JP2004235004A - Izo透明導電膜形成方法とizo透明導電膜 - Google Patents

Izo透明導電膜形成方法とizo透明導電膜 Download PDF

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宏元 井
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Abstract

【課題】窒素のような安価且つ安全な放電ガスを用いても、高密度プラズマ状態が達成出来、エッチング性が良好な薄膜を高速で製膜することが出来るIZO透明導電膜形成方法、及びこれにより良質で高性能なIZO透明導電膜を提供する。
【解決手段】高分子基材上に酸化亜鉛含有比率4〜25質量%のIZO透明導電膜を形成する方法において、反応容器内の放電空間外の酸素濃度が2〜9体積%であり、かつ、窒素大気圧プラズマ法により、2つの異なる周波数を印加して作製することを特徴とするIZO透明導電膜形成方法。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、In−Zn−O(IZOと記すことあり)を主成分とする透明導電膜(IZO膜と記すことあり)形成方法とそれにより作製されたIZO透明導電膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
各種表示素子或いは薄膜太陽電池の電極部には、可視光線透過率が高く、低抵抗な特性を有する透明導電膜が欠かせない。また、近年の携帯移動端末の急激な小型化・軽量化に伴って、透明電極基板にも、より軽量の部材が要求されている。
【0003】
そのため、基板材料としては、ガラスに比べてより軽量な透明高分子材料にIZO膜を積層した透明導電性フィルムが使用されつつある。
【0004】
特開2000−243160号公報にはスパッタリング法による製膜時の条件を規定することで、熱処理を施しても構造・抵抗値の変化が小さいIZOを作製する技術が開示されている。しかし、製膜工程が真空中のためにバッチ処理にせねばならず、生産性が低くコストが高くなってしまう。
【0005】
特開2000−303175号公報にはAGP法(大気圧放電法)による透明導電膜を作製する技術が開示されている。しかし、放電ガスに使用しているヘリウムやアルゴンが高価なため、これを工業的に利用し大量生産を行うことは困難である。しかし、従来の方法では、放電ガスとして希ガス以外の安価なガス、例えば、空気成分中の酸素ガス、窒素ガスや二酸化炭素等を使用するには放電を開始する電圧が高く、高周波電界のもとでは安定な放電が得られず、薄膜が形成されにくい。
【0006】
一方、特開平10−154598号公報には、パルス電界を用いることにより、窒素ガスのような放電開始電圧の高いガスでも放電が達成出来ることが開示されている。しかし、プラズマ密度が低く、良質な膜が得られないばかりか、製膜速度も遅く生産性が非常に低い。
【0007】
特開平11−16696号公報に、酸素ガス、あるいは酸素ガスと希ガスを混合したガスを、予備放電電極において低周波電圧をかけて活性化または電離させる。次にこの電離または活性化されたガスを、電離または活性化されてない酸素ガス、あるいは酸素ガスと希ガスを混合したガスと共に、前記予備放電電極に対し併設された主放電電極のもとに送り、大気圧下、主放電電極間に高周波電圧を印加してプラズマを発生させる。このプラズマによって生成した活性種を用いて被処理体の表面をエッチング、あるいは被処理体面上にある有機物をアッシングするという方法が記載されている。
【0008】
【特許文献1】
特開2000−243160号公報
【0009】
【特許文献2】
特開2000−303175号公報
【0010】
【特許文献3】
特開平10−154598号公報
【0011】
【特許文献4】
特開平11−16696号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特開平11−16696号公報記載の方法を薄膜の形成に応用した場合、酸素ガス、あるいは酸素ガスと希ガスを混合したガスを予備放電電極間で低周波電圧をかけて電離あるいは活性化させ、該ガスと、主放電電極の手前で導入した薄膜形成性ガスとを混合して、主放電電極に高周波電圧をかけるとパーティクルが発生してしまい、薄膜の形成がほとんど行われないことがわかった。また、プラズマ状態の酸素ガスと薄膜形成性ガスを混合すると爆発の危険性があり、この方法は薄膜形成方法として不適当であることも判明した。
【0013】
本発明は上記の課題に鑑みなされたものである。
即ち、本発明の目的は、窒素のような安価且つ安全な放電ガスを用いても、高密度プラズマ状態が達成出来、エッチング性が良好な薄膜を高速で製膜することが出来るIZO透明導電膜形成方法、及びこれにより良質で高性能なIZO透明導電膜を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の発明者等は、鋭意検討した結果、本発明の目的は下記構成により達成されることがわかった。
【0015】
〔1〕 高分子基材上に酸化亜鉛含有比率4〜25質量%のIZO透明導電膜を形成する方法において、反応容器内の放電空間外の酸素濃度が2〜9体積%であり、かつ、窒素大気圧プラズマ法により、2つの異なる周波数を印加して作製することを特徴とするIZO透明導電膜形成方法。
【0016】
〔2〕 IZO透明導電膜形成後に、高分子基材のガラス転移温度を超えない範囲の温度で熱処理することを特徴とする〔1〕記載のIZO透明導電膜形成方法。
【0017】
〔3〕 高分子基材上に形成した酸化亜鉛含有比率4〜25質量%のIZO透明導電膜において、反応容器内の放電空間外の酸素濃度が3〜20体積%であり、かつ、窒素大気圧プラズマ法により、2つの異なる周波数を印加して作製されたことを特徴とするIZO透明導電膜。
【0018】
〔4〕 IZO透明導電膜のX線回折線スペクトルのブラッグ角2θの30.0〜32.0°にあるピークの半値幅が1.8〜2.2°であることを特徴とする〔3〕に記載のIZO透明導電膜。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳述する。
【0020】
本発明において、大気圧プラズマ放電処理は、大気圧もしくはその近傍の圧力下で行われるが、大気圧もしくはその近傍の圧力とは20kPa〜110kPa程度であり、本発明に記載の良好な効果を得るためには、93kPa〜104kPaが好ましい。
【0021】
本発明の透明導電膜形成方法において、対向電極間(放電空間)に供給するガスは、少なくとも、電界により励起する放電ガスと、そのエネルギーを受け取ってプラズマ状態あるいは励起状態になり透明導電膜を形成する透明導電膜形成ガスを含んでいる。
【0022】
本発明者らが今まで示して来た技術、例えば、WO02/48428(PCT/JP01/10666)等に開示されている大気圧プラズマ放電処理方法による透明導電膜形成方法の具体的な実施例では、ヘリウムあるいはアルゴンのような希ガスを放電ガスとして使用し、100kHzを超え、150MHz程度までの、好ましくは数100kHz〜100MHz程度の高周波電界をかけた透明導電膜形成が行なわれていた。このような高周波電界をかけることにより、緻密で均一な薄膜が得られ、しかも透明導電膜形成の生産性が優れているというメリットがあった。この場合の高周波電圧(電極間電圧)は、ヘリウムガスやアルゴンガスの放電を開始するには充分な電圧であった。
【0023】
しかしながら、上記の透明導電膜形成方法では、ヘリウムやアルゴン等の希ガスの放電ガスでは、透明導電膜を形成する際の生産コストが放電ガスのコストに依存するところが多く、また環境的な見地からも代替の放電ガスの使用を本発明者らは検討していた。その代替の放電ガスとして、空気、酸素、窒素、二酸化炭素、水素等を検討した結果、これらのガスでも放電する条件を求め、且つ透明導電膜形成性に優れ、形成した薄膜が緻密且つ均一となる条件及び方法を検討した結果、本発明に至ったものである。
【0024】
本発明における放電条件は、対向する第1電極と第2電極との放電空間に、高周波電圧を印加し、該高周波電圧が、第1の周波数ωの電圧成分と、前記第1の周波数ωより高い第2の周波数ωの電圧成分とを重ね合わせた成分を少なくとも有する。
【0025】
本発明において、高周波とは、少なくとも0.5kHzの周波数を有するものを言う。
【0026】
前記高周波電圧が、第1の周波数ωの電圧成分と、前記第1の周波数ωより高い第2の周波数ωの電圧成分とを重ね合わせた成分となり、その波形は周波数ωのサイン波上に、それより高い周波数ωのサイン波が重畳されたωのサイン波がギザギザしたような波形となる。また第1の周波数ωの波形はパルス波であってもよく、パルス波の上に第2の周波数ωのサイン波が重畳された波形であってもよい。
【0027】
本発明において、放電開始電圧とは、実際の透明導電膜形成方法に使用される放電空間(電極の構成など)および反応条件(ガス条件など)において放電を起こすことの出来る最低電圧のことを指す。放電開始電圧は、放電空間に供給されるガス種や電極の誘電体種などによって多少変動するが、放電ガス単独の放電開始電圧と略同一と考えてよい。
【0028】
上記で述べたような高周波電圧を対向電極間(放電空間)に印加することによって、透明導電膜形成可能な放電を起こし、高品位な透明導電膜形成に必要な高密度プラズマを発生することが出来ると推定される。ここで重要なのは、このような高周波電圧が対向する電極それぞれに印加され、すなわち、同じ放電空間に両方から印加されることである。前述の特開平11−16696号公報のように、印加電極を2つ併置し、離間した異なる放電空間それぞれに、異なる周波数の高周波電圧を印加する方法では、本発明の透明導電膜形成は達成出来ない。
【0029】
上記で波形の重畳について説明したが、これに限られるものではなく、両方パルス波であっても、一方がサイン波でもう一方がパルス波であってもかまわない。
【0030】
上記本発明の高周波電圧を、対向電極間(同一放電空間)に印加する具体的な方法としては、対向電極を構成する第1電極に周波数ωであって電圧Vである第1の高周波電圧を印加する第1電源を接続し、第2電極に周波数ωであって電圧Vである第2の高周波電圧を印加する第2電源を接続した大気圧プラズマ放電処理装置である。
【0031】
上記の大気圧プラズマ放電処理装置には、前記対向電極間に、放電ガスと透明導電膜形成ガスとを供給するガス供給手段を備える。更に、電極の温度を制御する電極温度制御手段を有することが好ましい。
【0032】
また、第1電極、第1電源またはそれらの間の何れかには第1フィルターを、また第2電極、第2電源またはそれらの間の何れかには第2フィルターを接続することが好ましく、第1フィルターは該第1電源からの周波数の電流を通過しにくくし、該第2電源からの周波数の電流を通過し易くし、また、第2フィルターはその逆で、該第2電源からの周波数の電流を通過しにくくし、該第1電源からの周波数の電流を通過し易くするというそれぞれのフィルターには機能が備わっているものを使用する。ここで、通過しにくいとは、好ましくは、電流の20%以下、より好ましくは10%以下しか通さないことをいう。逆に通過し易いとは、好ましくは電流の80%以上、より好ましくは90%以上を通すことをいう。
【0033】
更に、本発明の大気圧プラズマ放電処理装置の第1電源は、第2電源より大きな高周波電圧を印加出来る能力を有していることが好ましい。
【0034】
また、本発明における別の放電条件としては、対向する第1電極と第2電極との間に、高周波電圧を印加し、該高周波電圧が、第1の高周波電圧V及び第2の高周波電圧Vを重畳したものであって、放電開始電圧をIVとしたとき、
≧IV>V
または V>IV≧V
を満たす。更に好ましくは、
>IV>V
を満たすことである。
【0035】
ここで、本発明でいう高周波電圧(印加電圧)と放電開始電圧は、下記の方法で測定されたものをいう。
【0036】
高周波電圧V及びV(単位:kV/mm)の測定方法:
各電極部の高周波プローブ(P6015A)を設置し、該高周波プローブをオシロスコープ(Tektronix社製、TDS3012B)に接続し、電圧を測定する。
【0037】
放電開始電圧IV(単位:kV/mm)の測定方法:
電極間に放電ガスを供給し、放電が始まる電圧を放電開始電圧IVと定義する。測定器は上記高周波電圧測定と同じである。
【0038】
なお、上記測定に使用する高周波プローブとオシロスコープの位置関係については後述の図1に示してある。
【0039】
このような放電条件をとることにより、例え窒素ガスのような放電開始電圧が高くなる放電ガスであっても、放電が開始され、高密度で安定なプラズマ状態を維持することが出来、高性能な透明導電膜形成が行うことが出来るのである。
【0040】
上記の測定により放電ガスを窒素ガスとした場合、その放電開始電圧IVは3.7kV/mm程度であり、従って、上記の関係において、第1の高周波電圧を、V≧3.7kV/mmとして印加することによって窒素ガスを励起し、プラズマ状態にすることが出来る。
【0041】
ここで、第1電源の周波数としては、200kHz以下が好ましく用いることが出来る。またこの電界波形としては、サイン波でもパルスでもよい。下限は1kHz程度が望ましい。
【0042】
一方、第2電源の周波数としては、800kHz以上が好ましく用いられる。この第2電源の周波数が高い程、プラズマ密度が高くなり、緻密で良質な透明導電膜が得られる。上限は200MHz程度が望ましい。
【0043】
このような二つの電源から高周波電圧を印加することは、第1の周波数ω側によって高い放電開始電圧を有する放電ガスの放電を開始するのに必要であり、また第2の周波数ω側はプラズマ密度を高くして緻密で良質な透明導電膜を形成するのに必要であるということが本発明の重要な点である。
【0044】
本発明において、前記第1フィルターは、前記第1電源からの周波数の電流を通過しにくくし、且つ前記第2電源からの周波数の電流を通過し易くするようになっており、また前記第2フィルターは、該第2電源からの周波数の電流を通過しにくく、且つ該第1電源からの周波数の電流を通過し易くするようになっている。本発明において、かかる性質のあるフィルターであれば制限無く使用出来る。
【0045】
例えば、第1フィルターとしては、第2電源の周波数に応じて数10〜数万pFのコンデンサー、もしくは数μH程度のコイルを用いることが出来る。第2フィルターとしては、第1電源の周波数に応じて10μH以上のコイルを用い、これらのコイルまたはコンデンサーを介してアース接地することでフィルターとして使用出来る。
【0046】
本発明に係る大気圧プラズマ放電処理方法は、上述のように、対向電極間(放電空間)にガスを導入して二つの電極に高周波電圧を印加して放電させ、放電ガスを励起してプラズマ状態とし、プラズマ状態の放電ガスからエネルギーを受けて励起してプラズマ状態となった薄膜形成ガスに基材を晒すことによって、基材上に薄膜が形成されるという方法である。このようなガスの対向電極間(放電空間)への導入の仕方、基材にどこで薄膜を形成させるか等、大まかに言って下記の四つの方法がある。しかし、本発明においてはこれらに限定されない。
【0047】
1)放電ガスと薄膜形成ガスを構成成分とする混合ガスを放電空間に導入し、高周波電圧を印加して放電を発生させて薄膜形成ガスをプラズマ状態として、該放電空間において該プラズマ状態の薄膜形成ガスに基材を晒す方法
2)放電ガスと薄膜形成ガスを構成成分とする混合ガスを放電空間に導入し、高周波電圧を印加して放電を発生させて薄膜形成ガスをプラズマ状態として、該放電空間からプラズマ状態となった薄膜形成ガスを基材のある放電空間外(処理空間)にジェット状に吹き出させ、該処理空間において該プラズマ状態の薄膜形成ガスに基材を晒す方法
3)放電ガスと薄膜形成ガスを別々に放電空間に導入し、高周波電圧を印加して放電を発生させて薄膜形成ガスをプラズマ状態として、該放電空間においてプラズマ状態の薄膜形成ガスに基材を晒す方法
4)放電空間に放電ガスを導入し、高周波電圧を印加して放電を発生させて放電ガスを励起してプラズマ状態として、処理空間にジェット状に吹き出させ、また薄膜形成ガスは別に処理空間に導入して、該放電空間からプラズマ状態の放電ガスを、別に処理空間に導入した薄膜形成ガスと該プラズマ状態の放電ガスを接触させて発生したプラズマ状態の薄膜形成ガスに基材を晒す方法。
【0048】
上記大気圧プラズマ放電処理方法及びそれらの装置について以下図により説明する。
【0049】
図1は、本発明に有用な大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【0050】
本発明の大気圧プラズマ放電処理装置は、少なくとも、プラズマ放電処理装置30、二つの電源を有する電圧印加手段40、ガス供給手段50、電極温度調節手段60を有している装置である。
【0051】
図1は、ロール回転電極(第1電極)35と角筒型固定電極群(第2電極)36との対向電極間(放電空間)32にガス供給手段50から放電ガスと透明導電膜形成ガスを混合した混合ガスMG導入し、基材Fをプラズマ放電処理して透明導電膜を形成する装置である。
【0052】
ロール回転電極(第1電極)35と角筒型固定電極群(第2電極)36との間の放電空間(対向電極間)32に、ロール回転電極(第1電極)35には第1電源41から周波数ωであって高周波電圧Vを、また角筒型固定電極群(第2電極)36には第2電源42から周波数ωであって高周波電圧Vをかけるようになっている。
【0053】
ロール回転電極(第1電極)35と第1電源41との間には、第1電源41からの電流がロール回転電極(第1電極)35に向かって流れるように第1フィルター43が設置されており、該第1フィルターは第1電源41からの電流を通過しにくくし、第2電源42からの電流を通過し易くするように設計されている。また、角筒型固定電極群(第2電極)36と第2電源42との間には、第2電源からの電流が第2電極に向かって流れるように第2フィルター44が設置されており、第2フィルター44は、第2電源42からの電流を通過しにくくし、第1電源41からの電流を通過し易くするように設計されている。
【0054】
なお、本発明においては、ロール回転電極35を第2電極、また角筒型固定電極群36を第1電極としてもよい(どちらに第1電源と第2電源を接続しても構わない)。何れにしろ第1電極には第1電源が、また第2電極には第2電源が接続される。更に、第1電源は第2電源より大きな高周波電圧(V>V)を印加出来る能力を有していればよい。また、周波数はω<ωとなる能力を有していればよい。以下の図において、電極、電源及びフィルターについて上記のような高周波電圧V、V、ω、ωの関係、またフィルターの性質等については省略する。
【0055】
ガス供給手段50のガス供給装置51で発生させた混合ガスMGは、流量を制御して給気口52よりプラズマ放電処理容器31内に導入する。放電空間32及びプラズマ放電処理容器31内をガスGで満たす。
【0056】
基材Fを、図示されていない元巻きから巻きほぐして搬送されて来るか、または前工程から搬送されて来て、ガイドロール64を経てニップロール65で基材に同伴されて来る空気等を遮断し、ロール回転電極35に接触したまま巻き回しながら角筒型固定電極群36との間に移送し、ロール回転電極(第1電極)35と角筒型固定電極群(第2電極)36との両方から電圧をかけ、対向電極間(放電空間)32で放電プラズマを発生させる。基材Fはロール回転電極35に接触したまま巻き回されながらプラズマ状態のガスにより薄膜を形成する。基材Fは、ニップロール66、ガイドロール67を経て、図示してない巻き取り機で巻き取るか、次工程に移送する。放電処理済みの処理排ガスG′は排気口53より排出する。
【0057】
また、図1に前述の高周波電圧(印加電圧)と放電開始電圧の測定に使用する測定器を示した。25及び26は高周波プローブであり、27及び28はオシロスコープである。
【0058】
透明導電膜形成中、ロール回転電極(第1電極)35及び角筒型固定電極群(第2電極)36を加熱または冷却するために、電極温度調節手段60で温度を調節した媒体を、送液ポンプPで配管61を経て両電極に送り、電極内側から温度を調節する。透明導電膜形成中、電極温度調節手段60から配管61を経て電極を加熱または冷却する。プラズマ放電処理の際の基材の温度によっては、得られる透明導電膜の物性や組成は変化することがあり、これに対して適宜制御することが望ましい。温度調節の媒体としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が好ましく用いられる。プラズマ放電処理の際、幅手方向あるいは長手方向での基材の温度ムラが出来るだけ生じないように電極の内部の温度を均等に調節することが望まれる。
【0059】
なお、65及び66はプラズマ放電処理容器31と外界とを仕切る仕切板である。
【0060】
図2は、図1に示したロール回転電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【0061】
図2において、ロール電極35aは導電性の金属質母材35Aとその上に誘電体35Bが被覆されたものである。内部は中空のジャケットになっていて温度調節が行われるようになっている。
【0062】
図3は、角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【0063】
図3において、角筒型電極36aは、導電性の金属質母材36Aに対し、図2同様の誘電体36Bの被覆を有しており、該電極の構造は金属質のパイプになっていて、それがジャケットとなり、放電中の温度調節が行えるようになっている。
【0064】
なお、角筒型固定電極の数は、上記ロール電極の円周より大きな円周上に沿って複数本設置されていおり、該電極の放電面積はロール回転電極35に対向している全角筒型固定電極面の面積の和で表される。
【0065】
図3に示した角筒型電極36aは、円筒型電極でもよいが、角筒型電極は円筒型電極に比べて、放電範囲(放電面積)を広げる効果があるので、本発明に好ましく用いられる。
【0066】
図2及び図3において、ロール電極35a及び角筒型電極36aは、それぞれ導電性の金属質母材35A及び36Aの上に誘電体35B及び36Bとしてのセラミックスを溶射後、無機化合物の封孔材料を用いて封孔処理したものである。セラミックス誘電体は片肉で1mm程度被覆があればよい。溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工し易いので、特に好ましく用いられる。また、誘電体層が、ガラスライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体であってもよい。
【0067】
導電性の金属質母材35A及び36Aとしては、チタン金属またはチタン合金、銀、白金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄等の金属等や、鉄とセラミックスとの複合材料またはアルミニウムとセラミックスとの複合材料を挙げることが出来るが、後述の理由からはチタン金属またはチタン合金が特に好ましい。
【0068】
2個の電極間の距離(電極間隙)は、導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定されるが、電極の一方に誘電体を設けた場合の誘電体表面と導電性の金属質母材表面の最短距離、上記電極の双方に誘電体を設けた場合の誘電体表面同士の距離としては、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.1〜20mmが好ましく、特に好ましくは0.5〜2mmである。
【0069】
本発明に有用な導電性の金属質母材及び誘電体についての詳細については後述する。
【0070】
プラズマ放電処理容器31はパイレックス(R)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウムまたは、ステンレススティールのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けても良く、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとってもよい。以下の各図において示されている両電極の両側面(基材面近くまで)を上記のような材質の物で覆うことが好ましい。
【0071】
次に、本発明に用いる高周波電源、電極、条件について説明する。
本発明の大気圧プラズマ放電処理装置に設置する第1電源(高周波電源)としては、
印加電源記号 メーカー 周波数
A1 神鋼電機 3kHz
A2 神鋼電機 5kHz
A3 春日電機 15kHz
A4 神鋼電機 50kHz
A5 ハイデン研究所 100kHz*
A6 パール工業 200kHz
等の市販のものを挙げることが出来、何れも使用することが出来る。なお、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。
【0072】
また、第2電源(高周波電源)としては、
印加電源記号 メーカー 周波数
B1 パール工業 800kHz
B2 パール工業 2MHz
B3 パール工業 13.56MHz
B4 パール工業 27MHz
B5 パール工業 150MHz
等の市販のものを挙げることが出来、何れも好ましく使用出来る。
【0073】
本発明においては、このような電圧を印加して、均一なグロー放電状態を保つことが出来る電極をプラズマ放電処理装置に採用する必要がある。
【0074】
本発明において、対向する電極間に印加する電力は、第2電極に1W/cm以上の電力(出力密度)を供給し、放電ガスを励起してプラズマを発生させ、エネルギーを透明導電膜形成ガスに与え薄膜を形成させる。供給する電力の上限値としては、好ましくは50W/cm以下、より好ましくは20W/cm以下である。下限値は、好ましくは1.2W/cm以上である。なお、放電面積(cm)は、電極において放電が起こる範囲の面積のことを指す。
【0075】
ここで電源の印加法に関しては、連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードと、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モードのどちらを採用してもよいが、少なくとも第2電極側は連続サイン波の方がより緻密で良質な膜が得られるので好ましい。
【0076】
このような大気圧プラズマによる薄膜形成法に使用する電極は、構造的にも、性能的にも過酷な条件に耐えられるものでなければならない。このような電極としては、金属質母材上に誘電体を被覆したものであることが好ましい。
【0077】
本発明の薄膜形成方法に係る電極においては、電極の少なくとも基材と接する側のJIS B 0601で規定される表面粗さの最大高さ(Rmax)が10μm以下になるように調整することが、本発明に記載の効果を得る観点から好ましいが、更に好ましくは、表面粗さの最大値が8μm以下であり、特に好ましくは、7μm以下に調整することである。このように誘電体被覆電極の誘電体表面を研磨仕上げする等の方法により、誘電体の厚み及び電極間のギャップを一定に保つことが出来、放電状態を安定化出来ること、更に熱収縮差や残留応力による歪やひび割れを無くし、且つ、高精度で、耐久性を大きく向上させることが出来る。誘電体表面の研磨仕上げは、少なくとも基材と接する側の誘電体において行われることが好ましい。更にJIS B 0601で規定される中心線平均表面粗さ(Ra)は0.5μm以下が好ましく、更に好ましくは0.1μm以下である。
【0078】
本発明に使用する誘電体被覆電極において、大電力に耐える他の好ましい仕様としては、耐熱温度が100℃以上であることである。更に好ましくは120℃以上、特に好ましくは150℃以上である。また上限は500℃である。なお、耐熱温度とは、絶縁破壊が発生せず、正常に放電出来る状態において耐えられる最も高い温度のことを指す。このような耐熱温度は、上記のセラミックス溶射や、泡混入量の異なる層状のガラスライニングで設けた誘電体を適用したり、下記金属質母材と誘電体の線熱膨張係数の差の範囲内の材料を適宜選択する手段を適宜組み合わせることによって達成可能である。
【0079】
次に、本発明の透明導電膜を形成するガスについて説明する。使用するガスは、基本的に放電ガス及び薄膜形成ガスを構成成分とするガスである。放電ガスと透明導電膜形成ガスを混合して放電空間または処理空間に供給してもよいし、前述のように別の態様として、別々に供給してもかまわない。別々に供給する場合の放電ガスG2と透明導電膜形成ガスG1との処理空間における比率G2:G1は100:1〜5:1が好ましい。この時の薄膜形成ガスG1には不活性ガス(放電ガスと同様なガス)を99.1体積%、また薄膜形成ガスを0.9体積%程度の比率で混合されていることが好ましい。
【0080】
本発明に係わる説明において放電ガスとは、薄膜形成可能なグロー放電を起こすことが出来るガスであり、それ自身がエネルギーを授受する媒体として働くガスであり、具体的には窒素ガスに酸素ガスを混合したものである。本発明においてその酸素濃度は、後記透明導電膜形成ガスと混合後で、反応容器内の放電空間外で2〜9体積%である。これは、例えば容器内に酸素濃度センサーを設置して制御するのがよいが、いずれにしろ大気中より低めの値である。
【0081】
透明導電膜形成ガスとは、放電ガスからのエネルギーを受け取って、それ自身は励起して活性(プラズマ状態)となり、基材上に化学的に堆積して透明導電膜を形成する原料のことである。
【0082】
次に、本発明に使用する透明導電膜形成ガスについて説明する。
本発明に使用する透明導電膜形成ガスとしては、有機金属化合物、ハロゲン金属化合物、金属水素化合物等を挙げることが出来る。
【0083】
本発明においては、透明導電膜形成ガスは有機金属化合物を含有していることが好ましく、また有機金属化合物から形成される金属酸化物にドーピングするドーピング用有機金属化合物を加える場合があり、同様な有機金属化合物が使用される。
【0084】
本発明に有用な有機金属化合物は下記の一般式(I)で示すものが好ましい。
一般式(I) R MR
式中、Rはアルキル基、Rはアルコキシ基、Rはβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基であり、金属Mの価数をmとした場合、x+y+z=mであり、x=0〜m、またはx=0〜m−1であり、y=0〜m、z=0〜mで、何れも0または正の整数である。Rのアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることが出来る。Rのアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、3,3,3−トリフルオロプロポキシ基等を挙げることが出来る。またアルキル基の水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。Rのβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基としては、β−ジケトン錯体基として、例えば、2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトンあるいはアセトアセトンともいう)、1,1,1,5,5,5−ヘキサメチル−2,4−ペンタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン等を挙げることが出来、β−ケトカルボン酸エステル錯体基として、例えば、アセト酢酸メチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、アセト酢酸プロピルエステル、トリメチルアセト酢酸エチル、トリフルオロアセト酢酸メチル等を挙げることが出来、β−ケトカルボン酸として、例えば、アセト酢酸、トリメチルアセト酢酸等を挙げることが出来、またケトオキシとして、例えば、アセトオキシ基(またはアセトキシ基)、プロピオニルオキシ基、ブチリロキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等を挙げることが出来る。これらの基の炭素原子数は、上記例有機金属示化合物を含んで、18以下が好ましい。また例示にもあるように直鎖または分岐のもの、また水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。
【0085】
本発明において取り扱いの問題から、爆発の危険性の少ない有機金属化合物が好ましく、分子内に少なくとも一つ以上の酸素を有する有機金属化合物が好ましい。このようなものとしてRのアルコキシ基を少なくとも一つを含有する有機金属化合物、またRのβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基を少なくとも一つ有する金属化合物が好ましい。
【0086】
本発明に使用し得る有機金属化合物の金属Mは、インジウム(In)と亜鉛(Zn)である。
【0087】
本発明において、上記の好ましい有機金属化合物の例としては、インジウムトリス2,4−ペンタンジオナート(あるいは、トリスアセトアセトナートインジウム)、インジウムトリスヘキサフルオロペンタンジオナート、メチルトリメチルアセトキシインジウム、トリアセトアセトオキシインジウム、トリアセトオキシインジウム、ジエトキシアセトアセトオキシインジウム、インジウムトリイソポロポキシド、ジエトキシインジウム(1,1,1−トリフルオロペンタンジオナート)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)インジウム、エトキシインジウムビスアセトメチルアセタート、亜鉛ビス2,4−ペンタンジオナート等を挙げることが出来、何れも好ましく用いることが出来る。
【0088】
この中で特に、インジウムトリス2,4−ペンタンジオナート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)インジウム、亜鉛ビス2,4−ペンタンジオナートが好ましい。これらの有機金属化合物は一般に市販(例えば、東京化成工業(株)社等から)されている。
【0089】
本発明において、該有機金属化合物から形成される透明導電膜の導電性を更に高めるためのドーピング用有機金属化合物またはドーピング用フッ素化合物を混合ガスに含有させることができる。ドーピング用有機金属化合物またはドーピング用フッ素化合物の透明導電膜形成ガスとしては、例えば、トリイソプロポキシアルミニウム、ニッケルトリス2,4−ペンタンジオナート、マンガンビス2,4−ペンタンジオナート、ボロンイソプロポキシド、トリ(n)ブトキシアンチモン、トリ(n)ブチルアンチモン、ジ(n)ブチル錫ビス2,4−ペンタンジオナート、ジ(n)ブチルジアセトオキシ錫、ジ(t)ブチルジアセトオキシ錫、テトライソプロポキシ錫、テトラブトキシ錫、テトラブチル錫、ジプロポキシゲルマニウム、ジ(n)ブチルジアセトオキシゲルマニウム、ゲルマニウムトリス2,4−ペンタンジオナート、ガリウムトリス2,4−ペンタンジオナート、トリプロポキシガリウム、ブチルジアセトオキシガリウム、六フッ化プロピレン、八フッ化シクロブタン、四フッ化メタン等を挙げることが出来る。
【0090】
上記、有機金属化合物の透明導電膜形成ガスは全ガス中で0.01〜10体積%含有されることが好ましく、より好ましくは0.1〜3体積%である。
【0091】
本発明で用いるガスには還元性ガスを含有することが好ましい。本発明でいう還元性ガスは分子内に酸素を含まない化学的に還元性を有する無機ガスをいう。還元性ガスとしては、水素、硫化水素、メタン等の炭化水素及び水等を挙げることが出来るが、好ましくは水素ガスである。還元性ガスの量は全ガスに対して、0.0001〜5.0体積%、好ましくは0.001〜3.0体積%である。還元性ガスを含有させることにより、還元性ガスは透明導電膜を形成するガスに作用し、形成された透明導電膜をより均一に緻密にすることが出来、導電性及びエッチング性能を向上させることが出来る。
【0092】
本発明の好ましい態様として、基材上に透明導電膜を形成した後に、放電空間または処理空間から基材を移動し、透明導電膜を酸化性ガスに晒すことにより、また、更に透明導電膜の形成操作と酸化ガスに晒す操作を繰り返し、積層することによって、透明導電膜中の金属酸化物の濃度を高め、膜を緻密且つ均一にし、耐湿、耐熱安定性の向上や、残渣のない良好なエッチング特性を有することが出来、透明導電膜形成後に酸化性ガスに晒すことは好ましいことである。この透明導電膜を酸化性ガス処理を交互に行う技術は、本発明者らによって特願2002−218074において提案したが、本発明においては、放電ガスとして、窒素ガスと酸素ガスの混合ガスを用い、この放電ガスを励起させ放電を開始する高周波電圧を印加する電源と透明導電膜を強固に形成するための高周波電源を用いることにより、上記発明以上により強靱且つ比抵抗値の低い透明導電膜を得ること、より優れたロバストネスを有する透明導電膜を得ることに成功した。更に窒素ガスそ使用することにより、コストを著しく下げることが出来た。
【0093】
上記形成される金属酸化物または金属複合化合物の透明導電膜の膜厚は、0.1〜1000nmの範囲が好ましい。
【0094】
本発明の透明導電膜を有する物品の製造方法により得られる透明導電膜は、高いキャリア移動度を有する特徴を持つ。よく知られているように透明導電膜の電気伝導率は以下の(1)式で表される。
【0095】
σ=n×e×μ (1)
ここで、σは電気伝導率、nはキャリア密度、eは電子の電気量、そしてμはキャリアの移動度である。電気伝導率σを上げるためにはキャリア密度nあるいはキャリア移動度μを増大させる必要があるが、キャリア密度nを増大させていくと2×1021cm−3付近から反射率が大きくなるため透明性が失われる。そのため、電気伝導率σを増大させるためにはキャリア移動度μを増大させる必要がある。本発明の透明導電膜の形成方法によれば条件を最適化することにより、DCマグネトロンスパッタリング法により形成された透明導電膜に近いキャリア移動度μを有する透明導電膜を形成することが可能であることが判明した。
【0096】
本発明の透明導電膜の形成方法は高いキャリア移動度μを有するため、ドーピングなしでも比抵抗値として1×10−3Ω・cm以下の比抵抗値の透明導電膜を得ることが出来る。ドーピングを行いキャリア密度nを増加させることで更に比抵抗値を下げることが出来る。また、必要に応じて比抵抗値を上げる薄膜形成ガスを用いることにより、比抵抗値として1×10−2Ω・cm以上の高比抵抗値の透明導電膜を得ることも出来る。透明導電膜の比抵抗値を調整するために用いる薄膜形成ガスとしては、例えば、チタントリイソプロポキシド、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン等を挙げることが出来る。
【0097】
本発明の透明導電膜の形成方法によって得られる透明導電膜は、キャリア密度nが、1×1019cm−3以上、より好ましい条件下においては、1×1020cm−3以上となるが、透明性は低下しない。
【0098】
本発明の優れた効果の一つとして、エッチングがある。各種ディスプレイ素子を電極として用いる場合、基板上に回路を描くパターニング工程は必須なものであり、パターニングが容易に行うことが出来るかが工程適性上重要な課題となっている。一般に、パターニングはフォトリソグラフィー法により行われることが多く、導通を必要としない部分はエッチングにより溶解、除去するため、該部分のエッチング液による溶解の速さ及び残渣のないことが重要な課題となっている。エッチング液には、通常、硝酸、塩酸、塩酸と硝酸の混酸、フッ酸、塩化第二鉄水溶液等が用いられ、これらのウェットエッチングする方法が主流である。
【0099】
透明性導電性薄膜として、上記形成された酸化物または複合酸化物の薄膜の膜厚は、0.1〜1000nmの範囲が好ましい。
【0100】
又、得られたIZO透明導電膜のX線回折線スペクトルのブラッグ角2θの30.0〜32.0°にあるピークの半値幅が1.8〜2.2°であることが好ましい。これにより、諸特性のバランスの良い透明導電膜が得られる。半値幅が1.3以下といった極めて小さいもの、2.5以上といった極めて大きなものはエッチング性が劣化する。
【0101】
本発明の透明導電性フィルムの基材について説明する。
本発明の透明導電性フィルムを形成する基材としては、薄膜をその表面に形成出来るものであれば特に限定はない。基材がプラズマ状態の混合ガスに晒され、均一の薄膜が形成されるものであれば基材の形態または材質には制限ない。樹脂フィルム、樹脂シート(板)、ガラス板が本発明には適している。
【0102】
樹脂フィルムは本発明に係る大気圧プラズマ放電処理装置の電極間または電極の近傍を連続的に移送させて透明導電膜を形成することが出来るので、スパッタリング法のような真空系とは異なりバッチ式にする必要がなく、大量生産に向き、連続的な生産性の高い生産方式として好適である。
【0103】
樹脂フィルム、樹脂シート、樹脂レンズ、樹脂成形物等成形物の材質としては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネートまたはセルロースアセテートブチレートのようなセルロースエステル、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのようなポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコールコポリマー、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリメチルアクリレート、アクリレートコポリマー等を挙げることが出来る。
【0104】
これらの素材は単独であるいは適宜混合されて使用することも出来る。中でもゼオネックスやゼオノア(日本ゼオン(株)製)、非晶質シクロポリオレフィン樹脂フィルムのARTON(日本合成ゴム(株)製)、ポリカーボネートフィルムのピュアエース(帝人(株)製)、セルローストリアセテートフィルムのコニカタックKC4UX、KC8UX(コニカ(株)製)などの市販品を好ましく使用することが出来る。更に、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルフォン及びポリエーテルスルフォンなどの固有複屈折率の大きい素材であっても、溶液流延製膜、溶融押し出し製膜等の条件、更には縦、横方向に延伸条件等を適宜設定することにより使用することが出来るものを得ることが出来る。
【0105】
これらのうち光学的に等方性に近いセルロースエステルフィルムが本発明の透明導電性フィルムに好ましく用いられる。セルロースエステルフィルムとしては、上記のようにセルローストリアセテートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられるものの一つである。セルローストリアセテートフィルムとしては市販品のコニカタックKC4UX、KC8UX等が有用である。
【0106】
これらの樹脂の表面にゼラチン、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、セルロースエステル樹脂等を塗設したものも使用出来る。またこれら樹脂フィルムの薄膜側に防眩層、クリアハードコート層、防汚層等を設けてもよい。また、必要に応じて接着層、アルカリバリアコート層、ガスバリア層や耐溶剤性層等を設けてもよい。
【0107】
ガラス板や樹脂シート(板)は毎葉基材として用いることが出来る。樹脂シート(板)は上記樹脂と同様であるが、ガラス板としてはソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス、超高純度ガラス、クリスタルガラス等を挙げることが出来る。また、本発明に係る基材は、上記の記載に限定されない。フィルム形状のものの膜厚としては10〜1000μmが好ましく、より好ましくは40〜200μmである。またガラス板形状のものの膜厚としては、0.1〜2mmが好ましい。
【0108】
【実施例】
本発明を下記実施例で詳述するが、これらに限定されない。
【0109】
〔大気圧プラズマ放電処理装置〕
前記した角筒型固定電極群36とロール回転電極35とで対向電極を構成する図1に示した大気圧プラズマ放電処理装置を使用した。対向電極の間隙を1mmとして、ロール回転電極35の円と同心円上に角筒型固定電極群36を等間隔に配置した。ロール回転電極35を第1電極とし、第1電源41と結線し、またその間に第1フィルター43を配置しそれぞれをアースに接地した。角筒型固定電極群36を第2電極とし、それぞれの角筒型電極を結線し第2電源に結び、その間に第2フィルター44を設置してそれぞれをアースに接地した。第1フィルター43には、第1電源41からの電流を流しにくくし、第2電源42からの電流を通し易くするものを設置し、第2フィルター44には、第2電源42からの電流を通しにくくし、第1電源41からの電流を通し易くするものを用い、何れもフィルターは各電極からの電流が逆流しないようなものを設置した。第1電源及び第2電源は、高周波電圧と放電開始電圧との関係に適したものを設置した。
【0110】
〔透明導電膜を有するフィルムの作製〕
第1電源41及び第2電源42は、高周波電圧と放電開始電圧との関係がV>IV>Vとなるようにし、両電極を80℃になるように調節保温した。基材Fとして、厚さ100μmのARTONフィルム(非晶質シクロポリオレフィン樹脂フィルム、JSR社製)を使用した。放電空間32の圧力を103kPaとし、下記組成の混合ガスMGを放電空間32に満たし、高周波電圧としては、第1電源周波数5kHz、電圧12kV/mm、第2電源周波数2MHz、1.0kV/mmを印加し、第1電極の出力密度を7W/cm、第2電極の出力密度を7W/cmとして放電を行って、基材Fフィルムの上に膜厚80nmのIZO膜を形成し、IZOフィルムの試料を作製した。この系での窒素ガスの放電開始電圧は3.7kV/mmであった。
【0111】
Figure 2004235004
なお、テスト条件は表1中に記した条件とし、酸素濃度は反応容器内の放電空間外に酸素濃度センサーを設置して測定した反応容器内での体積%である。
【0112】
〔評価項目〕
《透過率》
JIS−R−1635に従い、日立製作所製分光光度計U−4000型を用いて測定を行った。試験光の波長は550nmとした。
【0113】
《抵抗値》
JIS−R−1637に従い、四端子法により求めた。なお、測定には三菱化学製ロレスタ−GP、MCP−T600を用いた。
【0114】
《エッチング性》
透明導電膜にパターニングするための下記の組成の30℃のエッチング液に基材上の透明導電膜を浸漬し、エッチング時間は30秒、45秒、60秒、120秒、180秒でサンプリングした。続いて水洗、乾燥を行い、乾燥後の試料についてエッチング部と非エッチング部との境界部分の断面を電子顕微鏡により観察し、また膜の除去の具合を目視によって評価した。
【0115】
〈エッチング液組成〉
水、濃塩酸及び40質量%第二塩化鉄溶液を質量比で85:8:7で混合したものをエッチング液とした。
【0116】
〈エッチングパターンの評価レベル〉
A:30秒で透明導電膜が除去出来、エッチングパターンの境界部分が頗る良好なもの
B:45秒で透明導電膜が除去出来、エッチングパターンの境界部分が頗る良好なもの
C:60秒で透明導電膜は除去出来、エッチングパターンの境界部分が頗る良好なもの
D:120秒で透明導電膜は除去出来たが、エッチングパターンの境界部分があまり良好でない
E:180秒を超しても透明導電膜が若干残っている部分があり、エッチングパターンの境界部分がギザギザ(凸凹)していた
F:180秒を超しても透明導電膜が島状に残っている
《膜厚、製膜速度》
膜厚はPhotal(株)社製のFE−3000反射分光膜厚計により測定し、得られた膜厚をプラズマ処理時間で除したものを製膜速度とした。
【0117】
《X線回折ピークの半値幅》
X線回折線スペクトルのブラッグ角2θの30.0〜32.0°にあるピークの半値幅である。
【0118】
【表1】
Figure 2004235004
【0119】
表中の酸素濃度は体積%で表示、透過率等上下段に数値が記載されているものは、
上段:製膜直後の特性値
下段:130℃、4時間熱処理後の特性値
なお、ほぼ同様な膜厚の試料を、スパッタリング法で作製した場合には、生産性が低いのは勿論、均一な製膜ができなかった。
【0120】
表1から明らかな如く、本発明内の実施例1〜3はいずれの特性もよく、特に製膜速度が高く、しかもエッチング性もよい。しかし、比較例1〜3は製膜速度が速いものがあるが、この場合は膜の均一性等が悪く、抵抗値も高く、特にエッチング性に問題がある。
【0121】
【発明の効果】
本発明により、窒素のような安価且つ安全な放電ガスを用いても、高密度プラズマ状態が達成出来、製膜速度が高く、エッチング性が良好な薄膜を高速で製膜することが出来るIZO透明導電膜形成方法、及びこれにより良質で高性能なIZO透明導電膜を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に有用な大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【図2】図1に示したロール回転電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【図3】角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
32 放電空間
35 ロール回転電極
36 角筒型固定電極群
41 第1電源
42 第2電源
43 第1フィルター
44 第2フィルター

Claims (4)

  1. 高分子基材上に酸化亜鉛含有比率4〜25質量%のIZO透明導電膜を形成する方法において、反応容器内の放電空間外の酸素濃度が2〜9体積%であり、かつ、窒素大気圧プラズマ法により、2つの異なる周波数を印加して作製することを特徴とするIZO透明導電膜形成方法。
  2. IZO透明導電膜形成後に、高分子基材のガラス転移温度を超えない範囲の温度で熱処理することを特徴とする請求項1記載のIZO透明導電膜形成方法。
  3. 高分子基材上に形成した酸化亜鉛含有比率4〜25質量%のIZO透明導電膜において、反応容器内の放電空間外の酸素濃度が3〜20体積%であり、かつ、窒素大気圧プラズマ法により、2つの異なる周波数を印加して作製されたことを特徴とするIZO透明導電膜。
  4. IZO透明導電膜のX線回折線スペクトルのブラッグ角2θの30.0〜32.0°にあるピークの半値幅が1.8〜2.2°であることを特徴とする請求項3に記載のIZO透明導電膜。
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