JP5794084B2 - 保護層転写シート及び印画物 - Google Patents

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Description

本発明は、保護層転写シート及び印画物に関し、具体的には、印画物に優れた耐可塑剤性を付与することができる保護層転写シート、及び優れた可塑剤性を有する印画物に関する。
透明性に優れ、中間色の再現性や階調性が高く、従来のフルカラー写真画像と同等の高品質画像が簡易に形成できるという理由から、昇華転写方式により印画物を形成することが広く行われている。印画物としては、身分証明書、運転免許証、会員証等多く分野で使用されているIDカードが知られている。
昇華転写方式には、基材シートの一方の面に染料層を設けた熱転写シートが使用される。この熱転写シートは、耐熱性を有する基材シートと、バインダーに昇華性染料を混合したインキを基材シート上に塗布・乾燥して形成した染料層とを備えたものである。そして、例えば、カード基材等の被転写体と染料層とを重ね合わせ、サーマルヘッドにより、熱転写シートの背面側から熱を印加して3色または4色の多数の色ドットを、被転写体上に移行させることで、被転写体上に画像が形成されてなる印画物が形成される。このような昇華転写方式によれば、熱転写シートに印加するエネルギー量によってドット単位で染料の移行量を制御出来るため濃度階調が可能であることから、画像が非常に鮮明であり、且つ透明性、中間調の色再現性、階調性に優れフルカラー写真画像に匹敵する高品質の印画物を形成することができる。
しかしながら昇華転写方式は、上記の如く階調性画像の形成に優れるものの、形成された印画物は通常の印刷インキによるものとは異なり、色材が顔料でなく比較的低分子量の染料であり且つビヒクルが存在しないため、耐光性、耐久性に劣るといった欠点を有する。そこで、近時、昇華性染料の熱転写によって得られた印画物上に、保護層を有する保護層転写シートを重ね合わせ、サーマルヘッドや加熱ロール等を用いて保護層を転写させ、印画物上に保護層を形成する方法が知られている。このように画像上に保護層を形成することで画像の耐久性を向上させることができる。
このような保護層転写シートとして、例えば、特許文献1には硬化型樹脂からなる保護層を備えた保護層転写シートが開示されている。また、特許文献2には、溶剤不溶性の有機微粒子とバインダー樹脂を主成分とする保護層を備えた保護層転写シートが開示されている。また、特許文献3には、転写性保護層が設けられた保護層転写シートにおいて、該熱転写性保護層が基材側から滑剤を含有する層と滑剤を含有しない層をこの順に形成したものが提案されている。これらの特許文献に開示がされている保護層転写シートによれば、画像(以下、印画物という場合がある。)に耐摩耗性や耐可塑剤性を付与することができるとされている。また、これ以外にも画像の耐久性を向上させるための保護層転写シートに関し種々の試みがなされている。
特許第3440103号公報 特許第4034856号公報 特許第4306046号公報
しかしながら、上記の特許文献に開示がされている保護層転写シート、或いは現在までに種々の提案がなされている保護層転写シートでは、過酷な環境下、例えば高温下で印画物を使用した時の耐可塑剤性が十分であるとはいえず、この点に関して改善の余地がある。本発明はこのような状況においてなされたものであり、印画物に優れた耐可塑剤性を付与することができる保護層転写シートや耐可塑剤性に優れた印画物、特には、過酷な使用状況下であっても、優れた耐可塑剤性を発揮し得る保護層転写シートや印画物を提供することを主たる課題とする。
上記課題を解決するための本発明は、基材上に、積層構造の転写性保護層が剥離可能に設けられた保護層転写シートであって、前記積層構造の転写性保護層のうち1つの層が、分子量が50000以上であって、且つガラス転移温度(Tg)が150℃以上のセルロースアセテートブチレート樹脂を含有することを特徴とする。
また、前記1つの層が、前記積層構造の転写性保護層のうち基材側に最も近い層以外の層であってもよい。
また、前記積層構造の転写性保護層が、基材側から、剥離層、中間層、接着層がこの順で積層された転写性保護層であってもよい。また、前記中間層が、前記1つの層であってもよい。
前記セルロース系樹脂が、セルロースアセテートブチレート、又はセルロースアセテートプロピオネートであってもよい。
また、前記基材と前記積層構造の転写性保護層の間に、離型層が設けられていてもよい。
また、上記課題を解決するための本発明は、画像が形成された基材上に、積層構造の転写性保護層が設けられた印画物であって、前記積層構造の転写性保護層のうちの1つの層は、分子量が50000以上であって、且つガラス転移温度(Tg)が150℃以上のセルロースアセテートブチレート樹脂を含有することを特徴とする。
本発明の保護層転写シートによれば、高温下で使用する場合であっても印画物に優れた耐可塑剤性を付与することができる。また、本発明の印画物によれば、高温下で使用する場合であっても優れた耐可塑剤性を発揮することができる。
本発明の保護層転写シートの一例を示す概略断面図である。 本発明の保護層転写シートの一例を示す概略断面図である。
(保護層転写シート)
以下に、本発明の保護層転写シートについて詳細に説明する。図1は、本発明の保護層転写シートの一例を示す概略断面図である。
図1、図2に示すように、本発明の保護層転写シート10は、基材1上に積層構造の転写性保護層2が基材1から剥離可能に設けられている。なお、図1は、2つの層(2A,2B)が積層された転写性保護層2であり、図2は、3つの層(2A,2B,2C)が積層された転写性保護層2である。転写性保護層2は、少なくとも2以上の層から構成されるものであればよく、図示する形態以外の構成をとることもできる。ここで、本発明の保護層転写シート10では、転写性保護層2を構成する層のうちの1つの層が、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上のセルロース系樹脂を含有することを特徴とする。以下、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上のセルロース系樹脂が含有される層を、セルロース系樹脂含有層という場合がある。
例えば、図1に示す形態にあっては、転写性保護層2を構成する層2A,層2Bのうちのいずれか1つの層がセルロース系樹脂含有層であればよい。また、図2に示す形態にあっては、転写性保護層2を構成する層2A,層2B,層2Cのうちのいずれか1つの層がセルロース系樹脂含有層であればよい。
ガラス転移温度(Tg)が150℃以上のセルロース系樹脂は、耐可塑剤性に優れる特性を有するとともに、その特性を高温下でも発揮し得る。したがって、転写性保護層2を構成する何れか1つの層がセルロース系樹脂含有層である保護層転写シート10によれば、転写性保護層2が転写された印画物に優れた耐可塑剤性を付与することができ、この耐可塑剤性を高温下でも発揮させることができる。
なお、本発明におけるガラス転移温度(Tg)とは、DSC(示差走査熱量測定)による熱量変化の測定(DSC法)に基づき求められる温度である。
セルロース系樹脂含有層を構成するセルロース系樹脂としては、例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、酢酸セルロース、エチルセルロース等を挙げることができる。本発明では、これらのセルロース系樹脂の中から、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上のものを適宜選択して使用することができる。
上記に例示されるセルロース系樹脂の中でも、本発明においては、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上のセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートを特に好適に使用することができる。この2種のセルロース系樹脂は、従来公知のセルロース系樹脂のなかでも特に耐可塑剤性に優れる特徴を有する。
また、さらなる可塑剤性の向上の点からは、セルロース系樹脂は、その分子量が50,000以上のものであることが好ましい。
本発明においてセルロース系樹脂のガラス転移温度(Tg)は150℃以上との条件を満たせばよく、その上限について特に限定はないが、最上層にセルロース系樹脂含有層が位置する場合には、セルロース系樹脂のガラス転移温度(Tg)が高くなるにつれ、被転写体上への転写性保護層の転写性が低下する傾向となる。この点を考慮すると、最上層にセルロース系樹脂含有層が位置する場合におけるセルロース系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば180℃以下であることが好ましい。
ガラス転移温度(Tg)が150℃以上のセルロース系樹脂を含むセルロース系樹脂含有層の形成方法としては、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上のセルロース系樹脂、必要に応じて後述する任意の樹脂や、各種離型剤、添加剤を適当な溶剤に溶解或いは分散させたセルロース系樹脂含有層用塗工液を調製し、これを、基材1、或いは後述する離型層や転写性保護層2を構成する1の層上にグラビア印刷法、スクリーン印刷法またはグラビア版を用いたリバースコーティング法等の従来公知の手段により塗布、乾燥して形成することができる。
上記で説明したように、セルロース系樹脂含有層は、転写性保護層2を構成する層であればよく、図1、図2に示される基材側に最も近い層2Aをセルロース系樹脂含有層2とすることもできる。基材側に最も近い層2Aは、転写性保護層2を印画物上に転写した際に、該印画物上の最表面に位置する層となるが、セルロース系樹脂含有層が、印画物の最表面に位置した場合であっても、印画物に優れた耐可塑剤性が付与される。
なお、セルロース系樹脂は、耐可塑剤性に優れる利点を有する一方で、一般的に「剥離層」と称される層に用いられる材料と比較すると耐擦過性が低く、セルロース系樹脂含有層が印画物の最表面に位置する場合には、印画物の耐擦過性が低くなる虞が生じうる。また、基材1と転写性保護層2との接着力の調整が必要になる虞も生じうる。
この点を考慮すると、セルロース系樹脂含有層が印画物の最表面に位置する場合、換言すれば、転写性保護層2のうち基材1に最も近い層2Aがセルロース系樹脂含有層である場合には、セルロース系樹脂含有層は、(1)Tgが150℃以上のセルロース系樹脂と、耐擦過性に優れる樹脂とが混合されてなる層とすることが好ましい。以下、転写性保護層2のうち基材1に最も近い層を、単に「最下層」という場合がある。
或いは(2)耐擦過性の機能と、耐可塑剤性の機能を分離させ、最下層2Aを、耐擦過性に優れる層とし、耐擦過性に優れる層上に、セルロース系樹脂含有層を設けることが好ましい。
以下、最下層がセルロース系樹脂含有層である場合であって、該セルロース系樹脂含有層が、(1)Tgが150℃以上のセルロース系樹脂と、耐擦過性に優れる樹脂とが混合されてなる層について説明する。
セルロース系樹脂含有層が上記(1)の場合には、耐擦過性に優れる樹脂を配合させる分だけ、Tgが150℃以上のセルロース系樹脂の配合量が減少することから、その配合量によっては耐可塑剤性が低下する虞が生じうる。したがって、Tgが150℃以上のセルロース系樹脂と、耐擦過性に優れる樹脂とを混合する場合には、耐擦過性に優れる樹脂の固形分総量に対し、Tgが150℃以上のセルロース系樹脂が10質量%以上60質量%以下の範囲内で含有されていることが好ましい。
また、基材1と転写性保護層2との接着力は、各種の添加剤によって調整することができる。すなわち、基材1と転写性保護層2との接着力を弱めたい場合は、離型性を向上させるための各種の離型剤が含有されていることが好ましい。逆に、基材1と転写性保護層2との接着力を強めたい場合は、各種の密着力を向上させる調整剤が含有されていることが好ましい。
耐擦過性に優れる樹脂としては、例えば、メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、紫外線吸収性樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、これらの各樹脂をシリコーン変性させた樹脂、これらの各樹脂の混合物、電離放射線硬化性樹脂、紫外線吸収性樹脂等が挙げられる。なかでも、アクリル系樹脂や、電離放射線硬化性樹脂は、耐擦過性に特に優れる点で好適に使用することができる。
電離放射線硬化性樹脂としては特に限定されることはなく、従来公知の電離放射線硬化性樹脂の中から適宜選択して用いることができ、例えば、ラジカル重合性のポリマー又はオリゴマーを電離放射線照射により架橋、硬化させ、必要に応じて光重合開始剤を添加し、電子線や紫外線によって重合架橋させたものを用いることができる。紫外線吸収性樹脂は、印画物に耐光性を付与する点で特に優れている。
紫外線吸収性樹脂としては、例えば、反応性紫外線吸収剤を熱可塑性樹脂又は上記の電離放射線硬化性樹脂に反応、結合させて得た樹脂を使用することができる。より具体的には、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、ニッケルキレート系、ヒンダートアミン系のような従来公知の非反応性の有機系紫外線吸収剤に、付加重合性二重結合(例えばビニル基、アクリロイル基、メタアクリロイル基など)、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基のような反応性基を導入したものが挙げられる。
各種離型剤としては、ワックス類、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、フッ素樹脂、フッ素変性樹脂、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、熱架橋性エポキシ−アミノ樹脂及び熱架橋性アルキッド−アミノ樹脂等が挙げられる。
各種の密着力を向上させる調整剤としては、基材1との接着力が強い材料であれば、従来公知の材料を特に制限無く用いる事ができるが、例えば、ポリエステル樹脂を好ましく用いることができる。
なお、上記では、最下層2Aが、セルロース系樹脂含有層である場合において、(1)Tgが150℃以上のセルロース系樹脂と、耐擦過性に優れる樹脂と、離型剤を混合した例を挙げ説明を行ったが、耐可塑剤性にのみ着目すれば、転写性保護層2を構成する層のうち基材1に最も近い層を、耐可塑剤性に優れる樹脂や、離型剤が含まれていないセルロース系樹脂含有層としてもよい。
次に、耐擦過性と耐可塑剤性の機能を分離させ、最下層2Aを耐擦過性に優れる層とし、耐擦過性に優れる層上に、セルロース系樹脂含有層を設けた例について説明する。
耐擦過性に優れる層としては、上記で説明した耐擦過性に優れる樹脂を含む層を挙げることができる。この耐擦過性に優れる層は、一般的に「剥離層」と称される層であり、上記で例示した樹脂以外にも、剥離層の分野で従来公知のものを適宜選択して、基材1上に設けることができる。また、当該層には、必要に応じて上記で例示した離型剤を含有させてもよく、以下で説明する離型層を、基材1と転写性保護層2との間に設けることとしてもよい。
このように、最下層2Aを耐擦過性に優れる層とし、該層上にセルロース系樹脂含有層を設けることで、セルロース系樹脂含有層に含有されるガラス転移温度(Tg)が150℃以上のセルロース系樹脂の含有量を適宜調整することができ、転写性保護層2が転写された印画物に耐擦過性とともに、優れた耐可塑剤性を付与することができる。
また、図1に示す層2B,図2に示す層2Cのように、転写性保護層2を構成する層のうち最上層に位置する層には、印画物との密着性が要求される。上記で説明したように、セルロース系樹脂含有層は、転写性保護層2を構成する層のいずれの層であってもよく、したがって、図1に示す層2B,図2に示す層2Cが、セルロース系樹脂含有層であってもよい。以下、転写性保護層2を構成する層のうち最上層に位置する層を、単に最上層という場合がある。
一方で、セルロース系樹脂含有層に含まれるガラス転移温度(Tg)が150℃以上のセルロース系樹脂は、それ単独では被転写体と転写性保護層2との十分な密着性を満足させえることができない。したがって、最上層にセルロース系樹脂含有層が位置する場合には、該層には、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上のセルロース系樹脂とともに、被転写体との密着性を向上させることができる成分が含有されていることが好ましい。
被転写体との密着性を向上させることができる成分としては、一般的に「接着層」、「ヒートシール層」と称される層で従来公知の成分を適宜選択して用いることができる。例えば、従来公知の感熱接着剤、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂などを挙げることができる。
最上層にセルロース系樹脂含有層が位置する場合、上記で例示される密着性を向上させるための成分の含有量が、セルロース系樹脂含有層の固形分総量に対し、10質量%以上30質量%以下の範囲内で含有されていることが好ましい。10質量%未満である場合には、被転写体と転写性保護層2との密着性を十分に満足させることができない場合があり、30質量%を超えるとその分、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上のセルロース系樹脂の含有量が低下し、耐可塑剤性が低下する虞がある。
(最良の形態)
印画物に最も優れた耐可塑剤性を付与することを考慮すると、セルロース系樹脂層に耐可塑剤性の機能のみを持たせ、セルロース系樹脂含有層以外の層に、耐擦過性や、被転写体と転写性保護層2との密着性を付与する構成とすることが好ましい。
具体的には、図2に示す形態の如く、3層以上の層が積層されてなる転写性保護層2とする構成とし、最下層2Aを剥離層、最上層2Cを接着層、最下層と最上層との間に中間層として、セルロース系樹脂含有層を設ける構成とすることが好ましい。この構成により、耐可塑剤性、耐擦過性、被転写体との密着性に優れる保護層転写シートとすることができる。
剥離層としては、上記耐擦過性に優れる層で説明した層をそのまま用いることができる。
(接着層)
接着層としては、上記で説明した密着性を向上させるための成分を含む層をそのまま用いることができる。接着層の形成方法としては、密着性を向上させるための成分を適当な溶媒に溶解或いは分散し、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、無機あるいは有機のフィラー成分、界面活性剤、離型剤等を添加した接着層用塗工液を調製し、これをセルロース系樹脂含有層上に、グラビアコート、グラビアリバースコートなどの方法で塗工・乾燥して形成することができる。
接着層の厚みについて特に限定はないが、乾燥時の塗工量が1.4〜1.8g/m2程度であることが好ましい。
(離型層)
基材1と転写性保護層2との間に、転写性保護層2の離型性を向上させるための離型層(図示しない)を設けてもよい。なお、離型層は本発明の保護層転写シート10における任意の層である。離型層を形成する樹脂としては、例えば、ワックス類、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、フッ素樹脂、フッ素変性樹脂、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、熱架橋性エポキシ−アミノ樹脂及び熱架橋性アルキッド−アミノ樹脂等が挙げられる。また、離型層は、1種の樹脂からなるものであってもよく、2種以上の樹脂からなるものであってもよい。また離型層は、離型性樹脂に加えイソシアネート化合物等の架橋剤、錫系触媒、アルミニウム系触媒等の触媒を用いて形成することとしてもよい。離型層の厚みは0.5〜5μm程度が一般的である。離型層の形成方法としては、上記樹脂を適当な溶剤により、溶解または分散させて離型層用塗工液を調製し、これを基材1上にグラビア印刷法、スクリーン印刷法またはグラビア版を用いたリバースコーティング法等の従来公知の手段により塗布、乾燥して形成することができる。
(背面層)
また、図1、図2に示すように、基材1の転写性保護層2が設けられている面とは異なる面上に、耐熱性、及び印画時におけるサーマルヘッドの走行性等を向上させるための背面層4を設けてもよい。なお、背面層4は本発明の保護層転写シート10における任意の構成である。
背面層4は、従来公知の熱可塑性樹脂等を適宜選択して形成することができる。このような、熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、スチレンアクリレート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルクロリド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂、これらのシリコーン変性物等が挙げられる。中でも、耐熱性等の点から、ポリアミドイミド系樹脂又はそのシリコーン変性物等を好ましく用いることができる。
また、背面層4には、上記熱可塑性樹脂に加え、スリップ性を向上させる目的で、ワックス、高級脂肪酸アミド、リン酸エステル化合物、金属石鹸、シリコーンオイル、界面活性剤等の離型剤、フッ素樹脂等の有機粉末、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム等の無機粒子等の各種添加剤が含有されていることが好ましく、リン酸エステル又は金属石鹸の少なくとも1種が含有されていることが特に好ましい。
背面層4は、例えば、上記熱可塑性樹脂、必要に応じて添加される各種添加剤を適当な溶媒に分散又は溶解させた塗工液を、基材1上に、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング印刷法等の公知の手段により、塗布し、乾燥することにより形成することができる。背面層4の厚みは、耐熱性等の向上等の点から、乾燥後塗工量が2g/m2以下であることが好ましく、0.1〜1g/m2にすることがより好ましい。
(被転写体)
上記保護層転写シート10の転写に使用可能な被転写体としては、例えば、普通紙、上質紙、トレーシングペーパー、プラスチックフィルム、熱転写受像紙等の従来公知の材料を挙げることができ、その材料について特に限定されない。
(印画物)
次に、本発明の印画物について説明する。本発明の印画物は、画像が形成された基材上に、積層構造の転写性保護層が設けられた印画物であって、積層構造の転写性保護層のうちの1つの層は、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上のセルロース系樹脂を含有することを特徴とする。
(画像が形成された基材)
画像が形成された基材としては、上記被転写体上に画像が形成されたものを適宜選択して用いることができここでの説明は省略する。
(積層構造の転写性保護層)
積層構造の転写性保護層を構成する層のうち1つの層は、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上のセルロース系樹脂を含有する。この積層構造の転写性保護層は、上記保護層転写シート10と被転写体とを重ね合わせ、被転写体上に、転写性保護層2を転写することで得ることができる。転写性保護層は、上記本発明の保護層転写シート10で説明したものをそのまま用いることができ、ここでの説明は省略する。
上記特徴を有する本発明によれば、耐可塑剤性に優れた印画物とすることができる。また、印画物の一実施形態によれば、耐可塑剤性に加え、耐擦過性にも優れる印画物とすることができる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明を説明する。なお、文中の「部」は特に断りの内限り質量基準である。
(実施例1)
基材として厚さ5μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、この上に、下記組成の剥離層用塗工液1を乾燥時塗布量が1.0g/m2になるように塗布し転写性保護層を構成する剥離層を形成した。次いで、剥離層上に下記組成の中間層用塗工液1を乾燥時塗布量が0.3〜0.5g/m2になるように塗布し転写性保護層を構成する中間層を形成した。次いで、中間層上に下記組成の接着層用塗工液1を乾燥時塗布量が1.6g/m2になるように塗布し転写性保護層を構成する接着層を形成した。また、基材の転写性保護層が形成される面とは異なる面上に下記組成の背面層用塗工液を乾燥時塗布量が1.0g/m2になるように塗布し背面層を形成することで、実施例1の保護層転写シートを得た。
(剥離層用塗工液1)
・アクリル樹脂 20部
(ダイヤナールBR−80 三菱レイヨン(株)製)
・ポリエチレンワックス(平均粒径;10μm) 1部
・メチルエチルケトン/トルエン(質量比1:1) 80部
(中間層用塗工液1)
・セルロース樹脂(Tg;161℃) 10部
(CAB171−15 イーストマンケミカル社製)
・メチルエチルケトン/トルエン(質量比1:1) 90部
(接着層用塗工液1)
・ポリエステル樹脂 20部
(バイロン200 東洋紡(株)製)
・紫外線吸収剤共重合樹脂 10部
(UVA−635L BASF社製)
・メチルエチルケトン/トルエン(質量比1:1) 80部
(背面層用塗工液)
・ポリビニルブチラール樹脂 13.6部
(エスレックBX−1 積水化学工業(株)製)
・ポリイソシアネート硬化剤 0.6部
(タケネートD218 武田薬品工業(株)製)
・リン酸エステル 0.8部
(プライサーフA208S 第一工業製薬(株)製
・メチルエチルケトン 42.5部
・トルエン 42.5部
(実施例2)
中間層用塗工液1を下記組成の中間層用塗工液2に変更した以外はすべて実施例1と同様にして実施例2の保護層転写シートを得た。
(中間層用塗工液2)
・セルロース樹脂(Tg;159℃) 10部
(CAP504−0.2 イーストマンケミカル社製)
・メチルエチルケトン/トルエン(質量比1:1) 90部
(実施例3)
剥離層用塗工液1にかえて下記組成の剥離層用塗工液2を使用し、中間層を形成せずに、剥離層上に接着層を形成した以外はすべて実施例1と同様にして実施例3の保護層転写シートを得た。
(剥離層用塗工液2)
・セルロース樹脂(Tg;161℃) 20部
(CAB171−15 イーストマンケミカル社製)
・アクリル樹脂(Tg;105℃) 4部
(ダイヤナールBR−80 三菱レイヨン(株)製)
・ポリエチレンワックス(平均粒径;10μm) 1部
・メチルエチルケトン/トルエン(質量比1:1) 75部
(実施例4)
接着層用塗工液1にかえて下記組成の接着層用塗工液2を使用し、中間層を形成せずに、剥離層上に接着層を形成した以外はすべて実施例1と同様にして実施例3の保護層転写シートを得た。
(接着層用塗工液)
・セルロース樹脂(Tg;161℃) 20部
(CAB171−15 イーストマンケミカル社製)
・ポリエステル樹脂
(バイロン200 東洋紡(株)製) 4部
・紫外線吸収剤共重合樹脂 10部
(UVA−635L BASF社製)
・メチルエチルケトン/トルエン(質量比1:1) 66部
(比較例1)
中間層用塗工液1にかえて下記組成の中間層用塗工液Aを使用した以外は、すべて実施例1と同様にして比較例1の保護層転写シートを得た。
(中間層用塗工液A)
・セルロース樹脂(Tg;123℃) 10部
(CAB381−0.1 イーストマンケミカル社製)
・メチルエチルケトン/トルエン(質量比1:1) 90部
(比較例2)
中間層用塗工液1にかえて下記組成の中間層用塗工液Bを使用した以外は、すべて実施例1と同様にして比較例2の保護層転写シートを得た。
(中間層用塗工液B)
・セルロース樹脂(Tg;136℃) 10部
(CAB553−0.4 イーストマンケミカル社製)
・メチルエチルケトン/トルエン(質量比1:1) 90部
(比較例3)
中間層用塗工液1にかえて下記組成の中間層用塗工液Cを使用した以外は、すべて実施例1と同様にして比較例3の保護層転写シートを得た。
(中間層用塗工液C)
・アクリル樹脂(Tg;105℃) 10部
(ダイヤナールBR−80 三菱レイヨン(株)製)
・メチルエチルケトン/トルエン(質量比1:1) 90部
(比較例4)
中間層用塗工液1にかえて下記組成の中間層用塗工液Dを使用した以外は、すべて実施例1と同様にして比較例4の保護層転写シートを得た。
(中間層用塗工液D)
・ポリエステル樹脂(Tg;53℃) 10部
(バイロン220 東洋紡(株)製)
・メチルエチルケトン/トルエン(質量比1:1) 90部
(画像の形成)
下記組成のカード基材からなる被転写体を用いて、その被転写体に、下記のサーマルプリンタを用い、顔写真を色分解して得たイエロー、マゼンタ、シアンそれぞれの画像情報に従って、各染料を被転写体に転写して、フルカラーの写真画像を形成した。また、イエロー、マゼンタ、シアンの染料としては、HID社製プリンタ(HDP−600)用の熱転写シートを使用した。
<カード基材の材料組成>
・ポリ塩化ビニルコンパウンド(重合度800) 100部
(安定化剤等の添加剤を約10%含有)
・白色顔料(酸化チタン) 10部
・可塑剤(DOP) 0.5部
<サーマルプリンタ>
階調制御方式;1ライン周期を256に等分割したパルス長をもつ分割パルス数を0から255個まで可変できるマルチパルス方式
サーマルヘッド;KEE−57−12GAN2−STA(京セラ(株)製)
発熱体平均抵抗値;3303(Ω)
主走査方向印字密度;300dpi
副走査方向印字密度;300dpi
印画電圧;18(V)
1ライン周期;3.0(msec.)
印字開始温度;35(℃)
パルスデューティー;85%
(転写性保護層の転写)
実施例1〜4、比較例1〜4の保護層転写シートを用い、以下の条件にて、上記のフルカラーの写真画像が形成された塩ビカード上に転写性保護層を転写し、実施例1〜4、比較例1〜4の印画物を得た。
<転写性保護層の転写条件>
転写性保護層の転写は、上記のサーマルプリンタで、階調値230にて行なった。
(耐擦過性評価)
上記転写性保護層の転写によって得られた実施例1〜4、比較例1〜4の印画物を耐擦過性試験機(東洋精機社製ロータリーアブレージョンテスタ)を用い、研磨輪CS−10Fを荷重500gにて保護層上で500回転の磨耗性試験を行い、目視にて保護層の耐擦過性を下記基準で評価した。耐擦過性の評価結果を表1に示す。
<評価基準>
◎;画像が全く影響を受けていない。
○;画像が摩耗の影響を受け始めているが、ほとんど目立たない。
△;若干の摩耗が確認される。
×;かなり摩耗している。
(耐可塑剤性評価)
可塑剤入り軟質塩化ビニルシート(三菱化学(株)製アルトロン#480、厚み400μm)と印画物の保護層転写面を重ね合わせ、24g/cm2の荷重をかけて80℃環境下に8時間保存し、可塑剤による画像の劣化状態を目視により観察し、下記基準で保護層の耐可塑剤性を評価した。耐可塑剤性の評価結果を表1に併せて示す。
<評価基準>
◎・・・染料の移行が全く無い。
○・・・染料の移行がほとんど無い。
△・・・ある程度染料の移行が確認できる。
×・・・ほぼ全面に染料が移行している。
(接着性評価)
上記組成のカード基材からなる被転写体を用いて、その被転写体に上記のサーマルプリンタを用いてモノカラー画像を形成した。次いで、実施例1〜4、比較例1〜4の保護転写シートを用いて、モノカラー画像が形成された塩ビカード上に255〜130階調まで25階調ずつ階調を変化させたパターン画像を転写後、どの階調で転写しているのかを目視にて判断し、以下の評価基準に基づいて接着性の評価を行った。なお、低階調で転写性保護層が転写するほど接着性が良好であるといえる。接着性の評価結果を表1に併せて示す。
<評価基準>
◎・・・255〜130階調で転写性保護層が転写した。
○・・・255〜155階調で転写性保護層が転写した。
△・・・255〜180階調で転写性保護層が転写した。
×・・・255〜205階調で転写性保護層が転写した。
Figure 0005794084
10…保護層転写シート
1…基材
2…転写性保護層
4…背面層

Claims (6)

  1. 基材上に、積層構造の転写性保護層が剥離可能に設けられた保護層転写シートであって、
    前記積層構造の転写性保護層のうち1つの層が、分子量が50000以上であって、且つガラス転移温度(Tg)が150℃以上のセルロースアセテートブチレート樹脂を含有することを特徴とする保護層転写シート。
  2. 前記1つの層が、前記積層構造の転写性保護層のうち基材側に最も近い層以外の層であることを特徴とする請求項1に記載の保護層転写シート。
  3. 前記積層構造の転写性保護層が、基材側から、剥離層、中間層、接着層がこの順で積層された転写性保護層であることを特徴とする請求項1又は2に記載の保護層転写シート。
  4. 前記中間層が、分子量が50000以上であって、且つガラス転移温度(Tg)が150℃以上のセルロースアセテートブチレート樹脂を含有することを特徴とする請求項3に記載の保護層転写シート。
  5. 前記基材と前記積層構造の転写性保護層の間に、離型層が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の保護層転写シート。
  6. 画像が形成された基材上に、積層構造の転写性保護層が設けられた印画物であって、
    前記積層構造の転写性保護層のうちの1つの層は、分子量が50000以上であって、且つガラス転移温度(Tg)が150℃以上のセルロースアセテートブチレート樹脂を含有することを特徴とする印画物。
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