JP2004232999A - 気密性住宅の換気システム - Google Patents

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恭 掛上
Koji Okada
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Abstract

【課題】ダクトを用いずに効率よく、床下の木材の含水率が上昇するのを抑えてその木材の耐久性を向上できると共に、床下の汚染空気が室内に流入することを防止しできる、気密性住宅の換気システムを提供する。
【解決手段】本発明の気密性住宅1の換気システム10は、建築物2に気密性をもたせ、且つ、床下3を基礎断熱した気密性住宅1を換気するシステムである。床下3の基礎4には、床下3の空気を外部に排出する排気ブロワ20が設けられている。換気システム10は、排気ブロワ20の排気量を調節することにより、建築物2の室内空気が建築物2の床5に配設された床通気口21を通して床下3に流れる換気経路を形成するように構成されている。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、気密性住宅における計画換気に関し、特に、ダクトレス型の計画換気に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、建築物を気密化した気密性住宅においては、計画換気が行われている。この計画換気は、2時間に1回の割合で、住宅内の空気と同じ量の新鮮空気を室内に取り入れて汚染空気を外部に排出するもので、ダクト型計画換気と、ダクトレス型計画換気とに大別される。
【0003】
ダクト型計画換気には、例えば、小屋裏に熱交換型換気ユニットを設け、これにより、小屋裏のダクトを通して給排気すると共に、床下の空気と小屋裏の空気とを、屋内のダクト等を通して循環させる技術が提案されている(特許文献1参照)。
また、ダクト型計画換気には、密閉された床下に空調機を設け、これにより、床下のダクトを通して給排気すると共に、屋内に設けられた昇気路及び降気路を通して室内を循環させる技術も提案されている(特許文献2参照)
しかしながら、このような従来のダクト型計画場合においては、ダクト内で生じる圧力損失の分だけ計画換気に要する動力が増加する等の問題があった。
【0004】
一方、ダクトレス型計画換気には、例えば、床下給気型として、床下に給気ファンを設け、これにより、床下を通して室内に給気した空気を天井や外壁から排気する技術(非特許文献3参照)や、天井排気型として、小屋裏に集中排気ファンを設け、これにより、外壁の給気口から室内に給気した空気を階段の吹き抜けを通して小屋裏のガラリから排気する技術(特許文献4参照)が提案されている。
【0005】
しかしながら、このような従来のダクトレス型計画換気においては、床下から室内に貫流した空気が、床下で汚染されているおそれがあり、さらに、床下に床断熱を施した場合にあっては、床下空間が高湿化しているため、床下で土間等に用いられる木材は、含水率が上昇して耐久性が劣るおそれがあった。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−98655号公報
【特許文献2】
特開平7−102795号公報
【非特許文献3】
「建築知識」、株式会社エクスナレッジ、2003年1月1日、p.180―183
【特許文献4】
特開平8−94138号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、ダクトを用いずに効率よく、床下の木材の含水率が上昇するのを抑えてその木材の耐久性を向上できると共に、床下の汚染空気が室内に流入することを防止しできる、気密性住宅の換気システムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、建築物に気密性をもたせ、且つ、床下を基礎断熱した気密性住宅を換気するシステムにおいて、前記床下の基礎には、前記床下の空気を外部に排出する排気用送風機が設けられており、該排気用送風機の排気量を調節することにより、前記建築物の室内空気が前記建築物の床に配設された床通気口を通して前記床下に流れる換気経路を形成するように構成されたことを特徴とする気密性住宅の換気システムを提供することにより前記目的を達成したものである。
【0009】
本発明によれば、床下を強制排気して、床下の圧力を室内の圧力より小さくすることにより、上記換気経路を形成したため、床下空気は、床通気口や床を通して逆流せず、また、床下の温度は、室内とほぼ同じ温度になり、床下の湿度は、気密性住宅特有の室内の低湿度と同程度になる。
その結果、ダクトを用いずに効率よく、床下の汚染空気が室内に流入するのを防止できると共に、床下の木材の含水率が上昇するのを抑えてその木材の耐久性を向上させることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下本発明の気密性住宅の換気システムの好ましい一実施形態を図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の気密性住宅1の換気システム10は、建築物2に気密性をもたせ、且つ、床下3を基礎断熱した気密性住宅1を換気するシステムである。
床下3の基礎4には、床下3の空気を外部に排出する排気ブロワ(排気用送風機)20が設けられている。換気システム10は、排気ブロワ20の排気量を調節することにより、建築物2の室内空気が建築物2の床5に配設された床通気口21を通して床下3に流れる換気経路を形成するように構成されている。
以下、かかる気密性住宅1の換気システム10を詳細に述べる。
【0011】
建築物2は、壁、天井、屋根の下地材に、耐候性ポリエチレンフィルム等のような防湿・気密シートやグラスウールのような断熱材(図示せず)を隙間なく張り巡らし、窓に、遮熱性及び断熱性を有するサッシ(図示せず)を取り付ける等により、気密性及び断熱性をもたせた構造である。
【0012】
ここに、気密性の程度は、相当隙間面積の大小によって表される。気密性は、相当隙間面積の値が小さいほど高くなる。この相当隙間面積は、住宅全体の総隙間面積を延べ床面積で除した値であり、本実施形態の場合、0.5〜2.5cm/mとしている。
このように気密性の高い建築物2は、外気とほとんど遮断されるため、低湿度に保たれる。
【0013】
床下構造6は、例えば断熱コンクリートを用いた基礎4を地盤上の基礎スラブ7とその周囲に立設する基礎立ち上がり8とで床下空間を囲むものとし、さらに、その基礎4の内面に断熱材9を敷設した構造、すなわち、床下3に基礎断熱を施した構造である。
【0014】
この床下構造6に対し、地中に生じた水蒸気を遮断する観点から、基礎スラブの下面には、防湿シート(図示せず)が敷設されており、また、基礎4に含まれる水蒸気を建築物2側に移動させない等の観点から、基礎立ち上がり8の上面と建築物2の土台の下面との間には、防湿・気密パッキン(図示せず)が介在されている。
これにより、床下構造6は、床下空間を外気と遮断して密閉した構造でもある。
【0015】
図1又は図3に示すように、建築物2内の1階の居室11や2階の居室11の外壁には、外壁給気口22が複数形成され、それぞれに給気ファン(給気用送風機)23が取り付けられている。本実施形態の場合、給気ファン23は2個とする。
給気ファン23は、それぞれの居室11の空間体積に応じて、給気単位量q、qが15〜30m/hの範囲内にある給気能力のものが選定されている。
【0016】
例えば、トイレ、階段下等のような1階の非居室12の床5には、床ガラリ13が嵌め込まれており、この床ガラリ13の直下に、非居室12の室内空間と床下3の床下空間とを連通する床通気口21が形成されている。
床通気口21の開口面積は、床下通気量Qを一定の範囲に調節(詳細後述)する観点から、0.03〜0.06mに設定されている。
【0017】
図1又は図2に示すように、床下構造6内における床通気口21の近傍には、排気ブロワ20が配設されている。排気ブロワ20は、床5の下面及び基礎立ち上がり8の内面の入隅部分に取り付けられており、その導入口20aが床通気口21の直下の空間に開口し、その排出口20bが基礎立ち上がり8の外面に嵌め込まれた基礎ガラリ14を通して外部空間に開口している。
【0018】
排気ブロワ20は、建築物の空間体積及び床下の空間体積に応じて、排気量Qが60〜120m/hの範囲内にある排気能力のものが選定されている。
【0019】
図3に示すように、換気システム10は、排気ブロワ20の排気量Q及び各給気ファン23、23の給気単位量q、qを総合した総給気量Qを制御する制御部30を有している。この制御部30は、排気ブロワ20と、各給気ファン23、23とに、それぞれ電気的に接続されており、排気量Q、給気単位量q、q(総給気量Q)を独立して調節するように構成されている。
【0020】
換気システム10においては、大気圧P(101325Pa)に対し、床下空間の圧力P、及び建築物2の全空間における室内空間の圧力Pを共に負圧にする観点から、制御部10の調節により、排気量Qを総給気量Qより大きくし、具体的には、総給気量Qが75〜150m/hであるのに対し、排気量Qを150〜300m/hに設定している。
なお、総給気量Qは、1個の給気ファン23の給気能力を超える場合、所定数の給気ファン23の総給気量を意味し、排気量Qは、1個の排気ブロワ20の排気能力を超える場合、所定数の排気ブロワ20の総排気量を意味する。
【0021】
さらに、このような設定状況の下においては、床下空間の圧力Pを室内空間の圧力Pより小さくする観点、すなわち、「大気圧P>室内空間の圧力P>床下空間の圧力P」の関係式を満たす圧力バランスを保持する観点から、床下通気量Qは、床通気口21の開口面積の設定により、30〜60m/hに調節されている。
【0022】
なお、1階又は2階の非居室12のうち、特にトイレや浴室のような場所には、局所換気用の換気扇15が配設されているが、換気扇15の換気量は、換気システム10の使用状況下における換気経路(詳細後述)に影響を及ぼすものでない。
【0023】
次に、本実施形態の気密性住宅1の換気システム10の使用態様及び作用を説明する。
気密性住宅1においては、空気や熱の外部交換が自然にはほとんど行われず、換気システム10により強制換気する。
【0024】
制御部30の調節により、排気ブロウ20を常時運転させて床下3から汚染空気を排気量Q分だけ排気するとともに、各給気ファン23、23を適宜又は常時運転させて外部から新鮮空気を総給気量Q分だけ給気する。
【0025】
この場合、総給気量Q、床下通気量Q、及び排気量Qの三者関係、及び建物全体の総相当隙間面積、床面の総相当隙間面積により、床下空間の圧力P及び室内空間の圧力Pは、共に負圧になり、また、床下空間の圧力P2が室内空間の圧力P1より小さくなり、上記圧力バランスが保持される。
【0026】
この圧力バランスにより、気密性住宅に換気経路が形成される。この換気経路は、外部空気を1階、2階の居室11に給気した室内空気が、床ガラリ13及び床通気口21を通して床下3に流れ、基礎ガラリ14を通して外部に排気される経路である。
【0027】
この換気経路について、さらに詳細に述べると、床下空間の圧力Pと室内空間の圧力Pとの圧力差により、建築物2内には、上方から床5に向かう下降流が形成される。
【0028】
この下降流に従い、外部から取り入れた新鮮空気は、建築物2の気密性のため外壁の隙間からほとんど漏れず、逃げ場を失って居室11内をゆっくり循環した後、ドアの隙間等を通してトイレ、階段下等の非居室12に移動して、床ガラリ13及び床通気口21から床下3に流入する。
【0029】
床下3に流入した空気は、排気ブロワ20により外部に排気されるまで、床下構造6の密閉性のため基礎4からほとんど漏れずに床下3をゆっくり循環するが、その際、床下空気と基礎スラブ7(断熱材9のない部分)との間で熱交換が行われ、基礎スラブ7が蓄熱する。
【0030】
すなわち、上記換気経路に沿った空気の流れにより、建築物2内で生じた熱が、建築物2の断熱性のため外部にほとんど放熱されずに床下3に対流すると共に、基礎スラブ7に蓄えられた熱が、床下3の基礎断熱のため外部にほとんど放熱されず、床下3の温度は、室内とほぼ同じ温度に保たれる。
【0031】
なお、上記換気経路に沿った空気の流れに伴い、居室11で生じた粉塵等の汚染物は、非居室12を通過した後に床下3から排出されるが、局所換気を行った場合、トイレ等で生じる臭気や湿気と共に換気扇15からも排出される。
【0032】
以上述べたように、本実施形態によれば、ダクトを用いずに効率よく、床下空間の圧力Pを室内空間の圧力Pより小さくする圧力バランスを保持することにより、上記換気経路に沿った空気の下降流を形成したため、床下空気は、床通気口21や床5を通して逆流しない。
その結果、床下3の汚染空気が居室11又は非居室12の何れの室内にも流入するのを防止して、気密性住宅1における建築物2内を清潔に保つことができる。
【0033】
特に、この場合において、総給気量Q及び排気量Qを制御すると共に、床下通気量Qを調節することにより、上記圧力バランスを安定させ、ひいては、上記換気経路に沿った空気の下降流を安定させることができる。
また、気密性住宅1では、隙間風による自然換気はあまり生じないが、風速の大きさ等に起因して、上記圧力バランスが若干崩れることもあり得るため、このような外的因子による環境変化に対し、適宜、給気量Q及び排気量Qを微調整することにより、上記換気経路に沿った空気の下降流をより安定させることもできる。
【0034】
また、本実施形態によれば、上記換気経路に沿った空気の下降流に伴う熱対流作用と、床下3の基礎断熱における基礎スラブ7の蓄熱作用とが相俟って、床下3の温度を室内とほぼ同じ温度にして、床下3を室内と同程度の低湿度にできる。その結果、床下3の土間等に用いられる木材の含水率が上昇するのを抑えてその木材の耐久性を向上させることができる。
【0035】
特に、この場合において、床下3の温度が室内の温度とほぼ同じことから、室内空間と床下空間との間で床5を介した熱交換がほとんど行われないため、床面の冷えを低減させることができる。
【0036】
本発明は、上記実施形態に限られることなく、種々の変更等を行うことができる。
例えば、外壁給気口22に給気ファン23を設けずに、外壁給気口22の開口面積の設定により総給気量Qを調節しつつ、排気ブロワ20の強制排気により自然給気させたり、あるいは、外壁給気口22に、開口面積の調節機能や自動風量調節機能を備えた風量調節機構を設けることも可能である。
【0037】
また、居室11に応じて、各給気ファン23、23の給気単位量q、qを適宜変更することもできる。例えば、2階の居室11の給気単位量qを1階の居室11の給気単位量qより小さく、すなわち、2階の居室11の圧力P11を1階の居室11の圧力P12より小さくすることにより、上記換気経路をより明確にしたり、あるいは、リビング、寝室などの居室11の使用時間帯に応じて、給気単位量q、qの変更により、新鮮空気の供給を居室11の使用状況の変化に対応させることもできる。
【0038】
さらに、給気ファン23、床通気口21、排気ブロワ20について、数、給気・排気能力(又は開口面積)等の条件を、室内や床下3の空間体積、相当隙間面積等に応じて、適宜変更できる。
【0039】
さらにまた、冬期においては、室内温度差に起因して生じた上方向の熱対流に対し、上記換気経路に沿った空気の下降の流れに負荷が生じるため、この負荷に応じて、制御部により、排気量Qを通常の時期より大きく制御することもできる。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、ダクトを用いずに効率よく、床下の木材の含水率が上昇するのを抑えてその木材の耐久性を向上できると共に、床下の汚染空気が室内に流入することを防止しできる、気密性住宅の換気システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の気密性住宅の換気計画システムを備えた住宅構造の概略を示す図である。
【図2】本実施形態の気密性住宅の換気計画システムにおける排気ファンの廻りを示す図である。
【図3】本実施形態の気密性住宅の換気システムの概略構成を示す図である。
【符号の説明】
1 気密性住宅
2 建築物
3 床下
4 基礎
5 床
10 換気システム
20 排気ブロワ(排気用送風機)
21 床通気口
22 外壁給気口
23 給気ファン(給気用送風機)
総給気量(給気量)
床通気量
排気量
室内空間の圧力
床下空間の圧力

Claims (3)

  1. 建築物に気密性をもたせ、且つ、床下を基礎断熱した気密性住宅を換気するシステムにおいて、
    前記床下の基礎には、前記床下の空気を外部に排出する排気用送風機が設けられており、該排気用送風機の排気量を調節することにより、前記建築物の室内空気が前記建築物の床に配設された床通気口を通して前記床下に流れる換気経路を形成するように構成されたことを特徴とする気密性住宅の換気システム。
  2. 前記排気用送風機の排気量を前記建築物の外壁に配設された外壁給気口からの給気量より大きく調節することにより、前記床下の床下空間及び前記建築物の室内空間を共に負圧にし、前記床通気口を通過する床下通気量を調節することにより、該床下空間の圧力を該室内空間の圧力より小さくするように構成されたことを特徴とする請求項1記載の気密性住宅の換気システム。
  3. 前記外壁給気口には、外部空気を前記室内空間に供給する給気用送風機が設けられており、前記排気用送風機の排気量及び該給気用送風機の給気量を制御するように構成されていることを特徴とする請求項2記載の気密性住宅の換気システム。
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