JP2004284148A - インクジェット記録用紙 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、ポリオレフィン樹脂で被覆した紙支持体に多孔質インク吸収性を設けたインクジェット記録用紙において、視感的に高い光沢感の得られるインクジェット記録用紙を提供することにある。
【解決手段】ポリオレフィン樹脂で紙の両面を被覆した支持体上に、親水性ポリマーを含む下引き層と、多孔質インク吸収層とを有するインクジェット記録用紙において、該多孔質インク吸収層を有するポリオレフィン樹脂被覆表面が、JIS B 0610で規定されるろ波最大うねり(低域カットオフ値8mm、広域カットオフ値0.8mm、基準長80mm)が1〜3μm、JIS B 0601で規定される中心線平均粗さRa(基準長2.5mm、カットオフ値0.8mm)が0.1〜0.5μmであることを特徴とするインクジェット記録用紙。
【選択図】 なし
【解決手段】ポリオレフィン樹脂で紙の両面を被覆した支持体上に、親水性ポリマーを含む下引き層と、多孔質インク吸収層とを有するインクジェット記録用紙において、該多孔質インク吸収層を有するポリオレフィン樹脂被覆表面が、JIS B 0610で規定されるろ波最大うねり(低域カットオフ値8mm、広域カットオフ値0.8mm、基準長80mm)が1〜3μm、JIS B 0601で規定される中心線平均粗さRa(基準長2.5mm、カットオフ値0.8mm)が0.1〜0.5μmであることを特徴とするインクジェット記録用紙。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリオレフィン樹脂で被覆された紙支持体上に、多孔質インク吸収層を設けた銀塩写真グレードのインクジェット記録用紙に関し、特に、ポリオレフィン樹脂層と多孔質インク吸収層の間に、親水性ポリマーからなる下引き層を設けて接着性を改善し、高い光沢性と画像鮮明性が得られるインク用インクジェット記録用紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、写真画質のインクジェット記録用紙(以下、単に記録用紙ともいう)が急速に普及している。中でも、支持体として紙の両面をポリエチレン等のポリオレフィン樹脂で被覆した支持体を用い、その上に高いインク吸収速度を有するインク吸収層を設けたインクジェット記録用紙は、プラスチックフィルムに比較し、低コストであること、その重厚感やしなやかさ、平滑性、光沢性等の面で、銀塩写真のプリントに近い高級感のあるプリントとして幅広く普及してきており、このような構成のインクジェット記録用紙も、非常に多くのものが知られている。
【0003】
特に、高光沢性の特性に対しては、従来より様々な提案がなされているが、高い光沢を有する支持体を用いることと、多孔質インク吸収層と小さな顔料粒子との組み合わせで用いることの2つが、高光沢の画像形成面を実現する主な手段である。
【0004】
上記課題に対し、例えば、表面が70%以上の光沢度を有する支持体上に、平均一次粒子径が10nm以下のシリカ粒子と水溶性樹脂からなる多孔質層を有するインクジェット記録用紙が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
このような微粒子を含有する多孔質インク吸収層を、高光沢の支持体に塗布して得られるインク吸収層には、製造する際に乾燥課程でひび割れを生じやすく、これを改良するために、ポリオレフィン樹脂支持体の表面を微粗面加工したインクジェット記録用紙が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
しかしながら、上記各特許文献に記載されたインクジェット記録用紙は、ポリオレフィン樹脂で被覆した紙支持体に、直接多孔質インク吸収層を設けたものであって、多孔質インク吸収層と支持体との接着性が必ずしも十分とはいえない。
【0007】
支持体として、ポリオレフィン樹脂で紙の両面を被覆した支持体を使用する場合には、ポリオレフィン樹脂表面は一般に疎水性であり、また、多孔質インク吸収層は水系の塗布液を塗布することにより得られるために、接着性を改善する目的でこれらの間に下引き層を易接着層として設けるのが好ましく、その様な例として、例えば、固形分の塗設量が0.5g/m2以下の下引き層を設けたポリオレフィン樹脂被覆紙を支持体として用いることで、光沢性が高く表面欠陥の改善されたインクジェット記録用紙が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0008】
また、50℃における水への溶解度60%以下の下引き層を設けることで製造時の吹きムラの発生を抑制し、光沢のある凹凸のない塗膜を有するインクジェット記録用紙が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0009】
ところで、本発明者の検討によれば、JIS Z 8741で規定される光沢度が高いものが、必ずしも視感的光沢感に優れていると一概に言い難いことが判明した。この理由は定かではないが、一方で、インク吸収層表面の写像性を表すJIS K 7105で規定するC値は、その数値が高いものほど視感的光沢感と一致する傾向がある。すなわち、インク吸収層表面の光沢度と写像性が共に高いほど、視感的な光沢感が高い傾向がある。
【0010】
一方、インク吸収層表面の75度光沢度を40%以上とし、JIS B 0610で規定されるろ波最大うねりを特定の値にすることで視感的に高い光沢感をもたらすことが記載されている(例えば、特許文献5参照。)。
【0011】
しかし、この特許文献5の明細書中には紙を基材とし、この上にインク吸収層を設けた記録用紙に関する記載のみであり、具体的には、紙の凹凸を利用し、インク吸収層を塗設した後、鏡面仕上げ処理するなどの方法が記載されている。更には、一旦作製した記録用紙に、水や蒸気などを吹き付けて再度乾燥する方法などが具体例として開示されている。しかし、ポリオレフィン樹脂で被覆された紙支持体についての記載は一切なく、上記の特許文献5に記載された方法を用いたとしても、水や蒸気をインク吸収層に与えても支持体が吸水しないために、上記の効果は得られない。
【0012】
【特許文献1】
特開平8−174992号公報 (特許請求の範囲)
【0013】
【特許文献2】
特開2001−63204号公報 (特許請求の範囲)
【0014】
【特許文献3】
特開2000−351270号公報 (特許請求の範囲)
【0015】
【特許文献4】
特開2001−63204号公報 (特許請求の範囲)
【0016】
【特許文献5】
特開2001−96893号公報 (特許請求の範囲)
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、ポリオレフィン樹脂で被覆した紙支持体に多孔質インク吸収性を設けたインクジェット記録用紙において、視感的に高い光沢感の得られるインクジェット記録用紙を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成からなるインクジェット記録用紙により達成される。
【0019】
1.ポリオレフィン樹脂で紙の両面を被覆した支持体上に、主として親水性ポリマーからなる下引き層と、多孔質インク吸収層とをこの順に設けたインクジェット記録用紙において、該多孔質インク吸収層の塗設面側のポリオレフィン樹脂被覆表面が、JIS B 0610で規定されるろ波最大うねり(低域カットオフ値8mm、広域カットオフ値0.8mm、基準長80mm)が1〜3μmであり、JIS B 0601で規定される中心線平均粗さRa(基準長2.5mm、カットオフ値0.8mm)が0.1〜0.5μmであることを特徴とするインクジェット記録用紙。
【0020】
2.前記多孔質インク吸収層の塗設面側のポリオレフィン樹脂被覆表面のJIS Z 8741で規定する75度鏡面光沢が、30〜80%であることを特徴とする前記1項記載のインクジェット記録用紙。
【0021】
3.前記多孔質インク吸収層表面のJIS Z 8741で規定する75度鏡面光沢が、50%以上であることを特徴とする前記1または2項に記載のインクジェット記録用紙。
【0022】
4.前記多孔質インク吸収層表面のJIS K 7105で規定するC値が、40%以上であることを特徴とする前記1〜3項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0023】
5.前記下引き層の塗布固形分量が、支持体1m2あたり0.02〜0.2gであることを特徴とする前記1〜4項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0024】
6.支持体から最も遠い位置にある前記多孔質インク吸収層が無機微粒子を含有し、該無機微粒子が一次粒子の平均粒径が6〜15nmのシリカであることを特徴とする前記1〜5項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0025】
本発明者は、紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆した支持体の上に、多孔質インク吸収層を設けたインクジェット記録用紙について高い光沢感を得るための種々の検討を行った結果、ポリオレフィン樹脂被覆表面の表面特性を特定の範囲に保つことにより高い光沢感の得られるインクジェット記録用紙を見いだすに到った。
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のインクジェット記録用紙に用いられる支持体は、紙支持体の両面をポリオレフィン樹脂で被覆した支持体である。
【0027】
本発明に係る支持体に用いられる紙は、木材パルプを主原料とし、必要に応じて、木材パルプに加えてポリプロピレン等の合成パルプあるいはナイロンやポリエステル等の合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしては、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができる。
【0028】
上記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(例えば、硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、またオゾン、塩素系漂白剤あるいは過酸化水素などにより漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
【0029】
紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等の白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤等を適宜添加することができる。
【0030】
抄紙に使用するパルプの濾水度は、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長は、JIS P 8207に規定される24メッシュ残分と42メッシュ残分の和が30〜70%が好ましい。なお、4メッシュ残分は20%以下であることが好ましい。
【0031】
紙の坪量は50〜250gが好ましく、特に80〜200gが好ましい。紙の厚さは70〜210μmが好ましい。
【0032】
紙は抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。紙密度は0.7〜1.2g/cm3(JIS P 8118)が一般的である。更に、原紙剛度はJIS P 8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0033】
紙表面には、表面サイズ剤を塗布しても良く、表面サイズ剤としては前記原紙中に添加できるのと同様のサイズ剤を使用できる。
【0034】
紙のpHは、JIS P 8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0035】
次に、この紙の両面を被覆するポリオレフィン樹脂について説明する。
この目的で用いられるポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンが挙げられるが、プロピレンを主体とする共重合体等のポリオレフィン類が好ましく、ポリエチレンが特に好ましい。
【0036】
以下、特に好ましいポリエチレンについて説明する。
紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)及び/または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0037】
特に、多孔質インク吸収層を塗布する側のポリオレフィン層は、ルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをその中に添加し、不透明度及び白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量は、ポリオレフィンに対して概ね1〜20質量%、好ましくは2〜15質量%である。
【0038】
ポリオレフィン層中には、白地の調整を行うための耐熱性の高い顔料や蛍光増白剤を添加することができる。着色顔料としては、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、マンガンブルー、セルリアン、タングステンブルー、モリブデンブルー、アンスラキノンブルー等が挙げられる。蛍光増白剤としては、ジアルキルアミノクマリン、ビスジメチルアミノスチルベン、ビスメチルアミノスチルベン、4−アルコキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸−N−アルキルイミド、ビスベンズオキサゾリルエチレン、ジアルキルスチルベン等が挙げられる。
【0039】
紙を被覆する表裏のポリオレフィンの使用量は、インク吸収層の膜厚やバック層を設けた後での低湿及び高湿下のカールを最適化するように選択されるが、一般には、ポリオレフィン層の厚さは、インク吸収層側で15〜40μm、バック層側で15〜50μmの範囲である。表裏のポリオレフィンの比率は、インク吸収層の種類や厚さ、中紙の厚み等により変化するカールを調整する様に設定されるのが好ましく、通常は表/裏のポリオレフィンの比率は、厚みで概ね3/1〜1/3である。
【0040】
更に、上記ポリオレフィンで被覆した紙支持体は、以下の(1)〜(7)項の特性を有していることが好ましい。
【0041】
(1)引っ張り強さは、JIS P 8113で規定される強度で縦方向が20〜300N、横方向が10〜200Nであることが好ましい。
【0042】
(2)引き裂き強度は、JIS P 8116で規定される強度で縦方向が0.1〜2N、横方向が0.2〜2Nが好ましい。
【0043】
(3)圧縮弾性率は、9.8kN/cm2が好ましい。
(4)不透明度は、JIS P 8138に規定された方法で測定したときに80%以上、特に85〜98%が好ましい。
【0044】
(5)白さは、JIS Z 8729で規定されるL*、a*、b*が、L*=80〜97、a*=−3〜+5、b*=−6〜+2であることが好ましい。
【0045】
(6)クラーク剛直度は、記録用紙の搬送方向のクラーク剛直度が50〜300cm3/100である支持体が好ましい。
【0046】
上記ポレオレフィン樹脂で被覆された支持体は、インク吸収層を塗布する前に、主に親水性ポリマーからなる下引き層を設けることが、本発明の特徴の1つである。
【0047】
本発明に係る下引き層に用いられる親水性ポリマーとしては、ゼラチンもしくはゼラチン誘導体、ポリビニルアルコールもしくはポリビニルアルコール誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、澱粉もしくは澱粉誘導体、カラーギーナン、アラビアゴム、プルランなどの公知の親水性ポリマーを使用することができ、これらの親水性ポリマーは2種以上を併用することもできる。
【0048】
特に好ましい親水性ポリマーは、ゼラチンもしくはゼラチン誘導体、およびポリビニルアルコールもしくはポリビニルアルコール誘導体であり、特に好ましくはポリビニルアルコールもしくはポリビニルアルコール誘導体である。
【0049】
本発明に係る下引き層中には、硬膜剤、界面活性剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、調色剤、蛍光増白剤、マット剤あるいはpH調整剤などを適宜使用することができる。
【0050】
下引き層が含有する親水性ポリマーが、ゼラチンもしくはゼラチン誘導体およびポリビニルアルコールもしくはポリビニルアルコール誘導体である場合には、これらのポリマーに適した硬膜剤を含有することがひび割れをさらに軽減できることから好ましい。これらの硬膜剤は、下引き層を塗布した後、インク吸収層の塗布前に付与してインク吸収層を塗布する際に、下引き層が硬膜されて膨潤を抑制するため、インク吸収層塗布後の乾燥時に硬い多孔質膜の収縮応力が低下してひび割れを起こしにくくすると考えられる。
【0051】
下引き層に用いられる親水性ポリマーが、主としてゼラチンもしくはゼラチン誘導体である場合、好ましい硬膜剤としては、例えば、ビニルスルホン系硬膜剤、アクリロイル系硬膜剤、アルデヒド系硬膜剤、エポキシ系硬膜剤、活性ハロゲン型硬膜剤などが使用される。
【0052】
また、親水性ポリマーがポリビニルアルコールもしくはポリビニルアルコール誘導体である場合、好ましい硬膜剤としては例えばホウ酸や硼砂などのホウ素系硬膜剤およびエポキシ系硬膜剤である。これらの硬膜剤は、親水性ポリマー1gあたりおおむね0.001〜0.5g、である。
【0053】
本発明に係る下引き層は、ポリオレフィン樹脂層の上に設けられるが、下引き層の塗布に先立って、ポリオレフィン樹脂層表面は、プラズマ処理、火炎処理あるいはコロナ放電処理などの表面活性化処理するのが接着性の観点で好ましい。
【0054】
次に、支持体上に設けられるインク吸収層について説明する。
本発明に係るインク吸収層は、支持体の片面のみでもよいが、両面に設けてもよい。この時両面に設けられるインク吸収層は同じでも異なっていてもよい。
【0055】
本発明のインクジェット記録用紙のインク吸収層は、多孔質構造を有するインク吸収層である。
【0056】
多孔質インク吸収層は、無機または有機の微粒子と少量の親水性ポリマーから形成される空隙層を有する多孔質皮膜のものが好ましい。
【0057】
微粒子としては無機微粒子が好ましく、このような無機微粒子の例としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることができる。無機微粒子は、一次粒子のまま用いても、また、二次凝集粒子を形成した状態で使用することもできる。
【0058】
本発明においては、特に微細な空隙が形成できることから、シリカまたは擬ベーマイトが好ましく、特に平均粒径が100nm以下の気相法により合成されたシリカ、コロイダルシリカ及び擬ベーマイトが好ましく、特に気相法のシリカが最も好ましい。
【0059】
また、インク吸収層の支持体から最も離れたインク吸収層は、発色性や光沢性、写像性への影響が大きく、このような層に用いられるのは一次粒子の平均粒径が6〜15nmのシリカであることが好ましい。一次粒子の平均粒径が6nm未満の場合には、インク吸収性が急速に低下しやすく、15nmを越えると、光沢度自体は比較的容易に維持できるが、発色性や写像性が特に低下しやすい。
【0060】
無機微粒子の平均粒径は、粒子そのものあるいは空隙層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、100個の任意の粒子の粒径を求めてその単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒径はその投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。
【0061】
空隙層に用いられる親水性ポリマーとしては、ゼラチン(アルカリ処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、アミノ基をフェニルイソシアネートや無水フタル酸等で封鎖した誘導体ゼラチン等)、ポリビニルアルコール(平均重合度が300〜4000、ケン化度が80〜99.5%が好ましい)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシルエチルセルロース、寒天、プルラン、デキストラン、アクリル酸、カルボキシメチルセルロース、カゼイン、アルギン酸等が挙げられ、2種類以上を併用することもできる。
【0062】
上記親水性ポリマーの中でも、特に好ましくは、ポリビニルアルコールもしくはその誘導体である。
【0063】
本発明で用いられるポリビリルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0064】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が300以上のものが好ましく、特に1000〜5000のものが好ましい。また、ケン化度は70〜100%のものが好ましく、80〜100%のものが特に好ましい。
【0065】
多孔質インク吸収層の親水性ポリマーと微粒子の比率は、概ね1:10〜1:2であり、好ましくは1:8〜1:3の範囲である。
【0066】
また、上記多孔質が親水性ポリマーとしてポリビニルアルコールを含有する場合には、皮膜の造膜性を改良し、また皮膜の耐水性や皮膜の強度を高めるため、硬膜剤を使用することが好ましい。硬膜剤としては、ほう酸またはその塩、あるいはエポキシ系硬膜剤が好ましく、特にほう酸が好ましい。
【0067】
ほう酸またはその塩とは、硼素原子を中心原子とする酸素酸及びその塩を示し、具体的にはオルトほう酸、メタほう酸、次ほう酸、四ほう酸、五ほう酸及びそれらの塩が含まれる。
【0068】
ほう酸またはその塩の使用量は、塗布液の無機微粒子や親水性ポリマーの量により広範に変わり得るが、親水性ポリマーに対して概ね1〜60%、好ましくは5〜40%である。なお、多孔質層に用いられる親水性ポリマーが、それ自体で架橋性を有する場合には必ずしも硬膜剤は必要としない。
【0069】
本発明のインクジェット記録用紙のインク吸収層には、上記以外に各種の添加剤を添加することができる。中でも、カチオン媒染剤は、印字後の耐水性や耐湿性を改良するために好ましい。カチオン媒染剤としては、第1〜第3級アミノ基及び第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が用いられるが、長期保存時の変色や耐光性の劣化が少ないこと、染料の媒染能が充分高いこと等から、第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が好ましい。
【0070】
好ましいポリマー媒染剤は、上記第4級アンモニウム塩基を有するモノマーの単独重合体やその他のモノマーとの共重合体または縮重合体として得られる。
【0071】
カチオン系媒染剤の具体例は、例えば、「インクジェットプリンター技術と材料」268頁(株式会社 シーエムシー発行 1998年)に記載されている。
【0072】
上記以外に、例えば、特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオンまたは非イオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号等に記載されている蛍光増白剤、塩基性ポリ水酸化アルミニウムや酢酸ジルコニルなどの水溶性多価金属化合物、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0073】
次に、本発明のインクジェット記録用紙の支持体およびインク吸収層表面の表面特性について説明する。
【0074】
紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆した際のインク吸収層を設ける側のポリオレフィン樹脂表面は、JIS B 0610で規定される「ろ波最大うねり」(低域カットオフ値8mm、広域カットオフ値0.8mm、基準長80mm)が1μm以上、3μm以下であることが特徴の1つである。
【0075】
ろ波最大うねりが1μm未満の場合には、視感的な光沢感が得にくく、3μmを越えるとインク吸収層表面の凹凸が大きくなって、平滑感が低下する。好ましいろ波最大うねりは1.2〜2.5μmである。
【0076】
このポリオレフィン樹脂表面は、いわゆる絹目やマット面などを得るための片付けとは異なり、微細な凹凸は小さく、JIS B 0601で規定する中心線平均粗さ(Ra:基準長2.5mm、カットオフ値0.8mm)は、通常の片付け品が0.8μm程度以上であるのに対して、本発明においては0.1〜0.5μmであることが特徴の1つであり、特に、0.1〜0.3μmであることが好ましい。
【0077】
本発明に係るポリオレフィン樹脂表面は、JIS Z 8741で規定される75度光沢度が、30〜80%であることが、インク吸収層表面の光沢度を高くする観点から好ましく、特に、ポリオレフィン樹脂表面を、特開2001−63204号公報に記載されたような微粗面加工を強く施すことは、接着性や高速塗布適性の点では好ましいことであるが、画像の写像性の観点ではあまり好ましくなく、好ましい光沢度は50〜80%である。ポリオレフィン樹脂表面の光沢度を80%以上に高めると、インク受容層との接着性が低下したり、インク吸収層を塗布する際の高速塗布適性が低下しやすい。
【0078】
ここで、微粗面加工とは、特開2001−63204号公報に詳細に記載されているように、鏡面でもなく、またマット面や絹目などの片付けが施されているものでもなく、表面に極微細な凹凸を有するものである。ポリオレフィン樹脂層に微粗面加工する方法としては、好ましくは紙支持体上に加熱溶融したポリオレフィン樹脂を流延する溶融押し出しコーティング法によりポリオレフィン樹脂層を形成した直後に微粗面の形状を有するクーリングロールに接触させて微粗面を形成する方法が好ましく用いられる。
【0079】
ポリオレフィン樹脂表面のろ波最大うねりを本発明で規定する条件に調整する法としては、紙のパルプの種類を適宜選定すること、特に、短繊維/長繊維成分の比率を調整すること、填料比率の調整、さらには抄造後のカレンダー処理の圧力や温度を調整すること、さらにはポリオレフィン樹脂量やポリオレフィン樹脂を溶融押し出しする際のクーリングロールの形状を調整することなどによりコントロールすることが可能である。
【0080】
一方、JIS B 0601による中心線平均粗さを0.1〜0.5μmの範囲に調整する方法としては、ポリオレフィン樹脂量やポリオレフィン樹脂を溶融押し出しする際のクーリングロールの形状を調整することが有効である。
【0081】
ポリオレフィン樹脂表面には、前述の下引き層が塗布されるが、この下引き層の塗布量は、支持体1m2あたりの固形分量が0.02〜0.2gで有ることが好ましい。
【0082】
下引き層の固形分量が0.02g未満であるときには、微粗面加工されたポリオレフィン樹脂表面に、均一に塗布されにくくなり、下引き層の薄い箇所で局所的にインク吸収層と支持体との接着不良が起きたりインク吸収層の塗布時にムラを起こしやすい。一方、下引き層の塗布量が0.2gを越えると、下引き層がインク吸収層を塗布した際、膨潤した膜厚が増大し、乾燥過程で収縮する際に、インク吸収層にひび割れを増大させやすくなる以外に、塗膜に不均一な収縮が起きやすくなって、記録用紙の写像性が低下しやすい。好ましい下引き層の塗布固形分量は、支持体1m2あたり0.03〜0.15gである。
【0083】
本発明のインクジェット記録用紙のインク吸収層表面の光沢度は、好ましくは50%以上であることが、より高い光沢感を得られる観点で好ましい。本発明に係るインク吸収層には、多孔質を形成するために多量の微粒子が含有されるため、ポリマー層により得られるような高い光沢性は得にくいが、好ましくは光沢度が55%以上である。
【0084】
また、インク吸収層のJIS K 7105によるC値が、40%以上であることが好ましく、特に50%以上であることが好ましい。
【0085】
ここで、C値は、下式のより求められる。
C=〔(M−m)/(M+m)〕×100
式中、Cは像鮮明度(%)、Mは透明部の透過光最大量、mは不透明部の最小値を表す。
【0086】
本発明のインクジェット記録用紙において、インク吸収層を形成するための塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法あるいは米国特許第2,681,294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法があるが、多孔質皮膜は高い湿潤膜厚で塗布する必要があるため好ましくは、カーテン塗布方法あるいはエクストルージョンコート法が用いられる。
【0087】
特に、塗布を200m/分以上の高速で行う際にはカーテン塗布が好ましい。
インク吸収層を塗布した後の乾燥は、通常行われる乾燥方法や乾燥条件が適用でき、概ね20〜80℃で行われる。塗布後、一旦冷却してゲル化させた後に乾燥する方法は、強い風を吹き付けることができるために高速塗布に適している。
【0088】
支持体としてポリオレフィン樹脂コート紙を用いるために、乾燥は概ね0〜80℃の範囲で乾燥することが好ましい。80℃を越えるとポリオレフィン樹脂が軟化して、搬送を困難にしたり記録層表面の光沢にムラが出たりするため、好ましい乾燥温度は0〜70℃である。
【0089】
本発明のインクジェット記録用紙には、インク吸収層の反対側の面に、カール防止や印字直後に重ね合わせた際のくっつきやインク転写を更に向上させるため、種々のバック層を設けることができる。
【0090】
バック層の構成は、支持体の種類や厚み、表側の構成や厚みによっても変わるが、一般には親水性バインダーや疎水性バインダーが用いられる。バック層の厚みは、通常は0.1〜10μmの範囲である。
【0091】
また、バック層には、帯電特性を改良するために導電性物質を添加したり、他の記録用紙とのくっつき防止、筆記性改良、さらにはインクジェット記録装置内での搬送性改良のために表面を粗面化することができる。この目的で好ましく用いられるのは、平均粒径が0.5〜20μmの有機または無機の微粒子である。
【0092】
これらのバック層は、インク吸収層の塗布後に設けることもできるが、予め設けていることが好ましい。
【0093】
【実施例】
以下、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、実施例中の「%」は、特に断りのない限り絶乾質量%を示す。
【0094】
実施例1
《支持体の作製》
表裏に表面サイズプレス処理した坪量170g/m2の写真用原紙(LBKP/NBSP=50/50)の裏面に、押し出し塗布法により低密度ポリエチレン/高密度ポリエチレン(50/50)を33μmの厚さで塗布した。次いで、表側に、低密度ポリエチレン/高密度ポリエチレン/アナターゼ型酸化チタン(70/26/4)を同様にして27μmの厚さで塗布して、両面をポリエチレンで被覆した表1に記載のろ波最大うねり(μm)、中心線平均粗さRa(μm)及び光沢度を有する支持体1から8を作製した。
【0095】
表1に記載の各特性値とする方法としては、表側に、溶融押し出し塗布した直後に、表面に種々の粗さの微粗面を有するクーリングロールを使用して、冷却しながらポリエチレン表面に型付け処理を行った。型付けの違いは、密度及び凹凸の高さを調整することで行った。更に、上記の写真用原紙を抄造する際に、カレンダー処理の程度を変化させた原紙についても、同様にポリエチレン被覆して支持体を作製した。
【0096】
なお、表1に記載のろ波最大うねり(μm)は、JIS B 0610で規定する方法に準じて、低域カットオフ値8mm、広域カットオフ値0.8mm、基準長80mmで測定した。また、中心線平均粗さRa(μm)は、JIS B 0601で規定する方法に準じて、基準長2.5mm、カットオフ値0.8mmの条件で測定した。また、光沢度は、JIS Z 8741で規定する方法に準じて、日本電色工業社製の光沢度計(VGS−1001DP)を用いて75度鏡面光沢を測定した。
【0097】
次に、表側にコロナ放電を行い、ポリビニルアルコールとホウ酸を硬膜剤として含有する下引き層を、ポリビニルアルコールが0.05g/m2となるように塗布して下引き層を設け、裏面にもコロナ放電を行った後、ラテックス層を、乾燥付量が0.2g/m2になるように塗布した。
【0098】
《インクジェット記録用紙の作製》
〔分散液の調製〕
〈酸化チタン分散液1の調製〉
平均粒径が約0.25μmの酸化チタンの20kg(石原産業製:W−10)を、pH=7.5のトリポリリン酸ナトリウムを150g、ポリビニルアルコール(クラレ株式会社製:PVA235)を500g、カチオンポリマー(P−1)を150g及びサンノブコ株式会社消泡剤SN381を10g含有する水溶液90Lに添加し、高圧ホモジナイザー(三和工業株式会社製)で分散した後、全量を100Lに仕上げて、均一な酸化チタン分散液1を得た。
【0099】
【化1】
【0100】
〈シリカ分散液1の調製〉
下記の添加剤を順次混合して、シリカ分散液1を調製した。
【0101】
水 71L
ホウ酸 0.27kg
ほう砂 0.24kg
エタノール 2.2L
カチオンポリマー(P−1)25%水溶液 17L
退色防止剤(AF−1)10%水溶液 8.5L
蛍光増白剤水溶液(チバスペシャリティーケミカル製、UVITEX NFW
LIQUID) 0.1L
全量を純水で100Lに仕上げた。
【0102】
無機微粒子として、気相法シリカ(平均1次粒子径約12nm)を50kg用意し、上記各添加剤液と混合した後、特開2002−47454号公報の実施例5に記載された分散方法により分散してシリカ分散液1を得た。
【0103】
退色防止剤(AF−1):HO−N(C2H4SO3Na)2
〈シリカ分散液2の調製〉
シリカ分散液1の調製において、カチオンポリマーをP−1からP−2に変更した以外は同様にして、シリカ分散液2を調製した。
【0104】
【化2】
【0105】
〔塗布液の調製〕
インク吸収層面側用の第1層、第2層、第3層および第4層の各塗布液を、以下の手順で調製した。
【0106】
(第1層用塗布液の調製)
610mlの上記シリカ分散液1を40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
【0107】
純水で全量を1000mlに仕上げた。
【0108】
(第2層用塗布液の調製)
650mlの上記シリカ分散液1を40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
【0109】
純水で全量を1000mlに仕上げた。
【0110】
(第3層用塗布液の調製)
650mlの上記シリカ分散液2を40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
【0111】
純水で全量を1000mlに仕上げた。
【0112】
(第4層用塗布液の調製)
650mlの上記シリカ分散液2を40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
【0113】
純水で全量を1000mlに仕上げた。
【0114】
【化3】
【0115】
上記のようにして調製した各塗布液を、東洋濾紙株式会社製フィルターのTCP10で2段ろ過した。
【0116】
上記調製した各塗布液は、いずれも40℃において30〜80mPa・s、15℃において、30,000〜100,000mPa・sの粘度特性を示した。
【0117】
〔記録用紙1〜8の作製〕
以上のようにして調製した各塗布液を、ポリオレフィンで両面を被覆した上記支持体1〜8の表面側に、第1層(35μm)、第2層(45μm)、第3層(45μm)、第4層(40μm)の順になるように各層を同時塗布した。なお、第3層には、上記第3層用塗布液に対して3%の容量比で、20%の酢酸ジルコニルを、塗布直前(塗布の約5秒前)にインライン混合した。なお、括弧内の数値は、それぞれの湿潤膜厚を示す。
【0118】
塗布は、それぞれの塗布液を40℃で、4層式カーテンコーターを用いて同時重層塗布を行い、塗布直後に8℃に保持した冷却ゾーンで20秒間冷却した後、20〜30℃、相対湿度20%以下の条件で40秒間、55℃、相対湿度20%以下の条件で120秒間、55℃、相対湿度30%以下の条件で60秒間、各々の乾燥風を吹き付けて乾燥した。このとき、恒率乾燥領域における皮膜温度は8〜30℃であり、その後の減率乾燥領域で、皮膜温度は徐々に上昇した後、23℃、相対湿度40〜60%で調湿してロール状に巻き取って、記録用紙1〜8を作製した。得られた各記録用紙は、その後40℃で5日間加温保管した。
【0119】
《記録用紙の評価》
上記作製した記録用紙1〜8について、以下の方法に従って、光沢度、C値及び光沢感を評価した。
【0120】
(光沢度の測定)
記録面側の光沢度は、JIS Z 8741に規定する方法に準じて、日本電色工業社製の光沢度計(VGS−1001DP)を用いて75度鏡面光沢度を測定し、これを光沢度とした。
【0121】
(C値の測定)
記録面側のC値は、JIS K 7105に規定する方法に準じて、像鮮明度測定機ICM−IDP(スガ試験機械(株)製)で反射60度、光学くし2mmでの像鮮明度(C値)を測定した。測定は同一試料で5回行い、5回測定の平均値をとった。
【0122】
(光沢感の評価)
各記録用紙の記録面側を目視観察し、下記の基準に則り光沢感の評価を行った。
【0123】
◎:光沢感が非常に良好である
○:光沢感が良好である
△:光沢感が比較的劣る
×:光沢感が感じられない
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0124】
【表1】
【0125】
表1より明らかなように、支持体のろ波最大うねりが1μm未満である比較の記録用紙1は、高い光沢度を示したが、C値が比較的低く、光沢感は不満足であった。また、ろ波最大うねりは本発明で規定する範囲内であるが,Raが0.5μmを越える比較の記録用紙8は、光沢度とC値が共に低く、一番低い光沢感であった。
【0126】
これに対して、本発明で規定する特性を有する支持体を用いた記録用紙2〜7は、高い光沢度とC値を有し、いずれも目視で良好な光沢感を示した。
【0127】
特に、ろ波最大うねりが1.2〜2.5μm、Raが0.1〜0.3μmにある支持体を用いた記録用紙は特に良好な光沢感を示した。
【0128】
実施例2
実施例1で作製した記録用紙3において、インク吸収層側のポリエチレン被覆層の厚みを、表2に記載の様に変化させた以外は同様にして、支持体3A〜3Cを作製し、インク吸収層を実施例1と同様に塗布して記録用紙3A〜3Cを作製した。
【0129】
これらの記録用紙について、実施例1と同様に光沢度、C値及び光沢感の評価を行い、得られた結果を表2に示す。
【0130】
【表2】
【0131】
表2より明らかなように、ポリエチレン樹脂層の厚みを変えて支持体のろ波最大うねりを変化させたときにも、本発明で規定する特性を有する支持体を用いた記録用紙は、高い光沢度とC値を有し、いずれも目視で良好な光沢感を示した。
【0132】
実施例3
実施例1で作製した記録用紙3において、インク吸収層に用いたシリカの一次粒子の平均粒径を、12nmから20nmに変更した以外は同様にして、記録用紙3Dを作製した。また、実施例1で作製した記録用紙3において、下引き層のポリビニルアルコールの付き量を0.05g/m2から0.25g/m2に変更した以外同様にして、記録用紙3Eを作製した。
【0133】
上記記録用紙3D、記録用紙3Eと記録用紙3について、実施例1と同様に光沢度、C値及び光沢感の評価を行い、得られた結果を表3に示す。
【0134】
【表3】
【0135】
表3より明らかなように、記録用紙3Dと記録用紙3Eは、いずれも支持体は記録用紙3と同一の支持体3を使用したが、記録用紙3Dではシリカ粒子の一次粒径を20nmのものを使用したため、光沢度とC値が共に低下し、光沢感も記録用紙3に対して低下した。また、記録用紙3Eは下引き層を厚膜化することで、インク吸収層を塗布する際に乾燥過程で塗布筋が発生し、光沢度の低下はそれほど大きくはないが、C値の低下が認められ光沢感は低下した。
【0136】
【発明の効果】
本発明により、ポリオレフィン樹脂で被覆した紙支持体に多孔質インク吸収性を設けたインクジェット記録用紙において、視感的に高い光沢感の得られるインクジェット記録用紙を提供することができた。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリオレフィン樹脂で被覆された紙支持体上に、多孔質インク吸収層を設けた銀塩写真グレードのインクジェット記録用紙に関し、特に、ポリオレフィン樹脂層と多孔質インク吸収層の間に、親水性ポリマーからなる下引き層を設けて接着性を改善し、高い光沢性と画像鮮明性が得られるインク用インクジェット記録用紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、写真画質のインクジェット記録用紙(以下、単に記録用紙ともいう)が急速に普及している。中でも、支持体として紙の両面をポリエチレン等のポリオレフィン樹脂で被覆した支持体を用い、その上に高いインク吸収速度を有するインク吸収層を設けたインクジェット記録用紙は、プラスチックフィルムに比較し、低コストであること、その重厚感やしなやかさ、平滑性、光沢性等の面で、銀塩写真のプリントに近い高級感のあるプリントとして幅広く普及してきており、このような構成のインクジェット記録用紙も、非常に多くのものが知られている。
【0003】
特に、高光沢性の特性に対しては、従来より様々な提案がなされているが、高い光沢を有する支持体を用いることと、多孔質インク吸収層と小さな顔料粒子との組み合わせで用いることの2つが、高光沢の画像形成面を実現する主な手段である。
【0004】
上記課題に対し、例えば、表面が70%以上の光沢度を有する支持体上に、平均一次粒子径が10nm以下のシリカ粒子と水溶性樹脂からなる多孔質層を有するインクジェット記録用紙が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
このような微粒子を含有する多孔質インク吸収層を、高光沢の支持体に塗布して得られるインク吸収層には、製造する際に乾燥課程でひび割れを生じやすく、これを改良するために、ポリオレフィン樹脂支持体の表面を微粗面加工したインクジェット記録用紙が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
しかしながら、上記各特許文献に記載されたインクジェット記録用紙は、ポリオレフィン樹脂で被覆した紙支持体に、直接多孔質インク吸収層を設けたものであって、多孔質インク吸収層と支持体との接着性が必ずしも十分とはいえない。
【0007】
支持体として、ポリオレフィン樹脂で紙の両面を被覆した支持体を使用する場合には、ポリオレフィン樹脂表面は一般に疎水性であり、また、多孔質インク吸収層は水系の塗布液を塗布することにより得られるために、接着性を改善する目的でこれらの間に下引き層を易接着層として設けるのが好ましく、その様な例として、例えば、固形分の塗設量が0.5g/m2以下の下引き層を設けたポリオレフィン樹脂被覆紙を支持体として用いることで、光沢性が高く表面欠陥の改善されたインクジェット記録用紙が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0008】
また、50℃における水への溶解度60%以下の下引き層を設けることで製造時の吹きムラの発生を抑制し、光沢のある凹凸のない塗膜を有するインクジェット記録用紙が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0009】
ところで、本発明者の検討によれば、JIS Z 8741で規定される光沢度が高いものが、必ずしも視感的光沢感に優れていると一概に言い難いことが判明した。この理由は定かではないが、一方で、インク吸収層表面の写像性を表すJIS K 7105で規定するC値は、その数値が高いものほど視感的光沢感と一致する傾向がある。すなわち、インク吸収層表面の光沢度と写像性が共に高いほど、視感的な光沢感が高い傾向がある。
【0010】
一方、インク吸収層表面の75度光沢度を40%以上とし、JIS B 0610で規定されるろ波最大うねりを特定の値にすることで視感的に高い光沢感をもたらすことが記載されている(例えば、特許文献5参照。)。
【0011】
しかし、この特許文献5の明細書中には紙を基材とし、この上にインク吸収層を設けた記録用紙に関する記載のみであり、具体的には、紙の凹凸を利用し、インク吸収層を塗設した後、鏡面仕上げ処理するなどの方法が記載されている。更には、一旦作製した記録用紙に、水や蒸気などを吹き付けて再度乾燥する方法などが具体例として開示されている。しかし、ポリオレフィン樹脂で被覆された紙支持体についての記載は一切なく、上記の特許文献5に記載された方法を用いたとしても、水や蒸気をインク吸収層に与えても支持体が吸水しないために、上記の効果は得られない。
【0012】
【特許文献1】
特開平8−174992号公報 (特許請求の範囲)
【0013】
【特許文献2】
特開2001−63204号公報 (特許請求の範囲)
【0014】
【特許文献3】
特開2000−351270号公報 (特許請求の範囲)
【0015】
【特許文献4】
特開2001−63204号公報 (特許請求の範囲)
【0016】
【特許文献5】
特開2001−96893号公報 (特許請求の範囲)
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、ポリオレフィン樹脂で被覆した紙支持体に多孔質インク吸収性を設けたインクジェット記録用紙において、視感的に高い光沢感の得られるインクジェット記録用紙を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成からなるインクジェット記録用紙により達成される。
【0019】
1.ポリオレフィン樹脂で紙の両面を被覆した支持体上に、主として親水性ポリマーからなる下引き層と、多孔質インク吸収層とをこの順に設けたインクジェット記録用紙において、該多孔質インク吸収層の塗設面側のポリオレフィン樹脂被覆表面が、JIS B 0610で規定されるろ波最大うねり(低域カットオフ値8mm、広域カットオフ値0.8mm、基準長80mm)が1〜3μmであり、JIS B 0601で規定される中心線平均粗さRa(基準長2.5mm、カットオフ値0.8mm)が0.1〜0.5μmであることを特徴とするインクジェット記録用紙。
【0020】
2.前記多孔質インク吸収層の塗設面側のポリオレフィン樹脂被覆表面のJIS Z 8741で規定する75度鏡面光沢が、30〜80%であることを特徴とする前記1項記載のインクジェット記録用紙。
【0021】
3.前記多孔質インク吸収層表面のJIS Z 8741で規定する75度鏡面光沢が、50%以上であることを特徴とする前記1または2項に記載のインクジェット記録用紙。
【0022】
4.前記多孔質インク吸収層表面のJIS K 7105で規定するC値が、40%以上であることを特徴とする前記1〜3項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0023】
5.前記下引き層の塗布固形分量が、支持体1m2あたり0.02〜0.2gであることを特徴とする前記1〜4項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0024】
6.支持体から最も遠い位置にある前記多孔質インク吸収層が無機微粒子を含有し、該無機微粒子が一次粒子の平均粒径が6〜15nmのシリカであることを特徴とする前記1〜5項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0025】
本発明者は、紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆した支持体の上に、多孔質インク吸収層を設けたインクジェット記録用紙について高い光沢感を得るための種々の検討を行った結果、ポリオレフィン樹脂被覆表面の表面特性を特定の範囲に保つことにより高い光沢感の得られるインクジェット記録用紙を見いだすに到った。
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のインクジェット記録用紙に用いられる支持体は、紙支持体の両面をポリオレフィン樹脂で被覆した支持体である。
【0027】
本発明に係る支持体に用いられる紙は、木材パルプを主原料とし、必要に応じて、木材パルプに加えてポリプロピレン等の合成パルプあるいはナイロンやポリエステル等の合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしては、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができる。
【0028】
上記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(例えば、硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、またオゾン、塩素系漂白剤あるいは過酸化水素などにより漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
【0029】
紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等の白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤等を適宜添加することができる。
【0030】
抄紙に使用するパルプの濾水度は、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長は、JIS P 8207に規定される24メッシュ残分と42メッシュ残分の和が30〜70%が好ましい。なお、4メッシュ残分は20%以下であることが好ましい。
【0031】
紙の坪量は50〜250gが好ましく、特に80〜200gが好ましい。紙の厚さは70〜210μmが好ましい。
【0032】
紙は抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。紙密度は0.7〜1.2g/cm3(JIS P 8118)が一般的である。更に、原紙剛度はJIS P 8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0033】
紙表面には、表面サイズ剤を塗布しても良く、表面サイズ剤としては前記原紙中に添加できるのと同様のサイズ剤を使用できる。
【0034】
紙のpHは、JIS P 8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0035】
次に、この紙の両面を被覆するポリオレフィン樹脂について説明する。
この目的で用いられるポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンが挙げられるが、プロピレンを主体とする共重合体等のポリオレフィン類が好ましく、ポリエチレンが特に好ましい。
【0036】
以下、特に好ましいポリエチレンについて説明する。
紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)及び/または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0037】
特に、多孔質インク吸収層を塗布する側のポリオレフィン層は、ルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをその中に添加し、不透明度及び白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量は、ポリオレフィンに対して概ね1〜20質量%、好ましくは2〜15質量%である。
【0038】
ポリオレフィン層中には、白地の調整を行うための耐熱性の高い顔料や蛍光増白剤を添加することができる。着色顔料としては、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、マンガンブルー、セルリアン、タングステンブルー、モリブデンブルー、アンスラキノンブルー等が挙げられる。蛍光増白剤としては、ジアルキルアミノクマリン、ビスジメチルアミノスチルベン、ビスメチルアミノスチルベン、4−アルコキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸−N−アルキルイミド、ビスベンズオキサゾリルエチレン、ジアルキルスチルベン等が挙げられる。
【0039】
紙を被覆する表裏のポリオレフィンの使用量は、インク吸収層の膜厚やバック層を設けた後での低湿及び高湿下のカールを最適化するように選択されるが、一般には、ポリオレフィン層の厚さは、インク吸収層側で15〜40μm、バック層側で15〜50μmの範囲である。表裏のポリオレフィンの比率は、インク吸収層の種類や厚さ、中紙の厚み等により変化するカールを調整する様に設定されるのが好ましく、通常は表/裏のポリオレフィンの比率は、厚みで概ね3/1〜1/3である。
【0040】
更に、上記ポリオレフィンで被覆した紙支持体は、以下の(1)〜(7)項の特性を有していることが好ましい。
【0041】
(1)引っ張り強さは、JIS P 8113で規定される強度で縦方向が20〜300N、横方向が10〜200Nであることが好ましい。
【0042】
(2)引き裂き強度は、JIS P 8116で規定される強度で縦方向が0.1〜2N、横方向が0.2〜2Nが好ましい。
【0043】
(3)圧縮弾性率は、9.8kN/cm2が好ましい。
(4)不透明度は、JIS P 8138に規定された方法で測定したときに80%以上、特に85〜98%が好ましい。
【0044】
(5)白さは、JIS Z 8729で規定されるL*、a*、b*が、L*=80〜97、a*=−3〜+5、b*=−6〜+2であることが好ましい。
【0045】
(6)クラーク剛直度は、記録用紙の搬送方向のクラーク剛直度が50〜300cm3/100である支持体が好ましい。
【0046】
上記ポレオレフィン樹脂で被覆された支持体は、インク吸収層を塗布する前に、主に親水性ポリマーからなる下引き層を設けることが、本発明の特徴の1つである。
【0047】
本発明に係る下引き層に用いられる親水性ポリマーとしては、ゼラチンもしくはゼラチン誘導体、ポリビニルアルコールもしくはポリビニルアルコール誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、澱粉もしくは澱粉誘導体、カラーギーナン、アラビアゴム、プルランなどの公知の親水性ポリマーを使用することができ、これらの親水性ポリマーは2種以上を併用することもできる。
【0048】
特に好ましい親水性ポリマーは、ゼラチンもしくはゼラチン誘導体、およびポリビニルアルコールもしくはポリビニルアルコール誘導体であり、特に好ましくはポリビニルアルコールもしくはポリビニルアルコール誘導体である。
【0049】
本発明に係る下引き層中には、硬膜剤、界面活性剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、調色剤、蛍光増白剤、マット剤あるいはpH調整剤などを適宜使用することができる。
【0050】
下引き層が含有する親水性ポリマーが、ゼラチンもしくはゼラチン誘導体およびポリビニルアルコールもしくはポリビニルアルコール誘導体である場合には、これらのポリマーに適した硬膜剤を含有することがひび割れをさらに軽減できることから好ましい。これらの硬膜剤は、下引き層を塗布した後、インク吸収層の塗布前に付与してインク吸収層を塗布する際に、下引き層が硬膜されて膨潤を抑制するため、インク吸収層塗布後の乾燥時に硬い多孔質膜の収縮応力が低下してひび割れを起こしにくくすると考えられる。
【0051】
下引き層に用いられる親水性ポリマーが、主としてゼラチンもしくはゼラチン誘導体である場合、好ましい硬膜剤としては、例えば、ビニルスルホン系硬膜剤、アクリロイル系硬膜剤、アルデヒド系硬膜剤、エポキシ系硬膜剤、活性ハロゲン型硬膜剤などが使用される。
【0052】
また、親水性ポリマーがポリビニルアルコールもしくはポリビニルアルコール誘導体である場合、好ましい硬膜剤としては例えばホウ酸や硼砂などのホウ素系硬膜剤およびエポキシ系硬膜剤である。これらの硬膜剤は、親水性ポリマー1gあたりおおむね0.001〜0.5g、である。
【0053】
本発明に係る下引き層は、ポリオレフィン樹脂層の上に設けられるが、下引き層の塗布に先立って、ポリオレフィン樹脂層表面は、プラズマ処理、火炎処理あるいはコロナ放電処理などの表面活性化処理するのが接着性の観点で好ましい。
【0054】
次に、支持体上に設けられるインク吸収層について説明する。
本発明に係るインク吸収層は、支持体の片面のみでもよいが、両面に設けてもよい。この時両面に設けられるインク吸収層は同じでも異なっていてもよい。
【0055】
本発明のインクジェット記録用紙のインク吸収層は、多孔質構造を有するインク吸収層である。
【0056】
多孔質インク吸収層は、無機または有機の微粒子と少量の親水性ポリマーから形成される空隙層を有する多孔質皮膜のものが好ましい。
【0057】
微粒子としては無機微粒子が好ましく、このような無機微粒子の例としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることができる。無機微粒子は、一次粒子のまま用いても、また、二次凝集粒子を形成した状態で使用することもできる。
【0058】
本発明においては、特に微細な空隙が形成できることから、シリカまたは擬ベーマイトが好ましく、特に平均粒径が100nm以下の気相法により合成されたシリカ、コロイダルシリカ及び擬ベーマイトが好ましく、特に気相法のシリカが最も好ましい。
【0059】
また、インク吸収層の支持体から最も離れたインク吸収層は、発色性や光沢性、写像性への影響が大きく、このような層に用いられるのは一次粒子の平均粒径が6〜15nmのシリカであることが好ましい。一次粒子の平均粒径が6nm未満の場合には、インク吸収性が急速に低下しやすく、15nmを越えると、光沢度自体は比較的容易に維持できるが、発色性や写像性が特に低下しやすい。
【0060】
無機微粒子の平均粒径は、粒子そのものあるいは空隙層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、100個の任意の粒子の粒径を求めてその単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒径はその投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。
【0061】
空隙層に用いられる親水性ポリマーとしては、ゼラチン(アルカリ処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、アミノ基をフェニルイソシアネートや無水フタル酸等で封鎖した誘導体ゼラチン等)、ポリビニルアルコール(平均重合度が300〜4000、ケン化度が80〜99.5%が好ましい)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシルエチルセルロース、寒天、プルラン、デキストラン、アクリル酸、カルボキシメチルセルロース、カゼイン、アルギン酸等が挙げられ、2種類以上を併用することもできる。
【0062】
上記親水性ポリマーの中でも、特に好ましくは、ポリビニルアルコールもしくはその誘導体である。
【0063】
本発明で用いられるポリビリルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0064】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が300以上のものが好ましく、特に1000〜5000のものが好ましい。また、ケン化度は70〜100%のものが好ましく、80〜100%のものが特に好ましい。
【0065】
多孔質インク吸収層の親水性ポリマーと微粒子の比率は、概ね1:10〜1:2であり、好ましくは1:8〜1:3の範囲である。
【0066】
また、上記多孔質が親水性ポリマーとしてポリビニルアルコールを含有する場合には、皮膜の造膜性を改良し、また皮膜の耐水性や皮膜の強度を高めるため、硬膜剤を使用することが好ましい。硬膜剤としては、ほう酸またはその塩、あるいはエポキシ系硬膜剤が好ましく、特にほう酸が好ましい。
【0067】
ほう酸またはその塩とは、硼素原子を中心原子とする酸素酸及びその塩を示し、具体的にはオルトほう酸、メタほう酸、次ほう酸、四ほう酸、五ほう酸及びそれらの塩が含まれる。
【0068】
ほう酸またはその塩の使用量は、塗布液の無機微粒子や親水性ポリマーの量により広範に変わり得るが、親水性ポリマーに対して概ね1〜60%、好ましくは5〜40%である。なお、多孔質層に用いられる親水性ポリマーが、それ自体で架橋性を有する場合には必ずしも硬膜剤は必要としない。
【0069】
本発明のインクジェット記録用紙のインク吸収層には、上記以外に各種の添加剤を添加することができる。中でも、カチオン媒染剤は、印字後の耐水性や耐湿性を改良するために好ましい。カチオン媒染剤としては、第1〜第3級アミノ基及び第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が用いられるが、長期保存時の変色や耐光性の劣化が少ないこと、染料の媒染能が充分高いこと等から、第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が好ましい。
【0070】
好ましいポリマー媒染剤は、上記第4級アンモニウム塩基を有するモノマーの単独重合体やその他のモノマーとの共重合体または縮重合体として得られる。
【0071】
カチオン系媒染剤の具体例は、例えば、「インクジェットプリンター技術と材料」268頁(株式会社 シーエムシー発行 1998年)に記載されている。
【0072】
上記以外に、例えば、特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオンまたは非イオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号等に記載されている蛍光増白剤、塩基性ポリ水酸化アルミニウムや酢酸ジルコニルなどの水溶性多価金属化合物、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0073】
次に、本発明のインクジェット記録用紙の支持体およびインク吸収層表面の表面特性について説明する。
【0074】
紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆した際のインク吸収層を設ける側のポリオレフィン樹脂表面は、JIS B 0610で規定される「ろ波最大うねり」(低域カットオフ値8mm、広域カットオフ値0.8mm、基準長80mm)が1μm以上、3μm以下であることが特徴の1つである。
【0075】
ろ波最大うねりが1μm未満の場合には、視感的な光沢感が得にくく、3μmを越えるとインク吸収層表面の凹凸が大きくなって、平滑感が低下する。好ましいろ波最大うねりは1.2〜2.5μmである。
【0076】
このポリオレフィン樹脂表面は、いわゆる絹目やマット面などを得るための片付けとは異なり、微細な凹凸は小さく、JIS B 0601で規定する中心線平均粗さ(Ra:基準長2.5mm、カットオフ値0.8mm)は、通常の片付け品が0.8μm程度以上であるのに対して、本発明においては0.1〜0.5μmであることが特徴の1つであり、特に、0.1〜0.3μmであることが好ましい。
【0077】
本発明に係るポリオレフィン樹脂表面は、JIS Z 8741で規定される75度光沢度が、30〜80%であることが、インク吸収層表面の光沢度を高くする観点から好ましく、特に、ポリオレフィン樹脂表面を、特開2001−63204号公報に記載されたような微粗面加工を強く施すことは、接着性や高速塗布適性の点では好ましいことであるが、画像の写像性の観点ではあまり好ましくなく、好ましい光沢度は50〜80%である。ポリオレフィン樹脂表面の光沢度を80%以上に高めると、インク受容層との接着性が低下したり、インク吸収層を塗布する際の高速塗布適性が低下しやすい。
【0078】
ここで、微粗面加工とは、特開2001−63204号公報に詳細に記載されているように、鏡面でもなく、またマット面や絹目などの片付けが施されているものでもなく、表面に極微細な凹凸を有するものである。ポリオレフィン樹脂層に微粗面加工する方法としては、好ましくは紙支持体上に加熱溶融したポリオレフィン樹脂を流延する溶融押し出しコーティング法によりポリオレフィン樹脂層を形成した直後に微粗面の形状を有するクーリングロールに接触させて微粗面を形成する方法が好ましく用いられる。
【0079】
ポリオレフィン樹脂表面のろ波最大うねりを本発明で規定する条件に調整する法としては、紙のパルプの種類を適宜選定すること、特に、短繊維/長繊維成分の比率を調整すること、填料比率の調整、さらには抄造後のカレンダー処理の圧力や温度を調整すること、さらにはポリオレフィン樹脂量やポリオレフィン樹脂を溶融押し出しする際のクーリングロールの形状を調整することなどによりコントロールすることが可能である。
【0080】
一方、JIS B 0601による中心線平均粗さを0.1〜0.5μmの範囲に調整する方法としては、ポリオレフィン樹脂量やポリオレフィン樹脂を溶融押し出しする際のクーリングロールの形状を調整することが有効である。
【0081】
ポリオレフィン樹脂表面には、前述の下引き層が塗布されるが、この下引き層の塗布量は、支持体1m2あたりの固形分量が0.02〜0.2gで有ることが好ましい。
【0082】
下引き層の固形分量が0.02g未満であるときには、微粗面加工されたポリオレフィン樹脂表面に、均一に塗布されにくくなり、下引き層の薄い箇所で局所的にインク吸収層と支持体との接着不良が起きたりインク吸収層の塗布時にムラを起こしやすい。一方、下引き層の塗布量が0.2gを越えると、下引き層がインク吸収層を塗布した際、膨潤した膜厚が増大し、乾燥過程で収縮する際に、インク吸収層にひび割れを増大させやすくなる以外に、塗膜に不均一な収縮が起きやすくなって、記録用紙の写像性が低下しやすい。好ましい下引き層の塗布固形分量は、支持体1m2あたり0.03〜0.15gである。
【0083】
本発明のインクジェット記録用紙のインク吸収層表面の光沢度は、好ましくは50%以上であることが、より高い光沢感を得られる観点で好ましい。本発明に係るインク吸収層には、多孔質を形成するために多量の微粒子が含有されるため、ポリマー層により得られるような高い光沢性は得にくいが、好ましくは光沢度が55%以上である。
【0084】
また、インク吸収層のJIS K 7105によるC値が、40%以上であることが好ましく、特に50%以上であることが好ましい。
【0085】
ここで、C値は、下式のより求められる。
C=〔(M−m)/(M+m)〕×100
式中、Cは像鮮明度(%)、Mは透明部の透過光最大量、mは不透明部の最小値を表す。
【0086】
本発明のインクジェット記録用紙において、インク吸収層を形成するための塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法あるいは米国特許第2,681,294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法があるが、多孔質皮膜は高い湿潤膜厚で塗布する必要があるため好ましくは、カーテン塗布方法あるいはエクストルージョンコート法が用いられる。
【0087】
特に、塗布を200m/分以上の高速で行う際にはカーテン塗布が好ましい。
インク吸収層を塗布した後の乾燥は、通常行われる乾燥方法や乾燥条件が適用でき、概ね20〜80℃で行われる。塗布後、一旦冷却してゲル化させた後に乾燥する方法は、強い風を吹き付けることができるために高速塗布に適している。
【0088】
支持体としてポリオレフィン樹脂コート紙を用いるために、乾燥は概ね0〜80℃の範囲で乾燥することが好ましい。80℃を越えるとポリオレフィン樹脂が軟化して、搬送を困難にしたり記録層表面の光沢にムラが出たりするため、好ましい乾燥温度は0〜70℃である。
【0089】
本発明のインクジェット記録用紙には、インク吸収層の反対側の面に、カール防止や印字直後に重ね合わせた際のくっつきやインク転写を更に向上させるため、種々のバック層を設けることができる。
【0090】
バック層の構成は、支持体の種類や厚み、表側の構成や厚みによっても変わるが、一般には親水性バインダーや疎水性バインダーが用いられる。バック層の厚みは、通常は0.1〜10μmの範囲である。
【0091】
また、バック層には、帯電特性を改良するために導電性物質を添加したり、他の記録用紙とのくっつき防止、筆記性改良、さらにはインクジェット記録装置内での搬送性改良のために表面を粗面化することができる。この目的で好ましく用いられるのは、平均粒径が0.5〜20μmの有機または無機の微粒子である。
【0092】
これらのバック層は、インク吸収層の塗布後に設けることもできるが、予め設けていることが好ましい。
【0093】
【実施例】
以下、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、実施例中の「%」は、特に断りのない限り絶乾質量%を示す。
【0094】
実施例1
《支持体の作製》
表裏に表面サイズプレス処理した坪量170g/m2の写真用原紙(LBKP/NBSP=50/50)の裏面に、押し出し塗布法により低密度ポリエチレン/高密度ポリエチレン(50/50)を33μmの厚さで塗布した。次いで、表側に、低密度ポリエチレン/高密度ポリエチレン/アナターゼ型酸化チタン(70/26/4)を同様にして27μmの厚さで塗布して、両面をポリエチレンで被覆した表1に記載のろ波最大うねり(μm)、中心線平均粗さRa(μm)及び光沢度を有する支持体1から8を作製した。
【0095】
表1に記載の各特性値とする方法としては、表側に、溶融押し出し塗布した直後に、表面に種々の粗さの微粗面を有するクーリングロールを使用して、冷却しながらポリエチレン表面に型付け処理を行った。型付けの違いは、密度及び凹凸の高さを調整することで行った。更に、上記の写真用原紙を抄造する際に、カレンダー処理の程度を変化させた原紙についても、同様にポリエチレン被覆して支持体を作製した。
【0096】
なお、表1に記載のろ波最大うねり(μm)は、JIS B 0610で規定する方法に準じて、低域カットオフ値8mm、広域カットオフ値0.8mm、基準長80mmで測定した。また、中心線平均粗さRa(μm)は、JIS B 0601で規定する方法に準じて、基準長2.5mm、カットオフ値0.8mmの条件で測定した。また、光沢度は、JIS Z 8741で規定する方法に準じて、日本電色工業社製の光沢度計(VGS−1001DP)を用いて75度鏡面光沢を測定した。
【0097】
次に、表側にコロナ放電を行い、ポリビニルアルコールとホウ酸を硬膜剤として含有する下引き層を、ポリビニルアルコールが0.05g/m2となるように塗布して下引き層を設け、裏面にもコロナ放電を行った後、ラテックス層を、乾燥付量が0.2g/m2になるように塗布した。
【0098】
《インクジェット記録用紙の作製》
〔分散液の調製〕
〈酸化チタン分散液1の調製〉
平均粒径が約0.25μmの酸化チタンの20kg(石原産業製:W−10)を、pH=7.5のトリポリリン酸ナトリウムを150g、ポリビニルアルコール(クラレ株式会社製:PVA235)を500g、カチオンポリマー(P−1)を150g及びサンノブコ株式会社消泡剤SN381を10g含有する水溶液90Lに添加し、高圧ホモジナイザー(三和工業株式会社製)で分散した後、全量を100Lに仕上げて、均一な酸化チタン分散液1を得た。
【0099】
【化1】
【0100】
〈シリカ分散液1の調製〉
下記の添加剤を順次混合して、シリカ分散液1を調製した。
【0101】
水 71L
ホウ酸 0.27kg
ほう砂 0.24kg
エタノール 2.2L
カチオンポリマー(P−1)25%水溶液 17L
退色防止剤(AF−1)10%水溶液 8.5L
蛍光増白剤水溶液(チバスペシャリティーケミカル製、UVITEX NFW
LIQUID) 0.1L
全量を純水で100Lに仕上げた。
【0102】
無機微粒子として、気相法シリカ(平均1次粒子径約12nm)を50kg用意し、上記各添加剤液と混合した後、特開2002−47454号公報の実施例5に記載された分散方法により分散してシリカ分散液1を得た。
【0103】
退色防止剤(AF−1):HO−N(C2H4SO3Na)2
〈シリカ分散液2の調製〉
シリカ分散液1の調製において、カチオンポリマーをP−1からP−2に変更した以外は同様にして、シリカ分散液2を調製した。
【0104】
【化2】
【0105】
〔塗布液の調製〕
インク吸収層面側用の第1層、第2層、第3層および第4層の各塗布液を、以下の手順で調製した。
【0106】
(第1層用塗布液の調製)
610mlの上記シリカ分散液1を40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
【0107】
純水で全量を1000mlに仕上げた。
【0108】
(第2層用塗布液の調製)
650mlの上記シリカ分散液1を40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
【0109】
純水で全量を1000mlに仕上げた。
【0110】
(第3層用塗布液の調製)
650mlの上記シリカ分散液2を40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
【0111】
純水で全量を1000mlに仕上げた。
【0112】
(第4層用塗布液の調製)
650mlの上記シリカ分散液2を40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
【0113】
純水で全量を1000mlに仕上げた。
【0114】
【化3】
【0115】
上記のようにして調製した各塗布液を、東洋濾紙株式会社製フィルターのTCP10で2段ろ過した。
【0116】
上記調製した各塗布液は、いずれも40℃において30〜80mPa・s、15℃において、30,000〜100,000mPa・sの粘度特性を示した。
【0117】
〔記録用紙1〜8の作製〕
以上のようにして調製した各塗布液を、ポリオレフィンで両面を被覆した上記支持体1〜8の表面側に、第1層(35μm)、第2層(45μm)、第3層(45μm)、第4層(40μm)の順になるように各層を同時塗布した。なお、第3層には、上記第3層用塗布液に対して3%の容量比で、20%の酢酸ジルコニルを、塗布直前(塗布の約5秒前)にインライン混合した。なお、括弧内の数値は、それぞれの湿潤膜厚を示す。
【0118】
塗布は、それぞれの塗布液を40℃で、4層式カーテンコーターを用いて同時重層塗布を行い、塗布直後に8℃に保持した冷却ゾーンで20秒間冷却した後、20〜30℃、相対湿度20%以下の条件で40秒間、55℃、相対湿度20%以下の条件で120秒間、55℃、相対湿度30%以下の条件で60秒間、各々の乾燥風を吹き付けて乾燥した。このとき、恒率乾燥領域における皮膜温度は8〜30℃であり、その後の減率乾燥領域で、皮膜温度は徐々に上昇した後、23℃、相対湿度40〜60%で調湿してロール状に巻き取って、記録用紙1〜8を作製した。得られた各記録用紙は、その後40℃で5日間加温保管した。
【0119】
《記録用紙の評価》
上記作製した記録用紙1〜8について、以下の方法に従って、光沢度、C値及び光沢感を評価した。
【0120】
(光沢度の測定)
記録面側の光沢度は、JIS Z 8741に規定する方法に準じて、日本電色工業社製の光沢度計(VGS−1001DP)を用いて75度鏡面光沢度を測定し、これを光沢度とした。
【0121】
(C値の測定)
記録面側のC値は、JIS K 7105に規定する方法に準じて、像鮮明度測定機ICM−IDP(スガ試験機械(株)製)で反射60度、光学くし2mmでの像鮮明度(C値)を測定した。測定は同一試料で5回行い、5回測定の平均値をとった。
【0122】
(光沢感の評価)
各記録用紙の記録面側を目視観察し、下記の基準に則り光沢感の評価を行った。
【0123】
◎:光沢感が非常に良好である
○:光沢感が良好である
△:光沢感が比較的劣る
×:光沢感が感じられない
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0124】
【表1】
【0125】
表1より明らかなように、支持体のろ波最大うねりが1μm未満である比較の記録用紙1は、高い光沢度を示したが、C値が比較的低く、光沢感は不満足であった。また、ろ波最大うねりは本発明で規定する範囲内であるが,Raが0.5μmを越える比較の記録用紙8は、光沢度とC値が共に低く、一番低い光沢感であった。
【0126】
これに対して、本発明で規定する特性を有する支持体を用いた記録用紙2〜7は、高い光沢度とC値を有し、いずれも目視で良好な光沢感を示した。
【0127】
特に、ろ波最大うねりが1.2〜2.5μm、Raが0.1〜0.3μmにある支持体を用いた記録用紙は特に良好な光沢感を示した。
【0128】
実施例2
実施例1で作製した記録用紙3において、インク吸収層側のポリエチレン被覆層の厚みを、表2に記載の様に変化させた以外は同様にして、支持体3A〜3Cを作製し、インク吸収層を実施例1と同様に塗布して記録用紙3A〜3Cを作製した。
【0129】
これらの記録用紙について、実施例1と同様に光沢度、C値及び光沢感の評価を行い、得られた結果を表2に示す。
【0130】
【表2】
【0131】
表2より明らかなように、ポリエチレン樹脂層の厚みを変えて支持体のろ波最大うねりを変化させたときにも、本発明で規定する特性を有する支持体を用いた記録用紙は、高い光沢度とC値を有し、いずれも目視で良好な光沢感を示した。
【0132】
実施例3
実施例1で作製した記録用紙3において、インク吸収層に用いたシリカの一次粒子の平均粒径を、12nmから20nmに変更した以外は同様にして、記録用紙3Dを作製した。また、実施例1で作製した記録用紙3において、下引き層のポリビニルアルコールの付き量を0.05g/m2から0.25g/m2に変更した以外同様にして、記録用紙3Eを作製した。
【0133】
上記記録用紙3D、記録用紙3Eと記録用紙3について、実施例1と同様に光沢度、C値及び光沢感の評価を行い、得られた結果を表3に示す。
【0134】
【表3】
【0135】
表3より明らかなように、記録用紙3Dと記録用紙3Eは、いずれも支持体は記録用紙3と同一の支持体3を使用したが、記録用紙3Dではシリカ粒子の一次粒径を20nmのものを使用したため、光沢度とC値が共に低下し、光沢感も記録用紙3に対して低下した。また、記録用紙3Eは下引き層を厚膜化することで、インク吸収層を塗布する際に乾燥過程で塗布筋が発生し、光沢度の低下はそれほど大きくはないが、C値の低下が認められ光沢感は低下した。
【0136】
【発明の効果】
本発明により、ポリオレフィン樹脂で被覆した紙支持体に多孔質インク吸収性を設けたインクジェット記録用紙において、視感的に高い光沢感の得られるインクジェット記録用紙を提供することができた。
Claims (6)
- ポリオレフィン樹脂で紙の両面を被覆した支持体上に、主として親水性ポリマーからなる下引き層と、多孔質インク吸収層とをこの順に設けたインクジェット記録用紙において、該多孔質インク吸収層の塗設面側のポリオレフィン樹脂被覆表面が、JIS B 0610で規定されるろ波最大うねり(低域カットオフ値8mm、広域カットオフ値0.8mm、基準長80mm)が1〜3μmであり、JIS B 0601で規定される中心線平均粗さRa(基準長2.5mm、カットオフ値0.8mm)が0.1〜0.5μmであることを特徴とするインクジェット記録用紙。
- 前記多孔質インク吸収層の塗設面側のポリオレフィン樹脂被覆表面のJIS Z 8741で規定する75度鏡面光沢が、30〜80%であることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録用紙。
- 前記多孔質インク吸収層表面のJIS Z 8741で規定する75度鏡面光沢が、50%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録用紙。
- 前記多孔質インク吸収層表面のJIS K 7105で規定するC値が、40%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
- 前記下引き層の塗布固形分量が、支持体1m2あたり0.02〜0.2gであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
- 支持体から最も遠い位置にある前記多孔質インク吸収層が無機微粒子を含有し、該無機微粒子が一次粒子の平均粒径が6〜15nmのシリカであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
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