JP2004288987A - セラミック素子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】キャリアフィルム32の上面にグリーンシート34を形成した後、そのグリーンシート34にスルーホールを形成する前に、フィルム32及びシート34を加熱炉36内で加熱して熱収縮させる。これにより、スルーホールを形成した後の工程においてフィルム32及びシート34が加熱されても、フィルム32及びシート34の更なる熱収縮が殆ど無くなる。したがって、スルーホールの形状が歪んだり、スルーホールの形成位置がずれたりするようなことを防止することができ、セラミック層の一端面側と他端面側との間の電気的な接続を、スルーホールを介して確実に行うことが可能になる。
【選択図】 図4
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層型圧電素子や圧電センサ等のセラミック素子の製造方法に関し、より詳細には、スルーホールを介してセラミック層の一端面側と他端面側との間の電気的な接続がなされたセラミック素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、セラミック素子の1つである積層型圧電素子の技術開発が盛んに行われている。この種の積層型圧電素子は、例えば、下記の特許文献1に開示されている。
【0003】
この特許文献1記載の積層型圧電素子は、多数の個別電極をパターン形成した圧電体層と、コモン電極をパターン形成した圧電体層とを交互に積層し、積層型圧電素子の厚さ方向に整列した各個別電極を、圧電体層に形成したスルーホールを介して導電部材により接続したものである。このような積層型圧電素子においては、所定の個別電極とコモン電極との間に電圧を印加することで、圧電体層において当該所定の個別電極に対応する活性部(圧電効果により歪みが生じる部分)を選択的に変位させることができる。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−254634号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述したような積層型圧電素子をはじめとするセラミック素子においては、素子自体の小型化や素子に形成される電極等の高集積化に伴い、セラミック層の一端面側と他端面側との間においてスルーホールを介した電気的な接続を確実に達成し得る技術が望まれていた。
【0006】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、スルーホールを介してセラミック層の一端面側と他端面側との間の電気的な接続が確実になされたセラミック素子の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係るセラミック素子の製造方法は、セラミック層に形成されたスルーホールを介してセラミック層の一端面側と他端面側との間の電気的な接続がなされたセラミック素子の製造方法であって、保持部材の表面に、セラミック層となるセラミック素材層を形成する工程と、保持部材及びセラミック素材層を同時に熱収縮させる工程と、熱収縮されたセラミック素材層にスルーホールを形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0008】
このセラミック素子の製造方法においては、保持部材の表面にセラミック素材層を形成した後、そのセラミック素材層にスルーホールを形成する前に、保持部材及びセラミック素材層を熱収縮させる。これにより、スルーホールを形成した後の工程において保持部材及びセラミック層が加熱されても、保持部材及びセラミック層の更なる熱収縮が殆ど無くなる。したがって、スルーホールの形状が歪んだり、スルーホールの形成位置がずれたりするようなことを防止することができ、セラミック層の一端面側と他端面側との間の電気的な接続を、スルーホールを介して確実に行うことが可能になる。
【0009】
ここで、セラミック素子とは、セラミック材料により形成されたセラミック層を有する素子を意味し、積層型圧電素子、圧電センサ、コンデンサ、インダクタ、トランス、及びフィルタ、並びにこれらを複合形成したもの等がある。
【0010】
また、スルーホールを形成した後に、セラミック素材層にペースト状の導電材料を印刷する工程と、セラミック素材層に印刷された導電材料を所定の乾燥温度で乾燥させる工程とを備え、熱収縮させる工程では、乾燥温度より高い温度で保持部材及びセラミック素材層を熱収縮させることが好ましい。このように、導電材料を乾燥させる際の所定の乾燥温度より高い温度で保持部材及びセラミック素材層を熱収縮させておけば、導電材料を乾燥させた際にスルーホールの形状が歪んだり、スルーホールの形成位置がずれたりするようなことを防止することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。最初に、本実施形態に係るセラミック素子の製造方法によって製造されるセラミック素子について説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係るセラミック素子は積層型圧電素子1であり、この積層型圧電素子1は、個別電極2が形成された圧電体層(セラミック層)3と、コモン電極4が形成された圧電体層(セラミック層)5とを4枚ずつ交互に積層し、さらに、端子電極が形成される圧電体層7とベースとなる圧電体層9とで上下から挟み込むようにして構成されている。
【0013】
なお、各圧電シート3,5,7,9は、チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とし、「10mm×30mm,厚さ30μm」の長方形薄板状に形成されている。また、個別電極2及びコモン電極4は、銀及びパラジウムを主成分とし、スクリーン印刷によりパターン形成されたものである。これは、以下に述べる各電極についても同様である。
【0014】
各圧電体層3の上面には、多数の個別電極2がマトリックス状に配置されている。各個別電極2は、互いに所定の間隔がとられることで、電気的な独立が達成され、且つ互いの振動による影響が防止されている。そして、各個別電極2は、その外方側端部の直下において圧電体層3に形成されたスルーホール13内の導電部材に接続されている(最も下側の圧電体層3を除く)。
【0015】
さらに、圧電体層3の上面の縁部には、上下に位置する圧電体層5のコモン電極4,4を電気的に接続するための中間電極6が形成されている。この中間電極6は、その直下において圧電体層3に形成されたスルーホール8内の導電部材に接続されている。
【0016】
また、各圧電体層5の上面には、積層型圧電素子1の厚さ方向において圧電体層3の各個別電極2の外方側端部に対向するように中間電極16が形成されている(以下、「積層型圧電素子1の厚さ方向」、すなわち「圧電体層3,5の厚さ方向」を単に「厚さ方向」という)。各中間電極16は、その直下において圧電体層5に形成されたスルーホール13内の導電部材に接続されている。
【0017】
さらに、圧電体層5の上面には、長方形状のコモン電極4が形成されている。このコモン電極4は、厚さ方向から見て、圧電体層3における各個別電極2の外方側端部以外の部分と重なるように、ベタ状に形成されている。なお、コモン電極4は、厚さ方向において圧電体層3の中間電極6に対向するよう圧電体層5に形成されたスルーホール8内の導電部材に接続されている。
【0018】
また、最上層の圧電体層7の上面には、厚さ方向において圧電体層5の各中間電極16に対向するよう外部電極17が形成され、厚さ方向において圧電体層3の中間電極6に対向するよう外部電極18が形成されている。そして、各外部電極17は、その直下において圧電体層7に形成されたスルーホール13内の導電部材に接続され、外部電極18は、その直下において圧電体層7に形成されたスルーホール8内の導電部材に接続されている。また、最下層の圧電体層9の上面には、長方形状のコモン電極19が、圧電体層9の外周部から所定の間隔をとってベタ状に形成されている。
【0019】
なお、最上層の各外部電極17,18は、駆動電源に電気的に接続するためのリード線を取り付けるべく銀の焼付電極が施され、積層型圧電素子1の端子電極として機能する。
【0020】
以上のような電極パターンが形成された圧電体層3,5,7,9を積層することで、最上層の各外部電極17に対しては、厚さ方向において4つの個別電極2が中間電極16を介在させて整列し、整列した各電極2,16,17は、スルーホール13内の導電部材により電気的に接続されることになる。より詳細には、図2に示すように、厚さ方向において互いに隣り合う個別電極2,2は、中間電極16を介在させてスルーホール13内の導電部材14により電気的に接続されることになる。
【0021】
一方、最上層の外部電極18に対しては、厚さ方向において4つのコモン電極4と最下層のコモン電極19とが中間電極6を介在させて整列し、整列した各電極4,6,18,19は、スルーホール8内の導電部材14により電気的に接続されることになる。
【0022】
このような積層型圧電素子1における電気的接続により、所定の外部電極17と外部電極18との間に電圧を印加すると、所定の外部電極17下に整列する個別電極2とコモン電極4,19との間に電圧が印加されることになる。これにより、圧電体層3,5においては、図2に示すように、個別電極2の外方側端部以外の部分とコモン電極4,19とで挟まれる部分に電界が生じ、当該部分が活性部21として変位することになる。したがって、電圧を印加する外部電極17を選択することで、マトリックス状に配置された個別電極2に対応する活性部21のうち、選択した外部電極17下に整列する活性部21を厚さ方向に変位させることができる。このような積層型圧電素子1は、マイクロポンプの弁制御等、微小変位を必要とする種々の装置の駆動源に適用される。
【0023】
次に、本実施形態に係るセラミック素子の製造方法として、上述した積層型圧電素子1の製造方法について説明する。
【0024】
まず、図3に示すように、チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする圧電材料に有機バインダ、有機溶剤等を混合してペーストを作製し、このペーストをタンク31内に貯留する。そして、キャリアフィルム(保持部材)32をリール33から他のリール33へと巻き取る間に、ドクターブレード法によって、圧電体層3,5,7,9となるグリーンシート(セラミック素材層)34をキャリアフィルム32の上面に形成する(シート成形工程)。なお、キャリアフィルム32としては、厚さ54μm,幅100mmの透明PETフィルムを用いた。また、キャリアフィルム32の上面に形成されたグリーンシート34の厚さは40μmである。
【0025】
シート成形工程の後、図4に示すように、グリーンシート34が形成されたキャリアフィルム32をリール33から他のリール33へと巻き取る間に、加熱炉36を用いてキャリアフィルム32及びグリーンシート34を同時に加熱し、これらを強制収縮させる(熱処理工程)。これにより、次工程以降におけるキャリアフィルム32及びグリーンシート34の熱収縮を防止することができ、スルーホールの形成や電極のパターン形成を位置精度良く行うことが可能になる。
【0026】
熱処理工程の後、図5に示すように、グリーンシート34が形成されたキャリアフィルム32をリール33から他のリール33へと巻き取りつつ、パンチング装置37を用いて位置基準穴を形成し、この位置基準穴を基準としてグリーンシート34の所定の位置にレーザ加工装置38を用いてスルーホール8,13(図示なし)を形成する(スルーホール形成工程)。なお、位置基準穴は、後の切断工程にて残材となるグリーンシート34の外縁部に形成したり、キャリアフィルム32の外縁部にグリーンシート34が形成されない余白部がある場合には当該余白部に形成したりすればよい。
【0027】
スルーホール形成工程の後、図6に示すように、スクリーン印刷装置39を用いて、スルーホール8,13内に対してグリーンシート34の上面側から導電ペースト(ペースト状の導電材料)の充填スクリーン印刷を行う(第1の印刷工程)。続いて、スルーホール8,13内において導電ペーストを乾燥・固化させて導電部材14を形成すべく、キャリアフィルム32及びグリーンシート34を乾燥機に入れるが(第1の乾燥工程)、この第1の乾燥工程の前に、その乾燥温度より低い温度にてキャリアフィルム32及びグリーンシート34を所定時間加熱する(加熱工程)。この加熱により導電ペーストが軟化し、スルーホール8,13内の下端部まで導電ペーストが確実に行き渡る。
【0028】
第1の乾燥工程の後、グリーンシート34上面の所定の位置に対し導電ペーストのスクリーン印刷を行う(第2の印刷工程)。続いて、キャリアフィルム32及びグリーンシート34を乾燥機に入れ、導電ペーストを乾燥・固化させて各電極2,4,17,19等を形成する(第2の乾燥工程)。なお、第1及び第2の印刷工程にて用いた導電ペーストは、所定比率の銀とパラジウムとからなる金属材料に有機バインダ、有機溶剤等を混合して作製した。
【0029】
第2の乾燥工程の後、図7に示すように、ピックアップ装置41を用いてキャリアフィルム32から所定の長さのグリーンシート34aを剥離させ、上述した積層型圧電素子1と同じ積層順序となるようにグリーンシート34aを積層し、仮圧着する(積層工程)。
【0030】
積層工程の後、加熱しながら積層方向にプレスすることで、各グリーンシート34aを熱圧着し、積層体グリーンを作製する。続いて、この積層体グリーンから所定の寸法の積層体グリーン素子を複数切り出し、切り出した積層体グリーン素子を脱脂・焼成した後、端子電極の形成・分極処理等を経て積層型圧電素子1を完成させる。
【0031】
次に、上述した熱処理工程について、さらに詳細に説明する。
【0032】
この熱処理工程においては、90℃以上150℃以下の温度でキャリアフィルム32及びグリーンシート34を熱収縮させることが好ましい。そして、熱収縮効果及び製造コストの観点から、熱処理時間は2分〜5分が好ましい。
【0033】
ここで、熱収縮させる際に90℃以上の温度が好ましい理由は、次の通りである。すなわち、上述した第1及び第2の乾燥工程においては、50℃より高く(好ましくは70℃以上)90℃より低い範囲の乾燥温度で導電ペーストの乾燥・固化が行われる。そのため、90℃以上の温度でキャリアフィルム32及びグリーンシート34を熱収縮させておけば、乾燥工程におけるキャリアフィルム32及びグリーンシート34の熱収縮を殆ど無くすことができ、当該乾燥工程においてスルーホール8,13の形状が歪んだり、位置基準穴に対するスルーホール8,13の位置がずれたりするようなことを防止することが可能になるからである。
【0034】
一方、熱収縮させる際に150℃以下の温度が好ましい理由は、次の通りである。すなわち、150℃より高い温度で加熱すると、キャリアフィルム32が大きく変形したり溶融したりするおそれがあるからである。また、グリーンシート34のバインダ成分が変質するおそれがあるからである。
【0035】
このように、シート成形工程とスルーホール形成工程との間に熱処理工程を設けることで、スルーホール形成工程以降の工程においてキャリアフィルム32及びグリーンシート34が加熱されても、キャリアフィルム32及びグリーンシート34の更なる熱収縮を殆ど無くすことができる。
【0036】
これにより、パンチング装置37により形成された位置基準穴が歪んだり、その形成位置がずれたりするようなことが防止されるため、この位置基準穴を基準としてグリーンシート34の所定の位置にスルーホール8,13を精度良く形成することが可能になる。そして、スルーホール8,13内に対する導電ペーストの充填スクリーン印刷や、グリーンシート34上面の所定の位置に対する導電ペーストのスクリーン印刷、更には、積層工程における各グリーンシート34aの積層をも精度良く行うことが可能になる。なお、グリーンシート34が形成されていないキャリアフィルム32の余白部に位置基準穴を設ける場合、熱処理工程を設けないと大きな位置ずれを生じるおそれがあることから、このような場合に熱処理工程を設けることは特に有効である。
【0037】
そして、「10mm×30mm,厚さ30μm」の圧電体層3の上面に個別電極2が300個(4行75列)形成された積層型圧電素子1を作製するに際し、熱処理工程を実施した場合と実施しなかった場合とで、積層型圧電素子1における各圧電体層3,5の相対的な積層ずれを測定した。その結果、熱処理工程を実施しなかった場合には積層ずれが50μm〜100μmであったのに対し、熱処理工程を実施した場合には積層ずれが20μm以下であった。
【0038】
また、上述した通り、スルーホール形成工程以降の工程におけるキャリアフィルム32及びグリーンシート34の熱収縮が殆ど無くなることから、レーザ加工装置38により形成されたスルーホール8,13の形状が歪むことを防止することができる。これにより、スルーホール8,13内に導電部材14を確実に形成することが可能になる。
【0039】
以上のことから、本実施形態に係るセラミック素子の製造方法によれば、シート成形工程とスルーホール形成工程との間に熱処理工程を設けることで、スルーホール8,13を介して圧電体層3,5の上面側と下面側との間の電気的な接続が確実になされた積層型圧電素子1を製造することができる。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、スルーホールを介してセラミック素材層の一端面側と他端面側との間の電気的な接続が確実になされたセラミック素子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の積層型圧電素子の分解斜視図である。
【図2】図1に示す積層型圧電素子の長手方向に直交する方向から見た拡大断面図である。
【図3】本実施形態のシート成形工程を示す概念図である。
【図4】本実施形態の熱処理工程を示す概念図である。
【図5】本実施形態のスルーホール形成工程を示す概念図である。
【図6】本実施形態の第1の印刷工程を示す概念図である。
【図7】本実施形態の積層工程を示す概念図である。
【符号の説明】
1…積層型圧電素子(セラミック素子)、3,5…圧電体層(セラミック層)、8,13…スルーホール、32…キャリアフィルム(保持部材)、34…グリーンシート(セラミック素材層)。
Claims (2)
- セラミック層に形成されたスルーホールを介して前記セラミック層の一端面側と他端面側との間の電気的な接続がなされたセラミック素子の製造方法であって、
保持部材の表面に、前記セラミック層となるセラミック素材層を形成する工程と、
前記保持部材及び前記セラミック素材層を熱収縮させる工程と、
熱収縮された前記セラミック素材層にスルーホールを形成する工程とを備えることを特徴とするセラミック素子の製造方法。 - 前記スルーホールを形成した後に、前記セラミック素材層にペースト状の導電材料を印刷する工程と、
前記セラミック素材層に印刷された導電材料を所定の乾燥温度で乾燥させる工程とを備え、
前記熱収縮させる工程では、前記乾燥温度より高い温度で前記保持部材及び前記セラミック素材層を熱収縮させることを特徴とする請求項1記載のセラミック素子の製造方法。
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