JP2004270734A - 無段変速機の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ABS装着車とABS非装着車のいずれの無段変速機をも制御し得るようにし、ABS装着車の燃費を向上させ、ABS故障時におけるエンジンストップを回避する。
【解決手段】無段変速機のプライマリシリンダに供給される作動油は変速比調整弁により調整され、車両にABSが装着されているか否かはABS装着非装着判定部32により判定される。ABS装着非装着判定部32からの信号に基づいてABS装着車と非装着車とで目標変速比設定部33により変速特性が切り換えられる。この目標変速比設定部33からの信号に基づいて、変速比調整弁のソレノイド24aに制御信号が送られる。装着されたABSが故障していか否かはABS故障判定部36により判定される。ABS非装着車およびABS故障時には最低変速ラインがABS装着車およびABS正常作動時より高めに設定される。
【選択図】 図2
【解決手段】無段変速機のプライマリシリンダに供給される作動油は変速比調整弁により調整され、車両にABSが装着されているか否かはABS装着非装着判定部32により判定される。ABS装着非装着判定部32からの信号に基づいてABS装着車と非装着車とで目標変速比設定部33により変速特性が切り換えられる。この目標変速比設定部33からの信号に基づいて、変速比調整弁のソレノイド24aに制御信号が送られる。装着されたABSが故障していか否かはABS故障判定部36により判定される。ABS非装着車およびABS故障時には最低変速ラインがABS装着車およびABS正常作動時より高めに設定される。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はABSが装着される車両と装着されない車両のいずれの無段変速機をも制御し得るようにした無段変速機の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車などの車両に用いられるベルト式無段変速機は、入力軸に設けられる入力側のプライマリプーリと、出力軸に設けられる出力側のセカンダリプーリと、これらのプーリに掛け渡されるベルトやチェーンなどの動力伝達要素とを有している。それぞれのプーリの溝幅を変化させて動力伝達要素の巻き付け径を変化させることによって変速比が無段階に変化し、入力軸の回転を出力軸に所定の回転数に制御して伝達することができる。
【0003】
ベルト式無段変速機の変速比iは、ベルトのプライマリプーリに対する巻き付け径をRpとし、セカンダリプーリに対する巻き付け径をRsとすると、i=Rs/Rpで表され、プライマリプーリに対する巻き付け径Rpが最大となると、変速比iは最小となる。このときにはプライマリプーリの回転数はセカンダリプーリに対して最高に高められて伝達される。変速比iが最小となった状態のもとで、プライマリプーリの回転数の変化に対するセカンダリプーリの回転数つまり車速の変化は、最低変速ラインと言う変速特性線により示される。
【0004】
一方、車両にはその急制動時あるいは雪道などの滑り易い路面での制動時に起こる車輪のロックを防止するために、ABSつまりアンチロックブレーキシステムが装着されるABS装着車と、ABSが装着されないABS非装着車とがあり、前述した無段変速機を有する車両にも、ABS装着車とABS非装着車両とがある。ABS装着車の無段変速機の制御技術としては、たとえば、特許文献1に開示されるように、ABS作動時の変速速度を制限するようにしたものがある。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−330145号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ABS非装着車用の無段変速機は、タイヤがロックするとエンジン回転も一緒に無段変速機を介して低回転に引きずられることになり、エンジンストップに至るおそれがある。このため、ABS非装着車両用の無段変速機にあっては、最低変速ラインを高めつまり最低変速ラインのプライマリプーリ目標回転数が大きくなるように設定し、エンジンストップが発生しないようにエンスト耐力を確保するようにしている。
【0007】
これに対して、ABS装着車用の無段変速機は、タイヤがロックしないようにブレーキが制御されるので、エンスト耐力がある。このため、ABS装着車用の無段変速機にあっては、最低変速ラインを非装着車両よりも低めつまりプライマリプーリの目標回転数を低回転側に設定することができる。したがって、ABS装着車用と非装着車用とでは無段変速機の変速特性を相違させることができるが、ABSをオプション扱いとした場合には、それぞれ別々の制御ユニットを用意しておき、車両に応じて制御ユニットを選択する必要がある。
【0008】
また、ABSが故障した場合を考慮し、ABS装着車をABS非装着車と同じ最低変速ラインに設定すると、ABS故障時におけるエンジンストップの発生を防止できる反面、ABS装着車のエンジン回転数が最適燃費回転数よりも上昇気味になり、最適な燃費とすることができなくなる。
【0009】
本発明の目的は、ABS装着車とABS非装着車のいずれの無段変速機をも異なった変速特性で制御し得るようにすることにある。
【0010】
本発明の他の目的は、ABS故障時の挙動を考慮しつつABS装着車の燃費を向上させることにある。
【0011】
本発明の他の目的は、ABS故障時におけるエンジンストップを回避し得るようにすることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の無段変速機の制御装置は、プライマリ軸に装着され溝幅が可変のプライマリプーリ、セカンダリ軸に装着され溝幅が可変のセカンダリプーリ、およびこれらのプーリに掛け渡される動力伝達要素を有する無段変速機の変速制御装置であって、前記プライマリプーリに設けられたプライマリシリンダに供給される作動油を調整する変速比調整弁と、車両にABSが装着されているか否かを判定するABS装着非装着判定部と、前記ABS装着非装着判定部からの信号に基づいて、ABS装着車と非装着車とで変速特性を切り換える目標変速比設定部と、前記目標変速比設定部からの信号に基づいて、前記変速比調整弁に制御信号を送る変速制御用ソレノイド駆動部とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の無段変速機の制御装置は、ABS装着車の最低変速ラインをABS非装着車の最低変速ラインよりもプライマリ目標回転数を低回転側に設定することを特徴とする。
【0014】
本発明の無段変速機の制御装置は、プライマリ軸に装着され溝幅が可変のプライマリプーリ、セカンダリ軸に装着され溝幅が可変のセカンダリプーリ、およびこれらのプーリに掛け渡される動力伝達要素を有する無段変速機の変速制御装置であって、前記プライマリプーリに設けられたプライマリシリンダに供給される作動油を調整する変速比調整弁と、車両に装着されたABSが故障しているか否かを判定する故障判定部と、前記故障判定部からの信号に基づいて、ABS故障時と正常時とで変速特性を切り換える目標変速比設定部と、前記目標変速比設定部からの信号に基づいて、前記変速比調整弁に制御信号を送る変速制御用ソレノイド駆動部とを有することを特徴とする。
【0015】
本発明の無段変速機の制御装置は、ABS正常時の最低変速ラインをABS故障時の最低変速ラインよりもプライマリ目標回転数を低回転側に設定することを特徴とする。
【0016】
本発明の無段変速機の制御装置は、ABS正常時からABS故障時に変速特性を切り換えるときには変速特性の変化量を制限することを特徴とする。
【0017】
本発明の無段変速機の制御装置は、ABS非装着車の変速特性とABS故障時の変速特性とを共用することを特徴とする。
【0018】
本発明にあっては、ABS装着車とABS非装着車に対して別々の制御装置を設ける必要がなく、同じ制御装置を両方の車両に共用することができる。同じ制御装置によってABS装着車とABS非装車とを別々の変速特性で制御することができ、ABS装着車の最低変速ラインのプライマリプーリ目標回転数をABS非装車の最低変速ラインのプライマリプーリ回転数よりも低回転側に設定することができるので、ABS装着車の燃費を向上することができるとともにABS非装着車のエンスト耐力を向上させることができる。ABSが故障した場合にもエンストを回避することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1はベルト式無段変速機を備えた車両の駆動系を示す概略図であり、この無段変速機はエンジン1のクランク軸2の回転がトルクコンバータ3と前後進切換装置4とを介して伝達される駆動側のプライマリ軸5と、これと平行となった被駆動側のセカンダリ軸6とを有している。
【0020】
プライマリ軸5にはプライマリプーリ7が設けられており、このプライマリプーリ7はプライマリ軸5に一体となった固定プーリ7aと、これに対向してプライマリ軸5にボールスプラインなどにより軸方向に摺動自在に装着される可動プーリ7bとを有し、プーリのコーン面間隔つまりプーリ溝幅が可変となっている。セカンダリ軸6にはセカンダリプーリ8が設けられており、このセカンダリプーリ8はセカンダリ軸6に一体となった固定プーリ8aと、これに対向してセカンダリ軸6に可動プーリ7bと同様にして軸方向に摺動自在に装着される可動プーリ8bとを有し、プーリ溝幅が可変となっている。
【0021】
プライマリプーリ7とセカンダリプーリ8との間には動力伝達要素としてのベルト9が掛け渡されており、両方のプーリ7,8の溝幅を変化させてそれぞれのプーリに対するベルト9の巻き付け径の比率を変化させることにより、プライマリ軸5の回転がセカンダリ軸6に無段階に変速されて伝達されることになる。駆動ベルト9のプライマリプーリ7に対する巻き付け径をRpとし、セカンダリプーリ8に対する巻き付け径をRsとすると、変速比つまりプーリ比iはi=Rs/Rpとなる。
【0022】
セカンダリ軸6の回転は減速歯車およびディファレンシャル装置10を有する歯車列を介して駆動輪11a,11bに伝達されるようになっており、前輪駆動の場合には駆動輪11a,11bは前輪となる。
【0023】
プライマリプーリ7の溝幅を変化させるために、プライマリ軸5にはプランジャ12が固定され、このプランジャ12の外周面に摺動自在に接触するプライマリシリンダ13が可動プーリ7bに固定されており、プランジャ12とプライマリシリンダ13とによりプライマリ油室14が形成されている。一方、セカンダリ軸6にはプランジャ15が固定され、このプランジャ15の外周面に摺動自在に接触するセカンダリシリンダ16が可動プーリ8bに固定されており、プランジャ15とセカンダリシリンダ16とによりセカンダリ油室17が形成されている。
【0024】
それぞれの油室14,17には、エンジンあるいは電動モータにより駆動されるオイルポンプ21から吐出される作動油が供給されるようになっており、オイルポンプ21の吐出口に接続されるセカンダリ圧路22は、セカンダリ油室17に連通されるとともに圧力調整弁23のセカンダリ圧ポートに連通されている。この圧力調整弁23によって調圧されてセカンダリ油室17に供給されるセカンダリ圧により、ベルト9による動力伝達容量に見合った締め付け力がセカンダリプーリ8に加えられる。
【0025】
一方、セカンダリ圧路22は変速比調整弁24のプライマリ圧ポートに連通路25を介して接続されており、この変速比調整弁24のプライマリ圧ポートはプライマリ圧路26を介してプライマリ油室14に連通されている。この変速比調整弁24によって調圧されるプライマリ圧Ppにより、プライマリプーリ7の溝幅が変化して変速比が制御される。圧力調整弁23および変速比調整弁24はソレノイド弁であり、ソレノイド23a,24aに供給される電流値やデューティ値を制御することによりセカンダリ圧とプライマリ圧が調整される。
【0026】
図2は図1に示された無段変速機の変速機制御ユニット30を示すブロック図であり、変速機制御ユニット30はセンサなどからの信号に基づいて変速比調整弁24のソレノイド24aに対する駆動信号を演算するマイクロプロセッサCPUと、テーブル、マップおよび演算式などの制御用のデータと制御用のプログラムとを格納するROMと、一時的にデータを格納するRAMと、入出力ポートなどを備えている。図2においては、マイクロプロセッサの有する機能がそれぞれブロックで示されている。
【0027】
この変速機制御ユニット30はABS装着車とABS非装着車のいずれの車両にも搭載されるようになっている。ABS装着車は左右車輪のそれぞれの速度を検出する車輪速度センサを有しており、四輪駆動車の場合には前輪と後輪の左右それぞれの車輪速度を検出するとともに前後Gセンサにより前後方向の加速度を検出する。ABS装着車はABSコントローラ31を有し、このABSコントローラ31は車輪速度センサなどからの検出信号に基づいてホイールシリンダに対する油圧を調整するためのハイドロリックユニットに対して制御信号を送る。
【0028】
この変速機制御ユニット30は、車両にABSが装着されているか否かを検出するためのABS装着非装着判定部32を有し、ABSが装着される車両においてはABSコントローラ31からABSが装着されていることを示す信号がABS装着非装着判定部32に送られる。一方、ABS非装着車両においては、ABSコントローラ31には信号が送られないので、ABSコントローラ31はABS非装着車であることを判定することができる。たとえば、ABSコントローラ31からABS作動信号がデューティ信号としてABS装着非装着判定部32に送られる場合には、イグニッションキーがオンされてから所定時間経過してもABS装着非装着判定部32にデューティ信号が送られないときにはABS非装着車であると判定する。
【0029】
この変速機制御ユニット30は、走行状態に応じて変速比を制御し車速に対するプライマリプーリの目標回転数特性つまり変速特性を制御する。走行状態に応じて変速比を設定するために変速機制御ユニット30の目標変速比設定部33には、走行状態を示す複数の信号34が入力される。これらの信号として、スロットル開度を検出するスロットル開度センサ、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ、車速を検出する車速センサおよびその他の信号が目標変速比設定部33に送られる。
【0030】
図3は無段変速機におけるプライマリプーリ7の目標回転数Npと車速Vとの関係を示す変速特性線図であり、図3においてRLは変速比が最大であるローの最高変速ラインを示す。図3において実線で示されるRhaはABSが装着される場合の変速比が最小である最低変速ラインを示し、一点鎖線で示されるRhbはABSが装着されない場合の変速比が最小である最低変速ラインを示す。このように、ABSが装着される場合の最低変速ラインRhaがABSが装着されない場合の最低変速ラインRhbよりもプライマリプーリ7の低回転側に設定されている。
【0031】
ABS装着車用の無段変速機においては、タイヤがロックしないようにブレーキが制御され、エンスト耐力があるので、最低変速ラインRhaは非装着車両の最低変速ラインRhbよりも低めつまり最低変速ラインにおけるプライマリプーリの回転数が低回転側に設定されている。これに対して、ABS非装着車用の無段変速機は、タイヤがロックするとエンジン回転も一緒に無段変速機を介して低回転に引きずられることになり、エンジンストップに至るおそれがあるので、エンスト耐力を確保するために最低変速ラインRhbを、ABS装着車の最低変速ラインRhaよりも高めつまり最低変速ラインのプライマリプーリ7の回転数が高回転側に設定されている。これらの最低変速ラインを有する変速特性に対応するデータがマップデータとしてROMに格納されている。
【0032】
したがって、この変速機制御ユニット30はABS装着車とABS非装着車のいずれにも共用することができ、この変速機制御ユニット30がABS装着車に搭載されるときには、ABS装着非装着判定部32からの信号により最低変速ラインRhaに基づいて最低変速ラインのプライマリプーリ7の目標回転数が目標変速比設定部33により設定される。一方、この変速機制御ユニット30がABS非装着車に搭載されたときには、ABS装着非装着判定部32からは信号が送られず、最低変速ラインRhbに基づいて最低変速ラインのプライマリプーリ7の目標回転数が目標変速比設定部33により設定される。目標変速比設定部33からは設定された目標変速比に対応する制御信号が変速制御用ソレノイド駆動部35に送られ、このソレノイド駆動部35からは変速比調整弁24のソレノイド24aに制御信号が送られてプライマリプーリ7の溝幅が調整される。
【0033】
このように、変速機制御ユニット30は、ABS装着車とABS非装着車のいずれにも搭載することができるので、一種類の変速制御装置を製造することによってABS装着車とABS非装着車のいずれをも別々の変速特性で制御することができる。これにより、ABS装着車の燃費を向上することができるとともに、非装着車におけるタイヤロックに起因するエンジン停止の発生を防止することができる。さらに、車両の製造ラインを簡素化することができ、製造コストを低減することができる。
【0034】
変速機制御ユニット30は、図2に示すように、ABS装着非装着判定部32からの信号に基づいてABSが正常であるか故障であるかを判定するABS故障判定部36を有している。このABS故障判定部36がABSの故障を判定したときには、その信号が目標変速比設定部33に送られて、最低変速ラインはABS非装着車と同じ特性に設定されるようになっている。つまり故障時の最低変速ラインはABS非装着車の最低変速ラインと同様に設定されるようになっている。したがって、ABSが故障すると、最低変速ラインはABSが正常のときよりも高く設定されるので、ABSの不作動によってタイヤがロックされてもエンジンストップの発生を防止することきができる。車両が走行しているときにABSが故障したときに、最低変速ラインを切り換えるようにすると、変速ショックが発生するので、ABSの故障によって車両走行時に最低変速ラインを切り換えるときには、プライマリプーリ7の回転数の変化量を制限するようにする。
【0035】
ABS故障判定部36は、ABS装着非装着判定部32からの信号によりABS装着車であると判定した後に、デューティ信号が送られなくなったときには、断線、地路などの信号線の故障と判断することができる。また、故障の判定は、ABSコントローラ31などからの信号により故障信号を受信して故障と判定することも可能である。
【0036】
図4は上述した制御装置による無段変速機の制御ルーチンを示すフローチャートであり、ステップS1においてはABS装着車であるか否かを判定し、ステップS2においてはABSが正常であるか故障であるかを判定する。これらのステップにおいて車両がABS装着車でありABSが正常であると判定されたときには、図3において符号Rhaで示す最低変速ラインを有する変速特性に対応するマップがステップS3で読み出される。一方、ABS非装着車であると判定された場合およびABSが故障であると判定されたときには、図3において符号Rhbで示す最低変速ラインを有する変速特性に対応するマップがステップS4で読み出される。
【0037】
車両の走行時にABSが故障した場合のように、走行時に最低変速比が正常時の特性から故障時の特性に切り換えられる際には、切換ショックを軽減するために、変速特性の変化量が制限される。そのため、ステップS5ではプライマリプーリ7の目標回転数の変化量制限処理が行われる。ステップS6ではそれぞれのマップデータに基づき、さらに変化量制限処理に基づいて目標変速比が算出され、算出された目標変速比に応じた目標のプライマリ圧PpがステップS7で算出される。そして、算出されたプライマリ圧Ppに対応した駆動信号がステップS8でソレノイド24aに送られる。
【0038】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。たとえば、前述した実施の形態にあっては、変速機制御ユニット30によりABS装着車であるか非装着車であるかを判定するとともにABSの故障をも判定し、非装着者の場合とABSが故障した場合とで同じ変速特性を設定するようにしているが、ABS装着車であるか非装着車であるかのみを判定するようにしても良く、ABSの故障のみを判定するようにし、非装着車の場合とABSが故障した場合の最低変速ラインをABS装着車の最低変速ラインよりも高く設定するようにしても良い。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、ABS装着車とABS非装着車に対して別々の制御装置を設ける必要がなく、同じ制御装置を両方の車種に共用することができる。同じ制御装置によってABS装着車とABS非装車とを別々の変速特性で制御することができ、ABS装着車の最低変速ラインのプライマリプーリ目標回転数をABS非装車の最低変速ラインのプライマリプーリ回転数よりも低回転側に設定することができるので、ABS装着車の燃費を向上することができるとともにABS非装着車のエンスト耐力を向上させることができる。ABSが故障した場合にもエンストを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ベルト式無段変速機を備えた車両の駆動系を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施の形態である無段変速機の変速制御装置を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施の形態である無段変速機におけるプライマリプーリの目標回転数と車速との関係を示す変速特性線図である。
【図4】無段変速機の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【符号の説明】
5 プライマリ軸
6 セカンダリ軸
7 プライマリプーリ
8 セカンダリプーリ
13 プライマリシリンダ
14 プライマリ油室
16 セカンダリシリンダ
17 セカンダリ油室
23 圧力調整弁
24 変速比調整弁
24a ソレノイド
31 ABSコントローラ
32 ABS装着非装着判定部
33 目標変速比設定部
35 変速制御用ソレノイド駆動部
36 ABS故障判定部
【発明の属する技術分野】
本発明はABSが装着される車両と装着されない車両のいずれの無段変速機をも制御し得るようにした無段変速機の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車などの車両に用いられるベルト式無段変速機は、入力軸に設けられる入力側のプライマリプーリと、出力軸に設けられる出力側のセカンダリプーリと、これらのプーリに掛け渡されるベルトやチェーンなどの動力伝達要素とを有している。それぞれのプーリの溝幅を変化させて動力伝達要素の巻き付け径を変化させることによって変速比が無段階に変化し、入力軸の回転を出力軸に所定の回転数に制御して伝達することができる。
【0003】
ベルト式無段変速機の変速比iは、ベルトのプライマリプーリに対する巻き付け径をRpとし、セカンダリプーリに対する巻き付け径をRsとすると、i=Rs/Rpで表され、プライマリプーリに対する巻き付け径Rpが最大となると、変速比iは最小となる。このときにはプライマリプーリの回転数はセカンダリプーリに対して最高に高められて伝達される。変速比iが最小となった状態のもとで、プライマリプーリの回転数の変化に対するセカンダリプーリの回転数つまり車速の変化は、最低変速ラインと言う変速特性線により示される。
【0004】
一方、車両にはその急制動時あるいは雪道などの滑り易い路面での制動時に起こる車輪のロックを防止するために、ABSつまりアンチロックブレーキシステムが装着されるABS装着車と、ABSが装着されないABS非装着車とがあり、前述した無段変速機を有する車両にも、ABS装着車とABS非装着車両とがある。ABS装着車の無段変速機の制御技術としては、たとえば、特許文献1に開示されるように、ABS作動時の変速速度を制限するようにしたものがある。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−330145号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ABS非装着車用の無段変速機は、タイヤがロックするとエンジン回転も一緒に無段変速機を介して低回転に引きずられることになり、エンジンストップに至るおそれがある。このため、ABS非装着車両用の無段変速機にあっては、最低変速ラインを高めつまり最低変速ラインのプライマリプーリ目標回転数が大きくなるように設定し、エンジンストップが発生しないようにエンスト耐力を確保するようにしている。
【0007】
これに対して、ABS装着車用の無段変速機は、タイヤがロックしないようにブレーキが制御されるので、エンスト耐力がある。このため、ABS装着車用の無段変速機にあっては、最低変速ラインを非装着車両よりも低めつまりプライマリプーリの目標回転数を低回転側に設定することができる。したがって、ABS装着車用と非装着車用とでは無段変速機の変速特性を相違させることができるが、ABSをオプション扱いとした場合には、それぞれ別々の制御ユニットを用意しておき、車両に応じて制御ユニットを選択する必要がある。
【0008】
また、ABSが故障した場合を考慮し、ABS装着車をABS非装着車と同じ最低変速ラインに設定すると、ABS故障時におけるエンジンストップの発生を防止できる反面、ABS装着車のエンジン回転数が最適燃費回転数よりも上昇気味になり、最適な燃費とすることができなくなる。
【0009】
本発明の目的は、ABS装着車とABS非装着車のいずれの無段変速機をも異なった変速特性で制御し得るようにすることにある。
【0010】
本発明の他の目的は、ABS故障時の挙動を考慮しつつABS装着車の燃費を向上させることにある。
【0011】
本発明の他の目的は、ABS故障時におけるエンジンストップを回避し得るようにすることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の無段変速機の制御装置は、プライマリ軸に装着され溝幅が可変のプライマリプーリ、セカンダリ軸に装着され溝幅が可変のセカンダリプーリ、およびこれらのプーリに掛け渡される動力伝達要素を有する無段変速機の変速制御装置であって、前記プライマリプーリに設けられたプライマリシリンダに供給される作動油を調整する変速比調整弁と、車両にABSが装着されているか否かを判定するABS装着非装着判定部と、前記ABS装着非装着判定部からの信号に基づいて、ABS装着車と非装着車とで変速特性を切り換える目標変速比設定部と、前記目標変速比設定部からの信号に基づいて、前記変速比調整弁に制御信号を送る変速制御用ソレノイド駆動部とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の無段変速機の制御装置は、ABS装着車の最低変速ラインをABS非装着車の最低変速ラインよりもプライマリ目標回転数を低回転側に設定することを特徴とする。
【0014】
本発明の無段変速機の制御装置は、プライマリ軸に装着され溝幅が可変のプライマリプーリ、セカンダリ軸に装着され溝幅が可変のセカンダリプーリ、およびこれらのプーリに掛け渡される動力伝達要素を有する無段変速機の変速制御装置であって、前記プライマリプーリに設けられたプライマリシリンダに供給される作動油を調整する変速比調整弁と、車両に装着されたABSが故障しているか否かを判定する故障判定部と、前記故障判定部からの信号に基づいて、ABS故障時と正常時とで変速特性を切り換える目標変速比設定部と、前記目標変速比設定部からの信号に基づいて、前記変速比調整弁に制御信号を送る変速制御用ソレノイド駆動部とを有することを特徴とする。
【0015】
本発明の無段変速機の制御装置は、ABS正常時の最低変速ラインをABS故障時の最低変速ラインよりもプライマリ目標回転数を低回転側に設定することを特徴とする。
【0016】
本発明の無段変速機の制御装置は、ABS正常時からABS故障時に変速特性を切り換えるときには変速特性の変化量を制限することを特徴とする。
【0017】
本発明の無段変速機の制御装置は、ABS非装着車の変速特性とABS故障時の変速特性とを共用することを特徴とする。
【0018】
本発明にあっては、ABS装着車とABS非装着車に対して別々の制御装置を設ける必要がなく、同じ制御装置を両方の車両に共用することができる。同じ制御装置によってABS装着車とABS非装車とを別々の変速特性で制御することができ、ABS装着車の最低変速ラインのプライマリプーリ目標回転数をABS非装車の最低変速ラインのプライマリプーリ回転数よりも低回転側に設定することができるので、ABS装着車の燃費を向上することができるとともにABS非装着車のエンスト耐力を向上させることができる。ABSが故障した場合にもエンストを回避することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1はベルト式無段変速機を備えた車両の駆動系を示す概略図であり、この無段変速機はエンジン1のクランク軸2の回転がトルクコンバータ3と前後進切換装置4とを介して伝達される駆動側のプライマリ軸5と、これと平行となった被駆動側のセカンダリ軸6とを有している。
【0020】
プライマリ軸5にはプライマリプーリ7が設けられており、このプライマリプーリ7はプライマリ軸5に一体となった固定プーリ7aと、これに対向してプライマリ軸5にボールスプラインなどにより軸方向に摺動自在に装着される可動プーリ7bとを有し、プーリのコーン面間隔つまりプーリ溝幅が可変となっている。セカンダリ軸6にはセカンダリプーリ8が設けられており、このセカンダリプーリ8はセカンダリ軸6に一体となった固定プーリ8aと、これに対向してセカンダリ軸6に可動プーリ7bと同様にして軸方向に摺動自在に装着される可動プーリ8bとを有し、プーリ溝幅が可変となっている。
【0021】
プライマリプーリ7とセカンダリプーリ8との間には動力伝達要素としてのベルト9が掛け渡されており、両方のプーリ7,8の溝幅を変化させてそれぞれのプーリに対するベルト9の巻き付け径の比率を変化させることにより、プライマリ軸5の回転がセカンダリ軸6に無段階に変速されて伝達されることになる。駆動ベルト9のプライマリプーリ7に対する巻き付け径をRpとし、セカンダリプーリ8に対する巻き付け径をRsとすると、変速比つまりプーリ比iはi=Rs/Rpとなる。
【0022】
セカンダリ軸6の回転は減速歯車およびディファレンシャル装置10を有する歯車列を介して駆動輪11a,11bに伝達されるようになっており、前輪駆動の場合には駆動輪11a,11bは前輪となる。
【0023】
プライマリプーリ7の溝幅を変化させるために、プライマリ軸5にはプランジャ12が固定され、このプランジャ12の外周面に摺動自在に接触するプライマリシリンダ13が可動プーリ7bに固定されており、プランジャ12とプライマリシリンダ13とによりプライマリ油室14が形成されている。一方、セカンダリ軸6にはプランジャ15が固定され、このプランジャ15の外周面に摺動自在に接触するセカンダリシリンダ16が可動プーリ8bに固定されており、プランジャ15とセカンダリシリンダ16とによりセカンダリ油室17が形成されている。
【0024】
それぞれの油室14,17には、エンジンあるいは電動モータにより駆動されるオイルポンプ21から吐出される作動油が供給されるようになっており、オイルポンプ21の吐出口に接続されるセカンダリ圧路22は、セカンダリ油室17に連通されるとともに圧力調整弁23のセカンダリ圧ポートに連通されている。この圧力調整弁23によって調圧されてセカンダリ油室17に供給されるセカンダリ圧により、ベルト9による動力伝達容量に見合った締め付け力がセカンダリプーリ8に加えられる。
【0025】
一方、セカンダリ圧路22は変速比調整弁24のプライマリ圧ポートに連通路25を介して接続されており、この変速比調整弁24のプライマリ圧ポートはプライマリ圧路26を介してプライマリ油室14に連通されている。この変速比調整弁24によって調圧されるプライマリ圧Ppにより、プライマリプーリ7の溝幅が変化して変速比が制御される。圧力調整弁23および変速比調整弁24はソレノイド弁であり、ソレノイド23a,24aに供給される電流値やデューティ値を制御することによりセカンダリ圧とプライマリ圧が調整される。
【0026】
図2は図1に示された無段変速機の変速機制御ユニット30を示すブロック図であり、変速機制御ユニット30はセンサなどからの信号に基づいて変速比調整弁24のソレノイド24aに対する駆動信号を演算するマイクロプロセッサCPUと、テーブル、マップおよび演算式などの制御用のデータと制御用のプログラムとを格納するROMと、一時的にデータを格納するRAMと、入出力ポートなどを備えている。図2においては、マイクロプロセッサの有する機能がそれぞれブロックで示されている。
【0027】
この変速機制御ユニット30はABS装着車とABS非装着車のいずれの車両にも搭載されるようになっている。ABS装着車は左右車輪のそれぞれの速度を検出する車輪速度センサを有しており、四輪駆動車の場合には前輪と後輪の左右それぞれの車輪速度を検出するとともに前後Gセンサにより前後方向の加速度を検出する。ABS装着車はABSコントローラ31を有し、このABSコントローラ31は車輪速度センサなどからの検出信号に基づいてホイールシリンダに対する油圧を調整するためのハイドロリックユニットに対して制御信号を送る。
【0028】
この変速機制御ユニット30は、車両にABSが装着されているか否かを検出するためのABS装着非装着判定部32を有し、ABSが装着される車両においてはABSコントローラ31からABSが装着されていることを示す信号がABS装着非装着判定部32に送られる。一方、ABS非装着車両においては、ABSコントローラ31には信号が送られないので、ABSコントローラ31はABS非装着車であることを判定することができる。たとえば、ABSコントローラ31からABS作動信号がデューティ信号としてABS装着非装着判定部32に送られる場合には、イグニッションキーがオンされてから所定時間経過してもABS装着非装着判定部32にデューティ信号が送られないときにはABS非装着車であると判定する。
【0029】
この変速機制御ユニット30は、走行状態に応じて変速比を制御し車速に対するプライマリプーリの目標回転数特性つまり変速特性を制御する。走行状態に応じて変速比を設定するために変速機制御ユニット30の目標変速比設定部33には、走行状態を示す複数の信号34が入力される。これらの信号として、スロットル開度を検出するスロットル開度センサ、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ、車速を検出する車速センサおよびその他の信号が目標変速比設定部33に送られる。
【0030】
図3は無段変速機におけるプライマリプーリ7の目標回転数Npと車速Vとの関係を示す変速特性線図であり、図3においてRLは変速比が最大であるローの最高変速ラインを示す。図3において実線で示されるRhaはABSが装着される場合の変速比が最小である最低変速ラインを示し、一点鎖線で示されるRhbはABSが装着されない場合の変速比が最小である最低変速ラインを示す。このように、ABSが装着される場合の最低変速ラインRhaがABSが装着されない場合の最低変速ラインRhbよりもプライマリプーリ7の低回転側に設定されている。
【0031】
ABS装着車用の無段変速機においては、タイヤがロックしないようにブレーキが制御され、エンスト耐力があるので、最低変速ラインRhaは非装着車両の最低変速ラインRhbよりも低めつまり最低変速ラインにおけるプライマリプーリの回転数が低回転側に設定されている。これに対して、ABS非装着車用の無段変速機は、タイヤがロックするとエンジン回転も一緒に無段変速機を介して低回転に引きずられることになり、エンジンストップに至るおそれがあるので、エンスト耐力を確保するために最低変速ラインRhbを、ABS装着車の最低変速ラインRhaよりも高めつまり最低変速ラインのプライマリプーリ7の回転数が高回転側に設定されている。これらの最低変速ラインを有する変速特性に対応するデータがマップデータとしてROMに格納されている。
【0032】
したがって、この変速機制御ユニット30はABS装着車とABS非装着車のいずれにも共用することができ、この変速機制御ユニット30がABS装着車に搭載されるときには、ABS装着非装着判定部32からの信号により最低変速ラインRhaに基づいて最低変速ラインのプライマリプーリ7の目標回転数が目標変速比設定部33により設定される。一方、この変速機制御ユニット30がABS非装着車に搭載されたときには、ABS装着非装着判定部32からは信号が送られず、最低変速ラインRhbに基づいて最低変速ラインのプライマリプーリ7の目標回転数が目標変速比設定部33により設定される。目標変速比設定部33からは設定された目標変速比に対応する制御信号が変速制御用ソレノイド駆動部35に送られ、このソレノイド駆動部35からは変速比調整弁24のソレノイド24aに制御信号が送られてプライマリプーリ7の溝幅が調整される。
【0033】
このように、変速機制御ユニット30は、ABS装着車とABS非装着車のいずれにも搭載することができるので、一種類の変速制御装置を製造することによってABS装着車とABS非装着車のいずれをも別々の変速特性で制御することができる。これにより、ABS装着車の燃費を向上することができるとともに、非装着車におけるタイヤロックに起因するエンジン停止の発生を防止することができる。さらに、車両の製造ラインを簡素化することができ、製造コストを低減することができる。
【0034】
変速機制御ユニット30は、図2に示すように、ABS装着非装着判定部32からの信号に基づいてABSが正常であるか故障であるかを判定するABS故障判定部36を有している。このABS故障判定部36がABSの故障を判定したときには、その信号が目標変速比設定部33に送られて、最低変速ラインはABS非装着車と同じ特性に設定されるようになっている。つまり故障時の最低変速ラインはABS非装着車の最低変速ラインと同様に設定されるようになっている。したがって、ABSが故障すると、最低変速ラインはABSが正常のときよりも高く設定されるので、ABSの不作動によってタイヤがロックされてもエンジンストップの発生を防止することきができる。車両が走行しているときにABSが故障したときに、最低変速ラインを切り換えるようにすると、変速ショックが発生するので、ABSの故障によって車両走行時に最低変速ラインを切り換えるときには、プライマリプーリ7の回転数の変化量を制限するようにする。
【0035】
ABS故障判定部36は、ABS装着非装着判定部32からの信号によりABS装着車であると判定した後に、デューティ信号が送られなくなったときには、断線、地路などの信号線の故障と判断することができる。また、故障の判定は、ABSコントローラ31などからの信号により故障信号を受信して故障と判定することも可能である。
【0036】
図4は上述した制御装置による無段変速機の制御ルーチンを示すフローチャートであり、ステップS1においてはABS装着車であるか否かを判定し、ステップS2においてはABSが正常であるか故障であるかを判定する。これらのステップにおいて車両がABS装着車でありABSが正常であると判定されたときには、図3において符号Rhaで示す最低変速ラインを有する変速特性に対応するマップがステップS3で読み出される。一方、ABS非装着車であると判定された場合およびABSが故障であると判定されたときには、図3において符号Rhbで示す最低変速ラインを有する変速特性に対応するマップがステップS4で読み出される。
【0037】
車両の走行時にABSが故障した場合のように、走行時に最低変速比が正常時の特性から故障時の特性に切り換えられる際には、切換ショックを軽減するために、変速特性の変化量が制限される。そのため、ステップS5ではプライマリプーリ7の目標回転数の変化量制限処理が行われる。ステップS6ではそれぞれのマップデータに基づき、さらに変化量制限処理に基づいて目標変速比が算出され、算出された目標変速比に応じた目標のプライマリ圧PpがステップS7で算出される。そして、算出されたプライマリ圧Ppに対応した駆動信号がステップS8でソレノイド24aに送られる。
【0038】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。たとえば、前述した実施の形態にあっては、変速機制御ユニット30によりABS装着車であるか非装着車であるかを判定するとともにABSの故障をも判定し、非装着者の場合とABSが故障した場合とで同じ変速特性を設定するようにしているが、ABS装着車であるか非装着車であるかのみを判定するようにしても良く、ABSの故障のみを判定するようにし、非装着車の場合とABSが故障した場合の最低変速ラインをABS装着車の最低変速ラインよりも高く設定するようにしても良い。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、ABS装着車とABS非装着車に対して別々の制御装置を設ける必要がなく、同じ制御装置を両方の車種に共用することができる。同じ制御装置によってABS装着車とABS非装車とを別々の変速特性で制御することができ、ABS装着車の最低変速ラインのプライマリプーリ目標回転数をABS非装車の最低変速ラインのプライマリプーリ回転数よりも低回転側に設定することができるので、ABS装着車の燃費を向上することができるとともにABS非装着車のエンスト耐力を向上させることができる。ABSが故障した場合にもエンストを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ベルト式無段変速機を備えた車両の駆動系を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施の形態である無段変速機の変速制御装置を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施の形態である無段変速機におけるプライマリプーリの目標回転数と車速との関係を示す変速特性線図である。
【図4】無段変速機の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【符号の説明】
5 プライマリ軸
6 セカンダリ軸
7 プライマリプーリ
8 セカンダリプーリ
13 プライマリシリンダ
14 プライマリ油室
16 セカンダリシリンダ
17 セカンダリ油室
23 圧力調整弁
24 変速比調整弁
24a ソレノイド
31 ABSコントローラ
32 ABS装着非装着判定部
33 目標変速比設定部
35 変速制御用ソレノイド駆動部
36 ABS故障判定部
Claims (6)
- プライマリ軸に装着され溝幅が可変のプライマリプーリ、セカンダリ軸に装着され溝幅が可変のセカンダリプーリ、およびこれらのプーリに掛け渡される動力伝達要素を有する無段変速機の変速制御装置であって、
前記プライマリプーリに設けられたプライマリシリンダに供給される作動油を調整する変速比調整弁と、
車両にABSが装着されているか否かを判定するABS装着非装着判定部と、
前記ABS装着非装着判定部からの信号に基づいて、ABS装着車と非装着車とで変速特性を切り換える目標変速比設定部と、
前記目標変速比設定部からの信号に基づいて、前記変速比調整弁に制御信号を送る変速制御用ソレノイド駆動部とを有することを特徴とする無段変速機の制御装置。 - 請求項1記載の無段変速機の制御装置において、ABS装着車の最低変速ラインをABS非装着車の最低変速ラインよりもプライマリ目標回転数を低回転側に設定することを特徴とする無段変速機の制御装置。
- プライマリ軸に装着され溝幅が可変のプライマリプーリ、セカンダリ軸に装着され溝幅が可変のセカンダリプーリ、およびこれらのプーリに掛け渡される動力伝達要素を有する無段変速機の変速制御装置であって、
前記プライマリプーリに設けられたプライマリシリンダに供給される作動油を調整する変速比調整弁と、
車両に装着されたABSが故障しているか否かを判定する故障判定部と、
前記故障判定部からの信号に基づいて、ABS故障時と正常時とで変速特性を切り換える目標変速比設定部と、
前記目標変速比設定部からの信号に基づいて、前記変速比調整弁に制御信号を送る変速制御用ソレノイド駆動部とを有することを特徴とする無段変速機の制御装置。 - 請求項3記載の無段変速機の制御装置において、ABS正常時の最低変速ラインをABS故障時の最低変速ラインよりもプライマリ目標回転数を低回転側に設定することを特徴とする無段変速機の制御装置。
- 請求項3または4記載の無段変速機の制御装置において、ABS正常時からABS故障時に変速特性を切り換えるときには変速特性の変化量を制限することを特徴とする無段変速機の制御装置。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の無段変速機の制御装置において、ABS非装着車の変速特性とABS故障時の変速特性とを共用することを特徴とする無段変速機の制御装置。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2016176495A (ja) * | 2015-03-19 | 2016-10-06 | 本田技研工業株式会社 | 変速機の制御装置 |
JP2018112297A (ja) * | 2017-01-13 | 2018-07-19 | 本田技研工業株式会社 | 制御装置 |
-
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