JP2004269915A - 接合時にしわよれのないAl含有高耐酸化性ステンレス箔および触媒担持体 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高温酸化性雰囲気下で激しい振動や熱衝撃を受ける自動車排ガス浄化用触媒担持体や触媒コンバータ、さらには燃焼ガス排気系の機器、装置に用いて好適な、高温強度および耐酸化性に優れる、接合時にしわよれのないAl含有高耐酸化性ステンレス箔およびかかるステンレス箔を用いて作製した触媒担持体に関するものである。
本発明において、接合とは、ロウ付け等の溶接や拡散接合など、母材の溶融を問わず、接合することをいう。
【0002】
【従来の技術】
自動車排ガス浄化装置用触媒コンバーター担持体を、従来のセラミックス製から金属製ハニカムに替えることにより、コンバーターの小型化、エンジン性能の向上などが達成される。
自動車排ガス浄化触媒装置は、コンバーターを燃焼環境に近い位置に設置し、高温の排ガスによりエンジン始動初期のより早い時期に触媒活性化温度に到達させて触媒反応を起こさせるものが開発されつつある。この場合、コンバーターは、高温環境に曝されるばかりでなく、エンジンの激しい振動を受ける。
【0003】
このように非常に厳しい条件下で使用されるコンバーター用材料としては、従来用いられてきたセラミックスでは熱衝撃に弱く使用に耐え得ないため、高温耐酸化性に優れるFe−Cr−Al系合金等の金属材料が使用される。
Fe−Cr−Al系合金が高温耐酸化性に優れるのは、酸化時にまずFeよりも酸化され易いAlが優先酸化されて、合金表面に保護性の高い Al2O3酸化皮膜が形成され、さらに合金中のAl消耗後は Al2O3皮膜と合金との界面でCrが優先酸化されて Cr2O3酸化皮膜が形成されるためであり、このようなFe−Cr−Al系合金やその合金箔を使用した触媒担持体については従来から種々の提案がなされている(例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照のこと)。
【0004】
ところで、近年、地球環境保護の立場から排ガス規制がさらに強化されつつあり、エンジン始動時から排ガスを極力浄化する必要性が高まっている。この規制に対応するために、ステンレス箔を組み立てたメタル担持体の使用が増加しており、またその厚みも従来のものよりさらに薄くなる動向にある。これは、メタル担持体の壁厚を薄くすることにより、排気抵抗が小さくなるだけでなく、熱容量が小さくなり、エンジン始動から短時間で触媒が活性になるなどの利点があるためである。
【0005】
しかしながら、肉厚を薄くすると、耐酸化性は従来の材料よりも一層優れたものが必要となる。また、触媒反応の優位性から、エンジン直下に触媒担持体を配置するようになると、排ガスがこれまでよりも高温の状態で流入するため、この観点からも耐酸化性、耐久性に優れた材料が要求される。そして、同時に肉厚が薄くなると、多大な応力がかかることから、高温での耐久性に対する要求も従来より一層厳しくなってきている。
【0006】
【特許文献1】
特開昭64−11946 号公報
【特許文献2】
特開平3−36241 号公報
【特許文献3】
特許第 3007696号公報
【特許文献4】
特願2001−315033号明細書
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の要請に有利に応えるもので、耐久性、耐酸化性に優れた触媒担持体、およびその素材として好適なロウ付け、又はその他接合時にしわよれのないAl含有高耐酸化性ステンレス箔を提案することを目的とする。
すなわち、耐久性、耐酸化性に優れた触媒担持体を得るには、ロウ付け、又はその他接合時にしわよれの少ないFe−Cr−Al系合金箔を素材として使用することがポイントであり、これを使用して作製した担持体は、高温での強度、耐酸化性に優れ触媒担持体用材料として極めて有用である。また、本発明の材料は、その優れた高温耐酸化性のため、触媒コンバーター用材料および燃焼ガス排気系の機器、装置としても有利に適合するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
さて、発明者らは、高温での耐酸化性や強度をはじめとして、高温での触媒担持体の破損状態およびロウ付け、又はその他接合後の箔状態について詳細な検討を行ったところ、ロウ付け、又はその他接合時の熱膨張係数の差に起因して生じる箔のしわより状態によって、その後の耐久性、耐酸化性が大きく変化することを見出した。
すなわち、ロウ付け、又はその他接合時のしわよれが少ない箔を使用することによって、担持体の耐酸化性、耐久性が著しく向上することの知見を得た。
また、ロウ付け、又はその他接合時におけるしわよれが少なく、かつ耐酸化性に優れた材料を得るには、成分組成を特定の範囲に調整すると共に、その熱膨張係数を板厚に応じて所定の範囲に制御する必要があることの知見を得た。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
【0009】
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.C:0.10mass%以下、
Si:0.05〜2.0 mass%、
Mn:0.5 mass%以下、
Cr:14.0〜30.0mass%、
Al:1.5 〜10.0mass%、
N:0.10mass%以下および
Zr:0.01〜0.30mass%
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、板厚tが15〜100 μmで、しかも接合処理時における熱膨張係数A(/℃)が板厚tに応じて下記の範囲を満足することを特徴とする、接合時にしわよれのないAl含有高耐酸化性ステンレス箔。
【0010】
2.C:0.10mass%以下、
Si:0.05〜2.0 mass%、
Mn:0.5 mass%以下、
Cr:14.0〜30.0mass%、
Al:1.5 〜10.0mass%、
N:0.10mass%以下および
Zr:0.01〜0.30mass%
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、板厚tが15〜100 μmで、さらに接合処理時における熱膨張係数A(/℃)が板厚tに応じて下記の範囲を満足し、かつ上記熱膨張係数A(/℃)と接合処理後における熱膨張係数B(/℃)とが下記の関係を満足することを特徴とする、接合時にしわよれのないAl含有高耐酸化性ステンレス箔。
【0011】
3.C:0.10mass%以下、
Si:0.05〜2.0 mass%、
Mn:0.5 mass%以下、
Cr:14.0〜30.0mass%、
Al:1.5 〜10.0mass%、
N:0.10mass%以下および
Zr:0.01〜0.30mass%
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、板厚tが15〜100 μmで、さらに接合処理時における熱膨張係数A(/℃)と接合処理後における熱膨張係数B(/℃)および最終圧下率X(%)が、板厚tに応じて下記の範囲を満足することを特徴とする、接合時にしわよれのないAl含有高耐酸化性ステンレス箔。
【0012】
4.上記1〜3のいずれかにおいて、ステンレス箔が、さらに
La:0.01〜0.30mass%
を含有する組成になることを特徴とする、接合時にしわよれのないAl含有高耐酸化性ステンレス箔。
【0013】
5.上記1〜4のいずれかにおいて、ステンレス箔が、さらに
La以外のREM :0.01〜0.10mass%、
Ca:10〜300 ppm 、
Mg:15〜300 ppm および
B:3〜20 ppm
のうちから選んだ一種または二種以上を含有する組成になることを特徴とする、接合時にしわよれのないAl含有高耐酸化性ステンレス箔。
【0014】
6.上記1〜5のいずれかにおいて、ステンレス箔が、さらに
Ti:0.01〜0.05mass%、
Nb:0.03〜0.30mass%、
Mo:0.05〜0.30mass%および
Hf:0.01〜0.30mass%
のうちから選んだ一種または二種以上を含有する組成になることを特徴とする、接合時にしわよれのないAl含有高耐酸化性ステンレス箔。
【0015】
7.上記1〜6のいずれかに記載の、接合時にしわよれのないAl含有高耐酸化性ステンレス箔を用いて作製したことを特徴とする触媒担持体。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
さて、発明者らは、高温での耐酸化性および強度、高温での触媒担持体の破損状態およびハニカム構造作製時におけるロウ付け、又はその他接合後の箔状態を詳細に検討したところ、ハニカム構造作製時のロウ付け、又はその他接合時の熱膨張係数の差に起因して生じる箔のしわより状態によって、その後の耐久性、耐酸化性が大きく変化することを見出した。特にロウ付け処理や接合処理後の箔のしわが高温での耐久性に多大な影響を及ぼすことが判明した。
この知見は、板厚が薄くなると、箔そのものの強度を上げるよりも、逆に鋼の高温強度は若干低くなっても、ロウ付け、又はその他接合時におけるしわの発生を抑制した方がよいことを意味している。
【0017】
また、ロウ付け、又はその他接合時におけるしわの発生度合いは、担持体を作製する際のロウ付け熱処理、接合熱処理時の熱膨張係数に深く係わっていることが究明された。
具体的には、鋼のロウ付け、又はその他接合時の熱膨張係数を、ある一定値以下に抑えることによってしわの発生が抑制され、結果として高温での触媒担持体の耐久性が格段に向上することが見出された。
本発明の成分組成範囲および熱膨張係数は、基本的に上記の考え方に基づいて決定されたものである。
【0018】
以下、本発明において、箔の成分組成を前記の範囲に限定した理由について説明する。なお、成分に関する「%」表示は特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C:0.10%以下
Cは、過剰になると高温強度を劣化させるだけでなく、耐酸化性および靱性も低下させるので、極力低減することが望ましい。よって、Cは0.10%以下に限定した。
【0019】
Si:0.05〜2.0 %
Siは、後述するAlと同様、耐酸化性を向上させる元素であるが、あまりに多量の添加は箔の延性を低下させ、セル切れの原因となるので、Siは0.05〜2.0 %の範囲に限定した。
【0020】
Mn:0.5 %以下
Mnは、Al脱酸の予備脱酸剤として添加された場合、鋼中に残存することがあるが、Mnは耐酸化性および耐食性を劣化させるので少ない方がよい。また、Mnは添加しすぎるとロウ付け処理、又はその他接合処理時に内部で酸化物を形成し、熱膨張係数が大きくなりすぎるきらいがある。そこで、Mnは、工業的および経済的な溶製技術を考慮して 0.5%以下に限定した。
【0021】
Cr:14.0〜30.0%
Crは、Alの耐酸化性を向上させる役割を有するばかりでなく、Cr自体が耐酸化性を向上させる元素である。ここで、Cr量が14.0%に満たないと十分な耐酸化性を確保できず、また14.0%未満では酸化進行時にAlが消費されると、組織の一部に高温でオーステナイト組織が生成し、酸化時の形状変化が激しくなる。一方、Cr量が30.0%を超えると箔の延性が落ち、セル切れの原因となる。従って、Cr量は14.0〜30.0%の範囲に限定した。
【0022】
Al:1.5 〜10.0%
Alは、本発明において耐酸化性を確保するために不可欠な元素である。Fe−Cr−Al系合金を高温に保持した場合、AlはFe,Crより優先酸化されて合金表面に保護性の高い Al2O3皮膜を生成し、耐酸化性を著しく向上させる。しかしながら、Al含有量が 1.5%未満に満たないと純粋な Al2O3皮膜を生成せず、十分な耐酸化性を確保できないので、その下限を 1.5%とした。また、耐酸化性の点からはAl含有量を高めることが望ましいが、一方でAlが10.0%を超えると熱間圧延が困難となり、また延性が劣化してセル切れの原因となる場合があるので、その上限は10.0%に限定した。
【0023】
N:0.10%以下
Nは、Cと同様、過剰になると靱性を低下させるだけでなく、冷間圧延性や加工性も低下させる。また、Alと反応して粗大なAlNとして析出すると、箔に圧延した場合に穴開きの原因ともなるので極力低減させることが望ましい。よって、Nは0.10%以下に限定した。
【0024】
Zr:0.01〜0.30%
Zrは、Al酸化物粒界に拡散して、外部からの酸素の拡散を抑制する働きがある。この効果は、Zr量が0.01%以上で顕著となる。しかしながら、Zr量が0.30%を超えると Al2O3皮膜中にZrO2として混入するようになり、これが酸素の拡散経路となるためかえってAlの消耗を速める結果となる。また添加しすぎると、ロウ付け処理、又はその他接合処理時の熱膨張係数が大きくなりすぎる。そこで、Zr量は0.01〜0.30%の範囲に限定した。
【0025】
以上、基本成分について説明したが、本発明では、その他にも以下に述べる元素を適宜含有させることができる。
La:0.01〜0.30%
Laは、Fe−Cr−Al系合金において高温で生成する Al2O3表面酸化皮膜の密着性を改善し、耐酸化性および酸化スケールの耐剥離性向上に極めて顕著な効果を有する。同時に、Alの酸化速度を抑制する効果も有する元素である。しかしながら、Laを添加しすぎると、鋼中の内部で酸化物が生成し、初期の熱膨張係数が大きくなる。ただし、Laは、REM の中では添加しても一番初期の熱膨張係数への影響が少ないので、REM の中ではLaを添加するのが特に望ましい。
以上の点から、Laの含有量は0.01〜0.30%に限定した。なお、製造性、耐酸化性、熱膨張係数のバランスを考えると、Laの好適範囲は0.03〜0.10%である。
【0026】
La以外のREM :0.01〜0.10%
REMは、Fe−Cr−Al系合金において高温で生成する Al2O3表面酸化皮膜の密着性を改善し、耐酸化性および酸化スケールの耐剥離性向上に極めて顕著な効果を有する。同時にAlの酸化速度を抑制する効果も有する元素である。しかしながら、添加しすぎると、鋼中の内部で酸化物が生成し、初期の熱膨張係数が大きくなるだけでなく、靱性の低下を招く。そこで、La以外のREM については0.01〜0.10%の範囲で含有させるものとした。
【0027】
Ca:10〜300 ppm 、Mg:15〜300 ppm
CaおよびMgはそれぞれ、低酸素分圧化でのウィスカーと呼ばれるγ−Al2O3 の生成や、等軸粒Al2O3 の生成を抑制する働きがあり、低酸素ポテンシャル下での柱状晶のAl2O3 被膜の生成を助長する働きがある。この効果は、Caが10 ppm以上、Mgが15 ppm以上で顕著となる。しかしながら、過剰に添加すると靱性が劣化するばかりか、逆に耐酸化性を悪化させる。
以上の観点から、Ca, Mg含有量はそれぞれ、Ca:10〜300 ppm , Mg:15〜300ppm の範囲に限定した。なお、好ましくはCa:20〜70 ppm, Mg:20〜100 ppm である。
【0028】
B:3〜20 ppm
Bは、粒界を強化し、高温変形時におけるクリープ特性を著しく改善する効果がある。しかしながら、含有量が3ppm 未満ではその添加効果に乏しく、一方20 ppmを超えると靱性の劣化を招くので、B量は3〜20 ppmの範囲に限定した。なお、好ましくは5〜15 ppmの範囲である。
【0029】
Ti:0.01〜0.05%、Nb:0.03〜0.30%
TiおよびNbはいずれも、鋼中のC, Nと結合し、高温強度を上げる効果がある。また、これらの元素を添加した場合は、クリープ特性が改善され、特に第二段階で起こる酸化皮膜と地鉄との膨張率の違いによる変形を緩和させる働きがある。これらの効果は、Tiは0.01%以上の添加で、またNbは0.03%以上の添加で顕著になる、しかしながら、Tiは0.05%を超えて添加すると鋼の初期段階での熱膨張係数を大きくし、またNb0.30%を超えて添加すると、鋼中のAlが酸化物となり、全てのAlが枯渇した後において酸化物として生成し、耐酸化性を劣化させる。そこで、Ti:0.01〜0.05%、Nb:0.03〜0.30%の範囲で含有させるものとした。
【0030】
Mo:0.05〜0.30%
Moは、高温で酸化されにくく、またフェライト相形成元素であるため、鋼中のAlが枯渇して Cr2O3皮膜を形成する段階になっても、酸化物中に取り込まれず地鉄のフェライト層を安定化させる働きがあり、高温での寿命を延ばす働きがある。この効果は、Moが0.05%以上になると現れる。しかしながら、Moを添加しすぎると、連続鋳造や熱間圧延の時にへげなどが発生し易くなる。よって、Mo量は0.05〜0.30%の範囲に限定した。
【0031】
Hf:0.01〜0.30%
Hfは、Zrと複合含有させた場合に、特にAlの酸化消耗を抑制し、Al2O3 皮膜を形成する時間および Cr2O3皮膜を形成する時間を延ばし、合金の耐酸化性を向上させる働きがある。この効果は、含有量が0.01%以上で顕著となるが、0.30%を超えると Al2O3皮膜中にHfO2として混入するようになり、これが酸素の拡散経路となるためかえってAlの消耗を速める結果となる。また添加しすぎると、Feと金属間化合物をつくり、靱性を劣化させる。従って、Hf量は0.01〜0.30%の範囲に限定した。なお、製造性を考慮すると好ましいHfの含有量は0.01〜0.20%の範囲である。
【0032】
さらに、本発明では、ロウ付け、又はその他接合処理時における熱膨張係数A(/℃)を所定の範囲に制御することが重要である。
素材の耐酸化性、高温強度を多少犠牲にしても、熱膨張率を板厚に応じて低減させ、ハニカム担持体に組んだ時に逆にハニカム担持体としての強度を上げるようにしたことが、本発明の画期的なところである。
【0033】
一般に、箔を触媒担持体にする場合、箔を波板と平板に加工し、例えば図1に示すように巻き付け、波板の山部と平板部分とをロウ付けまたは拡散接合などにより接合して、ハニカム形状にする。この時、ロウ付け処理および拡散接合処理とも、担持体温度を1000〜1200℃の高温に上げて接合を行っている。一般に、常温で加工し、ハニカム状に巻き付けた担持体部は、外筒と呼ばれる板厚の厚い筒に入れられて、この処理を施される。従って、常温で加工し、ハニカム状に巻き付けたとしても、ロウ付け時や拡散接合時に、熱膨張係数の異なる厚肉の外筒との間では、熱膨張係数の差に起因して箔は常温での形状が保てず、しわがよった、歪んだ形で接合されてしまう。温度が下がっても、ある程度はこの歪み、しわの影響が残り、ハニカム形状としては時として外筒付近がつぶれた状態になり、波板の山部だけでなく、全面的に接合されていることがある。かようなしわの発生領域が大きくなると、排気圧抵抗を上げるばかりか、この部分が高温での破断の原因にもなる。
【0034】
そこで、発明者らは、この現象を、箔の熱膨張係数および成分組成の観点から詳細に検討した結果、特に熱膨張係数が箔の板厚との関係で一定値を超えると、このしわが非常に大きくなって、ハニカム担持体の寿命が著しく低下することが究明された。
さらに、発明者らは、鋼成分、箔厚みおよびロウ付け熱処理時の熱膨張係数とハニカム担持体の耐久性との関係を詳細に検討した結果、本発明成分においては、箔厚みが40μm 以上、100 μm 以下の時には、熱膨張率が13.0×10−6(/℃)以下であれば、ロウ付け熱処理時における変形が少なく、耐久性が向上することが判明した。また、板厚が15μm 以上、40μm 未満の時には、箔の強度が低くなることから、その熱膨張係数の規制は厳しくなり、板厚をtとした時、熱膨張係数が(0.05×t+11.0)×10−6(/℃)以下であれば、ロウ付け時にしわよれが少なく、触媒担持体の耐久性が向上することが判明した。
【0035】
そこで、本発明では、ロウ付け、又はその他接合処理時における熱膨張係数A(/℃)を、板厚tに応じて下記の範囲に限定したのである。
【0036】
さらに、発明者らは、本発明の鋼成分において、ロウ付け処理時、又はその他接合処理時の熱膨張係数およびハニカム担持体形成後の熱膨張係数とハニカム担持体の寿命との関係について検討した結果、ロウ付け処理時、又はその他接合処理時の熱膨張係数Aとハニカム担持体形成後の熱膨張係数Bとが、A≧Bの関係にあると、耐久試験時に一部にセル切れが起こり、ハニカムの耐久性が劣化する場合があることが判明した。
これは、ロウ付け処理時、又はその他接合処理時の熱膨張係数Aが、ハニカム担持体形成後の熱膨張係数B以上であると、自由度がなく、高温でも接合部と接合部で波板、平板に引張応力のかかった状態となり、ここに昇温時に排気ガス圧力などの外力が加わると、破断の原因になることが考えられる。従って、折角、接合時、ロウ付け熱処理初期の熱膨張係数Aを、本発明の適正範囲に制御したとしても、高温での耐久性が劣化することになる。
よって、ハニカム担持体形成後の熱膨張係数Bの方がロウ付け熱処理初期の熱膨張係数Aよりも大きい、すなわちA<Bの関係を満足させることが一層有利である。
【0037】
さらに、発明者らは、本発明の好適成分範囲で、ロウ付け処理時、又はその他接合処理時の熱膨張係数Aと最終圧下率Xとの関係について調査したところ、箔厚みが40μm 以上、100 μm 以下の時、最終圧下率が20%以上、86.7%以下であれば、ロウ付け処理時、又はその他接合処理時の熱膨張係数Aが、本発明の適正範囲を満足することが突き止められた。また、箔厚みが薄くなり、15μm 以上、40μm 未満の場合には、箔厚みをtとした時、 100(50−t)/50(%)以上、100 (300−t)/300 (%)以下であれば、ロウ付け処理時、又はその他接合処理時の熱膨張係数Aが本発明範囲を満たすことが判明した。
よって、箔厚みが40μm 以上、 100μm 以下の場合に、ロウ付け処理時、又はその他接合処理時の熱膨張係数Aを13.0×10−6(/℃)以下とするためには、最終圧下率Xを20%以上、86.7%以下とすることが、また箔厚みが15μm 以上、40μm 未満の場合に、ロウ付け処理時、又はその他接合処理時の熱膨張係数Aを(0.05×t+11.0)×10−6(/℃)以下とするためには、最終圧下率Xを 100(50−t)/50(%)以上、100 (300−t)/300 (%)以下とする必要がある。
【0038】
【実施例】
実施例1
表1に示す成分組成になる鋼材を、1200℃に加熱後、1200〜900 ℃の温度域で板厚:3mmまでの熱間圧延を行った。ついで、950 ℃で焼鈍後、冷間圧延と焼鈍を繰り返して、冷延鋼板とした。ついで、 900℃, 1分間の焼鈍後、酸洗してから、表2に示す圧下率で最終冷延圧延を行い、表2に示す板厚の箔とした。
かくして得られた箔試料について、同一の箔で波板、平板を重ねあわせて、図2に示すような寸法になるハニカム形状のメタル担持体を組み立て、板厚:2mmの SUS 434製の外筒に装入した。その後、1100〜1200℃×1時間の拡散ロウ付け熱処理による接合を行い、メタルハニカム担持体とした。
【0039】
なお、箔のロウ付け処理時の熱膨張係数Aは、圧延後そのままのものを真空中で室温から1100℃までの試験で測定した。また、ハニカム担持体形成後の熱膨張係数Bは、耐久試験用とは別に同様の熱処理で作製したメタルハニカム担持体の一部の箔を切り出して、同様に、真空中で室温から1100℃までの試験で測定した。その結果を表2に併記する。
かくして得られたメタルハニカム担持体に耐久試験を施し、しわよれ度合い、耐酸化性、排圧抵抗上昇性およびセル切れの有無について調べた結果を、表3に示す。
【0040】
なお、耐久試験は、促進試験として通常の排気ガス温度より高い1150℃として、CO:0.5vol%、C3H8:0.3vol%、NOx :0.01 vol%、CO2 :15 vol%、O2 :2 vol%、H2 :0.3vol%、残部:N2 からなるシュミレーション排気ガスを、10 リットル/min で、1.5 時間装入、0.5 時間休止を1サイクルとして、100 サイクル、300 サイクル経過後のハニカム担持体の酸化増量、セル切れの有無、排圧抵抗の上昇量を調査した。
【0041】
耐酸化性は、重量変化が5.0 %未満のものを◎で、8.0 %未満のものを○で、10.0%未満のものを△で、それ以上のものは×で示した。
また、試験後の排圧抵抗の上昇量が1.0 %未満のものを◎で、1.0 %以上、3.0 %未満のものを○で、3.0 %以上、5.0 %未満のものを△で、5.0 %以上のものを×で示した。
箔のしわよれ度合いは、このときの外筒二巻目の箔形状を画像解析で判断し、しわよれがほとんどなく波板、平板とも形状の変っていないものを◎で、波板のみ若干、形状に変化が有るものに○で、波板、平板とも形状に変化が有るものに△で、波板、平板とも形状変化が大きく、波板の山、谷以外で箔がくっついてしまったものを×で示した。
セル切れは、目視で判断し、セル切れの全くないものは◎で、1ヶ所あるものは○で、2〜5ヶ所あるものは△で、6ヶ所以上あるものは×で示した。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
表3から明らかなように、本発明の要件を満足するハニカム担持体はいずれも、非常に良好な耐久特性を示す。
このことから、本発明のステンレス箔は、非常に優れた耐酸化性が要求される触媒コンバーター用材料として好適であることが分かる。
【0046】
実施例2
表4に示す成分組成になる鋼材を、1200℃に加熱後、1200〜900 ℃の温度域で板厚:3mmまでの熱間圧延を行った。ついで、950 ℃で焼鈍後、冷間圧延と焼鈍を繰り返して、冷延鋼板とした。ついで、 900℃, 1分間の焼鈍後、酸洗してから、表5に示す圧下率で最終冷延圧延を行い、表5に示す板厚の箔とした。
かくして得られた箔試料について、同一の箔で波板、平板を重ねあわせて、図2に示すような寸法になるハニカム形状のメタル担持体を組み立て、板厚:2mmの SUS 434製の外筒に装入した。その後、1100〜1200℃×1時間の拡散ロウ付け熱処理による接合を行い、メタルハニカム担持体とした。
【0047】
かくして得られたメタルハニカム担持体に耐久試験を施し、しわよれ度合い、耐酸化性、排圧抵抗上昇性およびセル切れの有無について調べた結果を、表6に示す。
なお、箔のロウ付け熱処理時の熱膨張係数Aおよびハニカム担持体形成後の熱膨張係数Bの測定方法、ならびに耐久試験の実施要領および各特性の評価方法はいずれも、実施例1の場合と同じである。
【0048】
【表4】
【0049】
【表5】
【0050】
【表6】
【0051】
表6から明らかなように、本発明の要件を満足するハニカム担持体はいずれも、非常に良好な耐久特性を示している。
【0052】
【発明の効果】
かくして、本発明によれば、ロウ付け、又はその他接合時にしわよれの少ないAl含有高耐酸化性ステンレス箔を得ることができる。
また、このステンレス箔を使用することにより、高温での強度、耐酸化性に優れた触媒担持体を得ることができる。
さらに、このステンレス箔は、その優れた高温耐酸化性ゆえに、触媒コンバーター用材料および燃焼ガス排気系の機器、装置としても好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】箔を素材とする、触媒担持体の作製要領を示した図である。
【図2】実施例で作製したハニカム形状のメタル担持体の寸法・形状を示した図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、高温酸化性雰囲気下で激しい振動や熱衝撃を受ける自動車排ガス浄化用触媒担持体や触媒コンバータ、さらには燃焼ガス排気系の機器、装置に用いて好適な、高温強度および耐酸化性に優れる、接合時にしわよれのないAl含有高耐酸化性ステンレス箔およびかかるステンレス箔を用いて作製した触媒担持体に関するものである。
本発明において、接合とは、ロウ付け等の溶接や拡散接合など、母材の溶融を問わず、接合することをいう。
【0002】
【従来の技術】
自動車排ガス浄化装置用触媒コンバーター担持体を、従来のセラミックス製から金属製ハニカムに替えることにより、コンバーターの小型化、エンジン性能の向上などが達成される。
自動車排ガス浄化触媒装置は、コンバーターを燃焼環境に近い位置に設置し、高温の排ガスによりエンジン始動初期のより早い時期に触媒活性化温度に到達させて触媒反応を起こさせるものが開発されつつある。この場合、コンバーターは、高温環境に曝されるばかりでなく、エンジンの激しい振動を受ける。
【0003】
このように非常に厳しい条件下で使用されるコンバーター用材料としては、従来用いられてきたセラミックスでは熱衝撃に弱く使用に耐え得ないため、高温耐酸化性に優れるFe−Cr−Al系合金等の金属材料が使用される。
Fe−Cr−Al系合金が高温耐酸化性に優れるのは、酸化時にまずFeよりも酸化され易いAlが優先酸化されて、合金表面に保護性の高い Al2O3酸化皮膜が形成され、さらに合金中のAl消耗後は Al2O3皮膜と合金との界面でCrが優先酸化されて Cr2O3酸化皮膜が形成されるためであり、このようなFe−Cr−Al系合金やその合金箔を使用した触媒担持体については従来から種々の提案がなされている(例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照のこと)。
【0004】
ところで、近年、地球環境保護の立場から排ガス規制がさらに強化されつつあり、エンジン始動時から排ガスを極力浄化する必要性が高まっている。この規制に対応するために、ステンレス箔を組み立てたメタル担持体の使用が増加しており、またその厚みも従来のものよりさらに薄くなる動向にある。これは、メタル担持体の壁厚を薄くすることにより、排気抵抗が小さくなるだけでなく、熱容量が小さくなり、エンジン始動から短時間で触媒が活性になるなどの利点があるためである。
【0005】
しかしながら、肉厚を薄くすると、耐酸化性は従来の材料よりも一層優れたものが必要となる。また、触媒反応の優位性から、エンジン直下に触媒担持体を配置するようになると、排ガスがこれまでよりも高温の状態で流入するため、この観点からも耐酸化性、耐久性に優れた材料が要求される。そして、同時に肉厚が薄くなると、多大な応力がかかることから、高温での耐久性に対する要求も従来より一層厳しくなってきている。
【0006】
【特許文献1】
特開昭64−11946 号公報
【特許文献2】
特開平3−36241 号公報
【特許文献3】
特許第 3007696号公報
【特許文献4】
特願2001−315033号明細書
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の要請に有利に応えるもので、耐久性、耐酸化性に優れた触媒担持体、およびその素材として好適なロウ付け、又はその他接合時にしわよれのないAl含有高耐酸化性ステンレス箔を提案することを目的とする。
すなわち、耐久性、耐酸化性に優れた触媒担持体を得るには、ロウ付け、又はその他接合時にしわよれの少ないFe−Cr−Al系合金箔を素材として使用することがポイントであり、これを使用して作製した担持体は、高温での強度、耐酸化性に優れ触媒担持体用材料として極めて有用である。また、本発明の材料は、その優れた高温耐酸化性のため、触媒コンバーター用材料および燃焼ガス排気系の機器、装置としても有利に適合するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
さて、発明者らは、高温での耐酸化性や強度をはじめとして、高温での触媒担持体の破損状態およびロウ付け、又はその他接合後の箔状態について詳細な検討を行ったところ、ロウ付け、又はその他接合時の熱膨張係数の差に起因して生じる箔のしわより状態によって、その後の耐久性、耐酸化性が大きく変化することを見出した。
すなわち、ロウ付け、又はその他接合時のしわよれが少ない箔を使用することによって、担持体の耐酸化性、耐久性が著しく向上することの知見を得た。
また、ロウ付け、又はその他接合時におけるしわよれが少なく、かつ耐酸化性に優れた材料を得るには、成分組成を特定の範囲に調整すると共に、その熱膨張係数を板厚に応じて所定の範囲に制御する必要があることの知見を得た。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
【0009】
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.C:0.10mass%以下、
Si:0.05〜2.0 mass%、
Mn:0.5 mass%以下、
Cr:14.0〜30.0mass%、
Al:1.5 〜10.0mass%、
N:0.10mass%以下および
Zr:0.01〜0.30mass%
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、板厚tが15〜100 μmで、しかも接合処理時における熱膨張係数A(/℃)が板厚tに応じて下記の範囲を満足することを特徴とする、接合時にしわよれのないAl含有高耐酸化性ステンレス箔。
【0010】
2.C:0.10mass%以下、
Si:0.05〜2.0 mass%、
Mn:0.5 mass%以下、
Cr:14.0〜30.0mass%、
Al:1.5 〜10.0mass%、
N:0.10mass%以下および
Zr:0.01〜0.30mass%
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、板厚tが15〜100 μmで、さらに接合処理時における熱膨張係数A(/℃)が板厚tに応じて下記の範囲を満足し、かつ上記熱膨張係数A(/℃)と接合処理後における熱膨張係数B(/℃)とが下記の関係を満足することを特徴とする、接合時にしわよれのないAl含有高耐酸化性ステンレス箔。
【0011】
3.C:0.10mass%以下、
Si:0.05〜2.0 mass%、
Mn:0.5 mass%以下、
Cr:14.0〜30.0mass%、
Al:1.5 〜10.0mass%、
N:0.10mass%以下および
Zr:0.01〜0.30mass%
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、板厚tが15〜100 μmで、さらに接合処理時における熱膨張係数A(/℃)と接合処理後における熱膨張係数B(/℃)および最終圧下率X(%)が、板厚tに応じて下記の範囲を満足することを特徴とする、接合時にしわよれのないAl含有高耐酸化性ステンレス箔。
【0012】
4.上記1〜3のいずれかにおいて、ステンレス箔が、さらに
La:0.01〜0.30mass%
を含有する組成になることを特徴とする、接合時にしわよれのないAl含有高耐酸化性ステンレス箔。
【0013】
5.上記1〜4のいずれかにおいて、ステンレス箔が、さらに
La以外のREM :0.01〜0.10mass%、
Ca:10〜300 ppm 、
Mg:15〜300 ppm および
B:3〜20 ppm
のうちから選んだ一種または二種以上を含有する組成になることを特徴とする、接合時にしわよれのないAl含有高耐酸化性ステンレス箔。
【0014】
6.上記1〜5のいずれかにおいて、ステンレス箔が、さらに
Ti:0.01〜0.05mass%、
Nb:0.03〜0.30mass%、
Mo:0.05〜0.30mass%および
Hf:0.01〜0.30mass%
のうちから選んだ一種または二種以上を含有する組成になることを特徴とする、接合時にしわよれのないAl含有高耐酸化性ステンレス箔。
【0015】
7.上記1〜6のいずれかに記載の、接合時にしわよれのないAl含有高耐酸化性ステンレス箔を用いて作製したことを特徴とする触媒担持体。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
さて、発明者らは、高温での耐酸化性および強度、高温での触媒担持体の破損状態およびハニカム構造作製時におけるロウ付け、又はその他接合後の箔状態を詳細に検討したところ、ハニカム構造作製時のロウ付け、又はその他接合時の熱膨張係数の差に起因して生じる箔のしわより状態によって、その後の耐久性、耐酸化性が大きく変化することを見出した。特にロウ付け処理や接合処理後の箔のしわが高温での耐久性に多大な影響を及ぼすことが判明した。
この知見は、板厚が薄くなると、箔そのものの強度を上げるよりも、逆に鋼の高温強度は若干低くなっても、ロウ付け、又はその他接合時におけるしわの発生を抑制した方がよいことを意味している。
【0017】
また、ロウ付け、又はその他接合時におけるしわの発生度合いは、担持体を作製する際のロウ付け熱処理、接合熱処理時の熱膨張係数に深く係わっていることが究明された。
具体的には、鋼のロウ付け、又はその他接合時の熱膨張係数を、ある一定値以下に抑えることによってしわの発生が抑制され、結果として高温での触媒担持体の耐久性が格段に向上することが見出された。
本発明の成分組成範囲および熱膨張係数は、基本的に上記の考え方に基づいて決定されたものである。
【0018】
以下、本発明において、箔の成分組成を前記の範囲に限定した理由について説明する。なお、成分に関する「%」表示は特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C:0.10%以下
Cは、過剰になると高温強度を劣化させるだけでなく、耐酸化性および靱性も低下させるので、極力低減することが望ましい。よって、Cは0.10%以下に限定した。
【0019】
Si:0.05〜2.0 %
Siは、後述するAlと同様、耐酸化性を向上させる元素であるが、あまりに多量の添加は箔の延性を低下させ、セル切れの原因となるので、Siは0.05〜2.0 %の範囲に限定した。
【0020】
Mn:0.5 %以下
Mnは、Al脱酸の予備脱酸剤として添加された場合、鋼中に残存することがあるが、Mnは耐酸化性および耐食性を劣化させるので少ない方がよい。また、Mnは添加しすぎるとロウ付け処理、又はその他接合処理時に内部で酸化物を形成し、熱膨張係数が大きくなりすぎるきらいがある。そこで、Mnは、工業的および経済的な溶製技術を考慮して 0.5%以下に限定した。
【0021】
Cr:14.0〜30.0%
Crは、Alの耐酸化性を向上させる役割を有するばかりでなく、Cr自体が耐酸化性を向上させる元素である。ここで、Cr量が14.0%に満たないと十分な耐酸化性を確保できず、また14.0%未満では酸化進行時にAlが消費されると、組織の一部に高温でオーステナイト組織が生成し、酸化時の形状変化が激しくなる。一方、Cr量が30.0%を超えると箔の延性が落ち、セル切れの原因となる。従って、Cr量は14.0〜30.0%の範囲に限定した。
【0022】
Al:1.5 〜10.0%
Alは、本発明において耐酸化性を確保するために不可欠な元素である。Fe−Cr−Al系合金を高温に保持した場合、AlはFe,Crより優先酸化されて合金表面に保護性の高い Al2O3皮膜を生成し、耐酸化性を著しく向上させる。しかしながら、Al含有量が 1.5%未満に満たないと純粋な Al2O3皮膜を生成せず、十分な耐酸化性を確保できないので、その下限を 1.5%とした。また、耐酸化性の点からはAl含有量を高めることが望ましいが、一方でAlが10.0%を超えると熱間圧延が困難となり、また延性が劣化してセル切れの原因となる場合があるので、その上限は10.0%に限定した。
【0023】
N:0.10%以下
Nは、Cと同様、過剰になると靱性を低下させるだけでなく、冷間圧延性や加工性も低下させる。また、Alと反応して粗大なAlNとして析出すると、箔に圧延した場合に穴開きの原因ともなるので極力低減させることが望ましい。よって、Nは0.10%以下に限定した。
【0024】
Zr:0.01〜0.30%
Zrは、Al酸化物粒界に拡散して、外部からの酸素の拡散を抑制する働きがある。この効果は、Zr量が0.01%以上で顕著となる。しかしながら、Zr量が0.30%を超えると Al2O3皮膜中にZrO2として混入するようになり、これが酸素の拡散経路となるためかえってAlの消耗を速める結果となる。また添加しすぎると、ロウ付け処理、又はその他接合処理時の熱膨張係数が大きくなりすぎる。そこで、Zr量は0.01〜0.30%の範囲に限定した。
【0025】
以上、基本成分について説明したが、本発明では、その他にも以下に述べる元素を適宜含有させることができる。
La:0.01〜0.30%
Laは、Fe−Cr−Al系合金において高温で生成する Al2O3表面酸化皮膜の密着性を改善し、耐酸化性および酸化スケールの耐剥離性向上に極めて顕著な効果を有する。同時に、Alの酸化速度を抑制する効果も有する元素である。しかしながら、Laを添加しすぎると、鋼中の内部で酸化物が生成し、初期の熱膨張係数が大きくなる。ただし、Laは、REM の中では添加しても一番初期の熱膨張係数への影響が少ないので、REM の中ではLaを添加するのが特に望ましい。
以上の点から、Laの含有量は0.01〜0.30%に限定した。なお、製造性、耐酸化性、熱膨張係数のバランスを考えると、Laの好適範囲は0.03〜0.10%である。
【0026】
La以外のREM :0.01〜0.10%
REMは、Fe−Cr−Al系合金において高温で生成する Al2O3表面酸化皮膜の密着性を改善し、耐酸化性および酸化スケールの耐剥離性向上に極めて顕著な効果を有する。同時にAlの酸化速度を抑制する効果も有する元素である。しかしながら、添加しすぎると、鋼中の内部で酸化物が生成し、初期の熱膨張係数が大きくなるだけでなく、靱性の低下を招く。そこで、La以外のREM については0.01〜0.10%の範囲で含有させるものとした。
【0027】
Ca:10〜300 ppm 、Mg:15〜300 ppm
CaおよびMgはそれぞれ、低酸素分圧化でのウィスカーと呼ばれるγ−Al2O3 の生成や、等軸粒Al2O3 の生成を抑制する働きがあり、低酸素ポテンシャル下での柱状晶のAl2O3 被膜の生成を助長する働きがある。この効果は、Caが10 ppm以上、Mgが15 ppm以上で顕著となる。しかしながら、過剰に添加すると靱性が劣化するばかりか、逆に耐酸化性を悪化させる。
以上の観点から、Ca, Mg含有量はそれぞれ、Ca:10〜300 ppm , Mg:15〜300ppm の範囲に限定した。なお、好ましくはCa:20〜70 ppm, Mg:20〜100 ppm である。
【0028】
B:3〜20 ppm
Bは、粒界を強化し、高温変形時におけるクリープ特性を著しく改善する効果がある。しかしながら、含有量が3ppm 未満ではその添加効果に乏しく、一方20 ppmを超えると靱性の劣化を招くので、B量は3〜20 ppmの範囲に限定した。なお、好ましくは5〜15 ppmの範囲である。
【0029】
Ti:0.01〜0.05%、Nb:0.03〜0.30%
TiおよびNbはいずれも、鋼中のC, Nと結合し、高温強度を上げる効果がある。また、これらの元素を添加した場合は、クリープ特性が改善され、特に第二段階で起こる酸化皮膜と地鉄との膨張率の違いによる変形を緩和させる働きがある。これらの効果は、Tiは0.01%以上の添加で、またNbは0.03%以上の添加で顕著になる、しかしながら、Tiは0.05%を超えて添加すると鋼の初期段階での熱膨張係数を大きくし、またNb0.30%を超えて添加すると、鋼中のAlが酸化物となり、全てのAlが枯渇した後において酸化物として生成し、耐酸化性を劣化させる。そこで、Ti:0.01〜0.05%、Nb:0.03〜0.30%の範囲で含有させるものとした。
【0030】
Mo:0.05〜0.30%
Moは、高温で酸化されにくく、またフェライト相形成元素であるため、鋼中のAlが枯渇して Cr2O3皮膜を形成する段階になっても、酸化物中に取り込まれず地鉄のフェライト層を安定化させる働きがあり、高温での寿命を延ばす働きがある。この効果は、Moが0.05%以上になると現れる。しかしながら、Moを添加しすぎると、連続鋳造や熱間圧延の時にへげなどが発生し易くなる。よって、Mo量は0.05〜0.30%の範囲に限定した。
【0031】
Hf:0.01〜0.30%
Hfは、Zrと複合含有させた場合に、特にAlの酸化消耗を抑制し、Al2O3 皮膜を形成する時間および Cr2O3皮膜を形成する時間を延ばし、合金の耐酸化性を向上させる働きがある。この効果は、含有量が0.01%以上で顕著となるが、0.30%を超えると Al2O3皮膜中にHfO2として混入するようになり、これが酸素の拡散経路となるためかえってAlの消耗を速める結果となる。また添加しすぎると、Feと金属間化合物をつくり、靱性を劣化させる。従って、Hf量は0.01〜0.30%の範囲に限定した。なお、製造性を考慮すると好ましいHfの含有量は0.01〜0.20%の範囲である。
【0032】
さらに、本発明では、ロウ付け、又はその他接合処理時における熱膨張係数A(/℃)を所定の範囲に制御することが重要である。
素材の耐酸化性、高温強度を多少犠牲にしても、熱膨張率を板厚に応じて低減させ、ハニカム担持体に組んだ時に逆にハニカム担持体としての強度を上げるようにしたことが、本発明の画期的なところである。
【0033】
一般に、箔を触媒担持体にする場合、箔を波板と平板に加工し、例えば図1に示すように巻き付け、波板の山部と平板部分とをロウ付けまたは拡散接合などにより接合して、ハニカム形状にする。この時、ロウ付け処理および拡散接合処理とも、担持体温度を1000〜1200℃の高温に上げて接合を行っている。一般に、常温で加工し、ハニカム状に巻き付けた担持体部は、外筒と呼ばれる板厚の厚い筒に入れられて、この処理を施される。従って、常温で加工し、ハニカム状に巻き付けたとしても、ロウ付け時や拡散接合時に、熱膨張係数の異なる厚肉の外筒との間では、熱膨張係数の差に起因して箔は常温での形状が保てず、しわがよった、歪んだ形で接合されてしまう。温度が下がっても、ある程度はこの歪み、しわの影響が残り、ハニカム形状としては時として外筒付近がつぶれた状態になり、波板の山部だけでなく、全面的に接合されていることがある。かようなしわの発生領域が大きくなると、排気圧抵抗を上げるばかりか、この部分が高温での破断の原因にもなる。
【0034】
そこで、発明者らは、この現象を、箔の熱膨張係数および成分組成の観点から詳細に検討した結果、特に熱膨張係数が箔の板厚との関係で一定値を超えると、このしわが非常に大きくなって、ハニカム担持体の寿命が著しく低下することが究明された。
さらに、発明者らは、鋼成分、箔厚みおよびロウ付け熱処理時の熱膨張係数とハニカム担持体の耐久性との関係を詳細に検討した結果、本発明成分においては、箔厚みが40μm 以上、100 μm 以下の時には、熱膨張率が13.0×10−6(/℃)以下であれば、ロウ付け熱処理時における変形が少なく、耐久性が向上することが判明した。また、板厚が15μm 以上、40μm 未満の時には、箔の強度が低くなることから、その熱膨張係数の規制は厳しくなり、板厚をtとした時、熱膨張係数が(0.05×t+11.0)×10−6(/℃)以下であれば、ロウ付け時にしわよれが少なく、触媒担持体の耐久性が向上することが判明した。
【0035】
そこで、本発明では、ロウ付け、又はその他接合処理時における熱膨張係数A(/℃)を、板厚tに応じて下記の範囲に限定したのである。
【0036】
さらに、発明者らは、本発明の鋼成分において、ロウ付け処理時、又はその他接合処理時の熱膨張係数およびハニカム担持体形成後の熱膨張係数とハニカム担持体の寿命との関係について検討した結果、ロウ付け処理時、又はその他接合処理時の熱膨張係数Aとハニカム担持体形成後の熱膨張係数Bとが、A≧Bの関係にあると、耐久試験時に一部にセル切れが起こり、ハニカムの耐久性が劣化する場合があることが判明した。
これは、ロウ付け処理時、又はその他接合処理時の熱膨張係数Aが、ハニカム担持体形成後の熱膨張係数B以上であると、自由度がなく、高温でも接合部と接合部で波板、平板に引張応力のかかった状態となり、ここに昇温時に排気ガス圧力などの外力が加わると、破断の原因になることが考えられる。従って、折角、接合時、ロウ付け熱処理初期の熱膨張係数Aを、本発明の適正範囲に制御したとしても、高温での耐久性が劣化することになる。
よって、ハニカム担持体形成後の熱膨張係数Bの方がロウ付け熱処理初期の熱膨張係数Aよりも大きい、すなわちA<Bの関係を満足させることが一層有利である。
【0037】
さらに、発明者らは、本発明の好適成分範囲で、ロウ付け処理時、又はその他接合処理時の熱膨張係数Aと最終圧下率Xとの関係について調査したところ、箔厚みが40μm 以上、100 μm 以下の時、最終圧下率が20%以上、86.7%以下であれば、ロウ付け処理時、又はその他接合処理時の熱膨張係数Aが、本発明の適正範囲を満足することが突き止められた。また、箔厚みが薄くなり、15μm 以上、40μm 未満の場合には、箔厚みをtとした時、 100(50−t)/50(%)以上、100 (300−t)/300 (%)以下であれば、ロウ付け処理時、又はその他接合処理時の熱膨張係数Aが本発明範囲を満たすことが判明した。
よって、箔厚みが40μm 以上、 100μm 以下の場合に、ロウ付け処理時、又はその他接合処理時の熱膨張係数Aを13.0×10−6(/℃)以下とするためには、最終圧下率Xを20%以上、86.7%以下とすることが、また箔厚みが15μm 以上、40μm 未満の場合に、ロウ付け処理時、又はその他接合処理時の熱膨張係数Aを(0.05×t+11.0)×10−6(/℃)以下とするためには、最終圧下率Xを 100(50−t)/50(%)以上、100 (300−t)/300 (%)以下とする必要がある。
【0038】
【実施例】
実施例1
表1に示す成分組成になる鋼材を、1200℃に加熱後、1200〜900 ℃の温度域で板厚:3mmまでの熱間圧延を行った。ついで、950 ℃で焼鈍後、冷間圧延と焼鈍を繰り返して、冷延鋼板とした。ついで、 900℃, 1分間の焼鈍後、酸洗してから、表2に示す圧下率で最終冷延圧延を行い、表2に示す板厚の箔とした。
かくして得られた箔試料について、同一の箔で波板、平板を重ねあわせて、図2に示すような寸法になるハニカム形状のメタル担持体を組み立て、板厚:2mmの SUS 434製の外筒に装入した。その後、1100〜1200℃×1時間の拡散ロウ付け熱処理による接合を行い、メタルハニカム担持体とした。
【0039】
なお、箔のロウ付け処理時の熱膨張係数Aは、圧延後そのままのものを真空中で室温から1100℃までの試験で測定した。また、ハニカム担持体形成後の熱膨張係数Bは、耐久試験用とは別に同様の熱処理で作製したメタルハニカム担持体の一部の箔を切り出して、同様に、真空中で室温から1100℃までの試験で測定した。その結果を表2に併記する。
かくして得られたメタルハニカム担持体に耐久試験を施し、しわよれ度合い、耐酸化性、排圧抵抗上昇性およびセル切れの有無について調べた結果を、表3に示す。
【0040】
なお、耐久試験は、促進試験として通常の排気ガス温度より高い1150℃として、CO:0.5vol%、C3H8:0.3vol%、NOx :0.01 vol%、CO2 :15 vol%、O2 :2 vol%、H2 :0.3vol%、残部:N2 からなるシュミレーション排気ガスを、10 リットル/min で、1.5 時間装入、0.5 時間休止を1サイクルとして、100 サイクル、300 サイクル経過後のハニカム担持体の酸化増量、セル切れの有無、排圧抵抗の上昇量を調査した。
【0041】
耐酸化性は、重量変化が5.0 %未満のものを◎で、8.0 %未満のものを○で、10.0%未満のものを△で、それ以上のものは×で示した。
また、試験後の排圧抵抗の上昇量が1.0 %未満のものを◎で、1.0 %以上、3.0 %未満のものを○で、3.0 %以上、5.0 %未満のものを△で、5.0 %以上のものを×で示した。
箔のしわよれ度合いは、このときの外筒二巻目の箔形状を画像解析で判断し、しわよれがほとんどなく波板、平板とも形状の変っていないものを◎で、波板のみ若干、形状に変化が有るものに○で、波板、平板とも形状に変化が有るものに△で、波板、平板とも形状変化が大きく、波板の山、谷以外で箔がくっついてしまったものを×で示した。
セル切れは、目視で判断し、セル切れの全くないものは◎で、1ヶ所あるものは○で、2〜5ヶ所あるものは△で、6ヶ所以上あるものは×で示した。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
表3から明らかなように、本発明の要件を満足するハニカム担持体はいずれも、非常に良好な耐久特性を示す。
このことから、本発明のステンレス箔は、非常に優れた耐酸化性が要求される触媒コンバーター用材料として好適であることが分かる。
【0046】
実施例2
表4に示す成分組成になる鋼材を、1200℃に加熱後、1200〜900 ℃の温度域で板厚:3mmまでの熱間圧延を行った。ついで、950 ℃で焼鈍後、冷間圧延と焼鈍を繰り返して、冷延鋼板とした。ついで、 900℃, 1分間の焼鈍後、酸洗してから、表5に示す圧下率で最終冷延圧延を行い、表5に示す板厚の箔とした。
かくして得られた箔試料について、同一の箔で波板、平板を重ねあわせて、図2に示すような寸法になるハニカム形状のメタル担持体を組み立て、板厚:2mmの SUS 434製の外筒に装入した。その後、1100〜1200℃×1時間の拡散ロウ付け熱処理による接合を行い、メタルハニカム担持体とした。
【0047】
かくして得られたメタルハニカム担持体に耐久試験を施し、しわよれ度合い、耐酸化性、排圧抵抗上昇性およびセル切れの有無について調べた結果を、表6に示す。
なお、箔のロウ付け熱処理時の熱膨張係数Aおよびハニカム担持体形成後の熱膨張係数Bの測定方法、ならびに耐久試験の実施要領および各特性の評価方法はいずれも、実施例1の場合と同じである。
【0048】
【表4】
【0049】
【表5】
【0050】
【表6】
【0051】
表6から明らかなように、本発明の要件を満足するハニカム担持体はいずれも、非常に良好な耐久特性を示している。
【0052】
【発明の効果】
かくして、本発明によれば、ロウ付け、又はその他接合時にしわよれの少ないAl含有高耐酸化性ステンレス箔を得ることができる。
また、このステンレス箔を使用することにより、高温での強度、耐酸化性に優れた触媒担持体を得ることができる。
さらに、このステンレス箔は、その優れた高温耐酸化性ゆえに、触媒コンバーター用材料および燃焼ガス排気系の機器、装置としても好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】箔を素材とする、触媒担持体の作製要領を示した図である。
【図2】実施例で作製したハニカム形状のメタル担持体の寸法・形状を示した図である。
Claims (7)
- 請求項1〜3のいずれかにおいて、ステンレス箔が、さらに
La:0.01〜0.30mass%
を含有する組成になることを特徴とする、接合時にしわよれのないAl含有高耐酸化性ステンレス箔。 - 請求項1〜4のいずれかにおいて、ステンレス箔が、さらに
La以外のREM :0.01〜0.10mass%、
Ca:10〜300 ppm 、
Mg:15〜300 ppm および
B:3〜20 ppm
のうちから選んだ一種または二種以上を含有する組成になることを特徴とする、接合時にしわよれのないAl含有高耐酸化性ステンレス箔。 - 請求項1〜5のいずれかにおいて、ステンレス箔が、さらに
Ti:0.01〜0.05mass%、
Nb:0.03〜0.30mass%、
Mo:0.05〜0.30mass%および
Hf:0.01〜0.30mass%
のうちから選んだ一種または二種以上を含有する組成になることを特徴とする、接合時にしわよれのないAl含有高耐酸化性ステンレス箔。 - 請求項1〜6のいずれかに記載の、接合時にしわよれのないAl含有高耐酸化性ステンレス箔を用いて作製したことを特徴とする触媒担持体。
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