JP2004233876A - 電子写真感光体及びその製造方法並びにそれを搭載した画像形成装置とプロセスカートリッジ - Google Patents
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Abstract
【課題】帯電部材に交流電圧を重畳した直流電圧を印加して画像形成を行う際に発生する帯電音、クリーニングブレードの摺擦音等の不快な音を効率よく抑制でき、しかも取り付けや交換性に優れ、さらに環境等に配慮した電子写真感光体、その製造方法、及びそれを搭載した画像形成装置、プロセスカートリッジを提供する。
【解決手段】接触、若しくは非接触帯電装置に、交流電圧重畳の直流電圧を印加して帯電した後、光書き込みにより静電潜像を形成し、現像装置により顕像化する間接電子写真法で画像形成を行うための電子写真感光体において、該電子写真感光体内部に、振動吸収材の外壁全面にわたって隙間材を被覆して構成される制振材を、圧入法によって隙間材を削りながら内蔵させたものであることを特徴とする電子写真感光体。
【選択図】 図10
【解決手段】接触、若しくは非接触帯電装置に、交流電圧重畳の直流電圧を印加して帯電した後、光書き込みにより静電潜像を形成し、現像装置により顕像化する間接電子写真法で画像形成を行うための電子写真感光体において、該電子写真感光体内部に、振動吸収材の外壁全面にわたって隙間材を被覆して構成される制振材を、圧入法によって隙間材を削りながら内蔵させたものであることを特徴とする電子写真感光体。
【選択図】 図10
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、間接電子写真法で画像形成するに際して使用される電子写真感光体、及びその製造方法、並びにそれを搭載した画像形成装置、プロセスカートリッジに関し、より詳しくは、帯電部材に交流電圧を重畳した直流電圧を印加して、電子写真感光体を帯電する際に発生する帯電音、クリーニングブレードの摺擦に伴う摺擦音等の高周波音を効率的に抑制する制振材を内蔵した電子写真感光体、及びその製造方法、並びにそれを搭載した画像形成装置、プロセスカートリッジに関する。
【0002】
【従来の技術】
ファクシミリ、レーザー・プリンター、電子写真複写機などの間接電子写真法を用いたデスクトップ型あるいはフロア型の画像形成装置には電子写真感光体(以下、単に感光体と称する)を中心に、順に帯電装置、画像露光装置、現像装置、転写装置、分離装置、クリーニング装置、除電装置および定着装置が配置される。
感光体には、従来、酸化亜鉛感光体(ZnO)、硫化カドミウム感光体(CdS)、セレン化カドミウム感光体(CdSe)、アモルファスセレン系感光体(例えば、a−Se、a−Se−Te、a−As2Se3など)、アモルファスシリコン系感光体(例えば、a−Si:H、a−Si:Ge:H)などが使用されてきたが、近年では作製が容易、高感度設計が可能、低コスト、無公害等の多くのメリットを有する有機系感光体が主流に使用されている。
【0003】
電子写真法を用いた画像形成では、まず、感光体に画像形成に必要な表面電位に帯電される(感光層がホール移動型の電荷発生層、電荷輸送層を積層した機能分離型有機感光体では、通常−400〜−800V)。
感光体を帯電する手段としては、コロナ帯電法、接触帯電法、感光体と帯電部材(ローラ、ブラシ、ブレードなどの部材)間を30〜100μm程度離して帯電する非接触帯電法(若しくは近接帯電法)などが実用化されている。
【0004】
コロナ帯電法は感光体の長さ方向にわたってシールドケース内に帳架された直径40〜80μmのタングステン線、ニッケル線などの金属線、或いはステンレス製の鋸歯状電極に、−4500〜−6500V程度の高電圧を印加して感光体を帯電する方法である。この方式では高電圧を印加するため多量のオゾンを発生する。画像形成時のオゾン発生量は10ppm前後と極めて多量であり、活性炭などを使用したオゾン処理部材を排気ファンの位置に設置しても、十分に処理仕切れず漏れ出たオゾンによる臭気のため不快感を感じ、また、健康被害など環境上の大きな問題となっていた。
【0005】
このことに鑑み、オゾン生成量が極めて少ない、接触帯電法(例えば、特開昭58−40566号公報、特開平6−274007号公報参照)、さらには感光体に極近接配置された帯電部材で帯電する非接触帯電法(近接帯電法ともいう)(例えば、特開平7−301973号公報、特開平9−26685号公報参照)が開発された。
【0006】
接触帯電法は、ローラ、ブラシ等の帯電部材を感光体に直接接触させて帯電する方式である。
一方、感光体から30〜100μm程度離して帯電する非接触帯電法は、接触帯電部材の欠点である帯電部材からのトナー汚染や帯電部材による感光体摩耗、感光体の放電破壊などを緩和することが出来る。
これらの帯電手段に於いても帯電時に放電を伴うが、感光体に近接若しくは極近接しているため、印加電圧を低く設定できる。したがって、オゾンの発生量は直流電圧印加の場合は0.05〜0.1ppm、交流電圧を重畳した直流電圧印加の場合は0.2〜0.4ppm程度と少なくなり、環境上の課題をほぼクリヤーすることが出来た。
しかし、これらの帯電手段はパッシェンの法則(例えば、シャファート著(井上英一訳):電子写真、P.514−519、共立出版参照)に従う帯電方法であるため、感光体と帯電部材間のギャップ(空隙)や、環境の影響を受けやすい。
【0007】
すなわち、感光体や帯電部材に局所的に凹みや歪みが有ると、放電にムラが生じるため、帯電が不均一になり濃度ムラが発生し易くなる。また、急激な環境変化(特には高湿化)が生じると、放電が不安定になり画像ムラを起こし易い。特に直流電圧のみを印加した場合にこの傾向があり、非接触帯電法では感光体と帯電部材間に距離が有るため、更に帯電に暴れが生じ不安定に成りやすい。
【0008】
帯電の不安定を緩和する手段として、帯電部材に交流電圧を重畳した直流電圧(例えば下記の条件)を印加する方法が行われ、感光体や帯電部材に数10μm程度の凹みや歪み、或いはうねり、さらには急激な湿度上昇があってもほぼ追随し、均一性の良い高品位画像が得られるように成った。
例えば、直流電圧:−600〜−1200V
交流電圧:1000〜2000V
周波数 :800Hz〜2500Hz
【0009】
交流電圧は振動電流であるため、周波数に応じて変化する周期的なうなりがある。
したがって、交流電圧を重畳した直流電圧を帯電部材に印加した場合、放電と共に帯電音が発生する。帯電部材に印加する周波数が低いと帯電が不安定になるため、周波数は必然的に通常800Hz〜2500Hzに設定するが、この周波数帯域は人間の耳には非常に敏感な周波数帯域であるため、少しの帯電音でも気になり、音圧が高くなる程不快感を感じる。
交流電圧は振動(脈流)電流であるため、導体中を交流(交番電流)が流れることによって微かな振動(うなり)を生じる。帯電部材に交流が流されると、感光体間との放電で帯電部材、感光体共に振動する。帯電部材は一般に真鍮製の芯材に、帯電部材として弾性ゴムが使用されているため音の減衰がある。このため、帯電部材の振動は殆ど感知されないが、感光体の導電性支持体には音の伝搬速度が比較的速く、剛性が低いアルミニウムが使用されるため響きやすく大きな帯電音に成りやすい。
【0010】
帯電音は感光体支持体の構造や形状によって、共振や付帯音を伴うため、本来の帯電音以上に大きく成り易い。また、非接触帯電法の場合は、帯電部材と感光体間が離れているため、必然的に印加条件を高くする必要が有り、非接触帯電法では接触帯電法に比べて、帯電音が大きくなる傾向がある。
【0011】
また、摺擦音はクリーニングブレードが感光体を摺擦することで発生する。この摺擦音は帯電音と同じ様な周波数帯域にあるため帯電音同様に不快に感じる高周波音であり、感光体とクリーニングブレードの摩擦抵抗が大きいほど起こりやすい。摺擦音は感光体が回転中に連続的或いは間欠的に発生することもあるし、回転中は気にならないが感光体の回転停止直前に急に大きくなることもある。帯電音は作像時連続的に発生する現象であることから気になる音であるため、摺擦音共々抑制改善を行うことは必要不可欠である。
【0012】
なお、明細書中に帯電音、振動音、高周波音などの用語を使用するが、帯電音は感光体を帯電するときに発生する音、摺擦音はクリーニングブレードで摺擦するときに発生する音、高周波音はキーンという高周波音を伴う音であるため、帯電音、摺擦音に共通の音として取り扱っている。この他振動音という言葉を使用することもあるが、高周波音≒振動音である。
【0013】
帯電音を改善する手段としていくつかの技術例が開示されている。これらの技術例を下記に示す。
感光体の支持体を厚くして、振動を抑制し帯電音を改善する方法として以下の技術例がある。
感光体の基体の両端部にインロー加工を施し、インロー以外の肉厚を1.9mm以上とする支持体を用いる(例えば、特開2000−19761号公報参照)、感光体の堆積密度を0.6g/cm3以上、2.0g/cm3以下とする(例えば、特開2000−155500号公報参照)、像保持部材を構成するアルミニウム素管の肉厚が1.5mm以上有り、かつ、この素管を該保持部材の固有振動数が印加電圧の周波数の整数倍±100Hzの範囲と成らないような肉厚とする(例えば、特開2000−206829号公報参照)。
【0014】
また、ドラム状感光体の内部に制振材(充填材)を挿入して帯電音を改善する方法としては以下の技術例が有る。
感光体の全重量/全体積が0.65g/cm3以上であり、その感光体の内部に密度2.0g/cm3以上の剛体を挿入する(例えば、特開平5−197321号公報参照)、2つ以上の弾性体(Oリング)と円柱状部材(比重1.5以上のプラスチック(ガラス繊維を20%以上含有するポリブチレンテレフタレート樹脂))から構成される部材を感光体へ挿入する(例えば、特開平11−184308号公報参照)、粘弾性材料を充填する(例えば、特開平3−105348号公報参照)、ドラムの内側中央部に接合されたダンパーベースと、ダンパーベースに嵌合された固有振動数が振動電圧の周波数あるいはその2倍の周波数である梁状部材を具備する(例えば、特開平7−199731号公報参照)、薄肉の潜像担持体の内部に周方向及び軸方向に沿って裏打ち手段(可撓性を有する羽根構造をしたもの)を配置する(例えば、特開2002−244488号公報参照)。
【0015】
更に、充填材、緩衝材などの振動音を抑制するための部材を挿入し、固定する手段としては以下のような技術例がある。
金属製バネを内蔵した樹脂製円筒状部材を挿入し、感光体内壁に押圧力で固定する方法(例えば、特開2000―321929号公報参照)、中空の帯電部材の表面に被覆層を設け、帯電部材の内部に弾性体を挿入し、芯金をその弾性体を介して支持する構造とする(例えば、特開平9−230671号公報参照)、感光体の内部に充填部材を固定する手段として、テーパーを有する充填部材を感光体に挿入し、感光体内壁と充填材の空隙を埋めるような形で円筒状の固定部材を嵌合する(例えば、特開2000−89612号公報、特開2001−194954号公報…特許文献1及び2参照)、充填物を樹脂フィラー(2〜100μmのビニルベンゼンを主成分とする架橋重合物)混入の接着剤で感光体ドラム支持体内に固定する(例えば、特開2000−98804号公報参照)、感光体内部に特定形状の裏打ち部材を挿入する(例えば、特開2002−24488号公報)、感光体内部に剛体或いは弾性体からなる充填物を内装し、該充填物との隙間を発泡剤やシーリング材で固定保持する(例えば、特開平6−95560号公報)、感光体ドラムの内部に、外径が該ドラムの内径よりやや大きい防振体を圧入する(例えば、特開平8−202206号公報、特開平11−327415号公報…特許文献3及び4参照)。
【0016】
上記した技術例はいずれも大なり小なりの改善効果がある。
感光体には支持体材料として、一般に、アルミニウム系合金から成る0.7〜3mm程度の肉厚の金属が使用される場合が殆どであるが、アルミニウムは音の伝搬が良好で、響きやすい材質の金属である。支持体を厚くすることによって剛体化が図られ帯電音は抑制される方向にある。しかしながら、重量の面から支持体を厚くするには限界が有り、本質的に響きやすい材料であるため、例えば、帯電される領域の導電性支持体を厚くしても、僅かに静かに成るだけで、依然として帯電音は高い。
【0017】
感光体の内部に充填材を挿入する方法は、響きを抑えるには有効な手段である。しかし充填材の抑制効果は、感光体支持体の内壁に十分に密着することによって初めて大きな効果が得られる。したがって、単に内蔵しただけでは、感光体支持体と充填材間に隙間が生じ易く、また重量が軽い場合、振動を吸収し難いような材料を用いた場合などでは、予期した通りの効果を得ることが難しい。
制振効果を高めるためには、感光体内に重量のある充填材を接着剤を用いて、出来るだけ隙間を創らないようにして固定することが望ましい。しかし、近年は環境問題が大きくクローズアップされており、省資源、省エネルギーなどで再生や再使用が可能な方法、方式が要求されており、振動抑制の効果が高い方法であっても、充填材を感光体内に接着材などを使用して完全に固定するような方法では、再生、再使用が困難であり環境破壊を招く要因でもある。
【0018】
【特許文献1】
特開2000−89612号公報
【特許文献2】
特開2001−194954号公報
【特許文献3】
特開平8−202206号公報
【特許文献4】
特開平11−327415号公報
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、帯電部材に交流電圧を重畳した直流電圧を印加して画像形成を行う際に発生する帯電音はもとより、クリーニングブレードの摺擦音を不快に感じない程度に効率よく抑制でき、取り付けや交換性、環境(省資源、省エネルギー)等に配慮して制振材を構成し、その制振材を内蔵した電子写真感光体、及びその製造方法、並びに該電子写真感光体を搭載した画像形成装置、及び画像形成装置に着脱自在なプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、以下に記載の(1)〜(35)によって達成できる。すなわち、
(1)接触、若しくは非接触帯電装置に、交流電圧重畳の直流電圧を印加して帯電した後、光書き込みにより静電潜像を形成し、現像装置により顕像化する間接電子写真法で画像形成を行うための電子写真感光体において、該電子写真感光体の内部に、振動吸収材の外壁全面にわたって隙間材を被覆して構成される制振材を、圧入法によって隙間材を削りながら内蔵させたものであることを特徴とする電子写真感光体。
(2)前記隙間材が50℃以上に融点を有し、該融点以下で固体であり、該融点以上で液化する、切削容易な材料から構成されることを特徴とする(1)に記載の電子写真感光体。
(3)前記隙間材がワックス系材料であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の電子写真感光体。
(4)前記ワックス系材料がパラフィンワックスであることを特徴とする(3)に記載の電子写真感光体。
(5)電子写真感光体に内蔵された状態での前記隙間材の厚みが0.5mm〜2mmであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の電子写真感光体。
(6)前記制振材が振動吸収材の表層に隙間材が被覆された一体構成の部材であり、電子写真感光体に内蔵状態で、振動吸収材外壁から感光体内壁までの距離が0.5mm〜2mmであることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の電子写真用感光体。
(7)電子写真感光体に挿入する直前の前記隙間材で被覆された状態の制振材の外径が、電子写真感光体の内径より1mm〜4mm大きいことを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の電子写真感光体。
(8)前記振動吸収材が円筒状若しくは円柱状の弾性体であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の電子写真感光体。
(9)前記円筒状の振動吸収材が4mm以上の肉厚を有することを特徴とする(8)に記載の電子写真感光体。
(10)前記振動吸収材の長さが、電子写真感光体の両端に装着されたフランジ間の長さの75〜100%であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の電子写真感光体。
(11)前記振動吸収材の外径が、電子写真感光体の内径より1mm〜4mm小径であることを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載の電子写真感光体。
(12)前記振動吸収材の損失正接tanδが0.5以上の特性を有することを特徴とする(1)〜(11)のいずれかに記載の電子写真用感光体。
(13)前記振動吸収材がブチルゴムであることを特徴とする(1)〜(12)のいずれかに記載の電子写真用感光体。
(14)前記振動吸収材の片端若しくは両端の切り口エッジが、全周にわたって1mm以上斜めにカットされていることを特徴とする(1)〜(13)のいずれかに記載の電子写真感光体。
(15)接触、若しくは非接触帯電装置に、交流電圧重畳の直流電圧を印加して帯電した後、光書き込みにより静電潜像を形成し、現像装置により顕像化する間接電子写真法で画像形成を行うための電子写真感光体の製造方法において、該電子写真感光体の内部に、振動吸収材の外壁全面にわたって隙間材を被覆して構成される制振材を、圧入法によって隙間材を削りながら内蔵させることを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【0021】
(16)接触若しくは近接配置された帯電装置に交流電圧重畳の直流電圧を印加して、電子写真感光体に均一帯電を行い、画像露光装置からの光書き込みにより静電潜像を形成し、その静電潜像を現像装置でトナー像として顕像化し、転写装置によって被転写体に転写を行い、クリーニング装置により前記電子写真感光体上の残留粉体をクリーニングすることによって画像形成を行う画像形成装置において、該電子写真感光体として、振動吸収材及び隙間材を一体構成とする制振材が内蔵された電子写真感光体を搭載したものであることを特徴とする画像形成装置。
(17)前記隙間材が50℃以上に融点を有し、該融点以下で固体であり、該融点以上で液体となる、削れ容易な材料から構成されることを特徴とする(16)に記載の画像形成装置。
(18)前記隙間材がパラフィンワックスであることを特徴とする(16)又は(17)に記載の画像形成装置。
(19)前記隙間材の厚みが0.5mm〜2mmであることを特徴とする(16)〜(18)に記載の画像形成装置。
(20)前記制振材が振動吸収材の表層に隙間材が被覆された一体構成の部材で、電子写真感光体に内蔵状態で、振動吸収材外壁から電子写真感光体内壁までの距離が0.5mm〜2mmであることを特徴とする(16)〜(19)のいずれかに記載の画像形成装置。
(21)振動吸収材が円筒状若しくは円柱状の弾性体であることを特徴とする(16)〜(20)のいずれかに記載の画像形成装置。
(22)前記円筒状の振動吸収材が、少なくとも4mm以上の肉厚を有することを特徴とする(21)に記載の画像形成装置。
(23)前記振動吸収材の長さが、電子写真感光体の両端に装着されたフランジ間の長さの75〜100%であることを特徴とする(16)〜(22)のいずれかに記載の画像形成装置。
(24)前記振動吸収材の損失正接tanδが0.5以上の特性を有することを特徴とする(16)〜(23)のいずれかに記載の画像形成装置。
(25)前記振動吸収材がブチルゴムであることを特徴とする(16)〜(24)のいずれかに記載の画像形成装置。
【0022】
(26)電子写真感光体、及び電子写真感光体に接触若しくは近接配置され、交流電圧を重畳した直流電圧が印加される帯電装置、現像装置、クリーニング装置より選ばれる少なくとも1つの装置(手段)を一体に支持し、画像形成装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジにおいて、振動吸収材及び隙間材を一体とする制振材を内蔵した電子写真感光体が搭載されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
(27)前記隙間材が50℃以上に融点を有し、該融点以下で固体であり、該融点以上で液体となる、削れ容易な材料から構成されることを特徴とする(26)に記載のプロセスカートリッジ。
(28)隙間材がパラフィンワックスであることを特徴とする(26)又は(27)に記載のプロセスカートリッジ。
(29)前記隙間材の厚みが0.5mm〜2mm以下であることを特徴とする(26)〜(28)のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
(30)制振材が振動吸収材の表層に隙間材が被覆された一体構成の部材で、電子写真感光体に内蔵状態で、振動吸収材から電子写真感光体内壁までの距離が0.5mm〜2mmであることを特徴とする(26)〜(29)のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
(31)前記振動吸収材が円筒状若しくは円柱状の弾性体であることを特徴とする(26)〜(30)のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
(32)電子写真感光体に内蔵される円筒状の振動吸収材が、少なくとも4mm以上の肉厚を有することを特徴とする(31)に記載のプロセスカートリッジ。
(33)振動吸収材の長さが、電子写真感光体の両端に装着されたフランジ間の長さの75〜100%であることを特徴とする(26)〜(32)のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
(34)電子写真感光体に内蔵される振動吸収材の損失正接tanδが0.5以上の特性を有することを特徴とする(26)〜(33)のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
(35)電子写真感光体に内蔵される振動吸収材がブチルゴムであることを特徴とする(26)〜(34)のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに具体的に説明する。
本発明で使用される間接電子写真方法を用いた複写プロセスの概略を、図1を用いて説明する。
図1に記載の画像形成装置は、1本の感光体に1系統の現像装置を組み合わせた単色トナーを使用した画像形成装置であり、感光体1を中心に、帯電装置2、画像露光装置3、現像装置4、転写装置5、分離装置6、クリーニング装置7が配置され、更に定着装置8及び被転写体9が配置される。感光体の内部には振動吸収材の外壁を隙間材で被覆した制振材10が感光体内壁に密着するように挿入される。
【0024】
制振材10は振動吸収材と隙間材からなり、振動吸収材は損失正接tanδが0.5以上(好ましくは0.6以上)の弾性体から成る。隙間材は50℃以上に融点を持ち、該融点以下では固体に、該融点以上の高温(例えば70℃)では流動化する材料(本発明では、例えばパラフィンワックスを使用)から成る。感光体への内蔵は振動吸収材に0.5〜2mmの厚さになるように隙間材をほぼ均一に被覆し、感光体内に圧入法によって、隙間材を削りながら装着することにより、感光体内壁に密着装着する。
【0025】
本発明の接触、若しくは非接触帯電装置において、感光体1を帯電する手段として、接触帯電法、または感光体と帯電部材間を30μm〜100μm(好ましくは50μm〜80μm)離した非接触帯電法の何れかの帯電装置2が使用される。帯電部材には回転駆動が掛けられる帯電ローラ2−1に、高圧電源2−2を介して交流電圧を重畳した直流電圧が印加され、感光体1の表面電位は−400V〜−800Vに帯電される。
尚、コロナ帯電装置も非接触帯電装置の1種であるが、ここで云う非接触帯電装置とは、感光体から30〜100μm程度に近接配置された帯電部材により感光体を帯電する装置を意味する。
【0026】
帯電ローラ2−1に印加される条件は直流電圧が−600〜−1200V、交流電圧(正弦波若しくは三角波)が1000V〜2000V、周波数が800Hz〜2500Hz程度であり、画像形成に必要な帯電電圧と同等、あるいは少し高めの直流電圧に、帯電開始電圧Vthの2倍以上のPeak to Peak電圧(Vp−p)の交流電圧を重畳した直流電圧に設定することが望ましい。
【0027】
帯電ローラ2−1を感光体から離して一定の距離に保つ方法としては、例えば、幅5〜10mmにカットしたポリエステル(PE)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、フッ素(F)樹脂フィルムなどのシートを帯電ローラの両端部に段差を形成しないように貼り付けるか、あるいはシリコーン(Si)系の熱収縮チューブを帯電ローラー端部に熱収縮させて、スペーサーとする方法等がある。帯電ローラ2−1は感光体1と直接、若しくは、スペーサーを介して接触しており、自重で感光体と従属回転するか、ギヤを介した回転が与えられる。
【0028】
感光体1を帯電した後、デジタル複写方式ではCCD(電荷結合素子)で読みとられた原稿画像、或いはパーソナルコンピューターなどから送信されたデジタル信号を、LD(Laser Diode)素子、若しくはLED(LaserEmitting Diode)アレイ、凸レンズ、ポリゴンミラー、シリンドリカルレンズ等で構成される画像露光装置3によって、20〜60μm程度のドット画像に変換されて感光体に照射され、入力信号に応じた静電潜像が形成される。
【0029】
LD素子もしくはLEDアレイは感光体の最高感度領域若しくはその近傍の発振波長の素子が選択される。発振波長が短くなるほど、スポット径を絞り込むことが出来るため、400〜450nm程度の短波長側に発振波長を有するLD素子は1200や2400dpi等の高解像度を得る場合に有利であり、本発明の画像形成装置に搭載して使用することが出来る。
静電潜像が形成された後、例えば2成分現像剤(トナーとキャリアで構成)が投入された現像装置4(現像バイアスは、例えば−400V〜−700V)で反転現像(露光された電位が現像される)されトナー像が形成される。
【0030】
2成分現像剤を構成するキャリアには、例えば、鉄、フェライト、ニッケルの様な磁性を有する粉体(磁性紛)に帯電性及び帯電安定性、耐久性等向上させる為にポリフッ化炭素、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂等で被覆されたもの等が用いられる。キャリアの粒径は30〜60μm程度である。
トナーには角張った領域を削いで球形処理された平均円形度が0.91〜0.94程度の粉砕トナー、あるいは、重合法(乳化重合法、懸濁重合法など)で製造された平均円形度が0.97〜1.0の球形トナーで、重量平均粒径が4〜8μmの重合トナーなどが、キャリアに対して2〜10(重量%)程度の割合で混合され使用される。
【0031】
現像後のトナー像は転写装置5によりトナーの保持する電荷とは逆極性の電圧(マイナス帯電のトナーに対してはプラスの電圧)で被転写体9(コピー用紙、OHPシートなど)に転写され、被転写体9は分離装置6により感光体1より剥離され、定着装置8に送られ、ハードコピーとなる。
【0032】
一方、転写後の感光体上の残留トナーはクリーニング装置7(ポリエチレンや、ナイロン、炭素繊維などの繊維から構成されるクリーニングブラシ、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、ネオプレンゴム、フッ素ゴム等の材料から成るクリーニングブレードのいずれか、あるいは両者を併用)を用いて清掃され、最後に感光体1の残留電荷が除電され、一連の複写サイクルは終了する。
【0033】
なお、図1で説明した複写プロセスは、フルカラー方式の画像形成装置にも応用可能である。図示していないが、フルカラー方式の電子写真複写機やカラーレーザープリンターでは、1本の感光体にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の4系統(色)の現像装置を配した1ドラム方式の画像形成装置、図2に示すように、1つの画像形成装置に4系統の複写プロセスを組み込んだ4連タンデム方式の複写方式の画像形成装置がある。
【0034】
また、図1に記載の感光体、帯電装置、現像装置、クリーニング装置等を、2系統、若しくはそれ以上組み合わせることによって、画像形成装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジとすることが出来る。図3は感光体、帯電装置、現像装置及びクリーニング装置を組み合わせたプロセスカートリッジの一例である。
プロセスカートリッジとすることにより、組み合わせた部品や装置がダウンしても、プロセスカートリッジを交換するだけで現状回復が出来るため、メンテナンスにかかるコストを大幅にダウンさせることが出来るという大きなメリットがある。
【0035】
図4〜図6に有機感光体の構成例を示す。図4は0.6〜3mm程度の厚さのアルミニウム合金を主体とする導電性支持体上に、下引き層、感光層の順に積層された単層構成の感光体で、帯電極性は殆どの場合プラス帯電である。
図5は下引き層の上に電荷発生層と電荷輸送層から成る感光層が積層された機能分離型の感光体であり、帯電極性は通常マイナスである。
図6は図5に記載の感光体の電荷輸送層最表層から2〜10μmの幅でフィラーを添加した電荷輸送層(フィラー分散電荷輸送層)を形成して、耐摩耗性を図った感光体構成の一例である。添加されるフィラーは一次粒径が0.2〜1.0μm、比抵抗が1012〜1014Ωcm程度の酸化アルミ(アルミナ)、酸化チタンなどの金属酸化微粒子で、フィラーを分散する電荷輸送層全重量の10〜50重量%が添加される。
【0036】
次に感光体を構成要素別に説明する。
本発明に使用される感光体の導電性支持体には、体積抵抗率が1×1010Ω・cm以下の導電性を示すものが好ましく、より好ましくは1×106Ω・cm以下のものが使用できる。例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。
ドラム状感光体では加工性、入手容易性、再生等を考慮して、アルミニウムが使用されることが多い。
【0037】
一般的なアルミニウムの表面加工方法には、切削加工、ホーニング加工、ブラスト加工などがあり、目標の外径寸法に切削した後、さらに超仕上げ、鏡面仕上げ等により、表面粗度が0.1〜10μm程度になる様に加工され、十分な油膜洗浄が行われる。
導電性支持体の形状をドラム状とする場合、肉厚は直径や材質にも左右されるが、アルミニウム(例えばJIS規定の3003番)を使用する場合、0.5〜5mm程度のものが使用され、直径φ24〜80mmの感光体であれば0.7〜3mm程度の肉厚の導電性支持体が好適である。
【0038】
導電性支持体と感光層との間には、必要に応じて、下引き層が設けられる。下引き層は支持体側からの電荷注入を阻止し帯電特性を安定化する、接着性を向上する、モアレなどを防止する、上層の塗工性を改良する、残留電位を低減するなどを目的として設けられる。下引き層は一般に樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を、溶剤を用いて塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶解性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の三次元網目構造を形成する硬化型樹脂などが挙げられる。また、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物、あるいは金属硫化物、金属窒化物などの微粉末を分散し含有させてもよい。これらの下引き層は、適当な溶媒、塗工法を用いて形成することができる。
更に本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用して、例えばゾル−ゲル法等により形成した金属酸化物層も有用である。
【0039】
この他に、本発明の下引き層にはAl2O3を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物や、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作製法にて設けたものも良好に使用できる。
下引き層の膜厚は0.1〜20μmが適当であり、好ましくは1〜10μmである。
【0040】
電荷発生層は電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じてバインダー樹脂が用いられる。電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることが出来る。
無機系材料には、例えば結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファス・シリコンなどが挙げられる。アモルファス・シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子などをドープしたものが良好に用いられる。
【0041】
一方、有機系材料としては、公知の材料を用いることが出来る。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることが出来る。
【0042】
電荷発生層に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、例えばポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、ポリアリレート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが用いられる。これらのバインダー樹脂は、単独または2種以上の混合物として用いることが出来る。また、必要に応じて低分子電荷輸送物質を添加してもよい。
【0043】
電子輸送物質としては、例えばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイドなどの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることが出来る。
【0044】
正孔輸送物質としては、以下に示される電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。
例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体などが挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることが出来る。
電荷発生層は、例えば電荷発生物質、溶媒及び結着樹脂を主成分とするものから形成されるが、その中には、増感剤、分散剤、界面活性剤、シリコーンオイル等のいかなる添加剤が含まれていても良い。
【0045】
電荷発生層を形成する方法には、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とが大きく挙げられる。前者の方法には、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法などが用いられ、上述した無機系材料、有機系材料が良好に形成出来る。
また、キャスティング法によって電荷発生層を設けるには、上述した無機系もしくは有機系電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノンなどの溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミルなどにより分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成出来る。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート法、ビードコート法などを用いて行なうことが出来る。
以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
【0046】
電荷輸送層は、感光体の機械的強度(耐久性)維持、及び帯電特性や感度などの電子写真特性を確保するために形成される。
電荷輸送層は、通常電荷輸送成分とバインダー成分を主成分とする混合物ないし共重合体を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することにより形成出来る。
電荷輸送層の膜厚は、10〜100μm程度が適当であり、解像力が要求される場合、薄い方が望ましく10〜30μm程度が適当である。
【0047】
電荷輸送層を構成する低分子輸送材にはオキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダール誘導体、トリフェニールアミン誘導体、α−フェニールスチルベン誘導体、トニフェニールメタン誘導体、アントラセン誘導体などを使用することが出来る。
【0048】
また、バインダー成分として用いることのできる高分子化合物としては、例えば、ポリスチレン、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂(ビスフェノールAタイプ、ビスフェノールCタイプ、ビスフェノールZタイプ或いはこれらの共重合体)、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂などの熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの高分子化合物は単独または2種以上の混合物として、また、電荷輸送物質と共重合化して用いることができる。
【0049】
電荷輸送物質として用いることのできる材料は、上述の低分子型の電子輸送物質、正孔輸送物質が挙げられる。電荷輸送物質の使用量は高分子化合物(バインダー)100重量部に対して20〜200重量部、好ましくは50〜100重量部程度である。
電荷輸送層塗工液を調製する際に使用できる分散溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブなどのエーテル類、トルエン、キシレンなどの芳香族類、クロロベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類等を挙げることができる。
【0050】
感光体の機械的、電気的耐久性は電荷輸送層の物理特性で左右される。電荷輸送層の膜厚を30μm程度形成すると、5〜10(万枚)の耐久枚数を達成することが出来、一般的な使用に対してはほぼ十分な特性を有する。
しかし、使用頻度が高く、高ボリュームのユーザーにおいては、感光体の耐久性が5〜10(万枚)程度では不足する場合があるため、有機感光体は耐久化を図ることが望ましい。
有機感光体を高耐久化する手段には、感光層を高耐久化したり、感光層上に耐摩耗性の被膜を形成するなどの既知の技術を使用することが出来る。
また、本発明では高耐久化を図る手段として、有機感光層上電子写真特性に支障を与えにくいフィラーを分散して感光層(フィラー分散電荷輸送層)を形成し、機械的、電子写真特性を満足させる。
【0051】
電荷輸送層上に形成するフィラー分散電荷輸送層は体積抵抗率が1×1013〜1×1015Ω・cm、表面抵抗率が1×1015〜1×1017Ω、650nmの波長での透過率が5μmの膜厚の時90〜95%、比誘電率が2.5〜4程度の特性に成るように設定される。
【0052】
電荷輸送層と薄膜との比誘電率に大きな違いが生じた場合、その境界近傍でホールの移動を阻害するような障壁が形成されるため、光減衰特性の悪化が起こり、画像品質が低下する。したがって、両層間に比誘電率の差が生じない様にすることが望ましい。
【0053】
また、両層間に出来るだけ界面(障壁)が形成されない様な材料や、製法などの検討が必要である。比誘電率が同等であっても、完全に障壁を形成するような絶縁層は、電荷の輸送を阻害するため好ましくなく、電荷輸送層から表面に向かって移動するホール(正孔)がスムーズに薄膜を乗り越え、感光体表面の電荷と結合し消滅するような構造及び構成にする必要がある。
電気特性および機械特性(耐摩耗性など)の両特性を同時に満足させるためには、薄膜を感光層(ここでは電荷輸送層)の延長と考えて設計するのが最も好ましい。
【0054】
機械特性を向上させ、且つ電気特性(感度及び繰り返し特性)を両立させる手段としては、本発明では電荷輸送層に高硬度の無機フィラーを添加した薄膜(フィラー分散電荷輸送層とする)とするのが最良の方法である。
電荷輸送層に添加するフィラーは1×1012〜1×1015Ω・cm程度の体積抵抗率を有し、撥水性を有し、その機能が持続するものが望ましい。
フィラー材料は、有機性フィラー材料と無機性フィラー材料とがあり、有機性フィラー材料としては、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、a−カーボン粉末等が挙げられ、無機性フィラー材料としては、銅、スズ、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末、シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物、フッ化錫、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム等の金属フッ化物、チタン酸カリウム、窒化硼素などの無機材料が挙げられる。これらのフィラーの中で、フィラーの硬度の点から無機材料を用いることが耐摩耗性の向上に対し有利である。
【0055】
特に、アルミナ(α型)、ついで酸化チタンの微粒子を使用するのが本発明では好ましい。これらのフィラーは単独でも、混合して使用しても良い。
フィラー材料は、電荷輸送物質や結着樹脂、溶媒等とともに適当な分散機を用いることにより分散できる。また、フィラーの一次粒径の平均は、電荷輸送層の透過率や耐摩耗性の点から、0.01〜1.0μmが好ましく、より好ましくは0.2〜0.5μmである。
【0056】
感光層に添加するフィラー粒径が大きくなると、樹脂中に分散した時の粒径も大きくなるため、電荷の移動や、光拡散などによって解像度は低下する方向にある。また、解像度はトナーの粒径にも依存する。
フィラー粒径が小さいと、耐摩耗性の効果が低くなり、大きい場合には、磨耗は抑制される方向になるが、感光層に添加したフィラーによってブレードが磨耗及び破損したり、削れたフィラーによって更に感光層が削られる現象が有る。また、粒子間にコロナ生成物が入り込み、ブレードでの削除が困難となり、画像流れが起こりやすく成りやすい。
【0057】
なお、電荷輸送層の最表面側が最もフィラー含有率が高く、支持体側が低くなるようにフィラー濃度傾斜を設けたり、電荷輸送層を複数層にして、支持体側から表面側に向かい、フィラー濃度が順次高くしたりするような構成にすることも出来る。フィラー分散電荷輸送層中のフィラーの添加量は、要求される耐刷枚数や、使用されるトナー等によって変わるが、通常は重量%で10%以上、40%以下、好ましくは10%以上、35%以下が望ましい。
【0058】
フィラー(無機微粒子)は酸化物で絶縁体であり、バインダー樹脂に分散した場合、粒子とバインダー樹脂との界面にトラップが形成されやすい。このため、感光体を繰り返し使用した場合、残留電位が蓄積し、画像部電位の上昇を招くため、画像濃度の低下、解像度の低下が起こりやすい。したがって、分散性を良好にし感光層の均一化をはかり、トラップの形成を阻害したり、トラップ密度を軽減するような添加物を添加することも一方法である。また、感光体は感光体に近接配置した帯電装置によって帯電するが、帯電の際に発生したオゾンや窒素酸化物などのコロナ生成物が感光体表層に付着したり、感光層中に進入し、電気抵抗(体積抵抗率、表面抵抗率)を低下させ、解像度低下などの画像品質低下を起こす。これを解消するために、酸化防止剤、可塑剤を少量添加することも出来る。
ただし、これらの添加物は常に必要なものではなく、電荷輸送層が薄い場合や、フィラーの添加量が少ない場合、あるいは画像システムによっては添加する必要がない場合もある。
フィラー分散電荷輸送層はフィラーをバインダー樹脂中に適当量分散した塗工液をスプレー法やディッピング法などの塗工法を用いて目標の膜厚に塗工する。
【0059】
本発明における電荷輸送層及びフィラー分散電荷輸送層には、膜厚の凹凸を低減する方法として、例えば、レベリング剤を添加する方法などは有効である。レベリング剤としては、公知の材料を用いることができるが、微量で高い平滑性を付与することができ、静電特性に対する影響が小さい、シリコーンオイル系のレベリング剤がとくに好ましい。シリコーンオイルの例としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、アルキル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル、高級脂肪酸含有シリコーンオイル等が挙げられる。また、塗工時の条件等によっても凹凸を低減することは可能である。例えば浸漬塗工において、感光体を引き上げた後、塗膜表面がまだウェットな状態の時に、フードで覆ったりすることで風の流れなどで表面を乱されないようにしたりすることで凹凸が低減される。また、塗膜表面付近の溶媒が急激に揮発すると表面だけが硬化して塗膜の内部が流動性を持った状態になり、この内部の塗膜がたれて凹凸が形成されることもあるので、ウェットな状態の時に感光体の周りに溶媒の蒸気層を形成し、溶媒を穏やかに揮発させることでレベリングが進行し、凹凸が低減される。
【0060】
また、スプレー塗工においては、エアスプレーによって塗膜を形成する場合、エアの圧力や、エア流量を適量にコントロールすることで、塗膜が流動的な状態での表面の乱れを抑えて凹凸を抑制することが必要である。ここで、エア圧、エア流量が大きすぎるとエアの流れで塗膜の表面が乱れ、逆に小さすぎると、塗工液の液滴が均一にならなかったり、微粒化が不十分になったりして、塗膜の均一性が低下する原因となる。また、電荷輸送層を形成後、回転させつつ溶媒を揮発させるが、このときの回転速度が大きすぎると、まだ溶媒を含み流動性をもっている塗膜に遠心力がかかり、凹凸が強調される。また、逆に回転速度が小さすぎると、回転によるレベリングより重力によるたれの影響が勝り、凹凸が発生する原因となってしまう。そのため、塗膜がウェットな状態での感光体の回転速度を適正な値に設定することが必要である。
【0061】
また、スプレー塗工においては、塗工液を供給するポンプの送液が一定であることが重要となる。すなわち、液の供給が一定でなく脈動を持っていたりすると、それがダイレクトに液の吐出量に影響を与えるため、付着量にムラが生じることになる。そのため、スプレーに液を供給するポンプとしては、脈動を抑えた多連式プランジャーポンプや、シリンジ型の超精密吐出装置などを用いることが好ましい。
【0062】
これらの方法は単独で用いても良いが、複数組み合わせることで、より効果的にレベリングがなされ、凹凸が低減された電荷輸送層が形成される。
さらに、レベリングが不十分であった場合、電荷輸送層の凸部を摩耗してならすことも凹凸を小さくする方法として可能である。たとえば、膜厚計で凸部を検出し、その部分を研磨加工して凸部をなくすという方法が考えられる。
【0063】
本発明においては、耐環境性の改善のため、及び、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、電荷発生層、電荷輸送層、下引き層、保護層、中間層等の各層に酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、低分子電荷輸送物質等を添加することが出来る。これらの化合物の代表的な材料を以下に示す。
【0064】
各層に添加できる酸化防止剤として、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)フェノール系化合物
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3′−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコールエステル、トコフェロール類など。
【0065】
(b)パラフェニレンジアミン類
N−フェニル−N′−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジメチル−N,N′−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなど。
【0066】
(c)ハイドロキノン類
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
【0067】
(d)有機硫黄化合物類
ジラウリル−3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3′−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3′−チオジプロピオネートなど。
【0068】
(e)有機燐化合物類
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
【0069】
各層に添加できる可塑剤として、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)リン酸エステル系可塑剤
リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸オクチルジフェニル、リン酸トリクロルエチル、リン酸クレジルジフェニル、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニルなど。
【0070】
(b)フタル酸エステル系可塑剤
フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ブチルラウリル、フタル酸メチルオレイル、フタル酸オクチルデシル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチルなど。
【0071】
(c)芳香族カルボン酸エステル系可塑剤
トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリ−n−オクチル、オキシ安息香酸オクチルなど。
【0072】
(d)脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤
アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ−n−オクチル、アジピン酸−n−オクチル−n−デシル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジカプリル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−n−オクチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジ−2−エトキシエチル、コハク酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、テトラヒドロフタル酸ジオクチル、テトラヒドロフタル酸ジ−n−オクチルなど。
【0073】
(e)脂肪酸エステル誘導体
オレイン酸ブチル、グリセリンモノオレイン酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、ペンタエリスリトールエステル、ジペンタエリスリトールヘキサエステル、トリアセチン、トリブチリンなど。
【0074】
(f)オキシ酸エステル系可塑剤
アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート、アセチルクエン酸トリブチルなど。
【0075】
(g)エポキシ可塑剤
エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸デシル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ベンジル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジデシルなど。
【0076】
(h)二価アルコールエステル系可塑剤
ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチラートなど。
【0077】
(i)含塩素可塑剤
塩素化パラフィン、塩素化ジフェニル、塩素化脂肪酸メチル、メトキシ塩素化脂肪酸メチルなど。
【0078】
(j)ポリエステル系可塑剤
ポリプロピレンアジペート、ポリプロピレンセバケート、ポリエステル、アセチル化ポリエステルなど。
【0079】
(k)スルホン酸誘導体
p−トルエンスルホンアミド、o−トルエンスルホンアミド、p−トルエンスルホンエチルアミド、o−トルエンスルホンエチルアミド、トルエンスルホン−N−エチルアミド、p−トルエンスルホン−N−シクロヘキシルアミドなど。
【0080】
(l)クエン酸誘導体
クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリ−2−エチルヘキシル、アセチルクエン酸−n−オクチルデシルなど。
【0081】
(m)その他
ターフェニル、部分水添ターフェニル、ショウノウ、2−ニトロジフェニル、ジノニルナフタリン、アビエチン酸メチルなど。
【0082】
本発明では滑剤を各層に添加することが出来る。例えば、下記に示すものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(a)炭化水素系化合物
流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、低重合ポリエチレンなど。
【0083】
(b)脂肪酸系化合物
ラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸など。
【0084】
(c)脂肪酸アミド系化合物
ステアリルアミド、パルミチルアミド、オレインアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミドなど。
【0085】
(d)エステル系化合物
脂肪酸の低級アルコールエステル、脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステルなど。
【0086】
(e)アルコール系化合物
セチルアルコール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセロールなど。
【0087】
(f)金属石鹸
ステアリン酸鉛、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなど。
【0088】
(g)天然ワックス
カルナバロウ、カンデリラロウ、蜜ロウ、鯨ロウ、イボタロウ、モンタンロウなど。
【0089】
(h)その他
シリコーン化合物、フッ素化合物など。
【0090】
なお、滑材を感光層(特には最表層)に添加することによる効果は不十分で、外添法によって必要に応じて供給するのが好ましい。
【0091】
各層に添加できる紫外線吸収剤として、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)ベンゾフェノン系
2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなど。
【0092】
(b)サルシレート系
フェニルサルシレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル4ヒドロキシベンゾエートなど。
【0093】
(c)ベンゾトリアゾール系
(2′−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2′−ヒドロキシ5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2′−ヒドロキシ−3′−ターシャリブチル−5′−メチルフェニル)5−クロロベンゾトリアゾールなど。
【0094】
(d)シアノアクリレート系
エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、メチル−2−カルボメトキシ−3(パラメトキシ)アクリレートなど。
【0095】
(e)クエンチャー(金属錯塩系)
ニッケル(2,2′−チオビス(4−t−オクチル)フェノレート)ノルマルブチルアミン、ニッケルジブチルジチオカルバメート、ニッケルジブチルジチオカルバメート、コバルトジシクロヘキシルジチオホスフェートなど。
【0096】
(f)HALS(ヒンダードアミン)
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなど。
【0097】
次に、感光体の中に内蔵する制振材10について説明する。制振材10の基本構成は図7の通りで、振動吸収材と隙間材から構成される。
図7には図示してはいないが、振動吸収材と隙間材の間に、隙間材と振動吸収材との接着性を高めるための中間層(例えば接着層など)を形成しても良い。
図8に円柱状及び円筒状の制振材を内蔵したときの損失正接tanδの測定例を示す。
縦軸は接触帯電ローラに交流電圧を重畳した直流電圧を印加した状態と、印加しない状態(測定室の暗騒音≒48dB)での音圧差を表しており、音圧差が小さい方が、制振効果が高いことを意味する。
図8に示すように、振動吸収材の損失正接tanδが0.5以上のものが好ましい。
【0098】
損失正接tanδとは貯蔵剪断弾性率(’G )と損失剪断弾性率(”G )の比[”G/ ’G ]で表わされる特性である。損失正接tanδは材質固有の値でその材質の制振効果特性を示し、制振効果は数値が大きいほど効果は高くなる傾向がある。JIS K 7244−4に規定された非共振振動法(動的粘弾性測定装置などを使用)に基づいて測定される。
本発明における損失正接tanδの測定は、厚さ2mm、幅5mm、長さが30mmの試験片を、動的粘弾性測定装置を用いて周波数30Hzの条件で行ったものである。
【0099】
感光体用の制振材の振動吸収材には、ニトリルゴム、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、エーテル系ポリウレタンゴム、エチレンプロピレンゴムなどのゴム類、ナイロン6や酢酸ビニル樹脂と粘土(例えば、モンモリロナイト)の混合物、鉛、鉄、銅、真鍮などの金属類、エボナイト等が使用可能であるが、特に上記したように損失正接tanδが0.5以上のものが好ましい。
損失正接tanδが0.5以上のものとしては、ブチルゴム、エーテル系ポリウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、ナイロン6や酢酸ビニル樹脂と粘土(例えばモンモリロナイト)の混合物等が挙げられる。
具体的な構成としては、例えば損失正接tanδが約0.78のブチルゴムの円柱状及び円筒状弾性体を使用し、外径寸法は、例えば約φ26mm×305mm、円筒状の振動吸収材の肉厚は6mmである。
【0100】
また隙間材としては、カルバウナワックス、ポリエチレンワックス、パラフィンワックスなどのワックス類、1液性又は2液性の常温硬化型樹脂、などがあるが、融点は50℃以上の、切削容易なものが好ましく使用できる。
上記隙間材の内、製造し易い(温度だけで管理出来る、厚膜化が容易)、削れ易い、リサイクルが可能、挿入後密着性良好、無公害である、などの点からワックス材料が好ましく、特にパラフィンワックスが好ましい。
例えば、具体的には隙間材には融点60〜62℃のパラフィンワックス(国産化学社製)を使用して、振動吸収材への隙間材の被覆は前記パラフィンワックスを溶かして液体として振動吸収材に被覆させ、厚さが約2mmになるようにブレードで扱き、図7の様な形態の制振材を作製する。
振動吸収材への隙間材の被覆方法は、例えば図9に示すような方法を用いて行う。隙間材は融点が50℃以上のパラフィンワックスが好適に使用され、70℃程度に加熱すると完全な液体になる。したがって、振動吸収材を回転させながらパラフィンワックスの液体に浸漬し、引き上げる途中で加熱したブレードで扱いて、目標とする厚さにする。
【0101】
この様にして得られた制振材は、例えば内径28.5mm、外径φ30mm感光体に圧入機を用いて、隙間材を削りながら、図10に示す方法で感光体内に密着挿入する。この状態での隙間材の厚みは1.25mmで、隙間材として使用されず削れた厚みは約0.75mmである。
なお、制振材を感光体に挿入する方法は圧入機を使わなくても手で押し込んだり、ハンマーで叩きながら挿入することも出来るが、この方法では感光体の変形を伴い、感光体の真円度や真直度が変化し、帯電特性、画像特性に異常が生じる可能性が有る。したがって、本発明では0.75mm程度の薄い導電性支持体を感光体に使用している場合は、特に、圧入機を用いて正確に挿入するのが望ましい。この圧入法はフランジ装着時も同様に行える。
【0102】
本発明の制振材が感光体に内蔵された概念図を図11に示す。
制振材の制振効果(音圧差)の測定は次の様な方法で行う。台座の上に制振材を内蔵させフランジを両端に装着した感光体を浮かせて固定し、その上に非接触帯電ローラ(感光体との間隔は約65μmである)を重ねて載せて固定する。非接触帯電ローラに交流電圧を重畳した直流電圧を印加した時の帯電音の音圧を騒音計を用いて測定する。帯電部材への電圧の印加条件は直流電圧が−730V、交流電圧が1500V、周波数が1350Hzに設定する。音圧はアコー社の騒音計(タイプ6224)のプローブを、感光体より30cm離した感光体と非接触帯電ローラの対向した位置と同じ高さに設定する。
【0103】
図12に振動吸収材の損失正接tanδを変えた弾性体での振動音の抑制効果を示す。
振動吸収材は帯電時の振動を効率よく制動する材質が望ましく、特性的には損失正接tanδは0.5以上、好ましくは0.6以上有ることが好ましい。
【0104】
図13に隙間材の厚みを変えたときの振動音の抑制効果を示す。隙間材の厚みが薄くなるほど帯電音の振動吸収材への伝搬が良好になり制振効果が高まる。すなわち、隙間材の厚みを2mm以下にすることによって有効な制振効果が得られることが判る。
感光体に内蔵したときの隙間材の厚みは、厚く成る程、振動音の振動吸収材への伝搬速度が低下するため制振効果が低下する。そのため、隙間材の最大厚さは2mm程度に抑えることが望ましいが、あまり薄いと、振動吸収材には滑り性が無いため、制振材の感光層への挿入が困難になる。したがって、厚さは少なくとも0.5mm以上、好ましくは1mm前後の厚さに設定することが望ましい。
【0105】
図14に感光体に内蔵する制振材(図14では円柱状制振材)の長さに対する制振効果のグラフを示す。フランジ間の空間領域の長さL1に、長さが異なる制振材(図11参照)を挿入したとき、制振材長さL2との長さの割合(空間占有率=L2/L1×100%)が約75%以上で良好な結果が得られることが判る。
空間占有率は感光体に装着したフランジ間の長さと同じ寸法の時を100%とする。制振材は感光体内壁に密着して内蔵させることを前提(100%機能が発揮される)としているので、感光体内壁と、制振材外壁との空間は無いものとする。
【0106】
図15に円筒状振動吸収材の制振効果の肉厚依存性を示す。肉厚が4mm以上で不快感を感じる基準レベル4dBを切り、制振効果が良好になることが判る。人間が感じる帯電音又は振動音については個人差が有るが、帯電部材に電圧を印加した場合と、印加しない場合での騒音計の音圧差が約4dB前後でほぼ分かれる。すなわち、音圧差が4dB以下で有れば、ほぼ不快に感じないレベルとなるため、本発明では4dBを効果有無の判断基準とする。
【0107】
以下、さらに具体的に説明する。
本発明に使用される振動吸収材は帯電部材と感光体間で生じた帯電音、クリーニングブレードと感光体での摺擦音を吸収して熱に変える物質のことを指す。帯電音やクリーニングブレードなどでの摺擦音は感光体の支持体に響きやすい素材を使用したときに起こりやすい。すなわち、剛体化することで抑制することが可能となるが、重量が増すため駆動系などに負担が掛かり、ギアなどの損傷を生じる。したがって、効果的に抑制する為には重量は出来るだけ軽くて、振動を効率よく吸収する振動吸収材を使用することが好ましい。
【0108】
帯電音は高周波音であるため不快感を感じる。したがって、高周波音を良好に吸収させ急速に減衰させる材料には損失正接tanδが大きい材料を使用することが望ましい。前記したように具体的には図12に示すように損失正接tanδが0.5以上の材料が望ましく、さらには0.6以上の弾性体が好ましい。図12に使用した弾性体はイソブチレンとイソプレンとの共重合で得られるジエン構造を有するブチルゴム(合成ゴム)であり、比較的安価で入手し易い好適な材料である。(添加剤や添加比率を変えることで、損失正接tanδは変化させることが出来る。)その他、同様に損失正接tanδの高い材料はいずれもブチルゴム同様の合成ゴムで、商品名でハネナイト(内外ゴム(株))やソルボセイン((株)セプター)などがある。
【0109】
振動吸収材は図7に示すように両端の切り口エッジがテーパー状にカットされていることが好ましい。
このことにより、感光体内への制振材の挿入をたやすくする。切り欠きは幅1〜3mm、長さ方向で2〜5mm程度でよい。切り欠きは金型を興す際に形成しても良いし、引き抜きで形成された棒状のブチルゴムを必要な長さにカットした後、エッジの部分をカットすれば良い。切り欠きが無い場合には感光体への挿入がうまくいかず、感光体の変形を伴うことがある。
【0110】
一方、隙間材は振動吸収材を感光体内壁に隙間が無いように密着させ、振動音を振動吸収材に伝達する材料を指すが、作業性、環境性等を考慮すると、作製容易、簡単に装着取り出しが出来、再使用出来、毒性が無い材料が望ましい。この条件を満足する材料として、石油から分離されるワックス系のパラフィンワックス(ロウ)が好適に使用できる。
パラフィンワックスには38℃〜72℃まで2℃毎に細かく融点設定されたものが販売されており、要求に応じた融点温度のパラフィンワックスを使用すればよい。
【0111】
一般に使用される画像形成装置は、使用環境によっても左右されるが、定着装置やモーターなどの駆動装置などにより機内温度が上昇し、長時間の使用によって機内温度は40℃近傍或いは40℃を越えることがある。したがって、本発明では、少なくとも50℃以上のものを使用するのを好適とする。また作業性等を考慮すると融点が50〜80℃のものを使用するのがより好適である。
但し、輸送車両を使用しての搬送の場合、車両内温度が50℃以上に成る場合がある。
【0112】
この様な場合、低い融点のパラフィンワックスでは流動化して、再固化した場合に空間領域に隙間材が溜まり、感光体の回転に支障が出たり、制振効果が大幅に低下するばかりでなく、制振材が感光体内で移動するなどの弊害が出るため、感光体としての信頼性が保証出来なくなる。したがって、初期より、最高温度の融点のパラフィンワックスを使用することも一方法で有る。効果は50℃融点のパラフィンワックスを使用した場合と全く同じである。
【0113】
振動吸収材に隙間材を被覆する手段として次の方法で簡単に行える。例えば、50〜52℃のパラフィンワックスは40℃程度では固体であるが、70℃に加熱すると、完全に液体となる。したがって、パラフィンワックスを溶かして、図9に示す概略図のように、振動吸収材を回転しながら浸漬すれば簡単に隙間材を被覆することが出来、回転しながら(加熱された)ブレードで余分な隙間材を除去すれば、一定の厚みの隙間材を形成することが出来る。
【0114】
感光体に内蔵した状態での隙間材の厚みは0.5〜2mmを好適とする。これは作業性及び制振効果から決定される。制振材を感光体内に挿入された状態での隙間材の厚みは0.5mm未満では感光体内壁に余裕が小さいために、滑りのない振動吸収材(ブチルゴムなどの損失正接tanδが0.5以上の弾性体)は挿入に支障が出る場合があり、一方2mmを超える場合には、たとえ損失正接tanδに数値の大きな振動吸収材を使用しても、振動の伝達が遅れるために制振効果を十分に発揮出来ない。
【0115】
したがって、振動吸収材の外経を感光体の内径より少なくとも1mm以上、4mm以下小径とし、かつ振動吸収材に隙間材を被覆する厚みは、内蔵時の隙間材の厚さにプラス0.5〜1.5mm程度厚く被覆するのが好ましい。厚さが0.5mm以下では振動吸収材の不均一や、被覆ムラなどにより感光体内壁との間に隙間が生じて、制振効果が低下する可能性がある。
隙間材を必要以上に厚くした場合、削れが容易であるパラフィンワックスを使用しているとは云っても、肉厚が0.6mmや0.7mmのように薄い導電性支持体の感光体では挿入時に局部的に力が加わって変形し、感光体の真円度、真直度が変わり、感光体に歪みが生じ帯電などに影響が出る場合も有る。
【0116】
導電性支持体の厚みが厚くなるにしたがい、変形することが無くなるために、塗布時の被覆層の厚みを2mm以上に厚くしても問題は解消される。
制振材を感光体に挿入する際に一部パラフィンワックスが削れるが、削れたものについては再度溶解することによって、再使用が可能である。
【0117】
パラフィンワックスはアルミニウムのような金属であっても、エッジの部分で簡単に削れる柔らかい材料である。この簡単に削れるということは本発明には特に重要で、作業性を容易にする。すなわち、感光体内壁より制振材の外径を大きく(例えば1mm〜4mm大きく)して、図10の様に隙間材を削りながら圧入すれば、簡単に感光体内に挿入でき、感光体内壁に密着させることが可能となる。なお、制振材の挿入時に感光体内にシリコーンオイルや、フッ素オイルなどの潤滑剤を塗布しておくことで、さらに円滑に挿入を可能とすることも出来る。
【0118】
制振材の挿入は25℃前後の常温環境で実施されるが、隙間材が僅かに柔らかく成る程度の温度に感光体を加熱して行うことも出来る。
寿命に達した感光体の再生を行う場合には、フランジを外して一方から制振材を叩けば簡単に取り出しが出来るし、感光体を加熱して、パラフィンワックスを溶かせば、容易に取り出すことが出来る。
【0119】
【実施例】
以下、実施例を用いてさらに詳しく説明するが、本発明がこれらの実施例によって限定されるものではない。尚、実施例中の「部」は重量部を表す。
【0120】
本発明に使用する評価用感光体を以下の方法で作製した。
φ30mm、長さ340mm、厚さ0.75mmのJIS規定の3003系アルミニウム合金ドラムを導電性支持体として、下記組成の下引き層(UL)用塗工液を用いて浸漬塗工した後、120℃20分乾燥し3.5μmの下引き層、ついで、下記構造式(1)で表される電荷発生材を用いた電荷発生層(CGL)用塗工液で浸漬塗工した後、120℃20分間加熱乾燥して、0.2μmの電荷発生層を形成した。さらに、下記構造式(2)で表される電荷輸送材を使用した電荷輸送層(CTL)用塗工液に浸積塗工し、引き上げ速度条件を変化させ、電荷輸送層を塗工した後、130℃20分の加熱乾燥を行い、平均膜厚が、約22μm(感光体A)と約28μm(感光体B)の2種の有機感光体を作製した。
尚、膜厚の測定にはフィッシャー社の渦電流式膜厚計(タイプmms)を使用し、端部より50mmを起点として、20mm間隔で13ポイント測定した平均値で平均膜厚を算出した。
【0121】
〔下引き層用塗工液〕
【0122】
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造式(1)で表されるビスアゾ顔料 10部
【化1】
ポリビニルブチラール 2部
2−ブタノン 200部
シクロヘキサノン 400部
【0123】
〔電荷輸送層用塗工液〕
ビスフェノールZ型ポリカーボネート
(帝人化成社製:Zポリカ Mv5万) 10部
下記構造式(2)で表される低分子電荷輸送物質 8部
テトラヒドラフラン 200部
【化2】
【0124】
また28μmの有機感光体とは別に、前記方法で作製した22μmの電荷輸送層を有する有機感光体Aを使用し、下記仕様によってアルミナフィラーを分散した電荷輸送層(フィラー分散電荷輸送層)を有する有機感光体を作製した。
バインダー樹脂(ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂)、低分子電荷輸送物質(ドナー)、添加剤及び一次粒径が0.3μmの下記無機フィラーを用意し、無機フィラーと分散助剤及び溶剤を硝子ポットに入れ、ボールミルで24時間分散させて塗工液を作り、スプレー法を用いて2回往復させ、フィラー分散電荷輸送層5μmを塗工した。
触指乾燥の後、150℃20分間加熱乾燥させて、フィラー分散電荷輸送層を有する評価用電子写真感光体を作製した。
【0125】
[フィラー分散電荷輸送層塗工液]
【化3】
【0126】
帯電部材には非接触帯電ローラと接触帯電ローラの2種類を用意した。
非接触帯電ローラは、8mmの真鍮製ロッド棒にカーボンを均一分散して、比抵抗を約4×105Ω・cm(100VDC印加1分値)に調整したエピクロルヒドリンゴムを塗布して14mmφに成形し、その帯電部材の両端に、厚さ42μm、幅10mm、長さ43mmのPET(ポリエチレンテレフタレート)シートを張り付けたもので、感光体と帯電部材の間隔は約63μmであった。
一方、接触帯電ローラは8mmの真鍮製ロッド棒に比抵抗が6×108Ω・cmとなる5μmのエピクロルヒドリンゴム層を形成し、その上から、エピクロルヒドリンゴムにフッ素系樹脂とシリカを分散した3×1014(Ω・cm)に調整された1mmの被覆層を形成したものである。
【0127】
本発明に使用する制振材として、損失正接tanδが約0.3〜0.8で、直径が24.5mm、26mm及び27mmの円柱状の振動吸収材(ブチルゴム)、40〜42℃、50〜52℃、60℃〜62℃及び70〜72℃の4種の融点温度のパラフィンワックス(国産化学社製)を夫々用意し、振動吸収材に隙間材となるパラフィンワックスを大凡0.5mm〜6mmの間で被覆した。
制振材の制振効果の確認は温湿度が24〜25℃、65%RHに設定された実験室にて実施した。
【0128】
感光体の内部に圧入装置を用いて前記方法で作製した制振材を中央近傍に位置するように圧入した後、両端にフランジを装着し、感光体の形態を整え、感光体を両端支持の台座に設置し、その上に帯電ローラをセットした。
帯電ローラに印加する電圧は−800Vの直流電圧に、1.0KV/1.35KHzの正弦波を重畳したものであり、騒音計を10cmの台座に乗せ、プローブ先端部を感光体から30cm離してON、OFFの切換えにより音圧差を確認した。なお、実験室の音圧(暗騒音)は約48dBであった。評価は測定値から暗騒音を差し引いた音圧差の大きさで判定した。
【0129】
本発明の評価用の画像形成装置としてイマジオMF2200(リコー社製)を用意した。
現像剤にはリコー製の粒径約6.3μmのブラックトナー(流動剤SiO2=0.7%およびTiO2=0.8%、ステアリン酸亜鉛系潤滑剤(SZ2000)=0.2%添加)(堺化学工業社製)を、粒径60μmの磁性キャリア(FPC−300LC)(パウダーテック社製)に分散した5%濃度の現像剤(リコー製現像剤)を使用した。
画像形成時に帯電部材に交流電圧を重畳した直流電圧を印加するための装置として、横河製ファンクションジェネレーター(FG−300)と長野愛知電気製高圧電源(HV−255)を用意し、帯電部材に−740Vの直流電圧と1250V/1350Hzの交流電圧を印加し、帯電電圧が−700Vになる様に微調整した。
評価は通紙ランニング前後(連続1万枚)の画像品質(600dpiで作像)についても評価を行った。また、感光体の温度についても測定した。
【0130】
実施例1〜5
寸法の異なる損失正接tanδが0.78の円柱状の振動吸収材を4種(φ26×305(mm)、φ26×230(mm)、φ24.5×305(mm)、φ27×305(mm))、融点の異なる3種のパラフィンワックス(60〜62(℃)、70〜72(℃)、50〜52(℃))及び隙間材の簡易被覆装置を用意して、振動吸収材を溶融させたパラフィンワックスに浸漬し、回転させながら引き上げの過程でブレードで扱き、感光体に圧入するときに削れ厚みが夫々の振動吸収材共、約1mmになる様に隙間材を被覆した。振動吸収材の長さが230mmの場合、長さ方向の空間占有率は約75%、305mmの場合は約99%に相当する。
【0131】
評価用の感光体として前記仕様に基づいて作製した電荷輸送層が28μmの3層構成の有機感光体(感光体B、内径28.5mm)を用意した。
上記方法にて作成した制振材を圧入機を用いてゆっくり感光体のほぼ中央部に挿入した後、両端にフランジを装着し評価に使用する感光体を完成した。
帯電音の評価は台座に上記の感光体をセットし、その上に非接触帯電ロール(帯電ロールと感光体間の隙間は約63μm)を載せて前記した評価方法に基づいて実施した。
この後、音圧評価に使用した感光体をプロセスカートリッジに装着し、A4サイズのコピー用紙で1万枚の連続通紙ランニングを、25〜28℃/63〜68%RHの環境下で実施した。通紙ランニング終了後直ちに感光体の温度測定を行い、さらに感光体をプロセスカートリッジより取り外し、再度音圧測定を実施した。
結果を表1に示す。
【0132】
通紙ランニングに伴う感光体温度はいずれもパラフィンワックスの融点温度以下で流動することもなく、制振材は感光体内壁に密着しており、実施例1〜5に示す実施例はいずれも、音圧が初期及び通紙ランニング後も不快に感じる判定レベルである4dB以下であり良好な結果であった。
実施例3の例では隙間材の厚みが2mmであり、帯電音の抑制効果(音圧差)は他の例に比して高めとなり、明らかに高周波音が確認されたが、音調としては比較的柔らかく、評価装置に装着しての確認ではモーターなどの駆動音に紛れて聞こえる程度で不快感は感じなかった。
なお、画像品質に特に異常は無く、600dpiで作像した1ドットパターンは均一性の良好な画像であった。また、クリーニングブレードの摺擦音(高周波音)の発生は感じられなかった。
【0133】
【表1】
【0134】
(注)表中、感光体のBは導電性支持体/下引き層/電荷発生層/電荷輸送層の3層構成の感光体である。P.Wはパラフィンワックス、制振材占有率は([L2/L1]×100%)で感光体のフランジ間の空間領域(L1)を占める制振材(L2)の占有率を示す。
感光体最高温度は長手方向の位置の最高温度を示し、主には奥側の温度である。
音圧抑制効果は交流電圧重畳の直流電圧印加時の音圧より、印加無し時の音圧を差し引いた音圧で、その差が大きいほど不快感を感じる。
判定の基準レベルは上記音圧差が、◎:3.5dB以下、○:3.5dBを超え、4.0dB以下、△:4.0dBを超え、4.3dB以下、×:4.3dBを超える、で判定した。
以下、同様である。
【0135】
実施例6〜7
評価用の感光体として、3層構成の感光体A(電荷輸送層膜厚:22μm)に平均粒径0.3μmのα−アルミナフィラーを25重量%添加した5μmのフィラー分散電荷輸送層を積層した感光体を使用し、帯電部材を接触帯電ロールに変更した以外、実施例1〜2に同じ方法で評価を行った。
結果を表2に示す。
【0136】
隙間材に感光体温度より余裕のある融点のパラフィンワックスを使用しているため、連続ランニングにより感光体は40〜42℃に上昇したが、隙間材が溶融すること無く、制振材は感光体内壁に十分に密着したままであり、帯電音の抑制効果はフィラー分散電荷輸送層を形成した感光体においても音圧差は4dB以下に抑制され、また画像品質も良好であった。
【0137】
【表2】
【0138】
比較例1〜3
40〜42℃、60〜62℃の融点を有するパラフィンワックス、振動吸収材にφ26mm×305mm、φ24.5mm×305mmの長さのものを用意した。振動吸収材への隙間材(パラフィンワックス)の被覆は本文中及び実施例に記載の方法で行い、パラフィンワックスは振動吸収材の直径が26mmのものについては約1mm、24.5mmのものについては約1.8mmの厚さで隙間材が被覆される様にブレードで扱いて作製した。パラフィンワックスの厚みは手で挿入できる最大限の厚みとした。この時の制振材と感光体内壁の隙間は計算上約0.25mmである。評価は実施例1〜7に同様の方法で実施した。
結果を表3に示す。
【0139】
比較例に使用した制振材は感光体に手で挿入できる程度に余裕があるため、実施例1〜7と異なり、感光体内壁への密着性が殆ど無く制振効果が不十分となり、許容値の4dBを大きく越え不良であった。比較例1ではパラフィンワックスに融点が40〜42℃のものを使用したため、連続ランニングにより感光体温度が42℃に上昇してパラフィンワックスの溶解が起こり、音圧の抑制効果に減退を示した。一方、比較例3の場合はパラフィンワックスの融点が高く、連続ランニングしたときの感光体温度より約20℃の余裕が有るため、流動化無く感光体との密着性は十分に保たれていたが、パラフィンワックスが厚いために、感光体内壁からの振動が良好に吸収されない為に制振抑制が不十分となった。
画像品質上の問題は殆ど皆無であったが、感光体の停止時に僅かでは有るがクリーニングブレードの摺擦音が確認された。
【0140】
【表3】
【0141】
実施例8、9及び比較例4
40〜42℃、60〜62℃の融点を有するパラフィンワックス、振動吸収材にφ26mm×305mm及びφ26mm×224mmの長さのものを用意した。振動吸収材への隙間材(パラフィンワックス)の被覆は本文中及び実施例に記載の方法で行い、パラフィンワックスは約2.5mmになる様にブレードで扱いた。制振材を感光体に内蔵したときの隙間材の厚みは約1.25mmで、感光体に圧入時に導電性支持体で削れるパラフィンワックスの厚みも約1.25mmである。
評価は実施例1〜7に同様の方法で実施した。
結果を表4に示す。
【0142】
制振材の感光体内での占有率が72%(φ26×224mm)の場合(実施例9)では音圧が4.1dBを示し、少し気になる程度の帯電音を呈した。
融点が40〜42℃のパラフィンワックスを使用した場合(実施例8)には、制振材の占有率は99%であったが、1万枚の連続通紙ランニングで感光体の温度と隙間材の融点と同等であったため、隙間材が軟化し、僅かに抑制効果の低下が見られた。
また、制振材を内蔵させない場合(比較例4)は全く制振効果が無いため極めて高い帯電音を呈した。画像品質に特に異常は生じなかったが、制振材を挿入しなかった感光体では、感光体が停止する直前にクリーニングブレードの摺擦音がはっきり判る程度に確認された。
【0143】
【表4】
【0144】
実施例10
60〜62℃の融点を有するパラフィンワックス、振動吸収材にφ23.5mm×305mmの長さのものを用意した。振動吸収材への隙間材(パラフィンワックス)の被覆は本文中及び実施例に記載の方法で行い、パラフィンワックスの削れ厚みが約1mmになる様な厚さになるようにパラフィンワックスを塗布しブレードで扱いた。因みに感光体に装着したときの隙間材の厚みは2.5mm(実施例10)とした。
評価法は実施例1〜7に同様である。
結果を表5に示す。
【0145】
音圧の制振効果は隙間材の厚みが増すと共に低下傾向を示し、隙間材の厚さを2.5mmとした感光体(実施例10)では、振動吸収材の効果が低下し4dBの許容値を越えたが、少し気になる程度の帯電音に留まった。画像品質は通常の文字画像は全く問題なく正常に見え、600dpiの1ドット全面画像にムラが見られず、ほぼ良好な結果であった。
【0146】
【表5】
【0147】
【発明の効果】
発明の効果について概略には以下の通りである。
請求項1〜14に記載されている電子写真感光体を、着脱自在なプロセスカートリッジに搭載して画像形成装置に装着するか、若しくは直接に画像形成装置に搭載することにより、感光体に帯電する際に起こる帯電音及び、クリーニングブレードで生じる摺擦音を、聴覚上不快を感じないレベルまで抑制できる。
本発明では環境性、作業性を考慮しながら帯電音及びクリーニングブレードでの摺擦音を効果的に抑制する手段として、取り外しが容易なように、制振材を接着剤で固定する方式ではなく、振動吸収材に被覆した隙間材を削りながら圧入しながら挿入する方式を採ることによって、感光体内壁に制振材を密着させ、かつ制振抑制を行うことができる。
【0148】
感光体の内径より小径に加工された振動吸収材に、削れ容易で、溶解温度が50℃以上にあり、50℃以下で固体、50℃以上で液体に成る材料を隙間材として被覆する。隙間材は感光体の内径より1〜4mm大きくなる程度に振動吸収材に被覆する。隙間材は導電性支持体の縁で容易に削られる為、感光体に圧入する場合に負荷が少なくて済むため、感光体の真直度、真円度に影響が及ばず、帯電特性に不具合をもたらすことはない。
【0149】
隙間材はワックス系であり、好ましくはパラフィンワックスである。パラフィンワックスを振動吸収材に被覆し、振動吸収材と隙間材との合計した外径が、感光体の内径より僅かに大きくなる様に隙間材を被覆して感光体内に圧入する。このことによって、制振材は感光体の内壁に十分密着され、感光体内部で移動することもない。パラフィンワックスはカッターナイフや金属のエッジなどで容易に削れるために、感光体の真円度や真直度を変化させることが殆ど皆無であり、感光体内への挿入や取り出しも容易に出来る。パラフィンワックスには38℃〜72℃の間で各種融点のものがあるため、輸送中、使用中の環境温度を考え、好適なものを選定することが出来る。
【0150】
また、振動吸収材は損失正接が0.5以上、好ましくは0.6以上の加工が容易な弾性体である。好ましい材料としては合成ゴムのブチルゴムが好ましく使用できる。
すなわち、本方式の制振材は感光体と制振材が簡単に分離でき、寿命に達した感光体は再生が容易であり、振動吸収材は再使用が可能であり、環境的にも好ましい制振材である。
【0151】
請求項1に記載の電子写真感光体構成によって
帯電部材に交流電圧を重畳した電圧を印加することによって生じる、不快感を感じる帯電時の帯電音を抑制する手段として、感光体に振動吸収材に隙間材を被覆して一体とした制振材を圧入法で、隙間材を削りながら挿入することを特徴とし、制振材は比較的容易に感光体内壁に密着させ内蔵することが出来るため、感光体内壁と制振材の外壁との間に空間が生じない。このため感光体表面で生じた帯電音を遅滞なく振動吸収材に伝搬できることから、効果的に帯電音を抑制することが出来る。またこのことによって、クリーニングブレードと感光体の間で起こる摺擦音(ブレード鳴き)も効果的に解消することが出来る。
【0152】
請求項2〜4に記載の電子写真感光体構成によって
隙間材として、50℃以上に融点を持ち、該融点以下では固体に、該融点以上では液体となり、アルミニウムのエッジでも容易に切削出来るワックス系のパラフィンワックスを使用することによって、環境上の問題も起こらず、制振材の取り付け作業、取り外し作業が容易であり、しかも再利用が出来るため従来方式に比べ、トータルコストの大幅な低減を図ることが出来る。
【0153】
請求項5〜7に記載の電子写真感光体構成によって
感光体に内蔵するための制振材を作製する際に、振動吸収材に隙間材を1〜4mm被覆し、その内、隙間材となる厚みを0.5〜2mmとして、振動吸収材の外壁から感光体の内壁までの距離を0.5〜2mmとなし制振材を感光体内に圧入する(感光体で削られる隙間材は0.5〜2mm)。
隙間材の厚さが薄いため及び削れ容易な材料であるため、挿入時に感光体へ無理な荷重がかからない。したがって、感光体の真円度、真直度が変化することが無く、また、制振材が感光体内壁に密着している為、感光体の帯電で発生した帯電音を効果的に振動吸収材に伝達し、制振性を高めることが出来る。
【0154】
請求項8及び、14に記載の電子写真感光体構成によって
振動吸収材を円柱状若しくは円筒状にすることによって、回転しながらの作業になるため隙間材の被覆が容易であり、均一に被覆することが可能である。また、円柱状若しくは円筒状に加工した振動吸収材は両端のエッジを斜めにカットすることにより、感光体へ過たず挿入することが出来、感光体内壁に掛かる圧を均等にし易い。したがって、帯電が不均一に成ることもなく安定した帯電及び作像を行うことが出来る。
【0155】
請求項9に記載の電子写真感光体構成によって
円筒状の振動吸収材を使用する場合には、肉厚が減った分、制振効果が低減するが、その肉厚を4mm以上にすることによって、不快感を感じる音圧差を4dB以下に抑制させることが出来る。
【0156】
請求項10に記載の電子写真感光体構成によって
振動吸収材(または制振材)の長さをフランジ間の長さの75%〜100%にすることにより、帯電音を効果的に抑制することが出来る。振動吸収材(又は制振材)を短くすることによって、帯電音の抑制効果は低減するが、75%は不快感を感じる許容限度であり、短くすることによりコスト低減化が図れるというメリットがある。
【0157】
請求項11に記載の電子写真感光体構成によって
感光体に挿入する制振材を構成する振動吸収材の直径を感光体内径より少なくとも1〜4mm小さくすることにより、隙間材の厚さを0.5〜2mmとすることが出来るため、帯電音を効率よく、振動抑制材に伝達できるため制振効果を効率よく高めることが出来る。
【0158】
請求項12〜13に記載の電子写真感光体構成によって
帯電音を抑制させるためには振動吸収材の損失正接tanδが0.5以上を示す材料であることが望ましく、特にはブチルゴムが好適である。
【0159】
請求項15に記載の電子写真感光体の製造方法によって
上記請求項1〜14に記載の優れた電子写真感光体を、簡易な操作により製造することができる。
【0160】
請求項16〜25に記載の画像形成装置によって
交流電圧を重畳した直流電圧を帯電装置に印加して、画像形成を行う際に発生する帯電音を、不快を感じないレベルまで抑制できた画像形成装置を使用することによって、従来に比して静粛性が高まり作像作業を快適に行うことが出来る。
【0161】
請求項26〜35に記載のプロセスカートリッジによって
帯電音の発生を十分に抑制した感光体と帯電装置、現像装置及びクリーニング装置から選ばれる少なくとも1体若しくはそれ以上の組み合わせでプロセスカートリッジを構成することによって、プロセスカートリッジに組み込んで生じた画像品質上の問題を、プロセスカートリッジの交換で即座に元の画像品質に回復させることが出来ると共に、帯電音の抑制された静粛性の高い画像形成装置を構成させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成装置の例の概略図である。
【図2】本発明の4連タンデム方式のフルカラー画像形成装置の例の概略図である。
【図3】本発明のプロセスカートリッジの例の概略図である。
【図4】本発明の単層構成の電子写真感光体の例の断面模式図である。
【図5】本発明の積層構成の電子写真感光体の例の断面模式図である。
【図6】本発明の積層構成の電子写真感光体の別の例の断面模式図である。
【図7】本発明の電子写真感光体に内蔵する制振材の例の模式図である。
【図8】本発明の電子写真感光体に制振材を内蔵した場合の制振材(振動吸収材)の損失正接と暗騒音との音圧差(制振効果)との関係を示すグラフである。
【図9】本発明における制振材の作製操作を示す図である。
【図10】本発明における電子写真感光体に制振材を圧入する操作を示す図である。
【図11】本発明の制振材が内蔵された電子写真感光体の例を示す概念図である。
【図12】振動吸収材の損失正接tamδと振動音の抑制効果との関係を示すグラフである。
【図13】隙間材の厚みと振動音の抑制効果との関係を示すグラフである。
【図14】電子写真感光体に内蔵する円柱状制振材の空間占有率と制振効果との関係を示すグラフである。
【図15】電子写真感光体に内蔵する円筒状制振材の振動吸収材の厚みと制振効果との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 感光体
2 帯電装置
2−1 帯電ローラ
2−2 高圧電源
3 画像露光装置
4 現像装置
5 転写装置
6 分離装置
7 クリーニング装置
7−1 クリーニングブラシ
7−2 クリーニングブレード
8 定着装置
9 被転写体
10 制振材
【発明の属する技術分野】
本発明は、間接電子写真法で画像形成するに際して使用される電子写真感光体、及びその製造方法、並びにそれを搭載した画像形成装置、プロセスカートリッジに関し、より詳しくは、帯電部材に交流電圧を重畳した直流電圧を印加して、電子写真感光体を帯電する際に発生する帯電音、クリーニングブレードの摺擦に伴う摺擦音等の高周波音を効率的に抑制する制振材を内蔵した電子写真感光体、及びその製造方法、並びにそれを搭載した画像形成装置、プロセスカートリッジに関する。
【0002】
【従来の技術】
ファクシミリ、レーザー・プリンター、電子写真複写機などの間接電子写真法を用いたデスクトップ型あるいはフロア型の画像形成装置には電子写真感光体(以下、単に感光体と称する)を中心に、順に帯電装置、画像露光装置、現像装置、転写装置、分離装置、クリーニング装置、除電装置および定着装置が配置される。
感光体には、従来、酸化亜鉛感光体(ZnO)、硫化カドミウム感光体(CdS)、セレン化カドミウム感光体(CdSe)、アモルファスセレン系感光体(例えば、a−Se、a−Se−Te、a−As2Se3など)、アモルファスシリコン系感光体(例えば、a−Si:H、a−Si:Ge:H)などが使用されてきたが、近年では作製が容易、高感度設計が可能、低コスト、無公害等の多くのメリットを有する有機系感光体が主流に使用されている。
【0003】
電子写真法を用いた画像形成では、まず、感光体に画像形成に必要な表面電位に帯電される(感光層がホール移動型の電荷発生層、電荷輸送層を積層した機能分離型有機感光体では、通常−400〜−800V)。
感光体を帯電する手段としては、コロナ帯電法、接触帯電法、感光体と帯電部材(ローラ、ブラシ、ブレードなどの部材)間を30〜100μm程度離して帯電する非接触帯電法(若しくは近接帯電法)などが実用化されている。
【0004】
コロナ帯電法は感光体の長さ方向にわたってシールドケース内に帳架された直径40〜80μmのタングステン線、ニッケル線などの金属線、或いはステンレス製の鋸歯状電極に、−4500〜−6500V程度の高電圧を印加して感光体を帯電する方法である。この方式では高電圧を印加するため多量のオゾンを発生する。画像形成時のオゾン発生量は10ppm前後と極めて多量であり、活性炭などを使用したオゾン処理部材を排気ファンの位置に設置しても、十分に処理仕切れず漏れ出たオゾンによる臭気のため不快感を感じ、また、健康被害など環境上の大きな問題となっていた。
【0005】
このことに鑑み、オゾン生成量が極めて少ない、接触帯電法(例えば、特開昭58−40566号公報、特開平6−274007号公報参照)、さらには感光体に極近接配置された帯電部材で帯電する非接触帯電法(近接帯電法ともいう)(例えば、特開平7−301973号公報、特開平9−26685号公報参照)が開発された。
【0006】
接触帯電法は、ローラ、ブラシ等の帯電部材を感光体に直接接触させて帯電する方式である。
一方、感光体から30〜100μm程度離して帯電する非接触帯電法は、接触帯電部材の欠点である帯電部材からのトナー汚染や帯電部材による感光体摩耗、感光体の放電破壊などを緩和することが出来る。
これらの帯電手段に於いても帯電時に放電を伴うが、感光体に近接若しくは極近接しているため、印加電圧を低く設定できる。したがって、オゾンの発生量は直流電圧印加の場合は0.05〜0.1ppm、交流電圧を重畳した直流電圧印加の場合は0.2〜0.4ppm程度と少なくなり、環境上の課題をほぼクリヤーすることが出来た。
しかし、これらの帯電手段はパッシェンの法則(例えば、シャファート著(井上英一訳):電子写真、P.514−519、共立出版参照)に従う帯電方法であるため、感光体と帯電部材間のギャップ(空隙)や、環境の影響を受けやすい。
【0007】
すなわち、感光体や帯電部材に局所的に凹みや歪みが有ると、放電にムラが生じるため、帯電が不均一になり濃度ムラが発生し易くなる。また、急激な環境変化(特には高湿化)が生じると、放電が不安定になり画像ムラを起こし易い。特に直流電圧のみを印加した場合にこの傾向があり、非接触帯電法では感光体と帯電部材間に距離が有るため、更に帯電に暴れが生じ不安定に成りやすい。
【0008】
帯電の不安定を緩和する手段として、帯電部材に交流電圧を重畳した直流電圧(例えば下記の条件)を印加する方法が行われ、感光体や帯電部材に数10μm程度の凹みや歪み、或いはうねり、さらには急激な湿度上昇があってもほぼ追随し、均一性の良い高品位画像が得られるように成った。
例えば、直流電圧:−600〜−1200V
交流電圧:1000〜2000V
周波数 :800Hz〜2500Hz
【0009】
交流電圧は振動電流であるため、周波数に応じて変化する周期的なうなりがある。
したがって、交流電圧を重畳した直流電圧を帯電部材に印加した場合、放電と共に帯電音が発生する。帯電部材に印加する周波数が低いと帯電が不安定になるため、周波数は必然的に通常800Hz〜2500Hzに設定するが、この周波数帯域は人間の耳には非常に敏感な周波数帯域であるため、少しの帯電音でも気になり、音圧が高くなる程不快感を感じる。
交流電圧は振動(脈流)電流であるため、導体中を交流(交番電流)が流れることによって微かな振動(うなり)を生じる。帯電部材に交流が流されると、感光体間との放電で帯電部材、感光体共に振動する。帯電部材は一般に真鍮製の芯材に、帯電部材として弾性ゴムが使用されているため音の減衰がある。このため、帯電部材の振動は殆ど感知されないが、感光体の導電性支持体には音の伝搬速度が比較的速く、剛性が低いアルミニウムが使用されるため響きやすく大きな帯電音に成りやすい。
【0010】
帯電音は感光体支持体の構造や形状によって、共振や付帯音を伴うため、本来の帯電音以上に大きく成り易い。また、非接触帯電法の場合は、帯電部材と感光体間が離れているため、必然的に印加条件を高くする必要が有り、非接触帯電法では接触帯電法に比べて、帯電音が大きくなる傾向がある。
【0011】
また、摺擦音はクリーニングブレードが感光体を摺擦することで発生する。この摺擦音は帯電音と同じ様な周波数帯域にあるため帯電音同様に不快に感じる高周波音であり、感光体とクリーニングブレードの摩擦抵抗が大きいほど起こりやすい。摺擦音は感光体が回転中に連続的或いは間欠的に発生することもあるし、回転中は気にならないが感光体の回転停止直前に急に大きくなることもある。帯電音は作像時連続的に発生する現象であることから気になる音であるため、摺擦音共々抑制改善を行うことは必要不可欠である。
【0012】
なお、明細書中に帯電音、振動音、高周波音などの用語を使用するが、帯電音は感光体を帯電するときに発生する音、摺擦音はクリーニングブレードで摺擦するときに発生する音、高周波音はキーンという高周波音を伴う音であるため、帯電音、摺擦音に共通の音として取り扱っている。この他振動音という言葉を使用することもあるが、高周波音≒振動音である。
【0013】
帯電音を改善する手段としていくつかの技術例が開示されている。これらの技術例を下記に示す。
感光体の支持体を厚くして、振動を抑制し帯電音を改善する方法として以下の技術例がある。
感光体の基体の両端部にインロー加工を施し、インロー以外の肉厚を1.9mm以上とする支持体を用いる(例えば、特開2000−19761号公報参照)、感光体の堆積密度を0.6g/cm3以上、2.0g/cm3以下とする(例えば、特開2000−155500号公報参照)、像保持部材を構成するアルミニウム素管の肉厚が1.5mm以上有り、かつ、この素管を該保持部材の固有振動数が印加電圧の周波数の整数倍±100Hzの範囲と成らないような肉厚とする(例えば、特開2000−206829号公報参照)。
【0014】
また、ドラム状感光体の内部に制振材(充填材)を挿入して帯電音を改善する方法としては以下の技術例が有る。
感光体の全重量/全体積が0.65g/cm3以上であり、その感光体の内部に密度2.0g/cm3以上の剛体を挿入する(例えば、特開平5−197321号公報参照)、2つ以上の弾性体(Oリング)と円柱状部材(比重1.5以上のプラスチック(ガラス繊維を20%以上含有するポリブチレンテレフタレート樹脂))から構成される部材を感光体へ挿入する(例えば、特開平11−184308号公報参照)、粘弾性材料を充填する(例えば、特開平3−105348号公報参照)、ドラムの内側中央部に接合されたダンパーベースと、ダンパーベースに嵌合された固有振動数が振動電圧の周波数あるいはその2倍の周波数である梁状部材を具備する(例えば、特開平7−199731号公報参照)、薄肉の潜像担持体の内部に周方向及び軸方向に沿って裏打ち手段(可撓性を有する羽根構造をしたもの)を配置する(例えば、特開2002−244488号公報参照)。
【0015】
更に、充填材、緩衝材などの振動音を抑制するための部材を挿入し、固定する手段としては以下のような技術例がある。
金属製バネを内蔵した樹脂製円筒状部材を挿入し、感光体内壁に押圧力で固定する方法(例えば、特開2000―321929号公報参照)、中空の帯電部材の表面に被覆層を設け、帯電部材の内部に弾性体を挿入し、芯金をその弾性体を介して支持する構造とする(例えば、特開平9−230671号公報参照)、感光体の内部に充填部材を固定する手段として、テーパーを有する充填部材を感光体に挿入し、感光体内壁と充填材の空隙を埋めるような形で円筒状の固定部材を嵌合する(例えば、特開2000−89612号公報、特開2001−194954号公報…特許文献1及び2参照)、充填物を樹脂フィラー(2〜100μmのビニルベンゼンを主成分とする架橋重合物)混入の接着剤で感光体ドラム支持体内に固定する(例えば、特開2000−98804号公報参照)、感光体内部に特定形状の裏打ち部材を挿入する(例えば、特開2002−24488号公報)、感光体内部に剛体或いは弾性体からなる充填物を内装し、該充填物との隙間を発泡剤やシーリング材で固定保持する(例えば、特開平6−95560号公報)、感光体ドラムの内部に、外径が該ドラムの内径よりやや大きい防振体を圧入する(例えば、特開平8−202206号公報、特開平11−327415号公報…特許文献3及び4参照)。
【0016】
上記した技術例はいずれも大なり小なりの改善効果がある。
感光体には支持体材料として、一般に、アルミニウム系合金から成る0.7〜3mm程度の肉厚の金属が使用される場合が殆どであるが、アルミニウムは音の伝搬が良好で、響きやすい材質の金属である。支持体を厚くすることによって剛体化が図られ帯電音は抑制される方向にある。しかしながら、重量の面から支持体を厚くするには限界が有り、本質的に響きやすい材料であるため、例えば、帯電される領域の導電性支持体を厚くしても、僅かに静かに成るだけで、依然として帯電音は高い。
【0017】
感光体の内部に充填材を挿入する方法は、響きを抑えるには有効な手段である。しかし充填材の抑制効果は、感光体支持体の内壁に十分に密着することによって初めて大きな効果が得られる。したがって、単に内蔵しただけでは、感光体支持体と充填材間に隙間が生じ易く、また重量が軽い場合、振動を吸収し難いような材料を用いた場合などでは、予期した通りの効果を得ることが難しい。
制振効果を高めるためには、感光体内に重量のある充填材を接着剤を用いて、出来るだけ隙間を創らないようにして固定することが望ましい。しかし、近年は環境問題が大きくクローズアップされており、省資源、省エネルギーなどで再生や再使用が可能な方法、方式が要求されており、振動抑制の効果が高い方法であっても、充填材を感光体内に接着材などを使用して完全に固定するような方法では、再生、再使用が困難であり環境破壊を招く要因でもある。
【0018】
【特許文献1】
特開2000−89612号公報
【特許文献2】
特開2001−194954号公報
【特許文献3】
特開平8−202206号公報
【特許文献4】
特開平11−327415号公報
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、帯電部材に交流電圧を重畳した直流電圧を印加して画像形成を行う際に発生する帯電音はもとより、クリーニングブレードの摺擦音を不快に感じない程度に効率よく抑制でき、取り付けや交換性、環境(省資源、省エネルギー)等に配慮して制振材を構成し、その制振材を内蔵した電子写真感光体、及びその製造方法、並びに該電子写真感光体を搭載した画像形成装置、及び画像形成装置に着脱自在なプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、以下に記載の(1)〜(35)によって達成できる。すなわち、
(1)接触、若しくは非接触帯電装置に、交流電圧重畳の直流電圧を印加して帯電した後、光書き込みにより静電潜像を形成し、現像装置により顕像化する間接電子写真法で画像形成を行うための電子写真感光体において、該電子写真感光体の内部に、振動吸収材の外壁全面にわたって隙間材を被覆して構成される制振材を、圧入法によって隙間材を削りながら内蔵させたものであることを特徴とする電子写真感光体。
(2)前記隙間材が50℃以上に融点を有し、該融点以下で固体であり、該融点以上で液化する、切削容易な材料から構成されることを特徴とする(1)に記載の電子写真感光体。
(3)前記隙間材がワックス系材料であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の電子写真感光体。
(4)前記ワックス系材料がパラフィンワックスであることを特徴とする(3)に記載の電子写真感光体。
(5)電子写真感光体に内蔵された状態での前記隙間材の厚みが0.5mm〜2mmであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の電子写真感光体。
(6)前記制振材が振動吸収材の表層に隙間材が被覆された一体構成の部材であり、電子写真感光体に内蔵状態で、振動吸収材外壁から感光体内壁までの距離が0.5mm〜2mmであることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の電子写真用感光体。
(7)電子写真感光体に挿入する直前の前記隙間材で被覆された状態の制振材の外径が、電子写真感光体の内径より1mm〜4mm大きいことを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の電子写真感光体。
(8)前記振動吸収材が円筒状若しくは円柱状の弾性体であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の電子写真感光体。
(9)前記円筒状の振動吸収材が4mm以上の肉厚を有することを特徴とする(8)に記載の電子写真感光体。
(10)前記振動吸収材の長さが、電子写真感光体の両端に装着されたフランジ間の長さの75〜100%であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の電子写真感光体。
(11)前記振動吸収材の外径が、電子写真感光体の内径より1mm〜4mm小径であることを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載の電子写真感光体。
(12)前記振動吸収材の損失正接tanδが0.5以上の特性を有することを特徴とする(1)〜(11)のいずれかに記載の電子写真用感光体。
(13)前記振動吸収材がブチルゴムであることを特徴とする(1)〜(12)のいずれかに記載の電子写真用感光体。
(14)前記振動吸収材の片端若しくは両端の切り口エッジが、全周にわたって1mm以上斜めにカットされていることを特徴とする(1)〜(13)のいずれかに記載の電子写真感光体。
(15)接触、若しくは非接触帯電装置に、交流電圧重畳の直流電圧を印加して帯電した後、光書き込みにより静電潜像を形成し、現像装置により顕像化する間接電子写真法で画像形成を行うための電子写真感光体の製造方法において、該電子写真感光体の内部に、振動吸収材の外壁全面にわたって隙間材を被覆して構成される制振材を、圧入法によって隙間材を削りながら内蔵させることを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【0021】
(16)接触若しくは近接配置された帯電装置に交流電圧重畳の直流電圧を印加して、電子写真感光体に均一帯電を行い、画像露光装置からの光書き込みにより静電潜像を形成し、その静電潜像を現像装置でトナー像として顕像化し、転写装置によって被転写体に転写を行い、クリーニング装置により前記電子写真感光体上の残留粉体をクリーニングすることによって画像形成を行う画像形成装置において、該電子写真感光体として、振動吸収材及び隙間材を一体構成とする制振材が内蔵された電子写真感光体を搭載したものであることを特徴とする画像形成装置。
(17)前記隙間材が50℃以上に融点を有し、該融点以下で固体であり、該融点以上で液体となる、削れ容易な材料から構成されることを特徴とする(16)に記載の画像形成装置。
(18)前記隙間材がパラフィンワックスであることを特徴とする(16)又は(17)に記載の画像形成装置。
(19)前記隙間材の厚みが0.5mm〜2mmであることを特徴とする(16)〜(18)に記載の画像形成装置。
(20)前記制振材が振動吸収材の表層に隙間材が被覆された一体構成の部材で、電子写真感光体に内蔵状態で、振動吸収材外壁から電子写真感光体内壁までの距離が0.5mm〜2mmであることを特徴とする(16)〜(19)のいずれかに記載の画像形成装置。
(21)振動吸収材が円筒状若しくは円柱状の弾性体であることを特徴とする(16)〜(20)のいずれかに記載の画像形成装置。
(22)前記円筒状の振動吸収材が、少なくとも4mm以上の肉厚を有することを特徴とする(21)に記載の画像形成装置。
(23)前記振動吸収材の長さが、電子写真感光体の両端に装着されたフランジ間の長さの75〜100%であることを特徴とする(16)〜(22)のいずれかに記載の画像形成装置。
(24)前記振動吸収材の損失正接tanδが0.5以上の特性を有することを特徴とする(16)〜(23)のいずれかに記載の画像形成装置。
(25)前記振動吸収材がブチルゴムであることを特徴とする(16)〜(24)のいずれかに記載の画像形成装置。
【0022】
(26)電子写真感光体、及び電子写真感光体に接触若しくは近接配置され、交流電圧を重畳した直流電圧が印加される帯電装置、現像装置、クリーニング装置より選ばれる少なくとも1つの装置(手段)を一体に支持し、画像形成装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジにおいて、振動吸収材及び隙間材を一体とする制振材を内蔵した電子写真感光体が搭載されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
(27)前記隙間材が50℃以上に融点を有し、該融点以下で固体であり、該融点以上で液体となる、削れ容易な材料から構成されることを特徴とする(26)に記載のプロセスカートリッジ。
(28)隙間材がパラフィンワックスであることを特徴とする(26)又は(27)に記載のプロセスカートリッジ。
(29)前記隙間材の厚みが0.5mm〜2mm以下であることを特徴とする(26)〜(28)のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
(30)制振材が振動吸収材の表層に隙間材が被覆された一体構成の部材で、電子写真感光体に内蔵状態で、振動吸収材から電子写真感光体内壁までの距離が0.5mm〜2mmであることを特徴とする(26)〜(29)のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
(31)前記振動吸収材が円筒状若しくは円柱状の弾性体であることを特徴とする(26)〜(30)のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
(32)電子写真感光体に内蔵される円筒状の振動吸収材が、少なくとも4mm以上の肉厚を有することを特徴とする(31)に記載のプロセスカートリッジ。
(33)振動吸収材の長さが、電子写真感光体の両端に装着されたフランジ間の長さの75〜100%であることを特徴とする(26)〜(32)のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
(34)電子写真感光体に内蔵される振動吸収材の損失正接tanδが0.5以上の特性を有することを特徴とする(26)〜(33)のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
(35)電子写真感光体に内蔵される振動吸収材がブチルゴムであることを特徴とする(26)〜(34)のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに具体的に説明する。
本発明で使用される間接電子写真方法を用いた複写プロセスの概略を、図1を用いて説明する。
図1に記載の画像形成装置は、1本の感光体に1系統の現像装置を組み合わせた単色トナーを使用した画像形成装置であり、感光体1を中心に、帯電装置2、画像露光装置3、現像装置4、転写装置5、分離装置6、クリーニング装置7が配置され、更に定着装置8及び被転写体9が配置される。感光体の内部には振動吸収材の外壁を隙間材で被覆した制振材10が感光体内壁に密着するように挿入される。
【0024】
制振材10は振動吸収材と隙間材からなり、振動吸収材は損失正接tanδが0.5以上(好ましくは0.6以上)の弾性体から成る。隙間材は50℃以上に融点を持ち、該融点以下では固体に、該融点以上の高温(例えば70℃)では流動化する材料(本発明では、例えばパラフィンワックスを使用)から成る。感光体への内蔵は振動吸収材に0.5〜2mmの厚さになるように隙間材をほぼ均一に被覆し、感光体内に圧入法によって、隙間材を削りながら装着することにより、感光体内壁に密着装着する。
【0025】
本発明の接触、若しくは非接触帯電装置において、感光体1を帯電する手段として、接触帯電法、または感光体と帯電部材間を30μm〜100μm(好ましくは50μm〜80μm)離した非接触帯電法の何れかの帯電装置2が使用される。帯電部材には回転駆動が掛けられる帯電ローラ2−1に、高圧電源2−2を介して交流電圧を重畳した直流電圧が印加され、感光体1の表面電位は−400V〜−800Vに帯電される。
尚、コロナ帯電装置も非接触帯電装置の1種であるが、ここで云う非接触帯電装置とは、感光体から30〜100μm程度に近接配置された帯電部材により感光体を帯電する装置を意味する。
【0026】
帯電ローラ2−1に印加される条件は直流電圧が−600〜−1200V、交流電圧(正弦波若しくは三角波)が1000V〜2000V、周波数が800Hz〜2500Hz程度であり、画像形成に必要な帯電電圧と同等、あるいは少し高めの直流電圧に、帯電開始電圧Vthの2倍以上のPeak to Peak電圧(Vp−p)の交流電圧を重畳した直流電圧に設定することが望ましい。
【0027】
帯電ローラ2−1を感光体から離して一定の距離に保つ方法としては、例えば、幅5〜10mmにカットしたポリエステル(PE)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、フッ素(F)樹脂フィルムなどのシートを帯電ローラの両端部に段差を形成しないように貼り付けるか、あるいはシリコーン(Si)系の熱収縮チューブを帯電ローラー端部に熱収縮させて、スペーサーとする方法等がある。帯電ローラ2−1は感光体1と直接、若しくは、スペーサーを介して接触しており、自重で感光体と従属回転するか、ギヤを介した回転が与えられる。
【0028】
感光体1を帯電した後、デジタル複写方式ではCCD(電荷結合素子)で読みとられた原稿画像、或いはパーソナルコンピューターなどから送信されたデジタル信号を、LD(Laser Diode)素子、若しくはLED(LaserEmitting Diode)アレイ、凸レンズ、ポリゴンミラー、シリンドリカルレンズ等で構成される画像露光装置3によって、20〜60μm程度のドット画像に変換されて感光体に照射され、入力信号に応じた静電潜像が形成される。
【0029】
LD素子もしくはLEDアレイは感光体の最高感度領域若しくはその近傍の発振波長の素子が選択される。発振波長が短くなるほど、スポット径を絞り込むことが出来るため、400〜450nm程度の短波長側に発振波長を有するLD素子は1200や2400dpi等の高解像度を得る場合に有利であり、本発明の画像形成装置に搭載して使用することが出来る。
静電潜像が形成された後、例えば2成分現像剤(トナーとキャリアで構成)が投入された現像装置4(現像バイアスは、例えば−400V〜−700V)で反転現像(露光された電位が現像される)されトナー像が形成される。
【0030】
2成分現像剤を構成するキャリアには、例えば、鉄、フェライト、ニッケルの様な磁性を有する粉体(磁性紛)に帯電性及び帯電安定性、耐久性等向上させる為にポリフッ化炭素、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂等で被覆されたもの等が用いられる。キャリアの粒径は30〜60μm程度である。
トナーには角張った領域を削いで球形処理された平均円形度が0.91〜0.94程度の粉砕トナー、あるいは、重合法(乳化重合法、懸濁重合法など)で製造された平均円形度が0.97〜1.0の球形トナーで、重量平均粒径が4〜8μmの重合トナーなどが、キャリアに対して2〜10(重量%)程度の割合で混合され使用される。
【0031】
現像後のトナー像は転写装置5によりトナーの保持する電荷とは逆極性の電圧(マイナス帯電のトナーに対してはプラスの電圧)で被転写体9(コピー用紙、OHPシートなど)に転写され、被転写体9は分離装置6により感光体1より剥離され、定着装置8に送られ、ハードコピーとなる。
【0032】
一方、転写後の感光体上の残留トナーはクリーニング装置7(ポリエチレンや、ナイロン、炭素繊維などの繊維から構成されるクリーニングブラシ、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、ネオプレンゴム、フッ素ゴム等の材料から成るクリーニングブレードのいずれか、あるいは両者を併用)を用いて清掃され、最後に感光体1の残留電荷が除電され、一連の複写サイクルは終了する。
【0033】
なお、図1で説明した複写プロセスは、フルカラー方式の画像形成装置にも応用可能である。図示していないが、フルカラー方式の電子写真複写機やカラーレーザープリンターでは、1本の感光体にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の4系統(色)の現像装置を配した1ドラム方式の画像形成装置、図2に示すように、1つの画像形成装置に4系統の複写プロセスを組み込んだ4連タンデム方式の複写方式の画像形成装置がある。
【0034】
また、図1に記載の感光体、帯電装置、現像装置、クリーニング装置等を、2系統、若しくはそれ以上組み合わせることによって、画像形成装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジとすることが出来る。図3は感光体、帯電装置、現像装置及びクリーニング装置を組み合わせたプロセスカートリッジの一例である。
プロセスカートリッジとすることにより、組み合わせた部品や装置がダウンしても、プロセスカートリッジを交換するだけで現状回復が出来るため、メンテナンスにかかるコストを大幅にダウンさせることが出来るという大きなメリットがある。
【0035】
図4〜図6に有機感光体の構成例を示す。図4は0.6〜3mm程度の厚さのアルミニウム合金を主体とする導電性支持体上に、下引き層、感光層の順に積層された単層構成の感光体で、帯電極性は殆どの場合プラス帯電である。
図5は下引き層の上に電荷発生層と電荷輸送層から成る感光層が積層された機能分離型の感光体であり、帯電極性は通常マイナスである。
図6は図5に記載の感光体の電荷輸送層最表層から2〜10μmの幅でフィラーを添加した電荷輸送層(フィラー分散電荷輸送層)を形成して、耐摩耗性を図った感光体構成の一例である。添加されるフィラーは一次粒径が0.2〜1.0μm、比抵抗が1012〜1014Ωcm程度の酸化アルミ(アルミナ)、酸化チタンなどの金属酸化微粒子で、フィラーを分散する電荷輸送層全重量の10〜50重量%が添加される。
【0036】
次に感光体を構成要素別に説明する。
本発明に使用される感光体の導電性支持体には、体積抵抗率が1×1010Ω・cm以下の導電性を示すものが好ましく、より好ましくは1×106Ω・cm以下のものが使用できる。例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。
ドラム状感光体では加工性、入手容易性、再生等を考慮して、アルミニウムが使用されることが多い。
【0037】
一般的なアルミニウムの表面加工方法には、切削加工、ホーニング加工、ブラスト加工などがあり、目標の外径寸法に切削した後、さらに超仕上げ、鏡面仕上げ等により、表面粗度が0.1〜10μm程度になる様に加工され、十分な油膜洗浄が行われる。
導電性支持体の形状をドラム状とする場合、肉厚は直径や材質にも左右されるが、アルミニウム(例えばJIS規定の3003番)を使用する場合、0.5〜5mm程度のものが使用され、直径φ24〜80mmの感光体であれば0.7〜3mm程度の肉厚の導電性支持体が好適である。
【0038】
導電性支持体と感光層との間には、必要に応じて、下引き層が設けられる。下引き層は支持体側からの電荷注入を阻止し帯電特性を安定化する、接着性を向上する、モアレなどを防止する、上層の塗工性を改良する、残留電位を低減するなどを目的として設けられる。下引き層は一般に樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を、溶剤を用いて塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶解性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の三次元網目構造を形成する硬化型樹脂などが挙げられる。また、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物、あるいは金属硫化物、金属窒化物などの微粉末を分散し含有させてもよい。これらの下引き層は、適当な溶媒、塗工法を用いて形成することができる。
更に本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用して、例えばゾル−ゲル法等により形成した金属酸化物層も有用である。
【0039】
この他に、本発明の下引き層にはAl2O3を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物や、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作製法にて設けたものも良好に使用できる。
下引き層の膜厚は0.1〜20μmが適当であり、好ましくは1〜10μmである。
【0040】
電荷発生層は電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じてバインダー樹脂が用いられる。電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることが出来る。
無機系材料には、例えば結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファス・シリコンなどが挙げられる。アモルファス・シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子などをドープしたものが良好に用いられる。
【0041】
一方、有機系材料としては、公知の材料を用いることが出来る。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることが出来る。
【0042】
電荷発生層に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、例えばポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、ポリアリレート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが用いられる。これらのバインダー樹脂は、単独または2種以上の混合物として用いることが出来る。また、必要に応じて低分子電荷輸送物質を添加してもよい。
【0043】
電子輸送物質としては、例えばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイドなどの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることが出来る。
【0044】
正孔輸送物質としては、以下に示される電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。
例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体などが挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることが出来る。
電荷発生層は、例えば電荷発生物質、溶媒及び結着樹脂を主成分とするものから形成されるが、その中には、増感剤、分散剤、界面活性剤、シリコーンオイル等のいかなる添加剤が含まれていても良い。
【0045】
電荷発生層を形成する方法には、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とが大きく挙げられる。前者の方法には、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法などが用いられ、上述した無機系材料、有機系材料が良好に形成出来る。
また、キャスティング法によって電荷発生層を設けるには、上述した無機系もしくは有機系電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノンなどの溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミルなどにより分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成出来る。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート法、ビードコート法などを用いて行なうことが出来る。
以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
【0046】
電荷輸送層は、感光体の機械的強度(耐久性)維持、及び帯電特性や感度などの電子写真特性を確保するために形成される。
電荷輸送層は、通常電荷輸送成分とバインダー成分を主成分とする混合物ないし共重合体を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することにより形成出来る。
電荷輸送層の膜厚は、10〜100μm程度が適当であり、解像力が要求される場合、薄い方が望ましく10〜30μm程度が適当である。
【0047】
電荷輸送層を構成する低分子輸送材にはオキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダール誘導体、トリフェニールアミン誘導体、α−フェニールスチルベン誘導体、トニフェニールメタン誘導体、アントラセン誘導体などを使用することが出来る。
【0048】
また、バインダー成分として用いることのできる高分子化合物としては、例えば、ポリスチレン、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂(ビスフェノールAタイプ、ビスフェノールCタイプ、ビスフェノールZタイプ或いはこれらの共重合体)、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂などの熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの高分子化合物は単独または2種以上の混合物として、また、電荷輸送物質と共重合化して用いることができる。
【0049】
電荷輸送物質として用いることのできる材料は、上述の低分子型の電子輸送物質、正孔輸送物質が挙げられる。電荷輸送物質の使用量は高分子化合物(バインダー)100重量部に対して20〜200重量部、好ましくは50〜100重量部程度である。
電荷輸送層塗工液を調製する際に使用できる分散溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブなどのエーテル類、トルエン、キシレンなどの芳香族類、クロロベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類等を挙げることができる。
【0050】
感光体の機械的、電気的耐久性は電荷輸送層の物理特性で左右される。電荷輸送層の膜厚を30μm程度形成すると、5〜10(万枚)の耐久枚数を達成することが出来、一般的な使用に対してはほぼ十分な特性を有する。
しかし、使用頻度が高く、高ボリュームのユーザーにおいては、感光体の耐久性が5〜10(万枚)程度では不足する場合があるため、有機感光体は耐久化を図ることが望ましい。
有機感光体を高耐久化する手段には、感光層を高耐久化したり、感光層上に耐摩耗性の被膜を形成するなどの既知の技術を使用することが出来る。
また、本発明では高耐久化を図る手段として、有機感光層上電子写真特性に支障を与えにくいフィラーを分散して感光層(フィラー分散電荷輸送層)を形成し、機械的、電子写真特性を満足させる。
【0051】
電荷輸送層上に形成するフィラー分散電荷輸送層は体積抵抗率が1×1013〜1×1015Ω・cm、表面抵抗率が1×1015〜1×1017Ω、650nmの波長での透過率が5μmの膜厚の時90〜95%、比誘電率が2.5〜4程度の特性に成るように設定される。
【0052】
電荷輸送層と薄膜との比誘電率に大きな違いが生じた場合、その境界近傍でホールの移動を阻害するような障壁が形成されるため、光減衰特性の悪化が起こり、画像品質が低下する。したがって、両層間に比誘電率の差が生じない様にすることが望ましい。
【0053】
また、両層間に出来るだけ界面(障壁)が形成されない様な材料や、製法などの検討が必要である。比誘電率が同等であっても、完全に障壁を形成するような絶縁層は、電荷の輸送を阻害するため好ましくなく、電荷輸送層から表面に向かって移動するホール(正孔)がスムーズに薄膜を乗り越え、感光体表面の電荷と結合し消滅するような構造及び構成にする必要がある。
電気特性および機械特性(耐摩耗性など)の両特性を同時に満足させるためには、薄膜を感光層(ここでは電荷輸送層)の延長と考えて設計するのが最も好ましい。
【0054】
機械特性を向上させ、且つ電気特性(感度及び繰り返し特性)を両立させる手段としては、本発明では電荷輸送層に高硬度の無機フィラーを添加した薄膜(フィラー分散電荷輸送層とする)とするのが最良の方法である。
電荷輸送層に添加するフィラーは1×1012〜1×1015Ω・cm程度の体積抵抗率を有し、撥水性を有し、その機能が持続するものが望ましい。
フィラー材料は、有機性フィラー材料と無機性フィラー材料とがあり、有機性フィラー材料としては、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、a−カーボン粉末等が挙げられ、無機性フィラー材料としては、銅、スズ、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末、シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物、フッ化錫、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム等の金属フッ化物、チタン酸カリウム、窒化硼素などの無機材料が挙げられる。これらのフィラーの中で、フィラーの硬度の点から無機材料を用いることが耐摩耗性の向上に対し有利である。
【0055】
特に、アルミナ(α型)、ついで酸化チタンの微粒子を使用するのが本発明では好ましい。これらのフィラーは単独でも、混合して使用しても良い。
フィラー材料は、電荷輸送物質や結着樹脂、溶媒等とともに適当な分散機を用いることにより分散できる。また、フィラーの一次粒径の平均は、電荷輸送層の透過率や耐摩耗性の点から、0.01〜1.0μmが好ましく、より好ましくは0.2〜0.5μmである。
【0056】
感光層に添加するフィラー粒径が大きくなると、樹脂中に分散した時の粒径も大きくなるため、電荷の移動や、光拡散などによって解像度は低下する方向にある。また、解像度はトナーの粒径にも依存する。
フィラー粒径が小さいと、耐摩耗性の効果が低くなり、大きい場合には、磨耗は抑制される方向になるが、感光層に添加したフィラーによってブレードが磨耗及び破損したり、削れたフィラーによって更に感光層が削られる現象が有る。また、粒子間にコロナ生成物が入り込み、ブレードでの削除が困難となり、画像流れが起こりやすく成りやすい。
【0057】
なお、電荷輸送層の最表面側が最もフィラー含有率が高く、支持体側が低くなるようにフィラー濃度傾斜を設けたり、電荷輸送層を複数層にして、支持体側から表面側に向かい、フィラー濃度が順次高くしたりするような構成にすることも出来る。フィラー分散電荷輸送層中のフィラーの添加量は、要求される耐刷枚数や、使用されるトナー等によって変わるが、通常は重量%で10%以上、40%以下、好ましくは10%以上、35%以下が望ましい。
【0058】
フィラー(無機微粒子)は酸化物で絶縁体であり、バインダー樹脂に分散した場合、粒子とバインダー樹脂との界面にトラップが形成されやすい。このため、感光体を繰り返し使用した場合、残留電位が蓄積し、画像部電位の上昇を招くため、画像濃度の低下、解像度の低下が起こりやすい。したがって、分散性を良好にし感光層の均一化をはかり、トラップの形成を阻害したり、トラップ密度を軽減するような添加物を添加することも一方法である。また、感光体は感光体に近接配置した帯電装置によって帯電するが、帯電の際に発生したオゾンや窒素酸化物などのコロナ生成物が感光体表層に付着したり、感光層中に進入し、電気抵抗(体積抵抗率、表面抵抗率)を低下させ、解像度低下などの画像品質低下を起こす。これを解消するために、酸化防止剤、可塑剤を少量添加することも出来る。
ただし、これらの添加物は常に必要なものではなく、電荷輸送層が薄い場合や、フィラーの添加量が少ない場合、あるいは画像システムによっては添加する必要がない場合もある。
フィラー分散電荷輸送層はフィラーをバインダー樹脂中に適当量分散した塗工液をスプレー法やディッピング法などの塗工法を用いて目標の膜厚に塗工する。
【0059】
本発明における電荷輸送層及びフィラー分散電荷輸送層には、膜厚の凹凸を低減する方法として、例えば、レベリング剤を添加する方法などは有効である。レベリング剤としては、公知の材料を用いることができるが、微量で高い平滑性を付与することができ、静電特性に対する影響が小さい、シリコーンオイル系のレベリング剤がとくに好ましい。シリコーンオイルの例としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、アルキル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル、高級脂肪酸含有シリコーンオイル等が挙げられる。また、塗工時の条件等によっても凹凸を低減することは可能である。例えば浸漬塗工において、感光体を引き上げた後、塗膜表面がまだウェットな状態の時に、フードで覆ったりすることで風の流れなどで表面を乱されないようにしたりすることで凹凸が低減される。また、塗膜表面付近の溶媒が急激に揮発すると表面だけが硬化して塗膜の内部が流動性を持った状態になり、この内部の塗膜がたれて凹凸が形成されることもあるので、ウェットな状態の時に感光体の周りに溶媒の蒸気層を形成し、溶媒を穏やかに揮発させることでレベリングが進行し、凹凸が低減される。
【0060】
また、スプレー塗工においては、エアスプレーによって塗膜を形成する場合、エアの圧力や、エア流量を適量にコントロールすることで、塗膜が流動的な状態での表面の乱れを抑えて凹凸を抑制することが必要である。ここで、エア圧、エア流量が大きすぎるとエアの流れで塗膜の表面が乱れ、逆に小さすぎると、塗工液の液滴が均一にならなかったり、微粒化が不十分になったりして、塗膜の均一性が低下する原因となる。また、電荷輸送層を形成後、回転させつつ溶媒を揮発させるが、このときの回転速度が大きすぎると、まだ溶媒を含み流動性をもっている塗膜に遠心力がかかり、凹凸が強調される。また、逆に回転速度が小さすぎると、回転によるレベリングより重力によるたれの影響が勝り、凹凸が発生する原因となってしまう。そのため、塗膜がウェットな状態での感光体の回転速度を適正な値に設定することが必要である。
【0061】
また、スプレー塗工においては、塗工液を供給するポンプの送液が一定であることが重要となる。すなわち、液の供給が一定でなく脈動を持っていたりすると、それがダイレクトに液の吐出量に影響を与えるため、付着量にムラが生じることになる。そのため、スプレーに液を供給するポンプとしては、脈動を抑えた多連式プランジャーポンプや、シリンジ型の超精密吐出装置などを用いることが好ましい。
【0062】
これらの方法は単独で用いても良いが、複数組み合わせることで、より効果的にレベリングがなされ、凹凸が低減された電荷輸送層が形成される。
さらに、レベリングが不十分であった場合、電荷輸送層の凸部を摩耗してならすことも凹凸を小さくする方法として可能である。たとえば、膜厚計で凸部を検出し、その部分を研磨加工して凸部をなくすという方法が考えられる。
【0063】
本発明においては、耐環境性の改善のため、及び、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、電荷発生層、電荷輸送層、下引き層、保護層、中間層等の各層に酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、低分子電荷輸送物質等を添加することが出来る。これらの化合物の代表的な材料を以下に示す。
【0064】
各層に添加できる酸化防止剤として、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)フェノール系化合物
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3′−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコールエステル、トコフェロール類など。
【0065】
(b)パラフェニレンジアミン類
N−フェニル−N′−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジメチル−N,N′−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなど。
【0066】
(c)ハイドロキノン類
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
【0067】
(d)有機硫黄化合物類
ジラウリル−3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3′−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3′−チオジプロピオネートなど。
【0068】
(e)有機燐化合物類
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
【0069】
各層に添加できる可塑剤として、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)リン酸エステル系可塑剤
リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸オクチルジフェニル、リン酸トリクロルエチル、リン酸クレジルジフェニル、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニルなど。
【0070】
(b)フタル酸エステル系可塑剤
フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ブチルラウリル、フタル酸メチルオレイル、フタル酸オクチルデシル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチルなど。
【0071】
(c)芳香族カルボン酸エステル系可塑剤
トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリ−n−オクチル、オキシ安息香酸オクチルなど。
【0072】
(d)脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤
アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ−n−オクチル、アジピン酸−n−オクチル−n−デシル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジカプリル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−n−オクチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジ−2−エトキシエチル、コハク酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、テトラヒドロフタル酸ジオクチル、テトラヒドロフタル酸ジ−n−オクチルなど。
【0073】
(e)脂肪酸エステル誘導体
オレイン酸ブチル、グリセリンモノオレイン酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、ペンタエリスリトールエステル、ジペンタエリスリトールヘキサエステル、トリアセチン、トリブチリンなど。
【0074】
(f)オキシ酸エステル系可塑剤
アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート、アセチルクエン酸トリブチルなど。
【0075】
(g)エポキシ可塑剤
エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸デシル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ベンジル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジデシルなど。
【0076】
(h)二価アルコールエステル系可塑剤
ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチラートなど。
【0077】
(i)含塩素可塑剤
塩素化パラフィン、塩素化ジフェニル、塩素化脂肪酸メチル、メトキシ塩素化脂肪酸メチルなど。
【0078】
(j)ポリエステル系可塑剤
ポリプロピレンアジペート、ポリプロピレンセバケート、ポリエステル、アセチル化ポリエステルなど。
【0079】
(k)スルホン酸誘導体
p−トルエンスルホンアミド、o−トルエンスルホンアミド、p−トルエンスルホンエチルアミド、o−トルエンスルホンエチルアミド、トルエンスルホン−N−エチルアミド、p−トルエンスルホン−N−シクロヘキシルアミドなど。
【0080】
(l)クエン酸誘導体
クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリ−2−エチルヘキシル、アセチルクエン酸−n−オクチルデシルなど。
【0081】
(m)その他
ターフェニル、部分水添ターフェニル、ショウノウ、2−ニトロジフェニル、ジノニルナフタリン、アビエチン酸メチルなど。
【0082】
本発明では滑剤を各層に添加することが出来る。例えば、下記に示すものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(a)炭化水素系化合物
流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、低重合ポリエチレンなど。
【0083】
(b)脂肪酸系化合物
ラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸など。
【0084】
(c)脂肪酸アミド系化合物
ステアリルアミド、パルミチルアミド、オレインアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミドなど。
【0085】
(d)エステル系化合物
脂肪酸の低級アルコールエステル、脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステルなど。
【0086】
(e)アルコール系化合物
セチルアルコール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセロールなど。
【0087】
(f)金属石鹸
ステアリン酸鉛、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなど。
【0088】
(g)天然ワックス
カルナバロウ、カンデリラロウ、蜜ロウ、鯨ロウ、イボタロウ、モンタンロウなど。
【0089】
(h)その他
シリコーン化合物、フッ素化合物など。
【0090】
なお、滑材を感光層(特には最表層)に添加することによる効果は不十分で、外添法によって必要に応じて供給するのが好ましい。
【0091】
各層に添加できる紫外線吸収剤として、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)ベンゾフェノン系
2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなど。
【0092】
(b)サルシレート系
フェニルサルシレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル4ヒドロキシベンゾエートなど。
【0093】
(c)ベンゾトリアゾール系
(2′−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2′−ヒドロキシ5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2′−ヒドロキシ−3′−ターシャリブチル−5′−メチルフェニル)5−クロロベンゾトリアゾールなど。
【0094】
(d)シアノアクリレート系
エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、メチル−2−カルボメトキシ−3(パラメトキシ)アクリレートなど。
【0095】
(e)クエンチャー(金属錯塩系)
ニッケル(2,2′−チオビス(4−t−オクチル)フェノレート)ノルマルブチルアミン、ニッケルジブチルジチオカルバメート、ニッケルジブチルジチオカルバメート、コバルトジシクロヘキシルジチオホスフェートなど。
【0096】
(f)HALS(ヒンダードアミン)
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなど。
【0097】
次に、感光体の中に内蔵する制振材10について説明する。制振材10の基本構成は図7の通りで、振動吸収材と隙間材から構成される。
図7には図示してはいないが、振動吸収材と隙間材の間に、隙間材と振動吸収材との接着性を高めるための中間層(例えば接着層など)を形成しても良い。
図8に円柱状及び円筒状の制振材を内蔵したときの損失正接tanδの測定例を示す。
縦軸は接触帯電ローラに交流電圧を重畳した直流電圧を印加した状態と、印加しない状態(測定室の暗騒音≒48dB)での音圧差を表しており、音圧差が小さい方が、制振効果が高いことを意味する。
図8に示すように、振動吸収材の損失正接tanδが0.5以上のものが好ましい。
【0098】
損失正接tanδとは貯蔵剪断弾性率(’G )と損失剪断弾性率(”G )の比[”G/ ’G ]で表わされる特性である。損失正接tanδは材質固有の値でその材質の制振効果特性を示し、制振効果は数値が大きいほど効果は高くなる傾向がある。JIS K 7244−4に規定された非共振振動法(動的粘弾性測定装置などを使用)に基づいて測定される。
本発明における損失正接tanδの測定は、厚さ2mm、幅5mm、長さが30mmの試験片を、動的粘弾性測定装置を用いて周波数30Hzの条件で行ったものである。
【0099】
感光体用の制振材の振動吸収材には、ニトリルゴム、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、エーテル系ポリウレタンゴム、エチレンプロピレンゴムなどのゴム類、ナイロン6や酢酸ビニル樹脂と粘土(例えば、モンモリロナイト)の混合物、鉛、鉄、銅、真鍮などの金属類、エボナイト等が使用可能であるが、特に上記したように損失正接tanδが0.5以上のものが好ましい。
損失正接tanδが0.5以上のものとしては、ブチルゴム、エーテル系ポリウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、ナイロン6や酢酸ビニル樹脂と粘土(例えばモンモリロナイト)の混合物等が挙げられる。
具体的な構成としては、例えば損失正接tanδが約0.78のブチルゴムの円柱状及び円筒状弾性体を使用し、外径寸法は、例えば約φ26mm×305mm、円筒状の振動吸収材の肉厚は6mmである。
【0100】
また隙間材としては、カルバウナワックス、ポリエチレンワックス、パラフィンワックスなどのワックス類、1液性又は2液性の常温硬化型樹脂、などがあるが、融点は50℃以上の、切削容易なものが好ましく使用できる。
上記隙間材の内、製造し易い(温度だけで管理出来る、厚膜化が容易)、削れ易い、リサイクルが可能、挿入後密着性良好、無公害である、などの点からワックス材料が好ましく、特にパラフィンワックスが好ましい。
例えば、具体的には隙間材には融点60〜62℃のパラフィンワックス(国産化学社製)を使用して、振動吸収材への隙間材の被覆は前記パラフィンワックスを溶かして液体として振動吸収材に被覆させ、厚さが約2mmになるようにブレードで扱き、図7の様な形態の制振材を作製する。
振動吸収材への隙間材の被覆方法は、例えば図9に示すような方法を用いて行う。隙間材は融点が50℃以上のパラフィンワックスが好適に使用され、70℃程度に加熱すると完全な液体になる。したがって、振動吸収材を回転させながらパラフィンワックスの液体に浸漬し、引き上げる途中で加熱したブレードで扱いて、目標とする厚さにする。
【0101】
この様にして得られた制振材は、例えば内径28.5mm、外径φ30mm感光体に圧入機を用いて、隙間材を削りながら、図10に示す方法で感光体内に密着挿入する。この状態での隙間材の厚みは1.25mmで、隙間材として使用されず削れた厚みは約0.75mmである。
なお、制振材を感光体に挿入する方法は圧入機を使わなくても手で押し込んだり、ハンマーで叩きながら挿入することも出来るが、この方法では感光体の変形を伴い、感光体の真円度や真直度が変化し、帯電特性、画像特性に異常が生じる可能性が有る。したがって、本発明では0.75mm程度の薄い導電性支持体を感光体に使用している場合は、特に、圧入機を用いて正確に挿入するのが望ましい。この圧入法はフランジ装着時も同様に行える。
【0102】
本発明の制振材が感光体に内蔵された概念図を図11に示す。
制振材の制振効果(音圧差)の測定は次の様な方法で行う。台座の上に制振材を内蔵させフランジを両端に装着した感光体を浮かせて固定し、その上に非接触帯電ローラ(感光体との間隔は約65μmである)を重ねて載せて固定する。非接触帯電ローラに交流電圧を重畳した直流電圧を印加した時の帯電音の音圧を騒音計を用いて測定する。帯電部材への電圧の印加条件は直流電圧が−730V、交流電圧が1500V、周波数が1350Hzに設定する。音圧はアコー社の騒音計(タイプ6224)のプローブを、感光体より30cm離した感光体と非接触帯電ローラの対向した位置と同じ高さに設定する。
【0103】
図12に振動吸収材の損失正接tanδを変えた弾性体での振動音の抑制効果を示す。
振動吸収材は帯電時の振動を効率よく制動する材質が望ましく、特性的には損失正接tanδは0.5以上、好ましくは0.6以上有ることが好ましい。
【0104】
図13に隙間材の厚みを変えたときの振動音の抑制効果を示す。隙間材の厚みが薄くなるほど帯電音の振動吸収材への伝搬が良好になり制振効果が高まる。すなわち、隙間材の厚みを2mm以下にすることによって有効な制振効果が得られることが判る。
感光体に内蔵したときの隙間材の厚みは、厚く成る程、振動音の振動吸収材への伝搬速度が低下するため制振効果が低下する。そのため、隙間材の最大厚さは2mm程度に抑えることが望ましいが、あまり薄いと、振動吸収材には滑り性が無いため、制振材の感光層への挿入が困難になる。したがって、厚さは少なくとも0.5mm以上、好ましくは1mm前後の厚さに設定することが望ましい。
【0105】
図14に感光体に内蔵する制振材(図14では円柱状制振材)の長さに対する制振効果のグラフを示す。フランジ間の空間領域の長さL1に、長さが異なる制振材(図11参照)を挿入したとき、制振材長さL2との長さの割合(空間占有率=L2/L1×100%)が約75%以上で良好な結果が得られることが判る。
空間占有率は感光体に装着したフランジ間の長さと同じ寸法の時を100%とする。制振材は感光体内壁に密着して内蔵させることを前提(100%機能が発揮される)としているので、感光体内壁と、制振材外壁との空間は無いものとする。
【0106】
図15に円筒状振動吸収材の制振効果の肉厚依存性を示す。肉厚が4mm以上で不快感を感じる基準レベル4dBを切り、制振効果が良好になることが判る。人間が感じる帯電音又は振動音については個人差が有るが、帯電部材に電圧を印加した場合と、印加しない場合での騒音計の音圧差が約4dB前後でほぼ分かれる。すなわち、音圧差が4dB以下で有れば、ほぼ不快に感じないレベルとなるため、本発明では4dBを効果有無の判断基準とする。
【0107】
以下、さらに具体的に説明する。
本発明に使用される振動吸収材は帯電部材と感光体間で生じた帯電音、クリーニングブレードと感光体での摺擦音を吸収して熱に変える物質のことを指す。帯電音やクリーニングブレードなどでの摺擦音は感光体の支持体に響きやすい素材を使用したときに起こりやすい。すなわち、剛体化することで抑制することが可能となるが、重量が増すため駆動系などに負担が掛かり、ギアなどの損傷を生じる。したがって、効果的に抑制する為には重量は出来るだけ軽くて、振動を効率よく吸収する振動吸収材を使用することが好ましい。
【0108】
帯電音は高周波音であるため不快感を感じる。したがって、高周波音を良好に吸収させ急速に減衰させる材料には損失正接tanδが大きい材料を使用することが望ましい。前記したように具体的には図12に示すように損失正接tanδが0.5以上の材料が望ましく、さらには0.6以上の弾性体が好ましい。図12に使用した弾性体はイソブチレンとイソプレンとの共重合で得られるジエン構造を有するブチルゴム(合成ゴム)であり、比較的安価で入手し易い好適な材料である。(添加剤や添加比率を変えることで、損失正接tanδは変化させることが出来る。)その他、同様に損失正接tanδの高い材料はいずれもブチルゴム同様の合成ゴムで、商品名でハネナイト(内外ゴム(株))やソルボセイン((株)セプター)などがある。
【0109】
振動吸収材は図7に示すように両端の切り口エッジがテーパー状にカットされていることが好ましい。
このことにより、感光体内への制振材の挿入をたやすくする。切り欠きは幅1〜3mm、長さ方向で2〜5mm程度でよい。切り欠きは金型を興す際に形成しても良いし、引き抜きで形成された棒状のブチルゴムを必要な長さにカットした後、エッジの部分をカットすれば良い。切り欠きが無い場合には感光体への挿入がうまくいかず、感光体の変形を伴うことがある。
【0110】
一方、隙間材は振動吸収材を感光体内壁に隙間が無いように密着させ、振動音を振動吸収材に伝達する材料を指すが、作業性、環境性等を考慮すると、作製容易、簡単に装着取り出しが出来、再使用出来、毒性が無い材料が望ましい。この条件を満足する材料として、石油から分離されるワックス系のパラフィンワックス(ロウ)が好適に使用できる。
パラフィンワックスには38℃〜72℃まで2℃毎に細かく融点設定されたものが販売されており、要求に応じた融点温度のパラフィンワックスを使用すればよい。
【0111】
一般に使用される画像形成装置は、使用環境によっても左右されるが、定着装置やモーターなどの駆動装置などにより機内温度が上昇し、長時間の使用によって機内温度は40℃近傍或いは40℃を越えることがある。したがって、本発明では、少なくとも50℃以上のものを使用するのを好適とする。また作業性等を考慮すると融点が50〜80℃のものを使用するのがより好適である。
但し、輸送車両を使用しての搬送の場合、車両内温度が50℃以上に成る場合がある。
【0112】
この様な場合、低い融点のパラフィンワックスでは流動化して、再固化した場合に空間領域に隙間材が溜まり、感光体の回転に支障が出たり、制振効果が大幅に低下するばかりでなく、制振材が感光体内で移動するなどの弊害が出るため、感光体としての信頼性が保証出来なくなる。したがって、初期より、最高温度の融点のパラフィンワックスを使用することも一方法で有る。効果は50℃融点のパラフィンワックスを使用した場合と全く同じである。
【0113】
振動吸収材に隙間材を被覆する手段として次の方法で簡単に行える。例えば、50〜52℃のパラフィンワックスは40℃程度では固体であるが、70℃に加熱すると、完全に液体となる。したがって、パラフィンワックスを溶かして、図9に示す概略図のように、振動吸収材を回転しながら浸漬すれば簡単に隙間材を被覆することが出来、回転しながら(加熱された)ブレードで余分な隙間材を除去すれば、一定の厚みの隙間材を形成することが出来る。
【0114】
感光体に内蔵した状態での隙間材の厚みは0.5〜2mmを好適とする。これは作業性及び制振効果から決定される。制振材を感光体内に挿入された状態での隙間材の厚みは0.5mm未満では感光体内壁に余裕が小さいために、滑りのない振動吸収材(ブチルゴムなどの損失正接tanδが0.5以上の弾性体)は挿入に支障が出る場合があり、一方2mmを超える場合には、たとえ損失正接tanδに数値の大きな振動吸収材を使用しても、振動の伝達が遅れるために制振効果を十分に発揮出来ない。
【0115】
したがって、振動吸収材の外経を感光体の内径より少なくとも1mm以上、4mm以下小径とし、かつ振動吸収材に隙間材を被覆する厚みは、内蔵時の隙間材の厚さにプラス0.5〜1.5mm程度厚く被覆するのが好ましい。厚さが0.5mm以下では振動吸収材の不均一や、被覆ムラなどにより感光体内壁との間に隙間が生じて、制振効果が低下する可能性がある。
隙間材を必要以上に厚くした場合、削れが容易であるパラフィンワックスを使用しているとは云っても、肉厚が0.6mmや0.7mmのように薄い導電性支持体の感光体では挿入時に局部的に力が加わって変形し、感光体の真円度、真直度が変わり、感光体に歪みが生じ帯電などに影響が出る場合も有る。
【0116】
導電性支持体の厚みが厚くなるにしたがい、変形することが無くなるために、塗布時の被覆層の厚みを2mm以上に厚くしても問題は解消される。
制振材を感光体に挿入する際に一部パラフィンワックスが削れるが、削れたものについては再度溶解することによって、再使用が可能である。
【0117】
パラフィンワックスはアルミニウムのような金属であっても、エッジの部分で簡単に削れる柔らかい材料である。この簡単に削れるということは本発明には特に重要で、作業性を容易にする。すなわち、感光体内壁より制振材の外径を大きく(例えば1mm〜4mm大きく)して、図10の様に隙間材を削りながら圧入すれば、簡単に感光体内に挿入でき、感光体内壁に密着させることが可能となる。なお、制振材の挿入時に感光体内にシリコーンオイルや、フッ素オイルなどの潤滑剤を塗布しておくことで、さらに円滑に挿入を可能とすることも出来る。
【0118】
制振材の挿入は25℃前後の常温環境で実施されるが、隙間材が僅かに柔らかく成る程度の温度に感光体を加熱して行うことも出来る。
寿命に達した感光体の再生を行う場合には、フランジを外して一方から制振材を叩けば簡単に取り出しが出来るし、感光体を加熱して、パラフィンワックスを溶かせば、容易に取り出すことが出来る。
【0119】
【実施例】
以下、実施例を用いてさらに詳しく説明するが、本発明がこれらの実施例によって限定されるものではない。尚、実施例中の「部」は重量部を表す。
【0120】
本発明に使用する評価用感光体を以下の方法で作製した。
φ30mm、長さ340mm、厚さ0.75mmのJIS規定の3003系アルミニウム合金ドラムを導電性支持体として、下記組成の下引き層(UL)用塗工液を用いて浸漬塗工した後、120℃20分乾燥し3.5μmの下引き層、ついで、下記構造式(1)で表される電荷発生材を用いた電荷発生層(CGL)用塗工液で浸漬塗工した後、120℃20分間加熱乾燥して、0.2μmの電荷発生層を形成した。さらに、下記構造式(2)で表される電荷輸送材を使用した電荷輸送層(CTL)用塗工液に浸積塗工し、引き上げ速度条件を変化させ、電荷輸送層を塗工した後、130℃20分の加熱乾燥を行い、平均膜厚が、約22μm(感光体A)と約28μm(感光体B)の2種の有機感光体を作製した。
尚、膜厚の測定にはフィッシャー社の渦電流式膜厚計(タイプmms)を使用し、端部より50mmを起点として、20mm間隔で13ポイント測定した平均値で平均膜厚を算出した。
【0121】
〔下引き層用塗工液〕
【0122】
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造式(1)で表されるビスアゾ顔料 10部
【化1】
ポリビニルブチラール 2部
2−ブタノン 200部
シクロヘキサノン 400部
【0123】
〔電荷輸送層用塗工液〕
ビスフェノールZ型ポリカーボネート
(帝人化成社製:Zポリカ Mv5万) 10部
下記構造式(2)で表される低分子電荷輸送物質 8部
テトラヒドラフラン 200部
【化2】
【0124】
また28μmの有機感光体とは別に、前記方法で作製した22μmの電荷輸送層を有する有機感光体Aを使用し、下記仕様によってアルミナフィラーを分散した電荷輸送層(フィラー分散電荷輸送層)を有する有機感光体を作製した。
バインダー樹脂(ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂)、低分子電荷輸送物質(ドナー)、添加剤及び一次粒径が0.3μmの下記無機フィラーを用意し、無機フィラーと分散助剤及び溶剤を硝子ポットに入れ、ボールミルで24時間分散させて塗工液を作り、スプレー法を用いて2回往復させ、フィラー分散電荷輸送層5μmを塗工した。
触指乾燥の後、150℃20分間加熱乾燥させて、フィラー分散電荷輸送層を有する評価用電子写真感光体を作製した。
【0125】
[フィラー分散電荷輸送層塗工液]
【化3】
【0126】
帯電部材には非接触帯電ローラと接触帯電ローラの2種類を用意した。
非接触帯電ローラは、8mmの真鍮製ロッド棒にカーボンを均一分散して、比抵抗を約4×105Ω・cm(100VDC印加1分値)に調整したエピクロルヒドリンゴムを塗布して14mmφに成形し、その帯電部材の両端に、厚さ42μm、幅10mm、長さ43mmのPET(ポリエチレンテレフタレート)シートを張り付けたもので、感光体と帯電部材の間隔は約63μmであった。
一方、接触帯電ローラは8mmの真鍮製ロッド棒に比抵抗が6×108Ω・cmとなる5μmのエピクロルヒドリンゴム層を形成し、その上から、エピクロルヒドリンゴムにフッ素系樹脂とシリカを分散した3×1014(Ω・cm)に調整された1mmの被覆層を形成したものである。
【0127】
本発明に使用する制振材として、損失正接tanδが約0.3〜0.8で、直径が24.5mm、26mm及び27mmの円柱状の振動吸収材(ブチルゴム)、40〜42℃、50〜52℃、60℃〜62℃及び70〜72℃の4種の融点温度のパラフィンワックス(国産化学社製)を夫々用意し、振動吸収材に隙間材となるパラフィンワックスを大凡0.5mm〜6mmの間で被覆した。
制振材の制振効果の確認は温湿度が24〜25℃、65%RHに設定された実験室にて実施した。
【0128】
感光体の内部に圧入装置を用いて前記方法で作製した制振材を中央近傍に位置するように圧入した後、両端にフランジを装着し、感光体の形態を整え、感光体を両端支持の台座に設置し、その上に帯電ローラをセットした。
帯電ローラに印加する電圧は−800Vの直流電圧に、1.0KV/1.35KHzの正弦波を重畳したものであり、騒音計を10cmの台座に乗せ、プローブ先端部を感光体から30cm離してON、OFFの切換えにより音圧差を確認した。なお、実験室の音圧(暗騒音)は約48dBであった。評価は測定値から暗騒音を差し引いた音圧差の大きさで判定した。
【0129】
本発明の評価用の画像形成装置としてイマジオMF2200(リコー社製)を用意した。
現像剤にはリコー製の粒径約6.3μmのブラックトナー(流動剤SiO2=0.7%およびTiO2=0.8%、ステアリン酸亜鉛系潤滑剤(SZ2000)=0.2%添加)(堺化学工業社製)を、粒径60μmの磁性キャリア(FPC−300LC)(パウダーテック社製)に分散した5%濃度の現像剤(リコー製現像剤)を使用した。
画像形成時に帯電部材に交流電圧を重畳した直流電圧を印加するための装置として、横河製ファンクションジェネレーター(FG−300)と長野愛知電気製高圧電源(HV−255)を用意し、帯電部材に−740Vの直流電圧と1250V/1350Hzの交流電圧を印加し、帯電電圧が−700Vになる様に微調整した。
評価は通紙ランニング前後(連続1万枚)の画像品質(600dpiで作像)についても評価を行った。また、感光体の温度についても測定した。
【0130】
実施例1〜5
寸法の異なる損失正接tanδが0.78の円柱状の振動吸収材を4種(φ26×305(mm)、φ26×230(mm)、φ24.5×305(mm)、φ27×305(mm))、融点の異なる3種のパラフィンワックス(60〜62(℃)、70〜72(℃)、50〜52(℃))及び隙間材の簡易被覆装置を用意して、振動吸収材を溶融させたパラフィンワックスに浸漬し、回転させながら引き上げの過程でブレードで扱き、感光体に圧入するときに削れ厚みが夫々の振動吸収材共、約1mmになる様に隙間材を被覆した。振動吸収材の長さが230mmの場合、長さ方向の空間占有率は約75%、305mmの場合は約99%に相当する。
【0131】
評価用の感光体として前記仕様に基づいて作製した電荷輸送層が28μmの3層構成の有機感光体(感光体B、内径28.5mm)を用意した。
上記方法にて作成した制振材を圧入機を用いてゆっくり感光体のほぼ中央部に挿入した後、両端にフランジを装着し評価に使用する感光体を完成した。
帯電音の評価は台座に上記の感光体をセットし、その上に非接触帯電ロール(帯電ロールと感光体間の隙間は約63μm)を載せて前記した評価方法に基づいて実施した。
この後、音圧評価に使用した感光体をプロセスカートリッジに装着し、A4サイズのコピー用紙で1万枚の連続通紙ランニングを、25〜28℃/63〜68%RHの環境下で実施した。通紙ランニング終了後直ちに感光体の温度測定を行い、さらに感光体をプロセスカートリッジより取り外し、再度音圧測定を実施した。
結果を表1に示す。
【0132】
通紙ランニングに伴う感光体温度はいずれもパラフィンワックスの融点温度以下で流動することもなく、制振材は感光体内壁に密着しており、実施例1〜5に示す実施例はいずれも、音圧が初期及び通紙ランニング後も不快に感じる判定レベルである4dB以下であり良好な結果であった。
実施例3の例では隙間材の厚みが2mmであり、帯電音の抑制効果(音圧差)は他の例に比して高めとなり、明らかに高周波音が確認されたが、音調としては比較的柔らかく、評価装置に装着しての確認ではモーターなどの駆動音に紛れて聞こえる程度で不快感は感じなかった。
なお、画像品質に特に異常は無く、600dpiで作像した1ドットパターンは均一性の良好な画像であった。また、クリーニングブレードの摺擦音(高周波音)の発生は感じられなかった。
【0133】
【表1】
【0134】
(注)表中、感光体のBは導電性支持体/下引き層/電荷発生層/電荷輸送層の3層構成の感光体である。P.Wはパラフィンワックス、制振材占有率は([L2/L1]×100%)で感光体のフランジ間の空間領域(L1)を占める制振材(L2)の占有率を示す。
感光体最高温度は長手方向の位置の最高温度を示し、主には奥側の温度である。
音圧抑制効果は交流電圧重畳の直流電圧印加時の音圧より、印加無し時の音圧を差し引いた音圧で、その差が大きいほど不快感を感じる。
判定の基準レベルは上記音圧差が、◎:3.5dB以下、○:3.5dBを超え、4.0dB以下、△:4.0dBを超え、4.3dB以下、×:4.3dBを超える、で判定した。
以下、同様である。
【0135】
実施例6〜7
評価用の感光体として、3層構成の感光体A(電荷輸送層膜厚:22μm)に平均粒径0.3μmのα−アルミナフィラーを25重量%添加した5μmのフィラー分散電荷輸送層を積層した感光体を使用し、帯電部材を接触帯電ロールに変更した以外、実施例1〜2に同じ方法で評価を行った。
結果を表2に示す。
【0136】
隙間材に感光体温度より余裕のある融点のパラフィンワックスを使用しているため、連続ランニングにより感光体は40〜42℃に上昇したが、隙間材が溶融すること無く、制振材は感光体内壁に十分に密着したままであり、帯電音の抑制効果はフィラー分散電荷輸送層を形成した感光体においても音圧差は4dB以下に抑制され、また画像品質も良好であった。
【0137】
【表2】
【0138】
比較例1〜3
40〜42℃、60〜62℃の融点を有するパラフィンワックス、振動吸収材にφ26mm×305mm、φ24.5mm×305mmの長さのものを用意した。振動吸収材への隙間材(パラフィンワックス)の被覆は本文中及び実施例に記載の方法で行い、パラフィンワックスは振動吸収材の直径が26mmのものについては約1mm、24.5mmのものについては約1.8mmの厚さで隙間材が被覆される様にブレードで扱いて作製した。パラフィンワックスの厚みは手で挿入できる最大限の厚みとした。この時の制振材と感光体内壁の隙間は計算上約0.25mmである。評価は実施例1〜7に同様の方法で実施した。
結果を表3に示す。
【0139】
比較例に使用した制振材は感光体に手で挿入できる程度に余裕があるため、実施例1〜7と異なり、感光体内壁への密着性が殆ど無く制振効果が不十分となり、許容値の4dBを大きく越え不良であった。比較例1ではパラフィンワックスに融点が40〜42℃のものを使用したため、連続ランニングにより感光体温度が42℃に上昇してパラフィンワックスの溶解が起こり、音圧の抑制効果に減退を示した。一方、比較例3の場合はパラフィンワックスの融点が高く、連続ランニングしたときの感光体温度より約20℃の余裕が有るため、流動化無く感光体との密着性は十分に保たれていたが、パラフィンワックスが厚いために、感光体内壁からの振動が良好に吸収されない為に制振抑制が不十分となった。
画像品質上の問題は殆ど皆無であったが、感光体の停止時に僅かでは有るがクリーニングブレードの摺擦音が確認された。
【0140】
【表3】
【0141】
実施例8、9及び比較例4
40〜42℃、60〜62℃の融点を有するパラフィンワックス、振動吸収材にφ26mm×305mm及びφ26mm×224mmの長さのものを用意した。振動吸収材への隙間材(パラフィンワックス)の被覆は本文中及び実施例に記載の方法で行い、パラフィンワックスは約2.5mmになる様にブレードで扱いた。制振材を感光体に内蔵したときの隙間材の厚みは約1.25mmで、感光体に圧入時に導電性支持体で削れるパラフィンワックスの厚みも約1.25mmである。
評価は実施例1〜7に同様の方法で実施した。
結果を表4に示す。
【0142】
制振材の感光体内での占有率が72%(φ26×224mm)の場合(実施例9)では音圧が4.1dBを示し、少し気になる程度の帯電音を呈した。
融点が40〜42℃のパラフィンワックスを使用した場合(実施例8)には、制振材の占有率は99%であったが、1万枚の連続通紙ランニングで感光体の温度と隙間材の融点と同等であったため、隙間材が軟化し、僅かに抑制効果の低下が見られた。
また、制振材を内蔵させない場合(比較例4)は全く制振効果が無いため極めて高い帯電音を呈した。画像品質に特に異常は生じなかったが、制振材を挿入しなかった感光体では、感光体が停止する直前にクリーニングブレードの摺擦音がはっきり判る程度に確認された。
【0143】
【表4】
【0144】
実施例10
60〜62℃の融点を有するパラフィンワックス、振動吸収材にφ23.5mm×305mmの長さのものを用意した。振動吸収材への隙間材(パラフィンワックス)の被覆は本文中及び実施例に記載の方法で行い、パラフィンワックスの削れ厚みが約1mmになる様な厚さになるようにパラフィンワックスを塗布しブレードで扱いた。因みに感光体に装着したときの隙間材の厚みは2.5mm(実施例10)とした。
評価法は実施例1〜7に同様である。
結果を表5に示す。
【0145】
音圧の制振効果は隙間材の厚みが増すと共に低下傾向を示し、隙間材の厚さを2.5mmとした感光体(実施例10)では、振動吸収材の効果が低下し4dBの許容値を越えたが、少し気になる程度の帯電音に留まった。画像品質は通常の文字画像は全く問題なく正常に見え、600dpiの1ドット全面画像にムラが見られず、ほぼ良好な結果であった。
【0146】
【表5】
【0147】
【発明の効果】
発明の効果について概略には以下の通りである。
請求項1〜14に記載されている電子写真感光体を、着脱自在なプロセスカートリッジに搭載して画像形成装置に装着するか、若しくは直接に画像形成装置に搭載することにより、感光体に帯電する際に起こる帯電音及び、クリーニングブレードで生じる摺擦音を、聴覚上不快を感じないレベルまで抑制できる。
本発明では環境性、作業性を考慮しながら帯電音及びクリーニングブレードでの摺擦音を効果的に抑制する手段として、取り外しが容易なように、制振材を接着剤で固定する方式ではなく、振動吸収材に被覆した隙間材を削りながら圧入しながら挿入する方式を採ることによって、感光体内壁に制振材を密着させ、かつ制振抑制を行うことができる。
【0148】
感光体の内径より小径に加工された振動吸収材に、削れ容易で、溶解温度が50℃以上にあり、50℃以下で固体、50℃以上で液体に成る材料を隙間材として被覆する。隙間材は感光体の内径より1〜4mm大きくなる程度に振動吸収材に被覆する。隙間材は導電性支持体の縁で容易に削られる為、感光体に圧入する場合に負荷が少なくて済むため、感光体の真直度、真円度に影響が及ばず、帯電特性に不具合をもたらすことはない。
【0149】
隙間材はワックス系であり、好ましくはパラフィンワックスである。パラフィンワックスを振動吸収材に被覆し、振動吸収材と隙間材との合計した外径が、感光体の内径より僅かに大きくなる様に隙間材を被覆して感光体内に圧入する。このことによって、制振材は感光体の内壁に十分密着され、感光体内部で移動することもない。パラフィンワックスはカッターナイフや金属のエッジなどで容易に削れるために、感光体の真円度や真直度を変化させることが殆ど皆無であり、感光体内への挿入や取り出しも容易に出来る。パラフィンワックスには38℃〜72℃の間で各種融点のものがあるため、輸送中、使用中の環境温度を考え、好適なものを選定することが出来る。
【0150】
また、振動吸収材は損失正接が0.5以上、好ましくは0.6以上の加工が容易な弾性体である。好ましい材料としては合成ゴムのブチルゴムが好ましく使用できる。
すなわち、本方式の制振材は感光体と制振材が簡単に分離でき、寿命に達した感光体は再生が容易であり、振動吸収材は再使用が可能であり、環境的にも好ましい制振材である。
【0151】
請求項1に記載の電子写真感光体構成によって
帯電部材に交流電圧を重畳した電圧を印加することによって生じる、不快感を感じる帯電時の帯電音を抑制する手段として、感光体に振動吸収材に隙間材を被覆して一体とした制振材を圧入法で、隙間材を削りながら挿入することを特徴とし、制振材は比較的容易に感光体内壁に密着させ内蔵することが出来るため、感光体内壁と制振材の外壁との間に空間が生じない。このため感光体表面で生じた帯電音を遅滞なく振動吸収材に伝搬できることから、効果的に帯電音を抑制することが出来る。またこのことによって、クリーニングブレードと感光体の間で起こる摺擦音(ブレード鳴き)も効果的に解消することが出来る。
【0152】
請求項2〜4に記載の電子写真感光体構成によって
隙間材として、50℃以上に融点を持ち、該融点以下では固体に、該融点以上では液体となり、アルミニウムのエッジでも容易に切削出来るワックス系のパラフィンワックスを使用することによって、環境上の問題も起こらず、制振材の取り付け作業、取り外し作業が容易であり、しかも再利用が出来るため従来方式に比べ、トータルコストの大幅な低減を図ることが出来る。
【0153】
請求項5〜7に記載の電子写真感光体構成によって
感光体に内蔵するための制振材を作製する際に、振動吸収材に隙間材を1〜4mm被覆し、その内、隙間材となる厚みを0.5〜2mmとして、振動吸収材の外壁から感光体の内壁までの距離を0.5〜2mmとなし制振材を感光体内に圧入する(感光体で削られる隙間材は0.5〜2mm)。
隙間材の厚さが薄いため及び削れ容易な材料であるため、挿入時に感光体へ無理な荷重がかからない。したがって、感光体の真円度、真直度が変化することが無く、また、制振材が感光体内壁に密着している為、感光体の帯電で発生した帯電音を効果的に振動吸収材に伝達し、制振性を高めることが出来る。
【0154】
請求項8及び、14に記載の電子写真感光体構成によって
振動吸収材を円柱状若しくは円筒状にすることによって、回転しながらの作業になるため隙間材の被覆が容易であり、均一に被覆することが可能である。また、円柱状若しくは円筒状に加工した振動吸収材は両端のエッジを斜めにカットすることにより、感光体へ過たず挿入することが出来、感光体内壁に掛かる圧を均等にし易い。したがって、帯電が不均一に成ることもなく安定した帯電及び作像を行うことが出来る。
【0155】
請求項9に記載の電子写真感光体構成によって
円筒状の振動吸収材を使用する場合には、肉厚が減った分、制振効果が低減するが、その肉厚を4mm以上にすることによって、不快感を感じる音圧差を4dB以下に抑制させることが出来る。
【0156】
請求項10に記載の電子写真感光体構成によって
振動吸収材(または制振材)の長さをフランジ間の長さの75%〜100%にすることにより、帯電音を効果的に抑制することが出来る。振動吸収材(又は制振材)を短くすることによって、帯電音の抑制効果は低減するが、75%は不快感を感じる許容限度であり、短くすることによりコスト低減化が図れるというメリットがある。
【0157】
請求項11に記載の電子写真感光体構成によって
感光体に挿入する制振材を構成する振動吸収材の直径を感光体内径より少なくとも1〜4mm小さくすることにより、隙間材の厚さを0.5〜2mmとすることが出来るため、帯電音を効率よく、振動抑制材に伝達できるため制振効果を効率よく高めることが出来る。
【0158】
請求項12〜13に記載の電子写真感光体構成によって
帯電音を抑制させるためには振動吸収材の損失正接tanδが0.5以上を示す材料であることが望ましく、特にはブチルゴムが好適である。
【0159】
請求項15に記載の電子写真感光体の製造方法によって
上記請求項1〜14に記載の優れた電子写真感光体を、簡易な操作により製造することができる。
【0160】
請求項16〜25に記載の画像形成装置によって
交流電圧を重畳した直流電圧を帯電装置に印加して、画像形成を行う際に発生する帯電音を、不快を感じないレベルまで抑制できた画像形成装置を使用することによって、従来に比して静粛性が高まり作像作業を快適に行うことが出来る。
【0161】
請求項26〜35に記載のプロセスカートリッジによって
帯電音の発生を十分に抑制した感光体と帯電装置、現像装置及びクリーニング装置から選ばれる少なくとも1体若しくはそれ以上の組み合わせでプロセスカートリッジを構成することによって、プロセスカートリッジに組み込んで生じた画像品質上の問題を、プロセスカートリッジの交換で即座に元の画像品質に回復させることが出来ると共に、帯電音の抑制された静粛性の高い画像形成装置を構成させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成装置の例の概略図である。
【図2】本発明の4連タンデム方式のフルカラー画像形成装置の例の概略図である。
【図3】本発明のプロセスカートリッジの例の概略図である。
【図4】本発明の単層構成の電子写真感光体の例の断面模式図である。
【図5】本発明の積層構成の電子写真感光体の例の断面模式図である。
【図6】本発明の積層構成の電子写真感光体の別の例の断面模式図である。
【図7】本発明の電子写真感光体に内蔵する制振材の例の模式図である。
【図8】本発明の電子写真感光体に制振材を内蔵した場合の制振材(振動吸収材)の損失正接と暗騒音との音圧差(制振効果)との関係を示すグラフである。
【図9】本発明における制振材の作製操作を示す図である。
【図10】本発明における電子写真感光体に制振材を圧入する操作を示す図である。
【図11】本発明の制振材が内蔵された電子写真感光体の例を示す概念図である。
【図12】振動吸収材の損失正接tamδと振動音の抑制効果との関係を示すグラフである。
【図13】隙間材の厚みと振動音の抑制効果との関係を示すグラフである。
【図14】電子写真感光体に内蔵する円柱状制振材の空間占有率と制振効果との関係を示すグラフである。
【図15】電子写真感光体に内蔵する円筒状制振材の振動吸収材の厚みと制振効果との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 感光体
2 帯電装置
2−1 帯電ローラ
2−2 高圧電源
3 画像露光装置
4 現像装置
5 転写装置
6 分離装置
7 クリーニング装置
7−1 クリーニングブラシ
7−2 クリーニングブレード
8 定着装置
9 被転写体
10 制振材
Claims (35)
- 接触、若しくは非接触帯電装置に、交流電圧重畳の直流電圧を印加して帯電した後、光書き込みにより静電潜像を形成し、現像装置により顕像化する間接電子写真法で画像形成を行うための電子写真感光体において、該電子写真感光体内部に、振動吸収材の外壁全面にわたって隙間材を被覆して構成される制振材を、圧入法によって隙間材を削りながら内蔵させたものであることを特徴とする電子写真感光体。
- 前記隙間材が50℃以上に融点を有し、該融点以下で固体であり、該融点以上で液化する、切削容易な材料から構成されることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
- 前記隙間材がワックス系材料であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
- 前記ワックス系材料がパラフィンワックスであることを特徴とする請求項3に記載の電子写真感光体。
- 電子写真感光体に内蔵された状態での前記隙間材の厚みが0.5mm〜2mmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 前記制振材が振動吸収材の表層に隙間材が被覆された一体構成であり、電子写真感光体に内蔵状態で、振動吸収材外面から感光体内壁までの距離が0.5mm〜2mmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 電子写真感光体に挿入する直前の前記隙間材で被覆された状態の制振材の外径が、電子写真感光体の内径より1mm〜4mm大きいことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 前記振動吸収材が円筒状若しくは円柱状の弾性体であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 前記円筒状の振動吸収材が少なくとも4mm以上の肉厚を有することを特徴とする請求項8に記載の電子写真感光体。
- 前記振動吸収材の長さが、電子写真感光体の両端に装着されたフランジ間の長さの75〜100%であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 前記振動吸収材の外径が、電子写真感光体の内径より少なくとも1mm〜4mm小さいことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 前記振動吸収材の損失正接tanδが0.5以上の特性を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 前記振動吸収材がブチルゴムであることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 前記振動吸収材の片端若しくは両端の切り口エッジが、全周にわたって1mm以上斜めにカットされていることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 接触、若しくは非接触帯電装置に、交流電圧重畳の直流電圧を印加して帯電した後、光書き込みにより静電潜像を形成し、現像装置により顕像化する間接電子写真法で画像形成を行うための電子写真感光体の製造方法において、該電子写真感光体内部に、振動吸収材の外壁全面にわたって隙間材を被覆して構成される制振材を、圧入法によって隙間材を削りながら内蔵させることを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
- 接触若しくは近接配置された帯電装置に交流電圧重畳の直流電圧を印加して、電子写真感光体に均一帯電を行い、画像露光装置からの光書き込みにより静電潜像を形成し、その静電潜像を現像装置でトナー像として顕像化し、転写装置によって被転写体に転写を行い、クリーニング装置により前記電子写真感光体上の残留粉体をクリーニングすることによって画像形成を行う画像形成装置において、該電子写真感光体として、振動吸収材及び隙間材を一体構成とする制振材が内蔵された電子写真感光体を搭載したものであることを特徴とする画像形成装置。
- 前記隙間材が50℃以上に融点を有し、該融点以下で固体であり、該融点以上で液化する、削れ容易な材料から構成されることを特徴とする請求項16に記載の画像形成装置。
- 前記隙間材がパラフィンワックスであることを特徴とする請求項16又は17に記載の画像形成装置。
- 前記隙間材の厚みが0.5mm〜2mmであることを特徴とする請求項16〜18のいずれかに記載の画像形成装置。
- 前記制振材が振動吸収材の表層に隙間材が被覆された一体構成の部材で、電子写真感光体に内蔵状態で、振動吸収材外壁から電子写真感光体内壁までの距離が0.5mm〜2mmであることを特徴とする請求項16〜19のいずれかに記載の画像形成装置。
- 前記振動吸収材が円筒状若しくは円柱状の弾性体であることを特徴とする請求項16〜20のいずれかに記載の画像形成装置。
- 前記円筒状の振動吸収材が少なくとも4mm以上の肉厚を有することを特徴とする請求項21に記載の画像形成装置。
- 前記振動吸収材の長さが、電子写真感光体の両端に装着されたフランジ間の長さの75〜100%であることを特徴とする請求項16〜22のいずれかに記載の画像形成装置。
- 前記振動吸収材の損失正接tanδが0.5以上の特性を有することを特徴とする請求項16〜23のいずれかに記載の画像形成装置。
- 前記振動吸収材がブチルゴムであることを特徴とする請求項16〜24のいずれかに記載の画像形成装置。
- 電子写真感光体、及び電子写真感光体に接触若しくは近接配置され、交流電圧を重畳した直流電圧が印加される帯電装置、現像装置、クリーニング装置より選ばれる少なくとも1つの装置(手段)を一体に支持し、画像形成装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジにおいて、振動吸収材及び隙間材を一体とする制振材を内蔵した電子写真感光体が搭載されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
- 前記隙間材が50℃以上に融点を有し、該融点以下で固体であり、該融点以上で液化する、削れ容易な材料から構成されることを特徴とする請求項26に記載のプロセスカートリッジ。
- 前記隙間材がパラフィンワックスであることを特徴とする請求項26又は27に記載のプロセスカートリッジ。
- 前記隙間材の厚みが0.5mm〜2mmであることを特徴とする請求項26〜28のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
- 制振材が振動吸収材の表層に隙間材が被覆された一体構成の部材で、電子写真感光体に内蔵状態で、振動吸収材外壁から電子写真感光体内壁までの距離が0.5mm〜2mmであることを特徴とする請求項26〜29のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
- 前記振動吸収材が円筒状若しくは円柱状の弾性体であることを特徴とする請求項26〜30のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
- 前記円筒状の振動吸収材が少なくとも4mm以上の肉厚を有することを特徴とする請求項31に記載のプロセスカートリッジ。
- 前記振動吸収材の長さが、電子写真感光体の両端に装着されたフランジ間の長さの75〜100%であることを特徴とする請求項26〜32のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
- 前記振動吸収材の損失正接tanδが0.5以上の特性を有することを特徴とする請求項26〜33のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
- 前記振動吸収材がブチルゴムであることを特徴とする請求項26〜34のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
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2003
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