JP2004273443A - 非水系リチウムイオン二次電池用の負極材料及び負極、並びに非水系リチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 Ag,Zn,Al,Ga,In,Si,Ge,Sn及びPbより選ばれる少なくとも一種の金属元素からなる原料金属微粒子に、Hを除くIa族〜VIIIa族,Bを除くIb族〜IIIb族,Cを除くIVb族,及びVb族より選ばれる少なくとも一種の、原料金属微粒子とは異なる複合化金属及び/又は複合化金属酸化物が複合化した複合体微粒子と、炭素質物と、黒鉛質物とを含有し、
複合体微粒子,炭素質物及び黒鉛質物の合計重量に対して、複合体微粒子を3重量%以上40重量%以下含有するようにする。
【選択図】 なし
Description
本発明の負極材料は、該複合体微粒子、該炭素質物の前駆体である有機質物、及び該黒鉛質物を均一に混合した後、不活性雰囲気下で焼成処理することにより製造するのが好ましい(請求項3)。この際、前記焼成処理の前に、まず該複合体微粒子と該有機質物とを均一に混合し、続いて該黒鉛質物を加えて均一に混合してもよい(請求項4)。あるいは、前記焼成処理の前に、まず該複合体微粒子と該黒鉛質物とを均一に混合し、続いて該有機質物を加えて均一に混合してもよい(請求項5)。さらに、前記焼成処理の前に、該複合体微粒子、該有機質物、及び該黒鉛質物のうち少なくともいずれか二つに対して、不活性雰囲気下で金属複合化粉砕処理を加えることにより均一に混合するようにしてもよい(請求項6)。
また、該原料金属微粒子に、摩砕及び/又はせん断が加わる第一粉砕工程と衝撃応力が加わる第二粉砕工程とを有する粉砕処理を施してもよい(請求項9)。
また、該原料金属微粒子の伸度よりも大きい伸度を有する該複合化金属を用いるとともに、該原料金属微粒子と該複合化金属との共存下、せん断,圧縮,及び衝撃応力のうち少なくとも一つが加わる金属複合化粉砕処理を施すことにより、該複合体微粒子を製造してもよい(請求項10)。
本発明の非水系リチウムイオン二次電池用負極材料は、少なくとも一種の原料金属微粒子に、原料金属微粒子とは異なる少なくとも一種の複合化金属及び/又は複合化金属酸化物が複合化した複合体微粒子と、炭素質物と、黒鉛質物とを含有する。
原料金属微粒子は、Ag、Zn、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn及びPbからなる群より選ばれる一種又は二種以上の金属元素からなる粉末である。上記の金属元素は、電極に使用した場合に、高い充電容量を発現することができ、且つ、充放電に伴う体積の膨張・収縮が比較的少ないことから好ましい。また、上記の金属元素は、リチウム二次電池の負極に用いた場合に、充電時にLiと合金化するため、高い充電容量を発現することが知られているので、この点でも好ましい。
原料金属微粒子を製造する方法としては、上記の条件を満たす原料金属微粒子を製造できる方法であれば特に限定はないが、中でも原料金属微粒子の原料である原料金属粉末にせん断応力、圧縮応力及び衝撃応力の少なくとも一つが加わる粉砕処理を施すことによって原料金属微粒子を製造する方法が好ましい。特に、上記の原料金属粉末に磨砕及び/又はせん断が加わる第1粉砕工程と、衝撃応力が加わる第2粉砕工程とを有する粉砕処理を施すことで、原料金属微粒子を製造することが好ましい。以下、この方法について詳細に述べる。
上記各種の処理のうち、特に凝集抑制処理について説明する。凝集抑制処理は、後述する凝集抑制剤の共存下で原料金属粉末に粉砕処理を施すことにより、金属粒子(即ち、原料金属粉末や一次金属微粒子など、粉砕の対象である金属の粒子)の過剰な凝集を抑制する処理である。凝集抑制剤は、金属粒子同士の間に介在して、各粒子間の化学的な相互作用を抑制することにより、粒子間の凝集を抑制する効果を生じる。この凝集抑制処理を施すことによって、第1粉砕工程及び第2粉砕工程を効率よく進行させることが可能になる。
金属ハロゲン化物としては、塩素化物、臭素化物、ヨウ素化物等が挙げられるが、より入手が容易で扱い易い点で、塩素化物が好ましい。
条件I.25℃で固体である。
条件II.(i)気体若しくは昇華温度が400K以上、2500K以下、又は、
(ii)水溶性で、且つ、25℃の水に対する溶解度w[飽和水溶液100g中の質量(g)の割合]が10重量%以上100重量%以下である。
(A)第1粉砕工程及び第2粉砕工程とは独立した工程として凝集抑制処理を実施する。即ち、第1粉砕工程及び/又は第2粉砕工程の前処理、中間処理、及び/又は後処理として、凝集抑制剤の共存下で原料金属粉末にせん断応力、圧縮応力、及び衝撃応力のうち少なくとも一つが加わる粉砕工程(以下「凝集抑制処理工程」と呼ぶ。)を施す。本工程の実施後、後述する手法を用いて、凝集抑制剤の少なくとも一部を除去してもよい。
複合化金属は、Hを除くIa族〜VIIIa族,Bを除くIb族〜IIIb族,Cを除くIVb族,及びVb族より選ばれる少なくとも一種の、原料金属微粒子とは異なる金属及びその金属の化合物である。金属の化合物の例としては、金属酸化物などが挙げられる。即ち、複合化金属の中でも特に金属の酸化物は、複合化金属酸化物と呼ぶこととする。また、以下の記載において、特に断らない限り、複合化金属といった場合には複合化金属酸化物を含むものを指すこととする。
また、複合化金属として金属の酸化物(複合化金属酸化物)を用いる場合には、Hを除くIa族〜VIIIa族、Ib族〜IIIb族、Cを除くIVb族、及びIb族に属する元素の酸
化物が好ましい。具体的には、Li2O,MgO,CaO,TiO2,Fe2O3,CoO,NiO,CuO,Cu2O,Ag2O,ZnO,Al2O3,Ga2O3,In2O3,SiO,SiO2,GeO,GeO2,SnO,SnO2,Pb3O4,Sb2O3,Bi2O3などが例示できる。
なお、複合化金属として金属の酸化物を用いる場合には、2種以上の複合化金属酸化物を組み合わせて用いてもよい。さらに、複合化金属酸化物を複合化金属酸化物以外の複合化金属(金属単体や合金、酸化物以外の化合物など)とを組み合わせて用いてもよい。
複合体微粒子は、上に詳述した原料金属微粒子と複合化金属とが複合化した複合体である。
本発明において、原料金属微粒子と複合化金属との複合化とは、原料金属微粒子と複合化金属とが部分的又は全体的に固溶した形態(固溶形態)、又は、原料金属微粒子又は複合化金属のどちらか一方が他方を被覆した形態(被覆形態)となることをいう(なお、これらの「固溶形態」及び「被覆形態」を併せて「複合形態」と呼ぶ。)。
なお、負極を作製した後に複合体微粒子が上記の複合体となっていることを確認する方法としては、作製した負極の集電体から物理的に負極材料を分離するか、又は、作製した負極の集電体から水や有機溶媒によって負極材料を分離し、その後に上記と同様の手段によって分析して確認することができる。なお、水や有機溶媒によって負極材料を分離する際には、例えば、集電体を容器にためた水や有機溶媒の中に入れて負極材料を集電体からはがれさせる方法があるが、その場合には適宜、超音波を用いて負極材料をはがれやすくさせてもよい。
以下、複合体微粒子の製造方法を説明する。
複合体微粒子の製造方法としては、上記の条件を満たす複合体微粒子を製造することができる方法であれば特に制限はないが、通常は、原料金属微粒子に、複合化金属の共存下、せん断応力、圧縮応力、及び衝撃応力のうち少なくとも一つが加わる金属複合化粉砕処理を施すことにより製造することができる。この製造方法によれば、原料金属微粒子及び複合化金属に強めの機械的粉砕又はメカノケミカルな粉砕を加えることができ、粒径が比較的大きな原料金属微粒子又は複合化金属を用いた場合でも、粒子の微細化と複合化を同時に且つ効率的に行なうことができる。
金属複合化粉砕処理は、原料粒子の一部又は全ての共存下において、圧縮・せん断応力と衝撃応力との少なくともいずれかが加わる粉砕を行なう処理である。金属複合化粉砕処理を加えることによって、各原料粒子はメカノケミカルに複合化し、複合化材料粒子となることができる。
複合化金属として原料金属微粒子の伸度よりも大きい伸度を有するものを用いる場合には、上記の金属複合化粉砕処理を行なう際、特に、通常10G以上、好ましくは15G以上、より好ましくは30G以上、また、通常500G以下、好ましくは450G以下、より好ましくは400G以下の加速度を加える条件下で上記の金属複合化粉砕処理を行なうことが望ましい。もしくは、回転運動により粉砕を行なう場合であれば、通常100rpm以上、好ましくは1000rpm以上、より好ましくは1500rpm以上、また、通常20000rpm以下、好ましくは18000rpm以下、より好ましくは15000rpm以下の回転速度で上記の金属複合化粉砕処理を行なうことが望ましい。複合化金属として原料金属微粒子の伸度よりも大きい伸度を有するものを用いる場合、加える圧縮応力、せん断応力又は衝撃応力が上記範囲よりも小さいと複合体微粒子の粒径又は複合形態が所望のものとならず、また、加える圧縮応力、せん断応力又は衝撃応力が上記範囲よりも大きいと複合化された複合体微粒子が過度に粉砕され、過剰な凝集を起こし複合形態が破壊されるためである。
金属複合化粉砕処理を施す際の凝集抑制処理は、原料金属微粒子の製造の場合と基本的には同様の処理を行なうが、凝集抑制剤としては、原料金属微粒子と反応性を有しないだけでなく複合化金属とも反応性を有することのない化合物を凝集抑制剤として選択すべきである。つまり、原料金属微粒子同士や、原料金属微粒子と複合化金属との間に介在して、各粒子間の化学的な相互作用を抑制し、粉末の粉砕効果を効率よく進行させるような凝集抑制剤を選択すべきである。
なお、後で詳細に説明するが、ここでは複合体微粒子は炭素質物の前駆体である有機質物及び炭素質物と混合され、その後焼成処理を施されて負極材料となるとする。
原料金属微粒子と複合化金属とを混合し、複合化粉砕処理を施した後、熱処理を加える。これにより、複合体微粒子が製造される。この複合体微粒子を、有機質物及び炭素質物と混合し、焼成処理を施す。以上の操作により、負極材料が製造される。
原料金属微粒子に凝集抑制剤を混合し、第一粉砕工程と第二粉砕工程とを施した後、凝集抑制剤を除去する。次に、原料金属微粒子に複合化金属及び凝集抑制剤を混合し、金属複合化粉砕処理を行なう。続いて凝集抑制剤の一部を除去した後、有機質物と黒鉛質物とを混合する。その後、残留している凝集抑制剤のうちの一部を除去し、焼成処理を行なう。最後に残留している凝集抑制剤をすべて除去する。以上の操作により、負極材料が製造される。
熱処理は、複合体微粒子の製造後、黒鉛質物又は有機質物との混合前に行なってもよい。これにより、複合化した原料金属微粒子及び複合化金属が加熱され、原料金属微粒子又は複合化金属が液相化及び/又は固相拡散する。このため熱処理を行なわない場合と比較して、より複合化及び均一化が促進される。特に、高結晶性の複合体微粒子を製造する場合には、熱処理を行なうことが好ましい。
一般的には、複合体微粒子が局所被覆構造となるか全体被覆構造となるかは原料金属微粒子に対する複合化金属の割合により決まるため、目的とする構造により適宜、原料金属微粒子に対する複合化金属の割合を決定すればよい。
次に、炭素質物について説明する。本発明にかかる炭素質物は、主に炭素質からなる材料であって、従来の非水性リチウム二次電池の負極材料に用いられているものであれば、その種類は特に制限されず、任意のものを選択して使用することが出来る。中でも好ましい例としては、有機質物を前駆体として、これを焼成処理して得られる物質が挙げられる。
次に、黒鉛質物について説明する。本発明の黒鉛質物としては、主に黒鉛質からなる材料であって、従来の非水性リチウム二次電池の負極材料に用いられているものであれば、その種類は特に制限されず、任意のものを選択して使用することが出来る。例としては、天然若しくは人造の黒鉛、これらの高純度精製品若しくはこれらの再加熱処理品、又はこれらのうち任意の二種以上からなる混合物などが挙げられる。また、その形状も特に制限されないが、通常は紛体のものが使用される。
本発明では、黒鉛質物の結晶面(002)の面間隔d002が、通常0.348nm以下、中でも0.338nm以下、特に0.337nm以下であることが好ましい。この値が上記範囲よりも大きい黒鉛質物は、結晶性が低く黒鉛質物としての特性を得られない、という理由で好ましくない。
本発明の負極材料は、上述の炭素質物、黒鉛質物、ナノ金属微粒子に加えて、適宜、その他の成分を含有していても良い。その他の成分としては、導電助剤やイオン導電性物質等の各種の助剤などが挙げられるが、これらの中でも、導電助剤を加えることが好ましい。
本発明の負極材料に含有される炭素質物、黒鉛質物、複合体微粒子及び導電助剤の比率について説明する。
まず、負極材料中に導電助剤を含有させない場合の炭素質物、黒鉛質物および複合体微粒子の比率について説明する。なお、有機質物、黒鉛質物、複合体微粒子及び導電助剤を区別せず述べる場合、以下「原料粒子」という。
導電助剤を含有させる場合、負極材料中に含まれる複合体微粒子の比率は、負極材料の重量を100重量%として、通常3重量%以上、好ましくは5重量%以上、より好ましくは6重量%以上、また、通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。また、負極材料中に含まれる炭素質物の比率は、負極材料の重量を100重量%として、通常1重量%以上、好ましくは1.5重量%以上、より好ましくは2重量%以上、また、通常60重量%以下、好ましくは55重量%以下、より好ましくは53重量%以下である。また、負極材料中に含まれる黒鉛質物の比率は、負極材料の重量を100重量%として、通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、また、通常95重量%以下、好ましくは90重量%以下、より好ましくは53重量%以下である。また、負極材料中に含まれる導電助剤の比率は、負極材料の重量を100重量%として、好ましくは1重量%以上95重量%以下である。
上記の範囲で各原料粒子を混合すると、充放電容量、サイクル特性が良好となる。
本発明の非水系リチウムイオン二次電池用負極材料中では、後述する製造方法により各原料粒子に機械的エネルギーが加わり、各原料粒子が複合化して複合化材料粒子となっていることが望ましい。複合化材料粒子の構造型としては、次に述べるように表面被覆型、金属表面包埋型、包埋型及び混合型がある。以下、それぞれの構造型について説明する。なお、本発明の非水系リチウムイオン二次電池用の負極材料は以下の構造型や製造方法に限定されるものではなく、また、各構造型や製造方法が組み合わされたものでも良い。
複合体微粒子が炭素質物及び/または黒鉛質物の表面に結着した構造である。
・金属表面包埋型:
複合体微粒子の一部が黒鉛質物に包埋し、複合体微粒子及び黒鉛質物の全体又は一部を炭素質物が覆っている構造である。
・包埋型:
複合体微粒子が炭素質物及び黒鉛質物に包埋された構造である。
・混合型:
複合体微粒子の一部又は全体を炭素質物が被覆した粒子と、黒鉛質物の一部又は全体を炭素質物が被覆した粒子とが混合されている。
本発明の非水系リチウムイオン二次電池用負極材料の製造方法は、有機質物と、黒鉛質物と、複合体微粒子とを共存下に不活性雰囲気下で焼成処理するものであれば特に限定はないが、各原料粒子を均一に混合させ、それを不活性雰囲気下で焼成処理することが好ましい。また、適宜、各原料粒子を混合させる際に、不活性雰囲気下で金属複合化粉砕処理を加えることがさらに好ましい。
・製造方法1:
黒鉛質物と複合体微粒子と炭素質物の前駆体である有機質物とを同時に均一に混合し、それを不活性雰囲気下で焼成する。この製造方法1によれば、上記の包埋型の複合化材料粒子を得ることができる。
さらに、有機質物と黒鉛質物とナノ金属微粒子とを混合する際、不活性雰囲気下で金属複合化粉砕処理を加えることにより混合させるようにすれば、より強固に複合化した状態の包埋型の複合化材料粒子を得ることができる。
複合体微粒子と炭素質物の前駆体である有機質物とを均一に混合した後に、黒鉛質物を加えて更に均一に混合し、その後不活性雰囲気下で焼成処理を行なう。この製造方法2によれば、上記の表面被覆型の複合化材料粒子を得ることができる。
さらに、有機質物と複合体微粒子とを混合する際、及び、その後黒鉛質物を加えて混合する際、不活性雰囲気下で金属複合化粉砕処理を加えることにより均一に混合させるようにすれば、複合体微粒子の一部が炭素質物及び/又は黒鉛質物の表面に埋まった状態の表面被覆型の複合化材料粒子を得ることができる。
黒鉛質物と複合体微粒子とを均一に混合した後に、炭素質物の前駆体である有機質物を加えて更に均一に混合し、その後不活性雰囲気下で焼成処理を行なう。この製造方法3によれば、上記の金属表面包埋型の複合化材料粒子を得ることができる。
さらに、黒鉛質物と複合体微粒子とを混合する際、及び、その後有機質物を加えて混合する際、不活性雰囲気下で金属複合化粉砕処理を加えることにより均一に混合させるようにすれば、複合体微粒子がより強固に黒鉛質物に包埋した状態の金属表面被覆型の複合化材料粒子を得ることができる。
複合体微粒子と炭素質物の前駆体である有機質物とを均一に混合したものと、黒鉛質物と有機質物とを均一に混合したものとを、合わせて更に均一に混合し、次に少量の有機質物を混合し、その後不活性雰囲気下で焼成処理する。この製造方法4によれば、上記の混合型の複合化材料粒子を得ることができる。
さらに、複合体微粒子と有機質物と、及び、黒鉛質物と有機質物とを混合する際に、不活性雰囲気下で金属複合化粉砕処理を行なうことにより均一に混合させるようにすれば、複合体微粒子及び黒鉛質物をより均一に炭素質物が被覆した状態の混合型の複合化材料粒子を得ることができる。
なお、各製造方法において金属複合化粉砕処理を加えると、上述したように製造される複合化材料粒子の状態を変化させることができるほか、本発明の負極材料中に含まれる複合体粒子、黒鉛質物及び炭素質物の粒径をさらに細かくすることが可能となる。
ただし、焼成処理の前に混合する導電助剤は、上述した導電助剤のうち、有機質物、黒鉛質物及び複合体微粒子に含まれない種類の導電助剤を用いる。例えば、焼成処理の前に混合する導電助剤として金属の単体を用いる場合には、Ag、Zn、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn及びPb以外の金属を用いる。或いは、焼成処理の前に混合する導電助剤として、天然黒鉛や人造黒鉛を用いる場合には、表面を上記のように表面皮膜法、エッチング、酸化処理又はオゾン処理等の改質処理を施すことで改質した天然黒鉛や人造黒鉛を用いる。
いっぽう、焼成処理の後に混合する導電助剤は、上述した導電助剤から選ばれるものを任意に用いることができる。
不活性雰囲気下とは、真空中、或いは不活性ガス雰囲気下を意味する。
不活性ガスとしては、通常窒素、アルゴン又はヘリウムが挙げられ、好ましくは窒素又はアルゴンが挙げられる。中でも、工業的に扱いやすく一般的であるために、窒素が特に好ましい。
焼成処理を行なう場合の温度条件は、通常200℃以上、好ましくは500℃以上、より好ましくは600℃以上、また、通常1500℃以下、好ましくは1450℃以下、より好ましくは1300℃以下、更に好ましくは1250℃以下である。この温度条件よりも低温で焼成処理を行なうと、有機質物を炭化させて炭素質物とすることができず、この温度条件よりも高温で焼成処理を行なうと、ナノ金属微粒子がカーバイド化し、電気的に不活性となって充放電容量を発現しなくなるためである。
また、不活性雰囲気下で焼成処理を行なう場合には、例えば、真空パージ式焼成炉や電気炉などを用いることができる。
本発明の非水系リチウムイオン二次電池用負極(以下、二次電池用負極という)は、集電体上に活物質層を設けてなるものである。活物質層は、上記の負極材料及び結着剤を含有し、さらに、必要に応じて導電助剤を含有するものである。
結着剤としては、後述する液体溶媒に対して安定な高分子が好ましい。
例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、芳香族ポリアミド又はセルロース等の樹脂系高分子、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム又はエチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、又はスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、又はプロピレン・α−オレフィン(炭素数2〜12)共重合体等の軟質樹脂状高分子、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、又はポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子、アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物などが挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
負極材料は、負極材料と結着剤と導電助剤との合計重量を100重量%として、通常1重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、また、通常98重量%以下の比率にする。
負極は、負極材料、結着剤、及び必要に応じて導電助剤を、液体溶媒に分散させ、集電体表面に塗布し、乾燥させて製造する。
導電助剤は、上述した導電助剤から選ばれるものを任意に用いることができる。
上記の負極を用いた本発明の非水系リチウムイオン二次電池(以下、単に「本発明の二次電池」等と略称する。)について説明する。
本発明の二次電池は、電解質、正極、及び負極を、その他の任意の電池構成要素であるセパレータ、ガスケット、集電体、封口板、セルケース等と組み合わせて構成する。製造可能な二次電池としては、特に限定されるものではなく、筒型、角型、コイン型、シート型、積層型、電気自動車等様々な二次電池として製造することができる。
また、本発明の二次電池は、携帯電子機器、小型電力貯蔵装置、大型電力貯蔵装置、電気自動車、自動二輪車、ハイブリッド電気自動車等に使用できるが、その使用用途はこれに限定されるものではない。
また、正極としては、例えば、正極活物質に、アセチレンブラック、黒鉛等の導電助剤を混合し、テトラフルオロエチレン等を結着剤として混合後、アルミ箔上に塗布し、成形、乾燥したものを用いることができる。
正極活物質としては、従来から知られている正極活物質を任意に使用することができ、特に限定はない。具体例としては、LiFeO2、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4およびこれらの非定比化合物、MnO2、TiS2、FeS2、Nb3S4、Mo3S4、CoS2、V2O5、P2O5、CrO3、V3O3、TeO2、GeO2等を用いることができる。
非水系の電解液としては通常、非水系の溶媒にリチウム塩を溶解させたものを用いる。
電解液の溶媒として使用できる非水溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、スルホラン、1,3−ジオキソラン、ジメチルスルフィド、プロピレンサルファイド、エチレンサルファイド、及びビニレンカーボネート等の有機溶媒、ポリエピクロルヒドリン、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンカーボネート、及びポリアクリロニトリル等の高分子化合物に、リチウム塩、またはリチウムを主体とするアルカリ金属塩を複合させたもの、あるいはこれにプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、及びγ−ブチロラクトン等の高い誘電率やイオン−双極子相互作用力を有する有機化合物の単独、または二種類以上を混合したものを用いることができる。
また、リチウムイオン等のアルカリ金属カチオンの導電体であるポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、及びポリ(メタクロイルエチレンオキシド)等のエーテル系高分子固体電解質や、ポリエーテル化合物の架橋体高分子や、またこれらのものの構造末端の水素基がメチル基、或いはエチル基等のアルキル基に交換された、ポリエチレンオキシドジメチルエーテル等のω−アルキルポリエーテルや、ポリアクリロニトリルや、又はけん化度が高いポリビニルアルコールと上記有機溶媒とを混合したゲル電解質を、非水系の電解質として用いることもできる。
セパレータの孔径は、電極より脱離した正負極材料、結着剤、導電助剤が透過しない範囲が好ましく、例えば0.01μm〜50μmが望ましい。セパレータの厚みは、一般的には、10μm〜350μmが用いられる。また、セパレータの空孔率は、電子やイオンの透過性と素材や膜圧に応じて決定されるが、一般的には、30%〜80%が望ましい。
原料金属微粒子は、Liと合金化することで高容量を発現する。しかし、原料金属微粒子のみの負極材を用いる場合、原料金属微粒子の膨張収縮に伴う材料破壊が起こるために、サイクル特性の向上には限界がある。そこで、本発明では、原料金属微粒子と複合化金属とを複合化させることで、前記のような原料金属微粒子の膨張収縮による材料破壊を抑制し、かつ、負極材の導電性を向上させることにより、サイクル特性向上を可能にした。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
サンプルとなる電極材料の評価は以下のように行なった。サンプル(電極材料)と結着剤とを銅箔集電体上に塗布、結着した後、ペレット状に成形して、評価用電極を作製した。この評価用電極を、対極であるリチウム金属電極、セパレータ、電解液と共に、2016コイン型セル中に半電池として組み立てた。この半電池(コイン型セル半電池)の充放電容量を、定電流充電及び定電流放電を繰り返し行なう充放電試験により評価した。なお、評価用電極を用いて構成したリチウムイオン電池についても、この半電池について評価した特性と同様な特性が期待できる。
原料金属微粒子としてSi微粒子(平均粒径6μm)と、複合化金属としてCu粉末(平均粒径略1μm、純度99.9%)とを、Si微粒子とCu粉末との合計重量を100%として、Si微粒子が90重量%、Cu粉末が10重量%となるように混合した。これらの混合したSi微粒子及びCu粉末に対し、マルチリング媒体型超微粉砕機(株式会社奈良機械製作所製:マイクロス MIC−0)を用いて、2000rpmで3時間にわたって乾式で金属複合化粉砕処理(窒素流量:100cc/min.)を施し、複合体微粒子を得た。
初期可逆容量(mAh/g)=第1回の放電容量
不可逆容量(mAh/g)=第1回の充電容量−第1回の放電容量
容量維持率(%)=(第15回の放電容量/第5回の放電容量)×100
原料金属微粒子として平均粒径が130nmのSi微粒子を用い、また、Si微粒子とCu粉末との合計重量を100%として、Si微粒子が50重量%、Cu粉末が50重量%となるように混合した他は、実施例1と同様の手順でサンプル(電極材料)を作製し、電池評価を行なった。また、このサンプルをSEMで観察したところ、表面被覆型の構造が観察された。
実施例1と同様のSi微粒子と、凝集抑制剤としてLiCl粉末とを、Si微粒子とLiCl粉末との合計重量を100重量%として、Si微粒子が70重量%、LiCl粉末が30重量%となるように混合した。このSi微粒子及びLiCl粉末に対し、マルチリング媒体型超微粉砕機を使用して2000rpmで2時間、乾式で金属複合化粉砕処理を行ない、粉体生成物を得た。この粉体生成物と複合化金属として実施例1と同様のCu粉末とを、粉体生成物とCu粉末との合計を100重量%として、粉体生成物が90重量%、Cu粉末が10重量%となるように混合し、マルチリング媒体型超微粉砕機で2000rpmで1時間にわたって乾式で金属複合化粉砕処理(窒素流量:100cc/min.)を行ない、複合体微粒子を得た。この他の操作は実施例1と同様の手順でサンプル(電極材料)を作製し、電池評価を行なった。また、このサンプルをSEMで観察したところ、表面被覆型の構造が観察された。
Cu粉末に代えて、複合化金属酸化物であるCuO粉末(平均粒径1〜2μm,純度99.9%)を用いたほかは、実施例1と同様にして複合体微粒子及び電極材料を作製した。なお、電極材料と導電助剤との合計重量に対する、原料金属微粒子であるSiの重量比率を15%とした。次いで、作製した電極材料について、実施例1と同様に電池評価を行なった。
複合化金属酸化物としてNiO粉末(平均粒径10μm,純度99.9%)を用いたほかは、実施例4と同様にして複合体微粒子及び電極材料を作製し、電池評価を行なった。
複合化金属酸化物としてFe2O3粉末(平均粒径1μm,純度99.9%)を用いたほかは、実施例4と同様にして複合体微粒子及び電極材料を作製し、電池評価を行なった。
複合化金属酸化物としてSnO2粉末(平均粒径10μm,純度99.9%)を用いたほかは、実施例4と同様にして複合体微粒子及び電極材料を作製し、電池評価を行なった。
複合化金属酸化物としてTiO2粉末(アナターゼ型,平均粒径0.1μm,純度99.9%)を用いたほかは、実施例4と同様にして複合体微粒子及び電極材料を作製し、電池評価を行なった。
複合化金属酸化物としてγ−Al2O3粉末(平均粒径2〜3μm,純度99.9%)を用いたほかは、実施例4と同様にして複合体微粒子及び電極材料を作製し、電池評価を行なった。
平均粒径が200nmのSi微粒子と、有機質物としての実施例1と同様の粉状ピッチとを湿式(エタノール)で均一に混合し、50℃で乾燥した。さらに、黒鉛質物として実施例1と同様の人造黒鉛を乾式で均一に混合した。なお、この際得られた粉体の組成は、Si微粒子20重量%:粉状ピッチ60重量%:人造黒鉛20重量%となるようにした。この他の操作は実施例1と同様の手順でサンプル(電極材料)を作製し、電池評価を行なった。また、このサンプルをSEMで観察したところ、表面被覆型の構造が観察された。
平均粒径が0.8μmのSi粒子と実施例1と、有機質物としての実施例1と同様の粉状ピッチとを、マルチリング媒体型超微粉砕機を使用して2000rpmで3時間、湿式(エタノール)で均一に混合し、50℃で24時間乾燥した。さらに、平均粒径が30μmの黒鉛質物としての人造黒鉛を混合した。なお、この際得られた粉体の組成は、Si微粒子20重量%:粉状ピッチ60重量%:人造黒鉛20重量%となるようにした。その後、瑠璃乳鉢の代わりに振動ミルで粉砕したほかは、実施例1と同様の手順でサンプル(電極材料)を作製し、電池評価を行なった。また、このサンプルをSEMで観察したところ、包埋型の構造が観察された。
平均粒径が1μmのSi粒子と、有機質物としての実施例1と同様の粉状ピッチと、平均粒径が30μmの黒鉛質物としての人造黒鉛とを転動ボールミルで72時間、乾式で金属複合化粉砕処理を行なった。なお、この際得られた粉体の組成は、Si微粒子20重量%:粉状ピッチ60重量%:人造黒鉛20重量%となるようにした。その後、瑠璃乳鉢の代わりに振動ミルで粉砕したほかは、実施例1と同様の手順でサンプル(電極材料)を作製し、電池評価を行なった。また、このサンプルをSEMで観察したところ、包埋型の構造が観察された。
したがって、本発明では、高容量であり、且つ、サイクル特性にも優れた負極材料を得ることができたと言える。
Claims (12)
- 正極と負極と非水系の電解質とを具備してなる非水系リチウムイオン二次電池における該負極の材料であって、
Liと合金化可能な、Ag,Zn,Al,Ga,In,Si,Ge,Sn及びPbより選ばれる少なくとも一種の金属元素からなる原料金属微粒子に、Hを除くIa族〜VIIIa族,Bを除くIb族〜IIIb族,Cを除くIVb族,及びVb族より選ばれる少なくとも一種の、前記原料金属微粒子とは異なる複合化金属及び/又は複合化金属酸化物が複合化した複合体微粒子と、炭素質物と、黒鉛質物とを含有し、
該複合体微粒子,該炭素質物及び該黒鉛質物の合計重量に対して、該複合体微粒子を3重量%以上40重量%以下含有することを特徴とする、非水系リチウムイオン二次電池用負極材料。 - 該複合体微粒子の平均粒径が、0.1μm以上50μm以下であることを特徴とする、請求項1記載の非水系リチウムイオン二次電池用負極材料。
- 該複合体微粒子、該炭素質物の前駆体である有機質物、及び該黒鉛質物を均一に混合した後、不活性雰囲気下で焼成処理することにより得られることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の非水系リチウムイオン二次電池用負極材料。
- 前記焼成処理の前に、該複合体微粒子と該有機質物とを均一に混合し、続いて該黒鉛質物を加えて均一に混合することを特徴とする、請求項3記載の非水系リチウムイオン二次電池用負極材料。
- 前記焼成処理の前に、該複合体微粒子と該黒鉛質物とを均一に混合し、続いて該有機質物を加えて均一に混合することを特徴とする、請求項3記載の非水系リチウムイオン二次電池用負極材料。
- 前記焼成処理の前に、該複合体微粒子、該有機質物、及び該黒鉛質物のうち少なくともいずれか二つに対して、不活性雰囲気下で金属複合化粉砕処理を加えることにより均一に混合することを特徴とする、請求項3〜5のいずれか1項に記載の非水系リチウムイオン二次電池用負極材料。
- 該黒鉛質物が、結晶面(002)の面間隔d002が0.348nm以下、且つ、積層の厚さが10nm以上であって、構造中に含まれる水素と炭素との原子比H/Cが0.1以下である黒鉛構造を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の非水系リチウムイオン二次電池用負極材料。
- 該原料金属微粒子がSi微粒子であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の非水系リチウムイオン二次電池用負極材料。
- 該原料金属微粒子が、摩砕及び/又はせん断が加わる第一粉砕工程と衝撃応力が加わる第二粉砕工程とを有する粉砕処理を施されたことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の非水系リチウムイオン二次電池用負極材料。
- 該複合体微粒子が、該原料金属微粒子の伸度よりも大きい伸度を有する該複合化金属を用い、該原料金属微粒子と該複合化金属との共存下、せん断,圧縮,及び衝撃応力のうち少なくとも一つが加わる金属複合化粉砕処理を施すことにより得られたものであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の非水系リチウムイオン二次電池用負極材料。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の非水系リチウムイオン二次電池用負極材料を含有することを特徴とする、非水系リチウムイオン二次電池用負極。
- 請求項11に記載の負極を具備してなることを特徴とする、非水系リチウムイオン二次電池。
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