JP2004244440A - 耐熱性スチレン系樹脂発泡成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】100℃で168時間加熱したとき、下記式で示される寸法変化率が±0.5%以内である耐熱性スチレン系樹脂発泡成形体。
寸法変化率(%)=(L2−L1)×100/L1
(式中、L1は、23℃、相対湿度50%で24時間放置された成形体の寸法を意味し、L2は該成形体を100℃で168時間加熱した後の寸法を意味し、寸法測定をJIS−K6767により行う)
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性スチレン系樹脂発泡成形体に関する。更に詳しくは、本発明は、高温の雰囲気下でも長期にわたって寸法が非常に安定し、融着性に優れ、更に外観が美麗な耐熱性スチレン系樹脂発泡成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
発泡剤を含んだ発泡性スチレン系樹脂粒子を、蒸気等により軟化点以上に加熱すると、独立気泡を有する粒子状の予備発泡粒子が得られる。この予備発泡粒子を小さな孔やスリットをもつ閉鎖型金型の中に充填してから更に蒸気等で内部を加熱する型内成形によって、これらの予備発泡粒子が膨張し粒子間の隙間を埋めながら互いに融着して目的の発泡成形体となる。このようにして得られたスチレン系発泡成形体は、比較的安価・軽量であり、良好な緩衝性、断熱性、形状の自由性、軽量性、耐水性等の特性に優れるため、食品容器、緩衝材、断熱材として多く用いられる。
【0003】
更に、ポリスチレン系樹脂発泡成形体には高温の雰囲気下でも長期にわたって寸法が安定することを求められる分野も少なくない。特に自動車部材分野においては発泡成形体の耐熱性が非常に求められる。例えば、自動車車内の高温雰囲気下において、従来の発泡成形体は、その耐熱性が低いために、三次発泡と呼ばれる発泡成形体の表面に隆起した亀甲模様が現れることがある。この模様は、複合材として貼り合わせるフィルム、シート等の表面に浮き出たり、成形体の変形及び収縮が発生するために、成形体が非常に見栄えの悪いものになってしまうのである。
【0004】
このため、発泡成形体の耐熱性を良くすることは商品価値を決める上で重要なファクターとなる。耐熱性を良くするためには、樹脂基材の耐熱性を上げる必要があり、具体的には、高融点、高ガラス転移温度といった樹脂の発泡成形体を使用する方法がある(例えば、特開平5−262909号公報;特許文献1、特開平11−35729号公報;特許文献2、特開平5−310986号公報;特許文献3)。しかしその結果、必要以上の可塑剤を使用する、あるいは、含浸時に添加するガス量を多くするといった方法を用いないと、低密度の成形体を得ることが困難である。しかも、このような方法により得られた発泡成形体は、逆に耐熱性が低下する、あるいは発泡ばらつきのために、部位による密度ばらつきが発生し、充分な成形品強度を得ることが困難である。そのため、これらの因子をバランスよくさせることは非常に困難であり、これら問題を解決する発泡成形体がいまだ得られていないのが現状である。
【0005】
更に、自動車用部材では、特に最近では車内における揮発性有機化合物の含有量を極めて少なくすることが強く求められるようになってきた(例えば、特開平11−106548号公報;特許文献4)。揮発性有機化合物としては、スチレン単量体、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族有機化合物、炭素数16(常圧沸点287℃)までの脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素、酢酸メチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル等が対象に挙げられている。そして、これらの有機化合物はいずれも発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡能力や融着性を高める効果を有している。そのため、これらの含有量を低下させると発泡性が悪くなって低密度化が困難になるだけでなく、成形品の融着性も悪くなり、機械的強度も低下する問題がある。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−262909号公報
【特許文献2】
特開平11−35729号公報
【特許文献3】
特開平5−310986号公報
【特許文献4】
特開平11−106548号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このように、高温の雰囲気下で長期にわたって寸法が非常に安定し、しかも外観の美麗な発泡体を得ることができる発泡成形体はいまだ得られていない。しかも、揮発性有機化合物の含有量を極めて少なくすることが望まれている現状では、可塑剤の多量添加等の安易な方法はこれら問題を解決する手段としてはあまりにも無理があるのは明白である。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かくして本発明によれば、100℃で168時間加熱したとき、下記式で示される寸法変化率が±0.5%以内である耐熱性スチレン系樹脂発泡成形体が提供される。
寸法変化率(%)=(L2−L1)×100/L1
(式中、L1は、23℃、相対湿度50%で24時間放置された成形体の寸法を意味し、L2は該成形体を100℃で168時間加熱した後の寸法を意味し、寸法測定をJIS−K6767により行う)
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明によれば、100℃で168時間加熱しても寸法変化率が±0.5%以内の耐熱性スチレン系樹脂発泡成形体が得られる。本発明において、寸法変化率を100℃で168時間の条件下で測定した理由は、以下の理由による。
【0010】
すなわち、例えば、自動車部材分野においては、発泡成形体の耐熱性が非常に求められる。具体的には、自動車車内は局所的に100℃付近まで上昇する個所がある。その部分に発泡成形体等を使用する場合、通常のポリスチレン発泡成形体では、80℃程度までは変形及び収縮は小さく使用に耐えうるが、それ以上の温度になると、変形及び収縮が起こることとなる。この変形及び収縮が大きいと部材間のがたつきや、こすれ等がおこり外観に悪影響を与えたり、使用自体できない場合がある。そのため、100℃の高温の雰囲気にさらされる発泡成形体としては、100℃における温度において寸法変化率の少ない耐熱性をもつものが求められる。また、ある自動車メーカーでは、使用する部材に100℃で168時間放置した場合の寸法安定性の試験を行っており、±0.5%以内の場合合格であると規定されている。そのため本発明では、100℃で168時間加熱する条件で寸法変化率を測定している。なお、詳細な寸法変化率の測定法は、実施例の欄に記載している。
【0011】
以下、上記寸法変化率を実現するに好適な耐熱性スチレン系樹脂発泡成形体の構成を記載する。
本発明の耐熱性スチレン系樹脂発泡成形体は、通常、発泡性スチレン系混合樹脂粒子(以下、「発泡性粒子」という)を予備発泡させ、得られた予備発泡粒子を型内発泡のような方法で成形することにより得ることができる。
【0012】
発泡性粒子を構成する樹脂は、混合樹脂を基材樹脂として用いることができる。上記寸法変化率を満たす観点からは、一方がスチレン系樹脂であり、他方が耐熱性の樹脂であることが好ましい。他方の樹脂としては、フェニレンエーテル系樹脂、アクリロニトリル−スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、又はこれら樹脂を構成する単量体と無水マレイン酸及びマレイミド等との共重合樹脂等が挙げられるが、フェニレンエーテル系樹脂が好ましい。
【0013】
スチレン系樹脂粒子としては、一般に知られているスチレン系樹脂の粒状物を使用することができる。具体的には、このような樹脂粒子としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ジビニルベンゼン(2官能性単量体)等のスチレン系単量体の単独重合粒子又はこれら単量体を2種以上組み合わせた共重合体粒子、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のアクリル酸及びメタクリル酸のエステル、あるいはアクリロニトリル、ジメチルフマレート、エチルフマレート、アルキレングリコールジメタクリレート(2官能性単量体)等のスチレン系単量体以外の単量体とスチレン系単量体との共重合体粒子等が挙げられる。
【0014】
スチレン系樹脂粒子の分子量は、GPC法による重量平均分子量で15万〜40万であるのが好ましい。15万を下回ると、発泡成形体の強度が低下する場合があり、40万を上回ると、十分な発泡性を得ることが難しいので好ましくない。より好ましい分子量は20万〜35万である。
【0015】
更に、他方のフェニレンエーテル系樹脂は、一般式
【0016】
【化1】
【0017】
で示される鎖状高分子である。ここで、R1、R2は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4個のアルキル基又はハロゲン原子であることが好ましい。nは重合度を表している。
【0018】
フェニレンエーテル系樹脂の例としては、ポリ(2,6−ジメチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2,6−ジエチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2,6−ジクロルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−クロル−6−メチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−イソプロピルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2,6−ジ−n−プロピルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−ブロム−6−メチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−クロル−6−ブロムフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−クロル−6−エチルフェニレン−1,4−エーテル)等が挙げられる。
【0019】
また、フェニレンエーテル系樹脂にスチレン系化合物、例えばスチレン、α−メチルスチレン等をグラフト共重合させたものであってもよい。また、グラフト共重合時に、共重合可能なビニル化合物、例えばメチルメタアクリレート、アクリロニトリル、ブタジエンを加えて、それらを共重合させてもよい。
重合度nは、10〜5000であればよく、5000を越えると、均一な耐熱性発泡体が得られ難く、10未満では、目的の耐熱性を有する発泡体が得られ難い。より好ましい重合度nは300〜4000である。
【0020】
スチレン系樹脂とフェニレンエーテル系樹脂の組合せの好適な例は、スチレン系樹脂としてポリスチレンを選択し、フェニレンエーテル系樹脂としてポリ(2,6−ジメチルフェニレン−1,4−エーテル)を選択した組合せである。
【0021】
スチレン系混合樹脂は、上述のスチレン系樹脂が95〜50重量%であって、フェニレンエーテル系樹脂が5〜50重量%を占めるものであることが好ましい。スチレン系樹脂が95重量%を超える場合、耐熱性が不十分となり、寸法変化率を所定の範囲内にすることができない場合があるので好ましくない。スチレン系樹脂が50重量%未満の場合、十分な発泡性を得ることが難しいので好ましくない。このうちでもより好ましいのは、スチレン系樹脂が90〜60重量%であって、フェニレンエーテル系樹脂が10〜40重量%を占めるものである。
【0022】
更に、これらスチレン系混合樹脂粒子中のスチレン成分が50重量%を超える範囲内でスチレン系樹脂及びフェニレンエーテル系樹脂以外の樹脂と押出しブレンドして得られた樹脂粒子であってもよい。スチレン系樹脂及びフェニレンエーテル系樹脂以外の樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ゴム成分等が挙げられる。
発泡性粒子形成用の樹脂粒子の粒径は、用途に応じて適宜選択でき、例えば、0.2〜5mmの粒径のものを使用することができる。
【0023】
上記樹脂粒子は次のように形成することが好ましい。まず、スチレン系樹脂粉末又は粒子と、フェニレンエーテル系樹脂粉末又は粒子とを上記の割合に混合する。次いで、この混合物を押出機に入れて加熱するとともに混合してのち、これを紐状に押し出し、これを短い粒状に切断することで樹脂粒子を得ることができる。このとき、上記混合物中に種々の添加剤又は助剤を混合することができる。添加剤又は助剤としては、パラフィンワックス、ステアリン酸亜鉛等の滑剤、タルク等の気泡核形成剤、着色剤、帯電防止剤等が挙げられる。また、前記添加剤又は助剤は、樹脂粒子を形成した後に、粒子の表面に被覆するようにしてもよい。
【0024】
また、自動車部材では、特に最近では車内における揮発性有機化合物の含有量を極めて少なくすることが強く求められるようになってきており、その含有量をできるだけ小さくすることが望まれている。この観点から、樹脂粒子は揮発性有機化合物に含まれる残留スチレン系単量体の量ができるだけ少ないことが好ましく、樹脂粒子中、0〜1000ppmであることが特に好ましい。残留スチレン系単量体の含有量が1000ppmを越えた樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡ならびに成形を行うと、得られた成形品中の残留スチレン系単量体を含む揮発性有機化合物の含有量が多くなる恐れがある。加えて、残留スチレン系単量体の含有量が多いと、発泡成形体の表面に融けが発生して外観が著しく劣ったものが得られやすく、寸法変化率も大きくなりやすいので好ましくない。
【0025】
次に、上記の樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子を得ることができる。発泡剤としては、無機ガス及び有機ガスのいずれも使用することができる。耐熱性スチレン系樹脂発泡成形体中の揮発性有機化合物量を減らす観点から、無機ガスを使用することが好ましい。ただし、有機ガスを使用した場合で、発泡成形体を40〜60℃で長時間熱処理することで有機ガスを逸散させることにより、揮発性有機化合物量を減らすことが可能である。
【0026】
より好ましい無機ガスは、炭酸ガスである。なお、発泡剤としての炭酸ガスは、炭酸ガス100%でもよいが、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の発泡剤を加えてもよい。他の発泡剤としては、空気、窒素等の無機ガス、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素、フッ化炭化水素等の有機ガスが挙げられる。フッ化炭化水素としては、オゾン破壊係数がゼロであるジフルオロエタン、テトラフルオロエタン等を使用することが好ましい。ここで、有機ガスは、発泡剤の全体量の20重量%を超えない範囲で使用することが好ましい。以下では、発泡剤として炭酸ガスを使用する場合を例として説明するが、他の発泡剤に置換可能である。
【0027】
発泡性樹脂粒子中の炭酸ガスの含有割合は、1〜15重量%が好ましい。1重量%未満の場合は、未発泡粒子が発生する場合があるので好ましくなく、15重量%を超える量は不必要である。より好ましい含有割合は、3〜10重量%である。
【0028】
樹脂粒子中に炭酸ガスを含浸させるには、例えば、耐圧密閉容器に樹脂粒子を入れた後、炭酸ガスを圧入して、樹脂粒子を加圧された炭酸ガスと接触させることによって行うことができる。含浸温度は、樹脂粒子どうしが互いに合着して塊状化しない温度まで高くしてもよいが、通常0〜40℃である。
樹脂粒子に炭酸ガスを含浸させるときの圧力は、10kg/cm2G以上であることが好ましく、より好ましくは15〜40kg/cm2Gである。含浸時間は、樹脂粒子が前記の炭酸ガス含有量となるように適宜調整することができ、1〜20時間が好ましく、更に好ましくは2〜8時間である。
【0029】
樹脂粒子に炭酸ガスを含浸させるに際し、樹脂粒子の表面には各種の表面処理剤を塗布しておくことが好ましい。そのような表面処理剤としては、例えば加熱発泡時の予備発泡粒子の結合を防止する結合防止剤、成形時の融着促進剤、帯電防止剤、展着剤等が挙げられる。
結合防止剤としては、例えばタルク、炭酸カルシウム、シリカ、ステアリン酸亜鉛、水酸化アルミニウム、エチレンビスステアリン酸アミド、第三リン酸カルシウム、ジメチルシリコン等が挙げられる。
融着促進剤としては、例えばステアリン酸、ステアリン酸トリグリセリド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸ソルビタンエステル、ポリエチレンワックス等が挙げられる。
【0030】
帯電防止剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ステアリン酸モノグリセリド等が挙げられる。
展着剤としては、ポリブテン、ポリエチレングリコール、シリコンオイル等が挙げられる。
また、他の添加剤として、樹脂粒子中には所望によりヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモシクロオクタン等の難燃剤、メタクリル酸エステル系共重合ポリマー、エチレンビスステアリン酸アミド、ポリエチレンワックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の気泡調整剤等を予め含有させておいてもよい。
上記結合防止剤、成形時の融着促進剤、帯電防止剤、展着剤及び他の添加剤は、単独もしくは2種以上を混合して用いることができる。
【0031】
更に、本発明の予備発泡粒子の密度は、0.015〜0.5g/cm3程度が好ましい。予備発泡粒子の粒径は、0.3〜10mm程度が好ましい。
【0032】
予備発泡粒子を得る好適な方法として、樹脂粒子に炭酸ガスを含浸させて発泡性樹脂粒子とし、次工程で、蒸気導入ラインと排気ラインを備えた予備発泡機内に、前記発泡性樹脂粒子を投入し、蒸気導入ラインから蒸気を0.5〜5.0kg/cm2Gの導入圧力で供給すると共に、排気ラインから蒸気を含む雰囲気ガスを排気し、かつその間、発泡機内圧力を蒸気の導入圧力より0.05〜1.0kg/cm2G低く維持しながら予備発泡させて予備発泡粒子を得る方法が挙げられる。
【0033】
ところで、従来の予備発泡粒子は、発泡機上部を開放し、下部から蒸気を導入する開放系又は、密閉した発泡機を使用して加圧蒸気を使用する密閉系のいずれかで製造されていた。そのため、開放系では、ガスが急激に逸散するため必要な倍率まで発泡させることが困難な場合があった。また、密閉系では、密閉された予備発泡機内へ加熱用の蒸気が導入できなくなることより、発泡機内で充分加熱できなくなり、高発泡の予備発泡粒子が得られ難い場合があった。これら方法に対して上記方法では、加熱に必要な蒸気を十分導入できるので、所望の発泡倍率の予備発泡粒子を得ることができる。
なお、上記方法において、炭酸ガスを含浸させる工程に次いで、直ちに予備発泡を行い、表面の炭酸ガスを逸散させるような加圧及び/又は加熱を経ない方が好ましい。
【0034】
また、上記方法は、蒸気が常に発泡機内に供給されるように、排気制御弁等で予備発泡機内の圧力が常に供給圧力を下回るように制御をする必要がある。例えば蒸気の導入圧力を1.2kg/cm2G、予備発泡機内の圧力を0.8kg/cm2Gに設定した場合、排気ラインから0.4kg/cm2G圧分の圧力を抜きながら圧力の制御を行うこととなる。具体的には、発泡機内圧力と排気制御弁とをリンクさせ、制御することにより圧力の調整することができる。そして、この圧力の調整により、予備発泡粒子を成形用金型によって発泡成形体を得るのに際して内部融着率が60%以上で成形品強度の高い成形体を得るのに良好な予備発泡粒子が得られる。
【0035】
導入圧力と発泡機内圧力との差が、0.05kg/cm2G未満であると低密度の予備発泡粒子が得られ難いばかりか、発泡成形体の外観、内部融着が60%未満と低いものになってしまい、成形品強度が弱くなり、商品価値の低いものになってしまう場合がある。また、1.0kg/cm2Gを超えると予備発泡時の結合が増加する場合があり好ましくない。より好ましい圧力差は、0.1〜0.5kg/cm2Gである。
【0036】
予備発泡機内の発泡性樹脂粒子は、通常110〜160℃程度に加熱されることが好ましく、より好ましい加熱温度は110〜130℃である。加熱温度が110℃を下回ると、嵩密度0.5g/cm3以下の予備発泡粒子は得られ難いので好ましくない。また、加熱温度が160℃を上回ると予備発泡粒子同士が合着する傾向が強くなるので好ましくない。
【0037】
なお、上記方法に使用できる予備発泡機の一例を図1に示す。図中、2は撹拌モーター、3は撹拌翼、4は邪魔棒、5は発泡槽上面検出器、6は発泡性粒子輸送器、7は発泡性粒子計量槽、8は発泡性粒子投入器、9は蒸気吹込制御弁、10は蒸気チャンバー、11は凝縮水排出弁、12は排気制御弁、13は予備発泡粒子排出口、14は予備発泡粒子一時受器、15は空気輸送設備、16は内圧検出・制御装置、17は蒸気吹込孔、18は蒸気導入圧力計、19は減圧弁、20は蒸気元圧力計を意味する。
【0038】
次に、予備発泡粒子を発泡成形することで耐熱性スチレン系樹脂発泡成形体(以下、「発泡成形体」ともいう)を得ることができる。本発明の発泡成形体は、高温の雰囲気下でも長期にわたって寸法が非常に安定し、融着性に優れ、更に美麗な外観を有している。また、揮発性有機化合物の含有量を1000ppm以下と、極めて少なくすることができる。この含有量は、発泡剤として炭酸ガスを使用すれば更に少なくすることができる。
【0039】
発泡成形法としては、特に限定されず、型内成形法のような公知の方法をいずれも使用することができる。例えば、予備発泡粒子を成形用金型に充填し、金型内へ蒸気を吹き込んで予備発泡粒子を加熱する。蒸気との接触によって予備発泡粒子が加熱されると、予備発泡粒子は膨張するが、成形用金型によって発泡できる空間が限定されているので、互いに密着すると共に融着一体化して所望の発泡成形体を得ることができる。
発泡成形体は、耐熱性が望まれる部材であればいかなる部材にも使用することができる。例えば、自動車部品、建築用資材等が挙げられる。
【0040】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づき更に詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されることはない。
まず、実施例及び比較例により得られた発泡成形体の評価方法を以下に示す。
【0041】
<揮発性有機化合物の含有量>
以下に示す三種類の測定法によって得られた値を合計して求めた。
(炭素数5以下の炭化水素の測定)
発泡成形体を150℃の熱分解炉に入れ、揮発した炭化水素をガスクロマトグラフィーにて測定した。
ガスクロマトグラフィー(GC):島津製作所社製 GC−14B
熱分解炉:島津製作所社製 PYR−1A
カラム:ポラパックQ 80/100(3mmφ×1.5m)
カラム温度:100℃
検出器(FID)温度:120℃
【0042】
(炭素数6以上の炭化水素であって、ガスクロマトグラムに現れるスチレンのピークまでの炭化水素の測定)
発泡成形体をジメチルホルムアミドに溶解し、内部標準液(シクロペンタノール)を加えてGCにより測定した。ただし、特定できないピークについてはトルエンの検出量に換算して定量した。
GC:島津製作所社製 GC−14A
カラム:PEG−20M PT25% 60/80(2.5m)
カラム温度:105℃
検出器(FID)温度:220℃
【0043】
(ガスクロマトグラムに現れるスチレンの次のピークから炭素数16(n−ヘキサデカン)までの炭化水素の測定)
発泡成形体をクロロホルムに溶解し、ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)にて測定した。ただし、試験片を溶解しない溶剤のみの空試験を行い、空試験の検出物質量を差し引いた。更に、特定できないピークについてはトルエンの検出量に換算して定量した。
GCMS:島津製作所社製 QP5000
カラム:J&W Scientific社製 DB−1(1μm×60m 0.25mmφ)
測定条件:カラム温度(60℃で1分保持した後、10℃/分で300℃まで昇温)
スプリット比:10
キャリヤガス:He(1ml/min)
インターフェイス温度:260℃
【0044】
<表面状態>
長さ400mm、幅300mm、厚み16mmの発泡成形体の表面全体について、「融け」の発生している発泡粒子数を数えた。
○:0〜5未満(融けがないか又は非常に少ない)
△:5〜10未満(融けが少々ある)
×:10以上(融けが多い)
【0045】
<内部融着率>
長さ400mm、幅300mm、厚み16mmの発泡成形体の表面に一対の長辺の中心同士を結ぶ直線に沿ってカッターナイフで深さ約3mmの切り込み線を入れた後、この切り込み線に沿って発泡成形体を手で2分割し、その破断面における発泡粒子について、粒子内で破断している粒子の数(a)と粒子同士の界面で破断している粒子の数(b)とを数え、
式[(a)/((a)+(b))]×100
に代入して得られた値を内部融着率(%)とした。
【0046】
<寸法変化率>
長さ400mm、幅300mm、厚み16mmの平板形状の発泡成形体を成形金型から取り出し、温度23℃、相対湿度50%の恒温恒湿室(JIS−K7100の標準温湿度状態)に24時間放置した後、この発泡成形体の中央部から上下面が平行で正方形状の平板(長さ150mm、巾150mm、厚み16mm)を切り出し、その中央部に縦及び横方向にそれぞれ互いに平行に3本の直線を50mm間隔になるように記入して、JIS−K6767に従う試験片とした。この試験片の寸法(加熱前寸法:L2)を測定した後、100℃に保った熱風循環式乾燥機の中に水平に置き、168時間加熱した後に取り出し、再び恒温恒湿室に1時間放置し、試験片の寸法(加熱後寸法:L2)を測定した。加熱試験の前後における寸法測定はJIS−K6767に従って行い、寸法変化率は次の式に従って求めた。
寸法変化率(%)=(L2−L1)×100/L1
(但し、L1は、型内成形後に23℃、相対湿度50%で24時間放置された発泡成形体から得られた試験片の寸法、L2は該成形体を100℃で168時間加熱した後の試験片の寸法である)
なお、寸法とは、発泡成形体から得られた試験片に記入した縦横それぞれ3本の直線の長さの平均値である。
【0047】
<曲げ強度>
JIS A 9511に従って測定を行った。
長さ400mm、幅300mm、厚み16mmの平板形状の発泡成形体を成形金型から取り出し、40℃に保った熱風循環式乾燥機の中に水平に置いて24時間乾燥させた後に、温度23℃、相対湿度50%の恒温恒湿室(JIS K7100の標準温湿度状態)に1時間放置した後、この発泡成形体のほぼ中央部から、上下面の成形表皮はそのまま残して、長さ300mm、幅75mm、厚み16mmの平板を1枚切り出し、曲げ試験の試験片とした。曲げ試験における最大応力をこの試験片の曲げ強度とし、試験片5個の曲げ強度の平均値をこの発泡成形体の曲げ強度とした。
曲げ応力は次式により算出した。
σ=3FL/2bh2
σ:最大曲げ応力(N/cm2)
F:最大荷重(N)
L:支点間距離(cm)
b:試験片の幅(cm)
h:試験片の高さ(cm)
試験機:オリエンテック社製UCT−10T
試験速度:10mm/分
【0048】
実施例1
スチレン系混合樹脂としては、ポリスチレン(重量平均分子量248000、残存モノマー525ppm)80重量%、フェニレンエーテル系樹脂(上記式中、R1とR2がメチル基、n=1200)20重量%の割合で混合されたものを用いた。この混合物を押出機に入れて紐状に押出し、押出物を切断して混合樹脂粒子[A]とした。得られた混合樹脂粒子は直径0.6mm、長さ1.0mmであった。
【0049】
この混合樹脂粒子15kgを、内容量が30リットルの回転式耐圧容器に入れた後、展着剤としてポリエチレングリコールを7.5g、グリセリンモノステアリン酸エステルを7.5g、結合防止剤として炭酸カルシウム30gを添加して容器を回転させ、混合樹脂粒子の表面に付着させた。次いで回転を停止してから容器内に炭酸ガスを圧入して、25℃、30kg/cm2Gに6時間保って混合樹脂粒子内に炭酸ガスを含浸させ、発泡性樹脂粒子を得た。ここで得られた発泡性樹脂粒子中の残留スチレンをガスクロマトグラフで測定したところ、456ppmであった。
【0050】
こうして得られた発泡性樹脂粒子を耐圧容器から取り出し、次工程で攪拌機付き発泡機内に投入した後、導入圧力が2.6kg/cm2Gの蒸気を発泡機缶内に導入した。この時の発泡機内の圧力は2.2kg/cm2Gになるように、排気制御弁の開度を電気信号でコントロールしながら、排気ラインを使って余分な圧力を外部に逃がした(導入圧力と発泡機内圧力との差は0.4kg/cm2G)。このように、蒸気を発泡機内に連続して導入しながら予備発泡させて予備発泡粒子とした。この予備発泡粒子の粒径は2.3〜4.0mmであった。
【0051】
予備発泡してから6時間後、長さ400mm×幅300mm×厚さ16mmの型窩をもった成形用金型内に、予備発泡粒子を充填し、この金型内に蒸気を吹き込んで、再び膨張させて密度0.10g/cm3の耐熱性スチレン系樹脂発泡成形体を得た。得られた発泡成形体を50℃の恒温室で24時間乾燥させた後、揮発性有機化合物の含有量をガスクロマトグラフで測定すると共に、外観の表面状態及び内部融着率、成形品強度ならびに寸法変化率を評価した。
【0052】
実施例2
発泡性樹脂粒子を耐圧容器から取り出して直ちに、導入圧力が3.2kg/cm2Gの蒸気を発泡機内に導入し、発泡機内の圧力が2.2kg/cm2Gになるように(導入圧力と発泡機内圧力との差は1.0kg/cm2G)調整したこと以外は実施例1と同様にして予備発泡粒子及び発泡成形体を得た。得られた予備発泡粒子及び発泡成形体の評価結果を表1及び表2に示す。なお、予備発泡粒子の粒径は2.3〜4.0mmで、発泡成形体の密度は0.10g/cm3であった。
【0053】
実施例3
発泡性樹脂粒子を耐圧容器から取り出して直ちに、導入圧力が2.6kg/cm2Gの蒸気を発泡機内に導入し、発泡機内の圧力は2.65kg/cm2Gになるように(導入圧力と発泡機内圧力との差は0.05kg/cm2G)調整したこと以外は実施例1と同様にして予備発泡粒子及び発泡成形体を得た。得られた予備発泡粒子及び発泡成形体の評価結果を表1及び表2に示す。なお、予備発泡粒子の粒径は2.0〜3.6mmで、発泡成形体の密度は0.10g/cm3であった。
【0054】
実施例4
混合樹脂として、ポリスチレン(重量平均分子量248000、残存モノマー525ppm)70重量%、フェニレンエーテル系樹脂(上記式中、R1とR2がメチル基、n=1200)30重量%の割合で混合されたものを用いた。この混合物を押出機に入れて紐状に押出し、押出物を切断して混合樹脂粒子とした。得られた混合樹脂粒子は直径0.6mm、長さ1.0mmであった。
【0055】
この混合樹脂粒子15kgを、内容量が30リットルの回転式耐圧容器に入れた後、展着剤としてポリエチレングリコールを7.5g、グリセリンモノステアリン酸エステルを7.5g、結合防止剤として炭酸カルシウム30gを添加して容器を回転させ、混合樹脂粒子の表面に付着させた。次いで回転を停止してから容器内に炭酸ガスを圧入して、25℃、30kg/cm2Gに6時間保って混合樹脂粒子内に炭酸ガスを含浸させ、発泡性樹脂粒子を得た。ここで得られた発泡性樹脂粒子中の残留スチレンをガスクロマトグラフで測定したところ、513ppmであった。
【0056】
こうして得られた発泡性樹脂粒子を耐圧容器から取り出し、次工程で攪拌機付き発泡機内に投入した後、導入圧力が3.0kg/cm2Gの蒸気を発泡機缶内に導入した。この時の発泡機内の圧力は2.6kg/cm2Gになるように、排気制御弁の開度を電気信号でコントロールしながら、排気ラインを使って余分な圧力を外部に逃がした(導入圧力と発泡機内圧力との差は0.4kg/cm2G)。このように、蒸気を発泡機内に連続して導入しながら予備発泡させて予備発泡粒子とした。この予備発泡粒子の粒径は2.3〜4.0mmであった。
【0057】
予備発泡してから6時間後、長さ400mm×幅300mm×厚さ16mmの型窩をもった成形用金型内に、予備発泡粒子を充填し、この金型内に蒸気を吹き込んで、再び膨張させて密度0.10g/cm3の耐熱性スチレン系樹脂発泡成形体を得た。得られた発泡成形体を50℃の恒温室で24時間乾燥させた後、揮発性有機化合物の含有量をガスクロマトグラフで測定すると共に、外観の表面状態及び内部融着率、ならびに寸法変化率を評価した。
【0058】
以上の結果から、蒸気を発泡機内に連続導入しながら加圧下のもとで、炭酸ガスを有する発泡性樹脂粒子を導入圧力と発泡機内圧力との差を調整して予備発泡粒子にすることで、発泡成形体の内部融着率が60%以上となり成形品強度が高く且つ高温の雰囲気下でも長期にわたって寸法が非常に安定し、外観の美麗な耐熱性スチレン系樹脂発泡成形体が得られた。
【0059】
比較例1
発泡性樹脂粒子を耐圧容器から取り出して直ちに、導入圧力が2.6kg/cm2Gの蒸気を発泡機内に導入し、発泡機内の圧力は1.4kg/cm2Gになるように(導入圧力と発泡機内圧力との差は1.2kg/cm2G)調整したこと以外は実施例1と同様にして予備発泡粒子及び発泡成形体を得た。得られた予備発泡粒子及び発泡成形体の評価結果を表1及び表2に示す。なお、予備発泡粒子の粒径は2.3〜4.0mmであった。
【0060】
この比較例により得られた予備発泡粒子は、発泡時の結合が多量に発生し、予備発泡粒子の輸送詰まり等の問題が発生した。予備発泡してから6時間後、長さ400mm×幅300mm×厚さ16mmの型窩をもった成形用金型内に、予備発泡粒子を充填し、この金型内に蒸気を吹き込んで、再び膨張させて密度0.10g/cm3のスチレン系樹脂発泡成形体を得た。得られた発泡成形体を50℃の恒温室で24時間乾燥させた後、揮発性有機化合物の含有量をガスクロマトグラフで測定すると共に、外観の表面状態及び内部融着率、成形品強度ならびに寸法変化率を評価した。
得られた予備発泡粒子と発泡成形体の評価結果を表1及び表2に示す。
【0061】
比較例2
発泡性混合樹脂粒子を耐圧容器から取り出して直ちに、導入圧力が2.6kg/cm2Gの蒸気を発泡機内に導入し、発泡機内の圧力は2.6kg/cm2Gになるように(導入圧力と発泡機内圧力との差は0kg/cm2G)調整したこと以外は実施例1と同様にして予備発泡粒子及び発泡成形体を得た。得られた予備発泡粒子及び発泡成形体の評価結果を表1及び表2に示す。なお、得られた予備発泡粒子の粒径は2.0〜3.6mmであった。
【0062】
予備発泡してから6時間後、長さ400mm×幅300mm×厚さ16mmの型窩をもった成形用金型内に、予備発泡粒子を充填し、この金型内に蒸気を吹き込んで、再び膨張させて密度0.10g/cm3のスチレン系樹脂発泡成形体を得た。得られた発泡成形体を50℃の恒温室で24時間乾燥させた後、揮発性有機化合物の含有量をガスクロマトグラフで測定すると共に、外観の表面状態及び内部融着率、成形品強度ならびに寸法変化率を評価した。
得られた予備発泡粒子と発泡成形体の評価結果を表1及び表2に示す。
【0063】
比較例3
100リットルの反応器に、純水40kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ2.2g、ピロリン酸マグネシウム60gを入れ水性媒体とした。次にベンゾイルパーオキサイド(純度75%)176g、t−ブチルパーオキシベンゾエート30g及びポリエチレンワックス(分子量1000)22gを溶解したスチレン44kgを撹拌しながら加えて懸濁させ、90℃に昇温して重合を開始した。比重法で測定した重合転化率が95重量%まで進行した時点で、反応器を125℃に昇温して2時間保持した後、常温まで冷却して、スチレン樹脂粒子[B]を取り出した。ここで得られたスチレン樹脂粒子中の残留スチレンをガスクロマトグラフで測定したところ、430ppmであり、また、GPC法で測定した重量平均分子量は246000であった。
【0064】
スチレン樹脂粒子[B]のうち、粒径0.7〜1.0mmのもの15kgを、内容量が30リットルの回転式耐圧容器に入れた後、展着剤としてポリエチレングリコール300を7.5g、グリセリンモノステアリン酸エステルを7.5g、結合防止剤として炭酸カルシウム30gを添加して容器を回転させ、樹脂粒子の表面に付着させた。次いで回転を停止してから容器内に炭酸ガスを圧入して、25℃、30kg/cm2Gに6時間保って樹脂粒子内に炭酸ガスを含浸させ、発泡性樹脂粒子を得た。
【0065】
こうして得られた発泡性樹脂粒子を耐圧容器から取り出し、次工程で攪拌機付き発泡機内に投入した後、投入圧力が1.2kg/cm2Gの蒸気を発泡機缶内に導入した。この時の発泡機内の圧力は0.8kg/cm2Gになるように、排気制御弁の開度を電気信号でコントロールしながら、排気ラインを使って余分な圧力を外部に逃がした(投入圧力と発泡機内圧力との差は0.4kg/cm2G)。このように、蒸気を発泡機内に連続して導入しながら予備発泡させて予備発泡粒子とした。この予備発泡粒子の粒径は2.3〜4.0mmであった。
【0066】
予備発泡してから6時間後、長さ400mm×幅300mm×厚さ16mmの型窩をもった成形用金型内に、予備発泡粒子を充填し、この金型内に蒸気を吹き込んで、再び膨張させて密度0.10g/cm3のスチレン樹脂発泡成形体を得た。得られた発泡成形体を50℃の恒温室で7日間乾燥させた後、揮発性有機化合物の含有量をガスクロマトグラフで測定すると共に、外観の表面状態及び内部融着率、ならびに寸法変化率を評価した。
【0067】
比較例4
内容積5リットルの攪拌機付き耐圧容器に、実施例1で得られた混合樹脂粒子[A]を2.0kg、イオン交換水2.2リットル、第三リン酸カルシウム6.0g、及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2gを入れて攪拌を開始した。次に110℃に昇温した後、ブタン140gを圧入して10時間保持した。次いで、30℃まで冷却し、発泡性樹脂粒子を得た。取り出した粒子を乾燥後、15℃の恒温室で5日間熟成させた。ここで得られた発泡性樹脂粒子中の残留スチレンをガスクロマトグラフで測定したところ、424ppmであった。
【0068】
そして、予備発泡時の結合防止剤としてジンクステアレート、融着促進剤としてヒドロキシステアリン酸トリグリセライドを粒子表面に被膜処理した後、攪拌機付き発泡機内に投入した後、導入圧力が2.0kg/cm2Gの蒸気を発泡機内に導入した。この時の発泡機内の圧力は1.6kg/cm2Gになるように、排気制御弁の開度を電気信号でコントロールしながら、排気ラインを使って余分な圧力を外部に逃がした(導入圧力と発泡機内圧力との差は0.4kg/cm2G)。このように、蒸気を発泡機内に連続して導入しながら予備発泡させて予備発泡粒子とした。この予備発泡粒子の粒径は2.3〜4.0mmであった。
【0069】
予備発泡してから6時間後、長さ400mm×幅300mm×厚さ16mmの型窩をもった成形用金型内に、予備発泡粒子を充填し、この金型内に蒸気を吹き込んで、再び膨張させて密度0.10g/cm3のスチレン系樹脂発泡成形体を得た。得られた発泡成形体を50℃の恒温室で24時間乾燥させた後、揮発性有機化合物の含有量をガスクロマトグラフで測定すると共に、外観の表面状態及び内部融着率、成形品強度ならびに寸法変化率を評価した。
得られた予備発泡粒子と発泡成形体の評価結果を表1及び表2に示す。この比較例によれば、実施例に比べて、融着率が低く、また、寸法変化率は大きいものであった。よって、耐熱性が十分でなかった。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【発明の効果】
本発明の耐熱性スチレン系樹脂発泡成形体は、高温の雰囲気下でも長期にわたって寸法が非常に安定し、融着性に優れ、成形品強度が高く、更に外観が美麗であり、商品価値の非常に高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法に使用できる予備発泡機の概略説明図である。
【符号の説明】
2 撹拌モーター
3 撹拌翼
4 邪魔棒
5 発泡槽上面検出器
6 発泡性粒子輸送器
7 発泡性粒子計量槽
8 発泡性粒子投入器
9 蒸気吹込制御弁
10 蒸気チャンバー
11 凝縮水排出弁
12 排気制御弁
13 予備発泡粒子排出口
14 予備発泡粒子一時受器
15 空気輸送設備
16 内圧検出・制御装置
17 蒸気吹込孔
18 蒸気導入圧力計
19 減圧弁
20 蒸気元圧力計
Claims (5)
- 100℃で168時間加熱したとき、下記式で示される寸法変化率が±0.5%以内である耐熱性スチレン系樹脂発泡成形体。
寸法変化率(%)=(L2−L1)×100/L1
(式中、L1は、23℃、相対湿度50%で24時間放置された成形体の寸法を意味し、L2は該成形体を100℃で168時間加熱した後の寸法を意味し、寸法測定をJIS−K6767により行う) - 耐熱性スチレン系樹脂発泡成形体が、フェニレンエーテル系樹脂とスチレン系樹脂との混合樹脂を基材樹脂とし、炭酸ガスを発泡剤として得られた予備発泡粒子を成形した成形体である請求項1に記載の耐熱性スチレン系樹脂発泡成形体。
- 耐熱性スチレン系樹脂発泡成形体が、5〜50重量%のフェニレンエーテル系樹脂と、95〜50重量%のスチレン系樹脂との混合樹脂に炭酸ガスを含浸して得られた発泡性樹脂粒子を、蒸気導入ラインと排気ラインを備えた予備発泡機内に投入し、蒸気導入ラインから蒸気を0.5〜5.0kg/cm2Gの導入圧力で供給すると共に、排気ラインから蒸気を含む雰囲気ガスを排気し、かつその間、発泡機内圧力を蒸気の導入圧力より0.05〜1.0kg/cm2G低く維持しながら予備発泡させて得た予備発泡粒子を成形した成形体である請求項1又は2に記載の耐熱性スチレン系樹脂発泡成形体。
- 耐熱性スチレン系樹脂発泡成形体が、60%以上の内部融着率を有する請求項1〜3のいずれか1つに記載の耐熱性スチレン系樹脂発泡成形体。
- 耐熱性スチレン系樹脂発泡成形体中の揮発性有機化合物の含有量が、0〜1000ppmである請求項1〜4のいずれか1つに記載の耐熱性スチレン系樹脂発泡成形体。
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