JP4056783B2 - 有機薄膜の製造方法及びそれを用いた光記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子的性質、導電的性質、光学的性質などの新たな機能を発揮する機能性複合材料としての有機薄膜の製造方法及び該有機薄膜を記録層として用いた光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
サブミクロンサイズの規則的に並んだ機能性材料を作製することは、電子的性質、導電的性質、光学的性質、磁気的性質等の新たな機能を発揮する材料を得るのに重要な技術である。
従来から、機能性材料として金属超微粒子(金属ナノクラスター)を用いた金属−有機複合材料の研究開発は進められている。しかしながら無限の材料自由度と機能性が期待できるサブミクロンサイズの機能性有機材料と高分子材料とからなる複合材料の研究開発はほとんど進められていないのが現状である。
【0003】
一方、光情報記録の分野では、基板上に反射層を有する光記録媒体であるCD規格、DVD規格に対応した記録可能な光記録媒体(CD−R、DVD−R)が商品化されている。今後このような光記録媒体において更なる記録容量向上、小型化および記録密度の向上が求められている。
現行システムでの記録容量向上の要素技術は、記録ピットの微小化技術とMPEG2に代表される画像圧縮技術がある。記録ピットの微小化技術には、記録再生光の短波長化や光学系の開口数NAの増大化が検討されているが、回折限界を超える記録再生は不可能である。
そこで最近、回折限界を超える記録再生が可能な超解像技術や近接場光を利用した光記録媒体・システムが研究・開発されているが、未だ実用化には至っていないのが現状である。
【0004】
これらの課題に対し、本発明者等は、先に、二次元に規則的な格子状構造を持つポリマーと、その格子の孔の部分に機能性色素を含有することを特徴とする有機薄膜とその製造方法及びそれを利用した光記録媒体について発明をし、出願をした(特願2001−314031号)。該発明により、基板表面を格子状にサブミクロンサイズのパターンとした後、格子の孔の部分に機能性色素を埋め込むことで、機能性色素がサブミクロンサイズで規則的に配列した有機薄膜を得ることができた。さらに、該有機薄膜を光記録媒体に利用することで、上記の従来の課題を克服した新しい構造の光記録媒体を提供することができた。
しかしながら、該発明の有機薄膜では、二次元に規則的な格子状構造の再現性や均一性が未だ不足していて、電子的性質、導電的性質、光学的性質、磁気的性質等の新たな機能を充分に発揮できる有機薄膜には至っていない。またそれを利用した光記録媒体でも、ピットサイズのバラツキが見られ良好な記録/再生信号が得られないという問題点もあった。
【0005】
本発明者等はその改良として、該発明の有機薄膜をポリマーに溶解能を有する溶剤の蒸気雰囲気と接触せしめた後に、機能性色素膜を形成する方法を見出し出願をした(特願2002−54603号)。
この結果、二次元に規則的な格子状構造の再現性や均一性は顕著な改善が可能となった。しかしながらこの様にして得られた二次元に規則的な格子状構造上に、キャスト法や浸漬法により機能性色素薄膜を形成した有機薄膜は、機能性色素がポリマーの二次元に規則的な格子状構造の孔に充分入らないという問題が未だ残されていた。そのためポリマーネットワークは均一でも機能性色素サイズにバラツキが見られ、良好な記録/再生信号が得られないという問題点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記課題を克服し、それを利用した光記録媒体の記録/再生信号の改善にある。すなわち、本発明は、サブミクロンサイズの二次元に規則的な格子状構造に並んだ光機能性部位を有する有機薄膜において、再現性が高く、サイズの均一性に優れた有機薄膜及び製造方法を提供すること、および、均一で規則的に並んだサブミクロンサイズの光機能性部位を有する有機薄膜を利用した、従来の光記録媒体では実現不可能なピックアップレンズの回折限界を超えた記録密度で記録再生可能な光記録媒体において、ピットザイズの均一性が高く記録再生信号に優れた記録媒体を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、従来のキャスト法によりポリマー薄膜を作成した上に、機能性色素薄膜を形成し、その後、ポリマー及び機能性色素に溶解能を有する溶剤の蒸気雰囲気にさらすことで、再現性良く、ポリマー薄膜の内の機能性色素孔径及び孔形状が均一化する現象を見出した。
この方法によりポリマー薄膜の孔の部分に機能性色素を再現性が良く規則的な格子構造とすることが可能となり電子的性質、導電的性質、光学的性質等の新たな機能を充分に発揮しえる機能性複合材料としての有機薄膜を得ることができることを見出した。
また、本発明で作成される有機薄膜を光記録媒体の記録層に用いることにより、機能性色素部位は照射光の回折限界よりも小さな面積を形成できるために、ピックアップレンズの回折限界を超える記録密度で記録再生可能な、ピットサイズのバラツキの無い良好な記録/再生信号が得られる事を見出し、本発明を完成させるに至ったものである。すなわち、
【0008】
本発明の第1は、二次元に規則的な格子状構造を持つポリマーと、その格子の孔の部分に機能性色素を含有する有機薄膜の製造方法において、ポリマーが自己組織的に規則配列し格子状のパターンを形成した上に、機能性色素薄膜を形成し、その後、該ポリマー及び機能性色素に対し溶解能を有する溶剤の蒸気雰囲気と接触せしめることを特徴とする有機薄膜の製造方法に関する。
本発明の第2は、請求項1記載のポリマーがポリイオンコンプレックスからなることを特徴とする請求項1記載の有機薄膜の製造方法に関する。
本発明の第3は、請求項1記載のポリマーが疎水性有機溶媒に可溶であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機薄膜の製造方法に関する。
本発明の第4は、基板上に有機薄膜を形成する場合の基板が親水性であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法に関する。
本発明の第5は、前記基板上にポリマーの疎水性有機溶媒溶液をキャストすることにより格子状構造を形成した後、機能性色素薄膜を形成し、その後、該ポリマー及び機能性色素に溶解能を有する溶剤の蒸気雰囲気と接触せしめることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法に関する。
本発明の第6は、前記基板上にポリマーの疎水性有機溶媒溶液をキャストすることにより格子状構造を形成した後、さらにその上から機能性色素溶液をキャストして機能性色素薄膜を形成し、その後、該ポリマー及び色素に溶解能を有する溶剤の蒸気雰囲気と接触せしめることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法に関する。
本発明の第7は、前記基板上にポリマーの疎水性有機溶媒溶液をキャストすることにより格子状構造を形成した後、その基板ごと機能性色素溶液に浸漬して機能性色素薄膜を形成し、その後、該ポリマー及び色素に溶解能を有する溶剤の蒸気雰囲気と接触せしめることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法に関する。
本発明の第8は、請求項1〜7のいずれかに記載された製造方法により得られた機能性色素を含有する有機薄膜を記録層として用いることを特徴とする光記録媒体に関する。
本発明の第9は、請求項8記載の機能性色素の最大吸収波長が、記録再生用のレーザーの波長近傍にあることを特徴とする請求項8に記載の光記録媒体に関する。
本発明の第10は、請求項8記載の機能性色素の最大屈折率が、記録再生用のレーザーの波長近傍にあることを特徴とする請求項8に記載の光記録媒体に関する。
本発明の第11は、請求項8記載の機能性色素がフォトクロミック色素であることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の光記録媒体に関する。
【0009】
本発明の有機薄膜は、基板上に二次元の規則的な格子状構造を持つポリマーと、その格子の孔の部分に機能性色素を含有する構成からなる。
この有機薄膜の特徴は、機能性色素がサブミクロンサイズで規則的に存在することにあり、このようにサブミクロンサイズの機能性色素を高分子内に導入し、二次元に高度に構造制御化して複合化することにより、電子的性質、導電的性質、光学的性質等の新たな機能を発揮する有機薄膜の出現が期待出来る。
【0010】
二次元に規則的な格子状構造を持つポリマー薄膜の製造方法として、特定の構造を持つポリマー溶液を基板上にキャストすることにより、サブミクロンサイズのパターンを持ったフィルムが得られることが知られている。例えば、親水性ブロックと疎水性ブロックからなるロッド−コイルジブロックポリマーであるポリフェニレンキノリン−ブロック−ポリスチレンを使用する方法(サイエンス、1999年、283巻、373頁)やポリスチレンとパラフェニレンとからなるジブロックポリマーを使用し(サイエンス、1994年、369巻、387頁)、自己凝集力の強い部分と柔軟性を発現する部分とを併せ持つ特殊なポリマーを利用し、これらのポリマーを疎水性有機溶媒に溶解し、これをキャストする事でハニカム構造体を調整していた。また、親水性のアクリルアミドポリマーを主鎖骨格とし、疎水性側鎖としてドデシル基と、親水性側鎖としてラクトース基あるいはカルボキシル基を併せ持つ両親媒性ポリマー、或いはヘパリンやデキストラン硫酸などのアニオン性多糖と4級の長鎖アルキルアンモニウム塩とのイオンコンプレックスが同様の方法でハニカム構造を有する薄膜について記載されている(モレキュラー クリスタル リキッド クリスタル 1998年 第322巻305頁)。
【0011】
また、本発明者等の先の出願(特願2001−314031号)には、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムとビスヘキサデシル−ジメチルアンモニウムブロマイドから得られるポリイオンコンプレックスをクロロホルムに溶解した後、マイカ基板上にキャストし、温度35℃、湿度51%の状態で静置することにより膜を形成し、この膜は約1.5μmの秩序だった格子状のポリマーネットワークであることが記載されている。
すなわち、上記の方法で基板表面上に規則的な二次元の格子状の構造を持つポリマーを形成する。その規則的な構造は、ポリマーの配列を利用したものであるが、その配列は、自己組織的に形成されることが好ましい。その際、ポリマーは有機溶媒に可溶でキャスト法により膜形成可能であることが好ましく、ポリマーの配列は疎水性−親水性の相分離を利用するため疎水性溶剤に可溶であることが必要である。
【0012】
こうして得たポリマー薄膜に、さらに機能性色素溶液をキャストすることにより、格子の孔の部分に機能性色素を埋め込む。その結果、機能性色素がサブミクロンサイズで規則的に配列したフィルムを得ることができる。同様に、パターニング後にポリマーネットワークを機能性色素の溶液中に浸漬することによっても、格子の孔の部分に機能性色素を埋め込むことができる。また必要に応じて機能性色素のパターンを形成した後に、ポリマーのネットワークのみを有機溶媒にて除去しても良い。
機能性色素はその膜を冒さない溶剤に可溶なものが好ましく、水溶性であることが特に好ましい。また、ポリマーの孔の部分に色素が吸着される必要があるので、基板も親水性であることが好ましく、親水性を高めるために、紫外線照射法やプラズマ処理法等通常の方法を用いても良い。
【0013】
このようにして二次元の格子状構造を持つポリマー薄膜を形成することができたが、キャスト時の環境(温度、湿度、空気の流れ、基板の傾斜等)に大きく依存し、再現性のある均一な構造とするための制御が出来ないという問題があった。そのため該提案の有機薄膜では、二次元に規則的な格子状構造の再現性や均一性が未だ不足していて、電子的性質、導電的性質、光学的性質、磁気的性質等の新たな機能を充分に発揮できる有機薄膜には至っていない。
【0014】
次に本発明者等は、従来のキャスト法で得られたポリマー薄膜を、ポリマーに溶解能を有する溶剤の蒸気雰囲気と接触せしめることで、再現性良く、孔径及び孔形状が均一化する方法について発明し、出願をした(特願2002−54603号)。
ポリマー薄膜を、溶剤の蒸気雰囲気と接触することで、ポリマーは膨潤、軟化し、より安定に均一構造化する。蒸気と接触する時間は、短いと充分均一化せず、長いと溶解し、格子構造が消滅する。その最適条件は、ポリマーと溶剤の溶解性に依存するが、一定条件化では再現性が高く、均一な孔径及び孔形状の格子構造が得られる。
しかしながらこの方法では、得られる再現性の高い規則的な格子構造を持つポリマー薄膜の上に、キャスト法や浸漬を利用して機能性色素膜を形成するため、機能性色素がポリマーの二次元に規則的な格子状構造の孔に充分入らないという問題が未だ残されていた。そのためポリマーネットワークは均一でも機能性色素サイズにバラツキが見られた。
【0015】
本発明者等は、更なる検討の結果、ポリマーが自己組織的に規則配列し格子状のパターンを形成した上に、機能性色素薄膜を形成し、その後、該ポリマー及び機能性色素に対し溶解能を有する溶剤の蒸気雰囲気と接触せしめることで、再現性が良く、ポリマーの二次元に規則的な格子状構造内の機能性色素孔及び孔形状が均一化する現象を見出し本発明に至った。溶剤蒸気の雰囲気条件は、先の発明と同様に、ポリマー及び機能性色素と溶剤との溶解性に依存するが、一定条件下では再現性が高く、均一な孔径及び孔形状の格子構造が得られ、電子的性質、導電的性質、光学的性質等の新たな機能を充分に発揮し得る機能性複合材料としての有機薄膜を得ることが可能となった。
溶剤蒸気の雰囲気を形成するための溶剤は、用いられたポリマーおよび機能性色素の溶解性により適宜選択することができるが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、四塩化炭素、トリクロロエタン等の脂肪族ハロゲン化炭化水素類;ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素類;モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;メトキシエタノール、エトキシエタノール等のエチレングリコールのモノエーテル類;ヘキサン、ペンタン等の炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式化合物を使用することができる。
【0016】
次に、この有機薄膜を記録層として用いた光記録媒体について述べる。
従来の光記録媒体の記録層は連続した層をなし、そこにレーザービームを照射し、記録材料にレーザービームの形状に対応したなんらかの変化を形成して記録する。従って最小記録ピットのサイズは、発振波長とレンズのNAで決定されるレーザービームの径に依存するため、従来の記録再生システムでは、高密度化は基本的にレーザーの発振波長やレンズのNAの実用化技術力に左右されてきた。また、ビーム形状がガウス分布した形状であること、記録材料として熱もしくは光に対し明瞭な閾値で変化する材料はほとんど存在しないこと等から、形成されるピットの最外周の大きさや変化量は均一とはならず、その再生信号品質にもバラツキの要因が存在し、高品質の信号特性を得るにも限界があった。
【0017】
本発明者等は、前記したように、従来の課題を克服した新しい構造の光記録媒体として以下の光記録媒体について出願をした(特願2001−314031号、特願2002−54603号)。即ち、本発明の有機薄膜を応用した光記録媒体は高度に秩序化されて存在する記録層ドット(機能性部位)が非連続に存在し、かつ、記録層ドットのサイズが均一なサブミクロンサイズで形成されている。従って、最小記録ピットのサイズはレーザーの発振波長やレンズのNAで決定されることなく、形成する記録層ドットのみで決定され、任意の記録密度の記録媒体が設計可能となる。さらにピットの最外周のエッジもこの有機薄膜の構造体で決定されているため、この記録層ドット全体を変化させるように記録することで、ピットのバラツキの無い高品質の信号特性を得る事が可能となる。
しかしながら先の出願(特願2001−314031号、特願2002−54603号)に係る有機薄膜では、機能性色素部位の二次元に規則的な格子状構造の再現性や均一性が未だ不足していて、それを利用した光記録媒体でも、ピットサイズのバラツキが見られ良好な記録/再生信号が得られないという問題点もあった。
【0018】
本発明者等は、上述したように再現性良く、ポリマーの二次元に規則的な格子状構造内の孔形状及び機能性色素の均一性において優れた有機薄膜の形成法を見出し、この有機薄膜の形成法により製造された有機薄膜を光記録媒体の記録層に用いることにより、機能性色素部位は照射光の回折限界よりも小さな面積を形成できるために、ピックアップレンズの回折限界を超える記録密度で記録再生可能な、ピットサイズのバラツキの無い良好な記録/再生信号を得ることが可能となった。
【0019】
<記録媒体の構成>
本発明の記録媒体は、通常の追記型光ディスクである構造(2枚貼合わせたいわゆるエアーサンドイッチ、又は密着貼合わせ構造としても良い。)あるいはCD−R用メディアの構造としてもよい。また、CD−R構造を貼り合わせた構造でも良い。
図2は、本発明に係る光記録媒体の層構成の1例を示す。(a)基板と記録層のみからなる層構成、(b)基板、記録層、反射層の順に積層した層構成、(c)基板、反射層、記録層の順に積層した層構成、(d)基板、記録層、保護層の順に積層した層構成、(e)基板表面ハードコート層、基板、記録層、保護層の順に積層した層構成を示す。
【0020】
以下、記録媒体を構成する各層について順に説明する。
<基板>
基板の必要特性としては基板側より記録再生を行う場合のみ使用レーザー光に対して透明でなければならず、記録層側から記録、再生を行う場合基板は透明である必要はない。本発明の有機薄膜は、ポリマーの孔の部分に色素が吸着される必要があるので、基板も親水性であることが好ましい。基板に親水性を施すには、紫外線照射法やプラズマ処理法等通常の方法が用いられる。
基板材料としては例えば、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド等のプラスチック、(石英)ガラス、マイカ、セラミック、シリコンウェハーあるいは金属等を用いることができる。尚、基板を1層しか用いない場合、あるいは基板2枚をサンドイッチ状で用いる場合は、請求項に記載の基板の表面にトラッキング用の案内溝や案内ピット、さらにアドレス信号等のプレフォーマットが形成されていても良い。
基板の膜厚は10μm〜1.2mmが適当である。
【0021】
<記録層>
記録層は、レーザー光の照射により何らかの光学的変化を生じさせ、その変化により情報を記録・再生可能とするものであって、その記録層は、基板上に二次元に規則的な格子状のパターンを持つポリマーと、その格子の孔の部分に機能性色素を含有する構造からなる。
機能性色素の光学特性としては、記録再生用レーザー波長に対しその吸収特性変化を利用して再生する場合にはレーザー波長近傍に最大吸収波長を持つことが好ましく、記録再生用レーザー波長に対しその屈折率変化を利用して再生する場合にはレーザー波長近傍に最大屈折率を持つことが好ましい。
格子状のパターンを形成可能なポリマーの例としては、ポリスチレンスルホン酸と長鎖ジアルキルアンモニウム塩に代表されるポリイオンコンプレックス、ポリスチレンとポリパラフェニレン等のブロック共重合体、アクリルアミドを主鎖骨格として側鎖に長鎖アルキル(疎水部)とカルボン酸や糖(親水部)を持った両親媒性ポリマー等が挙げられ、分子量分布の制御や両親媒性の制御が容易で、二次元に規則的な格子状構造が容易に得られるポリイオンコンプレックスが特に好ましい。これらのポリマーは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
記録層の膜厚は20〜2000nm、好ましくは50〜500nmが適当である。
【0022】
機能性色素としては、例えばレーザー光の照射エネルギーによりヒートモード(熱分解等)でその光学定数を変化させるポリメチン色素、ナフタロシアニン系、フタロシアニン系、スクアリリウム系、クロコニウム系、ピリリウム系、ナフトキノン系、アントラキノン(インダンスレン)系、キサンテン系、トリフェニルメタン系、アズレン系、テトラヒドロコリン系、フェナンスレン系、トリフェノチアジン系染料、及び金属キレート化合物等が挙げられ、また、レーザー光の照射エネルギーによりフォトンモードでその光学定数を変化させるフルギド類、ジアリールエテン類、アゾベンゼン類、スピロピラン類、スチルベン類、ジヒドロピレン類、チオインジゴ類、ビピリジン類、アジリジン類、芳香族多環類、アリチリデンアニリン類、キサンテン類等のフォトクロミック材料も例として挙げられ、記録の書換が可能なこれらのフォトクロミック材料は特に好ましい。前記の色素を単独で用いても良いし、2種以上を組合せて用いても良い。
さらに上記色素中に特性改良の目的で、安定剤(遷移金属錯体等)、紫外線吸収剤、分散剤、難燃剤、潤滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、可塑剤などを添加しても良い。
機能性色素のドット径は、0.05μm〜5μmが適当である。
【0023】
<下引き層>
下引き層は(a)接着性の向上、(b)水、又はガス等のバリアー、(c)記録層の保存安定性の向上、(d)反射率の向上、(e)溶剤からの基板や記録層の保護、(f)案内溝・案内ピット・プレフォーマット等の形成等を目的として使用される。(a)の目的に対しては高分子材料、例えばアイオノマー樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル系樹脂、天然樹脂、天然高分子、シリコーン、液状ゴム等の種々の高分子物質、およびシランカップリング剤等を用いることができ、(b)及び(c)の目的に対しては、前記高分子材料の他に、SiO2、MgF2、SiO、TiO2、ZnO、TiN、SiN等の無機化合物、Zn、Cu、Ni、Cr、Ge、Se、Au、Ag、Al等の金属、又は半金属を用いることができる。また(d)の目的に対しては、例えばAl、Ag等の金属や、メチン染料、キサンテン系染料等金属光沢を有する有機薄膜を用いることができ、(e)及び(f)の目的に対しては、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、熱可塑性樹脂等を用いることができる。
下引き層の膜厚は0.01〜30μm、好ましくは0.05〜10μmが適当である。
【0024】
<金属反射層>
反射層は単体で高反射率の得られる腐食されにくい金属、半金属等が挙げられ、材料例としてはAu、Ag、Cr、Ni、Al、Fe、Sn、Cu等が挙げられるが、反射率、生産性の点からAu、Ag、Al、Cuが最も好ましく、これらの金属、半金属は単独で使用しても良く、2種以上の合金としても良い。
膜形成法としては蒸着、スッパタリング等が挙げられ、膜厚としては50〜5000Å、好ましくは100〜3000Åである。
【0025】
<保護層、基板表面ハードコート層>
保護層、又は基板面ハードコート層は(a)記録層(反射吸収層)を傷、ホコリ、汚れ等から保護する、(b)記録層(反射吸収層)の保存安定性の向上、(c)反射率の向上等を目的として使用される。これらの目的に対しては、前記下引き層に示した材料を用いることができる。又、無機材料としてSiO、SiO2等も用いることができ、有機材料としてポリメチルアクリレート、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂、セルロース、脂肪族炭化水素樹脂、芳香族炭化水素樹脂、天然ゴム、スチレンブタジエン樹脂、クロロプレンゴム、ワックス、アルキッド樹脂、乾性油、ロジン等の熱軟化性、熱溶融性樹脂も用いることができる。
前記材料のうち保護層、又は基板表面ハードコート層に最も好ましい例としては生産性に優れた紫外線硬化樹脂である。保護層又は基板表面ハードコート層の膜厚は0.01〜30μm、好ましくは0.05〜10μmが適当である。本発明において、前記下引き層、保護層、及び基板表面ハードコート層には記録層の場合と同様に、安定剤、分散剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、可塑剤等を含有させることができる。
【0026】
【実施例】
以下に、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0027】
実施例1
ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(重量平均分子量:50000)とビスヘキサデシル−ジメチルアンモニウムブロマイドとから得られるポリイオンコンプレックスをクロロホルムに溶解し(400mg/l)、温度35℃、湿度51%RHの状態下で、石英基板上にキャストし、静置することによりポリマー薄膜を形成した。こうして得られたポリマー薄膜の構造を、光学顕微鏡、原子間力顕微鏡およびレーザー顕微鏡等を用いて観察した結果、孔径が約1.8μm、深さ約0.3μmの格子状のポリマーネットワークが観察できた。
その上に、ニュートラルレッドのエタノール溶液をスピンコートし色素膜を形成した。
その光学顕微鏡による反射像写真を、図1(a)に示す。ポリマーネットワークの上に色素層が積層されているのが観測された。
このポリマー/色素複合膜を、35℃下でクロロホルムを密封した容器内に入れ、その蒸気雰囲気中に約8秒間維持することにより薄膜を処理した。その光学顕微鏡による反射像写真を、図1(b)に示す。
ポリマーネットワークの孔の中に色素が埋められている様子が見える。さらにこの薄膜の光学顕微鏡による透過像は、透明なポリマーネットワークの中に丸状の赤色点が連続して形成されていることが観測され、ポリマーネットワークの孔の中に色素が埋められていることが確認できた。
【0028】
実施例2
実施例1において形成したポリマー/色素複合膜を、35℃下でテトラヒドロフランを密封した容器内に入れ、その蒸気雰囲気中に約8秒間維持することにより薄膜を処理した。
その光学顕微鏡による反射像写真を、図1(c)に示す。
同様にポリマーネットワークの孔の中に色素が埋められている様子が観察された。
【0029】
実施例3
実施例2において、ニュートラルレッドの代わりにスピロピラン化合物を用いても同様な結果が得られ、ポリマーネットワークの孔の中に色素が埋められている様子が観察された。
【0030】
実施例4
ポリマーとして、それぞれ長鎖アルキル置換アクリルアミドと長鎖アルキルカルボン酸置換アクリルアミドのクロロホルム溶液(1g/l)を用い、温度35℃、湿度51%RHの状態で、マイカ基板上へキャストし、静置することによりポリマー薄膜を形成した。
その上に、ニュートラルレッドのエタノール溶液をスピンコートし色素膜を形成した。
こうして得られたポリマー/色素複合膜を、実施例1同様にクロロホルム処理した結果、同様にポリマーネットワークの孔の中に色素が埋められている様子が観察された。
【0031】
実施例5
実施例4のポリマー/色素複合膜を、実施例2同様にテトラヒドロフラン処理した結果、同様にポリマーネットワークの孔の中に色素が埋められている様子が観察された。
以上の結果から、本発明の方法で得られる有機薄膜は、再現性が高く、均一な二次元に規則的な格子状構造の機能性色素部位を持つ構造となることがが明らかである。このようなより高次な構造を持つ有機薄膜を用いることにより、より高度な電子的性質、導電的性質、光学的性質等の発現が可能となる。
【0032】
実施例6
実施例3で得たポリマー/色素複合膜を記録層として光記録媒体を形成した。その記録層に、発振波長405nm、ビーム径0.6μmの半導体レーザーを、水平方向、垂直方向に5μm間隔で各5mmスキャンさせた。このときの照射部および未照射部を原子間力顕微鏡・光学顕微鏡による観察、顕微分光法による反射率および透過率の測定を行った。
【0033】
比較例1
実施例3でテトラヒドロフラン蒸気処理したポリマー薄膜上に、色素溶液をスピンコートした有機薄膜を記録層として用い、光記録媒体とした。
この記録層に対し、実施例6と同様にレーザーでスキャンした。
実施例6及び比較例1についての比較結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
本発明に基づき製造された有機薄膜は、レーザー光により記録が可能なことは明らかである。
さらにポリマーネットワークのみ蒸気処理した比較例の結果に比べ、本発明の蒸気処理により、ポリマーネットワーク内の機能性色素部位にのみ記録がなされることから、より高精度のピットが形成できることが明らかである。
【0035】
【発明の効果】
本発明により、再現性の高い規則的な格子構造を持つポリマー薄膜を利用し、その孔の部分に機能性色素を含有させることにより電子的性質、導電的性質、光学的性質等の新たな機能を充分に発揮し得る機能性複合材料としての有機薄膜を提供できた。また、この有機薄膜を光記録媒体の記録層に用いることにより、機能性色素部位は照射光の回折限界よりも小さな面積を形成できるために、ピックアップレンズの回折限界を超える記録密度で記録再生可能な、ピットサイズのバラツキの無い良好な記録/再生信号を得ることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、ポリマー/色素複合薄膜の光学顕微鏡写真である。
(a) キャスト法により形成したポリマー/色素複合薄膜
(b) (a)のポリマー/色素複合薄膜に、クロロホルム蒸気で処理した後のポリマー/色素複合薄膜
(c) (a)のポリマー/色素複合薄膜に、テトラヒドロフランで処理した後のポリマー/色素複合薄膜
【図2】図2は、本発明の光記録媒体の層構成を示す図である。
(a)基板と記録層のみを有する例
(b)基板、記録層、反射層の順に積層した例
(c)基板、反射層、記録層の順に積層した例
(d)基板、記録層、保護層の順に積層した例
(e)基板表面ハードコート層、基板、記録層、保護層の順に積層した例
【符号の説明】
1 基板
2 記録層
3 反射層
4 保護層
5 基板表面ハードコート層
Claims (11)
- 二次元に規則的な格子状構造を持つポリマーと、その格子の孔の部分に機能性色素を含有する有機薄膜の製造方法において、ポリマーが自己組織的に規則配列し格子状のパターンを形成した上に、機能性色素薄膜を形成し、その後、該ポリマー及び機能性色素に対し溶解能を有する溶剤の蒸気雰囲気と接触せしめることを特徴とする有機薄膜の製造方法。
- 請求項1記載のポリマーがポリイオンコンプレックスからなることを特徴とする請求項1記載の有機薄膜の製造方法。
- 請求項1記載のポリマーが疎水性有機溶媒に可溶であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機薄膜の製造方法。
- 基板上に有機薄膜を形成する場合の基板が親水性であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法。
- 前記基板上にポリマーの疎水性有機溶媒溶液をキャストすることにより格子状構造を形成した後、機能性色素薄膜を形成し、その後、該ポリマー及び機能性色素に溶解能を有する溶剤の蒸気雰囲気と接触せしめることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法。
- 前記基板上にポリマーの疎水性有機溶媒溶液をキャストすることにより格子状構造を形成した後、さらにその上から機能性色素溶液をキャストして機能性色素薄膜を形成し、その後、該ポリマー及び色素に溶解能を有する溶剤の蒸気雰囲気と接触せしめることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法。
- 前記基板上にポリマーの疎水性有機溶媒溶液をキャストすることにより格子状構造を形成した後、その基板ごと機能性色素溶液に浸漬して機能性色素薄膜を形成し、その後、該ポリマー及び色素に溶解能を有する溶剤の蒸気雰囲気と接触せしめることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載された製造方法により得られた機能性色素を含有する有機薄膜を記録層として用いることを特徴とする光記録媒体。
- 請求項8記載の機能性色素の最大吸収波長が、記録再生用のレーザーの波長近傍にあることを特徴とする請求項8に記載の光記録媒体。
- 請求項8記載の機能性色素の最大屈折率が、記録再生用のレーザーの波長近傍にあることを特徴とする請求項8に記載の光記録媒体。
- 請求項8記載の機能性色素がフォトクロミック色素であることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の光記録媒体。
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