JP2004262974A - 表面処理酸化セリウム及び組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】紫外線吸収能に優れ、透明性が著しく改善された熱可塑性樹脂組成物、油剤組成物及び化粧料組成物を提供すること並びにかかる組成物を提供しうる表面処理酸化セリウムを提供すること。
【解決手段】酸化セリウム含有粒子が、1個以上の水酸基が脂肪酸エステル化されたポリオールエステル化合物にて被覆されてなることを特徴とする表面処理酸化セリウム、および該表面処理酸化セリウムを含有する熱可塑性樹脂組成物、油剤組成物及び化粧料組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】酸化セリウム含有粒子が、1個以上の水酸基が脂肪酸エステル化されたポリオールエステル化合物にて被覆されてなることを特徴とする表面処理酸化セリウム、および該表面処理酸化セリウムを含有する熱可塑性樹脂組成物、油剤組成物及び化粧料組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、紫外線吸収能を有する熱可塑性樹脂、油剤、化粧料に関する。より詳しくは、特定のポリオールエステル化合物で被覆された酸化セリウムを含有することにより、紫外線吸収能に優れ、透明性が著しく改善された熱可塑性樹脂、油剤組成物および当該油剤組成物を含有する化粧料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より熱可塑性樹脂や化粧料に紫外線吸収能を付与する目的で紫外線吸収剤が使用されており、大きく分けて無機系紫外線吸収剤と有機系紫外線吸収剤に分類される。
【0003】
前者の無機系紫外線吸収剤としては、本発明に使用されている酸化セリウムの他、酸化チタン、酸化亜鉛などを挙げることができるが、いずれも粒子表面の触媒活性が強く、樹脂や化粧料用の油剤などの有機マトリクスに分散させた時に有機マトリクスの酸化劣化を促進してしまう欠点がある。また酸化チタンは屈折率が大きく可視光領域での透明性に劣り、化粧料などに使用すると白ウキするなどの問題点がある。酸化亜鉛は化粧料などに使用すると汗などで溶出するなどの問題点を有する(特許文献1および2、非特許文献1参照)。
【0004】
後者の有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、サリチレート系などがあるが、樹脂表面に移行するブリード現象を起こし易く、安全性、表面印刷性、外観に問題が発生する場合がある。また有機化合物であるために耐熱性に劣り、また吸収剤自体が紫外線により徐々に分解する為、リサイクル性など長期にわたる安定性に問題がある(非特許文献2参照)。
【0005】
一方、無機系紫外線吸収剤は、有機系紫外線吸収剤よりも耐熱性や長期安定性に優れるなどの特長を有するが、紫外線吸収能を有する微粒子は熱可塑性樹脂や化粧料中での分散性が悪く二次凝集してしまい、本来の一次粒子径から期待される透明性が出ない。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−207251号公報
【特許文献2】
特開平6−145026号公報
【非特許文献1】
東レリサーチセンター調査研究事業部編,「機能性添加材料の新展開」,(株)東レリサーチセンター,1993年4月1日,p.171−181
【非特許文献2】
大勝靖一編,「高分子安定化の総合技術」,(株)シーエムシー,1997年3月31日,p.111−120
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、紫外線吸収能に優れ、透明性も良好な熱可塑性樹脂組成物、油剤組成物、化粧料組成物を提供すること並びにかかる組成物を提供しうる表面処理酸化セリウム、即ち紫外線吸収剤を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、酸化セリウム含有粒子表面を、特定のポリオールエステル化合物で被覆することにより、紫外線吸収能に優れ、透明性も改善された樹脂組成物、油剤組成物、化粧料組成物を作成できることを見出し、本発明の完成に至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)酸化セリウム含有粒子が、1個以上の水酸基が脂肪酸エステル化されたポリオールエステル化合物にて被覆されてなることを特徴とする表面処理酸化セリウム。
(2)酸化セリウム含有粒子が、平均一次粒子径が1〜100nmの微粒子酸化セリウムを含有するものであることを特徴とする、上記(1)に記載の表面処理酸化セリウム。
(3)ポリオールエステル化合物の表面処理量が、酸化セリウム含有粒子100重量部に対して、0.1〜100重量部であることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の表面処理酸化セリウム。
(4)ポリオールエステル化合物が、脂肪酸エステル化されていない水酸基を1個以上有するものである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の表面処理酸化セリウム。
(5)ポリオールエステル化合物が、ポリグリセリン分子において1個以上の水酸基が脂肪酸エステル化されたポリグリセリン誘導体である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の表面処理酸化セリウム。
(6)ポリオールエステル化合物が、ポリオールまたはポリオール縮合物の二塩基酸エステルであって、1個以上の水酸基が脂肪酸エステル化された二塩基酸ポリオール類エステルである上記(1)〜(4)のいずれかに記載の表面処理酸化セリウム。
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の表面処理酸化セリウムを含有することを特徴とする、紫外線吸収剤。
(8)熱可塑性樹脂と、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の表面処理酸化セリウムとを含有することを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物。
(9)熱可塑性樹脂が、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂またはポリアミド系樹脂から選ばれる少なくともいずれかである、上記(8)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(10)有機系油剤と、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の表面処理酸化セリウムとを含有することを特徴とする、油剤組成物。
(11)上記(10)に記載の油剤組成物を含有することを特徴とする、化粧料組成物。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の表面処理酸化セリウムは、酸化セリウム含有粒子を、1個以上の水酸基が脂肪酸エステル化されたポリオールエステル化合物にて被覆してなるものである。本明細書中における「ポリオールエステル化合物」とは、2個以上の水酸基を有する化合物であるポリオールまたはポリオール縮合物(以下、「ポリオール類」と呼ぶことがある。)において、1個以上の水酸基がエステル化されてなる化合物を指す。本発明の表面処理酸化セリウムは、このポリオールエステル化合物の中でも、1個以上の水酸基が脂肪酸によってエステル化されたポリオールエステル化合物にて、酸化セリウム含有粒子を被覆してなるものである。ここで、「被覆」とは、酸化セリウム含有粒子の外側を覆って、表面処理酸化セリウムの最外に上記ポリオールエーテル化合物による層が形成されてなることを指す。当該ポリオールエーテル化合物による層は、酸化セリウム含有粒子を完全に覆うように形成されていてもよく、また、酸化セリウム含有粒子の一部が露出してなるように形成されていてもよい。
【0010】
本発明の表面処理酸化セリウムによれば、上記のような特定のポリオールエステル化合物を含有することによって、紫外線吸収能に優れ、かつ従来よりも透明性が著しく改善された熱可塑性樹脂組成物、油剤組成物、化粧料組成物を提供することができる。これらの効果が発現する機構については、詳細は不明であるが、本発明者らは次のように考えている。
すなわち本発明は、酸化セリウム含有粒子を、1個以上の水酸基が脂肪酸エステル化されたポリオールエーテル化合物にて被覆したものであるが、まず、酸化セリウム含有粒子を使用したことによって、従来の他の無機系紫外線吸収剤である酸化チタンや酸化亜鉛を使用した場合とは異なり、可視光領域で優れた透明性を有し、また化粧料としたときでも汗などで溶出したりすることはない。さらに、この表面処理酸化セリウムを脂肪酸エステル化されたポリオールエステル化合物にて被覆することによって、ポリオールエステル化合物の脂肪酸エステル部分が熱可塑性樹脂や有機系油剤に対して良好な相溶性を示す。これによって、本発明の表面処理酸化セリウムを熱可塑性樹脂や有機系油剤に分散させた系においては、表面処理酸化セリウムが界面に存在することとなり、分散性が向上され、二次凝集を起こすことなく本来の一次粒子径から期待される透明性を有する熱可塑性樹脂組成物、油剤組成物、化粧料組成物を実現することができるものと考えられる。また、本発明におけるポリオールエステル化合物はある程度の分子量を有するものであるため、上記熱可塑性樹脂での移動性が小さく、これにより本発明の表面処理酸化セリウムを用いた熱可塑性樹脂の成型物においては表面にブリードアウトが起こりにくいと考えられる。
【0011】
本発明に用いられる酸化セリウム含有粒子としては、酸化セリウムを少なくとも含有する粒子であるならば特に制限はなく、酸化セリウムからなる粒子であってもよいし、酸化セリウムに加えて他の成分を含有するものであってもよい。酸化セリウム含有粒子に含有される他の成分としては、本発明の効果を阻害するものでない限り特に制限されるものではないが、たとえば、シリカ、非晶質シリカ、タルク、カオリン、マイカ、ワラストナイト、ベントナイト、セリサイトなどが挙げられる。中でも無色で、表面の触媒活性が少なく樹脂や油剤に対して影響の小さいシリカ、タルクが好ましい。上記他の成分を含有する場合、酸化セリウムは、粒子表面に露出していてもよく(たとえば、酸化セリウムで他の成分を被覆してなる場合や、他の成分が酸化セリウムの一部のみを被覆してなる場合など)、また上記他の成分で完全に被覆されていてもよい。この場合、当該粒子における酸化セリウムの含有量は、特には制限されるものではないが、粒子全量に対して0.1〜50重量%であるのが好ましく、1〜30重量%であるのがより好ましい。酸化セリウムが0.1重量%未満であれば、紫外線吸収能が低下する傾向があるためであり、また、酸化セリウムが50重量%を越えて含有されても、紫外線吸収能の向上が見られない傾向があるためである。
【0012】
本発明における酸化セリウム含有粒子は、従来公知の種々の酸化セリウム含有粒子を特に制限なく用いることができる。酸化セリウム含有粒子は、市販品、たとえば「セリガード」(日本電工製)等を用いてもよい。上記「セリガード」は、平均一次粒子径22.6nmの微粒子酸化セリウムに非晶質シリカを3〜5nmの厚さで被覆したタイプの他、約1ミクロンのシリカやタルクなどのベース基材表面に平均一次粒子径30〜50nmの微粒子酸化セリウムを被覆し、さらに非晶質シリカを3〜5nmの厚さで被覆したタイプなどがある。
【0013】
本発明に用いる酸化セリウム含有粒子は、透過型電子顕微鏡法による平均一次粒子径が、好ましくは1〜100nm、より好ましくは1nm〜50nm、特に好ましくは5nm〜50nmの微粒子酸化セリウムを含有するものであるのが好ましい。該微粒子酸化セリウムの平均一次粒子径が100nmより大きいと、添加量当りの紫外線吸収能が低下しやすくなる傾向にあるためであり、また該微粒子酸化セリウムの平均一次粒子径が1nmより小さいと分散が困難になり、該微粒子酸化セリウムの製造自体も困難になる傾向がある。
【0014】
上記平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡法によって微粒子酸化セリウムの形、大きさを直接観察し、値を計測する。
具体的には、透過型電子顕微鏡(トプコン電子ビームサービス製002B)で加速電圧200KV、直接倍率29000倍で観察して、写真撮影をする。次いで、得られた写真をスキャナーでコンピューターに取り込み、コンピューターに予めインストールした画像解析ソフト(Scion Corporation製、Scion Image for Windows(登録商標))に供することで、平均一次粒子径を求めることができる。当該画像解析ソフトにおいては、2次元投影形として観察される像と同面積の円の直径(ヘイウッド径)を一次粒子径であるとみなし、平均一次粒子径は、任意に選択された300個の微粒子酸化セリウムの一次粒子径を測定し、そのメジアン径(中位径)として算出する。
【0015】
本発明におけるポリオールエステル化合物は、1個以上の水酸基が脂肪酸エステル化されてなるポリオールエステル化合物であれば、分子内の全ての水酸基が脂肪酸エステル化されたものであっても、分子内の一部の水酸基のみが脂肪酸エステル化されたものであってもよいが、分子内の一部の水酸基のみが脂肪酸エステル化されたポリオールエステル化合物、換言すれば、脂肪酸エステル化されていない1個以上の水酸基を有するポリオールエステル化合物であるのが好ましい。このようなポリオールエステル化合物を用いることで、分子内の全ての水酸基が脂肪酸エステル化されたポリオールエステル化合物を用いた場合よりも透明性がさらに改善されるためである。これは、ポリオールエステル化合物中における脂肪酸エステル化されていない水酸基は、酸化セリウム表面に吸着しやすいことに起因すると考えられる。すなわち、脂肪酸エステル化されていない水酸基を分子内に1個以上有するポリオールエーテル化合物を用いることで酸化セリウム含有粒子表面への吸着性が向上され、熱可塑性樹脂や油剤などの有機マトリクスに対する酸化セリウム含有粒子の分散性が向上されるためであると考えられる。
【0016】
本発明に用いられるポリオールエステル化合物は、1個以上の水酸基、好ましくは2個以上の水酸基、より好ましくは3個以上の水酸基が脂肪酸エステル化されてなるものである。
【0017】
本発明に用いられるポリオールエステル化合物のエステル化度は、5〜95%の範囲が好ましく、5〜90%の範囲がより好ましく、10〜80%の範囲がさらに好ましい。エステル化度が5%未満であると、樹脂や油剤との相溶性が悪くなる傾向があり、エステル化度が95%より大きいと、酸化セリウム含有粒子表面に吸着する機能が小さくなり、熱可塑性樹脂や油剤などの有機マトリクスに対する酸化セリウム含有粒子の分散性が低下し、結果として透明性が低下する虞があるためである。
ポリオールエステル化合物のエステル化度は、下記式(1)から算出される値で定義される。
【0018】
【数1】
【0019】
なお、上記エステル化度の値が整数にならない場合には、小数点以下を切り上げて整数とするものとする。
【0020】
また、本発明において用いられるポリオールエステル化合物の原料となるポリオール類における水酸基の数は、上述のように2個以上であればよいが、より多くの水酸基がある方が、多点吸着により強固に粒子表面に吸着するため、3個以上であるのが好ましく、4個以上であるのがより好ましい。なお該原料となるポリオール類における水酸基の数の上限に特に限定はないが、通常、30個以下、好ましくは20個以下、より好ましくは15個以下である。
【0021】
かかるポリオールエステル化合物としては、大きく分けて〔1〕ポリグリセリン誘導体、または〔2〕二塩基酸ポリオール類エステルが、特に好適に使用できる。以下、〔1〕ポリグリセリン誘導体、および〔2〕二塩基酸ポリオール類エステルについて、それぞれ詳述する。
【0022】
〔1〕ポリグリセリン誘導体
本発明におけるポリグリセリン誘導体は、ポリグリセリン1分子に存在する1個以上の水酸基が脂肪酸エステル化された形の誘導体、換言すれば、ポリグリセリン脂肪酸エステルであればよい。ここで脂肪酸エステル化の形態は、ポリグリセリン1分子内の水酸基が複数の異種脂肪酸のアシル基でエステル化された形態であってもよく、また同一脂肪酸のアシル基のみでエステル化された形態であってもよい。また上述のように、脂肪酸エステル化されているのは、ポリグリセリン1分子に存在する水酸基の全部であっても一部であってもよいが、ポリグリセリン1分子に存在する水酸基の一部が脂肪酸エステル化されたものであるのが好ましい。具体的には、ポリグリセリンの1分子において、全水酸基の5〜95%の水酸基が脂肪酸エステル化されたものであるのが好ましく、全水酸基の5〜90%の水酸基が脂肪酸エステル化されたものであるのがより好ましく、全水酸基の10〜80%の水酸基が脂肪酸エステル化されたものであるのがさらに好ましい(好ましくはエステル化度が5〜95%、より好ましくはエステル化度が5〜90%、さらに好ましくはエステル化度が10〜80%)。上記脂肪酸エステル化された水酸基の数が全水酸基の5%より少ない(エステル化度が5%より小さい)と、樹脂や油剤との相溶性が悪くなる傾向があり、上記脂肪酸エステル化された水酸基の数が全水酸基の95%より多い(エステル化度が95%より大きい)と、酸化セリウム含有粒子表面に吸着する機能が小さくなり、熱可塑性樹脂や油剤などの有機マトリクスに対する酸化セリウム含有粒子の分散性が低下し、結果として透明性が低下する虞がある。
【0023】
上記ポリグリセリン誘導体の原料となるポリグリセリンは、工業的に製造されている市販品、たとえばポリグリセリン#310(阪本薬品工業製)、ポリグリセリン#500(阪本薬品工業製)、ポリグリセリン#750(阪本薬品工業製)、ジグリセリン(阪本薬品工業製)などを好適に用いることができる。ポリグリセリンの縮合度は、2〜30であれば良いが、生成する脂肪酸エステルの性状、エステル化反応時の溶剤に対する溶解性、コストなどの観点から3〜10がより好ましい。なお本明細書中でいう「ポリグリセリン」は、グリセリンから反応、蒸留、精製して得られるポリオールの一種であって、4個以上の水酸基を有するものを指し、20個以下の水酸基を有するものであることが好ましい。
【0024】
ポリグリセリン誘導体における脂肪酸エステルを構成するアシル基としては、炭素数4〜24の直鎖状または分枝鎖状のアシル基、たとえば、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基などを挙げることができる。上記中でも、界面接着性の向上の観点からは、オクタノイル基(炭素数:8)以上の炭素数を有するアシル基であることが好ましく、ドデカノイル基(炭素数:12)以上の炭素数を有するアシル基であることがより好ましい。なお工業的に入手しやすいという観点からは、炭素数18以下のアシル基であることが好ましい。
【0025】
〔2〕二塩基酸ポリオール類エステル
本発明における二塩基酸ポリオール類エステルは、ポリオール類(ポリオールまたはポリオール縮合物)の二塩基酸エステルであって、1個以上の水酸基が脂肪酸エステル化されたものであればよい。ここで脂肪酸エステル化の形態は、二塩基酸ポリオール類1分子内の水酸基が複数の異種脂肪酸のアシル基でエステル化された形態であってもよく、同一脂肪酸のアシル基のみでエステル化された形態であってもよい。ポリオール類1分子に存在する水酸基のうち、エステル化されているのは、ポリオール類1分子内の水酸基の全部(ポリオール類1分子内の水酸基全部が二塩基酸およびその他の適当な脂肪酸によってエステル化されている場合など)であっても一部であってもよいが、ポリオール類1分子に存在する水酸基の一部がエステル化されたものであるのが好ましい。具体的には、ポリオール類の1分子において、全水酸基の5〜95%の水酸基がエステル化されたものであるのが好ましく、全水酸基の5〜90%の水酸基がエステル化されたものであるのがより好ましく、全水酸基の10〜80%の水酸基がエステル化されたものであるのがさらに好ましい(好ましくはエステル化度が5〜95%、より好ましくはエステル化度が5〜90%、さらに好ましくはエステル化度が10〜80%)。上記エステル化された水酸基の数が全水酸基の5%より少ない(エステル化度が5%より小さい)と、樹脂や油剤との相溶性が悪くなる傾向があり、エステル化された水酸基が全水酸基の95%より多い(エステル化度が95%より大きい)と、酸化セリウム含有粒子表面に吸着する機能が小さくなり、熱可塑性樹脂や油剤などの有機マトリクスに対する酸化セリウム含有粒子の分散性が低下し、結果として透明性が低下する虞がある。
【0026】
二塩基酸ポリオール類エステルに使用するポリオールまたはポリオール縮合物としては、分子内に3個以上の水酸基を有するものであれば特に限定はされないが、例えば、グリセリン、及びそのグリセリン縮合物であるジグリセリン、テトラグリセリン、ヘキサグリセリン、デカグリセリン等のポリグリセリン、ペンタエリスリトール、及びその縮合物であるジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等のポリペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン及びその縮合物、トリメチロールエタン及びその縮合物などを挙げることができる。
【0027】
二塩基酸ポリオール類エステルに使用する二塩基酸としては、電離して一分子から二個の水素イオンを生じる酸であれば特に限定はないが、たとえばアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、コハク酸等の飽和脂肪族二塩基酸、フタル酸、マレイン酸等の不飽和脂肪族二塩基酸などの、1分子内にカルボキシル基を2個有する炭化水素化合物(二塩基脂肪酸)であるのが特に好ましい。
【0028】
本発明における二塩基酸ポリオール類エステルは、上記した中でも、分子内に3個以上の水酸基を有するポリオールまたはポリオール縮合物と、二塩基酸との二塩基酸エステル化合物中に残っている水酸基の少なくとも1個を、脂肪酸にて脂肪酸エステル化した二塩基酸ポリオール類エステルであることが好ましい。この場合において、上記二塩基酸エステル化合物において用いられた二塩基酸ではない脂肪酸(二塩基酸とのエステル化合物中に残っている水酸基を脂肪酸エステル化した脂肪酸)由来のアシル基としては、炭素数4〜24の直鎖状または分枝鎖状のアシル基、たとえば、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基などを挙げることができる。上記中でも、界面接着性の向上の観点からは、オクタノイル基(炭素数:8)以上の炭素数を有するアシル基であることが好ましく、ドデカノイル基(炭素数:12)以上の炭素数を有するアシル基であることがより好ましい。なお工業的に入手しやすいという観点からは、炭素数18以下のアシル基であることが好ましい。
【0029】
上述した〔1〕または〔2〕のポリオールエステル化合物を合成する際のエステル化反応は、通常の方法で良いが、たとえば以下の(1)〜(4)のような方法を挙げることができる。
(1)原料となるポリグリセリンまたは他のポリオールと、脂肪酸または/及び二塩基酸を、有機溶媒中または無溶媒で加熱混合し、脱水反応させる。この時にルイス酸などのエステル化触媒存在下、反応を行うのが望ましい。
(2)原料となるポリグリセリンまたは他のポリオールに、脂肪酸または/及び二塩基酸のクロライドを反応させ、エステル化する。
(3)原料となるポリグリセリンまたは他のポリオールと、脂肪酸または/及び二塩基酸の低級アルコールとのエステルを有機溶媒中または無溶媒で加熱混合し、エステル化触媒存在下、エステル交換反応を行う。
(4)原料となるポリグリセリンまたは他のポリオールに、脂肪酸または/及び二塩基酸の酸無水物を反応させ、エステル化する。
【0030】
被覆のための表面処理方法は特に限定されないが、酸化セリウム含有粒子と上記ポリオールエステル化合物とをヘンシェルミキサーなどのせん断応力のかかる高速ミキサーで混合する乾式処理法、上記ポリオールエステル化合物を溶剤に溶解または分散乳化したものに酸化セリウムを入れたスラリー混合物を攪拌した後、乾燥して処理粉体を得る湿式法などが挙げられる。湿式法に使用する溶剤は特に限定されないが、水、ヘキサン等の炭化水素系溶剤、トルエン等の芳香族系溶剤、エタノール等のアルコール系溶剤、アセトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル等のエステル系溶剤などを挙げることができる。また、樹脂や油剤に酸化セリウムを添加して混合する際に同時に上記ポリオールエステル化合物を添加して、分散と同時に表面処理するインテグラルブレンド法による処理を行っても何ら差し支えない。
【0031】
本発明の表面処理酸化セリウムにおいて、上記ポリオールエステル化合物による表面処理量(被覆量)に特に制限はないが、酸化セリウム含有粒子100重量部に対して0.1〜100重量部が好ましく、1〜50重量部がより好ましい。ポリオールエステル化合物の表面処理量が酸化セリウム含有粒子100重量部に対して0.1重量部未満であると、樹脂や油剤に対する分散性が低下しやすくなり、また酸化セリウム含有粒子100重量部に対して100重量部を越えると、酸化セリウム含有粒子表面に吸着されない分子が多くなり、樹脂に混練した際にブリード現象を引き起こしたり、機械物性を低下させる恐れがある。また油剤を配合した化粧料に添加した場合には、酸化セリウム含有粒子の表面に吸着されないポリオールエステル化合物が他成分に対して悪影響を及ぼす虞があり好ましくない。
【0032】
なお本発明は、上述してきた表面処理酸化セリウムである紫外線吸収剤をも提供するものである。本発明の紫外線吸収剤は、熱可塑性樹脂組成物、油剤組成物、化粧料組成物など、様々な形態にて実現され得る。
【0033】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と、上記の表面処理酸化セリウムとを含有することを特徴とする。ここで、表面処理酸化セリウムの含量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.05〜10重量部が好ましく、0.5〜5重量部がより好ましい。表面処理酸化セリウムの含量が熱可塑性樹脂100重量部に対して0.05重量部より小さいと紫外線吸収能が充分に付与されず、10重量部より大きい場合には紫外線吸収能が有意義に向上しなくなる他、透明性が損なわれる恐れがある。
【0034】
本発明で使用される熱可塑性樹脂としては、熱可塑性を示す樹脂であれば良く、例えば塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのポリ塩化ビニル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリスチレンなどのポリスチレン系樹脂;6ナイロン、66ナイロンなどのポリアミド系樹脂;ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン等のエンジニアリングプラスチック;その他、複合材料の分野で使用できる熱可塑性樹脂を挙げることができ、これら複数の樹脂を併用することもできる。これらの中で、特に紫外線吸収能の小さいポリオレフィン系樹脂が紫外線吸収能が著しく改善するという観点で好適である。
【0035】
本発明の油剤組成物は、有機系油剤と、上記の表面処理酸化セリウムとを含有することを特徴とする。ここで、表面処理酸化セリウムの含量は、有機系油剤100重量部に対して0.05〜500重量部が好ましく、0.5〜5重量部がより好ましく、この範囲で化粧料の種類や必要な紫外線吸収能によって添加量を調整する。表面処理酸化セリウムの含量が有機系油剤100重量部に対して0.05重量部未満であると紫外線吸収能が充分に付与されず、500重量部を越える場合には紫外線吸収能が有意義に向上しなくなる他、透明性が損なわれる虞がある。
【0036】
有機系油剤としては、例えば流動パラフィン、ワセリン等の鉱物油系;シリコーンオイル等の合成油系;ラノリン、トリグリセライド、スクワラン等の動植物油系などを挙げることができるが、特に限定されるものではない。また液状、ワックス状、固体状の有機系油剤のいずれにも適用できる。
【0037】
本発明の化粧料組成物としては、ファンデーション、口紅、日焼け止めローションなどを挙げることができるが、紫外線を遮断する機能を必要とする化粧料であれば特に限定されない。
【0038】
さらに本発明の熱可塑性樹脂組成物及び化粧料組成物には、必要に応じて本発明の特徴を損なわない範囲で、その他の添加剤、安定剤、有機または無機の充填剤、有機または無機の顔料、染料、可塑剤、滑剤、整泡剤、発泡剤、難燃剤、他の紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、増核剤、防腐剤、香料、保湿剤、界面活性剤などを1種または複数併用して添加することができる。
【0039】
【実施例】
次に、本発明について、その内容を実施例及び比較例を挙げて詳細に説明する。なお、以下の実施例は本発明の範囲を限定するものではなく。本発明の内容をより明確に示すために記載されたものである。
【0040】
(製造例1)ポリグリセリン誘導体PG−1の調製
温度計、攪拌機、窒素導入入口及び還流管を備えた反応フラスコ内に、ステアリン酸 50.0重量部、ポリグリセリン(阪本薬品工業製ポリグリセリン#500、縮合度:6.7、水酸基数:8.7個)87.88重量部及びテトラブチルチタネート(純正化学製)0.01重量部を仕込み窒素気流下で160℃まで4時間かけて昇温し、160℃で2時間加熱した後、反応液の酸価が1(mgKOH/g)程度になるまで加熱を行った。次いで室温まで冷却した。
以下、この反応液をポリグリセリン誘導体PG−1と称する。ポリグリセリン誘導体PG−1に含まれるポリグリセリン誘導体は、酸価が0.5の特性を有しており、原料の重量比から計算したエステル化度は、12%である。
【0041】
(製造例2)ポリグリセリン誘導体PG−2の調製
温度計、攪拌機、窒素導入入口及び還流管を備えた反応フラスコ内に、ステアリン酸 50.0重量部、ポリグリセリン(阪本薬品工業製ポリグリセリン#500、縮合度:6.7、水酸基数:8.7個)29.5重量部及びテトラブチルチタネート(純正化学製)0.01重量部を仕込み窒素気流下で160℃まで4時間かけて昇温し、160℃で2時間加熱した後、反応液の酸価が1(mgKOH/g)程度になるまで加熱を行った。次いで室温まで冷却した。
以下、この反応液をポリグリセリン誘導体PG−2と称する。ポリグリセリン誘導体PG−2に含まれるポリグリセリン誘導体は、酸価が0.8の特性を有しており、原料の重量比から計算したエステル化度は、35%である。
【0042】
(製造例3)ポリグリセリン誘導体PG−3の調製
温度計、攪拌機、窒素導入入口及び還流管を備えた反応フラスコ内に、ステアリン酸 50.0重量部、ジグリセリン(阪本薬品工業製、縮合度:2)9.74重量部及びテトラブチルチタネート(純正化学製)0.01重量部を仕込み窒素気流下で160℃まで4時間かけて昇温し、160℃で2時間加熱した後、反応液の酸価が1(mgKOH/g)程度になるまで加熱を行った。次いで室温まで冷却した。
以下、この反応液をポリグリセリン誘導体PG−3と称する。ポリグリセリン誘導体PG−3に含まれるポリグリセリン誘導体は、酸価が1.3の特性を有しており、原料の重量比から計算したエステル化度は、75%である。
【0043】
(製造例4)ポリグリセリン誘導体PG−4の調製
温度計、攪拌機、窒素導入入口及び還流管を備えた反応フラスコ内に、ステアリン酸 50.0重量部、ポリグリセリン(阪本薬品工業製ポリグリセリン#310、縮合度4.2、水酸基数:6.2個)18.16重量部及びテトラブチルチタネート(純正化学製)0.01重量部を仕込み窒素気流下で160℃まで4時間かけて昇温し、160℃で2時間加熱した後、反応液の酸価が1(mgKOH/g)程度になるまで加熱を行った。次いで室温まで冷却した。
以下、この反応液をポリグリセリン誘導体PG−4と称する。ポリグリセリン誘導体PG−4に含まれるポリグリセリン誘導体は、酸価が0.8の特性を有しており、原料の重量比から計算したエステル化度は、48%である。
【0044】
(製造例5)ポリグリセリン誘導体PG−5の調製
温度計、攪拌機、窒素導入入口及び還流管を備えた反応フラスコ内に、ステアリン酸 50.0重量部、ポリグリセリン(阪本薬品工業製ポリグリセリン#750、縮合度10.1、水酸基数:12.1個)43.94重量部及びテトラブチルチタネート(純正化学製)0.01重量部を仕込み窒素気流下で160℃まで4時間かけて昇温し、160℃で2時間加熱した後、反応液の酸価が1(mgKOH/g)程度になるまで加熱を行った。次いで室温まで冷却した。
以下、この反応液をポリグリセリン誘導体PG−5と称する。ポリグリセリン誘導体PG−5に含まれるポリグリセリン誘導体は、酸価が0.7の特性を有しており、原料の重量比から計算したエステル化度は、25%である。
【0045】
(製造例6)二塩基酸ポリオール類エステルPE−1の調製
温度計、攪拌機、窒素導入入口及び還流管を備えた反応フラスコ内に、アジピン酸(純正化学製)24.4重量部、ステアリン酸(純正化学製)47.5重量部、ジペンタエリスリトール(東京化成製)84.8重量部及びp−トルエンスルホン酸(純正化学製)0.02重量部を仕込み窒素気流下で180℃まで1時間かけて昇温し、180℃で2時間加熱した後、反応液の酸価が1(mgKOH/g)程度になるまで加熱を行った。ついで、室温まで冷却した。
以下、この反応液を二塩基酸ポリオール類エステルPE−1と称する。二塩基酸ポリオール類エステルPE−1は、酸価が0.8、エステル化度が25%であった。
【0046】
(製造例7)二塩基酸ポリオール類エステルPE−2の調製
温度計、攪拌機、窒素導入入口及び還流管を備えた反応フラスコ内に、無水フタル酸(純正化学製)12.4重量部、ラウリン酸(純正化学製)16.8重量部、ジペンタエリスリトール(東京化成製)42.7重量部及びテトラブチルチタネート(東京化成製)0.01重量部を仕込み窒素気流下で180℃まで1時間かけて昇温し、180℃で2時間加熱した後、反応液の酸価が1(mgKOH/g)程度になるまで加熱を行った。ついで、室温まで冷却した。
以下、この反応液を二塩基酸ポリオール類エステルPE−2と称する。二塩基酸ポリオール類エステルPE−2は、酸価が0.6、エステル化度が25%であった。
【0047】
(製造例8)二塩基酸ポリオール類エステルPE−3の調製
温度計、攪拌機、窒素導入入口及び還流管を備えた反応フラスコ内に、アジピン酸(純正化学製)16.1重量部、ステアリン酸(純正化学製)47.5重量部、ジペンタエリスリトール(東京化成製)84.8重量部及びp−トルエンスルホン酸(純正化学製)0.02重量部を仕込み窒素気流下で180℃まで1時間かけて昇温し、180℃で2時間加熱した後、反応液の酸価が1(mgKOH/g)程度になるまで加熱を行った。ついで、室温まで冷却した。
以下、この反応液を二塩基酸ポリオール類エステルPE−3と称する。二塩基酸ポリオール類エステルPE−3は、酸価が0.9、エステル化度が19%であった。
【0048】
(製造例9)二塩基酸ポリオール類エステルPE−4の調製
温度計、攪拌機、窒素導入入口及び還流管を備えた反応フラスコ内に、アジピン酸(純正化学製)24.4重量部、ペンタエリスリトール(純正化学製)84.8重量部を仕込み窒素気流下で240℃まで1時間かけて昇温し、ステアリン酸(純正化学製)48.3重量部及びp−トルエンスルホン酸(純正化学製)0.02重量部を加え、さらに240℃で2時間加熱した後、反応液の酸価が1(mgKOH/g)程度になるまで加熱を行った。ついで、室温まで冷却した。
以下、この反応液を二塩基酸ポリオール類エステルPE−4と称する。二塩基酸ポリオール類エステルPE−4は、酸価が0.2、エステル化度が37%であった。
【0049】
(製造例10)二塩基酸ポリオール類エステルPE−5の調製
温度計、攪拌機、窒素導入入口及び還流管を備えた反応フラスコ内に、アジピン酸(純正化学製)14.6重量部、ポリグリセリン(阪本薬品工業製ポリグリセリン#310、縮合度4.2)62.8重量部、ラウリン酸(純正化学製)40.0重量部及びp−トルエンスルホン酸(純正化学製)0.01重量部を仕込み窒素気流下で180℃まで1時間かけて昇温し、180℃で2時間加熱した後、反応液の酸価が1(mgKOH/g)程度になるまで加熱を行った。ついで、室温まで冷却した。
以下、この反応液を二塩基酸ポリオール類エステルPE−5と称する。二塩基酸ポリオール類エステルPE−5は、酸価が0.5、エステル化度が33%であった。
【0050】
(製造例11)二塩基酸ポリオール類エステルPE−6の調製
温度計、攪拌機、窒素導入入口及び還流管を備えた反応フラスコ内に、アジピン酸(純正化学製)29.2重量部、ポリグリセリン(阪本薬品工業製ポリグリセリン#500、縮合度6.7)138.6重量部、ステアリン酸(純正化学製)85.2重量部及びp−トルエンスルホン酸(純正化学製)0.01重量部を仕込み窒素気流下で180℃まで1時間かけて昇温し、180℃で2時間加熱した後、反応液の酸価が1(mgKOH/g)程度になるまで加熱を行った。ついで、室温まで冷却した。
以下、この反応液を二塩基酸ポリオール類エステルPE−6と称する。二塩基酸ポリオール類エステルPE−6は、酸価が0.3、エステル化度が29%であった。
【0051】
(製造例12)二塩基酸ポリオール類エステルPE−7の調製
温度計、攪拌機、窒素導入入口及び還流管を備えた反応フラスコ内に、アジピン酸(純正化学製)20.2重量部、ポリグリセリン(阪本薬品工業製ポリグリセリン#750、縮合度10.1)151.6重量部、ステアリン酸(純正化学製)113.6重量部及びp−トルエンスルホン酸(純正化学製)0.01重量部を仕込み窒素気流下で180℃まで1時間かけて昇温し、180℃で2時間加熱した後、反応液の酸価が1(mgKOH/g)程度になるまで加熱を行った。ついで、室温まで冷却した。
以下、この反応液を二塩基酸ポリオール類エステルPE−7と称する。二塩基酸ポリオール類エステルPE−7は、酸価が0.6、エステル化度が25%であった。
【0052】
(実施例1)
酸化セリウム含有粒子(日本電工製、セリガードSC4060、平均一次粒子径22.6nm)100重量部、製造例1で得られたポリグリセリン誘導体PG−1 10重量部をヘンシェルミキサーで混合し(1720rpm、15分)、表面処理酸化セリウムを製造した。
【0053】
(実施例2〜12)
ポリグリセリン誘導体PG−1の代わりに、製造例2〜12で得られたポリグリセリン誘導体PG−2〜5、及び二塩基酸ポリオール類エステルPE−1〜PE−7を用いたこと以外は実施例1と同様にして、それぞれ表面処理酸化セリウムを製造した。
【0054】
(実施例13)
酸化セリウム含有粒子(日本電工製、セリガードSC4060、平均一次粒子径22.6nm)100重量部、製造例2で得られたポリグリセリン誘導体PG−2 20重量部をヘンシェルミキサーで混合し(1720rpm、15分)、表面処理酸化セリウムを製造した。
【0055】
(実施例14)
酸化セリウム含有粒子(日本電工製、セリガードSC4060、平均一次粒子径22.6nm)100重量部、製造例2で得られたポリグリセリン誘導体PG−2 50重量部をヘンシェルミキサーで混合し(1720rpm、15分)、表面処理酸化セリウムを製造した。
【0056】
(比較例1)
酸化セリウム含有粒子(日本電工製、セリガードSC4060、平均一次粒子径22.6nm)100重量部、ステアリン酸(純正化学製、1級)10重量部をヘンシェルミキサーで混合し(1720rpm、15分)、表面処理酸化セリウムを製造した。
【0057】
(比較例2)
酸化セリウム含有粒子(日本電工製、セリガードSC4060、平均一次粒子径22.6nm)100重量部、ステアリン酸(純正化学製、1級)20重量部をヘンシェルミキサーで混合し(1720rpm、15分)、表面処理酸化セリウムを製造した。
【0058】
(比較例3)
酸化セリウム含有粒子(日本電工製、セリガードSC4060、平均一次粒子径22.6nm)100重量部、ステアリン酸(純正化学製、1級)50重量部をヘンシェルミキサーで混合し(1400rpm、15分)、表面処理酸化セリウムを製造した。
実施例1〜14および比較例1〜3の組成を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
(実施例15)
ポリプロピレン樹脂(日本ポリオレフィン製、7064wf1)100重量部、及び実施例1で得られた表面処理酸化セリウム1.0重量部を、ヘンシェルミキサーで混合し(1720rpm、5分)、二軸混練機で混練後、ペレット化を行った。得られたペレットをプレス成型機で成型して15×15cm、厚さ1mmのシート状成型品を製造し、ヘイズ、300nm及び400nmでの透過率を測定した。
【0061】
(実施例16〜28)
表面処理酸化セリウムの代わりに、実施例2〜14で得られた表面処理酸化セリウムを用いたこと以外は、実施例15と同様にして、それぞれ成型品を製造し、ヘイズ、300nm及び400nmでの透過率を測定した。
【0062】
(実施例29)
実施例1で得られた表面処理酸化セリウムを0.5重量部使用する以外は実施例15と同様にして、成型品を製造し、ヘイズ、300nm及び400nmでの透過率を測定した。
【0063】
(実施例30,31)
実施例13,14で得られた表面処理酸化セリウムをそれぞれ用いたこと以外は実施例29と同様にして、それぞれ成型品を製造し、ヘイズ、300nm及び400nmでの透過率を測定した。
【0064】
(実施例32)
実施例1で得られた表面処理酸化セリウムを1.0重量部の代わりに1.5重量部使用する以外は実施例15と同様にして成型品を製造し、ヘイズ、300nm及び400nmでの透過率を測定した。
【0065】
(実施例33,34)
実施例13,14で得られた表面処理酸化セリウムを用いたこと以外は実施例32と同様にして、それぞれ成型品を製造し、ヘイズ、300nm及び400nmでの透過率を測定した。
【0066】
(比較例4)
実施例15で使用したポリプロピレン樹脂のみをプレス成型機で成型して15×15cm、厚さ1mmのシート状成型品を製造し、ヘイズ、300nm及び400nmでの透過率を測定した。
【0067】
(比較例5)
表面処理酸化セリウムの代わりに未処理の酸化セリウム0.5重量部を使用すること以外は実施例15と同様にして、成型品を製造し、ヘイズ、300nm及び400nmでの透過率を測定した。
【0068】
(比較例6)
表面処理酸化セリウムの代わりに未処理の酸化セリウム1.0重量部を使用すること以外は実施例15と同様にして、成型品を製造し、ヘイズ、300nm及び400nmでの透過率を測定した。
【0069】
(比較例7)
表面処理酸化セリウムの代わりに未処理の酸化セリウム1.5重量部を使用すること以外は実施例15と同様にして、成型品を製造し、ヘイズ、300nm及び400nmでの透過率を測定した。
【0070】
(比較例8〜10)
表面処理酸化セリウムの代わりに、比較例1〜3で得られた表面処理酸化セリウムを用いたこと以外は実施例15と同様にして、それぞれ成型品を製造し、ヘイズ、300nm及び400nmでの透過率を測定した。
【0071】
実施例15〜34および比較例4〜10の結果を表2に示す。なお、ヘイズおよび各波長における透過率の評価基準は以下のとおりである。
ヘイズ : 40%未満…○; 40%以上…×
300nm透過率: 10%未満…○; 10%以上…×
400nm透過率: 70%以上…○; 70%未満…△
【0072】
【表2】
【0073】
(実施例35)
流動パラフィン(純正化学製、一級)30重量部に、実施例1で得られた表面処理酸化セリウムを3重量部添加し、攪拌した後、超音波で30分間分散させたところ、流動性のあるペースト状の油剤組成物を得た。外観は半透明で酸化セリウムが良好に分散しており、肌に塗布すると透明感のある油膜を形成した。
【0074】
(実施例36〜48)
表面処理酸化セリウムの代わりに、実施例2〜14で得られた表面処理酸化セリウムを用いたこと以外は実施例35と同様にして、油剤組成物をそれぞれ調製した。いずれも流動性のあるペースト状で、外観は半透明で酸化セリウムが良好に分散しており、肌に塗布すると透明感のある油膜を形成した。
【0075】
(比較例11)
表面処理酸化セリウムを使用する代わりに、未処理の酸化セリウムを使用すること以外は、実施例35と同様にして油剤組成物を得た。性状はペースト状であるが流動性がなく不透明で、酸化セリウムの分散性が悪く、肌に塗布すると、白っぽい油膜(白うき)になった。
【0076】
(比較例12〜14)
表面処理酸化セリウムを使用する代わりに、比較例1〜3で得られた表面処理酸化セリウムを用いたこと以外は実施例35と同様にして、油剤組成物をそれぞれ調製した。油剤組成物は流動性のある不透明なペースト状で、酸化セリウムは良好に分散していたが、酸化セリウム表面に吸着されないポリオール成分が流動パラフィンに溶解していなかった。また肌に塗布すると、溶解していないポリオール成分の粒子が目視で確認される油膜を形成した。得られた油剤組成物の性状はペースト状であるが流動性がなく不透明で、酸化セリウムの分散性が悪く、肌に塗布すると、白っぽい油膜(白うき)になった。
【0077】
実施例35〜48および比較例11〜14の評価結果を表3に示す。なお、評価基準は以下のとおりである。
流動性 : ○→あり ; ×→なし
透明性 : ○→半透明 ; ×→不透明
肌に塗布時の油膜外観 : ○→透明感あり; ×→透明感なし
【0078】
【表3】
【0079】
【発明の効果】
以上のように、本発明の表面処理酸化セリウムは、熱可塑性樹脂や有機系油剤などの有機マトリクスに良好に分散する。これを配合した熱可塑性樹脂組成物は、紫外線吸収能に優れ、透明性も向上していることがわかる。また有機系油剤に配合した場合にも透明性が良好で、紫外線吸収能や透明性が良好な化粧料を製造することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、紫外線吸収能を有する熱可塑性樹脂、油剤、化粧料に関する。より詳しくは、特定のポリオールエステル化合物で被覆された酸化セリウムを含有することにより、紫外線吸収能に優れ、透明性が著しく改善された熱可塑性樹脂、油剤組成物および当該油剤組成物を含有する化粧料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より熱可塑性樹脂や化粧料に紫外線吸収能を付与する目的で紫外線吸収剤が使用されており、大きく分けて無機系紫外線吸収剤と有機系紫外線吸収剤に分類される。
【0003】
前者の無機系紫外線吸収剤としては、本発明に使用されている酸化セリウムの他、酸化チタン、酸化亜鉛などを挙げることができるが、いずれも粒子表面の触媒活性が強く、樹脂や化粧料用の油剤などの有機マトリクスに分散させた時に有機マトリクスの酸化劣化を促進してしまう欠点がある。また酸化チタンは屈折率が大きく可視光領域での透明性に劣り、化粧料などに使用すると白ウキするなどの問題点がある。酸化亜鉛は化粧料などに使用すると汗などで溶出するなどの問題点を有する(特許文献1および2、非特許文献1参照)。
【0004】
後者の有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、サリチレート系などがあるが、樹脂表面に移行するブリード現象を起こし易く、安全性、表面印刷性、外観に問題が発生する場合がある。また有機化合物であるために耐熱性に劣り、また吸収剤自体が紫外線により徐々に分解する為、リサイクル性など長期にわたる安定性に問題がある(非特許文献2参照)。
【0005】
一方、無機系紫外線吸収剤は、有機系紫外線吸収剤よりも耐熱性や長期安定性に優れるなどの特長を有するが、紫外線吸収能を有する微粒子は熱可塑性樹脂や化粧料中での分散性が悪く二次凝集してしまい、本来の一次粒子径から期待される透明性が出ない。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−207251号公報
【特許文献2】
特開平6−145026号公報
【非特許文献1】
東レリサーチセンター調査研究事業部編,「機能性添加材料の新展開」,(株)東レリサーチセンター,1993年4月1日,p.171−181
【非特許文献2】
大勝靖一編,「高分子安定化の総合技術」,(株)シーエムシー,1997年3月31日,p.111−120
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、紫外線吸収能に優れ、透明性も良好な熱可塑性樹脂組成物、油剤組成物、化粧料組成物を提供すること並びにかかる組成物を提供しうる表面処理酸化セリウム、即ち紫外線吸収剤を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、酸化セリウム含有粒子表面を、特定のポリオールエステル化合物で被覆することにより、紫外線吸収能に優れ、透明性も改善された樹脂組成物、油剤組成物、化粧料組成物を作成できることを見出し、本発明の完成に至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)酸化セリウム含有粒子が、1個以上の水酸基が脂肪酸エステル化されたポリオールエステル化合物にて被覆されてなることを特徴とする表面処理酸化セリウム。
(2)酸化セリウム含有粒子が、平均一次粒子径が1〜100nmの微粒子酸化セリウムを含有するものであることを特徴とする、上記(1)に記載の表面処理酸化セリウム。
(3)ポリオールエステル化合物の表面処理量が、酸化セリウム含有粒子100重量部に対して、0.1〜100重量部であることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の表面処理酸化セリウム。
(4)ポリオールエステル化合物が、脂肪酸エステル化されていない水酸基を1個以上有するものである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の表面処理酸化セリウム。
(5)ポリオールエステル化合物が、ポリグリセリン分子において1個以上の水酸基が脂肪酸エステル化されたポリグリセリン誘導体である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の表面処理酸化セリウム。
(6)ポリオールエステル化合物が、ポリオールまたはポリオール縮合物の二塩基酸エステルであって、1個以上の水酸基が脂肪酸エステル化された二塩基酸ポリオール類エステルである上記(1)〜(4)のいずれかに記載の表面処理酸化セリウム。
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の表面処理酸化セリウムを含有することを特徴とする、紫外線吸収剤。
(8)熱可塑性樹脂と、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の表面処理酸化セリウムとを含有することを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物。
(9)熱可塑性樹脂が、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂またはポリアミド系樹脂から選ばれる少なくともいずれかである、上記(8)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(10)有機系油剤と、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の表面処理酸化セリウムとを含有することを特徴とする、油剤組成物。
(11)上記(10)に記載の油剤組成物を含有することを特徴とする、化粧料組成物。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の表面処理酸化セリウムは、酸化セリウム含有粒子を、1個以上の水酸基が脂肪酸エステル化されたポリオールエステル化合物にて被覆してなるものである。本明細書中における「ポリオールエステル化合物」とは、2個以上の水酸基を有する化合物であるポリオールまたはポリオール縮合物(以下、「ポリオール類」と呼ぶことがある。)において、1個以上の水酸基がエステル化されてなる化合物を指す。本発明の表面処理酸化セリウムは、このポリオールエステル化合物の中でも、1個以上の水酸基が脂肪酸によってエステル化されたポリオールエステル化合物にて、酸化セリウム含有粒子を被覆してなるものである。ここで、「被覆」とは、酸化セリウム含有粒子の外側を覆って、表面処理酸化セリウムの最外に上記ポリオールエーテル化合物による層が形成されてなることを指す。当該ポリオールエーテル化合物による層は、酸化セリウム含有粒子を完全に覆うように形成されていてもよく、また、酸化セリウム含有粒子の一部が露出してなるように形成されていてもよい。
【0010】
本発明の表面処理酸化セリウムによれば、上記のような特定のポリオールエステル化合物を含有することによって、紫外線吸収能に優れ、かつ従来よりも透明性が著しく改善された熱可塑性樹脂組成物、油剤組成物、化粧料組成物を提供することができる。これらの効果が発現する機構については、詳細は不明であるが、本発明者らは次のように考えている。
すなわち本発明は、酸化セリウム含有粒子を、1個以上の水酸基が脂肪酸エステル化されたポリオールエーテル化合物にて被覆したものであるが、まず、酸化セリウム含有粒子を使用したことによって、従来の他の無機系紫外線吸収剤である酸化チタンや酸化亜鉛を使用した場合とは異なり、可視光領域で優れた透明性を有し、また化粧料としたときでも汗などで溶出したりすることはない。さらに、この表面処理酸化セリウムを脂肪酸エステル化されたポリオールエステル化合物にて被覆することによって、ポリオールエステル化合物の脂肪酸エステル部分が熱可塑性樹脂や有機系油剤に対して良好な相溶性を示す。これによって、本発明の表面処理酸化セリウムを熱可塑性樹脂や有機系油剤に分散させた系においては、表面処理酸化セリウムが界面に存在することとなり、分散性が向上され、二次凝集を起こすことなく本来の一次粒子径から期待される透明性を有する熱可塑性樹脂組成物、油剤組成物、化粧料組成物を実現することができるものと考えられる。また、本発明におけるポリオールエステル化合物はある程度の分子量を有するものであるため、上記熱可塑性樹脂での移動性が小さく、これにより本発明の表面処理酸化セリウムを用いた熱可塑性樹脂の成型物においては表面にブリードアウトが起こりにくいと考えられる。
【0011】
本発明に用いられる酸化セリウム含有粒子としては、酸化セリウムを少なくとも含有する粒子であるならば特に制限はなく、酸化セリウムからなる粒子であってもよいし、酸化セリウムに加えて他の成分を含有するものであってもよい。酸化セリウム含有粒子に含有される他の成分としては、本発明の効果を阻害するものでない限り特に制限されるものではないが、たとえば、シリカ、非晶質シリカ、タルク、カオリン、マイカ、ワラストナイト、ベントナイト、セリサイトなどが挙げられる。中でも無色で、表面の触媒活性が少なく樹脂や油剤に対して影響の小さいシリカ、タルクが好ましい。上記他の成分を含有する場合、酸化セリウムは、粒子表面に露出していてもよく(たとえば、酸化セリウムで他の成分を被覆してなる場合や、他の成分が酸化セリウムの一部のみを被覆してなる場合など)、また上記他の成分で完全に被覆されていてもよい。この場合、当該粒子における酸化セリウムの含有量は、特には制限されるものではないが、粒子全量に対して0.1〜50重量%であるのが好ましく、1〜30重量%であるのがより好ましい。酸化セリウムが0.1重量%未満であれば、紫外線吸収能が低下する傾向があるためであり、また、酸化セリウムが50重量%を越えて含有されても、紫外線吸収能の向上が見られない傾向があるためである。
【0012】
本発明における酸化セリウム含有粒子は、従来公知の種々の酸化セリウム含有粒子を特に制限なく用いることができる。酸化セリウム含有粒子は、市販品、たとえば「セリガード」(日本電工製)等を用いてもよい。上記「セリガード」は、平均一次粒子径22.6nmの微粒子酸化セリウムに非晶質シリカを3〜5nmの厚さで被覆したタイプの他、約1ミクロンのシリカやタルクなどのベース基材表面に平均一次粒子径30〜50nmの微粒子酸化セリウムを被覆し、さらに非晶質シリカを3〜5nmの厚さで被覆したタイプなどがある。
【0013】
本発明に用いる酸化セリウム含有粒子は、透過型電子顕微鏡法による平均一次粒子径が、好ましくは1〜100nm、より好ましくは1nm〜50nm、特に好ましくは5nm〜50nmの微粒子酸化セリウムを含有するものであるのが好ましい。該微粒子酸化セリウムの平均一次粒子径が100nmより大きいと、添加量当りの紫外線吸収能が低下しやすくなる傾向にあるためであり、また該微粒子酸化セリウムの平均一次粒子径が1nmより小さいと分散が困難になり、該微粒子酸化セリウムの製造自体も困難になる傾向がある。
【0014】
上記平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡法によって微粒子酸化セリウムの形、大きさを直接観察し、値を計測する。
具体的には、透過型電子顕微鏡(トプコン電子ビームサービス製002B)で加速電圧200KV、直接倍率29000倍で観察して、写真撮影をする。次いで、得られた写真をスキャナーでコンピューターに取り込み、コンピューターに予めインストールした画像解析ソフト(Scion Corporation製、Scion Image for Windows(登録商標))に供することで、平均一次粒子径を求めることができる。当該画像解析ソフトにおいては、2次元投影形として観察される像と同面積の円の直径(ヘイウッド径)を一次粒子径であるとみなし、平均一次粒子径は、任意に選択された300個の微粒子酸化セリウムの一次粒子径を測定し、そのメジアン径(中位径)として算出する。
【0015】
本発明におけるポリオールエステル化合物は、1個以上の水酸基が脂肪酸エステル化されてなるポリオールエステル化合物であれば、分子内の全ての水酸基が脂肪酸エステル化されたものであっても、分子内の一部の水酸基のみが脂肪酸エステル化されたものであってもよいが、分子内の一部の水酸基のみが脂肪酸エステル化されたポリオールエステル化合物、換言すれば、脂肪酸エステル化されていない1個以上の水酸基を有するポリオールエステル化合物であるのが好ましい。このようなポリオールエステル化合物を用いることで、分子内の全ての水酸基が脂肪酸エステル化されたポリオールエステル化合物を用いた場合よりも透明性がさらに改善されるためである。これは、ポリオールエステル化合物中における脂肪酸エステル化されていない水酸基は、酸化セリウム表面に吸着しやすいことに起因すると考えられる。すなわち、脂肪酸エステル化されていない水酸基を分子内に1個以上有するポリオールエーテル化合物を用いることで酸化セリウム含有粒子表面への吸着性が向上され、熱可塑性樹脂や油剤などの有機マトリクスに対する酸化セリウム含有粒子の分散性が向上されるためであると考えられる。
【0016】
本発明に用いられるポリオールエステル化合物は、1個以上の水酸基、好ましくは2個以上の水酸基、より好ましくは3個以上の水酸基が脂肪酸エステル化されてなるものである。
【0017】
本発明に用いられるポリオールエステル化合物のエステル化度は、5〜95%の範囲が好ましく、5〜90%の範囲がより好ましく、10〜80%の範囲がさらに好ましい。エステル化度が5%未満であると、樹脂や油剤との相溶性が悪くなる傾向があり、エステル化度が95%より大きいと、酸化セリウム含有粒子表面に吸着する機能が小さくなり、熱可塑性樹脂や油剤などの有機マトリクスに対する酸化セリウム含有粒子の分散性が低下し、結果として透明性が低下する虞があるためである。
ポリオールエステル化合物のエステル化度は、下記式(1)から算出される値で定義される。
【0018】
【数1】
【0019】
なお、上記エステル化度の値が整数にならない場合には、小数点以下を切り上げて整数とするものとする。
【0020】
また、本発明において用いられるポリオールエステル化合物の原料となるポリオール類における水酸基の数は、上述のように2個以上であればよいが、より多くの水酸基がある方が、多点吸着により強固に粒子表面に吸着するため、3個以上であるのが好ましく、4個以上であるのがより好ましい。なお該原料となるポリオール類における水酸基の数の上限に特に限定はないが、通常、30個以下、好ましくは20個以下、より好ましくは15個以下である。
【0021】
かかるポリオールエステル化合物としては、大きく分けて〔1〕ポリグリセリン誘導体、または〔2〕二塩基酸ポリオール類エステルが、特に好適に使用できる。以下、〔1〕ポリグリセリン誘導体、および〔2〕二塩基酸ポリオール類エステルについて、それぞれ詳述する。
【0022】
〔1〕ポリグリセリン誘導体
本発明におけるポリグリセリン誘導体は、ポリグリセリン1分子に存在する1個以上の水酸基が脂肪酸エステル化された形の誘導体、換言すれば、ポリグリセリン脂肪酸エステルであればよい。ここで脂肪酸エステル化の形態は、ポリグリセリン1分子内の水酸基が複数の異種脂肪酸のアシル基でエステル化された形態であってもよく、また同一脂肪酸のアシル基のみでエステル化された形態であってもよい。また上述のように、脂肪酸エステル化されているのは、ポリグリセリン1分子に存在する水酸基の全部であっても一部であってもよいが、ポリグリセリン1分子に存在する水酸基の一部が脂肪酸エステル化されたものであるのが好ましい。具体的には、ポリグリセリンの1分子において、全水酸基の5〜95%の水酸基が脂肪酸エステル化されたものであるのが好ましく、全水酸基の5〜90%の水酸基が脂肪酸エステル化されたものであるのがより好ましく、全水酸基の10〜80%の水酸基が脂肪酸エステル化されたものであるのがさらに好ましい(好ましくはエステル化度が5〜95%、より好ましくはエステル化度が5〜90%、さらに好ましくはエステル化度が10〜80%)。上記脂肪酸エステル化された水酸基の数が全水酸基の5%より少ない(エステル化度が5%より小さい)と、樹脂や油剤との相溶性が悪くなる傾向があり、上記脂肪酸エステル化された水酸基の数が全水酸基の95%より多い(エステル化度が95%より大きい)と、酸化セリウム含有粒子表面に吸着する機能が小さくなり、熱可塑性樹脂や油剤などの有機マトリクスに対する酸化セリウム含有粒子の分散性が低下し、結果として透明性が低下する虞がある。
【0023】
上記ポリグリセリン誘導体の原料となるポリグリセリンは、工業的に製造されている市販品、たとえばポリグリセリン#310(阪本薬品工業製)、ポリグリセリン#500(阪本薬品工業製)、ポリグリセリン#750(阪本薬品工業製)、ジグリセリン(阪本薬品工業製)などを好適に用いることができる。ポリグリセリンの縮合度は、2〜30であれば良いが、生成する脂肪酸エステルの性状、エステル化反応時の溶剤に対する溶解性、コストなどの観点から3〜10がより好ましい。なお本明細書中でいう「ポリグリセリン」は、グリセリンから反応、蒸留、精製して得られるポリオールの一種であって、4個以上の水酸基を有するものを指し、20個以下の水酸基を有するものであることが好ましい。
【0024】
ポリグリセリン誘導体における脂肪酸エステルを構成するアシル基としては、炭素数4〜24の直鎖状または分枝鎖状のアシル基、たとえば、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基などを挙げることができる。上記中でも、界面接着性の向上の観点からは、オクタノイル基(炭素数:8)以上の炭素数を有するアシル基であることが好ましく、ドデカノイル基(炭素数:12)以上の炭素数を有するアシル基であることがより好ましい。なお工業的に入手しやすいという観点からは、炭素数18以下のアシル基であることが好ましい。
【0025】
〔2〕二塩基酸ポリオール類エステル
本発明における二塩基酸ポリオール類エステルは、ポリオール類(ポリオールまたはポリオール縮合物)の二塩基酸エステルであって、1個以上の水酸基が脂肪酸エステル化されたものであればよい。ここで脂肪酸エステル化の形態は、二塩基酸ポリオール類1分子内の水酸基が複数の異種脂肪酸のアシル基でエステル化された形態であってもよく、同一脂肪酸のアシル基のみでエステル化された形態であってもよい。ポリオール類1分子に存在する水酸基のうち、エステル化されているのは、ポリオール類1分子内の水酸基の全部(ポリオール類1分子内の水酸基全部が二塩基酸およびその他の適当な脂肪酸によってエステル化されている場合など)であっても一部であってもよいが、ポリオール類1分子に存在する水酸基の一部がエステル化されたものであるのが好ましい。具体的には、ポリオール類の1分子において、全水酸基の5〜95%の水酸基がエステル化されたものであるのが好ましく、全水酸基の5〜90%の水酸基がエステル化されたものであるのがより好ましく、全水酸基の10〜80%の水酸基がエステル化されたものであるのがさらに好ましい(好ましくはエステル化度が5〜95%、より好ましくはエステル化度が5〜90%、さらに好ましくはエステル化度が10〜80%)。上記エステル化された水酸基の数が全水酸基の5%より少ない(エステル化度が5%より小さい)と、樹脂や油剤との相溶性が悪くなる傾向があり、エステル化された水酸基が全水酸基の95%より多い(エステル化度が95%より大きい)と、酸化セリウム含有粒子表面に吸着する機能が小さくなり、熱可塑性樹脂や油剤などの有機マトリクスに対する酸化セリウム含有粒子の分散性が低下し、結果として透明性が低下する虞がある。
【0026】
二塩基酸ポリオール類エステルに使用するポリオールまたはポリオール縮合物としては、分子内に3個以上の水酸基を有するものであれば特に限定はされないが、例えば、グリセリン、及びそのグリセリン縮合物であるジグリセリン、テトラグリセリン、ヘキサグリセリン、デカグリセリン等のポリグリセリン、ペンタエリスリトール、及びその縮合物であるジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等のポリペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン及びその縮合物、トリメチロールエタン及びその縮合物などを挙げることができる。
【0027】
二塩基酸ポリオール類エステルに使用する二塩基酸としては、電離して一分子から二個の水素イオンを生じる酸であれば特に限定はないが、たとえばアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、コハク酸等の飽和脂肪族二塩基酸、フタル酸、マレイン酸等の不飽和脂肪族二塩基酸などの、1分子内にカルボキシル基を2個有する炭化水素化合物(二塩基脂肪酸)であるのが特に好ましい。
【0028】
本発明における二塩基酸ポリオール類エステルは、上記した中でも、分子内に3個以上の水酸基を有するポリオールまたはポリオール縮合物と、二塩基酸との二塩基酸エステル化合物中に残っている水酸基の少なくとも1個を、脂肪酸にて脂肪酸エステル化した二塩基酸ポリオール類エステルであることが好ましい。この場合において、上記二塩基酸エステル化合物において用いられた二塩基酸ではない脂肪酸(二塩基酸とのエステル化合物中に残っている水酸基を脂肪酸エステル化した脂肪酸)由来のアシル基としては、炭素数4〜24の直鎖状または分枝鎖状のアシル基、たとえば、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基などを挙げることができる。上記中でも、界面接着性の向上の観点からは、オクタノイル基(炭素数:8)以上の炭素数を有するアシル基であることが好ましく、ドデカノイル基(炭素数:12)以上の炭素数を有するアシル基であることがより好ましい。なお工業的に入手しやすいという観点からは、炭素数18以下のアシル基であることが好ましい。
【0029】
上述した〔1〕または〔2〕のポリオールエステル化合物を合成する際のエステル化反応は、通常の方法で良いが、たとえば以下の(1)〜(4)のような方法を挙げることができる。
(1)原料となるポリグリセリンまたは他のポリオールと、脂肪酸または/及び二塩基酸を、有機溶媒中または無溶媒で加熱混合し、脱水反応させる。この時にルイス酸などのエステル化触媒存在下、反応を行うのが望ましい。
(2)原料となるポリグリセリンまたは他のポリオールに、脂肪酸または/及び二塩基酸のクロライドを反応させ、エステル化する。
(3)原料となるポリグリセリンまたは他のポリオールと、脂肪酸または/及び二塩基酸の低級アルコールとのエステルを有機溶媒中または無溶媒で加熱混合し、エステル化触媒存在下、エステル交換反応を行う。
(4)原料となるポリグリセリンまたは他のポリオールに、脂肪酸または/及び二塩基酸の酸無水物を反応させ、エステル化する。
【0030】
被覆のための表面処理方法は特に限定されないが、酸化セリウム含有粒子と上記ポリオールエステル化合物とをヘンシェルミキサーなどのせん断応力のかかる高速ミキサーで混合する乾式処理法、上記ポリオールエステル化合物を溶剤に溶解または分散乳化したものに酸化セリウムを入れたスラリー混合物を攪拌した後、乾燥して処理粉体を得る湿式法などが挙げられる。湿式法に使用する溶剤は特に限定されないが、水、ヘキサン等の炭化水素系溶剤、トルエン等の芳香族系溶剤、エタノール等のアルコール系溶剤、アセトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル等のエステル系溶剤などを挙げることができる。また、樹脂や油剤に酸化セリウムを添加して混合する際に同時に上記ポリオールエステル化合物を添加して、分散と同時に表面処理するインテグラルブレンド法による処理を行っても何ら差し支えない。
【0031】
本発明の表面処理酸化セリウムにおいて、上記ポリオールエステル化合物による表面処理量(被覆量)に特に制限はないが、酸化セリウム含有粒子100重量部に対して0.1〜100重量部が好ましく、1〜50重量部がより好ましい。ポリオールエステル化合物の表面処理量が酸化セリウム含有粒子100重量部に対して0.1重量部未満であると、樹脂や油剤に対する分散性が低下しやすくなり、また酸化セリウム含有粒子100重量部に対して100重量部を越えると、酸化セリウム含有粒子表面に吸着されない分子が多くなり、樹脂に混練した際にブリード現象を引き起こしたり、機械物性を低下させる恐れがある。また油剤を配合した化粧料に添加した場合には、酸化セリウム含有粒子の表面に吸着されないポリオールエステル化合物が他成分に対して悪影響を及ぼす虞があり好ましくない。
【0032】
なお本発明は、上述してきた表面処理酸化セリウムである紫外線吸収剤をも提供するものである。本発明の紫外線吸収剤は、熱可塑性樹脂組成物、油剤組成物、化粧料組成物など、様々な形態にて実現され得る。
【0033】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と、上記の表面処理酸化セリウムとを含有することを特徴とする。ここで、表面処理酸化セリウムの含量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.05〜10重量部が好ましく、0.5〜5重量部がより好ましい。表面処理酸化セリウムの含量が熱可塑性樹脂100重量部に対して0.05重量部より小さいと紫外線吸収能が充分に付与されず、10重量部より大きい場合には紫外線吸収能が有意義に向上しなくなる他、透明性が損なわれる恐れがある。
【0034】
本発明で使用される熱可塑性樹脂としては、熱可塑性を示す樹脂であれば良く、例えば塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのポリ塩化ビニル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリスチレンなどのポリスチレン系樹脂;6ナイロン、66ナイロンなどのポリアミド系樹脂;ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン等のエンジニアリングプラスチック;その他、複合材料の分野で使用できる熱可塑性樹脂を挙げることができ、これら複数の樹脂を併用することもできる。これらの中で、特に紫外線吸収能の小さいポリオレフィン系樹脂が紫外線吸収能が著しく改善するという観点で好適である。
【0035】
本発明の油剤組成物は、有機系油剤と、上記の表面処理酸化セリウムとを含有することを特徴とする。ここで、表面処理酸化セリウムの含量は、有機系油剤100重量部に対して0.05〜500重量部が好ましく、0.5〜5重量部がより好ましく、この範囲で化粧料の種類や必要な紫外線吸収能によって添加量を調整する。表面処理酸化セリウムの含量が有機系油剤100重量部に対して0.05重量部未満であると紫外線吸収能が充分に付与されず、500重量部を越える場合には紫外線吸収能が有意義に向上しなくなる他、透明性が損なわれる虞がある。
【0036】
有機系油剤としては、例えば流動パラフィン、ワセリン等の鉱物油系;シリコーンオイル等の合成油系;ラノリン、トリグリセライド、スクワラン等の動植物油系などを挙げることができるが、特に限定されるものではない。また液状、ワックス状、固体状の有機系油剤のいずれにも適用できる。
【0037】
本発明の化粧料組成物としては、ファンデーション、口紅、日焼け止めローションなどを挙げることができるが、紫外線を遮断する機能を必要とする化粧料であれば特に限定されない。
【0038】
さらに本発明の熱可塑性樹脂組成物及び化粧料組成物には、必要に応じて本発明の特徴を損なわない範囲で、その他の添加剤、安定剤、有機または無機の充填剤、有機または無機の顔料、染料、可塑剤、滑剤、整泡剤、発泡剤、難燃剤、他の紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、増核剤、防腐剤、香料、保湿剤、界面活性剤などを1種または複数併用して添加することができる。
【0039】
【実施例】
次に、本発明について、その内容を実施例及び比較例を挙げて詳細に説明する。なお、以下の実施例は本発明の範囲を限定するものではなく。本発明の内容をより明確に示すために記載されたものである。
【0040】
(製造例1)ポリグリセリン誘導体PG−1の調製
温度計、攪拌機、窒素導入入口及び還流管を備えた反応フラスコ内に、ステアリン酸 50.0重量部、ポリグリセリン(阪本薬品工業製ポリグリセリン#500、縮合度:6.7、水酸基数:8.7個)87.88重量部及びテトラブチルチタネート(純正化学製)0.01重量部を仕込み窒素気流下で160℃まで4時間かけて昇温し、160℃で2時間加熱した後、反応液の酸価が1(mgKOH/g)程度になるまで加熱を行った。次いで室温まで冷却した。
以下、この反応液をポリグリセリン誘導体PG−1と称する。ポリグリセリン誘導体PG−1に含まれるポリグリセリン誘導体は、酸価が0.5の特性を有しており、原料の重量比から計算したエステル化度は、12%である。
【0041】
(製造例2)ポリグリセリン誘導体PG−2の調製
温度計、攪拌機、窒素導入入口及び還流管を備えた反応フラスコ内に、ステアリン酸 50.0重量部、ポリグリセリン(阪本薬品工業製ポリグリセリン#500、縮合度:6.7、水酸基数:8.7個)29.5重量部及びテトラブチルチタネート(純正化学製)0.01重量部を仕込み窒素気流下で160℃まで4時間かけて昇温し、160℃で2時間加熱した後、反応液の酸価が1(mgKOH/g)程度になるまで加熱を行った。次いで室温まで冷却した。
以下、この反応液をポリグリセリン誘導体PG−2と称する。ポリグリセリン誘導体PG−2に含まれるポリグリセリン誘導体は、酸価が0.8の特性を有しており、原料の重量比から計算したエステル化度は、35%である。
【0042】
(製造例3)ポリグリセリン誘導体PG−3の調製
温度計、攪拌機、窒素導入入口及び還流管を備えた反応フラスコ内に、ステアリン酸 50.0重量部、ジグリセリン(阪本薬品工業製、縮合度:2)9.74重量部及びテトラブチルチタネート(純正化学製)0.01重量部を仕込み窒素気流下で160℃まで4時間かけて昇温し、160℃で2時間加熱した後、反応液の酸価が1(mgKOH/g)程度になるまで加熱を行った。次いで室温まで冷却した。
以下、この反応液をポリグリセリン誘導体PG−3と称する。ポリグリセリン誘導体PG−3に含まれるポリグリセリン誘導体は、酸価が1.3の特性を有しており、原料の重量比から計算したエステル化度は、75%である。
【0043】
(製造例4)ポリグリセリン誘導体PG−4の調製
温度計、攪拌機、窒素導入入口及び還流管を備えた反応フラスコ内に、ステアリン酸 50.0重量部、ポリグリセリン(阪本薬品工業製ポリグリセリン#310、縮合度4.2、水酸基数:6.2個)18.16重量部及びテトラブチルチタネート(純正化学製)0.01重量部を仕込み窒素気流下で160℃まで4時間かけて昇温し、160℃で2時間加熱した後、反応液の酸価が1(mgKOH/g)程度になるまで加熱を行った。次いで室温まで冷却した。
以下、この反応液をポリグリセリン誘導体PG−4と称する。ポリグリセリン誘導体PG−4に含まれるポリグリセリン誘導体は、酸価が0.8の特性を有しており、原料の重量比から計算したエステル化度は、48%である。
【0044】
(製造例5)ポリグリセリン誘導体PG−5の調製
温度計、攪拌機、窒素導入入口及び還流管を備えた反応フラスコ内に、ステアリン酸 50.0重量部、ポリグリセリン(阪本薬品工業製ポリグリセリン#750、縮合度10.1、水酸基数:12.1個)43.94重量部及びテトラブチルチタネート(純正化学製)0.01重量部を仕込み窒素気流下で160℃まで4時間かけて昇温し、160℃で2時間加熱した後、反応液の酸価が1(mgKOH/g)程度になるまで加熱を行った。次いで室温まで冷却した。
以下、この反応液をポリグリセリン誘導体PG−5と称する。ポリグリセリン誘導体PG−5に含まれるポリグリセリン誘導体は、酸価が0.7の特性を有しており、原料の重量比から計算したエステル化度は、25%である。
【0045】
(製造例6)二塩基酸ポリオール類エステルPE−1の調製
温度計、攪拌機、窒素導入入口及び還流管を備えた反応フラスコ内に、アジピン酸(純正化学製)24.4重量部、ステアリン酸(純正化学製)47.5重量部、ジペンタエリスリトール(東京化成製)84.8重量部及びp−トルエンスルホン酸(純正化学製)0.02重量部を仕込み窒素気流下で180℃まで1時間かけて昇温し、180℃で2時間加熱した後、反応液の酸価が1(mgKOH/g)程度になるまで加熱を行った。ついで、室温まで冷却した。
以下、この反応液を二塩基酸ポリオール類エステルPE−1と称する。二塩基酸ポリオール類エステルPE−1は、酸価が0.8、エステル化度が25%であった。
【0046】
(製造例7)二塩基酸ポリオール類エステルPE−2の調製
温度計、攪拌機、窒素導入入口及び還流管を備えた反応フラスコ内に、無水フタル酸(純正化学製)12.4重量部、ラウリン酸(純正化学製)16.8重量部、ジペンタエリスリトール(東京化成製)42.7重量部及びテトラブチルチタネート(東京化成製)0.01重量部を仕込み窒素気流下で180℃まで1時間かけて昇温し、180℃で2時間加熱した後、反応液の酸価が1(mgKOH/g)程度になるまで加熱を行った。ついで、室温まで冷却した。
以下、この反応液を二塩基酸ポリオール類エステルPE−2と称する。二塩基酸ポリオール類エステルPE−2は、酸価が0.6、エステル化度が25%であった。
【0047】
(製造例8)二塩基酸ポリオール類エステルPE−3の調製
温度計、攪拌機、窒素導入入口及び還流管を備えた反応フラスコ内に、アジピン酸(純正化学製)16.1重量部、ステアリン酸(純正化学製)47.5重量部、ジペンタエリスリトール(東京化成製)84.8重量部及びp−トルエンスルホン酸(純正化学製)0.02重量部を仕込み窒素気流下で180℃まで1時間かけて昇温し、180℃で2時間加熱した後、反応液の酸価が1(mgKOH/g)程度になるまで加熱を行った。ついで、室温まで冷却した。
以下、この反応液を二塩基酸ポリオール類エステルPE−3と称する。二塩基酸ポリオール類エステルPE−3は、酸価が0.9、エステル化度が19%であった。
【0048】
(製造例9)二塩基酸ポリオール類エステルPE−4の調製
温度計、攪拌機、窒素導入入口及び還流管を備えた反応フラスコ内に、アジピン酸(純正化学製)24.4重量部、ペンタエリスリトール(純正化学製)84.8重量部を仕込み窒素気流下で240℃まで1時間かけて昇温し、ステアリン酸(純正化学製)48.3重量部及びp−トルエンスルホン酸(純正化学製)0.02重量部を加え、さらに240℃で2時間加熱した後、反応液の酸価が1(mgKOH/g)程度になるまで加熱を行った。ついで、室温まで冷却した。
以下、この反応液を二塩基酸ポリオール類エステルPE−4と称する。二塩基酸ポリオール類エステルPE−4は、酸価が0.2、エステル化度が37%であった。
【0049】
(製造例10)二塩基酸ポリオール類エステルPE−5の調製
温度計、攪拌機、窒素導入入口及び還流管を備えた反応フラスコ内に、アジピン酸(純正化学製)14.6重量部、ポリグリセリン(阪本薬品工業製ポリグリセリン#310、縮合度4.2)62.8重量部、ラウリン酸(純正化学製)40.0重量部及びp−トルエンスルホン酸(純正化学製)0.01重量部を仕込み窒素気流下で180℃まで1時間かけて昇温し、180℃で2時間加熱した後、反応液の酸価が1(mgKOH/g)程度になるまで加熱を行った。ついで、室温まで冷却した。
以下、この反応液を二塩基酸ポリオール類エステルPE−5と称する。二塩基酸ポリオール類エステルPE−5は、酸価が0.5、エステル化度が33%であった。
【0050】
(製造例11)二塩基酸ポリオール類エステルPE−6の調製
温度計、攪拌機、窒素導入入口及び還流管を備えた反応フラスコ内に、アジピン酸(純正化学製)29.2重量部、ポリグリセリン(阪本薬品工業製ポリグリセリン#500、縮合度6.7)138.6重量部、ステアリン酸(純正化学製)85.2重量部及びp−トルエンスルホン酸(純正化学製)0.01重量部を仕込み窒素気流下で180℃まで1時間かけて昇温し、180℃で2時間加熱した後、反応液の酸価が1(mgKOH/g)程度になるまで加熱を行った。ついで、室温まで冷却した。
以下、この反応液を二塩基酸ポリオール類エステルPE−6と称する。二塩基酸ポリオール類エステルPE−6は、酸価が0.3、エステル化度が29%であった。
【0051】
(製造例12)二塩基酸ポリオール類エステルPE−7の調製
温度計、攪拌機、窒素導入入口及び還流管を備えた反応フラスコ内に、アジピン酸(純正化学製)20.2重量部、ポリグリセリン(阪本薬品工業製ポリグリセリン#750、縮合度10.1)151.6重量部、ステアリン酸(純正化学製)113.6重量部及びp−トルエンスルホン酸(純正化学製)0.01重量部を仕込み窒素気流下で180℃まで1時間かけて昇温し、180℃で2時間加熱した後、反応液の酸価が1(mgKOH/g)程度になるまで加熱を行った。ついで、室温まで冷却した。
以下、この反応液を二塩基酸ポリオール類エステルPE−7と称する。二塩基酸ポリオール類エステルPE−7は、酸価が0.6、エステル化度が25%であった。
【0052】
(実施例1)
酸化セリウム含有粒子(日本電工製、セリガードSC4060、平均一次粒子径22.6nm)100重量部、製造例1で得られたポリグリセリン誘導体PG−1 10重量部をヘンシェルミキサーで混合し(1720rpm、15分)、表面処理酸化セリウムを製造した。
【0053】
(実施例2〜12)
ポリグリセリン誘導体PG−1の代わりに、製造例2〜12で得られたポリグリセリン誘導体PG−2〜5、及び二塩基酸ポリオール類エステルPE−1〜PE−7を用いたこと以外は実施例1と同様にして、それぞれ表面処理酸化セリウムを製造した。
【0054】
(実施例13)
酸化セリウム含有粒子(日本電工製、セリガードSC4060、平均一次粒子径22.6nm)100重量部、製造例2で得られたポリグリセリン誘導体PG−2 20重量部をヘンシェルミキサーで混合し(1720rpm、15分)、表面処理酸化セリウムを製造した。
【0055】
(実施例14)
酸化セリウム含有粒子(日本電工製、セリガードSC4060、平均一次粒子径22.6nm)100重量部、製造例2で得られたポリグリセリン誘導体PG−2 50重量部をヘンシェルミキサーで混合し(1720rpm、15分)、表面処理酸化セリウムを製造した。
【0056】
(比較例1)
酸化セリウム含有粒子(日本電工製、セリガードSC4060、平均一次粒子径22.6nm)100重量部、ステアリン酸(純正化学製、1級)10重量部をヘンシェルミキサーで混合し(1720rpm、15分)、表面処理酸化セリウムを製造した。
【0057】
(比較例2)
酸化セリウム含有粒子(日本電工製、セリガードSC4060、平均一次粒子径22.6nm)100重量部、ステアリン酸(純正化学製、1級)20重量部をヘンシェルミキサーで混合し(1720rpm、15分)、表面処理酸化セリウムを製造した。
【0058】
(比較例3)
酸化セリウム含有粒子(日本電工製、セリガードSC4060、平均一次粒子径22.6nm)100重量部、ステアリン酸(純正化学製、1級)50重量部をヘンシェルミキサーで混合し(1400rpm、15分)、表面処理酸化セリウムを製造した。
実施例1〜14および比較例1〜3の組成を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
(実施例15)
ポリプロピレン樹脂(日本ポリオレフィン製、7064wf1)100重量部、及び実施例1で得られた表面処理酸化セリウム1.0重量部を、ヘンシェルミキサーで混合し(1720rpm、5分)、二軸混練機で混練後、ペレット化を行った。得られたペレットをプレス成型機で成型して15×15cm、厚さ1mmのシート状成型品を製造し、ヘイズ、300nm及び400nmでの透過率を測定した。
【0061】
(実施例16〜28)
表面処理酸化セリウムの代わりに、実施例2〜14で得られた表面処理酸化セリウムを用いたこと以外は、実施例15と同様にして、それぞれ成型品を製造し、ヘイズ、300nm及び400nmでの透過率を測定した。
【0062】
(実施例29)
実施例1で得られた表面処理酸化セリウムを0.5重量部使用する以外は実施例15と同様にして、成型品を製造し、ヘイズ、300nm及び400nmでの透過率を測定した。
【0063】
(実施例30,31)
実施例13,14で得られた表面処理酸化セリウムをそれぞれ用いたこと以外は実施例29と同様にして、それぞれ成型品を製造し、ヘイズ、300nm及び400nmでの透過率を測定した。
【0064】
(実施例32)
実施例1で得られた表面処理酸化セリウムを1.0重量部の代わりに1.5重量部使用する以外は実施例15と同様にして成型品を製造し、ヘイズ、300nm及び400nmでの透過率を測定した。
【0065】
(実施例33,34)
実施例13,14で得られた表面処理酸化セリウムを用いたこと以外は実施例32と同様にして、それぞれ成型品を製造し、ヘイズ、300nm及び400nmでの透過率を測定した。
【0066】
(比較例4)
実施例15で使用したポリプロピレン樹脂のみをプレス成型機で成型して15×15cm、厚さ1mmのシート状成型品を製造し、ヘイズ、300nm及び400nmでの透過率を測定した。
【0067】
(比較例5)
表面処理酸化セリウムの代わりに未処理の酸化セリウム0.5重量部を使用すること以外は実施例15と同様にして、成型品を製造し、ヘイズ、300nm及び400nmでの透過率を測定した。
【0068】
(比較例6)
表面処理酸化セリウムの代わりに未処理の酸化セリウム1.0重量部を使用すること以外は実施例15と同様にして、成型品を製造し、ヘイズ、300nm及び400nmでの透過率を測定した。
【0069】
(比較例7)
表面処理酸化セリウムの代わりに未処理の酸化セリウム1.5重量部を使用すること以外は実施例15と同様にして、成型品を製造し、ヘイズ、300nm及び400nmでの透過率を測定した。
【0070】
(比較例8〜10)
表面処理酸化セリウムの代わりに、比較例1〜3で得られた表面処理酸化セリウムを用いたこと以外は実施例15と同様にして、それぞれ成型品を製造し、ヘイズ、300nm及び400nmでの透過率を測定した。
【0071】
実施例15〜34および比較例4〜10の結果を表2に示す。なお、ヘイズおよび各波長における透過率の評価基準は以下のとおりである。
ヘイズ : 40%未満…○; 40%以上…×
300nm透過率: 10%未満…○; 10%以上…×
400nm透過率: 70%以上…○; 70%未満…△
【0072】
【表2】
【0073】
(実施例35)
流動パラフィン(純正化学製、一級)30重量部に、実施例1で得られた表面処理酸化セリウムを3重量部添加し、攪拌した後、超音波で30分間分散させたところ、流動性のあるペースト状の油剤組成物を得た。外観は半透明で酸化セリウムが良好に分散しており、肌に塗布すると透明感のある油膜を形成した。
【0074】
(実施例36〜48)
表面処理酸化セリウムの代わりに、実施例2〜14で得られた表面処理酸化セリウムを用いたこと以外は実施例35と同様にして、油剤組成物をそれぞれ調製した。いずれも流動性のあるペースト状で、外観は半透明で酸化セリウムが良好に分散しており、肌に塗布すると透明感のある油膜を形成した。
【0075】
(比較例11)
表面処理酸化セリウムを使用する代わりに、未処理の酸化セリウムを使用すること以外は、実施例35と同様にして油剤組成物を得た。性状はペースト状であるが流動性がなく不透明で、酸化セリウムの分散性が悪く、肌に塗布すると、白っぽい油膜(白うき)になった。
【0076】
(比較例12〜14)
表面処理酸化セリウムを使用する代わりに、比較例1〜3で得られた表面処理酸化セリウムを用いたこと以外は実施例35と同様にして、油剤組成物をそれぞれ調製した。油剤組成物は流動性のある不透明なペースト状で、酸化セリウムは良好に分散していたが、酸化セリウム表面に吸着されないポリオール成分が流動パラフィンに溶解していなかった。また肌に塗布すると、溶解していないポリオール成分の粒子が目視で確認される油膜を形成した。得られた油剤組成物の性状はペースト状であるが流動性がなく不透明で、酸化セリウムの分散性が悪く、肌に塗布すると、白っぽい油膜(白うき)になった。
【0077】
実施例35〜48および比較例11〜14の評価結果を表3に示す。なお、評価基準は以下のとおりである。
流動性 : ○→あり ; ×→なし
透明性 : ○→半透明 ; ×→不透明
肌に塗布時の油膜外観 : ○→透明感あり; ×→透明感なし
【0078】
【表3】
【0079】
【発明の効果】
以上のように、本発明の表面処理酸化セリウムは、熱可塑性樹脂や有機系油剤などの有機マトリクスに良好に分散する。これを配合した熱可塑性樹脂組成物は、紫外線吸収能に優れ、透明性も向上していることがわかる。また有機系油剤に配合した場合にも透明性が良好で、紫外線吸収能や透明性が良好な化粧料を製造することができる。
Claims (11)
- 酸化セリウム含有粒子が、1個以上の水酸基が脂肪酸エステル化されたポリオールエステル化合物にて被覆されてなることを特徴とする表面処理酸化セリウム。
- 酸化セリウム含有粒子が、平均一次粒子径が1〜100nmの微粒子酸化セリウムを含有するものであることを特徴とする、請求項1に記載の表面処理酸化セリウム。
- ポリオールエステル化合物の表面処理量が、酸化セリウム含有粒子100重量部に対して、0.1〜100重量部であることを特徴とする、請求項1または2に記載の表面処理酸化セリウム。
- ポリオールエステル化合物が、脂肪酸エステル化されていない水酸基を1個以上有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の表面処理酸化セリウム。
- ポリオールエステル化合物が、ポリグリセリン分子において1個以上の水酸基が脂肪酸エステル化されたポリグリセリン誘導体である請求項1〜4のいずれかに記載の表面処理酸化セリウム。
- ポリオールエステル化合物が、ポリオールまたはポリオール縮合物の二塩基酸エステルであって、1個以上の水酸基が脂肪酸エステル化された二塩基酸ポリオール類エステルである請求項1〜4のいずれかに記載の表面処理酸化セリウム。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の表面処理酸化セリウムを含有することを特徴とする、紫外線吸収剤。
- 熱可塑性樹脂と、請求項1〜6のいずれかに記載の表面処理酸化セリウムとを含有することを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂が、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂またはポリアミド系樹脂から選ばれる少なくともいずれかである、請求項8に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 有機系油剤と、請求項1〜6のいずれかに記載の表面処理酸化セリウムとを含有することを特徴とする、油剤組成物。
- 請求項10に記載の油剤組成物を含有することを特徴とする、化粧料組成物。
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