶液を調製し、該調製された溶液を塗布薄膜化して溶媒除去あるいは熱処理(温度変化を加える)によりミクロ相分離構造を形成する。
次に、形成されたミクロ相分離構造を有するブロック共重合体と、金属超微粒子と親和性のある基を有するとともに、一方の分離相とのみ親和性のある基を有する高分子化合物からなる分散剤で保護された、いわゆるミクロ相分離構造の一方の分離相にのみ相溶性(含む分散)のある金属超微粒子とを含有する溶液中に浸漬や塗布等により接触させる。
次いで、分散剤で保護された金属超微粒子を、前記ミクロ相分離構造を有するブロック共重合体の一方の分離相に拡散させて、ミクロ相分離構造の一方の分離相にのみ金属超微粒子を選択的に含有させた構造の有機薄膜を製造する方法である。
【0052】
第三の方法は、まず互いに非相溶である少なくとも2種類のポリマー鎖が結合したブロック共重合体を含有する溶液を調製し、該調製された溶液を塗布薄膜化して溶媒除去あるいは熱処理(温度変化を加える)によりミクロ相分離構造を形成する。
次に、該形成されたミクロ相分離構造を有するブロック共重合体上に、前記金属超微粒子と親和性のある基を有するとともに、前記一方の分離相とのみ親和性のある基を有する高分子化合物からなる分散剤で保護された、いわゆるミクロ構造の一方の分離相にのみ相溶性のある金属超微粒子とを含有する溶液をウエットプロセスやドライプロセス等により塗布積層する。
次いで、塗布積層した薄膜を加熱してミクロ相分離構造を有するブロック共重合体の一方の分離相に金属超微粒子を加熱拡散させ、ミクロ相分離構造の一方の分離相にのみ金属超微粒子を選択的に含有させた構造の有機薄膜を製造する方法である。
なお。上記各製造方法において、ミクロ相分離を促進させるために、上記ブロック共重合体以外に他のポリマーを添加してもよい。
【0053】
本発明の特徴である金属超微粒子を分散剤(例えば、高分子顔料分散剤)で保護することにより、前記任意のミクロ相分離構造部位への金属超微粒子を導入することが可能となるが、このような選択的な相溶化は、形成される保護コロイドの表面部位とミクロ相分離構造体の任意(所望)の相との相溶性/非相溶性を考慮して、分散剤である高分子化合物の化学構造設計/制御を行うことによって達成できる。
【0054】
次に、前記有機薄膜を、光記録材料(記録層)として応用した光記録媒体について説明する。
従来の光記録媒体は、相分離などが無く連続した記録材料から構成された記録層を備えており、この記録層にレーザビームを照射し、レーザビームの形状に相応した何らかの変化(光学的な変化を伴う物理的、化学的等の変化)を記録材料に対して形成して記録するようになっている。従って、最小記録ピットのサイズは、光学系の発振波長とレンズのNAで決定されるレーザビーム径に依存するものである。このように従来の記録再生システムでは、記録媒体の高密度化は基本的にレーザの発振波長やレンズのNAの実用化技術力(技術水準)に左右されてきた。
また、レーザビーム形状がガウス分布形状であり、しかも記録材料として熱または光に対して明瞭な閾値で上記変化(光学的な変化を伴う物理的、化学的等の変化)を示す材料はほとんど存在しないため、レーザビーム照射によって形成されるピットの最外周の大きさや変化量は均一とはならない。このような要因が必ず存在するため、再生信号にバラツキを起生することになり、高品質の信号特性を得るには限界があった。
【0055】
本発明の記録媒体は、上記のような従来の記録媒体における課題を克服した新しい構成、構造の光記録媒体である。
すなわち、本発明の有機薄膜は、前記のように一方の分離相のみに分散剤で保護された金属超微粒子(光または熱によって光学特性が変化する性質を持った金属超微粒子)を含有するブロック共重合体により形成されたミクロ相分離構造を有し、このような有機薄膜を記録層に応用した光記録媒体においては、一方の金属超微粒子を含む分離相が他方の連続した分離相(マトリックス)を介して、非連続して存在する構成(記録層ドットが高度に秩序化されて存在する形態)とすることが可能となる。
このように本発明の光記録媒体の記録層として、有機薄膜中に非連続して存在する一方の分離層内部に選択的に、しかも高度に秩序構造を保つように包含された金属超微粒子から構成される記録用の点、いわゆる記録ドットは、ナノメータサイズ(10〜500nm)で均一に形成することができる。従って、最小記録ピットのサイズは、照射されるレーザ光の発振波長やレンズのNAに依存せず、記録層を構成する有機薄膜中に形成される記録層ドットのサイズによって決まる。
上記理由により、本発明においてはナノメータサイズの微小記録が実現され、レーザの発信波長やレンズのNAなど光学系に制約されることなく超高密度の記録を実現する光記録媒体の設計が可能となる。更に、記録ピットの最外周エッジもこの有機薄膜の記録層ドット全体を変化させるように記録することで、従来のレーザビームのガウス分布などの要因に基づく記録ピットの最外周エッジの不明瞭さなどの問題も回避され、記録ピットのバラツキの無い高品質の信号特性を得ることが可能となる。
【0056】
前記のように、ミクロ相分離構造は、ブロック共重合体の構成材料及び組成によって、球状、柱状、ラメラ状等の形態を呈する。このような形態の中で、本発明の光記録媒体に好適に応用できるミクロ相分離構造における一方の分離相は、球状構造及び柱状構造である。すなわち、本発明の光記録媒体の構成(形態)は前述のように、記録層ドットがマトリックスを介して非連続して存在することが必要であるためである。
【0057】
ミクロ相分離構造が球状構造の場合、光記録媒体の記録層の膜厚は、球状構造の球径よりも薄く形成されていること(球状構造の直径よりも薄い膜厚)とすること、特に金属超微粒子の粒径程度に制御されているが好ましい。このような膜厚とすることにより、金属超微粒子がほぼ単層となるように形成され、光記録媒体の記録層として記録媒体面上にサイズの均一な光記録機能を有する記録層ドットがマトリックスを介して非連続して存在する構造とすることができるためである。なお、記録層の膜厚が金属超微粒子の粒径より厚くとも、記録媒体面上にサイズの均一な光記録機能を有する記録層ドットがマトリックスを介して非連続して存在する構造に制御可能であれば問題はなく、当然使用可能である。
【0058】
一方、ミクロ相分離構造における一方の分離相が柱状構造の場合、その柱状構造は記録層の膜面に対して垂直方向に配列するように制御形成された構造とすることが好ましい。こうすることにより上記同様に、光記録媒体の記録層として記録媒体面上にサイズの均一な光記録機能を有する記録層ドットがマトリックスを介して非連続して存在する構造とすることができる。
【0059】
上記のように、ミクロ相分離構造が球状構造では、その球状構造の直径よりも薄い膜厚とすることが好ましく、ミクロ相分離構造が柱状構造では、記録媒体面に対して垂直に柱状構造が配列する構造が好ましいが、光記録性金属超微粒子(金属ナノクラスター)のドット径は、5〜500nm、好ましくは10〜200nmが適当である。
【0060】
本発明の光記録媒体は、記録レーザ光により記録層ドットを照射し、それにより生じる変化で記録し、記録レーザ光よりパワーの小さい再生レーザ光でその変化を検知して再生する。前記のように、本光記録媒体の記録再生法としては、記録層ドットの光学特性(吸収率、反射率、屈折率等)変化で記録し、その光学特性変化の強弱で再生するもの、及び記録層ドットの形状(凹凸、平滑性等)変化で記録し、その散乱や位相差による光学特性変化の強弱で再生するものが適用される。
【0061】
本発明の光記録媒体の記録層に用いる金属超微粒子としては、使用するレーザ光の発振波長に対し、その発振波長近傍に最大吸収波長または最大屈折率を持つように粒径及び形状制御した粒子を使用することが好ましい。レーザ光の発振波長近傍に最大吸収波長または最大屈折率を持つ金属超微粒子を用いることによって、光記録媒体の記録再生法の一つとして、記録層の光学特性変化を検知することにより行う場合に、最もコントラストが得られる条件に合致するためである。
【0062】
本発明の光記録媒体の構成及びその必要物性について以下に説明する。
〈記録媒体構成〉
本発明の光記録媒体は、基板上に前記有機薄膜からなる記録層を設けるものであるが、その他必要により構成層として、下引き層、反射層(通常金属)、保護層、基板面ハードコート層などを設けることができ、目的や要求特性に応じて構成層の形態が選ばれる。本発明の光記録媒体について図面を参考にして説明する。
本発明の光記録媒体は、例えば図2(a)〜(d)や図3(a)〜(e)の概略断面図に示す例のような構成を有するものである。すなわち、図2(a)〜(d)の場合には、基板上に金属反射層を設けずに構成した例を示す。また、図3(a)〜(e)の場合には、金属反射層を設けて構成した例を示す。本発明の光記録媒体の構成としては、追記型光ディスクの構造(基板上に記録層を設けたものを2枚貼り合わせたいわゆるエアーサンドイッチ構造)としてもよく、CD−R構造(基板上に記録層、反射層、保護層)としてもよく、CD−R構造を貼り合わせたDVD構造でもよい。なお、上記構成は実施の形態を説明するための例であって他の構成でもよい。以下に光記録媒体の各構成層について説明する。
【0063】
〈基板〉
本発明の光記録媒体に用いる基板としては、基板側より記録再生を行なう場合のみ使用レーザーに対して透明でなければならず、記録層側(基板と反対側)から記録、再生を行なう場合には基板は透明である必要はない。
基板材料としては例えば、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミドなどのプラスチック、またはガラス、セラミック、あるいは金属などを用いることができる。なお、基板の表面にトラッキング用の案内溝や、案内ピット、更にアドレス信号などのプリフォーマットなどが形成されていてもよい。
【0064】
〈記録層〉
記録層はレーザ光の照射により何らかの変化(光学特性の変化または形状の変化)を生じさせ、その変化により情報を記録し光学的に再生可能なものであって、その記録層は、互いに非相溶の2種以上のブロック共重合体を主成分とし、そのミクロ相分離構造の一方の相にのみ分散剤(例えば、高分子量顔料)で保護された光記録性金属超微粒子が含有されている構造からなる。記録は、光学特性の変化または形状の変化として記録し、再生は、記録によりもたらされた変化を光学的変化として再生する。
光記録性金属超微粒子の光学特性としては、記録再生用レーザ波長に対し、その吸収特性変化を利用して再生する場合には、レーザ波長近傍に最大吸収波長を持つように粒径/形状を制御することが好ましく、記録再生用レーザ波長に対し、その屈折率変化を利用して再生する場合には、レーザ波長近傍に最大屈折率を持つように粒径/形状を制御することが好ましい。
【0065】
本光記録媒体のような記録ドットサイズにより予め記録ピットの大きさが定められている場合には、従来法に比較して特に大幅な低エネルギーで記録が可能となる。従来法では、レーザ照射に対して反応率が高い記録材を用い、十分な照射パワーを付与しなければ明瞭なピット形状することができなかった。これに対して、有機薄膜からなる記録層に記録ドットが内在し、これに記録してピットを形成する方式の本記録媒体では、僅かな反応率(例えば表面のみの反応)でもその変化が検知できる。
【0066】
本発明の光記録媒体に用いるブロック共重合体は、超高密度記録用の光記録媒体に要求される特性が満たされるものであれば特に制約はなく、前記有機薄膜において記載したような互いに非相溶の2種以上のポリマーを組み合わせて合成することができる。合成に用いる手法やモノマー原料なども前述と同様である。
本発明の光記録媒体には、前述のように分散剤で保護されたナノメータサイズの金属超微粒子(金、銀、プラチナ、銅、錫、ロジウム、イリジウム等)が利用できるが、保存安定性及び光学特性から、金、銀、プラチナ及びその合金からなる分散剤で保護された金属超微粒子が特に好ましい。これらの金属超微粒子は単独でも、2種以上を組合わせても構わない。
金属超微粒子は、高分子顔料分散剤などの高分子化合物で保護された金属超微粒子の形態で用いられるが、前記有機薄膜の説明で記載したような製造法、例えば、金属化合物と、この金属化合物の還元剤を有機溶媒中に溶解し、高分子顔料分散剤を加えた後、加熱することにより得ることができる。高分子顔料分散剤としては、例えば、前述のような市販のものも使用出来る。
【0067】
〈下引き層〉
下引き層は、(1)接着性の向上、(2)水またはガスなどのバリアー、(3)記録層の保存安定性の向上、(4)反射率の向上、(5)溶剤からの基板の保護、(6)案内溝、案内ピット、プレフォーマットの形成などを目的として使用される。
(1)の目的に対しては、高分子材料、例えば、アイオノマー樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル樹脂、天然樹脂、天然高分子、シリコーン、液状ゴムなどの種々の高分子化合物及び、シランカップリング剤などを用いることができる。
(2)あるいは(3)の目的に対しては、上記高分子材料以外に無機化合物、例えば、SiO、MgF、SiO2、TiO、ZnO、TiN、SiNなどがあり、更に金属あるいは半金属、例えば、Zn、Cu、Ni、Cr、Ge、Se、Au、Ag、Al、などを用いることができる。
(4)の目的に対しては、金属、例えば、Al、Au、Ag等や、金属光沢を有する有機薄膜、例えば、メチン染料、キサンテン系染料などを用いることができる。
(5)あるいは(6)の目的に対しては、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、熱可塑性樹脂等を用いることができる。
上記下引き層の膜厚としては0.01〜30μm、好ましくは、0.05〜10μmが適当である。
【0068】
〈反射層〉
反射層(通常、金属反射層)は、要求される反射率に応じて必要により用いることができる。
反射層としては、単体で高反射率が得られる腐食されにくい金属あるいは半金属等が用いられ、このような材料例としては、Au、Ag、Cr、Ni、Al、Fe、Snなどが挙げられる。これら材料の中で、反射率、生産性の点からAu、Ag、Alが最も好ましい。これらの金属、半金属は、単独で使用してもよく、2種の合金としてもよい。
反射層の膜形成法としては、限定するものではないが、蒸着、スッパタリングなどが挙げられる。反射層の膜厚としては、50〜5000Åが好ましく、更には100〜3000Åが好ましい。
【0069】
〈保護層、基板面ハードコート層〉
保護層及び基板面ハードコート層は、(1)記録層(反射吸収層)を傷、ホコリ、汚れ等から保護する、(2)記録層(反射吸収層)の保存安定性の向上、(3)反射率の向上等を目的として使用される。これらの目的に対しては、前記下引き層に示した材料を用いることができる。
また、無機材料として、SiO、SiO2なども用いることができ、有機材料としてポリメチルアクリレート、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂、セルロース、脂肪族炭化水素樹脂、天然ゴム、スチレンブタジエン樹脂、クロロプレンゴム、ワックス、アルキッド樹脂、乾性油、ロジン等の熱軟化性、熱溶融性樹脂も用いることができる。
上記材料のうち最も好ましい例としては、生産性に優れた紫外線硬化樹脂である。保護層または基板面ハードコート層の膜厚は、0.01〜30μm、好ましくは0.05〜10μmが適当である。
本発明において、前記下引き層、保護層及び基板面ハードコート層には、記録層の場合と同様に、安定剤、分散剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、可塑剤等を含有させることができる。
【0070】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明はなんら実施例に限定されるものではない。
有機薄膜に係る実施例:
実施例1
まず、ポリスチレン〔略:PSt〕とポリ−(2−ビニルピリジン)〔略:P2VP〕とからなり、P2VPの体積分率が18 vol%で、数平均分子量が約182,000のブロック共重合体をリビングラジカル法で合成した。
次に、純水40ml中に、10mmolの塩化金酸と3.0gの高分子顔料分散剤(ソルスパース27000:ゼネカ社製)を溶解させた後、1.0mlのジメチルアミノアルコールを加え、加熱して分散剤に保護された金超微粒子を含む溶液を調製した。
次いで、100mlの2−ブタノン中に、上記合成により得たブロック共重合体1.0mmolと、上記調製した分散剤に保護された金超微粒子を含む調整液1.0mlとを混合溶解(含む分散)させた。この混合溶液を石英基板上に塗布してキャスト膜を形成し、140℃で10時間アニール(熱処理)した。この処理によって、キャスト膜中にミクロ相分離構造が形成された。
キャスト膜の相分離構造を透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)により観察した結果、金超微粒子がブロック共重合体のポリ−(2−ビニルピリジン)〔略:P2VP〕中に、均一で選択的に分散された凡そ40nm以下の球状構造(高度に秩序化された構造)が形成されていることを確認した。
【0071】
実施例2
実施例1において用いた金超微粒子を含む調整液に代えて、下記により調製した分散剤に保護された銀超微粒子を含む調整液を用いたほかは実施例1と同様にしてブロック共重合体との混合溶液を調製し、キャスト膜中にミクロ相分離構造を形成した。
分散剤に保護された銀超微粒子の調製:純水40ml中に、40mmolの硝酸酸性の硝酸銀と、2.0gの高分子顔料分散剤(ディスパービック180:ビックケミー社製)を溶解させた後、2.0mlのトリエタノールアミンを加え、加熱して分散剤に保護された銀超微粒子を含む溶液を調製した。
得られた、キャスト膜の相分離構造を透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)により観察した結果、銀超微粒子がブロック共重合体のポリ−(2−ビニルピリジン)〔略:P2VP〕中に、均一で選択的に分散された凡そ40nm以下の球状構造(高度に秩序化された構造)が形成されていることを確認した。
【0072】
実施例3
まず、ポリスチレン(PSt)とポリ−(4−ビニルピリジン)〔略:P4VP〕とからなり、P4VPの体積分率が16vol%で、数平均分子量が約154,000のブロック共重合体をリビングラジカル法で合成した。
次に、純粋40ml中に、40mmolの塩化白金酸六水和物と2.0gの高分子顔料分散剤(ディスパービック180:ビックケミー社製)を溶解させた後、2.0mlのトリエタノールアミンを加え、加熱して分散剤に保護されたパラジウム超微粒子を含む溶液を調製した。
次いで、20mlのベンゼン中に、上記合成により得たブロック共重合体0.01mmolと、上記調製した分散剤に保護されたパラジウム超微粒子を含む調整液2mlとを混合溶解(含む分散)させた。
この混合溶液を石英基板上に塗布してキャスト膜を形成し、140℃で10時間アニール(熱処理)した。この処理によって、キャスト膜中にミクロ相分離構造が形成された。
キャスト膜の相分離構造を透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)により観察した結果、パラジウム超微粒子がブロック共重合体のポリ−(4−ビニルピリジン)〔略:P4VP〕中に、均一で選択的に分散された凡そ30nm以下の球状構造(高度に秩序化された構造)が形成されていることを確認した。
【0073】
実施例4
まず、ポリスチレン〔略:PSt〕とポリ−(2−ビニルピリジン)〔略:P2VP〕とからなり、P2VPの体積分率が21vol%で、数平均分子量が約168,000のブロック共重合体をリビングラジカル法で合成した。
次に、純水40ml中に、10mmolの塩化金酸と3.0gの高分子顔料分散剤(ソルスパース27000:ゼネカ社製)を溶解させた後、1.0mlのジメチルアミノアルコールを加え、加熱して分散剤に保護された金超微粒子を含む溶液を調製した。
次いで、100mlの2−ブタノン中に、上記合成により得たブロック共重合体1.0mmolと、上記調製した分散剤に保護された金超微粒子を含む調整液1.0mlとを混合溶解(含む分散)させた。この混合溶液を石英基板上に塗布してキャスト膜を形成し、140℃で10時間アニール(熱処理)した。この処理によって、キャスト膜中にミクロ相分離構造が形成された。
キャスト膜の相分離構造を透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)により観察した結果、金超微粒子がミクロ相分離構造の海部分であるポリ−(2−ビニルピリジン)〔略:P2VP〕中に均一で選択的に分散された凡そ45nm以下のポリスチレンの球状構造(高度に秩序化された構造)が形成されていることを確認した。
【0074】
実施例5
アセトン/純水(90/10vol%)40ml中に、10mmolの塩化金酸と1.0gの高分子顔料分散剤(ソルスパース24000:ゼネカ社製)を溶解させた後、5.0mlのジメチルアミノアルコールを加え、加熱して分散剤に保護された金超微粒子を含む溶液を調製した。
次に、100mlの2−ブタノン中に、実施例4で得たブロック共重合体1.0mmolと、上記分散剤に保護された金超微粒子調製液1.0mlとを混合溶解(含む分散)させた。この混合溶液を石英基板上に塗布してキャスト膜を形成し、140℃で10時間アニール(熱処理)した。この処理によって、キャスト膜中にミクロ相分離構造が形成された。
キャスト膜の相分離構造を透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)により観察した結果、金超微粒子がミクロ相分離構造の球状部分であるポリスチレン中に均一で選択的に分散された球状構造(高度に秩序化された構造)が形成されていることを確認した。
【0075】
実施例6
まず、実施例1と同じ条件で合成したブロック共重合体を2−ブタノンに溶解した溶液を調製した。この溶液を、実施例1と同様にして石英基板上に塗布してキャスト膜を形成し、140℃で10時間アニール(熱処理)した。この処理によって、キャスト膜中にミクロ相分離構造が形成された。このキャスト膜のミクロ相分離構造は、透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)による観察から凡そ40nm以下の球状構造(ポリ−(2−ビニルピリジン)〔略:P2VP〕)が形成されていることを確認した。
次に、純水20mlの中に、実施例1で得た金超微粒子調製整液20mlと、2−ブタノン20mlを加えた後、この溶液内に上記石英基板上形成したキャスト膜を投入して一日放置した。放置後取り出して、140℃で10時間アニール(熱処理)した。
キャスト膜の相分離構造を透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)により観察した結果、金超微粒子がポリ−(2−ビニルピリジン)〔略:P2VP〕中に均一で選択的に分散された凡そ40nm以下の球状構造(高度に秩序化された構造)が形成されていることを確認した。
【0076】
実施例7
まず、実施例1と同じ条件で合成したブロック共重合体を2−ブタノンに溶解した溶液を調製した。この溶液を、実施例1と同様にして石英基板上に塗布してキャスト膜を形成し、140℃で10時間アニール(熱処理)した。この処理によって、キャスト膜中にミクロ相分離構造が形成された。このキャスト膜のミクロ相分離構造には、凡そ40nm以下の球状構造(ポリ−(2−ビニルピリジン)〔略:P2VP〕)が形成されていることを確認した。
次に、実施例1と同じ条件で得た金超微粒子調製液を濃縮してペースト状としたもの(ペースト)を上記石英基板上に形成したキャスト膜上に塗布、積層し、140℃で20時間アニールした。(熱処理)した。
キャスト膜の相分離構造を透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)により観察した結果、金超微粒子がポリ−(2−ビニルピリジン)〔略:P2VP〕中に均一で選択的に分散された凡そ40nm以下の球状構造(高度に秩序化された構造)が形成されていることを確認した。
【0077】
実施例8
ポリエチレンオキサイド〔略:PEO〕と、下記構造式(1)で示されるアゾベンゼンにより修飾されたポリメチルメタクリレートとからなり、PEOの体積分率が29vol%で、数平均分子量が約168,000のブロック共重合体をリビングラジカル法で合成した。
【0078】
【化1】
【0079】
次に、100mlの2−ブタノン中に、上記で得たブロック共重合体1.0mmolと、実施例1と同じ条件にして得た分散剤に保護された金超微粒子調製液1.0mlとを混合溶解(含む分散)させた。
この混合溶液を石英基板上に塗布してキャスト膜を形成し、110℃で10時間アニールした(熱処理)した。この処理によって、キャスト膜中にミクロ相分離構造が形成された。
キャスト膜の相分離構造を透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)により観察した結果、金超微粒子がリエチレンオキサイド〔略:PEO〕中に均一で選択的に分散された柱状構造が基板面に対し垂直に配列して形成されていることを確認した。
【0080】
以上実施例1〜8の結果から、それぞれのブロク共重合体から高度に秩序化されたミクロ相分離構造体(球状あるいは柱状)が形成され、その一方の分離相(所望とする任意の分離相)のポリマー鎖(有機高分子中)にナノメータサイズの金属超微粒子(金属ナノクラスター)が均一に分散して構築された有機薄膜であることが確認された。従って、ブロク共重合体の設計とそのミクロ相分離構造体の形状(球状、柱状、ラメラ状等)を制御形成し、高分子化合物(高分子顔料分散剤等)からなる分散剤で保護したナノメータサイズの金属超微粒子を所望とする分離相に選択的に分散し、有機薄膜化できることが実証されたことから、新たな電子的性質、電気的性質(導電性等)、光学的性質等の機能を発揮する高機能性材料、例えば光記録媒体などの開発が可能となる。
【0081】
光記録媒体に係る実施例:
実施例9
実施例1と同じ条件でブロック共重合体と、分散剤に保護された金超微粒子を含む混合溶液を調製した。この混合溶液をアクリル系のフォトポリマーで表面硬化させたポリメチルメタクリレート(PMMA)製基板上に、乾燥後の膜厚が約30nmとなるような条件によりスピナー塗布して有機薄膜を形成し、実施例1と同様に140℃で10時間アニール(熱処理)して光記録体とした。この処理によって、有機薄膜中にミクロ相分離構造が形成された。
有機薄膜の相分離構造を透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)により観察した結果、PMMA基板上に金超微粒子がポリ−(2−ビニルピリジン)〔略:P2VP〕中に均一で選択的に分散された球状構造(高度に秩序化された構造)が単層として形成されていることを確認した。
【0082】
実施例10
実施例2と同じ条件でブロック共重合体と、分散剤に保護された銀超微粒子を含む混合溶液を調製した。この混合溶液をアクリル系のフォトポリマーで表面硬化させたポリメチルメタクリレート(PMMA)製基板上に、乾燥後の膜厚が約30nmとなるような条件によりスピナー塗布して有機薄膜を形成し、実施例2と同様に140℃で10時間アニール(熱処理)して光記録体とした。この処理によって、有機薄膜中にミクロ相分離構造が形成された。
有機薄膜の相分離構造を透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)により観察した結果、PMMA基板上に銀超微粒子がポリ−(2−ビニルピリジン)〔略:P2VP〕中に均一で選択的に分散された球状構造(高度に秩序化された構造)が単層として形成されていることを確認した。
【0083】
実施例11
実施例3と同じ条件でブロック共重合体と、分散剤に保護されたパラジウム超微粒子を含む混合溶液を調製した。この混合溶液をアクリル系のフォトポリマーで表面硬化させたポリメチルメタクリレート(PMMA)製基板上に、乾燥後の膜厚が約25nmとなるような条件によりスピナー塗布して有機薄膜を形成し、実施例3と同様に140℃で10時間アニール(熱処理)して光記録体とした。この処理によって、有機薄膜中にミクロ相分離構造が形成された。
有機薄膜の相分離構造を透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)により観察した結果、PMMA基板上に銀超微粒子がポリ−(4−ビニルピリジン)〔略:P4VP〕中に均一で選択的に分散された球状構造(高度に秩序化された構造)が単層として形成されていることを確認した。
【0084】
実施例12
実施例8と同じ条件でブロック共重合体と、分散剤に保護された金超微粒子を含む混合溶液を調製した。前記のようにブロック共重合体は、ポリエチレンオキサイド〔略:PEO〕と、前記構造式(1)で示されるアゾベンゼンにより修飾されたポリメチルメタクリレートとからなる共重合体である。
この混合溶液をアクリル系のフォトポリマーで表面硬化させたポリメチルメタクリレート(PMMA)製基板上に、乾燥後の膜厚が約60nmとなるような条件によりスピナー塗布して有機薄膜を形成し、120℃で10時間アニール(熱処理)して光記録体とした。この処理によって、有機薄膜中にミクロ相分離構造が形成された。
有機薄膜の相分離構造を透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)により観察した結果、PMMA基板上に金超微粒子がポリエチレンオキサイド〔略:PEO〕中に均一で選択的に分散された柱状構造(高度に秩序化された構造)が基板面に対し垂直に配列して形成されていることを確認した。
【0085】
比較例1
実施例1で合成したポリスチレン〔略:PSt〕とポリ−(2−ビニルピリジン)〔略:P2VP〕とからなり、P2VPの体積分率が18 vol%で、数平均分子量が約182,000のブロック共重合体のみをベンゼン中に溶解させた溶液を調製した。この溶液をアクリル系のフォトポリマーで表面硬化させたポリメチルメタクリレート(PMMA)製基板上に、乾燥後の膜厚が約30nmとなるような条件によりスピナー塗布して有機薄膜を形成し、140℃で10時間アニール(熱処理)して光記録体とした。この処理によって、有機薄膜中にミクロ相分離構造が形成された。
有機薄膜の相分離構造を透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)により観察した結果、PMMA基板上に球状構造が単層として形成されていることを確認した。
【0086】
比較例2
実施例8で合成したポリエチレンオキサイド〔略:PEO〕と、前記構造式(1)で示されるアゾベンゼンにより修飾されたポリメチルメタクリレートとからなり、PEOの体積分率が29vol%で、数平均分子量が約168,000のブロック共重合体のみをベンゼン中に溶解させた溶液を調製した。この溶液をアクリル系のフォトポリマーで表面硬化させたポリメチルメタクリレート(PMMA)製基板上に、乾燥後の膜厚が約60nmとなるような条件によりスピナー塗布して有機薄膜を形成し、110℃で10時間アニール(熱処理)して光記録体とした。この処理によって、有機薄膜中にミクロ相分離構造が形成された。
有機薄膜の相分離構造を透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)により観察した結果、PMMA基板上に柱状構造が薄膜面に対し直角に配列して形成されていることを確認した。
【0087】
次に、上記実施例9〜12及び比較例1〜2で作製した各記録体を用いて、それぞれに、発振波長415nm、ビーム径1.0μm の半導体レーザを照射し、水平方向に1.5μm間隔で1.0cm2の条件でスキャンさせて記録を行った。各記録体の半導体レーザ照射部及び未照射部について、透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)による観察と、顕微分光法による反射率及び透過率の測定を行った。結果を表1に示す。
なお、上記記録条件では、有機薄膜中の金属超微粒子により形成される記録に対応する各ドット、すなわち記録ドットが数十nmであり、一方記録ビーム径が1.0μmであるため、一度のレーザスキャンにより数多くの記録ドットが光照射されることになる。また、再生評価もマクロの観察によるものである。従って、記録ドット単位で記録し、記録ドット単位で再生したものではないが、比較例との対比により、記録ドットへの記録及び再生が検証できる。
【0088】
【表1】
【0089】
評価結果
実施例と比較例の結果から、本発明に係る実施例の記録体は、レーザ照射により、有機薄膜の球状または柱状構造内に存在する金属超微粒子から構成される記録ドットに記録が可能なことが確認された。
実施例9〜12において、光学系(光源)のレーザビーム径は、1.0μmであり、記録体の金属超微粒子から構成される記録ドットの径(数十nm)に比較して大きく、このため、多数の記録ドットを一度に記録するようにした。当然、金属超微粒子ドットと同程度のビーム径で記録すれば、金属超微粒子から構成される記録ドットを個別に記録することが可能である。
表1の透過率変化、反射率変化に示すように、本発明に係る光記録体は、記録信号が透過率変化として再生できるため、この現象を利用した再生方式に用いる場合には、記録再生用レーザの発振波長近傍に金属超微粒子の最大吸収波長を制御することが最も好ましいことが確認された。また、記録信号が反射率変化として再生できることから、この現象を利用した再生方式に用いる場合には、記録再生用レーザの発振波長近傍に、金属超微粒子の最大屈折率を制御することが最も好ましいことが確認された。
【0090】
【発明の効果】
本発明の高度に秩序化されたミクロ相分離構造の一方の分離相のみに分散剤で保護された金属超微粒子を選択的に含有させることによって、電子的性質、導電性などの電気的性質、光学的性質等の新たな機能を発揮する有機薄膜が提供される。分散材として、金属超微粒子と親和性のある基を有し、一方の分離相とのみ親和性のある基を有する高分子化合物(例えば、高分子顔料分散剤)を用いることによって、任意の複合構成とすることができる。分離相が球状または柱状で、金属超微粒子が光または熱によって光学的性質が変化する性質の場合には、特に超高密度記録用の光記録媒体として有用な記録材料(有機薄膜)が提供される。
金属微粒子として、金、銀、プラチナ及びその合金を用いることにより、好適な保存安定性及び光学特性が得られる。更に、このような金属超微粒子が示すプラズモン吸収を利用することにより、効果的な記録、再生を可能とすることができる。
ブロック共重合体と、分散剤で保護された金属超微粒子との混合溶液を塗布薄膜化してミクロ相分離構造を形成するか、あるいは予めブロック共重合体を含有する溶液を塗布薄膜化してミクロ相分離構造を形成し、これと分散剤で保護された金属超微粒子を含有する溶液とを接触させるか、または塗布積層させて、一方の分離相に金属超微粒子を選択的に拡散させる製造方法によって、三次元的に高度な構造制御が達成され、新機能を発揮する有機薄膜が提供される。
基板上に本発明の有機薄膜(マトリックス部を介して非連続して存在する球状、柱状等からなる形態の分離相)からなる記録層を設けることによって、ナノメータサイズ(10〜500nm)の記録ドットが均一に形成される。また、記録層の膜厚を球状構造の球径よりも薄く形成すること、あるいは記録層膜面の垂直方向に配列制御した柱状構造とすることにより、サイズが均一でマトリックスを介して非連続な記録層ドットとすることができる。このような構成の光記録媒体とすることによって、照射光の光学系に依存することなくナノメータサイズの超高密度記録が実現し、記録ピットの最外周エッジも明瞭でバラツキの無い高品質の信号特性が得られる。
レーザ光の発振波長近傍に最大吸収波長または最大屈折率を有する金属超微粒子を用いることによって、記録再生において、高いコントラストが得られる。
本発明の光記録媒体は、記録層ドットにレーザ光を照射して、その光学特性変化もしくはその記録層ドットの形状変化により記録し、それぞれ記録レーザ光よりパワーの小さい再生レーザ光により、光学特性変化の強弱を検知して再生することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機薄膜に形成されるミクロ分離構造の形態例:(a)球状構造、(b)柱状構造、(c)ラメラ状構造を示す模式図である。
【図2】本発明の光記録媒体の反射層を備えない場合の層構成例(a)〜(d)を示す概略断面図である。
【図3】本発明の光記録媒体の反射層を備えた場合の層構成例(a)〜(e)を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 記録層
3 下引き層
4 保護層
5 基板面ハードコート層
6 反射層
Claims (18)
- 互いに非相溶である少なくとも2種類のポリマー鎖が結合したブロック共重合体により形成されたミクロ相分離構造を有し、該ミクロ相分離構造の一方の分離相のみに分散剤で保護された金属超微粒子を含有する有機薄膜であって、
前記分散剤は、前記金属超微粒子と親和性のある基を有するとともに、前記一方の分離相とのみ親和性のある基を有する高分子化合物であることを特徴とする有機薄膜。 - 前記分散剤は、高分子顔料分散剤であることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜。
- 前記ミクロ相分離構造における一方の分離相は、球状、柱状、ラメラ状もしくは前記各形状に類似の構造であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機薄膜。
- 前記金属超微粒子は、光または熱により該金属超微粒子の光学特性が変化する性質を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機薄膜。
- 互いに非相溶である少なくとも2種類のポリマー鎖が結合したブロック共重合体により形成されたミクロ相分離構造を有し、該ミクロ相分離構造の一方の分離相のみに分散剤で保護された金属超微粒子を含有し、前記分散剤が、前記金属超微粒子と親和性のある基を有するとともに、前記一方の分離相とのみ親和性のある基を有する高分子化合物である有機薄膜の製造方法であって、
前記ブロック共重合体と前記分散剤で保護された金属超微粒子とを含有する混合溶液を調製する工程と、
該調製された混合溶液を塗布薄膜化してミクロ相分離構造を形成する工程と、
を含むことを特徴とする有機薄膜の製造方法。 - 互いに非相溶である少なくとも2種類のポリマー鎖が結合したブロック共重合体により形成されたミクロ相分離構造を有し、該ミクロ相分離構造の一方の分離相のみに分散剤で保護された金属超微粒子を含有し、前記分散剤が、前記金属超微粒子と親和性のある基を有するとともに、前記一方の分離相とのみ親和性のある基を有する高分子化合物である有機薄膜の製造方法であって、
前記ブロック共重合体を含有する溶液を調製し、該調製された溶液を塗布薄膜化してミクロ相分離構造を形成する工程と、
該形成されたミクロ相分離構造を有するブロック共重合体と、前記分散剤で保護された金属超微粒子を含有する溶液とを接触させる工程と、
該分散剤で保護された金属超微粒子を、前記ミクロ相分離構造を有するブロック共重合体の一方の分離相に拡散させる工程と、
を含むことを特徴とする有機薄膜の製造方法。 - 互いに非相溶である少なくとも2種類のポリマー鎖が結合したブロック共重合体により形成されたミクロ相分離構造を有し、該ミクロ相分離構造の一方の分離相のみに分散剤で保護された金属超微粒子を含有し、前記分散剤が、前記金属超微粒子と親和性のある基を有するとともに、前記一方の分離相とのみ親和性のある基を有する高分子化合物である有機薄膜の製造方法であって、
前記ブロック共重合体を含有する溶液を調製し、該調製された溶液を塗布薄膜化してミクロ相分離構造を形成する工程と、
該形成されたミクロ相分離構造を有するブロック共重合体上に、前記分散剤で保護された金属超微粒子を含有する溶液を塗布積層する工程と、
該分散剤で保護された金属超微粒子を、前記ミクロ相分離構造を有するブロック共重合体の一方の分離相に加熱拡散させる工程と、
を含むことを特徴とする有機薄膜の製造方法。 - 前記ミクロ相分離構造は、溶媒除去もしくは熱処理により形成されることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法。
- 基板上に有機薄膜からなる記録層を設けた光記録媒体であって、
前記有機薄膜は、互いに非相溶である少なくとも2種類のポリマー鎖が結合したブロック共重合体により形成されたミクロ相分離構造を有し、該ミクロ相分離構造の一方の分離相のみに分散剤で保護された金属超微粒子を含有し、前記分散剤が、前記金属超微粒子と親和性のある基を有するとともに、前記一方の分離相とのみ親和性のある基を有する高分子化合物であることを特徴とする光記録媒体。 - 前記有機薄膜は、請求項5〜8のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法によって製造されたことを特徴とする請求項9に記載の光記録媒体。
- 前記記録層をなす有機薄膜のミクロ相分離構造における一方の分離相は、球状構造もしくは柱状構造であることを特徴とする請求項9に記載の光記録媒体。
- 前記記録層をなす有機薄膜のミクロ相分離構造における一方の分離相は球状構造であり、かつ記録層の膜厚は該球状構造の球径よりも薄く形成されていることを特徴とする請求項9に記載の光記録媒体。
- 前記記録層をなす有機薄膜のミクロ相分離構造における一方の分離相は柱状構造であり、該柱状構造は記録層の膜面に対して垂直方向に配列するように制御されていることを特徴とする請求項9に記載の光記録媒体。
- 前記分散剤で保護された金属超微粒子は、記録再生用レーザの波長近傍に最大吸収波長を持つように該分散剤で保護された金属超微粒子の粒径及び形状が制御されていることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の光記録媒体。
- 前記分散剤で保護された金属超微粒子は、記録再生用レーザの波長近傍に最大屈折率を持つように該分散剤で保護された金属超微粒子の粒径及び形状が制御されていることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の光記録媒体。
- 前記金属超微粒子は、金、銀、白金、または前記金属の合金であることを特徴とする請求項9〜15のいずれかに記載の光記録媒体。
- 請求項9〜16のいずれかに記載の光記録媒体の記録再生方法であって、
レーザ光の照射により、前記分散剤で保護された金属超微粒子が含有されるミクロ相分離構造における一方の分離相の光学特性を変化させて記録再生することを特徴とする光記録媒体の記録再生方法。 - 請求項9〜16のいずれかに記載の光記録媒体の記録再生方法であって、
レーザ光の照射により、前記分散剤で保護された金属超微粒子が含有されるミクロ相分離構造における一方の分離相の形状を変化させて記録再生することを特徴とする記録媒体の光記録再生方法。
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Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20081104 |