JP2004237666A - 保護層熱転写シートおよび保護層が形成された印画物 - Google Patents
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Abstract
【課題】印画物上に、耐候性、耐水性、耐薬品性および透明性が良好でかつ水性インクによる捺印ないし書き込みが可能な保護層を、安定して熱転写により形成可能な、保護層熱転写シートを提供する。
【解決手段】印画物上に熱転写によって保護層を形成する保護層熱転写シートであって、基材シート上に熱転写性保護層が形成されてなり、熱転写後の印画物上に形成された前記保護層の最表面がカチオン系水性ウレタン樹脂を主成分とする吸水性層になるように構成されたことを特徴とする、保護層熱転写シート、
およびこの保護層熱転写シートによる保護層が形成された、印画物。
【選択図】 図2
【解決手段】印画物上に熱転写によって保護層を形成する保護層熱転写シートであって、基材シート上に熱転写性保護層が形成されてなり、熱転写後の印画物上に形成された前記保護層の最表面がカチオン系水性ウレタン樹脂を主成分とする吸水性層になるように構成されたことを特徴とする、保護層熱転写シート、
およびこの保護層熱転写シートによる保護層が形成された、印画物。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、保護層熱転写シートに関するものである。
更に詳しくは、本発明は、耐候性、耐水性、耐薬品性を有しかつ水性インクによる捺印および書き込みが可能な保護層を、印画物上に熱転写により安定して形成可能な保護層熱転写シート、およびこの保護層熱転写シートによる保護層が形成された印画物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、印画物等を保護するために、その表面に保護層を形成することが行われている。そのような保護層の形成方法の一つとして、基材シート上に剥離可能に保護層を形成させてなる複層シートを印画物上に重ね合わせ、この複層シートのうちの保護層を印画物の表面に熱転写することが行われている。この印画物の表面に転写された保護層には、優れた耐水性、耐薬品性、耐候性並びに保護された印画物の画像が鮮明に認識できるように透明性および平滑性が良好であることが必要とされている。
【0003】
近年、この保護層には、インキ受容性、即ち、例えば水性ペン、万年筆等で任意に文字や図形を記入できる筆記性、あるいはスタンプあるいはインキ等で捺印が可能となる捺印性、が要求されるようになってきている。
【0004】
特開平8−324140号公報には、最表面を形成する保護層にポリビニルアルコール等の水溶性樹脂をバインダーとして0.1μm以下の微粒子を添加し、多孔質構造を形成することで保護層に吸水性を付与して、水性インキによる捺印を可能にしている。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−324140号公報(第2頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
水性インキによる捺印を可能にするためには、保護層を吸水性のものにする必要がある。しかし、上記特開平8−324140号公報のように、ポリビニルアルコールのような水溶性樹脂を用いた場合には、インクの吸収性は良好であるものの、この樹脂の一部が溶解して保護層としての性能、例えば耐水性等、が低下することがあった。そこで、特開平8−324140号公報では、微粒子の添加量を多くしたり、耐水性領域を形成させるなどして、耐水性の向上をはかっている。しかしながら、この方法では耐水性向上に限界があり、そして微粒子の添加によって保護層の透明性が低下したり転写面の平滑性が低下する場合があって、画像の再現性の点で必ずしも満足がいくものとは言えなかった。加えて、高湿度環境に置かれた場合、使用されたポリビニルアルコールが吸湿して、転写性が不安定になる傾向がみられる。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、基材シートに剥離可能に熱転写性保護層が設けられた保護層熱転写シートにおいて、転写後の該熱転写保護層の構成を最表面層にカチオン系水性ウレタン樹脂を含有した層を設けることにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
従って、本発明による保護層熱転写シートは、印画物上に熱転写によって保護層を形成する保護層熱転写シートであって、基材シート上に熱転写性保護層が形成されてなり、熱転写後の印画物上に形成された前記保護層の最表面がカチオン系水性ウレタン樹脂を主成分とする吸水性層になるように構成されたこと、を特徴とするものである。
【0009】
また、本発明による印画物は、着色剤によって形成された画像を有する印画物の画像形成面の少なくとも一部に、前記の保護層熱転写シートによる保護層が形成されたものであること、を特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による保護層熱転写シートを、必要に応じて図面を参照しながら説明する。
<保護層熱転写シート>
図1、図2および図3は、本発明による保護層熱転写シートの好ましい具体例について、その断面を模式的に示すものである。
図1に示される本発明による保護層熱転写シート1は、基材シート2上に熱転写性保護層3が形成されたものである。この熱転写性保護層3は、カチオン系水性ウレタン樹脂を主成分とする吸水性層からなることができる。この図1の保護層熱転写シート1は、これを印画物(図示せず)上に重ね合わせて熱転写操作に付すと、基材シート2と熱転写性保護層3とがその界面で剥離すると共に、この熱転写性保護層3が印画物に転写される。この熱転写操作によって、印画物上には、カチオン系水性ウレタン樹脂を主成分とする吸水性層4を最表面とする保護層が形成される。
【0011】
図2に示される本発明による保護層熱転写シート1は、基材シート2上に、離型層7を介して熱転写性保護層3が形成されたものである。この具体例において、熱転写性保護層3は、カチオン系水性ウレタン樹脂を主成分とする吸水性層4、中間層5および接着層6とからなっている。即ち、基材シート上に、離型層を介して、前記吸水性層、中間層および接着層からなる熱転写性保護層がこの順序で形成されてなるものである。この図2に示される保護層熱転写シート1では、これを印画物(図示せず)上に重ね合わせて熱転写操作に付すと、離型層7と熱転写保護層3とがその界面で剥離すると共に、カチオン系水性ウレタン樹脂を主成分とする吸水性層4、中間層5および接着層6とからなる熱転写保護層3が印画物に転写される。この転写操作によって、印画物上には、カチオン系水性ウレタン樹脂を主成分とする吸水性層4を最表面とする保護層が形成される。図2に示されるこの保護層熱転写シート1では、接着層6により熱転写保護層3と印画物との接着強度が強固であるとともに、離型層7により熱転写保護層3と基材シート2との剥離性が向上していることから、熱転写性が極めて良好なものである。
【0012】
また、上記の図1または図2に示される保護層熱転写シート1の基材シート2には、必要に応じて、背面層8を設けることができる。図3は、図2に示される基材シート2に背面層8が設けられた具体例を示すものである。
【0013】
また、上記の図1〜3に示される保護層熱転写シート1には、必要に応じて、その熱転写性保護層4中に紫外線吸収材を含有させることができる。この紫外線吸収材料は、カチオン系水性ウレタン樹脂を主成分とする吸水性層4、中間層5および接着層6のいずれか一層あるいは二層以上に含有させることができ、また吸水性保護層4、中間層5および接着層6とは別に積層された層(図示せず)の中に含有させることもできる。
【0014】
本発明による保護層熱転写シート1を形成する各層、即ち、基材シート2、熱転写性保護層3、この熱転写性保護層3中のカチオン系水性ウレタン樹脂を主成分とする吸水性層4、中間層5および接着層6、離型層7、背面層8ならびに他の層等は、それぞれ合目的的な任意の方法によって形成することができる。例えば、上記のいずれかの層上に別の層を順次に塗布あるいは積層することに形成することも出来るし、予め塗布あるいは積層しておいた2層以上の複層構造物を合体することで形成することもできる。
【0015】
<基材シート>
本発明による保護層熱転写シートにおける基材シートとしては、従来からこの種の熱転写シート用途において用いられているものを、そのままあるいは必要な改変を加えて用いることができる。本発明において好ましい基材シートとしては、樹脂材料、例えば(イ)ポリエステル(好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、アイオノマー等、(ロ)紙類、例えばグラシン紙、コンデンサー紙、パラフィン紙等、からなるものを挙げることができる。これらの2種以上からなるものを用いることができる。なお、この基材シートは、本発明による保護層熱転写シートの保護層が印画物に転写された後に剥離されるものなので、この基材シート自体が透明であることは通常必要とされない。しかし、この基材シートには、本発明による保護層熱転写シートが印画物に良好に転写されるように、充分な耐熱性および強度を有するものでなくてはならない。
【0016】
従って、本発明では、耐熱性および強度が優れたもの、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましい。
【0017】
基材シートの厚さは、具体的に用いられた材料および熱転写対象および条件に応じて、必要とされる強度、耐熱性等を考慮して適宜決定することができる。本発明では、例えばポリエチレンテレフタレートを使用する場合は、例えば2.5〜100μmが好ましい。
【0018】
<熱転写性保護層>
上記の基材シートの一方の面には、熱転写性保護層が形成される。
この熱転写性保護層は、印画物上に保護層を形成するものであって、カチオン系水性ウレタン樹脂を主成分とする吸水性層を含んでなり、熱転写後の印画物上の前記保護層の最表面が、前記カチオン系水性ウレタン樹脂を主成分とする吸水性層となるように構成されたものである。
【0019】
従って、この熱転写性保護層3には、ただ一層の吸水性層からなるもの(図1)および吸水性層と他の層(例えば、中間層5、接着層6)とからなるもの(図2、図3)などがある。なお、この場合において、吸水性層、中間層あるいは接着層は、それぞれ一層であっても二層以上存在していても良い。
【0020】
本発明の熱転写保護層3全体の厚さは2〜10μm、特に3〜8μm、が好ましい。
【0021】
<<カチオン系水性ウレタン樹脂を主成分とする吸水性層>>
本発明におけるカチオン系水性ウレタン樹脂を主成分とする吸水性層は、捺印に用いられた水性インキの成分を吸収し安定的に保持する層である。尚、本発明において「捺印」とは、インキを付着させ、この付着させたインキによるパターン(図形および文字等を含む)が識別可能な状態で一定時間保持されることを意味するものであって、単に「印判」を押す態様のみにとらわれない。また、インキパターンは、インキがパターン状で実質的に同時に付着することによって形成されてもよいし、インキが連続的あるいは断続的に付着することによって形成されてもよい。前者の典型例が印判を押す態様であり、後者の典型例が例えばペンによる筆記である。
【0022】
本発明において用いられるカチオン系水性ウレタン樹脂は、基本的にはポリウレタン骨格の主鎖中に親水成分を導入してなる水性ウレタン樹脂であって、その親水成分としてカチオン性のもの用いてなるものである。カチオン成分としては、例えば塩酸塩、スルホン酸塩、カルボン酸塩、酢酸塩等の中和物や、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリビニルアセトアミド、ポリビニルアミン等のポリアミン系の化合物を例示することができる。
このような各種のウレタン樹脂は、一般に優れた柔軟性と強靱性、弾性等を有しており、各種の基材に対して優れた接着性を有する。
【0023】
カチオン系水性ウレタン樹脂を用いることによる効果は、下記の点にあるものと考えられる。
(1)水性スタンプの定着性が良い。カチオン系水性ウレタン樹脂は捺印機構において、水性インキを吸水したのち、その水性スタンプインキが凝集を起こすため、高い定着性(セット性)を示す。したがって、カチオン系水性ウレタン樹脂は、薄膜でかつ樹脂単独で高い定着性を発揮する。一方、ノニオン系ウレタン樹脂の場合も水性インキを吸水するものの、カチオン系のときのように凝集することがないために定着性が劣る。よって、ノニオン系ウレタン樹脂の場合には層厚を厚くする必要があって、透明性および印画の鮮明度等が低下する場合がある。
(2)耐水性および透明性が良好である。カチオン系水性ウレタン樹脂は、疎水性、親油性のウレタン結合を有するために、ポリビニルアルコール等の他の吸水性樹脂に比べて耐水性が優れている。そのために、特開平8−324140号公報のように、シリカの添加や樹脂の硬化を必須としないために、透明性および耐水性を良好なものとすることができる。
(3)転写性の安定性が高い。ウレタン樹脂特有の吸湿および放湿特性を利用できることから、保存時の湿度変化や高湿度環境で保存されたとしても熱転写性の劣化が少ない。
【0024】
カチオン系水性ウレタン樹脂からなる吸水性層の厚みは、0.1〜5.0μm、特に0.3〜3μm、が好ましい。この吸水性層の厚みが0.1μm未満では、所望の捺印性が得られない場合があり、また5.0μm超過のときは、熱転写時の箔切れが悪化する場合があって、好ましくない。
【0025】
本発明でのカチオン系水性ウレタン樹脂からなる吸水性層には、必要に応じて、無機あるいは有機の微粒子を配合することができる。このことによって、この吸水性層に吸収されたインクの速乾性を向上させることができる。配合する微粒子としては、例えばシリカ、アルミナ、その他の金属やそれらの酸化物の微粒子、あるいはそれらの変造物等を例示することができる。本発明では、湿式シリカ、アルミナゾルを好ましいものとして例示することができる。シリカは、従来からインクジェット用途に従来から用いられているものを添加することができ、少ない量で高度のインク吸収性を発揮できることから特に湿式シリカが好ましい。本発明では、トクヤマ社製のファインシールおよび富士シリシア社製のサイリシア等を特に好ましいものとして例示することができる。
【0026】
微粒子の粒径は、1〜20μm、特に1.5〜10μm、が好ましい。微粒子の配合量は、カチオン系水性ウレタン樹脂の固形分に対して40重量部以下が好ましい。40重量部を超えて配合した場合には、インクの定着性が低下する。微粒子の配合によって、吸水性層の透明性、インクの定着性、転写性等が影響を受けることがあることから、微粒子の具体的な配合量は、吸水性層の透明性、インクの定着性、転写性等と速乾性等とを考慮して上記範囲内で適宜決定することができる。
この吸水性層3は、前記の基材シート1上に直接形成することもできるし、所望により前記基材シート1に離型層7を介して形成することもできる(図2)。
【0027】
<<中間層>>
本発明における中間層は、前記のカチオン系水性ウレタン樹脂を主成分とする吸水性層で吸収された水性スタンプの成分を安定的に保持するための層である。従って、この中間層は、吸水性スタンプを吸収保持することができるものであってかつ保護層の構成素材として保護層の透明性および熱転写等を実質的に損なわない素材、例えば、各種の吸水性素材ないし水溶性素材によって形成することができる。本発明では、例えば、水性ポリエステル樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂等によって形成することが好ましい。
中間層の厚さは、0.1〜5.0μm、特に0.3〜3μm、が好ましい。
【0028】
この中間層は本発明において必須のものではないが、この中間層によって捺印性や熱転写性等の諸特性の顕著な向上が見られることから、本発明では中間層を設けることが好ましい。
【0029】
なお、本発明による保護層熱転写シートの熱転写の際に、この中間層と前記吸水層との界面およびこの中間層と接着層との界面とが剥離しないようにすることが必要である。従って、この中間層の選定は、熱転写に際し、吸水性層と中間層との接合強度および接着層と中間層との接合強度の両方が、前記吸水性層と基材シートとの接合強度(あるいは吸水性層と離型層との接合強度)よりも大きくなるようにする必要がある。従って、この中間層は、吸水性層および接着層との両者に対して優れた接合強度を示すものが好ましい。また、この中間層は、転写後、保護層の一部として印画物上に存在することになるから、印画物の印画が識別できるようなものでなくてはならない。従って、一般に無色でありかつ透明性が高いものであることが好ましい。しかし、装飾性を付与するために色彩あるいは模様等が付されていてもよい。
【0030】
<<接着層>>
この接着層は、本発明による保護層熱転写シートを印画物上に熱転写するときに、印画物と保護層とを接合するものである。尚、接着層を設けなくても印画物と保護層との接合強度が十分に高い場合には接着層を設ける必要はない。
【0031】
このような接着層は、各種の熱接着性樹脂を用いることができる。本発明において好ましいものとしては、例えばポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル‐酢酸ビニルとの共重合樹脂、スチレン‐アクリル共重合樹脂などを例示することができる。この中では特にポリエステル系樹脂が好ましい。
接着層の厚さは、0.1〜5μm、特に0.3〜3μm、が好ましい。
【0032】
<離型層>
上記の基材シートと熱転写保護層との間には、必要に応じて離型層を設けることができる。この離型層を設けることによって熱転写性を向上させることができる。この離型層は、熱転写したときに基材シート側に残り、印画物上の保護層側に付着して残らないようにすることが必要である。したがって、離型層は、例えばワックス類、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース誘導体樹脂、ウレタン系樹脂、酢酸系ビニル樹脂、アクリルビニルエーテル樹脂、無水マレイン酸樹脂の少なくとも1種あるいはこれらの共重合物あるいは混合物から形成することかできる。
この離型層の厚さは0.2〜1.5μm、特に0.3〜1μm、が好ましい。
【0033】
<紫外線吸収材>
本発明による保護層熱転写シートでは、必要に応じて、紫外線吸収材を用いることができる。このように紫外線吸収材を用いることによって太陽光等に含まれる紫外線から印画物および保護層自体の変質・劣化を予防あるいは抑制することができるようになる。よって、本発明では、熱転写性保護層中に紫外線吸収材を含有させることが好ましい。
【0034】
この紫外線吸収剤は、転写後の印画物上に存在することになる層(即ち、吸水性層、中間層、接着層)の何れか一層あるいは二層以上の中に配合することができる。前記の吸水性層、中間層、接着層とは別に層を設けて、この層の中に紫外線吸収剤を配合することもできる。
【0035】
そのような紫外線吸収材としては、従来公知の各種化合物を用いることができる。例えば、有機紫外線吸収剤、例えばベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、シアノアクリレート系化合物、サリシレート系化合物等、無機紫外線吸収剤、例えば亜鉛、チタン、セリウム、スズ、鉄等の酸化物等、を好ましいものとして例示することができる。
以上のような紫外線吸収剤は、前記の吸水性層、中間層、接着層、その他の層の中に配合することができる。紫外線吸収剤の配合量は、積層構造の保護層3全体の10〜40重量%、特に25〜35重量%、が好ましい。
【0036】
吸水性層、中間層、接着層とは別に紫外線吸収剤を配合した層を設ける場合、その層は、合目的的な各種の樹脂材料によって形成することができる。例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等に、紫外線吸収剤を配合することができる。
【0037】
また、本発明の保護層熱転写シートの保護層3には、紫外線吸収性をより向上させるために、反応性紫外線吸収剤とアクリル系モノマーとがランダム共重合したガラス転移温度Tgが60℃以上のランダム共重合体を10〜40重量%の範囲で含有してもよい。上記の反応性紫外線吸収剤は、従来公知の有機系紫外線吸収剤であるサリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、ニッケルキレート系、ヒンダードアミン系等の非反応性紫外線吸収剤に、例えば、ビニル基やアクリロイル基、メタアクロイル基等の付加重合性二重結合、あるいは、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基等を導入したものを使用することができる。
【0038】
また、上記のアクリル系モノマーとしては、以下のようなものが挙げられる。メチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタアクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタアクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタアクリレート、ターシャリーブチルアクリレート、ターシャリーブチルメタアクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタアクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタアクリレート、ラウリルトリデシルアクリレート、ラウリルトリデシルメタアクリレート、トリデシルアクリレート、トリデシルメタアクリレート、セリルステアリルアクリレート、セリルステアリルメタアクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、エチルヘキシルメタアクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタアクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタアクリレート、メタクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタアクリレート、ターシャリーブチルアミノエチルアクリレート、ターシャリーブチルアミノエチルメタアクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタアクリレート。さらに、エチレンジアクリレート、エチレンジメタアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタアクリレート、デカエチレングリコールジアクリレート、デカエチレングリコールジメタアクリレート、ペンタデカエチレングリコールジアクリレート、ペンタデカエチレングリコールジメタアクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコールジアクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコールジメタアクリレート、ブチレンジアクリレート、ブチレンジメタアクリレート、アリルアクリレート、アリルメタアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジメタアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタアクリレート、ネオペンチルグリコールペンタアクリレート、ネオペンチルグリコールペンタメタアクリレート、ホスファゼンヘキサアクリレート、ホスファゼンヘキサメタアクリレート等である。これらのアクリル系モノマーは、単独で使用してもよいし、混合して使用してもよい。
【0039】
以上のような反応性紫外線吸収剤とアクリル系モノマーのランダム共重合体における反応性紫外線吸収剤の量は10〜90重量%、好ましくは30〜70重量%の範囲である。また、このようなランダム共重合体の分子量は5000〜250000程度、好ましくは9000〜30000程度とすることができる。
【0040】
このような反応性紫外線吸収剤とアクリル系モノマーとのランダム共重合体として、例えば、下記の一般式〔I〕で表されるランダム共重合体を挙げることができるが、勿論、これに限定されるものではない。
【0041】
【化1】
(上記式〔I〕中、mおよびnは整数を表す)
【0042】
<背面層>
背面層8は、熱転写の際にサーマルヘッドや加熱ロール等が融着するのを防止したり、スリップ性を向上させたり、帯電防止や、保護層熱転写シート1の剛性を高め伸縮を防止して、保護層熱転写シート1の位置決めを容易にすることに寄与する。
【0043】
このような背面層8は、例えば従来から熱転写フィルムの分野にて用いられてきた素材、好ましくは例えばシリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、アクリルポリオール、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンまたはエポキシのプレポリマー、ニトロセルロース樹脂、セルロースナイトレート樹脂、セルロースアセトプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートヒドロジエンフタレート樹脂、酢酸セルロース樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。
【0044】
また、背面層の耐熱性や塗膜強度および基材シートとの密着性を向上させるために、樹脂中に反応基を有する熱可塑性樹脂とポリイソシアネートとの反応硬化物や、不飽和結合を有するモノマー、オリゴマーとの反応生成物を用いることができ、硬化方法は加熱したり、電離放射線を照射したり、その硬化手段は特に限定されない。
【0045】
これらの樹脂からなる背面層に添加、あるいは上塗りすることができる滑り性付与剤としては、燐酸エステル、シリコーンオイル、グラファイトパウダー、シリコーン系グラグトポリマー、フッ素系グラフトポリマー、アクリルシリコーングラフトポリマー、アクリルシロキサン、アリールシロキサンなどのシリコーン重合体が挙げられるが、好ましくは、ポリオール、例えば、ポリアルコール高分子化合物とポリイソシアネート化合物および燐酸エステル系化合物からなる層であり、さらに充填剤を添加することがより好ましい。
背面層の厚さは、0.1〜3μm、特に0.1〜2μm、が好ましい。
【0046】
<色材層>
本発明においては、その熱転写性保護層を基材シート上に単独で設けて保護層のみの転写シートとしてもよいが、熱昇華性色材層あるいは熱溶融性色材層をさらに形成して一体型の熱転写シートとすることもできる。
【0047】
一体型の転写シートとする場合、例えば次のような色材層を順次形成させることができる。
(イ)イエロー染料層/マゼンダ染料層/シアン染料層/熱転写性保護層
(ロ)イエロー染料層/マゼンダ染料層/シアン染料層/ブラック染料層/熱転写性保護層
(ハ)イエロー染料層/マゼンダ染料層/シアン染料層/ブラック溶融インキ層/熱転写性保護層
(ニ)ブラック染料層/熱転写性保護層
(ホ)ブラック溶融インキ層/熱転写性保護層
(ヘ)イエロー溶融インキ層/マゼンダ溶融インキ層/シアン溶融インキ層/熱転写性保護層
上記のような各色材層およびその形成方法自体は従来から公知であり、本発明ではそのような公知の色材および形成方法の中から適したものを適宜選択して用いることができる。
【0048】
<熱転写>
本発明による保護層熱転写シートを着色剤によって形成された画像を有する印画物の画像に熱転写する方法は、特に限定されず、熱転写が良好に行われるようなものであれば従来から用いられてきたものを採用することができる。保護層熱転写シートを印画物上に転写するには、保護層熱転写シートの加熱、保護層熱転写シートと印画物との圧着および基材シートの剥離が必要となる。これらは別々の工程として行うこともできるし、可能な場合には同時に行うことも可能である。また、その際に使用される装置も従来から用いられてきたものを採用することができる。例えば、サーマルプリンター、熱ロール、ラインヒーター、ホットスタンパーなどを用いることができる。
【0049】
<印画物>
本発明による印画物は、着色剤によって形成された画像を有する印画物の画像形成面の少なくとも一部に保護層熱転写シートによる保護層が形成されたものである。本発明における「着色剤」としては、好ましくは熱転写の技術分野において従来から用いられてきた公知の熱昇華性染料あるいは熱溶融性インキを例示することができるが、本発明ではこれに限定されることはない。
【0050】
また、着色剤によって形成された画像を有する「印画物」も、従来公知の任意の材料によって形成することができる。画像が形成される被転写体である受像シートは、特に限定されない。例えば、基材シートとしては各種の樹脂材料、例えば(イ)ポリオレフィン系樹脂(好ましくは、ポリプロピレン、ポリエチレン)、(ロ)ハロゲン化樹脂(好ましくは、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン)、(ハ)ビニル系樹脂(好ましくは、ポリ酢酸ビニル、ポリアルリレート)、(ニ)ポリエステル系樹脂(好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、(ホ)ポリスチレン系樹脂、(へ)セルロース系樹脂等、あるいは各種の紙材、例えば上質紙、アート紙等によって形成することができる。
【0051】
また、上記基材を複数組み合わせて(貼り合わせて)用いてもよい。更に、インクの受容性を有する受容層をそれらの基材上に設けた受像シートも適用可能である。その受容層の設け方は、コーティング法でも、あるいはサーマルヘッドや熱ロールなどによる熱転写でもよい。
【0052】
【実施例】
<実施例1>
厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製「ルミラー」)の一方の面に下記組成の背面層用インキをグラビアコート法により塗布、乾燥後、さらに加熱熟成して硬化処理を施し、背面層(厚さ1μm)を形成した。
【0053】
次に、上記のポリエチレンテレフタレートフィルムの背面層を形成した面と反対の面に、グラビアコート法により保護層を形成した。
表1に示されるように、シリコーン変性アクリル樹脂(「セルトップ226」(ダイセル化学社製))16重量部、アルミ触媒(「セルトップCAT−A」(ダイセル化学社製))3重量部、メチルエチルケトン8重量部およびトルエン8重量部からなる離型剤を、塗布量が0.7g/m2となるようにグラビアコート法によって塗布して、離型層を形成させた。この離型層の厚さは、0.7μmであった。
次いで、カチオン系水性ウレタン樹脂(「IJ−30」(大日本インキ化学工業社製))10重量部、イソプロピルアルコール4重量部および水4重量部からなる吸収材を、塗布量が0.5g/m2となるようにグラビアコート法によって塗布して、吸水性層を形成させた。この吸水性層の厚さは、0.5μmであった。
【0054】
更に、水性ポリエステル樹脂(「MD−1200」(東洋紡社製))10重量部、メチルエチルケトン9重量部およびイソプロピルアルコール18重量部からなる材料を、塗布量が0.4g/m2となるようにグラビアコート法によって塗布して、中間層を形成させた。この中間層の厚さは、0.4μmであった。
【0055】
そして、ポリエステル樹脂(「バイロン700」(東洋紡績社製))12重量部、紫外線吸収剤アクリル樹脂(「UBA635L」(BASFジャパン社製))3重量部およびシリカ(二酸化ケイ素)(「サイリシア310」(富士シリシア社製)、粒径1.4μm)2.25重量部からなる接着材料を、塗布量が1.5g/m2となるようにグラビアコート法によって塗布して、接着層を形成させた。この接着層の厚さは、1.5μmであった。
【0056】
上記のようにして、耐熱性基材シート、離型層、中間層および接着層からなる保護層熱転写シートを作製した。
この保護層熱転写シートを、下記構成の受像シートを作製し、昇華転写型プリンター(キャノン(株)製「CD300」)を使って画像形成を行った。
【0057】
[受像シートの作製]
(受像紙基材)
厚さ38μmの多孔質PETフィルム(三菱化学社製ポリエステルフィルム「W−900J」に、下記組成の中間層用塗布液および受容層用塗布液を、乾燥後塗工厚が各々1.5μm、5μmとなるように順次塗工し、中間層および受容層を形成した。
【0058】
支持基材用の透明PETフィルム(東レ製「ルミラーT−60」)の一方の面にアンカコート処理し、その面に低密度ポリエチレン(「ミラソン16P」三井化学製)を樹脂温度280℃、厚み15μmに溶融押出しし、その低密度ポリエチレンに面する側に未処理面が位置するようにカール防止フィルム用透明PETフィルムを積層した。
【0059】
秤量157g/m2のコート紙(日本加工紙製「NKハイコート」)の片面に前記受容層および中間層を積層した多孔質PETフィルムを下記組成のドライラミネーション用接着剤を用いたドライラミネーションにより貼着し同時に他方の面に前記カール防止フィルム用透明PETフィルムを同様に下記組成のドライラミネーション用接着剤を用いドライラミネーションにより貼着して受像シートを得た。
【0060】
次いで、保護層面と受像シートの印画面を対向させて重ね合わせ、下記の印字条件でサーマルヘッドにより印画面全面に保護層を転写した。
(印字条件)
・サーマルヘッド :KGT−217−12MPL20(京セラ(株)製)
・発熱体平均抵抗値 :3195(Ω)
・主走査方向印字密度:300dpi
・副走査方向印字密度:300dpi
・印字電力 :0.12(W/dot)
・1ライン周期 :5(msec.)
・印字開始温度 :40(℃)
・印字パルス :1ライン周期中に、1ライン周期を256に等分割したパルス長をもつ分割パルスの数を0から255個まで可変できるマルチパルス方式のテストプリンターを用い、各分割パルスのDuty比を60%に固定、ライン周期あたりのパルス数を210個固定とし、ベタ印画を行い、印画面全面に保護層を熱転写して、上記保護層熱転写シートの吸水性層が最表面となるようにした。
【0061】
この転写後の保護シートを下記方法によって、捺印性、耐水性、透明性および転写性を評価した。結果は、表4に示される通りである。
【0062】
(1)捺印性
(a)吸水性
スタンプインキ(Gutenberg Endorsing 社製の水性顔料スタンプ)を付着させたスタンプを、保護層を形成させた画像面に押しつけて捺印した。1分放置後、普通紙を捺印部と重ね合わせ、軽く指先で押さえる程度の圧力を加えた。そのときの普通紙へのインク移り度を観察し、下記基準に従って評価した。
◎:普通紙へのインク移りがなく、インクが保護層に完全に吸収されている。
○:普通紙へのインク移り量が少なく、インクの保護層への吸収が良好。
△:普通紙へのインク移り量が多く、インクの保護層への吸収が不十分。
×:インクの保護層への吸収が悪く、ほとんどのインクが普通紙で移ってしまう。
(b)定着性
吸水性の評価に使用したのと同じスタンプインキを使用して、保護層に捺印し、10分間放置した。放置後、指で10往復擦り、インクの定着度合いを観察し、下記基準に従って評価した。
○:文字の輪郭が十分に残っている。
△:文字は読みとれるものの、文字の輪郭はかなり不鮮明。
×:定着していない。
【0063】
(2)耐水性
綿棒を水に浸し、保護層の樹脂部および捺印部のそれぞれを10往復擦り、その箇所を観察した。
(a)樹脂部
◎:擦った跡が全く観察されない。
○:擦った跡が若干残るが、問題のないレベル。
×:擦った跡が残り、実用上の問題がある。
(b)捺印部
○:水性インクが残り、文字が読みとれる。
×:完全に消去。
【0064】
(3)透明性
保護層を転写した後の印画物で、3色混合ブラック O.D.値2.0付近にて、濃度の低下度合いを、「RD−918」Macbeth社製にて測定した。吸水性層にシリカの添加がないものとの比較。
○:ほとんど濃度低下なし(低下率10%未満)。
×:濃度低下率が10%以上。
【0065】
(4)転写性(高温高湿度環境下における保存安定性)
保護層熱転写シートを40℃、90%R.H.環境下で、100時間保存した。この保護層熱転写シートを使用し、上記の(印字条件)で、保護層を印画物上に転写した。
○:離型層と吸水層との界面で剥離し、きちんと転写している。
×:離型層と吸水層の界面以外の部分で剥離、または転写せず。
【0066】
<実施例2〜9>
カチオン系水性ウレタン樹脂を、表2に示される通りに変更した以外は実施例1と同様にして、保護層熱転写シートを作製した。
この保護層熱転写シートを、実施例1と同様に条件で熱転写して、上記保護層熱転写シートの吸水性層が最表面となるようにした。
この転写後の保護シートを実施例1と同様に評価した。
結果は、表4に示される通りである。
【0067】
<比較例1〜6>
カチオン系水性ウレタン樹脂を、表3に示される通りに変更した以外は実施例1と同様にして、保護層熱転写シートを作製した。
この保護層熱転写シートを、実施例1と同様に条件で熱転写して、上記保護層熱転写シートの吸水層が最表面となるようにした。
この転写後の保護シートを実施例1と同様に評価した。
結果は、表4に示される通りである。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【発明の効果】
本発明による保護熱転写シートは、最表面層にカチオン系水性ウレタン樹脂を含有したものである。このカチオン系水性ウレタン樹脂の特性より、水性スタンプによる捺印性や、保護層に必要になる耐水性や透明性を有し、かつ転写性の良い保護層が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による保護層熱転写シートの一具体例の断面を示す模式図。
【図2】本発明による保護層熱転写シートの一具体例の断面を示す模式図。
【図3】本発明による保護層熱転写シートの一具体例の断面を示す模式図。
【符号の説明】
1 保護層熱転写シート
2 基材シート
3 熱転写性保護層
4 吸水性層
5 中間層
6 接着層
7 離型層
8 背面層
【発明の属する技術分野】
本発明は、保護層熱転写シートに関するものである。
更に詳しくは、本発明は、耐候性、耐水性、耐薬品性を有しかつ水性インクによる捺印および書き込みが可能な保護層を、印画物上に熱転写により安定して形成可能な保護層熱転写シート、およびこの保護層熱転写シートによる保護層が形成された印画物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、印画物等を保護するために、その表面に保護層を形成することが行われている。そのような保護層の形成方法の一つとして、基材シート上に剥離可能に保護層を形成させてなる複層シートを印画物上に重ね合わせ、この複層シートのうちの保護層を印画物の表面に熱転写することが行われている。この印画物の表面に転写された保護層には、優れた耐水性、耐薬品性、耐候性並びに保護された印画物の画像が鮮明に認識できるように透明性および平滑性が良好であることが必要とされている。
【0003】
近年、この保護層には、インキ受容性、即ち、例えば水性ペン、万年筆等で任意に文字や図形を記入できる筆記性、あるいはスタンプあるいはインキ等で捺印が可能となる捺印性、が要求されるようになってきている。
【0004】
特開平8−324140号公報には、最表面を形成する保護層にポリビニルアルコール等の水溶性樹脂をバインダーとして0.1μm以下の微粒子を添加し、多孔質構造を形成することで保護層に吸水性を付与して、水性インキによる捺印を可能にしている。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−324140号公報(第2頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
水性インキによる捺印を可能にするためには、保護層を吸水性のものにする必要がある。しかし、上記特開平8−324140号公報のように、ポリビニルアルコールのような水溶性樹脂を用いた場合には、インクの吸収性は良好であるものの、この樹脂の一部が溶解して保護層としての性能、例えば耐水性等、が低下することがあった。そこで、特開平8−324140号公報では、微粒子の添加量を多くしたり、耐水性領域を形成させるなどして、耐水性の向上をはかっている。しかしながら、この方法では耐水性向上に限界があり、そして微粒子の添加によって保護層の透明性が低下したり転写面の平滑性が低下する場合があって、画像の再現性の点で必ずしも満足がいくものとは言えなかった。加えて、高湿度環境に置かれた場合、使用されたポリビニルアルコールが吸湿して、転写性が不安定になる傾向がみられる。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、基材シートに剥離可能に熱転写性保護層が設けられた保護層熱転写シートにおいて、転写後の該熱転写保護層の構成を最表面層にカチオン系水性ウレタン樹脂を含有した層を設けることにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
従って、本発明による保護層熱転写シートは、印画物上に熱転写によって保護層を形成する保護層熱転写シートであって、基材シート上に熱転写性保護層が形成されてなり、熱転写後の印画物上に形成された前記保護層の最表面がカチオン系水性ウレタン樹脂を主成分とする吸水性層になるように構成されたこと、を特徴とするものである。
【0009】
また、本発明による印画物は、着色剤によって形成された画像を有する印画物の画像形成面の少なくとも一部に、前記の保護層熱転写シートによる保護層が形成されたものであること、を特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による保護層熱転写シートを、必要に応じて図面を参照しながら説明する。
<保護層熱転写シート>
図1、図2および図3は、本発明による保護層熱転写シートの好ましい具体例について、その断面を模式的に示すものである。
図1に示される本発明による保護層熱転写シート1は、基材シート2上に熱転写性保護層3が形成されたものである。この熱転写性保護層3は、カチオン系水性ウレタン樹脂を主成分とする吸水性層からなることができる。この図1の保護層熱転写シート1は、これを印画物(図示せず)上に重ね合わせて熱転写操作に付すと、基材シート2と熱転写性保護層3とがその界面で剥離すると共に、この熱転写性保護層3が印画物に転写される。この熱転写操作によって、印画物上には、カチオン系水性ウレタン樹脂を主成分とする吸水性層4を最表面とする保護層が形成される。
【0011】
図2に示される本発明による保護層熱転写シート1は、基材シート2上に、離型層7を介して熱転写性保護層3が形成されたものである。この具体例において、熱転写性保護層3は、カチオン系水性ウレタン樹脂を主成分とする吸水性層4、中間層5および接着層6とからなっている。即ち、基材シート上に、離型層を介して、前記吸水性層、中間層および接着層からなる熱転写性保護層がこの順序で形成されてなるものである。この図2に示される保護層熱転写シート1では、これを印画物(図示せず)上に重ね合わせて熱転写操作に付すと、離型層7と熱転写保護層3とがその界面で剥離すると共に、カチオン系水性ウレタン樹脂を主成分とする吸水性層4、中間層5および接着層6とからなる熱転写保護層3が印画物に転写される。この転写操作によって、印画物上には、カチオン系水性ウレタン樹脂を主成分とする吸水性層4を最表面とする保護層が形成される。図2に示されるこの保護層熱転写シート1では、接着層6により熱転写保護層3と印画物との接着強度が強固であるとともに、離型層7により熱転写保護層3と基材シート2との剥離性が向上していることから、熱転写性が極めて良好なものである。
【0012】
また、上記の図1または図2に示される保護層熱転写シート1の基材シート2には、必要に応じて、背面層8を設けることができる。図3は、図2に示される基材シート2に背面層8が設けられた具体例を示すものである。
【0013】
また、上記の図1〜3に示される保護層熱転写シート1には、必要に応じて、その熱転写性保護層4中に紫外線吸収材を含有させることができる。この紫外線吸収材料は、カチオン系水性ウレタン樹脂を主成分とする吸水性層4、中間層5および接着層6のいずれか一層あるいは二層以上に含有させることができ、また吸水性保護層4、中間層5および接着層6とは別に積層された層(図示せず)の中に含有させることもできる。
【0014】
本発明による保護層熱転写シート1を形成する各層、即ち、基材シート2、熱転写性保護層3、この熱転写性保護層3中のカチオン系水性ウレタン樹脂を主成分とする吸水性層4、中間層5および接着層6、離型層7、背面層8ならびに他の層等は、それぞれ合目的的な任意の方法によって形成することができる。例えば、上記のいずれかの層上に別の層を順次に塗布あるいは積層することに形成することも出来るし、予め塗布あるいは積層しておいた2層以上の複層構造物を合体することで形成することもできる。
【0015】
<基材シート>
本発明による保護層熱転写シートにおける基材シートとしては、従来からこの種の熱転写シート用途において用いられているものを、そのままあるいは必要な改変を加えて用いることができる。本発明において好ましい基材シートとしては、樹脂材料、例えば(イ)ポリエステル(好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、アイオノマー等、(ロ)紙類、例えばグラシン紙、コンデンサー紙、パラフィン紙等、からなるものを挙げることができる。これらの2種以上からなるものを用いることができる。なお、この基材シートは、本発明による保護層熱転写シートの保護層が印画物に転写された後に剥離されるものなので、この基材シート自体が透明であることは通常必要とされない。しかし、この基材シートには、本発明による保護層熱転写シートが印画物に良好に転写されるように、充分な耐熱性および強度を有するものでなくてはならない。
【0016】
従って、本発明では、耐熱性および強度が優れたもの、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましい。
【0017】
基材シートの厚さは、具体的に用いられた材料および熱転写対象および条件に応じて、必要とされる強度、耐熱性等を考慮して適宜決定することができる。本発明では、例えばポリエチレンテレフタレートを使用する場合は、例えば2.5〜100μmが好ましい。
【0018】
<熱転写性保護層>
上記の基材シートの一方の面には、熱転写性保護層が形成される。
この熱転写性保護層は、印画物上に保護層を形成するものであって、カチオン系水性ウレタン樹脂を主成分とする吸水性層を含んでなり、熱転写後の印画物上の前記保護層の最表面が、前記カチオン系水性ウレタン樹脂を主成分とする吸水性層となるように構成されたものである。
【0019】
従って、この熱転写性保護層3には、ただ一層の吸水性層からなるもの(図1)および吸水性層と他の層(例えば、中間層5、接着層6)とからなるもの(図2、図3)などがある。なお、この場合において、吸水性層、中間層あるいは接着層は、それぞれ一層であっても二層以上存在していても良い。
【0020】
本発明の熱転写保護層3全体の厚さは2〜10μm、特に3〜8μm、が好ましい。
【0021】
<<カチオン系水性ウレタン樹脂を主成分とする吸水性層>>
本発明におけるカチオン系水性ウレタン樹脂を主成分とする吸水性層は、捺印に用いられた水性インキの成分を吸収し安定的に保持する層である。尚、本発明において「捺印」とは、インキを付着させ、この付着させたインキによるパターン(図形および文字等を含む)が識別可能な状態で一定時間保持されることを意味するものであって、単に「印判」を押す態様のみにとらわれない。また、インキパターンは、インキがパターン状で実質的に同時に付着することによって形成されてもよいし、インキが連続的あるいは断続的に付着することによって形成されてもよい。前者の典型例が印判を押す態様であり、後者の典型例が例えばペンによる筆記である。
【0022】
本発明において用いられるカチオン系水性ウレタン樹脂は、基本的にはポリウレタン骨格の主鎖中に親水成分を導入してなる水性ウレタン樹脂であって、その親水成分としてカチオン性のもの用いてなるものである。カチオン成分としては、例えば塩酸塩、スルホン酸塩、カルボン酸塩、酢酸塩等の中和物や、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリビニルアセトアミド、ポリビニルアミン等のポリアミン系の化合物を例示することができる。
このような各種のウレタン樹脂は、一般に優れた柔軟性と強靱性、弾性等を有しており、各種の基材に対して優れた接着性を有する。
【0023】
カチオン系水性ウレタン樹脂を用いることによる効果は、下記の点にあるものと考えられる。
(1)水性スタンプの定着性が良い。カチオン系水性ウレタン樹脂は捺印機構において、水性インキを吸水したのち、その水性スタンプインキが凝集を起こすため、高い定着性(セット性)を示す。したがって、カチオン系水性ウレタン樹脂は、薄膜でかつ樹脂単独で高い定着性を発揮する。一方、ノニオン系ウレタン樹脂の場合も水性インキを吸水するものの、カチオン系のときのように凝集することがないために定着性が劣る。よって、ノニオン系ウレタン樹脂の場合には層厚を厚くする必要があって、透明性および印画の鮮明度等が低下する場合がある。
(2)耐水性および透明性が良好である。カチオン系水性ウレタン樹脂は、疎水性、親油性のウレタン結合を有するために、ポリビニルアルコール等の他の吸水性樹脂に比べて耐水性が優れている。そのために、特開平8−324140号公報のように、シリカの添加や樹脂の硬化を必須としないために、透明性および耐水性を良好なものとすることができる。
(3)転写性の安定性が高い。ウレタン樹脂特有の吸湿および放湿特性を利用できることから、保存時の湿度変化や高湿度環境で保存されたとしても熱転写性の劣化が少ない。
【0024】
カチオン系水性ウレタン樹脂からなる吸水性層の厚みは、0.1〜5.0μm、特に0.3〜3μm、が好ましい。この吸水性層の厚みが0.1μm未満では、所望の捺印性が得られない場合があり、また5.0μm超過のときは、熱転写時の箔切れが悪化する場合があって、好ましくない。
【0025】
本発明でのカチオン系水性ウレタン樹脂からなる吸水性層には、必要に応じて、無機あるいは有機の微粒子を配合することができる。このことによって、この吸水性層に吸収されたインクの速乾性を向上させることができる。配合する微粒子としては、例えばシリカ、アルミナ、その他の金属やそれらの酸化物の微粒子、あるいはそれらの変造物等を例示することができる。本発明では、湿式シリカ、アルミナゾルを好ましいものとして例示することができる。シリカは、従来からインクジェット用途に従来から用いられているものを添加することができ、少ない量で高度のインク吸収性を発揮できることから特に湿式シリカが好ましい。本発明では、トクヤマ社製のファインシールおよび富士シリシア社製のサイリシア等を特に好ましいものとして例示することができる。
【0026】
微粒子の粒径は、1〜20μm、特に1.5〜10μm、が好ましい。微粒子の配合量は、カチオン系水性ウレタン樹脂の固形分に対して40重量部以下が好ましい。40重量部を超えて配合した場合には、インクの定着性が低下する。微粒子の配合によって、吸水性層の透明性、インクの定着性、転写性等が影響を受けることがあることから、微粒子の具体的な配合量は、吸水性層の透明性、インクの定着性、転写性等と速乾性等とを考慮して上記範囲内で適宜決定することができる。
この吸水性層3は、前記の基材シート1上に直接形成することもできるし、所望により前記基材シート1に離型層7を介して形成することもできる(図2)。
【0027】
<<中間層>>
本発明における中間層は、前記のカチオン系水性ウレタン樹脂を主成分とする吸水性層で吸収された水性スタンプの成分を安定的に保持するための層である。従って、この中間層は、吸水性スタンプを吸収保持することができるものであってかつ保護層の構成素材として保護層の透明性および熱転写等を実質的に損なわない素材、例えば、各種の吸水性素材ないし水溶性素材によって形成することができる。本発明では、例えば、水性ポリエステル樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂等によって形成することが好ましい。
中間層の厚さは、0.1〜5.0μm、特に0.3〜3μm、が好ましい。
【0028】
この中間層は本発明において必須のものではないが、この中間層によって捺印性や熱転写性等の諸特性の顕著な向上が見られることから、本発明では中間層を設けることが好ましい。
【0029】
なお、本発明による保護層熱転写シートの熱転写の際に、この中間層と前記吸水層との界面およびこの中間層と接着層との界面とが剥離しないようにすることが必要である。従って、この中間層の選定は、熱転写に際し、吸水性層と中間層との接合強度および接着層と中間層との接合強度の両方が、前記吸水性層と基材シートとの接合強度(あるいは吸水性層と離型層との接合強度)よりも大きくなるようにする必要がある。従って、この中間層は、吸水性層および接着層との両者に対して優れた接合強度を示すものが好ましい。また、この中間層は、転写後、保護層の一部として印画物上に存在することになるから、印画物の印画が識別できるようなものでなくてはならない。従って、一般に無色でありかつ透明性が高いものであることが好ましい。しかし、装飾性を付与するために色彩あるいは模様等が付されていてもよい。
【0030】
<<接着層>>
この接着層は、本発明による保護層熱転写シートを印画物上に熱転写するときに、印画物と保護層とを接合するものである。尚、接着層を設けなくても印画物と保護層との接合強度が十分に高い場合には接着層を設ける必要はない。
【0031】
このような接着層は、各種の熱接着性樹脂を用いることができる。本発明において好ましいものとしては、例えばポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル‐酢酸ビニルとの共重合樹脂、スチレン‐アクリル共重合樹脂などを例示することができる。この中では特にポリエステル系樹脂が好ましい。
接着層の厚さは、0.1〜5μm、特に0.3〜3μm、が好ましい。
【0032】
<離型層>
上記の基材シートと熱転写保護層との間には、必要に応じて離型層を設けることができる。この離型層を設けることによって熱転写性を向上させることができる。この離型層は、熱転写したときに基材シート側に残り、印画物上の保護層側に付着して残らないようにすることが必要である。したがって、離型層は、例えばワックス類、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース誘導体樹脂、ウレタン系樹脂、酢酸系ビニル樹脂、アクリルビニルエーテル樹脂、無水マレイン酸樹脂の少なくとも1種あるいはこれらの共重合物あるいは混合物から形成することかできる。
この離型層の厚さは0.2〜1.5μm、特に0.3〜1μm、が好ましい。
【0033】
<紫外線吸収材>
本発明による保護層熱転写シートでは、必要に応じて、紫外線吸収材を用いることができる。このように紫外線吸収材を用いることによって太陽光等に含まれる紫外線から印画物および保護層自体の変質・劣化を予防あるいは抑制することができるようになる。よって、本発明では、熱転写性保護層中に紫外線吸収材を含有させることが好ましい。
【0034】
この紫外線吸収剤は、転写後の印画物上に存在することになる層(即ち、吸水性層、中間層、接着層)の何れか一層あるいは二層以上の中に配合することができる。前記の吸水性層、中間層、接着層とは別に層を設けて、この層の中に紫外線吸収剤を配合することもできる。
【0035】
そのような紫外線吸収材としては、従来公知の各種化合物を用いることができる。例えば、有機紫外線吸収剤、例えばベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、シアノアクリレート系化合物、サリシレート系化合物等、無機紫外線吸収剤、例えば亜鉛、チタン、セリウム、スズ、鉄等の酸化物等、を好ましいものとして例示することができる。
以上のような紫外線吸収剤は、前記の吸水性層、中間層、接着層、その他の層の中に配合することができる。紫外線吸収剤の配合量は、積層構造の保護層3全体の10〜40重量%、特に25〜35重量%、が好ましい。
【0036】
吸水性層、中間層、接着層とは別に紫外線吸収剤を配合した層を設ける場合、その層は、合目的的な各種の樹脂材料によって形成することができる。例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等に、紫外線吸収剤を配合することができる。
【0037】
また、本発明の保護層熱転写シートの保護層3には、紫外線吸収性をより向上させるために、反応性紫外線吸収剤とアクリル系モノマーとがランダム共重合したガラス転移温度Tgが60℃以上のランダム共重合体を10〜40重量%の範囲で含有してもよい。上記の反応性紫外線吸収剤は、従来公知の有機系紫外線吸収剤であるサリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、ニッケルキレート系、ヒンダードアミン系等の非反応性紫外線吸収剤に、例えば、ビニル基やアクリロイル基、メタアクロイル基等の付加重合性二重結合、あるいは、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基等を導入したものを使用することができる。
【0038】
また、上記のアクリル系モノマーとしては、以下のようなものが挙げられる。メチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタアクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタアクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタアクリレート、ターシャリーブチルアクリレート、ターシャリーブチルメタアクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタアクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタアクリレート、ラウリルトリデシルアクリレート、ラウリルトリデシルメタアクリレート、トリデシルアクリレート、トリデシルメタアクリレート、セリルステアリルアクリレート、セリルステアリルメタアクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、エチルヘキシルメタアクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタアクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタアクリレート、メタクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタアクリレート、ターシャリーブチルアミノエチルアクリレート、ターシャリーブチルアミノエチルメタアクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタアクリレート。さらに、エチレンジアクリレート、エチレンジメタアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタアクリレート、デカエチレングリコールジアクリレート、デカエチレングリコールジメタアクリレート、ペンタデカエチレングリコールジアクリレート、ペンタデカエチレングリコールジメタアクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコールジアクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコールジメタアクリレート、ブチレンジアクリレート、ブチレンジメタアクリレート、アリルアクリレート、アリルメタアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジメタアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタアクリレート、ネオペンチルグリコールペンタアクリレート、ネオペンチルグリコールペンタメタアクリレート、ホスファゼンヘキサアクリレート、ホスファゼンヘキサメタアクリレート等である。これらのアクリル系モノマーは、単独で使用してもよいし、混合して使用してもよい。
【0039】
以上のような反応性紫外線吸収剤とアクリル系モノマーのランダム共重合体における反応性紫外線吸収剤の量は10〜90重量%、好ましくは30〜70重量%の範囲である。また、このようなランダム共重合体の分子量は5000〜250000程度、好ましくは9000〜30000程度とすることができる。
【0040】
このような反応性紫外線吸収剤とアクリル系モノマーとのランダム共重合体として、例えば、下記の一般式〔I〕で表されるランダム共重合体を挙げることができるが、勿論、これに限定されるものではない。
【0041】
【化1】
(上記式〔I〕中、mおよびnは整数を表す)
【0042】
<背面層>
背面層8は、熱転写の際にサーマルヘッドや加熱ロール等が融着するのを防止したり、スリップ性を向上させたり、帯電防止や、保護層熱転写シート1の剛性を高め伸縮を防止して、保護層熱転写シート1の位置決めを容易にすることに寄与する。
【0043】
このような背面層8は、例えば従来から熱転写フィルムの分野にて用いられてきた素材、好ましくは例えばシリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、アクリルポリオール、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンまたはエポキシのプレポリマー、ニトロセルロース樹脂、セルロースナイトレート樹脂、セルロースアセトプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートヒドロジエンフタレート樹脂、酢酸セルロース樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。
【0044】
また、背面層の耐熱性や塗膜強度および基材シートとの密着性を向上させるために、樹脂中に反応基を有する熱可塑性樹脂とポリイソシアネートとの反応硬化物や、不飽和結合を有するモノマー、オリゴマーとの反応生成物を用いることができ、硬化方法は加熱したり、電離放射線を照射したり、その硬化手段は特に限定されない。
【0045】
これらの樹脂からなる背面層に添加、あるいは上塗りすることができる滑り性付与剤としては、燐酸エステル、シリコーンオイル、グラファイトパウダー、シリコーン系グラグトポリマー、フッ素系グラフトポリマー、アクリルシリコーングラフトポリマー、アクリルシロキサン、アリールシロキサンなどのシリコーン重合体が挙げられるが、好ましくは、ポリオール、例えば、ポリアルコール高分子化合物とポリイソシアネート化合物および燐酸エステル系化合物からなる層であり、さらに充填剤を添加することがより好ましい。
背面層の厚さは、0.1〜3μm、特に0.1〜2μm、が好ましい。
【0046】
<色材層>
本発明においては、その熱転写性保護層を基材シート上に単独で設けて保護層のみの転写シートとしてもよいが、熱昇華性色材層あるいは熱溶融性色材層をさらに形成して一体型の熱転写シートとすることもできる。
【0047】
一体型の転写シートとする場合、例えば次のような色材層を順次形成させることができる。
(イ)イエロー染料層/マゼンダ染料層/シアン染料層/熱転写性保護層
(ロ)イエロー染料層/マゼンダ染料層/シアン染料層/ブラック染料層/熱転写性保護層
(ハ)イエロー染料層/マゼンダ染料層/シアン染料層/ブラック溶融インキ層/熱転写性保護層
(ニ)ブラック染料層/熱転写性保護層
(ホ)ブラック溶融インキ層/熱転写性保護層
(ヘ)イエロー溶融インキ層/マゼンダ溶融インキ層/シアン溶融インキ層/熱転写性保護層
上記のような各色材層およびその形成方法自体は従来から公知であり、本発明ではそのような公知の色材および形成方法の中から適したものを適宜選択して用いることができる。
【0048】
<熱転写>
本発明による保護層熱転写シートを着色剤によって形成された画像を有する印画物の画像に熱転写する方法は、特に限定されず、熱転写が良好に行われるようなものであれば従来から用いられてきたものを採用することができる。保護層熱転写シートを印画物上に転写するには、保護層熱転写シートの加熱、保護層熱転写シートと印画物との圧着および基材シートの剥離が必要となる。これらは別々の工程として行うこともできるし、可能な場合には同時に行うことも可能である。また、その際に使用される装置も従来から用いられてきたものを採用することができる。例えば、サーマルプリンター、熱ロール、ラインヒーター、ホットスタンパーなどを用いることができる。
【0049】
<印画物>
本発明による印画物は、着色剤によって形成された画像を有する印画物の画像形成面の少なくとも一部に保護層熱転写シートによる保護層が形成されたものである。本発明における「着色剤」としては、好ましくは熱転写の技術分野において従来から用いられてきた公知の熱昇華性染料あるいは熱溶融性インキを例示することができるが、本発明ではこれに限定されることはない。
【0050】
また、着色剤によって形成された画像を有する「印画物」も、従来公知の任意の材料によって形成することができる。画像が形成される被転写体である受像シートは、特に限定されない。例えば、基材シートとしては各種の樹脂材料、例えば(イ)ポリオレフィン系樹脂(好ましくは、ポリプロピレン、ポリエチレン)、(ロ)ハロゲン化樹脂(好ましくは、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン)、(ハ)ビニル系樹脂(好ましくは、ポリ酢酸ビニル、ポリアルリレート)、(ニ)ポリエステル系樹脂(好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、(ホ)ポリスチレン系樹脂、(へ)セルロース系樹脂等、あるいは各種の紙材、例えば上質紙、アート紙等によって形成することができる。
【0051】
また、上記基材を複数組み合わせて(貼り合わせて)用いてもよい。更に、インクの受容性を有する受容層をそれらの基材上に設けた受像シートも適用可能である。その受容層の設け方は、コーティング法でも、あるいはサーマルヘッドや熱ロールなどによる熱転写でもよい。
【0052】
【実施例】
<実施例1>
厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製「ルミラー」)の一方の面に下記組成の背面層用インキをグラビアコート法により塗布、乾燥後、さらに加熱熟成して硬化処理を施し、背面層(厚さ1μm)を形成した。
【0053】
次に、上記のポリエチレンテレフタレートフィルムの背面層を形成した面と反対の面に、グラビアコート法により保護層を形成した。
表1に示されるように、シリコーン変性アクリル樹脂(「セルトップ226」(ダイセル化学社製))16重量部、アルミ触媒(「セルトップCAT−A」(ダイセル化学社製))3重量部、メチルエチルケトン8重量部およびトルエン8重量部からなる離型剤を、塗布量が0.7g/m2となるようにグラビアコート法によって塗布して、離型層を形成させた。この離型層の厚さは、0.7μmであった。
次いで、カチオン系水性ウレタン樹脂(「IJ−30」(大日本インキ化学工業社製))10重量部、イソプロピルアルコール4重量部および水4重量部からなる吸収材を、塗布量が0.5g/m2となるようにグラビアコート法によって塗布して、吸水性層を形成させた。この吸水性層の厚さは、0.5μmであった。
【0054】
更に、水性ポリエステル樹脂(「MD−1200」(東洋紡社製))10重量部、メチルエチルケトン9重量部およびイソプロピルアルコール18重量部からなる材料を、塗布量が0.4g/m2となるようにグラビアコート法によって塗布して、中間層を形成させた。この中間層の厚さは、0.4μmであった。
【0055】
そして、ポリエステル樹脂(「バイロン700」(東洋紡績社製))12重量部、紫外線吸収剤アクリル樹脂(「UBA635L」(BASFジャパン社製))3重量部およびシリカ(二酸化ケイ素)(「サイリシア310」(富士シリシア社製)、粒径1.4μm)2.25重量部からなる接着材料を、塗布量が1.5g/m2となるようにグラビアコート法によって塗布して、接着層を形成させた。この接着層の厚さは、1.5μmであった。
【0056】
上記のようにして、耐熱性基材シート、離型層、中間層および接着層からなる保護層熱転写シートを作製した。
この保護層熱転写シートを、下記構成の受像シートを作製し、昇華転写型プリンター(キャノン(株)製「CD300」)を使って画像形成を行った。
【0057】
[受像シートの作製]
(受像紙基材)
厚さ38μmの多孔質PETフィルム(三菱化学社製ポリエステルフィルム「W−900J」に、下記組成の中間層用塗布液および受容層用塗布液を、乾燥後塗工厚が各々1.5μm、5μmとなるように順次塗工し、中間層および受容層を形成した。
【0058】
支持基材用の透明PETフィルム(東レ製「ルミラーT−60」)の一方の面にアンカコート処理し、その面に低密度ポリエチレン(「ミラソン16P」三井化学製)を樹脂温度280℃、厚み15μmに溶融押出しし、その低密度ポリエチレンに面する側に未処理面が位置するようにカール防止フィルム用透明PETフィルムを積層した。
【0059】
秤量157g/m2のコート紙(日本加工紙製「NKハイコート」)の片面に前記受容層および中間層を積層した多孔質PETフィルムを下記組成のドライラミネーション用接着剤を用いたドライラミネーションにより貼着し同時に他方の面に前記カール防止フィルム用透明PETフィルムを同様に下記組成のドライラミネーション用接着剤を用いドライラミネーションにより貼着して受像シートを得た。
【0060】
次いで、保護層面と受像シートの印画面を対向させて重ね合わせ、下記の印字条件でサーマルヘッドにより印画面全面に保護層を転写した。
(印字条件)
・サーマルヘッド :KGT−217−12MPL20(京セラ(株)製)
・発熱体平均抵抗値 :3195(Ω)
・主走査方向印字密度:300dpi
・副走査方向印字密度:300dpi
・印字電力 :0.12(W/dot)
・1ライン周期 :5(msec.)
・印字開始温度 :40(℃)
・印字パルス :1ライン周期中に、1ライン周期を256に等分割したパルス長をもつ分割パルスの数を0から255個まで可変できるマルチパルス方式のテストプリンターを用い、各分割パルスのDuty比を60%に固定、ライン周期あたりのパルス数を210個固定とし、ベタ印画を行い、印画面全面に保護層を熱転写して、上記保護層熱転写シートの吸水性層が最表面となるようにした。
【0061】
この転写後の保護シートを下記方法によって、捺印性、耐水性、透明性および転写性を評価した。結果は、表4に示される通りである。
【0062】
(1)捺印性
(a)吸水性
スタンプインキ(Gutenberg Endorsing 社製の水性顔料スタンプ)を付着させたスタンプを、保護層を形成させた画像面に押しつけて捺印した。1分放置後、普通紙を捺印部と重ね合わせ、軽く指先で押さえる程度の圧力を加えた。そのときの普通紙へのインク移り度を観察し、下記基準に従って評価した。
◎:普通紙へのインク移りがなく、インクが保護層に完全に吸収されている。
○:普通紙へのインク移り量が少なく、インクの保護層への吸収が良好。
△:普通紙へのインク移り量が多く、インクの保護層への吸収が不十分。
×:インクの保護層への吸収が悪く、ほとんどのインクが普通紙で移ってしまう。
(b)定着性
吸水性の評価に使用したのと同じスタンプインキを使用して、保護層に捺印し、10分間放置した。放置後、指で10往復擦り、インクの定着度合いを観察し、下記基準に従って評価した。
○:文字の輪郭が十分に残っている。
△:文字は読みとれるものの、文字の輪郭はかなり不鮮明。
×:定着していない。
【0063】
(2)耐水性
綿棒を水に浸し、保護層の樹脂部および捺印部のそれぞれを10往復擦り、その箇所を観察した。
(a)樹脂部
◎:擦った跡が全く観察されない。
○:擦った跡が若干残るが、問題のないレベル。
×:擦った跡が残り、実用上の問題がある。
(b)捺印部
○:水性インクが残り、文字が読みとれる。
×:完全に消去。
【0064】
(3)透明性
保護層を転写した後の印画物で、3色混合ブラック O.D.値2.0付近にて、濃度の低下度合いを、「RD−918」Macbeth社製にて測定した。吸水性層にシリカの添加がないものとの比較。
○:ほとんど濃度低下なし(低下率10%未満)。
×:濃度低下率が10%以上。
【0065】
(4)転写性(高温高湿度環境下における保存安定性)
保護層熱転写シートを40℃、90%R.H.環境下で、100時間保存した。この保護層熱転写シートを使用し、上記の(印字条件)で、保護層を印画物上に転写した。
○:離型層と吸水層との界面で剥離し、きちんと転写している。
×:離型層と吸水層の界面以外の部分で剥離、または転写せず。
【0066】
<実施例2〜9>
カチオン系水性ウレタン樹脂を、表2に示される通りに変更した以外は実施例1と同様にして、保護層熱転写シートを作製した。
この保護層熱転写シートを、実施例1と同様に条件で熱転写して、上記保護層熱転写シートの吸水性層が最表面となるようにした。
この転写後の保護シートを実施例1と同様に評価した。
結果は、表4に示される通りである。
【0067】
<比較例1〜6>
カチオン系水性ウレタン樹脂を、表3に示される通りに変更した以外は実施例1と同様にして、保護層熱転写シートを作製した。
この保護層熱転写シートを、実施例1と同様に条件で熱転写して、上記保護層熱転写シートの吸水層が最表面となるようにした。
この転写後の保護シートを実施例1と同様に評価した。
結果は、表4に示される通りである。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【発明の効果】
本発明による保護熱転写シートは、最表面層にカチオン系水性ウレタン樹脂を含有したものである。このカチオン系水性ウレタン樹脂の特性より、水性スタンプによる捺印性や、保護層に必要になる耐水性や透明性を有し、かつ転写性の良い保護層が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による保護層熱転写シートの一具体例の断面を示す模式図。
【図2】本発明による保護層熱転写シートの一具体例の断面を示す模式図。
【図3】本発明による保護層熱転写シートの一具体例の断面を示す模式図。
【符号の説明】
1 保護層熱転写シート
2 基材シート
3 熱転写性保護層
4 吸水性層
5 中間層
6 接着層
7 離型層
8 背面層
Claims (9)
- 印画物上に熱転写によって保護層を形成する保護層熱転写シートであって、基材シート上に熱転写性保護層が形成されてなり、熱転写後の印画物上に形成された前記保護層の最表面がカチオン系水性ウレタン樹脂を主成分とする吸水性層になるように構成されたことを特徴とする、保護層熱転写シート。
- カチオン系水性ウレタン樹脂を主成分とする吸水性層の厚さが0.1〜5.0μmである、請求項1に記載の保護層熱転写シート。
- 保護層全体の厚みが2〜10μmである、請求項1または2に記載の保護層熱転写シート。
- 基材シート上に、離型層を介して、前記吸水性層からなる熱転写性保護層が形成されてなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の保護層熱転写シート。
- 基材シート上に、離型層を介して、前記吸水性層、中間層および接着層からなる熱転写性保護層がこの順序で形成されてなるものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の保護層熱転写シート。
- 熱転写性保護層中に紫外線吸収材が含有されたものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の保護層熱転写シート。
- 熱転写保護層に、熱昇華性色材層あるいは熱溶融性色材層の少なくとも1層がさらに形成されたものである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の保護層熱転写シート。
- 着色剤によって形成された画像を有する印画物の画像形成面の少なくとも一部に、請求項1〜7のいずれか1項に記載の保護層熱転写シートによる保護層が形成されたものであることを特徴とする、印画物。
- 保護層に水性インキが捺印されたものである、請求項8に記載の印画物。
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