JP2004301054A - ハイブリッドコンプレッサ - Google Patents
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Abstract
【課題】長期間の使用によっても効率及び耐久性が低下し難いハイブリッドコンプレッサを提供する。
【解決手段】センターハウジング2、固定スクロール11及びリアハウジング3内に構成された圧縮機構10と、フロントハウジング1内に構成された駆動機構80及び減速機構40と、フロントハウジング1外に構成された電磁クラッチ50とを備えたハイブリッドコンプレッサにおいて、駆動機構80と圧縮機構10との間には、回転軸4を変速可能な減速機構40が備えられ、この変速機構40は軸封装置21、46のほか、シールド軸受41、48、49、45によって封止されている。
【選択図】 図1
【解決手段】センターハウジング2、固定スクロール11及びリアハウジング3内に構成された圧縮機構10と、フロントハウジング1内に構成された駆動機構80及び減速機構40と、フロントハウジング1外に構成された電磁クラッチ50とを備えたハイブリッドコンプレッサにおいて、駆動機構80と圧縮機構10との間には、回転軸4を変速可能な減速機構40が備えられ、この変速機構40は軸封装置21、46のほか、シールド軸受41、48、49、45によって封止されている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はハイブリッドコンプレッサに関する。このハイブリッドコンプレッサは車両用空調システムに用いて好適である。
【0002】
【従来の技術】
従来のハイブリッドコンプレッサとして、特許文献1記載のものが知られている。このハイブリッドコンプレッサは、ハウジングと、このハウジング内に構成された圧縮機構及び駆動機構と、ハウジング外に構成された伝達機構とを備えている。圧縮機構は冷媒ガスを吸入、圧縮及び吐出可能なものであり、特許文献1には圧縮機構としてスクロール型及びベーン型のものが開示されている。駆動機構は、変速機構を介して回転軸を回転駆動可能な電動モータを有しており、回転軸により圧縮機構を駆動可能になっている。特許文献1には、駆動機構の電動モータとして誘導電動機型モータが開示されている。また、伝達機構は、ハウジング外に配設されたエンジン等の外部駆動源の駆動力を回転軸に伝達して圧縮機構を駆動可能になっており、特許文献1には伝達機構として電磁クラッチが開示されている。
【0003】
このハイブリッドコンプレッサでは、外部駆動源が運転状態にあるときには、外部駆動源の駆動力が伝達機構によって回転軸に伝達され、圧縮機構が駆動される。また、外部駆動源が停止状態にあるときには、駆動機構の電動モータが変速機構を介して回転軸を減速して回転駆動することにより圧縮機構が駆動される。この際、圧縮機構から送られてきた冷媒ガス及び潤滑油により、電動モータ及び変速機構の冷却や潤滑が行われている。こうして、外部駆動源が運転状態であっても停止状態であっても、車両用空調システムを作動させることができ、快適な車内空間を保持することができる。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−93876号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来のハイブリッドコンプレッサでは、圧縮機構から送られてきた潤滑油のみでは変速機構の潤滑が十分でないことが判明した。そのため、従来のハイブリッドコンプレッサでは、長期間の使用により変速機構の機能が低下し、ハイブリッドコンプレッサの効率や耐久性が低下する虞がある。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、長期間の使用によっても効率及び耐久性が低下し難いハイブリッドコンプレッサを提供することを解決すべき課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のハイブリッドコンプレッサは、ハウジングと、該ハウジング内に構成され、冷媒ガスを吸入、圧縮及び吐出可能な圧縮機構と、該ハウジング内に構成され、回転軸により該圧縮機構を駆動可能な駆動機構とを備えたハイブリッドコンプレッサにおいて、
前記駆動機構と前記圧縮機構との間には、前記回転軸を変速可能な変速機構が備えられ、該変速機構は封止装置により封止されていることを特徴とする。
【0008】
本発明のハイブリッドコンプレッサでは、駆動機構と圧縮機構との間に備えられた変速機構が封止装置により封止されているため、この変速機構は駆動機構及び圧縮機構に対して密閉された状態になっている。これにより、変速機構に専用の潤滑油を使用することができ、変速機構の潤滑を十分に行えることとなる。
【0009】
したがって、本発明のハイブリッドコンプレッサによれば、長期間の使用によっても効率及び耐久性が低下し難いものとなる。
【0010】
本発明のハイブリッドコンプレッサにおいて、圧縮機構としては、スクロール型、ベーン型、斜板型のもの等、公知のものを採用することができる。
【0011】
ハウジングは、圧縮機構を内包する第1ハウジングと、駆動機構及び変速機構を内包する第2ハウジングとを有し、第1ハウジングと第2ハウジングとを接合されてなることが好ましい。これにより、駆動機構や変速機構の構造や組合せが変更された場合、第2ハウジングを変更するだけでよく、第1ハウジングを共通化することができる。
【0012】
また、第1ハウジングは回転軸が挿通される軸孔をもつ隔壁と、残部の第1ハウジング本体とからなり、第2ハウジングは隔壁又は第1ハウジング本体と密閉状態で接合され、回転軸と軸孔との間には封止装置が設けられていることも好ましい。これにより、圧縮機構を内包する第1ハウジングと駆動機構及び変速機構を内包する第2ハウジングとが密閉状態となる。そのため、駆動機構としてDCモータを採用することもでき、モータ選択の自由度を向上させることができる。
【0013】
さらに、ハウジング外には、ハウジング外に配設された外部駆動源の駆動力を回転軸に伝達して圧縮機構を駆動可能な伝達機構が構成されていることも好ましい。これにより、駆動機構に代わり、外部駆動源で圧縮機構を駆動することができる。
【0014】
また、駆動機構は、外部駆動源の駆動力を伝達機構により回転軸に伝達して発電を行うことが可能な発電機構を兼備した駆動発電機構であることも好ましい。これにより、外部駆動源で駆動発電機構を駆動して発電を行うことができる。こうして発電された電気を充電すれば、駆動発電機構の動力として使用することもできる。このような伝達機構が圧縮機構も駆動するものである場合、圧縮機構が負荷とならないよう、圧縮機構は可変容量型のもの、特に駆動されていても冷媒ガスの吸入、圧縮及び吐出を実質的に行わないものであることが好ましい。
【0015】
伝達機構としては、電磁クラッチを採用できる他、圧縮機構が駆動されていても冷媒ガスの吸入、圧縮及び吐出を実質的に行わないものである場合には、単なるプーリを採用することもできる。
【0016】
さらに、変速機構は、駆動機構と圧縮機構との間に備えられ、回転軸を減速可能な減速機構を採用することができる。駆動発電機構が電動モータによって回転軸を回転駆動する場合、回転軸の回転数は大きくなりやすい。こうして圧縮機構を駆動するとすれば、圧縮機構では、冷媒の吸入、圧縮及び吐出に伴って回転軸に負荷が作用するため、電動モータに大きなトルクが必要になる。このような大きなトルクを出力可能な電動モータを採用するとすれば、電動モータの大型化、ひいてはハイブリッドコンプレッサの大型化を生じてしまう。これに対し、変速機構として、駆動発電機構と圧縮機構との間に備えられた減速機構を採用すれば、電動モータの回転トルクを小さくすることができるため、電動モータの小型化、ひいてはハイブリッドコンプレッサの小型化を実現することが可能である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した実施形態1、2を図面を参照しつつ説明する。
【0018】
(実施形態1)
実施形態1のハイブリッドコンプレッサは、図1に示すように、センターハウジング2、固定スクロール11及びリアハウジング3内に構成された圧縮機構10と、フロントハウジング1内に構成された駆動機構80及び減速機構40と、フロントハウジング1外に構成された伝達機構としての電磁クラッチ50とを備えている。ここで、フロントハウジング1、センターハウジング2、固定スクロール11及びリアハウジング3によりハウジングが構成される。センターハウジング2、固定スクロール11及びリアハウジング3が第1ハウジングであり、固定スクロール11とリアハウジング3とが第1ハウジング本体である。また、センターハウジング2が隔壁である。フロントハウジング1が第2ハウジングである。
【0019】
圧縮機構10は、互いに噛合することにより圧縮室13を形成する固定スクロール11と可動スクロール12とを備えている。固定スクロール11は、センターハウジング2及びリアハウジング3に挟持された状態で固定され、外郭を形成するシェル部11bと、リアハウジング3側でシェル部11bと一体をなす円板状の固定側板11aと、固定側板11aのセンターハウジング2側に突出して固定側板11aと一体に形成され、インボリュート曲線等により形成された固定渦巻体11cとからなる。可動スクロール12は、円板状の可動側板12aと、この可動側板12aのリアハウジング3側に突出して可動側板12aと一体に形成され、インボリュート曲線等により形成された可動渦巻体12bと、可動側板12aのセンターハウジング2側に形成されたボス部12cとからなる。
【0020】
リアハウジング3内には吸入室3b及び吐出室3aが形成されている。固定側板11aの外周部分には吸入室3bと圧縮室13とを連通する図示しない吸入ポートが貫設され、吸入室3bは図示しない冷凍回路の蒸発器と連通されている。また、固定側板11aの中央部分には吐出室3aと圧縮室13とを連通する吐出ポート14が貫設され、吐出室3aは図示しない冷凍回路の凝縮器と連通されている。
【0021】
センターハウジング2内には回転軸4が挿通される軸孔2aが形成され、回転軸4と軸孔2aとの間には封止装置21が設けられている。これにより、センターハウジング2とフロントハウジング1とは密閉状態で接合されている。この軸封装置21及びラジアル軸受22を介して回転軸4が回転自在に支承されている。また、回転軸4の大径部内端には軸心から偏心してスライドキー23が突設されている。このスライドキー23には駆動ブッシュ25が嵌合されており、駆動ブッシュ25にはカウンタウェイト24が嵌合されている。駆動ブッシュ25の外周面にはラジアル軸受26を介して可動側板12aのボス部12cが支承されている。センターハウジング2と可動側板12aとの間には自転防止機構27が設けられており、これにより可動側板12aの自転が防止されている。
【0022】
駆動機構80は、回転軸4を回転駆動可能なDCモータ81とDCモータ81を制御するICが搭載されたプリント基板87とを有している。DCモータ81は、ケース82と永久磁石83とロータ84とブラシ85とから構成されている。ケース82は円筒状をなし、外面がフロントハウジング1に固定され、内側には2個の永久磁石83が対向して固定されている。また、ケース82の内側には円筒状をなすロータ84が回転可能に設けられており、ロータ84の外側には巻線を有する複数の突極が軸心周りに突設されている。さらに、巻線への通電電流の方向を切り替えるブラシ85がロータ84に接触して設けられており、ブラシ85はコネクタ86を介してプリント基板87に電気的に接続されている。そして、プリント基板87はケーブル88を介して図示しないコンピュータに接続されている。
【0023】
また、駆動機構80と圧縮機構10との間には、回転軸4を減速可能な減速機構40が設けられている。この減速機構40は、太陽歯車42、3個の遊星歯車43及び内歯車44からなる遊星歯車機構を備えている。太陽歯車42は、DCモータ81のロータ84に嵌合されてロータ84と一体回転可能にされており、その外周面の一部に外歯が形成されている。太陽歯車42及びロータ84とセンターハウジング2との間にはシールド軸受41が設けられ、これにより太陽歯車42及びロータ84が回転自在に支承されている。フロントハウジング1には内周面に内歯が形成された内歯車44が固定され、内歯車44にはシールド軸受48を介して太陽歯車42が回転自在に支承されている。また、太陽歯車42と内歯車44との間には、3個の遊星歯車43が回転可能に設けられ、各遊星歯車43の外周面には太陽歯車42の外歯及び内歯車44の内歯と噛合する外歯が形成されている。各遊星歯車43はアーム43aにより連結されている。また、フロントハウジング1にはシールド軸受49を介してアーム43aが回転自在に支承されているとともに、軸封装置46及びシールド軸受45を介して回転軸4が回転自在に支承されている。このように、減速機構40は軸封装置21、46のほか、シールド軸受41、48、49、45によっても封止されており、減速機構40内の潤滑油Lが外に漏れないようにされている。ここで、軸封装置21、46及びシールド軸受41、48、49、45が封止装置である。
【0024】
また、減速機構40のアーム43aと回転軸4との間にはワンウェイクラッチ47が設けられている。このワンウェイクラッチ47としては、例えば特開2002−276775号公報記載をものを採用することができる。このワンウェイクラッチ47により、減速機構40から回転軸4へは動力が伝達されるが、回転軸4から減速機構40へは動力が伝達されないようになっている。
【0025】
また、伝達機構である電磁クラッチ50がフロントハウジング1外に構成されている。この電磁クラッチ50では、回転軸4にアーマチュアをもつハブ53が固定されている。また、フロントハウジング1には軸受装置54を介してプーリ51が回転可能に設けられ、プーリ51には外部駆動源としてのエンジン60と接続された図示しないベルトが巻きかけられている。さらに、フロントハウジング1にはプーリ51内に位置するようにコイル52が設けられている。この電磁クラッチ50では、コイル52に通電すれば、ハブ53のアーマチュアがプーリ51に磁着され、回転軸4がプーリ51と同期回転し、エンジン60の駆動力が回転軸4に伝達される。また、コイル52への通電を停止すれば、ハブ53のアーマチュアがプーリ51から離れ、回転軸4はプーリ51によっては回転されず、エンジン60の駆動力が回転軸4に伝達されない。
【0026】
以上の構成をしたハイブリッドコンプレッサでは、電磁クラッチ50への通電を停止するとともにDCモータ81へ通電し、駆動機構80により圧縮機構10を駆動することができる。つまり、電磁クラッチ50のコイル52への通電を停止すれば、プーリ51とハブ53とが切り離される。これにより、プーリ51が空転し、エンジン60の駆動力は回転軸4に伝達されない。また、DCモータ81へ通電してロータ84が回転すると、遊星歯車機構の太陽歯車42がロータ84に嵌合されているため、太陽歯車42はロータ84と一体として回転する。太陽歯車42が回転すると遊星歯車43を介してアーム43aが減速されて回転する。そして、ワンウェイクラッチ47により、アーム43aの回転と同じ速さで回転軸4も回転する。こうして、DCモータ81のロータ84の回転は、減速機構40により減速されて回転軸4に伝達される。
【0027】
回転軸4が回転すると、スライドキー23が駆動され、駆動ブッシュ25が自転防止機構27との協働により可動スクロール12を公転円に沿って公転させる。そして、固定側板11a、固定渦巻体11c、可動側板12a及び可動渦巻体12bにより形成される圧縮室13は順次容積を縮小させながら渦巻き中心方向へ移動される。こうして、回転軸4の回転により圧縮機構10が駆動される。このため、冷凍回路より吸入室3bから吸入段階の圧縮室13に吸入された冷媒ガスは、圧縮室13の移動により、吐出ポート14、吐出室3aを経て冷凍回路へ排出される。
【0028】
また、DCモータ81への通電を停止するとともに電磁クラッチ50のコイル52へ通電し、電磁クラッチ50により圧縮機構10を駆動することができる。つまり、DCモータ81への通電を停止すれば、ロータ84に回転力が与えられることはなく、駆動機構80から回転軸4へは動力が伝達されない。また、電磁クラッチ50のコイル52に通電することにより、プーリ51とハブ53とが接続され、エンジン60の駆動力が回転軸4に伝達される。回転軸4が回転すると、上記のように圧縮機構10が駆動される。こうして、電磁クラッチ50により圧縮機構10が駆動される。
【0029】
さらに、DCモータ81及び電磁クラッチ50のコイル52の両方への通電を停止すれば、圧縮機構10の駆動を停止することができる。
【0030】
このハイブリッドコンプレッサでは、駆動機構80と圧縮機構10との間に備えられた減速機構40が軸封装置21、46及びシールド軸受41、48、49、45により封止されているため、減速機構40は駆動機構80及び圧縮機構10に対して密閉された状態になっている。これにより、減速機構40に専用の潤滑油Lを使用することができ、減速機構40の潤滑を十分に行えることとなる。さらに、減速機構40内の潤滑油Lが減速機構40の外に漏れることを防止することができ、圧縮機構10、駆動機構80及び電磁クラッチ50を保護することができる。
【0031】
したがって、実施形態1のハイブリッドコンプレッサによれば、長期間の使用によっても効率及び耐久性が低下し難いものとなる。
【0032】
また、このハイブリッドコンプレッサでは、センターハウジング2とフロントハウジング1とは密閉状態で接合され、センターハウジング2内において、回転軸4と軸孔2aとの間には軸封装置21が設けられている。これにより、圧縮機構10と駆動機構80とが分離され、圧縮機構10の冷媒ガス及び潤滑油が駆動機構80に混入することを防止することができる。そのため、駆動機構80のモータとしてDCモータ81を採用することができる。
【0033】
さらに、このハイブリッドコンプレッサでは、駆動機構80と圧縮機構10との間には、回転軸4を減速可能な減速機構40が設けられているため、DCモータ81の回転トルクを小さくすることができ、DCモータ81の小型化、ひいてはハイブリッドコンプレッサの小型化を実現することが可能である。
【0034】
また、このハイブリッドコンプレッサでは、減速機構40と回転軸4との間にワンウェイクラッチ47が備えられている。ワンウェイクラッチ47により、DCモータ81の駆動力は減速機構40を介して回転軸4に伝達される一方、圧縮機構10に作用する負荷は回転軸4から減速機構40に伝達されることはない。そのため、圧縮機構10にとって減速機構40及び駆動機構80が負荷となることはなく、圧縮機構10がロックすることがない。
【0035】
さらに、このハイブリッドコンプレッサから減速機構40を外す等の改変を行い、電磁クラッチ50への通電を行ってエンジン60の駆動力を回転軸4に伝達することにより、駆動機構80のロータ84を永久磁石83内で回転させるようにすれば、駆動機構80で発電を行い、駆動発電機構として使用することができる。この場合、圧縮機構10が駆動されていても冷媒ガスの吸入、圧縮及び吐出を実質的に行わないものである場合には、回転軸4のトルクをほぼ全て発電に役立てることができる。
【0036】
(実施形態2)
実施形態2のハイブリッドコンプレッサは、図2に示すように、センターハウジング2、固定スクロール11及びリアハウジング3内に構成された圧縮機構10と、フロントハウジング1内に構成された駆動機構70及び減速機構40と、フロントハウジング1外に構成された伝達機構としての電磁クラッチ50とを備えている。ここで、フロントハウジング1、センターハウジング2、固定スクロール11及びリアハウジング3によりハウジングが構成される。センターハウジング2、固定スクロール11及びリアハウジング3が第1ハウジングであり、固定スクロール11とリアハウジング3とが第1ハウジング本体である。また、センターハウジング2が隔壁である。フロントハウジング1が第2ハウジングである。
【0037】
圧縮機構10は、互いに噛合することにより圧縮室13を形成する固定スクロール11と可動スクロール12とを備えている。固定スクロール11は、センターハウジング2及びリアハウジング3に挟持された状態で固定され、外郭を形成するシェル部11bと、リアハウジング3側でシェル部11bと一体をなす円板状の固定側板11aと、固定側板11aのセンターハウジング2側に突出して固定側板11aと一体に形成され、インボリュート曲線等により形成された固定渦巻体11cとからなる。可動スクロール12は、円板状の可動側板12aと、この可動側板12aのリアハウジング3側に突出して可動側板12aと一体に形成され、インボリュート曲線等により形成された可動渦巻体12bと、可動側板12aのセンターハウジング2側に形成されたボス部12cとからなる。
【0038】
リアハウジング3内には吸入室3b及び吐出室3aが形成されている。固定側板11aの外周部分には吸入室3bと圧縮室13とを連通する図示しない吸入ポートが貫設され、吸入室3bは図示しない冷凍回路の蒸発器と連通されている。また、固定側板11aの中央部分には吐出室3aと圧縮室13とを連通する吐出ポート14が貫設され、吐出室3aは図示しない冷凍回路の凝縮器と連通されている。
【0039】
センターハウジング2内にはラジアル軸受22を介して回転軸4が回転自在に支承されている。また、回転軸4の大径部内端には軸心から偏心してスライドキー23が突設されている。このスライドキー23には駆動ブッシュ25が嵌合されており、駆動ブッシュ25にはカウンタウェイト24が嵌合されている。駆動ブッシュ25の外周面にはラジアル軸受26を介して可動側板12aのボス部12cが支承されている。センターハウジング2と可動側板12aとの間には自転防止機構27が設けられており、これにより可動側板12aの自転が防止されている。
【0040】
駆動機構70は、回転軸4を回転駆動可能なインダクションモータ71とインダクションモータ71を制御するICが搭載されたプリント基板77とを有している。インダクションモータ71は、ヨーク72とコイル73とロータ74とから構成されている。ヨーク72は円筒状をなし、外面がフロントハウジング1に固定され、内側には複数のコイル73を有している。また、ヨーク72の内側には円筒状をなすロータ74が回転可能に設けられている。コイル73はコネクタ76を介してプリント基板77に電気的に接続されている。そして、プリント基板77はケーブル78を介して図示しないコンピュータに接続されている。
【0041】
また、駆動機構70と圧縮機構10との間には、回転軸4を減速可能な減速機構40が設けられている。この減速機構40は、太陽歯車42、3個の遊星歯車43及び外周面にOリング44aが嵌合された内歯車44からなる遊星歯車機構を備えている。太陽歯車42は、インダクションモータ71のロータ74に嵌合されてロータ74と一体回転可能にされており、その外周面の一部に外歯が形成されている。太陽歯車42及びロータ74の内側には軸封装置46c及びシールド軸受41を介して回転軸4が回転自在に支承されている。インダクションモータ71のヨーク72には内周面に内歯が形成された内歯車44が固定され、内歯車44には軸封装置46b及びシールド軸受48を介して太陽歯車42が回転自在に支承されている。また、太陽歯車42と内歯車44との間には、3個の遊星歯車43が回転可能に設けられ、各遊星歯車43の外周面には太陽歯車42の外歯及び内歯車44の内歯と噛合する外歯が形成されている。各遊星歯車43はアーム43aにより連結されている。また、フロントハウジング1にはシールド軸受49を介してアーム43aが回転自在に支承されているとともに、軸封装置46a及びシールド軸受45を介して回転軸4が回転自在に支承されている。このように、減速機構40は軸封装置46a、46b、46cのほか、シールド軸受41、48、49、45、さらにはOリング44aによっても封止されており、減速機構40内の潤滑油Lが外に漏れないようにされている。ここで、軸封装置46a、46b、46c及びシールド軸受41、48、49、45及びOリング44aが封止装置である。ただし、実施形態1と異なり、回転軸4とセンターハウジング2の軸孔2aとの間には封止装置が設けられていないため、駆動機構70と圧縮機構10との間は密閉状態ではない。
【0042】
また、減速機構40のアーム43aと回転軸4との間にはワンウェイクラッチ47が設けられている。このワンウェイクラッチ47としては、実施形態1と同様、例えば特開2002−276775号公報記載をものを採用することができる。このワンウェイクラッチ47により、減速機構40から回転軸4へは動力が伝達されるが、回転軸4から減速機構40へは動力が伝達されないようになっている。
【0043】
また、伝達機構である電磁クラッチ50がフロントハウジング1外に構成されている。この電磁クラッチ50では、回転軸4にアーマチュアをもつハブ53が固定されている。また、フロントハウジング1には軸受装置54を介してプーリ51が回転可能に設けられ、プーリ51には外部駆動源としてのエンジン60と接続された図示しないベルトが巻きかけられている。さらに、フロントハウジング1にはプーリ51内に位置するようにコイル52が設けられている。この電磁クラッチ50では、コイル52に通電すれば、ハブ53のアーマチュアがプーリ51に磁着され、回転軸4がプーリ51と同期回転し、エンジン60の駆動力が回転軸4に伝達される。また、コイル52への通電を停止すれば、ハブ53のアーマチュアがプーリ51から離れ、回転軸4はプーリ51によっては回転されず、エンジン60の駆動力が回転軸4に伝達されない。
【0044】
以上の構成をしたハイブリッドコンプレッサでは、実施形態1と同様、電磁クラッチ50への通電を停止するとともにインダクションモータ71へ通電し、駆動機構70により圧縮機構10を駆動することができる。また、インダクションモータ71への通電を停止するとともに電磁クラッチ50のコイル52へ通電し、電磁クラッチ50により圧縮機構10を駆動することができる。さらに、インダクションモータ71及び電磁クラッチ50のコイル52の両方への通電を停止すれば、圧縮機構10の駆動を停止することができる。
【0045】
このハイブリッドコンプレッサでは、駆動機構70と圧縮機構10との間に備えられた減速機構40が軸封装置46a、46b、46c及びシールド軸受41、48、49、45及びOリング44aにより封止されているため、減速機構40は駆動機構70及び圧縮機構10に対して密閉された状態になっている。これにより、減速機構40に専用の潤滑油Lを使用することができ、減速機構40の潤滑を十分に行えることとなる。さらに、減速機構40内の潤滑油Lが減速機構40の外に漏れることを防止することができ、圧縮機構10、駆動機構70及び電磁クラッチ50を保護することができる。
【0046】
したがって、実施形態2のハイブリッドコンプレッサによっても、長期間の使用によっても効率及び耐久性が低下し難いものとなる。
【0047】
また、このハイブリッドコンプレッサでは、駆動機構70と圧縮機構10との間が密閉状態でないため、圧縮機構10から送られてきた冷媒ガス及び潤滑油により、インダクションモータ71の冷却や潤滑を行うことができる。
【0048】
さらに、このハイブリッドコンプレッサでは、駆動機構70と圧縮機構10との間には、回転軸4を減速可能な減速機構40が設けられているため、インダクションモータ71の回転トルクを小さくすることができ、インダクションモータ71の小型化、ひいてはハイブリッドコンプレッサの小型化を実現することが可能である。
【0049】
また、このハイブリッドコンプレッサでは、減速機構40と回転軸4との間にワンウェイクラッチ47が備えられている。ワンウェイクラッチ47により、インダクションモータ71の駆動力は減速機構40を介して回転軸4に伝達される一方、圧縮機構10に作用する負荷は回転軸4から減速機構40に伝達されることはない。そのため、圧縮機構10にとって減速機構40及び駆動機構70が負荷となることはなく、圧縮機構10がロックすることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1のハイブリッドコンプレッサの断面図である。
【図2】実施形態2のハイブリッドコンプレッサの断面図である。
【符号の説明】
1、2、3、11…ハウジング(1…フロントハウジング、2…センターハウジング、3…リアハウジング、11…固定スクロール)
3、11…第1ハウジング本体(3…リアハウジング、11…固定スクロール)
2…隔壁(センターハウジング)
2、3、11…第1ハウジング(2…センターハウジング、3…リアハウジング、11…固定スクロール)
2a…軸孔
4…回転軸
10…圧縮機構
80…駆動機構
70…駆動機構
40…変速機構(減速機構)
50…伝達機構(電磁クラッチ)
60…外部駆動源(エンジン)
21、46a、46b、46c、41、45、48、49、44a…封止装置(21、46a、46b、46c…軸封装置、41、45、48、49…シールド軸受、44a…Oリング)
【発明の属する技術分野】
本発明はハイブリッドコンプレッサに関する。このハイブリッドコンプレッサは車両用空調システムに用いて好適である。
【0002】
【従来の技術】
従来のハイブリッドコンプレッサとして、特許文献1記載のものが知られている。このハイブリッドコンプレッサは、ハウジングと、このハウジング内に構成された圧縮機構及び駆動機構と、ハウジング外に構成された伝達機構とを備えている。圧縮機構は冷媒ガスを吸入、圧縮及び吐出可能なものであり、特許文献1には圧縮機構としてスクロール型及びベーン型のものが開示されている。駆動機構は、変速機構を介して回転軸を回転駆動可能な電動モータを有しており、回転軸により圧縮機構を駆動可能になっている。特許文献1には、駆動機構の電動モータとして誘導電動機型モータが開示されている。また、伝達機構は、ハウジング外に配設されたエンジン等の外部駆動源の駆動力を回転軸に伝達して圧縮機構を駆動可能になっており、特許文献1には伝達機構として電磁クラッチが開示されている。
【0003】
このハイブリッドコンプレッサでは、外部駆動源が運転状態にあるときには、外部駆動源の駆動力が伝達機構によって回転軸に伝達され、圧縮機構が駆動される。また、外部駆動源が停止状態にあるときには、駆動機構の電動モータが変速機構を介して回転軸を減速して回転駆動することにより圧縮機構が駆動される。この際、圧縮機構から送られてきた冷媒ガス及び潤滑油により、電動モータ及び変速機構の冷却や潤滑が行われている。こうして、外部駆動源が運転状態であっても停止状態であっても、車両用空調システムを作動させることができ、快適な車内空間を保持することができる。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−93876号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来のハイブリッドコンプレッサでは、圧縮機構から送られてきた潤滑油のみでは変速機構の潤滑が十分でないことが判明した。そのため、従来のハイブリッドコンプレッサでは、長期間の使用により変速機構の機能が低下し、ハイブリッドコンプレッサの効率や耐久性が低下する虞がある。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、長期間の使用によっても効率及び耐久性が低下し難いハイブリッドコンプレッサを提供することを解決すべき課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のハイブリッドコンプレッサは、ハウジングと、該ハウジング内に構成され、冷媒ガスを吸入、圧縮及び吐出可能な圧縮機構と、該ハウジング内に構成され、回転軸により該圧縮機構を駆動可能な駆動機構とを備えたハイブリッドコンプレッサにおいて、
前記駆動機構と前記圧縮機構との間には、前記回転軸を変速可能な変速機構が備えられ、該変速機構は封止装置により封止されていることを特徴とする。
【0008】
本発明のハイブリッドコンプレッサでは、駆動機構と圧縮機構との間に備えられた変速機構が封止装置により封止されているため、この変速機構は駆動機構及び圧縮機構に対して密閉された状態になっている。これにより、変速機構に専用の潤滑油を使用することができ、変速機構の潤滑を十分に行えることとなる。
【0009】
したがって、本発明のハイブリッドコンプレッサによれば、長期間の使用によっても効率及び耐久性が低下し難いものとなる。
【0010】
本発明のハイブリッドコンプレッサにおいて、圧縮機構としては、スクロール型、ベーン型、斜板型のもの等、公知のものを採用することができる。
【0011】
ハウジングは、圧縮機構を内包する第1ハウジングと、駆動機構及び変速機構を内包する第2ハウジングとを有し、第1ハウジングと第2ハウジングとを接合されてなることが好ましい。これにより、駆動機構や変速機構の構造や組合せが変更された場合、第2ハウジングを変更するだけでよく、第1ハウジングを共通化することができる。
【0012】
また、第1ハウジングは回転軸が挿通される軸孔をもつ隔壁と、残部の第1ハウジング本体とからなり、第2ハウジングは隔壁又は第1ハウジング本体と密閉状態で接合され、回転軸と軸孔との間には封止装置が設けられていることも好ましい。これにより、圧縮機構を内包する第1ハウジングと駆動機構及び変速機構を内包する第2ハウジングとが密閉状態となる。そのため、駆動機構としてDCモータを採用することもでき、モータ選択の自由度を向上させることができる。
【0013】
さらに、ハウジング外には、ハウジング外に配設された外部駆動源の駆動力を回転軸に伝達して圧縮機構を駆動可能な伝達機構が構成されていることも好ましい。これにより、駆動機構に代わり、外部駆動源で圧縮機構を駆動することができる。
【0014】
また、駆動機構は、外部駆動源の駆動力を伝達機構により回転軸に伝達して発電を行うことが可能な発電機構を兼備した駆動発電機構であることも好ましい。これにより、外部駆動源で駆動発電機構を駆動して発電を行うことができる。こうして発電された電気を充電すれば、駆動発電機構の動力として使用することもできる。このような伝達機構が圧縮機構も駆動するものである場合、圧縮機構が負荷とならないよう、圧縮機構は可変容量型のもの、特に駆動されていても冷媒ガスの吸入、圧縮及び吐出を実質的に行わないものであることが好ましい。
【0015】
伝達機構としては、電磁クラッチを採用できる他、圧縮機構が駆動されていても冷媒ガスの吸入、圧縮及び吐出を実質的に行わないものである場合には、単なるプーリを採用することもできる。
【0016】
さらに、変速機構は、駆動機構と圧縮機構との間に備えられ、回転軸を減速可能な減速機構を採用することができる。駆動発電機構が電動モータによって回転軸を回転駆動する場合、回転軸の回転数は大きくなりやすい。こうして圧縮機構を駆動するとすれば、圧縮機構では、冷媒の吸入、圧縮及び吐出に伴って回転軸に負荷が作用するため、電動モータに大きなトルクが必要になる。このような大きなトルクを出力可能な電動モータを採用するとすれば、電動モータの大型化、ひいてはハイブリッドコンプレッサの大型化を生じてしまう。これに対し、変速機構として、駆動発電機構と圧縮機構との間に備えられた減速機構を採用すれば、電動モータの回転トルクを小さくすることができるため、電動モータの小型化、ひいてはハイブリッドコンプレッサの小型化を実現することが可能である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した実施形態1、2を図面を参照しつつ説明する。
【0018】
(実施形態1)
実施形態1のハイブリッドコンプレッサは、図1に示すように、センターハウジング2、固定スクロール11及びリアハウジング3内に構成された圧縮機構10と、フロントハウジング1内に構成された駆動機構80及び減速機構40と、フロントハウジング1外に構成された伝達機構としての電磁クラッチ50とを備えている。ここで、フロントハウジング1、センターハウジング2、固定スクロール11及びリアハウジング3によりハウジングが構成される。センターハウジング2、固定スクロール11及びリアハウジング3が第1ハウジングであり、固定スクロール11とリアハウジング3とが第1ハウジング本体である。また、センターハウジング2が隔壁である。フロントハウジング1が第2ハウジングである。
【0019】
圧縮機構10は、互いに噛合することにより圧縮室13を形成する固定スクロール11と可動スクロール12とを備えている。固定スクロール11は、センターハウジング2及びリアハウジング3に挟持された状態で固定され、外郭を形成するシェル部11bと、リアハウジング3側でシェル部11bと一体をなす円板状の固定側板11aと、固定側板11aのセンターハウジング2側に突出して固定側板11aと一体に形成され、インボリュート曲線等により形成された固定渦巻体11cとからなる。可動スクロール12は、円板状の可動側板12aと、この可動側板12aのリアハウジング3側に突出して可動側板12aと一体に形成され、インボリュート曲線等により形成された可動渦巻体12bと、可動側板12aのセンターハウジング2側に形成されたボス部12cとからなる。
【0020】
リアハウジング3内には吸入室3b及び吐出室3aが形成されている。固定側板11aの外周部分には吸入室3bと圧縮室13とを連通する図示しない吸入ポートが貫設され、吸入室3bは図示しない冷凍回路の蒸発器と連通されている。また、固定側板11aの中央部分には吐出室3aと圧縮室13とを連通する吐出ポート14が貫設され、吐出室3aは図示しない冷凍回路の凝縮器と連通されている。
【0021】
センターハウジング2内には回転軸4が挿通される軸孔2aが形成され、回転軸4と軸孔2aとの間には封止装置21が設けられている。これにより、センターハウジング2とフロントハウジング1とは密閉状態で接合されている。この軸封装置21及びラジアル軸受22を介して回転軸4が回転自在に支承されている。また、回転軸4の大径部内端には軸心から偏心してスライドキー23が突設されている。このスライドキー23には駆動ブッシュ25が嵌合されており、駆動ブッシュ25にはカウンタウェイト24が嵌合されている。駆動ブッシュ25の外周面にはラジアル軸受26を介して可動側板12aのボス部12cが支承されている。センターハウジング2と可動側板12aとの間には自転防止機構27が設けられており、これにより可動側板12aの自転が防止されている。
【0022】
駆動機構80は、回転軸4を回転駆動可能なDCモータ81とDCモータ81を制御するICが搭載されたプリント基板87とを有している。DCモータ81は、ケース82と永久磁石83とロータ84とブラシ85とから構成されている。ケース82は円筒状をなし、外面がフロントハウジング1に固定され、内側には2個の永久磁石83が対向して固定されている。また、ケース82の内側には円筒状をなすロータ84が回転可能に設けられており、ロータ84の外側には巻線を有する複数の突極が軸心周りに突設されている。さらに、巻線への通電電流の方向を切り替えるブラシ85がロータ84に接触して設けられており、ブラシ85はコネクタ86を介してプリント基板87に電気的に接続されている。そして、プリント基板87はケーブル88を介して図示しないコンピュータに接続されている。
【0023】
また、駆動機構80と圧縮機構10との間には、回転軸4を減速可能な減速機構40が設けられている。この減速機構40は、太陽歯車42、3個の遊星歯車43及び内歯車44からなる遊星歯車機構を備えている。太陽歯車42は、DCモータ81のロータ84に嵌合されてロータ84と一体回転可能にされており、その外周面の一部に外歯が形成されている。太陽歯車42及びロータ84とセンターハウジング2との間にはシールド軸受41が設けられ、これにより太陽歯車42及びロータ84が回転自在に支承されている。フロントハウジング1には内周面に内歯が形成された内歯車44が固定され、内歯車44にはシールド軸受48を介して太陽歯車42が回転自在に支承されている。また、太陽歯車42と内歯車44との間には、3個の遊星歯車43が回転可能に設けられ、各遊星歯車43の外周面には太陽歯車42の外歯及び内歯車44の内歯と噛合する外歯が形成されている。各遊星歯車43はアーム43aにより連結されている。また、フロントハウジング1にはシールド軸受49を介してアーム43aが回転自在に支承されているとともに、軸封装置46及びシールド軸受45を介して回転軸4が回転自在に支承されている。このように、減速機構40は軸封装置21、46のほか、シールド軸受41、48、49、45によっても封止されており、減速機構40内の潤滑油Lが外に漏れないようにされている。ここで、軸封装置21、46及びシールド軸受41、48、49、45が封止装置である。
【0024】
また、減速機構40のアーム43aと回転軸4との間にはワンウェイクラッチ47が設けられている。このワンウェイクラッチ47としては、例えば特開2002−276775号公報記載をものを採用することができる。このワンウェイクラッチ47により、減速機構40から回転軸4へは動力が伝達されるが、回転軸4から減速機構40へは動力が伝達されないようになっている。
【0025】
また、伝達機構である電磁クラッチ50がフロントハウジング1外に構成されている。この電磁クラッチ50では、回転軸4にアーマチュアをもつハブ53が固定されている。また、フロントハウジング1には軸受装置54を介してプーリ51が回転可能に設けられ、プーリ51には外部駆動源としてのエンジン60と接続された図示しないベルトが巻きかけられている。さらに、フロントハウジング1にはプーリ51内に位置するようにコイル52が設けられている。この電磁クラッチ50では、コイル52に通電すれば、ハブ53のアーマチュアがプーリ51に磁着され、回転軸4がプーリ51と同期回転し、エンジン60の駆動力が回転軸4に伝達される。また、コイル52への通電を停止すれば、ハブ53のアーマチュアがプーリ51から離れ、回転軸4はプーリ51によっては回転されず、エンジン60の駆動力が回転軸4に伝達されない。
【0026】
以上の構成をしたハイブリッドコンプレッサでは、電磁クラッチ50への通電を停止するとともにDCモータ81へ通電し、駆動機構80により圧縮機構10を駆動することができる。つまり、電磁クラッチ50のコイル52への通電を停止すれば、プーリ51とハブ53とが切り離される。これにより、プーリ51が空転し、エンジン60の駆動力は回転軸4に伝達されない。また、DCモータ81へ通電してロータ84が回転すると、遊星歯車機構の太陽歯車42がロータ84に嵌合されているため、太陽歯車42はロータ84と一体として回転する。太陽歯車42が回転すると遊星歯車43を介してアーム43aが減速されて回転する。そして、ワンウェイクラッチ47により、アーム43aの回転と同じ速さで回転軸4も回転する。こうして、DCモータ81のロータ84の回転は、減速機構40により減速されて回転軸4に伝達される。
【0027】
回転軸4が回転すると、スライドキー23が駆動され、駆動ブッシュ25が自転防止機構27との協働により可動スクロール12を公転円に沿って公転させる。そして、固定側板11a、固定渦巻体11c、可動側板12a及び可動渦巻体12bにより形成される圧縮室13は順次容積を縮小させながら渦巻き中心方向へ移動される。こうして、回転軸4の回転により圧縮機構10が駆動される。このため、冷凍回路より吸入室3bから吸入段階の圧縮室13に吸入された冷媒ガスは、圧縮室13の移動により、吐出ポート14、吐出室3aを経て冷凍回路へ排出される。
【0028】
また、DCモータ81への通電を停止するとともに電磁クラッチ50のコイル52へ通電し、電磁クラッチ50により圧縮機構10を駆動することができる。つまり、DCモータ81への通電を停止すれば、ロータ84に回転力が与えられることはなく、駆動機構80から回転軸4へは動力が伝達されない。また、電磁クラッチ50のコイル52に通電することにより、プーリ51とハブ53とが接続され、エンジン60の駆動力が回転軸4に伝達される。回転軸4が回転すると、上記のように圧縮機構10が駆動される。こうして、電磁クラッチ50により圧縮機構10が駆動される。
【0029】
さらに、DCモータ81及び電磁クラッチ50のコイル52の両方への通電を停止すれば、圧縮機構10の駆動を停止することができる。
【0030】
このハイブリッドコンプレッサでは、駆動機構80と圧縮機構10との間に備えられた減速機構40が軸封装置21、46及びシールド軸受41、48、49、45により封止されているため、減速機構40は駆動機構80及び圧縮機構10に対して密閉された状態になっている。これにより、減速機構40に専用の潤滑油Lを使用することができ、減速機構40の潤滑を十分に行えることとなる。さらに、減速機構40内の潤滑油Lが減速機構40の外に漏れることを防止することができ、圧縮機構10、駆動機構80及び電磁クラッチ50を保護することができる。
【0031】
したがって、実施形態1のハイブリッドコンプレッサによれば、長期間の使用によっても効率及び耐久性が低下し難いものとなる。
【0032】
また、このハイブリッドコンプレッサでは、センターハウジング2とフロントハウジング1とは密閉状態で接合され、センターハウジング2内において、回転軸4と軸孔2aとの間には軸封装置21が設けられている。これにより、圧縮機構10と駆動機構80とが分離され、圧縮機構10の冷媒ガス及び潤滑油が駆動機構80に混入することを防止することができる。そのため、駆動機構80のモータとしてDCモータ81を採用することができる。
【0033】
さらに、このハイブリッドコンプレッサでは、駆動機構80と圧縮機構10との間には、回転軸4を減速可能な減速機構40が設けられているため、DCモータ81の回転トルクを小さくすることができ、DCモータ81の小型化、ひいてはハイブリッドコンプレッサの小型化を実現することが可能である。
【0034】
また、このハイブリッドコンプレッサでは、減速機構40と回転軸4との間にワンウェイクラッチ47が備えられている。ワンウェイクラッチ47により、DCモータ81の駆動力は減速機構40を介して回転軸4に伝達される一方、圧縮機構10に作用する負荷は回転軸4から減速機構40に伝達されることはない。そのため、圧縮機構10にとって減速機構40及び駆動機構80が負荷となることはなく、圧縮機構10がロックすることがない。
【0035】
さらに、このハイブリッドコンプレッサから減速機構40を外す等の改変を行い、電磁クラッチ50への通電を行ってエンジン60の駆動力を回転軸4に伝達することにより、駆動機構80のロータ84を永久磁石83内で回転させるようにすれば、駆動機構80で発電を行い、駆動発電機構として使用することができる。この場合、圧縮機構10が駆動されていても冷媒ガスの吸入、圧縮及び吐出を実質的に行わないものである場合には、回転軸4のトルクをほぼ全て発電に役立てることができる。
【0036】
(実施形態2)
実施形態2のハイブリッドコンプレッサは、図2に示すように、センターハウジング2、固定スクロール11及びリアハウジング3内に構成された圧縮機構10と、フロントハウジング1内に構成された駆動機構70及び減速機構40と、フロントハウジング1外に構成された伝達機構としての電磁クラッチ50とを備えている。ここで、フロントハウジング1、センターハウジング2、固定スクロール11及びリアハウジング3によりハウジングが構成される。センターハウジング2、固定スクロール11及びリアハウジング3が第1ハウジングであり、固定スクロール11とリアハウジング3とが第1ハウジング本体である。また、センターハウジング2が隔壁である。フロントハウジング1が第2ハウジングである。
【0037】
圧縮機構10は、互いに噛合することにより圧縮室13を形成する固定スクロール11と可動スクロール12とを備えている。固定スクロール11は、センターハウジング2及びリアハウジング3に挟持された状態で固定され、外郭を形成するシェル部11bと、リアハウジング3側でシェル部11bと一体をなす円板状の固定側板11aと、固定側板11aのセンターハウジング2側に突出して固定側板11aと一体に形成され、インボリュート曲線等により形成された固定渦巻体11cとからなる。可動スクロール12は、円板状の可動側板12aと、この可動側板12aのリアハウジング3側に突出して可動側板12aと一体に形成され、インボリュート曲線等により形成された可動渦巻体12bと、可動側板12aのセンターハウジング2側に形成されたボス部12cとからなる。
【0038】
リアハウジング3内には吸入室3b及び吐出室3aが形成されている。固定側板11aの外周部分には吸入室3bと圧縮室13とを連通する図示しない吸入ポートが貫設され、吸入室3bは図示しない冷凍回路の蒸発器と連通されている。また、固定側板11aの中央部分には吐出室3aと圧縮室13とを連通する吐出ポート14が貫設され、吐出室3aは図示しない冷凍回路の凝縮器と連通されている。
【0039】
センターハウジング2内にはラジアル軸受22を介して回転軸4が回転自在に支承されている。また、回転軸4の大径部内端には軸心から偏心してスライドキー23が突設されている。このスライドキー23には駆動ブッシュ25が嵌合されており、駆動ブッシュ25にはカウンタウェイト24が嵌合されている。駆動ブッシュ25の外周面にはラジアル軸受26を介して可動側板12aのボス部12cが支承されている。センターハウジング2と可動側板12aとの間には自転防止機構27が設けられており、これにより可動側板12aの自転が防止されている。
【0040】
駆動機構70は、回転軸4を回転駆動可能なインダクションモータ71とインダクションモータ71を制御するICが搭載されたプリント基板77とを有している。インダクションモータ71は、ヨーク72とコイル73とロータ74とから構成されている。ヨーク72は円筒状をなし、外面がフロントハウジング1に固定され、内側には複数のコイル73を有している。また、ヨーク72の内側には円筒状をなすロータ74が回転可能に設けられている。コイル73はコネクタ76を介してプリント基板77に電気的に接続されている。そして、プリント基板77はケーブル78を介して図示しないコンピュータに接続されている。
【0041】
また、駆動機構70と圧縮機構10との間には、回転軸4を減速可能な減速機構40が設けられている。この減速機構40は、太陽歯車42、3個の遊星歯車43及び外周面にOリング44aが嵌合された内歯車44からなる遊星歯車機構を備えている。太陽歯車42は、インダクションモータ71のロータ74に嵌合されてロータ74と一体回転可能にされており、その外周面の一部に外歯が形成されている。太陽歯車42及びロータ74の内側には軸封装置46c及びシールド軸受41を介して回転軸4が回転自在に支承されている。インダクションモータ71のヨーク72には内周面に内歯が形成された内歯車44が固定され、内歯車44には軸封装置46b及びシールド軸受48を介して太陽歯車42が回転自在に支承されている。また、太陽歯車42と内歯車44との間には、3個の遊星歯車43が回転可能に設けられ、各遊星歯車43の外周面には太陽歯車42の外歯及び内歯車44の内歯と噛合する外歯が形成されている。各遊星歯車43はアーム43aにより連結されている。また、フロントハウジング1にはシールド軸受49を介してアーム43aが回転自在に支承されているとともに、軸封装置46a及びシールド軸受45を介して回転軸4が回転自在に支承されている。このように、減速機構40は軸封装置46a、46b、46cのほか、シールド軸受41、48、49、45、さらにはOリング44aによっても封止されており、減速機構40内の潤滑油Lが外に漏れないようにされている。ここで、軸封装置46a、46b、46c及びシールド軸受41、48、49、45及びOリング44aが封止装置である。ただし、実施形態1と異なり、回転軸4とセンターハウジング2の軸孔2aとの間には封止装置が設けられていないため、駆動機構70と圧縮機構10との間は密閉状態ではない。
【0042】
また、減速機構40のアーム43aと回転軸4との間にはワンウェイクラッチ47が設けられている。このワンウェイクラッチ47としては、実施形態1と同様、例えば特開2002−276775号公報記載をものを採用することができる。このワンウェイクラッチ47により、減速機構40から回転軸4へは動力が伝達されるが、回転軸4から減速機構40へは動力が伝達されないようになっている。
【0043】
また、伝達機構である電磁クラッチ50がフロントハウジング1外に構成されている。この電磁クラッチ50では、回転軸4にアーマチュアをもつハブ53が固定されている。また、フロントハウジング1には軸受装置54を介してプーリ51が回転可能に設けられ、プーリ51には外部駆動源としてのエンジン60と接続された図示しないベルトが巻きかけられている。さらに、フロントハウジング1にはプーリ51内に位置するようにコイル52が設けられている。この電磁クラッチ50では、コイル52に通電すれば、ハブ53のアーマチュアがプーリ51に磁着され、回転軸4がプーリ51と同期回転し、エンジン60の駆動力が回転軸4に伝達される。また、コイル52への通電を停止すれば、ハブ53のアーマチュアがプーリ51から離れ、回転軸4はプーリ51によっては回転されず、エンジン60の駆動力が回転軸4に伝達されない。
【0044】
以上の構成をしたハイブリッドコンプレッサでは、実施形態1と同様、電磁クラッチ50への通電を停止するとともにインダクションモータ71へ通電し、駆動機構70により圧縮機構10を駆動することができる。また、インダクションモータ71への通電を停止するとともに電磁クラッチ50のコイル52へ通電し、電磁クラッチ50により圧縮機構10を駆動することができる。さらに、インダクションモータ71及び電磁クラッチ50のコイル52の両方への通電を停止すれば、圧縮機構10の駆動を停止することができる。
【0045】
このハイブリッドコンプレッサでは、駆動機構70と圧縮機構10との間に備えられた減速機構40が軸封装置46a、46b、46c及びシールド軸受41、48、49、45及びOリング44aにより封止されているため、減速機構40は駆動機構70及び圧縮機構10に対して密閉された状態になっている。これにより、減速機構40に専用の潤滑油Lを使用することができ、減速機構40の潤滑を十分に行えることとなる。さらに、減速機構40内の潤滑油Lが減速機構40の外に漏れることを防止することができ、圧縮機構10、駆動機構70及び電磁クラッチ50を保護することができる。
【0046】
したがって、実施形態2のハイブリッドコンプレッサによっても、長期間の使用によっても効率及び耐久性が低下し難いものとなる。
【0047】
また、このハイブリッドコンプレッサでは、駆動機構70と圧縮機構10との間が密閉状態でないため、圧縮機構10から送られてきた冷媒ガス及び潤滑油により、インダクションモータ71の冷却や潤滑を行うことができる。
【0048】
さらに、このハイブリッドコンプレッサでは、駆動機構70と圧縮機構10との間には、回転軸4を減速可能な減速機構40が設けられているため、インダクションモータ71の回転トルクを小さくすることができ、インダクションモータ71の小型化、ひいてはハイブリッドコンプレッサの小型化を実現することが可能である。
【0049】
また、このハイブリッドコンプレッサでは、減速機構40と回転軸4との間にワンウェイクラッチ47が備えられている。ワンウェイクラッチ47により、インダクションモータ71の駆動力は減速機構40を介して回転軸4に伝達される一方、圧縮機構10に作用する負荷は回転軸4から減速機構40に伝達されることはない。そのため、圧縮機構10にとって減速機構40及び駆動機構70が負荷となることはなく、圧縮機構10がロックすることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1のハイブリッドコンプレッサの断面図である。
【図2】実施形態2のハイブリッドコンプレッサの断面図である。
【符号の説明】
1、2、3、11…ハウジング(1…フロントハウジング、2…センターハウジング、3…リアハウジング、11…固定スクロール)
3、11…第1ハウジング本体(3…リアハウジング、11…固定スクロール)
2…隔壁(センターハウジング)
2、3、11…第1ハウジング(2…センターハウジング、3…リアハウジング、11…固定スクロール)
2a…軸孔
4…回転軸
10…圧縮機構
80…駆動機構
70…駆動機構
40…変速機構(減速機構)
50…伝達機構(電磁クラッチ)
60…外部駆動源(エンジン)
21、46a、46b、46c、41、45、48、49、44a…封止装置(21、46a、46b、46c…軸封装置、41、45、48、49…シールド軸受、44a…Oリング)
Claims (6)
- ハウジングと、該ハウジング内に構成され、冷媒ガスを吸入、圧縮及び吐出可能な圧縮機構と、該ハウジング内に構成され、回転軸により該圧縮機構を駆動可能な駆動機構とを備えたハイブリッドコンプレッサにおいて、
前記駆動機構と前記圧縮機構との間には、前記回転軸を変速可能な変速機構が備えられ、該変速機構は封止装置により封止されていることを特徴とするハイブリッドコンプレッサ。 - 前記ハウジングは、前記圧縮機構を内包する第1ハウジングと、前記駆動機構及び前記変速機構を内包する第2ハウジングとを有し、該第1ハウジングと該第2ハウジングとを接合されてなることを特徴とする請求項1記載のハイブリッドコンプレッサ。
- 前記第1ハウジングは前記回転軸が挿通される軸孔をもつ隔壁と、残部の第1ハウジング本体とからなり、前記第2ハウジングは該隔壁又は該第1ハウジング本体と密閉状態で接合され、該回転軸と該軸孔との間には封止装置が設けられていることを特徴とする請求項2記載のハイブリッドコンプレッサ。
- 前記ハウジング外には、該ハウジング外に配設された外部駆動源の駆動力を前記回転軸に伝達して前記圧縮機構を駆動可能な伝達機構が構成されていることを特徴とする請求項1〜3記載のハイブリッドコンプレッサ。
- 前記駆動機構は、外部駆動原の駆動力を伝達機構により前記回転軸に伝達して発電を行うことが可能な発電機構を兼備した駆動発電機構であることを特徴とする請求項4記載のハイブリッドコンプレッサ。
- 前記変速機構は、前記駆動機構と前記圧縮機構との間に備えられ、前記回転軸を減速可能な減速機構であることを特徴とする請求項1〜4記載のハイブリッドコンプレッサ。
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