JP2004268372A - 熱収縮性ポリ乳酸系積層フィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリ乳酸系重合体、脂肪族ポリエステル樹脂及び可塑剤からなる中心層の外側に、ポリ乳酸を主成分として含有する外側層を積層してなる1軸又は2軸方向に延伸された熱収縮性ポリ乳酸系積層フィルムである。中心層を構成する脂肪族ポリエステル樹脂は、Tgが0℃以下で、含有量が10〜25重量%であり、可塑剤は、その溶解パラメータ(SP値)が、ポリ乳酸系重合体のSP値と、脂肪族ポリエステルのSP値の中間値よりも脂肪族ポリエステルのSP値寄りであり、1〜15質量部含有される。外側層は、ポリ乳酸系重合体を90重量%以上含有する。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリ乳酸系重合体を主たる材料とする熱収縮性フィルムに関し、詳しくは、生分解性、透明性が良好で且つ耐破断性にも優れていて、収縮包装、収縮結束包装、収縮ラベル等の用途に好適な熱収縮性ポリ乳酸系フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
収縮包装や収縮結束包装、収縮ラベル等に利用される熱収縮性フィルムとして、ポリ塩化ビニル(PVC)、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)、ポリエステル系樹脂等を主たる材料とするものが産業界で広く利用され、消費されている。
しかし、これらの熱収縮性フィルムは、熱収縮性フィルムとしての特性には非常に優れているものの、使用後に自然環境下に棄却された場合、安定性が高いが故に分解されることなく自然界に残留し、景観を害する要因となったり、魚、野鳥その他の生物の生活環境を汚染したり、様々な環境問題を引き起こすことになる。
【0003】
そこで、これらの環境問題(ゴミ処理等を含む)を軽減するという観点から、土壌中において自然に加水分解が進行して土中に原形が残らず、最終的には微生物により無害な物質に分解される「生分解性重合体」が研究され、その一つとしてポリ乳酸が研究開発されている。
ポリ乳酸は、トウモロコシや砂糖キビなどの植物から得られる乳酸を原料とする天然物由来の生分解性重合体であるばかりか、透明性にも優れているため、生分解性重合体の中でも特にフィルム等の用途において特に注目されている重合体である。
【0004】
ポリ乳酸からなる熱収縮フィルムについては、従来、特許文献1(特開平5−212790号公報)において、ポリ乳酸を主成分とする熱可塑性ポリマー組成物からなるラベル用収縮フィルムなどが開示されている。
【0005】
ところで、ポリ乳酸は、素材本来が有する脆性のため、これをそのままシート状やフィルム状に成形した場合、充分な強度が得られず、実用に供し難いという課題を抱えていた。特に一軸延伸して一軸収縮性フィルムをポリ乳酸から製造する場合、延伸しない方向の脆性は延伸によって改善されないため、その方向に衝撃を受けた場合裂け易いという課題があった。
【0006】
その改良方法として、ポリ乳酸系重合体に脂肪族ポリエステルをブレンドする方法が知られている。例えば、特許文献2(特開平9−169896号公報)には、ポリ乳酸系重合体に脂肪族ポリエステルをブレンドすることが開示され、特許文献3(特開平8−300481号公報)には、ポリ乳酸系重合体にポリカプロラクトンをブレンドすることが開示され、特許文献4(特開2001−11214号公報)には、ポリ乳酸系重合体/脂肪族ポリエステルのブレンド系において、ポリ乳酸系重合体のL−乳酸とD−乳酸の組成比を調整することが提案されている。
【0007】
更に、特許文献5(特開2001−47583号公報)には、このようなブレンド系において透明性を確保できるように、ポリ乳酸系重合体/脂肪族ポリエステルのブレンド系からなる層の外側にポリ乳酸系重合体からなる外側層を積層してなる生分解性熱収縮積層フィルムが開示されている。
【0008】
【特許文献1】
特開平5−212790号公報
【特許文献2】
特開平9−169896号公報
【特許文献3】
特開平8−300481号公報
【特許文献4】
特開2001−11214号公報
【特許文献5】
特開2001−47583号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、ポリ乳酸系重合体の脆性を改善するため、脂肪族ポリエステルをブレンドすることが行われているが、延伸フィルムの場合、延伸時の変形挙動がポリ乳酸系重合体と脂肪族ポリエステルとでは異なるので、延伸した際に表面荒れを起こしてヘーズが大幅に上昇して透明性が低下する。この上昇は、ポリ乳酸系重合体以外の成分の含有量が増えるに従って大きくなり、透明性が求められる用途には使用が困難となる。
【0010】
他方、最近のラベル印刷やラベリング工程では高速化が進められており、この種の用途に用いるラベル用収縮フィルムには、このような高速化に充分耐えられるだけの耐破断性が求められている。
【0011】
本発明は、ポリ乳酸系重合体を主たる材料とする生分解性を備えた熱収縮性フィルムにおいて、透明性を維持しつつ耐破断性に優れた熱収縮性ポリ乳酸系フィルムを提供せんとするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明が提案する熱収縮性ポリ乳酸系フィルムは、ポリ乳酸系重合体と、ポリ乳酸系重合体以外の脂肪族ポリエステル樹脂と、可塑剤とを含有する中心層を有し、その外側に、ポリ乳酸系重合体を主成分として含有する外側層を積層してなる構成を備えた熱収縮性ポリ乳酸系積層フィルムである。
【0013】
本発明の熱収縮性ポリ乳酸系積層フィルムにおいて、中心層を構成するポリ乳酸系重合体は、D乳酸とL乳酸の構成割合が98:2〜85:15又は2:98〜15:85であるのが好ましい。
【0014】
本発明の熱収縮性ポリ乳酸系積層フィルムにおいて、中心層を構成する脂肪族ポリエステル樹脂は、0℃以下にガラス転移温度が少なくとも一つあり、中心層におけるその含有量が10〜25重量%以下であるのが好ましい。これによって、所望範囲の透明性及び耐破断性、具体的には、0℃環境下の引張試験(JISK 7127準拠)において、主収縮方向に垂直な方向における伸び率が100%以上であり、かつ、ヘーズ値(JIS K 7105)が10%以下であるフィルムを得ることができるが、脂肪族ポリエステル樹脂の含有量をこのように低下させても耐破断性の向上を実現できるのは所定の可塑剤を配合するからである。
【0015】
本発明の熱収縮性ポリ乳酸系積層フィルムにおいて、中心層を構成する可塑剤は、その溶解パラメータ(SP値)が、ポリ乳酸系重合体のSP値と、脂肪族ポリエステル(ポリ乳酸除く)のSP値の中間値よりも脂肪族ポリエステルのSP値寄り、即ち、通常はポリ乳酸系重合体のSP値の方が脂肪族ポリエステル(ポリ乳酸除く)のSP値よりも高いから、これらの値の中間値よりも低い値であるのが好ましく、中でも特に脂肪族ポリエステル(ポリ乳酸除く)のSP値よりも低い値であるのがより好ましい。
そして、この可塑剤は、中心層におけるポリ乳酸系重合体及び脂肪族ポリエステル樹脂の合計量100質量部に対して1〜15質量部含有されることが好ましい。
【0016】
また、上記の熱収縮性ポリ乳酸系積層フィルムにおいて、外側層は、ポリ乳酸系重合体を90重量%以上含有するのが好ましく、その厚さは、中心層表面の表面荒れの凹凸の平均高さよりも厚くなるように形成するのが好ましい。
【0017】
このような構成を備えた熱収縮性ポリ乳酸系積層フィルムは、1軸又は2軸方向に延伸されるフィルムの構成として適している。特に1軸延伸熱収縮性フィルム、或いは、主収縮方向(TD、引取り方向に垂直な方向、或いは横方向とも言う。)の延伸倍率が3倍以上であり、主収縮方向に垂直な方向(MD、引取り方向、或いは縦方向とも言う。)の延伸倍率が1.5倍以下、好ましくは1.3倍以下、より好ましくは1.2倍以下に抑えられた2軸延伸熱収縮性フィルムの構成として特に好ましい。一般的に延伸されない方向及び延伸倍率の低い方向の脆性は改善され難いが、本発明であれば、この方向の耐破断性をも充分に改良することができる。
【0018】
「ポリ乳酸を主成分とする」とは、外側層の主な機能を決定する成分の一つがポリ乳酸であり、ポリ乳酸の機能を阻害しない範囲で他の成分を含んでいてもよいという意を包含するものであり、一般的には外側層中のポリ乳酸の含有割合は少なくとも50%以上、好ましくは80%以上である。
また、本発明の溶解パラメータ(SP値)とは、Fedors法[Polym.Eng.Sci.14(2)152,(1974)]によって算出される値である。
なお、本発明における数値範囲の上限値及び下限値は、本発明が特定する数値範囲から僅かに外れる場合であっても、当該数値範囲内と同様の作用効果を備えている限り本発明の均等範囲に含める意を包含するものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0020】
本発明の一例としての熱収縮性ポリ乳酸系積層フィルムは、ポリ乳酸系重合体と、ポリ乳酸系重合体以外の脂肪族ポリエステル樹脂と、可塑剤とを含有する中心層の両外側に、ポリ乳酸系重合体を主成分として含有する外側層を積層して構成することができる。
【0021】
(ポリ乳酸系重合体)
本発明の中心層及び外側層を構成するポリ乳酸系重合体について説明する。
【0022】
本発明のポリ乳酸系重合体は、D−乳酸またはL−乳酸の単独重合体またはそれらの共重合体をいう。即ち、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、或いは、構造単位がL−乳酸及びD−乳酸であるポリ(DL−乳酸)、或いはこれらの二種類以上の混合体或いは共重合体を包含する。
【0023】
ポリ乳酸系重合体のDL構成比は、D−乳酸とL−乳酸の構成割合が98:2〜85:15又は2:98〜15:85が好ましい。D−乳酸とL−乳酸の構成割合が100:0若しくは0:100であるポリ乳酸系重合体は、非常に高い結晶性樹脂となって融点も高く、耐熱性、機械的物性に優れる傾向となる。しかし、熱収縮性フィルムとして使用する場合には結晶性が非常に高いと、延伸時に延伸配向結晶化が進行してしまうため、熱収縮率を調整することが難しくなり、更には延伸条件において非結晶状態なフィルムを得ても収縮時の熱にて結晶化が進み収縮仕上がり性が低下してしまう。また、DL−乳酸の共重合体の場合、その光学異性体の割合が増えるに従って結晶性が低下することが知られている。よって、熱収縮性フィルムの材料としてポリ乳酸系重合体を使用する場合は、前述のDL構成比の範囲内で適度に結晶性を低下させることが好ましい。
なお、上記D体、L体を調整する目的で、D−乳酸とL−乳酸の構成割合が異なる2種類以上のポリ乳酸をブレンドすることも可能である。
【0024】
本発明のポリ乳酸系重合体は、上記いずれかの乳酸と、他のヒドロキシカルボン酸単位との共重合体であっても、また、脂肪族ジオールや脂肪族ジカルボン酸との共重合体であってもよい。
ポリ乳酸系重合体に共重合される上記の「他のヒドロキシ−カルボン酸単位」としては、乳酸の光学異性体(L−乳酸に対してはD−乳酸、D−乳酸に対してはL−乳酸)、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシn−酪酸、2−ヒドロキシ3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪族ヒドロキシ−カルボン酸やカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類などが挙げられる。
ポリ乳酸系重合体に共重合される上記「脂肪族ジオール」としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール,1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
また、ポリ乳酸系重合体に共重合される上記「脂肪族ジカルボン酸」としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸およびドデカン二酸などが挙げられる。
【0025】
さらに、必要に応じ、少量共重合成分としてテレフタル酸のような非脂肪族ジカルボン酸及び/又はビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のような非脂肪族ジオールを用いて共重合させてもよい。
また、分子量増大を目的として少量の鎖延長剤、例えばジイソシアネート化合物、エポキシ化合物、酸無水物などを共重合させることもできる。
【0026】
ポリ乳酸系重合体の重合法としては、縮重合法、開環重合法、その他の公知の重合法を採用することができる。例えば、縮重合法では、L−乳酸或いはD−乳酸或いはこれらの混合物を直接脱水縮重合して任意の組成を持ったポリ乳酸系重合体を得ることができる。また、開環重合法では、乳酸の環状二量体であるラクチドを、必要に応じて重合調整剤等を用いながら、所定の触媒の存在下で開環重合して任意の組成をもつポリ乳酸系重合体を得ることができる。この際、ラクチドには、L−乳酸の二量体であるL−ラクチド、D−乳酸の二量体であるD−ラクチド、或いはL−乳酸とD−乳酸からなるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより任意の組成及び結晶性を有するポリ乳酸系重合体を得ることができる。
【0027】
本発明に用いられるポリ乳酸系重合体の重量平均分子量の好ましい範囲は、5万から40万、より好ましくは10万から25万である。5万以上の分子量であれば好適な実用物性を発揮し、また、40万以下であれば溶融粘度が高過ぎることなく良好な成形加工性を発揮する。
なお、ポリ乳酸系重合体の代表的なものとしては、島津製作所製ラクティシリーズ、三井化学製レイシアシリーズ、カーギル・ダウ製Nature Worksシリーズなどが挙げられる。
【0028】
(脂肪族ポリエステル)
本発明の中心層を構成する脂肪族ポリエステルに関して説明する。
【0029】
本発明に使用される脂肪族ポリエステルとしては、ポリ乳酸系重合体を除く生分解性脂肪族ポリエステル、例えば、ポリ乳酸系重合体を除くポリヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを縮合して得られる脂肪族ポリエステル、環状ラクトン類を開環重合して得られる脂肪族ポリエステル、合成系脂肪族ポリエステル、菌体内で生合成される脂肪族ポリエステルなどを挙げることができる。
なお、本発明で用いる脂肪族ポリエステルは、重量平均分子量1万〜40万、好ましくは分子量5万〜30万、更に好ましくは10万〜30万のポリマーとしての脂肪族ポリエステルであり、可塑剤として使用される低分子量の脂肪族ポリエステルとは区別される。両者の違いは、配合する乳酸系樹脂のガラス転移温度(Tg)の低下の有無に現れる。
【0030】
ポリ乳酸系重合体以外の上記の「ポリヒドロキシカルボン酸」としては、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸の単独重合体や共重合体を挙げることができる。
【0031】
脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを縮合して得られる脂肪族ポリエステルとしては、次に説明する脂肪族ジオール及び脂肪族ジカルボン酸の中からそれぞれ1種類或いは2種類以上選んで縮合するか、或いは必要に応じてイソシアネート化合物等でジャンプアップして所望のポリマー(高分子)として得ることができる。
この際の「脂肪族ジオール」としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を代表的に挙げることができ、上記の「脂肪族ジカルボン酸」としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸およびドデカン二酸等を代表的に挙げることができる。
なお、適量の芳香族ジカルボン酸を共重合した芳香族脂肪族ポリエステルもこれらの範疇に含まれる。なお、芳香族脂肪族ポリエステルにおいて生分解性を発現させるためには芳香族の合間に脂肪族鎖が存在することが必要であり、この際の芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等を挙げることができる。
【0032】
環状ラクトン類を開環縮合した脂肪族ポリエステルとしては、環状モノマーであるε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等が代表的に挙げられ、これらから1種類又はそれ以上を選択して重合することにより得ることができる。
【0033】
合成系脂肪族ポリエステルとしては、環状酸無水物とオキシラン類、例えば、無水コハク酸とエチレンオキサイド、プロピオンオキサイド等との共重合体等を挙げることができる。
【0034】
菌体内で生合成される脂肪族ポリエステルとしては、アルカリゲネスユートロファスを始めとする菌体内でアセチルコエンチームA(アセチルCoA)により生合成される脂肪族ポリエステルなどを挙げることができる。この脂肪族ポリエステルは、主にポリ−β−ヒドロキシ酪酸(ポリ3HB)であるが、プラスチックとしての実用特性向上のために、吉草酸ユニット(HV)を共重合し、ポリ(3HB−CO−3HV)の共重合体にすることが工業的に有利である。一般的には、HV共重合比は0〜40%である。さらに長鎖のヒドロキシアルカノエートを共重合してもよい。
【0035】
本発明の外側層を構成する脂肪族ポリエステルは、耐破断性を付与することを担っているため、脂肪族ポリエステルのガラス転移温度(Tg)は、0℃以下に少なくとも一つあるのが好ましく、より好ましくは−20℃以下である。
脂肪族ポリエステルの融点(Tm)については特に限定しないが、融点が100℃以上の脂肪族ポリエステルを含ませることによって、主収縮方向に対して垂直な方向(MD、引取り方向、或いは縦方向とも言う。)の収縮を低減させることが可能となる。特にPETボトル用ラベルやガラス瓶用のラベルの様に縦方向の収縮を出来る限り抑えたい用途に有効である。その理由は、明確に判明しているわけではないが、脂肪族ポリエステルは収縮前フィルム中で結晶化しているため、ポリ乳酸系重合体が収縮する温度領域(60℃〜100℃の範囲)ではこの脂肪族ポリエステルは収縮時においても結晶状態を保つこととなり、その結果、柱のような役割を果たすことによって縦収縮を抑えているのではないかと考えることができる。
なお、本発明に用いる脂肪族ポリエステルは、ガラス転移温度が上記範囲に入っていれば、共重合体であっても構わない。例えば芳香族ジカルボン酸成分を含む芳香族脂肪族ポリエステルやカーボネート基を持つ脂肪族ポリエステルカーボネイト(例えば、14ブタンジオール/コハク酸重合体にカーボネート基を持つ構造など)など、生分解性を有する脂肪族ポリエステルであればよい。
【0036】
(可塑剤)
本発明の積層フィルムにおいては、ポリ乳酸系重合体と脂肪族ポリエステル(ポリ乳酸除く)とを主成分とする中心層に、特定の溶解パラメータ(SP値)を示す可塑剤を含ませることが重要である。
【0037】
本発明に用いる可塑剤は、その溶解パラメータ(SP値)が、ポリ乳酸系重合体のSP値と、脂肪族ポリエステル(ポリ乳酸除く)のSP値の中間値よりも脂肪族ポリエステルのSP値寄り、即ち通常(理論的にも)ポリ乳酸系重合体のSP値が脂肪族ポリエステル(ポリ乳酸除く)のSP値よりも高いから、その中間値よりも低い値であるのが好ましく、中でも、ポリ乳酸系重合体のSP値と脂肪族ポリエステル(ポリ乳酸除く)のSP値との間ではなく脂肪族ポリエステル(ポリ乳酸除く)のSP値を越えた範囲の値、即ち脂肪族ポリエステル(ポリ乳酸除く)のSP値よりも低い値であるのがより好ましい。
具体的に言えば、一般的にポリ乳酸系重合体のSP値は11.12(cal/cm3)1/2であり、脂肪族ポリエステルとしてポリカプロラクトンを用いる場合、そのSP値は10.18(cal/cm3)1/2であるから、可塑剤のSP値は、これらの中間値である10.65よりも低い値が好ましく、中でも10.18よりも低い値であることがより好ましい。
その他の脂肪族ポリエステル、例えばポリブチレンサクシネートのSP値は10.87であり、ポリブチレンサクシネート/アジペートのSP値はサクシネートとアジペートの比率により変化するが、ポリブチレンサクシネートのSP値10.87よりも低くなることを考慮すると、本発明に用いる可塑剤のSP値の範囲は、8.5〜9.5(cal/cm3)1/2であるのが好ましい。
SP値の範囲が、8.5〜9.5(cal/cm3)1/2である可塑剤の例としては、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、ジ(n―オクチル)アジペート、ジ(n―デシル)アジペート、ジブチルジグリコールアジペート、ジブチルセバケート、ジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジ(n―ヘキシル)アゼレート、ジ(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジ(2−エチルヘキシル)ドデカンジオネート等の脂肪酸エステル系可塑剤、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート等のフタル酸エステル系可塑剤、トリ(2−エチルヘキシル)トリメリテート等のトリメリット酸エステル系可塑剤などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
なお、上記のSP値は、Fedors法[Polym.Eng.Sci.14(2)152,(1974)]によって算出される値である。
【0038】
上記範囲のSP値を有する可塑剤を添加することによって、脂肪族ポリエステルの量を低減しつつフィルムの耐破断性を高めることができ、透明性の低下も最小限に抑えることができる。このような効果が得られる理由は明確ではないが、次のように考えることができる。
即ち、ポリ乳酸系重合体に脂肪族ポリエステルを添加することによってその耐衝撃性は向上するが、添加する脂肪族ポリエステルの量が多いとポリ乳酸系重合体が本来有する透明性が損なわれてしまう。そこで、可塑剤によって脂肪族ポリエステルを可塑化することにより、脂肪族ポリエステルを可塑化してその耐衝撃性改良能を高めて、より少ない配合量で耐破断性を改良できるようにするのが好ましい。しかし、ポリ乳酸系重合体と脂肪族ポリエステル(ポリ乳酸系重合体以外)との混合系においては、ポリ乳酸系重合体が形成している海相に脂肪族ポリエステルの島が分散する、いわゆる海−島構造を形成するため、添加する可塑剤にの種類よってはポリ乳酸系重合体相(海相)へ移行してポリ乳酸系重合体相(海相)のガラス転移温度を低下させ、脂肪族ポリエステル相(島相)を可塑化しないことがある。これに対して、本発明が特定する可塑剤であれば、そのSP値が脂肪族ポリエステル(ポリ乳酸除く)のSP値に近くて相溶性が高いため、海相への移行が抑えられ島相への移行が進み、海相のガラス転移温度の低下が抑えられ、島相を形成している脂肪族ポリエステルの軟質性が向上し、かつ屈折率を低下させることができ、その結果、ポリ乳酸系重合体と脂肪族ポリエステルとの屈折率差が小さくなり、透明性を維持しつつ耐破断性を向上させることができるのではないか、と考えることができる。
なお、SP値が、本規定の最低値(8.5)より低過ぎると、脂肪族ポリエステル相への移行もしづらくなり、耐破断性向上の効果が得られ難くなると考えられる。
【0039】
(中心層)
本発明の中心層において、脂肪族ポリエステルの含有量は、透明性が求められる用途の場合には、10重量%〜40重量%程度であるのが好ましい。
これに対し、PETボトルやガラス瓶用のラベル用途など、透明性が非常に高く要求される用途の場合は、10重量%〜25重量%が好ましく、特に10重量%〜20重量%であるのがより好ましい。10重量%以上であれば耐破断性を充分に得られ、また25重量%以下であれば透明性も充分に確保することができる。
【0040】
また、本発明の中心層において、可塑剤の含有量は、中心層におけるポリ乳酸系重合体及び脂肪族ポリエステル樹脂の合計量100質量部に対して1〜15質量部であるのが好ましく、特に2〜10質量部であるのがより好ましい。15重量部以下の添加量であれば、混合系樹脂部のガラス転移温度を熱収縮性フィルムとして使用可能な範囲に確保することができる。
【0041】
(外側層)
中心層の外側に積層する外側層は、ポリ乳酸系重合体を主成分として含有することが、透明性を要求される用途において好ましい。
ポリ乳酸系重合体と脂肪族ポリエステルは、延伸時の変形挙動が互いに異なるので、両樹脂の混合体を延伸する場合に表面荒れを起こしてヘーズが大幅に上昇して透明性が失われてしまう可能性がある。これは、透過光の拡散が起きるためにヘーズが上昇して透明感が低下するためである。しかし、中心層の表面に透明性の高いポリ乳酸系重合体を主成分とする外側層を積層することにより、透過光の拡散を抑えて透明性を確保することができる。
【0042】
外側層でのポリ乳酸系重合体量の含有量は90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは100重量%である。ポリ乳酸系重合体量が90重量%以上であれば、延伸時の表面荒れが少なく外側層としての役割を充分に果たすことができる。
また、外側層のポリ乳酸系重合体は、中心層を構成するポリ乳酸系重合体と同じポリ乳酸系重合体であっても、異なるものであってもよい。
なお、特に限定しないが、PETボトルや瓶ボトル等に用いられる熱収縮ラベル用の場合には、ラベリング後にフィルムが、熱い状態のまま被覆されたボトル同士がぶつかりあうことによってフィルムが融着し、穴が開いてしまうことを回避するためにも、結晶性をある程度付与させることが好ましい。
【0043】
外側層は、中心層表面の表面荒れの凹凸の平均高さよりも厚くなるように形成するのが好ましい。具体的には、1μm以上、好ましくは2μm以上に形成するのが好ましい。
中心層の両外側に外側層を形成する場合、両方の外側層は同一厚み、同一組成とすることが収縮特性やカール防止等の点からは好ましいが、必ずしもそのように限定するものではない。
【0044】
なお、本発明の積層フィルムは、中心層を備え、少なくともその一方の外側に外側層を備えていれば、中心層の両外側に外側層を備えていなくてもよい。また、本発明の特性を阻害しないのであれば、外側層の更に外側に他の層が存在していてもよい。
【0045】
(製造方法)
次に、本発明のフィルムの製造方法を具体的に説明するが、本発明のフィルムの製造方法が下記製造法に限定されるものではない。
【0046】
ポリ乳酸系重合体、脂肪族ポリエステル及びその他の成分を所定配合して混合する。この際、諸物性を調整する目的で、必要に応じて熱安定剤、光安定剤、光吸収剤、滑剤、可塑剤、無機充填剤、着色剤、顔料等を添加することができる。
この混合物(混合体)を押出機で溶融させ、押出機の途中のベント溝や注入溝からの液添加によって可塑剤を所定量添加して押出す。
但し、予め可塑剤を脂肪族ポリエステルに混合しておいてもよい。
押出に際しては、Tダイ法、チューブラ法などの既存の方法を任意に採用することができる。その際、分解による分子量の低下を考慮して温度設定をする必要がある。
【0047】
溶融押出された樹脂は、冷却ロール、空気、或いは水等で冷却した後、熱風、温水、赤外線、マイクロウエーブ等の適当な方法で再加熱し、ロール法、テンター法、チューブラ法等によって1軸又は2軸に延伸する。
この際、延伸温度は、混合比やポリ乳酸の結晶性など熱収縮性フィルムの要求用途に応じて調整する必要があるが、概ね70〜95℃の範囲で制御すればよい。
延伸倍率は、混合比やポリ乳酸の結晶性等、熱収縮性フィルムの要求用途に応じて調整する必要があるが、概ね主収縮方向においては1.5〜6倍の範囲で適宜決定すればよい。また、1軸延伸にするか2軸延伸にするかは目的の製品の用途によって決定すればよい。
なお、PETボトル用のラベル用途に関しては、横一軸延伸によって縦収縮を抑えるのが最も好ましいが、この場合、当該横一軸方向に対して垂直な方向は未延伸状態となるため、従来は脂肪族ポリエステルを添加しても耐破断性を充分に改良することができず、そのために当該垂直な方向にも延伸をかける必要があった。これに対し、本発明が特定する可塑剤を添加することによって、縦収縮率と縦方向の耐破断性を両立することが可能となり、横延伸のみ或いは最小限の縦延伸のみで耐破断性を付与することが可能となった。
【0048】
(本発明のフィルムの物性値)
本発明の構成を備えた熱収縮性ポリ乳酸系積層フィルムは、次の物性を得ることができる。
【0049】
耐破断性を評価する方法としては一般に引張試験が用いられる。
これより、23℃環境下の引張試験(JIS K 7127準拠)において、特にラベル用途においては、主収縮方向に垂直な方向(MD、引取り方向、或いは縦方向とも言う。)における伸び率が300%以上、好ましくは0℃環境下の伸び率が100%以上、より好ましくは300%以上とする。
【0050】
PETボトルやガラス瓶用のラベルにおいては、主収縮方向に垂直な方向(MD)における収縮率(縦収縮率とも言う)は、80℃温水にて10秒間の収縮率が10%以下、中でも7%以下、その中でも特に5%以下とするのが好ましい。このような縦収縮率を低く抑えるためには縦延伸倍率を1.01〜1.20程度にすることが好ましい。
【0051】
また、主収縮方向(TD)の収縮率は、用途によっても異なるが、特にPETボトル用などの場合は主収縮方向において80℃温水で10秒間の熱収縮率が30%以上あることが好ましく、最近の内容物の保護、高速化に対応するには40%以上あることがより好ましい。
他方、縦収縮率は、低い方が好ましいが、収縮時の横シワなどを解消するために少しは収縮する方が好ましい場合もある。一般的には先に述べたように80℃温水にて10秒間の収縮率が10%以下、より好ましくは7%以下、更により好ましくは5%以下である。10%以上では必要以上にラベルの縦方向の収縮が目立ち収縮仕上がり性を悪化させてしまう可能性がある。
【0052】
更に、透明性については本発明では特に制限していないが、先に述べたようにPETボトルやガラス瓶用のラベル用途の用に裏側に印刷することによって透明性が非常に要求される用途では、ヘーズ値(JIS K 7105)を10%以下、特に7%以下、中でも特に5%以下とするのが好ましい。
【0053】
【実施例】
以下に実施例を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
なお、実施例に示す測定値および評価は次のように行った。ここで、フィルムの引取り(流れ)方向をMD、その直交方向をTDと記載する。
【0054】
1)熱収縮率
フィルムより、各々MDおよびTDに100mm巾の標線を入れたサンプルを切り出し、80℃温水バスに10秒間浸漬して収縮量を測定した。熱収縮率は、収縮前の原寸に対する収縮量の比率を%値で表示した。
【0055】
2)引張破断伸度(耐破断性評価)
JISK7127に準拠し、引張速度200mm/分で雰囲気温度23℃、引張速度100mm/分で雰囲気温度0℃におけるフィルムのMD方向の引張破断伸度を測定した。
【0056】
3)全ヘ−ズ
JISK7105に準拠し、フィルムのヘーズを測定した。
【0057】
4)収縮仕上がり性
10mm間隔の格子目を印刷したフィルムをMD100mm×TD298mmの大きさに切り取り、TDの両端を10mm重ねて溶剤等で接着して円筒状にした。この円筒状フィルムを、容量1.5リットルの円筒型ペットボトルに装着し、蒸気加熱方式の長さ3.2m(3ゾーン)の収縮トンネル中を回転させずに、4秒間で通過させた。各ゾーンでのトンネル内雰囲気温度は蒸気量を蒸気バルブにて調整し、80〜90℃の範囲とした。
そしてフイルム被覆後に下記基準にて評価した。
【0058】
○:収縮が充分で、シワ、アバタ、格子目の歪みがなく密着性が良好。
△:収縮は充分だが、シワ、アバタ、格子目の歪みが僅かにあるかもしくは縦方向の収縮率が僅かに目立つが実用上問題なし。
×:横方向の収縮不足もしくは縦方向の収縮が目立ち実用上問題となる。
【0059】
使用したポリ乳酸系重合体の重合方法を示す。
【0060】
[PLA▲1▼:D体量5.2%]
ピューラックジャパン製L−ラクチド(商品名:PURASORB L)90kgと同社製DL−ラクチド(商品名:PURASORB DL)10kgに、オクチル酸スズ15ppm添加し、攪拌機と加熱装置を備えた500Lバッチ式重合槽に入れた。窒素置換を行い、185℃、攪拌速度100rpmで、60分重合を行った。得られた溶融物を、真空ベントを3段備えた三菱重工製40mmφ同方向2軸押出機に供し、ベント圧4torrで脱揮しながら、200℃でストランド状に押し出し、ペレット化した。
得られたポリ乳酸系重合体の重量平均分子量は20万、L体含有量は94.8%であった。
【0061】
[PLA▲2▼:D体量10.3%]
ピューラックジャパン製L−ラクチド(商品名:PURASORB L)80Kgと同社製DL−ラクチド(商品名:PURASORB DL)20Kgに、オクチル酸スズ15ppm添加し、攪拌機と加熱装置を備えた500Lバッチ式重合槽に入れた。窒素置換を行い、185℃、攪拌速度100rpmで、60分重合を行った。得られた溶融物を、真空ベントを3段備えた三菱重工製40mmφ同方向2軸押出機に供し、ベント圧4torrで脱揮しながら、200℃でストランド状に押し出し、ペレット化した。
得られたポリ乳酸系重合体の重量平均分子量は20万、L体含有量は89.7%であった。
【0062】
(実施例1)
先に示したポリ乳酸系重合体PLA▲1▼50重量%、ポリ乳酸系重合体PLA▲2▼30重量%、ポリカプロラクトン(商品名:セルグーリンPH−7/ダイセル化学、融点:61℃/ガラス転移温度:−58℃)20重量%の混合樹脂を中心層とし、先に示したポリ乳酸系重合体PLA▲1▼100重量%(シリカが0.05%添加されている)を外側層原料として、中心層、外側層の混合原料を別々の押出機にて190℃〜210℃にて混練し、中心層を構成する混合樹脂100重量部に対してジイソデシルアジペート(DIDA:SP値8.95)を3部ベント溝より添加し、200℃でTダイ内で合流させ、表層/中心層/裏層の2種3層構造からなる溶融体を32℃のキャスティングロールにて急冷し、未延伸シートを得た。この未延伸シートを長手方向に60℃で1.03倍のロール延伸、次いで、幅方向に68℃で4倍延伸し、厚さ50μmの熱収縮フィルム(中心層の厚さ40μm、外側層の厚さ5μm)を得た。
【0063】
(実施例2)
先に示したポリ乳酸系重合体PLA▲1▼50重量%、ポリ乳酸系重合体PLA▲2▼30重量%、ポリブチレンサクシネート(商品名:ビオノーレ#1010/昭和高分子、融点:114℃/ガラス転移温度:−32℃)8重量%、ポリカプロラクトン(商品名:セルグーリンPH−7/ダイセル化学、融点:61℃/ガラス転移温度:−58℃)12重量部の樹脂を中心層とし、先に示したポリ乳酸系重合体PLA▲1▼100重量%(シリカが0.1%添加されている)を外側層原料として、中心層、外側層の混合原料を別々の押出機にて190℃〜210℃にて混練し、中心層を構成する混合樹脂100重量部に対してジイソデシルアジペート(DIDA:SP値8.95)を3部ベント溝より添加し、200℃でTダイ内で合流させ、表層/中心層/裏層の2種3層構造からなる溶融体を36℃のキャスティングロールにて急冷し、未延伸シートを得た。この未延伸シートを長手方向に60℃で1.08倍のロール延伸、次いで、幅方向に65℃で4倍延伸し、厚さ50μmの熱収縮フィルム(中心層の厚さ40μm、外側層の厚さ5μm)を得た。
【0064】
(実施例3)
先に示したポリ乳酸系重合体PLA▲1▼50重量%、ポリ乳酸系重合体PLA▲2▼30重量%、ポリカプロラクトン(商品名:セルグーリンPH−7/ダイセル化学、融点:61℃/ガラス転移温度:−58℃)20重量%の混合樹脂を中心層とし、先に示したポリ乳酸系重合体PLA▲1▼100重量%(シリカが0.04%添加されている)を外側層原料として、中心層、外側層の混合原料を別々の押出機にて190℃〜210℃にて混練し、中心層を構成する混合樹脂100重量部に対してジ(2−エチルヘキシル)アゼレート(DOZ:SP値8.96)を5部ベント溝より添加し、200℃でTダイ内で合流させ、表層/中心層/裏層の2種3層構造からなる溶融体を36℃のキャスティングロールにて急冷し、未延伸シートを得た。この未延伸シートを長手方向に60℃で1.03倍のロール延伸、次いで、幅方向に74℃で4倍延伸し、厚さ50μmの熱収縮フィルム(中心層の厚さ40μm、外側層の厚さ5μm)を得た。
【0065】
(実施例4)
先に示したポリ乳酸系重合体PLA▲1▼50重量%、ポリ乳酸系重合体PLA▲2▼30重量%、ポリブチレンサクシネート(商品名:ビオノーレ#1010/昭和高分子、融点:114℃/ガラス転移温度:−32℃)8重量%、ポリカプロラクトン(商品名:セルグーリンPH−7/ダイセル化学、融点:61℃/ガラス転移温度:−58℃)12重量部の樹脂を中心層とし、先に示したポリ乳酸系重合体PLA▲1▼100重量%(シリカが0.04%添加されている)を外側層原料として、中心層、外側層の混合原料を別々の押出機にて190℃〜210℃にて混練し、中心層を構成する混合樹脂100重量部に対してジ(2−エチルヘキシル)アゼレート(DOZ:SP値8.96)を5部ベント溝より添加し、200℃でTダイ内で合流させ、表層/中心層/裏層の2種3層構造からなる溶融体を36℃のキャスティングロールにて急冷し、未延伸シートを得た。この未延伸シートを長手方向に60℃で1.03倍のロール延伸、次いで、幅方向に72℃で4倍延伸し、厚さ50μmの熱収縮フィルム(中心層の厚さ40μm、外側層の厚さ5μm)を得た。
【0066】
(実施例5)
先に示したポリ乳酸系重合体PLA▲1▼50重量%、ポリ乳酸系重合体PLA▲2▼35重量%、ポリブチレンサクシネートアジペート(商品名:ビオノーレ#3003/昭和高分子、融点:94℃/ガラス転移温度:−45℃)15重量%の樹脂を中心層とし、先に示したポリ乳酸系重合体PLA▲1▼100重量%(シリカが0.04%添加されている)を外側層原料として、中心層、外側層の混合原料を別々の押出機にて190℃〜210℃にて混練し、中心層を構成する混合樹脂100重量部に対してジイソデシルアジペート(DIDA:SP値8.95)を5部ベント溝より添加し、200℃でTダイ内で合流させ、表層/中心層/裏層の2種3層構造からなる溶融体を36℃のキャスティングロールにて急冷し、未延伸シートを得た。この未延伸シートを長手方向に60℃で1.03倍のロール延伸、次いで、幅方向に68℃で4倍延伸し、厚さ50μmの熱収縮フィルム(中心層の厚さ40μm、外側層の厚さ5μm)を得た。
【0067】
(実施例6)
先に示したポリ乳酸系重合体PLA▲2▼70重量%、ポリブチレンサクシネートアジペート(商品名:ビオノーレ#3003/昭和高分子、融点:94℃/ガラス転移温度:−45℃)30重量%の樹脂を中心層とし、先に示したポリ乳酸系重合体PLA▲1▼100重量%(シリカが0.04%添加されている)を外側層原料として、中心層、外側層の混合原料を別々の押出機にて190℃〜210℃にて混練し、中心層を構成する混合樹脂100重量部に対してアセチルトリブチルシトレート(ATBC:SP値9.81)を5部ベント溝より添加し、200℃でTダイ内で合流させ、表層/中心層/裏層の2種3層構造からなる溶融体を36℃のキャスティングロールにて急冷し、未延伸シートを得た。この未延伸シートを長手方向に60℃で1.08倍のロール延伸、次いで、幅方向に72℃で4倍延伸し、厚さ50μmの熱収縮フィルム(中心層の厚さ40μm、外側層の厚さ5μm)を得た。
【0068】
(比較例1)
先に示したポリ乳酸系重合体PLA▲1▼50重量%、ポリ乳酸系重合体PLA▲2▼30重量%、ポリカプロラクトン(商品名:セルグーリンPH−7/ダイセル化学、融点:61℃/ガラス転移温度:−58℃)20重量%の混合樹脂を中心層とし、先に示したポリ乳酸系重合体PLA▲1▼100重量%(シリカが0.04%添加されている)を外側層原料として、中心層、外側層の混合原料を別々の押出機にて190℃〜210℃にて混練し、200℃でTダイ内で合流させ、表層/中心層/裏層の2種3層構造からなる溶融体を36℃のキャスティングロールにて急冷し、未延伸シートを得た。この未延伸シートを長手方向に60℃で1.03倍のロール延伸、次いで、幅方向に78℃で4倍延伸し、厚さ50μmの熱収縮フィルム(中心層の厚さ40μm、外側層の厚さ5μm)を得た。
【0069】
【表1】
【0070】
以上説明したように、本発明の範囲である実施例1〜6は生分解性でありながら、透明性、耐破断性に優れた熱収縮性ポリ乳酸系フィルムである。特に、特定範囲のSP値を有する可塑剤を用いた実施例1〜5は透明性及び厳しい環境に置かれても耐破断性に優れている。
Claims (4)
- ポリ乳酸系重合体と、ポリ乳酸系重合体以外の脂肪族ポリエステル樹脂と、可塑剤とを含有する中心層を備え、その外側に、ポリ乳酸を主成分として含有する外側層を積層してなる構成を備えていることを第1の特徴とし、
中心層を構成するポリ乳酸系重合体が、D乳酸とL乳酸の構成割合が98:2〜85:15又は2:98〜15:85であることを第2の特徴とし、
中心層を構成する脂肪族ポリエステル樹脂が、0℃以下にガラス転移温度が少なくとも一つあり、中心層におけるその含有量が10〜25重量%であることを第3の特徴とし、
中心層を構成する可塑剤は、その溶解パラメータ(SP値)が、ポリ乳酸系重合体のSP値と、脂肪族ポリエステル(ポリ乳酸除く)のSP値の中間値よりも脂肪族ポリエステルのSP値寄りであり、中心層におけるポリ乳酸系重合体及び脂肪族ポリエステル樹脂の合計量100質量部に対して1〜15質量部含有されることを第4の特徴とし、
外側層は、ポリ乳酸系重合体を90重量%以上含有することを第5の特徴とし、
1軸又は2軸方向に延伸されたフィルムであることを第6の特徴とする熱収縮性ポリ乳酸系積層フィルム。 - 可塑剤の溶解パラメータ(SP値)が、脂肪族ポリエステルのSP値よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の熱収縮性ポリ乳酸系積層フィルム。
- 外側層は、中心層表面の表面荒れの凹凸の平均高さよりも厚くなるように形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の熱収縮性ポリ乳酸系積層フィルム。
- 0℃環境下の引張試験(JIS K 7127準拠)において、主収縮方向に垂直な方向における伸び率が100%以上であり、かつ、ヘーズ値(JIS K 7105)が10%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱収縮性ポリ乳酸系積層フィルム。
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