JP2004281195A - 水素吸蔵合金電極及びこれを用いたニッケル水素蓄電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ニッケル粉末と“希土類元素と遷移元素とを主成分とする、水素を吸蔵脱離可能な水素吸蔵合金粉末”とを含有するとともに、水素吸蔵合金粉末は、水素平衡解離圧が異なる2種以上の水素吸蔵合金粉末からなり、水素平衡解離圧が最も高い高平衡圧水素吸蔵合金粉末は、60℃,水素吸蔵量が0.5重量%の条件において、水素平衡解離圧が0.65MPa以上であり、水素平衡解離圧が最も低い低平衡圧水素吸蔵合金粉末は、60℃,水素吸蔵量が0.5重量%の条件において、水素平衡解離圧が0.1MPa以下である水素吸蔵合金電極。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素吸蔵合金電極、及び、これを用いたニッケル水素蓄電池に関し、さらに詳しくは、高率放電性能及び充放電サイクル性能に優れたニッケル水素蓄電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電気自動車、電動工具を始めとする大電流放電が必要な電動機器が急速に増加する傾向にある。これらの機器の電源として、密閉型ニッケル水素蓄電池はニッケルカドミウム蓄電池や鉛蓄電池等よりも単位体積および単位質量当たりのエネルギが高い上、環境にクリーンな電源として最近特に注目されている。また、ニッケル水素蓄電池は、過充電時に正極で発生する酸素を水素吸蔵合金を含有する負極で吸収する事が可能であるため、充電制御方式がリチウムイオン電池に比べて単純でよく、充電回路も簡単になる利点を有している。
【0003】
しかしながら、水素吸蔵合金は合金表面での電荷移動が遅いため、ニッケルカドミウム電池に比較して高率放電性能が劣るという欠点を有していた。また、希土類元素とニッケルと他の遷移金属元素とを主成分として構成された、水素を吸蔵脱離する水素吸蔵合金が知られており、この水素吸蔵合金を含有する電極を備える電池は、充分な放電特性を発揮するまでの初期の活性化に時間がかかり、数十回から場合によっては数百回の活性化のための充放電が必要となっている。
【0004】
これらの問題点のうち、水素吸蔵合金の活性化が遅く、高率放電に優れない点を解決するため、多くの提案がなされている。例えば、水素吸蔵合金に対して表面処理を行い、前記活性化のための充放電サイクル数の低減、及び、高率放電性能の向上を図ろうとする方法が知られている。しかしながら、この方法では、前記表面処理に要するコストが高いのみならず、高率放電特性を充分に向上させることができない。
【0005】
このため、優れた高率放電性能を有する電池を得るべく、特性の異なる水素吸蔵合金を2種類以上含有する負極が提案されている。
より具体的には、負極が、一定温度下で互いに異なるプラトー圧(水素平衡解離圧)を有する3種類以上の水素吸蔵合金を含むことが開示されている(従来例1:特許文献1参照)。
また、負極は45℃での水素吸蔵量0.5重量%時の水素平衡解離圧が異なる少なくとも2種類の水素吸蔵合金a,bを含有し、45℃での水素吸蔵量0.5重量%時の水素平衡解離圧が水素吸蔵合金aが0.35MPa、水素吸蔵合金bが0.02MPaである例が記載されている(従来例2:特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−199522号公報(段落[0009]〜[0011])
【特許文献2】
特開2000−149933号公報(段落[0020])
【特許文献3】
特開昭53−103541号公報
【特許文献4】
特公昭58−46827号公報
【特許文献5】
特開昭61−64069号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来例1,2の負極を有するニッケル水素蓄電池は、高い水素平衡解離圧を有する水素吸蔵合金によって、高率放電性能が改善される傾向とはなるものの充分ではなく、また、活性化に必要とされる充放電サイクル数も十分に低減されない。これは、水素吸蔵合金が高い水素解離圧を有するため水素脱離しやすくなるものの、水素吸蔵合金が反応に必要とされる活性場を充分に有していないためと考えられる。
また、従来例1,2の負極を有するニッケル水素蓄電池は、充放電サイクル性能も不充分である。これは、前記したように、水素吸蔵合金が反応に必要とされる活性場を充分に有していないことに加え、一般に、高い水素平衡解離圧の合金は低い水素平衡解離圧の合金より充放電容量が少なく、また、Coの含有比率が小さく、高い水素平衡解離圧の合金は、耐食性に優れないためと考えられる。
【0008】
また、一般に、水素吸蔵合金粉末は導電性が低く、また電極の活物質として使用した場合、作用面積が小さい欠点がある。このため水素吸蔵合金電極を負極とするニッケル水素蓄電池は高率放電性能が劣る欠点があった。電極の導電性を向上させる為の手段としては、水素吸蔵合金粉末へのカーボンブラック添加が提案されているが(前記特許文献3参照)、十分な効果が得られない。また、水素吸蔵合金粉末にニッケル粉末を添加して焼結する方法(前記特許文献4参照)、水素吸蔵合金表面をニッケルで被覆する方法(前記特許文献5参照)が提案されているが、導電性は向上するものの、高率放電性能の向上には効果が得られない。これは、これら添加物が合金の接触抵抗を低減するものの、合金中の水素の拡散速度が遅いため、活性場としての効果を十分に発揮できないことが考えられる。このような欠点は水素吸蔵合金粉末そのものの改良や活性場としての添加物のみの改良では困難であり、別の解決手段が必要とされながら、従来有効な提案がなされていなかった。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためなされたものであって、その目的は、高率放電性能及び充放電サイクル性能に優れたニッケル水素蓄電池を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、密閉型ニッケル水素蓄電池の高率放電の抵抗成分を行うことによって、高率放電時の抵抗の大きな部分を負極が占めることを確認した。そこで、本発明者らは、高率放電時において、負極に含有される水素吸蔵合金の表面における、電荷移動速度を向上するべく、鋭意検討した結果、それぞれ特定の値とされた水素平行解離圧が異なる2種類以上の水素吸蔵合金粉末とニッケル粉末とを混合して負極を得た場合に、驚くべきことに、高率放電性能及び充放電サイクル性能に優れたニッケル水素蓄電池が得られることを見出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明の技術的構成および作用効果は以下の通りである。ただし、作用機構については推定を含んでおり、その作用機構の正否は、本発明を制限するものではない。
【0012】
すなわち、請求項1に係る水素吸蔵合金電極は、ニッケル粉末と“希土類元素と遷移元素とを主成分とする、水素を吸蔵脱離可能な水素吸蔵合金粉末”とを含有するとともに、水素吸蔵合金粉末は、水素平衡解離圧が異なる2種以上の水素吸蔵合金粉末からなり、水素平衡解離圧が最も高い高平衡圧水素吸蔵合金粉末は、60℃,水素吸蔵量が0.5重量%の条件において、水素平衡解離圧が0.65MPa以上であり、水素平衡解離圧が最も低い低平衡圧水素吸蔵合金粉末は、60℃,水素吸蔵量が0.5重量%の条件において、水素平衡解離圧が0.1MPa以下であることを特徴としている。
【0013】
このような構成によれば、水素吸蔵合金電極を、例えばニッケル水素蓄電池の負極として使用すれば、前記水素平衡解離圧が0.65MPa以上の高平衡圧水素吸蔵合金粉末を含有することによって、水素を水素吸蔵合金から脱離しやすくできるとともに、水素吸蔵合金電極がニッケル粉末を含有することによって、反応に必要とされる活性場を充分に供給して充放電容量を向上でき、高平衡圧水素吸蔵合金粉末に起因する充放電容量の低下を補うことができるので、優れた高率放電性能を発現できる。また、前記水素平衡解離圧が0.1MPa以下の低平衡圧水素吸蔵合金粉末を含有することよって、充分な負極容量を得ることができるせいか、優れた充放電サイクル性能を発現できる。以上により、高率放電性能及び充放電サイクル性能に優れたニッケル水素蓄電池を得ることのできる水素吸蔵合金電極とすることができる。なお、高率放電特性を向上させる為に前記ニッケル粉末に替えて水素吸蔵合金粉末にPd,Pt等の貴金属元素を加えることもできるが高価になる欠点がある。
【0014】
請求項2に係る水素吸蔵合金電極は、ニッケル粉末の比表面積が1.5m2/g以上、ニッケル粉末のかさ密度が0.8g/ml以下であることを特徴としている。なお、ここでいう比表面積は、BET法(窒素吸着法)によって測定した値であり、かさ密度は、A.S.T.MスペシィフィケーションB329に定められた粉体の見掛け密度の標準測定法によって測定した値である。
【0015】
このような構成によれば、ニッケル粉末の比表面積が1.5m2/g以上であり、ニッケル粉末の単位重量に対して前記活性場が充分に存在するので、より確実に、高率放電性能を優れたものにできる。また、ニッケル粉末のかさ密度が0.8g/ml以下であることによって、電極内部でニッケル粉末が高度に分散できるせいか、優れた高率放電性能を発現できる。
以上により、特に、高率放電性能に優れたニッケル水素蓄電池を得ることのできる水素吸蔵合金電極とすることができる。
【0016】
請求項3に係る水素吸蔵合金電極は、水素吸蔵合金粉末100重量部に対して、ニッケル粉末を2重量部以上10重量部以下で含有してなることを特徴としている。
【0017】
このような構成によれば、水素吸蔵合金電極を例えばニッケル水素蓄電池の負極として使用すれば、水素吸蔵合金粉末100重量部に対してニッケル粉末を2重量部以上で含有しているので、前記活性場を充分に存在させることができ、より確実に高率放電性能を優れたものにできるとともに、ニッケル粉末を10重量部超過とならないように含有しているので、水素吸蔵合金電極を充分に含有でき、充分な負極容量を得ることができるせいか、優れた充放電サイクル性能を発現できる。
以上により、特に、高率放電性能及び充放電サイクル性能に優れたニッケル水素蓄電池を得ることのできる水素吸蔵合金電極とすることができる。
【0018】
請求項4に係る水素吸蔵合金電極は、高平衡圧水素吸蔵合金粉末、及び、低平衡圧水素吸蔵合金粉末は、希土類元素としてLaを主成分とし、Ni,Co,Mn及びAlからなる群から選択される1種以上の元素を含有するとともに、高平衡圧水素吸蔵合金粉末の含有量は、水素吸蔵合金電極の全重量に対して10重量%以上30重量%以下であり、高平衡圧水素吸蔵合金粉末は、Ni元素に対してLaが5mol%以上、Ni元素に対してMnとAlとの総モル量が5mol%以下となるように構成されたことを特徴としている。
【0019】
高平衡圧水素吸蔵合金粉末、及び、低平衡圧水素吸蔵合金粉末が、希土類元素としてLaを主成分とし、遷移元素としてNi,Co,Mn及びAlからなる群から選択される1種以上の元素を主成分とすることによって、充分な放電容量を確実に発現して高率放電性能が優れる傾向となるとともに、充放電サイクル性能が優れる傾向にもなる。また、高平衡圧水素吸蔵合金粉末は、Ni元素に対してLaが5mol%以上、Ni元素に対してMnとAlとの総モル量が5mol%以下となるように構成されるので、高い水素平衡解離圧を確実に達成でき、優れた高率放電性能を確実に発現できるとともに、耐食性(特にアルカリ電解液に対する耐食性)に優れることから、優れた充放電サイクル性能を確実に発現できる。
【0020】
また、高平衡圧水素吸蔵合金粉末の含有量は、水素吸蔵合金電極の全重量に対して10重量%以上であるので、優れた高率放電性能を発現できるとともに、30重量%超過とならないように含有しているので、低平衡圧水素吸蔵合金粉末を充分に含有でき、充分な負極容量を得ることができるせいか、優れた充放電サイクル性能を発現できる。
以上により、特に、高率放電性能及び充放電サイクル性能に優れたニッケル水素蓄電池を得ることのできる水素吸蔵合金電極とすることができる。
【0021】
請求項5に係る水素吸蔵合金電極は、高平衡圧水素吸蔵合金粉末の平均粒径が25μm以下であり、低平衡圧水素吸蔵合金粉末の平均粒径が30μm以上であることを特徴としている。
【0022】
このような構成によれば、平均粒径の大きい低平衡圧水素吸蔵合金粉末を、平均粒径の小さい高平衡圧水素吸蔵合金粉末で包み込み、水素吸蔵合金間の水素移動を速やかに実施できる。また、低平衡圧水素吸蔵合金粉末の平均粒径が小さくなりすぎず、合金の比表面積が大きくなりすぎないので、耐食性(特にアルカリ電解液に対する耐食性)を充分に確保できる。
以上により、特に、高率放電性能及び充放電サイクル性能に優れたニッケル水素蓄電池を得ることのできる水素吸蔵合金電極とすることができる。
【0023】
請求項6に係るニッケル水素蓄電池は、正極活物質を含有する正極、本発明に係る水素吸蔵合金電極からなる負極、及び、電解液を具備している。
このような構成によれば、本発明に係る水素吸蔵合金電極を負極として使用するので、高率放電性能及び充放電サイクル性能に優れたニッケル水素蓄電池とすることができる。
【0024】
請求項7に係るニッケル水素蓄電池は、前記正極活物質が水酸化ニッケルを主成分とし、前記電解液がアルカリ金属水酸化物水溶液を主成分とすることを特徴としている。
このような構成によれば、より確実に、高率放電性能及び充放電サイクル性能に優れたニッケル水素蓄電池とすることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態に係る水素吸蔵合金電極は、ニッケル粉末と“希土類元素と遷移元素とを主成分とする、水素を吸蔵脱離可能な水素吸蔵合金粉末”とを含有している。ここで、水素吸蔵合金粉末は、水素平衡解離圧が異なる2種以上の水素吸蔵合金粉末からなっている。水素平衡解離圧が最も高い高平衡圧水素吸蔵合金粉末は、60℃,水素吸蔵量が0.5重量%の条件において、水素平衡解離圧が0.65MPa以上であり、水素平衡解離圧が最も低い低平衡圧水素吸蔵合金粉末は、60℃,水素吸蔵量が0.5重量%の条件において、水素平衡解離圧が0.1MPa以下である。
【0026】
ここで、水素平衡解離圧は、試料である水素吸蔵合金の粉末0.5グラムを0.1ミリグラムの精度で精秤し、サンプルホルダーに充填して東洋紡エンジニアリング(株)製、PCT測定用自動高圧ジーベルツ装置(PCT−A02型)を用いて、水素を水素吸蔵合金100重量部に対して、0.5重量部含有せしめて測定した値とすることができる(実施例はこの方法に準じて測定した。)。
【0027】
水素吸蔵合金電極が、前記高平衡圧水素吸蔵合金粉末とニッケル粉末とを含有することによって、優れた高率放電性能を発現できる。これは、高率放電時に高平衡圧水素吸蔵合金粉末が、活性場としてのニッケル粉末を十分な量を得ることによって優先的に放電することができ、高率放電特性を向上することのほかに、低平衡圧水素吸蔵合金粉末中の水素が、高平衡圧水素吸蔵合金粉末へ移動し、高い水素平衡解離圧を得て高速に、高平衡圧水素吸蔵合金から解離し、充分な量で存在する活性場としてのニッケル粉末にて、放電反応を実施できるためであるものと考えられる。
【0028】
また、水素吸蔵合金電極が、前記低平衡圧水素吸蔵合金粉末を含有することよって、充分な負極容量を得ることができる。
【0029】
水素平衡解離圧が最も高い高平衡圧水素吸蔵合金粉末の水素平衡解離圧が0.65MPa未満となると、水素が水素吸蔵合金から脱離しにくくなって、優れた高率放電性能を得ることができない。
水素吸蔵合金電極がニッケル粉末を含有しないと、高平衡圧水素吸蔵合金粉末に起因する充放電容量の低下が顕在化し、優れた高率放電性能を得ることができない。
また、水素平衡解離圧が最も低い低平衡圧水素吸蔵合金粉末の水素平衡解離圧が0.1MPa超過となると、充分な負極容量を得ることができなくなって、優れた充放電サイクル性能を得ることができない。
【0030】
ニッケル粉末は、比表面積が1.5m2/g以上であり、かつ、かさ密度が0.8g/ml以下であるのが好ましく、これにより、特に、優れた高率放電性能を発現できる。ニッケル粉末のかさ密度は、ニッケルの分散状態に寄与していると考えられ、比表面積が1.5m2/g以上であっても、かさ密度が0.8g/mlを越える場合、電極中でも塊状の粒子となりやすく、ニッケルが高度に分散できにくいせいか、高率放電特性に優れない傾向となる。
【0031】
ニッケル粉末は、比表面積が4.0m2/g以上、かつ、かさ密度が0.8g/ml以下であるのがより好ましく、これにより、極めて優れた高率放電性能を発現できる。ニッケル粉末は、反応活性場触媒として作用できるので、比表面積が大きいほど高率放電特性を改善できるものと考えられる。
【0032】
水素吸蔵合金電極は、水素吸蔵合金粉末100重量部に対して、ニッケル粉末を2重量部以上10重量部以下で含有してなるのが好ましい。水素吸蔵合金電極が、水素吸蔵合金粉末100重量部に対して、ニッケル粉末を2重量部以上含有していることによって、より確実に高率放電性能を優れたものにできるとともに、ニッケル粉末を10重量部超過とならないように含有しているので、優れた充放電サイクル性能を発現できる。
【0033】
また、ニッケル粉末の物性及び量を前記のようにすることによって、活性化の工程(充放電サイクル工程)を簡略化しても、初期から高率放電特性に密閉型ニッケル水素電池を得ることができる。なお、ニッケル粉末は、カルボニルニッケル法により得られたものを好適に使用できる。
【0034】
高平衡圧水素吸蔵合金粉末、及び、低平衡圧水素吸蔵合金粉末は、希土類元素としてLa(ランタン)を主成分とし、Ni(ニッケル),Co(コバルト),Mn(マンガン)及びAl(アルミニウム)からなる群から選択される1種以上の元素を含有するのが好ましい(Ni,Co,Mnは遷移金属)。
ここで、Laは、希土類元素の内、60mol%以上を占めるのが好ましく、また、通常、90mol%以下とされる。La以外の希土類元素としては、Ce,Pr,Nd等を挙げることができる。
また、Ni,Co,Mn及びAlからなる群から選択される1種以上の元素は、希土類元素以外の元素の内、Niが60mol%〜85mol%、Coが10mol%〜30mol%、Mnが0mol%〜10mol%、Alが0mol%〜10mol%とされるのが好ましい。Ni、Co、Mn、Al以外の元素(希土類元素以外の元素)としては、Fe、Cu等を挙げることができる。
水素吸蔵合金粉末の水素平衡解離圧は、合金を構成する元素の種類及び重量比を変更することによって調整できる。
【0035】
「60℃,水素吸蔵量が0.5重量%の条件において、水素平衡解離圧が0.65MPa以上」の水素吸蔵合金粉末(高平衡圧水素吸蔵合金粉末)としては、特に限定されるものではないが、Ni元素に対してLaが5mol%以上、Ni元素に対してMnとAlとの総モル量が5mol%以下となるように構成された合金粉末を好適に例示することができる。より詳細には、以下の組成範囲を満たす合金粉末を好適に例示することができる。ここで、各元素の量は、希土類元素以外の元素の総量を100mol%とした場合のmol%である。
La:5mol%〜20mol%
Ni:70mol%〜85mol%
Co:15mol%〜30mol%
Mn:0mol%〜5mol%
Al:0mol%〜5mol%
【0036】
「60℃,水素吸蔵量が0.5重量%の条件において、水素平衡解離圧が0.1MPa以下」の水素吸蔵合金粉末(低平衡圧水素吸蔵合金粉末)としては、以下の組成範囲を満たす合金粉末を好適に例示することができる。ここで、各元素の量は、希土類元素以外の元素の総量を100mol%とした場合のmol%である。
La:5mol%〜20mol%
Ni:65mol%〜75mol%
Co:10mol%〜20mol%
Mn:5mol%〜10mol%
Al:5mol%〜10mol%
【0037】
水素吸蔵合金粉末の製造方法は、特に限定されるものではないが、水素吸蔵合金を構成する各金属(前記した所定のモル比とされている)をアルゴン雰囲気下で、アーク溶解して鋳型に鋳込んだ後、900℃〜1050℃にて30分の熱処理(熟成)を行い、除冷を行って、水中でアトライタボールミルなどを用いて機械的に湿式粉砕するのが好ましい。この際、急冷法などの他の方法を使用すると、合金内の偏析が減少して、同等かそれ以上の充放電サイクル性能が得られやすい。
【0038】
高平衡圧水素吸蔵合金粉末、及び、低平衡圧水素吸蔵合金粉末が、前記したように、希土類元素としてLaを主成分とし、Ni,Co,Mn及びAlからなる群から選択される1種以上の元素を含有するとともに、高平衡圧水素吸蔵合金粉末の含有量は、水素吸蔵合金電極の全重量に対して10重量%以上30重量%以下であり、高平衡圧水素吸蔵合金粉末は、Ni元素に対してLaが5mol%以上、Ni元素に対してMnとAlとの総モル量が5mol%以下となるように構成された水素吸蔵合金電極を特に好ましい形態としてあげることができ、特に、優れた高率放電性能と充放電サイクル性能とを発現できる。
【0039】
これは、高平衡圧水素吸蔵合金粉末と低平衡圧水素吸蔵合金粉末の組成が類似していることによって、“合金粉末間における水素の移動が速やかであること”、“Laが、優れた放電性能と充放電サイクル性能とを発現できること”、“高平衡圧水素吸蔵合金粉末に関し、Mnの量とAlの量とが抑制されていることによって、高率放電時において極めて優れた高率放電性能を発現できる傾向となること”、“高平衡圧水素吸蔵合金粉末に関し、Laの量、及び、MnとAlとの総量が前記のように規定されることによって、耐食性(特にアルカリ電解液に対する耐食性)が優れ、充放電サイクル性能を確実に発現できること”によるものと考えられる。
【0040】
また、前記した特に好ましい形態では、高平衡圧水素吸蔵合金粉末の含有量が、水素吸蔵合金電極の全重量に対して10重量%以上とされることにより、優れた高率放電性能を発現できるとともに、30重量%超過とならないように含有することによって、低平衡圧水素吸蔵合金粉末を充分に含有でき、充分な負極容量を得ることができるせいか、優れた充放電サイクル性能を発現できる。
【0041】
また、高平衡圧水素吸蔵合金粉末の平均粒径を25μm以下とした場合、優れた高率放電特性を得ることができる。これは、高平衡圧水素吸蔵合金粉末を小粒径とすることで、低平衡圧水素吸蔵合金粉末を高平衡圧水素吸蔵合金粉末の合金で包み込み、合金間の水素移動を速やかに行われるものと考えられる。なお、高平衡圧水素吸蔵合金粉末の平均粒径は、通常、小さいほど高率放電性能は優れているが、充放電サイクル性能は低下する傾向となり、また、水素吸蔵合金粉末の粉砕が困難となるから、10μm以上とされるのが好ましい。
低平衡圧水素吸蔵合金粉末の平均粒径を30μm以上にした場合、優れた充放電サイクル性能を得ることができる。ここで、この平均粒径が30μm未満となると、合金の比表面積が大きいために、低平衡圧水素吸蔵合金粉末のアルカリ電解液による腐食が早くおこる傾向となる。なお、低平衡圧水素吸蔵合金粉末の平均粒径は、通常、50μm以下とされるのが好ましい。
そして、それぞれ異なる粒径を有する高平衡圧水素吸蔵合金粉末と低平衡圧水素吸蔵合金粉末とを用いた場合、高率放電特性と充放電サイクル性能とをより優れたものにできる。
【0042】
以上に説明した本発明の実施形態に係る水素吸蔵合金電極は、原料コストが高くないことから、安価に得ることができるという利点も有する。
【0043】
本発明の実施形態に係るニッケル水素蓄電池は、正極活物質を含有する正極、本発明の実施形態に係る水素吸蔵合金電極からなる負極、及び、電解液を具備している。
【0044】
正極が含有する正極活物質としては、水酸化ニッケルを主成分とするものが好ましく、より具体的には、水酸化ニッケルに水酸化亜鉛、水酸化コバルトを混合したものが用いられるが、これらを共沈法によって均一に分散せしめて得た水酸化ニッケル複合水酸化物の使用が特に好ましい。水酸化ニッケル複合酸化物以外の添加物には、導電性改質剤として水酸化コバルト、酸化コバルト等を用いるが、前記水酸化ニッケル複合酸化物に水酸化コバルトを被覆したものや、これらの水酸化ニッケル複合酸化物の一部を酸素または含酸素気体、または、K2S2O8、次亜塩素酸などの薬剤を用いて酸化したものを用いることができる。さらに、添加剤としては酸素過電圧を向上させる物質としてY、Yb等の希土類元素の酸化物や水酸化物を用いることができる。
正極活物質の総重量に対する水酸化ニッケルの重量割合は、多いほどエネルギー密度に優れるが、Co(OH)2、Zn(OH)2の含有量が少ないと高温での充電効率が低くなる傾向となり、充電時のγ水酸化ニッケルの生成の抑制すべく、Co(OH)2、Zn(OH)2等を含有する必要が生じる傾向となるので、82重量%〜90重量%であるのが好ましい。
ここで、正極活物質に含有される遷移金属元素の平均酸化数は、酸化剤により化学的に酸化されてなるか、電気分解により電気化学的に酸化されてなることにより、2.03〜2.4とされるのが好ましい。これにより、特に、正極の不可逆な反応分の容量を初回充電時に充電することがないため、負極に、正極の不可逆な反応分に対応する充電容量が形成されにくく、負極の充電可能な容量を多くすることができるので、充放電サイクル性能を向上できる。
【0045】
負極(本発明の実施形態に係る水素吸蔵合金電極)は、防蝕添加剤として、イットリウム、イッテルビウム、エルビウムの他に、ガドリニウム、セリウムの酸化物や水酸化物を含有することができる。また、予め前記した水素吸蔵合金にこれらの元素を金属として含有させてもよい。
【0046】
正極活物質は、平均粒径50μm以下の粉末であるのが好ましく、また、負極の構成部材である水素吸蔵合金粉末及びニッケル粉末の好ましい平均粒径は前記した通りである。粉末を所定の形状で得るためには各種の粉砕機や分級機が用いられる。例えば乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェトミル、旋回気流型ジェットミル等が用いられる。粉砕時には水、あるいはアルカリ金属水酸化物の水溶液を用いて湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、特に限定はなく、篩や風力分級機などが使用でき、また、乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
【0047】
また、正極及び負極は、さらに、導電剤、結着剤、増粘剤、フィラー等を含有してもよい。
【0048】
導電剤としては、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば限定されない。導電剤としては、通常、鱗状黒鉛,鱗片状黒鉛,土状黒鉛等の天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維、気相成長炭素、金属(銅,ニッケル,金等)粉、金属繊維等の導電性材料を1種またはそれらの混合物を挙げることができる。
【0049】
これらの導電剤の中では、電子伝導性及び塗工性の観点よりアセチレンブラックが望ましい。導電剤の添加量は、正極または負極の総重量に対して0.1重量%〜10重量%が好ましい。特にアセチレンブラックを0.1μm〜0.5μmの超微粒子に粉砕して用いると必要炭素量を削減できるため望ましい。これらの混合方法は、物理的な混合であり、その理想とするところは均一混合である。そのため、V型混合機、S型混合機、擂かい機、ボールミル、遊星ボールミルといったような粉体混合機を乾式、あるいは湿式で使用することが可能である。
【0050】
前記結着剤としては、通常、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),ポリエチレン,ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM),スルホン化EPDM,スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のゴム弾性を有するポリマーを1種または2種以上の混合物として用いることができる。結着剤の添加量は、正極または負極の総重量に対して0.1〜3重量%が好ましい。
【0051】
前記増粘剤としては、通常、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等の多糖類等を1種または2種以上の混合物として用いることができる。増粘剤の添加量は、正極または負極の総重量に対して0.1〜3重量%が好ましい。
【0052】
フィラーとしては、電池性能に悪影響を及ぼさない材料であれば特に制限はない。通常、ポリプロピレン,ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー、炭素等が用いられる。フィラーの添加量は、正極または負極の総重量に対して添加量は5重量%以下が好ましい。
【0053】
正極および負極は、主要構成材料(正極においては正極活物質、負極においてはニッケル粉末と水素吸蔵合金粉末)、導電剤および結着剤を、水やアルコール、トルエン等の有機溶媒に混合させた後、得られた混合物を下記に詳述する集電体の上に塗布し、乾燥することによって、好適に作製される。前記塗布方法については、例えば、アプリケーターロールなどのローラーコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレード方式、スピンコーティング、バーコータ等の手段を用いて任意の厚みおよび任意の形状に塗布することが望ましいが、これらに限定されるものではない。
【0054】
正極の集電体としては、構成された電池に悪影響を及ぼさない電子伝導体であれば特に選ぶところはない。例えば、ニッケルやニッケルメッキを行った鋼板を好適に用いることができ、発泡体、繊維群の形成体、凸凹加工を施した3次元機材の他に、パンチング鋼板等の2次元機材が用いられる。厚さの限定は特にないが、5〜700μmのものが用いられる。これら集電体の中で、正極としては、アルカリに対する耐食性と耐酸化性に優れているNiを、集電性に優れた構造である多孔体構造の発泡体としたものを使用することが好ましい。
【0055】
負極の集電体としては、安価で、且つ電導性に優れる鉄または鋼の箔ないし板をパンチング加工し、耐還元性向上のためにNiメッキを施した、多孔板を使用することが好ましい。鋼板のパンチングの孔径は1.7mm以下、開口率40%以上であることが好ましく、これにより少量の結着剤でも水素吸蔵合金粉末と集電体との密着性は優れたものとなる。焼成炭素繊維、導電性高分子の他に、接着性、導電性および耐酸化性向上の目的で集電体のニッケルの表面をNi粉末やカーボンや白金等を付着させて処理したものを用いることができる。これらの材料については表面を酸化処理することも可能である。
【0056】
負極(本発明の実施形態に係る水素吸蔵合金電極)に含まれる水素吸蔵合金粉末は、合金粉末同士の接触部により、水素の移動が行われていると考えられる。このため、負極全体に対する水素吸蔵合金粉末の空間密度は、高い方が好ましいが、高すぎると巻き込み時に割れが発生して短絡を多発してしまう。ここで、水素吸蔵合金粉末の密度は、合金の比重やフィラーの密度によって変動するため、残存する空間で表記するのが適切であり、負極は、残存する空間を集電体を除く全負極空間の25%以下にするのが好ましく、前記載の短絡発生を抑制するため15%以上とするのが好ましい。
【0057】
また、ニッケル水素蓄電池としては、正極と負極との間にニッケル水素電池用セパレータが介装された形態を好適に例示でき、このようなニッケル水素電池用セパレータとしては、既知の優れた高率放電特性を示す多孔膜や不織布等を、単独あるいは併用することができる。セパレータを構成する材料としては、例えばポリエチレン,ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂や、ナイロンを挙げることができる。セパレータの空孔率は強度、ガス透過性の観点から80体積%以下が好ましい。また、充放電特性の観点から空孔率は20体積%以上が好ましい。セパレータは親水化処理を施す事が好ましい。例えば、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂繊維の表面に親水基のグラフト重合処理、スルフォン化処理、コロナ処理、PVA処理を施したり、これらの処理を既に施された繊維を混合したシートを用いても良い。
【0058】
電解液としては、一般にアルカリ電池等への使用が提案されているものが使用可能である。水を溶媒とし、溶質としてはカリウム,ナトリウム,リチウム等のアルカリ金属の水酸化物の単独またはそれら2種以上の混合物を溶解したもの等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。水素吸蔵合金粉末への防食剤や、正極での過電圧向上のためや、負極の耐食性の向上や、自己放電向上の為の電解液への添加剤として、イットリウム、イッテルビウム、エルビウム、カルシウム、硫黄、亜鉛等の化合物を単独またはそれら2種以上混合して添加することができる。
【0059】
電解液中の電解質塩の濃度としては、高い電池特性を有する電池を確実に得るためには、水酸化カリウムを5〜7mol/l、水酸化リチウムを0.5〜0.8mol/l含む水溶液が好ましい。
【0060】
本発明の実施形態に係る電池は、正極活物質が水酸化ニッケルを主成分とし、電解液がアルカリ金属水酸化物水溶液を主成分とする形態が好ましく、これにより、より確実に、高率放電性能及び充放電サイクル性能に優れたニッケル水素蓄電池とすることができる。
【0061】
本発明の実施形態に係るニッケル水素蓄電池は、電解液を、例えば、ニッケル水素蓄電池用セパレータと正極と負極とを積層する前または積層した後に注液し、最終的に、外装材で封止することによって、密閉型ニッケル水素蓄電池として製造するのが好適である。また、正極と負極とがニッケル水素蓄電池用セパレータを介して積層された発電要素を巻回してなるニッケル水素蓄電池においては、電解液は、前記巻回の前後に発電要素に注液されるのが好ましい。注液法としては、常圧で注液することも可能であるが、真空含浸方法や加圧含浸方法や遠心含浸法も使用可能である。
【0062】
ニッケル水素蓄電池の外装体の材料としては、ニッケルメッキした鉄やステンレススチール、ポリオレフィン系樹脂等またはこれらの複合体が挙げられる。
【0063】
ニッケル水素蓄電池の構成、形状については特に限定されるものではなく、正極、負極および単層又は複層のセパレータを有するコイン電池やボタン電池、角型電池、扁平型電池、さらに、ロール状の正極、負極およびセパレータを有する円筒型電池等が一例として挙げられる。
円筒型電池としては、例えば、図1の破断斜視図に示すように、ニッケル水素蓄電池1は、正極3と負極4とがニッケル水素蓄電池用セパレータ5を介して積層された発電要素を巻回してロール状物とし、これを円筒状のケース2の中に収容してなる形態を例示できる。ここで、ケース2には絶縁ガスケット6を介して上部開口部2aが設けられており、上部開口部2aの略中央部には、正極端子8が設けられている。また、ロール状物の上面には集電体9が設けられており、集電体9と上部開口部2aとの間には封口板7が設けられている。
【0064】
【実施例】
以下に、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の記載により限定されるものではなく、試験方法や構成する電池の正極活物質、負極材料、正極、負極、電解質、セパレータ並びに電池形状等は任意である。
【0065】
<実施例1>
[正極の作成]
(水酸化ニッケル粒子の合成)
硫酸ニッケルと硫酸亜鉛と硫酸コバルトとを、それぞれの金属の水酸化物の重量比(すなわち、水酸化ニッケル:水酸化亜鉛:水酸化コバルト)が93:5:2となるように溶解した水溶液に、硫酸アンモニウムと苛性ソーダ水溶液とを添加してアンミン錯体を生成させた。反応系を激しく撹拌しながら更に苛性ソーダを滴下し、反応系の温度を45±2℃、pHを12±0.2に制御して芯層母材となる球状高密度水酸化ニッケル粒子を合成した。
【0066】
(水酸化ニッケル粒子表面への表面層の形成)
前記高密度水酸化ニッケル粒子を、温度を45±2℃、苛性ソーダでpH12±0.2に制御したアルカリ性水溶液に投入した。該溶液を撹拌しながら、所定濃度の硫酸コバルト、アンモニアを含む水溶液を滴下した。この間、苛性ソーダ水溶液を適宜滴下して反応浴のpHを12±0.2の範囲に維持した。約1時間、温度を45±2℃、pHを12±0.2の範囲に保持し、水酸化ニッケル表面にコバルトを含む混合水酸化物から成る表面層を形成させた。該混合水酸化物の表面層の比率は芯層母粒子(以下単に芯層と記述する)に対して7重量%であった。
【0067】
(正極活物質粒子の酸化処理)
前記混合水酸化物から成る表面層を有する水酸化ニッケル粒子100gを、温度60℃、濃度10wt%のNaOH水溶液400g中に投入し、充分に撹拌した。続いて次亜塩素酸ナトリウム溶液(和光純薬工業株式会社製)45mlを添加し、30分間撹拌を続けた。活物質粒子をろ過し、水洗、乾燥した。得られた活物質粒子に濃度30wt%、温度80℃のNaOH水溶液20gを加えて、温度80℃に2時間保持した後水洗、乾燥した。得られた活物質粒子に含まれる遷移金属元素(Ni,Co)の平均酸化数を公知の方法(活物質粒子を硫酸第1鉄アンモニウムと反応させた後、過マンガン酸カリウムを用いて酸化還元滴定を行う)で測定した。その結果は、遷移金属元素(Ni,Co)の平均酸化数が2.15であった。
【0068】
(正極板の作製)
前記活物質粒子にカルボキシメチルセルローズ(CMC)水溶液を添加して前記活物質粒子:CMC溶質=99.5:0.5のペースト状とし、該ペーストを450g/m2のニッケル多孔体(住友電工社製、商品名ニッケルセルメット#8)に充填した。その後、80℃で乾燥した後、所定の厚みにプレスし、表面にテフロン(登録商標)コーティングを行い幅34mm(内、無塗工部1mm)長さ260mmの容量3000mAhのニッケル正極板を製造した。
【0069】
[負極の作製]
粒径20μmのAB5型希土類系のLaNi5の組成を有する水素吸蔵合金20重量部と粒径30μmのAB5型希土類系のMmNi3.75Co0.6Al0.3Mn0.35の組成(Mm:ミッシュメタル)を有する水素吸蔵合金80重量部とを30分間混合し、得られた合金混合粉末を95重量部とカルボニルニッケル法によって製造したニッケル粉末5重量部を30分間混合して、合金粉末混合体を得た。前記2種の水素吸蔵合金の「60℃,水素吸蔵量が0.5重量%の条件における水素平衡解離圧」は、それぞれ、0.65Mpa、0.10Mpaであった。また、ニッケル粉末のBET法による比表面積は1.5m2/g、かさ密度は0.8g/mlであった。
【0070】
このようにして得られた合金粉末混合体とスチレンブタジエン共重合体エマルジョンとを乾量基準の質量比で99.35:0.65の割合で混合し、水で分散してペースト状にし、ブレードコーターを用いて、鉄にニッケルメッキを施した穴直径1.0mm、開口率42.5%のパンチング鋼板に塗布した後、80℃で乾燥し、所定の厚みにプレスして幅34mm(内、無塗工部1mm)長さ260mmの容量4800mAhの水素吸蔵合金負極板を製造した。
【0071】
前記の水素吸蔵合金負極板と、スルフォン化処理を施した厚み120μmのポリプロピレンの不織布状セパレータと、前記ニッケル正極板とを組み合わせてロール状に巻回し、6.8Nの水酸化カリウム水溶液に0.8mol/lの水酸化リチウムを溶解したアルカリ電解液を注液し、開弁圧2.4Mpaの逆止弁を具備するsubC形の密閉型ニッケル水素蓄電池を作製した。この電池を実施例1のニッケル水素蓄電池とする。
【0072】
<実施例2>
ボールミルによって粉砕して得られたニッケル粉末を用いたこと以外は実施例1と同様にすることによって、実施例2のニッケル水素蓄電池を製造した。負極中のニッケル粉末のBET法による比表面積は1.0m2/g、かさ密度は1.2g/mlであった。
【0073】
<実施例3>
合金粉末混合体を90重量部と、カルボニルニッケル法によって製造したニッケル粉末10重量部とを30分間混合したこと以外は、実施例1と同様にすることによって、実施例3のニッケル水素蓄電池を製造した。
【0074】
<実施例4>
カルボニルニッケル法によって製造したニッケル粉末のBET法による比表面積が4.0m2/g、かさ密度は0.8g/mlであること以外は、実施例1と同様にすることによって、実施例4のニッケル水素蓄電池を製造した。
【0075】
<実施例5>
合金粉末混合体を98重量部と、カルボニルニッケル法によって製造したニッケル粉末2重量部とを30分間混合したこと以外は、実施例1と同様にすることによって、実施例5のニッケル水素蓄電池を製造した。
【0076】
<実施例6>
粒径20μmのAB5型希土類系のLaNi5の組成を有する水素吸蔵合金20重量部と粒径30μmのAB5型希土類系のMmNi3.60Co0.6Al0.3Mn0.35の組成を有する水素吸蔵合金80重量部とを30分間混合したこと以外は、実施例1と同様にすることによって、実施例6のニッケル水素蓄電池を製造した。
MmNi3.60Co0.6Al0.3Mn0.35の組成を有する水素吸蔵合金の「60℃,水素吸蔵量が0.5重量%の条件における水素平衡解離圧」は0.07Mpaであった。
【0077】
<実施例7>
合金混合粉末を80重量部と、カルボニルニッケル法によって製造したニッケル粉末20重量部とを30分間混合したこと以外は、実施例1と同様にすることによって、実施例7のニッケル水素蓄電池を製造した。
【0078】
<実施例8>
粒径20μmのAB5型希土類系のMmNi4.11Co0.685Al0.091Mn0.114の組成を有する水素吸蔵合金20重量部と粒径30μmのAB5型希土類系のMmNi3.75Co0.6Al0.3Mn0.35の組成を有する水素吸蔵合金80重量部とを30分間混合したこと以外は、実施例1と同様にすることによって、実施例8のニッケル水素蓄電池を製造した。MmNi4.11Co0.685Al0.091Mn0.114の組成を有する水素吸蔵合金の「60℃,水素吸蔵量が0.5重量%の条件における水素平衡解離圧」は0.70Mpaであった。
【0079】
<実施例9>
粒径20μmのAB5型希土類系のMmNi4.19Co0.698Al0.058Mn0.058の組成を有する水素吸蔵合金20重量部と粒径30μmのAB5型希土類系のMmNi3.75Co0.6Al0.3Mn0.35の組成を有する水素吸蔵合金80重量部とを30分間混合したこと以外は、実施例1と同様にすることによって、実施例9のニッケル水素蓄電池を製造した。MmNi4.19Co0.698Al0.058Mn0.058の組成を有する水素吸蔵合金の「60℃,水素吸蔵量が0.5重量%の条件における水素平衡解離圧」は0.90Mpaであった。
【0080】
<実施例10>
粒径20μmのAB5型希土類系のMmNi4.11Co0.685Al0.091Mn0.114の組成を有する水素吸蔵合金30重量部と粒径30μmのAB5型希土類系のMmNi3.75Co0.6Al0.3Mn0.35の組成を有する水素吸蔵合金70重量部とを30分間混合したこと以外は、実施例1と同様にすることによって、実施例10のニッケル水素蓄電池を製造した。
【0081】
<実施例11>
粒径20μmのAB5型希土類系のMmNi4.11Co0.685Al0.091Mn0.114の組成を有する水素吸蔵合金10重量部と粒径30μmのAB5型希土類系のMmNi3.75Co0.6Al0.3Mn0.35の組成を有する水素吸蔵合金90重量部とを30分間混合したこと以外は、実施例1と同様にすることによって、実施例11のニッケル水素蓄電池を製造した。
【0082】
<実施例12>
粒径20μmのAB5型希土類系のMmNi4.11Co0.685Al0.091Mn0.114の組成を有する水素吸蔵合金50重量部と粒径30μmのAB5型希土類系のMmNi3.75Co0.6Al0.3Mn0.35の組成を有する水素吸蔵合金50重量部とを30分間混合したこと以外は、実施例1と同様にすることによって、実施例12のニッケル水素蓄電池を製造した。
【0083】
<実施例13>
粒径30μmのAB5型希土類系のLaNi5の組成を有する水素吸蔵合金20重量部と粒径20μmのAB5型希土類系のMmNi3.75Co0.6Al0.3Mn0.35の組成を有する水素吸蔵合金80重量部とを30分間混合したこと以外は、実施例1と同様にすることによって、実施例13のニッケル水素蓄電池を製造した。
【0084】
<実施例14>
粒径25μmのAB5型希土類系のLaNi5の組成を有する水素吸蔵合金20重量部と粒径30μmのAB5型希土類系のMmNi3.75Co0.6Al0.3Mn0.35の組成を有する水素吸蔵合金80重量部とを30分間混合したこと以外は、実施例1と同様にすることによって、実施例14のニッケル水素蓄電池を製造した。
【0085】
<比較例1>
粒径30μmのAB5型希土類系のMmNi3.75Co0.6Al0.3Mn0.35の組成を有する水素吸蔵合金のみを用いて30分間混合し、得られた合金粉末にニッケル粉末を加えることなく30分間混合したこと以外は、実施例1と同様にすることによって、比較例1のニッケル水素蓄電池を製造した。
【0086】
<比較例2>
粒径30μmのAB5型希土類系のMmNi3.75Co0.6Al0.3Mn0.35の組成を有する水素吸蔵合金のみを用いて30分間混合したこと以外は、実施例1と同様にすることによって、比較例2のニッケル水素蓄電池を製造した。
【0087】
<比較例3>
ニッケル粉末を加えることなく30分間混合したこと以外は、実施例1と同様にすることによって、比較例3のニッケル水素蓄電池を製造した。
【0088】
<比較例4>
粒径20μmのAB5型希土類系のMmNi3.75Co0.6Al0.3Mn0.35の組成を有する水素吸蔵合金20重量部と粒径30μmのAB5型希土類系のMmNi3.60Co0.6Al0.3Mn0.35の組成を有する水素吸蔵合金80重量部とを30分間混合したこと以外は、実施例1と同様にすることによって、比較例4のニッケル水素蓄電池を製造した。前記2種の水素吸蔵合金の「60℃,水素吸蔵量が0.5重量%の条件における水素平衡解離圧」はそれぞれ、0.10Mpa、0.07Mpaであった。
【0089】
<電池の評価>
実施例及び比較例のニッケル水素蓄電池を40℃,12時間の保管処理の後、20℃,0.02ItAにて600mAh充電し、さらに0.1ItAで12時間充電した。さらに0.2ItAで1Vまで放電した後、0.1ItAで12時間充電、0.2ItAで1Vまで放電する操作を4回繰り返した。4回目の放電容量を20℃での初期放電量とする。
【0090】
その後、この電池を0.1ItAで12時間充電した後、5℃に5時間放置して十分冷却したのち、0.8Vまで10ItA放電を行った時の放電容量を、前記20℃での初期放電量100%に対する5℃10ItA放電容量として表1に示す。この5℃10ItA放電容量が高いほど、高率放電性能に優れることを意味する。
【0091】
さらに、25℃で2ItAでΔV5mVまで充電し、10分間休止し、2ItAで1.0Vまで放電し、10分間休止するサイクルを行い、放電容量の80%に到達したサイクル数を表1に示す。このサイクル数が多いほど、充放電サイクル性能に優れることを意味する。
【0092】
表1中、水素吸蔵合金粉末において、“平衡圧”は、「60℃,水素吸蔵量が0.5重量%の条件における水素平衡解離圧」を示し、その単位はMpa、“粒径”の単位はμm、“含有率”は水素吸蔵合金電極の全重量に対する重量割合を示す。また、ニッケル粉末において、“比表面積”の単位はm2/g、“かさ密度”の単位はg/ml、“合金粉末に対する量”は、水素吸蔵合金粉末100重量部に対する量を示し、その単位は重量部である。
【0093】
【表1】
【0094】
高平衡圧水素吸蔵合金粉末の水素平衡解離圧が0.65MPa以上であり、低平衡圧水素吸蔵合金粉末の水素平衡解離圧が0.1MPa以下であり、さらにニッケル粉末を含有する水素吸蔵合金電極を負極として有する実施例1〜14のニッケル水素蓄電池は、前記条件を満たさない比較例1〜4のニッケル水素蓄電池と比較して高率放電性能に優れた。
【0095】
比較例3のように、高平衡圧水素吸蔵合金粉末と低平衡圧水素吸蔵合金粉末とを混合したのみでは、優れた高率放電性能を得ることはできないのに対して、実施例1のように、これらの水素吸蔵合金粉末にニッケル粉末を添加した場合には優れた高率放電性能を得ることができた。
これは、比較例3にても高平衡圧水素吸蔵合金粉末が低平衡圧水素吸蔵合金粉末の水素を受け取り、速やかに合金の活性面に移動せしめることが出来るものの、活性場そのものが不足していることによって、高率放電特性が不十分であるのに対して、実施例1では、ニッケル粉末の添加によって、活性場が充分に存在し、高率放電特性が大幅に向上したものと推定される。
【0096】
また、比較例4と実施例6と実施例9とを比較して分かるように、優れた高率放電性能を得るためには、高平衡圧水素吸蔵合金粉末は、0.65Mpa以上の水素平衡解離圧を有する必要があり、0.9Mpa以上である場合は、極めて高い高率放電特性を示すことが確認された。
これは、より高い水素平衡解離圧を有する合金を添加することによって、水素を速やかに活性場に移動させる駆動力を高めることができ、高率放電特性が向上するものと推定される。
なかでも、実施例1、実施例2、実施例4を比較して分かるように、ニッケルが金属ニッケルの粉末で構成され、その比表面積が1.5m2/g以上、嵩密度が0.8g/ml以下である場合、特に優れた高率放電特性が得られた。ニッケルの活性はニッケルの量だけではなく、表面場の多さ、即ち、表面積にも大きく依存するものと考えられ、表面積を大きく有するニッケル粉末を添加することによって、高率放電特性の大幅な改善が出来た。
【0097】
また、比較例3、実施例1,5,3,7を比較してわかるように、水素吸蔵合金を100重量部に対してニッケル粉末の含有量が、2重量部以上10重量部以下で有る場合、特に、優れた高率放電性能と、優れた充放電サイクル性能とを合わせ持つことが確認された。ニッケル粉末は、2重量部添加すれば十分であり、多く添加しすぎると水素吸蔵合金の存在割合が低下することによって、充放電サイクル性能が低下するものと考えられる。
【0098】
また、実施例1と実施例8とを比較して分かるように、高平衡圧水素吸蔵合金粉末、及び、低平衡圧水素吸蔵合金粉末に関して、希土類元素としてLaを主成分とし、Ni,Co,Mn及びAlからなる群から選択される1種以上の元素を含有し、さらに、高平衡圧水素吸蔵合金粉末を、Ni元素に対してLaが5mol%以上、Ni元素に対してMnとAlとの総モル量が5mol%以下となるように構成することによって、優れた高率放電性能を示しながら、より優れた充放電サイクル性能を示した。
なかでも、実施例8,10,11,12を比較して分かるように、高平衡圧水素吸蔵合金粉末が、水素吸蔵合金電極の全重量に対して10重量%以上30重量%以下である場合、極めて優れた充放電サイクル性能が得られた。
【0099】
希土類元素としてLaを主成分とし、遷移元素としてNi,Co,Mn及びAlからなる群から選択される1種以上の元素を主成分とする水素吸蔵合金粉末を用いると、優れた充放電サイクル性能を示す。また、特に高平衡圧水素吸蔵合金粉末が前記水素吸蔵合金粉末とされることによって、高い水素平衡解離圧を有することができたとともに、さらに、高い水素平衡解離圧を得るための方策として、Ni元素に対して(Niを100mol%とした時)、Laを5mol%以上とし、かつ、MnとAlの総含有量が5mol%以下とした場合、高い水素平衡圧を有しながら耐食性に優れた水素吸蔵合金を得ることができ、これによって、優れた高率放電特性に加えて、極めて優れた充放電サイクル性能が得られたものと考えられる。
【0100】
また、高平衡圧水素吸蔵合金粉末と低平衡圧水素吸蔵合金粉末との混合比に関し、高平衡圧水素吸蔵合金粉末の量が多すぎる場合、充放電電圧曲線が、高平衡圧水素吸蔵合金と低平衡圧水素吸蔵合金の有する個別の電位を示して2段階のカーブとなって、電池性能が所望のものに制御されにくいばかりでなく、高平衡圧水素吸蔵合金粉末の利用率が低下してしまう。高平衡圧水素吸蔵合金粉末の含有量が、水素吸蔵合金電極の全重量に対して30重量%以下の場合、高平衡圧水素吸蔵合金粉末を有する合金の利用率は単独で用いる合金の利用率よりも非常に高いものと考えられる。これは、高平衡圧水素吸蔵合金粉末を単独で用いる場合の利用率の低下は、充電を行なうことができないことによるのに対し、高平衡圧水素吸蔵合金粉末と低平衡圧水素吸蔵合金とを混合して用いた場合における、高平衡圧水素吸蔵合金粉末の利用率の向上は、高平衡圧水素吸蔵合金粉末が低平衡圧水素吸蔵合金粉末より水素を貰うことによって充電を行なうことができるとともに、ニッケル粉末が共存することによるものと考えられる。
【0101】
また、実施例1,13,14を比較して分かるように、高平衡圧水素吸蔵合金粉末の平均粒径が大きくなると高率放電性能が低下する傾向となるため、25μm以下が好ましく、低平衡圧水素吸蔵合金粉末の平均粒径が小さくなると、充放電サイクル性能が低下する傾向となるため、30μm以上が好ましいことが確認された。水素吸蔵合金は粒径が大きいほど反応場が減少するため、高率放電性能に優れないが、充放電サイクル性能が優れることが一般に知られている。低平衡圧水素吸蔵合金粉末の平均粒径を大きくする事によって、優れた充放電サイクル性能を維持しつつ、高率放電性能の向上に必要とされる高平衡圧水素吸蔵合金粉末の平均粒径を25μm以下とすることによって、優れた高率放電特性と優れた充放電サイクル性能とを両立することが出来た。
【0102】
【発明の効果】
請求項1に係る水素吸蔵合金電極によれば、高率放電性能及び充放電サイクル性能に優れたニッケル水素蓄電池を提供できる。このようなニッケル水素蓄電池によれば、大電流放電性能に優れた電池とすることができるので、電気自動車や電動工具に対する電源として利用できる。
【0103】
請求項2に係る水素吸蔵合金電極によれば、特に、高率放電性能に優れたニッケル水素蓄電池を提供できる。
また、請求項3に係る水素吸蔵合金電極によれば、特に、高率放電性能及び充放電サイクル性能に優れたニッケル水素蓄電池を提供できる。
このようなニッケル水素蓄電池によれば、ライフサイクルコストを低減でき、資源の有効利用に貢献できる。
【0104】
請求項4及び5に係る水素吸蔵合金電極によれば、耐食性が優れ、特に良好な充放電サイクル性能を得ることができるとともに、高率放電特性にも優れた密閉型ニッケル水素蓄電池が提供できる。よって、この電池を電源とする機器の性能が向上し、それらの用途をさらに広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るニッケル水素蓄電池の破断斜視図である。
【符号の説明】
1 ニッケル水素蓄電池
2 ケース
2a 上部開口部
3 正極
4 負極
5 ニッケル水素蓄電池用セパレータ
6 絶縁ガスケット
7 封口板
8 正極端子
9 集電体
Claims (7)
- ニッケル粉末と“希土類元素と遷移元素とを主成分とする、水素を吸蔵脱離可能な水素吸蔵合金粉末”とを含有するとともに、前記水素吸蔵合金粉末は、水素平衡解離圧が異なる2種以上の水素吸蔵合金粉末からなり、前記水素平衡解離圧が最も高い高平衡圧水素吸蔵合金粉末は、60℃,水素吸蔵量が0.5重量%の条件において、水素平衡解離圧が0.65MPa以上であり、前記水素平衡解離圧が最も低い低平衡圧水素吸蔵合金粉末は、60℃,水素吸蔵量が0.5重量%の条件において、水素平衡解離圧が0.1MPa以下である水素吸蔵合金電極。
- 前記ニッケル粉末の比表面積が1.5m2/g以上、前記ニッケル粉末のかさ密度が0.8g/ml以下であることを特徴とする請求項1に記載の水素吸蔵合金電極。
- 前記水素吸蔵合金粉末100重量部に対して、前記ニッケル粉末を2重量部以上10重量部以下で含有してなることを特徴とする請求項1または2に記載の水素吸蔵合金電極。
- 前記高平衡圧水素吸蔵合金粉末、及び、前記低平衡圧水素吸蔵合金粉末は、前記希土類元素としてLaを主成分とし、Ni,Co,Mn及びAlからなる群から選択される1種以上の元素を含有するとともに、前記高平衡圧水素吸蔵合金粉末の含有量は、水素吸蔵合金電極の全重量に対して10重量%以上30重量%以下であり、前記高平衡圧水素吸蔵合金粉末は、Ni元素に対してLaが5mol%以上、Ni元素に対してMnとAlとの総モル量が5mol%以下となるように構成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水素吸蔵合金電極。
- 前記高平衡圧水素吸蔵合金粉末の平均粒径が25μm以下であり、前記低平衡圧水素吸蔵合金粉末の平均粒径が30μm以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水素吸蔵合金電極。
- 正極活物質を含有する正極、請求項1〜5のいずれかに記載の水素吸蔵合金電極からなる負極、及び、電解液を具備するニッケル水素蓄電池。
- 前記正極活物質が水酸化ニッケルを主成分とし、前記電解液がアルカリ金属水酸化物水溶液を主成分とする請求項6に記載のニッケル水素蓄電池。
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