JP2004082836A - スチレン系樹脂発泡成形体からなる自動車内装用の緩衝材 - Google Patents
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Abstract
【課題】高温雰囲気下でも、寸法変化率はきわめて小さいスチレン系樹脂発泡成形体からなる自動車内装用の緩衝材を得る。
【解決手段】型内発泡成形に用いるスチレン系樹脂予備発泡粒子として、炭酸ガスを有する発泡性スチレン系樹脂粒子を投入加熱蒸気圧力と発泡機内圧力との差を調整して予備発泡粒子としたものを用いる。それにより、85℃で168時間加熱したとき寸法変化率が±0.5%以内であるスチレン系樹脂発泡成形体(自動車内装用の緩衝材)が得られる。
【選択図】 図2
【解決手段】型内発泡成形に用いるスチレン系樹脂予備発泡粒子として、炭酸ガスを有する発泡性スチレン系樹脂粒子を投入加熱蒸気圧力と発泡機内圧力との差を調整して予備発泡粒子としたものを用いる。それにより、85℃で168時間加熱したとき寸法変化率が±0.5%以内であるスチレン系樹脂発泡成形体(自動車内装用の緩衝材)が得られる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車内装用の緩衝材、特に、自動車が外力を受けたとき、衝撃から搭乗者を保護するために、自動車内部の適宜箇所に装着される自動車内装用の緩衝材に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車が大きな外力を受けたとき、その衝撃から搭乗者を保護するために、自動車内部の適宜箇所には発泡樹脂成形体からなる各種形状の緩衝材が取り付けられる。例えば、自動車の車室後部の側面におけるリアピラーと称される部分を覆うように、ルーフサイドインナーあるいはリアピラーガーニッシュが取り付けられる(特開2000−302001号公報、実開平6−8109号公報等参照)。この種の自動車内装用の緩衝材には、材料として、従来、発泡ポリプロピレンや発泡ポリウレタン等が使用され、所要形状とされた緩衝材に外観や感触を向上させるため、PET樹脂等からなる表皮材を接着剤により貼り付けている。通常、裏面にクリップが備えられ、下端部を車室内部の所定部に下端を差し込む等により係止し、さらに、裏面に取り付けたクリップを車体パネル(例えば、リアピラー)に予め設けた位置決め孔に嵌入することで、緩衝材の位置決めと固定を行っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記した自動車内装用の緩衝材として、近年、高い剛性と高い緩衝性の双方を満足できることから、発泡ポリスチレン等のスチレン系樹脂発泡成形体で作った緩衝材が高い評価を得るようになってきている。ところで、一般的に知られているスチレン系樹脂発泡成形品は、ブタンやペンタン等の有機化合物を発泡剤として含む発泡性スチレン系樹脂粒子を蒸気等により加熱して得た予備発泡粒子を型内発泡成形用型のキャビティ内に充填し、蒸気で過熱して該スチレン系予備発泡粒子を型内発泡成形することによって製造される。しかし、このような発泡樹脂成形品は、発泡剤にブタンやペンタン等を用いているため、80℃程度の高温雰囲気下に一定時間放置されると、±1.5%程度の寸法変化(主には収縮)を起こす。
【0004】
自動車が炎天下に長時間放置されるような場合に、車体パネルが80℃を越える状態となることは知られているところであり、そのような高温雰囲気下に長時間放置されると、前記したスチレン系樹脂発泡成形体からなる自動車内装用の緩衝材は、スチレン系樹脂発泡体の大きな寸法変化に伴って、クリップ留めしてある緩衝材にひび割れが生じることが起こりかねない。それにより、緩衝性の低下が引き起こされる恐れがある。また、表皮材にしわがより、外観意匠性の低下を引き起こすことも起こり得る。さらに、他の部材との隙間が開き、商品価値を低下させる場合もある。
【0005】
ブタンやペンタン等の有機化合物に替えて、発泡剤に炭酸ガスを用いた発泡性スチレン系樹脂粒子が提案されている(特開平4−351646号公報参照)。これを加熱して得た予備発泡粒子を型内発泡して得た成形品は、発泡剤に炭酸ガスを用いていることから残留ガス量は少なく、高温雰囲気下に長時間放置された後でも、寸法変化率が小さく、±0.8%程度に抑えることができる。しかし、本発明者らの実験では、自動車内装用の緩衝材の場合、この程度の寸法変化率ではまだ不十分であり、2箇所以上を車体パネルにクリップ止めしたような場合に、ひび割れが生じることを経験している。そのようなことから、80℃〜85℃という高温雰囲気下に長時間放置したときの寸法変化率が±0.5%以内でいることが望まれている。
【0006】
さらに、スチレン系樹脂発泡成形品に対して、最近問題とされているシックハウス(室内空気汚染)に係わるとされる揮発性有機化合物の含有量を低減することも求められている。
【0007】
【課題を解決するための手殿】
本発明は、上記のような要請に応えるべくなされたものであり、本発明による自動車内装用の緩衝材は、炭酸ガスを含浸させた発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡させたスチレン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形して得た、85℃で168時間加熱したときの寸法変化率が±0.5%以内であるスチレン系樹脂発泡成形体からなることを特徴とする。
【0008】
本発明において、「85℃で168時間加熱」としたのは、夏期において直射日光を受けるような場所で長時間放置されるような場合に、自動車内装用の緩衝材が80℃程度の高温になりうることは充分に予測されること、及び、そのような温度環境下での放置時間に対する安全率を大きく取ったこと(168時間=1週間)による。また、この条件は、自動車内装用の緩衝材に対する自動車メーカーの標準的な認定基準でもある。
【0009】
この条件下で、寸法変化率が±0.5%以内の条件を満足するスチレン系樹脂発泡成形体は、自動車内装用の緩衝材において問題となっている上記の課題、すなわち、高温雰囲気下に長時間放置されているときに発生する恐れのあるひび割れによる緩衝機能の低下、表皮材のしわの発生による外観意匠性の低下、隙間の発生による商品価値の低下、など回避することができ、緩衝材として寿命を長期化することができる。
【0010】
本発明による自動車内装用の緩衝材は、好ましくは、車体パネルに固定するためのクリップを2箇所以上に取り付けている。クリップは従来用いられている形態のものでよく、例えば、図3に示すような形態のポリプロピレン系樹脂製のクリップなどが望ましい。緩衝材へのクリップの固定は接着剤や両面テープを用いてもよいし、熱融着させてもよい。裏面に取り付けたクリップを車体パネル(例えば、リアピラー)に設けた位置決め孔に嵌入することで、本発明による緩衝材の位置決めと固定を行っても、寸法変化率が前記のようにきわめて小さいことから、収縮等によりひび割れが発生することは回避される。また、表皮材を備える場合に、表皮材としては不織布や樹脂シートのようなものが好適に用いられる。本発明による自動車内装用の緩衝材は、例えば、ルーフサイドインナー、ドアトリム、インサイドパネルのような緩衝材として好適であり、特に、ルーフサイドインナーであることは好ましい。その理由は、ルーフサイドインナーは、太陽の熱を受けて高温になりやすく、かつ、比較的大形の成形体であることによる。
【0011】
上記の範囲の寸法変化率を持つスチレン系樹脂発泡成形体(本発明においては、自動車内装用の緩衝材)は、以下のようにして製造されるスチレン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡することにより得ることができる。すなわち、最初に、スチレン系樹脂粒子に炭酸ガスを含浸させて発泡性スチレン系樹脂粒子とし、次工程で蒸気投入ラインと排気ラインを備えた予備発泡機内に前記発泡性スチレン系樹脂粒子を投入し、蒸気投入ラインから蒸気を0.5〜5.0kg/cm2Gの投入圧力で供給すると共に、排気ラインから蒸気を含む雰囲気ガスを排気し、かつその間、発泡機内圧力を蒸気の投入圧力より0.05〜1.0kg/cm2G低く維持しながら予備発泡させて得られるスチレン系樹脂予備発泡粒子である。
【0012】
上記の発泡性スチレン系樹脂粒子(以下、「発泡性粒子」という)を構成するスチレン系樹脂粒子(以下、「樹脂粒子」という)としては、一般に知られているスチレン系樹脂の粒状物を使用することができる。具体的には、このような樹脂粒子としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ジビニルベンゼン(2官能性単量体)等のスチレン系単量体の単独重合粒子又はこれら単量体を2種以上組み合わせた共重合体粒子、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、セチルメタクリレート等のアクリル酸及びメタクリル酸のエステル、あるいはアクリロニトリル、ジメチルフマレート、エチルフマレート、アルキレングリコールジメタクリレート(2官能性単量体)等のスチレン系単量体以外の単量体との共重合体粒子等が挙げられる。更に、これらスチレン系樹脂粒子中のスチレン成分が50重量%を超える範囲内でスチレン系樹脂以外の樹脂と押し出しブレンドして得られた樹脂粒子であってもよい。スチレン系樹脂以外の樹脂としては、ポリフェニルエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ゴム成分等が挙げられる。特に、スチレン系樹脂粒子としてはポリスチレン樹脂粒子が好ましい。樹脂粒子の粒径は、自動車内装用の緩衝材の設置場所や設置環境に応じて適宜選択することができ、例えば、0.2〜5mmの粒径のものを使用することができる。
【0013】
更に、最近特に問題となっているシックハウス(室内空気汚染)は揮発性有機化合物が係わっている可能性があるとの指摘もあり、その含有量をできるだけ小さくすることが望まれている。この観点から、樹脂粒子は、残留スチレン系単量体の量ができるだけ少ないことが好ましく、樹脂粒子中に含まれるスチレン系単量体の量は0〜500ppmであることが好ましい。このような樹脂粒子を用いることにより、発泡樹脂成形体に含まれる揮発性有機化合物の量を1000ppm以下としたものを得ることが可能となる。
【0014】
樹脂粒子中の残留スチレン系単量体を低減するには、例えば懸濁重合においては、スチレン系単量体に対して0.05重量%以上の高温開始型の重合触媒を用い、最終の重合温度を115℃以上とするのが好ましい。高温開始型の重合触媒としては、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、2、2−t−ブチルパーオキシブタン等の半減期10時間を得るための温度が100〜115℃のものが特に好ましい。ただし、これらを必要以上に用いるとt−ブタノール等分解副生成物を含有することになるため、重合触媒の種類によって異なるが、使用量の上限は、0.5重量%であることが好ましい。
【0015】
樹脂粒子の分子量は、GPC法による重量平均分子量で20万〜40万であるのが好ましい。20万を下回ると、発泡樹脂成形体の強度が低下する場合があり、40万を上回ると、十分な発泡性を得ることが難しいので好ましくない。
【0016】
上記の樹脂粒子に発泡剤としての炭酸ガスを含浸させて発泡性粒子を得る。発泡剤としての炭酸ガスは、炭酸ガス100%でもよいが、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の発泡剤を加えてもよい。他の発泡剤としては、空気、窒素等の無機発泡剤、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素、フッ化炭化水素等の有機発泡剤を混合することもできる。フッ化炭化水素としては、オゾン破壊係数がゼロであるジフルオロエタン、テトラフルオロエタン等を使用することが好ましい。ここで、有機発泡剤は、発泡剤の全体量の20重量%を超えない範囲で使用することが好ましい。発泡性粒子中の炭酸ガスの含有割合は、1〜15重量%が好ましい。
【0017】
樹脂粒子中に炭酸ガスを含浸させるには、例えば、耐圧密閉容器に樹脂粒子を入れた後、炭酸ガスを圧入して、樹脂粒子を加圧された炭酸ガスと接触させることによって行うことができる。含浸温度は、樹脂粒子どうしが互いに合着して団塊化しない温度まで高くしてもよいが、通常0〜40℃である。樹脂粒子に炭酸ガスを含浸させるときの圧力は、10kg/cm2G以上であることが好ましく、より好ましくは15〜40kg/cm2Gである。含浸時間は、樹脂粒子が前記の炭酸ガス含有量となるように適宜調整することができ、1〜20時間が好ましく、2〜8時間がより好ましい。
【0018】
樹脂粒子に炭酸ガスを含浸させるに際し、樹脂粒子の表面には各種の表面処理剤を塗布しておくことが好ましい。そのような表面処理剤としては、例えば加熱発泡時の予備発泡粒子の結合を防止する結合防止剤、成形時の融着促進剤、帯電防止剤、展着剤等が挙げられる。
【0019】
結合防止剤としては、例えばタルク、炭酸カルシウム、シリカ、ステアリン酸亜鉛、水酸化アルミニウム、エチレンビスステアリン酸アミド、第三リン酸カルシウム、ジメチルシリコン等が挙げられる。
【0020】
融着促進剤としては、例えばステアリン酸、ステアリン酸トリグリセリド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸ソルビタンエステル、ポリエチレンワックス等が挙げられる。
【0021】
帯電防止剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ステアリン酸モノグリセリド等が挙げられる。展着剤としては、ポリブテン、ポリエチレングリコール、シリコンオイル等が挙げられる。
【0022】
また、他の添加剤として、樹脂粒子中には所望によりヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモシクロオクタン等の難燃剤、メタクリル酸エステル系共重合ポリマー、エチレンビスステアリン酸アミド、ポリエチレンワックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の気泡調整剤等を予め含有させておいてもよい。
上記結合防止剤、成形時の融着促進剤、帯電防止剤、展着剤及び他の添加剤は、単独もしくは2種以上を混合して用いることができる。
【0023】
また、上記したスチレン系樹脂予備発泡粒子(以下、「予備発泡粒子」という)には、難燃剤を含有していることが好ましい。難燃剤を含有した予備樹脂粒子を得る方法としては、例えば、樹脂粒子と水との懸濁液中、水中に溶解又は懸濁した難燃剤の融点以上の温度雰囲気下で樹脂粒子中に難燃剤を含有させる方法、あるいは押し出しブレンドにより樹脂粒子中に難燃剤を含有させる方法等により難燃剤を含有する樹脂粒子を得、これを用いて発泡剤の含浸及び予備発泡する方法が挙げられる。この時に使用できる難燃剤としては、前記のようにヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモシクロオクタン等が挙げられる。難燃剤含有量としては樹脂粒子全体に対して0.1〜4重量%であることが好ましく、0.5〜3.0重量%であるのが特に好ましい。難燃剤含有量が0.1重量%を下回ると、充分な難燃効果を得ることが困難となるので好ましくない。また、難燃剤含有量が4重量%を上回ると予備発泡粒子同士が合着する傾向が強くなるので好ましくない。
【0024】
予備発泡粒子は、以下のようにして製造される。上記したように、スチレン系樹脂粒子(樹脂粒子)に炭酸ガスを含浸させて発泡性スチレン系樹脂粒子(発泡性粒子)とし、次工程で、蒸気投入ラインと排気ラインを備えた予備発泡機内に、前記発泡性スチレン系樹脂粒子を投入し、蒸気投入ラインから蒸気を0.5〜5.0kg/cm2Gの投入圧力で供給すると共に、排気ラインから蒸気を含む雰囲気ガスを排気し、かつその間、発泡機内圧力を蒸気の投入圧力より0.05〜1.0kg/cm2G低く維持しながら予備発泡させてスチレン系樹脂予備発泡粒子を得る方法である。この方法において、炭酸ガスを含浸させる工程に次いで、直ちに予備発泡を行うことが好ましい。
【0025】
この方法、すなわち本発明によるスチレン系樹脂予備発泡粒子を製造するのに使用できる予備発泡機の一例を、図1により説明する。図中、1は予備発泡機、2は撹拌モーター、3は撹拌翼、4は邪魔棒、5は発泡槽上面検出器、6は発泡性粒子輸送器、7は発泡性粒子計量槽、8は発泡性粒子投入器、9は蒸気吹込制御弁、10は蒸気チャンバー、11は凝縮水排出弁、12は排気制御弁、13は予備発泡粒子排出口、14は予備発泡粒子一時受器、15は空気輸送設備、16は内圧検出・制御装置、17は蒸気吹込孔、18は蒸気投入圧力計、19は減圧弁、20は蒸気元圧力計を意味する。
【0026】
詳細には、一定量の蒸気が常に予備発泡機1内に供給されるように排気制御弁12等で予備発泡機1内の圧力(内圧検出・制御装置16で圧力検出)が常に供給圧力を下回るように制御を行う。例えば、蒸気の投入圧力を1.2kg/cm2G(蒸気投入圧力計118で検出)、予備発泡機内の圧力を0.8kg/cm2Gに設定した場合、予備発泡機1内の圧力を内圧検出・制御装置16にて検出し、制御信号が排気制御弁12へ送られ、排気ラインから0.4kg/cm2G圧分の圧力を抜きながら圧力の制御を行うこととなる。このように、予備発泡機1内圧力と排気制御弁12とをリンクさせて制御することにより、予備発泡機1内圧力の調整することができる。
【0027】
投入圧力と予備発泡機内圧力との差が、0.05kg/cm2G未満であると低密度の予備発泡粒子が得られ難いばかりか、発泡樹脂成形体の外観、内部融着が悪く、非常に商品価値の低いものになってしまう。また、1.0kg/cm2Gを超えると予備発泡時の結合が増加するばかりか、表面光沢度が低く、発泡体表面の凹凸も大きくなり好ましくない。より好ましい圧力差は、0.2〜0.7kg/cm2Gである。
【0028】
予備発泡粒子の粒径は、0.3〜10mm程度が好ましく、また、予備発泡粒子の嵩密度は、0.015〜0.5g/cm3程度が好ましい。そして、予備発泡機内の発泡性樹脂粒子は、通常110〜160℃程度に加熱されることが好ましく、より好ましい加熱温度は110〜130℃である。加熱温度が110℃を下回ると、嵩密度0.5g/cm3以下の予備発泡粒子は得られ難いので好ましくない。また、加熱温度が160℃を上回ると予備発泡粒子同士が合着する傾向が強くなるので好ましくない。
【0029】
上記の予備発泡粒子を発泡成形することで得られるスチレン系樹脂発泡成形体は、長期にわたる寸法安定性に優れている。実施例にも記載したとおり、85℃で168時間加熱したときの寸法安定性(加熱前と加熱後の寸法変化率)を±0.5%以内にすることができる。また、揮発性有機化合物の含有量を1000ppm以下のものとすることができる。
【0030】
発泡成形法としては、特に限定されず、公知の方法をいずれも使用することができる。例えば、予備発泡粒子を成形用型内に充填し、蒸気により加熱する。蒸気との接触によって予備発泡粒子が加熱されると、予備発泡粒子は膨張するが、成形用型によって発泡できる空間が限定されているので、互いに密着すると共に融着一体化して所望の発泡樹脂成形体を得ることができる。発泡樹脂成形体の密度は、0.015〜0.5g/cm3程度が好ましく、特に、0.02〜0.2g/cm3程度が好ましい。
【0031】
【発明の実施の形態】
図2は、本発明によるスチレン系樹脂発泡成形体からなる自動車内装用の緩衝材Aの一例であるルーフサイドインナー50を裏面から見て示している。図示のルーフサイドインナー50は、自動車の車室後部の側面におけるリアピラー(不図示)を覆うようにして車室内後部に装着されるものであり、裏面には、先端に変形部51aを持つクリップ51が6個、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)系のホットメルト接着剤(セキスイエスダイン(株)製エスダイン85RS620)によりルーフサイドインナー50に固定されている(図3参照)。通常、ルーフサイドインナー50の下端50aが車室の適所に差し込まれ、かつ、前記クリップ51を車体フレーム(不図示)に予め形成した孔に挿入することにより、車体側に固定される。また、図示の、ルーフサイドインナー50の表側には、ポリエステル樹脂製不織布のような表皮材52が取り付けられる。
【0032】
大きさや形状は車体に合わせて種々のものが成形されるが、図示のものでは、平均厚さh:40mm,長手方向の最大長さa:700mm,短手方向の最大長さb:500mmであり、周囲にはRが付けてある。
【0033】
本発明による自動車内装用の緩衝材Aでは、高温雰囲気下でも、その寸法変化率はきわめて小さいために、クリップ51により車体パネルに固定した場合でも、従来品のようにひび割れが生じることはなく、表皮材にしわが寄るようなこともない。そのために、緩衝材としての寿命を長期化することができる。また、残留揮発性有機化合物の含有量もきわめて少量とすることができる。
【0034】
【実施例】
以下に、本発明を実施例及び比較例に基づきさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されることはない。なお、以下に示す実施例及び比較例において、寸法変化率及び揮発性有機化合物の含有量の評価は以下のようにして行った。
【0035】
<寸法変化率>
発泡成形用型から取り出した発泡樹脂成形体A(実際には、図2に示す形状の緩衝材A)を、温度23℃、相対湿度50%の恒温恒湿室(JIS−K7100の標準温湿度状態)に24時間放置した後、JIS−K6767に従う試験サンプルとした。
【0036】
この試験サンプルを85℃に保った熱風循環式乾燥機の中に水平に置き、168時間加熱した後に取り出し、再び恒温恒湿室に1時間放置した。加熱試験前後における寸法測定はJIS−K6767に準拠して実施し、寸法変化率Pは試験サンプルの長手方向の最大長さaの変化率で測定した。
寸法変化率P(%)=(a2−a1)×100/a1
(ただし、a1は、型内成形後に23℃、相対湿度50%で24時間放置された試験サンプルの外側長さaの寸法、a2は該試験サンプルを85℃で168時間加熱した後の試験サンプルの外側長さaの寸法である)。
【0037】
<揮発性有機化合物の含有量>
試験サンプルを50℃の恒温室で7日間乾燥させた後、以下に示す三種類の測定法によって得られた値を合計して求めた。
a.(炭素数5以下の炭化水素の測定)
乾燥後の試験サンプルを150℃の熱分解炉に入れ、揮発した炭化水素をガスクロマトグラフィーにて測定した。
ガスクロマトグラフィー(GC):島津製作所社製 GC−14B
熱分解炉:島津製作所社製 PYR−1A
カラム:ポラパックQ 80/100(3mmφ×1.5m)
カラム温度:100℃
検出器(FID)温度:120℃
【0038】
b.(炭素数6以上の炭化水素であって、ガスクロマトグラムに現われるスチレンのピークまでの炭化水素の測定)
乾燥後の試験サンプルをジメチルホルムアミドに溶解し、内部標準液(シクロペンタノール)を加えてGCにより測定した。ただし、特定できないピークについてはトルエンの検出量に換算して定量した。
GC:島津製作所社製 GC−14A
カラム:PEG−20M PT25% 60/80(2.5m)
カラム温度:105℃
検出器(FID)温度:220℃
【0039】
c.(ガスクロマトグラムに現われるスチレンの次のピークから炭素数16(n−ヘキサデカン)までの炭化水素の測定)
乾燥後の試験サンプルをクロロホルムに溶解し、ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)にて測定した。ただし、試験サンプルを溶解しない溶剤のみの空試験を行い、空試験の検出物質量を差し引いた。更に、特定できないピークについてはトルエンの検出量に換算して定量した。
GCMS:島津製作所社製 QP5000
カラム:J&W Scientific社製 DB−1(1μm×60m 0.25mmφ)
測定条件:カラム温度(60℃で1分保持した後、10℃/分で300℃まで昇温)
スプリット比:10
キャリヤガス:He(1ml/min)
インターフェイス温度:260℃
【0040】
【実施例1】
100リットルの反応器に、純水40kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ2.3g、ピロリン酸マグネシウム61gを入れ水性媒体とした。次にベンゾイルパーオキサイド(純度75%)175g、t−ブチルパーオキシベンゾエート31g及びポリエチレンワックス(分子量1000)22gを溶解したスチレン44kgを撹拌しながら加えて懸濁させ、90℃に昇温して重合を開始した。比重法で測定した重合転化率が95重量%まで進行した時点で、反応器を124℃に昇温して2.0時間保持した後、常温まで冷却して、スチレン樹脂粒子を取り出した。ここで得られたスチレン樹脂粒子中の残留スチレンをガスクロマトグラフで測定したところ、425ppmであり、また、GPC法で測定した重量平均分子量は248000であった。
【0041】
スチレン樹脂粒子のうち、粒径0.7〜1.0mmのもの15kgを、内容量が30リットルの回転式耐圧容器に入れた後、展着剤としてポリエチレングリコール300を7.5g、グリセリンモノステアリン酸エステルを7.5g、結合防止剤として炭酸カルシウム30gを添加して容器を回転させ、樹脂粒子の表面に付着させた。次いで回転を停止してから容器内に炭酸ガスを圧入して、25℃、30kg/cm2Gに6時間保って樹脂粒子内に炭酸ガスを含浸させ、発泡性スチレン樹脂粒子を得た。
【0042】
こうして得られた発泡性スチレン樹脂粒子を耐圧容器から取り出し、次工程で撹拌機付き発泡機内に投入した後、投入圧力が1.2kg/cm2Gの蒸気を発泡機缶内に導入した。この時の発泡機内の圧力は0.8kg/cm2Gになるように、排気制御弁の開度を電気信号でコントロールしながら、排気ラインを使って余分な圧力を外部に逃がした(投入圧力と発泡機内圧力との差は0.4kg/cm2G)。このように、蒸気を発泡機内に連続して導入しながら予備発泡させてスチレン樹脂予備発泡粒子とした。この予備発泡粒子の粒径は2.3〜4.0mmであった。
【0043】
予備発泡してから6時間後、型締め後のキャビティ形状が、図2で示す発泡樹脂成形体の形状に設計された発泡成形用型内に、予備発泡粒子を充填し蒸気で加熱して、図2に示す形状のスチレン系樹脂発泡成形体(自動車内装用の緩衝材)を得た。密度は0.020g/cm3であった。得られた発泡樹脂成形体について、上記した評価方法により、寸法変化率及び揮発性有機化合物の含有量を評価した。結果を表1に示す。
【0044】
【実施例2】
発泡性スチレン樹脂粒子を耐圧容器から取り出して直ちに、投入圧力が1.5kg/cm2Gの蒸気を発泡機内に導入し、発泡機内の圧力が0.8kg/cm2Gになるように(投入圧力と発泡機内圧力との差は0.7g/cm2G)調整したこと以外は、実施例1と同様にして予備発泡粒子及び発泡樹脂成形体を得た。予備発泡粒子の粒径は2.3〜4.0mmであり、発泡樹脂成形体の密度は0.025g/cm3であった。得られた発泡樹脂成形体の寸法変化率及び揮発性有機化合物の含有量を上記した評価方法により評価した。結果を表1に示す。
【0045】
【比較例1】
発泡性スチレン樹脂粒子を耐圧容器から取り出して直ちに、投入圧力が2.0kg/cm2Gの蒸気を発泡機内に導入し、発泡機内の圧力は0.8kg/cm2Gになるように(投入圧力と発泡機内圧力との差は1.2kg/cm2G)調整したこと以外は、実施例1と同様にして予備発泡粒子及び発泡樹脂成形体を得た。得られた予備発泡粒子の粒径は2.2〜3.6mmあり、発泡樹脂成形体の密度は0.025g/cm3であった。得られた発泡樹脂成形体の寸法変化率及び揮発性有機化合物の含有量を上記した評価方法により評価した。結果を表1に示す。
【0046】
【比較例2】
発泡性スチレン樹脂粒子を耐圧容器から取り出して直ちに、投入圧力が0.8kg/m2Gの蒸気を発泡機内に導入し、発泡機内の圧力は0.8kg/cm2Gになるように(投入圧力と発泡機内圧力との差は0kg/cm2G)調整したこと以外は、実施例1と同様にして予備発泡粒子及び発泡樹脂成形体を得た。予備発泡粒子の粒径は1.8〜2.8mmであり、発泡樹脂成形体の密度は0.050g/cm3であった。得られた発泡樹脂成形体の寸法変化率及び揮発性有機化合物の含有量を上記した評価方法により評価した。結果を表1に示す。
【0047】
【比較例3】
内容積5リットルの撹拌機付き耐圧容器に、実施例1で得られたスチレン樹脂粒子のうち、粒径0.7〜1.0mmのもの2.0kg、イオン交換水2.2リットル、第三りん酸カルシウム6.0g、及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2gを入れて撹拌を開始した。次に90℃に昇温した後、ブタン140gを圧入して5時間保持した。次いで、30℃まで冷却し、ブタン含有発泡性スチレン樹脂粒子を得た。取り出した発泡性粒子を乾燥後、15℃の恒温室で5日間熟成させた。そして、予備発泡時の結合防止剤としてジンクステアレート、融着促進剤としてヒドロキシステアリン酸トリグリセライドを粒子表面に被膜処理した後、撹拌機付き発泡機内に投入した後、投入圧力が0.5kg/cm2Gの蒸気を発泡機内に導入した。この時の発泡機内の圧力は0.1kg/cm2Gになるように、排気制御弁の開度を電気信号でコントロールしながら、排気ラインを使って余分な圧力を外部に逃がした(投入圧力と発泡機内圧力との差は0.4kg/cm2G)。このように、蒸気を発泡機内に連続して導入しながら予備発泡させてブタン含有のスチレン樹脂予備発泡粒子とした。この予備発泡粒子の粒径は2.3〜4.0mmであった。
【0048】
予備発泡してから6時間後、実施例1で用いたと同じ成形用型を使用して発泡成形し、密度0.020g/cm3である実施例1と同じ形状の発泡樹脂成形体を得た。得られた発泡樹脂成形体の寸法変化率及び揮発性有機化合物の含有量の評価結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
以上の結果から、スチレン系樹脂粒子に炭酸ガスを含浸させて得たスチレン系樹脂予備発泡粒子の型内発泡成形品において、スチレン系樹脂予備発泡粒子として、炭酸ガスを有する発泡性スチレン系樹脂粒子を投入圧力と発泡機内圧力との差を調整して予備発泡粒子としたものを用いて発泡成形することにより、高温の雰囲気下に長時間放置されても寸法変化率がきわめて小さい(85℃で168時間加熱したときの、その加熱前と加熱後における寸法変化率Pは、−0.5%以内)スチレン系樹脂発泡成形体が得られることがわかる。また、揮発性有機化合物の含有量も極めて少ない。
【0051】
従って、上記のようにして得た緩衝材は、自動車が高温雰囲気下に長時間放置されたときでも、スチレン系樹脂発泡体の大きな寸法変化に伴って、クリップ留めしてある緩衝材にひび割れが生じることはなく、表皮材にしわが寄るようなこともなく、さらに、他の部材との隙間が開き商品価値を低下させるようなことも生じない。
【0052】
【発明の効果】
本発明による自動車内装用の緩衝材では、高温雰囲気下でも、その寸法変化率はきわめて小さい。そのために、それをクリップにより2箇所以上で車体パネルに固定した場合でも、ひび割れが生じることはなく、表皮材にしわが寄るようなこともなく、さらに、他の部材との隙間が生じるようなこともない。そのために、緩衝材としての寿命を長期化することができる。また、残留揮発性有機化合物の含有量もきわめて少量とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用できるチレン系樹脂予備発泡粒子を製造するのに用いられる予備発泡機の概略説明図。
【図2】本発明による自動車内装用の緩衝材の一例を示す図。
【図3】本発明の緩衝材に使用できるクリップの一例を示す図。
【符号の説明】
A…自動車内装用の緩衝材、50…ルーフサイドインナー、51…クリップ、52…表皮材、1…予備発泡機、2…撹拌モーター、3…撹拌翼、4…邪魔棒、5…発泡槽上面検出器、6…発泡性粒子輸送器、7…発泡性粒子計量槽、8…発泡性粒子投入器、9…蒸気吹込制御弁、10…蒸気チャンバー、11…凝縮水排出弁、12…排気制御弁、13…予備発泡粒子排出口、14…予備発泡粒子一時受器、15…空気輸送設備、16…内圧検出・制御装置、17…蒸気吹込孔、18…蒸気投入圧力計、19…減圧弁、20…蒸気元圧力計
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車内装用の緩衝材、特に、自動車が外力を受けたとき、衝撃から搭乗者を保護するために、自動車内部の適宜箇所に装着される自動車内装用の緩衝材に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車が大きな外力を受けたとき、その衝撃から搭乗者を保護するために、自動車内部の適宜箇所には発泡樹脂成形体からなる各種形状の緩衝材が取り付けられる。例えば、自動車の車室後部の側面におけるリアピラーと称される部分を覆うように、ルーフサイドインナーあるいはリアピラーガーニッシュが取り付けられる(特開2000−302001号公報、実開平6−8109号公報等参照)。この種の自動車内装用の緩衝材には、材料として、従来、発泡ポリプロピレンや発泡ポリウレタン等が使用され、所要形状とされた緩衝材に外観や感触を向上させるため、PET樹脂等からなる表皮材を接着剤により貼り付けている。通常、裏面にクリップが備えられ、下端部を車室内部の所定部に下端を差し込む等により係止し、さらに、裏面に取り付けたクリップを車体パネル(例えば、リアピラー)に予め設けた位置決め孔に嵌入することで、緩衝材の位置決めと固定を行っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記した自動車内装用の緩衝材として、近年、高い剛性と高い緩衝性の双方を満足できることから、発泡ポリスチレン等のスチレン系樹脂発泡成形体で作った緩衝材が高い評価を得るようになってきている。ところで、一般的に知られているスチレン系樹脂発泡成形品は、ブタンやペンタン等の有機化合物を発泡剤として含む発泡性スチレン系樹脂粒子を蒸気等により加熱して得た予備発泡粒子を型内発泡成形用型のキャビティ内に充填し、蒸気で過熱して該スチレン系予備発泡粒子を型内発泡成形することによって製造される。しかし、このような発泡樹脂成形品は、発泡剤にブタンやペンタン等を用いているため、80℃程度の高温雰囲気下に一定時間放置されると、±1.5%程度の寸法変化(主には収縮)を起こす。
【0004】
自動車が炎天下に長時間放置されるような場合に、車体パネルが80℃を越える状態となることは知られているところであり、そのような高温雰囲気下に長時間放置されると、前記したスチレン系樹脂発泡成形体からなる自動車内装用の緩衝材は、スチレン系樹脂発泡体の大きな寸法変化に伴って、クリップ留めしてある緩衝材にひび割れが生じることが起こりかねない。それにより、緩衝性の低下が引き起こされる恐れがある。また、表皮材にしわがより、外観意匠性の低下を引き起こすことも起こり得る。さらに、他の部材との隙間が開き、商品価値を低下させる場合もある。
【0005】
ブタンやペンタン等の有機化合物に替えて、発泡剤に炭酸ガスを用いた発泡性スチレン系樹脂粒子が提案されている(特開平4−351646号公報参照)。これを加熱して得た予備発泡粒子を型内発泡して得た成形品は、発泡剤に炭酸ガスを用いていることから残留ガス量は少なく、高温雰囲気下に長時間放置された後でも、寸法変化率が小さく、±0.8%程度に抑えることができる。しかし、本発明者らの実験では、自動車内装用の緩衝材の場合、この程度の寸法変化率ではまだ不十分であり、2箇所以上を車体パネルにクリップ止めしたような場合に、ひび割れが生じることを経験している。そのようなことから、80℃〜85℃という高温雰囲気下に長時間放置したときの寸法変化率が±0.5%以内でいることが望まれている。
【0006】
さらに、スチレン系樹脂発泡成形品に対して、最近問題とされているシックハウス(室内空気汚染)に係わるとされる揮発性有機化合物の含有量を低減することも求められている。
【0007】
【課題を解決するための手殿】
本発明は、上記のような要請に応えるべくなされたものであり、本発明による自動車内装用の緩衝材は、炭酸ガスを含浸させた発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡させたスチレン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形して得た、85℃で168時間加熱したときの寸法変化率が±0.5%以内であるスチレン系樹脂発泡成形体からなることを特徴とする。
【0008】
本発明において、「85℃で168時間加熱」としたのは、夏期において直射日光を受けるような場所で長時間放置されるような場合に、自動車内装用の緩衝材が80℃程度の高温になりうることは充分に予測されること、及び、そのような温度環境下での放置時間に対する安全率を大きく取ったこと(168時間=1週間)による。また、この条件は、自動車内装用の緩衝材に対する自動車メーカーの標準的な認定基準でもある。
【0009】
この条件下で、寸法変化率が±0.5%以内の条件を満足するスチレン系樹脂発泡成形体は、自動車内装用の緩衝材において問題となっている上記の課題、すなわち、高温雰囲気下に長時間放置されているときに発生する恐れのあるひび割れによる緩衝機能の低下、表皮材のしわの発生による外観意匠性の低下、隙間の発生による商品価値の低下、など回避することができ、緩衝材として寿命を長期化することができる。
【0010】
本発明による自動車内装用の緩衝材は、好ましくは、車体パネルに固定するためのクリップを2箇所以上に取り付けている。クリップは従来用いられている形態のものでよく、例えば、図3に示すような形態のポリプロピレン系樹脂製のクリップなどが望ましい。緩衝材へのクリップの固定は接着剤や両面テープを用いてもよいし、熱融着させてもよい。裏面に取り付けたクリップを車体パネル(例えば、リアピラー)に設けた位置決め孔に嵌入することで、本発明による緩衝材の位置決めと固定を行っても、寸法変化率が前記のようにきわめて小さいことから、収縮等によりひび割れが発生することは回避される。また、表皮材を備える場合に、表皮材としては不織布や樹脂シートのようなものが好適に用いられる。本発明による自動車内装用の緩衝材は、例えば、ルーフサイドインナー、ドアトリム、インサイドパネルのような緩衝材として好適であり、特に、ルーフサイドインナーであることは好ましい。その理由は、ルーフサイドインナーは、太陽の熱を受けて高温になりやすく、かつ、比較的大形の成形体であることによる。
【0011】
上記の範囲の寸法変化率を持つスチレン系樹脂発泡成形体(本発明においては、自動車内装用の緩衝材)は、以下のようにして製造されるスチレン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡することにより得ることができる。すなわち、最初に、スチレン系樹脂粒子に炭酸ガスを含浸させて発泡性スチレン系樹脂粒子とし、次工程で蒸気投入ラインと排気ラインを備えた予備発泡機内に前記発泡性スチレン系樹脂粒子を投入し、蒸気投入ラインから蒸気を0.5〜5.0kg/cm2Gの投入圧力で供給すると共に、排気ラインから蒸気を含む雰囲気ガスを排気し、かつその間、発泡機内圧力を蒸気の投入圧力より0.05〜1.0kg/cm2G低く維持しながら予備発泡させて得られるスチレン系樹脂予備発泡粒子である。
【0012】
上記の発泡性スチレン系樹脂粒子(以下、「発泡性粒子」という)を構成するスチレン系樹脂粒子(以下、「樹脂粒子」という)としては、一般に知られているスチレン系樹脂の粒状物を使用することができる。具体的には、このような樹脂粒子としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ジビニルベンゼン(2官能性単量体)等のスチレン系単量体の単独重合粒子又はこれら単量体を2種以上組み合わせた共重合体粒子、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、セチルメタクリレート等のアクリル酸及びメタクリル酸のエステル、あるいはアクリロニトリル、ジメチルフマレート、エチルフマレート、アルキレングリコールジメタクリレート(2官能性単量体)等のスチレン系単量体以外の単量体との共重合体粒子等が挙げられる。更に、これらスチレン系樹脂粒子中のスチレン成分が50重量%を超える範囲内でスチレン系樹脂以外の樹脂と押し出しブレンドして得られた樹脂粒子であってもよい。スチレン系樹脂以外の樹脂としては、ポリフェニルエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ゴム成分等が挙げられる。特に、スチレン系樹脂粒子としてはポリスチレン樹脂粒子が好ましい。樹脂粒子の粒径は、自動車内装用の緩衝材の設置場所や設置環境に応じて適宜選択することができ、例えば、0.2〜5mmの粒径のものを使用することができる。
【0013】
更に、最近特に問題となっているシックハウス(室内空気汚染)は揮発性有機化合物が係わっている可能性があるとの指摘もあり、その含有量をできるだけ小さくすることが望まれている。この観点から、樹脂粒子は、残留スチレン系単量体の量ができるだけ少ないことが好ましく、樹脂粒子中に含まれるスチレン系単量体の量は0〜500ppmであることが好ましい。このような樹脂粒子を用いることにより、発泡樹脂成形体に含まれる揮発性有機化合物の量を1000ppm以下としたものを得ることが可能となる。
【0014】
樹脂粒子中の残留スチレン系単量体を低減するには、例えば懸濁重合においては、スチレン系単量体に対して0.05重量%以上の高温開始型の重合触媒を用い、最終の重合温度を115℃以上とするのが好ましい。高温開始型の重合触媒としては、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、2、2−t−ブチルパーオキシブタン等の半減期10時間を得るための温度が100〜115℃のものが特に好ましい。ただし、これらを必要以上に用いるとt−ブタノール等分解副生成物を含有することになるため、重合触媒の種類によって異なるが、使用量の上限は、0.5重量%であることが好ましい。
【0015】
樹脂粒子の分子量は、GPC法による重量平均分子量で20万〜40万であるのが好ましい。20万を下回ると、発泡樹脂成形体の強度が低下する場合があり、40万を上回ると、十分な発泡性を得ることが難しいので好ましくない。
【0016】
上記の樹脂粒子に発泡剤としての炭酸ガスを含浸させて発泡性粒子を得る。発泡剤としての炭酸ガスは、炭酸ガス100%でもよいが、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の発泡剤を加えてもよい。他の発泡剤としては、空気、窒素等の無機発泡剤、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素、フッ化炭化水素等の有機発泡剤を混合することもできる。フッ化炭化水素としては、オゾン破壊係数がゼロであるジフルオロエタン、テトラフルオロエタン等を使用することが好ましい。ここで、有機発泡剤は、発泡剤の全体量の20重量%を超えない範囲で使用することが好ましい。発泡性粒子中の炭酸ガスの含有割合は、1〜15重量%が好ましい。
【0017】
樹脂粒子中に炭酸ガスを含浸させるには、例えば、耐圧密閉容器に樹脂粒子を入れた後、炭酸ガスを圧入して、樹脂粒子を加圧された炭酸ガスと接触させることによって行うことができる。含浸温度は、樹脂粒子どうしが互いに合着して団塊化しない温度まで高くしてもよいが、通常0〜40℃である。樹脂粒子に炭酸ガスを含浸させるときの圧力は、10kg/cm2G以上であることが好ましく、より好ましくは15〜40kg/cm2Gである。含浸時間は、樹脂粒子が前記の炭酸ガス含有量となるように適宜調整することができ、1〜20時間が好ましく、2〜8時間がより好ましい。
【0018】
樹脂粒子に炭酸ガスを含浸させるに際し、樹脂粒子の表面には各種の表面処理剤を塗布しておくことが好ましい。そのような表面処理剤としては、例えば加熱発泡時の予備発泡粒子の結合を防止する結合防止剤、成形時の融着促進剤、帯電防止剤、展着剤等が挙げられる。
【0019】
結合防止剤としては、例えばタルク、炭酸カルシウム、シリカ、ステアリン酸亜鉛、水酸化アルミニウム、エチレンビスステアリン酸アミド、第三リン酸カルシウム、ジメチルシリコン等が挙げられる。
【0020】
融着促進剤としては、例えばステアリン酸、ステアリン酸トリグリセリド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸ソルビタンエステル、ポリエチレンワックス等が挙げられる。
【0021】
帯電防止剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ステアリン酸モノグリセリド等が挙げられる。展着剤としては、ポリブテン、ポリエチレングリコール、シリコンオイル等が挙げられる。
【0022】
また、他の添加剤として、樹脂粒子中には所望によりヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモシクロオクタン等の難燃剤、メタクリル酸エステル系共重合ポリマー、エチレンビスステアリン酸アミド、ポリエチレンワックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の気泡調整剤等を予め含有させておいてもよい。
上記結合防止剤、成形時の融着促進剤、帯電防止剤、展着剤及び他の添加剤は、単独もしくは2種以上を混合して用いることができる。
【0023】
また、上記したスチレン系樹脂予備発泡粒子(以下、「予備発泡粒子」という)には、難燃剤を含有していることが好ましい。難燃剤を含有した予備樹脂粒子を得る方法としては、例えば、樹脂粒子と水との懸濁液中、水中に溶解又は懸濁した難燃剤の融点以上の温度雰囲気下で樹脂粒子中に難燃剤を含有させる方法、あるいは押し出しブレンドにより樹脂粒子中に難燃剤を含有させる方法等により難燃剤を含有する樹脂粒子を得、これを用いて発泡剤の含浸及び予備発泡する方法が挙げられる。この時に使用できる難燃剤としては、前記のようにヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモシクロオクタン等が挙げられる。難燃剤含有量としては樹脂粒子全体に対して0.1〜4重量%であることが好ましく、0.5〜3.0重量%であるのが特に好ましい。難燃剤含有量が0.1重量%を下回ると、充分な難燃効果を得ることが困難となるので好ましくない。また、難燃剤含有量が4重量%を上回ると予備発泡粒子同士が合着する傾向が強くなるので好ましくない。
【0024】
予備発泡粒子は、以下のようにして製造される。上記したように、スチレン系樹脂粒子(樹脂粒子)に炭酸ガスを含浸させて発泡性スチレン系樹脂粒子(発泡性粒子)とし、次工程で、蒸気投入ラインと排気ラインを備えた予備発泡機内に、前記発泡性スチレン系樹脂粒子を投入し、蒸気投入ラインから蒸気を0.5〜5.0kg/cm2Gの投入圧力で供給すると共に、排気ラインから蒸気を含む雰囲気ガスを排気し、かつその間、発泡機内圧力を蒸気の投入圧力より0.05〜1.0kg/cm2G低く維持しながら予備発泡させてスチレン系樹脂予備発泡粒子を得る方法である。この方法において、炭酸ガスを含浸させる工程に次いで、直ちに予備発泡を行うことが好ましい。
【0025】
この方法、すなわち本発明によるスチレン系樹脂予備発泡粒子を製造するのに使用できる予備発泡機の一例を、図1により説明する。図中、1は予備発泡機、2は撹拌モーター、3は撹拌翼、4は邪魔棒、5は発泡槽上面検出器、6は発泡性粒子輸送器、7は発泡性粒子計量槽、8は発泡性粒子投入器、9は蒸気吹込制御弁、10は蒸気チャンバー、11は凝縮水排出弁、12は排気制御弁、13は予備発泡粒子排出口、14は予備発泡粒子一時受器、15は空気輸送設備、16は内圧検出・制御装置、17は蒸気吹込孔、18は蒸気投入圧力計、19は減圧弁、20は蒸気元圧力計を意味する。
【0026】
詳細には、一定量の蒸気が常に予備発泡機1内に供給されるように排気制御弁12等で予備発泡機1内の圧力(内圧検出・制御装置16で圧力検出)が常に供給圧力を下回るように制御を行う。例えば、蒸気の投入圧力を1.2kg/cm2G(蒸気投入圧力計118で検出)、予備発泡機内の圧力を0.8kg/cm2Gに設定した場合、予備発泡機1内の圧力を内圧検出・制御装置16にて検出し、制御信号が排気制御弁12へ送られ、排気ラインから0.4kg/cm2G圧分の圧力を抜きながら圧力の制御を行うこととなる。このように、予備発泡機1内圧力と排気制御弁12とをリンクさせて制御することにより、予備発泡機1内圧力の調整することができる。
【0027】
投入圧力と予備発泡機内圧力との差が、0.05kg/cm2G未満であると低密度の予備発泡粒子が得られ難いばかりか、発泡樹脂成形体の外観、内部融着が悪く、非常に商品価値の低いものになってしまう。また、1.0kg/cm2Gを超えると予備発泡時の結合が増加するばかりか、表面光沢度が低く、発泡体表面の凹凸も大きくなり好ましくない。より好ましい圧力差は、0.2〜0.7kg/cm2Gである。
【0028】
予備発泡粒子の粒径は、0.3〜10mm程度が好ましく、また、予備発泡粒子の嵩密度は、0.015〜0.5g/cm3程度が好ましい。そして、予備発泡機内の発泡性樹脂粒子は、通常110〜160℃程度に加熱されることが好ましく、より好ましい加熱温度は110〜130℃である。加熱温度が110℃を下回ると、嵩密度0.5g/cm3以下の予備発泡粒子は得られ難いので好ましくない。また、加熱温度が160℃を上回ると予備発泡粒子同士が合着する傾向が強くなるので好ましくない。
【0029】
上記の予備発泡粒子を発泡成形することで得られるスチレン系樹脂発泡成形体は、長期にわたる寸法安定性に優れている。実施例にも記載したとおり、85℃で168時間加熱したときの寸法安定性(加熱前と加熱後の寸法変化率)を±0.5%以内にすることができる。また、揮発性有機化合物の含有量を1000ppm以下のものとすることができる。
【0030】
発泡成形法としては、特に限定されず、公知の方法をいずれも使用することができる。例えば、予備発泡粒子を成形用型内に充填し、蒸気により加熱する。蒸気との接触によって予備発泡粒子が加熱されると、予備発泡粒子は膨張するが、成形用型によって発泡できる空間が限定されているので、互いに密着すると共に融着一体化して所望の発泡樹脂成形体を得ることができる。発泡樹脂成形体の密度は、0.015〜0.5g/cm3程度が好ましく、特に、0.02〜0.2g/cm3程度が好ましい。
【0031】
【発明の実施の形態】
図2は、本発明によるスチレン系樹脂発泡成形体からなる自動車内装用の緩衝材Aの一例であるルーフサイドインナー50を裏面から見て示している。図示のルーフサイドインナー50は、自動車の車室後部の側面におけるリアピラー(不図示)を覆うようにして車室内後部に装着されるものであり、裏面には、先端に変形部51aを持つクリップ51が6個、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)系のホットメルト接着剤(セキスイエスダイン(株)製エスダイン85RS620)によりルーフサイドインナー50に固定されている(図3参照)。通常、ルーフサイドインナー50の下端50aが車室の適所に差し込まれ、かつ、前記クリップ51を車体フレーム(不図示)に予め形成した孔に挿入することにより、車体側に固定される。また、図示の、ルーフサイドインナー50の表側には、ポリエステル樹脂製不織布のような表皮材52が取り付けられる。
【0032】
大きさや形状は車体に合わせて種々のものが成形されるが、図示のものでは、平均厚さh:40mm,長手方向の最大長さa:700mm,短手方向の最大長さb:500mmであり、周囲にはRが付けてある。
【0033】
本発明による自動車内装用の緩衝材Aでは、高温雰囲気下でも、その寸法変化率はきわめて小さいために、クリップ51により車体パネルに固定した場合でも、従来品のようにひび割れが生じることはなく、表皮材にしわが寄るようなこともない。そのために、緩衝材としての寿命を長期化することができる。また、残留揮発性有機化合物の含有量もきわめて少量とすることができる。
【0034】
【実施例】
以下に、本発明を実施例及び比較例に基づきさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されることはない。なお、以下に示す実施例及び比較例において、寸法変化率及び揮発性有機化合物の含有量の評価は以下のようにして行った。
【0035】
<寸法変化率>
発泡成形用型から取り出した発泡樹脂成形体A(実際には、図2に示す形状の緩衝材A)を、温度23℃、相対湿度50%の恒温恒湿室(JIS−K7100の標準温湿度状態)に24時間放置した後、JIS−K6767に従う試験サンプルとした。
【0036】
この試験サンプルを85℃に保った熱風循環式乾燥機の中に水平に置き、168時間加熱した後に取り出し、再び恒温恒湿室に1時間放置した。加熱試験前後における寸法測定はJIS−K6767に準拠して実施し、寸法変化率Pは試験サンプルの長手方向の最大長さaの変化率で測定した。
寸法変化率P(%)=(a2−a1)×100/a1
(ただし、a1は、型内成形後に23℃、相対湿度50%で24時間放置された試験サンプルの外側長さaの寸法、a2は該試験サンプルを85℃で168時間加熱した後の試験サンプルの外側長さaの寸法である)。
【0037】
<揮発性有機化合物の含有量>
試験サンプルを50℃の恒温室で7日間乾燥させた後、以下に示す三種類の測定法によって得られた値を合計して求めた。
a.(炭素数5以下の炭化水素の測定)
乾燥後の試験サンプルを150℃の熱分解炉に入れ、揮発した炭化水素をガスクロマトグラフィーにて測定した。
ガスクロマトグラフィー(GC):島津製作所社製 GC−14B
熱分解炉:島津製作所社製 PYR−1A
カラム:ポラパックQ 80/100(3mmφ×1.5m)
カラム温度:100℃
検出器(FID)温度:120℃
【0038】
b.(炭素数6以上の炭化水素であって、ガスクロマトグラムに現われるスチレンのピークまでの炭化水素の測定)
乾燥後の試験サンプルをジメチルホルムアミドに溶解し、内部標準液(シクロペンタノール)を加えてGCにより測定した。ただし、特定できないピークについてはトルエンの検出量に換算して定量した。
GC:島津製作所社製 GC−14A
カラム:PEG−20M PT25% 60/80(2.5m)
カラム温度:105℃
検出器(FID)温度:220℃
【0039】
c.(ガスクロマトグラムに現われるスチレンの次のピークから炭素数16(n−ヘキサデカン)までの炭化水素の測定)
乾燥後の試験サンプルをクロロホルムに溶解し、ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)にて測定した。ただし、試験サンプルを溶解しない溶剤のみの空試験を行い、空試験の検出物質量を差し引いた。更に、特定できないピークについてはトルエンの検出量に換算して定量した。
GCMS:島津製作所社製 QP5000
カラム:J&W Scientific社製 DB−1(1μm×60m 0.25mmφ)
測定条件:カラム温度(60℃で1分保持した後、10℃/分で300℃まで昇温)
スプリット比:10
キャリヤガス:He(1ml/min)
インターフェイス温度:260℃
【0040】
【実施例1】
100リットルの反応器に、純水40kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ2.3g、ピロリン酸マグネシウム61gを入れ水性媒体とした。次にベンゾイルパーオキサイド(純度75%)175g、t−ブチルパーオキシベンゾエート31g及びポリエチレンワックス(分子量1000)22gを溶解したスチレン44kgを撹拌しながら加えて懸濁させ、90℃に昇温して重合を開始した。比重法で測定した重合転化率が95重量%まで進行した時点で、反応器を124℃に昇温して2.0時間保持した後、常温まで冷却して、スチレン樹脂粒子を取り出した。ここで得られたスチレン樹脂粒子中の残留スチレンをガスクロマトグラフで測定したところ、425ppmであり、また、GPC法で測定した重量平均分子量は248000であった。
【0041】
スチレン樹脂粒子のうち、粒径0.7〜1.0mmのもの15kgを、内容量が30リットルの回転式耐圧容器に入れた後、展着剤としてポリエチレングリコール300を7.5g、グリセリンモノステアリン酸エステルを7.5g、結合防止剤として炭酸カルシウム30gを添加して容器を回転させ、樹脂粒子の表面に付着させた。次いで回転を停止してから容器内に炭酸ガスを圧入して、25℃、30kg/cm2Gに6時間保って樹脂粒子内に炭酸ガスを含浸させ、発泡性スチレン樹脂粒子を得た。
【0042】
こうして得られた発泡性スチレン樹脂粒子を耐圧容器から取り出し、次工程で撹拌機付き発泡機内に投入した後、投入圧力が1.2kg/cm2Gの蒸気を発泡機缶内に導入した。この時の発泡機内の圧力は0.8kg/cm2Gになるように、排気制御弁の開度を電気信号でコントロールしながら、排気ラインを使って余分な圧力を外部に逃がした(投入圧力と発泡機内圧力との差は0.4kg/cm2G)。このように、蒸気を発泡機内に連続して導入しながら予備発泡させてスチレン樹脂予備発泡粒子とした。この予備発泡粒子の粒径は2.3〜4.0mmであった。
【0043】
予備発泡してから6時間後、型締め後のキャビティ形状が、図2で示す発泡樹脂成形体の形状に設計された発泡成形用型内に、予備発泡粒子を充填し蒸気で加熱して、図2に示す形状のスチレン系樹脂発泡成形体(自動車内装用の緩衝材)を得た。密度は0.020g/cm3であった。得られた発泡樹脂成形体について、上記した評価方法により、寸法変化率及び揮発性有機化合物の含有量を評価した。結果を表1に示す。
【0044】
【実施例2】
発泡性スチレン樹脂粒子を耐圧容器から取り出して直ちに、投入圧力が1.5kg/cm2Gの蒸気を発泡機内に導入し、発泡機内の圧力が0.8kg/cm2Gになるように(投入圧力と発泡機内圧力との差は0.7g/cm2G)調整したこと以外は、実施例1と同様にして予備発泡粒子及び発泡樹脂成形体を得た。予備発泡粒子の粒径は2.3〜4.0mmであり、発泡樹脂成形体の密度は0.025g/cm3であった。得られた発泡樹脂成形体の寸法変化率及び揮発性有機化合物の含有量を上記した評価方法により評価した。結果を表1に示す。
【0045】
【比較例1】
発泡性スチレン樹脂粒子を耐圧容器から取り出して直ちに、投入圧力が2.0kg/cm2Gの蒸気を発泡機内に導入し、発泡機内の圧力は0.8kg/cm2Gになるように(投入圧力と発泡機内圧力との差は1.2kg/cm2G)調整したこと以外は、実施例1と同様にして予備発泡粒子及び発泡樹脂成形体を得た。得られた予備発泡粒子の粒径は2.2〜3.6mmあり、発泡樹脂成形体の密度は0.025g/cm3であった。得られた発泡樹脂成形体の寸法変化率及び揮発性有機化合物の含有量を上記した評価方法により評価した。結果を表1に示す。
【0046】
【比較例2】
発泡性スチレン樹脂粒子を耐圧容器から取り出して直ちに、投入圧力が0.8kg/m2Gの蒸気を発泡機内に導入し、発泡機内の圧力は0.8kg/cm2Gになるように(投入圧力と発泡機内圧力との差は0kg/cm2G)調整したこと以外は、実施例1と同様にして予備発泡粒子及び発泡樹脂成形体を得た。予備発泡粒子の粒径は1.8〜2.8mmであり、発泡樹脂成形体の密度は0.050g/cm3であった。得られた発泡樹脂成形体の寸法変化率及び揮発性有機化合物の含有量を上記した評価方法により評価した。結果を表1に示す。
【0047】
【比較例3】
内容積5リットルの撹拌機付き耐圧容器に、実施例1で得られたスチレン樹脂粒子のうち、粒径0.7〜1.0mmのもの2.0kg、イオン交換水2.2リットル、第三りん酸カルシウム6.0g、及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2gを入れて撹拌を開始した。次に90℃に昇温した後、ブタン140gを圧入して5時間保持した。次いで、30℃まで冷却し、ブタン含有発泡性スチレン樹脂粒子を得た。取り出した発泡性粒子を乾燥後、15℃の恒温室で5日間熟成させた。そして、予備発泡時の結合防止剤としてジンクステアレート、融着促進剤としてヒドロキシステアリン酸トリグリセライドを粒子表面に被膜処理した後、撹拌機付き発泡機内に投入した後、投入圧力が0.5kg/cm2Gの蒸気を発泡機内に導入した。この時の発泡機内の圧力は0.1kg/cm2Gになるように、排気制御弁の開度を電気信号でコントロールしながら、排気ラインを使って余分な圧力を外部に逃がした(投入圧力と発泡機内圧力との差は0.4kg/cm2G)。このように、蒸気を発泡機内に連続して導入しながら予備発泡させてブタン含有のスチレン樹脂予備発泡粒子とした。この予備発泡粒子の粒径は2.3〜4.0mmであった。
【0048】
予備発泡してから6時間後、実施例1で用いたと同じ成形用型を使用して発泡成形し、密度0.020g/cm3である実施例1と同じ形状の発泡樹脂成形体を得た。得られた発泡樹脂成形体の寸法変化率及び揮発性有機化合物の含有量の評価結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
以上の結果から、スチレン系樹脂粒子に炭酸ガスを含浸させて得たスチレン系樹脂予備発泡粒子の型内発泡成形品において、スチレン系樹脂予備発泡粒子として、炭酸ガスを有する発泡性スチレン系樹脂粒子を投入圧力と発泡機内圧力との差を調整して予備発泡粒子としたものを用いて発泡成形することにより、高温の雰囲気下に長時間放置されても寸法変化率がきわめて小さい(85℃で168時間加熱したときの、その加熱前と加熱後における寸法変化率Pは、−0.5%以内)スチレン系樹脂発泡成形体が得られることがわかる。また、揮発性有機化合物の含有量も極めて少ない。
【0051】
従って、上記のようにして得た緩衝材は、自動車が高温雰囲気下に長時間放置されたときでも、スチレン系樹脂発泡体の大きな寸法変化に伴って、クリップ留めしてある緩衝材にひび割れが生じることはなく、表皮材にしわが寄るようなこともなく、さらに、他の部材との隙間が開き商品価値を低下させるようなことも生じない。
【0052】
【発明の効果】
本発明による自動車内装用の緩衝材では、高温雰囲気下でも、その寸法変化率はきわめて小さい。そのために、それをクリップにより2箇所以上で車体パネルに固定した場合でも、ひび割れが生じることはなく、表皮材にしわが寄るようなこともなく、さらに、他の部材との隙間が生じるようなこともない。そのために、緩衝材としての寿命を長期化することができる。また、残留揮発性有機化合物の含有量もきわめて少量とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用できるチレン系樹脂予備発泡粒子を製造するのに用いられる予備発泡機の概略説明図。
【図2】本発明による自動車内装用の緩衝材の一例を示す図。
【図3】本発明の緩衝材に使用できるクリップの一例を示す図。
【符号の説明】
A…自動車内装用の緩衝材、50…ルーフサイドインナー、51…クリップ、52…表皮材、1…予備発泡機、2…撹拌モーター、3…撹拌翼、4…邪魔棒、5…発泡槽上面検出器、6…発泡性粒子輸送器、7…発泡性粒子計量槽、8…発泡性粒子投入器、9…蒸気吹込制御弁、10…蒸気チャンバー、11…凝縮水排出弁、12…排気制御弁、13…予備発泡粒子排出口、14…予備発泡粒子一時受器、15…空気輸送設備、16…内圧検出・制御装置、17…蒸気吹込孔、18…蒸気投入圧力計、19…減圧弁、20…蒸気元圧力計
Claims (4)
- 炭酸ガスを含浸させた発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡させたスチレン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形して得た、85℃で168時間加熱したときの寸法変化率が±0.5%以内であるスチレン系樹脂発泡成形体からなることを特徴とする自動車内装用の緩衝材。
- 車体パネルに固定するためのクリップを2箇所以上に取り付けていることを特徴とする請求項1記載の自動車内装用の緩衝材。
- ルーフサイドインナーである請求項1または2記載の自動車内装用の緩衝材。
- スチレン系樹脂発泡成形体の成形に用いたスチレン系樹脂予備発泡粒子が、スチレン系樹脂粒子に炭酸ガスを含浸させて発泡性スチレン系樹脂粒子とし、次工程で蒸気投入ラインと排気ラインを備えた予備発泡機内に前記発泡性スチレン系樹脂粒子を投入し、蒸気投入ラインから蒸気を0.5〜5.0kg/cm2Gの投入圧力で供給すると共に、排気ラインから蒸気を含む雰囲気ガスを排気し、かつその間、発泡機内圧力を蒸気の投入圧力より0.05〜1.0kg/cm2G低く維持しながら予備発泡させて得たスチレン系樹脂予備発泡粒子であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の自動車内装用の緩衝材。
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2002
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