JP2009046717A - 高温における強度と耐酸化性に優れる合金箔 - Google Patents
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Abstract
【課題】900℃における引張強さが40MPa以上であり、かつ、1100℃×500hrの酸化試験による酸化増量が20g/m2以下である、高温における強度と耐酸化性に優れる合金箔を提供する。
【解決手段】mass%で、C:0.015%以下、Si:0.3%以下、Mn:0.2%以下、P:0.05%以下、S:0.003%以下、Cr:19.0〜21.0%、Al:4.6〜7.0%、N:0.015%以下、WおよびTaのいずれか1種または2種を合計で1.0〜3.0%、LaとSmを合計で0.03〜0.20%、HfとZrを合計で0.02〜0.14%、Ca、MgおよびBのいずれか1種または2種以上を合計で0.0020〜0.0080%、Ni:0.2%以下、Ti:0.15%以下、Nb:0.25%以下、Mo:0.2%以下含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する合金箔。
【選択図】なし
【解決手段】mass%で、C:0.015%以下、Si:0.3%以下、Mn:0.2%以下、P:0.05%以下、S:0.003%以下、Cr:19.0〜21.0%、Al:4.6〜7.0%、N:0.015%以下、WおよびTaのいずれか1種または2種を合計で1.0〜3.0%、LaとSmを合計で0.03〜0.20%、HfとZrを合計で0.02〜0.14%、Ca、MgおよびBのいずれか1種または2種以上を合計で0.0020〜0.0080%、Ni:0.2%以下、Ti:0.15%以下、Nb:0.25%以下、Mo:0.2%以下含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する合金箔。
【選択図】なし
Description
本発明は、自動車や自動二輪車等の排ガス浄化装置用部材のように、高温で使用され、高温における強度と耐酸化性に優れることが要求される部材に用いられる合金箔に関し、特に、メタルハニカムの触媒担体に好適な合金箔に関するものである。
Fe−Cr−Al系合金は、高温での耐酸化性に優れるため、それを薄板(箔)としたものが、自動車や自動二輪車、モーターボートなどの内燃機関の排ガス浄化装置用部材(触媒担体、各種センサーなど)に使用されているほか、高温加熱炉部材やガスバーナ部材、あるいは電気抵抗率が高い特性を活かしてヒーターの発熱体などにも使用されている。
また、上記部材等を構成する素材は、耐久性を確保する観点から、高温強度にも優れることが要求されるが、中でも、自動車や自動二輪車の排ガス浄化装置の触媒担体に用いられる素材は、高温下で使用されるだけでなく、エンジン振動や運転・停止などによる熱衝撃を常に受け続けることから、その要求が強い。さらに、近年における排ガス規制の強化に伴って、浄化効率を上げるため、浄化装置担体のハニカム構造の変更や、浄化装置をよりエンジンに近い部位に設置するようになってきていることから、よりその要求が強まってきている。
このような用途に用いられる合金箔に関する技術としては、例えば、特許文献1には、Zr、Hf、REMを添加したFe−Cr−Al系合金に、さらにNi、Mo、Wを添加することにより、高温での繰り返し熱応力および酸化に対する耐性を高めた排ガス浄化用基材に用いられるフェライト系ステンレス鋼が開示されている。また、特許文献2には、Fe−Cr−Al系合金にYミッシュを添加して耐酸化性を高め、さらにNb、Ta、Mo、Wのうちの少なくとも1種以上を添加して高温耐力を向上させた自動車触媒メタル担体用Fe−Cr−Al系合金箔が開示されている。さらに、特許文献3には、La、Ce、Pr、Ndを添加したFe−Cr−Al系合金に、(C+N)に対して、所定量のTaを添加し、さらにMo、W、Nbを添加することによって高温耐力を向上させた燃焼排ガス浄化触媒担体用耐熱ステンレス箔が開示されている。
特表2005−504176号公報
特開05−277378号公報
特公06−104879号公報
上記特許文献1〜3に開示されているように、従来技術においては、高温強度を高めるために、Nb、Ta、MoおよびWのうちから選ばれる1種以上を添加する方法が多く示されている。しかし、上記従来技術では、強化元素を多く添加することによって高温強度を向上させているが、もう一つの重要な特性である耐酸化性については、要求レベルを十分に達成しているとは言い難いのが実情である。
例えば、今後の排ガス規制に対応できる、高い浄化効率を持つ自動車排ガス浄化触媒用の担体素材には、少なくとも900℃の温度における強度(引張強さ)は、従来材よりも10%以上高い40MPa以上であり、また、大気中で1100℃×500hrの酸化試験後の酸化増量は、20g/m2以下であることが必要と考えられる。これに対して、上記特許文献1〜3の技術で得られる合金は、750℃までの強度は大幅に増加しているものの、900℃での強度は従来材とほとんど同等であり、しかも、1100℃における500hr酸化後の酸化増量は25g/m2レベルである。
そこで、本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みて開発したものであり、その目的は、900℃における引張強さが40MPa以上であり、かつ、1100℃×500hrの酸化試験による酸化増量が20g/m2以下である、高温における強度と耐酸化性に優れる合金箔を提供することにある。
発明者らは、従来技術が抱える上記問題点を解決するために、Fe−Cr−Al系合金の成分組成が、高温強度および耐酸化性に及ぼす影響を詳細に検討した。その結果、Nb、W、Ta、MoおよびNiは、高温強度を高めるのに極めて有効な元素であるが、これら元素のうち、Nb、MoおよびNiは、所定量を超えて添加すると、La、Zrなどの耐酸化性向上元素を添加しても、900℃以上の温度域では異常酸化を起こしやすく、特に1000℃を超える高温域では耐酸化性の劣化が著しいこと、従って、高温強度を高める元素としてはW、Taを用いる必要があり、また、耐酸化性を高める元素であるCr、Al、La、Zr、Hf、Sm等は、その組成範囲を厳密に制御して添加する必要があることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、C:0.015mass%以下、Si:0.3mass%以下、Mn:0.2mass%以下、P:0.05mass%以下、S:0.003mass%以下、Cr:19.0〜21.0mass%、Al:4.6〜7.0mass%、N:0.015mass%以下、WおよびTaのいずれか1種または2種を合計で1.0〜3.0mass%、LaとSmを合計で0.03〜0.20mass%、HfとZrを合計で0.02〜0.14mass%、Ca、MgおよびBのいずれか1種または2種以上を合計で0.0020〜0.0080mass%含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する合金箔である。
本発明の合金箔は、上記成分組成に加えてさらに、Ni:0.2mass%以下、Ti:0.15mass%以下、Nb:0.25mass%以下およびMo:0.2mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする。
また、本発明の合金箔は、LaおよびSmを除く希土類元素の合計が0.02mass%以下であることを特徴とする。
また、本発明は、上記の金属箔を用いた自動二輪車および自動車の排ガス浄化装置である。
本発明によれば、900℃以上の高温においても強度が高く、かつ1100℃においても耐酸化性に優れる合金箔が得られる。したがって、この合金箔を自動車等の排ガス浄化装置のメタルハニカム触媒担体に用いることにより、その耐久性を大きく向上することが可能となる。
本発明の合金箔は、高温強度を確保しつつ、耐酸化性を高めるために、高温強度を高める元素としてW、Taを有効に活用するのと同時に、耐酸化性を高める元素であるCr、Al、La、Zr、Hf、Smだけでなく、製造上必然的に含まれる他の不純物元素をも含めて、それらの組成範囲を厳格に制御する必要があることを見出したところに特徴がある。以下に、それぞれの成分における適正な組成範囲について説明する。
C:0.015mass%以下、N:0.015mass%以下
CおよびNは、強度を高める元素であるが、過剰に含有すると、靭性や耐酸化性を劣化させるため、それぞれ0.015mass%以下とする必要がある。好ましくは、0.010mass%以下である。
CおよびNは、強度を高める元素であるが、過剰に含有すると、靭性や耐酸化性を劣化させるため、それぞれ0.015mass%以下とする必要がある。好ましくは、0.010mass%以下である。
Si:0.3mass%以下
Siは、脱酸剤として添加される元素であるが、過剰に含有すると、靭性を低下させるだけでなく、Al2O3酸化皮膜の成長を阻害し、本発明が意図する900℃以上における耐酸化性を低下させるため、上限を0.3mass%とする。好ましくは、0.2mass%以下である。
Siは、脱酸剤として添加される元素であるが、過剰に含有すると、靭性を低下させるだけでなく、Al2O3酸化皮膜の成長を阻害し、本発明が意図する900℃以上における耐酸化性を低下させるため、上限を0.3mass%とする。好ましくは、0.2mass%以下である。
Mn:0.2mass%以下
Mnは、Alの予備脱酸剤として添加してもよい。しかし、0.2mass%を超える過剰の添加は、Al2O3酸化皮膜の成長を阻害し、耐酸化性を劣化させるため、Mnは0.2mass%以下とする。好ましくは、0.1mass%以下である。
Mnは、Alの予備脱酸剤として添加してもよい。しかし、0.2mass%を超える過剰の添加は、Al2O3酸化皮膜の成長を阻害し、耐酸化性を劣化させるため、Mnは0.2mass%以下とする。好ましくは、0.1mass%以下である。
P:0.05mass%以下
Pは、靭性を劣化させるだけでなく、Al2O3酸化皮膜の成長を阻害し、本発明が意図する900℃以上における耐酸化性を劣化させる有害な元素であるため、0.05mass%以下とする。好ましくは、0.03mass%以下である。
Pは、靭性を劣化させるだけでなく、Al2O3酸化皮膜の成長を阻害し、本発明が意図する900℃以上における耐酸化性を劣化させる有害な元素であるため、0.05mass%以下とする。好ましくは、0.03mass%以下である。
S:0.003mass%以下
Sは、著しく靭性を劣化させるだけでなく、Al2O3酸化皮膜の成長を阻害し、耐酸化性を劣化させる有害な元素であるため、0.003mass%以下に制限する。好ましくは、0.001mass%以下である。
Sは、著しく靭性を劣化させるだけでなく、Al2O3酸化皮膜の成長を阻害し、耐酸化性を劣化させる有害な元素であるため、0.003mass%以下に制限する。好ましくは、0.001mass%以下である。
Cr:19.0〜21.0mass%
Crは、耐酸化性や高温強度を向上させる本発明の合金箔における基本成分である。しかし、19.0mass%未満では、本発明で所期した効果は得られず、一方、21.0mass%を超えると、靭性が低下し、圧延することが難しくなる。よって、本発明においては、Crは19.0〜21.0mass%の範囲とする。
Crは、耐酸化性や高温強度を向上させる本発明の合金箔における基本成分である。しかし、19.0mass%未満では、本発明で所期した効果は得られず、一方、21.0mass%を超えると、靭性が低下し、圧延することが難しくなる。よって、本発明においては、Crは19.0〜21.0mass%の範囲とする。
Al:4.6〜7.0mass%
Alは、合金箔の表面に、保護性の高いAl2O3皮膜を形成し、耐酸化性を向上する成分である。しかし、4.6mass%未満では、上記皮膜の形成量が少なく、耐酸化性に劣るため、30〜50μmの極薄箔の場合には、異常酸化により短時間で酸化消耗して担体の破壊を招くことになる。一方、Alが7.0mass%を超えると、靭性が低下し、圧延が難しくなる。よって、Al含有量は4.6〜7.0mass%の範囲とする。好ましくは、5.0〜6.4mass%の範囲である。
Alは、合金箔の表面に、保護性の高いAl2O3皮膜を形成し、耐酸化性を向上する成分である。しかし、4.6mass%未満では、上記皮膜の形成量が少なく、耐酸化性に劣るため、30〜50μmの極薄箔の場合には、異常酸化により短時間で酸化消耗して担体の破壊を招くことになる。一方、Alが7.0mass%を超えると、靭性が低下し、圧延が難しくなる。よって、Al含有量は4.6〜7.0mass%の範囲とする。好ましくは、5.0〜6.4mass%の範囲である。
W、Ta:合計で1.0〜3.0mass%
WおよびTaは、耐酸化性に悪影響を及ぼすことなく、高温強度を高めることができる本発明では極めて重要な元素である。本発明が目的とする、900℃における高温強度(引張強さ)40MPa以上を得るためには、W、Taの1種または2種合計で1.0mass%以上添加することが必要である。一方、3.0mass%を超えて添加すると、靭性が劣化して製造するのが困難になると共に、耐酸化性が劣化するようになる。よって、本発明においては、WおよびTaの含有量は、合計で1.0〜3.0mass%の範囲とする。なお、Taは、Wに比べて耐酸化性を劣化させる傾向が強いため、Ta単独で添加する場合には、2.4mass%以下とするのが好ましい。
WおよびTaは、耐酸化性に悪影響を及ぼすことなく、高温強度を高めることができる本発明では極めて重要な元素である。本発明が目的とする、900℃における高温強度(引張強さ)40MPa以上を得るためには、W、Taの1種または2種合計で1.0mass%以上添加することが必要である。一方、3.0mass%を超えて添加すると、靭性が劣化して製造するのが困難になると共に、耐酸化性が劣化するようになる。よって、本発明においては、WおよびTaの含有量は、合計で1.0〜3.0mass%の範囲とする。なお、Taは、Wに比べて耐酸化性を劣化させる傾向が強いため、Ta単独で添加する場合には、2.4mass%以下とするのが好ましい。
La、Sm:合計で0.03〜0.20mass%、Hf、Zr:合計で0.02〜0.14mass%
Laは、Fe−Cr−Al系合金において、Al2O3酸化皮膜と合金との密着性を向上し、酸素の内方拡散を抑制することにより耐酸化性を向上させる効果が高い元素である。また、Zrは、C、Nと結合し、靭性を改善し、また、Laと同時に添加することで、その耐酸化性をさらに高める効果がある元素である。しかし、La、Zrの含有量が、それぞれ0.03mass%未満、0.02mass%未満であると、本発明が目的とする優れた耐酸化性が得られず、一方、それぞれの含有量が、0.20mass%、0.14mass%を超えると、酸化皮膜粒界や酸化皮膜と合金との界面におけるこれら元素の濃度が過剰となり、却って酸化速度を増加させ、耐酸化性を低下させる。よって、本発明においては、Laは0.03〜0.20mass%、Zrは0.02〜0.14mass%の範囲で添加するのが望ましい。
Laは、Fe−Cr−Al系合金において、Al2O3酸化皮膜と合金との密着性を向上し、酸素の内方拡散を抑制することにより耐酸化性を向上させる効果が高い元素である。また、Zrは、C、Nと結合し、靭性を改善し、また、Laと同時に添加することで、その耐酸化性をさらに高める効果がある元素である。しかし、La、Zrの含有量が、それぞれ0.03mass%未満、0.02mass%未満であると、本発明が目的とする優れた耐酸化性が得られず、一方、それぞれの含有量が、0.20mass%、0.14mass%を超えると、酸化皮膜粒界や酸化皮膜と合金との界面におけるこれら元素の濃度が過剰となり、却って酸化速度を増加させ、耐酸化性を低下させる。よって、本発明においては、Laは0.03〜0.20mass%、Zrは0.02〜0.14mass%の範囲で添加するのが望ましい。
なお、本発明の合金箔は、上記La、Zrの一部もしくは全てを、Sm、Hfで置き換えることができる。
すなわち、Smは、耐酸化性の向上効果が極めて高い元素であるため、Laの一部または全部と置き換えて使用することができる。特に、Ta、Nb、Moを添加した場合には、耐酸化性の向上に有効であり、添加することが望ましい。ただし、Smは、非常に高価であり、また、過剰に添加すると却って耐酸化性を劣化させる。よって、LaをSmで置換する場合には、Smは0.02〜0.15mass%の範囲で添加するのが好ましい。なお、LaとSmの合計が0.20mass%を超えると、靭性や耐酸化性が劣化するため、それらの合計は0.03〜0.20mass%とする。
すなわち、Smは、耐酸化性の向上効果が極めて高い元素であるため、Laの一部または全部と置き換えて使用することができる。特に、Ta、Nb、Moを添加した場合には、耐酸化性の向上に有効であり、添加することが望ましい。ただし、Smは、非常に高価であり、また、過剰に添加すると却って耐酸化性を劣化させる。よって、LaをSmで置換する場合には、Smは0.02〜0.15mass%の範囲で添加するのが好ましい。なお、LaとSmの合計が0.20mass%を超えると、靭性や耐酸化性が劣化するため、それらの合計は0.03〜0.20mass%とする。
また、Hfは、Zrと同様、靭性を向上する効果を有するとともに、LaやSmと同時に添加することで、その耐酸化性を高める効果が大きいので、Zrの一部または全てと置き換えて使用することができる。ただし、Hfも非常に高価であり、過剰に添加すると耐酸化性を劣化させる元素であるため、Zrに代えてHfを添加する場合には、Hfは0.02〜0.10mass%の範囲とするのが好ましい。なお、ZrとHfの合計が0.14mass%を超えると、靭性や耐酸化性が劣化するため、それらの合計は0.02〜0.14mass%とする。
Ca、MgおよびB:合計で0.0010〜0.0080mass%
Ca、MgおよびBは、耐酸化性に有害なSの結晶粒界や表面付近への濃化を抑制し、靭性を改善する効果を有する。また、先述したLa、Zrや、後述するSm、Hfと共存することによって、より耐酸化性を高める働きのある元素でもある。それらの効果を得るためには、Ca、MgおよびBの1種または2種以上を合計で0.0010mass%以上添加することが必要である。しかし、0.080mass%を超えて添加すると、却って靭性の低下や耐酸化性の低下を招く。よって、Ca、MgおよびBは、合計で0.0010〜0.0080mass%の範囲で添加する。好ましくは、0.0020〜0.0060mass%である。
Ca、MgおよびBは、耐酸化性に有害なSの結晶粒界や表面付近への濃化を抑制し、靭性を改善する効果を有する。また、先述したLa、Zrや、後述するSm、Hfと共存することによって、より耐酸化性を高める働きのある元素でもある。それらの効果を得るためには、Ca、MgおよびBの1種または2種以上を合計で0.0010mass%以上添加することが必要である。しかし、0.080mass%を超えて添加すると、却って靭性の低下や耐酸化性の低下を招く。よって、Ca、MgおよびBは、合計で0.0010〜0.0080mass%の範囲で添加する。好ましくは、0.0020〜0.0060mass%である。
本発明の合金箔は、上記成分に加えてさらに、Ni:0.2mass%以下、Ti:0.15mass%以下、Nb:0.25mass%以下およびMo:0.2mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することができる。
Ni、Ti、NbおよびMoは、いずれも、高温強度を向上させる元素であるが、耐酸化性を劣化させ、900℃以上、特に1000℃を超える高温域では、異常酸化による酸化増量が大きくなる。特に、Niを0.2mass%超、Tiを0.15mass%超、Nbを0.25mass%超およびMoを0.2mass%超添加した場合には、大気中で、1100℃×500hrの酸化試験を行ったときの酸化増量が20g/m2を超えることがある。そのため、これらの合金箔でハニカム担体などの構造体を作製した場合には、変形や破壊を引き起こす原因となるおそれがある。よって、これらの元素を添加する場合には、上記範囲で含有させるのが好ましい。
Ni、Ti、NbおよびMoは、いずれも、高温強度を向上させる元素であるが、耐酸化性を劣化させ、900℃以上、特に1000℃を超える高温域では、異常酸化による酸化増量が大きくなる。特に、Niを0.2mass%超、Tiを0.15mass%超、Nbを0.25mass%超およびMoを0.2mass%超添加した場合には、大気中で、1100℃×500hrの酸化試験を行ったときの酸化増量が20g/m2を超えることがある。そのため、これらの合金箔でハニカム担体などの構造体を作製した場合には、変形や破壊を引き起こす原因となるおそれがある。よって、これらの元素を添加する場合には、上記範囲で含有させるのが好ましい。
また、本発明の合金箔は、La、Smを除く希土類元素(REM)の含有量は、合計で0.02mass%以下に制限するのが好ましい。
ここで、LaやSmを除く上記希土類元素(REM)とは、Sc、Y、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuの15種類の元素のことを意味する。Ceなどのこれらの元素を添加しても、耐酸化性の向上効果は得られないばかりか、これらの元素を0.02mass%超え添加した場合には、却って靭性が低下して圧延が困難となったり、耐酸化性が劣化したりする。よって、La、Smを除く希土類元素(REM)は、合計でも0.02mass%以下とするのが好ましく、0.01mass%以下がより好ましい。
ここで、LaやSmを除く上記希土類元素(REM)とは、Sc、Y、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuの15種類の元素のことを意味する。Ceなどのこれらの元素を添加しても、耐酸化性の向上効果は得られないばかりか、これらの元素を0.02mass%超え添加した場合には、却って靭性が低下して圧延が困難となったり、耐酸化性が劣化したりする。よって、La、Smを除く希土類元素(REM)は、合計でも0.02mass%以下とするのが好ましく、0.01mass%以下がより好ましい。
次に、本発明に係る合金箔の製造方法について説明する。
本発明の合金箔の製造方法は、特に限定する必要はなく、従来から公知の方法で製造することができる。例えば、上記成分組成を含有する鋼を、転炉や電気炉等で溶製し、VOD炉やAOD炉等で2次精錬し、連続鋳造法あるいは造塊−分塊圧延法でスラブとし、その後、そのスラブを1050〜1250℃に加熱し、熱間圧延して熱延板とし、さらに、焼鈍と冷間圧延を複数回繰り返して、所定の板厚の合金箔を製造することができる。
本発明の合金箔の製造方法は、特に限定する必要はなく、従来から公知の方法で製造することができる。例えば、上記成分組成を含有する鋼を、転炉や電気炉等で溶製し、VOD炉やAOD炉等で2次精錬し、連続鋳造法あるいは造塊−分塊圧延法でスラブとし、その後、そのスラブを1050〜1250℃に加熱し、熱間圧延して熱延板とし、さらに、焼鈍と冷間圧延を複数回繰り返して、所定の板厚の合金箔を製造することができる。
表1に示す成分組成を有するNo.1〜22の鋼を真空溶解炉で溶製して鋼塊とし、この鋼塊を1200℃に加熱し、900〜1200℃の温度域で熱間圧延して板厚3mmの熱延板とした。次いで、この熱延板に950℃の熱延板焼鈍を施したのち冷間圧延と焼鈍を繰り返して板厚0.1mmの冷延板とし、950℃×1分の焼鈍後、酸洗して表層の酸化物や窒化物などを完全に除去し、その後、さらに冷間圧延して最終板厚が50μmの合金箔とした。
上記のようにして得た鋼について、高温強度よび耐酸化性を、下記要領で評価した。
<高温強度測定>
高温強度は、板厚1mmに冷間圧延後、1000〜1100℃で再結晶焼鈍を行った鋼板から、圧延方向と平行方向に、幅10mm×長さ70mmの平行部を有する引張試験片を5本ずつ採取し、JIS G0567に準拠して、高温強度を測定した。上記測定は、試験片を900℃に加熱して15分保持した後、5.0mm/分の速度で引っ張り、引張強さを測定した。また、高温強度の評価は、上記5本の引張強さの平均値を求め、その平均引張強さが40MPa未満を不良(×)、40MPa以上を良(〇)、50MPa以上を優(◎)と判定した。
<耐酸化性の評価>
耐酸化性は、上記のようにして製造した各種成分組成を有する合金箔から、幅20mm×長さ30mmの試験片をそれぞれ3枚ずつ採取し、これらの試験片について、1100℃の温度に保持された大気炉中で500時間の酸化試験を行い、試験前後における重量変化を測定し、その変化量を試験片の表面積で除して酸化増量とし、3枚の酸化増量の平均値を求めた。なお、酸化試験は、スケールの剥離がある場合も考慮し、試験片はるつぼ中に吊るして行い、剥離したスケールの重量も加味した。耐酸化性の評価は、酸化増量が20g/m2超えの場合は不良(×)、20g/m2以下であれば良(〇)、10g/m2以下であれば優(◎)と判定した。
<高温強度測定>
高温強度は、板厚1mmに冷間圧延後、1000〜1100℃で再結晶焼鈍を行った鋼板から、圧延方向と平行方向に、幅10mm×長さ70mmの平行部を有する引張試験片を5本ずつ採取し、JIS G0567に準拠して、高温強度を測定した。上記測定は、試験片を900℃に加熱して15分保持した後、5.0mm/分の速度で引っ張り、引張強さを測定した。また、高温強度の評価は、上記5本の引張強さの平均値を求め、その平均引張強さが40MPa未満を不良(×)、40MPa以上を良(〇)、50MPa以上を優(◎)と判定した。
<耐酸化性の評価>
耐酸化性は、上記のようにして製造した各種成分組成を有する合金箔から、幅20mm×長さ30mmの試験片をそれぞれ3枚ずつ採取し、これらの試験片について、1100℃の温度に保持された大気炉中で500時間の酸化試験を行い、試験前後における重量変化を測定し、その変化量を試験片の表面積で除して酸化増量とし、3枚の酸化増量の平均値を求めた。なお、酸化試験は、スケールの剥離がある場合も考慮し、試験片はるつぼ中に吊るして行い、剥離したスケールの重量も加味した。耐酸化性の評価は、酸化増量が20g/m2超えの場合は不良(×)、20g/m2以下であれば良(〇)、10g/m2以下であれば優(◎)と判定した。
上記測定の結果を、表1−2中に併記して示した。この表1−2の結果から、本発明の成分組成を満たすNo.1〜8の鋼は、高温強度、耐酸化性のいずれも評価が○以上と良好であるのに対して、本発明の成分組成を満たさないNo.9〜22の鋼は、高温強度または耐酸化性の何れかが目標に達していない。
本発明の合金箔は、自動車や自動二輪車等の排ガス浄化装置用部材、特に触媒のメタルハニカム担体用の素材として好適であるばかりでなく、0.1mm超え〜2mm程度の薄板とすることにより、発熱体やバーナ部材、加熱炉部材などの素材としても好適に用いることができる。
Claims (4)
- C:0.015mass%以下、
Si:0.3mass%以下、
Mn:0.2mass%以下、
P:0.05mass%以下、
S:0.003mass%以下、
Cr:19.0〜21.0mass%、
Al:4.6〜7.0mass%、
N:0.015mass%以下、
WおよびTaのいずれか1種または2種を合計で1.0〜3.0mass%、
LaとSmを合計で0.03〜0.20mass%、
HfとZrを合計で0.02〜0.14mass%、
Ca、MgおよびBのいずれか1種または2種以上を合計で0.0020〜0.0080mass%含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する合金箔。 - 上記成分組成に加えてさらに、Ni:0.2mass%以下、Ti:0.15mass%以下、Nb:0.25mass%以下およびMo:0.2mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の合金箔。
- LaおよびSmを除く希土類元素の合計が0.02mass%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の合金箔。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属箔を用いた自動二輪車および自動車の排ガス浄化装置。
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JP2007212711A JP2009046717A (ja) | 2007-08-17 | 2007-08-17 | 高温における強度と耐酸化性に優れる合金箔 |
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