JP2009186851A - 感光性樹脂版の製造方法 - Google Patents

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【課題】商業生産における品質の安定性に優れ、生産コストへの影響が少なく、より高いレベルでの非粘着化レリーフ表面を実現し得る感光性樹脂版の製造方法を提供すること。
【解決手段】下記(A)〜(C)の工程;(A)感光性樹脂組成物により形成された成型体の表面を露光し、前記成型体の表面に硬化部位を形成する成型・露光工程、(B)未硬化樹脂を水性洗浄液によって洗い流し、前記硬化部位を現像する現像工程、(C)活性光線を透過し得る水性液体中に浸漬した状態で、現像された前記硬化部位の表面に活性光線を照射する後露光工程、を含み、前記水性液体の後露光排水を前記(B)工程の用水として使用する感光性樹脂版の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は感光性樹脂版の製造方法に関する。
感光性樹脂版は、次のようにして形成される。まず、原材料となる固体状感光性樹脂または液状感光性樹脂に活性光線が照射され、ラジカル重合反応により、レリーフ部分の感光層のみが硬化される(成型・露光工程)。次に、レリーフ部分以外の未硬化樹脂が、所定の洗浄液(現像液)で溶解除去、または膨潤分散させて機械的に除去される(現像工程)。当該方法は、硬化部分のみをレリーフとして版表面に出現させる方法である。そして、当該方法は、短時間で微細レリーフを形成し得ることから好ましく用いられている。
一般的にラジカル重合反応を利用した感光性樹脂では、ラジカル活性種の消失反応が生長反応と競争して起こるため、硬化部位の表面では未反応物が残っていたりして、得られたレリーフ表面は多かれ少なかれ粘着性を有している。
レリーフ表面の粘着性を減じた感光性樹脂版を製造するためには、現像工程の後に硬化部位の表面にさらに活性光線を照射して、ラジカル重合反応を促進する後露光工程を実施することが有効である。
後露光工程は、空気雰囲気中で行ってもよいが、空気中の酸素によるラジカル反応阻害を回避するために、減圧雰囲気下、不活性ガス中または活性光線を透過し得る液体の中にレリーフを沈めて活性光線を照射する方法(水中後露光法)が有効である。
水中後露光法に関する具体的な方法について、特許文献1には、粘着性を除去しつつ、必要な活性光線をレリーフ表面に均一に照射するために、深さ5cm、水温25℃の水中にレリーフ表面が水面と平行になるようにレリーフを沈めて紫外蛍光ランプを用いて活性光線を照射することが開示されている。
また、特許文献2には、繰り返し生産において安定的効果を得るための方法として、殺菌線を用いた水中後露光工程において、浴槽中の水を繰り返し使用した場合に粘着性除去効果が減じることを防ぐために、殺菌線の透過率を20%以上に維持するように浴槽の水を交換することが開示されている。
さらに、特許文献3には、感光性樹脂版の粘着性をより高いレベルで除去するための方法として、水素引き抜き剤を含む感光性樹脂版用洗浄液を使用して現像した後に、水中後露光を行う感光性樹脂印刷版の製造方法が開示されている。
そして、水中後露光法は、酸素阻害の影響を除いた後露光方法として、比較的安価な装置を構成することが可能であることから、レリーフ表面の粘着性により異物が付着することで印刷に支障をきたすフレキソ印刷版の製造分野では、特許文献1〜3に基づく方法が広く普及している。
特開昭50−2070号公報 特許第3980089号公報 特開平9−288356号公報
しかしながら、特許文献1〜3の技術に従って感光性樹脂版の水中後露光を商業生産プロセスとして実施する場合、商業生産における品質の点等で十分に満足できるものではなかった。
また、フレキソ印刷業界では、印刷版製造後の粘着性はもとより、印刷部数を重ねた時の僅かな表面摩耗で生じる粘着性についても改善の要望があり、より高いレベルで非粘着化された感光性樹脂版の製造方法として、商業生産における品質の安定性に優れ、生産コストへの影響の少ない方法が望まれていた。
本発明が解決しようとする課題は、上記事情に鑑みなされたものであり、商業生産における品質の安定性に優れ、生産コストへの影響が少なく、より高いレベルでの非粘着化レリーフ表面の実現を可能とする感光性樹脂版の製造方法を提供することにある。
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、水性の現像液や表面処理液を用いる感光性樹脂版の製造工程において、後露光工程で使用される水性液体の後露光排水を現像液または表面処理液の用水として利用することにより前記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、以下の感光性樹脂版の製造方法を提供する。
[1]
下記(A)〜(C)の工程;
(A)感光性樹脂組成物により形成された成型体の表面を露光し、前記成型体の表面に硬化部位を形成する成型・露光工程、
(B)未硬化樹脂を水性洗浄液によって洗い流し、前記硬化部位を現像する現像工程、
(C)活性光線を透過し得る水性液体中に浸漬した状態で、現像された前記硬化部位の表面に活性光線を照射する後露光工程、
を含み、
前記水性液体の後露光排水を前記(B)工程の用水として使用する感光性樹脂版の製造方法。
[2]
前記(C)工程の前に、
(D)現像された前記硬化部位の表面に水性表面処理液を浸透させる表面処理工程を含む、前記[1]に記載の感光性樹脂版の製造方法。
[3]
前記水性液体の後露光排水を前記(D)工程の用水として使用する、前記[2]に記載の感光性樹脂版の製造方法。
[4]
前記水性液体を加温する工程を含む、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の感光性樹脂版の製造方法。
[5]
前記水性液体が、温度25〜45℃の範囲である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の感光性樹脂版の製造方法。
[6]
前記水性液体を循環する工程を含む、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の感光性樹脂版の製造方法。
[7]
前記水性液体が、水である、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の感光性樹脂版の製造方法。
[8]
前記水性洗浄液および/または前記水性表面処理液が、界面活性剤水溶液である、前記[1]〜[7]のいずれかに記載の感光性樹脂版の製造方法。
[9]
前記界面活性剤水溶液が水素引き抜き剤を含む、前記[8]に記載の感光性樹脂版の製造方法。
[10]
前記(C)工程で用いる活性光線が、200nm〜300nmの波長領域に分布を有する、前記[1]〜[9]のいずれかに記載の感光性樹脂版の製造方法。
[11]
前記感光性樹脂組成物が下記(a)〜(c)の各成分;
(a)エチレン性不飽和基を有するポリウレタンプレポリマー:100質量部、
(b)エチレン性不飽和モノマー:10〜150質量部、
(c)光重合開始剤:0.01〜10質量部、
を含む、前記[1]〜[10]のいずれかに記載の感光性樹脂版の製造方法。
本発明によれば、商業生産における品質の安定性に優れ、生産コストへの影響が少なく、より高いレベルでの非粘着化レリーフ表面を実現し得る感光性樹脂版の製造方法を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、本実施の形態)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施の形態における感光性樹脂版の製造方法(以下、単に「製版」と略して記載することがある。)は、
下記(A)〜(C)の工程;
(A)感光性樹脂組成物により形成された成型体の表面を露光し、当該成型体の表面に硬化部位を形成する成型・露光工程、
(B)未硬化樹脂を水性洗浄液によって洗い流し、当該硬化部位を現像する現像工程、
(C)活性光線を透過し得る水性液体中に浸漬した状態で、現像された前記硬化部位の表面に活性光線を照射する後露光工程、を含み、
(C)工程に使用した水性液体の後露光排水を(B)工程の用水として使用する製造方法である。
本実施の形態の感光性樹脂版の製造方法は、(B)工程と(C)工程の間に、下記(D)工程;
(D)(B)工程で現像された前記硬化部位の表面に水性表面処理液を浸透させる表面処理工程、を含んでもよい。
(D)工程が含まれる場合、(C)工程に使用した水性液体の後露光排水を(D)工程の用水としても使用することができる。
本実施の形態において、「用水」とは、例えば、前記水性洗浄液や前記水性表面処理液を作成するための希釈水、または(B)工程もしくは(D)工程で用いられるリンス液等を挙げることができる。
本実施の形態の感光性樹脂版の製造方法は、従来の製造プロセスにおいて用水であった水道水を(C)工程で排出される後露光排水に代替できるとの知見に基づくものであり、製造プロセスから排出される廃液総量の削減を実現可能とするばかりか、商業生産において感光性樹脂版の表面粘着性を安定的に減じるという水道水では得られない効果を提供することができる。
本実施の形態における(A)〜(D)工程について、詳細に説明する。
本実施の形態における(A)工程は、感光性樹脂組成物により形成された成型体の表面を露光することにより、成型体の表面に硬化部位を形成する工程であるが、感光性樹脂組成物として液状の感光性樹脂組成物を用いる場合、成型体を形成するために専用の装置(製版機)の内部で基材上に一定厚みに成型される成型工程が含まれていてもよい。
(A)工程としては、例えば、以下の(1)〜(3)の各工程を含むものである。
(1)紫外線透過性のガラス板上にネガフィルムを置き、薄い保護フィルムでカバーした後、その上に液状の感光性樹脂組成物を流し、これが一定の版厚になるようスペーサーを介して支持体となるベースフィルムに貼りあわせ、さらにその上から紫外線透過性のガラス板で押さえつけて感光層を形成する感光層成型工程;
段ボール印刷に用いるような印刷版(厚みが4mm以上)を形成する場合には、印刷時の印圧に対するレリーフの強度を補うために土台となるシェルフ層を形成するのが好ましく、この場合、支持体と上部ガラス板レリーフ露光前に上部ガラス側から専用のネガフィルム(マスキングフィルム)で挟んで感光層を成型することが好ましい。
(2)前記感光層成型工程の後、紫外線蛍光灯等を活性光源とする活性光線(例えば、300nm以上に波長分布を有する)を上部ガラス側からベースフィルムを介して照射することにより、版の支持体側全面に均一な薄い硬化樹脂層(すなわち床部形成層(バック析出層))を析出させるバック露光工程;
マスキングフィルムが装着された方法では同様の露光によりシェルフ層が形成されるマスキング露光工程である。
(3)前記バック露光工程またはマスキング露光工程の後、前記感光層に対し、下部ガラス側からネガフィルムを介して上部と同様の活性光線を照射し、画像形成を行うレリーフ形成露光工程;
マスキング露光によりシェルフ層を形成した印刷版では、レリーフ形成露光工程の後にマスキングフィルムを外しバック露光工程を行うことで支持上の全面にバック析出層を形成することも好ましい態様の一つである。
(A)工程は、上述した感光性樹脂組成物が支持体と保護フィルムによってシート状に成型された態様を製品とする場合、保護フィルム側にネガフィルムを密着させて、またはレーザー感応タイプの描画性を有する保護フィルムではレーザー描画を行った表面から活性光線を照射することで硬化部位を形成できる。
本実施の形態における(B)工程は、未硬化樹脂を水性洗浄液によって洗い流し、(A)工程で得られた硬化部位を現像する工程である。
そして、(B)工程の水性洗浄液としては、界面活性剤水溶液が好ましく用いられる。
界面活性剤の種類や組成については、使用する感光性樹脂組成物の性質に合わせて好適なものが選択されることが好ましく、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、両性の界面活性剤を単独または二種以上で混合して使用することができる。
アニオン系界面活性剤としては、限定されるものではないが、例えば、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、脂肪酸低級アルキルエステルのスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、飽和もしくは不飽和脂肪酸塩等、またはこれらのポリオキシアルキレン付加物等が挙げられ、これらアニオン系界面活性剤の塩形成のためのカウンターカチオンとしては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン、アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミンイオン等が挙げられる。
カチオン系界面活性剤としては、限定されるものではないが、例えば、アルキルアミン塩、アルキルアミンエチレンオキシド付加物、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、サパミン型第4級アンモニウム塩、またはピリジウム塩等が挙げられ、上記塩の前駆体であるアミン化合物との塩形成のために塩酸、メチルクロライド、ベンジルクロライド、エピクロルヒドリン、ジメチル硫酸、エチレンオキサイド等を使用することができる。
ノニオン系界面活性剤としては、限定されるものではないが、例えば、ポリエチレングリコール型の高級アルコールアルキレンオキシド付加物、アルキルフェノールアルキレンオキシド付加物、脂肪酸アルキレンオキシド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルアルキレンオキシド付加物、高級アルキルアミンアルキレンオキシド付加物、脂肪酸アミドアルキレンオキシド付加物、油脂のアルキレンオキシド付加物、およびポリプロピレングリコールアルキレンオキシド付加物、多価アルコール型のグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールとソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、並びに多価アルコールのアルキルエーテルおよびアルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、限定されるものではないが、例えば、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウムやラウリルジメチルベタイン等が挙げられる。
本実施の形態において、(B)工程の水性洗浄液は、微細レリーフ部分の洗浄性、洗浄液のスタミナ性の観点から、感光性樹脂組成物がプレポリマーからなる感光性樹脂組成物の場合には、アニオン系界面活性剤を主成分とする組成、またはpH調整によりアルカリ性に調整された水溶液にノニオン系界面活性剤を加えた組成とすることが好ましい。また、感光性樹脂組成物が親水性ポリマーからなる感光性エラストマー組成物の場合には、pH調整によりアルカリ性に調整された水溶液にノニオン系界面活性剤を加えて使用することが好ましい。さらに、感光性樹脂組成物がポリウレタン系感光性樹脂組成物の場合には、アニオン系界面活性剤を主成分とする組成が好ましい。
本実施の形態において、界面活性剤が水性洗浄液中に占める割合としては、好ましくは0.2〜4.0質量%、より好ましくは0.5〜3.0質量%である。当該割合を0.2質量%以上とすることは、微細な感光性樹脂レリーフの洗浄能力を確保する観点から好適である。一方、4.0質量%以下とすることは、樹脂硬化物表面に浸透した界面活性剤が後述する後露光による硬化反応を阻害する働きを低減し、感光性樹脂版表面の粘着性を低減することに寄与し得る観点から好適である。
(B)工程の水性洗浄液には、必要に応じて、界面活性剤に加えてまたは単独で、現像促進剤やpH調整剤を適宜使用することが可能である。
現像促進剤としては、限定されるものではないが、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類、グリコールエーテル類、テトラメチルアンモニウムヒドロオキシド等のアンモニウム塩類、またはパラフィン系炭化水素等が挙げられる。
pH調整剤としては、限定されるものではないが、例えば、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等が挙げられる。
(B)工程の水性洗浄液には、感光性樹脂版の表面の粘着性をより効果的に低減する観点から、水素引き抜き剤を配合することが好ましい。ここで、「水素引き抜き剤」とは、活性光線を照射することにより、他の化合物中の水素原子を引き抜くことができる化合物を意味する。
このような水素引き抜き剤が、水性洗浄液中に占める割合としては、0.01〜0.5質量%であることが好ましく、0.03〜0.3質量%であることがより好ましい。当該割合を0.01質量%以上とすることは、表面粘着性除去効果を良好に発現させる観点から好適である。一方、0.5質量%以下とすることは、洗浄能力を確保する観点から好適である。
水素引き抜き剤としては、限定されるものではないが、例えば、ベンゾフェノン、2−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、アントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を併用して用いてもよい。中でも、活性光源として安価な殺菌灯による活性光線に対して水素引き抜き反応の開始効率が高く、低濃度で水素引き抜き剤を使用することによる洗浄性への負荷を軽減する観点から、ベンゾフェノン類、中でもベンゾフェノンを用いることが好適である。
本実施の形態における(B)工程の水性洗浄液は、(C)工程で使用された水性液体の後露光排水(以下、単に「後露光排水」と略して記載することがある。)を主に用いて、前記界面活性剤等を溶解して得られる水溶液であることが好ましい。
水性洗浄液に後露光排水を使用することは、廃液を再利用する観点から好適である。また、水素引き抜き剤を含有した水性洗浄液を用いた製造方法において、従来、水道水の利用により調合された水性洗浄液では使用開始後の一版目の粘着性除去効果が不十分であったのに対して、本実施の形態における水性洗浄液ではそのような現象が解消される効果があり好ましい。
本実施の形態における水性洗浄液による当該現象の作用効果については明らかでないが、発明者等は、後露光排水に含まれる未硬化樹脂成分の存在が界面活性剤水溶液に対する水素引き抜き剤の分散安定性を向上させたものと想像する。
本実施の形態における(B)工程において未硬化樹脂を洗い流す操作は、水性洗浄液中に(A)工程により形成された感光性樹脂版を浸漬する方法、水性洗浄液をスプレーノズルから硬化部位が形成された感光性樹脂版面上に吹き付ける方法、または浸漬・スプレーにより膨潤した未硬化樹脂をブラシで掻き取る方法等の方法が適用可能である。
本実施の形態において、水性洗浄液は、洗浄性能を効果的に発現する観点から加温して使用することが好ましく、25〜45℃に加温して使用することがより好ましい。
本実施の形態における(B)工程で未硬化樹脂の洗い流し作業が終了した後に感光性樹脂版表面に付着した水性洗浄液を洗い流す工程(リンス工程)を付属することは、活性光線を吸収し得る界面活性剤成分を感光性樹脂版表面から洗い流し、後に続く後露光工程における水性液体の汚染を防止する観点から好適である。
リンス工程に用いる液体(リンス液)は、水性の液体であり、(B)工程の水性洗浄液の温度と同等もしくはやや高めに加温されていること、すなわち25〜45℃に設定されることが感光性樹脂版表面の均質化の観点から好ましい。また、本実施の形態におけるリンス液は、後述する加温された後露光排水を使用することが廃液の有効利用の観点、エネルギー効率を踏まえた装置の設計上の観点から好適である。
リンス工程は、1m2の感光性樹脂版を処理するために2〜10リットルのリンス液を15〜60秒の時間、0.01〜0.30MPa圧力で版表面に噴霧する方法が、少量のリンス液で最大限のリンス効果を発現することができる観点から好適である。
水素引き抜き剤を含有した水性洗浄液を用いた製造方法において、従来の水道水によるリンス工程を行って得られた感光性樹脂版では、版表面に水滴痕、流水痕が発生することがあり、水痕の部分では粘着性が高い傾向にあった。これに対して、加温されたリンス液を用いることでそのような現象が解消される観点から好適である。
当該現象の作用効果についても明らかでないが、発明者等は、リンス液の温度を現像工程に用いる水性洗浄液の温度と同等温度とすることにより感光性樹脂版表面の部分的低温化を抑制され、後露光による水素引き抜き反応が均質化されたものと想像する。
本実施の形態における(C)工程は、活性光線を透過し得る水性液体を用いた水中露光方式により行う工程である。
(C)工程は、(B)工程を終了した感光性樹脂版の機械的強度促進、表面粘着性除去を主目的として、樹脂の硬化部位へ活性光線を照射する工程であり、このような活性光線の光源(活性光源)としては、例えば、レリーフ露光に用いる300nm以上の波長領域に分布を有する活性光源(例えば高圧水銀灯、超高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、カーボンアーク灯、キセノンランプ等)、200〜300nmの波長領域に分布を有する活性光源(例えば低圧水銀灯、殺菌灯、重水素ランプ等)、またはこれらを組み合わせた光源が好ましく用いられる。ここで、水素引き抜き剤を含有する水性洗浄液を(B)工程で使用する時、当該水素引き抜き剤を効果的に活性化させる波長領域に分布を有する活性光源を選択することが好ましく、本実施の形態においては、水素引き抜き剤としてベンゾフェノン類が好ましく用いられることから、光源として200〜300nmの波長領域に分布を有する活性光源を含むことが好ましい。
(C)工程における水性液体の使用は、本実施の形態が水性洗浄液により現像可能な感光性樹脂版の製造方法であることから、液中に沈めた感光性樹脂版の硬化部位表面を無酸素状態とする観点から好適であり、さらに、後露光排水を(B)工程等において、製造プロセスの用水、すなわち水道水の代わりとして使用する観点からも好適である。
水性液体は、新液の状態で有効波長領域の活性光線の透過率が85〜100%であることが好ましい。
当該値を85%以上とすることは、商業生産プロセスとして許される露光エネルギー損失の範囲としての観点から、また、本実施の形態における後露光排水を再利用する連続製造プロセスにおける水性液体の透過率減衰傾向から鑑みて、日本国特許第3980089号が開示する後露光水の透過率20%以上を満足する観点からも好適である。
後露光水の有効波長領域の活性光線の透過率を少なくとも20%以上とすることは、表面の粘着性を除去するために必要な露光量(mJ/cm2)を活性光線の照射強度(mW/cm2)で除して求められる露光時間(秒)が、(A)工程または(B)工程の作業時間より長くならない範囲、すなわち多段プロセスである製版作業において(C)工程をボトルネックとしない条件として好ましい。
(C)工程における水性液体としては、例えば、水、各種無機塩の水溶液、界面活性剤水溶液、水溶性有機物の水溶液等を挙げることができ、なかでも中性水または水が好ましく、より好ましいのは水である。
水性液体に中性水または水を使用することは、感光性樹脂の硬化部位から界面活性剤成分を抽出し、膨潤状態を緩和した状態で後露光することで寸法安定性に優れたレリーフを製造する観点から好適であり、また、(B)工程の水性洗浄液の希釈水として後露光排水を再利用する場合に界面活性剤の作用への影響が少ないという観点からも好適である。水は活性光線の有効波長領域として100%に近い透過率を実現可能とする観点からより好適である。
水性液体への各種無機塩、界面活性剤、有機溶媒、金属イオンの含有は、活性光線の透過性を減じない範囲、感光性樹脂硬化部位の膨潤性に影響を与えない範囲、水性洗浄液の現像性を妨げない範囲で適宜使用することができる。
本実施の形態の感光性樹脂版の製造方法において、水性液体の有効波長における活性光線透過率を20%以上に維持するためには、1m2の感光性樹脂版を後露光処理する毎に少なくとも5リットル以上、好ましくは10〜50リットル、より好ましくは10〜40リットルの水性液体が新液に交換され、後露光排水が(B)工程等の用水として使用されることが好ましい。
当該値を5リットル以上とするのは、1m2の感光性樹脂版を後露光処理する作業において水性液体の透過率を回復させるために好ましく、当該値が10リットルより多いほど水性液体の透明性の維持が容易であるが、後露光排水を工程(B)等で再利用し、製造プロセスからの廃液を抑制する観点から当該値を50リットル以下とすることが好適である。
本実施の形態において感光性樹脂版を連続的に製造する場合、水性液体の有効波長領域の透過率を少なくとも20%以上に維持するために水性液体を給排水により交換する頻度は、後露光処理の面積と水性液体の総量に応じて設定される。
例えば、面積1m2の感光性樹脂版を水中後露光処理する場合には、
方法1)水性液体の総量が50リットル程度の場合、少なくとも毎版15リットルの交換が必要である。
方法2)水性液体の総量が300リットル程度の場合、15版程度処理した後に水性液体を全て新液に交換する必要がある。
方法3)水性液体の総量が300リットル程度、毎版5リットルの交換を行った場合、15版毎に交換が必要な水性液体は200リットル程度である。
本実施の形態の感光性樹脂版の製造方法では、(C)工程で使用した後露光排水を前述の(B)工程および/または(D)工程の用水として使用するものであり、その方法としては、後露光浴槽から直接送液してもよいし、後露光排水をタンクに貯蔵して送液してもよく、装置設計の観点から適宜選択が可能である。
本実施の形態において、(C)工程における活性光線の照射量としては、200〜300nmの波長領域に分布を有する活性光線を用いる場合、好ましくは500〜5000mJ/cm2であり、より好ましくは1000〜5000mJ/cm2であり、さらに好ましくは2000〜3500mJ/cm2である。活性光線の照射量を500mJ/cm2以上とすることは、十分に表面粘着性除去し、繰り返し印刷の使用でも非粘着性を維持する観点から好適である。一方、5000mJ/cm2以下とすることは、感光性樹脂版表面に微少なクラックが生じて粘着性が現れる可能性を低減する観点から好適である。
本実施の形態における活性光線の照射量は、紫外線測定器UV−M02(オーク製作所(株)製)により測定した250nmの波長における照射量と照射時間とから算出した値である。
(C)工程の後露光水である水性液体は、加温する工程により、加温されていることが好ましく、好ましい加温状態は25〜45℃であり、より好ましくは30〜40℃である。
当該値を25℃以上とすることは、加温されたリンス液の効果と同様に、水素引き抜き剤を含有する洗浄工程を実施した感光性樹脂版の表面性状の安定化に寄与する観点から好適であり、また、より高いレベルの感光性樹脂版の粘着性除去を実現する観点、具体的には樹脂版表面の摩耗による粘着性発現を抑制する観点から好適である。
当該値を45℃以下とすることは、上述の表面性状の安定性とより高いレベルの非粘着面が得られことと同時に感光性樹脂硬化部位の寸法安定に優れ、作業者の取り扱いの観点から好適である。
本実施の形態において、水性液体を加温する工程は、以下の方法により行うことが可能である。
1)後露光浴槽内にヒーターを設置して加温する方法。
2)後露光浴槽に接続する水性液体の新液タンクを設けて、タンク内にヒーターを設置して加温する方法。
3)後露光の排水を貯蔵できる貯蔵タンクを有し、貯蔵タンク内にヒーターを設置して加温する方法。
4)後露光浴槽に接続する水性液体の給排水配管の途中で加温する方法。
上記の内、本実施の好ましい形態である工程(C)において加温された水性液体を用い、尚且つ工程(C)から後露光排水である水性液体を加温された状態で工程(B)および/または工程(D)の用水として再利用する観点から、1)または3)の方法が好ましい。
本実施の形態において、加温する水性液体の量は、後露光処理する感光性樹脂版サイズ(m2)に応じて設定され、連続製版における給排水により活性光線の透過率を維持する観点、また後露光排水を工程(B)および/または工程(D)の用水として再使用する観点から50〜600リットル/m2とすることが好ましく、より好ましくは100〜500リットル/m2である。
(C)工程における水性液体は循環する工程により、循環して使用されることが好ましく、好ましい循環状態は毎分1〜10リットル、より好ましくは2〜6リットルである。毎分1リットル以上とすることは水中後露光欲槽内の水性液体の活性光線透過率を均一化して高い透過率で後露光処理する観点から好適であり、また毎分10リットル以下とすることは高速循環で生じる水流により水中に浸漬した感光性樹脂版の静地状態を阻害することなく、また洗浄液または表面処理液から持ち込まれる界面活性剤により生じる泡の発生を抑止する観点から好適である。
水性液体の循環工程では、水性液体に溶解した活性光線を吸収する化合物を吸着して除去する工程を付加することも可能であり、水性液体の活性光線の透過性を高く維持する観点から好適である。
本実施の形態において、上述の好ましい範囲の水性液体量の後露光浴槽において水性液体を加温、循環して用いることも可能であるが、後露光浴槽とは別に貯蔵タンクを有し、水性液体が両プロセスの間を循環する構造とすることが好ましい。
後者の方法において、後露光浴槽に接続される貯蔵タンクの容量により、結果的に水性液体の総量を多くすることになり、繰り返し製造における水性液体の透過率を安定化させる効果を有し、貯蔵タンクから工程(B)および/または工程(C)への水性液体を供給する際に生じる水位の低下が工程(C)の後露光に直接影響を与えないことから好適である。
本実施の形態において、貯蔵タンクとしては、限定されるものではないが、具体的には、(C)工程の水中後露光浴槽と貯蔵タンクが給排水を行う二本の配管で連結され、感光性樹脂版の製造時間を通して加温された水性液体を一定水量で循環させ、さらに(B)工程の水性洗浄液調合用水やリンス液として水性液体の後露光水を供給可能な配管を有しており、また、貯蔵タンクの水量が一定量を下回った際には、水道水が自動的に所定の量まで供給される操作を自動的に所定のタイミング、所定の圧力で実施できるようセンサー、電磁弁、ポンプにより構成され、制御された装置を挙げることができる。
上述の方法において、水中後露光浴槽であるステンレス槽の底部背面にラバーヒーター配置することは、貯蔵タンクから循環供給される加温された水性液体の温度の低下を防ぐ観点から好ましい方法である。
また、前記貯蔵タンクの設置は、当該貯蔵タンク内および/または当該貯蔵タンクと後露光浴槽の間の循環配管において、水性液体に溶解した活性光線を吸収する化合物を吸着して除去することができるため、水性液体の活性光線の透過性を高く維持する観点から好適である。
本実施の形態において、(D)工程は、(B)工程の後に感光性樹脂版の硬化部位表面層に水性表面処理液を浸透させるための工程であり、当該表面処理液は水性洗浄液により現像された感光性樹脂版表面に浸透可能とする観点から水性の溶液であることが好ましい。
水性表面処理液が水性洗浄液と異なる点は、水性表面処理液が感光性樹脂組成物を現像する能力を有する必要がない点であるが、現像性を有する水溶液を用いることも可能である。
水性表面処理液の組成は、表面処理の目的に応じて適宜化合物を選択して使用可能であり、特に限定されるものではないが、感光性樹脂版表面の粘着性を減じる観点からは水素引き抜き剤を含有することが好適である。
水性洗浄液に利用可能な水素引き抜き剤、水素引き抜き剤を水性液体に分散させるための界面活性剤については、前記水性洗浄液で挙げた化合物を好適に利用可能することができる。
好ましい水素引き抜き剤は前記水性洗浄液と同様にベンゾフェノン系化合物、なかでもベンゾフェノンがより好ましく、水性界面活性剤としては水素引き抜き剤の分散性の観点からノニオン系界面活性剤を主成分として用いることが好適である。
表面処理液組成、処理方法についても、前記水性洗浄液で述べた内容と同様の方法が好適に利用可能である。
本実施の形態における(D)工程を付加した製造方法は、後露光排水の利用方法として、後露光排水を(B)工程および/または(D)工程の用水として利用が可能であることから、水性液体の透過率をより高いレベルで安定させることができる点で好ましい。また、(D)工程を含まない製造方法に対しては、洗浄工程と表面処理工程を分割した効果として、水性洗浄液の寿命が長くなる観点から好適である。
本実施の形態の感光性樹脂版の製造方法では、上述の(A)〜(C)および/または(D)の工程により製造された感光性樹脂版を加熱乾燥する工程(E)を付属することが可能である。
本実施の形態の感光性樹脂版の製造方法により得られる感光性樹脂版表面の粘着性としては、製造後の粘着度として、好ましくは50g以下、より好ましくは30g以下である。下記実施例に示される摩耗試験を経た後に示す感光性樹脂版表面の粘着度として、好ましくは0〜100g、より好ましくは0〜75g、さらに好ましくは0〜50gである。摩耗試験を経た後に示す感光性樹脂版表面の粘着度を100g以下とすることは、段ボール印刷版として100万刷前後使用後にも、紙紛トラブルを抑制し得る観点から好適である。
また、摩耗試験後の粘着度は、実際に印刷に使用した印刷版の版表面の粘着性を再現するものであり、段ボール印刷業者等が要求するおよそ100万刷後の版表面の粘着性を再現するものである。
本実施の形態における感光性樹脂組成物は、水性洗浄液によって未硬化部位を洗い流すことでレリーフの現像が行えるものであり、特にその組成を限定することなく適用可能である。
感光性樹脂組成物としては、例えば、(i)重合性2重結合を分子中少なくとも1個以上有するプレポリマー、光重合開始剤および重合性2重結合を有するエチレン性不飽和単量体を含む感光性樹脂組成物が挙げられる。
プレポリマーとしては、限定されるものではないが、例えば、不飽和ポリエステル、不飽和ポリウレタン、不飽和ポリアミド、不飽和ポリアクリレート樹脂、不飽和ポリメタクリレート樹脂およびこれらの各種変性物等を少なくとも1種類以上用いたものを挙げることができる。このような感光性樹脂組成物としては、特公昭51−37320号公報、特開昭52−90304号公報、特開昭56−120718号公報、特開平1−245245号公報、特開平4−095959号公報、特開平7−295218号公報、特開2000−206677号公報に記載されているものを挙げることができる。
感光性樹脂組成物としては、例えば、(ii)少なくとも親水性ポリマーとエチレン性2重結合を有する単量体および光重合開始剤からなる感光性エラストマー組成物が挙げられる。
親水性ポリマーとしては、限定されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等の汎用樹脂の他に(メタ)アクリル酸とジエン化合物を共重合させたジエン系ゴム、無水マレイン酸で変性した液状ポリブタジエンや、その分子鎖中に−COOM基(Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アミン、アンモニウムを示す)、−SO3−基、燐酸エステル基等の親水基を有する各種ポリマーを少なくとも1種類以上用いたものを挙げることができる。このような感光性樹脂組成物としては、特開平3−136052号公報、特開平10−31303号広報に記載されている感光性樹脂組成物を挙げることができる。
本実施の形態において、不飽和ポリウレタン系プレポリマーを主成分とする感光性樹脂組成物を用いることが、感光性樹脂版の表面粘着性により版表面に紙の切り屑等が付着することで印刷不良への問題が取り沙汰されている段ボール印刷用感光性樹脂印刷版において好適である。
本実施の形態における感光性樹脂組成物は、下記(a)〜(c)の各成分;
(a)エチレン性不飽和基を有するポリウレタンプレポリマー:100質量部、
(b)エチレン性不飽和モノマー:10〜150質量部、
(c)光重合開始剤:0.01〜10質量部、
を含む、感光性樹脂組成物であることが好ましい。
前記(a)成分としては、その分子中にウレタン結合を複数有すると共に、エチレン性不飽和基を有し、重合反応によって他のモノマーと連鎖可能な化合物である。
このような(a)成分の製造方法としては、限定されるものではないが、例えば、ポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させて、末端にイソシアネート基を有するポリウレタンを任意分子量でまず形成し、次いで、当該ポリウレタンと、分子内に活性水素およびエチレン性不飽和二重結合を含有する化合物とを反応させる方法が挙げられる。
前記ポリオールとしては、限定されるものではないが、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリエステル共重合ポリオール等が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を併用することができる。
ポリオールとしては、限定されるものではないが、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリ1,2−ブチレングリコール、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンランダム共重合体、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシエチレン/ポリオキシテトラメチレンランダム共重合体、ポリオキシエチレン/ポリオキシテトラメチレンブロック共重合体、アジピン酸エステル系としてポリ(エチレングリコールアジペート)ジオール、ポリ(ジエチレングリコールアジペート)ジオール、ポリ(プロピレングリコールアジペート)ジオール、ポリ(1,4−ブタングリコールアジペート)ジオール、ポリ(1,6−へキサングリコールアジペート)ジオール、ポリ(2−メチルプロパングリコールアジペート)ジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンタングリコールアジペート)ジオール、ポリ(ネオペンチルグリコールアジペート)ジオール、ポリ(1,9−ノナングリコールアジペート)ジオール、ポリ(2−メチルオクタングリコールアジペート)ジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリ(β−メチル−δ−バレロラクトン)ジオール等を挙げることができる。
前記ポリイソシアネートとしては、限定されるものではないが、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等を挙げることができる。
前記分子内に活性水素およびエチレン性不飽和二重結合を含有する化合物としては、限定されるものではないが、例えば、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
本実施の形態における感光性樹脂組成物が水性洗浄液により優れた現像性を示す観点から、前記ポリウレタン系感光性樹脂組成物の内、(a)成分は、ポリオキシエチレンのセグメントを5〜25質量%の割合で含有することが好ましく、より好ましくは10〜20質量%で含有する。当該値を5質量%以上とすることは、水性洗浄液に対する分散性を確保することに寄与し得る観点から好適である。一方、当該値を25質量%以下とすることは、印刷インクに対する樹脂硬化物の膨潤性を一定値以下に抑制し、印刷時にレリーフが膨れ印刷品質に悪影響を与える虞の低減に寄与し得る観点から好適である。
前記ウレタン系プレポリマーの数平均分子量(GPC測定におけるポリスチレン換算値として算出される値)としては、好ましくは5,000〜70,000であり、より好ましくは5,000〜50,000である。当該値を5,000以上とすることは、その重合硬化物に良好な機械的強度を与え、感光性樹脂版の繰り返し使用、または粗雑な取り扱いに対しても良好な耐久性が実現する観点から好適である。一方、当該値を70,000以下とすることは、感光性樹脂組成物に水系洗浄液による良好な現像性を与え、汎用的現像装置への対応が容易とする観点から好適である。
前記(b)成分としては、限定されるものではないが、例えば、アクリル酸やメタアクリル酸等の不飽和カルボン酸;不飽和カルボン酸のエステル化合物;(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体;アリル化合物;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸またはそのエステル;その他不飽和化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を併用することができ、前記(a)成分との光重合反応性の観点から特に好適な化合物はアクリル酸やメタアクリル酸のアルキルエステル化合物である。
前記アクリル酸やメタアクリル酸のアルキルエステル化合物としては、プロピレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテルモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテルモノ(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;グリセリンモノ、ジまたはトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が好ましく用いられる。
前記(b)成分の配合量としては、前記(a)成分100質量部に対して10〜150質量部であり、好ましくは10〜100質量部である。前記(b)成分の配合量を当該範囲とすることは、水性洗浄液に対する良好な現像性を実現する観点から好適であり、また、感光性樹脂を液状で取り扱う場合、良好な製版性のために所望される室温粘度10〜500Pa・sを実現する観点から好適である。
前記(c)成分としては、限定されるものではないが、例えば、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジル、ジアセチル、ジフェニルスルフィド、9,10−アントラキノン等が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を併用することができる。
前記(c)成分の配合量としては、前記(a)成分100質量部に対して0.01〜10質量部であり、好ましくは0.1〜5質量部である。前記(c)成分の配合量を当該範囲とすることは、感光性樹脂組成物の貯蔵安定性、所望の光硬化速度、硬化物物性を良好にバランスさせる観点から好適である。
本実施の形態における感光性樹脂組成物には、必要に応じて、増感剤、熱重合禁止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、染料、顔料、滑剤、無機充填剤、可塑剤等を配合することができる。
次に、実施例および比較例を挙げて本実施の形態をより具体的に説明するが、本実施の形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、本実施の形態に用いられる評価方法および測定方法は以下のとおりである。
[製造後の粘着性評価および摩耗試験後の粘着性評価]
(1)15cm角以上のべた画像(全面が平滑で凹部の存在しない印刷用レリーフ)領域を有する厚さ7mmの感光性樹脂版を所定の方法により作成し、直径10cmの円形に切り出し、中央部分に5mm角の穴をあけてサンプル版とした。
(2)感光性樹脂版の製造後の粘着性を評価するために、直径50mm、巾13mmのアルミニウム輪の円周部表面にポリエステルフィルムを貼り付けたものをサンプル版表面層に接触させ、アルミニウム輪に500gの荷重をかけて4秒間放置した後、毎分30mmの速度でアルミニウム輪を引き上げ、アルミニウム輪がレリーフ表面から離れる時の粘着力をプッシュブルゲージで読みとるタイプのタックテスター(東洋精機社製)を用いて、任意4点の測定を行った。その平均値を四捨五入して感光性樹脂版の製造後粘着度(g)として算出した。
(3)摩耗試験は、テーパー摩耗試験機(テスター産業株式会社製)に摩耗輪としてCALIBRADE(登録商標)タイプH−38(TABER INDUSTRIES社製)、摩耗輪取り付けアーム上に1kgの荷重をそれぞれ付属し、回転台の上のサンプル版をセットして準備した。
(4)インク溶媒の版表面への影響をシミュレートするプローブ液体として、ジエチレングリコール:16質量部、トリエタノールアミン:6質量部、エタノール:6質量部、水:72質量部からなる水溶液を作成し、当該水溶液がサンプル版表面全体を覆うようにスポイトにてプローブ液を垂らした。
(5)摩耗試験機の摩耗輪をサンプル版上に降ろし、60回転/分の速度で回転させた。その際、摩耗輪が接触するドーナツ上の領域ではプローブ液が押し出され摩耗輪とサンプル版の間のプローブ液が減少するため、回転数100回を目安に摩耗輪の上からプローブ液をスポイトで垂らした。
(6)回転数1500回を終了した時点で摩耗試験を終了し、プローブ液を不職布で拭い取り60℃の乾燥機で10分乾燥させた。
(7)乾燥したサンプル版を室温で30分程度放置し、温度が下がったところで2)と同様の方法でサンプル版上の摩耗輪が通過したドーナツ上の領域において任意4点の測定を行い、その平均値を四捨五入して感光性樹脂版の摩耗条件後の粘着度(g)として算出した。
〔感光性樹脂組成物の製造例〕
1000質量部のポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオールアジペート)ジオール(水酸基価:37KOHmg/g)と1000質量部のポリオキシエチレン(EO)−オキシプロピレン(PO)ブロック共重合ジオール(水酸基価:44KOHmg/g、EO含量30質量%)との混合物に対して30ppmのジブチル錫ジラウレートを加え、40℃で均一になるまで攪拌した。次いで、144質量部のトリレンジイソシアネートを加えてさらに攪拌し、均一となったところで80℃まで昇温した。その後、約4〜5時間反応させて両末端にイソシアネート基を有するプレポリマー前駆体を形成した。さらに206質量部のポリ(オキシプロピレン)グリコールモノメタアクリレート(平均分子量380)と181質量部のプロピレングリコールモノメタクリレートを加えて約2時間反応させた。その後、サンプルを一部取り出してIR分光測定器によりイソシアネート基消失を確認し、不飽和ポリウレタンプレポリマーを得た。
不飽和ポリウレタンプレポリマーのGPC測定の結果、プレポリマー成分に由来する高分子量体の数平均分子量は23000であり、組成中の含有量は89%であった。
次に不飽和ポリウレタンプレポリマー:74質量部、プロピレングリコールモノメタクリレート:12質量部、ジエチレングリコール−2−エチルヘキシルエーテルアクリレート:12質量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート:2.0質量部、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン:0.6質量部、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール:0.6質量部を60℃の加温状態で攪拌混合して、感光性樹脂組成物を調製した。
調製した感光性樹脂組成物の粘度は、温度20℃、湿度70%の恒温恒湿室内に一日放置し、同室内においてB形粘度計タイプB8H(株式会社東京計器製)で測定した結果、87Pa・sであった。
〔比較例1〕
上記製造例において調製された感光性樹脂組成物をAWF−110型製版システム(旭化成ケミカルズ(株)製)に供することにより、以下に示す成型露光工程、現像工程、後露光工程、乾燥工程を順次行い、感光性樹脂版を作成した。
成型露光工程:調製した感光性樹脂組成物と支持体(BF−448 旭化成ケミカルズ(株)製)、保護フィルム(CF−87 旭化成ケミカルズ(株)製)、コダックレコーディング2000フィルム(コダック社製)により作成したネガフィルムおよびマスキングフィルムを用いてマスキング露光量:500mJ/cm2、レリーフ露光量:650mJ/cm2の露光条件で、15cm角正方形の硬化部位(印刷レリーフ)を有する7mm版の成型・露光工程を実施した。当該製版システムにおいて感光性樹脂版を製造可能な有効サイズは約1m2であり、露光量はガラス面に紫外線測定器UV−M02(オーク製作所(株)製)の検出器を密着させて測定した350nmの波長における照射量(mW/cm2)から露光時間を算出して、調整して実施した。
現像工程:当該装置の洗浄液浴槽において、該感光性樹脂組成物を現像し得るAPR(登録商標)洗浄剤タイプW−10(主剤:アニオン系界面活性剤、旭化成ケミカルズ(株)製):2質量%、APR(登録商標)表面処理剤タイプA−10(主剤:ノニオン系界面活性剤、ベンゾフェノン20質量%含有、旭化成ケミカルズ(株)製):0.5質量%、消泡剤SH−4(シリコーン混和物、旭化成ケミカルズ(株)製):0.3質量%の割合となるよう水道水で溶解して300リットルの水性洗浄液を作成して液温35℃まで加温して準備した。
前記成型・露光が終了した感光性樹脂組成物の未硬化樹脂を当該装置の回収ユニットにより除去した後に、支持体上に形成された硬化部位の洗浄を行うために、当該装置の洗浄ユニットに装着し、スプレー圧0.2MPa、洗浄時間10分で洗浄を行い、次いで当該洗浄ユニットが標準装備する水道水スプレー噴霧によるリンス工程をバルブ調整により水量を6リットルで実施した。
後露光工程:当該装置の水中後露光ユニットは、樹脂版を液中に浸漬させる浴槽、その上部に紫外線蛍光灯、殺菌灯を装備し、前記浴槽は水道水の給水口と浴槽内の水量が約50リットルで常に一定となるようオーバーフロー方式の排水口を有している。感光性樹脂版の製造作業を行う際には、連続製版の律速工程となる成型・露光工程のサイクルタイムに合わせて、およそ30分程度、後露光浴槽内の水性液体の汚染による殺菌灯光源の波長領域の透過率低下を防ぎ、後露光処理の前には透過率約45%以上に回復するように給水量を毎分1.5リットルに設定して水道水を供給して実施された。この時、水性液体の温度は13℃、水面から感光性樹脂版を静置させるベッドまでの深さは約4.5cmだった。
前述の如く準備を行った後露光ユニットに洗浄工程が終了した感光性樹脂版をセットして、それぞれ10分間の露光時間で露光を行った。
前記露光時間における露光量は、前記後露光ユニットの感光性樹脂版を静置させるベッドに紫外線測定器UV−M02(オーク製作所(株)製)の検出器を密着させて測定した350nm、250nmの波長における照射量(mW/cm2)から、前記紫外線蛍光灯:1500mJ/cm2、前記殺菌灯:2500mJ/cm2と計算された。
乾燥工程:当該製版システムの乾燥ユニットを用いて版表面の水分が無くなるまで約30分間乾燥を行った。
以上のような感光性樹脂版の製版方法により、朝から連続して、途中昼食休み、夕方の休憩時間を挟んで連続16版を製造した。
得られた16版の感光性樹脂版について、前述した製造後の粘着性評価の方法に基づき、レリーフ表面の粘着性を評価した結果を当該樹脂版の製造を終了したおよその時間と共に表1に記載する。
当日の製造を通して、後露光ユニットでは製造作業時間から換算すると約990リットルの後露光廃液が排出されたことになった。
得られた感光性樹脂版では、レリーフ画像表面の所々に水滴痕が残った部分があり、その水滴痕はエタノールを湿らせた布で拭いても消えなかった。
〔比較例2〕
比較例1で使用したAWF−110型製版システム(旭化成ケミカルズ(株)製)について、新たに用水貯蔵タンクを新設した。
前記貯蔵タンクの容量は400リットルであり、後露光ユニットとの間では毎分3リットルの用水供給とオーバーフロー排水を当該タンク内に戻す循環システムを有していた。また、タンク内の水量が350リットルを常に維持するよう液面センサーにより監視され、自動的に水道水が供給される機構を有していた。
比較例1と同じ処方により洗浄液を作成し、前記用水貯蔵タンクからの水道水供給により後露光浴槽に50リットル、用水貯蔵タンクに350リットルの水が満たされた後に、各々の工程条件は比較例1と全く同じ条件により、感光性樹脂版の製造を実施した。後露光水の水温は製版開始当初13℃であったが、製版が進むにつれて20度程度まで上昇した。
得られた16版の感光性樹脂版について、前述した製造後の粘着性評価の方法に基づき、レリーフ表面の粘着性を評価した結果を当該樹脂版の製造を終了したおよその時間と共に表1に記載する。
製版の後半では水性液体の透過率低下による粘着度の上昇が確認され、翌日の製版作業では用水貯蔵タンク、後露光浴槽の水性液体を更新する必要があった。
後露光工程の廃水は、後露光浴槽内の50リットルと用水貯蔵タンク内の350リットルを合計して実質的に400リットルであったが、実施例1で引き続き水性洗浄液の用液として使用するため、排水は行わなかった。
得られた感光性樹脂版では、レリーフ画像表面の所々に水滴痕が残った部分があり、その水滴痕はエタノールを湿らせた布で拭いても消えなかった。
〔実施例1〕
比較例2の用水貯蔵タンクの水性液体を現像工程での水性洗浄液作成の希釈水とリンス液として利用が可能となるよう供給ラインを付属し、それぞれの用水の移動については、所定の圧力、タイミングで搬送可能なよう電磁弁、ポンプによる制御を可能とする装置とした。また水性液体を35℃に加温することが可能なヒーターを付属した。
比較例2で用水貯蔵タンクに貯まった水性液体を用いて、比較例1と同様の処方により水性洗浄液を新たに調合した。まず、用水貯蔵タンクの水道水自動供給機能を停止し、用水貯蔵タンクからバルブ操作で300リットルが供給された。水性洗浄液調合の後、用水貯蔵タンクの自動給水機能を作動させ、水道水の供給により用水貯蔵タンクの液量は350リットルに回復した。
用水貯蔵タンクの水性液体の水温が35℃となったことを確認した後に、後露光浴槽との間の3リットル/分の循環を開始し、各々の工程条件は比較例1と全く同じ条件により、感光性樹脂版の製造を実施した。洗浄工程のリンス液には用水貯蔵タンクの加温された水性液体が使用された。
得られた16版の感光性樹脂版について、前述した製造後の粘着性評価の方法に基づき、レリーフ表面の粘着性を評価した結果を当該樹脂版の製造を終了したおよその時間と共に表1に記載する。
当日の製造を通して、用水貯蔵タンク、後露光浴槽からの排水は発生せず、製造後粘着度は16版全てにおいて0gの良好な測定値を示した。
製造された感光性樹脂版を観察した結果、比較例の版で観察された版表面の水滴痕、流水痕は観察されなかった。
〔実施例2〕
実施例1のAWF−110型製版機(旭化成ケミカルズ(株)製)、用水貯蔵タンクの他に、AWF−110型製版機(旭化成ケミカルズ(株)製)の洗浄ユニット部分の機構を抽出した装置(以後、洗浄機Aと称する。)を別に準備し、この装置のリンス液は実施例1の用水貯蔵タンクから水性液体が供給されるよう接続した。
実施例1のAWF−110型製版機(旭化成ケミカルズ(株)製)の洗浄槽にはAPR(登録商標)洗浄剤タイプW−10(主剤:アニオン系界面活性剤、旭化成ケミカルズ(株)製):2質量%、消泡剤SH−4(シリコーン混和物、旭化成ケミカルズ(株)製):0.3質量%の割合で用水貯蔵タンクからの水性液体の供給により、水性洗浄液300リットルを作成して、液温35℃まで加温して準備した。用水貯蔵タンクには、300リットルの水道水が補給された。
また、前記洗浄機Aの洗浄槽にはAPR(登録商標)表面処理剤タイプA−10(主剤:ノニオン系界面活性剤、ベンゾフェノン20質量%含有、旭化成ケミカルズ(株)製):1.0質量%、消泡剤SH−4(シリコーン混和物、旭化成ケミカルズ(株)製):0.3質量%の割合となるよう水道水を供給して300リットルの表面処理液を作成し、液温35℃まで加温して準備した。
実施例1の製版条件の内、洗浄工程と後露光工程の間に洗浄機Aにおける表面処理工程を追加すること以外は同様の方法により16版の連続製版を実施した。
表面処理工程の処理条件は、スプレー圧0.2MPa、処理時間5分で処理を行った後に、用水貯蔵タンクからの水性液体供給により6リットルの水量でスプレーリンスを行った。
得られた16版の感光性樹脂版について、前述した製造後の粘着性評価の方法に基づき、レリーフ表面の粘着性を評価した結果を当該樹脂版の製造を終了したおよその時間と共に表1に記載する。
当日の製造を通して、用水貯蔵タンク、後露光浴槽からの排水は発生せず、粘着度は16版全てにおいて0gの良好な測定値を示した。
製造された感光性樹脂版を観察した結果、比較例の版で観察された版表面の水滴痕、流水痕は観察されなかった。
Figure 2009186851
表1の結果から、以下の内容が読み取れる。
(1)後露光廃液は、比較例1で990リットル、比較例2では実質400リットル発生したのに対して、同一製版枚数で製版を行った実施例で後露光廃液は発生せず、実施例では大幅な用水および廃水削減効果が実現している。
(2)比較例で得られた感光性樹脂版の製造後粘着度は30〜110gと、製版により特異的に現れる粘着性の発現が観察されたのに対し、実施例では全て0gであり、実施例では感光性樹脂表面の粘着性除去効果がより高いレベルで達成されていて、安定的に目標粘着度のレベルである50g以下を実現している。
(3)実施例では、比較例で見られた版表面の水滴痕や、流水後は観察されなかった。
〔評価例〕
比較例1および比較例2、実施例1および実施例2の10版目のサンプルについて、上述の摩耗試験後の粘着性評価を実施した。測定結果を表2に示す。
Figure 2009186851
実施例で得られた感光性樹脂版は、比較例の版に対して摩耗による粘着性発現が抑制されており、耐摩耗性の目標値である100g以下を実現している。
〔実施例3〕
実施例1の作業が終了した後に、同様の方法により、商業デザインによる大きなサイズの段ボール用印刷版を作成した。
得られた印刷版レリーフは、製版業者の手によって段ボール印刷のデザインに組み合わせ、整版され、段ボール製造機(コルゲーター)を保有する段ボール印刷業者の商業印刷を提供された。本実施例の印刷版では、120万部を超えた印刷部数においても版表面に紙紛が付着することによる印刷不良は軽微であり、3〜4万/ロットの印刷作業において印刷機を止めて版表面の清掃が必要となることはまれであった。なお、印刷は以下の条件で実施された。
段ボール印刷機:エラン(三菱重工業株式会社製)
インク:水性インキ、粘度8〜9秒/ザーンカップ#4(20℃)
段シート:A段、表面シート210g/m2、強化中芯180g/m2
印刷速度:160枚/分
〔比較例3〕
比較例2の作業が終了した後に、同様の方法により、商業デザインによる大きなサイズの段ボール用印刷版を作成した。
実施例3と同様の方法による商業印刷の結果、3〜4万/ロットの印刷作業を繰り返し実施する中で、印刷開始当初は、印刷トラブルは見られなかったが、45万部を超える印刷部数となるころから版表面に付着した紙紛による印刷不良が目立ち始め、70万部を超える印刷部数に至っては、印刷を停止して版を清掃する回数が1ロットの間で複数回となり、生産性への影響が大きく本比較例の印刷版の使用は中止された。
本発明の感光性樹脂版の製造方法は、印刷版の分野、特に段ボール印刷用のフレキソ印刷版の分野で好適に利用できる。

Claims (11)

  1. 下記(A)〜(C)の工程;
    (A)感光性樹脂組成物により形成された成型体の表面を露光し、前記成型体の表面に硬化部位を形成する成型・露光工程、
    (B)未硬化樹脂を水性洗浄液によって洗い流し、前記硬化部位を現像する現像工程、
    (C)活性光線を透過し得る水性液体中に浸漬した状態で、現像された前記硬化部位の表面に活性光線を照射する後露光工程、
    を含み、
    前記水性液体の後露光排水を前記(B)工程の用水として使用する感光性樹脂版の製造方法。
  2. 前記(C)工程の前に、
    (D)現像された前記硬化部位の表面に水性表面処理液を浸透させる表面処理工程を含む、請求項1に記載の感光性樹脂版の製造方法。
  3. 前記水性液体の後露光排水を前記(D)工程の用水として使用する、請求項2に記載の感光性樹脂版の製造方法。
  4. 前記水性液体を加温する工程を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂版の製造方法。
  5. 前記水性液体が、温度25〜45℃の範囲である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂版の製造方法。
  6. 前記水性液体を循環する工程を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の感光性樹脂版の製造方法。
  7. 前記水性液体が、水である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性樹脂版の製造方法。
  8. 前記水性洗浄液および/または前記水性表面処理液が、界面活性剤水溶液である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の感光性樹脂版の製造方法。
  9. 前記界面活性剤水溶液が水素引き抜き剤を含む、請求項8に記載の感光性樹脂版の製造方法。
  10. 前記(C)工程で用いる活性光線が、200nm〜300nmの波長領域に分布を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の感光性樹脂版の製造方法。
  11. 前記感光性樹脂組成物が下記(a)〜(c)の各成分;
    (a)エチレン性不飽和基を有するポリウレタンプレポリマー:100質量部、
    (b)エチレン性不飽和モノマー:10〜150質量部、
    (c)光重合開始剤:0.01〜10質量部、
    を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の感光性樹脂版の製造方法。
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