JP2004267592A - 蒸気を用いた清掃装置及び清掃方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】水を加熱して蒸気を発生させるボイラ1と、ボイラ1で発生した蒸気を噴射可能なノズルと、ノズルを支持するノズル支持体7とを有し、ノズルから清掃対象に蒸気を噴射して清掃を行なう蒸気を用いた清掃装置において、水に、水に混合させてもノズルから泡が噴射されることがない性質を有する洗剤成分を混合させる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、地面、床面、壁面などの清掃に用いて好適の、蒸気を用いた清掃装置及び清掃方法に関する。
【従来の技術】
近年様々な清掃技術が開発されており、それにより清掃に要する労力はかなり低減されてきた。しかし、未だに清掃が困難である場合がある。
【0001】
例えば、地面や床面(壁面や舗装道路面などを含む。以下適宜、「地面等」という)などに固着したチューインガムは時間の経過とともにより強力に地面等に固着するため、固着したチューインガムを除去するには非常に大きな労力を要している。
また例えば、歩道などに施される透水性舗装は、表面からその内部まで微細な空隙を有しているため、空隙に入り込んだ汚れを清掃することが困難である。
【0002】
このように清掃し難い部分を清掃するための一手段として、蒸気を利用することが提案されている。
例えば、特許文献1では、地面等に固着したチューインガムを高温高圧の蒸気によって除去する技術が提案されている。この技術では、噴射する蒸気の圧力と、蒸気を噴射することによる加熱効果及び湿潤効果によってチューインガムを微細片に砕解させ、その後、これを履き取ったり吸引したりして除去することができる。これにより、地面等に傷を付けることなくチューインガムの除去を行なうことができる。
【0003】
【特許文献1】
特表2000−515938号公報
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、清掃の際に蒸気を利用することは非常に有用である。しかしながら、特許文献1の技術においては、チューインガムを破解するには、噴射する蒸気が高圧高温である必要があり、このような高温高圧の蒸気を発生させようとすれば、一般にボイラの大型化や重量増を招き、清掃時の取り回しが悪化し、清掃作業のコスト増となるばかりでなく、自由度が低下するという課題があった。
【0004】
また、ガスや重油などを燃焼させて水を加熱するボイラのほかに電熱式のボイラがあるが、電熱式のボイラで高温高圧の蒸気を発生させようとすると水を加熱するために十分な電力を確保する必要があり、屋外使用を考えると、電源としてボイラにガソリンエンジンを用いた必要容量を有する発電機などを備えることとなるため、電熱式のボイラを用いる場合にもボイラの大型化や重量化を招いてしまっていた。
【0005】
また、噴射される蒸気が高温であるため、蒸気を噴射される対象である地面等の材質が相応の耐熱性を有するものでなくてはならず、更に、噴射される蒸気が高圧であるため、蒸気を噴射される対象である地面等の材質が少なくとも噴射される蒸気の圧力に耐えられるものでなくてはならないという制限があり、使用対象が限定されるという課題があった。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑み創案されたもので、高い自由度を有し、しかも低圧蒸気を用いても容易に清掃を行なうことができるようにした蒸気を用いた清掃器具及び清掃方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このため本発明の蒸気を用いた清掃装置は、水を加熱して蒸気を発生させるボイラと、該ボイラで発生した蒸気を噴射可能なノズルと、該ノズルを支持するノズル支持体とを有し、該ノズルから清掃対象に蒸気を噴射して清掃を行なう蒸気を用いた清掃装置において、該水に、該水に混合させても該ノズルから泡が噴射されることがない性質を有する洗剤成分が混合されていることを特徴とする(請求項1)。
【0008】
このとき、該洗剤成分は、水に対する表面張力低下能がない化合物であってもよい(請求項2)。
【0009】
また、該洗剤成分は、該ボイラを焦げ付かせない性質を有することが好ましい(請求項3)。該ボイラを焦げ付かせないためには、例えば、該ボイラが焦げ付く温度、即ち、該洗剤成分が炭化する温度よりも低温で、該洗剤成分が蒸発する性質を有するものであればよい。具体例を挙げると、該洗剤成分の沸点が略50℃以上略200℃以下であってもよい。この範囲内に沸点を有する洗剤成分としては、例えば1分子中の炭素数が10以下程度の有機化合物などが挙げられ、具体例としては1分子中の炭素数が8以下のアルコール類などが挙げられる。
【0010】
また、該洗剤成分は、該ボイラにこびり付かない性質を有することが好ましい(請求項4)。
【0011】
また、該洗剤成分は、生分解性を有することが好ましい(請求項5)。
さらに、該洗剤成分は、天然由来であることが好ましく(請求項6)、特に、植物由来であることが好ましい(請求項7)。
また、該洗剤成分は、柑橘類の果実の皮から得られるものであってもよく(請求項8)、また、リモネンであってもよい(請求項9)。
【0012】
また、該洗剤成分が、1気圧100℃の条件下において液体又は気体であって、常温常圧下において液体である親油性の有機化合物であることが好ましい(請求項10)。
【0013】
また、該ノズル支持体に、該ノズルを覆うとともに該ノズルからの蒸気噴射方向が開口し、該該ノズルから該清掃対象に噴射された蒸気を、内部空間内に保持可能とするカバーを付設してもよい(請求項11)。
さらに、該カバーの開口縁部に、保護部材を取り付けてもよい(請求項12)。
また、該ノズル支持体にブラシを設置してもよく(請求項13)、該ボイラを台車に搭載してもよい(請求項14)。
【0014】
また、該蒸気の圧力は略0.1MPa以上0.4MPa以下であることが好ましい(請求項15)。
【0015】
本発明の蒸気を用いた清掃方法は、水と上記の洗剤成分との混合液を加熱して蒸気を発生させ、該蒸気を清掃対象に噴射し、該清掃対象をカバーで覆い、該カバーの内部空間に該蒸気を保持して該蒸気を該清掃対象に浸透させ、次いで該清掃対象にブラシがけを行なうことを特徴とする(請求項16)。
【0016】
このとき、該清掃対象が、表面にチューインガムが付着した面であってもよい(請求項17)。
また、該清掃対象が、透水性舗装を施された地面であってもよい(請求項18)。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1〜図4は本発明の実施形態としての蒸気を用いた清掃装置を示すもので、図1はその模式的な斜視図、図2は要部を拡大して示す要部拡大図、図3は要部の断面を模式的に示す要部断面図、図4はその使用状態を説明するために要部の断面を模式的に示す要部断面図である。
【0018】
図1に示すように、プロパンガス焚きボイラ(以下適宜、ガスボイラという)1が、車輪2を有する台車3に搭載されている。
ガスボイラ1は、内部に図示しないタンクと小型のプロパンガスボンベとを有し、小型小容量のプロパンガスボンベ中のプロパンガスを燃焼させた熱によってタンク中の水を加熱し、水蒸気を発生させるボイラである。
【0019】
ガスボイラ1の上側面には、プロパンガスが燃焼した際に発生する煙を外部に排出するための排煙口4と、ガスボイラ1内で発生した水蒸気を送出するための蒸気送出口5とが形成されている。
【0020】
また、蒸気送出口5には、とめ具6でノズル支持体である柄7に取り付けられたチューブ8の一端が接続されていて、チューブ8の他端は柄7の先端に固定されている。このチューブ8の他端の開口がノズル9となり、このノズル9からガスボイラ1で発生した水蒸気を噴射する(図3参照)。
【0021】
次に図2及び図3を用いて、ノズル9の近傍の構成を説明する。
上述したように、柄7の先端にチューブ8の他端が固定され、ノズル9が柄7の先端に位置するよう構成されている。このノズル9を覆うようにして、柄7の先端にカバー10が設けられている。
【0022】
カバー10はカップ状、即ち、一方向のみが開口し、この開口部分を清掃対象(例えば地面等)にあてがうことにより、カバー10により清掃対象を覆うことができる形状になっている。また、カバー10にはカバー10の表裏を貫通する孔10aが形成され、チューブ8はこの孔10aを貫通し、カバー10の内側にノズル9を開口するように構成されている。さらに、カバー10の縁部には、保護部材としてゴムシート11が取り付けられている。
【0023】
また、柄7の先端にはカバー10と並列にワイヤブラシ12が取り付けられている。ワイヤブラシ12はカバー10を清掃対象にあてがう際に、ワイヤブラシ12が清掃対象と干渉しないように設置され、逆に、ワイヤブラシ12により清掃対象にブラッシングする際は、カバー10が清掃対象と干渉しないように、カバー10とワイヤブラシ12とは柄7に対して互いに異なる方向に突設されている。
【0024】
本実施形態にかかる蒸気を用いた清掃装置は以上のように構成されており、この蒸気を用いた清掃装置中のタンク内の水をガスボイラ1で加熱して水蒸気を発生させるのであるが、本装置では、タンク内の水に、そのタンク内の水に混合させてから水蒸気を発生させてもノズル9から泡が噴射されることのない性質を有する洗剤成分を混合させている。
【0025】
この洗剤成分は水に不溶又は難溶な汚れ及びごみを溶かしたり、または汚れ及びごみが水に溶けるようにしたりすることが可能であり、この洗剤成分を水に混合させ、蒸気中にこの洗剤成分を含有させることによって、蒸気中に水のみを用いて清掃を行なう場合よりもさらに効果的に清掃を行なうことができるものが好ましい。例えば親油性の有機化合物が好ましい。
【0026】
一般に、スチームクリーナ等のボイラ内の水には、清掃用に洗剤や溶剤(以下適宜、洗剤等という)を混合させることはない。これは、ボイラ内の水に洗剤等を混合させると、蒸気を噴射するノズルから大量の泡が出て、清掃対象に泡を噴射することができなくなるためである。また、ボイラ内の水に洗剤等を混合した場合、ボイラ内のタンクに洗剤等が焦げ付いたりこびり付いたりするため、使用後その洗剤等の除去に多くの手間がかかるからである。しかし本実施形態においては上記のようなことが起こることの無い洗剤成分をタンク内の水に混合させているのである。
【0027】
洗剤成分をタンク内の水に混合させてもノズル9から泡が噴射されないようにするためには、洗剤成分を水に混合させても水の泡立ちを促進しない性質、または、タンク内で発生した泡がノズル9から噴射されるまでに消える性質のいずれかを有することが好ましい。したがって、洗剤成分として、例えば水に対して表面張力低下能を有さない化合物、即ち、水に混合しても水の表面張力をほとんど低下させない化合物を用いることが好ましい。
【0028】
表面張力は、液体の泡立ちやすさを決定する要素である。一般に、表面張力の大きい液体は泡立ち難く、表面張力の小さい液体は泡立ちやすい。従来、清掃の際にしばしば用いられてきた石鹸などの洗剤には界面活性剤が多く、これらの界面活性剤は水の表面張力を大きく低下させる性質を有する。
したがって、洗剤成分は水の表面張力をほとんど低下させない、即ち、表面張力を大きくするか、低下させないか、低下させるとしてもノズル9からの蒸気の噴射を妨害するほど多くの泡が発生しない程度までしか表面張力を低下させない(表面張力低下能が無い)化合物が好ましい。また、実際に使用するよりも大量に水に混合させた場合に水の表面張力を低下させて水を泡立たせる洗剤成分であっても、実際に使用する程度の量だけ水に混合した場合には水の表面張力をほとんど低下させないような洗剤成分であれば、本実施形態の洗剤成分として好ましく使用することができる。
【0029】
本実施形態において、洗剤成分は、水が加熱され水蒸気となってノズルから噴射される際、水蒸気とともに細かい液体の粒子として、水蒸気とともに混相流(ミスト流)となってノズルから噴射されるか、又は、洗剤成分が水蒸気とともに気体としてノズルから噴射される。このためには、少なくとも1気圧100℃の条件下において、つまり、水が気化する条件下において、洗剤成分は液体または気体として存在することが必要である。洗剤成分が1気圧100℃において液体であれば、洗剤成分は水蒸気とともに細かい液体の粒子として混相流(ミスト流)となってノズルから噴射される。また、洗剤成分が1気圧100℃において気体であれば、洗剤成分は水蒸気とともに気体としてノズルから噴射される。
【0030】
また洗剤成分は常温常圧下で液体であることが好ましい。常温常圧下で液体であれば、汚れを洗剤成分中に溶解させることで汚れを除去することが可能であるが、洗剤成分が常温常圧下で気体であれば保存が不便であり、また、固体であれば汚れを溶解させることができない。したがって、本実施形態では洗剤成分が常温常圧、即ち、本実施形態の清掃装置が使用される通常の環境(日本では一般に1気圧25℃の条件下とされる)において液体であるものを選択することが好ましい。
【0031】
また、上記のようにガスボイラ1内のタンクに洗剤成分が焦げ付かないことが好ましい。洗剤成分が焦げ付くとは、例えば洗剤成分がガスボイラ1内のタンクに残留し、酸化したり炭化したりすることによってタンク内面に固着することである。したがって、洗剤成分が酸化したり炭化したりすることによってタンクが焦げ付く温度よりも低温で、洗剤成分が気化することが好ましい。例えば、洗剤成分の沸点が、洗剤成分が酸化又は炭化する温度よりも低温であることが好ましい。
具体的には、上述したように、常温常圧下において洗剤成分は液体であることが好ましいので、たとえば洗剤成分の沸点は50℃以上200℃以下程度が好ましい。
【0032】
このような範囲内に沸点を有する洗剤成分としては、例えば1分子中の炭素数が10程度以下の有機化合物等を用いても良い。代表的な有機化合物の具体例を挙げると、アルカンやアルキン等の炭化水素、エタノールやグリセリンなどのアルコールなどのほか、テトラヒドロフランなどのように一般に有機溶剤として用いられているもの等も挙げられる。
ところで、有機化合物の例としてアルコールを挙げたが、アルコールは同程度の炭素数を有する有機化合物の中でも比較的大きな沸点を有する化合物であるので、洗剤成分としてアルコールを用いる場合には、その1分子中の炭素数は8以下程度のものを用いても良い。
【0033】
また、ガスボイラ1内のタンクに洗剤成分がこびり付かないことが好ましい。したがって、洗剤成分としては粘着性を有さないものが好ましく、また、粘度がより低いものが好ましい。粘着性や粘度は、水に対して混合させる洗剤成分の割合によっても影響を受けるが、実際に使用する程度の割合だけ洗剤成分を水に混合させた場合において、粘着性や粘度が実用に耐える程度に低ければ、本実施形態の洗剤成分として好ましく用いることができる。さらに、粘度が高い物質は一般に泡持ちが良く、従ってタンク内の水に粘度が高い物質を混合させるとノズル9から泡が噴射されてしまう虞がある。したがって、この意味でも洗剤成分の粘度は低いことが好ましい。
【0034】
さらに、洗剤成分は生分解性を有するものが好ましい。生分解性を有するとは、その洗剤成分が生体内で、あるいは微生物の作用により分解されることを意味する。生分解性を有する洗剤成分は、環境汚染を引き起こす虞がなく、また、人体に対し比較的安全であるために好ましい。
【0035】
また、天然由来のもの、特に、植物由来のものの多くは生分解性を有するため、洗剤成分は天然由来、即ち自然界に存在する生物から得られるものであることが好ましく、植物由来、即ち、植物から得られるものであることがより好ましい。
【0036】
天然由来の洗剤成分としては、例えば、動物や魚から得られる動物性油や、植物から得られる植物性油などが挙げられる。
植物由来の洗剤成分としては、例えば、植物の果実、果皮、葉、樹皮、樹脂、根又は花などから抽出した精油などが挙げられる。
【0037】
上述の各条件を備えた洗剤成分の具体例としては、柑橘類の果実の皮から得られる洗剤成分が挙げられる。特に、柑橘類の果実の皮から得られる成分の一つであるリモネンを含むものは、高い洗浄効果を有するため、好ましい。
【0038】
本発明の実施形態としての蒸気を用いた清掃装置は以上のように構成されている。以下、本実施形態の蒸気を用いた清掃装置を用いて、チューンガム13が固着した清掃対象である道路面14を清掃する清掃方法を、図4を用いて説明する。
図4はチューインガム13が固着した道路面14を清掃する際の、ノズル9近傍を拡大して示す模式的な断面図である。
【0039】
まずガスボイラ1のタンク内で洗剤成分を混合された水を加熱し、水蒸気を発生させる。このとき、タンク内で混合する洗剤成分に対する水の割合は任意であるが、例えば、洗剤成分1に対して水の体積割合が、略100以上500以下となるように混合することが好ましい。なお、ここにおいて、「略」という表現を用いて記載したが、前記のような記載の場合には洗剤成分1に対する水の体積割合が、100の場合及び500の場合を含む表現であることは言うまでもない。
【0040】
タンク内で発生した水蒸気はカバー10で覆われたノズル3から噴射される。このカバー10を清掃対象となる道路面14に当て、ノズル3から噴射される水蒸気を道路面14に噴射する。
【0041】
この際、ノズル3から噴射される際の水蒸気の温度に特に制限はないが、例えば略100℃以上120℃以下であることが好ましい。これ以下の温度であるとチューインガム13などの汚れを十分に加熱することができず、また、水蒸気の温度があまりに高いと清掃対象が熱に弱い材料で形成されている場合などに、清掃対象が熱によって変質したり脆くなったりしてしまう虞があるためである。なお、ここにおいても、「略」という表現を用いて記載したが、前記のような記載の場合には100℃の場合及び500℃の場合を含む表現であることは言うまでもない。
【0042】
また、水蒸気の圧力については特に制限はないが、もちろん大気圧よりも大きいものとする。通常は外気圧よりも高く設定することが好ましい。例としては、略0.1MPa以上0.4MPa以下であることが好ましい。これ以下の圧力では水蒸気の温度が充分に上昇しないため、チューインガム13などの汚れを充分に加熱することができないからである。また、これ以上の圧力を連続的に供給するにはガスボイラ1が大型になり、歩行者が往来する歩道などでの作業が制約されるためである。なお、ここにおいても、「略」という表現を用いて記載したが、前記のような記載の場合には0.1MPaの場合及び0.4MPaの場合を含む表現であることはいうまでもない。
【0043】
さて、こうして噴射された蒸気は清掃対象である道路面14とカバー10とで囲まれた空間に閉じ込められ、道路面14とカバー10とで囲まれた空間内に滞留することになる。したがって、チューインガム13及び道路面14は、噴射される蒸気が高温高圧でなくとも効果的に加熱及び加湿をされる。またこのとき、洗剤成分が水の表面張力低下能を有さないので、ノズル9から泡が噴射されて蒸気の噴射が妨害されることはない。
【0044】
さて、水に混合された洗剤成分は、洗剤成分の沸点が100度以下であれば気体となって水蒸気とともにノズル9から噴射される。一方、洗剤成分の沸点が100℃よりも高温である場合には、洗剤成分は微細な液体粒子となって水蒸気とともに混相流(ミスト流)としてノズル8から噴射される。
【0045】
このようにしてチューインガム13と道路面14とは水蒸気によって加熱及び加湿されるとともに、洗剤成分を噴射されることとなる。したがって、親水性の汚れは、水蒸気の熱によって過熱され、また、水蒸気が液化した水に溶解し、道路面14から除去される。一方、チューインガム13を含む水に溶けない親油性の汚れは、水蒸気の熱によって過熱され、また、洗剤成分に溶解し、道路面14から除去される。
【0046】
このとき、もし道路面14から除去し切れなかったチューインガム13や汚れなどがあったとしても、これらは洗剤成分を含んだ蒸気により道路面14から解離しやすくなっているため、ワイヤブラシ12を用いることで道路面14から容易に除去することができる。
また、洗剤成分が生分解性を有するものであれば、道路面14などに親水性有機化合部が残留した場合であっても微生物などによって分解されてしまうために、環境に対し悪影響を与えることがない。
【0047】
なお、清掃後の道路面14に洗剤成分が残留しても分解されてしまうといっても、完全に分解されるためには時間が必要となるために、そもそも洗剤成分が道路面14に残留しないことが好ましい。従って、洗剤成分が道路面14に残留し難くするためにも、洗剤成分の粘度は低いほうが好ましいといえる。
【0048】
また、カバー10の開口縁部にゴムシート11が取り付けられているので、清掃対象である道路面14を傷つけることなく清掃をすることができる。
また、ガスボイラ1が台車3に乗せられているために、簡単にガスボイラ1を移動させることができ、清掃時の自由度を高めることができる。
なお、本実施形態ではガスボイラ1へのガスの補充は、プロパンガスボンベの交換により容易に行なうことができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0050】
例えば、ボイラ1は水を加熱して蒸気を発生させることができるものであれば特に制限はなく、公知の様々なボイラを用いることができる。本実施形態においては、ボイラとして、プロパンガス焚きボイラ1を用いているが、電気焚きボイラ等の他のボイラを用いてもよい。
【0051】
また、清掃対象は道路面14に限定されず、床面や壁面、さらには凹凸が多い点字ブロック等がある地面など様々な場所を清掃対象とすることができる。特に、透水性舗装が施された地面のように、微小な凹凸や孔が多数形成された場所などは、従来であれば非常に清掃し難い場所であったが、本発明の蒸気を用いた清掃装置を用いれば、蒸気が微小な凹凸の間や孔の内部に入り込み清掃を行なうことができるので、簡単に清掃することが可能である。
【0052】
また、ボイラは台車3に積む形態以外にも、建物に備え付けたり、自動車などに積載したりしてもよい。
また、ボイラで発生した蒸気を噴射するノズル9を複数設けてもよい。
また、ブラシはワイヤブラシに限定されず、ナイロン製のブラシを用いたり、あるいは布製のダスターを用いたりしてもよい。
【0053】
また、例えば特許第2999442号公報に記載の清掃装置(着脱式洗浄用補助装置)の蒸気発生器内の水に洗剤成分を混合させて用いるようにしてもよい。つまり、図5に示すように、清掃器具(ここでは、既存のポリッシャ)15に大して着脱自在にノズル支持体兼用のカバー16を形成し、このカバー16内にノズル(図示略)を形成して、ガスボイラ1からの蒸気をカバー16内で噴射できるようにする。これにより、既存の清掃器具を用いて清掃を行なう際にガスボイラ1から所定の洗剤成分を含んだ蒸気を供給できるようになり、既存の清掃器具を利用してより効果的に清掃を行なうことが可能となる。
【0054】
【発明の効果】
以上のように、本発明の蒸気を用いた清掃装置及び清掃方法によれば、清掃対象を限定されることなく、様々な場所を水蒸気と洗剤成分とを用いて簡単に清掃することができる(請求項1,請求項16)。
【0055】
このとき、洗剤成分として水に対する表面張力低下能がないものを使用することによって、水蒸気の噴射が泡によって妨害されることを防止することができる(請求項2)。
【0056】
また、洗剤成分として、生分解性を有するもの、例えば、植物由来の洗剤成分(請求項7)のような天然由来の洗剤成分(請求項6)などを用いれば、清掃によって自然環境に悪影響を与えることを防止することができる(請求項5)。とくに、リモネン(請求項9)などの柑橘類の果実の皮から得られる洗剤成分(請求項8)は、効果的に清掃を行なうことができる。
【0057】
また、洗剤成分としてボイラを焦げ付かせない性質を有するものや(請求項3)、ボイラにこびり付かない性質を有するものを用いることで(請求項4)、清掃を確実に行なうことができるほか、清掃装置の手入れに係る労力を減らすことができる。
【0058】
また、ノズル支持体にカバーを付設する構成とすることで、比較的低温低圧の蒸気であっても効果的に清掃対象を加熱し、且つ加湿することができる(請求項11)。このとき、カバーの開口縁部に保護部材を取り付けると、清掃対象をカバーによって傷つけることなく安全に清掃を行なうことができる(請求項12)。
【0059】
また、該支持体にブラシが設置すれば、より確実に清掃を行なうことができる(請求項13)。
また、ボイラを台車に搭載すれば、清掃装置の移動に要する労力を低減し、簡単に清掃を行なうことが可能となる(請求項14)。
【0060】
また、蒸気の圧力を略0.1MPa以上0.4MPa以下とすることで、上記の圧力によって清掃対象を傷つけることを防止できる(請求項15)。
【0061】
本発明の蒸気を用いた清掃装置又は清掃方法によれば、該清掃対象が、表面チューインガムが付着した面(請求項17)や、該清掃対象が、透水性舗装を施された地面(請求項18)を清掃することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態としての蒸気を用いた清掃装置の模式的な斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態としての蒸気を用いた清掃装置の要部を拡大して示す要部拡大図である。
【図3】本発明の一実施形態としての蒸気を用いた清掃装置の要部の断面を模式的に示す要部断面図である。
【図4】本発明の一実施形態としての蒸気を用いた清掃装置の使用状態を説明するため、蒸気を用いた清掃装置の要部の断面を模式的に示す要部断面図である。
【図5】本発明の一実施形態としての蒸気を用いた清掃装置の変形例を説明するための模式的な斜視図である。
【符号の説明】
1 プロパンガス焚きボイラ
2 車輪
3 台車
4 排煙口
5 蒸気送出口
6 とめ具
7 柄(ノズル支持体)
8 チューブ
9 ノズル
10 カバー
10a (カバーに形成された)孔
11 ゴムシート
12 ワイヤブラシ
13 チューインガム
14 道路面
15 ポリッシャ
16 (ノズル支持体としての)カバー
Claims (18)
- 水を加熱して蒸気を発生させるボイラと、該ボイラで発生した蒸気を噴射可能なノズルと、該ノズルを支持するノズル支持体とを有し、該ノズルから清掃対象に蒸気を噴射して清掃を行なう蒸気を用いた清掃装置において、
該水に、該水に混合させても該ノズルから泡が噴射されることがない性質を有する洗剤成分が混合されていることを特徴とする、蒸気を用いた清掃装置。 - 該洗剤成分が、水に対する表面張力低下能が無いことを特徴とする、請求項1記載の蒸気を用いた清掃装置。
- 該洗剤成分が、該ボイラを焦げ付かせない性質を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の蒸気を用いた清掃装置。
- 該洗剤成分が、該ボイラにこびり付かない性質を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の蒸気を用いた清掃装置。
- 該洗剤成分が、生分解性を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の蒸気を用いた清掃装置。
- 該洗剤成分が、天然由来であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の蒸気を用いた清掃装置。
- 該洗剤成分が、植物由来であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の蒸気を用いた清掃装置。
- 該洗剤成分が、柑橘類の果実の皮から得られることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の蒸気を用いた清掃装置。
- 該洗剤成分が、リモネンであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の蒸気を用いた清掃装置。
- 該洗剤成分が、1気圧100℃の条件下において液体又は気体であって、常温常圧下において液体である親油性の有機化合物であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の蒸気を用いた清掃装置。
- 該ノズル支持体に、該ノズルを覆うとともに該ノズルからの蒸気噴射方向が開口し、該ノズルから該清掃対象に噴射された蒸気を、内部空間内に保持可能とするカバーが付設されていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の蒸気を用いた清掃装置。
- 該カバーの開口縁部に、保護部材が取り付けられていることを特徴とする、請求項11記載の蒸気を用いた清掃装置。
- 該ノズル支持体にブラシが設置されていることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の蒸気を用いた清掃装置。
- 該ボイラが、台車に搭載されていることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の蒸気を用いた清掃装置。
- 該蒸気の圧力が略0.1MPa以上0.4MPa以下であることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の蒸気を用いた清掃装置。
- 水と請求項1〜10のいずれか1項に記載の洗剤成分との混合液を加熱して蒸気を発生させ、該蒸気を清掃対象に噴射し、該清掃対象をカバーで覆い、該カバーの内部空間に該蒸気を保持して該蒸気を該清掃対象に浸透させ、次いで該清掃対象にブラシがけを行なうことを特徴とする、蒸気を用いた清掃方法。
- 該清掃対象が、チューインガムが付着した面であることを特徴とする、請求項16記載の蒸気を用いた清掃方法。
- 該清掃対象が、透水性舗装を施された地面であることを特徴とする、請求項16又は請求項17に記載の蒸気を用いた清掃方法。
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