JP2004254550A - 薬剤収納体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】揮散性薬剤またはこれを含む保持体を容器内に収納してなる薬剤収納体であって、薬剤非吸着性材料からなる当該容器の表面の少なくとも一部が薬剤吸着性材料により構成されていることを特徴とする薬剤収納体。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、揮散性薬剤を含浸する含浸体を容器内に収納してなる薬剤収納体に関する。更に詳しくは、長期保存時や使用時においても、揮散性薬剤が容器や包装袋内に液滴状に付着することがなく、揮散性薬剤の効力を長期間持続することができる薬剤収納体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、紙やパルプなどの担持体に香料、防虫剤または殺虫剤等の揮散性薬剤を担持させて、当該担持体を通気孔を有する容器に収納した薬剤揮散型容器が提案されている。例えば、衣類等を害虫の被害から守るために使用される防虫剤容器としては、防虫薬剤として常温揮散性ピレスロイドを用いてこれを含浸体に含浸させ、当該含浸体をポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂製の容器に収納させたものが提案されている。そして、当該防虫剤容器は、洋服ダンス、クローゼット、引き出しまたは衣装ケース等の衣類収納容器内に設置されて、衣類収納容器内に薬剤を揮散することにより防虫効果を発揮するものである。
【0003】
また、トイレ、部屋または車などの空間に芳香を付与する芳香剤としては、香料を親油性の界面活性剤やグリコール、グリコールエーテル、グリセリンエステル、ワックス成分等と混合してパルプ等の含浸体に担持させたものを、通気孔を有するポリエチレンやポリプロピレンからなる樹脂製容器に収納したものが挙げられる。そして、当該芳香剤は、トイレ等の空間に設置し、空間内に香料を揮散させることにより芳香効果を発揮するものである。
【0004】
しかしながら、このようなタイプの従来の防虫剤や芳香剤は、流通段階において防虫剤や香料が揮散しないように薬剤非透過性の包装袋に収納されているが、防虫剤容器の構成材料として、防虫薬剤や香料成分を吸収ないし吸着するポリエチレンやポリプロピレン等が用いられているため、使用開始前の密封された状態で長期間保存された場合などでは、有効成分である常温揮散性ピレスロイドや香料、特に非極性香料成分が容器に吸着されてしまうという問題があった。また、容器に吸着された常温揮散性ピレスロイドや非極性香料等は、吸着後はほとんど揮散しないために、実質的な有効成分は減少してしまい、結果として使用期間中に十分な防虫効果や芳香効果を発揮することができなくなってしまうという問題もあった。
【0005】
このような問題を解決するものとして、防虫薬剤として常温揮散性ピレスロイドを含浸する防虫マット等を、ポリエステル、ポリアミドまたはポリカーボネートなどの常温揮散性ピレスロイド等を吸着しない材料を用いた通気性プラスチック容器に収納した防虫剤が提案されていた(例えば、特許文献1参照)
【0006】
このような防虫剤では、薬剤非透過性の包装袋に収納されて長期間保存した場合に、薬剤含浸体を収納する容器に薬剤が吸収されてしまうという問題は改善されるが、その一方で、包装袋内で揮散性ピレスロイドが過度に充満してしまうために容器の表面や包装袋の内面に液滴状に付着してしまい、使用のため包装袋を開封したときに、使用者の手や被服に付いて汚れてしまうという新たな問題が生じていた。
【0007】
【特許文献1】
特開平2−275805号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、長期保存時や使用時において、揮散性薬剤が容器や包装袋内に液滴状に付着することを防止でき、かつ、揮散性薬剤の効力が長期間にわたって持続する薬剤収納体の開発が求められていた。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かかる実情に鑑み、本発明者らは上記のような問題の生じない薬剤収納体と、当該薬剤収納体を構成可能な材料について鋭意研究を行った。その結果、薬剤収納体に使用する材料として薬剤非吸着性材料と薬剤吸着性材料を併用すれば、薬剤を適度に吸着させることができ、上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、揮散性薬剤を含浸した薬剤含浸体を容器内に収納してなる薬剤収納体であって、薬剤非吸着性材料からなる当該容器の表面の少なくとも一部が薬剤吸着性材料により構成されていることを特徴とする薬剤収納体を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、揮散性薬剤を含浸した薬剤含浸体を容器内に収納してなる薬剤収納体であって、当該容器が薬剤非吸着性材料と薬剤吸着性材料を混合した材料により構成されていることを特徴とする薬剤収納体を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の薬剤収納体は、その基本構成として、揮散性薬剤を含浸した薬剤含浸体を容器内に収納してなるものである。そして、本発明の第1の態様(第1態様)としては、薬剤非吸着性材料からなる当該容器の表面の少なくとも一部が薬剤吸着性材料により構成されているものである。
【0013】
本発明において、薬剤非吸着性材料とは、揮散薬剤に対してJIS K−7114の試験方法における40℃での吸着量が5%以下である性質を有する材料をいう。本発明の薬剤収納体において用いられる薬剤非吸着性材料は、使用される揮散性薬剤の種類により適宜決定されるが、例えば、揮散性薬剤としてリモネンを用いた場合の好ましい具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、メチルペンテンポリマー、エチレンビニルアルコール、金属、雲母、炭酸カルシウム等が挙げられ、これらの1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、上記のうち、金属としては、金属粉末または金属短繊維が好ましい。
【0014】
また、本発明において薬剤吸着性材料とは、揮散薬剤に対してJIS K−7114の試験方法における40℃での吸着量が10%以上の性質を有する材料をいう。本発明の薬剤収納体において用いられる薬剤吸着性材料は、使用される揮散性薬剤の種類により適宜決定されるが、例えば、揮散性薬剤としてリモネンを用いた場合の好ましい具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアセテート共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、ウレタン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー等が挙げられ、これらの1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
本発明の第1態様を構成する容器は、上記した薬剤非吸着性材料及び薬剤吸着性材料からなり、薬剤非吸着性材料からなる容器表面の少なくとも一部が薬剤吸着性材料により構成されているものであり、本態様における容器の好ましい具体例としては、例えば、下記の(1)〜(4)等の手段により調製された容器を挙げることができる。
【0016】
(1)薬剤非吸着性材料にて成形したシート表面の少なくとも一部に薬剤吸着性材料のシートを貼り合わせた貼り合わせシートを調製し、当該貼り合わせシートをシート成形等することにより調製された容器。
(2)薬剤非吸着性材料にて成形したシート表面の少なくとも一部に、薬剤吸着性材料をコーティングしたコーティングシートを調製し、当該コーティングシートをシート成形等することにより調製された容器。
(3)薬剤非吸着性材料により成形された容器表面の少なくとも一部に薬剤吸着性材料をコーティングすることにより調製された容器。
(4)薬剤非吸着性材料と薬剤吸着性材料を、薬剤非吸着材料の表面に薬剤吸着性材料が存在するように射出成形することにより調製された容器。
【0017】
このうち、(1)の構成では、例えば、まず、薬剤非吸着性材料だけを用いて、押出成形等によりシートを成形する。次に、このシートの一部、好ましくは一面に薬剤吸着性材料によりなるシートをドライラミネート等で貼り合わせて貼り合わせシートを調製する。そして、この貼り合わせシートをシート成形(真空成形とも呼ばれる)や圧空成形等により容器形状に成形することにより、薬剤非吸着性材料により成形された容器本体の表面の少なくとも一部が薬剤吸着性材料により構成される容器を調製することができる。
【0018】
また、(2)の構成では、上記(1)と同様に、押出成形等により薬剤非吸着性材料からなるシートを成形する。次に、このシートの一部、好ましくは一面に、液状の薬剤吸着性材料をコーティングし、必要により乾燥してコーティングシートを調製する。そして、このコーティングシートをシート成形や圧空成形等により容器形状に成形することにより、薬剤非吸着性材料により成形された容器本体の表面の少なくとも一部が薬剤吸着性材料により構成される容器を調製することができる。
【0019】
更に、(3)の構成では、例えば、まず、薬剤非吸着性材料を用いて、射出成形やシート成形等により容器体を成形した後、当該容器表面の一部に液状の薬剤吸着性材料をコーティングし、必要により乾燥することにより、薬剤非吸着性材料により成形された容器本体の表面の少なくとも一部が薬剤吸着性材料により構成される容器を調製することができる。
【0020】
最後に、(4)の態様では、薬剤非吸着性材料と薬剤吸着性材料を、例えば二層射出成形等の射出成形手段を用いて、薬剤非吸着性材料の表面に薬剤吸着性材料が存在するように容器を射出成形することにより、薬剤非吸着性材料により成形された容器本体の表面の少なくとも一部が薬剤吸着性材料により構成される容器を調製することができる。また、かかる射出成形は、まず薬剤非吸着性材料を金型内に充填し、次いで薬剤吸着性材料を充填して行うことが好ましいが、金型内に両材料を同時に充填して行ってもよい。
【0021】
なお、上記した(2)及び(3)は、液状の薬剤吸着性材料を薬剤非吸着性材料のシート等にコーティングすることによりなるものであるが、この液状の薬剤吸着性材料としては、薬剤吸着性材料をトルエン等の有機溶剤に溶解させて溶液状としたものや、溶融状態の薬剤吸着性材料等を、コーティングされる薬剤非吸着性材料の種類や形態に応じて適宜使用すればよい。
【0022】
また、上記の(1)ないし(4)で用いる薬剤非吸着性材料や薬剤吸着性材料には、可塑剤、衝撃安定剤、強度安定剤、着色剤、耐電防止剤等の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜添加することができる。
【0023】
本発明の薬剤収納体を構成する容器の形状は、薬剤成分自体またはこれを含む、例えば薬剤成分含浸体、ゲル、固形物等の保持体を収納することができ、かつ揮散孔を備えているものであれば特に制限はなく、従来公知の形状のものが使用できる。
【0024】
また、上記の方法により成形された容器に対する薬剤吸着性材料の適用位置については特に制限はないが、薬剤保持体等から揮散される薬剤を容器に過度に吸着させないようにするため、収納された薬剤保持体が接触しない容器の外側表面に適用させることが好ましい。また、薬剤吸着性材料の適用範囲も、使用する材料及び収納される揮散性薬剤により適宜決定されるが、一般には容器の外表面全体とすることが好ましい。
【0025】
更に、容器表面に形成する薬剤吸着性材料の厚さも、使用する材料及び容器内に収納される揮散性薬剤の量と種類により適宜決定されるが、一般に、0.0001mm〜0.1mmの厚さとすればよく、0.0005mm〜0.05mmの厚さとすることが好ましい。薬剤吸着性材料の厚さが0.1mmより厚い場合には、必要以上に薬剤を吸着してしまい、薬剤が無駄になるばかりが、製造後の経過時間や保存される温度によっては、必要な薬効が必要期間に安定して得られない場合がある。一方、薬剤吸着性材料の厚さが0.0001mmより薄い場合にあっては、保存袋に長期間保存した場合に容器や保存袋内に結露が生じてしまい、本発明の効果が発揮できない場合がある。更に、厚さを0.01mm〜0.001mmにすることにより、薬剤吸着性材料に吸着された揮散性薬剤が再び揮散することが可能となるので、より好ましい。
【0026】
次に、本発明の薬剤収納体のもう一つの態様(第2態様)としては、薬剤含浸体を収納する容器が、薬剤非吸着性材料と薬剤吸着性材料を混合した材料により構成される態様が挙げられる。
【0027】
この第2態様の具体例としては、薬剤非吸着性材料のペレットと、薬剤吸着性材料のペレットを混合し、通常の条件を用いて射出成形して容器を成形する手段や、薬剤非吸着性材料のペレットと、薬剤吸着性材料のペレットを混合し、押出成形等によりシートを成形して、その後当該シートを通常の条件を用いてシート成形して容器を成形する手段等により、薬剤非吸着性材料と薬剤吸着性材料を混合した材料により調製された容器を挙げることができる。
【0028】
本態様の場合における薬剤吸着性材料と薬剤非吸着性材料の混合割合は、混合する材料及び使用される薬剤の種類により適宜決定されるが、概ね薬剤吸着性材料:薬剤非吸着性材料=5:5〜1:99の範囲とすればよく、4:6〜1:9の範囲とすることが好ましい。上記の範囲より薬剤吸着性材料の配合割合が高くなると、必要以上に薬剤を吸着してしまい、薬剤が無駄になるばかりが、必要な薬効が必要期間得られない場合がある。一方、上記の範囲より薬剤吸着性材料の配合割合が少なくなると、保存袋に長期間保存した場合にあっては結露が生じてしまい、本発明の効果が発揮できなくなる場合がある。
【0029】
なお、第2態様において使用される薬剤非吸着性材料および薬剤吸着性材料の種類や、成形される容器の形状等については、上記した第1態様のところで述べた内容に準ずればよい。
【0030】
本発明の薬剤収納体は、上記のようにして得られた容器の中に、揮散性薬剤を含浸した含浸体を収納することにより調製される。
【0031】
本発明に使用される揮散性薬剤は、常温または加熱条件下において経時的に揮散する薬剤であればよく、例えば、香料、消臭剤、防虫剤、殺虫剤、防カビ剤等が挙げられる。
【0032】
これらの揮散性薬剤のうち、香料としては、天然香料や人工香料の何れをも使用可能であり、また、これらの調合香料であっても構わない。また、天然香料としては、動物性香料及び植物性香料の何れであってもよい。このうち、動物性香料としては、例えば、麝香、霊猫香、竜延香等が挙げられ、植物性香料としては、例えば、アビエス油、アクジョン油、アルモンド油、アンゲリカルート油、ページル油、ベルガモット油、パーチ油、ボアバローズ油、カヤブチ油、ガナンガ油、カプシカム油、キャラウェー油、カルダモン油、カシア油、セロリー油、シナモン油、シトロネラ油、コニャック油、コリアンダー油、クミン油、樟脳油、ジル油、エストゴラン油、ユーカリ油、フェンネル油、ガーリック油、ジンジャー油、グレープフルーツ油、ホップ油、レモン油、レモングラス油、ナツメグ油、マンダリン油、ハッカ油、オレンジ油、セージ油、スターアニス油、テレピン油等を挙げることができる。また、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0033】
一方、人工香料としては、合成香料及び抽出香料が挙げられ、好ましいものの例としては、ピネン、リモネン等の炭化水素系香料、リナロール、ゲラニオール、シトロネロール、メントール、ボルネオール、ベンジルアルコール、アニスアルコール、βフェネチルアルコール等のアルコール系香料、アネトール、オイゲノール等のフェノール系香料、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、シトラール、シトロネラール、ベンズアルデヒド、シンナミックアルデヒド等のアルデヒド系香料、カルボン、メントン、樟脳、アセトフェノン、イオノン等のケトン系香料、γ―ブトルラクトン、クマリン、シネオール等のラクトン系香料、オクチルアセテート、ベンジルアセテート、シンナミルアセテート、プロピオン酸ブチル、安息香酸メチル、等のエステル系香料等が挙げられる。また、これらの香料の2種以上を混合した調合香料も使用することができる。
【0034】
消臭剤としては、例えば、ラウリルメタクリレート、ゲラニルクロリネート、シトロネリルセネシオネート、テルペンアルデヒド類等が挙げられる。また、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0035】
防虫剤としては、例えば、フタルスリン、レスメトリン、ペルメトリン、シペルメトリン、フェノトリン、シフェノトリン、エンペントリン、プラレトリン、アレスリン、テラレスリン、ミプロスリン、イミプロスリン、トランスフルスリン、フェンフルスリン、フェンプロパトリン、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル(1R)−トランス−3−(2−クロロ−2−フルオロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラ−ト等のピレスロイド系防虫薬剤や、パラジクロロベンゼン、ナフタリン、樟脳、フェンバレレート等が挙げられる。また、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0036】
防カビ剤としては、例えば、チモール、α−ブロムシンナミックアルデヒド、パラクロロメタキシレノール、オルトフェニルフェノール、3−ヨード−2−プロピルブチルカーバメート、N−(フルオロジクロロメチルチオ)−フタルイミド、N−ジクロロフルオロメチルチオ−N’,N’−ジメチル−N−フェニルスルファミド等が挙げられる。また、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0037】
なお、上記した揮散性薬剤には、本発明の効果を妨げない範囲で酸化防止剤、紫外線吸収剤、殺菌剤、色素、金属不活性剤、効力増強剤等の任意成分を適宜配合することができる。
【0038】
上記の揮散性薬剤等は、揮散性薬剤をそのまま用いても良いが、揮散性薬剤の適当な保持体に保持させた状態で使用しても良い。保持体に保持させた例としては、適当な基材に薬剤成分を含浸させた含浸体、薬剤成分を含むゲル、薬剤成分を吸着した固形物等が挙げられる。このうち、含浸体に用いる基材は、これらの成分を含浸可能なものであれば特に限定されないが、具体的には、パルプ、紙、木片、シリカゲル、織布、不織布等の材料を、粒状、球状、板状、マット状、フィルム状の各種形状として用いることができる。また、上記の揮散性薬剤をゲル化するゲル化剤としては、12−ヒドロキシステアリン酸、水素添加ヒマシ油、ジベンジリデン−D−ソルビトール、ジ−2−エチルヘキサン酸アルミニウム、トリ−2−エチルヘキサン酸アルミニウム等の金属石けん、ヒドロキシプロピル化グアーガム等の1種若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0039】
含浸体への揮散性薬剤の含浸量は、防虫剤の使用用途、使用期間、使用される環境及び含浸体の形状やサイズ等によって適宜決定されるが、例えば、揮散性薬剤として1gのエンペントリンを、サイズ10×10cm(厚さ1mm)のパルプ紙に含浸させた含浸体を、室温、無風の環境下で使用した場合には、約6ヶ月間防虫効果を持続させることができる。
【0040】
以下、本発明の薬剤収納体について、その実施形態を示す図面を用いて、さらに詳しく説明する。
【0041】
図1は、本発明に係る薬剤収納体の正面図、図2は薬剤収納体を構成する容器を開いた状態の内面図、図3は該容器を開いた状態の外面図(但し、薬剤含浸体は図示しない)、図4は図1のA−A’断面図である。図中、1は薬剤収納体、2は容器、3は揮散孔、4は薬剤含浸体、5はヒンジ部、6はフック部、7は支持ピン、8は容器内面部、9は嵌合孔、10は嵌合ピンをそれぞれ示す。
【0042】
図1ないし図3に示すように、本発明の薬剤収納体1を構成する容器2は、右容器体2aおよび左容器体2bに複数の揮散孔3を有し、また、揮散性薬剤を含浸させた薬剤含浸材4を収納する。また、図2及び図3に示すように、本形態では、対称的な形状の上下両容器体2aおよび2bは、中央のヒンジ部5を介して折り曲げ可能であり、折り曲げた後、嵌合孔9に嵌合ピン10を差し込むことにより容器2が形成され、この容器2の内部に、揮散性薬剤を含浸させた薬剤含浸体4を収納できる空間が形成される。更には、容器2内で薬剤含浸体4を保持するため、図4に示すように、容器内面部8の適当な箇所に支持ピン7を複数個形成してもよい。
【0043】
上記図1ないし図4で示した形態で使用される容器2にはフック部6が設けられているため、洋服ダンス内に吊すことも可能である。
【0044】
この形態において、薬剤非吸着性材料からなる容器2の表面の一部は薬剤吸着性材料で構成されている。このような構成であるため、容器2内に収納された薬剤含浸体4に含浸された揮散性薬剤は、容器2の内側に吸着されることなく揮散孔3から外部に揮散される一方、揮散性薬剤は、容器2の外側表面に存在する薬剤吸着性材料にその適度な量が吸着されることとなるため、薬剤収納体1が密封状態で長時間流通ないし保存された場合であっても密封袋内で薬剤が過度に充満してしまうこともなく、密封袋や容器2に対する薬剤の液滴状の付着を防止することができる。なお、薬剤吸着性材料は、図3で表される容器の外側表面の少なくとも一部に対して形成すればよい。
【0045】
更に、本発明の別の形態としては、図5に表されるような形態が挙げられる。図5は薬剤収納体1の正面図、図6は容器2を開いた状態の正面図、図7は図5のA−A’断面図である。
【0046】
この形態では、薬剤収納体1を構成する容器2は、一部が上に突き出た上容器体2cと、一部が下側に突き出た下容器体2dから構成され、上容器体2cと下容器体2dは複数の揮散孔3を有し、両者が形成する空間に揮散性薬剤を含浸させた薬剤含浸体4を収納することができるものである。この形態でも、図1ないし図4の形態と同様に、薬剤含浸体4を保持するため、図7に示すように容器内面部8の適当な箇所に弾性材料からなる支持ピン7を複数個形成してもよい。
【0047】
図5ないし図7の形態においても、薬剤非吸着性材料からなる容器2の表面の一部を薬剤吸着性材料で構成されているので、容器2内に収納された薬剤含浸体4に含浸された揮散性薬剤は、容器2の表面に存在する薬剤吸着性材料にその適当量が吸着される。そして、薬剤収納体1が密封状態で長時間流通ないし保存された場合であっても、密封袋内で揮散性ピレスロイドが過度に充満してしまうこともなく、密封袋や容器2に対する薬剤の液滴状の付着を防止することができる。
【0048】
また、この形態では、下容器体2dを下にして設置されて使用されることから、上容器体2cのみに揮散孔3を設けてもよい。
【0049】
図8および図9は、上記の上容器体2cのみに揮散孔を設けた形態例であり、図8は上容器体2cのみに揮散孔3を設けた容器2を開いた正面図、図9は、薬剤収納体1のA−A’方向の断面図である。
【0050】
上記の図5ないし図7並びに図8および図9で示される形態の薬剤収納体は、タンスの引き出し等に入れて使用することもできる。
【0051】
なお、上記の形態例は、本発明のうちの第1態様を用いて説明したものであるが、容器2を薬剤吸着性材料と薬剤非吸着性材料の混合材料から構成される、本発明の第2態様によっても、同様に構成され、同様な効果を得ることができるものである。
【0052】
以上説明した形態の容器を用いることにより本発明の薬剤収納体が得られるのであるが、本発明の容器収納体を構成する容器の形状は、上記したものに限定されることはない。
【0053】
かくして得られる本発明の薬剤収納体は、通常はプラスチックフィルム等の袋に密封した状態で流通ないし保存しても揮散性薬剤が容器等に過度に吸着されることはなく、また、使用時にかかる袋を開封して、洋服ダンスや引き出し、室内や玄関、トイレ、流しの下、車内等の場所に設置して適用させることにより、揮散性薬剤が有効に薬効作用を発揮することができるものである。
【0054】
そして、本発明の薬剤収納体を構成する容器は、容器を構成する材料として使用される薬剤吸着性材料が、容器内の薬剤含浸体から揮散される揮散性薬剤を適度に吸着してくれるため、薬剤収納体が密封状態で長時間流通ないし保存された場合であっても、密封袋内で揮散性ピレスロイドが過度に充満してしまうこともなく、その結果、薬剤の袋や容器に対する液滴状の付着を防止することができるのである。
【0055】
【実施例】
次に実施例及び試験例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に何ら制約されるものではない。
【0056】
試 験 例 1:
表1に示す材料を構成材料とする、厚さが0.3mmの試験品1〜4のシートを用意した。これらのシートを、サイズ10cm×10cm(厚さ0.03mm)に切断して試料サンプル(サンプル1〜4とする)を作成した。このサンプル1〜4について、初期重量を測定した後、揮散性薬剤であるシトラス系香料2.0gを含浸させたサイズ10cm×10cm×0.1cmのパルプ製濾紙の上に(サンプル1についてはポリエチレンテレフタレートの面が濾紙に接するように)載せ、これをバリヤー性袋(シリカ蒸着ポリエステル/共重合ポリエステル)に封入して、40℃で30日間放置した。そして、放置後のサンプルについて、下記の方法を用いて、香料成分の吸着量及び付着状態を確認した。
【0057】
なお、試験品1及び2のシートは下記の調製方法により調製した。また、試験品3及び4は、市販のシートをそのまま用いた。
【0058】
( 構成材料 )
【表1】
【0059】
( 試験品1の調製方法)
薬剤非吸着性材料であるポリエチレンテレフタレート(電気化学工業(株):商品名「デンカ A−PETシート」)の表面をオゾン及びコロナ放電処理した後に薬剤吸着性であるエチレン−アクリル酸共重合体を0.003mmコーティング後、乾燥して試験品1のシートを調製した。なお、エチレン−アクリル酸共重合体は、溶剤であるトルエンに溶解させてコーティングした。
【0060】
( 試験品2の調製方法)
薬剤非吸着性材料であるポリエチレンテレフタレート(ダイヤナイト:三菱レーヨン(株)製)70%と、薬剤吸着性材料であるポリプロピレン(チッソポリプロ:チッソ(株)製)30%の混合ペレットに接着材料としてエラストマーを添加してシリンダ温度約270℃で押出成形して厚さ0.3mmの試験品2のシートを成形した。
【0061】
( 香料の吸着量の測定 )
30日間放置後における香料成分のパルプ製濾紙及びバリアー性袋への付着量を測定した。そして、下記(1)式を用いて、各サンプルに対する香料の吸着量を算出した。結果を表2に示す。
【0062】
【数1】
X = A −( B + C ) …… (1)
X(g): 香料の吸着量
A(g): パルプ製濾紙への初期含浸量(2.0g)
B(g): 30日後の濾紙中の残存香料の量
C(g): 30日後のバリヤー性袋への香料吸着量
【0063】
( 香料の付着状態の確認 )
30日間放置後、バリヤー性袋を開封し、目視にてサンプル及びバリアー性袋内面の香料の付着状態を確認し、下記の基準で判定した。結果を表2に示す。
【0064】
( 基 準 )
【0065】
( 結 果 )
【表2】
【0066】
表2の結果より、薬剤非吸着性材料の表面に薬剤吸着性材料をコーティングしたサンプル1は、香料が適度に付着し、サンプル表面及びバリアー性袋に対する香料の液滴状の付着は見られず、極めて良好なものであった。また、薬剤吸着性材料と薬剤非吸着性材料の混合材料からなるサンプル2も、香料の吸着量及び付着状態ともに良好な結果が得られた。この結果より、両サンプルの構成が、本発明の薬剤収納体における容器の構成として適することが確認できた。
【0067】
一方、薬剤吸着性材料のみからなるサンプル3は香料が過度に吸着してしまい、また薬剤非吸着性材料のみからなるサンプル4も、その表面等に相当量の香料が液滴状に付着してしまうため、ともに好ましいものではなかった。
【0068】
製 造 例 1
引き出し用防虫薬剤収納体:
薬剤非吸着性材料である厚さ0.4mmのポリエチレンテレフタレートシート(デンカ A−PETシート:電気化学工業(株)製)に、薬剤吸着性材料である厚さ0.01mmのポリエチレンシートをエクストリュージョン(押出ラミネート法)により貼り合わせて、貼り合わせシートを作成した。そして、該貼り合わせシートを、ポリエチレンシートが容器の外面になるようにしてシート成形することにより、図5に表される形状の容器を成形した。この容器に、防虫薬剤であるエンペントリン5gを含浸させたサイズ100mm×100mm×1mmのパルプ製マットを含浸体として収納し、引き出し用防虫薬剤収納体(本発明品1)を調製した。
【0069】
そして、得られた薬剤収納体(本発明品1)2個をポリエチレンテレフタラート(PET)/未延伸ポリプロプロピレン(CPP)製の包装袋に入れて、40℃で1ヶ月保存した。保存後包装袋を開封して中の様子を観察したところ、容器及び包装袋の内面に対するエンペントリンの液滴状の付着は見られなかった。また、開封後に本発明品1の薬剤収納体を引き出しに設置して使用したところ、防虫効果を約6ヶ月間奏するものであった。
【0070】
製 造 例 2
引き出し用防虫薬剤収納体:
薬剤非吸着性材料であるポリエチレンテレフタレートシート(デンカ A−PETシート:電気化学工業(株)製)に、薬剤吸着性材料であるエチレン−アクリル酸共重合体を0.003mmコーティングした。このシートを用いて、ポリエチレンのコーティング層が容器の外側になるようにしてシート成形することにより、図5のような容器を作成した。この容器に、防虫薬剤であるエンペントリン5gを含浸させたサイズ100mm×100mm×1mmのパルプ製マットを含浸体として収納し、引き出し用防虫薬剤収納体(本発明品2)を調製した。
【0071】
そして、得られた薬剤収納体(本発明品)2個をPET/CPPの包装袋に入れて、40℃で1ヶ月保存した後、開封して中の様子を観察したところ、容器及び包装袋の内面に対するエンペントリンの液滴状の付着は見られなかった。また、開封後に本発明品2の薬剤収納体をタンスの引き出しに設置して使用したところ、防虫効果を約6ヶ月間奏するものであった。
【0072】
製 造 例 3
フック付き洋ダンス用防虫薬剤収納体:
薬剤非吸着性材料であるポリエチレンテレフタレート(ダイヤナイト:三菱レーヨン(株)製)70重量部と薬剤吸着性材料であるポリプロピレン(チッソポリプロ:チッソ(株)製)30重量部の混合ペレットを用いて、シリンダ温度約270℃、金型温度約40℃、成形時間約30秒の成形条件で射出成形を行い、図1で表される形状の容器を成形した。この容器に、防虫薬剤であるエンペントリン5gを含浸させたサイズ12cm×8cm×0.1cmの濾紙を含浸体として収納し、フック付き洋ダンス用防虫薬剤収納体(本発明品3)を調製した。
【0073】
そして、得られた薬剤収納体(本発明品3)2個をPET/CPPの包装袋に入れて、40℃で1ヶ月保存した後開封して中の様子を観察したところ、エンペントリンの容器及び包装袋の内面に対するエンペントリンの液滴状の付着は見られなかった。また、開封後に本発明品3の薬剤収納体を洋服ダンスに設置して使用したところ、約6ヶ月間防虫効果を奏するものであった。
【0074】
【発明の効果】
本発明品の薬剤収納体は、容器を構成する材料として薬剤非吸着性材料と薬剤吸着性材料を併用しているため、長時間流通、保存及び使用された場合であっても、揮散性薬剤が容器や包装袋内に液滴状に付着することを防止することができるとともに、揮散性薬剤の効力を長期間にわたって持続させることが可能となるものである。
【0075】
よって、本発明品の薬剤収納体は、防虫剤、殺虫剤、防かび剤、芳香剤等の収納容器として使用することができ、長期間保存した場合でも揮散性薬剤が収納容器に過度に吸着してしまうことがなく、使用期間中安定した薬効作用を発揮することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の薬剤収納体の実施形態例を示す正面図である
【図2】図1の実施形態例において、容器本体を開いた状態を示した図(内面図)である。
【図3】図1の実施形態例において、容器本体を開いた状態を示した図(外面図)である。
【図4】図1の実施態様におけるA−A’断面図である。
【図5】本発明の薬剤収納体の別の実施態様例を示す表面図である。
【図6】図5の実施形態例において、容器本体を開いた状態を表した図である。
【図7】図5の実施形態例におけるA−A’断面図である。
【図8】図5の実施形態例で上容器体のみに揮散孔を形成した場合における、容器本体を開いた状態を表した図である。
【図9】図5の実施形態例で上容器体のみに揮散孔を形成した場合におけるA−A’断面図である。
【符号の説明】
1 …… 薬剤収納体
2 …… 容器
2a …… 右容器体
2b …… 左容器体
2c …… 上容器体
2d …… 下容器体
3 …… 揮散孔
4 …… 薬剤含浸体
5 …… ヒンジ部
6 …… フック部
6a …… 右容器体のフック部
6b …… 左容器体のフック部
7 …… 支持ピン
8 …… 容器内面部
9 …… 嵌合孔
10 …… 嵌合ピン
以 上
Claims (7)
- 揮散性薬剤またはこれを含む保持体を容器内に収納してなる薬剤収納体であって、薬剤非吸着性材料からなる当該容器の表面の少なくとも一部が薬剤吸着性材料により構成されていることを特徴とする薬剤収納体。
- 連続または非連続の薬剤吸着性材料皮膜層を容器の外側表面に形成せしめるものである請求項第1項記載の薬剤収納体。
- 揮散性薬剤またはこれを含む保持体を容器内に収納してなる薬剤収納体であって、当該容器が薬剤非吸着性材料と薬剤吸着性材料を混合した材料により構成されていることを特徴とする薬剤収納体。
- 薬剤非吸着性材料がポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、メチルペンテンポリマー、金属、雲母及び炭酸カルシウムよりなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求項第1項ないし第3項の何れかの項記載の薬剤収納体。
- 薬剤吸着性材料がポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアセテート共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、ウレタン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー及びアイオノマーよりなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求項第1項ないし第4項の何れかの項記載の薬剤収納体。
- 揮散性薬剤がピレスロイド系防虫薬剤である請求項第1項ないし第5項の何れかの項記載の薬剤収納体。
- 揮散性薬剤が香料である請求項第1項ないし第5項の何れかの項記載の薬剤収納体。
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