JP2004297910A - 振動型駆動装置 - Google Patents

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豪 柴崎
Takashi Maeno
隆司 前野
Nobuyuki Kojima
信行 小島
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Abstract

【課題】使用環境や負荷変動等に影響されないで、安定した出力、特性を得られる振動型駆動装置を提供する。
【解決手段】振動子1に2つの異なる振動モードを励起し、これら振動モードの組み合わせにより、振動子1に形成される接触部P1、P2に楕円運動を発生させ、前記接触部P1、P2に加圧接触される被駆動体との間に相対運動を発生させる振動型駆動装置であって、前記2つの振動モード同士は振動子1の長手軸に直交する対称面Sに対して略鏡面対称である。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波等の振動波により駆動力を得る振動型駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、振動型駆動装置の一例である超音波リニアモータとしては、図7に示すように、振動体10に図中左右方向の伸縮振動及び図中(b)で示すような曲げ振動の振動モードを励起し、これらの振動を合成した運動を発生させることで、振動子9の被駆動体との接触点10a、10bに楕円運動を励起し、接触点10a、10bに押圧接触される被駆動体を摩擦力により駆動するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−177767号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来例では、伸縮振動と曲げ振動という形態の異なる2つの振動モードが用いられる。このように変形形状が異なるため、負荷変動や環境変動による振動モードの共振周波数変化の敏感度が異なる。そのため、2つの振動モードの周波数差ΔFに変化が生じてしまうことがある。
【0005】
この結果、2つの振動モードの重ねあわせにより生成している、振動子の接触部の楕円運動が所望の形態にならず、被駆動体の送り力、速度が低下してしまうという問題が生じることがある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る振動型駆動装置の構成は、振動子に2つの異なる振動モードを励振し、これらの組み合わせにより振動子に形成される接触部に楕円運動を発生させ、前記接触部に加圧接触される被駆動体との間に相対運動を発生させる振動型駆動装置であって、前記2つの振動モード同士は振動子の長手軸に直交する対称面に対して略鏡面対称であることを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
振動型駆動装置において、被駆動体の送り力及び速度を低下しないように、振動子の接触部の楕円運動を適正にするためには、振動子に励起される2つの振動モードの周波数差ΔFが生じないようにするか、又はΔFを低減することが必要とされる。
【0008】
周波数差ΔFが生じない、又はΔFを低減するためには、次に示す2つの条件のうちいずれかが満たされていれば良い。
【0009】
(1)2つの振動モードを比較した時に振動子の振動成分の大きさが一致する。
【0010】
(2)2つの振動モードが、ある対称面に対して略鏡面対称である。
【0011】
上記(1)の条件を満たす場合は、例えば振動子が被駆動体からの反力を受けるとき、この反力の影響は2つの振動モードに等しく作用する。これによって、使用環境や負荷等、振動子の使用環境に関わらず、2つの振動モードの周波数差ΔFは殆ど変化しない。
【0012】
上記(2)の条件を満たす場合も同様に、振動子が被駆動体から反力を受けるときを考える。振動子が被駆動体と接触する部位は、一般的に偶数でかつ対称面に対して対称位置に対になって形成される。被駆動体からの反力は対になっている接触部位に同じ量で作用するため、結果として2つの振動モードは同様の作用を受けることになる。これによって、振動モードの周波数の変化は同様の傾向となるので周波数差ΔFの変化は発生しない。
【0013】
すなわち、上記した条件(1)又は(2)によって、周波数差ΔFが変化しなければ、略一致した周波数の振動モードの場合では反力などを受けてもΔFが生じないことになる。
【0014】
本発明は上記(1)及び(2)のいずれかの条件を満たすものである。
【0015】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本実施の形態における例示が本発明を限定することはない。
【0016】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係る第1の実施の形態について図1から図3を参照して説明する。
【0017】
図1は、本第1の実施の形態に係る振動型駆動装置に用いられる振動子1の斜視図である。
【0018】
図1において、振動子1は略直方体形状であり、金属材料により形成される振動体2と、前記振動体2の底面に配置され前記振動体2と一体化された2枚の圧電素子3−1、3−2とを有する。なお、前記振動子1の形状は、本第1の実施の形態に限定されることなく、その他の直方体形状、板形状、棒形状などを適用することもできる。
【0019】
前記振動体2は、例えば、鉄系金属で形成され、その寸法は図中X軸方向に30mm、Z方向に8mm、Y方向に10mmである。
【0020】
前記振動体2の上面、すなわち前記圧電素子3−1、3−2に対向する面には、2箇所に突起部P1、P2が形成される。前記突起部P1、P2の上端面は不図示の被駆動体と加圧接触する。前記突起部P1、P2は摩擦力により被駆動体との相対移動を行なうため、前記被駆動体との摩擦力の確保と磨耗耐久性を満たすように、その上端面には摩擦材が形成されている。
【0021】
前記振動子1は図中記号Sで示す対称面Sに対して概略対称形状に形成される。振動体2の上面には、前記対称面Sに対して略対称になるように段差が設けられており、その段差上には前記対称面Sに対して略対称になるように前記突起部P1、P2が配置される。
【0022】
また、前記対称面Sに対して略対称となる位置に、非対称部T1及びT2が形成されている。前記非対称部T1は、前記振動子1の底面側で長手方向一方端を切り欠くように形成される。前記非対称部T2は、前記振動子1の底面側で長手方向他方端を突出させるように形成される。
【0023】
前記2枚の圧電素子3−1と3−2には、両端面に電極が形成されており、これら電極を用いて予め分極処理が行なわれている。前記振動体2をコモン電位として、圧電素子3−1、3−2の露出面の電極に各々交流電位を与えることで、振動子1は交流電位の周波数に対応する機械振動を発生する。
【0024】
図2は、前記振動子1の固有振動モードであるMODE−A及びMODE−Bの変形形状を示す。
【0025】
本第1の実施の形態では、周波数が略一致する2つの異なる振動モード(図2に示すMODE−A及びMODE−B)によって前記振動子1を励振する。そして、これらの2つの振動モードを組み合わせることにより前記接触部P1、P2に楕円運動を発生させる。
【0026】
MODE−Aは上記した2枚の圧電素子3−1、3−2のうちいずれか一方により励振され、MODE−Bは2枚の圧電素子3−1、3−2のうちいずれか他方により励振される。MODE−A及びMODE−Bは、略一致する周波数によって励振されると、図2に示すように、対称面Sに対して互いに略鏡面対称な変形形状となる。これは、振動子1に非対称部T1、T2が形成されているためである。
【0027】
MODE−A及びMODE−Bは、共にXY面に対して面外曲げの変形成分と軸に対して伸縮の変形成分とを有する。
【0028】
また、MODE−A及びMODE−Bが有する面外曲げの変形成分の変形量は符号を反転させることで互いに略一致する。また、MODE−A及びMODE−Bの伸縮の変形成分は互いに略一致する。
【0029】
これら2つの振動モードMODE−A及びMODE−Bを励振させるとき、時間的な位相をずらすことで前記2箇所の突起部P1、P2の先端は略楕円軌跡を描く。
【0030】
そして、突起部P1、P2の楕円運動により、突起部P1、P2に加圧接触される被駆動体が振動子1と相対移動運動する。
【0031】
駆動に用いる振動モードは共振周波数を有する。MODE−Aに対応する共振周波数をFAとし、MODE−Bに対応する共振周波数をFBとする。これら共振周波数FA、FBは略一致している。
【0032】
振動子1は環境温度、被駆動体との摩擦力を確保するための加圧力、被駆動体との相対運動に対する外部からの負荷等にさらされる。そのため、共振周波数FA、FBは常に変化する。
【0033】
ここで、MODE−AとMODE−Bを比較すると、対称面Sに対して対称位置にある点の振動成分の大きさが略一致する。振動成分とは振動モードによる変形を任意の直交座標系に分解して表現した値であり、個別のベクトル成分である。
【0034】
このような構成によれば、MODE−AとMODE−Bを比較したときに、対称面Sに対して鏡面対称となる位置の振動成分が略等しいため、負荷等環境変動に対する敏感度は等しいことになる。このことから、MODE−AとMODE−Bの共振周波数FA、FBは略一致した変化となる。
【0035】
この結果、上記した条件(1)及び(2)のいずれかにより、これら振動モードにより生成する突起部P1、P2の楕円運動は環境変化等の影響を受けず、常に安定した駆動特性を実現することができる。
【0036】
図3は、本第1の実施の形態のうち上記した以外の形態を示す振動子1の斜視図である。
【0037】
図3において、対称面Sに対して略対称位置に非対称部T1及びT2が形成されている。非対称部T1は振動体2の側面に長手軸方向一方側に設けられた凹形状であり、非対称部T2は振動体2の側面に長手軸方向他方側に設けられた凸形状である。このような構成によれば図1に示した振動子と同様の効果が得られる。
【0038】
本第1の実施の形態において、振動子1の形態は上記した形態に限定されない。例えば、非対称部はT1のみでも同様の効果が得られる。また、非対称部は形状によるものではなく密度や弾性係数の異なる材料を用いるものとしても同様の効果が得られる。
【0039】
(第2の実施の形態)
以下、本発明に係る第2の実施の形態について図4を参照して説明する。
【0040】
上記した第1の実施の形態と同様の構成については説明を省略し、本第2の実施の形態に特徴的な部分について説明する。
【0041】
図4は、本第2の実施の形態に係る振動子1の平面図である。
【0042】
図4において、振動子1の基本形状は対称面Sに対して略対称である。そして、対称面Sに対して略対称となる位置に非対称部T1、T2が形成されている。前記非対称部T1は、前記振動子1の底面側で長手方向一方端を切り欠くように形成される。前記非対称部T2は、前記振動子1の底面側で長手方向他方端を突出させるように形成される。
【0043】
振動子1の底面部には、一つの部材からなる圧電素子3が配置される。圧電素子3が露出する面には、図5に示すように2つの電極4−1、4−2が形成されている。これらと対応する圧電素子部は独立した圧電素子領域として作用する。
【0044】
本第2の実施の形態に係る振動モードであるMODE−A及びMODE−Bを図6に示す。
【0045】
MODE−AとMODE−Bとは対称面Sに対して略鏡面対称の関係となっている。各々のモードの振動成分は略一致している。このため、図1に示す振動子と同様にMODE−AとMODE−Bに対応する共振周波数FA、FBは、環境変動に対して略一致する変化を示す。
【0046】
この結果、これら振動モードにより生成する突起部の楕円運動は環境変化の影響を受けず、常に安定した駆動特性を実現することができる。
【0047】
さらに、以上説明した各実施の形態は、以下に示す各発明を実施した場合の一例でもあり、下記の各発明は上記各実施の形態に様々な変更や改良が加えられて実施されるものである。
【0048】
〔発明1〕 周波数が略一致する2つの異なる振動モードを電気−機械エネルギー変換により振動体に励起し、前記2つの振動モードの組み合わせにより2箇所以上に設けられた接触部に円又は楕円運動を発生させる振動子と、前記接触部に加圧接触し前記振動子からの振動を受けることによって前記振動子に対して相対的に運動する被駆動体と、を有する振動型駆動装置であって、前記2つの振動モード同士は、前記振動子の長手軸に直交する平面に対して略鏡面対称であることを特徴とする振動型駆動装置。
【0049】
上記した発明1によれば、前記2つの振動モード同士は前記振動子の長手軸に直交する平面に対して略鏡面対称であり、使用環境の変化に対して同様の周波数変化を示す。
【0050】
なお、上記した実施の形態に示したMODE−A及びMODE−Bは発明1における2つの異なる振動モードの一形態であり、上記した実施の形態に示した突起部P1、P2は発明1における接触部の一形態であり、また、上記した実施の形態に示した対称面Sは発明1における振動子1に直交する平面の一形態である。
【0051】
〔発明2〕 上記発明1において、前記振動モードは、前記振動子の長手軸方向に伸縮する振動成分と、長手軸に対する曲げ変形の振動成分とを有することを特徴とする振動型駆動装置。
【0052】
上記した発明2によれば、振動子の長手軸方向に伸縮する成分の変形量は略対称となり、振動子の長手軸に対する曲げ変形の成分の変形量は符号を反転させることで互いに一致するため、効果的に楕円運動を発生することができる。
【0053】
〔発明3〕 上記発明1又は2において、前記振動子は長手軸に直交する平面に対して略対称となる基本形状であり、前記振動子の対称形状を阻害する1以上の非対称部位を有することを特徴とする振動型駆動装置。
【0054】
上記した発明3によれば、振動子は長手軸に直交する平面に対して略対称となる基本形状であり、対称形状を阻害する形状を併せ持つことで上記振動モードを発生することができる。
【0055】
〔発明4〕 上記発明3において、前記非対称部位は、形状によるもの、あるいは密度や弾性率等の異なる材料によるものにより形成されることを特徴とする振動型駆動装置。
【0056】
上記した発明4によれば、非対称部位は形状、あるいは密度や弾性率等の異なる材料により形成することができる。
【0057】
〔発明5〕 上記発明1又は2において、前記振動子は長手軸に直交する平面に対して略対称となる基本形状であり、当該平面に対して略対称となる位置に、前記振動子の対称形状を阻害する非対称部位を有することを特徴とする振動型駆動装置。
【0058】
上記した発明5によれば、振動子の長手軸に直交する平面に対する対称位置に対にして対称形状を阻害する非対称部位を併せ持つことで効果が得られる。
【0059】
〔発明6〕 上記発明5において、前記非対称部位は、前記振動子に形成された凸形状、及び前記振動子の長手軸に直交する平面に対して前記凸形状と略対称となる位置で前記振動子に形成された凹形状を有することを特徴とする振動型駆動装置。
【0060】
上記した発明6によれば、振動子の長手軸に直交する平面に対する対称位置に第1及び第2の非対称部位を形成し、第1の対称部位が凸形状であるとき第2の対称部位は凹形状とすることで上記振動モードを確実に発生すると共に初期の周波数差ΔFを小さくすることができる。
【0061】
〔発明7〕 上記発明1から6のいずれかにおいて、前記振動子の長手軸に直交する平面に略対称となるように、電気−機械エネルギー変換により前記振動体に振動を励起させる電気−機械エネルギー変換素子領域を有し、これら複数の電気−機械エネルギー変換素子領域により前記2つの振動モードを励振することを特徴とする振動型駆動装置。
【0062】
上記した発明7によれば、上記2つのモードを効果的に励振することができる。例えば、上記した実施の形態のように、電気−機械エネルギー変換素子領域を2つ設け、一方の領域で一方の振動モードを励振し、他方の領域で他方の振動モードを励振することができる。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したように、前記2つのモード同士は振動子の長手軸に直交する対称面に対して略鏡面対称であることで、被駆動体との加圧力、温度変化、駆動時の負荷等に係らず一定した楕円運動の生成が可能となる。この結果、安定して出力と効率を確保しうる振動型駆動装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る振動型駆動装置における振動子の斜視図である。
【図2】図1において振動モードを示す模式図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る振動型駆動装置における振動子の斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る振動型駆動装置における振動子の平面図である。
【図5】図4において圧電素子を示す図である。
【図6】図4において振動モードを示す模式図である。
【図7】従来例の振動型駆動装置を説明するための平面図(a)、及びその振動モードを示す模式図(b)である。
【符号の説明】
1 振動子
2 振動体
3 圧電素子
4 電極
9 振動子
10 振動体
11 圧電素子
P 突起部
T 非対称部

Claims (1)

  1. 振動子に2つの異なる振動モードを励振し、これらの組み合わせにより振動子に形成される接触部に楕円運動を発生させ、前記接触部に加圧接触される被駆動体との間に相対運動を発生させる振動型駆動装置であって、前記2つの振動モード同士は振動子の長手軸に直交する対称面に対して略鏡面対称であることを特徴とする振動型駆動装置。
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