JP2004250606A - インクジェット記録用インク組成物及びこれを用いる記録方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】インクジェット記録に適する高い鮮明性をもつ色相を有し、且つ記録物の堅牢度が強く、又保存安定性が優れたブルー系インクジェット記録用インク組成物を提供する。
【解決手段】遊離酸の形で下記式(1)
(式(1)中、X1及びX2は水素原子、アルキル、アルコキシ基、塩素原子、カルボキシル基又はスルホ基を表す。Y1は水素原子、アルキル基、アルコキシ基を表す。R1及びR2は、水素原子、アルキル基又は置換アルキル基を表す。NHA基において、Aは水素原子、β―スルファトエチルスルホニル基、ピリミジルカルボニル基、ピリダジンカルボニル基、キノキサリンカルボニル基、ピリミジニル基等、又はハロゲン基を有するトリアジニル基若しくはピリジニル基を表す。)で示される水溶性フェナジン化合物を含有するインクジェット記録用インク組成物
【選択図】なし
【解決手段】遊離酸の形で下記式(1)
(式(1)中、X1及びX2は水素原子、アルキル、アルコキシ基、塩素原子、カルボキシル基又はスルホ基を表す。Y1は水素原子、アルキル基、アルコキシ基を表す。R1及びR2は、水素原子、アルキル基又は置換アルキル基を表す。NHA基において、Aは水素原子、β―スルファトエチルスルホニル基、ピリミジルカルボニル基、ピリダジンカルボニル基、キノキサリンカルボニル基、ピリミジニル基等、又はハロゲン基を有するトリアジニル基若しくはピリジニル基を表す。)で示される水溶性フェナジン化合物を含有するインクジェット記録用インク組成物
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェットプリンタによる記録方法に有用な、青色系水性インク組成物に関する。更に詳しくは水溶性フェナジン化合物の1種又は2種以上を含有するインクジェット記録用青色系インク組成物、それによるインクジェット記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種カラー記録法の中で、その代表的方法の一つであるインクジェットプリンタによる記録方法においては、インクの各種吐出方式が開発されているが、いずれも水性インクの小滴を発生させ、これを種々の被記録材料(紙、フィルム、布帛等)に付着させ記録を行うものである。これは、記録ヘッドと被記録材料とが接触しない為、音の発生が少なく静かであり、また小型化、高速化、カラー化が容易であるという特長の為、近年急速に普及しつつあり、今後とも大きな伸長が期待されている。この中で、コンピューターのカラーディスプレー上の画像又は文字情報をインクジェットプリンタによるカラ−記録は、一般にはイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクによる減法混色で表現される。CRTディスプレー等のレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)による加法混色画像を減法混色画像で出来るだけ忠実に再現するには、Y、M、Cのそれぞれについて、標準の色相に近い色相を有し且つ鮮明であることが望まれるが、これを解決するため、7色(Y、M、C、R、G、B、K)インクを用いるインクジェット印刷法が提案されている(例えば特許文献1を参照)。そこにおいては可溶性基を持たせた建染染料(バット染料)が用いられ、色相、鮮明性、堅牢度などの点から市場の要求を完全に満足するには至っていない。また、従来インクジェット用インクとして用いられているY、M、Cを予め混合して得られたR、G、B等の各インクを用いても鮮明性に優れた印刷物が得られないという問題がある。
【0003】
一方、インクジェット記録用ブルー色素の例としては、従来C.I.アシッドブルー83、90等が挙げられている(例えば特許文献2、特許文献3を参照)が、これらは色相、鮮明性は良好だか、溶解性、堅牢性などの点で市場の要求を満たすには至っていない。更に、インク組成物には長期の保存に対し安定であり、プリントした画像の濃度が高く、しかも耐水性、耐光性及び耐ガス性等の堅牢度に優れている事が求められる。さらに最近のデジタルカメラの普及と共に、家庭でも画像をプリントする機会が増しているが、得られたプリント物を保管する時に、空気中の酸化性ガスによる画像の変色も問題視されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2002年―241661号公報(第1−17頁)
【特許文献2】
特開平7−305014号(第9、10頁)
【特許文献3】
特開平8−302255号(第12頁)
【特許文献4】
特公昭60−54350号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は水に対する溶解性が高く、インクジェット記録に適する色相と鮮明性を有し、人に対してより安全性の高いインクジェット記録用インク組成物を提供する事を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記したような課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に至ったものである。
即ち本発明は、
(1)遊離酸の形で式(1)
【0007】
【化6】
【0008】
(式(1)中、X1及びX2はそれぞれ独立に水素原子、炭素数が1〜4個のアルキル基若しくはアルコキシ基、塩素原子、カルボキシル基又はスルホ基を表す。Y1は水素原子又は炭素原子1〜4個のアルキル基若しくはアルコキシ基を表す。R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、炭素数が1〜4個のアルキル基又は置換していてもよいアルキル基(置換基としてはシアノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、スルホ基で置換していてもよいフェニル基又はフェニルオキシ基から選ばれる)を表す。NHA基において、Aは水素原子、β―スルファトエチルスルホニル基、置換していてもよいピリミジルカルボニル基、ピリダジンカルボニル基、キノキサリンカルボニル基、ピリミジニル基若しくはトリアジニル基(これらの基において、置換基としては水酸基、炭素数1〜4個のアルコキシ基、炭素原子1〜6個の置換していてもよいアルキルアミノ基(置換基としてはヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、ヒドロキシアルコキシ基、スルホ基、カルボキシル基から選ばれる)から選ばれる基を有する)、置換していてもよいアリルアミノ基(置換基としては炭素数1から4のアルキル基若しくはアルコキシ基、スルホ基又はカルボキシル基から選ばれる)、炭素原子1〜6個の置換していてもよいアルキルチオ基(置換基としてはヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、ヒドロキシアルコキシ基、スルホ基又はカルボキシル基から選ばれる)、又は反応性ハロゲン基1個乃至2個を有するトリアジニル基若しくはピリジニル基を表す。)で示される水溶性フェナジン化合物の1種又は2種以上を含有するインクジェット記録用インク組成物、
(2)水溶性フェナジン化合物が遊離酸の形で式(2)で
【0009】
【化7】
【0010】
(式(2)中、X1、X2、R1、R2及びY1は式(1)におけるのと同じ意味を表す。又、Y2及びY3それぞれ独立に、ヒドロキシ基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1から6の置換していてもよいアルキルアミノ基(置換基としてはヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、ヒドロキシアルコキシ基、スルホ基又はカルボキシル基から選ばれる)、置換していてもよいアリルアミノ基(置換基としては炭素数1から4のアルキル基若しくはアルコキシ基、スルホ基又はカルボキシル基から選ばれる)、炭素数1〜6の置換していてもよいアルキルチオ基(置換基としてはヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、ヒドロキシアルコキシ基、スルホ基、カルボキシル基又はハロゲンから選ばれる)を表す。)で示される水溶性フェナジン化合物である(1)に記載のインクジェット記録用インク組成物、
(3)水溶性フェナジン化合物が遊離酸の形で式(3)で
【0011】
【化8】
【0012】
(式(3)中、X1、X2、R1、R2、Y1、Y2及びY3は式(2)におけるのと同じ意味を表す。)
(4)水溶性フェナジン化合物が遊離酸の形で式(4)
【0013】
【化9】
【0014】
(式(4)中、Y2及びY3は−Cl、−NHC2H4COOH、又は−OCH3を表す。)
で示される水溶性フェナジン化合物である(3)に記載のインクジェット記録用インク組成物、
(5)水溶性フェナジン化合物が遊離酸の形で式(5)
【0015】
【化10】
【0016】
(式(5)中、Y2及びY3は−Cl、−NHC2H4COOH、又は−OCH3を表す。)
で示される水溶性フェナジン化合物である(3)に記載のインクジェット記録用インク組成物、
(6)式(1)乃至式(3)で示される水溶性フェナジン化合物の含有量が0.1〜20重量%である(1)乃至(5)のいずれか一項に記載のインクジェット記録用インク組成物、
(7)インク滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材に記録を行うインクジェット記録方法において、インク組成物として(1)乃至(6)のいずれか一項に記載のインクジェット記録用インク組成物を使用することを特徴とするインクジェット記録方法、
(8)被記録材が情報伝達用シートである(7)に記載のインクジェット記録方法、
(9)情報伝達用シートが表面処理されたシートである(8)に記載のインクジェット記録方法、
(10)(7)又は(9)に記載のインクジェット記録方法により着色された着色体、
(11)(1)乃至(6)のいずれか一項に記載のインクジェット記録用インク組成物を含む容器が装填されたインクジェットプリンタ、
に関する。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明を詳細に説明する。尚、本発明において断りが無いかぎりスルホン酸基、カルボン酸基は遊離酸の形で表す。
【0018】
本発明のインクジェット記録用インク組成物は下記式(1)で示される水溶性フェナジン化合物を必須の成分として含有する。
【0019】
【化11】
【0020】
(式(1)中、X1及びX2はそれぞれ独立に水素原子、炭素数が1〜4個のアルキル基若しくはアルコキシ基、塩素原子、カルボキシル基又はスルホ基を表す。Y1は水素原子又は炭素原子1〜4個のアルキル基若しくはアルコキシ基を表す。R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、炭素数が1〜4個のアルキル基又は置換していてもよいアルキル基(置換基としてはシアノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、スルホ基で置換していてもよいフェニル基又はフェニルオキシ基から選ばれる)を表す。NHA基において、Aは水素原子、β―スルファトエチルスルホニル基、置換していてもよいピリミジルカルボニル基、ピリダジンカルボニル基、キノキサリンカルボニル基、ピリミジニル基若しくはトリアジニル基(これらの基において、置換基としては水酸基、炭素数1〜4個のアルコキシ基、炭素原子1〜6個の置換していてもよいアルキルアミノ基(置換基としてはヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、ヒドロキシアルコキシ基、スルホ基、カルボキシル基から選ばれる)から選ばれる基を有する)、置換していてもよいアリルアミノ基(置換基としては炭素数1乃至4のアルキル基若しくはアルコキシ基、スルホ基又はカルボキシル基から選ばれる)、炭素原子1〜6個の置換していてもよいアルキルチオ基(置換基としてはヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、ヒドロキシアルコキシ基、スルホ基又はカルボキシル基から選ばれる)、又は反応性ハロゲン基1個又は2個を有するトリアジニル若しくはピリジニル基を表す。
【0021】
式(1)で示される水溶性フェナジン化合物のうち式(2)で示される水溶性フェナジン化合物が好ましい例として挙げられる。更に式(2)で示される水溶性フェナジン化合物のうち、式(3)で示される水溶性フェナジン化合物がより好ましい例として挙げられる。
【0022】
【化12】
【0023】
【化13】
【0024】
(式(2)中、X1、X2、R1、R2及びY1は式(1)におけるのと同じ意味を表す。又、Y2及びY3それぞれ独立に、ヒドロキシ基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1から6の置換していてもよいアルキルアミノ基(置換基としてはヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、ヒドロキシアルコキシ基、スルホ基又はカルボキシル基から選ばれる)、置換していてもよいアリルアミノ基(置換基としては炭素数1から4のアルキル基又はアルコキシ基、スルホ基又はカルボキシル基から選ばれる)、炭素数1〜6の置換していてもよいアルキルチオ基(置換基としてはヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、ヒドロキシアルコキシ基、スルホ基、カルボキシル基又はハロゲンから選ばれる)を表す。
又、式(3)中、X1、X2、R1、R2、Y1、Y2及びY3は式(2)におけるのと同じ意味を表す。式(3)におけるY2、Y3の具体的基を例示すると次ぎのものが挙げられる。
【0025】
−Cl、 −NHC2H4COOH、 −NHC5H10COOH、 −NHC2H4SO3H、 −SC2H4SO3H、 −NHC2H4OC2H4OH、 −NHC2H4OH、 −OCH3、
【0026】
【化14】
【0027】
式(3)で示される水溶性フェナジン化合物のうち、更に好ましい化合物として、遊離酸の形で式(4)又は式(5)で示される化合物が挙げられる。
【0028】
【化15】
【0029】
【化16】
【0030】
(式(4)及び式(5)において、Y2及びY3は−Cl、−NHC2H4COOH、又は−OCH3を表す。)
【0031】
式(1)で示されるの水溶性フェナジン化合物の具体的化合物例としては、下記の化合物No.1〜No.9が挙げられる。
【0032】
【化17】
【0033】
【化18】
【0034】
【化19】
【0035】
式(1)で表される水溶性フェナジン化合物は、例えば特許文献4に記載の製造方法に準じて製造する事ができる。
【0036】
式(1)の水溶性フェナジン化合物は、遊離酸の形で、あるいは、その塩の形態で存在する。塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アルキルアミン塩、アルカノールアミン塩又はアンモニウム塩が挙げられる。好ましくはナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、モノイソプロパノールアミン塩、ジイソプロパノールアミン塩、トリイソプロパノールアミン塩等のアルカノールアミン塩、アンモニウム塩が挙げられる。また塩の調製法としては、例えば目的化合物(色素)を含む反応液、目的化合物(色素)のあるいはケーキ、乾燥品を水に溶解したものに食塩を加えて、塩析、濾過することによってナトリウム塩をウエットケーキとして得ることができる。そのウエットケーキを再び水に溶解後、塩酸を加えてpHを1〜2に調整して得られる結晶を濾過すれば、遊離酸(あるいは一部はナトリウム塩のまま)の形で得ることができる。更に、その遊離酸のウエットケーキを水と共に攪拌しながら、例えば、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア水を添加してアルカリ性にすれば、各々リチウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が得られる。これらの塩のうち、好ましいものはリチウム、ナトリウムの塩である。
【0037】
本発明のインクジェット記録用インク組成物をインクジェットプリンタ用のインクとして使用する場合、フェナジン化合物(色素)としては金属陽イオンの塩化物、硫酸塩等の無機物の含有量が少ないものを用いるのが好ましく、その含有量の目安は例えば化合物(色素)中1重量%以下程度である。無機物の少ないフェナジン化合物(色素)を製造するには、例えば逆浸透膜による方法等の通常の方法で、脱塩処理すればよい。
【0038】
式(1)で表される水溶性フェナジン化合物の反応液は、記録用インク組成物の製造に直接使用する事が出来る。しかし、反応液から単離し、乾燥、例えばスプレー乾燥させ、次にインク組成物の調製に供することも出来る。
【0039】
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、前記水溶性フェナジン化合物を水及び/又は水性溶媒(水溶性有機溶剤含有水)に溶解したものであるが、本発明のインク組成物には、該フェナジン化合物の他水溶性有機溶剤、インク調製剤等を含有しても良い。
【0040】
本発明で使用しうる水溶性有機溶剤の例としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等のC1〜C4アルカノール、N,N−ジメチルホルムアミド又はN,N−ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のラクタム、1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オン又は1,3−ジメチルヘキサヒドロピリミド−2−オン等の環式尿素類、アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オン等のケトン又はケトアルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル、エチレングリコール、1,2−又は1,3−プロピレングリコール、1,2−又は1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、チオジグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の(C2〜C6)アルキレン単位を有するモノマー、オリゴマー又はポリアルキレングリコール又はチオグリコール、グリセリン、ヘキサン−1.2.6−トリオール等のポリオール(トリオール)、エチレングリコールモノメチルエーテル又はエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル又はジエチレングリコールモノエチルエーテル又はトリエチレングリコールモノメチルエーテル又はトリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールの(C1〜C4)アルキルエーテル、γーブチロラクトン又はジメチルスルホキシド等があげられる。
【0041】
これらのうち好ましいものとしては2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、モノ、ジ又はトリエチレングリコール、ジプロピレングリコールが挙げられ、より好ましいものは、2−ピロリドン、N−メチルピロリジン−2−オン、ジエチレングリコールである。これらの水溶性有機溶剤は、単独もしくは混合して用いられる。
【0042】
インク調製剤としては、例えば防腐防黴剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、水溶性紫外線吸収剤、水溶性高分子化合物、染料溶解剤、界面活性剤などが挙げられる。
防腐防黴剤としては、例えば、有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリルスルホン系、ヨードプロパギル系、N−ハロアルキルチオ系、ニトチリル系、ピリジン系、8−オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、無機塩系等の化合物が挙げられる。有機ハロゲン系化合物としては、例えばペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられ、ピリジンオキシド系化合物としては、例えば2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウムが挙げられ、無機塩系化合物としては、例えば無水酢酸ソーダが挙げられ、イソチアゾリン系化合物としては、例えば1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンマグネシウムクロライド、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド等が挙げられる。その他の防腐防黴剤としてソルビン酸ソーダ、安息香酸ナトリウム、等があげられる。
【0043】
pH調整剤としては、調合されるインクに悪影響を及ぼさずに、インクのpHを8.0〜11.0の範囲に制御できるものであれば任意の物質を使用することができる。例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、水酸化アンモニウム、あるいは炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩などが挙げられる。
キレート試薬としては、例えばエチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウムなどがあげられる。
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライトなどがあげられる。
水溶性紫外線吸収剤としては、例えばスルホン化されたベンゾフェノン又はスルホン化されたベンゾトリアゾール等があげられる。水溶性高分子化合物としては、例えばポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアミン、ポリイミン等があげられる。
染料溶解剤としては、例えば尿素、ε−カプロラクタム、エチレンカーボネート等があげられる。
【0044】
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤が、それぞれ目的に応じて使用出来る。使用しうるアニオン界面活性剤の例としてはアルキルスリホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸及びその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリルスルホン塩酸、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキルシルスルホ琥珀酸ジオクチルスルホ琥珀酸塩などが挙げられる。使用しうるカチオン界面活性剤の例としては2−ビニルピリジン誘導体、ポリ4−ビニルピリジン誘導体などがある。使用しうる両性界面活性剤の例としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシンその他イミダゾリン誘導体などがある。使用しうるノニオン界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアリルキルアルキルエーテルなどのエーテル系、ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレートなどのエステル系、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オールなどのアセチレングリコール系(例えば、日信化学社製サーフィノール104、82、465、オルフィンSTGなど)、などが挙げられる。
これらのインク調製剤は、1種類又は多種類を必要により選択して使用される。
【0045】
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、式(1)の水溶性フェナジン化合物を水又は上記水性溶媒(水溶性有機溶剤含有水)に、上記インク調製剤などと共に溶解させることによって製造できる。
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、式(1)の水溶性フェナジン化合物を通常0.1〜20重量%、より好ましくは1〜15重量%、更に好ましくは2〜10重量%含有する。必要により水溶性有機溶剤0〜30重量%、インク調製剤0〜5重量%をそれぞれ含有しても良く、最終的に水を加え濃度が調整される。
【0046】
本発明のインクジェット記録用インク組成物を調製するに当たり、前記各薬剤を溶解させる順序に特に制限はない。式(1)の水溶性フェナジン化合物を水及び/又は上記水性溶媒(水溶性有機溶剤含有水)に溶解させ、次いでインク調製剤を添加して溶解させてもよいし、式(1)の水溶性フェナジン化合物を水に溶解させたのち、水性溶媒、インク調製剤を添加し、溶解させてもよい。インク組成物を調製するにあたり、用いる水はイオン交換水又は蒸留水など不純物が少ない精製水を使用するのが好ましい。インク組成物の調製後、更に、必要に応じメンブランフィルターなどを用いて精密濾過を行って夾雑物を除いてもよく、インクジェットプリンタ用のインク組成物においては、一般には、精密濾過を行うことが好ましい。精密濾過を行うフィルターの孔径は通常1ミクロン〜0.1ミクロン、好ましくは、0.8ミクロン〜0.2ミクロンである。
尚、本発明のブルー色のインクジェット記録用インク組成物にはさらに公知公用のイエロー、マゼンタ等の染料を配合することによって、ブルー色調を好みのものにすることができることは言うまでもない。
【0047】
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、天然及び合成繊維材料又は混紡品の印刷にも適しているが、最も好ましい用途はインクジェット印捺法における被記録媒体上への印刷である。この場合、水、日光、オゾン及び摩擦に対する良好な耐性を有する高品質のブルー印捺物が得られる。
【0048】
本発明の着色体は前記の本発明のインクジェット記録用インク組成物で着色されたものである。着色されるべきものとしては、特に制限無く、例えば紙、繊維や布(セルロース、ナイロン、羊毛等)、皮革、カラーフィルター用基材等があげられるがこれらに限定されない。
【0049】
本発明のインクジェット記録方法を適用しうる好ましい被記録材としては紙、フィルム等の情報伝達用シートが挙げられる。情報伝達用シートについては、表面処理されたもの、具体的にはこれらの基材にインク受容層を設けたものが好ましい。インク受容層は、例えば上記基材にカチオン系ポリマーを含浸あるいは塗工することにより、また多孔質シリカ、アルミナゾルや特殊セラミックス等インク中の色素を吸収し得る無機微粒子をポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーと共に上記基材表面に塗工することにより設けられる。このようなインク受容層を設けたものは通常インクジェット専用紙(フィルム)あるいは光沢紙(フィルム)と呼ばれ、例えばピクトリコ(旭硝子(株)製)、カラーBJペーパー、カラーBJフォトフィルムシート、プロフェッショナルフォトペーパー(いずれもキャノン(株)製)、カラーイメージジェット用紙(シャープ(株)製)、PM写真用紙、スーパーファイン専用光沢フィルム(いずれもエプソン(株)製)、ピクタファイン(日立マクセル(株)製)等として市販されている。なお、普通紙にも利用できることはもちろんである。
【0050】
本発明のインクジェット記録方法では、本発明のインクジェット記録用インク組成物はイエローインク組成物、マゼンタインク組成物、必要に応じ、ブラックインク組成物等と共に供されうる。
各色のインク組成物は、それぞれの容器に注入され、この容器を、本発明のインクジェット記録用インク組成物を含有する容器と同様に、インクジェットプリンタの所定位置にセット(装填)されて、使用される。
【0051】
本発明のインクジェット記録方法で、被記録材に記録を行うには、例えば本発明のインク組成物を含有する容器をインクジェットプリンタの所定位置にセットし、通常の方法で、被記録材に記録すればよい。インクジェットプリンタとしては、例えば機械的振動を利用したピエゾ方式のプリンタや加熱により生ずる泡を利用したバブルジェット(登録商標)方式のプリンタ等があげられる。
【0052】
本発明の水性インク組成物は、鮮明なブルー色であり、特にインクジェット光沢紙において高い鮮明な色相を有する。また、人に対する安全性も高い。他のイエロー、マゼンタのインクと共に用いる事で、通常のシアンインクとマゼンタインクの混色による青色では出し得ない広い可視領域の色調を色出しする事ができ、優れた記録物を得ることができる。また、記録画像の堅牢度が高い。
【0053】
本発明のインクジェット記録用インク組成物は貯蔵中に沈澱、分離することがない。また、本発明のインク組成物をインクジェット印捺において使用した場合、噴射器(インクヘッド)を閉塞することもない。本発明のインクジェット記録用インク組成物は連続式インクジェットプリンタによる比較的長い時間一定の再循環下又はオンデマンド式インクジェットプリンタによる断続的な使用においても、物理的性質の変化を起こさない。
【0054】
【実施例】
以下に本発明を更に実施例により、より具体的に説明する。尚、本文中「部」及び「%」とあるのは、特別の記載のない限り重量基準である。
【0055】
合成例1 (化合物No.2の合成)
特許文献4の実施例1に準じて合成した化合物(式(3)において、R1=C2H5、R2=m−スルホベンジル、X1=OCH3、X2=SO3H、Y1=H、Y2=OCH3、Y3=Clである化合物に相当)に水溶媒中、1.25当量のβ−アラニンを、液性をpH8−8.5に10%ソーダ灰で調整しながら80−85℃で2時間反応させる。液性をpH5に調整し塩化ナトリウムで25重量/容積%塩析処理をする。室温迄放冷し析出した結晶を濾取し、メタノール−イソプロピルアルコールの混合溶媒で脱塩処理を行う。乾燥することによって化合物No.2(水中での最大吸収波長が579.0nm)が得られる。この化合物No.2の無機物の含有量は1重量%以下である。
【0056】
実施例1
(A)インクの調製
上記合成例1で得られた化合物を用いて表1に示した組成の液体を調製し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過する事により各インクジェット記録用水性インク組成物を得た。また水はイオン交換水を使用した。尚、インク組成物のpHがpH=7〜9、総量100部になるように水、水酸化ナトリウムを加えた。又、化合物No.1(水中での最大吸収波長が580.5nm)を用いた試験を実施例1とする。合成例1で得られた化合物を用いた試験を実施例2とする。
【0057】
表1(インク組成物)
上記合成例で得られた化合物 3.8部
水 77.0部
水酸化ナトリウム 0.1部
グリセリン 5.0部
尿素 5.0部
N−メチル−2−ピロリドン 4.0部
IPA 3.0部
ブチルカルビトール 2.0部
サーフィノール104PG50(界面活性剤、日信化学社製) 0.1部
計 100.0部
【0058】
(B)インクジェットプリント
インクジェットプリンタ(商品名 キヤノン社製 BJ−S630)を用いて、普通紙(プリンタペーパーA4 TLB5A4S(キャノン社製))にインクジェット記録を行った。
【0059】
比較例1、2
比較対象として実施例で得られた化合物の代わりにC.I.アシッドブルー83を使用する以外は実施例1と同様にしてインクを調製、インクジェット記録を行い、記録画像の評価を行った。又、同様に色素C.I.アシッドブルー90を使用した場合を比較例2とする。
【0060】
(C)インクの保存安定性
実施例1、実施例2及び比較例1、比較例2で得られた各インク組成物を室温下で1日放置し、1日放置後のインクの溶液状態を評価した。溶液状態の判定は視感で、結晶の析出或いはゲル化することがない場合を○とし、ゲル化する場合を×とする。結果を表2に示す。ゲル化の激しい比較例2についての以後の比較試験は実施していない。
【0061】
【0062】
実施例1及び実施例2のインク組成物はインクの安定性が良好であるが、比較例1及び比較例2のインク組成物は室温下で1日放置すると、ゲル化を起こし、インクの保存安定性に極めて劣ることが判った。
【0063】
(D)記録画像の評価
1.色相評価
1−1.光沢紙での色相評価
記録画像の色相、鮮明性:記録紙を測色システム(GRETAG SPM50:GRETAG社製)を用いて測色し、L*、a*、b*値を算出した。鮮明性は各記録紙のL*値(明度)を略合わせた時の色度(a*、b*)からC* =((a*)2+(b* )2)1/2を算出し、評価した。
実施例1、実施例2、比較例1の普通紙での色相の結果を表3に示す。
【0064】
【0065】
表3より、実施例1、2の鮮明性は、普通紙において、比較例1よりはるかに優れた結果を与えることがわかる。
【0066】
(D)記録画像のキセノン耐光性試験
エプソン社製光沢紙にプリントした試験片をキセノンウェザオメータCi4000(ATLAS社製)を用い、0.36W/平方メートル照度で50時間照射し、試験前後の濃度×100を測定した。結果は表4に示す。
(E)記録画像のオゾン耐性試験
エプソン社製光沢紙にプリントした試験片を、オゾンウェザーメーター(スガ試験機社製)を用い、温度40℃、湿度55%RH、オゾン濃度3ppmで1時間放置し、試験前後の色差(ΔE)を測定した。結果は表4に示す。
【0067】
【0068】
表4より、実施例1、2は、耐光性、耐オゾン性において、比較例1より非常に優れていることがわかる。
表2〜4より、本発明のインクジェット記録用インク組成物は、インクの安定性が良好であり、非常に鮮明性の高い色相であることがわかる。また、耐光堅牢度、耐オゾン堅牢度が強い、非常に優れたブルー色インクであることがわかる。
【0069】
【発明の効果】
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、インク組成物製造過程でのメンブランフィルターに対するろ過性が良好という特徴を有する。又、本発明のインク組成物は長期間保存後の結晶析出、物性変化、色変化等もなく、貯蔵安定性が良好である。そして本発明のインク組成物をインクジェット記録用のブルーインクとして使用した印刷物はメディア(紙、フィルム等)を選択することなく理想的なブルーの色相であり、従来インクジェット記録用として用いられているシアンインクとマゼンタインクにより色だしされたブルー色よりも、鮮明性の高いブルー(色)を再現させることが可能であり、カラー画像の色相を紙の上に忠実に再現させることも可能である。更に本発明のインク組成物は、シアンとマゼンタ等と共に用いることで耐光性、耐オゾン性などに優れたインクジェット記録を可能にする。
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェットプリンタによる記録方法に有用な、青色系水性インク組成物に関する。更に詳しくは水溶性フェナジン化合物の1種又は2種以上を含有するインクジェット記録用青色系インク組成物、それによるインクジェット記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種カラー記録法の中で、その代表的方法の一つであるインクジェットプリンタによる記録方法においては、インクの各種吐出方式が開発されているが、いずれも水性インクの小滴を発生させ、これを種々の被記録材料(紙、フィルム、布帛等)に付着させ記録を行うものである。これは、記録ヘッドと被記録材料とが接触しない為、音の発生が少なく静かであり、また小型化、高速化、カラー化が容易であるという特長の為、近年急速に普及しつつあり、今後とも大きな伸長が期待されている。この中で、コンピューターのカラーディスプレー上の画像又は文字情報をインクジェットプリンタによるカラ−記録は、一般にはイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクによる減法混色で表現される。CRTディスプレー等のレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)による加法混色画像を減法混色画像で出来るだけ忠実に再現するには、Y、M、Cのそれぞれについて、標準の色相に近い色相を有し且つ鮮明であることが望まれるが、これを解決するため、7色(Y、M、C、R、G、B、K)インクを用いるインクジェット印刷法が提案されている(例えば特許文献1を参照)。そこにおいては可溶性基を持たせた建染染料(バット染料)が用いられ、色相、鮮明性、堅牢度などの点から市場の要求を完全に満足するには至っていない。また、従来インクジェット用インクとして用いられているY、M、Cを予め混合して得られたR、G、B等の各インクを用いても鮮明性に優れた印刷物が得られないという問題がある。
【0003】
一方、インクジェット記録用ブルー色素の例としては、従来C.I.アシッドブルー83、90等が挙げられている(例えば特許文献2、特許文献3を参照)が、これらは色相、鮮明性は良好だか、溶解性、堅牢性などの点で市場の要求を満たすには至っていない。更に、インク組成物には長期の保存に対し安定であり、プリントした画像の濃度が高く、しかも耐水性、耐光性及び耐ガス性等の堅牢度に優れている事が求められる。さらに最近のデジタルカメラの普及と共に、家庭でも画像をプリントする機会が増しているが、得られたプリント物を保管する時に、空気中の酸化性ガスによる画像の変色も問題視されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2002年―241661号公報(第1−17頁)
【特許文献2】
特開平7−305014号(第9、10頁)
【特許文献3】
特開平8−302255号(第12頁)
【特許文献4】
特公昭60−54350号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は水に対する溶解性が高く、インクジェット記録に適する色相と鮮明性を有し、人に対してより安全性の高いインクジェット記録用インク組成物を提供する事を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記したような課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に至ったものである。
即ち本発明は、
(1)遊離酸の形で式(1)
【0007】
【化6】
【0008】
(式(1)中、X1及びX2はそれぞれ独立に水素原子、炭素数が1〜4個のアルキル基若しくはアルコキシ基、塩素原子、カルボキシル基又はスルホ基を表す。Y1は水素原子又は炭素原子1〜4個のアルキル基若しくはアルコキシ基を表す。R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、炭素数が1〜4個のアルキル基又は置換していてもよいアルキル基(置換基としてはシアノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、スルホ基で置換していてもよいフェニル基又はフェニルオキシ基から選ばれる)を表す。NHA基において、Aは水素原子、β―スルファトエチルスルホニル基、置換していてもよいピリミジルカルボニル基、ピリダジンカルボニル基、キノキサリンカルボニル基、ピリミジニル基若しくはトリアジニル基(これらの基において、置換基としては水酸基、炭素数1〜4個のアルコキシ基、炭素原子1〜6個の置換していてもよいアルキルアミノ基(置換基としてはヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、ヒドロキシアルコキシ基、スルホ基、カルボキシル基から選ばれる)から選ばれる基を有する)、置換していてもよいアリルアミノ基(置換基としては炭素数1から4のアルキル基若しくはアルコキシ基、スルホ基又はカルボキシル基から選ばれる)、炭素原子1〜6個の置換していてもよいアルキルチオ基(置換基としてはヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、ヒドロキシアルコキシ基、スルホ基又はカルボキシル基から選ばれる)、又は反応性ハロゲン基1個乃至2個を有するトリアジニル基若しくはピリジニル基を表す。)で示される水溶性フェナジン化合物の1種又は2種以上を含有するインクジェット記録用インク組成物、
(2)水溶性フェナジン化合物が遊離酸の形で式(2)で
【0009】
【化7】
【0010】
(式(2)中、X1、X2、R1、R2及びY1は式(1)におけるのと同じ意味を表す。又、Y2及びY3それぞれ独立に、ヒドロキシ基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1から6の置換していてもよいアルキルアミノ基(置換基としてはヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、ヒドロキシアルコキシ基、スルホ基又はカルボキシル基から選ばれる)、置換していてもよいアリルアミノ基(置換基としては炭素数1から4のアルキル基若しくはアルコキシ基、スルホ基又はカルボキシル基から選ばれる)、炭素数1〜6の置換していてもよいアルキルチオ基(置換基としてはヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、ヒドロキシアルコキシ基、スルホ基、カルボキシル基又はハロゲンから選ばれる)を表す。)で示される水溶性フェナジン化合物である(1)に記載のインクジェット記録用インク組成物、
(3)水溶性フェナジン化合物が遊離酸の形で式(3)で
【0011】
【化8】
【0012】
(式(3)中、X1、X2、R1、R2、Y1、Y2及びY3は式(2)におけるのと同じ意味を表す。)
(4)水溶性フェナジン化合物が遊離酸の形で式(4)
【0013】
【化9】
【0014】
(式(4)中、Y2及びY3は−Cl、−NHC2H4COOH、又は−OCH3を表す。)
で示される水溶性フェナジン化合物である(3)に記載のインクジェット記録用インク組成物、
(5)水溶性フェナジン化合物が遊離酸の形で式(5)
【0015】
【化10】
【0016】
(式(5)中、Y2及びY3は−Cl、−NHC2H4COOH、又は−OCH3を表す。)
で示される水溶性フェナジン化合物である(3)に記載のインクジェット記録用インク組成物、
(6)式(1)乃至式(3)で示される水溶性フェナジン化合物の含有量が0.1〜20重量%である(1)乃至(5)のいずれか一項に記載のインクジェット記録用インク組成物、
(7)インク滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材に記録を行うインクジェット記録方法において、インク組成物として(1)乃至(6)のいずれか一項に記載のインクジェット記録用インク組成物を使用することを特徴とするインクジェット記録方法、
(8)被記録材が情報伝達用シートである(7)に記載のインクジェット記録方法、
(9)情報伝達用シートが表面処理されたシートである(8)に記載のインクジェット記録方法、
(10)(7)又は(9)に記載のインクジェット記録方法により着色された着色体、
(11)(1)乃至(6)のいずれか一項に記載のインクジェット記録用インク組成物を含む容器が装填されたインクジェットプリンタ、
に関する。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明を詳細に説明する。尚、本発明において断りが無いかぎりスルホン酸基、カルボン酸基は遊離酸の形で表す。
【0018】
本発明のインクジェット記録用インク組成物は下記式(1)で示される水溶性フェナジン化合物を必須の成分として含有する。
【0019】
【化11】
【0020】
(式(1)中、X1及びX2はそれぞれ独立に水素原子、炭素数が1〜4個のアルキル基若しくはアルコキシ基、塩素原子、カルボキシル基又はスルホ基を表す。Y1は水素原子又は炭素原子1〜4個のアルキル基若しくはアルコキシ基を表す。R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、炭素数が1〜4個のアルキル基又は置換していてもよいアルキル基(置換基としてはシアノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、スルホ基で置換していてもよいフェニル基又はフェニルオキシ基から選ばれる)を表す。NHA基において、Aは水素原子、β―スルファトエチルスルホニル基、置換していてもよいピリミジルカルボニル基、ピリダジンカルボニル基、キノキサリンカルボニル基、ピリミジニル基若しくはトリアジニル基(これらの基において、置換基としては水酸基、炭素数1〜4個のアルコキシ基、炭素原子1〜6個の置換していてもよいアルキルアミノ基(置換基としてはヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、ヒドロキシアルコキシ基、スルホ基、カルボキシル基から選ばれる)から選ばれる基を有する)、置換していてもよいアリルアミノ基(置換基としては炭素数1乃至4のアルキル基若しくはアルコキシ基、スルホ基又はカルボキシル基から選ばれる)、炭素原子1〜6個の置換していてもよいアルキルチオ基(置換基としてはヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、ヒドロキシアルコキシ基、スルホ基又はカルボキシル基から選ばれる)、又は反応性ハロゲン基1個又は2個を有するトリアジニル若しくはピリジニル基を表す。
【0021】
式(1)で示される水溶性フェナジン化合物のうち式(2)で示される水溶性フェナジン化合物が好ましい例として挙げられる。更に式(2)で示される水溶性フェナジン化合物のうち、式(3)で示される水溶性フェナジン化合物がより好ましい例として挙げられる。
【0022】
【化12】
【0023】
【化13】
【0024】
(式(2)中、X1、X2、R1、R2及びY1は式(1)におけるのと同じ意味を表す。又、Y2及びY3それぞれ独立に、ヒドロキシ基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1から6の置換していてもよいアルキルアミノ基(置換基としてはヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、ヒドロキシアルコキシ基、スルホ基又はカルボキシル基から選ばれる)、置換していてもよいアリルアミノ基(置換基としては炭素数1から4のアルキル基又はアルコキシ基、スルホ基又はカルボキシル基から選ばれる)、炭素数1〜6の置換していてもよいアルキルチオ基(置換基としてはヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、ヒドロキシアルコキシ基、スルホ基、カルボキシル基又はハロゲンから選ばれる)を表す。
又、式(3)中、X1、X2、R1、R2、Y1、Y2及びY3は式(2)におけるのと同じ意味を表す。式(3)におけるY2、Y3の具体的基を例示すると次ぎのものが挙げられる。
【0025】
−Cl、 −NHC2H4COOH、 −NHC5H10COOH、 −NHC2H4SO3H、 −SC2H4SO3H、 −NHC2H4OC2H4OH、 −NHC2H4OH、 −OCH3、
【0026】
【化14】
【0027】
式(3)で示される水溶性フェナジン化合物のうち、更に好ましい化合物として、遊離酸の形で式(4)又は式(5)で示される化合物が挙げられる。
【0028】
【化15】
【0029】
【化16】
【0030】
(式(4)及び式(5)において、Y2及びY3は−Cl、−NHC2H4COOH、又は−OCH3を表す。)
【0031】
式(1)で示されるの水溶性フェナジン化合物の具体的化合物例としては、下記の化合物No.1〜No.9が挙げられる。
【0032】
【化17】
【0033】
【化18】
【0034】
【化19】
【0035】
式(1)で表される水溶性フェナジン化合物は、例えば特許文献4に記載の製造方法に準じて製造する事ができる。
【0036】
式(1)の水溶性フェナジン化合物は、遊離酸の形で、あるいは、その塩の形態で存在する。塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アルキルアミン塩、アルカノールアミン塩又はアンモニウム塩が挙げられる。好ましくはナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、モノイソプロパノールアミン塩、ジイソプロパノールアミン塩、トリイソプロパノールアミン塩等のアルカノールアミン塩、アンモニウム塩が挙げられる。また塩の調製法としては、例えば目的化合物(色素)を含む反応液、目的化合物(色素)のあるいはケーキ、乾燥品を水に溶解したものに食塩を加えて、塩析、濾過することによってナトリウム塩をウエットケーキとして得ることができる。そのウエットケーキを再び水に溶解後、塩酸を加えてpHを1〜2に調整して得られる結晶を濾過すれば、遊離酸(あるいは一部はナトリウム塩のまま)の形で得ることができる。更に、その遊離酸のウエットケーキを水と共に攪拌しながら、例えば、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア水を添加してアルカリ性にすれば、各々リチウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が得られる。これらの塩のうち、好ましいものはリチウム、ナトリウムの塩である。
【0037】
本発明のインクジェット記録用インク組成物をインクジェットプリンタ用のインクとして使用する場合、フェナジン化合物(色素)としては金属陽イオンの塩化物、硫酸塩等の無機物の含有量が少ないものを用いるのが好ましく、その含有量の目安は例えば化合物(色素)中1重量%以下程度である。無機物の少ないフェナジン化合物(色素)を製造するには、例えば逆浸透膜による方法等の通常の方法で、脱塩処理すればよい。
【0038】
式(1)で表される水溶性フェナジン化合物の反応液は、記録用インク組成物の製造に直接使用する事が出来る。しかし、反応液から単離し、乾燥、例えばスプレー乾燥させ、次にインク組成物の調製に供することも出来る。
【0039】
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、前記水溶性フェナジン化合物を水及び/又は水性溶媒(水溶性有機溶剤含有水)に溶解したものであるが、本発明のインク組成物には、該フェナジン化合物の他水溶性有機溶剤、インク調製剤等を含有しても良い。
【0040】
本発明で使用しうる水溶性有機溶剤の例としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等のC1〜C4アルカノール、N,N−ジメチルホルムアミド又はN,N−ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のラクタム、1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オン又は1,3−ジメチルヘキサヒドロピリミド−2−オン等の環式尿素類、アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オン等のケトン又はケトアルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル、エチレングリコール、1,2−又は1,3−プロピレングリコール、1,2−又は1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、チオジグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の(C2〜C6)アルキレン単位を有するモノマー、オリゴマー又はポリアルキレングリコール又はチオグリコール、グリセリン、ヘキサン−1.2.6−トリオール等のポリオール(トリオール)、エチレングリコールモノメチルエーテル又はエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル又はジエチレングリコールモノエチルエーテル又はトリエチレングリコールモノメチルエーテル又はトリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールの(C1〜C4)アルキルエーテル、γーブチロラクトン又はジメチルスルホキシド等があげられる。
【0041】
これらのうち好ましいものとしては2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、モノ、ジ又はトリエチレングリコール、ジプロピレングリコールが挙げられ、より好ましいものは、2−ピロリドン、N−メチルピロリジン−2−オン、ジエチレングリコールである。これらの水溶性有機溶剤は、単独もしくは混合して用いられる。
【0042】
インク調製剤としては、例えば防腐防黴剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、水溶性紫外線吸収剤、水溶性高分子化合物、染料溶解剤、界面活性剤などが挙げられる。
防腐防黴剤としては、例えば、有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリルスルホン系、ヨードプロパギル系、N−ハロアルキルチオ系、ニトチリル系、ピリジン系、8−オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、無機塩系等の化合物が挙げられる。有機ハロゲン系化合物としては、例えばペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられ、ピリジンオキシド系化合物としては、例えば2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウムが挙げられ、無機塩系化合物としては、例えば無水酢酸ソーダが挙げられ、イソチアゾリン系化合物としては、例えば1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンマグネシウムクロライド、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド等が挙げられる。その他の防腐防黴剤としてソルビン酸ソーダ、安息香酸ナトリウム、等があげられる。
【0043】
pH調整剤としては、調合されるインクに悪影響を及ぼさずに、インクのpHを8.0〜11.0の範囲に制御できるものであれば任意の物質を使用することができる。例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、水酸化アンモニウム、あるいは炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩などが挙げられる。
キレート試薬としては、例えばエチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウムなどがあげられる。
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライトなどがあげられる。
水溶性紫外線吸収剤としては、例えばスルホン化されたベンゾフェノン又はスルホン化されたベンゾトリアゾール等があげられる。水溶性高分子化合物としては、例えばポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアミン、ポリイミン等があげられる。
染料溶解剤としては、例えば尿素、ε−カプロラクタム、エチレンカーボネート等があげられる。
【0044】
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤が、それぞれ目的に応じて使用出来る。使用しうるアニオン界面活性剤の例としてはアルキルスリホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸及びその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリルスルホン塩酸、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキルシルスルホ琥珀酸ジオクチルスルホ琥珀酸塩などが挙げられる。使用しうるカチオン界面活性剤の例としては2−ビニルピリジン誘導体、ポリ4−ビニルピリジン誘導体などがある。使用しうる両性界面活性剤の例としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシンその他イミダゾリン誘導体などがある。使用しうるノニオン界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアリルキルアルキルエーテルなどのエーテル系、ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレートなどのエステル系、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オールなどのアセチレングリコール系(例えば、日信化学社製サーフィノール104、82、465、オルフィンSTGなど)、などが挙げられる。
これらのインク調製剤は、1種類又は多種類を必要により選択して使用される。
【0045】
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、式(1)の水溶性フェナジン化合物を水又は上記水性溶媒(水溶性有機溶剤含有水)に、上記インク調製剤などと共に溶解させることによって製造できる。
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、式(1)の水溶性フェナジン化合物を通常0.1〜20重量%、より好ましくは1〜15重量%、更に好ましくは2〜10重量%含有する。必要により水溶性有機溶剤0〜30重量%、インク調製剤0〜5重量%をそれぞれ含有しても良く、最終的に水を加え濃度が調整される。
【0046】
本発明のインクジェット記録用インク組成物を調製するに当たり、前記各薬剤を溶解させる順序に特に制限はない。式(1)の水溶性フェナジン化合物を水及び/又は上記水性溶媒(水溶性有機溶剤含有水)に溶解させ、次いでインク調製剤を添加して溶解させてもよいし、式(1)の水溶性フェナジン化合物を水に溶解させたのち、水性溶媒、インク調製剤を添加し、溶解させてもよい。インク組成物を調製するにあたり、用いる水はイオン交換水又は蒸留水など不純物が少ない精製水を使用するのが好ましい。インク組成物の調製後、更に、必要に応じメンブランフィルターなどを用いて精密濾過を行って夾雑物を除いてもよく、インクジェットプリンタ用のインク組成物においては、一般には、精密濾過を行うことが好ましい。精密濾過を行うフィルターの孔径は通常1ミクロン〜0.1ミクロン、好ましくは、0.8ミクロン〜0.2ミクロンである。
尚、本発明のブルー色のインクジェット記録用インク組成物にはさらに公知公用のイエロー、マゼンタ等の染料を配合することによって、ブルー色調を好みのものにすることができることは言うまでもない。
【0047】
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、天然及び合成繊維材料又は混紡品の印刷にも適しているが、最も好ましい用途はインクジェット印捺法における被記録媒体上への印刷である。この場合、水、日光、オゾン及び摩擦に対する良好な耐性を有する高品質のブルー印捺物が得られる。
【0048】
本発明の着色体は前記の本発明のインクジェット記録用インク組成物で着色されたものである。着色されるべきものとしては、特に制限無く、例えば紙、繊維や布(セルロース、ナイロン、羊毛等)、皮革、カラーフィルター用基材等があげられるがこれらに限定されない。
【0049】
本発明のインクジェット記録方法を適用しうる好ましい被記録材としては紙、フィルム等の情報伝達用シートが挙げられる。情報伝達用シートについては、表面処理されたもの、具体的にはこれらの基材にインク受容層を設けたものが好ましい。インク受容層は、例えば上記基材にカチオン系ポリマーを含浸あるいは塗工することにより、また多孔質シリカ、アルミナゾルや特殊セラミックス等インク中の色素を吸収し得る無機微粒子をポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーと共に上記基材表面に塗工することにより設けられる。このようなインク受容層を設けたものは通常インクジェット専用紙(フィルム)あるいは光沢紙(フィルム)と呼ばれ、例えばピクトリコ(旭硝子(株)製)、カラーBJペーパー、カラーBJフォトフィルムシート、プロフェッショナルフォトペーパー(いずれもキャノン(株)製)、カラーイメージジェット用紙(シャープ(株)製)、PM写真用紙、スーパーファイン専用光沢フィルム(いずれもエプソン(株)製)、ピクタファイン(日立マクセル(株)製)等として市販されている。なお、普通紙にも利用できることはもちろんである。
【0050】
本発明のインクジェット記録方法では、本発明のインクジェット記録用インク組成物はイエローインク組成物、マゼンタインク組成物、必要に応じ、ブラックインク組成物等と共に供されうる。
各色のインク組成物は、それぞれの容器に注入され、この容器を、本発明のインクジェット記録用インク組成物を含有する容器と同様に、インクジェットプリンタの所定位置にセット(装填)されて、使用される。
【0051】
本発明のインクジェット記録方法で、被記録材に記録を行うには、例えば本発明のインク組成物を含有する容器をインクジェットプリンタの所定位置にセットし、通常の方法で、被記録材に記録すればよい。インクジェットプリンタとしては、例えば機械的振動を利用したピエゾ方式のプリンタや加熱により生ずる泡を利用したバブルジェット(登録商標)方式のプリンタ等があげられる。
【0052】
本発明の水性インク組成物は、鮮明なブルー色であり、特にインクジェット光沢紙において高い鮮明な色相を有する。また、人に対する安全性も高い。他のイエロー、マゼンタのインクと共に用いる事で、通常のシアンインクとマゼンタインクの混色による青色では出し得ない広い可視領域の色調を色出しする事ができ、優れた記録物を得ることができる。また、記録画像の堅牢度が高い。
【0053】
本発明のインクジェット記録用インク組成物は貯蔵中に沈澱、分離することがない。また、本発明のインク組成物をインクジェット印捺において使用した場合、噴射器(インクヘッド)を閉塞することもない。本発明のインクジェット記録用インク組成物は連続式インクジェットプリンタによる比較的長い時間一定の再循環下又はオンデマンド式インクジェットプリンタによる断続的な使用においても、物理的性質の変化を起こさない。
【0054】
【実施例】
以下に本発明を更に実施例により、より具体的に説明する。尚、本文中「部」及び「%」とあるのは、特別の記載のない限り重量基準である。
【0055】
合成例1 (化合物No.2の合成)
特許文献4の実施例1に準じて合成した化合物(式(3)において、R1=C2H5、R2=m−スルホベンジル、X1=OCH3、X2=SO3H、Y1=H、Y2=OCH3、Y3=Clである化合物に相当)に水溶媒中、1.25当量のβ−アラニンを、液性をpH8−8.5に10%ソーダ灰で調整しながら80−85℃で2時間反応させる。液性をpH5に調整し塩化ナトリウムで25重量/容積%塩析処理をする。室温迄放冷し析出した結晶を濾取し、メタノール−イソプロピルアルコールの混合溶媒で脱塩処理を行う。乾燥することによって化合物No.2(水中での最大吸収波長が579.0nm)が得られる。この化合物No.2の無機物の含有量は1重量%以下である。
【0056】
実施例1
(A)インクの調製
上記合成例1で得られた化合物を用いて表1に示した組成の液体を調製し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過する事により各インクジェット記録用水性インク組成物を得た。また水はイオン交換水を使用した。尚、インク組成物のpHがpH=7〜9、総量100部になるように水、水酸化ナトリウムを加えた。又、化合物No.1(水中での最大吸収波長が580.5nm)を用いた試験を実施例1とする。合成例1で得られた化合物を用いた試験を実施例2とする。
【0057】
表1(インク組成物)
上記合成例で得られた化合物 3.8部
水 77.0部
水酸化ナトリウム 0.1部
グリセリン 5.0部
尿素 5.0部
N−メチル−2−ピロリドン 4.0部
IPA 3.0部
ブチルカルビトール 2.0部
サーフィノール104PG50(界面活性剤、日信化学社製) 0.1部
計 100.0部
【0058】
(B)インクジェットプリント
インクジェットプリンタ(商品名 キヤノン社製 BJ−S630)を用いて、普通紙(プリンタペーパーA4 TLB5A4S(キャノン社製))にインクジェット記録を行った。
【0059】
比較例1、2
比較対象として実施例で得られた化合物の代わりにC.I.アシッドブルー83を使用する以外は実施例1と同様にしてインクを調製、インクジェット記録を行い、記録画像の評価を行った。又、同様に色素C.I.アシッドブルー90を使用した場合を比較例2とする。
【0060】
(C)インクの保存安定性
実施例1、実施例2及び比較例1、比較例2で得られた各インク組成物を室温下で1日放置し、1日放置後のインクの溶液状態を評価した。溶液状態の判定は視感で、結晶の析出或いはゲル化することがない場合を○とし、ゲル化する場合を×とする。結果を表2に示す。ゲル化の激しい比較例2についての以後の比較試験は実施していない。
【0061】
【0062】
実施例1及び実施例2のインク組成物はインクの安定性が良好であるが、比較例1及び比較例2のインク組成物は室温下で1日放置すると、ゲル化を起こし、インクの保存安定性に極めて劣ることが判った。
【0063】
(D)記録画像の評価
1.色相評価
1−1.光沢紙での色相評価
記録画像の色相、鮮明性:記録紙を測色システム(GRETAG SPM50:GRETAG社製)を用いて測色し、L*、a*、b*値を算出した。鮮明性は各記録紙のL*値(明度)を略合わせた時の色度(a*、b*)からC* =((a*)2+(b* )2)1/2を算出し、評価した。
実施例1、実施例2、比較例1の普通紙での色相の結果を表3に示す。
【0064】
【0065】
表3より、実施例1、2の鮮明性は、普通紙において、比較例1よりはるかに優れた結果を与えることがわかる。
【0066】
(D)記録画像のキセノン耐光性試験
エプソン社製光沢紙にプリントした試験片をキセノンウェザオメータCi4000(ATLAS社製)を用い、0.36W/平方メートル照度で50時間照射し、試験前後の濃度×100を測定した。結果は表4に示す。
(E)記録画像のオゾン耐性試験
エプソン社製光沢紙にプリントした試験片を、オゾンウェザーメーター(スガ試験機社製)を用い、温度40℃、湿度55%RH、オゾン濃度3ppmで1時間放置し、試験前後の色差(ΔE)を測定した。結果は表4に示す。
【0067】
【0068】
表4より、実施例1、2は、耐光性、耐オゾン性において、比較例1より非常に優れていることがわかる。
表2〜4より、本発明のインクジェット記録用インク組成物は、インクの安定性が良好であり、非常に鮮明性の高い色相であることがわかる。また、耐光堅牢度、耐オゾン堅牢度が強い、非常に優れたブルー色インクであることがわかる。
【0069】
【発明の効果】
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、インク組成物製造過程でのメンブランフィルターに対するろ過性が良好という特徴を有する。又、本発明のインク組成物は長期間保存後の結晶析出、物性変化、色変化等もなく、貯蔵安定性が良好である。そして本発明のインク組成物をインクジェット記録用のブルーインクとして使用した印刷物はメディア(紙、フィルム等)を選択することなく理想的なブルーの色相であり、従来インクジェット記録用として用いられているシアンインクとマゼンタインクにより色だしされたブルー色よりも、鮮明性の高いブルー(色)を再現させることが可能であり、カラー画像の色相を紙の上に忠実に再現させることも可能である。更に本発明のインク組成物は、シアンとマゼンタ等と共に用いることで耐光性、耐オゾン性などに優れたインクジェット記録を可能にする。
Claims (11)
- 遊離酸の形で式(1)
- 水溶性フェナジン化合物が遊離酸の形で式(2)
- 式(1)乃至式(3)で示される水溶性フェナジン化合物の含有量が0.1〜20重量%である請求項1乃至5のいずれか一項に記載のインクジェット記録用インク組成物
- インク滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材に記録を行うインクジェット記録方法において、インク組成物として請求項1乃至6のいずれか一項に記載のインクジェット記録用インク組成物を使用することを特徴とするインクジェット記録方法
- 被記録材が情報伝達用シートである請求項7に記載のインクジェット記録方法
- 情報伝達用シートが表面処理されたシートである請求項8に記載のインクジェット記録方法
- 請求項7又は請求項9に記載のインクジェット記録方法により着色された着色体
- 請求項1乃至4のいずれか一項に記載のインクジェット記録用インク組成物を含む容器が装填されたインクジェットプリンタ
Priority Applications (1)
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JP2003043463A JP2004250606A (ja) | 2003-02-21 | 2003-02-21 | インクジェット記録用インク組成物及びこれを用いる記録方法 |
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JP2003043463A JP2004250606A (ja) | 2003-02-21 | 2003-02-21 | インクジェット記録用インク組成物及びこれを用いる記録方法 |
Publications (1)
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JP2003043463A Pending JP2004250606A (ja) | 2003-02-21 | 2003-02-21 | インクジェット記録用インク組成物及びこれを用いる記録方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2011239428A (ja) * | 2011-06-20 | 2011-11-24 | Canon Inc | 画像処理装置及びそのデータ変換方法 |
-
2003
- 2003-02-21 JP JP2003043463A patent/JP2004250606A/ja active Pending
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