JP2004275940A - 逆浸透膜及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】分離膜を珪素化合物を含有する水溶液と接触させる接触工程を含むことを特徴とする逆浸透膜の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液状混合物の成分を選択的に分離するための逆浸透膜、及びその製造方法に関し、詳しくは、優れた塩阻止性と実用的な透水性を有する逆浸透膜及びその製造方法に関する。
【0002】
かかる逆浸透膜は、超純水の製造、かん水または海水の脱塩などに好適であり、また染色排水や電着塗料排水などの公害発生原因である汚れなどから、その中に含まれる汚染源あるいは有効物質を除去・回収し、排水のクローズ化に寄与することができる。また、食品用途などで有効成分の濃縮などにも用いることができる。
【0003】
【従来の技術】
上記の如き用途に使用される逆浸透膜としては、相分離法等により非対称構造が同一素材で形成された非対称膜と、多孔性支持体上に選択分離性を有する薄膜を異なる素材で形成してなる複合半透膜とが知られている。
【0004】
現在、後者の半透膜として、多官能芳香族アミンと多官能芳香族酸ハロゲン化物との界面重合によって得られるポリアミドからなる薄膜が多孔性支持体上に形成されたものが多く提案されている(例えば、特許文献1〜4)。また、多官能芳香族アミンと多官能脂環式酸ハロゲン化物との界面重合によって得られるポリアミドからなる薄膜が多孔性支持体上に形成されたものも提案されている(例えば、特許文献5)。
【0005】
また、上記複合半透膜の水透過性をさらに向上させるための添加剤が提案されており、水酸化ナトリウムやリン酸三ナトリウムなど、界面反応にて生成するハロゲン化水素を除去しうる物質や、公知のアシル化触媒、また界面反応時の反応場の界面張力を減少させる化合物などが知られている(例えば、特許文献6〜8)。
【0006】
しかし、逆浸透膜を用いる造水プラントではランニングコストの一層の低減を図るため、より高度の脱塩性能と透水性能が求められている。このような要求に対し、従来、分離活性層として架橋ポリアミド重合体を設けた複合半透膜を塩素を含む水溶液を接触処理させる方法が知られている(例えば、特許文献9〜12)。
【0007】
【特許文献1】
特開昭55−147106号公報
【特許文献2】
特開昭62−121603号公報
【特許文献3】
特開昭63−218208号公報
【特許文献4】
特開平2−187135号公報
【特許文献5】
特開昭61−42308号公報
【特許文献6】
特開昭63−12310号公報
【特許文献7】
特開平6−47260号公報
【特許文献8】
特開平8−224452号公報
【特許文献9】
特公昭63−36803号公報
【特許文献10】
特公平5−1051号公報
【特許文献11】
特開平5−329344号公報
【特許文献12】
特開2000−334280号公報
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記半透膜であっても塩阻止性及び透水性を十分に満足するものではなく、より高い特性が望まれている。
【0008】
本発明の目的は、優れた塩阻止性及び実用的な透水性を併せ持つ逆浸透膜を短時間かつ簡易処理により作製する逆浸透膜の製造方法、及びその製造方法によって得られる逆浸透膜を提供することにある。また、該逆浸透膜を用いた水処理方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、分離膜を珪素化合物を含有する水溶液と接触させることにより、簡易かつ短時間で透水性を低下させることなく各種溶質の阻止性能を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の逆浸透膜の製造方法は、分離膜を珪素化合物を含有する水溶液と接触させる接触工程を含むことを特徴とする。
【0011】
珪素化合物は、珪酸及び/又は水溶性珪酸塩であることが好ましい。また、前記水溶性珪酸塩は珪酸ナトリウム及び/又は珪酸カリウムであることが好ましい。
【0012】
上記のように分離膜を珪素化合物を含有する水溶液と接触させることにより塩阻止性が向上する理由は明らかではないが、分離膜の分子構造を変化させるものではないと考えられ、接触させることにより分離膜の劣化や透水性が低下することはない。
【0013】
本発明においては、分離膜が薄膜とこれを支持する多孔性支持膜とからなる複合半透膜であることが好ましい。
【0014】
また、前記薄膜がアミン成分と2価以上の多官能酸ハロゲン化物との縮合反応によって得られる構成単位を有するポリアミドを主成分とするものであることが好ましい。
【0015】
さらに、前記薄膜が、下記一般式(I)及び/又は(II)で表される構成単位を有するポリアミドを主成分とするものであることが好ましい。
【0016】
【化3】
(但し、R11はベンゼン環またはナフタレン環を主鎖に有する2価の有機基を示し、R12及びR13はそれぞれ独立に炭素数1〜5の−O−、又は−S−を含んでいてもよいアルキル基又は水素原子である。R14は2価の有機基を示す。)
【化4】
(但し、R21はベンゼン環またはナフタレン環を主鎖に有する2価の有機基を示し、R22及びR23はそれぞれ独立に炭素数1〜5の−O−、又は−S−を含んでいてもよいアルキル基又は水素原子である。R24は3価の有機基を示す。)
特に、上記一般式において、R11及びR21がm−フェニレン基であり、R12、R13、R22、及びR23が水素原子であり、且つ、R14及びR24がベンゼン環であることが好ましい。
【0017】
本発明においては、前記水溶液中の珪素濃度が1〜50ppmであることが好ましく、さらに好ましくは5〜25ppmである。珪素濃度が1ppm未満の場合には目的とする効果が得られない傾向にあり、一方、50ppmを超えても性能の向上効果が現れず、コスト高となるため好ましくない。
【0018】
本発明においては、前記接触工程を0.1〜10MPaの加圧条件下で行うことが好ましい。
【0019】
また本発明は、前記製造方法によって製造される逆浸透膜、に関する。
【0020】
さらに本発明は、塩及び/又は有機物を含有する水を原水として分離膜により膜分離処理し、前記塩及び/又は有機物が実用上十分に除去された透過水を得る水処理方法において、前記原水中に珪酸及び/又は水溶性珪酸塩を添加することを特徴とする水処理方法、に関する。前記水溶性珪酸塩は珪酸ナトリウム及び/又は珪酸カリウムであることが好ましい。
【0021】
本発明の逆浸透膜によると、上記の如き製造方法により、優れた塩阻止性及び実用的な透水性を併せ持つことができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明の逆浸透膜の製造方法は、分離膜を珪素化合物を含有する水溶液と接触させる接触工程を含むことを特徴とする。まず、該分離膜について説明する。
【0023】
本発明における分離膜は、相分離法等により非対称構造が同一素材で形成された非対称膜であってもよく、多孔性支持体上に選択分離性を有する薄膜を異なる素材で形成してなる複合半透膜であってもよい。
【0024】
非対称膜の形成材料としては、酢酸セルロース、ポリエーテル、架橋アラミド、シリコン、合成高分子などが挙げられる。
【0025】
本発明においては、分離膜が薄膜とこれを支持する多孔性支持膜とからなる複合半透膜であることが好ましく、前記薄膜が、アミン成分と2価以上の多官能酸ハロゲン化物との縮合反応によって得られる構成単位を有するポリアミドを主成分とするものであることがさらに好ましい。
【0026】
アミン成分とは、2つ以上の反応性のアミノ基を有する多官能アミンであり、芳香族、脂肪族、又は脂環式の多官能アミンが挙げられる。芳香族多官能アミンとしては、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、2,4−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノアニソール、アミドール、キシリレンジアミン等が挙げられる。脂肪族多官能アミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン等が挙げられる。脂環式多官能アミンとしては、例えば、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、4−アミノメチルピペラジン等が挙げられる。これらの多官能アミンは1種で用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0027】
2価以上の多官能性酸ハロゲン化物としては、芳香族、脂肪族、又は脂環式の多官能性酸ハロゲン化物が挙げられる。芳香族多官能性酸ハロゲン化物としては、例えば、トリメシン酸クロライド、テレフタル酸クロライド、イソフタル酸クロライド、ビフェニルジカルボン酸クロライド、ナフタレンジカルボン酸ジクロライド、ベンゼントリスルホン酸クロライド、ベンゼンジスルホン酸クロライド、クロロスルホニルベンゼンジカルボン酸クロライド等が挙げられる。脂肪族多官能性酸ハロゲン化物としては、例えば、プロパンジカルボン酸クロライド、ブタンジカルボン酸クロライド、ペンタンジカルボン酸クロライド、プロパントリカルボン酸クロライド、ブタントリカルボン酸クロライド、ペンタントリカルボン酸クロライド、グルタリルハライド、アジポイルハライド等が挙げられる。脂環式多官能性酸ハロゲン化物としては、例えば、シクロプロパントリカルボン酸クロライド、シクロブタンテトラカルボン酸クロライド、シクロペンタントリカルボン酸クロライド、シクロペンタンテトラカルボン酸クロライド、シクロヘキサントリカルボン酸クロライド、テトラハイドロフランテトラカルボン酸クロライド、シクロペンタンジカルボン酸クロライド、シクロブタンジカルボン酸クロライド、シクロヘキサンジカルボン酸クロライド、テトラハイドロフランジカルボン酸クロライド等が挙げられる。これら多官能性酸ハロゲン化物は1種で用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0028】
また、ポリアミドを含む薄膜の性能を向上させるために、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸などのポリマー、ソルビトール、グリセリンなどの多価アルコールなどを共重合させてもよい。
【0029】
本発明においては、前記ポリアミドが、上記一般式(I)及び/又は(II)で表される構成単位を有するポリアミドであることが好ましい。
【0030】
一般式(I)〜(II)におけるR11及びR21は、ベンゼン環またはナフタレン環を主鎖に有する2価の有機基を示し、ベンゼン環またはナフタレン環は置換されていてもよい。具体的には、−C6 H4 −、−CH2 −C6 H4 −CH2 −、−C6 H3 (OH)−、−C6 H3 (CH3 )−、−C6 H3 (C2 H5 )−、−C6 H(CH3 )3 −、−C6 H3 (Cl)−、−C6 H3 (NO2 )−、−C6 H4 −O−C6 H4 −、−C6 H4 −CH2 −C6 H4 −、−C6 H4 −NH−C6 H4 −、−C6 H4 −NHCO−C6 H4 −、−C6 H4 −(CO)−C6 H4 −、−C10H6 −、−C10H5 (SO3 H)−、−C10H4 (SO3 H)2 −などがあげられる。置換基の置換位置は何れでもよく、2価の結合位置の関係も、パラ位、メタ位など何れでもよい。
【0031】
また、R12、R13、R22、及びR23はそれぞれ独立に炭素数1〜5の−O−、又は−S−を含んでいてもよいアルキル基又は水素原子である。
【0032】
R12、R13、R22、及びR23としては、例えば、−CH3 、−C2 H5 、−C3 H7 、−C4 H9 、−C5 H11、−CH2 OCH3 、−CH2 OCH2 OCH3 、−C2 H4 OCH3 、−C2 H4 OC2 H5 、−CH2 SCH3 、−CH2 SCH2 SCH3 、−C2 H4 SCH3 、−C2 H4 SC2 H5 、−C2 H4 NHC2 H5 、−C2 H4 N(CH3 )C2 H5 などがあげられる。なかでも、多官能酸ハロゲン化物(酸成分)との反応性などの観点から、複素原子を含まないアルキル基が好ましい。
【0033】
一方、一般式(I)〜(II)におけるR14及びR24は、2価又は3価の有機基であり、アミン成分と縮合反応により薄膜を形成する前記2価以上の多官能酸ハロゲン化物の残基に相当するものである。
【0034】
本発明においては、一般式(I)〜(II)において、特にR11及びR21がm−フェニレン基であり、R12、R13、R22、及びR23が水素原子であり、且つ、R14及びR24がベンゼン環であることが好ましい。
【0035】
一方、本発明におけるポリアミドは、架橋構造を有することが好ましく、その場合、多官能酸ハロゲン化物の少なくとも一部に、3価以上の多官能酸ハロゲン化物を使用することが好ましい。3価以上の多官能酸ハロゲン化物を使用する場合、架橋部分では一般式(II)で表される構成単位となる。また、一般式(I)で表される構成単位は、2価の多官能酸ハロゲン化物により形成されるが、3価以上の多官能酸ハロゲン化物の未架橋部分が存在する場合にも、一般式(I)で表される構成単位となる。その場合、R14はカルボキシル基やその塩などが残存する2価の有機基となる。
【0036】
本発明におけるポリアミドには、一般式(I)及び/又は(II)で表される構成単位を50モル%以上含むことが好ましく、80モル%以上含むことがより好ましい。50モル%未満であると、アミド結合の窒素原子の置換基中の芳香環の効果が小さくなり、実用的な透水性と優れた塩阻止性を同時に満足しにくくなる傾向がある。
【0037】
薄膜(分離活性層)の厚みは、薄膜の製法等にもよるが、0.01〜100μmが好ましく、0.1〜10μmがより好ましい。当該厚みが薄い方が透過流束の面で優れるが、薄くなりすぎると薄膜の機械的強度が低下して欠陥が生じ易く、塩阻止性能に悪影響を及ぼす傾向があるからである。
【0038】
本発明において、上記薄膜を支持する多孔性支持膜は、薄膜を支持しうるものであれば特に限定されず、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンのようなポリアリールエーテルスルホン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデンなど種々のものをあげることができるが、特に化学的、機械的、熱的に安定である点からポリスルホン、ポリアリールエーテルスルホンからなる多孔性支持膜が好ましく用いられる。かかる多孔性支持膜は、通常約25〜125μm、好ましくは約40〜75μmの厚みを有するが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0039】
また、多孔性支持膜は、対称構造でも非対称構造でもよいが、薄膜の支持機能と通液性を両立させる上で、非対称構造が好ましい。なお、多孔性支持膜の薄膜形成側面の平均孔径は、1〜1000nmが好ましい。
【0040】
本発明における薄膜を多孔質支持膜上に形成させる際に、その方法については何ら制限なく、あらゆる公知の手法を用いることができる。例えば、界面縮合法、相分離法、薄膜塗布法などが挙げられる。中でも、多孔質支持膜上にアミン成分を含有した水溶液を塗布した後に、かかる多孔質支持膜を多官能酸ハロゲン化物を含有した非水溶性溶液に接触させることにより多孔質支持膜上に薄膜を形成させる界面縮合法が好ましい。かかる界面縮合法の条件等の詳細は、特開昭58−24303号公報、特開平1−180208号公報等に記載されており、それらの公知技術を適宜採用することができる。
【0041】
また、その反応場に、製膜を容易にし、あるいは得られる複合半透膜の性能を向上させるための目的で、各種の試薬を存在させることが可能である。これらの試薬として、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸などの重合体、ソルビトール、グリセリンなどのような多価アルコール、特開平2−187135号公報に記載のテトラアルキルアンモニウムハライドやトリアルキルアンモニウムと有機酸の塩などのアミン塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤、縮重合反応にて生成するハロゲン化水素を除去しうる水酸化ナトリウム、リン酸三ナトリウム、トリエチルアミン、カンファースルホン酸、あるいは公知のアシル化触媒、また、特開平8−224452号公報に記載の溶解度パラメーターが8〜14(cal/cm3 )1/2 の化合物などがあげられる。
【0042】
本発明の逆浸透膜の製造方法は、前記複合半透膜などの分離膜を珪素化合物を含有する水溶液と接触させる接触工程を含むものである。珪素化合物は水溶性のものであれば特に制限されず、例えば、珪酸、水溶性珪酸塩、及び珪酸エステルなどが挙げられる。特に、珪酸及び/又は水溶性珪酸塩であることが好ましい。
【0043】
珪酸としては、オルト珪酸、メタ珪酸、メソ二珪酸、メソ三珪酸、及びメソ四珪酸などが挙げられる。
【0044】
水溶性珪酸塩としては、珪酸アルカリ金属塩、珪酸アルカリ土類金属塩などが挙げられる。珪酸アルカリ金属塩としては、珪酸ナトリウム、珪酸カリウムなどが挙げられる。珪酸アルカリ土類金属塩としては、珪酸カルシウムなどが挙げられる。特に、珪酸ナトリウム及び/又は珪酸カリウムであることが好ましい。
【0045】
本発明において、分離膜に珪素化合物を含有する水溶液を接触させる方法としては浸漬、加圧通水、噴霧、塗布、シャワーなどあらゆる方法が例示されるが、接触による十分な効果を付与せしめるためには加圧通水が好ましい。
【0046】
加圧通水法で水溶液の接触をおこなう際、接触時間は求める効果を得、かつ製造上の制約が許容する範囲であれば何ら制限を受けるものではなく、任意の時間を設定することができる。
【0047】
加圧通水法で前記水溶液の接触をおこなう際、かかる水溶液を分離膜に供する圧力については分離膜及び圧力付与のための部材や設備の物理的強度の許容する範囲においては何ら制限はないが、0.1〜10MPaでおこなうことが好ましく、さらに好ましくは1.5〜7.5MPaである。0.1MPa未満の場合には、求める効果を得ようとすると接触時間が長くなる傾向にあり、10MPaを超える場合には、圧密化により透過水量が低下する傾向にある。
【0048】
接触工程をおこなう際に分離膜はその形状になんら制限を受けるものではない。すなわち平膜状、あるいはスパイラルエレメント状など、考えられるあらゆる膜形状において処理を施すことが可能である。
【0049】
前記接触工程は、塩素を含む水溶液に分離膜を接触処理させた後に行ってもよい。
【0050】
このような製造方法により作製された逆浸透膜は、優れた塩阻止性及び実用的な透水性を併せ持つ。
【0051】
本発明の水処理方法は、塩及び/又は有機物を含有する水を原水として前記分離膜により膜分離処理し、前記塩及び/又は有機物が実用上十分に除去された透過水を得る水処理方法において、前記原水中に珪酸及び/又は水溶性珪酸塩を添加することを特徴とするものである。前記水溶性珪酸塩は珪酸ナトリウム及び/又は珪酸カリウムであることが好ましい。原水中に珪酸及び/又は水溶性珪酸塩を添加することにより、分離膜の接触工程と水処理工程を同時に行うことができ、コスト的に有利である。
【0052】
珪酸及び/又は水溶性珪酸塩の添加は、逆浸透膜による水処理運転中、常時おこなわれていてもよく、あるいは間欠的であってもよい。また、水処理運転を停止し、珪酸及び/又は水溶性珪酸塩を含有した原水で逆浸透膜モジュールを一定時間封入することで行ってもよい。
【0053】
【実施例】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。
【0054】
実施例1
m−フェニレンジアミン3重量%、ラウリル硫酸ナトリウム0.25重量%、トリエチルアミン2重量%、及びカンファスルホン酸4重量%を含有する水溶液を多孔性ポリスルホン支持膜(薄膜形成側平均孔径20nm、非対称膜、厚さ50μm)に接触させた後、余分の水溶液を除去した。ついでかかる支持膜の表面にトリメシン酸クロライド0.1重量%、及びイソフタル酸クロライド0.15重量%を含有するイソオクタン溶液を接触させて界面縮重合反応を行った。その後120℃の熱風乾燥機中で3分間保持させ、多孔性支持膜上に重合体薄膜(厚み0.2μm)を形成して複合半透膜を得た。作製した複合半透膜をスパイラルモジュール(直径201mm、長さ1016mm)に加工し、遊離塩素水溶液(濃度20mg/L、pH7)を操作圧力1.5MPaで30分間通液させた。
このモジュールに珪酸ナトリウム水溶液(珪素濃度25ppm)を操作圧力1.5MPaで30分間通液させた。その後、該モジュールを3.2%食塩水を原水として、水温25℃、pH7、圧力5.5MPa、及び濃縮液流量80L/minの条件下で透過試験を行った。その結果、塩阻止率は99.4%、透過流束は21m3 /日であった。
【0055】
実施例2
実施例1と同様の方法によりスパイラルモジュールを作製し、遊離塩素水溶液を通液させた。その後、珪酸ナトリウム(珪素濃度25ppm)を含有する3.2%食塩水を原水として、水温25℃、pH7、圧力5.5MPa、及び濃縮液流量80L/minの条件下で透過試験を行った。その結果、塩阻止率は99.5%、透過流束は21m3 /日であった。その後、珪酸ナトリウムを添加していない3.2%食塩水を原水として、同様の条件で透過試験を行ったところ、塩阻止率は99.5%、透過流束は21m3 /日であった。
【0056】
実施例3
実施例1と同様の方法によりスパイラルモジュールを作製し、遊離塩素水溶液を通液させた。このモジュールに珪酸ナトリウム水溶液(珪素濃度5ppm)を操作圧力1.5MPaで30分間通液させた。その後、実施例1と同様の条件下で透過試験を行った。その結果、塩阻止率は99.5%、透過流束は20m3 /日であった。
その後、造水プラントで実施される洗浄による塩阻止率の変動を確認するため、トリポリリン酸ナトリウム2%及びラウリル硫酸ナトリウム0.25%を含有する洗浄液を用い、温度40℃、pH10、圧力0.2MPa、洗浄運転時間8時間、及び封入停止時間12時間の条件下で該モジュールを洗浄した。そして、前記と同様の条件下で透過試験を行ったところ、塩阻止率は99.5%、透過流束は20m3 /日であり、性能は変化しなかった。
【0057】
実施例4
実施例1と同様の方法によりスパイラルモジュールを作製し、遊離塩素水溶液を通液させた。その後、珪酸ナトリウム(珪素濃度5ppm)を含有する3.2%食塩水を原水として、水温25℃、pH7、圧力5.5MPa、及び濃縮液流量80L/minの条件下で透過試験を行った。その結果、塩阻止率は99.4%、透過流束は19m3 /日であった。その後、珪酸ナトリウムを添加していない3.2%食塩水を原水として、同様の条件で透過試験を行ったところ、塩阻止率は99.4%、透過流束は19m3 /日であった。
その後、実施例3と同様の方法で該モジュールを洗浄し、透過試験を行ったところ、塩阻止率は99.4%、透過流束は19m3 /日であり、性能は変化しなかった。
【0058】
実施例5
実施例1と同様の方法によりスパイラルモジュールを作製し、遊離塩素水溶液を通液させた。このモジュールに珪酸ナトリウム水溶液(珪素濃度5ppm)を操作圧力1.5MPaで30分間通液させた。その後、沖縄海水を原水として水温25℃、pH7〜8、圧力5.5MPa、及び濃縮液流量80L/minの条件下で透過試験を行った。その結果、塩阻止率は99.5%、透過流束は20m3 /日であった。その後、沖縄海水を原水として圧力6.0MPa、回収率40%で1ヶ月連続運転した後、沖縄海水を原水として実施例1と同様の条件下で透過試験を行ったところ、塩阻止率は99.6%、透過流束は19m3 /日であり、性能はほとんど変化しなかった。
【0059】
実施例6
実施例1と同様の方法によりスパイラルモジュールを作製し、遊離塩素水溶液を通液させた。その後、珪酸カリウム(珪素濃度5ppm)を含有する3.2%食塩水を原水として、水温25℃、pH7、圧力5.5MPa、及び濃縮液流量80L/minの条件下で透過試験を行った。その結果、塩阻止率は99.5%、透過流束は20m3 /日であった。その後、珪酸カリウムを添加していない3.2%食塩水を原水として、同様の条件で透過試験を行ったところ、塩阻止率は99.5%、透過流束は20m3 /日であった。
【0060】
実施例7
m−フェニレンジアミン2.5重量%、ラウリル硫酸ナトリウム0.15重量%、トリエチルアミン2.5重量%、カンファスルホン酸4重量%、及びイソプロピルアルコール30重量%を含有する水溶液を前記多孔性ポリスルホン支持膜に接触させた後、余分の水溶液を除去した。ついでかかる支持膜の表面にトリメシン酸クロライド0.18重量%を含有するイソオクタン溶液を接触させて界面縮重合反応を行った。その後120℃の熱風乾燥機中で3分間保持させ、多孔性支持膜上に重合体薄膜(厚み0.2μm)を形成して複合半透膜を得た。作製した複合半透膜をスパイラルモジュール(直径201mm、長さ1016mm)に加工し、遊離塩素水溶液(濃度20mg/L、pH7)を操作圧力1.5MPaで30分間通液させた。このモジュールに珪酸ナトリウム水溶液(珪素濃度5ppm)を操作圧力1.5MPaで30分間通液させた。その後、該モジュールを0.15%食塩水を原水として、水温25℃、pH7、圧力1.5MPa、及び濃縮液流量90L/minの条件下で透過試験を行った。その結果、塩阻止率は99.7%、透過流束は28m3 /日であった。
【0061】
比較例1
実施例1と同様にしてスパイラルモジュールを作製し、遊離塩素水溶液を通液させた。その後、3.2%食塩水を原水として、水温25℃、pH7、圧力5.5MPa、及び濃縮液流量80L/minの条件下で透過試験を行った。その結果、塩阻止率は99.0%、透過流束は20m3 /日であり、実施例1に比べて塩阻止率に劣っていた。
【0062】
比較例2
実施例7と同様にしてスパイラルモジュールを作製し、遊離塩素水溶液を通液させた。その後、0.15%食塩水を原水として、水温25℃、pH7、圧力1.5MPa、及び濃縮液流量90L/minの条件下で透過試験を行った。その結果、塩阻止率は99.3%、透過流束は27m3 /日であり、実施例7に比べて塩阻止率に劣っていた。
Claims (12)
- 分離膜を珪素化合物を含有する水溶液と接触させる接触工程を含むことを特徴とする逆浸透膜の製造方法。
- 珪素化合物が珪酸及び/又は水溶性珪酸塩である請求項1記載の逆浸透膜の製造方法。
- 水溶性珪酸塩が珪酸ナトリウム及び/又は珪酸カリウムである請求項2記載の逆浸透膜の製造方法。
- 分離膜が、薄膜とこれを支持する多孔性支持膜とからなる複合半透膜である請求項1〜3のいずれかに記載の逆浸透膜の製造方法。
- 前記薄膜が、アミン成分と2価以上の多官能酸ハロゲン化物との縮合反応によって得られる構成単位を有するポリアミドを主成分とするものである請求項4記載の逆浸透膜の製造方法。
- R11及びR21がm−フェニレン基であり、R12、R13、R22、及びR23が水素原子であり、且つ、R14及びR24がベンゼン環である請求項6記載の逆浸透膜の製造方法。
- 水溶液中の珪素濃度が1〜50ppmである請求項1〜7のいずれかに記載の逆浸透膜の製造方法。
- 接触工程を0.1〜10MPaの加圧条件下で行う請求項1〜8のいずれかに記載の逆浸透膜の製造方法。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法によって製造される逆浸透膜。
- 塩及び/又は有機物を含有する水を原水として分離膜により膜分離処理し、前記塩及び/又は有機物が実用上十分に除去された透過水を得る水処理方法において、前記原水中に珪酸及び/又は水溶性珪酸塩を添加することを特徴とする水処理方法。
- 水溶性珪酸塩が珪酸ナトリウム及び/又は珪酸カリウムである請求項11記載の水処理方法。
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