JP2004252093A - 液状感光性樹脂凸版印刷版の製造方法 - Google Patents

液状感光性樹脂凸版印刷版の製造方法 Download PDF

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Masahiro Yoshida
正宏 吉田
Hirotatsu Fujii
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Abstract

【課題】高圧水現像システムを用いた液状感光性樹脂印刷版の製造方法において、版表面切削跡、レリーフ裾部分に抉れ形態を生じず、界面活性剤水溶液現像システムにより得られた版と同等の品質を実現する凸版印刷版を得るための製版方法の提供。
【解決手段】1〜20MPaの水圧による高圧水現像システムを用いる時、ある特定の樹脂粘度とある特定の光反応硬化物の硬度とを併せ持つ液状感光性樹脂組成物を使用する製版方法。
【選択図】 選択図なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液状感光性樹脂を用いた凸版印刷版の製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、高圧水による現像方法を用いて高精彩な画像を有する印刷版を製造することが出来る液状樹脂印刷版の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
感光性樹脂印刷版は、活性光線照射によるラジカル重合反応によりレリーフ部分の感光層のみを硬化させる露光工程の後、レリーフ部分以外の未硬化樹脂を所定の洗浄液(現像液)で溶解除去、あるいは膨潤分散させて機械的に除去することにより、硬化部分のみをレリーフとして版表面に出現させる現像工程によって得られることから、短時間で微細レリーフの形成が可能であり広く一般に用いられている。
【0003】
感光性樹脂印刷版の製版システムは現像液に使用する薬剤により、揮発性有機溶剤を用いる溶剤現像システム、主に界面活性剤水溶液を用いる水性現像システムに区分され、溶剤現像システムは、主に塩素系有機溶剤を含んで使用するため、製版作業環境での溶剤拡散による人体への悪影響、地球環境への影響等の問題があり、当該業者の間では水性現像システムが好んで使用される。
水性現像システムの現像液は、主にアルカリ水溶液、アニオン系界面活性剤水溶液、ノニオン系界面活性剤水溶液、これらの複合物を使用することことが一般的であり、有機溶剤使用による作業環境上の問題は無いが、近年、工業製品の環境汚染、特に有機化合物海洋投棄による生態系の破壊、環境ホルモン物質による動植物の生殖異常、汚染された動植物摂取による人体への二次的被害が問題となっており、水性現像システムから生じる廃液の処理方法について関心が高まっている。
【0004】
水溶性廃液の一般的浄化方法としては、限外ろ過法、蒸留法、電気分解法、凝集沈殿法、曇天分離法、微生物を用いた分解法等を単独あるいは組み合わせて用いる多くのシステムが提案されているが、その設備はかなり大掛かりとなり、廃液量が他業種に対して比較的少ない印刷版製造業者の間では、その廃液処理効率とコストとのバランスの観点から普及が進んでいないのが現状である。
【0005】
水系現像システムである液状感光性樹脂を用いた凸版印刷版の製造方法では、感光性樹脂にデザイン画像を露光により転写した後、現像を実施する前にドクター方式、エアーナイフ方式、遠心除去法等の機械的方法により、未硬化樹脂を硬化樹脂版面上より予め除去・回収する。その後、上記の水性現像液を硬化樹脂版面上に0.2MPa程度の水圧でスプレー噴霧して未硬化樹脂を完全に硬化樹脂版面上から除去する方法が一般的であり、現像工程中に版面をブラッシングするような機械的助力を加える装置もあるが、その現像メカニズムは水性現像液により硬化樹脂版面を適度に膨潤させ、未硬化の液状感光性樹脂が水性現像液中に溶解、あるいは分散させるため、その現像能力は現像液中への未硬化樹脂混入量に依って変動する。すなわち、現像液中に樹脂成分が多量に混入するような状況、製版枚数の増大に伴ってその現像能力が低下し、均一な現像能力で製版を実施しようとした時、現像液への未硬化樹脂混入量をコントロールし、ある一定量の混入量を超えた時、現像液を更新しなければ成らない。
【0006】
このような現像メカニズムを有する液状感光性樹脂製版に関わる当業者の間では、例えば、国際公開第99/32939号公報に開示の如く、現像廃液の量を削減することによる環境対応への工夫、つまり現像液への未硬化樹脂混入量を減じることにより、現像液寿命を延長することを主目的としたアイデアが提案されている。
一方、特表平3−500935号公報、特開2000−29227号公報では、感光性樹脂の現像液として実質的に水を使用し、数MPaの高圧でスプレーする現像方法が開示されており、さらに水による高圧スプレー現像方式を液状感光性樹脂印刷版の現像装置として用い、現像液中で分散せずに浮遊する未硬化樹脂をフィルターろ過することにより、界面活性剤現像方式における問題点、すなわち現像能力をコントロールするために現像液の組成を管理しなければ成らないこと、現像液の寿命が短く現像液の廃液が多量に発生することを改善することが国際公開第2002/33490号公報、特開2002−311599号公報で開示されている。
しかしながら、本発明者等が、高圧水現像システムを液状感光性樹脂印刷版の製造方法に用いようとした時、従来の界面活性剤水溶液を現像液として製造した印刷版には見られなかった問題が生じることが明らかになった。
【0007】
凸版印刷に供する液状感光性樹脂印刷版では、非印刷体の種類に応じて印刷版の硬度、デザインレリーフの深さ、微小な文字の形成性について適正化を行う必要があり、またそれら多用な印刷版を製造するために用いる液状感光性樹脂には、使用する成型装置の仕様により求められる樹脂粘度が異なる。これら目的に応じた樹脂粘度、光硬化物硬度を有する液状感光性樹脂組成物を現像するシステムとして、高圧水現像システムを用いた場合、液状感光性樹脂組成物の種類に依っては、微小なレリーフが破壊され形成されなかったり、得られた印刷版では版表面に水圧による切削跡が発生したり、レリーフの裾部分が抉れたような形態を示す等の問題が生じ、また、形成したレリーフの寸法がデザインのネガに対して肥大する傾向も見られ、印刷版としては劣悪な品質と成ることが明らかに成った。
【0008】
特表平3−500935号公報では、片面側に被覆(支持体)を有する印刷現版の処理方法として、具体的には高圧水システムを用いた現像方法を開示しており、重合した物質に損傷を与えることなしに効果的に現像する水圧として3.445〜6.89MPaを適正化しているが、使用した感光性樹脂組成物については何ら具体的な記載が無い。また例示された支持体がアルミニウム基板であり、透明フィルムを支持体として両面露光でレリーフ形成を行う液状感光性樹脂印刷版製造に関する問題は予見できない。
【0009】
国際公開第2002/33490号公報では、本発明者等が実施した製造方法と同様の方法により、液状樹脂印刷版を製造した実施例を挙げている。しかしながらここで使用している液状感光性樹脂組成物の粘度は75Pa・sであり、またこの組成物から得られた光反応硬化物のショアA硬度は30度であったが、本発明者等が実施したところ、版表面の切削跡、レリーフ裾部分の抉れ形態については、より高精細な画像を得るためには、必ずしも満足の得られるものではなかった。
本発明者等が挙げる粘度と硬度は、その測定方法は後述するが、温度20℃、湿度70%の回転粘度計により測定される粘度と衝撃法におけるショアA硬さである。
【0010】
【特許文献1】
特表平3−500935号公報
【特許文献2】
特開2000−29227号公報
【特許文献3】
国際公開第2002/33490号公報
【特許文献4】
特開2002−311599号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高圧水現像システムを用いた液状感光性樹脂印刷版の製造方法において、版表面切削跡、レリーフ裾部分に抉れ形態を生じず、界面活性剤水溶液現像システムにより得られた版と同等の品質を実現する凸版印刷版を得るための製版方法を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、かかる課題を解決するために鋭意研究した結果、1〜20MPaの水圧による高圧水現像システムに供し得る液状感光性樹脂組成物として、粘度が1〜70Pa・sの範囲である時その光反応硬化物の硬度が10度を越えること、またはその樹脂組成物の粘度が70〜300Pa・sの範囲である時その光反応硬化物の硬度が35度を越えることを特徴とする感光性樹脂組成物を用いることにより、良好な品質の凸版印刷版が製造されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、下記の通りである。
1.液状感光性樹脂組成物の厚みを規制した後、所望するレリーフを露光により形成する成型・露光工程、露光後の液状感光性樹脂の未硬化部分を1〜20MPaの範囲の水圧を有する水性現像液で硬化版表面より除去する現像工程、現像後樹脂硬化物に更に露光を行う後露光工程を含む液状感光性樹脂凸版印刷版の製造方法において、液状感光性樹脂組成物が、
(a)数平均分子量が1,000〜70,000であるウレタン系不飽和プレポリマー、あるいは不飽和ポリエステル:100質量部
(b)エチレン性不飽和モノマー:10〜150質量部
(c)光重合開始剤:0.01〜10質量部
を含有して成り、その樹脂組成物の粘度が1〜70Pa・sの範囲である時その光反応硬化物の硬度が10度を越えること、またはその樹脂組成物の粘度が70〜300Pa・sの範囲である時その光反応硬化物の硬度が35度を越えることを特徴とする液状感光性樹脂印刷版の製造方法。
【0014】
2.さらに、活性光線を照射されることによって化合物中の水素原子を引き抜くことのできる水素引き抜き剤を含有する水性表面処理液による表面処理工程を、現像工程と後露光工程の間に含むことを特徴とする1.に記載の液状感光性樹脂印刷版の製造方法。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、特にその好ましい態様を中心に、詳細に説明する。
本発明で好適に使用できる成型・露光工程、高圧水現像工程、後露光工程の3つの工程について、その一例を以下に説明する。
1、成型・露光工程
液状感光性樹脂を用いた印刷版製造方法(以下、製版方法と略す)では、液状樹脂を一定厚みに整える成型工程と露光工程が併せて行われる。この様な液状感光性樹脂の成型・露光工程に用いられる装置は製版機として市販されており、以下の所作を行う方法であればその様式に制限はない。
【0016】
1)紫外線透過性のガラス板上にネガフィルムを置き、薄い保護フィルムでカバーした後、その上に液状感光性樹脂を流し、これが一定の版厚になるようスペーサーを介して支持体となるベースフィルムを貼りあわせ、さらにその上から紫外線透過性のガラス版で押さえつける。
2)紫外線蛍光灯を光源とする活性光線(300nm以上に波長分布を有する)を下部ガラス側からネガフィルムを介して照射し画像形成を行うレリーフ形成露光を行う。
【0017】
3)上部ガラス側から支持体を介して下部と同様の活性光線を短時間照射することにより、版の支持体側全面に均一な薄い硬化樹脂層すなわち床部形成層(バック析出層)を析出させるバック露光を行う。
フレキソ印刷に用いるような刷版の厚みが4mm以上の場合には、印刷時の印圧に対するレリーフの強度を補うために土台となるシェルフ層を形成するのが好ましく、この場合、レリーフ露光前に上部ガラス側から専用のネガフィルムを用いたマスキング露光を行うことが好ましい。
【0018】
2、高圧水現像工程
成型・露光工程によりレリーフの光硬化が成された版は、保護フィルムは剥がし、ゴムヘラ、エアーナイフ、あるいは遠心力等により未硬化樹脂を硬化樹脂版表面から取り除き、回収した後、水性現像液を1〜20MPaの水圧で、版表面全体に均一にスプレー噴霧することを可能とする装置に装着され、高圧水現像が施される。
【0019】
本発明の水性現像液は、1〜20MPaの圧力でスプレーノズルから噴霧が可能であり、感光性樹脂版表面に残存する未硬化樹脂を取り除くために衝撃力を与えられるものであれば、全ての液体が使用可能である。
一般的なネガ型光反応システムでは、露光前つまり未反応の樹脂を溶解あるいは膨潤させる性能をもつ液体を現像液として使用し、光照射された感光性樹脂が高分子化、ゲル化することにより現像液に対する溶解性あるいは膨潤性がなくなること、つまり現像液に対する化学的耐性が与えられことを利用して、レリーフを形成させる。しかし、本発明の高圧水現像方法は、感光性樹脂の光反応による特性変化の内、最も顕著に変化する硬度差(感光性樹脂の光反応は別名光硬化反応と呼ばれる)を主に利用したシステムであるため、その現像液に求められる性能として未硬化樹脂の溶解、あるいは膨潤は必ずしも必須要件ではない。
【0020】
界面活性剤水溶液で現像可能な液状感光性樹脂の現像に本発明を利用する場合、通常現像液として用いる界面活性剤水溶液の濃度を下げて使用することも可能であり、また現像液の中には液状感光性樹脂印刷版を非粘着性表面に仕上げるために水素引き抜き型の開始剤を、あるいは印刷版表面の機械的強度を付与するためにエチレン性不飽和モノマーを加えることも可能である。しかし、本発明の最も好ましい現像液としては水が挙げられる。
【0021】
高圧水現像装置は、版表面を均一にスプレー噴霧し、未硬化樹脂を飛散させるための衝撃力を最大限大きくすることが重要であり、ポンプ流量、ノズルの個数、ノズルスリット巾、スプレー噴角、ノズルと版面の距離、版面への噴き付け角度、ノズルヘッダーの移動速度、ドラムに版を装着して回転させる場合その回転速度等、なんら制限されること無く、全ての公知技術を使用することができ、高圧水噴霧だけでは未硬化樹脂の完全除去が困難な場合は、ブラシで版面を擦る等の機械的助力を用いることも可能である。
【0022】
高圧水現像工程に用いる水圧は1〜20MPaであり、20MPaを超える水圧では、現像時間、現像水温度を如何に最適化しても凸版印刷で所望される硬度の樹脂硬化物で形成された微細レリーフを破壊する恐れがあるばかりか、その水圧を実現するポンプの使用は印刷版製造に用いる装置としてはサイズ、騒音、製造コストの点でも現実的でない。一方、1MPa以下の水圧では、現像時間を増大したところで未硬化樹脂の除去性を満足することができないため1〜20MPaに範囲を有する水圧を用いることが好ましく、さらには5〜15MPaの範囲の水圧がより好ましい。
【0023】
現像液温度は現像時の未硬化樹脂の粘度を制御する目的で選択され、高圧水現像における物理的未硬化樹脂の除去性に対しては高温である方が好ましいが、水を現像液として使用する場合、80℃以上の高温では蒸気の発生が著しく、また現像後の印刷版を素手で取り扱う際に火傷の恐れがあるため40〜60℃の範囲で使用することが好ましい。さらに現像工程は10分より短い時間で処理されることが一般的であるため、その時間の範囲で良好な未硬化樹脂の除去性が満足される範囲で試行錯誤の後に好ましい温度を選択することが好ましい。
本発明の目的とする現像液寿命延長による廃液削減の目的を満足させるためには、高圧水により飛散した樹脂が現像液に分散することを装置的に防ぐ工夫も有効であり、例えば、循環再利用する現像液をフィルターろ過して未硬化樹脂を回収するシステムが好ましい。
【0024】
3、後露光工程
後露光工程は、機械的強度の促進、表面粘着性除去を主目的とした現像後樹脂硬化物への活性光照射であり、レリーフ露光に用いる300nm以上の波長領域に分布を有する活性光源(例えば高圧水銀灯、超高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、カーボンアーク灯、キセノンランプ等)と200〜300nmの波長領域に分布を有する活性光源(例えば低圧水銀灯、殺菌灯、重水素ランプ等)を併用することが好ましく、空気中の酸素による重合反応阻害防止を目的とした水中露光方式で行っても良いし、空気中すなわち酸素阻害への対策を行わない方法(空中露光方式)で露光しても良い。
【0025】
本発明の液状感光性樹脂凸版印刷版の製造方法では、上記した成型・露光工程、高圧水現像工程、後露光工程以外に他の工程を適宜併せて行うことも可能であり、例えば、版表面非粘着性化あるいは版表面層機械的強度増大のための表面処理工程、付着した水滴を除去するための乾燥工程あるいはエアーブロー工程、高圧水現像が有効に作用する版表面を得るための薬液浸漬工程等を付加することができる。
本発明の液状感光性樹脂凸版印刷版の製造方法として、特に好ましい製造工程の実施態様の一つは、活性光線を照射されることによって化合物中の水素原子を引き抜くことのできる水素引き抜き剤を含有する水性表面処理液による表面処理工程を、現像工程と後露光工程の間に含むことを特徴とする液状感光性樹脂印刷版の製造方法であり、その表面処理工程について説明する。
【0026】
本発明に好適に用いられる表面処理工程は、液状感光性樹脂印刷版の版表面を非粘着性とすることを目的として施される水素引き抜き剤含浸工程であり、現像後の硬化物表面層に活性光線を照射されることによって化合物中の水素原子を引き抜くことのできる水素引き抜き剤を高濃度に含浸させ、次いで水素引き抜き剤を活性化させることが可能な波長領域を含む後露光を実施することが必要であり、そのために該表面処理工程は、高圧現像工程と後露光工程の間で行われる必要がある。
該水素引き抜き剤含浸工程は、国際公開第98/25184号公報に記載の表面処理液組成、処理方法が好適に使用できる。
【0027】
具体的には、該表面処理液は、活性光線を照射されることによって化合物中の水素原子を引き抜くことのできる水素引き抜き剤を含む界面活性剤水溶液であり、好ましい水素引き抜き剤としてはベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、アントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等が挙げられ、それらを単独で用いても良いし、また複数の化合物を併せて用いても良い。中でも最も効果的な水素引き抜き剤はベンゾフェノンである。
【0028】
該水性表面処理液において、水素引き抜き剤がそれ自身水溶性あるいは水分散性を有する場合、水素引き抜き剤の水溶液を用いることが可能であるが、水素引き抜き剤が非水溶性の場合、水素引き抜き剤を水溶液中に均一に分散させるために界面活性剤を用いることができる。その界面活性剤の構造及び性状は特に制限されないが、汎用的なアニオン界面活性剤又はノニオン界面活性剤を用いることが好ましい。例えば、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸、瘁|オレフィンスルホン酸、ジアルキルスルホコハク酸、脂肪酸低級アルキルエステルのスルホン酸、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸、飽和若しくは不飽和脂肪酸等、又はこれらのポリオキシアルキレン付加物のナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩、及びアンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン塩といったアニオン界面活性剤;
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンアルケニルアミン、ポリオキシアルキレンアルキルアミド、ポリオキシアルキレンアルケニルアミド、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック付加物(プルロニック型界面活性剤)といったノニオン界面活性剤を挙げることができる。
【0029】
水溶液中で水素引き抜き剤を均一に含ませる性能の面からは、アニオン界面活性剤よりもノニオン界面活性剤の方が好ましく、特に水素引き抜き反応性に優れる芳香族カルボニル化合物を水溶液中で均一に含ませるためには、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルに代表される芳香族系ポリエチレングリコール型ノニオン界面活性剤が好ましい。
水素引き抜き剤含浸工程は、前述した表面処理液により樹脂硬化物表面を処理することにより、樹脂硬化物表面層に該処理液中の水素引き抜き剤を付着含浸させることを目的とした処理工程であり、印刷版表面の粘着性をむらなく除去するためには、該処理液で感光性樹脂硬化物の表面全体を均一に処理することが必要である。そのための具体的手法としては、該表面処理液中に樹脂硬化物を投入、浸漬する手法、樹脂硬化物表面にスプレーノズルから該表面処理液を吹き付ける手法、樹脂硬化物表面に該表面処理液を刷毛塗りする手法等が挙げられる。
【0030】
国際公開98/25184号公報では、従来の界面活性剤水溶液を現像液とした現像工程の後に行う水素引き剤含浸工程として、スプレーノズルによる噴き付け方法を最適としており、その理由は明記されていないが、版表面へ水素引き抜き剤をより深く含浸させるために物理的寄与を考慮したものと予想され、特に現像後版表面において粘着性が大きく現れるシェルフ層、バック析出層については、その表面層から半硬化物を僅かに除去することが表面粘着性除去に効果があり、この効果も含めてスプレー方式が有効としていると考えられる。
【0031】
しかし、本発明の現像工程である1〜20MPaの範囲の水圧を有する水性現像液による高圧現像を施した版表面では、支持体側からの露光で硬化、形成したシェルフ層、バック層が、従来の界面活性剤水溶液による現像工程のそれに対して硬化度の高い状態、すなわち表面硬度が高いため、一般的に行われる0.5MPa以下の水圧を用いたスプレー方式では、半硬化成分の除去は期待できず、スプレー方式による水素引き抜き剤含浸効果は、該表面処理液中に樹脂硬化物を投入、浸漬する手法に対して有意差が見られない。したがって、装置製造コストが安価で抑えられ、最大限の水素引き抜き剤含浸効果が得られる方法として、表面処理液中に現像後印刷版を浸漬する方法が好ましく利用できる。浸漬方法において版表面近傍の表面処理液の循環効率を高めるため、また版表面に僅かに付着した異物を除去するためにブラシにより表面を擦りながら表面処理する方法がより好ましい方法として利用できる。
【0032】
表面処理工程における該処理液の液温、浸漬・吹き付け時間、刷毛塗り回数によって樹脂硬化物表面層への水素引き抜き剤の含浸量が異なり、それに応じて表面粘着性除去効果も異なるため、表面処理液の組成と供に製版時間全体の流れを考慮して最適条件を見出すことが重要である。
表面処理工程に次いで行われる後露光工程では、使用した水素引き抜き剤を効率よく励起させる波長領域に波長を有していることが必要であり、この条件が満たされれば活性光線の波長は特に制限されるものではなく、上述した水素引き抜き剤を用いる場合、その水素引き抜き剤への励起効率と安全性の観点から200〜300nmの領域に波長分布を有する活性光線が好ましい。この波長領域に分布を有する活性光源(例えば低圧水銀灯、殺菌灯、重水素ランプ等)は通常の後露光光源として使用が一般的であるため、本発明では表面処理工程を高圧水現像工程と後露光工程の間に付与することで、他の工程を変更することなく非粘着性の版が得られる。
【0033】
本発明の十分な表面粘着性除去効果を得るための適正露光量は、樹脂硬化物の樹脂組成、水素引き抜き剤の種類、樹脂組成に対する水素引き抜き剤の含浸量により異なるが、紫外線測定器UV−M02(商標・オーク製作所製)により測定した250nmの波長における照射量と照射時間とから算出した値として、少なくとも500mJ/cmであり、1000〜5000mJ/cmの範囲が好ましい。5000mJ/cm以上の露光量は印刷版表面に微少なクラックが生じるので好ましくない。
【0034】
次に本発明の製版方法に供する液状感光性樹脂組成物について詳細に説明する。
本発明の製版方法に供する感光性樹脂組成物は、下記(a)、(b)、(c)成分を含有して成り、その樹脂組成物の樹脂粘度と光反応硬化物の硬度とが、特定の領域にあることが特徴である。
(a)数平均分子量が1,000〜70,000であるウレタン系不飽和プレポリマー、あるいは不飽和ポリエステル:100質量部
(b)エチレン性不飽和モノマー:10〜150質量部
(c)光重合開始剤:0.01〜10質量部
本発明の液状感光性樹脂組成物の構成成分(a)で示す、数平均分子量が1,000〜70,000であるウレタン系不飽和プレポリマー、あるいは不飽和ポリエステルの内、不飽和ポリウレタンプレポリマーは、水酸基を2個以上有するポリオールとイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート及び分子内に活性水素を持つ官能基とエチレン性不飽和二重結合とを含有する化合物とを反応させること、あるいさらに二塩基酸無水物の付加反応によりカルボキシル基をプレポリマーに付加させることにより得られ、特開平01−245245号公報、特開平04−095959号公報、特開平07−295218号公報、特公平02−010165号公報、特公昭55−034930号公報、特開平10−153858に開示の如く、公知の方法により製造することができる。
【0035】
該ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールあるいはポリエーテルポリエステルブロック共重合ポリオール、1分子中当たり少なくとも1、2個の末端水酸基を有する水添加ポリブタジエン化合物等があり、それらを単独あるいは混合して用いることができる。
ポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリ1,2−ブチレングリコール、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンランダムまたはブロック付加物、ポリオキシエチレン/ポリオキシテトラメチレンランダムまたはブロック付加物等を挙げることができる。
【0036】
ポリエステルポリオールは、ジオール(グリコール)化合物とジカルボン酸化合物との重縮合反応により得られるセグメントの繰り返しによるジオールであり、例えばアジピン酸エステル系としてポリ(エチレングリコールアジペート)ジオール、ポリ(ジエチレングリコールアジペー)ジオール、ポリ(プロピレングリコールアジペート)ジオール、ポリ(1,4−ブタングリコールアジペート)ジオール、ポリ(1,6−へキサングリコールアジペート)ジオール、ポリ(2−メチルプロパングリコールアジペート)ジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンタングリコールアジペート)ジオール、ポリ(ネオペンチルグリコールアジペート)ジオール、ポリ(1,9−ノナングリコールアジペート)ジオール、ポリ(2−メチルオクタングリコールアジペート)ジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリ(β−メチル−δ−バレロラクトン)ジオール等を挙げることができる。ポリエステルセグメントを構成するジカルボン酸化合物としては、アジピン酸以外にも公知のものを用いることができ、例えばコハク酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。さらにポリエステルセグメントを構成するジオール、ジカルボン酸成分は、例示の通り単一成分同士による重縮合反応により合成されることが一般的だが、複数成分を任意の割合で混合して用いることも可能である。
【0037】
水添加ポリブタジエン化合物としては、水添化1,2−ポリブタジエンと水添化1,4−ポリブタジエン、あるいはそれらの混合物が挙げられ、その水添化率は力学的性質、耐溶剤性の観点から90%以上の水添化率が好ましい。
ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0038】
分子内に活性水素を持つ官能基とエチレン性不飽和二重結合とを含有する化合物としては、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノあるいはジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
不飽和ポリウレタンプレポリマーにカルボキシル基を付加する手法としては、特公平02−010165号公報に多くの手法が開示されているが、プレポリマー主鎖を直鎖状に合成し、プレポリマー末端付近にカルボキシル基を導入して現像性改良効果を得ようとする場合、最も好適に用いられる代表的合成方法は、ポリオールとポリイソシアネートにより得られた末端イソシアネートプレポリマー前駆体に活性水素を持つ官能基とエチレン性不飽和二重結合とを含有する化合物としてグリセリンモノ(メタ)アクリレートを含む混合物を反応させた後、二塩基酸無水物を反応させるが挙げられる。
【0039】
二塩基酸無水物は、1,2−エタンジカルボン酸無水物(別名:無水コハク酸)、1,3−プロパンジカルボン酸無水物、1,4−ブタンジカルボン酸無水物、1,5−ペンタンジカルボン酸無水物、シクロヘキサンジカルボン酸無水物等が挙げられるが、原料入手の容易なコハク酸が好適に用いられる。
本発明の液状感光性樹脂組成物の構成成分(a)で示す、数平均分子量が1,000〜70,000であるウレタン系不飽和プレポリマー、あるいは不飽和ポリエステルの内、不飽和ポリエステルは、多価アルコール成分と不飽和ジカルボン酸成分を脱水反応により縮合重合させることにより得られ、公知の方法により製造することができる。
【0040】
多価アルコール成分として好適なものは、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、重合度100以下のポリスチレン末端ジオール体、重合度100以下のポリブタジエン末端ジオール体、重合度100以下のポリエチレン末端ジオール体、重合度100以下のポリプロピレン末端ジオール体、重合度20以下のポリエチレンテレフタレート末端ジオール体、ポリエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等二官能アルコール化合物が挙げられ、アルキルジオール成分とポリオキシアルキレングリコール成分を適宜混合して使用することにより不飽和ポリエステル中の極性を有するエステル結合量を調整できる。その他にトリメチロールプロパン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、へキシトール等の多価アルコールも変性を目的に微量使用することができる。
不飽和ジカルボン酸成分としては、マレイン酸、無水マレイン酸、グルタコン酸、ムコン酸、アコニット酸等が挙げられ、不飽和ポリエステル中の不飽和度を調整するためマロン酸、コハク酸、グルタミン酸、アジピン酸、セバシ酸、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等を適宜混合して使用することができる。
【0041】
本発明の構成成分(b)で示されるエチレン性不飽和モノマーは、種々の公知のモノマーを用いることができ、アクリル酸やメタアクリル酸等の不飽和カルボン酸又はそのエステル化合物(例えばアルキル−、シクロアルキル−、ハロゲン化アルキル−、アルコキシアルキル−、ヒドロキシアルキル−、アミノアルキル−、テトラヒドロフルフリル−、アリル−、グリシジル−、ベンジル−、フェノキシ−(メタ)アクリレート;アルキレングリコール又はポリオキシアルキレングリコールのモノ又はジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリットテトラ(メタ)アクリレート等)、(メタ)アクリルアミド又はその誘導体(例えばアルキル基やヒドロキシアルキル基でN−置換又はN,N’−置換した(メタ)アクリルアミド;ジアセトン(メタ)アクリルアミド;N,N’−アルキレンビス(メタ)アクリルアミド等)、アリル化合物(例えばアリルアルコール、アリルイソシアナート、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート等)、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸又はそのエステル(例えばアルキル、ハロゲン化アルキル、アルコキシアルキルのモノ又はジマレエート及びフマレート等)、その他不飽和化合物(例えばスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン等)が挙げられ、これらエチレン性不飽和モノマーは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0042】
本発明の構成成分(c)で示される光重合開始剤としては、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。このような光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインやベンゾインエチルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジル、ジアセチル、ジフェニルスルフィド、エオシン、チオニン、9,10−アントラキノン、2−エチル−9,10−アントラキノンなどが挙げられる。これらの光重合開始剤はそれぞれ単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
本発明の構成成分(c)で示される光重合開始剤の添加量は、液状感光性樹脂の貯蔵安定性、所望の光硬化速度、硬化物物性を考慮して、ウレタン系不飽和プレポリマー、あるいは不飽和ポリエステル100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲で用いる。
本発明の液状感光性樹脂には、用途や目的に応じて熱重合禁止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、染料、顔料、滑剤、無機充填剤、界面活性剤、可塑剤などを添加することができる。
【0044】
本発明の効果である露光後の液状感光性樹脂の未硬化部分を1〜20MPaの範囲の水圧を有する水性現像液も用いた現像工程により、界面活性剤水溶液を低水圧で用いた現像工程で得られた版と同等の版品質を実現するためには、これまで述べてきた液状感光性樹脂組成物の樹脂粘度と光反応硬化物の硬度とが、特定の領域にあることが必要であり、その一つは、樹脂組成物の粘度が1〜70Pa・sの範囲の時、その光反応硬化物の硬度は10度を越えるという条件であり、もう一つは樹脂組成物の粘度が70〜300Pa・sの範囲の時、その光反応硬化物の硬度が35度を越えるという条件である。これら二つの条件が、本発明に使用される液状感光性樹脂の必須要件であり、本発明の特徴である。
【0045】
本発明の液状感光性樹脂組成物から得られる光反応硬化物の硬度について、各種粘度の樹脂組成物を1〜20MPaの高圧水で現像した時、その樹脂組成物の光硬化物の硬度が10度以下の範囲では、洗浄性を満足するまで現像時間を延長した時、何れの水圧においても得られた印刷版はレリーフ表面が削られて平滑性を失う。また、液状感光性樹脂組成物の粘度について、300Pa・sを超える条件では、現像液の温度を90度以上に上げても目標とする現像時間である10分以内に良好な現像性を得ることが困難である。樹脂粘度低下に伴い高圧水現像における未硬化樹脂の除去性は改善傾向にあることは想像するに容易であるが、1Pa・s以下の樹脂粘度では成型・露光工程における取り扱い性、得られた版の厚み精度が劣る。
【0046】
然るに樹脂粘度が1〜300Pa・s、光反応硬化物の硬度が10度以上の液状感光性樹脂について、高圧現像システムにより印刷版を製造することが可能であるが、これらの範囲に物性を有する樹脂組成では、版表面への衝撃力の増大あるいは現像時間の延長により未硬化樹脂の現像性を上げた場合、それと共にバック析出硬化層とレリーフとの接合部分の硬化物がめくれ上がる現象(レリーフ裾抉れ現象)が現れるものがある。また所定のレリーフ深さを得ようとすると支持体からの硬化に要する露光量が多量に必要となり、その結果、レリーフ表面の画像はネガよりも広く形成され、品質の劣る印刷版しか得られないものがある。
【0047】
樹脂粘度が1〜300Pa・s、光反応硬化物の硬度が10度以上の性能を有する樹脂組成群において、樹脂粘度の増大は現像性を悪化させ、硬度の減少はレリーフ裾抉れ現象、表面画像の太りを増大させる傾向にあり、70〜300Pa・sの範囲に樹脂粘度を有し、10〜35度の範囲にその光反応硬化物の硬度を有する液状感光性樹脂では、高粘度と低硬度との双方の印刷品質への悪影響が相乗効果として現れるため、高圧現像システムで高品質の版が得られない。
【0048】
したがって、本発明の液状感光性樹脂組成物は、その樹脂組成物の粘度が1〜70Pa・sの範囲である時その光反応硬化物の硬度が10度を越えること、またはその樹脂組成物の粘度が70〜300Pa・sの範囲である時その光反応硬化物の硬度が35度を越えることが好ましい。より好ましい樹脂の条件としては、樹脂粘度1〜70Pa・s、光反応硬化物の硬度35度以上である。
本発明の液状感光性樹脂組成物が上述した特定の粘度を有するためには、本発明の構成成分(a)で示されるウレタン系不飽和プレポリマーあるいは不飽和ポリエステルの分子を構成するセグメントの種類、その分子量を適正化することと、構成成分(b)で示されるエチレン性不飽和モノマーが液状感光性樹脂組成物においてエチレン性不飽和基を有するプレポリマーの粘度を低下させる希釈効果を発揮することから、構成成分(a)と構成成分(b)との混合割合とを合わせて適正化することが重要である。
【0049】
本発明の液状感光性樹脂組成物が上述した特定の硬度を有するためには、構成成分(b)で示されるエチレン性不飽和モノマーの質量部数の調整と、エチレン性不飽和モノマーの種類として単官能モノマーと多官能モノマーとの割合を調整することにより、その目的が達成される。
本発明の液状感光性樹脂組成物の樹脂粘度が1〜300Pa・s、光反応硬化物の硬度が10度以上となるためには、ウレタン系不飽和プレポリマーあるいは不飽和ポリエステルの分子量が1000〜70000の範囲にあるものを用い、構成成分(a)で示されるウレタン系不飽和プレポリマーあるいは不飽和ポリエステルを100質量部とした時、構成成分(b)で示されるエチレン性不飽和モノマーは10〜150質量部である必要がある。
【0050】
本発明の構成成分(a)の分子量が1000未満では硬化後の光反応硬化物に充分な可とう性を与えることが出来ない。また70000を超える分子量ではその合成が困難であるばかりか、構成成分(a)を100質量部に対して構成成分(b)を10〜150質量部の範囲で混合することにより300Pa・s以下の樹脂粘度の調整が困難となる。
本発明の構成成分(a)で示される分子量が1000〜70000の範囲にあるウレタン系不飽和プレポリマーあるいは不飽和ポリエステルを100質量部に対して、構成成分(b)で示されるエチレン性不飽和モノマーを10質量部未満あるいは150質量部超の範囲で混合することにより、樹脂粘度を1〜300Pa・sの範囲に調整する時、何れの構成成分(b)の範囲においても得られた樹脂組成は、光反応硬化物として求められる柔軟性を満足できず、また光重合過程で大きな硬化収縮が起こるため好ましくない。
【0051】
液状感光性樹脂組成物のより好ましい条件である樹脂粘度1〜70Pa・s、光反応硬化物の硬度35度以上を実現するには、ウレタン系不飽和プレポリマーあるいは不飽和ポリエステルの分子量が1500〜50000の範囲にあるものを用い、構成成分(a)で示されるウレタン系不飽和プレポリマーあるいは不飽和ポリエステルを100質量部とした時、構成成分(b)で示されるエチレン性不飽和モノマーは20〜100質量部である。
【0052】
本発明が高圧水現像に好適な液状感光性樹脂組成物の要件として樹脂粘度以外に光反応硬化物の硬度を挙げるのは、本発明においてその現像性を左右する本質的因子が、光反応で生じた半硬化成分の耐圧性にあるからである。
本来、高圧水による衝撃力のみで洗浄する技術は、異なる内部自由エネルギーを有する二種の物質が相対する界面において、その界面エネルギー以上の衝撃力で媒体を吹き付けることに依って両物質を剥離する技術である。
しかし、本発明で使用する液状感光性樹脂組成物の主成分であるポリマー成分は、ウレタン結合、エステル結合といった極性基を多く有するため内部エネルギーが高く、現像性を左右する半硬化成分の耐圧性が非常に大きい。また、光反応による硬化状態が不定形であるためその硬化界面が明確でないことが、高圧水における液状感光性樹脂の現像を困難にしている。
【0053】
つまり、液状樹脂印刷版の成型・露光工程に依れば、デザインレリーフ深さは、バック露光量、あるいはマスキング露光量を調整することでバック析出層、シェルフ層の厚みを変えて適正化され、この時、バック析出層、シェルフ層として形成される最表面層は、光照射で生じた硬化/未硬化界面(グレーゾーン)を現像液が侵食することで決定される。したがって、これら硬化状態が不定形な界面領域の現像では、高圧水現像システムと界面活性剤水溶液現像システムとでその現像のしきい値が異なることと成るため、同一の樹脂組成物を両現像システムで製版した場合、得られた版品質は異なる可能性がある。
本発明の液状感光性樹脂組成物の樹脂粘度、光反応硬化物の硬度は、この様な従来現像システムに対する現像のしきい値の違いを最小限に抑え、高圧水現像システムにおいて従来現像システムから得られる版と同等の品質を得ようとするものである。
【0054】
【実施例】
次に、実施例により本発明の形態を詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
以下の方法によって液状感光性樹脂組成物を調合し、準備した。
〔製造例1〕不飽和プレポリマーAの製造
2000gのポリオキシエチレン(EO)−オキシプロピレン(PO)ランダム共重合ジオール(水酸基価:35.7KOHmg/g、EO含量20wt%)に対して0.1gのジブチル錫ジラウレート(以下BTLと略して記載する)を加え40℃で均一になるまで攪拌し、次いで133gのトリレンジイソシアネート(以下TDIと略して記載する)を加えてさらに攪拌し、均一となったところで80℃まで昇温の後約4〜5時間反応させて両末端にイソシアネート基を有するプレポリマー前駆体とした。さらに237.6gのポリ(オキシプロピレン)グリコールモノメタアクリレート(平均分子量380、以下PPMAと略して記載する)を加えて約2時間反応させた後、サンプルを一部取り出してIR分光測定器によりイソシアネート基消失を確認し、GPCにより求めた数平均分子量が17000のポリウレタン系不飽和プレポリマーAを得た。
【0055】
〔製造例2〕不飽和プレポリマーBの製造
900gのポリ(プロピレングリコールアジペート)ジオール(水酸基価:44KOHmg/g)と1100gのポリオキシエチレン(EO)−オキシプロピレン(PO)ブロック共重合ジオール(水酸基価:44KOHmg/g、EO含量30wt%)との混合物に対して0.1gのBTLを加え40℃で均一になるまで攪拌し、次いで155.5gのTDIを加えてさらに攪拌し、均一となったところで80℃まで昇温の後約4〜5時間反応させて両末端にイソシアネート基を有するプレポリマー前駆体とした。さらに218gのPPMAと173gのヒドキシプロピルメタアクリレート(以下HPMAと略して記載する)を加えて約2時間反応させた後、サンプルを一部取り出してIR分光測定器によりイソシアネート基消失を確認し、GPCにより求めた数平均分子量が20,000のポリウレタン系不飽和プレポリマーBを得た。
【0056】
〔製造例3〕不飽和プレポリマーCの製造
2000gの1分子当たり平均1.7個の水酸基を有する末端水酸基型の水添1,2−ポリブタジエン(数平均分子量約2200、水添化率95%)と217.8gのTDIを混合し、攪拌しながら60℃で約3時間反応させ、両末端にイソシアネート基を有するプレポリマー前駆体とした。さらに133.2gのHPMA、2.4gのハイドロキノン、4.8gのBTLの混合物を加え、80℃で約2時間反応させた後、サンプルを一部取り出してIR分光測定器によりイソシアネート基消失を確認し、GPCにより求めた数平均分子量が7000のポリウレタン系不飽和プレポリマーCを得た。
【0057】
〔製造例4〕不飽和プレポリマーDの製造
1000gのポリ(プロピレングリコールアジペート)ジオール(水酸基価:44KOHmg/g)と1000gのポリオキシエチレン(EO)−オキシプロピレン(PO)ブロック共重合ジオール(水酸基価:44KOHmg/g、EO含量30wt%)の混合物に対して0.1gのBTLを加え、40℃で均一になるまで攪拌し、次いで205.7gのTDIを加えてさらに攪拌し、均一となったところで80℃まで昇温の後約4〜5時間反応させて両末端にイソシアネート基を有するプレポリマー前駆体とした。さらに237.6gのGMGA−70X(商標・共栄社化学(株)製、グリセリンモノ及びジメタクリレート混合物)を加えて約2時間反応させた後、サンプルを一部取り出してIR分光測定器によりイソシアネート基消失を確認した。さらに反応物の温度を90℃まで上げた後、乳鉢で粉砕した118.8gの無水コハク酸を加えて3時間反応させ、GPCにより求めた数平均分子量が6000のポリウレタン系不飽和プレポリマーDを得た。
【0058】
〔製造例5〕不飽和プレポリマーEの製造
670gのジエチレングリコール、160gのプロピレングリコール、570gのアジピン酸、280gのフマル酸、325gのイソフタル酸を窒素雰囲気中、反応温度180℃、反応時間6時間、減圧下で重縮合した結果、GPCにより求めた数平均分子量2000、酸価30.0KOHmg/g、二重結合濃度700mmol/gの不飽和エステル系プレポリマーEを得た。
得られた不飽和プレポリマーを使用し、表1の組成物を調合し、60℃で2時間程度の攪拌混合を行うことに依って、液状感光性樹脂組成1〜12を得た。
【0059】
また、国際公開第2002/33490号公報の実施例で用いている、ウレタン系不飽和プレポリマーを主成分とする液状感光性樹脂F−320(商標・旭化成(株)製)を元に光反応硬化物の硬度、樹脂粘度を調整する目的で、原料を添加混合した組成について、同様の方法により準備し、液状感光性樹脂組成13〜16とした。
表3には、液状感光性樹脂調合に用いた原料について、略号が示す化学名を列記した。
表1、表2には、液状感光性樹脂組成物の樹脂粘度、光反応硬化物の硬度について、下記の方法で測定した結果を列挙した。
【0060】
1)粘度測定方法
作製した液状感光性樹脂組成物を温度20℃、湿度70%の恒温恒湿室内に一日放置し、同室内においてB形粘度計形式B8H(株式会社東京計器製)を用いて粘度測定を実施した。
【0061】
2)硬度測定方法
透明なフィルムで表面を覆ったガラス板を2枚準備し、フィルムの間に3mmのスペーサーを用いて液状感光性樹脂を充填する。そのガラス板に挟まれた液状感光性樹脂を370nmに中心波長領域を有する紫外線蛍光灯を用いて、感光性樹脂表面で1500mJ/cm以上の露光量となるような露光条件によって表裏両面から露光して、露光したサンプルのガラス、保護フィルムを剥がして光反応硬化物を得る。露光量の調整は紫外線測定器UV−M02(商標・オーク製作所製)により測定した350nmの波長における照射量と照射時間とから算出した値を用いる。
【0062】
作製した3mm光反応硬化物は粘着性表面を有するため、取り扱い性を良くするため表面にシッカロールをまぶして温度20℃、湿度70%の恒温恒湿室内に一日放置する。硬度測定は、JIS規格K7215(1986年)に順ずる方法として、同室内に設置されたJIS定圧荷重器GS−710(株式会社テクロック社製、デューロメーターGS−719G ASTM:D2240A、JIS:K6253A、ISO:7619A)を1kg荷重で用いて、3mm光硬化物の10mm角サンプルを3枚重ねた状態で測定開始後15秒後の値を求めた。
【0063】
〔実施例1〜9、比較例1〜4〕
準備された液状感光性樹脂組成物について、以下に示す成型・露光工程、現像工程、後露光工程、乾燥工程をそれぞれ目的に応じて組み合わせることによって実用印刷版を製造した。
実用製版に用いるネガの画像は、レリーフ露光量の適正値を把握するため65line/inch、3%ハイライトの網点画像を有し、ネガに対する寸法再現性を評価するために500μの独立細線、独立白抜き線が形成可能な画像を有し、また現像性を把握するため適当な大きさのベタ(広範囲の印面を表わす業界用語)、適当なサイズの文字画像を有する構成のものを選択した。
【0064】
露光成型工程;ALF−213E型製版機(商標・旭化成(株)製)に上述したネガ、厚さ30μのポリプロピレンシート(保護フィルム)、片面粘着層を付与したポリエチレンテレフタレートフィルムを供することに依って、評価する液状感光性樹脂組成物を所定の版厚、レリーフ深度、ハイライト再現性を実現する適正露光条件で成型・露光を実施した。
成型・露光を終了した版は、保護フィルムを剥がし、未硬化樹脂をゴムヘラで除去した後に現像工程に供した。
【0065】
現像工程;特開2002−311599号公報の図1に記載されたドラム型高圧水現像機と同型の仕様の現像機を用いて実施した。具体的装置仕様は、高圧均等扇形ノズルVNP−1/8−6549(商標・いけうち(株)製)を並列に各ノズル間の距離100mmに複数個配列したノズルヘッダーが、ノズルとドラム表面の距離30mmの位置に固定され、ドラム回転数12rpmに対してそのノズルヘッダーが移動速度40mm/secで左右にストローク幅300mmの距離で反復移動する機構を有する現像ユニット、高圧プランジャーポンプ(型式MW2540 商標・丸山エクセル(株)製)、恒温機能付き現像液浴槽から成る高圧水現像装置である。
【0066】
現像液には60℃の温水を用い、吐出圧力10MPaとなる条件で現像時間を変えて実験を行った。
後露光工程;紫外線蛍光灯、殺菌灯の双方を装備したALF−200UP型後露光機(商標・旭化成(株)製)の水槽に水を貯めて用いる水中後露光において、それぞれの光源から照射される露光量が液状感光性樹脂硬化物表面で2500mJ/cmとなる露光時間で露光を行った。
【0067】
乾燥工程;ALF−DRYER(商標・旭化成(株)製)で版表面の水分が無くなるまで約10分間乾燥を行った。
表1に記載した液状感光性樹脂組成物について、使用した液状感光性樹脂組成物の粘度に応じて高圧水現像時間の調整、目標のレリーフ深度約1.5mmを実現するバック露光量の調整、さらに目標の3%−65L網点形成を実現するレリーフ露光量の調整を実施し、上記した成型・露光工程、現像工程、後露光工程、乾燥工程を順次行うことにより実施例、比較例の液状感光性樹脂印刷版を得た。
【0068】
得られた印刷版の評価については、以下に示す基準を用いた。
1)3%−65L網点形成性
3%−65Lの網点ネガの形成性とは、1インチ角の領域を65×65の網目に分割し、その一つの領域で3%分の面積の円状レリーフ(当該業界では一般にラウンドドットと表現される)を露光して形成するものである。 評価に使用したネガではその網点領域が17mm角であったため、すなわち直径900μ前後のラウンドドット、約2800個について、その形成性を確認し、HLネガ領域全域でHLが完全に形成された状態と成る露光量を適正レリーフ露光量とした。
【0069】
2)レリーフ表面洗浄性
レリーフ表面洗浄性は、現像後レリーフの細線、べた全域の性状を以下の基準で評価して判定を行った。
A:表面に樹脂残りが無く均質な状態
B:レリーフのエッジ部分に所々僅かに樹脂残りが見られる状態
C:レリーフのエッジ部分に樹脂残りが見られ、所々ベタ表面に粒状硬化物が付着した状態
D:ベタ表面の広域に樹脂残り、粒状硬化物が付着した状態
3)ベタ表面切削性
ベタ表面切削性は、現像液のスプレー噴霧によりベタの表面が削られて平滑性を失った状態について、切削跡の有無を目視判定した。
【0070】
4)レリーフ裾部切削性
レリーフ裾部切削性とは、高圧水現像ではその水圧によりレリーフの根元、つまりバック析出層あるいはシェルフ層からレリーフが立ち上がっている部分がめくれた状態に成ることがあるため、そのめくられた状態(切削跡)の度合いを以下の基準で評価して判定を行った。
A:レリーフ裾部分に切削跡が無く安定した形状が得られている状態
B:装置の仕様上洗浄過多となる部分のみにレリーフ裾の切削跡が見られる状態
C:印刷版全体で裾部分に切削跡を有するレリーフが多く見られる状態
D:ほとんどのレリーフの裾に切削跡が見られ、その切削跡が深い状態
表1に示した液状感光性樹脂組成物を実際に製版に供した実施例1〜9、比較例1〜4について、用いた樹脂組成の物性、製版条件と評価結果の一覧をまとめてそれぞれ表4、表5に示す。
【0071】
実施例1〜9に用いた樹脂組成は、本願の請求する樹脂粘度、光反応硬化物の硬度を満足していたため、ベタ表面切削跡が無く、レリーフ表面洗浄性が良好であり、レリーフ裾部切削跡についても市場適正レベルと判断できるB以上の性能を有していた。
比較例1〜3は、実施例5に用いた組成5と同じ原料を使用し、樹脂粘度、光硬化物の硬度を減少させた組成6、組成7を用いた事例である。
【0072】
比較例1は実施例5と同じ時間で高圧水現像を実施した結果、実施例5に対して目標のRD、HL形成性が得るためにレリーフ露光量、バック露光量ともに1.2倍以上を要し、得られた版の品質は版表面に樹脂残りが目立ち、レリーフ裾の切削性もかなり顕著に見られた。比較例2では、同じ樹脂6を用い現像時間を増大させたものであり、現像性は改善されたが、レリーフ裾切削性は版の全領域に広がってしまう結果となった。
【0073】
比較例3は、製造した組成中最も光硬化物の硬度が低い組成であり、評価の結果、版表面に切削跡が現れた。
比較例4は、実施例6に用いた組成8と同じ原料を使用し、樹脂粘度を増大し、光硬化物の硬度を減少させた組成9を用いた事例であり、粘度が増大しているため現像時間を増大させて製版を実施したが、表面の洗浄性が市場レベルに達する前にレリーフ裾切削跡がDレベルと成った。
【0074】
〔実施例10〜13、比較例5〜8〕
液状感光性樹脂F−320に他の原料を加えて作成した表2に示す樹脂組成を用い、版厚7mmにおいてレリーフ深度約2mmを目標に露光量を調整すること以外は同様の方法により製版を実施し、評価は版表面の性状評価に加え、レリーフ線幅、白抜き線深度の測定まで行い、実施例10〜13、比較例5〜8とした。
【0075】
その製版条件と評価結果の一覧を後述する参考例の結果と共に表6に示す。表6中、WOはウオッシュアウトの略である。
F−320では、現像時間を増大させてもレリーフ表面洗浄性とレリーフ裾切削性とをバランス良く市場適正レベルまで引き上げることができず、レリーフ裾切削性の大きな版しか得られなかったが、硬度を増大させた組成13、組成14では版品質が改善され市場レベルとなった。
【0076】
また、F−320では、参考例に対してレリーフ表面の画像サイズから大きく太った再現性となっているが、レリーフ露光量、バック露光量を参考例に対して増大させる必要があったことが原因である。一方、F−320の硬度を増大させた組成による実施例10〜13では、硬度増大と共に適正露光量が減少し、ほぼ参考例と同程度の画像再現性が得られた。
比較例7、比較例8は、F−320に製造例2で合成した不飽和プレポリマーBを加えて樹脂粘度を高くする調整を行った組成であったが、この比較例7の組成15ではレリーフ深度約2mmを実現し、3%−65Lのハイライトを全形成させる製版条件を見出せなかった。比較例8の組成16では、高圧現像時間の延長により、レリーフ深度約2mm、ハイライトが識別可能な版は得られたが、表面の洗浄性のレベルは低く、独立線、白抜き線の周囲に樹脂残りが存在した。
【0077】
〔参考例〕
AL−400W型現像機(商標・旭化成(株)製、ドラム式スプレー現像機)に、F−320用の現像剤として入手可能なW−10(商標・旭化成(株)製、アニオン界面活性剤水溶液)現像剤を2.0wt%、A−10(商標・旭化成(株)製、ベンゾフェノンを含有したノニオン系界面活性剤水溶液)表面処理剤を0.2wt%、SH−4(商標・旭化成(株)製、シリコン系消泡剤)消泡剤を0.3wt%含有する水溶液を作成し、現像液温度30℃、スプレー圧0.2MPa、現像時間10分で現像すること以外は比較例7と同様の製版方法で印刷版を作成した。
【0078】
〔実施例14〕
高圧水現像工程と水中後露光工程の間に以下の表面処理工程を実施すること以外は実施例5と同様の方法で印刷版を作成し、実施例14とした。
表面処理工程;スプレー噴霧機構と回転ブラシを版表面に接触させる機構とを併せ持つドラム式版面処理装置であるALF−200W(商標・旭化成(株)製)に0.5wt%のA−10表面処理剤水溶液を30℃の液温で調整し、水圧0.2MPa、ブラシ機構使用、表面処理時間3分間の条件で処理を実施した。
その結果、実施例5で得られた版ではレリーフ表面の粘着性が感じられたのに対して、表面処理をで得られた印刷版は全く粘着性を示さなかった。その他、高圧現像に関する版性状、レリーフ寸法再現性に関する違いは認められなかった。
【0079】
〔実施例15〕
実施例14の水中後露光を空中後露光(ALF−200UPの水槽に水を貯めずに用いる方法)で行うこと以外は全く同じ方法で印刷版を作成し、実施例15とした。
その結果、得られた印刷版は実施例14の印刷版に対してバック面がややしっとりする程度の粘着性を有すること以外は実施例9の印刷版と同様の版が得られた。
【0080】
【表1】
Figure 2004252093
【0081】
【表2】
Figure 2004252093
【0082】
【表3】
Figure 2004252093
【0083】
【表4】
Figure 2004252093
【0084】
【表5】
Figure 2004252093
【0085】
【表6】
Figure 2004252093
【0086】
【発明の効果】
現像廃液の極小化を図ることが可能な高圧水現像システムを用いた液状感光性樹脂印刷版の製造方法において、優れた版表面洗浄性を有し、版表面洗浄性切削跡やレリーフ裾部分に抉れ形態を生じず、界面活性剤水溶液現像システムにより得られた版と同等の版品質を提供できる。

Claims (2)

  1. 液状感光性樹脂組成物の厚みを規制した後、所望するレリーフを露光により形成する成型・露光工程、露光後の液状感光性樹脂の未硬化部分を1〜20MPaの範囲の水圧を有する水性現像液で硬化版表面より除去する現像工程、現像後樹脂硬化物に更に露光を行う後露光工程を含む液状感光性樹脂凸版印刷版の製造方法において、液状感光性樹脂組成物が、
    (a)数平均分子量が1,000〜70,000であるウレタン系不飽和プレポリマー、あるいは不飽和ポリエステル:100質量部
    (b)エチレン性不飽和モノマー:10〜150質量部
    (c)光重合開始剤:0.01〜10質量部
    を含有して成り、その樹脂組成物の粘度が1〜70Pa・s(測定温度20℃)の範囲である時その光反応硬化物の硬度(温度20℃、湿度70%、テクロック式デューロメーターで測定したショアA硬度)が10度を越えること、またはその樹脂組成物の粘度が70〜300Pa・sの範囲である時その光反応硬化物の硬度が35度を越えることを特徴とする液状感光性樹脂印刷版の製造方法。
  2. さらに、活性光線を照射されることによって化合物中の水素原子を引き抜くことのできる水素引き抜き剤を含有する水性表面処理液による表面処理工程を、現像工程と後露光工程の間に含むことを特徴とする請求項1に記載の液状感光性樹脂印刷版の製造方法。
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