JP2004300622A - 共重合ポリエステル繊維 - Google Patents

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Akira Hamano
陽 濱野
Kazunori Sato
万紀 佐藤
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Abstract

【解決課題】高強度・高弾性率と低収縮率の両特性を具備し、しかも熱寸法安定性の優れた、タイヤコードやスクリーン用布帛、等の産業資材用途に有用な共重合ポリエステル繊維を提供すること。
【解決手段】主たる酸成分がテレフタル酸と4,4’−ビフェニルジカルボン酸からなるポリエステル共重合体の繊維であって、下記(1)〜(3)を満足すことを特徴とする共重合ポリエステル繊維。
(1)強度1GPa以上
(2)弾性率40GPa以上
(3)160℃での乾熱収縮率が1%以下
(4)3.5Hzでの動的粘弾性測定を行った際、50℃〜150℃に現れる2つのtanδピークのうち、高温側のピーク強度が、低温側のピーク強度に比べて低い
(5)単糸の繊度が50dtex以上、1000dtex以下
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はタイヤコード等の産業資材用途に用いられる高強度、高弾性率と高い寸法安定性を兼ね備えたポリエステル繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルタイヤコードに代表されるポリエステル高強力糸は、主にゴム補強用繊維としての物性のバランスが優れており、かつ近年は原料コスト面で他の有機材料に対して優位性を示し、産業資材用として広くかつ大量に使用されている。
【0003】
これらの分野では、強度、弾性率が高く、かつ、熱寸法安定性が良いことが極めて重要となる。一般に、ポリエチレンテレフタレート繊維はナイロン6やナイロン66などの脂肪族ポリアミド繊維に比べて、弾性率は高いものの、ポリパラテレフタルアミド繊維などの全芳香族ポリアミド繊維などと比較すると、決して高いとは言えない。しかし、全芳香族ポリアミド繊維は高価であり、産業資材としてコストパフォーマンスに優れるポリエステル繊維の更なる高性能化が望まれている。
ポリエステル繊維の高弾性率化は種々の方策があるが、最も一般的であるのは、分子量が大きい樹脂を用い、高倍率の延伸を行って糸中の分子鎖の配向度を高めることである。しかしながら、他方において、高い配高度を有する繊維は熱雰囲気下での収縮が大きく、寸法安定性に掛けるという欠点を有する。この様に弾性率が高く、尚且つ熱寸法安定性が良好とするのは、ポリエステル繊維の基本的な特性から非常に困難である。即ち、熱寸法安定性を改善すると弾性率が大きく低下する欠点がある。
【0004】
これに対して、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維に端を発した、リオトロピック液晶紡糸による高強度高弾性率繊維は、サーモトロピック液晶にも応用されるようになり、多くの液晶性高強力繊維が開発されている。しかし、これらサーモトロピック液晶から得られる液晶性高強力繊維は、分子鎖の剛直性が高いため、加工が非常に難しく、特殊な工程が必要であり、生産性を上げることが困難であった。
【0005】
これに対して4,4’ビフェニルジカルボン酸及びテレフタル酸を酸成分としエチレングリコールをグリコール成分とする、共重合ポリエステルにより、弾性率が28Gpa以上の弾性率を持つ繊維が得られることが知られているが、その実施例では37GPaが限界となっており、本発明のように40GPaの弾性率には到底到達しない(例えば、特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】
特開昭52−107320号公報
【0007】
また、同様の共重合ポリエステルを紡糸することにより、弾性率が17GPa以上、150℃での収縮率が7.5%以下の収縮率を持つ繊維が得られることも知られている(例えば、特許文献2)。これらの条件は、産業資材用繊維として用いられる際に、有利な物性を持っているが、しかしながら、本願では弾性率22GPa、180℃での収縮率が5.9%が開示されているのみであり、本発明で示しているように40GPaを超えるような弾性率や1%以下の収縮率はとうてい到達できない。特に共重合ポリエステル繊維において1%以下の収縮率は驚異的である。
【0008】
【特許文献2】
特許第1112684号公報
【0009】
これに対して、同様のポリエステルを用いて、紡糸一段階でも1GPa以上の強度と、41GPaの弾性率を有する繊維が得られることが報告されている(例えば、非特許文献1)。しかし、この文献中に示された情報から得られる繊維は剪断速度が高く、紡糸ドラフトが低い領域での検討であり、目標とする弾性率、収縮率の兼ね備えた繊維を得る事は困難である。
【0010】
【非特許文献1】
Kumar(Macromolecules, 35(13), p5123−5130 (2002))
【0011】
また、一般に高強力を目指す繊維は、繊度を大きくしていくとドラフトが下がり、また、断面積あたりの欠陥も増えてくるために、強力が下がってしまうという傾向がある。
以上述べたように、生産性を阻害せず、従来のポリエステル繊維に対して飛躍的に高い強度1GPa、弾性率40GPaという高強度・高弾性率を有し、しかも収縮率1%以下という熱寸法安定性に優れ、繊度に関らず安定した強度・弾性率を発現するポリエステル繊維を得ることは非常に困難であった。
【0012】
【発明が解消しようとする課題】
この発明は、こうした事情に着目してなされたものであって、ポリエステル系繊維の高強度高弾性率化および熱寸法安定性の改善に関し、繊度にかかわらず、高弾性率と低収縮率を兼ね備えたポリエステル繊維を生産性良く供給せんとするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、以下の構成からなる。
1.主たる酸成分がテレフタル酸と4,4’−ビフェニルジカルボン酸からなるポリエステル共重合体の繊維であって、下記(1)〜(3)を満足すことを特徴とする共重合ポリエステル繊維。
(1)強度1GPa以上
(2)弾性率40GPa以上
(3)160℃での乾熱収縮率が1%以下
2.3.5Hzでの動的粘弾性測定を行った際、50℃〜150℃に現れる2つのtanδピークのうち、高温側のピーク強度が、低温側のピーク強度に比べて低いことを特徴とする上記第1に記載の共重合ポリエステル繊維。
3.単糸の繊度が50dtex以上、1000dtex以下であることを特徴とする上記第1又は2に記載の共重合ポリエステル繊維。
4.ポリエステル中の全酸成分に対して、テレフタル酸と4,4’ビフェニルジカルボン酸の量が90mol%以上であることを特徴とする上記第1〜3のいずれかに記載の共重合ポリエステル繊維。
5.ポリエステル中のグリコール成分が下記式1をであることを特徴とする上記第1〜4のいずれかに記載の共重合ポリエステル繊維。
HO−A−OH (式1)
(ただし、Aは炭素数2〜6のアルキレン基)
6.ポリエステル中の全酸成分に対して4,4’−ビフェニルジカルボン酸の占める割合が40〜75mol%であることを特徴とする上記第1〜5のいずれかに記載の共重合ポリエステル繊維。
【0014】
以下、本発明を詳述する。
強度が1GPa以上である事はゴム補強用のみならず、衣料用を含めた各種用途においても必要である。強度が0.5GPa以下では工程通過性が著しく低下し、実際上使用が困難である。
【0015】
更にゴムなどの補強効果を考えると高弾性率を有していることが必要である。必要な弾性率は用途により異なるが、初期弾性率40GPa以上であることが望ましく、45GPa以上であることがより好ましい。初期弾性率が40GPa未満では繊維による補強効果が十分に現れない。
【0016】
先の述べたように従来のポリエステル系繊維では、高弾性率と、低収縮率を兼ね備える事は困難であった。ところが、ゴム補強用を含めた、強化材料用途には成形加工時、及び、使用時の熱寸法安定性が極めて重要になる。例えば、収縮率の高い繊維では成形中の過熱時に収縮を起こし、成形品の均一性が著しく低下する。このような成形品の不均一を避けるには、160℃での乾熱収縮率が1%以下であることが必要である。1%以上の乾熱収縮率を有する場合には、撚構造を含めて、織物の構造を工夫しないと均一な成形品は得られない。
【0017】
本発明で得られた繊維は、共重合成分のコントロールと紡糸条件の工夫によって、160℃での乾熱収縮率を1%以下に保つことができる。紡糸条件は具体的には剪断速度が1000(sec−1)以下の領域で以下の式に相当するドラフトで紡糸を行うことが好ましい。
6000×exp(0.0095×γ) ≦ DDR ≦ 8000×exp(0.0095×γ)
ただし γ : 剪断速度(sec−1
DDR: 紡糸ドラフト
【0018】
本発明で得られた繊維の動的粘弾性を測定すると、50℃から150℃の間に2つのtanδのピークが現れる。このとき、高温側のピーク強度は低温側のピーク強度に比べて低くなっていなければならない。
【0019】
これら2つのピークは2つの共重合成分、即ち4,4ビスベンゾエートと、テレフタレートの寄与によって現れており、高温側のピークはテレフタレートの寄与によるものと考えられる。分子配向が進むと、4,4−ビスベンゾエートの寄与が大きくなることにより、低温側のピークが高温側よりも大きくなることを見出した。目的の物性を得るためには、高温側のピークは低温側のピークよりも低くなっていなければならない。
【0020】
この繊維は、溶融紡糸によって作ることができるが、紡糸の方法を工夫することによって、繊度を大きくしても強度や、弾性率が大きく下がらない。50dtexから1000dtexまで、広い範囲で利用することが可能である。
【0021】
本発明によって示される繊維に用いられる共重合ポリエステルの酸成分のうちテレフタル酸と、4,4’−ジカルボン酸の占める割合は90mol%以上であることが好ましい。90mol%以下では、十分に物性を達成することが困難となる。
【0022】
また、本発明によって示される繊維に用いられる共重合ポリエステルの酸成分にはテレフタル酸と、4,4’−ジカルボン酸以外の成分が使用されていてもよい。
【0023】
例えば、ジカルボン酸としては、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、 テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、1,3ーシクロブタンジカルボン酸、1,3ーシクロペンタンジカルボン酸、1,2ーシクロヘキサンジカルボン酸、1,3ーシクロヘキサンジカルボン酸、1,4ーシクロヘキサンジカルボン酸、2,5ーノルボルナンジカルボン酸、ダイマー酸などに例示される飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などに例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5ー(アルカリ金属)スルホイソフタル酸、ジフェニン酸、1,3ーナフタレンジカルボン酸、1,4ーナフタレンジカルボン酸、1,5ーナフタレンジカルボン酸、2,6ーナフタレンジカルボン酸、2,7ーナフタレンジカルボン酸、4、4’ービフェニルジカルボン酸、4、4’ービフェニルスルホンジカルボン酸、4、4’ービフェニルエーテルジカルボン酸、1,2ービス(フェノキシ)エタンーp,p’ージカルボン酸、パモイン酸、アントラセンジカルボン酸などに例示される芳香族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0024】
これらのジカルボン酸のうちテレフタル酸およびナフタレンジカルボン酸とくに2,6ーナフタレンジカルボン酸が、得られるポリエステルの物性等の点で好ましく、必要に応じて他のジカルボン酸を構成成分とする。
【0025】
これらジカルボン酸以外の多価カルボン酸として、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3、4、3’、4’ービフェニルテトラカルボン酸、およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0026】
本発明によって示される繊維に用いられる共重合ポリエステルのグリコール成分には任意のグリコールを用いることができる。
【0027】
例えば、グリコールとしてはエチレングリコール、1、2ープロピレングリコール、1、3ープロピレングリコール、ジエチレングリ コール、トリエチレングリコール、1、2ーブチレングリコール、1、3ーブチレングリコール、2、3ーブチレングリコール、1,4ーブチレングリコール、1、5ーペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6ーヘキサンジオー ル、1,2ーシクロヘキサンジオール、1,3ーシクロヘキサンジオール、1,4ーシクロヘキサンジオール、1,2ーシクロヘキサンジメタノール、1,3ーシクロヘキサンジメタノール、1,4ーシクロヘキサンジメタノール、1,4ーシクロヘキサンジエタノール、1,10ーデカメチレングリコール、1、12ードデカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどに例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4, 4’ージヒドロキシビスフェノール、1,4ービス(βーヒドロキシエトキシ)ベン ゼン、1,4ービス(βーヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1、2ービス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、ビスフェノールC、2,5ーナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加したグリコール、などに例示される芳香族グリコールが挙げられる。
【0028】
これらグリコール以外の多価アルコールとして、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロール、ヘキサントリオールなどが挙げられる。
【0029】
さらに、より簡単に配向をそろえることが可能となるため、これらのグリコールのうち、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール,1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5‐ペンタンジオール,1,6−ヘキサンジオール,ネオペンチルグリコール,1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
加工性の点から、その中でも特に、エチレングリコール,1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコールを用いることが好ましい。
また、それ以外のヒドロキシカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体を共重合しても構わない。
【0030】
例えば、ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、3ーヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、pー( 2ーヒドロキシエトキシ)安息香酸、4ーヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0031】
多価カルボン酸もしくはヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、これらのアルキルエステル、酸クロライド、酸無水物などが挙げられる。
【0032】
本発明において、剛直な4,4’−ビスベンゾエートユニットはメソゲン基としての役割を果たしていると考えられる。このため、該ポリエステル中の4,4’−ビスベンゾエートユニットは、全ポリエステルに対して40モル%以上であることが好ましい。4,4’ビスベンゾエートユニットが40モル%以下であると、液晶性が不十分なために、分子の配向が進まず、溶融紡糸後に十分な物性を得ることが困難となる。
【0033】
また、該ポリエステル中の4,4’−ビスベンゾエートユニットは、全ポリエステルに対して75モル%以下であることが好ましい。4,4’−ビスベンゾエートユニットが75モル%以上であると、分子の剛直性が高すぎるために、溶融吐出時の粘度変動が大きくなりすぎ加工することが困難になる。
【0034】
紡糸時の剪断速度は高いほうが物性の向上が見込まれる。これは紡糸時の剪断によって、繊維内での構造形成が進むためである。しかし、紡糸時の剪断応力が高すぎると、剪断による粘度低下が大きく、また、メルトフラクチャーなどの不安定挙動を誘発してしまう。
【0035】
紡糸時のドラフトは、高いほうが物性の向上が見込まれる。これは、紡糸時の伸長流動によって、繊維内での構造形成が行われるためである。ところが、この紡糸ドラフトがあまりに高すぎると、ドローレゾナンスなどの不安定挙動を誘発してしまい、均質な繊維を得ることができない。
【0036】
紡糸時の不安定な挙動を抑えつつ、高性能の繊維を生産性良く得るために、特殊な形状の紡糸口金を用い、また、紡糸口金下で保温筒により糸条を加熱し、剪断速度と紡糸ドラフトのコントロールを行い、これらの繊維を得る条件を発見した。
【0037】
該ポリエステルは溶融され、紡糸口金から吐出される。紡糸口金の温度は使用するポリマーの共重合率、固有粘度によっても変化するが、250℃〜350℃程度が好ましい。更に好ましくは300℃か〜320℃程度が好ましい。口金温度が250℃よりも低いと、溶融ポリマーの粘度が高くなりすぎて紡糸困難となる。紡糸口金温度が350℃以上になると、ポリマーの劣化速度が速くなり、物性が下がってくる傾向が見られる。溶融状態で押出された糸条は巻取りまでの間に冷却固化される。紡糸時のノズル剪断速度のコントロールが必要である。生産性を上げるためには剪断速度が早いことが好ましいが、剪断速度が1000を超えると、メルトフラクチャーが起こり、紡糸困難となる。剪断速度のコントロールのために、紡糸口金Nzの孔径をコントロールすることが必要である。
【0038】
糸条の変形速度は等方性の融液が擬似液晶に転移するのに充分な速度でなくてはならない。このために必要な紡糸速度はポリマーの組成、重合度、吐出剪断速度によって異なるが、通常200m/min以上となる。より好ましくは400m/min以上で紡糸することによって目的の物性の繊維が得やすくなる。ただし、2000m/min以上ではドローレゾナンスが起こり紡糸が困難になる。
【0039】
このような条件で巻き取られた繊維は既に延伸の必要がなく、充分な強度と高弾性率、更には低収縮率を有している。
【0040】
【実施例】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの具体例により限定されるものではない。
【0041】
ポリマー、及び繊維の諸物性は下記方法によって測定した。
【0042】
(強度、初期弾性率の測定方法)
20℃、65%RHで定速伸張型の引っ張り試験機を使用し、試料長200mmの試料に繊度(dtex)の1/33の初荷重をかけ、200mm/minの引張り速度で引っ張ったときの最大点応力を強度とする。また、初期弾性率は荷重−伸張曲線の原点からの立ち上がりを直線で延長し、試料を10%伸張したのに相当する位置での応力とする。
【0043】
(乾熱収縮率の測定方法)
試料の繊度(dtex)の1/33の荷重をかけて、試料の長さL1を測定する。この試料を無荷重下、160℃で30min処理後室温で放冷する。この試料を前述と同じ荷重をかけて試料長L2を測定して以下の式(3)を用いて求めた。
S= (L1−L2)/L1 ×100 (3)
【0044】
(還元粘度の測定方法)
得られた共重合ポリエステルを、ポリマー濃度4g/lでフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタンの6/4(重量比)混合溶媒に80〜100℃で数時間かけ溶解し、ウベローデ粘度計を用いて、温度30℃で測定した。
【0045】
(動的粘弾性の測定方法)
オリエンテック社製レオバイブロンを用いて、室温から250度までの温度走査法により測定を行い周波数3.5Hzでのtanδピークを測定した。高温側のtanδピークトップの値と低温側tanδピークトップの値を用いて以下の計算式を用いてtanδ比を求めた。
tanδ比 = (高温側ピークトップの値) / (低温側ピークトップの値)
【0046】
(実施例1〜4)
テレフタル酸ジメチル187部と、4,4’−ビフェニルジカルボン酸318部にエチレングリコール263部を用いて常法に従いエステル化反応を行った。ついで常法に従い重縮合反応を行った。上述のポリマーを210℃で48時間固相重合しIV=1.23の固相重合チップを得た。このチップをエクストルーダー型紡糸機で紡糸温度310℃、φ6.2mmの紡糸口金を用いて紡糸した。この際フィルターとしては1000meshの金属織物を用いた。口金から吐出した糸を長さ80cm、内径5cmの加熱筒で除冷した後、一定の引き取り速度で引き取った。この糸を210℃のオーブン中にて熱処理を行った。表1に引き取り速度と、得られた繊維の物性を示す。
【0047】
(比較例1)
テレフタル酸ジメチル505部とエチレングリコール320部を用いて常法に従いエステル化反応を行った。ついで常法に従い重縮合反応を行った。上述のポリマーを210℃で48時間固相重合を行いIV=1.01の固相重合チップを得た。このチップをエクストルーダー型紡糸機で紡糸温度310℃にて紡糸した。この際フィルターとしては1000meshの金属織物を用い、口金は6.5mmφの丸孔を用いた。口金から吐出した糸を長さ80cm、内径5cmの加熱筒中で除冷した後、一定の引取り速度で引取った。この意図を210℃のオーブン中にて熱処理を行った。表1に引取り速度と得られた繊維の物性を示す。
【0048】
(比較例2)
テレフタル酸ジメチル375部と、4,4’−ジフェニルカルボン酸130部にエチレングリコール297部を用いて常法に従いエステル化反応を行った。ついで常法に従い重縮合反応を行った。上述のポリマーを210℃で48時間固相重合を行いIV=1.12の固相重合チップを得た。このチップをエクストルーダー型紡糸機で紡糸温度310℃にて紡糸した。この際フィルターとしては1000meshの金属織物を用い、口金は6.5mmφの丸孔を用いた。口金から吐出した糸を長さ80cm、内径5cmの加熱筒中で除冷した後、800m/minの引取り速度で引取った。表1に得られた繊維の物性を示す。この繊維は目標の物性を満たさなかった。
【0049】
(比較例3)
テレフタル酸ジメチル94部と、4,4’−ジフェニルカルボン酸521部にエチレングリコール297部を用いて常法に従いエステル化反応を行った。ついで常法に従い重縮合反応を行った。上述のポリマーを210℃で48時間固相重合を行いIV=0.88の固相重合チップを得た。このチップをエクストルーダー型紡糸機で紡糸温度310℃にて紡糸しようとしたが、押し出しが困難であり、繊維化することができなかった。
【0050】
(比較例4)
テレフタル酸ジメチル187部と4,4’ジフェニルカルボン酸ジメチル318部にエチレングリコール263部を用いて常法に従いエステル化反応を行った。ついで常法に従い重縮合反応を行った。上述のチップを210℃で48時間固相重合を行いIV=1.12の固相重合チップを得た。このチップをエクストルーダー型紡糸機で紡糸温度310℃にて紡糸した。この際フィルターとしては1000meshの金属織物を用い、口金は0.8mmφの丸孔を用いた。口金から吐出した糸を長さ80cm、内径5cmの加熱筒中で除冷した後、引取り速度400m/minで引取った。表1に得られた繊維の物性を示す。強度、弾性率の面で目標値を達成しなかった。
【0051】
【表1】
Figure 2004300622
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、高強度・高弾性率と低収縮率の両特性を兼ね備えたポリエステル系繊維が提出でき、殊にスクリーン用布帛等の材料として成形加工時および使用時の熱寸法安定性の優れた強化材料が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の繊維におけるtanδチャートを示す。

Claims (6)

  1. 主たる酸成分がテレフタル酸と4,4’−ビフェニルジカルボン酸からなるポリエステル共重合体の繊維であって、下記(1)〜(3)を満足すことを特徴とする共重合ポリエステル繊維。
    (1)強度1GPa以上
    (2)弾性率40GPa以上
    (3)160℃での乾熱収縮率が1%以下
  2. 3.5Hzでの動的粘弾性測定を行った際、50℃〜150℃に現れる2つのtanδピークのうち、高温側のピーク強度が、低温側のピーク強度に比べて低いことを特徴とする請求項1に記載の共重合ポリエステル繊維。
  3. 単糸の繊度が50dtex以上、1000dtex以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の共重合ポリエステル繊維。
  4. ポリエステル中の全酸成分に対して、テレフタル酸と4,4’ビフェニルジカルボン酸の量が90mol%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の共重合ポリエステル繊維。
  5. ポリエステル中のグリコール成分が下記式1をであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の共重合ポリエステル繊維。
    HO−A−OH (式1)
    (ただし、Aは炭素数2〜6のアルキレン基)
  6. ポリエステル中の全酸成分に対して4,4’−ビフェニルジカルボン酸の占める割合が40〜75mol%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の共重合ポリエステル繊維。
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