JP2004269410A - アルコール殺菌製剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】食品製造に従事するヒトの手指等の皮膚用として、あるいは食品製造の機械・器具用として、殺菌効果に優れ、手荒れし難く、しかも食品に混入したとしても問題とならない安全性に優れたアルコール殺菌製剤を提供する。
【解決手段】製剤全体に対し40〜70%のエタノールと、ヒアルロン酸又はその塩、及び炭素数8〜12の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセリドが含有されてなるアルコール殺菌製剤。
【解決手段】製剤全体に対し40〜70%のエタノールと、ヒアルロン酸又はその塩、及び炭素数8〜12の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセリドが含有されてなるアルコール殺菌製剤。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品製造に従事するヒトの手指等の皮膚用として、あるいは食品製造の機械・器具用のアルコール殺菌製剤に関し、詳しくは、エタノール、ヒアルロン酸又はその塩、及び炭素数8〜12の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセリドを含有した、殺菌効果に優れ、手荒れし難く、しかも食品に混入したとしても問題とならない安全性に優れたアルコール殺菌製剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
食品は、種々の栄養成分を含有した栄養価に優れたものであることから、細菌やカビが混入すると、食品の腐敗、変敗を招きやすく食品の保存性を損なう。したがって、食品の保存性を向上されるために、食品に加熱処理を施したり、加熱処理を施せない食品や食材は次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、オゾン等で処理することにより細菌類を直接、死滅させる方法、あるいは貯蔵温度、水分活性又はpH等を低くしたり、リゾチーム、プロタミン、ポリリジン、グリシン、酢酸ソーダ、クエン酸、乳酸、茶抽出物、トウガラシ抽出物、ホップ抽出物、ローズマリー抽出物、キトサン等の静菌剤あるいは静菌効果を有する物質を添加することにより細菌類の繁殖を抑える方法等が採られている。
【0003】
食品の腐敗、変敗の原因となる細菌やカビは、食品の原料として用いている食材に元々付着している細菌類に由来することが多いが、当該食品製造に従事するヒトの手等の皮膚に存在している常在菌や、食品製造用の機械・器具の表面に存在する落下菌等も食品の腐敗、変敗の原因となる場合がある。したがって、食品製造に従事するヒトは、食品の加工所に入る前にアルコール殺菌製剤で手指を殺菌することが一般的に行われ、一方、食品製造の機械・器具においても、その外側部分にアルコール殺菌製剤を塗布し、細菌による汚染を防止していた。
【0004】
しかしながら、殺菌の目的で使用されているアルコール殺菌製剤としては、単に水にアルコールを約70%と高濃度含有させた含水アルコールが広く使用されているが、アルコール(エタノール)は手表面の油分を脱脂する作用があるため、前記含水アルコールを手指の殺菌として頻繁に使用すると手が脱脂され、遂には手が荒れてしまうという問題があった。また、前記含水アルコールでは、殺菌効果が不十分な場合があり、より強力な殺菌効果を有するものが望まれている。
【0005】
手荒れを考慮したアルコール殺菌製剤は、既に提案されている。例えば、特許第2935339号公報(特許文献1)には、保湿剤として負荷電高分子であるヒアルロン酸又はその塩等を含有した外用消毒剤が提案されている。しかしながら、特許文献1に記載の外用消毒剤は、殺菌剤としてエタノールと共に、更にアルキルベンジルジメチルアンモニウム又はその塩を含有している。アルキルベンジルジメチルアンモニウム又はその塩は優れた殺菌効果を有するが、この物質は元々医療の現場で使用されているものであって、食品原料としては使用されていないものである。したがって、食品製造に従事するヒトが前記外用消毒剤を使用した場合、アルキルベンジルジメチルアンモニウム又はその塩が手に残存してしまいこの物質が食品に混入する恐れがあることから、食品の安全面で懸念される。
【0006】
【特許文献1】特許第2935339号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の目的は、食品製造に従事するヒトの手指等の皮膚用として、あるいは食品製造の機械・器具用として、殺菌効果に優れ、手荒れし難く、しかも食品に混入したとしても問題とならない安全性に優れたアルコール殺菌製剤を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく食品原料で使用されている材料の組合わせについて鋭意研究を重ね本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1) 製剤全体に対し40〜70%のエタノールと、ヒアルロン酸又はその塩、及び炭素数8〜12の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセリドが含有されてなるアルコール殺菌製剤、
(2) ヒアルロン酸又はその塩が製剤全体に対し0.001〜1%含有されてなる(1)のアルコール殺菌製剤、
(3) 脂肪酸モノグリセリドが製剤全体に対し0.01〜1%含有されてなる(1)のアルコール殺菌製剤、である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明を説明する。なお、本発明において特に限定していない場合は、「%」は「質量%」、「部」は「質量部」を意味する。
本発明のアルコール殺菌剤で使用するエタノールは、当該製剤の殺菌効果及び保存安定性によりその含有量が製剤全体に対し40〜70%、好ましくは45〜65%である。前記範囲より含有量が少ないと殺菌効果が著しく低下し好ましくない。一方、前記範囲より含有量が多いと皮膚の油分が脱脂されやすい傾向となるばかりでなく、本発明で使用するヒアルロン酸又はその塩がその含有量によっては保存中に沈殿を生じる場合があり好ましくない。更に、エタノールの含有量が多くなると、エタノールは引火性物質であることから、その取扱いにも注意する必要があり好ましくない。
【0010】
本発明は、前記エタノールの他にヒアルロン酸又はその塩、及び炭素数8〜12の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセリドを含有することを特徴とする。ヒアルロン酸は、グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンの2糖を反復構成単位とする極めて高い保水力を有する多糖類であり、ヒアルロン酸の塩としては、食品として許容される塩であればよく、例えば、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、食味の点でナトリウムが好ましい。ヒアルロン酸又はその塩は、皮膚(特に真皮)の弾力性や柔軟性を担う重要な物質で、以前から化粧料の保湿剤として使用されている。また、近年、ヒアルロン酸又はその塩を経口摂取した場合、肌の状態を改善することが判り健康食品の原料としても使用されるようになり、ヒアルロン酸又はその塩は食品に混入しても問題ない安全な物質である。
【0011】
本発明のアルコール殺菌製剤は、このヒアルロン酸又はその塩を含有させたものであるが、ヒアルロン酸又はその塩を含有させることにより、本発明のアルコール殺菌製剤を頻繁に使用したとしても、手荒れし難く、また後述で示しているとおりアルコール殺菌製剤が蒸散し難いことから塗布部に製剤が留まり易く、その結果、殺菌効果に優れている。ヒアルロン酸又はその塩の含有量は、前述した手荒れ防止及び製剤の蒸発防止に加え、ヒアルロン酸又はその塩が本製剤の高濃度エタノール中では保存中に沈殿し易いことから、これらを考慮し、製剤全体に対し0.001〜1%が好ましく、0.05〜0.5%がより好ましい。前記範囲より少ないと手荒れを防止し難く、また塗布部から製剤が蒸散し易いことから優れた殺菌効果を有する製剤が得られ難い傾向にあり、一方、前記範囲より多いと保存中にヒアルロン酸又はその塩が沈殿し易く安定な製剤が得られ難い傾向にあるからである。
【0012】
本発明のアルコール殺菌製剤は、前記ヒアルロン酸又はその塩に加え脂肪酸モノグリセリドを含有する。また、本発明の脂肪酸モノグリセリドは、特定の脂肪酸残基、つまり炭素数8〜12の脂肪酸残基を有するものを用いることが肝要である。炭素数8〜12の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセリドを含有させることにより、本製剤の殺菌効果が増すばかりでなく、脂肪酸モノグリセリドは親油性であることから皮膚に対しエモリエント効果を有し手荒れ防止に優れた製剤が得られる。また、脂肪酸モノグリセリドは、食品用の乳化剤等として広く利用されており、食品に混入したとしても問題とならない。炭素数8〜12の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセリドは具体的には、例えば、炭素数8個の脂肪酸残基を有するカプリル酸モノグリセリド、炭素数10個の脂肪酸残基を有するカプリン酸モノグリセリド、炭素数12個の脂肪酸残基を有するラウリン酸モノグリセリド等が挙げられるが、これらの混合物を用いてもよい。
【0013】
脂肪酸モノグリセリドの含有量は、殺菌効果、手荒れ防止及び使用感を考慮し、0.01〜1%が好ましく、0.05〜1%がより好ましい。前記範囲より少ないと殺菌効果及び手荒れ防止に優れた製剤が得られ難い傾向にあり、一方、前記範囲より多くしたとしても含有量に応じ殺菌効果及び手荒れ防止効果が期待するほど増加し難い傾向にあり経済的でなく、使用感がべとつく傾向となるからである。
【0014】
本発明のアルコール殺菌製剤の製造方法は、透明に溶解した状態となるように製すればよく、その製造方法を限定するものではないが、ヒアルロン酸又はその塩がエタノールに沈殿し易いことから、ヒアルロン酸又はその塩を水に溶解させたヒアルロン酸水溶液、脂肪酸モノグリセリドをエタノールに溶解した脂肪酸モノグリセドのエタノール溶液をそれぞれ調製し、前記ヒアルロン酸水溶液を撹拌させながら徐々に前記エタノール溶液を添加して製することが好ましい。また、本製剤には、上述した成分以外に本発明の効果を損なわない範囲で静菌剤、静菌効果を有する物質、増粘剤、保湿剤、その他の賦形剤等を適宜選択し含有させてもよい。
【0015】
【実施例】
次に、本発明を実施例及び試験例に基づき、さらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0016】
[実施例1]
精製水49.28部にヒアルロン酸ナトリウム(キユーピー(株)製、商品名「ヒアルロンサンHA−F」)0.02部及びグリセリン0.5部を溶解しヒアルロン酸水溶液を調製した。エタノール50.0部にカプリン酸モノグリセリド(炭素数10の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセド:理研ビタミン(株)製、商品名「ポエムM−200」)0.2部を溶解し脂肪酸モノグリセリドのエタノール溶液を調製した。前記ヒアルロン酸水溶液を撹拌させながら前記エタノール溶液を徐々に添加し本発明のアルコール殺菌製剤を製した。
【0017】
得られたアルコール殺菌製剤は、食品製造に従事するヒトの手等の皮膚用として、あるいは食品製造の機械・器具用として、殺菌効果に優れ、頻繁に使用しても手荒れし難く、しかも食品に混入したとしても問題とならない安全性に優れた製剤であった。
【0018】
[実施例2及び3]
実施例1において、原料として使用したカプリン酸モノグリセリドをカプリル酸モノグリセリド(炭素数8の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセド:理研ビタミン(株)製、商品名「ポエムM−100」)あるいはラウリン酸モノグリセリド(炭素数12の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセド:理研ビタミン(株)製、商品名「ポエムM−300」)に置き換えた以外は同様な方法でそれぞれアルコール殺菌製剤(実施例2:カプリル酸モノグリセリド含有製剤、実施例3:ラウリン酸モノグリセリド含有製剤)を製した。
【0019】
実施例2又は3で得られたそれぞれアルコール殺菌製剤は、実施例1で得られた製剤と同様に、食品製造に従事するヒトの手指等の皮膚用として、あるいは食品製造の機械・器具用として、殺菌効果に優れ、頻繁に使用しても手荒れし難く、しかも食品に混入したとしても問題とならない安全性に優れた製剤であった。
【0020】
[比較例1]
精製水50部とエタノール50部を混合しアルコール殺菌製剤を製した。
【0021】
得られたアルコール殺菌製剤は、食品に混入したとしても問題とならない安全性に優れた製剤ではあるが、食品製造に従事するヒトの手指等の皮膚、あるいは食品製造の機械・器具に使用した場合、殺菌効果に優れているとは言い難く、また頻繁に使用すると手荒れを生じた。
【0022】
[比較例2]
精製水49.48部にヒアルロン酸ナトリウム(キユーピー(株)製、商品名「ヒアルロンサンHA−F」)0.02部及びグリセリン0.5部を溶解しヒアルロン酸水溶液を調製した。前記ヒアルロン酸水溶液を撹拌しながらエタノール50.0部を徐々に添加しアルコール殺菌製剤を製した。
【0023】
得られたアルコール殺菌製剤は、食品に混入したとしても問題とならない安全性に優れた製剤ではあるが、食品製造に従事するヒトの手指等の皮膚、あるいは食品製造の機械・器具に使用した場合、殺菌効果及び手荒れ防止に優れているとは言い難いものであった。
【0024】
[比較例3]
精製水49.3部にグリセリン0.5部を溶解しグリセリン水溶液を調製した。エタノール50.0部にカプリン酸モノグリセリド(炭素数10の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセド:理研ビタミン(株)製、商品名「ポエムM−200」)0.2部を溶解し脂肪酸モノグリセリドのエタノール溶液を調製した。前記グリセリン水溶液を撹拌させながら前記エタノール溶液を徐々に添加しアルコール殺菌製剤を製した。
【0025】
得られたアルコール殺菌製剤は、食品に混入したとしても問題とならない安全性に優れた製剤ではあり、食品製造に従事するヒトの手指等の皮膚に使用した場合、ある程度手荒れ防止に優れているものの、殺菌効果に優れているとは言い難いものであった。
【0026】
[試験例1]
実施例1、並びに比較例1乃至3で得られたそれぞれのアルコール殺菌製剤の蒸散防止効果を調べるため、次のような試験を行なった。つまり、ビニール袋に38℃のお湯1.5l(リットル)を入れ、その上にアルミ製のシャーレ型の蒸発皿(直径75mm)を置き、前記蒸発皿に各アルコール殺菌製剤を1ml(ミリリットル)を入れ、30秒毎に2分間連続的に質量を測定し、各測定時における蒸発量を算出した。結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
表1より、ヒアルロン酸ナトリウムを含有した実施例1及び比較例2のアルコール殺菌製剤は、蒸散し難いことが理解される。
【0029】
[試験例2]
実施例1及び比較例1で得られたそれぞれのアルコール殺菌製剤を用い殺菌効果の強さを次のような試験により比較した。つまり、それぞれのアルコール殺菌製剤をエタノール濃度が20%となるように滅菌水で希釈し検体とした。滅菌済みの試験管に黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の菌液0.1mlを採取し、次に前記検体を0.9ml添加し混合した。正確に10分間接触後、滅菌生理食塩水を9.0ml添加して希釈し試料原液とした。この試料原液を滅菌生理食塩水で適宜希釈し、標準寒天培地(栄研化学(株)製、商品名「パールコア標準寒天培地」)による混釈平板培養(30℃×48時間)を行いコロニーの数をカウントし細菌数を求めた。結果を表2に示す。
【0030】
【表2】
【0031】
製剤全体に対し40〜70%のエタノール、ヒアルロン酸又はその塩、及び炭素数8〜12の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセリドを含有した実施例1のアルコール殺菌製剤は殺菌効果に優れていることが理解される。
【0032】
[試験例3]
実施例1及び市販品のアルコール殺菌製剤を用い殺菌効果の強さを試験例2の方法により比較した。結果を表3に示す。なお、試験例2では黄色ブドウ球菌を用いたが、本試験では大腸菌(Escherichia coli)を用いた。また、市販品は、キユーピー醸造(株)製、商品名「ニューエグスター」を用い、その配合は下記のとおりである。
【0033】
「ニューエグスター」の配合
エタノール 67.89%
醸造酢 0.11%
乳酸 0.01%
精製水 31.99%
【0034】
【表3】
【0035】
試験例2の結果と同様、製剤全体に対し40〜70%のエタノール、ヒアルロン酸又はその塩、及び炭素数8〜12の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセリドを含有した実施例1のアルコール殺菌製剤は殺菌効果に優れていることが理解される。
【0036】
[試験例4]
実施例1、並びに比較例1乃至3で得られたそれぞれのアルコール殺菌製剤を用い殺菌効果の強さを次のような試験により比較した。つまり、脱脂綿をそれぞれのアルコール殺菌製剤に浸漬し、アルコール殺菌製剤をしみ込ませた脱脂綿を準備した。被験者の右の掌を直接、標準寒天培地(栄研化学(株)製、商品名「パールコア標準寒天培地」)に10秒間接触した後、30℃で48時間培養を行いコロニーの数をカウントし掌の常在菌の菌数を求めた。一方、当該被験者の左手を前記脱脂綿で30秒間よく拭いて除菌し1分間風乾した後、この除菌した左の掌を標準寒天培地に10秒間接触し、30℃で48時間培養を行いコロニーの数をカウントし除菌後の掌の菌数を求めた。結果を表4に示す。なお、表中の「多数」とは、常在菌が多いためにコロニー同士が重なってしまいカウントできなかったことを意味する。
【0037】
【表4】
【0038】
表4より、含水アルコールからなる比較例1のアルコール殺菌製剤より、さらにヒアルロン酸又はその塩を含有した比較例2のアルコール殺菌製剤、あるいは炭素数8〜12の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセリドを含有した比較例3のアルコール殺菌製剤のほうが殺菌効果が増強されているが、完全に除菌されておらず十分な殺菌効果を有するとは言い難いものであった。これに対し、ヒアルロン酸又はその塩と、炭素数8〜12の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセリドとの両方を含有した実施例1のアルコール殺菌製剤は完全に除菌され殺菌効果が優れていることが理解される。
【0039】
[試験例5]
実施例1、並びに比較例1乃至3で得られたそれぞれのアルコール殺菌製剤を用い手荒れ防止に関し次のような試験により比較した。つまり、食品製造に従事するヒトを被験者10人を1群として4群に分け、各群に各アルコール殺菌製剤を1ヶ月間使用させ、手が荒れたか否か評価させた。結果を表5に示す。
【0040】
【表5】
【0041】
表5より、ヒアルロン酸又はその塩、あるいは炭素数8〜12の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセリドを含有させることにより手荒れし難い製剤となるが、ヒアルロン酸又はその塩と、炭素数8〜12の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセリドとの両方を含有した実施例1のアルコール殺菌製剤は更に手荒れし難く好ましいことが理解される。
【0042】
【発明の効果】
以上述べたとおり、本発明のアルコール殺菌製剤は、製剤全体に対し40〜70%のエタノールに加え、食品原料と使用されているヒアルロン酸又はその塩、及び炭素数8〜12の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセリドとを含有していることから、食品製造に従事するヒトの手指等の皮膚用として、あるいは食品製造の機械・器具用として、殺菌効果に優れ、手荒れし難く、しかも食品に混入したとしても問題とならない安全性に優れたアルコール殺菌製剤が得られる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品製造に従事するヒトの手指等の皮膚用として、あるいは食品製造の機械・器具用のアルコール殺菌製剤に関し、詳しくは、エタノール、ヒアルロン酸又はその塩、及び炭素数8〜12の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセリドを含有した、殺菌効果に優れ、手荒れし難く、しかも食品に混入したとしても問題とならない安全性に優れたアルコール殺菌製剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
食品は、種々の栄養成分を含有した栄養価に優れたものであることから、細菌やカビが混入すると、食品の腐敗、変敗を招きやすく食品の保存性を損なう。したがって、食品の保存性を向上されるために、食品に加熱処理を施したり、加熱処理を施せない食品や食材は次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、オゾン等で処理することにより細菌類を直接、死滅させる方法、あるいは貯蔵温度、水分活性又はpH等を低くしたり、リゾチーム、プロタミン、ポリリジン、グリシン、酢酸ソーダ、クエン酸、乳酸、茶抽出物、トウガラシ抽出物、ホップ抽出物、ローズマリー抽出物、キトサン等の静菌剤あるいは静菌効果を有する物質を添加することにより細菌類の繁殖を抑える方法等が採られている。
【0003】
食品の腐敗、変敗の原因となる細菌やカビは、食品の原料として用いている食材に元々付着している細菌類に由来することが多いが、当該食品製造に従事するヒトの手等の皮膚に存在している常在菌や、食品製造用の機械・器具の表面に存在する落下菌等も食品の腐敗、変敗の原因となる場合がある。したがって、食品製造に従事するヒトは、食品の加工所に入る前にアルコール殺菌製剤で手指を殺菌することが一般的に行われ、一方、食品製造の機械・器具においても、その外側部分にアルコール殺菌製剤を塗布し、細菌による汚染を防止していた。
【0004】
しかしながら、殺菌の目的で使用されているアルコール殺菌製剤としては、単に水にアルコールを約70%と高濃度含有させた含水アルコールが広く使用されているが、アルコール(エタノール)は手表面の油分を脱脂する作用があるため、前記含水アルコールを手指の殺菌として頻繁に使用すると手が脱脂され、遂には手が荒れてしまうという問題があった。また、前記含水アルコールでは、殺菌効果が不十分な場合があり、より強力な殺菌効果を有するものが望まれている。
【0005】
手荒れを考慮したアルコール殺菌製剤は、既に提案されている。例えば、特許第2935339号公報(特許文献1)には、保湿剤として負荷電高分子であるヒアルロン酸又はその塩等を含有した外用消毒剤が提案されている。しかしながら、特許文献1に記載の外用消毒剤は、殺菌剤としてエタノールと共に、更にアルキルベンジルジメチルアンモニウム又はその塩を含有している。アルキルベンジルジメチルアンモニウム又はその塩は優れた殺菌効果を有するが、この物質は元々医療の現場で使用されているものであって、食品原料としては使用されていないものである。したがって、食品製造に従事するヒトが前記外用消毒剤を使用した場合、アルキルベンジルジメチルアンモニウム又はその塩が手に残存してしまいこの物質が食品に混入する恐れがあることから、食品の安全面で懸念される。
【0006】
【特許文献1】特許第2935339号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の目的は、食品製造に従事するヒトの手指等の皮膚用として、あるいは食品製造の機械・器具用として、殺菌効果に優れ、手荒れし難く、しかも食品に混入したとしても問題とならない安全性に優れたアルコール殺菌製剤を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく食品原料で使用されている材料の組合わせについて鋭意研究を重ね本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1) 製剤全体に対し40〜70%のエタノールと、ヒアルロン酸又はその塩、及び炭素数8〜12の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセリドが含有されてなるアルコール殺菌製剤、
(2) ヒアルロン酸又はその塩が製剤全体に対し0.001〜1%含有されてなる(1)のアルコール殺菌製剤、
(3) 脂肪酸モノグリセリドが製剤全体に対し0.01〜1%含有されてなる(1)のアルコール殺菌製剤、である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明を説明する。なお、本発明において特に限定していない場合は、「%」は「質量%」、「部」は「質量部」を意味する。
本発明のアルコール殺菌剤で使用するエタノールは、当該製剤の殺菌効果及び保存安定性によりその含有量が製剤全体に対し40〜70%、好ましくは45〜65%である。前記範囲より含有量が少ないと殺菌効果が著しく低下し好ましくない。一方、前記範囲より含有量が多いと皮膚の油分が脱脂されやすい傾向となるばかりでなく、本発明で使用するヒアルロン酸又はその塩がその含有量によっては保存中に沈殿を生じる場合があり好ましくない。更に、エタノールの含有量が多くなると、エタノールは引火性物質であることから、その取扱いにも注意する必要があり好ましくない。
【0010】
本発明は、前記エタノールの他にヒアルロン酸又はその塩、及び炭素数8〜12の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセリドを含有することを特徴とする。ヒアルロン酸は、グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンの2糖を反復構成単位とする極めて高い保水力を有する多糖類であり、ヒアルロン酸の塩としては、食品として許容される塩であればよく、例えば、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、食味の点でナトリウムが好ましい。ヒアルロン酸又はその塩は、皮膚(特に真皮)の弾力性や柔軟性を担う重要な物質で、以前から化粧料の保湿剤として使用されている。また、近年、ヒアルロン酸又はその塩を経口摂取した場合、肌の状態を改善することが判り健康食品の原料としても使用されるようになり、ヒアルロン酸又はその塩は食品に混入しても問題ない安全な物質である。
【0011】
本発明のアルコール殺菌製剤は、このヒアルロン酸又はその塩を含有させたものであるが、ヒアルロン酸又はその塩を含有させることにより、本発明のアルコール殺菌製剤を頻繁に使用したとしても、手荒れし難く、また後述で示しているとおりアルコール殺菌製剤が蒸散し難いことから塗布部に製剤が留まり易く、その結果、殺菌効果に優れている。ヒアルロン酸又はその塩の含有量は、前述した手荒れ防止及び製剤の蒸発防止に加え、ヒアルロン酸又はその塩が本製剤の高濃度エタノール中では保存中に沈殿し易いことから、これらを考慮し、製剤全体に対し0.001〜1%が好ましく、0.05〜0.5%がより好ましい。前記範囲より少ないと手荒れを防止し難く、また塗布部から製剤が蒸散し易いことから優れた殺菌効果を有する製剤が得られ難い傾向にあり、一方、前記範囲より多いと保存中にヒアルロン酸又はその塩が沈殿し易く安定な製剤が得られ難い傾向にあるからである。
【0012】
本発明のアルコール殺菌製剤は、前記ヒアルロン酸又はその塩に加え脂肪酸モノグリセリドを含有する。また、本発明の脂肪酸モノグリセリドは、特定の脂肪酸残基、つまり炭素数8〜12の脂肪酸残基を有するものを用いることが肝要である。炭素数8〜12の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセリドを含有させることにより、本製剤の殺菌効果が増すばかりでなく、脂肪酸モノグリセリドは親油性であることから皮膚に対しエモリエント効果を有し手荒れ防止に優れた製剤が得られる。また、脂肪酸モノグリセリドは、食品用の乳化剤等として広く利用されており、食品に混入したとしても問題とならない。炭素数8〜12の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセリドは具体的には、例えば、炭素数8個の脂肪酸残基を有するカプリル酸モノグリセリド、炭素数10個の脂肪酸残基を有するカプリン酸モノグリセリド、炭素数12個の脂肪酸残基を有するラウリン酸モノグリセリド等が挙げられるが、これらの混合物を用いてもよい。
【0013】
脂肪酸モノグリセリドの含有量は、殺菌効果、手荒れ防止及び使用感を考慮し、0.01〜1%が好ましく、0.05〜1%がより好ましい。前記範囲より少ないと殺菌効果及び手荒れ防止に優れた製剤が得られ難い傾向にあり、一方、前記範囲より多くしたとしても含有量に応じ殺菌効果及び手荒れ防止効果が期待するほど増加し難い傾向にあり経済的でなく、使用感がべとつく傾向となるからである。
【0014】
本発明のアルコール殺菌製剤の製造方法は、透明に溶解した状態となるように製すればよく、その製造方法を限定するものではないが、ヒアルロン酸又はその塩がエタノールに沈殿し易いことから、ヒアルロン酸又はその塩を水に溶解させたヒアルロン酸水溶液、脂肪酸モノグリセリドをエタノールに溶解した脂肪酸モノグリセドのエタノール溶液をそれぞれ調製し、前記ヒアルロン酸水溶液を撹拌させながら徐々に前記エタノール溶液を添加して製することが好ましい。また、本製剤には、上述した成分以外に本発明の効果を損なわない範囲で静菌剤、静菌効果を有する物質、増粘剤、保湿剤、その他の賦形剤等を適宜選択し含有させてもよい。
【0015】
【実施例】
次に、本発明を実施例及び試験例に基づき、さらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0016】
[実施例1]
精製水49.28部にヒアルロン酸ナトリウム(キユーピー(株)製、商品名「ヒアルロンサンHA−F」)0.02部及びグリセリン0.5部を溶解しヒアルロン酸水溶液を調製した。エタノール50.0部にカプリン酸モノグリセリド(炭素数10の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセド:理研ビタミン(株)製、商品名「ポエムM−200」)0.2部を溶解し脂肪酸モノグリセリドのエタノール溶液を調製した。前記ヒアルロン酸水溶液を撹拌させながら前記エタノール溶液を徐々に添加し本発明のアルコール殺菌製剤を製した。
【0017】
得られたアルコール殺菌製剤は、食品製造に従事するヒトの手等の皮膚用として、あるいは食品製造の機械・器具用として、殺菌効果に優れ、頻繁に使用しても手荒れし難く、しかも食品に混入したとしても問題とならない安全性に優れた製剤であった。
【0018】
[実施例2及び3]
実施例1において、原料として使用したカプリン酸モノグリセリドをカプリル酸モノグリセリド(炭素数8の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセド:理研ビタミン(株)製、商品名「ポエムM−100」)あるいはラウリン酸モノグリセリド(炭素数12の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセド:理研ビタミン(株)製、商品名「ポエムM−300」)に置き換えた以外は同様な方法でそれぞれアルコール殺菌製剤(実施例2:カプリル酸モノグリセリド含有製剤、実施例3:ラウリン酸モノグリセリド含有製剤)を製した。
【0019】
実施例2又は3で得られたそれぞれアルコール殺菌製剤は、実施例1で得られた製剤と同様に、食品製造に従事するヒトの手指等の皮膚用として、あるいは食品製造の機械・器具用として、殺菌効果に優れ、頻繁に使用しても手荒れし難く、しかも食品に混入したとしても問題とならない安全性に優れた製剤であった。
【0020】
[比較例1]
精製水50部とエタノール50部を混合しアルコール殺菌製剤を製した。
【0021】
得られたアルコール殺菌製剤は、食品に混入したとしても問題とならない安全性に優れた製剤ではあるが、食品製造に従事するヒトの手指等の皮膚、あるいは食品製造の機械・器具に使用した場合、殺菌効果に優れているとは言い難く、また頻繁に使用すると手荒れを生じた。
【0022】
[比較例2]
精製水49.48部にヒアルロン酸ナトリウム(キユーピー(株)製、商品名「ヒアルロンサンHA−F」)0.02部及びグリセリン0.5部を溶解しヒアルロン酸水溶液を調製した。前記ヒアルロン酸水溶液を撹拌しながらエタノール50.0部を徐々に添加しアルコール殺菌製剤を製した。
【0023】
得られたアルコール殺菌製剤は、食品に混入したとしても問題とならない安全性に優れた製剤ではあるが、食品製造に従事するヒトの手指等の皮膚、あるいは食品製造の機械・器具に使用した場合、殺菌効果及び手荒れ防止に優れているとは言い難いものであった。
【0024】
[比較例3]
精製水49.3部にグリセリン0.5部を溶解しグリセリン水溶液を調製した。エタノール50.0部にカプリン酸モノグリセリド(炭素数10の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセド:理研ビタミン(株)製、商品名「ポエムM−200」)0.2部を溶解し脂肪酸モノグリセリドのエタノール溶液を調製した。前記グリセリン水溶液を撹拌させながら前記エタノール溶液を徐々に添加しアルコール殺菌製剤を製した。
【0025】
得られたアルコール殺菌製剤は、食品に混入したとしても問題とならない安全性に優れた製剤ではあり、食品製造に従事するヒトの手指等の皮膚に使用した場合、ある程度手荒れ防止に優れているものの、殺菌効果に優れているとは言い難いものであった。
【0026】
[試験例1]
実施例1、並びに比較例1乃至3で得られたそれぞれのアルコール殺菌製剤の蒸散防止効果を調べるため、次のような試験を行なった。つまり、ビニール袋に38℃のお湯1.5l(リットル)を入れ、その上にアルミ製のシャーレ型の蒸発皿(直径75mm)を置き、前記蒸発皿に各アルコール殺菌製剤を1ml(ミリリットル)を入れ、30秒毎に2分間連続的に質量を測定し、各測定時における蒸発量を算出した。結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
表1より、ヒアルロン酸ナトリウムを含有した実施例1及び比較例2のアルコール殺菌製剤は、蒸散し難いことが理解される。
【0029】
[試験例2]
実施例1及び比較例1で得られたそれぞれのアルコール殺菌製剤を用い殺菌効果の強さを次のような試験により比較した。つまり、それぞれのアルコール殺菌製剤をエタノール濃度が20%となるように滅菌水で希釈し検体とした。滅菌済みの試験管に黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の菌液0.1mlを採取し、次に前記検体を0.9ml添加し混合した。正確に10分間接触後、滅菌生理食塩水を9.0ml添加して希釈し試料原液とした。この試料原液を滅菌生理食塩水で適宜希釈し、標準寒天培地(栄研化学(株)製、商品名「パールコア標準寒天培地」)による混釈平板培養(30℃×48時間)を行いコロニーの数をカウントし細菌数を求めた。結果を表2に示す。
【0030】
【表2】
【0031】
製剤全体に対し40〜70%のエタノール、ヒアルロン酸又はその塩、及び炭素数8〜12の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセリドを含有した実施例1のアルコール殺菌製剤は殺菌効果に優れていることが理解される。
【0032】
[試験例3]
実施例1及び市販品のアルコール殺菌製剤を用い殺菌効果の強さを試験例2の方法により比較した。結果を表3に示す。なお、試験例2では黄色ブドウ球菌を用いたが、本試験では大腸菌(Escherichia coli)を用いた。また、市販品は、キユーピー醸造(株)製、商品名「ニューエグスター」を用い、その配合は下記のとおりである。
【0033】
「ニューエグスター」の配合
エタノール 67.89%
醸造酢 0.11%
乳酸 0.01%
精製水 31.99%
【0034】
【表3】
【0035】
試験例2の結果と同様、製剤全体に対し40〜70%のエタノール、ヒアルロン酸又はその塩、及び炭素数8〜12の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセリドを含有した実施例1のアルコール殺菌製剤は殺菌効果に優れていることが理解される。
【0036】
[試験例4]
実施例1、並びに比較例1乃至3で得られたそれぞれのアルコール殺菌製剤を用い殺菌効果の強さを次のような試験により比較した。つまり、脱脂綿をそれぞれのアルコール殺菌製剤に浸漬し、アルコール殺菌製剤をしみ込ませた脱脂綿を準備した。被験者の右の掌を直接、標準寒天培地(栄研化学(株)製、商品名「パールコア標準寒天培地」)に10秒間接触した後、30℃で48時間培養を行いコロニーの数をカウントし掌の常在菌の菌数を求めた。一方、当該被験者の左手を前記脱脂綿で30秒間よく拭いて除菌し1分間風乾した後、この除菌した左の掌を標準寒天培地に10秒間接触し、30℃で48時間培養を行いコロニーの数をカウントし除菌後の掌の菌数を求めた。結果を表4に示す。なお、表中の「多数」とは、常在菌が多いためにコロニー同士が重なってしまいカウントできなかったことを意味する。
【0037】
【表4】
【0038】
表4より、含水アルコールからなる比較例1のアルコール殺菌製剤より、さらにヒアルロン酸又はその塩を含有した比較例2のアルコール殺菌製剤、あるいは炭素数8〜12の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセリドを含有した比較例3のアルコール殺菌製剤のほうが殺菌効果が増強されているが、完全に除菌されておらず十分な殺菌効果を有するとは言い難いものであった。これに対し、ヒアルロン酸又はその塩と、炭素数8〜12の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセリドとの両方を含有した実施例1のアルコール殺菌製剤は完全に除菌され殺菌効果が優れていることが理解される。
【0039】
[試験例5]
実施例1、並びに比較例1乃至3で得られたそれぞれのアルコール殺菌製剤を用い手荒れ防止に関し次のような試験により比較した。つまり、食品製造に従事するヒトを被験者10人を1群として4群に分け、各群に各アルコール殺菌製剤を1ヶ月間使用させ、手が荒れたか否か評価させた。結果を表5に示す。
【0040】
【表5】
【0041】
表5より、ヒアルロン酸又はその塩、あるいは炭素数8〜12の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセリドを含有させることにより手荒れし難い製剤となるが、ヒアルロン酸又はその塩と、炭素数8〜12の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセリドとの両方を含有した実施例1のアルコール殺菌製剤は更に手荒れし難く好ましいことが理解される。
【0042】
【発明の効果】
以上述べたとおり、本発明のアルコール殺菌製剤は、製剤全体に対し40〜70%のエタノールに加え、食品原料と使用されているヒアルロン酸又はその塩、及び炭素数8〜12の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセリドとを含有していることから、食品製造に従事するヒトの手指等の皮膚用として、あるいは食品製造の機械・器具用として、殺菌効果に優れ、手荒れし難く、しかも食品に混入したとしても問題とならない安全性に優れたアルコール殺菌製剤が得られる。
Claims (3)
- 製剤全体に対し40〜70%のエタノールと、ヒアルロン酸又はその塩、及び炭素数8〜12の脂肪酸残基を有する脂肪酸モノグリセリドが含有されてなることを特徴とするアルコール殺菌製剤。
- ヒアルロン酸又はその塩が製剤全体に対し0.001〜1%含有されてなる請求項1記載のアルコール殺菌製剤。
- 脂肪酸モノグリセリドが製剤全体に対し0.01〜1%含有されてなる請求項1記載のアルコール殺菌製剤。
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