JP2004281016A - 磁気ディスク用ガラス基板の製造方法及び磁気ディスクの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ガラス基板の表面をテープで研磨することによりテクスチャーを形成した場合でも、ヘッドクラッシュ障害やサーマルアスペリティ障害などの発生を防止でき、高記録密度化に好適な磁気ディスク用ガラス基板を提供する。
【解決手段】ガラス基板の主表面上にテクスチャーを付与する研磨加工を行った後に、ガラス基板の主表面をテープを用いて乾式でワイプ処理する。
【選択図】 図1
【解決手段】ガラス基板の主表面上にテクスチャーを付与する研磨加工を行った後に、ガラス基板の主表面をテープを用いて乾式でワイプ処理する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、HDD(ハードディスクドライブ)等に用いられる磁気ディスク用ガラス基板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
今日、情報記録技術、特に磁気記録技術は、急速なIT産業の発達に伴い飛躍的な技術革新が要請されている。HDD等に搭載される磁気ディスクでは、高容量化の要請により40Gbit/inch2〜100Gbit/inch2以上の情報記録密度を実現できる技術が求められている。
磁気ディスクでは、磁気ヘッドの浮上飛行方向の磁気特性が特に優れていることが求められる。このため、例えば下記特許文献1に記載のように、磁気ディスク用基板の表面にテクスチャー加工を行うことにより、磁性層に磁気異方性を与えて、磁気記録媒体としての磁気特性を向上させ、高記録密度化を図る技術が知られている。
【0003】
ところで最近では、高記録密度化に適した磁気ディスク用基板として、ガラス基板が注目されている。ガラス基板は、金属の基板に比べて剛性が高いので、磁気ディスク装置の高速回転化に適し、また、平滑で平坦な表面が得られるので、磁気ヘッドの浮上量を低下させることが容易であり、記録信号のS/N比の向上と高記録密度化に好適である。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−30275号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記特許文献1に記載のようなテクスチャーをガラス基板の表面に形成した場合、得られたガラス基板から製造される磁気ディスクをHDDに搭載すると、ヘッドクラッシュ障害や記録再生障害、例えば微小ビットエラーやサーマルアスペリティ(TA)障害などを起こしやすいという問題があった。これらの障害は、HDDを市場に出荷し、PC(パーソナルコンピュータ)等に組み込まれて後、暫く経過してから発生(HDDの故障)する傾向が高いので、一度障害が発生すると市場信用力を失墜させる程度が大きく、このため、高記録密度化を実現できる磁気ディスク用ガラス基板の普及が阻害されていた。
そこで本発明は、ガラス基板の主表面をテープで研磨することによりテクスチャーを形成した場合でも、ヘッドクラッシュ障害やサーマルアスペリティ障害の発生を防止でき、高記録密度化に好適な磁気ディスク用ガラス基板を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、ガラスの主表面をテープで研磨してテクスチャーを形成したディスク基板を用いて磁気ディスクを製造し、HDDに搭載すると、前述のヘッドクラッシュ障害やサーマルアスペリティ−障害などが発生する原因を調査したところ、これらの障害が発生したHDDに搭載されていた磁気ヘッドの表面には、微量のコンタミが付着している場合が多いことを発見した。
このコンタミの生成原因について調査すべく、様々な条件下でガラス基板表面にテープでテクスチャーを形成したところ、ガラス基板表面に特有のテクスチャー形状の乱れが存在する場合、このガラス基板を用いて製造した磁気ディスク表面にも同様のテクスチャー形状の乱れが生じ、前記磁気ヘッドのコンタミ生成が助長されていることを突き止めた。
【0007】
本発明者の検討によれば、ガラス基板上にこのようなテクスチャー形状の乱れが形成されてしまう原因については以下のように考察される。
即ち、ガラス基板は金属表面の基板に比べて硬度が高く硬いため、テープで研磨してテクスチャーを形成したときに、研磨液に含まれるダイヤモンド砥粒などの遊離砥粒や微小異物などの噛み込みによりテクスチャーに乱れが生じやすいこと、また、ガラス基板は絶縁体であるので、テープ研磨時の摩擦により生成する静電気力によって、この噛み込みが解消され難いことが原因であると考えられる。
本発明者は、このような一連の得られた知見と考察に基づき、以下の構成を有する発明を完成させた。
【0008】
(構成1)ガラス基板の主表面上にテクスチャーを付与する研磨加工を行った後に、テープをガラス基板の主表面に押圧させながらガラス基板とテープとを相対的に移動させて前記主表面を乾式でワイプ処理することを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
(構成2)前記ガラス基板の主表面をワイプ処理するテープの表面には砥粒が含まれることを特徴とする構成1記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
(構成3)前記砥粒はアルミナ砥粒であることを特徴とする構成2記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
(構成4)前記ガラス基板は化学強化ガラス基板であることを特徴とする構成1乃至3の何れかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
(構成5)前記ワイプ処理をクリーンルーム内で行うことを特徴とする構成1乃至4の何れかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
(構成6)構成1乃至5の何れかに記載の製造方法によって得られた磁気ディスク用ガラス基板上に、少なくとも磁性層を形成することを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
(構成7)ロード・アンロード(LUL)方式用磁気ディスクに用いるガラス基板であることを特徴とする構成1乃至5の何れかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【0009】
本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板の製造方法は、構成1にあるように、ガラス基板の主表面上にテクスチャーを付与する研磨加工を行った後に、テープをガラス基板の主表面に押圧させながらガラス基板とテープとを相対的に移動させて前記主表面を乾式でワイプ処理することを特徴としている。
すなわち、本発明では、研磨液とテープを用いてウエット雰囲気(湿式)で、ガラス基板の主表面にテクスチャーを形成した後に、テープを用いてドライ雰囲気(乾式)で基板主表面をワイプ処理している。
本発明におけるテープを用いたワイプ処理とは、ガラス基板の主表面を上記テープにより適度な押圧力でワイプすることであり、ワイプするとは、たとえば拭く、擦過などの作用を含む動作である。研磨液などの液体を介在させることのないドライ雰囲気(乾式)での処理なので、遊離砥粒などの異物噛み込みなどが無く、好適にテクスチャー形状を調製することができる。特に、バインダーなどで砥粒がテープに固定された状態となっている固定砥粒を含むテープを用いてワイプ処理を行なうことが好ましく、処理時に基板主表面に加わる適度な押圧力により、ガラス基板表面に形成されたテクスチャーの乱れが緩和されるとともに、テープを順次送り出すことにより常に清浄なワイプ体(テープ)が基板主表面に供給されるので、ワイプ処理により除去された異物等の再付着などの恐れが無く、ガラス基板上に均一なテクスチャーを調製することができる。
【0010】
本発明におけるワイプ処理の方法としては、枚葉式テープワイプ方法を用いることが好ましい。このようなテープワイプ方法としては、例えば、回転式テープワイプ方法を挙げることができる。回転式テープワイプ方法においては、回転するディスク状ガラス基板表面に、特定のテープを供給しながら適度に押圧することによって、ガラス基板表面を高精度にワイプすることができる。
ワイプ処理に用いるテープは、バインダーなどで砥粒が固定されたプラスチックフィルムテープとすることが好ましい。具体的には、ポリエステルフィルムテープなどを挙げることができる。
ワイプ処理に用いるテープに含む固定砥粒としては、#10000番手程度の砥粒粒径が好ましい。固定砥粒としては例えばアルミナ砥粒、特にホワイトアルミナ砥粒を好ましく用いることができる。
本発明のワイプ処理は乾式で実施されるため、処理液の調製や供給、排出がないので簡便な工程であり、運転コストも安価で済む。また、処理液などが雰囲気中に飛散することが無く、従って雰囲気を汚染する事無く清浄に維持することができる。このため、本発明のワイプ処理は、クリーンルームのような清浄雰囲気中で行うことができる。例えば、基板上に磁性層等の成膜を行う工程のあるクリーンルーム内で実施することが可能である。このようにワイプ処理は、清浄度の高い成膜工程で適用することもでき、成膜装置投入前処理としても好適である。ワイプ処理をクリーンルーム内で実施することにより、処理中に異物などを噛み込んでテクスチャー形状を乱すことを防止することができる。なお、ワイプ処理を行う雰囲気の清浄度は、日本工業規格(JIS)B9920におけるクラス7よりも清浄な雰囲気で行うことが好ましい。特にクラス6以上の清浄度で実施すると好適である。
【0011】
本発明におけるガラス基板のガラスとしては、例えばアルミノシリケートガラスやソーダライムガラス等が挙げられる。アルミノシリケートガラスであれば化学強化ガラスとすることで高い剛性を得ることができるので好ましい。
また、アモルファスガラス又は、アモルファスと結晶を備える結晶化ガラスを用いることができるが、アモルファスガラスであれば、本発明の作用を好ましく得ることができる。
このようなガラスとしては、アモルファスのアルミノシリケートガラスとして、SiO2:58〜75重量%、Al2O3:5〜23重量%、Li2O:3〜10重量%、Na2O:4〜13重量%を主成分として含有するアルミノシリケートガラスからなることが好ましい。
更に、前記ガラス基板の組成を、SiO2:62〜75重量%、Al2O3:5〜15重量%、Li2O:4〜10重量%、Na2O:4〜12重量%、ZrO2:5.5〜15重量%を主成分として含有するとともに、Na2O/ZrO2の重量比が0.5〜2.0、Al2O3/ZrO2の重量比が0.4〜2.5であるアルミノシリケートガラスであることが好ましい。
また、ZrO2の未溶解物が原因で生じるガラス基板表面の突起を無くすためには、モル%表示で、SiO2を57〜74%、ZnO2を0〜2.8%、Al2O3を3〜15%、LiO2を7〜16%、Na2Oを4〜14%含有する化学強化用ガラス等を使用することが好ましい。
【0012】
このようなアルミノシリケートガラスは、化学強化することによって、抗折強度が増加し、圧縮応力層の深さも深く、ヌープ硬度にも優れる。化学強化の方法としては、従来より公知の化学強化法であれば特に限定されないが、実用上、低温型イオン交換法による化学強化が好ましい。
なお、ガラス基板として上記の化学強化ガラス基板を用いる場合、テクスチャーを付与する研磨加工は化学強化処理後に行なう事が好ましい。化学強化処理の前にテクスチャーを形成すると、化学強化処理におけるイオン交換の過程でテクスチャー形状が乱される場合があるので好ましくない。化学強化され表面に圧縮応力の形成されたガラス基板上にテクスチャーを付与すると、精緻なテクスチャーを得ることが出来る。
また、テクスチャー研磨加工では、化学強化処理工程で付着した異物を除去する作用を得ることができる。
ガラス基板の直径サイズについては特に限定はないが、実用上、モバイル用途のHDDとして使用されることに多い2.5インチサイズ以下の小型磁気ディスクに対しては、耐衝撃性が高く、高記録密度化を可能とする磁気ディスク用ガラス基板を提供できる本発明は有用性が高い。また、ガラス基板の厚さは、0.1mm〜1.5mm程度が好ましい。特に、0.1mm〜0.9mm程度の薄型基板により構成される磁気ディスクの場合では、耐衝撃性が高い磁気ディスク用ガラス基板を提供できる本発明は有用性が高く好適である。
【0013】
本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板の製造方法において、ガラス基板の主表面をテープで研磨しながらテクスチャーを形成するに当たっては、枚葉式テープテクスチャー方法を用いることが好ましい。
このような枚葉式テープテクスチャー方法としては、例えば、回転式テープテクスチャー方法を挙げることができる。回転式テープテクスチャー方法においては、回転するディスク状ガラス基板表面に、特定のテープを送りながら押圧し、ダイヤモンド砥粒などの遊離砥粒を含む研磨液を供給することにより、ガラス基板表面に、例えば円周状のテクスチャーを形成する。
回転式テープテクスチャー方法を実施する装置の例としては、図1に示すようなテープ式テクスチャー装置(概略図)が挙げられる。図1の装置は、後述の実施例でも使用する装置である。このテープ式テクスチャー装置によると、スピンドル101に固定されたガラス基板1を回転させるとともに、砥粒滴下口102より研磨液をテープ103に供給し、ガラス基板1の両表面をローラー104に巻き付けられたテープ103によって挟むことで、ガラス基板1の主表面に円周状のテクスチャーを形成する。テープ103が巻きつけられたローラー104は、一定の回転速度で回転しており、常にテープ103の新しい面がガラス基板1に接触するようにしている。この場合、スピンドル101を揺動させることができるようになっている。なお、支点aを中心とし、ローラー104の軸にそれぞれ固定した板状の部材105,105が動くことによってガラス基板1を挟みつけている。この時、ガラス基板1に負荷される加重は板状の部材105間に張られたバネ106の力により決定する。加重は張力計107により測定される。
【0014】
このテープ式テクスチャー装置における、基板回転速度(スピンドル回転速度)やテクスチャー加工時間を調節することで、ガラス基板のテクスチャー形状を調節することができる。
このようなテクスチャー加工に用いるテープの種類としては、織布テープ、不織布テープなどの布テープが挙げられる。テープ繊維の材料としては、たとえばポリエステル表面テープが挙げられる。
また、テクスチャーを付与する研磨加工において供給する研磨スラリーは、ダイヤモンド砥粒を含む研磨スラリーを用いることが好ましい。中でも、安定した研磨、テクスチャー加工の観点から多結晶ダイヤモンド砥粒を含む研磨スラリーを用いることが好ましい。このようなダイヤモンド砥粒の平均粒径は0.1μm〜1μmとするのが好適である。
本発明におけるテクスチャーは、磁性層にディスク円周方向の磁気異方性を誘導するテクスチャーであれば特に限定されない。例えば、円周状テクスチャー、らせん状テクスチャー、クロステクスチャーなどを挙げることができる。特に円周状のテクスチャーであれば、テクスチャーの方向が磁気ディスク上を浮上飛行する磁気ヘッドの走行方向に類似するので、本発明の作用を好ましく得ることができる。
テクスチャーの表面粗さに関しては、Rmaxで5nm以下、Rpで3nm以下の平滑な表面であることが好ましい。このような平滑な表面粗さの場合、磁気ディスクの高記録密度化に資する事ができる。
【0015】
なお、本発明でいうRmaxとは最大高さ、Rpとは最大山高さのことであって、いずれも日本工業規格(JIS)に定めるものを言う。
本発明の磁気ディスク用ガラス基板上に、少なくとも磁性層を形成することにより、高記録密度化に適した磁気ディスクが得られる。磁性層としては、hcp結晶構造のCo系合金磁性層を用いると、保磁力(Hc)が高く高記録密度化に資することができる。
また必要に応じて、ガラス基板と磁性層との間に、磁性層の結晶粒や配向性を制御するために下地層を形成することも好ましい。
なお、磁気ディスクを製造するにあたっては、静止対向型成膜方法を用いて、DCマグネトロンスパッタリングにより、少なくとも磁性層を形成することが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に実施例を挙げて、本発明の実施の形態についてさらに具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例)
本実施例の磁気ディスク用ガラス基板は、化学強化されたアモルファスのアルミノシリケートガラスディスク基板の主表面に、テープ研磨によりテクスチャーを形成し、この後に、この主表面をテープでワイプ処理することにより得られる磁気ディスク用ガラスディスク基板である。
具体的には、以下の(1)粗ラッピング工程(粗研削工程)、(2)形状加工工程、(3)精ラッピング工程(精研削工程)、(4)端面鏡面加工工程、(5)主表面鏡面研磨加工工程、(6)化学強化工程、(7)テクスチャー研磨加工工程、(8)ワイプ処理工程、を経て本実施例の磁気ディスク用ガラス基板を製造した。
【0017】
(1)粗ラッピング工程
まず、溶融ガラスから上型、下型、胴型を用いたダイレクトプレスにより直径66mmφ、厚さ1.5mmの円盤状のアルミノシリケートガラスからなるガラス基板を得た。なお、この場合、ダイレクトプレス以外に、ダウンドロー法やフロート法で形成したシートガラスから研削砥石で切り出して円盤状のガラス基板を得てもよい。このアルミノシリケートガラスとしては、SiO2:58〜75重量%、Al2O3:5〜23重量%、Li2O:3〜10重量%、Na2O:4〜13重量%を含有する化学強化ガラスを使用した。次いで、ガラス基板に寸法精度及び形状精度の向上させるためラッピング工程を行った。このラッピング工程は両面ラッピング装置を用い、粒度#400の砥粒を用いて行なった。具体的には、はじめに粒度#400のアルミナ砥粒を用い、荷重を100kg程度に設定して、上記ラッピング装置のサンギアとインターナルギアを回転させることによって、キャリア内に収納したガラス基板の両面を面精度0〜1μm、表面粗さ(Rmax)6μm程度にラッピングした。
【0018】
(2)形状加工工程
次に、円筒状の砥石を用いてガラス基板の中央部分に孔を空けると共に、外周端面の研削をして直径を65mmφとした後、外周端面および内周端面に所定の面取り加工を施した。このときのガラス基板端面の表面粗さは、Rmaxで4μm程度であった。なお、一般に、2.5インチ型HDD(ハードディスクドライブ)では、外径が65mmの磁気ディスクを用いる。
(3)精ラッピング工程
次に、砥粒の粒度を#1000に変え、ガラス基板表面をラッピングすることにより、表面粗さをRmaxで2μm程度、Raで0.2μm程度とした。上記ラッピング工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、水の各洗浄槽(超音波印加)に順次浸漬して、超音波洗浄を行なった。
(4)端面鏡面加工工程
次いで、ブラシ研磨により、ガラス基板を回転させながらガラス基板の端面(内周、外周)の表面の粗さを、Rmaxで1μm、Raで0.3μm程度に研磨した。そして、上記端面鏡面加工を終えたガラス基板の表面を水洗浄した。
【0019】
(5)主表面鏡面研磨加工工程
次に、上述したラッピング工程で残留した傷や歪みの除去するため第1研磨工程を両面研磨装置を用いて行なった。両面研磨装置においては、研磨パッドが貼り付けられた上下定盤の間にキャリアにより保持したガラス基板を密着させ、このキャリアをサンギアとインターナルギアとに噛合させ、上記ガラス基板を上下定番によって挟圧する。その後、研磨パッドとガラス基板の研磨面との間に研磨液を供給して回転させることによって、ガラス基板が定盤上で自転しながら公転して両面を同時に研磨加工するものである。以下、実施例で使用する両面研磨装置としては同一装置を用いた。具体的には、ポリシャとして硬質ポリシャ(硬質発泡ウレタン)を用い、研磨工程を実施した。研磨条件は、研磨液としては酸化セリウム(平均粒径1.3μm)を研磨剤として分散したRO水とし、荷重:100g/cm2、研磨時間:15分とした。上記第1研磨工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、純水、純水、IPA(イソプロピルアルコール)、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して、超音波洗浄し、乾燥した。
【0020】
次いで上記の第1研磨工程で使用したものと同じタイプの両面研磨装置を用い、ポリシャを軟質ポリシャ(スウェード)の研磨パッドに変えて、第2研磨工程を実施した。この第2研磨工程は、上述した第1研磨工程で得られた平坦な表面を維持しつつ、例えばガラス基板主表面の表面粗さをRmaxで8nm程度以下の平滑な鏡面に仕上げるための鏡面研磨加工である。研磨条件は、研磨液としては酸化セリウム(平均粒径0.8μm)を分散したRO水とし、荷重:100g/cm2、研磨時間を5分とした。上記第2研磨工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、純水、純水、IPA、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して、超音波洗浄し、乾燥した。
【0021】
(6)化学強化工程
次に、上記洗浄を終えたガラス基板に化学強化を施した。化学強化は硝酸カリウムと硝酸ナトリウムの混合した化学強化液を用意し、この化学強化溶液を380℃に加熱し、上記洗浄・乾燥済みのガラス基板を約4時間浸漬して化学強化処理を行なった。化学強化を終えたガラス基板を硫酸、中性洗剤、純水、純水、IPA、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して、超音波洗浄し、乾燥した。
次に、上記洗浄を終えたガラス基板表面の目視検査及び光の反射・散乱・透過を利用した精密検査を実施した。その結果、ガラス基板表面に付着物による突起や、傷等の欠陥は発見されなかった。また、上記工程を経て得られたガラス基板の主表面の表面粗さを原子間力顕微鏡(AFM)にて測定したところ、Rmax=2.13nm、Ra=0.20nmと超平滑な表面を持つ磁気ディスク用ガラス基板を得た。また、ガラス基板の外径は65mm、内径は20mm、板厚は0.635mmであった。
【0022】
(7)テクスチャー研磨加工工程
前述の図1に示した枚葉の回転式テープテクスチャー装置を用いて、研磨、及び円周状テクスチャー加工を施した。
なお、テープは、ポリエステル繊維布のテープを使用し、研磨液としては、ダイヤモンド砥粒からなる遊離砥粒に純水を加えた研磨液を用いて行った。
このときのテクスチャー研磨加工条件は以下のとおりである。
加工圧力 10g/mm2
基板(ディスク)回転速度 150rpm
テープの送り速度 3mm/sec
テクスチャー加工時間 50秒
(8)ワイプ処理工程
ガラス基板の主表面に円周状のテクスチャーが形成された後に、この主表面のワイプ処理を行なった。このワイプ処理は、次の成膜工程を実施するクリーンルーム内で行った。クリーンルーム内の清浄度は、JIS B9920に規定するクラス6〜クラス5である。
具体的には、上記テクスチャー研磨加工工程で用いた枚葉の回転式テープテクスチャー装置(図1)と同様の装置を用いた枚葉の回転式テープワイプ方法により、テクスチャーの形成されたガラス基板主表面をテープでワイプした。ワイプ処理用のテープは、ポリエステルフィルムテープを使用し、固定砥粒として#10000番手のアルミナ(白色溶融アルミナ)砥粒がバインダーでテープに接着固定されている。また、このテープが巻き付けられた荷重ローラー(図1のローラー104を参照)はゴムローラーを使用した。なお、研磨液等は一切使用せず乾式でワイプ処理を行った。
このときのワイプ処理条件は以下のとおりである。
基板(ディスク)回転速度 750rpm
テープ荷重 100グラム
テープの送り速度 75mm/min
ワイプ処理時間 10秒
【0023】
次に、本実施例で得られた磁気ディスク用ガラス基板に以下の成膜工程を施して、磁気ディスクを得た。
枚葉式スパッタリング装置を用いて、上記テクスチャーを施されたガラス基板上に、シード層、下地層、磁性層、保護層及び潤滑層を順次形成した。
シード層は、CrTi薄膜(膜厚300オングストローム)からなる第1のシード層と、AlRu薄膜(膜厚:400オングストローム)からなる第2のシード層を形成した。下地層は、CrW薄膜(膜厚:100オングストローム)で、磁性層の結晶構造を良好にするために設けた。なお、このCrW薄膜は、Cr:90at%、W:10at%の組成比で構成されている。
磁性層は、CoPtCrB合金からなり、膜厚は、200オングストロームである。この磁性層のCo、Pt、Cr、B の各含有量は、Co:73at%、Pt:7at%、Cr:18at%、B:2at%である。
保護層は、磁性層が磁気ヘッドとの接触によって劣化することを防止するためのもので、膜厚50オングストロームの水素化カーボンからなり、耐磨耗性が得られる。潤滑層は、パーフルオロポリエーテルの液体潤滑剤をディップ法により形成し、膜厚は9オングストロームである。
【0024】
得られた磁気ディスクの主表面の微細形状をAFM(原子間力顕微鏡)により詳細に観察したところ、ディスクの円周方向に沿う円周状の精緻なテクスチャーが観察された。図2はそのAFMによる観察結果を示したもので、観察領域は磁気ディスク主表面上の5μm×5μmの領域である。なお、AFMによる観察結果から求めた、テクスチャーの表面粗さは、Rmaxで4.58nm、Rpで1.98nmであった。
【0025】
次に、得られた磁気ディスクを以下のようにして評価した。
〔磁気特性評価〕
磁気特性は、VSM(振動試料型磁化測定法)により測定した。磁気ディスクの半径=22mm位置を中心として8mm直径の円形試料を切り出し、基板の円周方向、基板の半径方向にそれぞれ外部磁場を印加(±10kOe)して磁化曲線を求め、基板の円周方向のMrt(残留磁化膜厚積)と半径方向のMrtとを算出した。
その結果、半径方向のMrtに対する円周方向のMrtの比(磁気異方性)は1.33であった。
〔信頼性評価〕
得られた磁気ディスクについて、グライド特性評価を行ったところ、タッチダウンハイトは、4.5nmであった。タッチダウンハイトは、浮上しているヘッドの浮上量を順に下げていき(例えば磁気ディスクの回転数を低くしていく)、磁気ディスクと接触し始める浮上量を求めて、磁気ディスクの浮上量の能力を測るものであるが、通常、40Gbit/in2以上の記録密度が求められるHDDでは、タッチダウンハイトは5nm以下であることが求められる。
【0026】
また、ヘッド浮上時の浮上量を12nmとし、70℃、80%RH環境下で、ヘッドのロード・アンロード動作を繰り返して行うLUL耐久性について試験したところ、60万回のLUL連続試験後でも、ヘッドクラッシュ障害は発生しなかった。通常に使用されるHDDでは、LUL回数が60万回を越えるには10年間程度の使用が必要とされている。また、フライングハイト12nmのGMRヘッドを用いてサーマルアスペリティ(TA)試験を行ったところ、サーマルアスペリティ障害は発生しなかった。
なお、上記ロードアンロード試験後の磁気ヘッド表面を光学顕微鏡で観察したところ、コンタミは観察されなかった。
【0027】
(比較例)
上記実施例における(8)ワイプ処理工程を実施しなかったこと以外は実施例と同様の製造方法により、磁気ディスク用ガラス基板を製造し、更にこのガラス基板を用いて実施例と同様に磁気ディスクを製造した。
得られた磁気ディスクの主表面の微細形状をAFMにより観察したところ、図3に示すように、円周状のテクスチャーが観察されたが、ここでは図3の右下において1本観察されるような、周囲のテクスチャー形状よりも高いテクスチャー条痕による乱れが観察された。テクスチャーの表面粗さは、Rmaxで5.18nm、Rpで3.30nmであった。実施例と比べると、特にRpが大きく悪化しているのは、テクスチャー形状の乱れがあるためである。
得られた磁気ディスクの磁気特性を実施例と同様に評価したところ、磁気異方性比は1.32であった。
また、グライド特性評価を行ったところ、タッチダウンハイトは、5.4nmであった。さらに、LUL耐久性について試験したところ、40万回のLUL動作でヘッドクラッシュにより故障した。また、サーマルアスペリティ試験を行ったところ、サーマルアスペリティ障害も発生した。なお、上記ロードアンロード試験後の磁気ヘッド表面には、コンタミの付着が見られた。
【0028】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法によれば、ガラス基板の主表面にテクスチャーを形成した後、この主表面をテープにより乾式でワイプ処理することにより、テクスチャー形成後の基板主表面に付着した異物等を除去できると同時に、遊離砥粒の噛み込みに起因するテクスチャー形状の乱れを緩和して均一なテクスチャーを調製することが出来る。
また、このような本発明の磁気ディスク用ガラス基板を用いて磁気ディスクを製造することにより、磁気ヘッドのコンタミ付着を抑制し、低浮上量化に対するヘッドクラッシュ障害やサーマルアスペリティ障害などの発生を防止でき、信頼性の高い、高記録密度化に好適な磁気ディスクを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】枚葉の回転式テープワイプ方法の実施にも適用できるテープ式テクスチャー装置の一例を示す側面図(a)及び斜視図(b)である。
【図2】本実施例により得られた磁気ディスク主表面の形状をAFMにより観察した様子を示す図である。
【図3】比較例により得られた磁気ディスク主表面の形状をAFMにより観察した様子を示す図である。
【符号の説明】
1 ガラス基板
101 スピンドル
102 スラリー滴下口
103 テープ
104 ローラー
【発明の属する技術分野】
本発明は、HDD(ハードディスクドライブ)等に用いられる磁気ディスク用ガラス基板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
今日、情報記録技術、特に磁気記録技術は、急速なIT産業の発達に伴い飛躍的な技術革新が要請されている。HDD等に搭載される磁気ディスクでは、高容量化の要請により40Gbit/inch2〜100Gbit/inch2以上の情報記録密度を実現できる技術が求められている。
磁気ディスクでは、磁気ヘッドの浮上飛行方向の磁気特性が特に優れていることが求められる。このため、例えば下記特許文献1に記載のように、磁気ディスク用基板の表面にテクスチャー加工を行うことにより、磁性層に磁気異方性を与えて、磁気記録媒体としての磁気特性を向上させ、高記録密度化を図る技術が知られている。
【0003】
ところで最近では、高記録密度化に適した磁気ディスク用基板として、ガラス基板が注目されている。ガラス基板は、金属の基板に比べて剛性が高いので、磁気ディスク装置の高速回転化に適し、また、平滑で平坦な表面が得られるので、磁気ヘッドの浮上量を低下させることが容易であり、記録信号のS/N比の向上と高記録密度化に好適である。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−30275号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記特許文献1に記載のようなテクスチャーをガラス基板の表面に形成した場合、得られたガラス基板から製造される磁気ディスクをHDDに搭載すると、ヘッドクラッシュ障害や記録再生障害、例えば微小ビットエラーやサーマルアスペリティ(TA)障害などを起こしやすいという問題があった。これらの障害は、HDDを市場に出荷し、PC(パーソナルコンピュータ)等に組み込まれて後、暫く経過してから発生(HDDの故障)する傾向が高いので、一度障害が発生すると市場信用力を失墜させる程度が大きく、このため、高記録密度化を実現できる磁気ディスク用ガラス基板の普及が阻害されていた。
そこで本発明は、ガラス基板の主表面をテープで研磨することによりテクスチャーを形成した場合でも、ヘッドクラッシュ障害やサーマルアスペリティ障害の発生を防止でき、高記録密度化に好適な磁気ディスク用ガラス基板を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、ガラスの主表面をテープで研磨してテクスチャーを形成したディスク基板を用いて磁気ディスクを製造し、HDDに搭載すると、前述のヘッドクラッシュ障害やサーマルアスペリティ−障害などが発生する原因を調査したところ、これらの障害が発生したHDDに搭載されていた磁気ヘッドの表面には、微量のコンタミが付着している場合が多いことを発見した。
このコンタミの生成原因について調査すべく、様々な条件下でガラス基板表面にテープでテクスチャーを形成したところ、ガラス基板表面に特有のテクスチャー形状の乱れが存在する場合、このガラス基板を用いて製造した磁気ディスク表面にも同様のテクスチャー形状の乱れが生じ、前記磁気ヘッドのコンタミ生成が助長されていることを突き止めた。
【0007】
本発明者の検討によれば、ガラス基板上にこのようなテクスチャー形状の乱れが形成されてしまう原因については以下のように考察される。
即ち、ガラス基板は金属表面の基板に比べて硬度が高く硬いため、テープで研磨してテクスチャーを形成したときに、研磨液に含まれるダイヤモンド砥粒などの遊離砥粒や微小異物などの噛み込みによりテクスチャーに乱れが生じやすいこと、また、ガラス基板は絶縁体であるので、テープ研磨時の摩擦により生成する静電気力によって、この噛み込みが解消され難いことが原因であると考えられる。
本発明者は、このような一連の得られた知見と考察に基づき、以下の構成を有する発明を完成させた。
【0008】
(構成1)ガラス基板の主表面上にテクスチャーを付与する研磨加工を行った後に、テープをガラス基板の主表面に押圧させながらガラス基板とテープとを相対的に移動させて前記主表面を乾式でワイプ処理することを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
(構成2)前記ガラス基板の主表面をワイプ処理するテープの表面には砥粒が含まれることを特徴とする構成1記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
(構成3)前記砥粒はアルミナ砥粒であることを特徴とする構成2記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
(構成4)前記ガラス基板は化学強化ガラス基板であることを特徴とする構成1乃至3の何れかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
(構成5)前記ワイプ処理をクリーンルーム内で行うことを特徴とする構成1乃至4の何れかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
(構成6)構成1乃至5の何れかに記載の製造方法によって得られた磁気ディスク用ガラス基板上に、少なくとも磁性層を形成することを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
(構成7)ロード・アンロード(LUL)方式用磁気ディスクに用いるガラス基板であることを特徴とする構成1乃至5の何れかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【0009】
本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板の製造方法は、構成1にあるように、ガラス基板の主表面上にテクスチャーを付与する研磨加工を行った後に、テープをガラス基板の主表面に押圧させながらガラス基板とテープとを相対的に移動させて前記主表面を乾式でワイプ処理することを特徴としている。
すなわち、本発明では、研磨液とテープを用いてウエット雰囲気(湿式)で、ガラス基板の主表面にテクスチャーを形成した後に、テープを用いてドライ雰囲気(乾式)で基板主表面をワイプ処理している。
本発明におけるテープを用いたワイプ処理とは、ガラス基板の主表面を上記テープにより適度な押圧力でワイプすることであり、ワイプするとは、たとえば拭く、擦過などの作用を含む動作である。研磨液などの液体を介在させることのないドライ雰囲気(乾式)での処理なので、遊離砥粒などの異物噛み込みなどが無く、好適にテクスチャー形状を調製することができる。特に、バインダーなどで砥粒がテープに固定された状態となっている固定砥粒を含むテープを用いてワイプ処理を行なうことが好ましく、処理時に基板主表面に加わる適度な押圧力により、ガラス基板表面に形成されたテクスチャーの乱れが緩和されるとともに、テープを順次送り出すことにより常に清浄なワイプ体(テープ)が基板主表面に供給されるので、ワイプ処理により除去された異物等の再付着などの恐れが無く、ガラス基板上に均一なテクスチャーを調製することができる。
【0010】
本発明におけるワイプ処理の方法としては、枚葉式テープワイプ方法を用いることが好ましい。このようなテープワイプ方法としては、例えば、回転式テープワイプ方法を挙げることができる。回転式テープワイプ方法においては、回転するディスク状ガラス基板表面に、特定のテープを供給しながら適度に押圧することによって、ガラス基板表面を高精度にワイプすることができる。
ワイプ処理に用いるテープは、バインダーなどで砥粒が固定されたプラスチックフィルムテープとすることが好ましい。具体的には、ポリエステルフィルムテープなどを挙げることができる。
ワイプ処理に用いるテープに含む固定砥粒としては、#10000番手程度の砥粒粒径が好ましい。固定砥粒としては例えばアルミナ砥粒、特にホワイトアルミナ砥粒を好ましく用いることができる。
本発明のワイプ処理は乾式で実施されるため、処理液の調製や供給、排出がないので簡便な工程であり、運転コストも安価で済む。また、処理液などが雰囲気中に飛散することが無く、従って雰囲気を汚染する事無く清浄に維持することができる。このため、本発明のワイプ処理は、クリーンルームのような清浄雰囲気中で行うことができる。例えば、基板上に磁性層等の成膜を行う工程のあるクリーンルーム内で実施することが可能である。このようにワイプ処理は、清浄度の高い成膜工程で適用することもでき、成膜装置投入前処理としても好適である。ワイプ処理をクリーンルーム内で実施することにより、処理中に異物などを噛み込んでテクスチャー形状を乱すことを防止することができる。なお、ワイプ処理を行う雰囲気の清浄度は、日本工業規格(JIS)B9920におけるクラス7よりも清浄な雰囲気で行うことが好ましい。特にクラス6以上の清浄度で実施すると好適である。
【0011】
本発明におけるガラス基板のガラスとしては、例えばアルミノシリケートガラスやソーダライムガラス等が挙げられる。アルミノシリケートガラスであれば化学強化ガラスとすることで高い剛性を得ることができるので好ましい。
また、アモルファスガラス又は、アモルファスと結晶を備える結晶化ガラスを用いることができるが、アモルファスガラスであれば、本発明の作用を好ましく得ることができる。
このようなガラスとしては、アモルファスのアルミノシリケートガラスとして、SiO2:58〜75重量%、Al2O3:5〜23重量%、Li2O:3〜10重量%、Na2O:4〜13重量%を主成分として含有するアルミノシリケートガラスからなることが好ましい。
更に、前記ガラス基板の組成を、SiO2:62〜75重量%、Al2O3:5〜15重量%、Li2O:4〜10重量%、Na2O:4〜12重量%、ZrO2:5.5〜15重量%を主成分として含有するとともに、Na2O/ZrO2の重量比が0.5〜2.0、Al2O3/ZrO2の重量比が0.4〜2.5であるアルミノシリケートガラスであることが好ましい。
また、ZrO2の未溶解物が原因で生じるガラス基板表面の突起を無くすためには、モル%表示で、SiO2を57〜74%、ZnO2を0〜2.8%、Al2O3を3〜15%、LiO2を7〜16%、Na2Oを4〜14%含有する化学強化用ガラス等を使用することが好ましい。
【0012】
このようなアルミノシリケートガラスは、化学強化することによって、抗折強度が増加し、圧縮応力層の深さも深く、ヌープ硬度にも優れる。化学強化の方法としては、従来より公知の化学強化法であれば特に限定されないが、実用上、低温型イオン交換法による化学強化が好ましい。
なお、ガラス基板として上記の化学強化ガラス基板を用いる場合、テクスチャーを付与する研磨加工は化学強化処理後に行なう事が好ましい。化学強化処理の前にテクスチャーを形成すると、化学強化処理におけるイオン交換の過程でテクスチャー形状が乱される場合があるので好ましくない。化学強化され表面に圧縮応力の形成されたガラス基板上にテクスチャーを付与すると、精緻なテクスチャーを得ることが出来る。
また、テクスチャー研磨加工では、化学強化処理工程で付着した異物を除去する作用を得ることができる。
ガラス基板の直径サイズについては特に限定はないが、実用上、モバイル用途のHDDとして使用されることに多い2.5インチサイズ以下の小型磁気ディスクに対しては、耐衝撃性が高く、高記録密度化を可能とする磁気ディスク用ガラス基板を提供できる本発明は有用性が高い。また、ガラス基板の厚さは、0.1mm〜1.5mm程度が好ましい。特に、0.1mm〜0.9mm程度の薄型基板により構成される磁気ディスクの場合では、耐衝撃性が高い磁気ディスク用ガラス基板を提供できる本発明は有用性が高く好適である。
【0013】
本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板の製造方法において、ガラス基板の主表面をテープで研磨しながらテクスチャーを形成するに当たっては、枚葉式テープテクスチャー方法を用いることが好ましい。
このような枚葉式テープテクスチャー方法としては、例えば、回転式テープテクスチャー方法を挙げることができる。回転式テープテクスチャー方法においては、回転するディスク状ガラス基板表面に、特定のテープを送りながら押圧し、ダイヤモンド砥粒などの遊離砥粒を含む研磨液を供給することにより、ガラス基板表面に、例えば円周状のテクスチャーを形成する。
回転式テープテクスチャー方法を実施する装置の例としては、図1に示すようなテープ式テクスチャー装置(概略図)が挙げられる。図1の装置は、後述の実施例でも使用する装置である。このテープ式テクスチャー装置によると、スピンドル101に固定されたガラス基板1を回転させるとともに、砥粒滴下口102より研磨液をテープ103に供給し、ガラス基板1の両表面をローラー104に巻き付けられたテープ103によって挟むことで、ガラス基板1の主表面に円周状のテクスチャーを形成する。テープ103が巻きつけられたローラー104は、一定の回転速度で回転しており、常にテープ103の新しい面がガラス基板1に接触するようにしている。この場合、スピンドル101を揺動させることができるようになっている。なお、支点aを中心とし、ローラー104の軸にそれぞれ固定した板状の部材105,105が動くことによってガラス基板1を挟みつけている。この時、ガラス基板1に負荷される加重は板状の部材105間に張られたバネ106の力により決定する。加重は張力計107により測定される。
【0014】
このテープ式テクスチャー装置における、基板回転速度(スピンドル回転速度)やテクスチャー加工時間を調節することで、ガラス基板のテクスチャー形状を調節することができる。
このようなテクスチャー加工に用いるテープの種類としては、織布テープ、不織布テープなどの布テープが挙げられる。テープ繊維の材料としては、たとえばポリエステル表面テープが挙げられる。
また、テクスチャーを付与する研磨加工において供給する研磨スラリーは、ダイヤモンド砥粒を含む研磨スラリーを用いることが好ましい。中でも、安定した研磨、テクスチャー加工の観点から多結晶ダイヤモンド砥粒を含む研磨スラリーを用いることが好ましい。このようなダイヤモンド砥粒の平均粒径は0.1μm〜1μmとするのが好適である。
本発明におけるテクスチャーは、磁性層にディスク円周方向の磁気異方性を誘導するテクスチャーであれば特に限定されない。例えば、円周状テクスチャー、らせん状テクスチャー、クロステクスチャーなどを挙げることができる。特に円周状のテクスチャーであれば、テクスチャーの方向が磁気ディスク上を浮上飛行する磁気ヘッドの走行方向に類似するので、本発明の作用を好ましく得ることができる。
テクスチャーの表面粗さに関しては、Rmaxで5nm以下、Rpで3nm以下の平滑な表面であることが好ましい。このような平滑な表面粗さの場合、磁気ディスクの高記録密度化に資する事ができる。
【0015】
なお、本発明でいうRmaxとは最大高さ、Rpとは最大山高さのことであって、いずれも日本工業規格(JIS)に定めるものを言う。
本発明の磁気ディスク用ガラス基板上に、少なくとも磁性層を形成することにより、高記録密度化に適した磁気ディスクが得られる。磁性層としては、hcp結晶構造のCo系合金磁性層を用いると、保磁力(Hc)が高く高記録密度化に資することができる。
また必要に応じて、ガラス基板と磁性層との間に、磁性層の結晶粒や配向性を制御するために下地層を形成することも好ましい。
なお、磁気ディスクを製造するにあたっては、静止対向型成膜方法を用いて、DCマグネトロンスパッタリングにより、少なくとも磁性層を形成することが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に実施例を挙げて、本発明の実施の形態についてさらに具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例)
本実施例の磁気ディスク用ガラス基板は、化学強化されたアモルファスのアルミノシリケートガラスディスク基板の主表面に、テープ研磨によりテクスチャーを形成し、この後に、この主表面をテープでワイプ処理することにより得られる磁気ディスク用ガラスディスク基板である。
具体的には、以下の(1)粗ラッピング工程(粗研削工程)、(2)形状加工工程、(3)精ラッピング工程(精研削工程)、(4)端面鏡面加工工程、(5)主表面鏡面研磨加工工程、(6)化学強化工程、(7)テクスチャー研磨加工工程、(8)ワイプ処理工程、を経て本実施例の磁気ディスク用ガラス基板を製造した。
【0017】
(1)粗ラッピング工程
まず、溶融ガラスから上型、下型、胴型を用いたダイレクトプレスにより直径66mmφ、厚さ1.5mmの円盤状のアルミノシリケートガラスからなるガラス基板を得た。なお、この場合、ダイレクトプレス以外に、ダウンドロー法やフロート法で形成したシートガラスから研削砥石で切り出して円盤状のガラス基板を得てもよい。このアルミノシリケートガラスとしては、SiO2:58〜75重量%、Al2O3:5〜23重量%、Li2O:3〜10重量%、Na2O:4〜13重量%を含有する化学強化ガラスを使用した。次いで、ガラス基板に寸法精度及び形状精度の向上させるためラッピング工程を行った。このラッピング工程は両面ラッピング装置を用い、粒度#400の砥粒を用いて行なった。具体的には、はじめに粒度#400のアルミナ砥粒を用い、荷重を100kg程度に設定して、上記ラッピング装置のサンギアとインターナルギアを回転させることによって、キャリア内に収納したガラス基板の両面を面精度0〜1μm、表面粗さ(Rmax)6μm程度にラッピングした。
【0018】
(2)形状加工工程
次に、円筒状の砥石を用いてガラス基板の中央部分に孔を空けると共に、外周端面の研削をして直径を65mmφとした後、外周端面および内周端面に所定の面取り加工を施した。このときのガラス基板端面の表面粗さは、Rmaxで4μm程度であった。なお、一般に、2.5インチ型HDD(ハードディスクドライブ)では、外径が65mmの磁気ディスクを用いる。
(3)精ラッピング工程
次に、砥粒の粒度を#1000に変え、ガラス基板表面をラッピングすることにより、表面粗さをRmaxで2μm程度、Raで0.2μm程度とした。上記ラッピング工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、水の各洗浄槽(超音波印加)に順次浸漬して、超音波洗浄を行なった。
(4)端面鏡面加工工程
次いで、ブラシ研磨により、ガラス基板を回転させながらガラス基板の端面(内周、外周)の表面の粗さを、Rmaxで1μm、Raで0.3μm程度に研磨した。そして、上記端面鏡面加工を終えたガラス基板の表面を水洗浄した。
【0019】
(5)主表面鏡面研磨加工工程
次に、上述したラッピング工程で残留した傷や歪みの除去するため第1研磨工程を両面研磨装置を用いて行なった。両面研磨装置においては、研磨パッドが貼り付けられた上下定盤の間にキャリアにより保持したガラス基板を密着させ、このキャリアをサンギアとインターナルギアとに噛合させ、上記ガラス基板を上下定番によって挟圧する。その後、研磨パッドとガラス基板の研磨面との間に研磨液を供給して回転させることによって、ガラス基板が定盤上で自転しながら公転して両面を同時に研磨加工するものである。以下、実施例で使用する両面研磨装置としては同一装置を用いた。具体的には、ポリシャとして硬質ポリシャ(硬質発泡ウレタン)を用い、研磨工程を実施した。研磨条件は、研磨液としては酸化セリウム(平均粒径1.3μm)を研磨剤として分散したRO水とし、荷重:100g/cm2、研磨時間:15分とした。上記第1研磨工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、純水、純水、IPA(イソプロピルアルコール)、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して、超音波洗浄し、乾燥した。
【0020】
次いで上記の第1研磨工程で使用したものと同じタイプの両面研磨装置を用い、ポリシャを軟質ポリシャ(スウェード)の研磨パッドに変えて、第2研磨工程を実施した。この第2研磨工程は、上述した第1研磨工程で得られた平坦な表面を維持しつつ、例えばガラス基板主表面の表面粗さをRmaxで8nm程度以下の平滑な鏡面に仕上げるための鏡面研磨加工である。研磨条件は、研磨液としては酸化セリウム(平均粒径0.8μm)を分散したRO水とし、荷重:100g/cm2、研磨時間を5分とした。上記第2研磨工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、純水、純水、IPA、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して、超音波洗浄し、乾燥した。
【0021】
(6)化学強化工程
次に、上記洗浄を終えたガラス基板に化学強化を施した。化学強化は硝酸カリウムと硝酸ナトリウムの混合した化学強化液を用意し、この化学強化溶液を380℃に加熱し、上記洗浄・乾燥済みのガラス基板を約4時間浸漬して化学強化処理を行なった。化学強化を終えたガラス基板を硫酸、中性洗剤、純水、純水、IPA、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して、超音波洗浄し、乾燥した。
次に、上記洗浄を終えたガラス基板表面の目視検査及び光の反射・散乱・透過を利用した精密検査を実施した。その結果、ガラス基板表面に付着物による突起や、傷等の欠陥は発見されなかった。また、上記工程を経て得られたガラス基板の主表面の表面粗さを原子間力顕微鏡(AFM)にて測定したところ、Rmax=2.13nm、Ra=0.20nmと超平滑な表面を持つ磁気ディスク用ガラス基板を得た。また、ガラス基板の外径は65mm、内径は20mm、板厚は0.635mmであった。
【0022】
(7)テクスチャー研磨加工工程
前述の図1に示した枚葉の回転式テープテクスチャー装置を用いて、研磨、及び円周状テクスチャー加工を施した。
なお、テープは、ポリエステル繊維布のテープを使用し、研磨液としては、ダイヤモンド砥粒からなる遊離砥粒に純水を加えた研磨液を用いて行った。
このときのテクスチャー研磨加工条件は以下のとおりである。
加工圧力 10g/mm2
基板(ディスク)回転速度 150rpm
テープの送り速度 3mm/sec
テクスチャー加工時間 50秒
(8)ワイプ処理工程
ガラス基板の主表面に円周状のテクスチャーが形成された後に、この主表面のワイプ処理を行なった。このワイプ処理は、次の成膜工程を実施するクリーンルーム内で行った。クリーンルーム内の清浄度は、JIS B9920に規定するクラス6〜クラス5である。
具体的には、上記テクスチャー研磨加工工程で用いた枚葉の回転式テープテクスチャー装置(図1)と同様の装置を用いた枚葉の回転式テープワイプ方法により、テクスチャーの形成されたガラス基板主表面をテープでワイプした。ワイプ処理用のテープは、ポリエステルフィルムテープを使用し、固定砥粒として#10000番手のアルミナ(白色溶融アルミナ)砥粒がバインダーでテープに接着固定されている。また、このテープが巻き付けられた荷重ローラー(図1のローラー104を参照)はゴムローラーを使用した。なお、研磨液等は一切使用せず乾式でワイプ処理を行った。
このときのワイプ処理条件は以下のとおりである。
基板(ディスク)回転速度 750rpm
テープ荷重 100グラム
テープの送り速度 75mm/min
ワイプ処理時間 10秒
【0023】
次に、本実施例で得られた磁気ディスク用ガラス基板に以下の成膜工程を施して、磁気ディスクを得た。
枚葉式スパッタリング装置を用いて、上記テクスチャーを施されたガラス基板上に、シード層、下地層、磁性層、保護層及び潤滑層を順次形成した。
シード層は、CrTi薄膜(膜厚300オングストローム)からなる第1のシード層と、AlRu薄膜(膜厚:400オングストローム)からなる第2のシード層を形成した。下地層は、CrW薄膜(膜厚:100オングストローム)で、磁性層の結晶構造を良好にするために設けた。なお、このCrW薄膜は、Cr:90at%、W:10at%の組成比で構成されている。
磁性層は、CoPtCrB合金からなり、膜厚は、200オングストロームである。この磁性層のCo、Pt、Cr、B の各含有量は、Co:73at%、Pt:7at%、Cr:18at%、B:2at%である。
保護層は、磁性層が磁気ヘッドとの接触によって劣化することを防止するためのもので、膜厚50オングストロームの水素化カーボンからなり、耐磨耗性が得られる。潤滑層は、パーフルオロポリエーテルの液体潤滑剤をディップ法により形成し、膜厚は9オングストロームである。
【0024】
得られた磁気ディスクの主表面の微細形状をAFM(原子間力顕微鏡)により詳細に観察したところ、ディスクの円周方向に沿う円周状の精緻なテクスチャーが観察された。図2はそのAFMによる観察結果を示したもので、観察領域は磁気ディスク主表面上の5μm×5μmの領域である。なお、AFMによる観察結果から求めた、テクスチャーの表面粗さは、Rmaxで4.58nm、Rpで1.98nmであった。
【0025】
次に、得られた磁気ディスクを以下のようにして評価した。
〔磁気特性評価〕
磁気特性は、VSM(振動試料型磁化測定法)により測定した。磁気ディスクの半径=22mm位置を中心として8mm直径の円形試料を切り出し、基板の円周方向、基板の半径方向にそれぞれ外部磁場を印加(±10kOe)して磁化曲線を求め、基板の円周方向のMrt(残留磁化膜厚積)と半径方向のMrtとを算出した。
その結果、半径方向のMrtに対する円周方向のMrtの比(磁気異方性)は1.33であった。
〔信頼性評価〕
得られた磁気ディスクについて、グライド特性評価を行ったところ、タッチダウンハイトは、4.5nmであった。タッチダウンハイトは、浮上しているヘッドの浮上量を順に下げていき(例えば磁気ディスクの回転数を低くしていく)、磁気ディスクと接触し始める浮上量を求めて、磁気ディスクの浮上量の能力を測るものであるが、通常、40Gbit/in2以上の記録密度が求められるHDDでは、タッチダウンハイトは5nm以下であることが求められる。
【0026】
また、ヘッド浮上時の浮上量を12nmとし、70℃、80%RH環境下で、ヘッドのロード・アンロード動作を繰り返して行うLUL耐久性について試験したところ、60万回のLUL連続試験後でも、ヘッドクラッシュ障害は発生しなかった。通常に使用されるHDDでは、LUL回数が60万回を越えるには10年間程度の使用が必要とされている。また、フライングハイト12nmのGMRヘッドを用いてサーマルアスペリティ(TA)試験を行ったところ、サーマルアスペリティ障害は発生しなかった。
なお、上記ロードアンロード試験後の磁気ヘッド表面を光学顕微鏡で観察したところ、コンタミは観察されなかった。
【0027】
(比較例)
上記実施例における(8)ワイプ処理工程を実施しなかったこと以外は実施例と同様の製造方法により、磁気ディスク用ガラス基板を製造し、更にこのガラス基板を用いて実施例と同様に磁気ディスクを製造した。
得られた磁気ディスクの主表面の微細形状をAFMにより観察したところ、図3に示すように、円周状のテクスチャーが観察されたが、ここでは図3の右下において1本観察されるような、周囲のテクスチャー形状よりも高いテクスチャー条痕による乱れが観察された。テクスチャーの表面粗さは、Rmaxで5.18nm、Rpで3.30nmであった。実施例と比べると、特にRpが大きく悪化しているのは、テクスチャー形状の乱れがあるためである。
得られた磁気ディスクの磁気特性を実施例と同様に評価したところ、磁気異方性比は1.32であった。
また、グライド特性評価を行ったところ、タッチダウンハイトは、5.4nmであった。さらに、LUL耐久性について試験したところ、40万回のLUL動作でヘッドクラッシュにより故障した。また、サーマルアスペリティ試験を行ったところ、サーマルアスペリティ障害も発生した。なお、上記ロードアンロード試験後の磁気ヘッド表面には、コンタミの付着が見られた。
【0028】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法によれば、ガラス基板の主表面にテクスチャーを形成した後、この主表面をテープにより乾式でワイプ処理することにより、テクスチャー形成後の基板主表面に付着した異物等を除去できると同時に、遊離砥粒の噛み込みに起因するテクスチャー形状の乱れを緩和して均一なテクスチャーを調製することが出来る。
また、このような本発明の磁気ディスク用ガラス基板を用いて磁気ディスクを製造することにより、磁気ヘッドのコンタミ付着を抑制し、低浮上量化に対するヘッドクラッシュ障害やサーマルアスペリティ障害などの発生を防止でき、信頼性の高い、高記録密度化に好適な磁気ディスクを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】枚葉の回転式テープワイプ方法の実施にも適用できるテープ式テクスチャー装置の一例を示す側面図(a)及び斜視図(b)である。
【図2】本実施例により得られた磁気ディスク主表面の形状をAFMにより観察した様子を示す図である。
【図3】比較例により得られた磁気ディスク主表面の形状をAFMにより観察した様子を示す図である。
【符号の説明】
1 ガラス基板
101 スピンドル
102 スラリー滴下口
103 テープ
104 ローラー
Claims (6)
- ガラス基板の主表面上にテクスチャーを付与する研磨加工を行った後に、テープをガラス基板の主表面に押圧させながらガラス基板とテープとを相対的に移動させて前記主表面を乾式でワイプ処理することを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
- 前記ガラス基板の主表面をワイプ処理するテープの表面には砥粒が含まれることを特徴とする請求項1記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
- 前記砥粒はアルミナ砥粒であることを特徴とする請求項2記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
- 前記ガラス基板は化学強化ガラス基板であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
- 前記ワイプ処理をクリーンルーム内で行うことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
- 請求項1乃至5の何れかに記載の製造方法によって得られた磁気ディスク用ガラス基板上に、少なくとも磁性層を形成することを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
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JP2003074944A JP2004281016A (ja) | 2003-03-19 | 2003-03-19 | 磁気ディスク用ガラス基板の製造方法及び磁気ディスクの製造方法 |
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- 2003-03-19 JP JP2003074944A patent/JP2004281016A/ja active Pending
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